(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045629
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】電子銃、電子銃用部品、電子線適用装置、および位置合わせ方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/04 20060101AFI20220314BHJP
H01J 37/073 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
H01J37/04 B
H01J37/073
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151320
(22)【出願日】2020-09-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】516040121
【氏名又は名称】株式会社Photo electron Soul
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】西谷 智博
【テーマコード(参考)】
5C030
【Fターム(参考)】
5C030AA09
5C030AB01
5C030AB02
5C030AB03
5C030AB04
5C030AB06
5C030CC02
5C030CC03
5C030CC04
5C030CC10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電子銃を相手側装置に設置する際の設置位置のずれが大きくてなっても、電子ビームの射出軸を、相手側装置の電子光学系の光軸に軸合わせできる電子銃、電子銃用部品、電子線適用装置、および位置合わせ方法を提供する。
【解決手段】電子銃であって、電子銃は、光源と、真空チャンバーと、光源からの受光に応じて、電子ビームを射出するフォトカソードと、電極キットと、電極キット駆動装置と、を含み、電極キットは、フォトカソード受け部と、フォトカソード受け部に対して離間して配置されたアノードと、を含み、フォトカソード受け部にはフォトカソードが載置され、電極キット駆動装置は、一方の方向をX方向とし、X方向に直交する方向をY方向とし、X方向とY方向を含む平面をX-Y平面としたとき、X-Y平面で電極キットを移動させる、電子銃。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子銃であって、
電子銃は、
光源と、
真空チャンバーと、
光源からの受光に応じて、電子ビームを射出するフォトカソードと、
電極キットと、
電極キット駆動装置と、
を含み、
電極キットは、
フォトカソード受け部と、
フォトカソード受け部に対して離間して配置されたアノードと、
を含み、
フォトカソード受け部にはフォトカソードが載置され、
電極キット駆動装置は、
一方の方向をX方向とし、X方向に直行する方向をY方向とし、X方向とY方向を含む平面をX-Y平面としたとき、
X-Y平面で電極キットを移動させる、
電子銃。
【請求項2】
真空チャンバー内に、
フォトカソードと、
電極キットと、
電極キット駆動装置の一部と、
が配置される、
請求項1に記載の電子銃。
【請求項3】
電極キット駆動装置は、ステージを含み、
アノードが、ステージに載置される、
請求項1または2に記載の電子銃。
【請求項4】
ステージは、
X方向に移動する第1ステージと、
Y方向に移動する第2ステージと、
を含む、
請求項3に記載の電子銃。
【請求項5】
電極キットは、フォトカソード受け部とアノードとの間に配置された中間電極を含む、
請求項1~4の何れか一項に記載の電子銃。
【請求項6】
フォトカソードをX方向およびY方向に直行するZ方向に移動させるフォトカソード駆動装置を含み、
フォトカソード駆動装置は、フォトカソードがフォトカソード受け部に載置された際、フォトカソード受け部にフォトカソードを押圧する押圧部材を含み、
押圧部材により押圧されたフォトカソードは、電極キットの移動に応じて、フォトカソード受け部に追随して移動する、
請求項1~5の何れか一項に記載の電子銃。
【請求項7】
フォトカソードホルダを含み、
フォトカソードホルダは、
フォトカソードを保持し、
フォトカソードに対して離間して配置され、光源からの光をフォトカソードに集光するレンズ
を含む、
請求項1~6の何れか一項に記載の電子銃。
【請求項8】
電子銃用部品であって、
電子銃用部品は、
電極キットと、
電極キット駆動装置と、
を含み、
電極キットは、
フォトカソード受け部と、
フォトカソード受け部に対して離間して配置されたアノードと、
を含み、
電極キット駆動装置は、
一方の方向をX方向とし、X方向に直行する方向をY方向とし、X方向とY方向を含む平面をX-Y平面としたとき、
X-Y平面で電極キットを移動させる、
電子銃用部品。
【請求項9】
電極キット駆動装置は、ステージを含み、
アノードが、ステージに載置される、
請求項8に記載の電子銃用部品。
【請求項10】
ステージは、
X方向に移動する第1ステージと、
Y方向に移動する第2ステージと、
を含む、
請求項9に記載の電子銃用部品。
【請求項11】
電極キットは、フォトカソード受け部とアノードとの間に配置された中間電極を含む、
請求項8~10の何れか一項に記載の電子銃用部品。
【請求項12】
請求項1~7の何れか一項に記載の電子銃を含む電子線適用装置であって、
電子線適用装置が、
自由電子レーザー加速器、
電子顕微鏡、
電子線ホログラフィー装置、
電子線描画装置、
電子線回折装置、
電子線検査装置、
電子線金属積層造形装置、
電子線リソグラフィー装置、
電子線加工装置、
電子線硬化装置、
電子線滅菌装置、
電子線殺菌装置、
プラズマ発生装置、
原子状元素発生装置、
スピン偏極電子線発生装置、
カソードルミネッセンス装置、または、
逆光電子分光装置
である、
電子線適用装置。
【請求項13】
電子銃から射出される電子ビームの射出軸を電子線適用装置の電子光学系の光軸に位置合わせする位置合わせ方法であって、
電子銃は、
光源と、
フォトカソードと、
電極キットと、
電極キット駆動装置と、
を含み、
電極キットは、
フォトカソード受け部と、
フォトカソード受け部に対して離間して配置されたアノードと、
を含み、
電極キット駆動装置は、
一方の方向をX方向とし、X方向に直行する方向をY方向とし、X方向とY方向を含む平面をX-Y平面としたとき、
X-Y平面で電極キットを移動させ、
位置合わせ方法は、
フォトカソードに光源からの光を照射し、フォトカソードから電子ビームを射出させる電子ビーム射出工程と、
電子ビームを射出しながら、フォトカソードを載置した電極キットを、電極キット駆動装置により移動させて、電子ビームの射出軸と電子線適用装置の電子光学系の光軸とを位置合わせする電子ビーム射出軸調整工程と、
を含む、
位置合わせ方法。
【請求項14】
フォトカソードの光源からの照射位置が、X方向およびY方向に直行するZ方向から観て、フォトカソード受け部の中心と重なるように電極キットを移動させて、フォトカソードと電極キットを位置合わせするフォトカソード位置合わせ工程と、
フォトカソードをフォトカソード受け部に載置するフォトカソード載置工程と、
を更に含む、
請求項13に記載の位置合わせ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願における開示は、電子銃、電子銃用部品、電子線適用装置、および位置合わせ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトカソードを搭載した電子銃、当該電子銃を含む電子顕微鏡、自由電子レーザー加速器、検査装置等の電子線適用装置(以下、電子線適用装置から電子銃を除いた装置を「相手側装置」と記載することがある。)が知られている。例えば、特許文献1には、光源から励起光を照射して電子ビームを射出するフォトカソードを用いた電子顕微鏡装置が開示されている。
【0003】
電子銃を備えた装置は、明るい像、高い解像度を得る必要がある。そのため、電子銃を最初に設置した時、電子銃を交換した時に、電子銃から射出した電子ビームの射出軸が、装置の電子光学系の光軸と一致するように、電子ビームの射出軸を調整する作業が必要である。また、通常運転時においても、経時変化等による電子ビームの射出軸と装置の電子光学系の光軸のずれを調整するため、必要に応じて電子ビームの射出軸の調整が行われる。
【0004】
特許文献2には、フォトカソードを搭載した電子銃から射出される電子ビームの射出軸を、相手側装置の電子光学系の光軸に軸合わせを行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-313273号公報
【特許文献2】国際公開第2019/221119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載されているような軸合わせは、前提として、電子銃は、相手側装置の少なくとも電子ビームの射出軸の調整可能な位置に、精緻に設置される必要がある。しかしながら、電子銃を相手側装置に精緻に設置することは、熟練した技術を必要とし、誰もが容易にできるものではない。そこで、電子銃を相手側装置に設置する際の設置位置のずれが、従来よりも大きくても、電子ビームの射出軸を、相手側装置の電子光学系の光軸に軸合わせできる新たな軸合わせ方法(装置)が求められている。
【0007】
本出願の開示は、電子銃を相手側装置に設置する際の設置位置のずれが大きくてなっても、電子ビームの射出軸を、相手側装置の電子光学系の光軸に軸合わせできる電子銃、電子銃用部品、電子線適用装置、および位置合わせ方法を提供することにある。本出願の開示のその他の任意付加的な効果は、発明を実施するための形態において明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)電子銃であって、
電子銃は、
光源と、
真空チャンバーと、
光源からの受光に応じて、電子ビームを射出するフォトカソードと、
電極キットと、
電極キット駆動装置と、
を含み、
電極キットは、
フォトカソード受け部と、
フォトカソード受け部に対して離間して配置されたアノードと、
を含み、
フォトカソード受け部にはフォトカソードが載置され、
電極キット駆動装置は、
一方の方向をX方向とし、X方向に直行する方向をY方向とし、X方向とY方向を含む平面をX-Y平面としたとき、
X-Y平面で電極キットを移動させる、
電子銃。
(2)真空チャンバー内に、
フォトカソードと、
電極キットと、
電極キット駆動装置の一部と、
が配置される、
上記(1)に記載の電子銃。
(3)電極キット駆動装置は、ステージを含み、
アノードが、ステージに載置される、
上記(1)または(2)に記載の電子銃。
(4)ステージは、
X方向に移動する第1ステージと、
Y方向に移動する第2ステージと、
を含む、
上記(3)に記載の電子銃。
(5)電極キットは、フォトカソード受け部とアノードとの間に配置された中間電極を含む、
上記(1)~(4)の何れか一つに記載の電子銃。
(6)フォトカソードをX方向およびY方向に直行するZ方向に移動させるフォトカソード駆動装置を含み、
フォトカソード駆動装置は、フォトカソードがフォトカソード受け部に載置された際、フォトカソード受け部にフォトカソードを押圧する押圧部材を含み、
押圧部材により押圧されたフォトカソードは、電極キットの移動に応じて、フォトカソード受け部に追随して移動する、
上記(1)~(5)の何れか一つに記載の電子銃。
(7)フォトカソードホルダを含み、
フォトカソードホルダは、
フォトカソードを保持し、
フォトカソードに対して離間して配置され、光源からの光をフォトカソードに集光するレンズを含む、
上記(1)~(6)の何れか一つに記載の電子銃。
(8)電子銃用部品であって、
電子銃用部品は、
電極キットと、
電極キット駆動装置と、
を含み、
電極キットは、
フォトカソード受け部と、
フォトカソード受け部に対して離間して配置されたアノードと、
を含み、
電極キット駆動装置は、
一方の方向をX方向とし、X方向に直行する方向をY方向とし、X方向とY方向を含む平面をX-Y平面としたとき、
X-Y平面で電極キットを移動させる、
電子銃用部品。
(9)電極キット駆動装置は、ステージを含み、
アノードが、ステージに載置される、
上記(8)に記載の電子銃用部品。
(10)ステージは、
X方向に移動する第1ステージと、
Y方向に移動する第2ステージと、
を含む、
上記(9)に記載の電子銃用部品。
(11)電極キットは、フォトカソード受け部とアノードとの間に配置された中間電極を含む、
上記(8)~(10)の何れか一つに記載の電子銃用部品。
(12)上記(1)~(7)の何れか一つに記載の電子銃を含む電子線適用装置であって、
電子線適用装置が、
自由電子レーザー加速器、
電子顕微鏡、
電子線ホログラフィー装置、
電子線描画装置、
電子線回折装置、
電子線検査装置、
電子線金属積層造形装置、
電子線リソグラフィー装置、
電子線加工装置、
電子線硬化装置、
電子線滅菌装置、
電子線殺菌装置、
プラズマ発生装置、
原子状元素発生装置、
スピン偏極電子線発生装置、
カソードルミネッセンス装置、または、
逆光電子分光装置
である、
電子線適用装置。
(13)電子銃から射出される電子ビームの射出軸を電子線適用装置の電子光学系の光軸に位置合わせする位置合わせ方法であって、
電子銃は、
光源と、
フォトカソードと、
電極キットと、
電極キット駆動装置と、
を含み、
電極キットは、
フォトカソード受け部と、
フォトカソード受け部に対して離間して配置されたアノードと、
を含み、
電極キット駆動装置は、
一方の方向をX方向とし、X方向に直行する方向をY方向とし、X方向とY方向を含む平面をX-Y平面としたとき、
X-Y平面で電極キットを移動させ、
位置合わせ方法は、
フォトカソードに光源からの光を照射し、フォトカソードから電子ビームを射出させる電子ビーム射出工程と、
電子ビームを射出しながら、フォトカソードを載置した電極キットを、電極キット駆動装置により移動させて、電子ビームの射出軸と電子線適用装置の電子光学系の光軸とを位置合わせする電子ビーム射出軸調整工程と、
を含む、
位置合わせ方法。
(14)フォトカソードの光源からの照射位置が、X方向およびY方向に直行するZ方向から観て、フォトカソード受け部の中心と重なるように電極キットを移動させて、フォトカソードと電極キットを位置合わせするフォトカソード位置合わせ工程と、
フォトカソードをフォトカソード受け部に載置するフォトカソード載置工程と、
を更に含む、
上記(13)に記載の位置合わせ方法。
【発明の効果】
【0009】
相手側装置の電子光学系の光軸から外れた位置に電子銃を設置しても、電子ビームの射出軸の調整ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】Y方向から観た第1の実施形態に係る電子銃1Aの一例を模式的に示す図。
【
図2A】Z方向から観た第1の実施形態に係る電子銃1Aが具備する電極キット駆動装置5の一例を模式的に示す図。
【
図2B】駆動源から真空チャンバーCB内の動力伝達機構へ動力を伝達する一例を模式的に示す図。
【
図2C】Z方向から観た第1の実施形態に係る電子銃1Aが具備する電極キット駆動装置5の別の一例を模式的に示す図。
【
図3A】Y方向から観た第1の実施形態に係る電子銃1Aと相手側装置Eとの位置合わせにおける電子ビーム射出工程の一例を模式的に示す図。
【
図3B】Y方向から観た第1の実施形態に係る電子銃1Aと相手側装置Eとの位置合わせにおける電子ビーム射出軸調整工程の一例を模式的に示す図。
【
図4】Y方向から観た第2の実施形態に係る電子銃1Bの一例を模式的に示す図。
【
図5】第2の実施形態における中間電極の一例を模式的に示す図。
【
図7】Y方向から観た第3の実施形態に係る電子銃1Cの一例を模式的に示す図。
【
図8A】Y方向から観た第3の実施形態に係る電子銃1Cと相手側装置Eとの位置合わせ前の電子銃1Cと相手側装置Eを模式的に示す図。
【
図8B】Y方向から観た第3の実施形態に係る電子銃1Cと相手側装置Eとの位置合わせにおけるフォトカソード位置合わせ工程の一例を模式的に示す図。
【
図8C】Y方向から観た第3の実施形態に係る電子銃1Cと相手側装置Eとの位置合わせにおける電子ビーム射出工程の一例を模式的に示す図。
【
図8D】Y方向から観た第3の実施形態に係る電子銃1Cと相手側装置Eとの位置合わせにおける電子ビーム射出軸調整工程の一例を模式的に示す図。
【
図9】Y方向から観た第4の実施形態に係る電子銃1Dの一例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、電子銃、電子銃用部品、電子線適用装置、および位置合わせ方法について説明する。なお、本明細書において、同種の機能を有する部材には、同一または類似の符号が付されている。そして、同一または類似の符号の付された部材について、繰り返しとなる説明が省略される場合がある。
【0012】
また、図面において示す各構成の位置、大きさ、範囲などは、理解を容易とするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、本出願における開示は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0013】
(方向の定義)
本明細書において、X軸、Y軸、Z軸の3次元直交座標系において、フォトカソードから射出された電子ビームが進行する方向をZ方向と定義する。なお、Z方向は、例えば、鉛直下向き方向であるが、Z方向は、鉛直下向き方向に限定されない。
【0014】
(電子銃の第1の実施形態)
図1、2を参照して、第1の実施形態に係る電子銃1Aについて説明する。
図1は、Y方向から観た第1の実施形態に係る電子銃1Aの一例を模式的に示す図である。
図2Aは、Z方向から観た第1の実施形態に係る電子銃1Aの電極キット駆動装置5の一例を模式的に示す図である。
図2Bは、駆動源から真空チャンバーCB内の動力伝達機構へ動力を伝達する一例を模式的に示す図である。
図2Cは、Z方向から観た第1の実施形態に係る電子銃1Aの電極キット駆動装置5の別の一例を模式的に示す図である。
【0015】
第1の実施形態に係る電子銃1Aは、光源2、真空チャンバーCB、フォトカソード3、電極キット4、および電極キット駆動装置5を具備する。
【0016】
光源2は、フォトカソード3に励起光Lを照射することで、電子ビームBを射出できれば特に限定はない。光源2は、例えば、高出力(ワット級)、高周波数(数百MHz)、超短パルスレーザー光源、比較的安価なレーザーダイオード、LED等が挙げられる。照射する励起光は、パルス光、連続光の何れでもよく、目的に応じて適宜調整すればよい。
図1に示す例では、光源2は、真空チャンバーCB外に配置されている。代替的に、光源2を真空チャンバーCB内に配置しても構わない。
【0017】
真空チャンバーCBは、電子銃1Aにおいて、真空雰囲気を形成するための部材である。電子銃1Aの使用時において、真空チャンバーCBの内部の圧力は、例えば、10-5Pa以下に設定される。真空チャンバーCBの内部の圧力を低下させるためには、図示していない真空ポンプが用いられる。真空ポンプは、例えば、電子銃1Aとは別に用意され、配管を介して電子銃1Aに接続される。
【0018】
真空チャンバーCBの形状に特に限定はなく、真空チャンバーCBの形状は、例えば、円筒形状である。また、真空チャンバーCBの材質は、例えば、ステンレス、チタン、ミューメタル等の金属、ガラス、サファイア、セラミック等の非金属が挙げられる。
【0019】
フォトカソード3は、真空チャンバーCB内に配置されている。フォトカソード3は、光源2から照射される励起光Lの受光に応じて、電子ビームBを射出する。より具体的には、フォトカソード3中の電子は、励起光Lによって励起され、励起された電子が、フォトカソード3から射出される。射出した電子は、アノード42と(フォトカソード3を含む)カソードとによって生成される電界によって加速され、電子ビームBを形成する。
図1に示す例では、励起光Lが、フォトカソード3の背面側から照射されているが、代替的に、励起光Lが、フォトカソード3の正面側から照射されるようにしてもよい。なお、本明細書中における「フォトカソード」と「カソード」との記載に関し、電子ビームを射出するという意味で記載する場合には「フォトカソード」と記載し、「アノード」の対極との意味で記載する場合には「カソード」と記載することがある。符号に関しては、「フォトカソード」および「カソード」の何れに対しても「3」を用いる。
【0020】
フォトカソード3は、石英ガラスやサファイアガラス等の基板と、基板の第1面(アノード42側の面)に接着したフォトカソード膜で形成されている。フォトカソード膜を形成するためのフォトカソード材料は、励起光を照射することで電子ビームを射出できれば特に限定はなく、EA表面処理が必要な材料、EA表面処理が不要な材料等が挙げられる。EA表面処理が必要な材料としては、例えば、III-V族半導体材料、II-VI族半導体材料が挙げられる。具体的には、AlN、Ce2Te、GaN、1種類以上のアルカリ金属とSbの化合物、AlAs、GaP、GaAs、GaSb、InAs等およびそれらの混晶等が挙げられる。その他の例としては金属が挙げられ、具体的には、Mg、Cu、Nb、LaB6、SeB6、Ag等が挙げられる。前記フォトカソード材料をEA表面処理することでフォトカソード3を作製することができ、該フォトカソード3は、半導体のギャップエネルギーに応じた近紫外-赤外波長領域で励起光の選択が可能となるのみでなく、電子ビームの用途に応じた電子ビーム源性能(量子収量、耐久性、単色性、時間応答性、スピン偏極度)が半導体の材料や構造の選択により可能となる。
【0021】
また、EA表面処理が不要な材料としては、例えば、Cu、Mg、Sm、Tb、Y等の金属単体、或いは、合金、金属化合物、又は、ダイヤモンド、WBaO、Cs2Te等が挙げられる。EA表面処理が不要であるフォトカソードは、公知の方法(例えば、特許第3537779号等を参照)で作製すればよい。特許第3537779号に記載の内容は参照によりその全体が本明細書に含まれる。
【0022】
電極キット4は、真空チャンバーCB内に配置されている。第1の実施形態に係る電子銃1Aにおける電極キット4は、フォトカソード受け部41、アノード42、固定部材43を具備する。
【0023】
フォトカソード受け部41は、その上部に、フォトカソード3が載置される。フォトカソード受け部41の形状は、フォトカソード3を載置でき、かつフォトカソード3から射出される電子ビームBが通過する孔を具備していれば、特に限定はない。
【0024】
また、第1の実施形態に係る電子銃1Aは、フォトカソード3が載置されたフォトカソード受け部41とアノード42によって電界が生成される。そのため、フォトカソード受け部41を構成する材料は、導電体であることが好ましい。導電体としては、例えば、ステンレス等の公知の材料が挙げられる。
【0025】
アノード42は、カソード3と電界を形成できれば特に限定はなく、電子銃の分野において一般的に用いられているアノードを使用できる。
【0026】
固定部材43は、フォトカソード受け部41とアノード42とを離間して配置し、相対位置が不変となるように固定するものである。そのため、後掲する電極キット駆動装置5により、フォトカソード受け部41とアノード42は、一体的に真空チャンバーCB内を移動する。
【0027】
第1の実施形態に係る電子銃1Aでは、フォトカソード3が載置されたフォトカソード受け部41とアノード42によって電界が生成される。よって、カソード受け部41とアノード42が短絡しないように、固定部材43は絶縁材料で形成される。例えば、セラミック等の公知の絶縁材料が挙げられる。
【0028】
電極キット駆動装置5は、電極キット4をX-Y平面内で移動できれば特に限定はない。
図2Aに示す第1の実施形態に係る電子銃1Aの電極キット駆動装置5は、X方向駆動装置5X、Y方向駆動装置5Yを具備する。そして、X方向駆動装置5Xは、第1ステージ51X、第1駆動源52X、第1動力伝達機構53Xを具備し、Y方向駆動装置5Yは、第2ステージ51Y、第2駆動源52Y、第2動力伝達機構53Yを具備する。
【0029】
第1ステージ51Xおよび第2ステージ51Yは、真空チャンバーCB内に配置される。
図1、
図2Aに示す例では、第1ステージ51Xの上に第2ステージ51Yが載置され、第2ステージ51Yの上に電極キット4が載置されている。そして、第1ステージ51Xは、第2ステージ51Yおよび第2ステージ51Yに載置された電極キット4を、X方向に移動させる。また、第2ステージ51Yは、電極キット4をY方向に移動させる。このとき、第2ステージ51YがY方向に独立して移動できるよう、第1ステージ51Xと第2ステージ51Yとの間には、ガイド54が設けられている。ガイド54は、第2ステージ51YをY方向に独立して移動させることができれば、その形状、場所等に限定はない。
図1、
図2Aでは、第1ステージ51Xの2か所に溝と第2ステージ51Yの2か所に凸部が形成され、溝に凸部が嵌りY方向に摺動できる例を示している。なお、
図1、
図2Aに示す例では、第2ステージ51Yは、第1ステージ51Xの上に配置されているが、第1ステージ51Xと第2ステージ51Yの位置関係に限定はない。そのため、第1ステージ51Xが、第2ステージ52Yの上に配置されていてもよい。また、第1ステージ51Xに凸部が形成され、第2ステージ51Yに溝が形成されてもよい。
【0030】
第1ステージ51X、第2ステージ51Yの形状や材料は、電極キット4を載置でき、かつフォトカソード3から射出した電子ビームBの通過を阻害しなければ、特に限定はない。例えば、第1ステージ51X、第2ステージ51Yの材料としては、ステンレス等の金属や、セラミック等の非金属が挙げられる。第1ステージ51Xおよび第2ステージ51Yは、ガイドを設け摺動させるため、加工性の観点から金属であることが好ましい。また、第1ステージ51Xおよび第2ステージ51Yは、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等で表面処理されてもよい。表面処理により、摺動による摩擦が小さくなり、第1ステージ51X、第2ステージ51Yの移動の負荷を軽減できる。さらに、第1ステージ51Xと第2ステージ51Yの摺動により生じるガス等による真空チャンバーCB内の汚染を防ぐことができる。
【0031】
第1ステージ51X、第2ステージ51Yが金属によって形成されると、第1ステージ51X、第2ステージ51Yは、導電性を有することになる。一般に、電子銃において、カソード3とアノード42間に電位を印加する際、アノード42側が接地される。そのため、第1ステージ51X、第2ステージ51Yにアノード42が載置されると、第1ステージ51X、第2ステージ51Yは、電気的に安定することとなる。したがって、電極キット駆動装置5への電気的な影響を防ぐことができる。
【0032】
第1駆動源52X、第2駆動源52Yは、真空チャンバーCB外に配置される。第1駆動源52Xは第1ステージ51Xを移動させる動力を発生し、第2駆動源52Yは第2ステージ52Yを移動させる動力を発生するものである。動力は、第1動力伝達機構53Xを介して第1ステージ51Xを移動し、第2動力伝達機構53Yを介して第2ステージ52Yを移動させることができれば、特に限定はない。第1駆動源52X、第2駆動源52Yから発生させる動力は、自動で発生させてもよく、手動で発生させてもよい。動力を自動で発生させる駆動源としては、例えば、空圧式アクチュエーター、油圧式のアクチュエーター、電動アクチュエーター、ソレノイドアクチュエーター等のアクチュエーターが挙げられる。また、動力を手動で発生させる駆動源としては、例えば、ネジ機構を用いたものが挙げられる。
【0033】
第1駆動源52Xから真空チャンバーCB内の第1動力伝達機構53Xへの動力の伝達は、動力の伝達ができれば特に限定はない。例えば、
図2Bに示すように、孔無し壁55とベローズ等の伸縮部材56を用いて行うことが挙げられる。
図2Bに示す例では、伸縮部材56の一端は、孔無し壁55に固着される。他方、伸縮部材56の他端は、真空チャンバーCBに設けられる動力伝達機構の挿通孔を覆うように固着される。よって、伸縮部材56の内部は、孔無し壁55により真空チャンバーCBの真空が維持される。そして、第1駆動源52Xと第1動力伝達機構53Xは、孔無し壁55を介して接続される。第2駆動源52Yから第2動力伝達機構53Yへの動力の伝達は、第1駆動源52Xから第1動力伝達機構53Xへの動力の伝達と同様に行えばよい。
【0034】
第1動力伝達機構53Xは、第1駆動源52Xで発生した動力を第1ステージ51Xに伝達する。第2動力伝達機構53Yは、第2駆動源52Yで発生した動力を第2ステージ51Yに伝達する。第1動力伝達機構53X、第2動力伝達機構53Yは、それぞれ、動力を第1ステージ51X、第2ステージ51Yに伝達できれば、特に限定はない。第1動力伝達機構53X、第2動力伝達機構53Yとしては、例えば、シャフト、ギア機構、ネジ機構、リンク機構、クランク機構、または、ユニバーサルジョイント等のジョイント機構が挙げられる。
【0035】
図2Aに示す例では、第1ステージ51Xは第1動力伝達機構53Xに接続し、第2ステージ51Yは第2動力伝達機構53Yに接続している。そのため、
図2Aにおける第1ステージ51XのX方向への移動、第2ステージ51YのY方向への移動は、すべて第1駆動源52X、第2駆動源52Yの動力によって行われる。
【0036】
代替的に、図示はしていないが、電極キット駆動装置5は、第3駆動源および第3動力伝達機構と、第4駆動源および第4動力伝達機構を具備してもよい。第3駆動源および第3動力伝達機構は、第1ステージ51Xを介して第1駆動源52Xおよび第1動力伝達機構53Xに相対する位置に配置される。また、第4駆動源および第4動力伝達機構は、第2ステージ51Yを介して第2駆動源52Yおよび第2動力伝達機構53Yに相対する位置に配置される。その場合、第1動力伝達機構53Xおよび第3動力伝達機構は、第1ステージ51Xに接続していなくてもよい。第1動力伝達機構53Xまたは第3動力伝達機構に押し出されることで、第1ステージ51Xの移動が行われる。第2駆動源52Yおよび第2動力伝達機構53Yと、第4駆動源および第4動力伝達機構との関係は、第1駆動源52Xおよび第1動力伝達機構53Xと、第3駆動源および第3動力伝達機構と同じである。なお、第3駆動源および第4駆動源は、上記で説明済みの第1駆動源52X、第2駆動源52Yと同様なものを用いることができる。また、第3動力伝達機構および第4動力伝達機構も、上記で説明済みの第1動力伝達機構53Xおよび第2動力伝達機構53Yと同様なものを用いることができる。
【0037】
更に代替的に、
図2Cに示す例のように、電極キット駆動装置5は、第1反発部材57X、第2反発部材57Yを具備してもよい。
図2Cに示す例では、第1ステージ51Xは第1動力伝達機構53Xに接続しておらず、第2ステージ51Yは第2動力伝達機構53Yに接続していない。そのため、例えば、
図2Cに示す例では、第1ステージ51XのX
1方向への移動は、第1駆動源52Xからの動力によって行われる。他方、第1ステージ51XのX
2方向への移動は、第1駆動源52Xからの動力ではなく、第1反発部材57Xの弾性力により行われる。したがって、第1反発部材57Xと第1動力伝達機構53Xは、第1ステージ51Xを介して相対する位置に配置されることが望ましい。第1反発部材57Xは、第1ステージ51XをX
2方向に移動できれば特に限定はなく、例えば、コイルバネ、板バネ等が挙げられる。第2反発部材57Yと第2動力伝達機構53Yとの関係は、第1反発部材57Xと第1動力伝達機構53Xとの関係と同じである。
【0038】
なお、
図1および
図2A~
図2Cに示す第1の実施形態に係る電子銃1Aは、2つの駆動装置(X方向駆動装置5XおよびY方向駆動装置5Y)を用いて、電極キット4をX方向およびY方向に移動させている。代替的に、電極キット駆動装置5が、1つのステージに対し、2つの駆動源(X方向、Y方向)および2つの動力伝達機構(X方向、Y方向)を具備して、電極キット4をX-Y平面内で移動させてもよい。更に代替的に、電極キット駆動装置5が、1つまたは2つのステージに対し、1つの駆動源および1つの動力伝達機構を具備して、電極キット4をX-Y平面内で移動させてもよい。1つの動力伝達機構を用いる場合は、例えば、動力伝達機構にギア等を具備し、ステージをX方向またはY方向に切り替えて移動させるものが挙げられる。
【0039】
また、第1の実施形態に係る電子銃1Aは、図示していない2次元的な偏向によって軸合わせを行える偏向コイル、ビームデフレクター等を具備してもよい。電極キット駆動装置5と偏向コイル、ビームデフレクター等を組み合わせることで、電子ビームBの射出軸がX-Y平面に対して傾いている場合でも、電子ビームBの射出軸を相手側装置Eの電子光学系の光軸に位置合わせができる。
【0040】
(電子銃から射出される電子ビームの射出軸を電子線適用装置の電子光学系の光軸に位置合わせする位置合わせ方法の第1の実施形態)
図3Aおよび3Bを参照して、電子銃1Aから射出される電子ビームBの射出軸を電子線適用装置Eの電子光学系の光軸に位置合わせする位置合わせ方法(以下、「位置合わせ方法」と記載することがある。)の第1の実施形態について説明する。
図3Aは、電子銃1Aからの電子ビームBの射出軸と相手側装置Eの電子光学系の光軸mとが、ずれている例を模式的に示す図である。
図3Bは、電子銃1Aからの電子ビームBの射出軸を相手側装置Eの電子光学系の光軸mに位置合わせした一例を模式的に示す図である。
【0041】
第1の実施形態に係る位置合わせ方法は、(1)フォトカソード3に光源2からの光を照射し、フォトカソード3から電子ビームBを射出させる電子ビーム射出工程と、(2)電子ビームBを射出しながら、フォトカソード3を載置した電極キット4を、電極キット駆動装置5により移動させて、電子ビームBの射出軸と電子線適用装置の電子光学系の光軸mとを位置合わせする電子ビーム射出軸調整工程と、を有している。
【0042】
電子ビーム射出工程は、電極キット4のフォトカソード受け部41に載置されたフォトカソード3に、光源2からの励起光Lを照射して、フォトカソード3から電子ビームBを射出させる。この時、電子銃1Aが相手側装置Eに対し正しい位置に設置されていれば、相手側装置Eにおいて、電子銃1Aからの電子ビームBを検出できる。しかしながら、
図3Aに示すように、電子銃1Aの相手側装置Eへの設置位置がずれている場合、電子ビームBは、相手側装置Eでは検出されない。或いは、少しずれた場合、電子ビームの検出量が少なくなる。
【0043】
電子ビーム射出工程の後に、電子ビーム射出軸調整工程が行われる。電子ビーム射出軸調整工程は、まず、電子ビームBを射出させながら、電極キット駆動装置5によって電極キット4をX-Y平面内で移動させる。電極キット4の移動により、相手側装置Eで電子ビームBを検出できるようになる(或いは、検出量が多くなる)。なお、この状態は、相手側装置Eの電子光学系に電子ビームBが入射したことを意味し、電子ビームBの射出軸と相手側装置Eの電子光学系の光軸mは合っていない。
【0044】
この時、フォトカソード3は、フォトカソード受け部41に載置されているので、フォトカソード3も電極キット4と一緒に移動する。また、電極キット4が移動しても、フォトカソード3に励起光Lを照射できるように、光源2は電極キット4の移動に応じて移動できる。例えば、光源2に移動装置を設け、電極キット駆動装置5が移動した距離に応じて、光源2を移動させればよい。
【0045】
相手側装置Eで電子ビームBが検出された後は、電子ビームBの射出軸と相手側装置Eの電子光学系の光軸mとの位置合わせを行う。位置合わせは、例えば、相手側装置Eで検出される電流値をモニタしながら、電極キット4をX方向および/またはY方向に移動する方法が挙げられる。より具体的には、相手側装置Eがアパーチャーを含むカラムを具備する場合、電子ビームBの射出軸と当該光軸mが合っていなければ、電子ビームBのうちアパーチャーに遮蔽される電子ビーム量が多くなるため、アパーチャーで検出される電流値が大きくなる。一方で、電子ビームBの射出軸と当該光軸mが合っていれば、電子ビームBのうちアパーチャーに遮蔽される電子ビーム量が少なくなるため、アパーチャーで検出される電流値が小さくなる。代替的に、相手側装置Eがファラデーカップを具備している場合、アパーチャーによる検出に換え、ファラデーカップで検出する電流値によりモニタしてもよい。電子ビームBの射出軸と当該光軸mが合っているほど、ファラデーカップで検出する電流値が大きくなる。更に代替的に、相手側装置Eでのモニタは、相手側装置Eに応じた装備で行ってもよい。例えば、電子顕微鏡であれば、電子顕微鏡像のコントラストや、非点収差でモニタしてもよい。
【0046】
従来、電子ビームBの射出軸と相手側装置Eの電子光学系の光軸mとの位置合わせは、電場や磁場を変化させて行われていた。その場合、電子ビームBの外側部分は、電場や磁場の影響による質の悪い電子ビームを含むことから相手側装置Eで使用することができない。しかしながら、第1の実施形態に係る位置合わせ方法は、電極キット4を機械的に移動させる。そのため、電場や磁場の影響を受けることがないため、電子ビームBの外側部分も相手側装置Eで使用することができる。したがって、電子ビームBの利用効率を従来よりも高くすることができる。よって、第1の実施形態に係る位置合わせ方法は、明るい像、高い解像度を得ることができる。
【0047】
第1の実施形態に係る電子銃1Aおよび位置合わせ方法は、以下の効果を奏する。
(1)第1の実施形態に係る電子銃1Aは、フォトカソード受け部41とアノード42が一体となった電極キット4を移動させる電極キット駆動装置5を具備する。そのため、相手側装置Eの電子光学系の光軸mから外れた位置に電子銃1Aが設置されても、電子ビームBの射出軸と相手側装置Eの電子光学系の光軸mとの調整ができる。
(2)電子ビームBの射出軸と相手側装置Eの電子光学系の光軸mとの位置合わせが機械的に行われるため、明るい像、高い解像度を得ることができる。
【0048】
(電子銃の第2の実施形態)
図4~6を参照して、第2の実施形態に係る電子銃1Bについて説明する。
図4は、Y方向から観た第2の実施形態に係る電子銃1Bの一例を模式的に示す図である。
図5は、中間電極の一例を模式的に示す図である。
図6は、焦点距離調整の一例を説明するための図である。
【0049】
第2の実施形態に係る電子銃1Bは、中間電極44を含む電極キット4を具備する点で第1の実施形態に係る電子銃1Aと異なり、その他の点は電子銃1Aと同じである。したがって、第2の実施形態に係る電子銃1Bでは、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第2の実施形態において明示的に説明されなかったとしても、第1の実施形態で説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。
【0050】
電子銃1を相手側装置Eに設置した際の調整は、上記した電子ビームBの射出軸と相手側装置の電子光学系の光軸mとの位置合わせに加えて、相手側装置Eの所望の位置で電子ビームBが焦点を結ぶように、焦点位置を合わせることも行われる。
【0051】
そこで、電子ビームBの焦点位置を合わせるために、第2の実施形態に係る電子銃1Bは、電極キット4が中間電極44を具備する。
【0052】
図4に示す例では、中間電極44は、電極キット4のフォトカソード受け部41とアノード42との間に配置され、固定部材43に固定される。そして、中間電極44は、フォトカソード3から射出された電子ビームBが通過する電子ビーム通過孔45を有している。中間電極44は、電子ビーム通過孔45を通過する際に電子ビームBの幅を変え、電子ビームBの焦点の距離を調節する機能を有している。なお、中間電極44は、フォトカソード受け部41とアノード42との間に配置されるのであれば、フォトカソード受け部41とアノード42との相対的な距離が可変となってもよい。
【0053】
中間電極44の電子ビーム通過孔45には、フォトカソード3とアノード42との間の電位差により形成される電界の影響を無視できるドリフトスペースが形成されている。そして、中間電極44には、フォトカソード3に印加される電圧よりも相対的にプラス、アノード42に印加される電圧よりも相対的にマイナスの電圧が印加される。
【0054】
図5Aは、カソード3、中間電極44、アノード42の概略断面図、
図5Bは
図5AのX-X’断面図、
図5Cは
図5AのY-Y’断面図である。
図5に示す例では、中間電極44は中空の円筒で形成されている。中間電極44は、内部にフォトカソード3から射出された電子ビームBが通過する電子ビーム通過孔45が形成され、電子ビーム通過孔45のフォトカソード3側には電子ビームの入口46、電子ビーム通過孔45のアノード42側には電子ビームの出口47が形成されている。カソード3とアノード42との間に電位差が生じるように電圧を印加し、中間電極44にも電圧を印加することで、
図5Aに示すように、カソード3と中間電極44との間、中間電極44とアノード42との間には、電界EFが発生する。
【0055】
発生した電界EFが空隙内の電子ビームBの運動に強く及ぼす影響の範囲は、空隙の開口部が円の場合、当該円を最大断面として含む球体である。したがって、
図5Bに示す電子ビームの入口46の直径をa、
図5Cに示す電子ビームの出口47の直径をb、電子ビーム通過孔45の中心軸方向の長さをDと規定した場合、D/(a/2+b/2)が1より大きい場合には、電子ビーム通過孔45内には、電界EFの影響を受けないドリフトスペース48が形成される。なお、本明細書において、「中心軸方向」とは、電子ビームの入口46の中心と電子ビームの出口47の中心とを結んだ方向を意味する。
【0056】
中間電極44を作製する材料は、導体であれば特に限定はなく、ステンレス・スチール(SUS)等の金属が挙げられる。
【0057】
図6は、焦点位置調整を行う一例を示すものであり、カソード3とアノード42に印加する電圧差は一定で、中間電極44に印加する電圧値を変化させることで、焦点位置を調整する例を示している。
図6A乃至6Cに示すように、カソード3の電圧を-50kV、アノード42の電圧を0kVに設定し、中間電極44には、
図6Aでは-20kV、
図6Bでは-30kV、
図6Cでは-40kVの電圧を印加したとする。そうすると、カソード3と中間電極44との間の電圧差は、
図6Aでは30kV、
図6Bでは20kV、
図6Cでは10kVとなる。つまり、中間電極44に印加する電圧を、カソード3の電圧に近い値にするほど、カソード3と中間電極44との間の電位差は小さくなる。そして、電位差が小さいほど、カソード3と中間電極44との間の等電位線の密度は小さくなることから、フォトカソード3から射出された電子ビームBは、
図6Aから
図6Cの順に、中間電極44に向けて広がりやすくなる。更に、中間電極44にはドリフトスペースが形成されていることから、広がりやすい電子ビームBは、ドリフトスペース内で更に広がる。
【0058】
一方、カソード3とアノード42との電位差は一定であることから、中間電極44とアノード42との間の電位差は、カソード3と中間電極44との間の電位差とは逆になる。つまり、
図6Aから
図6Cの順に、中間電極44とアノード42との間の電位差は大きくなることから、中間電極44とアノード42との間の等電位線の密度も大きくなる。更に、ドリフトスペースを出た後の電子ビームの幅は、
図6Aから
図6Cの順に大きくなることから、中間電極44を出た電子ビームBは、
図6Aと比較して
図6Cに示す例の方が収束され易い。つまり、中間電極44とアノード42との間の電位差が大きいほど、焦点位置Fを短焦点側に移動することができる。また、中間電極44の位置、大きさを変えることで焦点位置調整を行うことも可能である。中間電極44は、特許第6466020号公報により詳しく記載されており、特許第6466020号公報に記載事項は、本明細書に含まれる。
【0059】
(位置合わせ方法の第2の実施形態)
第2の実施形態に係る位置合わせ方法について説明する。第2の実施形態に係る位置合わせ方法は、電極キット4が中間電極44を具備する電子銃1Bにより位置合わせする点で第1の実施形態に係る位置合わせ方法と異なり、その他の点は第1の実施形態に係る位置合わせ方法と同じである。したがって、第2の実施形態に係る位置合わせ方法では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第2の実施形態に係る位置合わせ方法の実施形態において明示的に説明されなかったとしても、第1の実施形態で説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。
【0060】
電子銃1Bが具備する中間電極44は、固定部材43に配置されている。そのため、中間電極44は、電極キット駆動装置5により、フォトカソード受け部41とアノード42と一緒に移動する。したがって、上記した第1の実施形態に係る位置合わせ方法と同様な工程で、電子銃1Bからの電子ビームBの射出軸と相手側装置Eの電子光学系の光軸mとの位置合わせができる。
【0061】
また、第2の実施形態に係る位置合わせ方法は、電子ビームの焦点位置を調整する焦点位置調整工程を有する。焦点位置調整工程は、電子ビーム射出軸調整工程の後に行われる。焦点位置調整工程は、上記で説明したように、中間電極44に電位を印加することで、電子ビームBの焦点位置を所望な位置に合わせられる。
【0062】
第2の実施形態に係る電子銃1Bおよび位置合わせ方法は、第1の実施形態に係る電子銃1Aおよび位置合わせ方法が奏する効果に加え、以下の効果を相乗的に奏する。
(1)第2の実施形態に係る電子銃1Bは、中間電極44を具備する。したがって、電子銃を相手側装置に設置した後であっても、電子ビームの焦点位置を、短焦点側および長焦点側の何れの方向にも調整できる。
【0063】
(電子銃の第3の実施形態)
図7を参照して、第3の実施形態に係る電子銃1Cについて説明する。
図7は、Y方向から観た第3の実施形態に係る電子銃1Cの一例を模式的に示す図である。
【0064】
第3の実施形態に係る電子銃1Cは、フォトカソード駆動装置7を必須の構成要素とし、任意付加的にフォトカソードホルダ6を更に具備する点で第1の実施形態に係る電子銃1Aと異なり、その他の点は第1の実施形態と同じである。したがって、第3の実施形態に係る電子銃1Cでは、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第3の実施形態において明示的に説明されなかったとしても、第3の実施形態において、第1の実施形態で説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。また、
図7に示す例は、第1の実施形態を参照して説明をしているが、第3の実施形態は、第2の実施形態で説明済みの事項も採用可能であることは言うまでもない。
【0065】
第3の実施形態に係る電子銃1Cにおいて、フォトカソードホルダ6は、任意付加的な構成要素である。フォトカソード3は、後掲するフォトカソード駆動装置7によってZ方向に移動するものであればよく、フォトカソード3が、フォトカソード駆動装置7に直接保持されてもよい。
【0066】
フォトカソードホルダ6は、真空チャンバーCB内に配置され、フォトカソード3を保持する。フォトカソードホルダ6は、フォトカソード3を保持したまま、電極キット4のフォトカソード受け部41にフォトカソード3を載置する。
【0067】
なお、フォトカソードホルダ6の材料に特に限定はないが、例えば、モリブデン、チタン、タンタル、ステンレス等が挙げられる。
【0068】
フォトカソード駆動装置7は、フォトカソードホルダ6が取り付けられる。そして、フォトカソードホルダ6およびフォトカソード3をZ方向に移動させる。フォトカソード駆動装置7は、第5駆動源71、第5動力伝達機構72、押圧部材73を具備する。
【0069】
第5駆動源71は、フォトカソードホルダ6およびフォトカソード3をZ方向に移動させる動力を発生する。動力は、第5動力伝達機構72を介してフォトカソードホルダ6およびフォトカソード3を移動できれば、特に限定はない。上記第1の実施形態で説明済みの第1駆動源52X、第2駆動源52Yと同様なものを用いることができる。
【0070】
第5動力伝達機構72は、第5駆動源71で発生した動力をフォトカソードホルダ6およびフォトカソード3に伝達する。第5動力伝達機構72は、動力をフォトカソードホルダ6およびフォトカソード3に伝達できれば、特に限定はない。上記第1の実施形態で説明済みの第1動力伝達機構53X、第2動力伝達機構53Yと同様なものを用いることができる。
【0071】
押圧部材73は、フォトカソードホルダ6およびフォトカソード3をZ方向に押圧するものである。第3の実施形態に係る電子銃1Cでは、フォトカソードとフォトカソード受け部41がカソード3として機能する。そのため、フォトカソード3は、フォトカソード受け部41と確実に接触することが望ましい。押圧部材73はフォトカソードホルダ6とフォトカソード3をZ方向下側に押圧することから、フォトカソード3とフォトカソード受け部41との接触を確実に行うことができる。
【0072】
なお、押圧部材73は、押圧によりフォトカソード3とフォトカソード受け部41とを接触させるのみでなく、電極キット4の移動に応じて、フォトカソード3をフォトカソード受け部41に追随できるようにすることが好ましい。限定するものではないが、押圧部材73は、バネ状や棒状等の形状で、金属やエラストマー等の材料からなるものが挙げられる。
【0073】
(位置合わせ方法の第3の実施形態)
図8A~8Dを参照して、第3の実施形態に係る位置合わせ方法について説明する。
図8Aは、フォトカソード3の中心軸oとフォトカソード受け部41の中心軸nとが、ずれている一例を模式的に示す図である。
図8Bは、フォトカソード受け部41の中心軸nをフォトカソード3の中心軸oに位置合わせした一例を模式的に示す図である。
図8Cは、フォトカソード受け部41の中心軸nとフォトカソード3の中心軸oとの位置合わせ後に、フォトカソード3をフォトカソード受け部41に載置し、電子ビームBを射出した一例を模式的に示す図である。
図8Dは、電子銃1Cからの電子ビームBの射出軸を相手側装置Eの電子光学系の光軸mに位置合わせした一例を模式的に示す図である。
【0074】
第3の実施形態に係る位置合わせ方法は、フォトカソードホルダ6とフォトカソード駆動装置7を具備した電子銃1Cで位置合わせを行う点で第1の実施形態に係る位置合わせ方法と異なり、その他の点は第1の実施形態に係る位置合わせ方法と同じである。したがって、第3の実施形態に係る位置合わせ方法では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第3の実施形態において明示的に説明されなかったとしても、第3の実施形態において、第1の実施形態で説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。また、
図8A~8Dに示す例は、第1の実施形態を参照して説明をしているが、第3の実施形態は、第2の実施形態で説明済みの事項も採用可能であることは言うまでもない。
【0075】
電子銃1を相手側装置Eに設置する際、相手側装置Eの電子光学系の光軸mとの位置合わせに加え、フォトカソード3の載置位置の調整が必要な場合もある。また、電子銃1Cは、フォトカソード3の交換、EA表面の再処理を行った際は、フォトカソード3の位置調整が必要な場合もある。
【0076】
第3の実施形態に係る位置合わせ方法は、上記第1の実施形態に係る位置合わせ方法で説明した(1)電子ビーム射出工程、(2)電子ビーム射出軸調整工程に加えて、(3)フォトカソード3の光源2からの照射位置が、Z方向から観て、フォトカソード受け部41の中心と重なるように電極キット4を移動させて、フォトカソード3と電極キット4を位置合わせするフォトカソード位置合わせ工程と、(4)フォトカソード3をフォトカソード受け部41に載置するフォトカソード載置工程と、を有している。
【0077】
そして、第3の実施形態に係る位置合わせ方法は、(3)フォトカソード位置合わせ工程、(4)フォトカソード載置工程、(1)電子ビーム射出工程、(2)電子ビーム射出軸調整工程の順に行われる。
【0078】
フォトカソード位置合わせ工程は、光源2からの照射位置であるフォトカソード3の中心とフォトカソード受け部41の中心軸nとを合わせる工程である。
図8Aに示す例では、フォトカソード3の中心軸oとフォトカソード受け部41の中心軸nがずれている。この時、フォトカソード3は、フォトカソードホルダ6に保持されて、Z方向上側にあり、電極キット4のフォトカソード受け部41には載置されていない。
【0079】
フォトカソード駆動装置7はZ方向にしか移動しない。そのため、フォトカソード3の中心軸oとフォトカソード受け部41の中心軸nとの位置合わせは、フォトカソード3の中心軸oに対し、電極キット4をX-Y平面で移動させて行われる。
【0080】
フォトカソード受け部41の中心軸nがフォトカソード3の中心軸oと重なったかどうかは、例えば、第1ステージ51XよりもZ方向下側に配置された図示していないカメラ等の撮像装置でモニタしながら行われる。
【0081】
図8Bは、フォトカソード位置合わせ工程が行われた電子銃1Cの一例を示している。すなわち、フォトカソード3の中心軸oとフォトカソード受け部41の中心軸nが合っている状態を示す。
【0082】
フォトカソード位置合わせ工程は、電子銃1Cを相手側装置Eに設置する前に行ってもよいし、相手側装置Eに設置した後に行ってもよい。
図8Aおよび
図8Bには、相手側装置Eに設置した後にフォトカソード位置合わせ工程を行う例が示されている。電子銃1Cを相手側装置Eに設置した後にフォトカソード位置合わせ工程を行う場合は、撮像装置は、真空チャンバーCB内に具備される。また、相手側装置Eに設置する前にフォトカソード位置合わせ工程を行う場合には、真空チャンバーCB内に撮像装置を具備してもよいが、代替的に撮像装置を具備せずに、真空チャンバーCBの外に撮像装置を配置してモニタしてもよい。
【0083】
フォトカソード載置工程は、フォトカソード3をフォトカソード受け部41に載置する工程である。第3の実施形態に係る位置合わせ方法では、フォトカソード駆動装置7によりフォトカソードホルダ6およびフォトカソード3をZ方向下側へ移動させる。既にフォトカソード3の中心軸oとフォトカソード受け部41の中心軸nは合っている。したがって、フォトカソードホルダ6およびフォトカソード3を移動させるのみで、フォトカソード3をフォトカソード受け部41の中心に載置できる。また、その際、フォトカソード3は、押圧部材73に押圧されて、フォトカソード受け部41に接触する。
【0084】
また、フォトカソード3のZ方向下側への移動により、フォトカソード3の中心軸oがフォトカソード受け部41の中心軸nとずれないように、フォトカソード受け部41は図示しないガイドを具備してもよい。ガイドは、フォトカソード3がZ方向下側へ移動することで、フォトカソード3の中心軸oとフォトカソード受け部41の中心軸nとを合わすことができればよい。ガイドの例としては、Z方向上側が広がるテーパー形状としたものが挙げられる。
【0085】
次に、電子ビーム射出工程が行われる。
図8Cには、フォトカソード載置工程後、光源2から励起光Lをフォトカソード3に照射して、電子ビームBを射出した例が示されている。
【0086】
電子ビーム射出工程が行われた後に、電子ビーム射出軸調整工程を行う。電子ビーム射出軸調整工程は上記第1の実施形態に係る位置合わせで説明したため、電子ビームBの射出軸と相手側装置Eの電子光学系の光軸mとの位置合わせについては省略する。第3の実施形態に係る位置合わせ方法は、電子銃1Cで行われる。電子銃1Cにおけるフォトカソード3は、押圧部材73により押圧された状態でフォトカソード受け部41に載置されている。
【0087】
電子ビーム射出軸調整工程において、フォトカソード3は、電子ビームBを射出しながら電極キット4の移動に追随する必要がある。そのため、第3の実施形態に係る電子銃1Cの押圧部材73は、フォトカソード3およびフォトカソードホルダ6をZ方向下側に押圧し、かつ、フォトカソード3を電極キット4の移動に追随させるものが好ましい。
図7および
図8A~8Dに示す例では、バネ状の押圧部材73を用いている。したがって、押圧部材73は、Z方向に収縮した状態でも、X-Y平面内の移動も可能である。よって、フォトカソード3は、フォトカソード受け部41に載置された状態で、電極キット4の移動に追随できる。
【0088】
また、第3の実施形態に係る電子銃1Cにおいて、フォトカソード3の交換やEA表面の再処理が行われる際、フォトカソード3は、フォトカソード駆動装置7によりZ方向上側へ移動する。そうすると、電子ビーム射出軸調整工程で、電極キット4の移動に追随したフォトカソード3は、元の位置に戻ってしまう。すなわち、フォトカソード3の中心軸oとフォトカソード受け部41の中心軸nとがずれた状態となる。したがって、電子ビームBが相手側装置Eで検出されるように、フォトカソード位置合わせ工程からの各工程が再度行われる。その際、再度のフォトカソード位置合わせ工程において、真空チャンバーCB内に撮像装置を具備している場合には、撮像装置でモニタしながら位置合わせを行えばよい。一方で、真空チャンバーCB内に撮像装置を具備していない場合には、最初のフォトカソード位置合わせ工程時に、電極キット駆動装置5によって位置合わせした位置を記憶しておけばよい。例えば、電極キット駆動装置5の駆動を自動で行う場合には、電子銃1Cが図示していない記憶部を具備し、記憶部に当該位置を記憶させてもよい。また、電極キット駆動装置5の駆動を手動で行う場合は、移動量を目盛り等により読み取り記憶(記録)してもよい。
【0089】
第3の実施形態に係る電子銃1Cおよび位置合わせ方法は、第1および第2の実施形態に係る電子銃1A、1Bおよび位置合わせ方法が奏する効果に加え、以下の効果を相乗的に奏する。
(1)電極キット駆動装置5を具備するため、フォトカソード3と電極キット4との位置合わせができる。
(2)フォトカソード駆動装置7が押圧部材73を具備するため、フォトカソード3をフォトカソード受け部41に確実に接触させて載置できる。
(3)Z方向にフォトカソード3を押圧した状態で、フォトカソード3は電極キット4の移動に追随できる。したがって、電子ビームBの射出を維持しながら、電子ビームBの射出軸と相手側装置Eの電子光学系の光軸mの位置合わせができる。
【0090】
(電子銃の第4の実施形態)
図9を参照して、第4の実施形態に係る電子銃1Dについて説明する。
図9は、Y方向から観た第4の実施形態に係る電子銃1Dの一例を模式的に示す図である。
【0091】
第4の実施形態に係る電子銃1Dは、レンズ62を含むフォトカソードホルダ6Aを更に具備する点で第3の実施形態に係る電子銃1Cと異なり、その他の点は第3の実施形態と同じである。したがって、第4の実施形態に係る電子銃1Dでは、第3の実施形態と異なる点を中心に説明し、第3の実施形態において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第4の実施形態において明示的に説明されなかったとしても、第4の実施形態において、第3の実施形態で説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。また、
図9に示す例は、第3の実施形態を参照して説明をしているが、第4の実施形態は、第1、2の実施形態で説明済みの事項も採用可能であることは言うまでもない。
【0092】
電子銃1のフォトカソード3への励起光Lの照射は、レンズを介して行われることもある。レンズは、光源2からの励起光Lをフォトカソード3へ収束させるものである。収束された励起光Lは、フォトカソード3で焦点を結び、フォトカソード3から電子ビームBが射出される。そのため、フォトカソード3を電子銃1に設置する際には、通常、レンズとの位置調整が必要となる。
【0093】
第4の実施形態に係る電子銃1Dは、レンズ61を含むフォトカソードホルダ6Aを具備する。レンズ61は、フォトカソード3に焦点が合う位置で、フォトカソードホルダ6Aに保持されている。
図9に示す例では、フォトカソード3とレンズ61との間にスペーサ62を設けた例を示している。なお、フォトカソードホルダ6Aの詳細は、特許第6679014号公報により詳しく記載されており、特許第6679014号公報に記載された事項は、本明細書に含まれる。
【0094】
したがって、フォトカソードホルダ6Aを励起光Lの光路上に配置することで、フォトカソード3とレンズ61の位置調整をすることなく、フォトカソード3にレンズ61の焦点を常に合わせられる。
【0095】
また、フォトカソードホルダ6Aによって、レンズ61の焦点は、フォトカソード3にあっている。そのため、励起光Lの光軸とフォトカソード3の中心とがずれていても、ずれが小さい場合には、当該ずれの影響を無視でき、フォトカソード3の中心から電子ビームBを射出できる。
【0096】
(位置合わせ方法の第4の実施形態)
第4の実施形態に係る位置合わせ方法について説明する。第4の実施形態に係る位置合わせ方法は、レンズ61を含むフォトカソードホルダ6Aを具備する電子銃1Dにより位置合わせする点で、第3の実施形態に係る位置合わせ方法と異なり、その他の点は第3の実施形態に係る位置合わせ方法と同じである。したがって、第4の実施形態に係る位置合わせ方法では、第3の実施形態と異なる点を中心に説明し、第3の実施形態において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第4の実施形態に係る位置合わせ方法の実施形態において明示的に説明されなかったとしても、第3の実施形態で説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。また、第4の実施形態は、第1、2の実施形態で説明済みの事項も採用可能であることは言うまでもない。
【0097】
図9に示す例では、フォトカソードホルダ6Aおよびフォトカソード3を押圧部材73で押圧している。そのため、電子ビームBの射出軸と相手側装置Eの電子光学系の光軸mを合わせる際、フォトカソード3は、電極キット4の移動に追随して移動できる。
【0098】
また、フォトカソード3を保持するフォトカソードホルダ6Aは、レンズ61を具備している。そのため、上記したように励起光Lの光軸とフォトカソード3の中心とのずれが小さい場合には、フォトカソード3の中心から電子ビームBを射出できる。したがって、電子ビームBの射出軸と相手側装置Eの電子光学系の光軸mを合わせる際、電極キット4の移動が小さければ、励起光Lの光軸とフォトカソード3の中心とのずれは小さいので、光源2を移動させずに電子ビームBを射出できる。なお、電子ビームBの射出軸と相手側装置Eの電子光学系の光軸mを合わせる際、電極キット4の移動が大きくなった場合には、必要に応じて光源2を移動させてもよい。
【0099】
第4の実施形態に係る電子銃1Dおよび位置合わせ方法は、第1~3の実施形態に係る電子銃1A~1Cおよび位置合わせ方法が奏する効果に加え、以下の効果を相乗的に奏する。
(1)フォトカソードホルダ6Aが、レンズ61を具備する。したがって、フォトカソード3とレンズ61の位置調整をすることなく、フォトカソード3にレンズ61の焦点を常に合わせられる。
(2)電極キット4の移動に追随してフォトカソード3が移動しても、レンズ61によって、励起光Lの焦点がフォトカソード3に合う。そのため、電極キット4の移動が小さい場合には、電極キット4の移動に応じて光源2を移動させなくてもよい。
【0100】
(電子銃用部品の実施形態)
上記の実施形態おける電子銃1A~1Dのうち、光源2、真空チャンバーCB、フォトカソード3、フォトカソードホルダ6、およびフォトカソード駆動装置7については、既存の電子銃の部品をそのまま使用できる。すなわち、上記の実施形態に係る電子銃1A~1Dにおいて、光源2、真空チャンバーCB、フォトカソード3、フォトカソードホルダ6、およびフォトカソード駆動装置7については既存の部品を使用し、電極キット4および電極キット駆動装置5については、部品として提供できる。
【0101】
(電子線適用装置の実施形態)
上記の実施形態における電子銃1A~1Dを搭載する相手側装置Eは、電子銃1A~1Dを搭載する公知の装置が挙げられる。例えば、自由電子レーザー加速器、電子顕微鏡、電子線ホログラフィー装置、電子線描画装置、電子線回折装置、電子線検査装置、電子線金属積層造形装置、電子線リソグラフィー装置、電子線加工装置、電子線硬化装置、電子線滅菌装置、電子線殺菌装置、プラズマ発生装置、原子状元素発生装置、スピン偏極電子線発生装置、カソードルミネッセンス装置、逆光電子分光装置等が挙げられる。
【0102】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されない。本発明の範囲内において、上述の各実施形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施形態の任意の構成要素の変形、または、任意の構成要素の省略が可能である。さらに、上述の各実施形態に任意の構成要素が追加されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本出願で開示する電子銃、電子銃用部品、および位置合わせ方法を用いると、電子銃を相手側装置の電子光学系の光軸の調整位置を外れた位置に設置しても、電子ビームの射出軸の調整ができる。したがって、電子銃を扱う業者にとって有用である。
【符号の説明】
【0104】
1、1A~1D…電子銃、2…光源、3…フォトカソード、4…電極キット、41…フォトカソード受け部、42…アノード、43…固定部材、44…中間電極、45…電子ビーム通過孔、46…入口、47…出口、48…ドリフトスペース、5…電極キット駆動装置、5X…X方向駆動装置、5Y…Y方向駆動装置、51X…第1ステージ、51Y…第2ステージ、52X…第1駆動源、52Y…第2駆動源、53X…第1動力伝達機構、53Y…第2動力伝達機構、54…ガイド、55…孔無し壁、56…伸縮部材、57X…第1反発部材、57Y…第2反発部材、6、6A…フォトカソードホルダ、61…レンズ、62…スペーサ、7…フォトカソード駆動装置、71…第5駆動源、72…第5動力伝達機構、73…押圧部材、B…電子ビーム、CB…真空チャンバー、E…相手側装置、L…励起光、m…相手側装置Eの電子光学系の光軸、n…フォトカソード受け部41の中心軸、o…フォトカソード3の中心軸
【手続補正書】
【提出日】2020-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子銃であって、
電子銃は、
光源と、
真空チャンバーと、
光源からの受光に応じて、電子ビームを射出するフォトカソードと、
電極キットと、
電極キット駆動装置と、
を含み、
電極キットは、
フォトカソード受け部と、
フォトカソード受け部に対して離間して配置されたアノードと、
を含み、
フォトカソード受け部にはフォトカソードが載置され、
電極キット駆動装置は、
一方の方向をX方向とし、X方向に直交する方向をY方向とし、X方向とY方向を含む平面をX-Y平面としたとき、
X-Y平面で電極キットを移動させる、
電子銃。
【請求項2】
真空チャンバー内に、
フォトカソードと、
電極キットと、
電極キット駆動装置の一部と、
が配置される、
請求項1に記載の電子銃。
【請求項3】
電極キット駆動装置は、ステージを含み、
アノードが、ステージに載置される、
請求項1または2に記載の電子銃。
【請求項4】
ステージは、
X方向に移動する第1ステージと、
Y方向に移動する第2ステージと、
を含む、
請求項3に記載の電子銃。
【請求項5】
電極キットは、フォトカソード受け部とアノードとの間に配置された中間電極を含む、
請求項1~4の何れか一項に記載の電子銃。
【請求項6】
フォトカソードをX方向およびY方向に直交するZ方向に移動させるフォトカソード駆動装置を含み、
フォトカソード駆動装置は、フォトカソードがフォトカソード受け部に載置された際、フォトカソード受け部にフォトカソードを押圧する押圧部材を含み、
押圧部材により押圧されたフォトカソードは、電極キットの移動に応じて、フォトカソード受け部に追随して移動する、
請求項1~5の何れか一項に記載の電子銃。
【請求項7】
フォトカソードホルダを含み、
フォトカソードホルダは、
フォトカソードを保持し、
フォトカソードに対して離間して配置され、光源からの光をフォトカソードに集光するレンズ
を含む、
請求項1~6の何れか一項に記載の電子銃。
【請求項8】
電子銃用部品であって、
電子銃用部品は、
電極キットと、
電極キット駆動装置と、
を含み、
電極キットは、
フォトカソード受け部と、
フォトカソード受け部に対して離間して配置されたアノードと、
を含み、
電極キット駆動装置は、
一方の方向をX方向とし、X方向に直交する方向をY方向とし、X方向とY方向を含む平面をX-Y平面としたとき、
X-Y平面で電極キットを移動させる、
電子銃用部品。
【請求項9】
電極キット駆動装置は、ステージを含み、
アノードが、ステージに載置される、
請求項8に記載の電子銃用部品。
【請求項10】
ステージは、
X方向に移動する第1ステージと、
Y方向に移動する第2ステージと、
を含む、
請求項9に記載の電子銃用部品。
【請求項11】
電極キットは、フォトカソード受け部とアノードとの間に配置された中間電極を含む、
請求項8~10の何れか一項に記載の電子銃用部品。
【請求項12】
請求項1~7の何れか一項に記載の電子銃を含む電子線適用装置であって、
電子線適用装置が、
自由電子レーザー加速器、
電子顕微鏡、
電子線ホログラフィー装置、
電子線描画装置、
電子線回折装置、
電子線検査装置、
電子線金属積層造形装置、
電子線リソグラフィー装置、
電子線加工装置、
電子線硬化装置、
電子線滅菌装置、
電子線殺菌装置、
プラズマ発生装置、
原子状元素発生装置、
スピン偏極電子線発生装置、
カソードルミネッセンス装置、または、
逆光電子分光装置
である、
電子線適用装置。
【請求項13】
電子銃から射出される電子ビームの射出軸を電子線適用装置の電子光学系の光軸に位置合わせする位置合わせ方法であって、
電子銃は、
光源と、
フォトカソードと、
電極キットと、
電極キット駆動装置と、
を含み、
電極キットは、
フォトカソード受け部と、
フォトカソード受け部に対して離間して配置されたアノードと、
を含み、
電極キット駆動装置は、
一方の方向をX方向とし、X方向に直交する方向をY方向とし、X方向とY方向を含む平面をX-Y平面としたとき、
X-Y平面で電極キットを移動させ、
位置合わせ方法は、
フォトカソードに光源からの光を照射し、フォトカソードから電子ビームを射出させる電子ビーム射出工程と、
電子ビームを射出しながら、フォトカソードを載置した電極キットを、電極キット駆動装置により移動させて、電子ビームの射出軸と電子線適用装置の電子光学系の光軸とを位置合わせする電子ビーム射出軸調整工程と、
を含む、
位置合わせ方法。
【請求項14】
フォトカソードの光源からの照射位置が、X方向およびY方向に直交するZ方向から観て、フォトカソード受け部の中心と重なるように電極キットを移動させて、フォトカソードと電極キットを位置合わせするフォトカソード位置合わせ工程と、
フォトカソードをフォトカソード受け部に載置するフォトカソード載置工程と、
を更に含む、
請求項13に記載の位置合わせ方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
(1)電子銃であって、
電子銃は、
光源と、
真空チャンバーと、
光源からの受光に応じて、電子ビームを射出するフォトカソードと、
電極キットと、
電極キット駆動装置と、
を含み、
電極キットは、
フォトカソード受け部と、
フォトカソード受け部に対して離間して配置されたアノードと、
を含み、
フォトカソード受け部にはフォトカソードが載置され、
電極キット駆動装置は、
一方の方向をX方向とし、X方向に直交する方向をY方向とし、X方向とY方向を含む平面をX-Y平面としたとき、
X-Y平面で電極キットを移動させる、
電子銃。
(2)真空チャンバー内に、
フォトカソードと、
電極キットと、
電極キット駆動装置の一部と、
が配置される、
上記(1)に記載の電子銃。
(3)電極キット駆動装置は、ステージを含み、
アノードが、ステージに載置される、
上記(1)または(2)に記載の電子銃。
(4)ステージは、
X方向に移動する第1ステージと、
Y方向に移動する第2ステージと、
を含む、
上記(3)に記載の電子銃。
(5)電極キットは、フォトカソード受け部とアノードとの間に配置された中間電極を含む、
上記(1)~(4)の何れか一つに記載の電子銃。
(6)フォトカソードをX方向およびY方向に直交するZ方向に移動させるフォトカソード駆動装置を含み、
フォトカソード駆動装置は、フォトカソードがフォトカソード受け部に載置された際、フォトカソード受け部にフォトカソードを押圧する押圧部材を含み、
押圧部材により押圧されたフォトカソードは、電極キットの移動に応じて、フォトカソード受け部に追随して移動する、
上記(1)~(5)の何れか一つに記載の電子銃。
(7)フォトカソードホルダを含み、
フォトカソードホルダは、
フォトカソードを保持し、
フォトカソードに対して離間して配置され、光源からの光をフォトカソードに集光するレンズを含む、
上記(1)~(6)の何れか一つに記載の電子銃。
(8)電子銃用部品であって、
電子銃用部品は、
電極キットと、
電極キット駆動装置と、
を含み、
電極キットは、
フォトカソード受け部と、
フォトカソード受け部に対して離間して配置されたアノードと、
を含み、
電極キット駆動装置は、
一方の方向をX方向とし、X方向に直交する方向をY方向とし、X方向とY方向を含む平面をX-Y平面としたとき、
X-Y平面で電極キットを移動させる、
電子銃用部品。
(9)電極キット駆動装置は、ステージを含み、
アノードが、ステージに載置される、
上記(8)に記載の電子銃用部品。
(10)ステージは、
X方向に移動する第1ステージと、
Y方向に移動する第2ステージと、
を含む、
上記(9)に記載の電子銃用部品。
(11)電極キットは、フォトカソード受け部とアノードとの間に配置された中間電極を含む、
上記(8)~(10)の何れか一つに記載の電子銃用部品。
(12)上記(1)~(7)の何れか一つに記載の電子銃を含む電子線適用装置であって、
電子線適用装置が、
自由電子レーザー加速器、
電子顕微鏡、
電子線ホログラフィー装置、
電子線描画装置、
電子線回折装置、
電子線検査装置、
電子線金属積層造形装置、
電子線リソグラフィー装置、
電子線加工装置、
電子線硬化装置、
電子線滅菌装置、
電子線殺菌装置、
プラズマ発生装置、
原子状元素発生装置、
スピン偏極電子線発生装置、
カソードルミネッセンス装置、または、
逆光電子分光装置
である、
電子線適用装置。
(13)電子銃から射出される電子ビームの射出軸を電子線適用装置の電子光学系の光軸に位置合わせする位置合わせ方法であって、
電子銃は、
光源と、
フォトカソードと、
電極キットと、
電極キット駆動装置と、
を含み、
電極キットは、
フォトカソード受け部と、
フォトカソード受け部に対して離間して配置されたアノードと、
を含み、
電極キット駆動装置は、
一方の方向をX方向とし、X方向に直交する方向をY方向とし、X方向とY方向を含む平面をX-Y平面としたとき、
X-Y平面で電極キットを移動させ、
位置合わせ方法は、
フォトカソードに光源からの光を照射し、フォトカソードから電子ビームを射出させる電子ビーム射出工程と、
電子ビームを射出しながら、フォトカソードを載置した電極キットを、電極キット駆動装置により移動させて、電子ビームの射出軸と電子線適用装置の電子光学系の光軸とを位置合わせする電子ビーム射出軸調整工程と、
を含む、
位置合わせ方法。
(14)フォトカソードの光源からの照射位置が、X方向およびY方向に直交するZ方向から観て、フォトカソード受け部の中心と重なるように電極キットを移動させて、フォトカソードと電極キットを位置合わせするフォトカソード位置合わせ工程と、
フォトカソードをフォトカソード受け部に載置するフォトカソード載置工程と、
を更に含む、
上記(13)に記載の位置合わせ方法。