(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045646
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】医療用テント
(51)【国際特許分類】
E04H 15/38 20060101AFI20220314BHJP
A61G 10/00 20060101ALI20220314BHJP
E04H 15/32 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
E04H15/38
A61G10/00 Z
A61G10/00 C
E04H15/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151344
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】501169017
【氏名又は名称】有限会社サンセイ工業
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】三宅 秀信
【テーマコード(参考)】
2E141
4C341
【Fターム(参考)】
2E141AA01
2E141BB01
2E141CC04
2E141DD02
2E141DD14
2E141DD25
2E141EE03
2E141EE26
2E141FF05
2E141GG01
2E141GG11
4C341KK05
4C341KL07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】場所を選ばずに検査や診察を簡単に行うことができるとともに、受診者と医療従事者との間の感染防止対策が十分にとられ、さらには、受診者同士の接触を極力低減させることが可能な医療用テントを提供する。
【解決手段】医療用テント1は、前方から後方に向かって順に所定の間隔をあけた第1~第4の門型フレーム4A~4Dを備える。各門型フレーム4A~4Dを接近離間可能に連結するリンク部材6を備える。第2及び第3の門型フレーム4B,4Cの内側領域を通過可能状態と通過不能状態とに切替可能な第2及び第3の前後仕切幕が、テント1の収容空間を前方から後方に向かって第1~第3エリアに仕切る。テント1の前面部10aには、受診者が第1エリアに入室する第1通用口が設けられ、テント1の後面部10bには、受診者が第3エリアから退出する第2通用口が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面部、後面部、左右一対の側面部及び屋根部が幕で覆われた医療用テントであって、
前記各側面部に立設された支柱部と、該両支柱部の上端側同士を連結する梁部とを備え、前方から後方に向かって順に所定の間隔をあけて並設された4つの第1、第2、第3及び第4の門型フレームと、
前記各門型フレームをそれぞれ接近離間可能に連結しており、前記各門型フレームを離間させることによりテントを伸長変形させて内部に収容空間を形成する一方、前記各門型フレームを接近させることによりテントを収縮変形させて収納可能状態にする複数のリンク部材と、
前記第2及び第3の門型フレームの内側領域を通過可能状態と通過不能状態とにそれぞれ切替可能に設けられ、テントを伸長変形させた状態で通過不能状態にすると、前記収容空間を前方から後方に向かって順に、第1エリア、第2エリア及び第3エリアに仕切る2つの前後仕切幕とを備え、
前記前面部には、受診者がテントの外側から前記第1エリアに入室可能な第1通用口が設けられ、前記後面部には、受診者が前記第3エリアからテントの外側に退室可能な第2通用口が設けられていることを特徴とする医療用テント。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用テントにおいて、
前記第1の門型フレームよりも前面側には、当該第1の門型フレームから所定の間隔をあけた位置に前記第1~第4の門型フレームと同じ形状をなす第5の門型フレームが設けられ、
前記前後仕切幕は、前記第5の門型フレームの内側領域にも設けられ、
前記第1及び第5の門型フレーム間には、対応する支柱部同士を連結する複数の第1連結フレームが設けられていることを特徴とする医療用テント。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の医療用テントにおいて、
前記第4の門型フレームよりも後面側には、当該第4の門型フレームから所定の間隔をあけた位置に前記第1~第4の門型フレームと同じ形状をなす第6の門型フレームが設けられ、
前記第4及び第6の門型フレーム間には、対応する支柱部同士を連結する複数の第2連結フレームが設けられていることを特徴とする医療用テント。
【請求項4】
請求項3に記載の医療用テントにおいて、
前記第1~第3、第6の門型フレームのうちの隣り合う2つの門型フレームの少なくとも一組の間に架設され、テントを伸長させた状態で前後方向に延びる姿勢に変更されて前記第1~第3エリアの少なくとも1つを左右の2つのスペースに仕切る一方、テントを収縮させた状態で左右方向に延びる姿勢に変更されるよう構成された左右仕切幕を備えていることを特徴とする医療用テント。
【請求項5】
請求項4に記載の医療用テントにおいて、
前記左右仕切幕は、前記第3及び第6の門型フレームの間に架設され、
前記後面部には、医療従事者がテントの外側と前記第3エリアの一方のスペースとの間を出入り可能な第3通用口が設けられ、
前記第2通用口は、前記後面部における前記第3エリアの他方のスペースに対応する位置に設けられていることを特徴とする医療用テント。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の医療用テントにおいて、
前記左右仕切幕は、前記第1及び第2の門型フレームの間、及び、前記第2及び第3の門型フレームの間にそれぞれ架設され、テントを伸長させた状態で前後方向に延びる姿勢に変更されて前記第1及び第2エリアをそれぞれ左右に位置する2つのスペースに仕切るとともに、前後方向における折り畳み動作と展延動作とにより前記2つのスペースを連通状態と非連通状態とに変更するよう構成されていることを特徴とする医療用テント。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1つに記載の医療用テントにおいて、
前記第1~第3、第6の門型フレームのうちの隣り合う2つの門型フレームの少なくとも一組における一方の梁部に設けられた左右方向にスライド可能なスライダと、
一端が前記スライダに水平方向に回動可能に軸支される一方、他端が前記第1~第3、第6の門型フレームのうちの隣り合う2つの門型フレームの少なくとも一組における他方の梁部に水平方向に回動可能に軸支された架設フレームと、を備え、
該架設フレームは、前記左右仕切幕を吊下げており、前記各門型フレームを接近させると、前記スライダの一方側へのスライド動作に連動して回動して左右方向に延びる姿勢となる一方、前記各門型フレームを離間させると、前記スライダの他方側へのスライド動作に連動して回動して前後方向に延びる姿勢となるよう構成されていることを特徴とする医療用テント。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の医療用テントにおいて、
前記各門型フレームの上方には、中途部が前記各門型フレームの前記梁部から上方に離間するとともに各端部が前記門型フレームの各支柱部上端に一体に固定された屋根支持用フレームが設けられ、
前記第1エリアにおける前記前面部側には、換気機器が設けられ、
前記第3エリアにおける前記後面部側には、空調機器が設けられていることを特徴とする医療用テント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受診者が検査や簡単な診察を受診する際には伸長させた状態にする一方、不使用時には収縮させることが可能な医療用テントに関し、特に、受診者同士の感染防止対策が取られた医療用テントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病院等の医療機関では、受診者から医療従事者への病原体の感染や、或いは、待合室等において待機する受診者から他の受診者への病原体の感染を避けるために、感染者と非感染者との間における接触を極力避けるようにすることが重要な課題となっている。しかし、多くの医療機関では、感染者を仕切るための十分なリソースや利用可能な空間等を有しておらず、苦慮しているのが現状である。
【0003】
これに対する応急的な対応の一例として、例えば、仮設設備や伸縮テントなどを駐車場等に設置することが一般的に知られている。
【0004】
医療用の仮設設備や伸縮テントとしては、例えば、特許文献1に開示されている患者隔離ユニットが知られている。該患者隔離ユニットは、感染している患者を収容して治療するためのものであり、折り畳み可能な枠体と、枠体を覆う被覆体と、室内の空気を排出する排気ユニットとを備え、この排気ユニットには、紫外線ランプ、フィルター及び送風機が設けられている。
【0005】
また、特許文献2に開示されている伸縮テントは、隔離が必要な患者のベッドを収納可能になっている。該伸縮テントは、空気ろ過システム及びドアアクチュエータ等を電気的に作動させることにより、患者をテント内に搬入する際に患者がドアに接触するのを防ぐだけでなく、ドアが開かれた状態で病原体がテント内に出入りすることがないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-141239号公報
【特許文献2】特開2020-5748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、感染力の強い病原体が流行すると、既往症を有する通院者や予防接種を受ける乳幼児等の医療機関を訪れる受診者が待合室等における他の受診者からの病原体の感染を恐れて本来受けるべき受診を躊躇してしまうことが一般的に知られている。したがって、病院等は、感染者や感染の可能性が高い患者の隔離を十分に行うだけでなく、病院等を訪れる受診者同士の接触防止対策も十分に行っていく必要がある。
【0008】
しかし、特許文献1や特許文献2の如き設備は、病原体に感染している患者や感染の可能性が高い患者を隔離するのには有効に機能する一方、例えば、病原体に感染しているか否かが不明であり、それを検査するために病院を訪れる複数の受診者を互いに接触させないようにするのには不十分である。
【0009】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、場所を選ばずに検査や診察を簡単に行うことができるとともに、受診者と医療従事者との間の感染防止対策が十分にとられ、さらには、受診者同士の接触を極力低減させることが可能な医療用テントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、テント全体を伸縮可能にするとともに、医療従事者が検査や診察を行う空間と受診者が待機する空間とを別々に設けるだけでなく、受診者同士が待機時に互いに接触しないよう工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0011】
具体的には、前面部、後面部、左右一対の側面部及び屋根部が幕で覆われた医療用テントを対象とし、次のような対策を講じた。
【0012】
すなわち、第1の発明では、前記各側面部に立設された支柱部と、該両支柱部の上端側同士を連結する梁部とを備え、前方から後方に向かって順に所定の間隔をあけて並設された4つの第1、第2、第3及び第4の門型フレームと、前記各門型フレームをそれぞれ接近離間可能に連結しており、前記各門型フレームを離間させることによりテントを伸長変形させて内部に収容空間を形成する一方、前記各門型フレームを接近させることによりテントを収縮変形させて収納可能状態にする複数のリンク部材と、前記第2及び第3の門型フレームの内側領域を通過可能状態と通過不能状態とにそれぞれ切替可能に設けられ、テントを伸長変形させた状態で通過不能状態にすると、前記収容空間を前方から後方に向かって順に、第1エリア、第2エリア及び第3エリアに仕切る2つの前後仕切幕とを備え、前記前面部には、受診者がテントの外側から前記第1エリアに入室可能な第1通用口が設けられ、前記後面部には、受診者が前記第3エリアからテントの外側に退室可能な第2通用口が設けられていることを特徴とする。
【0013】
第2の発明では、第1の発明において、前記第1の門型フレームよりも前面側には、当該第1の門型フレームから所定の間隔をあけた位置に前記第1~第4の門型フレームと同じ形状をなす第5の門型フレームが設けられ、前記前後仕切幕は、前記第5の門型フレームの内側領域にも設けられ、前記第1及び第5の門型フレーム間には、対応する支柱部同士を連結する複数の第1連結フレームが設けられていることを特徴とする。
【0014】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、前記第4の門型フレームよりも後面側には、当該第4の門型フレームから所定の間隔をあけた位置に前記第1~第4の門型フレームと同じ形状をなす第6の門型フレームが設けられ、前記第4及び第6の門型フレーム間には、対応する支柱部同士を連結する複数の第2連結フレームが設けられていることを特徴とする。
【0015】
第4の発明では、第3の発明において、前記第1~第3、第6の門型フレームのうちの隣り合う2つの門型フレームの少なくとも一組の間に架設され、テントを伸長させた状態で前後方向に延びる姿勢に変更されて前記第1~第3エリアの少なくとも1つを左右の2つのスペースに仕切る一方、テントを収縮させた状態で左右方向に延びる姿勢に変更されるよう構成された左右仕切幕を備えていることを特徴とする。
【0016】
第5の発明では、第4の発明において、前記左右仕切幕は、前記第3及び第6の門型フレームの間に架設され、前記後面部には、医療従事者がテントの外側と前記第3エリアの一方のスペースとの間を出入り可能な第3通用口が設けられ、前記第2通用口は、前記後面部における前記第3エリアの他方のスペースに対応する位置に設けられていることを特徴とする。
【0017】
第6の発明では、第4又は第5の発明において、前記左右仕切幕は、前記第1及び第2の門型フレームの間、及び、前記第2及び第3の門型フレームの間にそれぞれ架設され、テントを伸長させた状態で前後方向に延びる姿勢に変更されて前記第1及び第2エリアをそれぞれ左右に位置する2つのスペースに仕切るとともに、前後方向における折り畳み動作と展延動作とにより前記2つのスペースを連通状態と非連通状態とに変更するよう構成されていることを特徴とする。
【0018】
第7の発明では、第4から第6のいずれか1つの発明において、前記第1~第3、第6の門型フレームのうちの隣り合う2つの門型フレームの少なくとも一組における一方の梁部に設けられた左右方向にスライド可能なスライダと、一端が前記スライダに水平方向に回動可能に軸支される一方、他端が前記第1~第3、第6の門型フレームのうちの隣り合う2つの門型フレームの少なくとも一組における他方の梁部に水平方向に回動可能に軸支された架設フレームと、を備え、該架設フレームは、前記左右仕切幕を吊下げており、前記各門型フレームを接近させると、前記スライダの一方側へのスライド動作に連動して回動して左右方向に延びる姿勢となる一方、前記各門型フレームを離間させると、前記スライダの他方側へのスライド動作に連動して回動して前後方向に延びる姿勢となるよう構成されていることを特徴とする。
【0019】
第8の発明では、第1から第7のいずれか1つの発明において、前記各門型フレームの上方には、中途部が前記各門型フレームの前記梁部から上方に離間するとともに各端部が前記門型フレームの各支柱部上端に一体に固定された屋根支持用フレームが設けられ、前記第1エリアにおける前記前面部側には、換気機器が設けられ、前記第3エリアにおける前記後面部側には、空調機器が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明では、並設された各門型フレームの間を各リンク部材により広くすると、テントの内部に収容空間が形成されるので、当該収容空間を利用して医療従事者により検査や診察が可能になる一方、各門型フレームの間を各リンク部材により狭くすると、テント全体がコンパクトになって移動させ易くなる。したがって、使用時には場所を選ばずに医療行為を行うスペースを確保することができる一方、不使用時には収納することができるようになり、使い勝手の良い医療用テントにすることができる。また、使用時には、検査や診察を待機する受診者と医療従事者とが前後仕切幕で仕切られるだけでなく、待機する受診者同士も前後仕切幕で仕切られ、さらには、第1通用口からテント内に入る受診者は、第1エリア、第2エリアと順に通過した後、第3エリアで検査等を受けて第2通用口からテントの外側に出るようになり、受診者のテントの内側における移動が入室から退出まで一方通行になるので、テント内における他の受診者との接触の機会をほとんどなくすことができる。
【0021】
第2の発明では、第1及び第5の門型フレームの間において第1通用口に通じる第1エリアの一部領域に仕切られたスペースを設けるので、例えば、受診者が第1及び第2エリアで待機するのか、或いは、第3エリアまで直接進むのかを決めるまでに時間を要する際に、テントの外側では無く、その設けられたスペースにおいて待機することができる。また、第1連結フレームで第1の門型フレームと第5の門型フレームとを連結しているので、第1エリア周りの剛性が高くなり、テントの伸縮動作時における操作をさらに行い易くすることができる。
【0022】
第3の発明では、第4の門型フレームの後面部側に第6の門型フレームを配置し、さらには、第2連結フレームで第4の門型フレームと第6の門型フレームを連結しているので、第3エリア周りの剛性が高くなり、テントの伸縮動作時における操作を行い易くすることができる。
【0023】
第4の発明では、第3エリアの場合、検査等の際に左右仕切幕により医療従事者と受診者とを仕切ることができるので、医療従事者と受診者との間における病原体の感染を低減させることができる。また、第1及び第2エリアの場合、一方のスペースを受診者の待機室に、他方のスペースを受診者が隣のエリアに進むための通路にできるので、受診者が隣りのエリアに他の受診者が待機しているにもかかわらず入ってしまったとしても、他の受診者と接触する可能性をさらに低減させることができる。
【0024】
第5の発明では、左右仕切幕によって第3エリアにおける医療従事者の領域と受診者の領域とが仕切られるとともに、医療従事者の第3エリアに出入りする箇所が受診者が第3エリアからテントの外側に出る箇所とは別になるので、医療従事者と受診者との間の接触をさらに低減させることができる。
【0025】
第6の発明では、左右仕切幕によって第1及び第2エリアにおける受診者の待機室と通路とが仕切られるようになるとともに、待機室と通路とを連通状態と非連通状態とに切り替えるのが簡単になる。したがって、第1及び第2エリアにおける受診者同士の接触を極力減らすことができ、しかも、受診者の第1及び第2エリア内の移動を簡単に行えるようにすることができる。
【0026】
第7の発明では、各門型フレームを接近させると、各門型フレームを接近させる方向の力が架設フレームを他方の梁部を中心に一方側に回動させる方向に変換され、それに連動してスライダが左右方向の一方側にスライドして架設フレームの一端を左右方向の一方側に案内するようになるので、架設フレームを簡単に左右方向に延びる姿勢にすることができる。一方、各門型フレームを離間させると、各門型フレームを離間させる方向の力が架設フレームを他方の梁部を中心に他方側に回動させる方向に変換され、それに連動してスライダが左右方向の他方側にスライドして架設フレームの一端を左右方向の他方側に案内するようになるので、架設フレームを簡単に前後方向に延びる姿勢にすることができる。このように、テントを変形させる際に架設フレームの姿勢を簡単に変更させることができ、操作性に優れた医療用テントにすることができる。
【0027】
第8の発明では、テントの後面部側に位置する空調機器から出る空気が各門型フレームの上方に設けられた屋根裏空間を通過した後、テントの前面部側に位置する換気機器によって換気されるようになるので、テント内の温度調整や換気を効率良く行うことができ、医療従事者と受診者との間における感染や、或いは、受診者同士の感染のリスクを大幅に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態1に係る医療用テントの使用状態における概略斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線における断面図であり、テントを伸長変形させた状態を示す。
【
図5】本発明の実施形態2に係る
図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0030】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る医療用テント1を示す。該医療用テント1は、略直方体枠状をなす本体フレーム2と、該本体フレーム2を覆う布製又は樹脂製の覆い幕3とを備えている。
【0031】
該覆い幕3は、医療用テント1の前面部10a、後面部10b、左右一対の側面部10c及び屋根部10dをそれぞれ覆う、前面覆い幕3a、後面覆い幕3b、左側面覆い幕3c、右側面覆い幕3d及び上面覆い幕3eを備えていて、内部に収容空間Sが形成されている。尚、本発明では、
図1の紙面左側上部を医療用テント1の前側とする一方、
図1の紙面右側下部を医療用テント1の後側とし、
図1の紙面左側下部を医療用テント1の左側とする一方、
図1紙面右側上部を医療用テント1の右側とする。
【0032】
本体フレーム2は、
図2及び
図3に示すように、下方に開口する正面視でコ字状をなす6つのアルミニウム合金製の門型フレーム4を備え、該各門型フレーム4は、各側面部10cに立設された支柱部4aと、該両支柱部4aの上端側同士を連結する梁部4bとを有している。
【0033】
各門型フレーム4は、
図2及び
図3に示すように、前方から後方に向かって順に所定の間隔をあけて並設されていて、一番前側に位置する門型フレーム4は前面部10aに位置し、一番後側に位置する門型フレーム4は後面部10bに位置している。
【0034】
各門型フレーム4の上方には、正面視で幅広の略山形状をなすアルミニウム合金製の屋根支持用フレーム5がそれぞれ設けられ、該屋根支持用フレーム5は、中途部が門型フレーム4の梁部4bから上方に離間するとともに各端部が門型フレーム4の各支柱部4a上端に一体に固定されている。
【0035】
尚、以下では、便宜上、6つの門型フレーム4を医療用テント1の前側から後側にかけてそれぞれ順に、第5の門型フレーム4E、第1~第4の門型フレーム4A~4D及び第6の門型フレーム4Fと呼ぶことにする。
【0036】
第1及び第2の門型フレーム4A,4Bの間、第2及び第3の門型フレーム4B,4Cの間、及び、第3及び第4の門型フレーム4C,4Dの間には、互いに対応する支柱部4aを連結する側面視でX形状をなすリンク部材6がそれぞれ設けられている。
【0037】
該各リンク部材6は、第1~第4の門型フレーム4A~4Dを接近離間可能に連結しており、
図2に示すように、第1~第4の門型フレーム4A~4Dを離間させることにより医療用テント1を伸長変形させて内部に収容空間Sを形成する一方、
図3に示すように、第1~第4の門型フレーム4A~4Dを接近させることにより医療用テント1を収縮変形させて収納可能状態にするようになっている。
【0038】
各門型フレーム4の梁部4bは、
図4に示すように、下方に開口する断面略C字状をなすとともに左右方向に直線状に延びるカーテンレール4cと、該カーテンレール4cの上面に固定され、左右方向に直線状に延びる円筒部材7aとを備えている。
【0039】
第1~第3の門型フレーム4A~4Cの各カーテンレール4cには、
図1乃至
図3に示すように、第1~第3の前後仕切幕11a~11cがそれぞれ吊り下げられている。
【0040】
該第1~第3の前後仕切幕11a~11cは、布製又は樹脂製カーテンであり、その右側半分を左右方向の一方側に折り畳み可能である一方、左右方向の他方側に展延可能になっていて、左右方向における折り畳み動作及び展延動作により、第1~第3の門型フレーム4A~4Cの内側領域を通過可能な状態と通過不能な状態とにそれぞれ切替可能になっている。
【0041】
そして、第2及び第3の前後仕切幕11b,11cは、医療用テント1を伸長変形させた状態で通過不能状態にすると、収容空間Sを前方から後方に向かって順に、第1エリアS1、第2エリアS2及び第3エリアS3に仕切るようになっている。
【0042】
第1の前後仕切幕11aは、医療用テント1を伸長変形させた状態で通過不能状態にすると、第1エリアS1の一部領域を区切って前面部10aとの間に準備エリアS4を形成するようになっている。
【0043】
第1及び第2の門型フレーム4A,4Bの間には、仕切幕姿勢変更機構7Aが設けられている。
【0044】
該仕切幕姿勢変更機構7Aは、
図4に示すように、第2の門型フレーム4Bの円筒部材7aにおける左右方向中央部外周面に突設されたストッパ7bと、第2の門型フレーム4Bの円筒部材7aに外嵌合する断面略P字状をなすスライダ7cとを備えている。
【0045】
該スライダ7cは、円筒部材7aの一方の端部とストッパ7bとの間をスライド移動するようになっていて、ストッパ7bに接触すると円筒部材7aにおける中央位置に停止するようになっている。
【0046】
第1の門型フレーム4Aの円筒部材7aにおけるストッパ7bに対応する位置には、断面略P字状をなすブラケット7dが固定されている。
【0047】
スライダ7cとブラケット7dとの間には、細棒状をなす架設フレーム7eが配設されている。
【0048】
該架設フレーム7eの一端は、スライダ7cに水平方向に回動可能に軸支される一方、他端は、ブラケット7dに水平方向に回動可能に軸支されている。
【0049】
そして、架設フレーム7eは、第1及び第2の門型フレーム4A,4Bを接近させると、スライダ7cのカーテンレール4cの一方側へのスライド動作に連動して回動することにより左右方向に延びる姿勢となる一方、第1及び第2の門型フレーム4A,4Bを離間させると、スライダ7cのカーテンレール4cの他方側へのスライド動作に連動して回動するとともにスライダ7cがストッパ7bに接触することにより前後方向に延びる姿勢となるようになっている。
【0050】
第1及び第2の門型フレーム4A,4B間の架設フレーム7eには、布製又は樹脂製のカーテンである第1の左右仕切幕13Aが吊下げられている。
【0051】
該第1の左右仕切幕13Aは、架設フレーム7eに沿う方向の一側に折り畳み可能である一方、架設フレーム7eに沿う方向の他側に展延可能になっている。
【0052】
そして、第1の左右仕切幕13Aは、医療用テント1を伸長変形させて架設フレーム7eを前後方向に延びる姿勢にすると、前後方向に延びる姿勢に変更されて第1エリアS1をそれぞれ左右に位置する第1待機室Sa1と第1通路Sb1との2つのスペースに仕切るようになっている。
【0053】
また、第1の左右仕切幕13Aは、前後方向に延びる姿勢の状態で折り畳み動作と展延動作とをそれぞれ行うことにより、第1待機室Sa1と第1通路Sb1とを連通状態と非連通状態とに変更するようになっている。
【0054】
尚、第2及び第3の門型フレーム4B,4Cの間にも、仕切幕姿勢変更機構7Bが設けられているが、前後方向に延びる姿勢となった布製又は樹脂製のカーテンである第2の左右仕切幕13Bが第2エリアS2をそれぞれ左右に位置する第2待機室Sa2と第2通路Sb2との2つのスペースに仕切る点が仕切幕姿勢変更機構7Aと異なる以外は、仕切幕姿勢変更機構7Aと同じであるので、詳細な説明を割愛する。
【0055】
また、第3及び第6の門型フレーム4C,4Fの間にも、仕切幕姿勢変更機構7Cが設けられているが、前後方向に延びる姿勢となったロールカーテンである第3の左右仕切幕13Cが第3エリアS3をそれぞれ左右に位置する医療従事者側診察室Sa3と受診者側診察室Sb3との2つのスペースに仕切る点が仕切幕姿勢変更機構7A,7Bと異なる以外は、仕切幕姿勢変更機構7A,7Bと同じであるので、詳細な説明を割愛する。
【0056】
尚、第3の左右仕切幕13Cは、透明な樹脂製アクリル板などからなり、例えば、受診者の腰の高さなど、必要な高さまで下げられるようになっていて、医療従事者と受診者との接触を極力回避させるようになっている。第3の左右仕切幕13Cが不必要な場合には、上方に巻き取ることで速やかに医療従事者側診察室Sa3と受診者側診察室Sb3とを連通させることができる。
【0057】
第5の門型フレーム4Eのカーテンレール4cには、前側覆い幕3aが吊り下げられ、該前側覆い幕3aは、左右方向の一方側に折り畳み可能である一方、左右方向の他方側に展延可能になっている。
【0058】
そして、第5の門型フレーム4Eの内側領域が本発明の第1通用口R1を構成しており、前側覆い幕3aを左右方向の一方側に折り畳むと、受診者がテント1の外側から第1エリアS1(準備エリアS4)に入室可能となる一方、前側覆い幕3aを左右方向の他方側に展延すると、受診者がテント1の外側から第1エリアS1(準備エリアS4)に入室不可能となるようになっている。
【0059】
また、第6の門型フレーム4Fのカーテンレール4cには、後側覆い幕3bが吊下げられている。該後側覆い幕3bの右側半分は、左側に折り畳み可能である一方、右側に展延可能になっている。また、後側覆い幕3bの左側半分は、右側に折り畳み可能である一方、左側に展延可能になっている。
【0060】
そして、第6の門型フレーム4Fの右側半分の内側領域が本発明の第2通用口R2を構成しており、後側覆い幕3bの右側半分を左側に折り畳むと、受診者が受診者側診察室Sb3からテント1の外側に退室可能となる一方、後側覆い幕3bの右側半分を右側に展延すると、受診者が受診者側診察室Sb3からテント1の外側に退出不可となるようになっている。
【0061】
また、第6の門型フレーム4Fの左側半分の内側領域が本発明の第3通用口R3を構成しており、後側覆い幕3bの左側半分を右側に折り畳むと、医療従事者がテント1の外側と医療従事者側診察室Sa3との間を出入り可能となる一方、後側覆い幕3bの左側半分を左側に展延すると、医療従事者によるテント1の外側と医療従事者側診察室Sa3との間の出入りが不可となるようになっている。
【0062】
第1~第6の門型フレーム4A~4Fの各支柱部4aの下端には、上下方向に延びる回転軸心を中心として回転自在なキャスター14がそれぞれ取り付けられている。
【0063】
各キャスター14は、各門型フレーム4を接近又は離隔させる際、医療用テント1の設置面を転動するので、本体フレーム2をスムーズに変形させることができるようになっている。特に、第1~第6の門型フレーム4A~4Fのすべてにキャスター14が設けられているので、場所を選ぶことなく医療用テント1を簡単に移動させることができる。
【0064】
第1の門型フレーム4Aと第5の門型フレーム4Eとの間には、互いに対応する支柱部4a同士を連結する水平方向に延びる第1連結フレーム8が上下に所定の間隔をあけて複数設けられている。
【0065】
一方、第4の門型フレーム4Dと第6の門型フレーム4Fとの間には、互いに対応する支柱部4a同士を連結する水平方向に延びる第2連結フレーム9が上下に所定の間隔をあけて複数設けられている。
【0066】
本体フレーム2の後面部10b側には、収容空間Sの空調を制御する空調機器15が第4の門型フレーム4Dの一方の支柱部4aと第6の門型フレーム4Fの一方の支柱部4aとの間に固定されている。
【0067】
一方、本体フレーム2の前面部10a側には、収容空間Sの換気を行う、例えばファンからなる換気機器12が第5の門型フレーム4Eの上部に固定されている。尚、汚染空気が排出される可能性がある場合には、換気機器12に滅菌フィルター等を取り付けることが好ましい。
【0068】
各側面部10cの左側面覆い幕3c及び右側面覆い幕3dには、複数の窓16が設けられている。尚、窓16は、一般的なテントで設けられているような、例えば、網目状の生地で覆われた開口に、巻取り式の布製のカバー布が覆い被さるような構造になっている。
【0069】
次に、本発明の実施形態1の医療用テント1において医療従事者が受診者に対して医療行為を行う際について詳述する。尚、ここでいう医療行為とは、血液検査する行為、受診者の検体を採取する行為、点滴を行う行為、診察を行う行為、尿検査をする行為、予防注射をする行為などを含むものである。
【0070】
まず、各受診者は、医療用テント1の前面部10aを折り畳んで第1通用口R1から準備エリアS4に入室する。この準備エリアS4では、例えば、受診者が第1待機室Sa1又は第2待機室Sa2で待機するのか、或いは、受診者側診察室Sb3まで直接進むのかを決めるまでに時間を要する際に、テントの外側では無く、準備エリアS4において待機することができる。
【0071】
準備エリアS4に位置する受診者が第2待機室Sa2にて待機する場合、受診者は、第1の前後仕切幕11aの右側部分を折り畳んで準備エリアS4から第1通路Sb1に入った後、第2の前後仕切幕11bの右側部分を折り畳んで第1通路Sb1から第2通路Sb2に入り、その後、第2の左右仕切幕13Bを折り畳んで第2通路Sb2から第2待機室Sa2に入室した後、第2の左右仕切幕13Bを展延するとともに第2待機室Sa2にて待機する。第2待機室Sa2は、第2の前後仕切幕11b、第2の左右仕切幕13B、第3の前後仕切幕11c及び左側面多い幕3cで囲われるので他の受診者や医療従事者との接触を防ぐことができる。尚、準備エリアS4に位置する受診者が第1待機室Sa1にて待機する場合は、準備エリアS4から第1通路Sb1に入った後、第1の左右仕切幕13Aを折り畳んで第1通路Sb1から第1待機室Sa1に入室すればよい。
【0072】
第2待機室Sa2で待機する受診者が医療従事者の診察を受ける場合、第2の左右仕切幕13Bを折り畳んで第2待機室Sa2から第2通路Sb2に出た後、第3の前後仕切幕11cの右側部分を折り畳んで第2通路Sb2から受診者側診察室Sb3に入室する。そして、医療従事者側診察室Sa3に待機する医療従事者によって第3の左右仕切幕13C越しに医療行為を受けた後、医療用テント1の後面部10bの右側半分を折り畳んで第2通用口R2から医療用テント1の外側に退出する。
【0073】
もし仮に、受診者が第1待機室Sa1や第2待機室Sa2にて待機せずに準備エリアS4から受診者側診察室Sb3に直接向かう場合、受診者は、第1の前後仕切幕11aの右側部分を折り畳んで準備エリアS4から第1通路Sb1に入った後、第2の前後仕切幕11bの右側部分を折り畳んで第1通路Sb1から第2通路Sb2に入り、さらに、第3の前後仕切幕11cの右側部分を折り畳んで第2通路Sb2から受診者側診察室Sb3に入室して医療行為を受ける。
【0074】
このように、本発明の実施形態1によると、検査や診察を待機する受診者と医療従事者とが第3の前後仕切幕11cで仕切られるだけでなく、待機する受診者同士も第1及び第2の前後仕切幕11a,11bで仕切られ、さらには、第1通用口R1からテント1内に入る受診者は、第1エリアS1、第2エリアS2と順に通過した後、第3エリアS3で検査等を受けて第2通用口R2からテント1の外側に出るようになり、受診者のテント1の内側における移動が入室から退室まで一方通行になるので、テント1内における他の受診者との接触の機会をほとんどなくすことができる。
【0075】
また、第3エリアS3では、検査等の際に第3の左右仕切幕13Cにより医療従事者と受診者とを仕切ることができるので、医療従事者と受診者との間における病原体の感染を低減させることができる。
【0076】
さらに、第1エリアS1を第1待機室Sa1と第1通路Sb1との2つのスペースにし、第2エリアS2を第2待機室Sa2と第2通路Sb2との2つのスペースにしているので、受診者が隣りのエリアに他の受診者が待機しているにもかかわらず入ってしまったとしても、他の受診者と接触する可能性をさらに低減させることができる。
【0077】
また、第1の左右仕切幕13A及び第2の左右仕切幕13Bは、第1待機室Sa1と第1通路Sb1との間、及び、第2待機室Sa2と第2通路Sb2との間の連通状態と非連通状態との切り替えを簡単に行うことができるので、受診者の第1エリアS1及び第2エリアS2内の移動を簡単に行えるようにすることができる。
【0078】
また、第3の左右仕切幕13Cによって第3エリアS3における医療従事者側診察室Sa3と受診者側診察室Sb3とが仕切られるとともに、医療従事者は、医療従事者側診察室Sa3に直接連通する第3通用口R3を介して医療従事者側診察室Sa3に出入りするので、医療従事者の第3エリアS3に出入りする箇所が受診者が第3エリアS3からテント1の外側に出る箇所とは別になり、医療従事者と受診者との間の接触をさらに低減させることができる。
【0079】
尚、本発明の実施形態1では、第2の前後仕切幕11bを折り畳むことにより第1通路Sb1から第2通路Sb2に移動し、第3の前後仕切幕11cを折り畳むことにより第2通路Sb2から受診者側診察室Sb3に入室するようにしているが、第2の前後仕切幕11bの右側半分を折り畳んだ状態に維持したり、或いは、第3の前後仕切幕11cの右側半分を折り畳んだ状態に維持しておくようにしてもよい。
【0080】
次に、本発明の実施形態1の医療用テント1を所定の位置に設置する場合について詳述する。
【0081】
まず、医療従事者は、所定の位置において、収納可能状態である本体フレーム2の前面部10a側と後面部10b側とをそれぞれ把持して前面部10aと後面部10bとが離間するように力を加える。すると、各リンク部材6によって各門型フレーム4間が広くなり、収容空間Sが形成される。このとき、仕切幕姿勢変更機構7A~7Cにおいて、各門型フレーム4を離間させる方向の力がブラケット7dを中心に架設フレーム7eを回動させる方向に変換され、それに連動してスライダ7cがスライドして架設フレーム7eの一端を円筒部材7aの中央部分に案内する。すると、スライダ7cがストッパ7bに接触して架設フレーム7eが前後方向に延びる姿勢になり、それに伴って、第1~第3の左右仕切幕13A~13Cが第1~第3エリアS1~S3をそれぞれ2つのスペースに仕切るようになる。このように、形成した収容空間Sを利用して医療従事者により検査や診察が可能になり、場所を選ばずに医療行為を行うスペースを確保することができる。
【0082】
一方、医療用テント1を設置場所から撤収する場合、医療従事者は、本体フレーム2の前面部10a側と後面部10b側とをそれぞれ把持して前面部10aと後面部10bとが接近するように力を加える。すると、各リンク部材6によって各門型フレーム4間が狭くなり、テント1全体がコンパクトになって移動させ易くなる。したがって、不使用時には収納することができるようになり、使い勝手の良い医療用テント1にすることができる。このとき、仕切幕姿勢変更機構7A~7Cにおいて、各門型フレーム4を接近させる方向の力がブラケット7dを中心に架設フレーム7eを回動させる方向に変換され、それに連動してスライダ7cがスライドして架設フレーム7eの一端を円筒部材7aの一端側に案内する。すると、架設フレーム7eが左右方向に延びる姿勢になる。このように、テント1を変形させる際に架設フレーム7eの姿勢を簡単に変更させることができ、操作性に優れた医療用テント1にすることができる。
【0083】
本体フレーム2の前面部10a側は、複数の第1連結フレーム8で第1の門型フレーム4Aと第5の門型フレーム4Eとを連結しているので、第1エリアS1周りの剛性が高くなり、テント1の伸縮動作時における操作性が良くなっている。
【0084】
また、本体フレーム2の後面部10b側は、複数の第2連結フレーム9で第4の門型フレーム4Dと第6の門型フレーム4Fとを連結しているので、第3エリアS3周りの剛性が高くなり、テント1の伸縮動作時における操作性が良くなっている。
【0085】
さらに、各門型フレーム4の上方には、当該各門型フレーム4の梁部4bから離間する屋根支持用フレーム5が設けられ、且つ、第1エリアS1における前面部10a側には、換気機器12が、第3エリアS3における後面部10b側には、空調機器15が設けられているので、テント1の後面部10b側に位置する空調機器15から出る空気が各門型フレーム4の上方に設けられた屋根裏空間を通過した後、テント1の前面部10a側に位置する換気機器12によって換気されるようになり、テント1内の温度調整や換気を効率良く行うことができ、医療従事者と受診者との間における感染や、或いは、受診者同士の感染のリスクを大幅に低減させることができる。
【0086】
尚、本発明の実施形態1では、第1の門型フレーム4Aの前面部10a側に第5の門型フレーム4Eが設けられる一方、第4の門型フレーム4Dの後面部10b側に第6の門型フレーム4Fが設けられているが、これら第5及び第6の門型フレーム4E,4Fを省略した医療用テント1にしてもよい。そうすると、医療用テント1全体がコンパクトになり、医療用テント1を設置する場所が狭い場合に好適である。
【0087】
また、本発明の実施形態1では、第1~第3の左右仕切幕13A~13Bで第1~第3エリアS1~S2をそれぞれ左右の2つのスペースに仕切るようにしているが、3つのエリアS1~S3のうちの少なくとも1つのエリアを2つに仕切るようにすればよい。
【0088】
《発明の実施形態2》
実施形態2について、
図5に基づいて説明する。実施形態2では、実施形態1と異なる点のみの説明とし、他の説明を省略する。実施形態2の第1エリアS1及び第2エリアS2は、
図5に示すように、第1待機室Sa1,第2待機室Sa2をそれぞれ左右の両側に設け、両第1待機室Sa1の間、及び、両第2待機室Sa2の間に第1通路Sb1及び第2通路Sb2を設けている。これにより、受診者の待機する領域を多く確保することが可能になり、流行性の病気に対する検査や集団検査の場合には、有効である。
【0089】
《その他の実施形態》
実施形態1,2では、門型フレーム4を6つ設けたが、前後方向に長い設置場所を得られるのであれば、更に門型フレーム4を追加することにより、受診者が待機する領域を増やすようにしても良い。
【0090】
また、第3エリアS3を第1エリアS1や第2エリアS2よりも広く設計して医療従事者が診察等を行い易くなるようにしても良い。
【0091】
また、リンク部材6は、実施形態1,2の構造に限られるものではなく、各門型フレーム4の間を伸縮させること可能であるならば、他の構造であっても良い。
【0092】
また、架設フレーム7eが前後方向と左右方向とに向きを変える構造は、実施形態1,2の構造に限られるものではなく、同様な動きをするのであれば、他の構造であっても良い。
【0093】
また、実施形態1,2では、屋根支持用フレーム5を設けてテント1の上部に屋根裏スペースを設けているが、屋根支持用フレーム5を設けずにこの屋根裏スペースを省略することも可能である。
【0094】
また、実施形態1,2の空調機器15及び換気機器12は別の場所に設けても良い。また、これらの空調機器15及び換気機器12は、複数設置するようにしても良い。
【0095】
尚、本発明の医療用テント1は、屋外の駐車場だけでなく、病院内、体育館、イベント会場などの屋内でも使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、感染可能性のある検査や一度に多数の検査を行う、一度に多くの予防接種をする、集中診察等の医療行為を行う場合の一時的に使用する医療用テントに適している。
【符号の説明】
【0097】
1 医療用テント
4A~4F 第1~第6の門型フレーム
4a 支柱部
4b 梁部
5 屋根支持用フレーム
6 リンク部材
7c スライダ
7e 架設フレーム
8 第1連結フレーム
9 第2連結フレーム
10a 前面部
10b 後面部
10c 側面部
10d 屋根部
11a~11c 第1~第3の前後仕切幕
12 換気機器
13A~13C 第1~第3の左右仕切幕
15 空調機器
S1~S3 第1~第3エリア
S4 準備エリア
R1 第1通用口
R2 第2通用口
R3 第3通用口
Sa1 第1待機室
Sa2 第2待機室
Sa3 医療従事者側診察室
Sb1 第1通路
Sb2 第2通路
Sb3 受診者側診察室