(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045679
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】ファラデー素子、光変調器及び光通信装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/09 20060101AFI20220314BHJP
H04B 10/516 20130101ALI20220314BHJP
【FI】
G02F1/09 505
H04B10/516
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151389
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 隆史
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA27
2K102BA02
2K102BB05
2K102BC09
2K102BD01
2K102CA18
2K102DC08
2K102DD08
2K102EA01
2K102EA08
2K102EA21
2K102EB11
2K102EB16
2K102EB20
5K102AA61
5K102AH02
5K102AH21
5K102AH26
5K102PA01
5K102PB01
5K102PH01
5K102PH23
(57)【要約】
【課題】高周波数の信号であっても低損失で光信号の変調が行える。
【解決手段】実施形態のファラデー素子は、複数の非磁性体層と、前記非磁性体層に積層され、第1透磁率及び第1誘電率を有する一又は複数の磁性体薄膜層と、前記磁性体薄膜層に隣接あるいは内接して配置されて延在するとともに、前記第1透磁率と同じ透磁率を有し、前記第1誘電率と異なる第2誘電率を有する磁性体層と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の非磁性体層と、
前記非磁性体層に積層され、第1透磁率及び第1誘電率を有する一又は複数の磁性体薄膜層と、
前記磁性体薄膜層に隣接あるいは内接して配置されて延在するとともに、前記第1透磁率と同じ透磁率を有し、前記第1誘電率と異なる第2誘電率を有する磁性体層と、
を備えたファラデー素子。
【請求項2】
前記第2誘電率は、前記第1誘電率よりも高い、
請求項1に記載のファラデー素子。
【請求項3】
前記磁性体層の延在方向は、前記非磁性体層の積層方向と交差する方向である、
請求項1又は請求項2に記載のファラデー素子。
【請求項4】
前記磁性体薄膜層は、前記非磁性体層を介して互いに対向するように複数設けられ、
前記磁性体層は、いずれかの一つの前記磁性体薄膜層に隣接して配置されている、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のファラデー素子。
【請求項5】
前記磁性体薄膜層は、前記非磁性体層を介して互いに対向するように複数設けられ、
前記磁性体層は、複数の前記磁性体薄膜層を貫通するように一または複数設けられ、
さらに前記非磁性体層を貫通し、かつ、前記磁性体層に対向するように一または複数設けられた非磁性体層とを備え、
前記磁性体層及び前記非磁性体層は、協働して、光導波路を構成している、
請求項1又は請求項2記載のファラデー素子。
【請求項6】
前記磁性体薄膜層の層数は、ファラデー素子全体の透磁率に基づいて設定されている、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のファラデー素子。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のファラデー素子と、
前記ファラデー素子の周囲に巻回されたコイルと、
を備えた光変調器。
【請求項8】
前記コイルに変調信号を供給する信号発生装置を備えた、
請求項7記載の光変調器。
【請求項9】
前記信号発生装置は、アンテナ及び電流供給装置を備えている、
請求項8記載の光変調器。
【請求項10】
伝送用光を出射する光源と、
前記伝送用光が入射され、直線偏光を出射する偏光子と、
前記直線偏光が入射され、変調後の直線偏光を出射する請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の光変調器と、
前記変調後の直線偏光が入射される検光子と、
を備えた光通信装置。
【請求項11】
前記偏光子の前段及び前記検光子の後段に設けられたモードフィールド径変換機構を備えた、
請求項10記載の光通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、ファラデー素子、光変調器及び光通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気光学効果(ファラデー効果)を用いた変調器及びこの変調器を用いた光通信装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-146058号公報
【特許文献2】特開2002-202484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の技術においては、光が透過する部分がバルク構造となっている。YIGのような透明な磁性体を導波路にし、GHzオーダーの周波数の電場を印加した場合磁性体の透磁率は1となる。そのため高周波数の電気信号の変化には追随できず、光信号の変調は困難であった。
また、特許文献2記載の技術においては、磁性薄膜全体に光を通す構成となっており損失が非常に大きくなってしまうという虞があった。
そこで、本発明の目的は、高周波数の信号であっても低損失で光信号の変調が可能なファラデー素子、光変調器及び光通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のファラデー素子は、複数の非磁性体層と、前記非磁性体層に積層され、第1透磁率及び第1誘電率を有する一又は複数の磁性体薄膜層と、前記磁性体薄膜層に隣接あるいは内接して配置されて延在するとともに、前記第1透磁率と同じ透磁率を有し、前記第1誘電率と異なる第2誘電率を有する磁性体層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態の光変調器の原理説明図である。
【
図2】
図2は、ファラデー素子の構成説明図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の光通信装置の概要構成ブロック図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態の光通信装置の概要構成ブロック図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態の第1態様の光通信装置の概要構成ブロック図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態の第2態様の光通信装置の概要構成ブロック図である。
【
図7】
図7は、第4実施形態の光変調器の要部構成説明図である。
【
図8】
図8は、第4実施形態のファラデー素子の構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に好適な実施形態について図面を参照して説明する。
[1]原理説明
図1は、実施形態の光変調器の原理説明図である。
光変調器10は、直線偏光が入射されるファラデー素子11と、ファラデー素子11に巻回されたコイル12と、ファラデー素子11を通過した直線偏光を検出するための検光子13と、コイル12に電圧を印加し、ファラデー素子11に入射した直線偏光の偏向面を回転させる電圧信号源14と、を備えている。
【0008】
ここで、ファラデー素子の構成について説明する。
図2は、ファラデー素子の構成説明図である。
ファラデー素子11は、大別すると、非磁性体層15と、第1磁性体薄膜層16と、第2磁性体層17と、を備えている。
【0009】
ここで、非磁性体層15は、第1非磁性体層15-1~第4非磁性体層15-4を備えている。
また、第1磁性体薄膜層16は、三つの第1磁性体薄膜層16-1~16-3を備えている。
さらに第2磁性体層17は、第1磁性体薄膜層16-2に隣接あるいは内接して設けられている。ここで内接とは、第2磁性体層17が第1磁性体薄膜層16-2内に形成されていることをいう。
【0010】
この場合において、第2磁性体層17と第1磁性体薄膜層16とは、透磁率は、実効的に等しく(例えば、透磁率の差は1%以下)、誘電率が異なっている。より詳細には、第2磁性体層17の誘電率は、第1磁性体薄膜層16の誘電率よりも高くなるように材料が選択されている。
【0011】
実際の第1磁性体薄膜層16及び第2磁性体層17は、例えば、イットリウム鉄ガーネットYIGまたは希土類鉄ガーネット、またはBi置換ガーネットが用いられる。
この場合において、誘電率のみを変更する方法としては、例えば、以下の二通りが考えられる。
【0012】
第1の方法としては、光のとおるコア部分とそれ以外の磁性体部分について同じ材質を使用し、コア部分の作成時のみ圧力がかかるようにすることでコア部分の誘電率を高くする。
【0013】
第2の方法としては、第1磁性体薄膜層16及び第2磁性体層17の材料の一般式をR-IGで表した場合に、R部分の選択と、R部分の置換(Biなど)割合の調整などで透磁率と誘電率を調整し、透磁率の差をできるだけ小さくし、誘電率に差をつけるようにする。
【0014】
誘電率の具体的な設定例としては、コア部分である第2磁性体層17の誘電率を80とし、クラッド部分である第1磁性体薄膜層16の誘電率を11.3とする。
実際には、用途に合わせて誘電率の比が設定される。基本的には、損失を抑えるために非磁性の導波路に比べ屈折率差を小さく設計する。
【0015】
この場合において、屈折率の差によって最大受光角とシングルモードのカットオフ周波数が次式のように定まる。すなわち、屈折率と誘電率との関係は、(1)式で表される。
【数1】
ここで、n:屈折率、ε:誘電率、μ:透磁率、ε0:真空の誘電率、μ0:真空の透磁率である。
【0016】
また、最大受光角と透磁率の関係は、(2)式及び(3)式で表される。
【数2】
【数3】
ここで、θmax:最大受光角(導波路に入射し長距離伝搬するための入射角の最大値)、n1:コア部分の屈折率、n2:コアの周りの屈折率である。
【0017】
この場合において、カットオフ周波数λcは、(4)式で表される。
【数4】
ここで、Vc:定数(≒2π)、a:導波路径である。
【0018】
例えば、一般的なシングルモード石英ファイバでは屈折率の違いが0.2~0.3%で最大受光角が10度程度で、コア径は10um程度となっている。
【0019】
本実施形態において、コア径をシングルモードの石英ファイバと同等としてシングルモードを維持しようとすると、本実施形態の第1磁性体薄膜層16及び第2磁性体層17は、シングルモード石英ファイバと比較して透磁率が大きいので、誘電率の差を小さく設定する必要がある。
【0020】
より詳細には、例えば、透磁率が100で比誘電率が石英ファイバと同程度である場合、屈折率差を0.06%~0.1%程度にすれば、シングルモード石英ファイバと同程度のカットオフ周波数となり、石英ファイバから入射したシングルモード光が維持されることとなる。
また、第1磁性体薄膜層16及び第2磁性体層17の厚さは、第1磁性体薄膜層16及び第2磁性体層17の光伝送方向の長さに対して1/30以下となっている。
【0021】
次に実施形態の光変調器の動作を説明する。
光変調器10のファラデー素子11に直線偏光が入射されると、第2磁性体層17内に入射した電磁波である直線偏光は、第2磁性体層17と第1磁性体薄膜層16との境界面で完全反射され、第2磁性体層17内において減衰を抑制して伝送されることとなる。
【0022】
直線偏光が伝送されている状態で、電圧信号源14によりコイル12に電圧を印加すると、ファラデー素子11の周囲に電圧に対応する磁界が発生する。
この結果、ファラデー素子11に入射されている直線偏光の偏向面が回転し、検光子に入射される直線偏光の光量が低下する。
すなわち、検光子の入射光量が実効的に振幅変調されることとなる。
【0023】
この結果、電圧信号源14の電圧変化に基づく検光子13の出力光を復調することにより、電圧信号源14の信号を電光変換して伝送することが可能となり、光通信を行うことができる。
【0024】
[2]第1実施形態
図3は、第1実施形態の光通信装置の概要構成ブロック図である。
第1実施形態の光通信装置20は、電波を受信して、受信信号を電/光変換して伝送する。
図3において、
図1と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
【0025】
光通信装置20は、通信に用いる光(非偏光)を出射する光源21と、光源21からの光を伝送する第1光ファイバ22と、第1光ファイバ22を介して入力される光(非偏光)から所定の偏光面を有する直線偏光を抽出して出力する偏光子23と、通信信号としての通信電波を受信して電波に対応する電流に変換するアンテナ24と、アンテナ24を介して入力される電流を検出し、電流増幅を行って、検出した電流に比例した電流を供給する電流供給装置25と、偏光子23を介して所定強度の直線偏光が入射されるファラデー素子11と、一端がアンテナ24に接続され、ファラデー素子11に巻回されて、アンテナ24及び電流供給装置25から供給された電流に比例した磁界を発生するコイル12と、ファラデー素子11を通過した直線偏光を検出するための検光子13と、コイル12の他端及び電流供給装置25に接続された接地26と、検光子13を通過した直線偏光を伝送する第2光ファイバ27と、第2光ファイバ27を介して伝送された直線偏光の光/電変換を行い、通信信号として、信号処理を行う信号処理装置28と、を備えている。
上記構成において、アンテナ24及び電流供給装置25は、コイル12に変調信号を供給する信号発生装置として機能する。
【0026】
次に第1実施形態の動作を説明する。
初期状態において、アンテナ24が通信電波を受信していない場合には、電流供給装置25は、コイル12に電流を供給していないか、あるいは、所定の待機電流を供給しているものとする。また、電場ベクトルと進行方向を含む面を偏光面(plane of polarization)と定義した場合に、偏光子23の偏光面と、検光子13の偏光面とは、90°で交差しているものとする。
【0027】
したがって、初期状態において、光源21からの光が第1光ファイバ22及び偏光子23を介してファラデー素子11に入射される光は、検光子13に原理的には入射しないこととなっている。
【0028】
この状態において、アンテナ24が通信信号としての通信電波を受信すると、通信電波に対応する電流が、コイル12を介して接地26に流れる。
これにより電流供給装置25は、アンテナ24を介して接地26に流れる電流を検出し、電流増幅を行って、検出した電流に比例した電流をコイル12に供給する。
【0029】
これによりコイル12は、アンテナ24及び電流供給装置25から供給された電流に比例した磁界を発生する。
これにより、ファラデー素子11は、入射した直線偏光の偏光面を、回転させることとなる。
【0030】
この結果、検光子13の偏光面と同一の偏光面を有する成分が検光子13に入射する。
すなわち、アンテナ24を介して接地26に流れる電流に比例した成分が検光子13を透過する。
【0031】
この検光子13を透過した直線偏光は、第2光ファイバ27を介して信号処理装置28に伝送される。
信号処理装置28は、伝送された直線偏光の光/電変換を行って受信信号とし、受信信号に基づいて信号処理を行う。
この場合において、受信信号の振幅は、アンテナ24を介して受信した電波信号の電流値に対応する値を有しているので、信号処理装置28においては、実効的に電波信号を直接処理しているのと同義となる。
【0032】
以上の説明のように、本第1実施形態によれば、簡易な構成で、高周波により低損失で光信号の変調が可能となる。
さらに導波路内の磁性薄膜の厚みと枚数、導線の巻き数を調整することで狙いの周波数にインピーダンスを整合させる。また、導線に直流電流を重畳または別の導線を巻き、直流電流を流すことで受信周波数に応じたインピーダンスの調整が可能になる。
【0033】
また第1光ファイバ22及び第2光ファイバ27を偏波保持光ファイバにすれば、偏光子の機能を光源21の部分に移動することが可能で、検光子13の機能を信号処理装置28の直前に移動することができる。
【0034】
[3]第2実施形態
図4は、第2実施形態の光通信装置の概要構成ブロック図である。
第2実施形態の光通信装置30は、信号発生装置により送信信号を電/光変換して伝送する。
図4において、
図3と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
【0035】
光通信装置30は、通信に用いる光(非偏光)を出射する光源21と、光源21からの光を伝送する第1光ファイバ22と、第1光ファイバ22を介して入力される光(非偏光)から所定の偏光面を有する直線偏光を抽出して出力する偏光子23と、偏光子23を介して所定強度の直線偏光が入射されるファラデー素子11と、一端がアンテナ24に接続され、ファラデー素子11に巻回されたコイル12と、ファラデー素子11を通過した直線偏光を検出するための検光子13と、検光子13を通過した直線偏光を伝送する第2光ファイバ27と、第2光ファイバ27を介して伝送された直線偏光の光/電変換を行い、通信信号として、信号処理を行う信号処理装置28と、コイル12に接続され、伝送信号に対応する電流信号(変調信号)を生成して供給する信号発生装置31と、を備えている。
【0036】
本第2実施形態においても、初期状態において、光源21からの光が第1光ファイバ22及び偏光子23を介してファラデー素子11に入射される光は、偏光子23の偏光面と、検光子13の偏光面とが90°で交差しているので、検光子13に原理的には入射しないこととなっている。
【0037】
この状態において、信号発生装置31が伝送信号に対応する電流信号を生成してコイル12に供給する。
これによりコイル12は、信号発生装置31から供給された電流信号の電流に比例した磁界を発生する。
【0038】
そして、ファラデー素子11は、入射した直線偏光の偏光面を、回転させることとなる。
この結果、検光子13の偏光面と同一の偏光面を有する成分が検光子13に入射する。
すなわち、信号発生装置31から供給された電流信号の電流に比例した光量の直線偏光が検光子13を透過する。
【0039】
この検光子13を透過した直線偏光は、第2光ファイバ27を介して信号処理装置28に伝送される。
信号処理装置28は、伝送された直線偏光の光/電変換を行って受信信号とし、受信信号に基づいて信号処理を行う。
この場合において、受信信号の振幅は、信号発生装置31から供給された電流信号の電流値に対応する値を有しているので、信号処理装置28においては、実効的に信号発生装置31から供給された電流信号を直接処理しているのと同義となる。
【0040】
以上の説明のように、本第2実施形態によっても、簡易な構成で、高周波により低損失で光信号の変調が可能となり、確実に所望の信号を伝送することができる。例えば、信号発生装置として、車載ECUを用いれば、車内光通信を簡易、かつ、現行の光変調器と比較して安価な構成で大容量高速通信を行うことが可能となり、車内配線数を減少し、あるいは、通信線の配置面積の低減が可能となる。ひいては、車両における車載設備設計の自由度が向上することとなる。
本第2実施形態においても、第1光ファイバ22及び第2光ファイバ27を偏波保持光ファイバにすれば偏光子の機能を光源21の部分に移動することが可能で、検光子13の機能を信号処理装置28の直前に移動することができる。
【0041】
[4]第3実施形態
図5は、第3実施形態の第1態様の光通信装置の概要構成ブロック図である。
図5において、
図4と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
第3実施形態の第1態様の光通信装置40が、第2実施形態の光通信装置30と異なる点は、第1光ファイバ22と偏光子23との間をフェルール41により接続した点と、検光子13と第2光ファイバ27との間をフェルール42により接続した点と、である。
【0042】
図5の例においては、第1光ファイバ22及び第2光ファイバ27のモードフィールド径(MFD:Mode Field Diameter)がファラデー素子11のモードフィールド径と等しい場合を示している。すなわち、モードフィールド径が等しければフェルール41,42に光ファイバ22、27を通して直接接続することが可能である。
【0043】
ここで、モードフィールド径とは、シングルモード光ファイバ内を伝搬する光の断面方向の光電力分布の広がりを表す指標で、光信号がコアからどのくらいクラッド側に漏れ出して伝わっているかを表している。
【0044】
したがって、一般的にモードフィールド径は、コア径、すなわち、本実施形態における第2磁性体層17の幅よりも若干大きくなっている。なお、モードフィールド径は、光ファイバを接続する際の接続損失を求められるので、接続のしやすさを評価する指標としても使われる。
【0045】
この場合において、フェルール41、42は、ガラスフェルール、ジルコニアフェルール等を用いることが可能である。
【0046】
図6は、第3実施形態の第2態様の光通信装置の概要構成ブロック図である。
図6において、
図5と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
第3実施形態の第2態様の光通信装置50が、第3実施形態の第1態様の光通信装置40と異なる点は、フェルール41及びフェルール42に代えて、モードフィールド径変換機構51、52を設けた点である。
【0047】
本3実施形態の第2態様においては、第1光ファイバ22及び第2光ファイバ27のモードフィールド径がファラデー素子11のモードフィールド径と異なっている。
そこで、レンズによる集光、異径ファイバ同士のTEC融着によるモードフィールド径変換機構51、52を用いてモードフィールド径を変換することにより接続損失を低減している。
【0048】
以上の説明のように、本第3実施形態によれば、第2実施形態の効果に加えて、ファラデー素子11の第2磁性体層17の寸法に起因する接続損失を低減して、高効率で信号伝送を行うことができる。
【0049】
[5]第4実施形態
図7は、第4実施形態の光変調器の要部構成説明図である。
光変調器60は、伝送信号に対応する電流信号(変調信号)を生成して供給する信号発生装置61と、複数系統(
図7の例では、3系統)の直線偏光が入射されるファラデー素子62と、信号発生装置61に接続され、電流信号に基づく磁界をファラデー素子に印可するコイル63と、ファラデー素子62に巻回されたコイル63と、ファラデー素子62を通過した各直線偏光をそれぞれ検出するための検光子64-1~13と、を備えている。
【0050】
ここで、ファラデー素子の構成について説明する。
図8は、第4実施形態のファラデー素子の構成説明図である。
図8(A)は、ファラデー素子の直線偏光入射面側の正面図である。
図8(B)はファラデー素子の平面図、
図8(C)は、ファラデー素子の側面図である。
【0051】
ファラデー素子62は、大別すると、第1非磁性体層71と、第2非磁性体層72(72-1~72-12)、第1磁性体薄膜層73と、第2磁性体層74(74-11、74-12、74-13、74-21、…74-32、74-33)と、を備えている。
ここで、第2磁性体層72は、
図8の例の場合、12個の第2磁性体薄膜層72-1~72-12を備えている。各第2非磁性体層72-1~72-12は、第1非磁性体層71内においてファラデー素子62の正面側から裏面側に向かって延在している。
この場合において、第2非磁性体層72-1~72-12は、第1非磁性体層71よりも屈折率が高くなっており、光が閉じ込められた状態で第2磁性体層74に光を伝送する。
さらに第2非磁性体層72と第2磁性体層74との屈折率差は、接続点において損失が低くなるように決定されている。
【0052】
また、第1磁性体薄膜層73は、三つの第1磁性体薄膜層73-1~73-3を備えている。そして、第1磁性体薄膜層73-1~73-3は互いに離間するように配置されている。
そして、第1磁性体薄膜層73-1内には、第2磁性体層74(74-11~74-13)が内接するように配置されている。
同様に第1磁性体薄膜層73-2内には、第2磁性体層74(74-21~74-23)が内接するように配置されている。
第1磁性体薄膜層73-3内には、第2磁性体層74(74-31~74-33)が内接するように配置されている。
【0053】
この場合において、第2磁性体薄膜層72と第1磁性体薄膜層73とは、透磁率は、実効的に等しく(例えば、透磁率の差は1%以下)、誘電率が異なっている。より詳細には、上記各実施形態と同様に第2磁性体薄膜層72の誘電率は、第1磁性体薄膜層73の誘電率よりも高くなるように材料が選択されている。
【0054】
また、第2磁性体薄膜層72の屈折率は、第1磁性体薄膜層73及び第1非磁性体層71の屈折率よりも高くなっている。
【0055】
この状態において、信号発生装置61が伝送信号に対応する電流信号を生成してコイル63に供給すると、コイル63は、信号発生装置61から供給された電流信号の電流に比例した磁界を発生する。
【0056】
これにより、ファラデー素子62は、入射した各系統の直線偏光の偏光面を、同一量回転させることとなる。
この結果、検光子64-1~64-3の偏光面と同一の偏光面を有する成分が検光子64-1~64-3にそれぞれ入射し伝送されることとなり、図示しない信号処理装置により処理されることとなる。
【0057】
この場合において、伝送信号の振幅は、信号発生装置61から供給された電流信号の電流値に対応する値となる。
【0058】
以上の説明のように、本第4実施形態によっても、第2実施形態と同様の効果をえられるとともに、同一の信号を複数の信号処理装置に伝送したり(ファラデー素子62を分配器として使用)、複数系統を同一の信号処理装置に伝送して、冗長系として用いたりすることも可能である。
本第4実施形態においても、光ファイバを偏波保持光ファイバにすれば偏光子の機能を光源部分に移動することが可能で、検光子の機能を信号処理装置の直前に移動することができる。
【0059】
以上の説明のように、各実施形態によれば、導波路として用いている磁性体薄膜は、高周波領域まで透磁率を保つことができるので、高周波領域まで低損失で変調することが可能となる。
また、第1磁性体薄膜層の層数を調整することでコイル及びファラデー素子で構成される変調器全体の透磁率を制御することが可能となり、変調信号のなめらかさを調整することができる。
【0060】
また、膜の厚みを調整する(導波路につながったものと、それ以外の両方)ことでインダクタンスの周波数応答が変わり信号の周波数応答特性を変更することができる。
【0061】
さらに磁性体薄膜層は、より低磁場で磁気飽和しやすいので、直流重畳によって薄膜の飽和具合を調整し変調度合いを変えることができる。加えて、直流重畳により発生した磁場によってより高周波まで透磁率を保つことができる。
【符号の説明】
【0062】
10 光変調器
11 ファラデー素子
12 コイル
13 検光子
14 電圧信号源
15 非磁性体層
15-1~15-4 第1非磁性体層~第4非磁性体層
16、16-1~16-3 第1磁性体薄膜層
17 第2磁性体層
20 光通信装置
21 光源
22 第1光ファイバ
23 偏光子
24 アンテナ
25 電流供給装置
26 接地
27 第2光ファイバ
28 信号処理装置
30 光通信装置
31 信号発生装置
40 光通信装置
41、42 フェルール
50 光通信装置
51 モードフィールド径変換機構
60 光変調器
61 信号発生装置
62 ファラデー素子
63 コイル
64 検光子
71 第1非磁性体層
72 第2非磁性体層
73 第1磁性体薄膜層
74 第2磁性体層