(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045684
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】射出成形金型及び該金型を用いた樹脂製パイプの成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/44 20060101AFI20220314BHJP
B29C 45/56 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
B29C45/44
B29C45/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151401
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509218560
【氏名又は名称】松本金型株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金口 卓矢
(72)【発明者】
【氏名】肥後谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】新宅 直己
(72)【発明者】
【氏名】松本 文治
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AG12
4F202AG24
4F202AH11
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK13
4F202CK54
4F202CK67
4F206AG12
4F206AG24
4F206AH11
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM06
4F206JN41
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】所定の中心軸を中心とする円弧状に湾曲する管部の一端部に張出形成されたフランジ部に、管部の反他端部側に開放し、かつ中心軸に垂直な面に対して傾斜する方向に凹むか又は貫通する開放部を形成する。
【解決手段】パイプ1の管部3の内周面を成形する管部成形面324がその外周面に形成された延出部322を有し、回転軸C2を中心に回動可能な回動型320と、取付溝5a及び取付孔5bを成形する突条部332及び突起333を有し、回転軸C2に垂直な面に対して傾斜する傾斜方向にスライド可能なスライド型330とを射出成形金型100に設け、パイプ1の成形後、スライド型330を傾斜方向にスライドさせることにより取付溝5a及び取付孔5bから突条部332全体及び突起333全体を離脱させ、その後、回動型320を回転軸C2を中心に回動させることにより管部3から延出部322全体を離脱させる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の中心軸(C1)を中心とする円弧状に湾曲する管部(3)を備えた樹脂製パイプ(1)を成形する射出成形金型であって、
上記パイプ(1)の管部(3)の一端部には、フランジ部(5)が張出形成され、当該フランジ部(5)には、上記管部(3)の反他端部側に開放し、かつ上記中心軸(C1)に垂直な面に対して傾斜する方向に凹むか又は貫通する開放部(5a,5b)が形成され、
上記射出成形金型(100)は、
上記パイプ(1)の管部(3)の外周面の少なくとも一部を成形するキャビティ型(200)と、
支持型(310)と、
上記パイプ(1)の管部(3)の内周面を成形する成形面(324)がその外周面に形成された延出部(322)を有し、上記支持型(310)に対する相対位置が固定された回転軸(C2)を中心に回動可能な回動型(320)と、
上記フランジ部(5)の開放部(5a,5b)を成形する凸部(332,333)を有し、上記回転軸(C2)に垂直な面に対して傾斜する傾斜方向にスライド可能なスライド型(330)とを備え、
上記キャビティ型(200)及び上記支持型は、上記パイプ(1)の成形用のキャビティ(C)の形成時よりも所定の型開閉方向(X)に互いに離間可能であり、
上記キャビティ(C)内に樹脂を充填することにより上記パイプ(1)を成形した後、上記スライド型(330)を上記傾斜方向にスライドさせることにより上記パイプ(1)の開放部(5a,5b)から上記凸部(332,333)全体を離脱させ、その後、上記回動型(320)を上記回転軸(C2)を中心に回動させることにより上記パイプ(1)の管部(3)から上記延出部(322)全体を離脱させるように構成されていることを特徴とする樹脂製パイプの射出成形金型。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂製パイプの射出成形金型において、
上記型開閉方向(X)は、上記回転軸(C2)に対して垂直な方向であることを特徴とする樹脂製パイプの射出成形金型。
【請求項3】
請求項1に記載の樹脂製パイプの射出成形金型において、
上記型開閉方向(X)は、上記回転軸(C2)に対して垂直な方向でないことを特徴とする樹脂製パイプの射出成形金型。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の射出成形金型を用いた樹脂製パイプの成形方法であって、
上記射出成形金型(100)を用いて上記キャビティ(C)を形成した状態で、上記キャビティ(C)内に樹脂を射出充填することにより上記パイプ(1)を成形し、
その後、上記キャビティ型(200)及び上記支持型(310)を、上記キャビティ(C)の形成時よりも上記型開閉方向(X)に互いに離間させる型開き工程と、上記スライド型(330)を上記傾斜方向にスライドさせることにより上記パイプ(1)の開放部(5a,5b)から上記凸部(332,333)全体を離脱させ、その後、上記回動型(320)を上記回転軸(C2)を中心に回動させることにより上記パイプ(1)の管部(3)から上記延出部(322)全体を離脱させる型離脱工程とを実行することを特徴とする樹脂製パイプの成形方法。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂製パイプの成形方法において、
上記キャビティ(C)を形成してから上記型離脱工程を完了するまでの間、上記スライド型(330)を常に上記回動型(320)に嵌合させることを特徴とする樹脂製パイプの成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円弧状に湾曲する管部を備えた樹脂製パイプを成形する射出成形金型及び該金型を用いた樹脂製パイプの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所定の中心軸を中心とする円弧状に湾曲する管部を備えた樹脂製パイプを成形する射出成形金型が開示されている。この射出成形金型は、上記パイプの管部の外周面を成形するキャビティ型と、支持型と、上記パイプの管部の内周面を成形する内周面成形面がその外周面に形成された円弧状の延出部を有し、上記支持型に対する相対位置が固定された回転軸を中心に回動可能な回動型とを備え、上記キャビティ型及び上記支持型は、上記パイプの成形用のキャビティの形成時よりも所定の型開閉方向に互いに離間可能であり、上記キャビティ内に樹脂を充填することにより上記パイプを成形した後、上記回動型を上記回転軸を中心に回動させることにより上記パイプの管部から上記延出部を離脱させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記管部の一端部に、フランジ部を張出形成し、当該フランジ部に、上記管部の反他端部側に開放し、かつ上記中心軸に垂直な面に対して傾斜する方向に凹むか又は貫通する開放部を形成したいという要請がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所定の中心軸を中心とする円弧状に湾曲する管部の一端部に張出形成されたフランジ部に、管部の反他端部側に開放し、かつ上記中心軸に垂直な面に対して傾斜する方向に凹むか又は貫通する開放部を形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、管部の内周面を成形する回動型とは別のスライド型によって開放部を成形するようにしたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、第1の発明は、所定の中心軸を中心とする円弧状に湾曲する管部を備えた樹脂製パイプを成形する射出成形金型を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、上記パイプの管部の一端部には、フランジ部が張出形成され、当該フランジ部には、上記管部の反他端部側に開放し、かつ上記中心軸に垂直な面に対して傾斜する方向に凹むか又は貫通する開放部が形成され、上記射出成形金型は、上記パイプの管部の外周面の少なくとも一部を成形するキャビティ型と、支持型と、上記パイプの管部の内周面を成形する成形面がその外周面に形成された延出部を有し、上記支持型に対する相対位置が固定された回転軸を中心に回動可能な回動型と、上記フランジ部の開放部を成形する凸部を有し、上記回転軸に垂直な面に対して傾斜する傾斜方向にスライド可能なスライド型とを備え、上記キャビティ型及び上記支持型は、上記パイプの成形用のキャビティの形成時よりも所定の型開閉方向に互いに離間可能であり、上記キャビティ内に樹脂を充填することにより上記パイプを成形した後、上記スライド型を上記傾斜方向にスライドさせることにより上記パイプの開放部から上記凸部全体を離脱させ、その後、上記回動型を上記回転軸を中心に回動させることにより上記パイプの管部から上記延出部全体を離脱させるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に係る樹脂製パイプの射出成形金型において、上記型開閉方向は、上記回転軸に対して垂直な方向であることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第1の発明に係る樹脂製パイプの射出成形金型において、上記型開閉方向は、上記回転軸に対して垂直な方向でないことを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第1~3のいずれか1つの発明に係る射出成形金型を用いた樹脂製パイプの成形方法であって、上記射出成形金型を用いて上記キャビティを形成した状態で、上記キャビティ内に樹脂を射出充填することにより上記パイプを成形し、その後、上記キャビティ型及び上記支持型を、上記キャビティの形成時よりも上記型開閉方向に互いに離間させる型開き工程と、上記スライド型を上記傾斜方向にスライドさせることにより上記パイプの開放部から上記凸部全体を離脱させ、その後、上記回動型を上記回転軸を中心に回動させることにより上記パイプの管部から上記延出部全体を離脱させる型離脱工程とを実行することを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、第4の発明に係る樹脂製パイプの成形方法において、上記キャビティを形成してから上記型離脱工程を完了するまでの間、上記スライド型を常に上記回動型に嵌合させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1~4の発明によれば、キャビティ内に樹脂を充填することによりパイプを成形した後、スライド型を回転軸に垂直な面に対して傾斜する傾斜方向にスライドさせることにより、パイプの開放部からスライド型の凸部を離脱させることができるので、中心軸に垂直な面に対して傾斜する方向に凹むか又は貫通する開放部をフランジ部に形成できる。
【0014】
第5の発明によれば、型離脱工程の完了時の状態から再度キャビティを形成する過程で、スライド型と回動型とを非嵌合状態から互いに嵌合させる嵌合作業を行わなくてよいので、スライド型及び回動型に熱変形や位置ずれが生じても、上記嵌合作業時に上記スライド型及び上記回動型が互いに干渉することによる両型の破損及び囓りを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明の実施形態1に係る射出成形金型のキャビティ形成状態における
図1のII-II線に相当する断面図である。
【
図3】
図2のIII-III線における断面図である。
【
図4】第1及び第2の分割型を互いに離間させた状態における
図3相当図である。
【
図5】支持型を離間位置に後退させた状態における
図3相当図である。
【
図6】スライド型を第2の後退位置にスライドさせた状態における
図2相当図である。
【
図7】スライド型を第2の後退位置にスライドさせた状態における
図3相当図である。
【
図8】回動型を第1の後退位置に回動させた状態における
図2相当図である。
【
図9】回動型を第1の後退位置に回動させた状態における
図3相当図である。
【
図11】支持型を離間位置に後退させた状態における
図10相当図である。
【
図12】スライド型を第2の後退位置にスライドさせ、回動型を第1の後退位置に回動させ、かつ表面側成形型を第3の後退位置にスライドさせた状態における
図10相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0017】
(実施形態1)
図1は、樹脂製パイプ1を示す。このパイプ1は、インテークパイプ等、自動車用エンジンの吸気系に用いられる。
【0018】
このパイプ1は、所定の中心軸C1を中心とし、中心角を約90°とする円弧状に湾曲する管部3を備えている。この管部3の一端部には、その板面を上記中心軸C1に垂直な面に対して傾斜する方向に向け、かつその外周縁が正方形状をなす板状のフランジ部5が張出形成されている。当該フランジ部5の内周縁近傍には、上記管部3の反他端部側に開放する断面コ字状の円環状の開放部としての取付溝5aが、当該フランジ部5の板面に対して垂直な方向に凹むように形成されている。取付溝5aは、ガスケットの取付けに用いられる。したがって、当該取付溝5aは、上記中心軸C1に垂直な面に対して傾斜する方向に凹んでいる。また、フランジ部5における取付溝5aよりも外周側には、4つの開放部としての円形の取付孔5bが周方向に互いに等しい間隔を空けてフランジ部5の板面に対して垂直な方向に貫通形成されている。つまり、取付孔5bは、管部3の他端部側及び反他端部側に開放し、上記中心軸C1に垂直な面に対して傾斜する方向に貫通している。取付孔5bは、ネジ等の締結に用いられる。
【0019】
このパイプ1は、
図2~
図9に示すような本発明の実施形態1に係る射出成形金型100を用いて成形される。射出成形金型100は、キャビティ型200と、コア型300とを有している。
【0020】
キャビティ型200は、上記パイプ1の管部3の外表面全体、管部3の上記他端部側(反フランジ部5側)の端面全体、フランジ部5の上記他端部側の面全体、及びフランジ部5の外周端面全体を成形する成形面201を有している。上記キャビティ型200は、上記パイプ1の管部3を上記中心軸C1方向に二等分する位置で分割された上記第1及び第2の分割型210,220で構成されている。
【0021】
コア型300は、支持型310と、回動型320と、スライド型330とを有している。
【0022】
支持型310には、回転軸C2を中心とし、断面円形状で中心角を約120°とする円弧状に延びる収容凹部312が形成されている。したがって、回転軸C2の支持型310に対する相対位置は固定されている。支持型310の収容凹部312の外周縁部には、フランジ部5の上記管部3の反他端部側の面の外周部の一部を成形する成形面313が形成されている。また、支持型310は、図示しない第1の駆動手段により、所定の接近位置と当該接近位置よりも上記キャビティ型200から離れた所定の離間位置とに進退可能になっている。
図2~
図4は、支持型310が接近位置にある状態を示し、
図5、
図7及び
図9は、支持型310が離間位置にある状態を示す。支持型310の進退方向は、回転軸C2に対して垂直になっている。したがって、キャビティ型200と支持型310とは、回転軸C2に対して垂直な型開閉方向X(
図5参照)に接離可能になっている。
【0023】
回動型320は、回転軸C2を中心とし、断面正方形状で中心角を約30°とする円弧状に延びる基部321と、当該基部321の一端面の中心から延出する棒状の延出部322とを備えている。延出部322は、回転軸C2を中心とし、中心角を約90°とする円弧状に湾曲している。
【0024】
基部321の延出部322延設面は、上記回転軸C2に垂直な面に対して傾斜する方向に向いている。基部321の延出部322延設面には、上記延出部322延設箇所を囲むように円環状に延びる断面コ字状の凹陥部321aが垂直に形成されている。したがって、凹陥部321aは、上記延出部322の回転軸C2に垂直な面に対して傾斜する方向に凹んでいる。上記基部321の延出部322延設面における延出部322及び凹陥部321aを除く領域が、上記フランジ部5の上記管部3の反他端部側の面の周方向一部の外周部を除く領域を成形するフランジ部成形面323を構成している。延出部322の外周面には、上記管部3の内周面を成形する管部成形面324が全体に亘って形成されている。
【0025】
回動型320は、油圧シリンダ等の図示しない第2の駆動手段の駆動により、回転軸C2を中心に、上記延出部322全体を上記収容凹部312に収容する第1の後退位置と上記延出部322全体を上記収容凹部312の外側に突出させる第1の進出位置との間を回動可能になっている。
図2~
図7は、回動型320が第1の進出位置にある状態を示し、
図8及び
図9は、回動型320が第1の後退位置にある状態を示す。
【0026】
スライド型330は、中央に円形の開口部331aを有する円環状の板部331を有している。当該板部331の一方の面には、上記パイプ1の取付溝5aを成形する凸部としての突条部332が、上記開口部331aの外周縁に沿って円環状に延びるように突設されている。さらに板部331の突条部332突設面における突条部332よりも外周側には、上記パイプ1の取付孔5bを成形する4つの円柱状の凸部としての突起333が周方向に互いに等しい間隔を空けて突設されている。このスライド型330の突条部332及び突起333の突設面が、上記パイプ1のフランジ部5の取付溝5a形成面を成形する成形面334を構成している。
【0027】
スライド型330は、上記回動型320の凹陥部321aに嵌合した状態で、油圧シリンダ等の図示しない第3の駆動装置の駆動により、当該凹陥部321aの凹む方向に沿う方向、すなわち上記回転軸C2に垂直な面に対して傾斜する方向にスライド可能になっている。スライド型330は、上記突条部332全体及び突起333全体を上記基部321の延出部322突設面から突出させる第2の進出位置と、上記突条部332全体及び突起333全体を凹陥部321a内に収容する第2の後退位置とにスライド可能になっている。
図2~
図5は、スライド型330が第2の進出位置にある状態を示し、
図6~
図9は、スライド型330が第2の後退位置にある状態を示している。
【0028】
そして、上述のように構成された射出成形金型100を用いてパイプ1を成形する要領は以下の如くである。
【0029】
まず、支持型310が離間位置にあり、回動型320が第1の後退位置にあり、かつスライド型330が第2の後退位置にある状態から、第2の駆動装置の駆動により、回動型320を回転軸C2を中心に回動させることにより、第1の進出位置に進出させる。このとき、スライド型330は第2の後退位置に維持された状態で、回動型320と一体に回動する。
【0030】
次いで、第3の駆動装置の駆動により、スライド型330を、第2の後退位置から第2の進出位置に移動させる。
【0031】
次いで、第1の駆動装置の駆動により、支持型310を接近位置に進出させる。
【0032】
そして、第1及び第2の分割型210,220を互いに接近させて連結することにより、
図2及び
図3に示すように、パイプ1の成形用のキャビティCを形成する。このキャビティCを形成したキャビティC形成状態で、キャビティC内に樹脂を図示しないゲートから射出充填することにより、パイプ1を成形する。これにより、スライド型330の突条部332により、パイプ1の取付溝5aが成形され、スライド型330の突起333により、パイプ1の取付孔5bが成形される。このように、キャビティC形成状態で、支持型310は接近位置にあるので、キャビティ型200及び支持型310は、キャビティCの形成時よりも型開閉方向Xに離間可能である。
【0033】
次に充填した樹脂が固化した後、
図4に示すように、第1及び第2の分割型210,220を互いに離間させる。
【0034】
その後、
図5に示すように、第1の駆動装置の駆動により、支持型310を離間位置に移動させることにより、キャビティ型200及び支持型310をキャビティCの形成時よりも上記型開閉方向Xに互いに離間させる型開き工程を実行する。これにより、回動型320及びスライド型330も、支持型310と一体となって移動する。このとき、成形されたパイプ1の管部3には、回動型320の延出部322が嵌合しているので、パイプ1も回動型320と一体となって移動する。
【0035】
次に、
図6及び
図7に示すように、第3の駆動装置の駆動により、スライド型330を第2の進出位置から第2の後退位置に移動させる。これにより、スライド型330は、
図7中符号Yで示す方向、つまり回転軸C2に垂直な面に対して傾斜する傾斜方向に移動し、成形されたパイプ1の取付溝5aから、スライド型330の突条部332全体が離脱するとともに、成形されたパイプ1の取付孔5bから、スライド型330の突起333全体が離脱する。
【0036】
次に、
図8及び
図9に示すように、第2の駆動装置の駆動により、回動型320を、回転軸C2を中心に、第1の進出位置から第1の後退位置に回動させる。これにより、回動型320の延出部322全体がパイプ1の管部3から離脱し、収容凹部312に収容される。そして、成形されたパイプ1を取り出す。このように、スライド型330を傾斜方向に移動させることによりパイプ1の取付溝5a及び取付孔5bからスライド型330の突条部332全体及び突起333全体を離脱させ、その後、回動型320を回転軸C2を中心に回動させることにより、回動型320の延出部322全体をパイプ1の管部3から離脱させる離脱工程を実行する。なお、上述のような成形工程を実行する過程で、スライド型330は、常に回動型320に嵌合している。なお、
図6及び
図8において、第1の分割型210の図示を省略している。
【0037】
このように、本実施形態1によれば、キャビティC内に樹脂を充填することによりパイプ1を成形した後、スライド型330を回転軸C2に垂直な面に対して傾斜する傾斜方向にスライドさせることにより、パイプ1の取付溝5aからスライド型330の突条部332を離脱させるとともにパイプ1の取付孔5bからスライド型330の突起333を離脱させることができるので、中心軸C1に垂直な面に対して傾斜する方向に凹む取付溝5a及び当該方向に貫通する取付孔5bをフランジ部5に形成できる。
【0038】
また、キャビティCを形成してから型離脱工程を完了するまでの間、スライド型330を常に回動型320に嵌合させるので、型離脱工程の完了時の状態から再度キャビティCを形成する過程で、スライド型330と回動型320とを非嵌合状態から互いに嵌合させる嵌合作業を行わなくてよい。したがって、スライド型330及び回動型320に熱変形や位置ずれが生じても、上記嵌合作業時にスライド型330及び回動型320が互いに干渉することによる両型の破損及び囓りを防止できる。
【0039】
また、型開閉方向Xを回転軸C2に対して垂直な方向とするので、コア型300の構造を簡素化するとともに、型幅を狭くできる。
【0040】
(実施形態2)
図10は、本発明の実施形態2に係る射出成形金型100を示す。本実施形態2では、キャビティ型200の成形面201が、パイプ1の管部3の外表面及び上記他端部側(反フランジ部側)の端面と、上記フランジ部5の上記他端部側の面及び外周端面とを、管部3を上記中心軸C1方向に二等分する位置で分割した2つの領域のうち一方の領域だけを成形するようになっている。また、キャビティ型200が、分割型210,220に分割されておらず、単一の型で構成されている。
【0041】
また、コア型300が、パイプ1の管部3の外表面及び上記他端部側(反フランジ部側)の端面と、上記フランジ部5の上記他端部側の面とのうち、上記キャビティ型200の成形面201によって成形されない領域を成形する成形面341を有する表面側成形型340をさらに有している。表面側成形型340は、支持型310と支持型310の進退方向に隣接し、支持型310の進退方向(型開閉方向X)に対して垂直な面に沿って第3の進出位置と第3の後退位置とにスライド可能になっている。
図10及び
図11は、表面側成形型340が第3の進出位置にある状態を示し、
図12は、表面側成形型340が第3の後退位置にある状態を示す。
【0042】
支持型310には、フランジ部5の外周端面のうち、上記キャビティ型200の成形面201によって成形されない領域を成形する成形面314が形成されている。支持型310の進退方向は、回転軸C2に対して垂直な方向ではなく斜めに交差する方向になっている。したがって、型開閉方向Xも、回転軸C2に対して垂直な方向ではなく斜めに交差する方向になっている。
【0043】
図10に示すキャビティC形成状態では、表面側成形型340は、第3の進出位置に位置する。このキャビティC形成状態から、
図11に示すように、支持型310を接近位置から離間位置に後退させることにより、キャビティ型200と支持型310とをキャビティCの形成時よりも型開閉方向Xに離間させ、成形されたパイプ1をキャビティ型Cから離脱させることができる。次いで、スライド型330を第2の進出位置から第2の後退位置に後退させ、回動型320を第1の進出位置から第1の後退位置に回動させた後、
図12に示すように、表面側成形型340を第3の後退位置に後退させることにより、成形したパイプ1を取り出せる。
【0044】
その他の射出成形金型100の構成及びパイプ1の成形方法は、実施形態1と同じであるので、同一の構成には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0045】
したがって、本実施形態2によれば、型開閉方向Xを回転軸C2に対して垂直でない方向とするので、型厚を薄くできる。
【0046】
なお、上記実施形態1,2では、フランジ部5に取付溝5a及び取付孔5bの両方を設けたパイプ1に本発明を適用したが、本発明は、フランジ部5に取付溝5a及び取付孔5bの一方だけを設けたパイプ1にも適用できる。また、円環状以外の溝部や、円形以外の貫通部を開放部としてフランジ部5に設けたパイプ1にも本発明は適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、円弧状に湾曲する管部を備えた樹脂製パイプを成形する射出成形金型及び該金型を用いた樹脂製パイプの成形方法として有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 パイプ
3 管部
5 フランジ部
5a 取付溝(開放部)
5b 取付孔(開放部)
100 射出成形金型
200 キャビティ型
310 支持型
320 回動型
322 延出部
324 管部成形面
330 スライド型
332 突条部(凸部)
333 突起(凸部)
C キャビティ
C1 中心軸
C2 回転軸
X 型開閉方向