(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045685
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】水処理システム、情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20220314BHJP
C02F 1/00 20060101ALI20220314BHJP
G06Q 10/04 20120101ALI20220314BHJP
【FI】
G06Q50/06
C02F1/00 L
C02F1/00 T
G06Q10/04
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151402
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 仁治
(72)【発明者】
【氏名】矢野 大作
(72)【発明者】
【氏名】本宮 明紘
(72)【発明者】
【氏名】須藤 史生
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】供給する水の水質をあらかじめ把握する。
【解決手段】供給される水から不純物を除去する水処理装置100-1~100-5と、情報処理装置300とを有し、情報処理装置300は、水処理装置100-1~100-5における不純物を除去する除去率に基づいて、現在の供給水が水処理装置100-1~100-5で処理された場合における水処理装置100-1~100-5から供給される水に含まれる不純物の濃度の予測値を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される水から不純物を除去する水処理装置と、情報処理装置とを有し、
前記情報処理装置は、
前記水処理装置における前記不純物を除去する除去率に基づいて、現在の供給水が前記水処理装置で処理された場合における前記水処理装置から供給される水に含まれる前記不純物の濃度の予測値を算出する濃度算出部を有する水処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理システムにおいて、
前記除去率を算出する除去率算出部と、
前記除去率算出部が算出した前記水処理装置の前記除去率を記憶する記憶部と、を有し、
前記濃度算出部は、前記記憶部に記憶された前記除去率に基づいて、前記不純物の濃度の予測値を算出する水処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の水処理システムにおいて、
前記水処理装置に供給される水および前記水処理装置から供給される水に含まれる前記不純物の濃度を測定する濃度測定部を有し、
前記除去率算出部は、前記濃度測定部が測定した濃度に基づいて、前記水処理装置における前記除去率を算出する水処理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の水処理システムにおいて、
前記濃度測定部は、前記水処理装置から供給される水に含まれる全有機炭素の濃度と尿素の濃度とを測定し、
前記除去率算出部は、前記濃度測定部が測定した前記全有機炭素の濃度と前記尿素の濃度とに基づいて、前記水処理装置における前記除去率を算出する水処理システム。
【請求項5】
請求項2に記載の水処理システムにおいて、
前記除去率算出部は、前記水処理装置の現在の使用状態と、過去の使用実績とに基づいて、該水処理装置の現在の前記除去率を算出する水処理システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の水処理システムにおいて、
前記情報処理装置は、前記濃度算出部が算出した濃度を示す情報を出力する出力部を有する水処理システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の水処理システムにおいて、
前記情報処理装置は、前記濃度算出部が算出した濃度が所定の閾値を超えた場合、所定の警告を出力する警告部を有する水処理システム。
【請求項8】
請求項7に記載の水処理システムにおいて、
前記警告部は、前記濃度算出部が算出した濃度が所定の閾値を超えた場合、該濃度を下げるための処理を行うための信号を出力する水処理システム。
【請求項9】
供給される水から不純物を除去する水処理装置における前記不純物を除去する除去率に基づいて、現在の供給水が前記水処理装置で処理された場合における前記水処理装置から供給される水に含まれる前記不純物の濃度の予測値を算出する濃度算出部を有する情報処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の情報処理装置において、
前記除去率を算出する除去率算出部と、
前記除去率算出部が算出した前記水処理装置の前記除去率を記憶する記憶部と、を有し、
前記濃度算出部は、前記記憶部に記憶された前記除去率に基づいて、前記不純物の濃度の予測値を算出する情報処理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の情報処理装置において、
前記除去率算出部は、前記水処理装置に供給される水および前記水処理装置から供給される水に含まれる前記不純物の濃度に基づいて、前記水処理装置における前記除去率を算出する情報処理装置。
【請求項12】
請求項10に記載の情報処理装置において、
前記除去率算出部は、前記水処理装置の現在の使用状態と、過去の使用実績とに基づいて、該水処理装置の現在の前記除去率を算出する情報処理装置。
【請求項13】
供給される水から不純物を除去する水処理装置における前記不純物を除去する除去率に基づいて、現在の供給水が前記水処理装置で処理された場合における前記水処理装置から供給される水に含まれる前記不純物の濃度の予測値を算出する処理を行う情報処理方法。
【請求項14】
請求項13に記載の情報処理方法において、
前記除去率を算出する処理と、
前記算出した前記水処理装置の前記除去率を記憶部に記憶させる処理と、
前記記憶部に記憶された前記除去率に基づいて、前記不純物の濃度の予測値を算出する処理とを行う情報処理方法。
【請求項15】
請求項13に記載の情報処理方法において、
前記水処理装置に供給される水および前記水処理装置から供給される水に含まれる前記不純物の濃度を測定する処理と、
前記測定した濃度に基づいて、前記水処理装置における前記除去率を算出する処理とを行う情報処理方法。
【請求項16】
請求項13に記載の情報処理方法において、
前記水処理装置の現在の使用状態と、過去の使用実績とに基づいて、該水処理装置における前記除去率を算出する処理を行う情報処理方法。
【請求項17】
コンピュータに、
供給される水から不純物を除去する水処理装置における前記不純物を除去する除去率に基づいて、現在の供給水が前記水処理装置で処理された場合における前記水処理装置から供給される水に含まれる前記不純物の濃度の予測値を算出する手順を実行させるためのプログラム。
【請求項18】
請求項17に記載のプログラムにおいて、
前記除去率を算出する手順と、
前記算出した前記水処理装置の前記除去率を記憶部に記憶させる手順と、
前記記憶部に記憶された前記除去率に基づいて、前記不純物の濃度の予測値を算出する手順とを実行させるためのプログラム。
【請求項19】
請求項17に記載のプログラムにおいて、
前記水処理装置に供給される水および前記水処理装置から供給される水に含まれる前記不純物の濃度を測定する手順と、
前記測定した濃度に基づいて、前記水処理装置における前記除去率を算出する手順とを実行させるためのプログラム。
【請求項20】
請求項17に記載のプログラムにおいて、
前記水処理装置の現在の使用状態と、過去の使用実績とに基づいて、該水処理装置における前記除去率を算出する手順を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システム、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
水処理システムにおいて、ユースポイントへ供給される水の不純物濃度は、専用の濃度計を用いて測定されている。例えば、超純水中のイオン性物質を除去するイオン交換樹脂装置を通過した水のイオン濃度をイオン検出装置が検出し、検出結果に基づいてイオン交換樹脂装置をバイパスする技術が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような技術においては、濃度計が測定した濃度が基準値を超えてしまった時点では、ユースポイントに基準値を超えた濃度の水がすでに供給されている。そのため、濃度計が測定した濃度が所定の値を超えている場合、所定の値を超えた濃度の水がユースポイントへ供給されてしまうという問題点がある。そこで、供給する水の水質をあらかじめ把握する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、供給する水の水質をあらかじめ把握することができる水処理システム、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、供給される水から不純物を除去する水処理装置と、情報処理装置とを有し、
前記情報処理装置は、
前記水処理装置における前記不純物を除去する除去率に基づいて、現在の供給水が前記水処理装置で処理された場合における前記水処理装置から供給される水に含まれる前記不純物の濃度の予測値を算出する濃度算出部を有する水処理システムである。
である。
【0007】
また、本発明は、供給される水から不純物を除去する水処理装置における前記不純物を除去する除去率に基づいて、現在の供給水が前記水処理装置で処理された場合における前記水処理装置から供給される水に含まれる前記不純物の濃度の予測値を算出する濃度算出部を有する情報処理装置である。
【0008】
また、本発明は、供給される水から不純物を除去する水処理装置における前記不純物を除去する除去率に基づいて、現在の供給水が前記水処理装置で処理された場合における前記水処理装置から供給される水に含まれる前記不純物の濃度の予測値を算出する処理を行う情報処理方法である。
【0009】
また、本発明は、コンピュータに、
供給される水から不純物を除去する水処理装置における前記不純物を除去する除去率に基づいて、現在の供給水が前記水処理装置で処理された場合における前記水処理装置から供給される水に含まれる前記不純物の濃度の予測値を算出する手順を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、供給する水の水質をあらかじめ把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の水処理システムの第1の実施の形態を示す図である。
【
図2】
図1に示した情報処理装置の内部構成の一例を示す図である。
【
図3】
図2に示した濃度算出部が算出した水処理装置におけるTOC予測値の一例を示す図である。
【
図4】本形態における具体的な水処理システムの構成の一例を示す図である。
【
図5】本発明の水処理システムの第2の実施の形態を示す図である。
【
図6】
図5に示した情報処理装置の内部構成の一例を示す図である。
【
図7】
図6に示したデータベースに記憶された過去の使用実績を示す情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
【0013】
図1は、本発明の水処理システムの第1の実施の形態を示す図である。本形態における水処理システムは
図1に示すように、複数の水処理装置100-1~100-5と、複数の濃度測定部200-1~200-6と、情報処理装置300とを有する。なお、
図1には、水処理装置100-1~100-5の数が5つであって、濃度測定部200-1~200-6の数が6つである場合を例に挙げているが、それらの数は限定しない。
【0014】
水処理装置100-1~100-5は、直列に接続(配置)されている。水処理装置100-1~100-5は、それぞれが供給される水から所定の時間をかけて不純物を除去する。この所定の時間は、例えば、水処理装置100-1~100-5それぞれに水が流入してからその水に対して所定の処理が行われ、処理が行われた水が外に流出されるまでの滞留時間であって、水処理装置100-1~100-5ごとにおおよそ決まっている時間である。例えば、水処理装置100-1における滞留時間は約3時間であって、水処理装置100-2における滞留時間は約2時間であって、水処理装置100-3~100-5の滞留時間は約1時間である。なお、
図1に示した形態においては、水処理装置100-1~100-5が直列に接続されている例を示しているが、例えば、並列に接続されているものであっても、以下に説明する除去率の算出が可能であれば良い。
【0015】
濃度測定部200-1は、水処理装置100-1へ供給される水、つまり、水処理装置100-1の入口側の水に含まれる不純物の濃度を測定する。濃度測定部200-2~200-5それぞれは、水処理装置100-1~100-4それぞれから供給される水、つまり、水処理装置100-1~100-4それぞれの出口側の水(言い換えれば、水処理装置100-2~100-5それぞれの入口側の水)に含まれる不純物の濃度を測定する。濃度測定部200-6は、水処理装置100-5から供給される水、つまり、水処理装置100-5の出口側の水に含まれる不純物の濃度を測定する。このとき、濃度測定部200-1~200-6それぞれは、水処理装置100-1~100-5それぞれが不純物を除去するための所定の時間よりも短い時間間隔で測定するものであっても良い。例えば、水処理装置100-1~100-5それぞれが上述したようなそれぞれの滞留時間で水を処理する場合、濃度測定部200-1は3時間よりも短い時間間隔で、濃度測定部200-2は2時間よりも短い時間間隔で、濃度測定部200-3~200-6は1時間よりも短い時間間隔で、水処理装置100-1へ供給される水に含まれる不純物の濃度および水処理装置100-1~100-5それぞれから供給される水に含まれる不純物の濃度を測定する。濃度測定部200-1~200-6が測定する不純物の濃度は、水に含まれるTOC(Total Organic Carbon:全有機炭素)の濃度および尿素の濃度である。濃度測定部200-1~200-6それぞれを水処理装置100-1~100-5ごとに設ける理由は、水処理装置100-1~100-5における不純物の除去率を算出するためである。
【0016】
情報処理装置300は、濃度測定部200-1~200-6が測定した濃度を示す濃度情報を取得する。
図2は、
図1に示した情報処理装置300の内部構成の一例を示す図である。
図1に示した情報処理装置300は
図2に示すように、除去率算出部310と、濃度算出部320と、出力部330と、警告部340とを有する。なお、
図2には、
図1に示した情報処理装置300が具備する構成要素のうち、本形態に関わる主要な構成要素のみを示した。
【0017】
除去率算出部310は、水処理装置100-1~100-5それぞれにおける不純物を除去する除去率を算出する。除去率算出部310は、濃度測定部200-1~200-6が測定した濃度を示す濃度情報を取得し、取得した濃度情報が示す濃度に基づいて、水処理装置100-1~100-5それぞれの除去率を算出する。具体的には、除去率算出部310は、濃度測定部200-1~200-6が測定した、水処理装置100-1~100-5それぞれに供給される水に含まれる不純物の濃度と水処理装置100-1~100-5それぞれから供給される水に含まれる不純物の濃度とに基づいて、水処理装置100-1~100-5それぞれの除去率((水処理装置の入口側の不純物濃度-水処理装置の出口側の不純物濃度)/水処理装置の入口側の不純物濃度)を算出する。このとき、除去率算出部310は、濃度測定部200-1~200-6が濃度を測定する時間間隔で除去率を算出するものが好ましい。なお、除去率算出部310が算出した除去率は、情報処理装置300に具備された記憶手段(例えば、メモリ等の記憶媒体)や、情報処理装置300から情報の読み出しが可能な外部の記憶装置等の記憶部に記憶される。除去率算出部310が算出した除去率をそのような装置やデバイスに記憶しておくことで、過去に(前回)算出された除去率から著しく低下(悪化)した場合に警告を発信することや、水処理装置の残りのライフを予測すること、所定の時間(例えば、現在の時刻よりも1分前)の除去率を濃度算出部320における計算に使うことができる。
【0018】
濃度算出部320は、除去率算出部310が所定の時間前に算出した水処理装置100-1~100-5それぞれの除去率に基づいて、水処理装置100-1~100-5の最下流に接続された水処理装置(つまり、水処理装置100-1~100-5から構成された水処理システム)から供給される水に含まれる不純物の濃度を算出する。
図1に示した接続形態においては、最下流に接続された水処理装置は水処理装置100-5となる。濃度算出部320は、最上流に接続された水処理装置に流入される水に含まれる不純物の濃度と、除去率算出部310が所定の時間前(例えば、現在から最も近い過去の時点。1分間隔で除去率を算出している場合であれば、1分前)に算出した水処理装置100-1~100-5の除去率とに基づいて、最下流に配置された水処理装置から供給される水に含まれる不純物の濃度の予測値を算出する。さらに具体的に説明する。濃度算出部320は、最上流に配置された水処理装置に流入される水に含まれるTOCの濃度と、除去率算出部310が所定の時間前(例えば、1分前)に算出した水処理装置100-1~100-5の除去率とに基づいて、水処理装置100-1~100-5それぞれから供給される水のTOCの濃度の予測値を算出する。なお、濃度算出部320は、濃度を算出する際に、除去率算出部310が算出した除去率のほか、水処理装置100-1~100-5それぞれについてあらかじめ設定された除去率を用いるものであっても良い。
【0019】
図3は、
図2に示した濃度算出部320が算出した、水処理装置100-1~100-5におけるTOC予測値(TOCの濃度の予測値)の一例を示す図である。ここで、水処理装置100-1の上流(前段)に、被処理水が貯留されている水槽が配置されており、その水槽から被処理水が水処理装置100-1に供給されている。
【0020】
1分前の除去率は、1分前に濃度測定部200-1~200-6が測定した濃度に基づいて、除去率算出部310が水処理装置100-1~100-5それぞれの除去率を算出した値である。まず、水処理装置100-1に前段装置から供給される水に含まれるTOC値が900(ppb)であって、1分前の水処理装置100-1の除去率が70(%)である場合、濃度算出部320は、
900(TOC値)×(1-0.7(1分前の除去率))=270
として、水処理装置100-1から供給される水のTOC予測値を算出する。続いて、濃度算出部320は、
270(TOC予測値)×(1-0.2(1分前の除去率))=216
として、水処理装置100-2から供給される水のTOC予測値を算出する。続いて、濃度算出部320は、
216(TOC予測値)×(1-0.75(1分前の除去率))=54
として、水処理装置100-3から供給される水のTOC予測値を算出する。続いて、濃度算出部320は、
54(TOC予測値)×(1-0.93(1分前の除去率))=3.8
として、水処理装置100-4から供給される水のTOC予測値を算出する。続いて、濃度算出部320は、
3.8(TOC予測値)×(1-0.75(1分前の除去率))=0.95
として、水処理装置100-5から供給される水のTOC予測値を算出する。このようにして、濃度算出部320は、最下流に接続された水処理装置100-5から供給される水に含まれるTOC(不純物)の濃度をTOC予測値として算出する。
【0021】
なお、TOCには尿素が含まれる。一般的な水処理装置において尿素の除去率は、他の有機炭素等の不純物の除去率と比較して大きく異なる(低い)。そのため、尿素の除去率の算出は、TOCの除去率の算出とは別に行う場合がある。このような算出では、TOCの除去率、尿素の除去率および尿素分を除いたTOCの除去率を考慮する必要がある。実測した経験値として尿素濃度の20%がTOCとして検出されるとして良い。このように、水処理装置の入口側のTOCの値と出口側のTOCの値とをそのまま用いて除去率を算出するのではなく、尿素の成分の除去率とそれ以外の成分の除去率とをそれぞれ算出する方が、より正確なTOC除去率の値を得ることができる。つまり、水処理装置の入口側のTOCの値から尿素成分を差し引いた値を用いて除去率を算出するものが好ましい。
【0022】
出力部330は、濃度算出部320が算出した濃度を示す濃度情報を出力する。出力部330は、濃度算出部320が算出した濃度を示す濃度情報を表示するものであっても良いし、濃度情報を他の装置へ送信するものであっても良いし、濃度情報を印刷するものであっても良い。
【0023】
警告部340は、濃度算出部320が算出した濃度とあらかじめ設定された閾値とを比較する。警告部340は、比較の結果、濃度算出部320が算出した濃度が閾値を超えた場合、所定の警告を出力する。このとき、警告部340は、濃度を下げるための処理を行うための信号を出力する。この警告は、情報処理装置300から所定のアラート出力と同時に、濃度を下げるための処理を表示するものであっても良い。また、濃度を下げるための処理については、後述する。
【0024】
図4は、本形態における具体的な水処理システムの構成の一例を示す図である。
図4に示した水処理システムは、原水槽1001と、ろ過器1002と、ろ過水槽1003と、活性炭塔1004と、K塔1005と、D塔1006と、A塔1007と、純水槽1008と、RO装置1009と、RO水槽1010と、UV酸化装置1011と、SB-P塔1012と、超純水槽1013と、UV酸化装置1014と、CP+UF1015との水処理装置または水処理を行う手段が直列に接続されている。原水槽1001には被処理水である原水と再生水とが供給される。原水槽1001には、水中の尿素を除去するために尿素分解剤が注入される。尿素分解剤としては、次亜ハロゲン酸(例えば、次亜臭素酸、次亜塩素酸、次亜ヨウ素酸等)が挙げられる。次亜臭素酸としては、例えば、次亜臭素酸ナトリウムが挙げられる。原水槽1001から流出された水はろ過器1002でろ過され、ろ過水槽1003に供給される。ろ過水槽1003には回収水も供給される。ろ過水槽1003から流出された水は、TOC除去装置である活性炭塔1004に供給される。活性炭塔1004で処理された水は、強酸性陽イオン交換樹脂充填塔であるK塔1005に供給される。K塔1005で処理された水は、脱炭酸塔であるD塔1006に供給される。D塔1006には水中の炭酸ガスを除去するために空気が注入される。この空気に含まれるVOC(Volatile Organic Compounds)は、D塔1006におけるTOCの除去に悪影響を与える。D塔1006で処理された水は、強塩基性陰イオン交換樹脂充填塔であるA塔1007に供給される。A塔1007で処理された水は純水として純水槽1008に貯留される。純水槽1008に貯留された純水は逆浸透膜ろ過を行うRO装置1009に供給される。RO装置1009における膜透過水流量は、RO装置1009におけるTOCの除去に影響を与える。RO装置1009で処理された水はRO水槽1010に貯留される。RO水槽1010に貯留された水は紫外線(UV:UltraViolet)酸化装置であるUV酸化装置1011に供給されて処理され、SB-P塔1012に供給される。SB-P塔1012で処理された水は超純水として超純水槽1013に貯留される。超純水槽1013に貯留された超純水は紫外線酸化装置であるUV酸化装置1014に供給されて処理され、非再生型イオン交換装置(CP:Cartridge Polisher)と限外ろ過装置(UF:UltraFiltration membrane)であるCP+UF1015に供給されて処理される。CP+UF1015からは、処理がなされた処理水が、システムから供給水として外部へ供給されて、ユースポイントで使用される。ユースポイントで使用されなかった供給水は、リターン水として超純水槽1013に供給される。
【0025】
図4に示した構成において、警告部340が出力する濃度を下げるための処理としては、以下のものが挙げられる。なお、ここで系列は、水処理装置100-1~100-5内に、不純物を除去するために設けられる運転系列である。例えば、水処理装置100-1~100-5内に複数の系列が並列に設けられ、その複数の系列のうち、運用する際に使用する系列を切り替えることができるように設けられている。
・原水槽1001において再生水を受け入れない。
・尿素を除去するための尿素分解剤の注入量を増加させる。
・ろ過水槽1003において回収水を受け入れない。
・活性炭塔1004内の系列を変更する。
・K塔1005内の系列を変更する。
・D塔1006に空気の代わりに高純度窒素を注入する。
・A塔1007内の系列を変更する。
・RO装置1009内の系列を変更する。
・RO装置1009の流量を増加させる。
・UV酸化装置1011に具備されたランプの点灯本数を増加させる。
・UV酸化装置1014に具備されたランプの点灯本数を増加させる。
【0026】
このように、情報処理装置300は、所定の時間前に算出した水処理装置100-1~100-5それぞれの除去率に基づいて、現在の供給水を水処理装置100-1~100-5で処理した場合における最下流に配置された水処理装置100-5から供給される水に含まれる不純物の濃度を算出する。そのため、ユースポイントに供給する水の水質をあらかじめ把握することができる。
(第2の実施の形態)
【0027】
図5は、本発明の水処理システムの第2の実施の形態を示す図である。本形態における水処理システムは
図5に示すように、複数の水処理装置100-1~100-5と、情報処理装置301とを有する。なお、
図5には、水処理装置100-1~100-5が5つである場合を例に挙げているが、それらの数は限定しない。水処理装置100-1~100-5は、
図1に示したものと同じものである。
【0028】
図6は、
図5に示した情報処理装置301の内部構成の一例を示す図である。
図5に示した情報処理装置301は
図6に示すように、除去率算出部311と、濃度算出部321と、出力部330と、警告部340と、データベース351とを有する。なお、
図6には、
図5に示した情報処理装置301が具備する構成要素のうち、本形態に関わる主要な構成要素のみを示した。出力部330および警告部340それぞれは、第1の実施の形態におけるものとそれぞれ同じものである。
【0029】
データベース351は、過去の使用実績を記憶する。
図7は、
図6に示したデータベース351に記憶された過去の使用実績を示す情報の一例を示す図である。
図6に示したデータベース351には
図7に示すように、系列と収量と機能材ライフと除去能率とが対応付けられている。系列は、上述した通りのものである。収量は、その系列の定収量に占める採水量の割合であって、単位は(%)である。再生型イオン交換装置の場合、装置として不純物の除去機能を発揮できる採水量には設計上の定量がある。その定量を定収量と呼ぶ。採水量が定収量に到達した再生型イオン交換装置は、再生工程を経ることにより不純物の除去機能を回復できる。機能材ライフは、その系列に充填されている機能材の経過年数を示す。除去能率は、その系列における不純物の除去能率であって、単位は(%)である。例えば、
図7に示すように、系列Aについて、収量10と機能材ライフ5.0と除去能率80とが対応付けられて記憶されている。これは、機能材が充填されて5年が経過した系列Aに定収量のうちの10(%)の水を流した時の除去能率が80(%)であった実績を示している。ここで、充填されていた5年間は、当該機能材に対して定収量と再生とが5年間の間繰り返し行われていることを示している。例えば、一般的に定収量は24時間であるため、5年間で定収量と再生とが約1800回繰り返されている。以下に説明する機能材ライフについても同様である。また、系列Bについて、収量100と機能材ライフ1.5と除去能率85とが対応付けられて記憶されている。これは、機能材が充填されて1.5年が経過した系列Bに定収量のうちの100(%)の水を流した時の除去能率が85(%)であった実績を示している。また、系列Cについて、収量50と機能材ライフ3.3と除去能率87とが対応付けられて記憶されている。これは、機能材が充填されて3.3年が経過した系列Cに定収量のうちの50(%)の水を流した時の除去能率が87(%)であった実績を示している。また、系列Dについて、収量75と機能材ライフ0.5と除去能率90とが対応付けられて記憶されている。これは、機能材が充填されて0.5年が経過した系列Dに定収量のうちの75(%)の水を流した時の除去能率が90(%)であった実績を示している。データベース351に記憶される対応付けは、これらだけではなく、多数であることは言うまでもない。データベース351に記憶される対応付けの数は、多いほど好ましい。例えば、系列A~Dを過去に利用したときの実績データをすべて記憶しておき、水処理装置100-1~100-5で現在使用している系列A~Dの使用状況と同様の対応付けを見つけることができるようにしておくことが好ましい。
【0030】
除去率算出部311は、水処理装置100-1~100-5それぞれを構成する系列の現在の使用状態と、データベース351に記憶されている、水処理装置100-1~100-5それぞれを構成する系列の過去の使用実績から得られた不純物を除去する能力である除去能率とに基づいて、水処理装置100-1~100-5それぞれにおける除去率を算出する。この不純物は、例えば、有機炭素である。例えば、水処理装置100-1が、A~D系列から構成され、A系列の現在の収量が10(%)であって充填された機能材が5年間経過しており、B系列の現在の収量が100(%)であって充填された機能材が1.5年間経過しており、C系列の現在の収量が50(%)であって充填された機能材が3.3年間経過しており、D系列の現在の収量が75(%)であって充填された0.5年間経過している場合、除去率算出部311は、データベース351に記憶されている各系列の状態と同じ(最も近い)データを検索し、そのデータと対応付けられている除去率(除去能率)を取得し、取得した除去能率を用いて水処理装置100-1の現在の除去率を算出する。例えば、
図7に示すような値がデータベース351に記憶されている場合、除去率算出部311は、A~D系列それぞれの除去能率を平均するものであっても良いし、A~D系列の構成割合を重みづけとして、それぞれの除去能率に乗じて全体の除去率を算出しても良い。このように、除去率算出部311は、1つの水処理装置に使用されている複数の系列について、それぞれの除去能率の平均値を算出して、その水処理装置における除去率とするものであっても良いし、使用している系列の使用実績から得られたデータの中から最も近いデータを検索して水処理装置の現在の除去率を算出するものであっても良い。
【0031】
濃度算出部321は、除去率算出部311が算出した水処理装置100-1~100-5それぞれの除去率に基づいて、現在の供給水を水処理装置100-1~100-5で処理した場合における水処理装置100-1~100-5の最下流に配置された水処理装置から供給される水に含まれる不純物の濃度を算出する。
図6に示した接続形態においては、最下流に配置された水処理装置は水処理装置100-5となる。濃度算出部321は、最上流に配置された水処理装置に流入される水に含まれる不純物の濃度と、除去率算出部311が算出した水処理装置100-1~100-5の除去率とに基づいて、最下流に配置された水処理装置から供給される水に含まれる不純物の濃度を算出する。例えば、最上流に配置された水処理装置100-1に流入される水に含まれる不純物の濃度が1000(ppb)であり、水処理装置100-1の除去率が80%であり、水処理装置100-2の除去率が75%であり、水処理装置100-3の除去率が70%であり、水処理装置100-4の除去率が65%であり、水処理装置100-5の除去率が60%である場合、
1000×(1-0.8)×(1-0.75)×(1-0.7)×(1-0.65)×(1-0.6)=2(ppb)
が最下流に配置された水処理装置100-5から供給される水に含まれる不純物の濃度となる。なお、この数値は説明の便宜上の値であって、通常のシステムで実際に使用されるものではない。
【0032】
このように、情報処理装置301は、水処理装置100-1~100-5を構成する系列の現在の使用状態と、水処理装置100-1~100-5を構成する系列の過去の使用実績から得られた不純物を除去する能力である除去能率とに基づいて、水処理装置100-1~100-5それぞれにおける除去率を算出し、算出した水処理装置100-1~100-5それぞれの除去率に基づいて、最下流に配置された水処理装置100-5から供給される水に含まれる不純物の濃度を算出する。そのため、水処理装置100-1~100-5それぞれにおける処理に時間がかかる場合であっても、水処理装置100-1~100-5を構成する系列の現在の状況に基づいて除去率を算出することで、ユースポイントに供給する水の水質をあらかじめ把握することができる。
【0033】
以上、各構成要素に各機能(処理)それぞれを分担させて説明したが、この割り当ては上述したものに限定しない。また、構成要素の構成についても、上述した形態はあくまでも例であって、これに限定しない。また、各実施の形態を組み合わせたものであっても良い。
【0034】
また、情報処理装置300,301をクラウド上に設け、本システムの保守/運用/管理を行う管理者が通信端末を用いてインターネットを介して情報処理装置300,301にアクセスし、情報の入力や出力を受けるものであっても良い。
【0035】
上述した情報処理装置300、301それぞれが行う処理は、目的に応じてそれぞれ作製された論理回路で行うようにしても良い。また、処理内容を手順として記述したコンピュータプログラム(以下、プログラムと称する)を、情報処理装置300、301それぞれにて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを情報処理装置300、301それぞれに読み込ませ、実行するものであっても良い。情報処理装置300、301それぞれにて読取可能な記録媒体とは、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)、Blu-ray(登録商標) Disc、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの移設可能な記録媒体の他、情報処理装置300、301それぞれに内蔵されたROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリやHDD(Hard Disc Drive)等を指す。この記録媒体に記録されたプログラムは、情報処理装置300、301それぞれに設けられたCPUにて読み込まれ、CPUの制御によって、上述したものと同様の処理が行われる。ここで、CPUは、プログラムが記録された記録媒体から読み込まれたプログラムを実行するコンピュータとして動作するものである。
【符号の説明】
【0036】
100-1~100-5 水処理装置
200-1~200-5 濃度測定部
300,301 情報処理装置
310,311 除去率算出部
320,321 濃度算出部
330 出力部
340 警告部
351 データベース