(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045689
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】油類及びカビ臭の自動検出装置及び臭いセンサ付き魚類による毒物自動監視装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/18 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
G01N33/18 E
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151411
(22)【出願日】2020-09-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】507371272
【氏名又は名称】環境電子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500548943
【氏名又は名称】山本 隆洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002549
【氏名又は名称】特許業務法人綾田事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆洋
(57)【要約】
【課題】原水の水質監視において魚類による毒物自動監視装置に油臭とカビ臭の検出プロセス機器を一体型としてキャビネットに内包し24時間連続無人監視を自動で行わなければならない。また原水を温め蒸気に弱い臭い検知センサ素子面に乾燥空気を暴露するプロセスを小型で効率の良いものにしなければならない。
【解決手段】同じ原水で臭い(匂い、ニオイ、におい、臭気、等は同じ意味)検出プロセスの機能はまず気化部1で発生した高湿度空気を除湿部11で中湿度空気にし、恒温部16で低湿度空気にしてセンサ部17で乾燥空気を二種類以上のセンサ素子17-1、17-2に暴露する4段階の湿度除去プロセスによってセンサ部17で重い臭い物質を底部に軽い通常空気を上部に置換する下方置換法により臭いを検出する機能と毒物を検出ための監視水槽の魚類を監視カメラと画像処理装置と周辺制御装置等の別のプロセスで検出する二つの機能を1台のキャビネット112内に一体型としてコンパクトに組み込んだ。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水が連続的に供給される原水容器内の原水を加熱して高湿度空気を発生させる気化部と、
前記気化部で発生した高湿度空気を中湿度空気にする除湿部と、
前記除湿部で除湿した中湿度空気を更に低湿度空気にする恒温部と、
前記恒温部で除湿された低湿度空気をセンサケース内で重い臭い物質空気を底部に軽い通常空気を上部に置換する下方置換法によりセンサケース内底部に備えたセンサ素子に向けて乾燥空気を暴露して臭いを検出するセンサ部と、
を備えることを特徴とする臭気による毒物自動検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の臭気による毒物自動検出装置において、
前記気化部には、原水を加熱する水加熱ヒーターと、原水容器内の加熱された原水にエアーポンプにより空気を吹き込んで高湿度空気に蒸気化するエアーストーンと、を備え、
前記除湿部は、前記気化部で発生した高湿度空気を流し込む蒸気管と、蒸気管を囲む冷却水循環管を備えることで冷却装置から冷水が循環供給される冷却水循環管内を流れる冷水により中湿度空気に除湿し、
前記恒温部は、恒温部ケース内に除湿部の蒸気管に接続された蒸気管より小径の過熱管と、過熱管を流れる中湿度空気を過熱して低湿度空気に除湿する空気加熱ヒーターを備え、
前記センサ部は、センサ部ケース内の底部に設置した複数のセンサ素子に乾燥空気を暴露することで物質の違う臭いを検知することを特徴とする臭気による毒物自動検出装置。
【請求項3】
請求項2記載の臭気による毒物自動検出装置において、
前記複数のセンサ素子は、感応膜圧電共振センサと、酸化スズ半導体センサを用いることを特徴とする臭気による毒物自動検出装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の臭気による毒物自動検出装置において、
前記気化部のエアーストーンには、エアーポンプで供給する空気の風量を測定する第1フローメーターと、エアーポンプで供給する空気から外臭を除去する脱臭器と、を備え、
前記エアーストーンは、水過熱ヒーターの下部に設置し、水過熱ヒーターの過熱金属部に多量の泡を接触させることで加温と臭い物質の分離を促進させて水面で泡を弾けさせ、多数の泡が弾けるときの空気圧で発生している蒸気化した高湿度空気を除湿部の蒸気管へ流し込むように構成されていることを特徴とする臭気による毒物自動検出装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載の臭気による毒物自動検出装置において、
前記蒸気管は冷却水循環管内を貫通し出口側が下方に傾斜し、冷却水循環管は冷却装置からの冷却水が蒸気管の出口側の下側の入水口から入水し蒸気管の 入口側の上側の出水口に向かって流れ出水口から冷却装置に戻す循環式であり、蒸気管内の温空気が上から下に流れるのに対して冷却水は逆に下から上に流れる構造で蒸気管の冷却効果を上げ、蒸気管は下部で露出となり冷却水との温度差により蒸気管内で発生した結露水を下部に溜める構造で結露溜口に接続した排水管とそれに具備した電磁弁で自動で定期的に結露水を排出することで中湿度空気となり結露溜口の上部で異径小管の過熱管を接続することを特徴とす臭気による毒物自動検出装置。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか1項に記載の臭気による毒物自動検出装置において、
前記異径小管の過熱管は恒温部内で加熱面積を増やすためにS字型に加工され、過熱管の下部に空気加熱ヒーターが設置され温度調整コントローラーで設定温度に保つことで過熱管内の空気を低湿度空気にしてセンサ部で乾燥空気をセンサ素子に暴露することを特徴とする臭気による毒物自動検出装置。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載の臭気による毒物自動検出装置において、
前記センサ部ケース内のセンサ素子に脱臭器を通って新鮮なエアーを吹き付けてクリーンにするエアーパージファンと、脱臭器の下流側に定期的に開閉する電磁弁を備え、
前記センサ部ケースの天上部から第2フローメーターを介して空気が排出されることを特徴とする臭気による毒物自動検出装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の臭気による毒物自動検出装置と、魚類を監視カメラと画像処理装置や周辺制御装置等の別のプロセスで毒物を検出する魚類による毒物自動監視装置とを、1台のキャビネット内に一体型としてコンパクトに組み込んだことを特徴とする臭いセンサ付き魚類による毒物自動監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水道法により河川表流水や湖沼水や地下水やダム水等の水道原水を連続で浄水場に引き込み浄水処理により安全な水道水を市民に供給している。そのためには有毒物質に指定された51品目は毎月サンプリング検査が行われている。しかし連続水を浄水処理する浄水場においては毒物混入はいつ起こるか分からないため、入水口に毒物混入を想定した魚類による連続監視を法律で義務化している。サンプリング検査では連続水は必ず未検査があることから魚類監視は法律上でも義務であるが水道水の安全性確保には必要な検査方法であると言える。
【0002】
水槽に金魚や河川魚を飼育しておき原水をバイパスで引き込み監視者が24時間目視監視をするが、肉体的な疲労から見誤りや見損ないなどの課題や人員不足等から自動で魚類を監視をする毒物自動監視装置が徐々に普及してきた。2001年「米国の同時多発テロ」後に厚生労働省から国内におけるテロ事件発生に関する対応として水道水のより一層の監視の重要性が指摘されたことで魚類を使った毒物自動監視装置が注目され広く普及するきっかけとなった。魚類を使った毒物自動監視装置は国内では数社が製造販売している。しかし解析方法の技術は各メーカ独自開発で、例えば監視カメラと画像処理方式や電極による活動電位式、バクテリアによる酸素量測定式などが普及している。
【0003】
しかし浄水場の水質事故は毒物混入事故より油流入事故の方が多い、灯油を河川に流したり車が河川に落ち油が流れ出たり、大雨による油流出事故等が事例としてある。そのため浄水場は対策として取水口に油分検知装置を設置している。
【0004】
ところがこの数年の異常気象でカビ臭物質産生藍藻(カビ臭藍藻)の増殖でカビ臭のジェオスミン、2-メチルイソボルネオール(以後2-MIBと表記)が水道施設の浄水場で検知され市民からも水道水からカビ臭がするとの苦情が全国的の多く寄せられてきた。カビ臭の検知は従来のガスやアルコールなどの検知に使用される酸化スズ半導体センサでは検知ができず、唯一検出できるのは人の鼻と質量分析器のガスクロマトグラフィであるが解析結果が出るまで専門の技術者で数時間かかり即応性から課題があり製品も高額であることから広く普及に至っていない。浄水場の水質管理者は市民の苦情解決には敏速性が要求されることから鼻で数分間隔に嗅ぐことを24時間交代制で行いカビ臭を嗅ぐと速やかに活性炭を原水に投入してカビ臭の除去作業を行うが、投入タイミングが遅れると苦情につながる。またカビ臭が無くてもいつ発生するか分からないため活性炭の投入を続け活性炭の費用が増加して経済的な負担が多くなることも関連課題であった。カビ臭の発生や終息を自動で知らせることができれば水質管理者の肉体的な負担を軽減し、経済的な負担も最小限に抑えることができることから開発が望まれている。
【0005】
カビ臭の検知の技術的な課題としては市民の少数だが水道水からカビ臭を微量濃度でも分かる市民がいることである、カビ臭は梅雨がある日本人特有の鼻の敏感性ともいわれている。その微量濃度は5Ng/L(5PPT≒0.000005mg/L)~3Ng/Lと言われており科学機器では現在質量分析器のガスクロマトグラフィでしか検出できない。即応性が良く誰でもが簡単にカビ臭が24時間無人で連続自動検査ができ価格も安価のものが望まれている。そのため各社で開発が進められているが課題が数件ある。まずカビ臭の試験溶液は市販されており利用し易いがメタノール溶媒で溶解しているため純水などの真水などに直接溶解した試験水が無いことである。広くガスやアルコール検出などで利用されている酸化スズ半導体センサ等ではメタノールを検出していることが多い。カビ臭検出の実験には固形物のカビ物質を直接水に溶解する課題を解決する必要がある。更に魚類による毒物自動監視装置の機能に油臭とカビ臭を検出する臭い検出機能の二つの機能を内包し一体化することで省力化、設置スペースの解消、コストの節減化、等を図ることができ安全な水道水の供給を使命とする水道事業者から望まれていることである。
【背景技術】
【0006】
河川表流水や湖沼水や地下水やダム水等の原水に有毒物質が混入する事故の事例として、2012年に利根川水系からホルムアルデヒド(がん要因物質)が検出され、取水停止措置により87万人が断水の影響を受けた。また某ハム工場の地下水でシアンが検出され全国のスーパーからハムを含めた商品が返品され会社の存亡に影響した事例もある。有毒物質はPCB(ポリ塩化ビフェニール)などの有機塩素系化合物、水銀、カドミュム、鉛、亜鉛、六価クロムなどの有害重金属、史上最悪といわれるダイオキシン、急性毒物であるシアン化カリウムや農薬などあげればきりがないほどである。また化学物質が河川などで他の物質と化学反応を起こして有毒物質に変化する複合毒性の可能性も含んでいる。
【0007】
公共水道や食品工場などは、いち早く有毒物質の原水混入を検知して取水を停止するなどの最善処置が求められる。そのためには魚類を使った毒物監視のバイオアッセイ法(生物検定法とも言う)は昔から広く認知され使用されてきた。毒物の混入は場合によっては人間の生死にかかわるためバイオアッセイ法は水道法で設置が義務付けされており水道法の第23条1項には給水の緊急停止がうたわれており水道事業者は、その供給する水が人の健康を害する恐れがあることを知ったときは、直ちに給水を停止し、かつ、その水を使用することが危険である旨を関係者に周知させる措置を講じなければならない。
【0008】
罰則規定(水道法 第52条)第23条1項の規定に違反した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金などの刑法の適用があり厳しく規定されている。バイオアッセイ法は法律でも規定されておりテロ対策からも重要な設備である。テロの事例としては、成田国際空港の整備に対して、過激派によって昭和53年6月千葉県北総浄水場への廃油・毒物投入事件が発生している。近年では、第三者による水道施設内への侵入、毒物の投入事件が発生している。
【0009】
魚類を監視水槽に飼育して目視監視や毒物自動監視装置が広く実用に供されているが、原水の水質汚染事故の種類は油類の事故が圧倒的に多く下記表3(日本水道協会 水質異常の監視・対策指針2019より)に水質汚染事故項目と年度別変化表で見ることができる。
【表3】
【0010】
この数年の異常気象によりカビ臭の苦情が多く寄せられている。異常気象でカビ臭物質産生藍藻(カビ臭藍藻)の増殖でカビ臭のジェオスミン、2-メチルイソボルネオール(2-MIB)が水道施設の浄水場で検知されている。そのため魚類を使った毒物自動監視装置内に油臭とカビ臭を検出する機能を内包し一体型の装置の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特願平9-115589号公報
【特許文献2】特願2016-179079号公報
【特許文献3】特願2018-006846号公報
【特許文献4】特願2018-161629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者は長年メダカを使った毒物自動監視装置の研究開発から実用化までを担ってきたが水道管理者の近々の課題でもある油分流入事故やカビ臭の苦情などの解決のために既に実用に供せられているメダカを使った水質毒物自動監視装置に臭い物質を検出する機能を内包し一体化することで原水監視の省力化、設置スペースの削減、コストの節減、等で水道事業に貢献できる。
【0013】
現在、油分を検知する自動油分測定法には,ヘキサンに抽出された物質の質量を測定するヘキサン抽出法や紫外線照射による紫外蛍光法,高分子膜を使用するオルガスタ法,におい感応膜に吸着したにおい分子質量を測定する水晶振動式などがある。また,油膜の検知法として,浮上油を油膜として検出する比誘電率法,水面に光を照射し反射光を測定する光反射法などがあるが、いずれも形状が大きく高額で操作性も複雑でメダカを使った毒物自動監視装置に内包し一体化することはできなかった。
【0014】
油分が浄水場の着水井やろ過池等に一旦入ると清掃しても油残臭が除去できず水道水の油臭苦情になり困っていた。法律で魚類による毒物監視が規定されている以上、魚類による毒物監視装置は必ず設置しなければならないのであれば油臭とカビ臭を検出できる機能を内包し一体化することは浄水場の水質管理者は、省力化、設置スペースの削減、コストの節減、等に大きなメリットがある。
【0015】
また、カビ臭においてはカビ臭の原因はカビそのものではなく、水道水源であるダム、湖沼、貯水池、及び河川等で繁殖する藻類等が産生する物質が原因であり藍藻類の中でも問題となる種類は、Pholmi-dium(フォルミディウム)、Anabena(アナベナ)等が知られており、これらが増殖すると、ジェオスミンと2-MIB(2-メチルイソボルネオール)が産生されカビ臭が発生する。
【0016】
水道水の原料である河川表流水や湖沼水や地下水やダム水等の原水中に溶け込んだ臭い物質を鼻で嗅ぐ方法は「JIS-K-0120」に記載されており、その一文に「試料は約40℃に温め」と記載されている。また「上水試験方法」にも臭気の試験操作に関して「検水は40~50℃に温め、激しく振る」と記載されている。過去の知見や反応速度法によれば反応速度に影響を与える要素は触媒の他に反応湿度とあり原水の臭い物質を有効に検出するには原水を40℃~50℃に温めなければならない。さらに温めながら激しく振ることで水中の臭い物質を分離し気化しなければ臭いが検出できないことが理解できる。
【0017】
しかし臭いを含む原水を40℃~50℃に温めると蒸気が発生するためセンサ素子表面に蒸気が付着してセンサが機能しなくなる課題を発明者は既に確認している。また臭い物質が分離し気化するために温めて激しく振る代案としてエアーポンプとエアーストーンで解決できると考えられる。実際に某浄水場では原水を蒸気化して関係者が鼻で嗅いているのを確認している。また「JIS-K-0120」と「上水試験方法:日本水道協会発行」の検出方法に準じた製品にしなければならない。
【0018】
課題の解決のためには小型汎用品で性能が保証された安価で容易に入手し易い機器を選択しなければならない。特にセンサ素子部の酸化スズ半導体センサはガスや油臭に敏感に反応する特性があるが珪藻類から発生するカビ臭は感応度が弱く、別の感応膜圧電共振センサの方が敏感に反応する特性を持つことが分かった。酸化スズ半導体センサで油臭を検出し、カビ臭は感応膜圧電共振センサの2種類以上のセンサ素子を使用すれば油臭もカビ臭も検出できると考えられる。
【0019】
原水を40℃から50℃に温めると必ず蒸気が発生し、いずれのセンサ素子も蒸気には弱く素子表面に蒸気が付着すると検出機能が低下し不能の状態になる課題がある。そのためには発生時の95%以上の蒸気化した湿度を除去してセンサ素子部においては湿度を30%以下で暴露が望ましい。
【0020】
カビ臭の2-MIBの分子量は168であり通常空気は99%が窒素と酸素で構成されており窒素N2分子量≒28、酸素O2分子量≒32で合計60であることから単純に考えて2-MIBは空気より重い物質と考えられることから、いわゆる下方置換で2-MIBを蒸気と共に移送しながら湿度を除去するシステムプロセスが必要となる。
【0021】
システムプロセスは1台のキャビネット規格寸法内に毒物自動監視用の機器と内包しなければならず、そのためにはプロセス機器を小型化しメンテナンスを考慮しなければなしなければならない。また24時間連続無人で監視をするためにはセンサ素子面に付着している物質を自動的に除去し部内も定期的にクリーンにする必要がある。
【0022】
魚類による毒物自動監視装置内の監視水槽の魚類(例えばメダカ)等に数種の油類を暴露しても油類は水面に浮く状態で監視水槽に飼育している魚類に死亡や異常行動は見られなかった、またカビ臭物質のジェオスミンや2-MIB(2-メチルイソボルネオール)も魚類に影響を与えないことから現状の魚類による毒物自動監視装置で油類やカビ臭物質をバイオアッセイ法で検出することができないことが分かった。
【0023】
原水中の油分検知装置は他社で浮上油を油膜として検出する比誘電率法や水面に光を照射し反射光を測定する光反射法や臭気測定装置などの製品があるが、いずれも魚類による毒物自動監視装置と一体となった製品は見当たらない。また原水中のカビ臭物質の検知で公開されているものは汚染物質含有水を?定のpHにし、センサとして次の(I)?(V)からなるCD誘導体を添加して紫外線を照射し、特定の波?での蛍光強度を測定し汚染を検出・特定する。使?するCD誘導体は、(I)3-デオキシ-3-(6-ヒドロキシ-2-ナフトアミド)-βCD、(II)3-デオキシ-3-(3-ヒドロキシ-2-ナフトアミド)-βCD、(III)3-デオキシ-3-(3-ヒドロキシ-2-ナフトアミド)-γCD、(IV)3-デオキシ-3-(6-ヒドロキシ-1-ナフトアミド)-γCD、(V)3-デオキシ-3-(2-ヒドロキシ-1-ナフトアミド)-αCDである。
との記載があるが、実用化は現在のところ見られない。唯一検出できるのは質量分析器のガスクロマトグラフィであるが解析結果が出るまで専門の技術者で数時間かかり即応性から課題があり製品も高額であることから広く普及に至っていない。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するため請求項1記載の臭気による毒物自動検出装置は、
原水が連続的に供給される原水容器内の原水を加熱して高湿度空気を発生させる気化部と、
前記気化部で発生した高湿度空気を中湿度空気にする除湿部と、
前記除湿部で除湿した中湿度空気を更に低湿度空気にする恒温部と、
前記恒温部で除湿された低湿度空気をセンサケース内で重い臭い物質空気を底部に軽い通常空気を上部に置換する下方置換法によりセンサケース内底部に備えたセンサ素子に向けて乾燥空気を暴露して臭いを検出するセンサ部と、
を備えることを特徴とする。
【0025】
請求項2記載の臭気による毒物自動検出装置は、請求項1記載の臭気による毒物自動検出装置において、
前記気化部には、原水を加熱する水加熱ヒーターと、原水容器内の加熱された原水にエアーポンプにより空気を吹き込んで高湿度空気に蒸気化するエアーストーンと、を備え、
前記除湿部は、前記気化部で発生した高湿度空気を流し込む蒸気管と、蒸気管を囲む冷却水循環管を備えることで冷却装置から冷水が循環供給される冷却水循環管内を流れる冷水により中湿度空気に除湿し、
前記恒温部は、恒温部ケース内に除湿部の蒸気管に接続された蒸気管より小径の過熱管と、過熱管を流れる中湿度空気を過熱して低湿度空気に除湿する空気加熱ヒーターを備え、
前記センサ部は、センサ部ケース内の底部に設置した複数のセンサ素子に乾燥空気を暴露することで物質の違う臭いを検知することを特徴とする臭気による毒物自動検出装置。
【0026】
請求項3記載の臭気による毒物自動検出装置は、請求項2記載の臭気による毒物自動検出装置において、
前記複数のセンサ素子は、感応膜圧電共振センサと、酸化スズ半導体センサを用いることを特徴とする。
【0027】
請求項4記載の臭気による毒物自動検出装置は、請求項2又は3に記載の臭気による毒物自動検出装置において、
前記気化部のエアーストーンには、エアーポンプで供給する空気の風量を測定する第1フローメーターと、エアーポンプで供給する空気から外臭を除去する脱臭器と、を備え、
前記エアーストーンは、水過熱ヒーターの下部に設置し、水過熱ヒーターの過熱金属部に多量の泡を接触させることで加温と臭い物質の分離を促進させて水面で泡を弾けさせ、多数の泡が弾けるときの空気圧で発生している蒸気化した高湿度空気を除湿部の蒸気管へ流し込むように構成されていることを特徴とする。
【0028】
請求項5記載の臭気による毒物自動検出装置は、請求項2~4のいずれか1項に記載の臭気による毒物自動検出装置において、
前記蒸気管は冷却水循環管内を貫通し出口側が下方に傾斜し、冷却水循環管は冷却装置からの冷却水が蒸気管の出口側の下側の入水口から入水し蒸気管の入口側の上側の出水口に向かって流れ出水口から冷却装置に戻す循環式であり、蒸気管内の温空気が上から下に流れるのに対して冷却水は逆に下から上に流れる構造で蒸気管の冷却効果を上げ、蒸気管は下部で露出となり冷却水との温度差により蒸気管内で発生した結露水を下部に溜める構造で結露溜口に接続した排水管とそれに具備した電磁弁で自動で定期的に結露水を排出することで中湿度空気となり結露溜口の上部で異径小管の過熱管を接続することを特徴とする。
【0029】
請求項6記載の臭気による毒物自動検出装置は、請求項2~5のいずれか1項に記載の臭気による毒物自動検出装置において、
前記異径小管の過熱管は恒温部内で加熱面積を増やすためにS字型に加工され、過熱管の下部に空気加熱ヒーターが設置され温度調整コントローラーで設定温度に保つことで過熱管内の空気を低湿度空気にしてセンサ部で乾燥空気をセンサ素子に暴露することを特徴とする。
【0030】
請求項7記載の臭気による毒物自動検出装置は、請求項4~6のいずれか1項に記載の臭気による毒物自動検出装置において、
前記センサ部ケース内のセンサ素子に脱臭器を通って新鮮なエアーを吹き付けてクリーンにするエアーパージファンと、脱臭器の下流側に定期的に開閉する電磁弁を備え、
前記センサ部ケースの天上部から第2フローメーターを介して空気が排出されることを特徴とする。
【0031】
請求項8記載の臭いセンサ付き魚類による毒物自動監視装置は、請求項1~7のいずれか1項に記載の臭気による毒物自動検出装置と、魚類を監視カメラと画像処理装置や周辺制御装置等の別のプロセスで毒物を検出する魚類による毒物自動監視装置とを、1台のキャビネット内に一体型としてコンパクトに組み込んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明の臭気による毒物自動検出装置では、上述のように構成することで、以下に述べるような効果が得られる。
すなわち、先ず気化部で加熱して発生した高湿度空気を除湿部と恒温部とで除湿した低湿度空気を、センサ部において重い臭い物質空気を底部に軽い通常空気を上部に置換する下方置換法によりセンサケース内底部に備えたセンサ素子に乾燥空気を暴露して原水に含まれる臭いを効率的に検出することができる。
【0033】
また、原水容器内の加熱された原水にエアーポンプにより空気を吹き込んで高湿度空気に蒸気化するエアーストーンを備えることで、臭い物質を分離し気化することで臭い検知効果を高めることができる。
【0034】
また、除湿部は、気化部で発生した高湿度空気を流し込む蒸気管と、蒸気管を囲む冷却水循環管を備えることで冷却装置から冷水が循環供給される冷却水循環管内を流れる冷水により効率的に中湿度空気に除湿することができる。
【0035】
また、恒温部は、恒温部ケース内に除湿部の蒸気管に接続された蒸気管より小径の過熱管と、過熱管を流れる中湿度空気を過熱する空気加熱ヒーターを備えることで、低湿度空気に除湿することができる。
【0036】
また、センサ部は、センサ部ケース内の底部に設置した複数のセンサ素子に乾燥空気を暴露することで物質の違う臭いを検知することができる。
また、複数のセンサ素子として、感応膜圧電共振センサと、酸化スズ半導体センサを用いることで、油臭とカビ臭を同時に検出することができる。
【0037】
また、気化部のエアーストーンには、エアーポンプで供給する空気から外臭を除去する脱臭器を備えることで、外臭を除去することができる。
【0038】
また、エアーストーンは、水過熱ヒーターの下部に設置し、水過熱ヒーターの過熱金属部に多量の泡を接触させることで加温と臭い物質の分離を促進させると共に、水面で泡を弾けさせ、多数の泡が弾けるときの空気圧で発生している蒸気化した高湿度空気を除湿部の蒸気管へ流し込むことができる。
【0039】
また、蒸気管は冷却水循環管内を貫通し出口側が下方に傾斜し、冷却水循環管は冷却装置からの冷却水が蒸気管の出口側の下側の入水口から入水し蒸気管の入口側の上側の出水口に向かって流れ出水口から冷却装置に戻す循環式とすることで、蒸気管内の温空気が上から下に流れるのに対して冷却水は逆に下から上に流れるため、蒸気管の冷却効果を上げることができる。
【0040】
また、蒸気管は下部で露出となり冷却水との温度差により蒸気管内で発生した結露水を下部に溜める構造とし、結露溜口に接続した排水管とそれに具備した電磁弁で自動で定期的に結露水を排出し、結露溜口の上部で異径小管の過熱管を接続することで。中湿度空気を効率的に恒温部送り込むことができる。
【0041】
また、異径小管の過熱管はS字型に加工し、過熱管の下部に空気加熱ヒーターを設置することで、恒温部内で加熱面積を増やし、狭いスペース内で効率的に加熱することができる。
【0042】
また、センサ部ケース内のセンサ素子に脱臭器を通って新鮮なエアーを吹き付けるエアーパージファンを備えることで、センサ素子をクリーンにすることができる。
また、脱臭器の下流側に定期的に開閉する電磁弁を備えることで、エアーパージファンの停止中にエアーパージ口からの空気の進入を防止することができる。
【0043】
また、気化部に空気を送り込むエアーポンプの第1フローメーターと、センサ部ケースの天上部に備えた第2フローメーターの風量を一定にすることで、途中で空気が漏れもなくセンサ部に到達していることを確認することができる。
【0044】
本発明の臭いセンサ付き魚類による毒物自動監視装置では、上述のように構成することで、以下に述べるような効果が得られる。
すなわち、水道原水などの有毒物質の混入を検知するバイオアッセイ法と言われる魚類を使用した毒物自動監視装置内に油臭やカビ臭を検出できるプロセス機器である臭気による自動検出を内包し一体型にしたことで省力化、設置スペースの削減、コストの節減、等を図り水道水の安全と快適な食生活に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】実施例1の臭いセンサ付き魚類による毒物自動監視装置のキャビネットに内包する臭いを検知する機能を一体型にした機器配置の構成図である。
【
図2】実施例1の臭いセンサ付き魚類による毒物自動監視装置の臭いを検出する機能のプロセスの構成図である。
【
図3】実施例1の臭いセンサ付き魚類による毒物自動監視装置の臭いを検出するプロセス機器の斜視図である。
【
図4】実施例1の臭気による毒物自動検出装置を小型キャビネットに組み込んだ単独装置を示す構成図である。
【
図5】実施例1の臭気による毒物自動検出装置におけるカビ2-MIB濃度5Ng/Lを検出した検出試験結果であるパソコン画面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下にこの発明を図面に基づいて説明する。
【実施例0047】
実施例1の臭いセンサ付き魚類による毒物自動監視装置100は、
図1に示すように、キャビネット112はEIA規格の量産品で軽量だが高剛性のうえ耐震構造で前後左右の面が開閉できるため機器取付やメンテナンス性に優れている。キャビネット112の上半分に魚類による毒物自動監視装置120を収納し、下半分に臭いを検出する機能である臭気による毒物自動検出装置130を収納してある。キャビネット112の寸法は横幅700mm高さ1800mm奥行き700mmで前面がアクリル板付きの片面扉で左右面と裏面も開放が可能な量産規格品であるが他の規格品や独自設計のキャビネットを利用しても良い。
【0048】
まず、上半分の魚類による毒物自動監視装置110に関して説明をする。上半分の下段に監視水槽103が設置され水槽には魚類107のヒメダカが15~20匹常時飼育されている。自然界のメダカ(学名 Oryzias)はレッドリスト絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)に記載され、希少魚類で捕獲ができないがヒメダカは養殖魚であるため対象外である。ヒメダカはOECD(経済協力開発機構)の毒性ガイドラインの試験魚に指定されているほどで飼育繁殖が容易で最長5年の生存事例があり他の魚種と違う孵化後半年程で成魚になり体長が大きくならないため毒性反応が変化しないなど試験魚として最も適した魚種である。
【0049】
河川表流水や湖沼水や地下水やダム水等の原水が多量に浄水場に引き込まれる、その原水の一部をバイパスで監視水槽106に一定水量の入水と排水を繰り返すことでヒメダカ107等の魚類は常に原水に暴露されるため原水中に有毒物質が含まれていると毒物の種類や濃度によって行動停止、忌避行動、狂奔行動、鼻上げ行動、群れが固まるなどの異常行動を起こす。
【0050】
監視水槽106の前面に照明器具108が設置してあり照明を水中に照らすための透明のアクリル板が明かり通し窓として監視水槽に嵌着されている。照明がないと監視カメラの撮像に支障が生じる。照明器具を水槽の上部に設置しないのは水面に照明が当たると水の揺れで画像処理が乱れを起こすためである。
【0051】
ヒメダカが非常時に備え通常は元気に生息するために自動給餌器110で餌も1日1~2回自動的に与え、監視水槽106にはヒーターとサーモスタット109で水温を年中一定に保ち、エアーポンプで空気を供給し、更に原水を水槽内で緩い回流にすることでヒメダカの活性化と水槽の洗浄を行っている。生息環境の悪化で死亡すると原水の毒物監視が信用のできないことになるので最も注意をしなければならないことである。
【0052】
異常行動の解析は監視水槽106の上部に設置しているCCDビデオカメラ105で撮影し映像信号を画像処理装置104に送り、ここで映像画面に数十個のブロックを配置しブロックごとにヒメダカの動きを検知する機能を備え検知ブロックの数を計数することで異常行動を解析する。魚類の異常行動の解析は誤判定が多いことからCCDビデオカメラ105の1映像を4映像に分割して4映像ごとに異常行動の解析レベルを変え4段階の警報の制御が周辺制御装置103であり、ヒメダカの映像を映し出すモニタテレビ102や4段階の警報、機器の故障、水温表示などの監視はコントロールパネル101にまとめられている。コントロールパネル101の警報は外部に警報信号として出力できる。
【0053】
次に、下半分の臭気による毒物自動検出装置130を
図2、
図3に基づいて説明をする。
気化部1は原水入水口8と排水口7とダスト抜き口9の三つの接続管を備え、それぞれに手動弁8-1、手動弁7-1、手動弁9-1、を具備し、気化部内にはエアーストーン2と水加熱ヒーター3を設置しエアーストーン2からの大量の泡が水加熱ヒーター3を通過することで泡を温め臭い物質の分離と泡の上昇を早め水面で泡が弾けることで臭い物質を蒸気化し易くする。気化部1で発生した蒸気を高湿度空気と呼び湿度95%以上の第一段階とした。
【0054】
エアーストーン2にはエアーポンプ4から脱臭器5及びフローメーター4-1を通ってエアーが供給される。エアーポンプ4は周辺の雑臭を吸い込んでいるため脱臭器5で雑臭を除去する必要がある。水加熱ヒーター3は「JIS-K-0120」に「試料は約40℃に温め」と記載されており、「上水試験方法」にも臭気の試験操作に関して「検水は40~50℃に温め、激しく振る」と記載されている、「激しく振る」効果を多孔であるエアーストーン2の多量の泡発生と泡を水加熱ヒーター3の加熱金属部に接触させることにした。水加熱ヒーター3を2台設置することで小寸法になり設定温度は45℃~55℃の範囲としてサーモスタット6を具備しサーモスタットに水温を伝えるセンサ6-1が水中に設置され水温がコントロールされている。フローメーター4-1はエアー供給量を一定に設定し目視で風量が確認できる。
下記表1の湿度試験データに示すように、エアー供給量は1.6L/minである。また過去の事例から下水から排水口を通って異臭が入ることが確認されたことからウォーターシール10で遮断することにした。
【表1】
【0055】
除湿部11は冷却水循環管12の先端が気化部1の上部に固設され、冷却水循環管12の内部を蒸気管13が貫通している。貫通口の先端は気化部1の水面より上側にあり原水が流れ込まない位置にある。表1に示すように、気化部1の水加熱ヒーター3で45℃~55℃の範囲で原水が加温され原水の臭い物質が泡で撹拌され分離し蒸気化する。水面で泡が多量に弾けることで風圧が発生し高湿度空気を蒸気管13に流し込む。蒸気管13は下方向に傾斜している。
【0056】
冷却水循環管12は下側の入水口12-1から冷却装置24の冷却水が供給され入水し上側の出水口12-2に向かって流れる構造で、蒸気は上から下に流れ冷却水は下から上に逆方向に流れる構造で蒸気管13の表面に付着する水泡は冷却機能を弱めるがこの構造は水泡の発生を抑え冷却機能を高めることができる。
【0057】
冷却水循環管12の表面に結露が全面に発生し水滴として落下するため冷却水循環管12の下部に結露水の受け皿を設置し皿の下部に排水管を設け排水される。出水口12-2から出た冷却水は冷却装置24に戻される。冷却装置24から供給された冷却水は冷却水循環管12を通過して冷却装置24に戻る循環構造であり、冷却装置24は内部にタンクとポンプを備え冷媒はR134で空冷式のためキャビネット112に収納することは換気上問題がありキャビネット112の外に設置せざるを得ない。冷却装置に最大冷却能力はー15℃であったが実施例では表1にあるように5℃で連続使用が可能であった。
【0058】
蒸気管13は下方部で冷却水循環管12から露出になり端末側で蒸気管13より細い異径の加熱管16-4に接続され固設される。蒸気管13と加熱管16-4は管の太さの差があるため段差が生じ、この段差間に結露水が溜まる構造であり、蒸気管13の最下部の結露溜口14には結露水が溜まるが排水管が接続され排水管は電磁弁15-1を具備しておりタイマーリレー15-2により結露溜水が設定時間で結露水排水口15から電磁弁15-1を開き排水される。蒸気管13が下方向に向いているのは下方置換のためでもあり臭い物質を次の工程にスムーズに移送することと冷却水が下から上に向かうことで蒸気管13の表面の水泡を取り去ることで冷却効果を落とさないためと結露溜水をスムーズに排出するための目的で、ここで中湿度空気の第2段階となる。
【0059】
恒温部16の側面には蒸気管13とは異径の細い過熱管16-4が接続され固設されている。恒温部16の内部には底部側に空気加熱ヒーター16-1が設置され、恒温部16の内部温度は温度調整コントローラー16-3に具備されたセンサから伝えられた温度によって一定の設定温度に調整するための温度調整コントローラー16-3が設置されている。空気加熱ヒーター16-1の上部に過熱管16-4がある。加熱管16-4は熱効率を上げるために面積を多くする方法として加熱管16-4をS字型に加工した。加熱管16-4は下方置換で常に下方向に向いており加熱管16-4の内部の臭いを含む低湿度空気は下方に向かって流れる第3段階である。過熱管16-4は蒸気管13で蒸気水分を除去しても湿度は60%以上あり、この湿度ではセンサ素子面が湿気に覆われセンサ機能が低下するため低湿度空気にしなければならない。更に空気より重いカビ臭の2-MIBを下方に向かって流れ易くするため過熱管16-4が必要である。
【0060】
表1の湿度試験データ表によれば湿度を30%以下にするための恒温部16内の温度は85℃であつた。恒温部16の側面からセンサ部17の側面に過熱管16-4が挿入され過熱管の先端部は底面に向いて乾燥した空気と共に混ざった2-MIBも吐き出される。この段階を4段階として、ここで下方置換が起こり重い2-MIBは底面に残り軽い通常空気は上部に移動する。底部に設置されたセンサ素子は油臭に敏感な酸化スズ半導体センサ17-2とカビ臭に敏感な感応膜圧電共振センサ17-1の2種類のセンサを設置する。検知物質によっては2種類以上のセンサを設置しても良い。
【0061】
センサ部17の天井面の一か所から空気が排出されるがここにフローメーター19が設置されており、エアーポンプ4のフローメーター4-1の風量とセンサ部17のフローメーター19の風量が一定であればプロセスの途中で空気漏れもなくエアーポンプ4から送り出されたエアーがセンサ部17まで到着していることになる。
【0062】
表1によれば気化部1の入り口のフローメーター4-1の風量は1.6L/minでありセンサ部出口のフローメーター19は1.2L/minで変動が無かったことからエアー漏れはないと言える。0.4L/minの差はプロセス間の熱変換や結露溜口14からの結露水の排出時の損失と考えられる。センサ部17には温湿度計20のセンサ20-1が設置してあり常時センサ部内の温度と湿度が確認できる。表1によれば起動開始から20分後にはセンサ部の温度は32℃で乾燥空気は25%に到達していることから4段階の除湿プロセスは効果的に動作していることが証明されたと言える。起動手順はまず冷却装置24を最初に起動し冷水循環管12に冷水5℃の循環を確認し、恒温室16の温度を85℃以上を確認して最後に気化部1の水加温ヒーター3とエアーストーン2の泡発生のエアーポンプ4とを起動する順番が必要である。
【0063】
図2では恒温部16とセンサ部17は離れて加温管16-4で接続した図になっているが実際は
図3の斜視図にあるように恒温部16の前面にセンサ部17を密着させて加温管16-4の内部温度が露出により変化をきたさない構造になっている。
【0064】
検出対象の臭い物質においてセンサ部の温度と湿度は最適な設定値があると考えられる、設定値の変更は気化部1のエアーストーン2からの泡の噴出量の調整、水加熱ヒーター3の温度調整、冷却装置24の冷却温度の調整、恒温部16の空気加熱ヒーター16-1の温度調整などで行うことができる。
【0065】
センサ部17の酸化スズ半導体センサ17-2の原理は、酸化スズ(Sn0
2)半導体表面でのガス吸着による熱伝導度の変化及び電気伝導度の変化を、白金線コイルの抵抗値の変化として測定する。白金線コイルに流れる電流によって、約300?450℃に保たれたSn0
2半導体は、表面で酸素分子を吸着し、電子を捉らえ抵抗値が高い状態にある。そこに還元性ガスが吸着すると、酸化反応により捉えていた電子をSn0
2半導体中に放出し抵抗値は減少する。この抵抗値の変化を臭いと関連づけて検知するものである。油臭に関して灯油、ガソリン、軽油、重油、等で検査をしたが微量な油でも検知が確認できている。
下記の表2は灯油0.00001濃度での検知試験表であるが、表2の上から3本の線(高感度設定、中感度設定、低感度設定)のいずれも検出していることが分かる。
【表2】
【0066】
カビ臭2-MIBの検出試験において5Ng/L(5PPT≒0.000005mg/L)では酸化スズ半導体センサは反応しなかったが、感応膜圧電共振センサ17-1は検知した、その検知したパソコン画面が
図5で多数の感応膜のうち一つだけが動いていることが見られる(矢印)。カビ試験溶液は市販されているがメタノール溶媒で溶解しているため使用せずに実施事例のカビ試験水は固形のカビ物質を当社で開発した超音波振動によって水に溶かすことが可能となり、本試験水を製造することができ化学分析会社で2-MIBの5Ng/L(5PPT≒0.000005mg/L)である証明の検査証を受け、その製造した試験水を使用した。感応膜圧電共振センサ17-1の原理はチタン酸ジルコン酸鉛の圧電薄膜に異なる感応膜を塗布した検知素子数種類を1枚のセンサチップ上に搭載し電圧をかけて共振している感応膜に臭い分子を付着させ、共振周波数の変化から臭いを識別する。
【0067】
本発明は24時間連続無人自動監視を行うためにセンサ素子表面の付着物やセンサ部17の内部を定期的にエアーパージによる洗浄をしなければ新たな臭いの検出が難しくなる。そのためにエアーパージフアン21を設置しファンの回転開始や停止はタイマーリレー23により設定時間に定期的にエアーパージをする。エアーパージフアン21の吹き出し側に脱臭器22を備え外臭を除去した空気をエアーパージに使用する。脱臭器22の出口に電磁弁21-1を設置しエアーパージをするとき同時に開放し終わると同時に閉鎖する、また電磁弁を設置することで停止中にエアーパージ口から空気の侵入を防止する。
【0068】
図3の斜視図の気化部1、除湿部11、恒温部16、センサ部17の材質は透明アクリル板の厚さ5mmを切断加工し専用の接着剤で接着し点検口はゴム板を敷いてボルト止めとした。除湿部11の冷水循環管12はアクリルパイプ管の外径90mmの肉厚3mmとし蒸気管13は外径35mm肉厚2mmを使用した。試験運転期間は約1ヶ月でそのうち連続運転を2週間行ったが、アクリルの破断や損傷や水漏れなどの不都合が見当たらなかった。透明アクリル板は内部が見え加工がしやすい等のメリットがあるが耐熱温度が79~90℃であり最低でも1年間の連続運転試験での耐用試験が必要である。例えばアクリル材に変えて耐熱性の強い樹脂例えばポリカーボネイト(耐熱温度120~130℃)等の他の材質の樹脂材を使用しても良いし金属材を使用しても良い。
【0069】
図4に示すように、気化部1、除湿部11、恒温部16、センサ部17及び付帯機器の水加熱ヒーター3、空気加熱ヒーター16-1やエアーストーン2、エアーポンプ4、電磁弁21-1、手動弁8-1、エアーパージファン21や脱臭器22、各種計器や制御器、パソコン17-3等で構成する臭気による毒物自動検出装置130の機能だけを魚類により毒物自動監視装置120と切り離して臭い検出だけの単独機能として小型キャビネットに組み込むこともできるが検査水量が多い場合はプロセスが大型になることもある。また設置条件でキャビネットに収納することができない場合などもあり、そのときは解放された状態で運用をしても構わない。また、
図1、
図4の各機器の配置は点検や保守や電気規格で例えば水循環部を下部に電子機器部を上部に設置するなどの事情で場所を変えたり機器を変更しても運用上問題がなければ構わない。
本発明は、水道原水などの有毒物質の混入を検知するバイオアッセイ法と言われる魚類を使用した毒物自動監視装置120内に油臭やカビ臭を検出できるプロセス機器である臭気による検出装置130を内包し一体型にしたことで省力化、設置スペースの削減、コストの節減、等を図り水道水の安全と快適な食生活に貢献できることで、水道事業体以外にも飲料水メーカや食品メーカなど水を使用する産業分野に利用が可能である。