(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045745
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹、その麹の製造方法、その麹を利用した味噌及び味噌の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/14 20060101AFI20220314BHJP
A23L 11/50 20210101ALI20220314BHJP
【FI】
C12N1/14 A
A23L11/20 103
A23L11/20 107
C12N1/14 101
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151503
(22)【出願日】2020-09-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】520349252
【氏名又は名称】長坂 さや香
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】長坂 さや香
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA63X
4B065AC14
4B065BA22
4B065BB26
4B065BD43
4B065CA05
4B065CA42
(57)【要約】
【課題】ポリフェノールが増大した麹、その麹の製造方法、その麹を利用した味噌及びその味噌の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、タデアイの微細繊維が原料となる由来穀物の表面に付着していることを特徴とする麹である。本発明の麹は、原料となる由来穀物を水に浸漬するステップと浸漬した由来穀物を加熱し、加熱済み穀物を得るステップと、加熱済み穀物の放冷を行うステップと、放冷した加熱済み穀物に、麹菌とタデアイの乾燥粉末を振りかけて混ぜ、混合済み穀物を得るステップと、混合済み穀物に対して、温度調節を行って熟成させるステップとを含む製造方法により製造する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タデアイの微細繊維が、原料となる由来穀物の表面に付着していることを特徴とする麹。
【請求項2】
前記微細繊維が付着していない場合と比較して、ポリフェノールが1.2倍以上増大していることを特徴とする請求項1に記載の麹。
【請求項3】
前記由来穀物が米であることを特徴とする請求項1又は2に記載の麹。
【請求項4】
黄麹菌を用いて製造されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の麹。
【請求項5】
黒麹菌を用いて製造されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の麹。
【請求項6】
原料となる由来穀物を水に浸漬するステップと、
前記浸漬した前記由来穀物を加熱し、加熱済み穀物を得るステップと、
前記加熱済み穀物の放冷を行うステップと、
前記放冷した前記加熱済み穀物に、麹菌とタデアイの乾燥粉末を振りかけて混ぜ、混合済み穀物を得るステップと、
前記混合済み穀物に対して、温度調節を行って熟成させるステップと
を含むことを特徴とする麹の製造方法。
【請求項7】
タデアイの微細繊維が前記由来穀物の表面に付着した麹から製造されることを特徴とする味噌。
【請求項8】
大豆を水に浸漬するステップと、
前記浸漬した大豆を蒸煮し、蒸豆を得るステップと、
前記蒸豆を潰すステップと、
潰した前記蒸豆に、タデアイの微細繊維が原料となる由来穀物の表面に付着した麹及び塩を混ぜ、混合物を得るステップと、
前記混合物を発酵させるステップと、
を含むことを特徴とする味噌の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵食品の製造のために利用する麹、その麹を利用した味噌、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
麹(こうじ)は、米、麦、大豆等の穀物に、麹菌等の食品発酵に有効な微生物を繁殖させたものである。日本では古くから、麹菌等が産生した各種分解酵素の作用を利用して、日本酒、味噌、食酢、漬物、醤油、焼酎、泡盛等、様々な発酵食品が製造されている。
【0003】
麹には、抗酸化作用を有するポリフェノールが含まれていることが知られている。麹に含まれるポリフェノールを増大させたい場合は、常法とは異なった環境や方法で麹を製造することや、麹の製造の際に何らかの他の物質を添加することが考えられる。しかしそもそも麹を製造する際は、麹菌の増殖や麹菌による酵素産生が重要であるため、常法とは大きく異なった環境で製造したり、何らかの添加物を加えたりすることは稀なことであった。
【0004】
麹の製造の際に添加物を加える場合は、当然、麹の製造において悪影響を与えない安全なものである必要がある。特許文献1には、麹菌を増やしやすくするために「澱粉末」を加えて麹を製造する従来技術が記載されている。又、特許文献2には、雑菌の増殖を抑制するために「乳酸発酵液」を加えて麹を製造する従来技術が記載されている。特許文献1及び2の従来技術のいずれも、麹菌の効率的な増殖を目的とするものであり、添加する物質の性質上、麹の製造において悪影響を与えないであろうことが容易に推測されるものである。しかし、特許文献1及び2の従来技術のいずれもポリフェノールを増大させるものではない。本発明者の調査した範囲では、添加物により麹に含まれるポリフェノールを増大させる技術は、先行技術としては見当たらなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-13205号公報
【特許文献2】特開2002-369678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題に着目してなされたものであって、ポリフェノールが増大した麹、その麹の製造方法、その麹を利用した味噌及びその味噌の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、タデアイの微細繊維が、原料となる由来穀物の表面に付着していることを特徴とする麹であることを要旨とする。
【0008】
本発明の第2の態様は、(a)原料となる由来穀物を水に浸漬するステップと、浸漬した由来穀物を加熱し、(b)加熱済み穀物を得るステップと、(c)加熱済み穀物の放冷を行うステップと、(d)放冷した加熱済み穀物に、麹菌とタデアイの乾燥粉末を振りかけて混ぜ、混合済み穀物を得るステップと、(e)混合済み穀物に対して、温度調節を行って熟成させるステップとを含むことを特徴とする麹の製造方法であることを要旨とする。
【0009】
本発明の第3の態様は、タデアイの微細繊維が由来穀物の表面に付着した麹から製造されることを特徴とする味噌であることを要旨とする。
【0010】
本発明の第4の態様は、(a)大豆を水に浸漬するステップと、(b)浸漬した大豆を蒸煮し、蒸豆を得るステップと、(c)蒸豆を潰すステップと、(d)潰した蒸豆に、タデアイの微細繊維が原料となる由来穀物の表面に付着した麹及び塩を混ぜ、混合物を得るステップと、(e)混合物を発酵させるステップと、を含むことを特徴とする味噌の製造方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリフェノールが増大した麹、その麹の製造方法、その麹を利用した味噌及びその味噌の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る麹の製造方法のフローチャートである。
【
図2】実施形態に係る麹を利用した味噌の製造方法のフローチャートである。
【
図3】実施形態に係る麹の断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真1である。
【
図4】実施形態に係る麹の断面のSEM写真2である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、図面は模式的なものであり、方法等の表現は現実のものとは異なる可能性があることに留意すべきである。又、図面代用写真である顕微鏡写真についても、表される構造の一部は本発明の実施形態のあくまで一例に過ぎない。したがって、本発明の実施形態に係る方法等の詳細は、以下の説明から理解できる技術的思想の趣旨を参酌してより多様に判断すべきものである。
【0014】
又、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための物や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、原料、結果物、方法等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、本発明の実施形態で記載された内容に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明特定事項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
本発明の実施形態に係る麹は、製造過程でタデアイの微細繊維が添加され、このタデアイの微細繊維が表面に付着している麹である。本発明の実施形態に係る麹には、タデアイの微細粉末を添加せずに製造した麹と比較して、ポリフェノールが増大している。好ましくは、本発明の実施形態に係る麹には、タデアイの微細粉末を添加せずに製造した麹と比較して、ポリフェノールが1.2倍以上含まれている。
【0016】
タデアイ(Persicaria tinctoria)は、タデ科イヌタデ属の一年生植物を指し、主に染料の原料として有名である。タデアイは古くより、解熱、解毒、抗炎症等の薬用作用があることが知られ、漢方薬としても用いられてきた。タデアイには抗ガン作用のトリブタンスリンや抗菌活性を呈するケンペロール等、様々な有効成分が含まれる。又、タデアイは葉や茎から茶葉が作られる等、食用植物としても有用である。本発明の実施形態に係る麹の製造過程で添加するタデアイの微細粉末は、タデアイの葉又は茎、あるいはその両方の乾燥粉末である。実施形態で用いられるタデアイの微細粉末には、タデアイの根や種等、葉や茎以外の部位が含まれていてもよい。
【0017】
本発明の実施形態に係る麹の由来穀物は、米、麦、大豆、雑穀等、穀物であればいずれでもよいが、表面へのタデアイの微細粉末の付着のさせやすさの観点では、米であることが好ましい。実施形態に係る麹の由来穀物は、米、麦、大豆、雑穀等の穀物のうち、2種類以上の混合物でもよい。
【0018】
本発明の実施形態に係る麹は、
図1に示すように、原料となる由来穀物に対して、蒸す前の前処理工程であるステップS101を行い、前処理後の穀物を得る。原料となる由来穀物が米の場合、ステップS101においては、米を精米して洗浄し、水に浸漬した後に水切りを行う。米の水への浸漬は、水温にもよるが8~20時間程度が好ましく、浸漬後の水切りは十分に行うため、1~2時間程度行うのが好ましい。由来穀物が麦の場合、ステップS101においては、麦を精麦して洗浄し、水に浸漬した後に水切りを行う。麦の水への浸漬は、水温20度においては1時間程度が好ましい。由来穀物が大豆の場合、ステップS101においては、洗浄し、水に24時間程度浸漬する。
【0019】
図1のステップS102において、常法により、前処理後の穀物を加熱して「蒸し」又は「煮込み」の工程を行い、加熱済み穀物を得る。次に
図1にステップS103において、加熱済み穀物を放冷する。由来穀物が米又は麦の場合、ステップS102での「蒸し」の工程の後、蒸された穀物の放冷後の温度を30~40℃程度とするのが好ましく、30~35℃程度がより好ましい。由来穀物が大豆の場合、ステップS102の加熱として「煮込み」を行い、ステップS103においては、煮込まれた大豆の放冷後の温度は30~50℃程度が好ましく、30~40℃程度がより好ましい。
【0020】
図1のステップS104において、放冷済み穀物に麹菌(種麹)の接種をし、タデアイの微細粉末を添加する。麹菌の接種は、一般的に「種切」又は「種付」とも呼ばれる作業である。麹菌の接種とタデアイの微細粉末の添加の順番はいずれでもよい。タデアイの微細粉末の添加は、麹菌の接種と同時でなくとも、麹菌の接種をした放冷済み穀物が発熱(培養)している間であれば、いつでもよい。タデアイの微細粉末は麹菌の接種と同時である方が、混合済み穀物の温度管理がしやすく、又、早期に混合済み穀物の温度上昇をさせることができる点でより好ましい。麹菌の種類としては、例えば、黄麹菌と呼ばれるニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)やショウユコウジカビ(Aspergillus sojae)、黒麹菌と呼ばれるアワモリコウジカビ(Aspergillus luchuensis)、白麹菌と呼ばれる(Aspergillus luchuensis mut. kawachii)等が挙げられる。麹菌の接種量は任意である。放冷済み穀物と麹菌との撹拌混合方法としては、例えば、人の手による混合の他、バイブレータによる振動撹拌や撹拌羽根などを使用する各種の撹拌装置による撹拌混合を採用することができる。放冷済み穀物と麹菌との撹拌は、一般的には「床もみ」と呼ばれる作業でもある。タデアイの微細粉末を麹菌の接種と同時に添加する場合は、タデアイの微細粉末についても同様であり、例えば、人の手による混合の他、バイブレータによる振動撹拌や撹拌羽根などを使用する各種の撹拌装置による撹拌混合を採用することができる。以下、タデアイの微細粉末を麹菌の接種と同時に添加する場合で説明するが、
図1のステップS104を経て混合済み穀物を得る。本明細書における「混合済み穀物」とは、放冷済み穀物に少なくとも麹菌が接種され、撹拌混合された穀物を指すものであり、必ずしもタデアイの微細粉末が混合されていなくともよいものとする。
【0021】
図1のステップS105において、混合済み穀物に添加された麹菌を2~3日間培養し、適切なタイミングで
図1のステップS106の手入れを数回行う。
図1のステップS104~ステップS106は、「製麹」と呼ばれる作業でもある。
図1のステップS105の培養においては、混合済み穀物を麹菌の培養に適した環境に整える。例えば、混合済み穀物を小さく丸くまとめ、布でくるみ、発酵器で保温する等である。発酵器に入れる等行い、麹の温度を30度~40度に保つようにする。時々、混合済み穀物を発酵器から出し、米全体を満遍なく混ぜ、温度・湿度・酵素の条件を均一にし、環境を整える。高温の場合は撹拌し送風し、品温(混合済み穀物の温度)を下げる。
図1のステップS106の手入れは、混合済み穀物の温度管理が出来るのであれば手段は問わないものである。
【0022】
由来穀物が米、かつ、麹菌が白麹菌または黄麹菌である場合、ステップS105における混合済み米の温度は35~40℃を保つようにするため、ステップS106の手入れは2日間の培養中で5、6回程度行う。由来穀物が米、かつ、麹菌が黒麹菌である場合、一度40~45℃程度に温度を上げた後30~35℃程度まで下げ、その後は30~35℃を保つようにするため、ステップS106の手入れは2日間の培養中で7、8回程度行う。由来穀物が麦である場合、混合済み麦の温度は、1日後までは30~32℃程度を保つように、それ以降は35~40℃程度を保つようにするため、ステップS106の手入れは2日間の培養中で数回行う。由来穀物が大豆である場合、混合済み大豆の温度は28~30℃を保つようにする。
図1のステップS106の数回の手入れを経て、実施形態に係る麹を得ることができる。由来穀物が米の場合は米麹が得られ、由来穀物が麦の場合は麦麹が得られ、由来穀物が大豆の場合は豆麹が得られる。実施形態に係る麹は、全体が固まった塊状で得られる場合もあれば、粒が一つずつ離れたばらばらの状態で得られる場合もあるが、いずれにしても麹としての性質は有する。
【0023】
タデアイの微細粉末を麹菌の接種と同時に添加しない場合は、ステップS106の手入れの段階、かつ、混合済み穀物が発熱している間に、タデアイの微細粉末を添加する。タデアイの微細粉末の添加は、いずれの手入れの段階でもよいが、最後の回の手入れ以外であることが好ましい。
【0024】
実施形態に係る麹は、原料の由来穀物が米の場合で説明すると、精米の重量に対して、0.5~1.0%程度の重量の麹菌及び2.0~4.0%程度の重量のタデアイの微細粉末を用いればよい。より好ましくは、精米の重量に対して、0.6~0.8%程度の重量の麹菌及び3.0~3.5%程度の重量のタデアイの微細粉末を用いた場合に実施形態に係る麹が得られる。
【0025】
得られた実施形態に係る麹は、塊状であってもばらばらの状態であっても、冷蔵又は冷凍にて長期保存が可能である。実施形態に係る麹は、出来立ての生麹の状態であっても、少し乾燥させた乾燥麹の状態であっても、その性質は変わらないものである。実施形態に係る麹は、日本酒、泡盛、焼酎、甘酒、味醂、味噌、醤油等、様々な発酵飲食品の製造の原料とすることができる。例えば、実施形態に係る麹を用いて常法により塩麹を製造した場合は、通常の塩麹よりも旨味が増す効果がある。
【0026】
特に、常法により味噌を製造した場合は通常3カ月程度かかるところが、
図2に示すような実施形態に係る麹を用いた味噌の製造方法によると、常法と同じ手順を用いて味噌を製造した場合2カ月程度の早期で味噌が完成する。通常の味噌と比較すると、約3分の2の期間で味噌を得ることができるメリットがある。
図2に示す実施形態に係る味噌の製造方法は、実施形態に係る麹を用いている特徴以外の手順に関しては、常法による味噌の製造方法と基本的に同一であるが処理時間が異なる。
図2に示す実施形態に係る味噌の製造方法では、常法と同様に、大豆(丸大豆)、麹及び塩の3つを基本的な原料として用いる。大豆と麹の重量比率は、製造したい味噌の風味等にもよるが、大体1:1~1:3である。塩は、製造したい味噌の風味等にもよるが、大豆と麹を合わせた重量の10~20%が好適とされる。前処理を行うステップS201において、大豆を洗浄し、12~18時間程度水に浸漬し、水切りを行う。ステップS202において、前処理後の大豆を3~5時間程度蒸煮にし、あるいは、前処理後の大豆を加圧して30分~1時間程度蒸煮にする。ステップS203において、大豆の粒感がなくなるまで充分に潰し、35℃以下まで冷却する。ステップS204の仕込みにおいては、冷却した大豆に、麹と塩を混ぜ、必要に応じて冷却した大豆の煮汁も加え、丸めて混合物(味噌玉)をつくり、空気が入らないように密閉できる容器に充填する。ステップS205においては、望みの熟成度合いとなるまで、様子を見ながら充填した混合物を熟成させる。暑い時期であれば2~3カ月で味噌として使用できるまでに達し、更に熟成させたい場合は更に数か月~1年程度寝かせる。寒い時期であれば3~6カ月で味噌として使用できるまでに達し、更に熟成させたい場合は数か月~1年程度寝かせる。本明細書において、味噌が「完成した」状態とは、味噌として使用できるまでに発酵した状態を指し、主として味見により判断する。本発明の実施形態に係る麹を利用して、
図2に示すような手順の流れにより味噌を製造すると、通常3カ月程度かかるところが、2カ月程度の早期で完成する。
【0027】
実施形態に係る麹の製造方法においては、抗菌作用があるタデアイの微細粉末を用いているにもかかわらず、麹菌の繁殖や麹菌の酵素産生に悪影響を与えることなく、麹を問題なく得ることができる。実施形態に係る麹はポリフェノールが1.2倍以上に増大していることから、抗酸化活性がより高められた麹発酵飲食品を得ることが可能となる。
【0028】
実施形態に係る麹の製造方法においては、タデアイの微細粉末を添加すると通常よりも混合済み穀物の温度が上がりやすいことから、より早く希望温度に達することができるという効果がある。特に冬期の気温が低い期間においては、混合済み穀物の温度が希望の範囲より下がってしまうと麹の品質に問題が生じてしまうため、タデアイの微細粉末を添加して温度を上昇させることは麹製造において都合がよい。又、特に黒麹菌を用いる場合は、混合済み穀物の温度をはじめに一気に40~45℃程度まで上げる必要があることから、温度上昇が速い実施形態に係る麹の製造方法は好適に採用することができる。
【0029】
実施形態に係る麹は、
図3のSEM写真より分かるように、タデアイの繊維が米の表面の組織に付着している。
図3は、SEM写真は、実施形態に係る麹の断面を株式会社日立ハイテクノロジーズ製、SU6600形のSEMを使用し、SEモード、電圧5.0kV、倍率200倍の条件で撮影した写真である。Aの矢印に対応する帯状の範囲のSEM写真には主にタデアイの微細粉末が、Bの矢印に対応する帯状の範囲のSEM写真には主に麹の原料となる米が示されている。タデアイの微細粉末と米との境界は曖昧である。
図3からは、タデアイの細長い繊維が、繊維同士がからみあいながら米の表面の凹凸に複雑に入り込んで付着していることが分かる。この付着様式は、麹が出来上がってからタデアイの微細粉末を添加する方法では得られないものである。
図4は、
図3と同じSEMを用い、SEモード、電圧5.0kVにて、
図3とは異なる位置を倍率1000倍にして撮影した、実施形態に係る麹の断面のSEM写真である。
図4の上側は主にタデアイの微細粉末であり、
図4の中央部分から下側は主に米である。
図4より、タデアイの繊維はやや扁平形状を呈し、幅は40~50μm程度、厚さは10μm程度であることが分かる。
【0030】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これは単に例示の目的で述べるものであり、以下の実施例に示した商品名、産地、購入先等を含め、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
実施例1の由来穀物として精米した新潟産コシヒカリ650gを用意し、洗浄して水に12時間浸漬後、60分間蒸し、蒸米を得た。得られた蒸米を平らな面に広げ、30℃程度まで冷却した。その後、黄麹菌(Aspergillus oryzae、長白菌、株式会社菱六(京都))4gを広げた蒸米に接種し、タデアイの乾燥粉末20g(藍粉、株式会社ボン・アーム製)を蒸米に満遍なく振りかけ、手で混合し、混合済み米を得た。得られた混合済み米を丸くまとめ、布でくるみ、発酵器で保温し培養を始めた。2日間の間、混合済み米の内部温度(品温)が35~40℃となるように、6回、混合済み米を布から取り出して広げて空気に触れされる手入れを行った。培養開始後2日で、実施例1に係る麹を約900g得た。同様の手順で再度実施し、実施例1に係る麹を更に約900g得た。
【0032】
実施例1に係る麹のポリフェノール含有量の分析を行った。実施例1に係る麹を0.8~2g程度採取し、50%エタノール50mlを加え、1分間ホモジナイズした。その後50%エタノールを少量加え、30分間の超音波照射により成分抽出を行った。得られた抽出物を250mlに定容し、遠心分離、ろ過を経て実施例1に係る試験溶液とした。次に実施例1に係る試験溶液1mlにフォーリンチオカルトー試薬0.5ml及び0.4mol/l炭酸ナトリウム水溶液5mlを加え、30℃で30分間静置した。その後遠心分離し、紫外可視分光光度計(測定波長660nm)にて吸光度を測定したところ、実施例1に係る麹にはポリフェノールは0.14g/100g含まれていることが分かった。尚、ポリフェノール含有量は(+)-カテキンの換算値で表されている。
【0033】
実施例1に係る麹を用いて、
図2に示す味噌製造の常法により、約2カ月で実施例1に係る味噌を得た。即ち、大豆450gを15時間水に浸漬し、水切りし、3.5時間蒸煮した。その後、蒸煮した大豆を潰し、30℃以下になるまで冷却し、実施例1に係る麹1350g、塩300g及び大豆の煮汁300mlを加えて混合した。混合物を密閉容器に充填し、発酵させたところ、約2カ月で実施例1に係る味噌3000gを得た。
【0034】
(実施例2)
実施例2の由来穀物として精米した新潟産コシヒカリ650gを用意し、洗浄して水に12時間浸漬後、60分間蒸し、蒸米を得た。得られた蒸米を平らな面に広げ、30℃程度まで冷却した。その後、黒麹菌(焼酎用黒麹菌、株式会社秋田今野商店)4gを広げた蒸米に接種し、タデアイの乾燥粉末20g(藍粉、株式会社ボン・アーム製)を蒸米に満遍なく振りかけ、手で混合し、混合済み米を得た。得られた混合済み米を丸くまとめ、布でくるみ、発酵器で保温し培養を始めた。まず混合済み米が43℃程度となるまで温度を上昇させ、その後30℃程度となるように実施例1と同様の手入れを行った。培養期間の2日間の間、混合済み米の内部温度が30~35℃となるように、8回、実施例1と同様の手入れを行った。培養開始後2日で、実施例2に係る麹を約900g得た。
【0035】
(比較例1)
比較例1の由来穀物として精米した新潟産コシヒカリ650gを用意し、洗浄して水に12時間浸漬後、60分間蒸し、蒸米を得た。得られた蒸米を平らな面に広げ、30℃程度まで冷却した。その後、黄麹菌(Aspergillus oryzae、長白菌、株式会社菱六(京都))4gを広げた蒸米に接種し、手で混合し、混合済み米を得た。得られた混合済み米を丸くまとめ、布でくるみ、発酵器で保温し培養を始めた。2日間の間、混合済み米の内部温度が35~40℃となるように、4回、実施例1と同様の手入れを行った。培養開始後2日で、比較例1に係る麹を約900g得た。同様の手順で再度実施し、比較例1に係る麹を更に約900g得た。
【0036】
比較例1に係る麹のポリフェノール含有量の分析を、実施例1と同様の方法で行った。比較例1に係る麹にはポリフェノールは0.11g/100g含まれていることが分かった。
【0037】
比較例1に係る麹を用いて、実施例1と同様に
図2に示す味噌製造の常法により、実施例1と同日に開始し、約3カ月で比較例1に係る味噌を得た。即ち、大豆450gを15時間水に浸漬し、水切りし、3.5時間蒸煮した。その後、蒸煮した大豆を潰し、30℃以下になるまで冷却し、比較例1に係る麹1350g、塩300g及び大豆の煮汁300mlを加えて混合した。混合物を密閉容器に充填し、発酵させたところ、約3カ月で比較例1に係る味噌3000gを得た。
【0038】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は1つの実施形態と複数の実施例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0039】
例えば、黄麹菌、黒麹菌及び白麹菌の他に、紅麹菌と呼ばれるベニコウジカビ(Monascus purpureus、M. anka, M. pilosus, M. vitreus, M. ruber等)により、実施形態に係る麹を製造することも可能である。紅麹菌により製造された実施形態に係る麹は、紅酒や豆腐よう等の発酵食品に利用することができる。
【0040】
又、上記においては種となる麹菌を接種して実施形態に係る麹を製造した例を示したが、麹菌を有する麹を麹菌の代用として用いても、同様に実施形態に係る麹を製造することができる。麹を加熱済みの穀物に混ぜる際に、タデアイの乾燥粉末を振りかけることで実施形態に係る麹を製造することができる。
【0041】
本発明の実施形態で説明したそれぞれの技術的思想の一部を適宜、互いに組み合わせることも可能である。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当と解釈しうる、特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放冷した蒸米に、精米の重量に対して0.6~0.8%重量の麹菌及び3.0~3.5%重量のタデアイの微細粉末を同時に振りかけて混ぜ、又は麹菌と混ぜた後タデアイの微細粉末を振りかけて混ぜ、30~40℃で発酵させたことを特徴とする表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹。
【請求項2】
前記請求項1の麹は、ポリフェノールが100g当たり0.14g含まれていることを特徴とする表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹。
【請求項3】
原料となる米を水に浸漬するステップと、前記浸漬した米を加熱し、加熱済み米を得るステップと、前記加熱済み米の放冷を行うステップと、放冷した前記加熱済み米に、麹菌とタデアイの微細粉末を振りかけて混ぜ、混合済み米を得るステップと、前記混合済み米に対して、温度調節を行って熟成させるステップと、を含むことを特徴とする表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹の製造方法。
【請求項4】
大豆を水に浸漬するステップと、前記浸漬した大豆を蒸煮し、蒸豆を得るステップと、前記蒸豆を潰すステップと、前記潰した蒸豆に、表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹及び塩を混ぜ、混合物を得るステップと、前記混合物を発酵させるステップと、を含むことを特徴とする味噌の製造方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は上記の問題に着目してなされたものであって、ポリフェノールが増大した表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹、その麹の製造方法、その麹を利用した味噌及び味噌の製造方法を提供することを目的とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹は、放冷した蒸米に、精米の重量に対して0.6~0.8%重量の麹菌及び3.0~3.5%重量のタデアイの微細粉末を同時に振りかけて混ぜ、又は麹菌と混ぜた後タデアイの微細粉末を振りかけて混ぜ、30~40℃で発酵させたことを特徴とする麹であることを要旨とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹の製造方法は、(a)原料となる米を水に浸漬するステップと、(b)浸漬した米を加熱し、加熱済み米を得るステップと、(c)加熱済み米の放冷を行うステップと、(d)放冷した前記加熱済み米に、麹菌とタデアイの微細粉末を振りかけて混ぜ、混合済み米を得るステップと、(e)混合済み米に対して、温度調節を行って熟成させるステップとを含むことを特徴とする表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹の製造方法であることを要旨とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の味噌は、放冷した蒸米に、精米の重量に対して0.6~0.8%重量の麹菌及び3.0~3.5%重量のタデアイの微細粉末を同時に振りかけて混ぜ、又は麹菌と混ぜた後タデアイの微細粉末を振りかけて混ぜ、30~40℃で発酵させた表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹から製造されることを特徴とする味噌であることを要旨とする。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明の味噌の製造方法は、(a)大豆を水に浸漬するステップと、(b)浸漬した大豆を蒸煮し、蒸豆を得るステップと、(c)蒸豆を潰すステップと、(d)潰した蒸豆に、表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹及び塩を混ぜ、混合物を得るステップと、(e)混合物を発酵させるステップと、を含むことを特徴とする味噌の製造方法であることを要旨とする。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明によれば、ポリフェノールが増大した表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹、その麹の製造方法、その麹を利用した味噌及びその味噌の製造方法を提供することができる。
本発明の表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹は、ポリフェノールが1.2倍以上に増大していることから、抗酸化活性がより高められた麹発酵食品を得ることが可能となる。
本発明の表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹の製造方法においては、抗菌作用があるタデアイの微細粉末を用いているにもかかわらず、麹菌の繁殖や麹菌の酵素産生に悪影響を与えることなく、麹を問題なく得ることができる。
本発明の表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹の製造方法においては、タデアイの微細粉末を添加すると通常よりも混合済み米の温度が上がりやすいことから、より早く希望温度に達することができるという効果がある。特に冬期の気温が低い期間においては、混合済み米の温度が希望の範囲より下がってしまうと麹の品質に問題が生じてしまうため、タデアイの微細粉末を添加して温度を上昇させることは麹製造において都合がよい。
本発明の味噌の製造方法では、常法による手順の流れで、表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹で味噌を製造すると、通常3カ月程度かかるところが2カ月程度の早期で完成する。通常の味噌と比較すると、約3分の2の期間で味噌を得ることができるメリットがある。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
図1のステップS102において、常法により、前処理後の穀物を加熱して
米又は麦の場合は「蒸し」又は
大豆の場合は「煮込み」の工程を行い、加熱済み穀物を得る。次に
図1のステップS103において、加熱済み穀物を放冷する。由来穀物が米又は麦の場合、ステップS102での「蒸し」の工程の後、蒸された穀物の放冷後の温度を30~40℃程度とするのが好ましく、30~35℃程度がより好ましい。由来穀物が大豆の場合、ステップS102の加熱として「煮込み」を行い、ステップS103においては、煮込まれた大豆の放冷後の温度は30~50℃程度が好ましく、30~40℃程度がより好ましい。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
特に、常法により味噌を製造した場合は通常3カ月程度かかるところが、
表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹を用いた味噌の製造方法によると、常法と同じ手順を用いて味噌を製造した場合2カ月程度の早期で味噌が完成する。通常の味噌と比較すると、約3分の2の期間で味噌を得ることができるメリットがある。
図2に示す実施形態に係る味噌の製造方法では、
表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹を用いている特徴以外の手順に関しては、常法による味噌の製造方法と基本的に同一であるが処理時間が異なる。
図2の示す実施形態に係る味噌の製造方法では、常法と同様に、大豆(丸大豆)、
表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹及び塩の3つを基本的な原料として用いる。大豆と
表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹の重量比率は、製造したい味噌の風味等にもよるが、大体1:1~1:3である。塩は、製造したい味噌の風味等にもよるが、大豆と
表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹を合わせた重量の10~20%が好適とされる。前処理を行うステップS201において、大豆を洗浄し、12~18時間程度水に浸漬し、水切りを行う。ステップS202において、前処理後の大豆を3~5時間程度蒸煮にし、あるいは、前処理後の大豆を加圧して30分~1時間程度蒸煮にする。ステップS203において、大豆の粒感がなくなるまで十分に潰し、35℃以下まで冷却する。ステップS204の仕込みにおいては、冷却した大豆に、
表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹と塩を混ぜ、必要に応じて冷却した大豆の煮汁も加え、丸めて混合物(味噌玉)をつくり、空気が入らないように密封できる容器に充填する。ステップS205においては、望みの熟成度合いとなるまで、様子を見ながら充填した混合物を熟成させる。暑い時期であれば2~3カ月で味噌として使用できるまでに達し、更に熟成させたい場合は更に数カ月~1年程度寝かせる。寒い時期であれば3~6カ月で味噌として使用できるまでに達し、更に熟成させたい場合は数カ月~1年程度寝かせる。本明細書において、味噌が「完成した」状態とは、味噌として使用できるまでに発酵した状態を指し、主として味見により判断する。 本発明の
表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹を利用して、
図2に示すような手順の流れにより味噌を製造すると、通常3カ月かかるところが、2カ月程度の早期で完成する。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
(実施例1)
実施例1の由来穀物として精米した新潟産コシヒカリ650gを用意し、洗浄して水に12時間浸漬後、60分間蒸し、蒸米を得た。得られた蒸米を平らな面に広げ、30℃程度まで冷却した。その後、黄麹菌(Aspergillus oryzae、長白菌、株式会社菱六(京都))4gを広げた蒸米に接種し、タデアイの微細粉末20g(藍粉、株式会社ボン・アーム製)を蒸米に満遍なく振りかけ、手で混合し、混合済み米を得た。得られた混合済み米を丸くまとめ、布でくるみ、発酵器で保温し培養を始めた。2日間の間、混合済み米の内部温度(品温)が35~40℃となるように、6回、混合済み米を布から取り出して広げて空気に触れされる手入れを行った。培養開始後2日で、実施例1に係る麹を約900g得た。同様の手順で再度実施し、実施例1に係る麹を更に約900g得た。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
(実施例2)
実施例2の由来穀物として精米した新潟産コシヒカリ650gを用意し、洗浄して水に12時間浸漬後、60分間蒸し、蒸米を得た。得られた蒸米を平らな面に広げ、30℃程度まで冷却した。その後、黒麹菌(焼酎用黒麹菌、株式会社秋田今野商店)4gを広げた蒸米に接種し、タデアイの微細粉末20g(藍粉、株式会社ボン・アーム製)を蒸米に満遍なく振りかけ、手で混合し、混合済み米を得た。得られた混合済み米を丸くまとめ、布でくるみ、発酵器で保温し培養を始めた。まず混合済み米が43℃程度となるまで温度を上昇させ、その後30℃程度となるように実施例1と同様の手入れを行った。培養期間の2日間の間、混合済み米の内部温度が30~35℃となるように、8回、実施例1と同様の手入れを行った。培養開始後2日で、実施例2に係る麹を約900g得た。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
又、上記においては種となる麹菌を接種して表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹を製造した例を示したが、麹菌を有する麹を麹菌の代用として用いても、同様に表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹を製造することができる。麹を加熱済みの米に混ぜる際に、タデアイの微細粉末を振りかけることで表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹を製造することができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放冷した蒸米に、精米の重量に対して0.6~0.8%重量の麹菌及び3.0~3.5%重量のタデアイの微細粉末を同時に振りかけて混ぜ、又は麹菌と混ぜた後タデアイの微細粉末を振りかけて混ぜ、30~40℃で発酵させたことを特徴とし、前記麹菌は黄麹菌を含む、表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹。
【請求項2】
前記請求項1の麹は、ポリフェノールが100g当たり0.14g含まれていることを特徴とする表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹。
【請求項3】
原料となる米を水に浸漬するステップと、前記浸漬した米を加熱し、加熱済み米を得るステップと、前記加熱済み米の放冷を行うステップと、放冷した前記加熱済み米に、麹菌とタデアイの微細粉末を振りかけて混ぜ、混合済み米を得るステップと、前記混合済み米に対して、温度調節を行って熟成させるステップと、を含むことを特徴とし、前記麹菌は黄麹菌を含む、表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹の製造方法。
【請求項4】
大豆を水に浸漬するステップと、前記浸漬した大豆を蒸煮し、蒸豆を得るステップと、前記蒸豆を潰すステップと、前記潰した蒸豆に、請求項1または2に記載の表面にタデアイの微細粉末を付着させた麹及び塩を混ぜ、混合物を得るステップと、前記混合物を発酵させるステップと、を含むことを特徴とする味噌の製造方法。