(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045761
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】金属空気電池
(51)【国際特許分類】
H01M 12/06 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
H01M12/06 A
H01M12/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151521
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】520349469
【氏名又は名称】Aqua Power Energy株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 俊哉
【テーマコード(参考)】
5H032
【Fターム(参考)】
5H032AA02
5H032AS02
5H032AS11
5H032CC01
5H032CC02
5H032CC11
5H032CC12
5H032CC27
5H032HH05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】照明器具として使用でき、また、発電した電力を外部に給電することもできる金属空気電池の提供。
【解決手段】電解液が充填される複数のチャンバーに仕切られており、上部が開口され、開口された上部に中蓋が着脱可能に被せられる内側ケースと、外側ケース1と、それぞれのチャンバー内に挿入可能に中蓋に吊り下げられたマグネシウム電極からなる複数の負極と、負極に臨むようにチャンバーの壁面に設けられた導電性材料からなる正極と、中蓋に設けられ、チャンバーで発電された電力を直列に接続する配線金具と、上蓋2の一方の側面に向かって配置されるUSBスロットと、上蓋の他方の側面に向かって配置されるLEDランプ4と、USBスロットとLEDランプへの給電を切り換える切換えスイッチと、配線金具からの電力を蓄えるコンデンサと、給電が前記USBスロットに切り換えられると点灯する表示ランプと、からなる電気回路と、が備えられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液が充填される複数のチャンバーに仕切られており、上部が開口され、開口された上部に中蓋が着脱可能に被せられる内側ケースと、
前記内側ケースを上部から挿入して収容する外側ケースと、
前記外側ケースの上部に着脱可能に被せられる上蓋と、
前記外側ケースと前記上蓋の前後側に架け渡され、前記上蓋を前記外側ケースに着脱可能に取り付ける係止部材と、
前記それぞれのチャンバー内に挿入可能に前記中蓋に吊り下げられたマグネシウム電極からなる複数の負極と、
前記それぞれの負極に臨むように前記チャンバーの壁面に設けられた導電性材料からなる正極と、
前記中蓋に設けられ、前記それぞれのチャンバーで発電された電力を直列に接続する配線金具と、
前記上蓋の一方の側面に向かって配置されるUSBスロットと、前記上蓋の他方の側面に向かって配置されるLEDランプと、前記USBスロットと前記LEDランプへの給電を切り換える切換えスイッチと、前記配線金具からの電力を蓄えるコンデンサと、給電が前記USBスロットに切り換えられると点灯する表示ランプと、からなる電気回路と、
が備えられることを特徴とする金属空気電池。
【請求項2】
前記複数の負極のそれぞれは上部にネジが取り付けられ、前記ネジが前記中蓋を貫通した状態でナットを螺合されて、前記中蓋に対して負極が着脱可能に吊り下げられることを特徴とする請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項3】
前記正極は、前記チャンバーの壁面を厚さ方向に貫通して設けられ、前記内側ケースと前記外側ケースとの間には、前記外側ケースの両側面に形成されたスリットを介して外部と連通する空間が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の金属空気電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属空気電池に関し、より詳しくは、照明器具として使用でき、発電した電力を外部に給電することができる金属空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、特許文献1で小型の金属空気電池を提案した。金属空気電池は、食塩水を電解液とし、負極にはマグネシウム金属板を使用し、正極には多孔質のカーボン膜を使用して、空気中の酸素を取り込んで発電する。電池切れで電池の購入に出かける必要がないので、例えば長時間の停電時や緊急時に、照明器具として使える金属空気電池が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、照明器具として使用でき、また、発電した電力を外部に給電することもできる金属空気電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による金属空気電池は、電解液が充填される複数のチャンバーに仕切られており、上部が開口され、開口された上部に中蓋が着脱可能に被せられる内側ケースと、前記内側ケースを上部から挿入して収容する外側ケースと、前記外側ケースの上部に着脱可能に被せられる上蓋と、前記外側ケースと前記上蓋の前後側に架け渡され、前記上蓋を前記外側ケースに着脱可能に取り付ける係止部材と、前記それぞれのチャンバー内に挿入可能に前記中蓋に吊り下げられたマグネシウム電極からなる複数の負極と、前記それぞれの負極に臨むように前記チャンバーの壁面に設けられた導電性材料からなる正極と、前記中蓋に設けられ、前記それぞれのチャンバーで発電された電力を直列に接続する配線金具と、前記上蓋の一方の側面に向かって配置されるUSBスロットと、前記上蓋の他方の側面に向かって配置されるLEDランプと、前記USBスロットと前記LEDランプへの給電を切り換える切換えスイッチと、前記配線金具からの電力を蓄えるコンデンサと、給電が前記USBスロットに切り換えられると点灯する表示ランプと、からなる電気回路と、が備えられることを特徴とする。
【0006】
前記複数の負極のそれぞれは上部にネジが取り付けられ、前記ネジが前記中蓋を貫通した状態でナットを螺合されて、前記中蓋に対して負極が着脱可能に吊り下げられることを特徴とする。
【0007】
前記正極は、前記チャンバーの壁面を厚さ方向に貫通して設けられ、前記内側ケースと前記外側ケースとの間には、前記外側ケースの両側面に形成されたスリットを介して外部と連通する空間が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、LEDランプを設けたので照明機器として使用できる。また、USBスロットを設けたので、スマートフォンを接続すれば充電ができる。
【0009】
複数の負極が、ネジで中蓋に取り付けられるので、中蓋を持ち上げると、マグネシウム電極を内側ケースから取り出せて、内側ケースの上部が開口するので、内側ケースへの塩水の供給が容易にできる。
【0010】
正極は、チャンバーの壁面を厚さ方向に貫通して、内側ケースと外側ケースとの間に露出させたので、外側ケースの側面に形成されたスリットから外部の空気が供給され、正極に酸素を取り込める。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による金属空気電池の外観図(正面側)である。
【
図2】本発明による金属空気電池の外観図(背面側)である。
【
図3】係止部材を外し、上蓋を取り外した場合を示す図である。
【
図4】内側ケースとマグネシウム電極を示す図である。
【
図6】マグネシウム電極を中蓋から取り外す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明による金属空気電池100の外観図(正面側)である。金属空気電池100は、外側ケース1と上蓋2からなる。外側ケース1と上蓋2は正面側の係止部材3aと、背面側の係止部材3b(
図2に示す)で着脱可能に連結される。連結する場合は、環状のリングをフックに掛けて、レバーを下側に倒すことによる。レバーを上側に倒せば、環状のリングをフックから外せる。上蓋2の上面に持ち手5が設けられ、持ち運びできる。上蓋2の正面側に照明装置としてのLEDランプ4が設けられる。外側ケース1の左側面には、左側面上部スリット35aと、左側面下部スリット35bが設けられる。これに限定されるものではないが、重量は約675g、高さが約19cm、幅が約5cm、奥行が約13cmである。
【0014】
図2は、本発明による金属空気電池100の外観図(背面側)である。上蓋2の背面側には、上からUSBスロット7と、切換えスイッチ6と、表示ランプ8が設けられる。外側ケース1の右側面には、右側面上部スリット35cと、右側面下部スリット35dが設けられる。USBスロット7には5Vが給電される。
【0015】
図3は、係止部材3a、3bを外し、上蓋2を取り外した場合を示す図である。上蓋2を取り外すと、外側ケース1の上部には中蓋10が見える。
【0016】
図4は、内側ケース9とマグネシウム電極を示す図である。外側ケース1には、内側ケース9が挿入され、内側ケース9の上部が中蓋10で塞がれる構造としている。中蓋10には、マグネシウム電極17が吊り下げられる。マグネシウム電極17は負極で、第1負極17aと、第2負極17bと、第3負極17cの3本からなる。内側ケース9は、それぞれ100ml容量の第1チャンバー11と、第2チャンバー12と、第3チャンバー13と、を備える。第1チャンバー11の両側に第1右正極14aと、第1左正極14bが取り付けられる。同様に、第2チャンバー12の両側に第2右正極14cと、第2左正極14dが取り付けられる。同様に、第3チャンバー13の両側に第3右正極14eと、第3左正極14fが取り付けられる。
図4に示すように、例として第1左正極14b、第2左正極14d、第3左正極14fは、中蓋10が取り付けられた状態で、それぞれ第1左正極端子18bと、第2左正極端子18dと、第3左正極端子18fに接触する。図示していないが、第1右正極14a、第2右正極14c、第3右正極14eは、中蓋10のそれぞれ第1右正極端子18aと、第2右正極端子18cと、第3右正極端子18eに接触する。
【0017】
図5は、
図4のA-A断面図である。チャンバー13の両側に第3左正極14fと、第3右正極14eが設けられ、これら正極は、外側ケース1と内側ケース9の間の空間に露出している。外側ケース1には、
図1、
図2に示すように、左側面上部スリット35aと、左側面下部スリット35bと、右側面上部スリット35cと、右側面下部スリット35dと、が設けられており、外側ケース1と内側ケース9の間の空間は外部と連通している。正極は多孔質のカーボン膜で、これにより、正極は空気中の酸素を取り込める。金属空気電池の正極と負極の反応式を下記に示す。この反応式から水酸化マグネシウムが生成される。
[負極] Mg ⇒Mg
2+ +2e
-
[正極] (1/2)O
2+H
2O+2e
- ⇒2OH
-
[全体] Mg+(1/2)O
2+H
2O ⇒Mg(OH)
2
【0018】
図6は、マグネシウム電極17を中蓋10から取り外す図である。マグネシウム電極17は、第1負極17aと、第2負極17bと、第3負極17cと、からなり、ネジ20で中蓋10に取り付けられる。各負極には、ネジ20に螺合するナット21がある。よって、負極の交換のため、マグネシウム電極17は、中蓋10から取り外すことができる。
【0019】
図7は、中蓋10の配線図である。中蓋10には、第1チャンバー11、第2チャンバー12、第3チャンバー13で発電された電力を直列に接続する配線金具22が設けられる。中蓋10からは正極端子23と負極端子24が上蓋2に向かって突出している。
【0020】
図8は、中蓋10の平面図である。直列に接続する配線金具22が設けられる。ネジ20で示す部分が負極で、その両側に向かい合わせで正極が配置される。第1右正極端子18aと第1左正極端子18bが第1負極17aを挟み、第2右正極端子18cと第2左正極端子dが第2負極17bを挟み、第3右正極端子18eと第3左正極端子18fが第3負極17cを挟む。中蓋10には、突起28が設けられ、上蓋2の誤挿入を防止する。
【0021】
図9は、上蓋2の底面図である。中蓋10の正極端子23と負極端子24が、上蓋2の正極端子25と、負極端子26に接続される。上蓋2には、誤挿入防止突起27が設けられる。通常は、誤挿入防止突起27が中蓋10の突起28にぶつかることなく嵌め込まれる。これに対して、
図9で上蓋2を前と後を逆にして中蓋10に嵌め込むなら、誤挿入防止突起27が中蓋10の突起28にぶつかり嵌め込むことができない。
【0022】
図10は、上蓋2内の配線図である。電気回路29は、USBスロット30、切換えスイッチ31、緑の表示ランプ32、コンデンサ33、LEDランプ34の各電気部品を接続する。上蓋2には窓2aが設けられ、電気回路29は底板2bの上に搭載される。
【0023】
図11は、操作手順を示すフローチャートである。金属空気電池100で発電を行なうには、次のように行なう。[S1]:係止部材3を外し、上蓋2を外側ケース1から外す。[S2]:塩水を作る。(a)100mlずつ、3チャンバー分を作る。(b)塩は、1チャンバー14g程度である。[S3]:塩水をチャンバーに投入する。(a)100ml×3の300mlがチャンバーに投入される。(b)上蓋2を閉じる。[S4]:切換えスイッチ32を押すと、LEDランプが点灯する。再度押下すると、緑の表示ランプが点灯し、USBスロットに給電中であることを示す。切り換えは、交互に行なわれる。LEDランプは、80h(時間)使用できる。USB給電は24h(時間)使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、照明器具として使用でき、また発電した電力を外部に供給することもできる金属空気電池として好適である。
【符号の説明】
【0025】
1 外側ケース
2 上蓋
2a 窓
2b 底板
3 係止部材
3a 正面側の係止部材
3b 背面側の係止部材
4 LEDランプ
5 持ち手
6 切換えスイッチ
7 USBスロット
8 表示ランプ
9 内側ケース
10 中蓋
11 第1チャンバー
12 第2チャンバー
13 第3チャンバー
14 正極
14a 第1右正極
14b 第1左正極
14c 第2右正極
14d 第2左正極
14e 第3右正極
14f 第3左正極
17 マグネシウム電極
17a 第1負極
17b 第2負極
17c 第3負極
18 正極端子
18a 第1右正極端子
18b 第1左正極端子
18c 第2右正極端子
18d 第2左正極端子
18e 第3右正極端子
18f 第3左正極端子
19 マグネシウム電極
20 ネジ
21 ナット
22 配線金具
23、25 正極端子
24、26 負極端子
27 誤挿入防止突起
28 突起
29 電気回路
30 USBスロット
31 切換えスイッチ
32 表示ランプ
33 コンデンサ
34 LEDランプ
35 スリット
35a 左側面上部スリット
35b 左側面下部スリット
35c 右側面上部スリット
35d 右側面下部スリット
100 金属空気電池