(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045762
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】エンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤、美白用組成物、及び美白用皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20220314BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220314BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220314BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20220314BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P17/00
A61P43/00 111
A61K8/99
A61Q19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151522
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】715011078
【氏名又は名称】アサヒグループ食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】小林 悦子
(72)【発明者】
【氏名】宮田 智
(72)【発明者】
【氏名】湊 明義
【テーマコード(参考)】
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4C083AA031
4C083AA032
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC092
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC662
4C083AC712
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD152
4C083AD492
4C083AD512
4C083BB51
4C083CC02
4C083DD31
4C083EE07
4C083EE16
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC56
4C087CA11
4C087MA28
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZC41
(57)【要約】
【課題】安全性が高く、優れたエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制作用を有するエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤、並びに安全性が高く、優れた美白作用を有する美白用組成物及び美白用皮膚外用剤の提供。
【解決手段】ラクトバチルス・カルバタス(Lactbacillus curvatus)FBA2株(受託番号 NITE P-649)の抽出物を含有するエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤、並びに前記エンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤を含有する美白用組成物及び美白用皮膚外用剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・カルバタス(Lactbacillus curvatus)FBA2株(受託番号 NITE P-649)の抽出物を含有することを特徴とするエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤。
【請求項2】
前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物が、水と親水性溶媒との混合溶媒抽出物である請求項1に記載のエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤。
【請求項3】
前記親水性溶媒が、エタノールである請求項2に記載のエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤を含有することを特徴とする美白用組成物。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載のエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤を含有することを特徴とする美白用皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤、並びにこれを含む美白用組成物及び美白用皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
メラニンは、紫外線から生体を保護する役目があり、紫外線を浴びると皮膚内に生成される。しかしながら、過剰生成や不均一な蓄積は、皮膚の黒化やシミやソバカスの原因となる。一般に、メラニンは色素細胞の中で生合成される酵素チロシナーゼの働きによって、チロシンからドーパ、ドーパからドーパキノンに変化し、次いで、5,6-ジヒドロキシインドフェノール等の中間体を経て形成される。したがって、皮膚の色黒(皮膚色素沈着症)を予防・改善するため、即ち美白のためには、メラニンの産生を抑制すること、或いは既に産生したメラニンを淡色漂白することが有効であると考えられる。
【0003】
従来、美白作用を有する組成物の開発は、メラニン生成の律速酵素であるチロシナーゼに注力して進められてきた。一方、最近では、紫外線UV-B照射後に表皮ケラチノサイトからの産生が上昇し、色素細胞(メラノサイト)を活性化するサイトカインとして、α-メラノサイト刺激ホルモン(α-MSH)、エンドセリン-1、幹細胞増殖因子(Stem Cell Factor、SCF)、一酸化窒素、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic Fibroblast Growth Factor、bFGF)、顆粒球・マクロファージ・コロニー刺激因子(GM-CSF)等が報告されており、これらが関与する情報伝達系を遮断することにより、メラニン産生を抑制して美白効果を導く物質の開発が盛んに行われるようになってきている。
【0004】
エンドセリン-1は、紫外線が肌にあたると表皮角化細胞で産生され、産生されたエンドセリン-1は、表皮メラニン細胞を刺激して、シミ、ソバカスの原因となるメラニンを盛んに合成させる。したがって、表皮角化細胞のエンドセリン-1の合成を抑制することができればシミ、ソバカスを治療または予防することができる。
【0005】
エンドセリン-1の過剰産生は、色素細胞の過剰増殖につながり、メラニン産生を亢進させ、シミ、ソバカス、くすみ等の原因となると考えられる。したがって、エンドセリン-1の発現を抑制することは、色素細胞の増殖を抑制し、皮膚におけるメラニンの過剰産生を抑制し、日焼け後の色素沈着、シミ、ソバカス等の予防又は抑制に有用であると考えられる。
【0006】
したがって、安全性が高く、エンドセリン-1の産生を抑制することができ、優れた美白作用を有する新たな素材の速やかな開発が強く求められているのが現状である。
【0007】
なお、ラクトバチルス・カルバタス(Lactbacillus curvatus)FBA2株(受託番号 NITE P-649)は、主に皮膚のシワやたるみに関与する美肌作用を有することが報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、安全性が高く、優れたエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制作用を有するエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤、並びに安全性が高く、優れた美白作用を有する美白用組成物及び美白用皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株(受託番号 NITE P-649)の抽出物が、優れたエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制作用を有することを知見した。
【0011】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> ラクトバチルス・カルバタスFBA2株(受託番号 NITE P-649)の抽出物を含有することを特徴とするエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤である。
<2> 前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物が、水と親水性溶媒との混合溶媒抽出物である前記<1>に記載のエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤である。
<3> 前記親水性溶媒が、エタノールである前記<2>に記載のエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤である。
<4> 前記<1>から<3>のいずれかに記載のエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤を含有することを特徴とする美白用組成物である。
<5> 前記<1>から<3>のいずれかに記載のエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤を含有することを特徴とする美白用皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、安全性が高く、優れたエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制作用を有するエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤、並びに安全性が高く、優れた美白作用を有する美白用組成物及び美白用皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(エンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤)
本発明のエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤は、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株(受託番号 NITE P-649)の抽出物を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0014】
前記エンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤は、エンドセリン-1 mRNAの発現の上昇を抑制する作用を有するものである。
【0015】
前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物が有するエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制作用を発揮する物質の詳細については不明であるが、前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物がこのような優れた作用を有し、エンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤として有用であることは、従来は全く知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。
【0016】
<ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物>
-ラクトバチルス・カルバタスFBA2株-
前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に受託番号NITE P-649として平成20年9月25日に寄託されている。
【0017】
前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株を培養する培地としては、特に制限はなく、乳酸菌の培養において一般的に用いられる培地やその改変培地等を適宜選択することができる。
【0018】
前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株を培養する培地に含有される炭素源としては、特に制限はなく、通常の微生物の培養に利用されるものを適宜選択することができ、例えば、グルコース、蔗糖、乳糖、糖蜜などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株を培養する培地に含有される窒素源としては、特に制限はなく、通常の微生物の培養に利用されるものを適宜選択することができ、例えば、ペプトン、カゼイン、カゼイン分解物、ホエー、ホエー分解物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株を培養する培地に含有されるその他の栄養素の供給源としては、特に制限はなく、通常の微生物の培養に利用されるものを適宜選択することができ、例えば、コーンスティプリカー(CSL)、酵母エキス、肉エキス、肝臓エキス、トマトジュースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株を培養する培地には、必要に応じてL-システイン等の還元剤;ビタミン、核酸関連物質、酢酸塩やクエン酸塩、脂肪酸エステル、特に好ましくはツイーン80等の生育促進因子;リン酸塩等の緩衝能を付与し得る化合物などが含まれていてもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株を培養する培地の具体例としては、MRS培地等の合成培地;野菜や果物等の搾汁;牛乳、豆乳、還元脱脂粉乳培地等の発酵乳の製造に一般的に用いられる培地などが挙げられる。
【0023】
前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の培養方法としては、特に制限はなく、培養スケールなどを考慮して適宜選択することができ、例えば、寒天平板培地に塗布して培養する方法、液体培地中で培養する方法などが挙げられる。前記液体培地中で培養する方法としては、例えば、静置培養、回分培養などが挙げられる。例えば、継代培養の場合には、簡便であるため、寒天平板培地上で培養することや、適当な液体培地中で静置培養、回分培養することが好ましい。
【0024】
前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の培養条件としては、特に制限はなく、乳酸菌を培養する場合に一般的に用いられる条件を適宜選択することができる。例えば、培養温度としては、20~40℃であることが好ましく、25~37℃であることがより好ましく、30℃であることが特に好ましい。また、培地のpHとしては、3.5~8.0であることが好ましく、4.0~7.0であることがより好ましい。特に、乳酸菌の培養においては、該乳酸菌が産生する乳酸により培地のpHが低下するため、培養開始時の培地のpHは6.0~7.0であることが好ましい。
前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株は、他の乳酸菌と同様に嫌気的条件で培養することが好ましい。
【0025】
-抽出物-
前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抽出液そのもの、抽出液の希釈液、抽出液の濃縮液、抽出液の乾燥物、抽出液の粗精製物、抽出液の精製物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物の調製方法としては、特に制限はなく、微生物の抽出に一般に用いられる方法を適宜選択することができ、例えば、抽出溶媒に前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株を投入し、必要に応じて適宜撹拌しながら可溶性成分を溶出した後、濾過して抽出残渣を除くことにより抽出液を得る方法などが挙げられる。
【0027】
前記抽出に用いるラクトバチルス・カルバタスFBA2株は、生菌であってもよいし、死菌であってもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、両者を併用してもよい。
前記死菌は、前記生菌を殺菌処理等することにより得ることができる。前記殺菌処理としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、125℃、40秒間の加熱処理、UV照射処理、ホルマリン処理、酵素処理、破砕処理などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記抽出における抽出溶媒及びその使用量、抽出温度、及び抽出時間としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0029】
前記抽出溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、親水性溶媒、水と親水性溶媒との混合溶媒などが挙げられる。これらの中でも、水と親水性溶媒との混合溶媒が好ましい。
【0030】
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0031】
前記親水性溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。これらの中でも、エタノールが好ましい。
【0032】
前記親水性溶媒の混合溶媒における量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10~95容量%が好ましく、20~90容量%がより好ましく、30~85容量%が特に好ましい。前記好ましい範囲内であると、得られる抽出物のエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制作用がより高まる点で、有利である。
【0033】
得られた前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物は、前記抽出物の希釈物、濃縮物、乾燥物、粗精製物、精製物などを得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製などの処理を施してもよい。
【0034】
前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物のエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤における含有量としては、特に制限はなく、前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物の生理活性等によって適宜調整することができる。前記エンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤は、前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物のみからなるものであってもよい。
【0035】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述する美白用組成物及び美白用皮膚外用剤におけるその他の成分と同様のものなどが挙げられる。
前記その他の成分のエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0036】
<用途>
本発明のエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、後述する美白用組成物や美白用皮膚外用剤の有効成分として好適に用いることができる。
【0037】
本発明のエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、その作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【0038】
また、本発明のエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤は、エンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制作用や美白作用の作用機構に関する研究のための試薬としても用いることができる。
【0039】
(美白用組成物及び美白用皮膚外用剤)
本発明の美白用組成物及び美白用皮膚外用剤は、本発明のエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0040】
<エンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤>
前記エンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤は、上述した本発明のエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤である。
【0041】
前記エンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤の美白用組成物及び美白用皮膚外用剤における含有量としては、特に制限はなく、前記エンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤に含まれるラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物の生理活性等によって適宜調整することができ、例えば、前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物の量として、0.01~5質量%であることが好ましく、0.1~2質量%であることがより好ましい。なお、前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物の量とは、乾燥し固体とした場合の質量を意味する。
前記美白用組成物及び美白用皮膚外用剤は、前記エンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制剤のみからなるものであってもよい。
【0042】
<その他の成分>
前記美白用組成物及び美白用皮膚外用剤におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、前記美白用組成物及び美白用皮膚外用剤の利用形態に応じて適宜選択することができ、例えば、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤などが挙げられる。また、公知のエンドセリン-1 mRNA上昇抑制作用を有する物質や美白作用を有する物質を含んでいてもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の美白用組成物及び美白用皮膚外用剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0043】
前記美白用組成物及び美白用皮膚外用剤は、経皮摂取するものであることが好ましい。前記経皮摂取するものとしては、皮膚外用剤が好ましく挙げられる。
【0044】
前記皮膚外用剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化粧品、医薬部外品、医薬品などが挙げられる。これらの中でも、化粧品であることが好ましい。
【0045】
前記美白用組成物及び美白用皮膚外用剤の剤形としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クリーム、乳液、ローション、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏、ハップ剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーションなどが挙げられる。
【0046】
前記美白用組成物及び美白用皮膚外用剤の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を剤形等に応じて適宜選択することができ、例えば、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物に、小麦胚芽油、オリーブ油等の油分を添加して、皮膚外用剤などを製造することができる。
【0047】
前記美白用組成物及び美白用皮膚外用剤は、日常的に使用することが可能であり、有効成分であるラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物の働きによって、美白作用を極めて効果的に発揮させることができる。なお、美白作用を奏するメカニズムにはいくつかの経路があるが、前記美白用組成物及び美白用皮膚外用剤は、エンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制作用により美白作用を奏する。
【0048】
前記美白用組成物及び美白用皮膚外用剤の1日当たりの使用量としては、摂取する対象、摂取の形態等の種類、摂取の間隔等の要因に依存して変動するものであり、特に制限はないが、例えばヒト成人1人の1日当たりの顔への皮膚塗布量として、前記ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物が0.01~5質量%で配合された美白用組成物又は美白用皮膚外用剤0.01~5gを均一に塗布することが好ましく、0.1~0.5gを均一に塗布することがより好ましい。この1日量を、1度に摂取してもよく、複数回に分割して摂取することもできる。
【0049】
前記美白用組成物及び美白用皮膚外用剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、その作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例0050】
以下、本発明の製造例及び試験例を説明するが、本発明は、これらの製造例及び試験例に何ら限定されるものではない。
【0051】
(比較製造例1)
MRS培地(Difco社)を121℃にて15分間で滅菌後、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株(受託番号 NITE P-649)を接種し、30℃にて18時間静置培養した液を前培養液とした。
2Lのジャーファーメンターを用いて、1Lの滅菌MRS培地に上記前培養液を1%となるように接種し、30℃にて24時間、pH6.0に調整しながら培養した。培養終了後、菌体を蒸留水にて1回洗浄した後、6,000rpmにて15分間で遠心分離して菌体を回収した。
得られた菌体を再度水に懸濁し、100℃にて30分間加熱殺菌した後、凍結乾燥を行い、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の乾燥死菌体1.25gを得た(以下、「FBA2」と称することがある。)。
【0052】
(製造例1)
前記比較製造例1と同様にして、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の乾燥死菌体を得た。
前記乾燥死菌体100gに80容量%エタノール1,500mLを加え還流抽出器で80~90℃にて2時間加熱抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥し、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物(5g)を得た(以下、「FBA2抽出物」と称することがある。)。
【0053】
(試験例1:B16 メラノーマ細胞に対するメラニン産生抑制作用試験)
比較製造例1で得られたFBA2及び製造例1で得られたFBA2抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により、B16 メラノーマ細胞に対するメラニン産生抑制作用を試験した。
なお、被験試料は、ジメチルスルホキシド(DMSO)にて溶解後、希釈を施し、試験濃度に調整した。
【0054】
<試験方法>
B16 メラノーマ細胞を 10%FBS含有ダルベッコMEMを用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を10%FBS及び1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEMで24.0×104cells/mLの濃度に希釈した後、48ウェルプレートに1ウェル当たり300μLずつ播種し、6時間培養した。培養終了後、10%FBS及び1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEMで必要濃度に調整した被験試料を各ウェルに300μL添加し、4日間培養した。培養終了後、各ウェルから培地を取り除き、2mol/L NaOH溶液200μLを添加して超音波破砕器により細胞を破壊し、波長475nmにおける吸光度を測定した。測定した吸光度の値から、合成メラニンを用いて作成した検量線をもとにメラニン量を算出した。
また、細胞生存率の測定のため、同様に培養後、400μLのPBS(-)で洗浄し、終濃度0.05mg/mLで10%FBS含有ダルベッコMEMに溶解したニュートラルレッドを各ウェルに200μL添加した。2.5時間培養した後、ニュートラルレッド溶液を捨て、エタノール・酢酸溶液(エタノール:酢酸:水=50:1:49)を各ウェルに200μL添加し、色素を抽出した。抽出後、波長540nmにおける吸光度を測定した。空試験として、10%FBS及び1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEMのみで培養した細胞を同様の方法で試験した。
メラニン産生抑制率及び細胞生存率の計算方法は以下のとおりである。結果を表1に示す。
メラニン産生抑制率(%)={1-(B/D)/(A/C)}×100
細胞生存率(%)=(D/C)×100
A:被験試料無添加におけるメラニン量
B:被験試料添加におけるメラニン量
C:被験試料無添加での540nmにおける吸光度
D:被験試料添加での540nmにおける吸光度
【0055】
【0056】
表1の結果から、いずれの被験試料にもメラニン産生抑制作用は認められなかった。
【0057】
(試験例2:エンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制作用試験)
比較製造例1で得られたFBA2及び製造例1で得られたFBA2抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により、エンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制作用を試験した。
なお、被験試料は、ジメチルスルホキシド(DMSO)にて溶解後、希釈を施し、試験濃度に調整した。
【0058】
<試験方法>
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を75cm2フラスコで正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)において、37℃、5%CO2下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
KGMを用いて35mmシャーレ(FALCON)に40×104cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO2下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加えUV-B照射(85.8mJ/cm2)を行い、その後KGMで必要濃度に調整した被験試料を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO2下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(NIPPON GENE;Cat.no.311-07361)にてトータルRNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにトータルRNAを調製した。
このトータルRNAを鋳型とし、エンドセリン-1及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time System III(TaKaRa)を用いて、TaKaRa SYBR(登録商標) PrimeScriptTM RT-PCR Kit(Perfect Real Time)(code No.RR063A)によるリアルタイム2ステップRT-PCR反応により行った。エンドセリン-1のmRNA発現量は、GAPDHのmRNA発現量で補正し算出した。
紫外線照射によるエンドセリン-1のmRNA発現上昇抑制率の計算方法は以下のとおりである。結果を表2に示す。
エンドセリン-1のmRNA発現上昇抑制率(%)
=〔{(A-B)-(A-C)}/(A-B)〕×100
A:紫外線未照射・被験試料無添加時の補正値
B:紫外線照射・被験試料無添加時の補正値
C:紫外線照射・被験試料添加時の補正値
【0059】
【0060】
表2の結果から、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物にエンドセリン-1のmRNA発現上昇抑制作用が認められた。
【0061】
(試験例3:プロオピオメラノコルチン(POMC) mRNA発現上昇抑制作用試験)
比較製造例1で得られたFBA2及び製造例1で得られたFBA2抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により、POMC mRNA発現上昇抑制作用を試験した。
なお、被験試料は、ジメチルスルホキシド(DMSO)にて溶解後、希釈を施し、試験濃度に調整した。
【0062】
<試験方法>
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を75cm2フラスコで正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)において、37℃、5%CO2下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
KGMを用いて35mmシャーレ(FALCON)に40×104cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO2下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加えUV-B照射(85.8mJ/cm2)を行い、その後KGMで必要濃度に調整した被験試料を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO2下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(NIPPON GENE;Cat.no.311-07361)にてトータルRNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにトータルRNAを調製した。
このトータルRNAを鋳型とし、POMC及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time System III(TaKaRa)を用いて、TaKaRa SYBR(登録商標) PrimeScriptTM RT-PCR Kit(Perfect Real Time)(code No.RR063A)によるリアルタイム2ステップRT-PCR反応により行った。POMCのmRNA発現量は、GAPDHのmRNA発現量で補正し算出した。
紫外線照射によるPOMCのmRNA発現上昇抑制率の計算方法は以下のとおりである。結果を表3に示す。
POMCのmRNA発現上昇抑制率(%)
=〔{(A-B)-(A-C)}/(A-B)〕×100
A:紫外線未照射・被験試料無添加時の補正値
B:紫外線照射・被験試料無添加時の補正値
C:紫外線照射・被験試料添加時の補正値
【0063】
【0064】
表3の結果から、いずれの被験試料にも有意なPOMC mRNA発現上昇抑制作用は認められなかった。
【0065】
以上の結果から、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物は、ヒト表皮角化細胞におけるエンドセリン-1 mRNA発現上昇抑制作用を有し、これにより美白効果を有することが確認された。一方、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物では、B16メラノーマ細胞におけるメラニン産生抑制作用及びヒト表皮角化細胞におけるPOMC mRNA発現上昇抑制作用は確認されなかった。なお、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の抽出物で、B16メラノーマ細胞におけるメラニン産生抑制作用が確認できなかった理由はヒト表皮角化細胞が存在しなかったためであり、ヒトの皮膚においては表皮角化細胞とメラニン産生細胞(メラノサイト)が共存するため、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株抽出物により表皮角化細胞でのエンドセリン-1mRNA発現上昇が抑制され、メラニン産生が抑制されて、美白作用を発揮すると考えられる。
【0066】
(処方例1)
下記に記載の成分(1)~(10)を80℃に加熱融解し油相とした。下記に記載の成分(11)~(13)を70℃に加熱溶解し水相とした。前記油相に前記水相を徐々に加えて乳化し、撹拌しながら40℃まで冷却し、更に30℃まで撹拌冷却して皮膚外用クリームを製造した。
(1) ステアリルアルコール ・・・ 6.0質量%
(2) ステアリン酸 ・・・ 2.0質量%
(3) 水添ラノリン ・・・ 4.0質量%
(4) スクワラン ・・・ 9.0質量%
(5) オクチルドデカノール ・・・ 10.0質量%
(6) POE(25)セチルアルコールエーテル ・・・ 3.0質量%
(7) モノステアリン酸グリセリン ・・・ 2.0質量%
(8) FBA2抽出物(製造例1) ・・・ 0.5質量%
(9) 防腐剤 ・・・ 適量
(10) 香料 ・・・ 適量
(11) 1,3-ブチレングリコール ・・・ 6.0質量%
(12) PEG1500 ・・・ 4.0質量%
(13) 精製水 ・・・ 残余
全量 100.0質量%
【0067】
(処方例2)
下記に記載の成分(1)に成分(2)を加え、80℃に加熱融解した。下記に記載の成分(3)~(8)を加え、80℃に加熱融解し油相とした。下記に記載の成分(9)~(11)を70℃に加熱溶解し水相とした。前記油相に前記水相を徐々に加えて乳化し、撹拌しながら30℃まで冷却した。更に、下記に記載の成分(12)及び(13)を下記に記載の成分(14)に加えて撹拌溶解したものを加え、撹拌して皮膚外用乳液を製造した。
(1) ジプロピレングリコール ・・・ 9.000質量%
(2) FBA2抽出物(製造例1) ・・・ 1.000質量%
(3) (ヒドロキシエチルアクリル酸/アクリルジメチルタウリンNa)コポリマー
・・・ 0.188質量%
(4) スクワラン ・・・ 0.127質量%
(5) ポリソルベート60 ・・・ 0.028質量%
(6) ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)
・・・ 1.000質量%
(7) グリセリン ・・・ 5.000質量%
(8) ジメチコン ・・・ 3.000質量%
(9) 精製水 ・・・ 74.742質量%
(10) カルボマー ・・・ 0.200質量%
(11) ベタイン ・・・ 2.000質量%
(12) エタノール ・・・ 3.000質量%
(13) 水酸化カリウム ・・・ 0.065質量%
(14) 精製水 ・・・ 0.650質量%
全量 100.000質量%