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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045763
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】2次電池パック及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/20 20210101AFI20220314BHJP
   H01M 50/572 20210101ALI20220314BHJP
【FI】
H01M2/10 E
H01M2/34 A
H01M2/10 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151523
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】390025140
【氏名又は名称】ボーンズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】浪川 勝史
【テーマコード(参考)】
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H040AA37
5H040AS11
5H040AT04
5H040AY04
5H040DD02
5H040DD08
5H040DD13
5H040DD24
5H040DD26
5H040JJ02
5H040JJ03
5H040NN03
5H043AA04
5H043BA11
5H043CA08
5H043CA21
5H043CB01
5H043DA09
5H043GA06
5H043GA07
5H043HA02
5H043HA02D
5H043HA04
5H043HA04D
5H043HA17D
5H043JA02
5H043JA02D
5H043JA04
5H043JA04D
5H043JA06
5H043JA06D
5H043JA13
5H043JA13D
5H043LA21
5H043LA21D
5H043LA22
5H043LA22D
(57)【要約】
【課題】回路の高容量化を図りつつ、蓄電セルの過熱を迅速に検知できる2次電池パックを提供する。
【解決手段】2次電池パック100は、蓄電セル101から突出する正極片102と、端子片2を有するブレーカー1と、正極片102及び端子片2に接続されるリード片103とを備える。リード片103は、正極片102と接触する接触領域103aを有する。端子片2は、リード片103の厚さ方向から視た平面視で、接触領域103aと重複する領域で、リード片103と接触する第1部分26と、リード片103を露出させるための第2部分27を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電セルから突出する正極片と、端子片を有するブレーカーと、前記正極片及び前記端子片に接続されるリード片とを備えた2次電池パックであって、
前記リード片は、前記正極片と接触する接触領域を有し、
前記端子片は、前記リード片の厚さ方向から視た平面視で、前記接触領域と重複する領域で、前記リード片と接触する第1部分と、前記リード片を露出させるための第2部分を含む、
2次電池パック。
【請求項2】
前記リード片の前記接触領域のうち、前記平面視で前記第1部分と重複する領域には、レーザー光が照射された第1照射痕が形成されている、請求項1に記載の2次電池パック。
【請求項3】
前記リード片のうち、前記第2部分を介して露出する領域には、レーザー光が照射された第2照射痕が形成されている、請求項1又は2に記載の2次電池パック。
【請求項4】
前記第2部分は、前記端子片を厚さ方向に貫通する貫通孔を含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の2次電池パック。
【請求項5】
前記第2部分は、前記端子片の端縁で前記端子片の一部が除かれた切り欠き部を含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の2次電池パック。
【請求項6】
蓄電セルから突出する正極片と、端子片を有するブレーカーと、前記正極片及び前記端子片に接続されるリード片とを備えた2次電池パックを製造する方法であって、
前記端子片の一部が除かれた打ち抜き部を含む前記ブレーカーを製造する第1工程と、
前記端子片と前記リード片の第1面とを接触させ、前記リード片の前記第1面とは反対の第2面の側からレーザー光を照射して、前記端子片と前記リード片を溶接する第2工程と、
前記リード片の前記第2面と前記正極片とを接触させ、前記端子片の側から前記打ち抜き部を介して前記リード片の前記第1面にレーザー光を照射して、前記リード片と前記正極片とを溶接する第3工程とを含む、
2次電池パックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器の直流電源として2次電池パックが広く適用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-206732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の図5に示される2次電池パックでは、ブレーカーの一方の端子はバッテリーを構成するセルから突出するアルミニウム製の正極端子にニッケル製のタブを介在させて、例えばレーザー溶接や抵抗溶接などによって溶接される。
【0005】
しかしながら、ニッケル製のタブは、抵抗値が大きく、機器に大電流を供給する際に、発熱が大きくなり、回路の高容量化を図ることが困難となる場合がある。また、ニッケルは、熱伝導率が低いため、蓄電セルの熱がブレーカーに伝わりにくく、セルの過熱を迅速に検知することが困難となる場合がある。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、回路の高容量化を図りつつ、蓄電セルの過熱を迅速に検知できる2次電池パックを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、蓄電セルから突出する正極片と、端子片を有するブレーカーと、前記正極片及び前記端子片に接続されるリード片とを備えた2次電池パックであって、前記リード片は、前記正極片と接触する接触領域を有し、前記端子片は、前記リード片の厚さ方向から視た平面視で、前記接触領域と重複する領域で、前記リード片と接触する第1部分と、前記リード片を露出させるための第2部分を含む。
【0008】
本発明に係る前記2次電池パックにおいて、前記リード片の前記接触領域のうち、前記平面視で前記第1部分と重複する領域には、レーザー光が照射された第1照射痕が形成されている、ことが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記2次電池パックにおいて、前記リード片のうち、前記第2部分を介して露出する領域には、レーザー光が照射された第2照射痕が形成されている、ことが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記2次電池パックにおいて、前記第2部分は、前記端子片を厚さ方向に貫通する貫通孔を含む、ことが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記2次電池パックにおいて、前記第2部分は、前記端子片の端縁で前記端子片の一部が除かれた切り欠き部を含む、ことが望ましい。
【0012】
本発明は、蓄電セルから突出する正極片と、端子片を有するブレーカーと、前記正極片及び前記端子片に接続されるリード片とを備えた2次電池パックを製造する方法であって、前記端子片の一部が除かれた打ち抜き部を含む前記ブレーカーを製造する第1工程と、前記端子片と前記リード片の第1面とを接触させ、前記リード片の前記第1面とは反対の第2面の側からレーザー光を照射して、前記端子片と前記リード片を溶接する第2工程と、前記リード片の前記第2面と前記正極片とを接触させ、前記端子片の側から前記打ち抜き部を介して前記リード片の前記第1面にレーザー光を照射して、前記リード片と前記正極片とを溶接する第3工程とを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の前記2次電池パックは、前記端子片が、前記リード片の厚さ方向から視た平面視で、前記正極片との前記接触領域と重複する領域で、前記リード片と接触する第1部分と、前記リード片を露出させるための第2部分を含む。従って、前記リード片を挟んで前記正極片と前記端子片との距離が最短(すなわち、前記リード片の厚さに相当する距離)となり、前記リード片の抵抗値を容易に低減できる。これにより、例えば、前記リード片にニッケル等の抵抗率が大きい金属を適用する形態にあっても、前記リード片の発熱が抑制され、前記回路の高容量化を容易に図ることが可能となる。また、前記蓄電セルの熱が前記ブレーカーに伝わり易くなり、前記蓄電セルの過熱を迅速に検知することが可能となる。
【0014】
本発明の前記2次電池パックは、前記第1工程で、前記端子片に前記打ち抜き部を含む前記ブレーカーが製造され、前記第2工程で、前記リード片の前記第2面の側から前記レーザー光が照射されて、前記端子片と前記リード片とが溶接され、前記第3工程で、前記端子片の側から前記打ち抜き部を介して前記リード片の前記第1面にレーザー光が照射されて、前記リード片と前記正極片とが溶接される。従って、前記リード片を挟んで前記正極片と前記端子片との距離が最短となり、前記リード片の抵抗値を容易に低減できる。これにより、前記リード片の発熱が抑制され、前記回路の高容量化を容易に図ることが可能となり、また、前記蓄電セルの熱が前記ブレーカーに伝わり易くなり、前記蓄電セルの過熱を迅速に検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る2次電池パックを含む直流回路を示す回路図。
図2】上記2次電池パックを示す平面図。
図3】上記2次電池パックに含まれるブレーカーの構成を示す組み立て前の斜視図。
図4】通常の充電又は放電状態における上記ブレーカーを示す断面図。
図5】過充電状態又は異常時などにおける上記ブレーカーを示す断面図。
図6】上記2次電池パックにおけるブレーカーの周辺の構成を示す組み立て前の斜視図。
図7】上記2次電池パックの製造方法の第2工程を示す斜視図。
図8】上記2次電池パックの製造方法の第3工程を示す斜視図。
図9】上記2次電池パックの変形例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態による2次電池パック100を含む2次電池回路200を示している。2次電池回路200は、2次電池201と、ブレーカー1と、負荷202とを含む直流回路である。負荷202は、2次電池201によって駆動される。ブレーカー1は、2次電池201と負荷202との間に配されている。2次電池201と、ブレーカー1と、負荷202とは、直列に接続されている。
【0017】
図2は、2次電池パック100を示している。2次電池パック100は、2次電池201の電荷を蓄える蓄電セル101と、蓄電セル101から突出する正極片102と、一対の端子片2、3を有するブレーカー1と、正極片102及び一方の端子片2に接続されるリード片103とを備えている。
【0018】
ブレーカー1の他方の端子片3は、リード片104を介して回路基板105のランドと接続されている。また、蓄電セル101から突出する負極片106は、回路基板105のランドと接続されている。蓄電セル101、正極片102、リード片103、ブレーカー1、リード片104、回路基板105及び負極片106によって直流回路が形成される。図1に示される2次電池回路200の負荷202は、回路基板105上に実装又は回路基板105の外部に接続されている。
【0019】
蓄電セル101と、正極片102と、負極片106とによって2次電池201が構成される。正極片102及び負極片106は、蓄電セル101の外部に露出している。正極片102は、例えば、アルミニウムを主成分とする金属片によって構成される。負極片106は、例えば、ニッケルを主成分とする金属片によって構成される。正極片102と、負極片106とによって一対の電極が構成される。
【0020】
リード片103は、ブレーカー1の端子片2よりもイオン化傾向が大きく、正極片102よりもイオン化傾向が小さい金属を主成分としている。本実施形態のリード片103は、ニッケルを主成分とする金属片によって構成される。リード片103は、すず又はクロムを主成分とする金属片によって構成されていてもよい。
【0021】
回路基板105には、一般的なPCB(プリント回路基板)の他、FPC(フレキシブルプリント回路基板)等が適用される。
【0022】
図3は、ブレーカー1の構成を示している。ブレーカー1は、固定接点21を有する一方の端子片2と、他方の端子片3と、先端部に可動接点41を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6と、端子片2、端子片3と、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収容するケース10等によって構成されている。ケース10は、ケース本体(第1ケース)7とケース本体7の上面に装着される蓋部材(第2ケース)8等によって構成されている。
【0023】
端子片2は、例えば、銅等を主成分とする金属板(この他、銅-チタン合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、ケース本体7にインサート成形により埋め込まれている。端子片2の一端にはリード片103と電気的に接続される端子22が形成され、他端側には、PTCサーミスター6を支持する支持部23が形成されている。PTCサーミスター6は、端子片2の支持部23に3箇所形成された凸状の突起(ダボ)24の上に載置されて、突起24に支持される。
【0024】
固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル-銀合金の他、銅-銀合金、金-銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により可動接点41に対向する位置に形成され、ケース本体7の内部に形成されている開口73aの一部からケース10の内部空間に露出されている。端子22はケース本体7の端縁から外側に突き出されている。支持部23は、ケース本体71の内部に形成されている開口73dからケース10の内部空間に露出されている。
【0025】
本出願においては、特に断りのない限り、端子片2において、固定接点21が形成されている側の面(すなわち図3において上側の面)を第1面、その反対側の底面を第2面として説明している。2次電池パック100を構成する他の部品、例えば、端子片3、可動片4及び熱応動素子5、PTCサーミスター6、ケース10、正極片102、リード片103、リード片104等についても同様である。
【0026】
端子片3は、端子片2と同様に、銅等を主成分とする金属板をプレス加工することにより形成され、ケース本体7にインサート成形により埋め込まれている。端子片3の一端にはリード片104と電気的に接続される端子32が形成され、他端側には、可動片4と電気的に接続される接続部33が形成されている。端子32はケース本体7の端縁から外側に突き出されている。接続部33は、ケース本体7の内部に設けられた開口73bからケース10の内部空間に露出し、可動片4と電気的に接続される。
【0027】
本実施形態では、端子片2の端子22がリード片103と接続され端子片3の端子32がリード片104と接続される形態であるが、ブレーカー1の向きを変更し、端子22がリード片104と接続され端子片3の端子32がリード片103と接続されるように構成されていてもよい。
【0028】
可動片4は、板状の金属材料をプレス加工することにより、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。可動片4の材料としては、端子片2と同等の銅等を主成分とするものが好ましい。この他、銅-チタン合金、洋白、黄銅などの導電性弾性材料を用いてもよい。
【0029】
可動片4と端子片3とは、1枚の金属板から一体に形成されていてもよい。かかる趣旨を実現するブレーカーとして、例えば、特開2012-238615号公報及び特開2013-110032号公報には、端子片と一体に形成されている可動片が開示されている。
【0030】
可動片4の先端部には、可動接点41が形成されている。可動接点41は、固定接点21と同等の材料によって形成され、溶接の他、クラッド、かしめ(crimping)等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。
【0031】
可動片4の基端部には、端子片3の接続部33と電気的に接続される接続部42が形成されている。端子片3の接続部33と可動片4の接続部42とは、例えば、レーザー溶接によって固着されている。
【0032】
可動片4は、可動接点41と接続部42との間に、弾性部43を有している。弾性部43は、接続部42から可動接点41の側に延出されている。接続部42において端子片3の接続部33と固着されることにより可動片4が固定され、弾性部43が弾性変形することにより、その先端に形成されている可動接点41が固定接点21の側に押圧されて接触し、端子片2と可動片4とが通電可能となる。可動片4と端子片3とは、電気的に接続されているので、端子片2と端子片3とが通電可能となる。
【0033】
可動片4は、弾性部43において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納できる限り特に限定はなく、動作温度及び復帰温度における弾性力、接点の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。
【0034】
熱応動素子5は円弧状に湾曲した初期形状をなし、熱膨張率の異なる薄板材を積層することにより形成される。過熱により動作温度に達すると、熱応動素子5の湾曲形状は、スナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で熱応動素子5の逆反り動作により可動片4の弾性部43が押し上げられ、かつ弾性部43の弾性力により元に戻る限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形が望ましく、小型でありながら弾性部43を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であるのが望ましい。なお、熱応動素子5の材料としては、例えば、高膨脹側に銅-ニッケル-マンガン合金又はニッケル-クロム-鉄合金、低膨脹側に鉄-ニッケル合金をはじめとする、洋白、黄銅、ステンレス鋼など各種の合金からなる熱膨張率の異なる2種類の材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。
【0035】
また、可動片4をバイメタル又はトリメタル等の積層金属によって形成することにより、可動片4と熱応動素子5とを一体的に形成する構成であってもよい。この場合、ブレーカーの構成が簡素化されて、さらなる小型化を図ることができる。
【0036】
PTCサーミスター6は、端子片2と熱応動素子5との間に配設されている。すなわち、PTCサーミスター6を挟んで、端子片2は熱応動素子5の直下に位置している。熱応動素子5の逆反り動作により端子片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、動作電流、動作電圧、動作温度、復帰温度などの必要に応じて種類を選択でき、その材料及び形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。本実施形態では、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム又はチタン酸カルシウムを含むセラミック焼結体が用いられる。セラミック焼結体の他、ポリマーにカーボン等の導電性粒子を含有させたいわゆるポリマーPTCを用いてもよい。
【0037】
熱応動素子5の動作時に、PTCサーミスター6は、発熱によって熱応動素子5の変形を維持し、ブレーカー1の電流遮断状態を保持する。このようなブレーカー1の自己保持機能が不要である場合、PTCサーミスター6は廃されていてもよい。
【0038】
ケース10を構成するケース本体7及び蓋部材8は、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性樹脂により成形されている。
【0039】
ケース本体7には、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6などを収容するための収容凹部73が形成されている。収容凹部73は、可動片4を収容するための開口73a,73b、可動片4及び熱応動素子5を収容するための開口73c、並びに、PTCサーミスター6を収容するための開口73d等を有している。なお、ケース本体7に組み込まれた可動片4、熱応動素子5の端縁は、収容凹部73の内部に形成されている枠によってそれぞれ当接され、熱応動素子5の逆反り時に案内される。
【0040】
蓋部材8には、カバー片9(後述する図4参照)がインサート成形によって埋め込まれている。カバー片9は、例えば、ステンレス鋼等の金属板をプレス加工することにより形成される。カバー片9は、後述する図4及び図5が示すように、可動片4の第1面と適宜当接し、可動片4の動きを規制すると共に、蓋部材81のひいては筐体としてのケース10の剛性・強度を高めつつブレーカー1の小型化に貢献する。カバー片9の第1面側には、樹脂が配されている。
【0041】
図3が示すように、端子片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収容したケース本体7の開口73a、73b、73c等を塞ぐように、蓋部材8が、ケース本体7に装着される。ケース本体7と蓋部材8とは、例えば超音波溶着によって接合される。ケース本体7と蓋部材8とは、収容凹部73の外側で全周に亘って接合されているので、収容凹部73の内部空間は、密閉されてブレーカー1の外部から隔離される。これにより、ケース10の気密性が高められる。
【0042】
ケース本体7と蓋部材8との接合手法は、超音波溶着に限られることなく、両者が強固に接合され十分な気密性が得られる手法であれば、適宜適用することができる。例えば、液状又はゲル状の接着剤を塗布・充填し、硬化させることにより、両者が接着されてもよい。
【0043】
ケース10から突出する端子22及び32は、必要に応じてクランク状に段曲げ加工されている。段曲げ部の段差は、適宜設定されうる。
【0044】
図4は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は初期形状を維持し(逆反り前であり)、固定接点21と可動接点41は接触し、可動片4の弾性部43などを通じてブレーカー1の両端子22、32間は導通している。可動片4の弾性部43と熱応動素子5とは接触しており、可動片4、熱応動素子5、PTCサーミスター6及び端子片2は、回路として導通している。しかし、PTCサーミスター6の抵抗は、可動片4の抵抗に比べて圧倒的に大きいため、PTCサーミスター6を流れる電流は、固定接点21及び可動接点41を流れる量に比して実質的に無視できる程度である。
【0045】
図5は、過充電状態又は異常時などにおけるブレーカー1の動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、動作温度に達した熱応動素子5は逆反りし、可動片4の弾性部43が押し上げられて固定接点21と可動接点41とが離反する。このとき、固定接点21と可動接点41の間を流れていた電流は遮断され、僅かな漏れ電流が熱応動素子5及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点21と可動接点41の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は安全装置の他の機能に充てることができる。
【0046】
過充電状態を解除し、又は異常状態を解消すると、PTCサーミスター6の発熱も収まり、熱応動素子5は復帰温度に戻り、元の初期形状に復元する。そして、可動片4の弾性部43の弾性力によって可動接点41と固定接点21とは再び接触し、回路は遮断状態を解かれ、図4に示す導通状態に復帰する。
【0047】
図6は、2次電池パック100におけるブレーカー1の周辺の構成を示している。本実施形態のリード片103は、矩形状に形成されている。リード片103は、その第2面の略全体で正極片102の第1面と接触している。リード片103は、第2面に正極片102と接触する接触領域103aを有している。
【0048】
端子片2は、その第2面でリード片103の第1面と接触している。端子片2は、リード片103と接触する第1部分26と、リード片103を露出させるための第2部分27とを含んでいる。第1部分26及び第2部分27は、リード片103の厚さ方向から視た平面視で、少なくとも一部が接触領域103aと重複する領域に形成されている。
【0049】
従って、リード片103を挟んで正極片102と端子片との距離が最短(すなわち、リード片103の厚さに相当する距離)となり、リード片103の抵抗値を容易に低減できる。これにより、例えば、リード片103にニッケル等の抵抗率が大きい金属を適用する形態にあっても、リード片103の発熱が抑制され、2次電池回路200の高容量化を容易に図ることが可能となる。また、蓄電セル101の熱がブレーカー1に伝わり易くなり、蓄電セル101の過熱を迅速に検知することが可能となる。
【0050】
本実施形態のブレーカー1では、第2部分27は、端子片2の端縁で端子片2の一部が除かれた切り欠き部28を含んでいる。切り欠き部28の形状は、図3等に示される矩形状の他、多角形状又は円状(楕円状、長円状を含む)であってもよい。切り欠き部28を設けることによって、容易に端子片2に第2部分27が構成される。
【0051】
端子片2の第2面とリード片103の第1面とは、レーザー溶接又は抵抗溶接によって固着されているのが望ましい。同様に、リード片103の第2面と正極片102の第1面とは、レーザー溶接又は抵抗溶接によって固着されているのが望ましい。「レーザー溶接」とは、レーザー光を照射し、そのエネルギーによって金属を溶融させて接合させる溶接手法である。本実施形態では、例えば、波長が1064nmのYAGレーザーが用いられる。
【0052】
次に、図3、7及び8を参照して、本実施形態の2次電池パック100の製造方法について、説明する。2次電池パック100の製造方法は、ブレーカー1を製造する第1工程S1と、端子片2とリード片103を溶接する第2工程S2と、リード片103と正極片102とを溶接する第3工程S3を含んでいる。
【0053】
図3は、第1工程S1を示している。第1工程S1では、端子片2の一部が除かれた打ち抜き部29を含むブレーカー1が製造される。打ち抜き部29は、端子片2をプレス加工する際に打ち抜かれることにより、端子片2に形成される。本実施形態では、打ち抜き部29は、第2部分27(切り欠き部28)を構成する。第1工程S1では、打ち抜き部29が形成された端子片2を用いてブレーカー1が製造される。ケース本体7のインサート成形等、それ以外のブレーカー1の製造工程は、既知のブレーカーの製造工程に準ずる。
【0054】
図7は、第2工程S2でのブレーカー1及びリード片103を第2面の側から示している。第2工程S2では、端子片2の第1部分26の第2面とリード片103の第1面とが接触され、リード片103の第2面の側からレーザー光Lが照射され、端子片2とリード片103とが溶接される。これにより、リード片103の接触領域103aの第2面のうち、平面視で第1部分26と重複する領域には、レーザー光Lが照射されて溶融し、その後、凝固した第1照射痕103bが形成される。第1照射痕103bは、第2工程S2で、リード片103の第2面のうち、平面視で第1部分26と重複する領域に、レーザー光Lが照射された痕跡である。端子片2の第1部分26とリード片103とは、複数箇所で溶接されていてもよい。この場合、リード片103の接触領域103aの第2面には、複数の第1照射痕103bが形成される。
【0055】
図8は、第3工程S3でのブレーカー1、リード片103及び正極片102を第1面の側から示している。第3工程S3では、リード片103の第2面と正極片102の第1面とが接触され、端子片2の側から打ち抜き部29を介してリード片103の第1面にレーザー光Lが照射され、リード片103と正極片102とが溶接される。これにより、リード片103のうち、第2部分27を介して露出する領域には、レーザー光Lが照射されて溶融し、その後、凝固した第2照射痕103cが形成される。第2照射痕103cは、第3工程S3で、打ち抜き部29を介してリード片103の第1面にレーザー光Lが照射された痕跡である。リード片103と正極片102とは、複数箇所で溶接されていてもよい。この場合、リード片103の接触領域103aの第1面には、複数の第2照射痕103cが形成される。
【0056】
本実施形態の2次電池パック100の製造方法によれば、リード片103を挟んで正極片102と端子片2との距離が最短となり、リード片103の抵抗値を容易に低減できる。これにより、リード片103の発熱が抑制され、2次電池回路200の高容量化を容易に図ることが可能となり、また、蓄電セル101の熱がブレーカー1に伝わり易くなり、蓄電セル101の過熱を迅速に検知することが可能となる。
【0057】
図9は、2次電池パック100の変形例である2次電池パック100Aの平面図である。2次電池パック100Aのうち、以下で説明されてない部分については、上述した2次電池パック100の構成が採用されうる。
【0058】
2次電池パック100Aでは、ブレーカー1Aの端子片2Aの形状が2次電池パック100とは異なっている。端子片2Aは、第2部分27Aとして、端子片2Aを厚さ方向に貫通する貫通孔28Aを含んでいる。貫通孔28Aの形状は、図9に示される矩形状の他、多角形状又は円状(楕円状、長円状を含む)であってもよい。
【0059】
貫通孔28Aは、第1工程S1において、端子片2Aをプレス加工する際に打ち抜かれることにより、端子片2Aに形成される。このとき形成された打ち抜き部29Aは、第2部分27A(貫通孔28A)を構成する。
【0060】
以上、本発明の2次電池パックが詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、本発明は、少なくとも、蓄電セル101から突出する正極片102と、端子片2を有するブレーカー1と、正極片102及び端子片2に接続されるリード片103とを備えた2次電池パック100であって、リード片103は、正極片102と接触する接触領域103aを有し、端子片2は、リード片103の厚さ方向から視た平面視で、接触領域103aと重複する領域で、リード片103と接触する第1部分26と、リード片103を露出させるための第2部分27を含んでいればよい。
【0061】
また、第2部分27Aの形状や個数は任意である。例えば、一つの端子片2に切り欠き部28及び貫通孔28Aの両方が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 ブレーカー
2 端子片
3 端子片
22 端子
26 第1部分
27 第2部分
28 切り欠き部
29 打ち抜き部
32 端子
100 2次電池パック
101 蓄電セル
102 正極片
103 リード片
103a 接触領域
103b 第1照射痕
103c 第2照射痕
104 リード片
201 2次電池
L レーザー光
S1 第1工程
S2 第2工程
S3 第3工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9