(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045793
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
B24B 7/24 20060101AFI20220314BHJP
C03C 19/00 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
B24B7/24 C
C03C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151571
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】進藤 宏佳
(72)【発明者】
【氏名】茗原 貴裕
【テーマコード(参考)】
3C043
4G059
【Fターム(参考)】
3C043BB07
3C043CC03
3C043CC11
3C043DD02
3C043DD03
3C043DD05
4G059AA08
4G059AA11
4G059AB03
4G059AC03
4G059AC16
(57)【要約】
【課題】ガラス板の端面を所望の加工量で加工する。
【解決手段】ガラス板の製造方法は、ガラス板Gの端面ESを第一加工装置2Aにより加工する第一加工工程と、第一加工工程後にガラス板Gの端面ESを第二加工装置2Bにより加工する第二加工工程と、を備える。第二加工装置2Bの位置調整機構8Bは、第一加工工程における第一加工装置2Aの第一加工具5Aの位置に倣うように第二加工工程における第二加工装置2Bの第二加工具5Bの切り込み位置を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板の端面を第一加工装置により加工する第一加工工程と、前記第一加工工程後に前記ガラス板の前記端面を第二加工装置により加工する第二加工工程と、を備えるガラス板の製造方法において、
前記第一加工装置は、前記ガラス板の前記端面を加工する第一加工具と、前記第一加工具に前記ガラス板の前記端面を押圧する押圧力を付与する第一押圧機構と、を備え、
前記第二加工装置は、前記ガラス板の前記端面を加工する第二加工具と、前記第二加工具に前記ガラス板の前記端面を押圧する押圧力を付与する第二押圧機構と、前記第二押圧機構を移動させることによって前記ガラス板の前記端面に対する前記第二加工具の切り込み位置を変更する位置調整機構と、を備え、
前記位置調整機構は、前記第一加工工程における前記第一加工具の位置に倣うように前記第二加工工程における前記第二加工具の前記切り込み位置を調整することを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記第二押圧機構は、前記第二加工具を支持するとともに所定の軸まわりに回動することでその姿勢を変更する支持部材と、前記支持部材に連結されるリンク機構と、前記リンク機構を駆動するサーボモータと、を備える請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記位置調整機構は、前記支持部材の姿勢が一定となるように、前記第二加工具の前記切り込み位置を調整する請求項2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記第一加工工程及び前記第二加工工程では、前記第一加工具及び前記第二加工具を前記ガラス板に対して所定の送り方向に沿って相対的に移動させる請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
ガラス板の端面を加工する第一加工装置と、前記第一加工装置により加工された前記ガラス板の前記端面を加工する第二加工装置と、制御装置と、を備えるガラス板の製造装置において、
前記第一加工装置は、前記ガラス板の前記端面を加工する第一加工具と、前記第一加工具に前記ガラス板の前記端面を押圧する押圧力を付与する第一押圧機構と、を備え、
前記第二加工装置は、前記ガラス板の前記端面を加工する第二加工具と、前記第二加工具に前記ガラス板の前記端面を押圧する押圧力を付与する第二押圧機構と、前記第二押圧機構を移動させることによって前記ガラス板の前記端面に対する前記第二加工具の切り込み位置を変更する位置調整機構と、を備え、
前記制御装置は、前記位置調整機構を動作させることにより、前記第一加工装置における前記第一加工具の位置に倣うように前記第二加工装置における前記第二加工具の前記切り込み位置を調整することを特徴とするガラス板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等のディスプレイには、基板やカバーガラスとしてガラス板が使用される。このガラス板の製造では、大型のガラス原板(成形原板)から一枚又は複数枚のガラス板を切り出すことが行われている。これにより、所望の寸法のガラス板を取得できる。
【0003】
一方で、ガラス原板から切り出されたガラス板の端面には、微小な傷(欠陥)が存在する場合がある。ガラス板の端面に傷があると、その傷から割れ等が発生する。このような不具合を防止するために、例えばガラス板の端面に対して研削加工(粗加工)や、研磨加工(仕上げ加工)が施される。
【0004】
この種の加工に用いられる装置として、例えば特許文献1には、加工具を支持する支持部材(アーム部材)と、加工具がガラス板の端面を押圧する力を支持部材に生じさせる押圧機構(サーボ機構)とを備える加工装置が開示されている。
【0005】
この加工装置において、支持部材の一端部は、加工具を回転可能に支持している。支持部材の他端部は、押圧機構に連結されている。支持部材の中途部は、支持軸部材によって支持されている。支持部材は、支持軸部材を中心(軸)として回動することにより、その姿勢を変更する。
【0006】
押圧機構は、支持部材の他端部に連結されるリンク機構と、このリンク機構を駆動するサーボモータとを備えている。押圧機構は、サーボモータによってリンク機構を駆動することで、ガラス板の端面に対する加工具の押圧力が一定となるように、支持部材の姿勢(回動角度)を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の加工装置では、支持部材及び押圧機構によって加工具による押圧力を一定に維持することで、ガラス板の端面を所望の加工量で加工することできる。
【0009】
しかしながら、押圧機構によって加工具に付与される押圧力は、厳密には、加工具の位置によって変動する。例えば、特許文献1に記載される押圧機構であれば、サーボモータのトルクを一定にしても、支持部材の姿勢(回動角度)によって加工具に付与される押圧力が変化する。このため、例えば、切断においてガラス板の寸法がばらついた場合や、加工具による加工時においてガラス板に位置ずれが発生している場合、押圧機構による加工具の押圧力を高精度に制御することが困難となる。この場合、押圧力が変動し、加工量が過大となったり、不足したりするおそれがあった。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みて為されたものであり、ガラス板の端面を所望の加工量で加工することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、ガラス板の端面を第一加工装置により加工する第一加工工程と、前記第一加工工程後に前記ガラス板の前記端面を第二加工装置により加工する第二加工工程と、を備えるガラス板の製造方法において、前記第一加工装置は、前記ガラス板の前記端面を加工する第一加工具と、前記第一加工具に前記ガラス板の前記端面を押圧する押圧力を付与する第一押圧機構と、を備え、前記第二加工装置は、前記ガラス板の前記端面を加工する第二加工具と、前記第二加工具に前記ガラス板の前記端面を押圧する押圧力を付与する第二押圧機構と、前記第二押圧機構を移動させることによって前記ガラス板の前記端面に対する前記第二加工具の切り込み位置を変更する位置調整機構と、を備え、前記位置調整機構は、前記第一加工工程における前記第一加工具の位置に倣うように前記第二加工工程における前記第二加工具の前記切り込み位置を調整することを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、第一加工工程における第一加工具の切り込み位置に応じて、第二加工具の切り込み位置(第二押圧機構の位置)を位置調整機構によって調整することで、ガラス板の端面の形状や位置に応じて第二押圧機構を好適な位置に移動させることが可能になる。これにより、第二押圧機構によって第二加工具に付与される押圧力を一定にでき、ガラス板の端面を所望の加工量で加工することが可能となる。
【0013】
本方法において、前記第二押圧機構は、前記第二加工具を支持するとともに所定の軸まわりに回動することでその姿勢を変更する支持部材と、前記支持部材に連結されるリンク機構と、前記リンク機構を駆動するサーボモータと、を備えてもよい。
【0014】
支持部材及びリンク機構を備える第二押圧機構では、支持部材の姿勢(回動角度)によって第二加工具に付与される押圧力が変化しやすい。このような第二押圧機構に本発明を適用すれば、ガラス板の端面を所望の加工量で加工できる効果がさらに顕著となる。
【0015】
本方法において、前記位置調整機構は、前記支持部材の姿勢が一定となるように、前記第二加工具の前記切り込み位置を調整してもよい。
【0016】
かかる構成によれば、位置調整機構による第二加工具の切り込み位置の調整によって、支持部材の姿勢が略一定となるので、ガラス板の端面を加工するために最適な押圧力を第二加工具に付与することができる。例えば、従来は支持部材の姿勢(回動角度)の変動が±2°程度である場合、本発明によれば、支持部材の姿勢(回動角度)の変動を±0.7°程度にできる。
【0017】
本方法において、前記第一加工工程及び前記第二加工工程では、前記第一加工具及び前記第二加工具を前記ガラス板に対して所定の送り方向に沿って相対的に移動させてもよい。これにより、ガラス板の端面全体を精度良く加工することができる。
【0018】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、ガラス板の端面を加工する第一加工装置と、前記第一加工装置により加工された前記ガラス板の前記端面を加工する第二加工装置と、制御装置と、を備えるガラス板の製造装置において、前記第一加工装置は、前記ガラス板の前記端面を加工する第一加工具と、前記第一加工具に前記ガラス板の前記端面を押圧する押圧力を付与する第一押圧機構と、を備え、前記第二加工装置は、前記ガラス板の前記端面を加工する第二加工具と、前記第二加工具に前記ガラス板の前記端面を押圧する押圧力を付与する第二押圧機構と、前記第二押圧機構を移動させることによって前記ガラス板の前記端面に対する前記第二加工具の切り込み位置を変更する位置調整機構と、を備え、前記制御装置は、前記位置調整機構を動作させることにより、前記第一加工装置における前記第一加工具の位置に倣うように前記第二加工装置における前記第二加工具の前記切り込み位置を調整することを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、第一加工装置における第一加工具の切り込み位置に応じて、第二加工具の切り込み位置(第二押圧機構の位置)を制御装置及び位置調整機構によって調整することで、ガラス板の端面の形状や位置に応じて第二押圧機構を好適な位置に移動させることが可能になる。これにより、第二押圧機構によって第二加工具に付与される押圧力を一定にでき、ガラス板の端面を所望の加工量で加工することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ガラス板の端面を所望の加工量で加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】
図1のII-II矢視線に係る製造装置の側面図である。
【
図4】ガラス板の製造方法の一工程を示す平面図である。
【
図5】ガラス板の製造方法の一工程を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図5は、本発明に係るガラス板の製造方法の一実施形態を示す。
【0023】
図1乃至
図3は、本方法に使用されるガラス板の製造装置を示す。製造装置1は、第一加工装置2Aと、第二加工装置2Bと、第一加工装置2A及び第二加工装置2Bを移動させる移動装置3と、各加工装置2A,2B及び移動装置3を制御する制御装置4と、を備える。
図1に示すように、製造装置1は、各加工装置2A,2Bを移動装置3によって所定の送り方向Xに移動させつつガラス板Gの端面ESを加工する。
【0024】
図1及び
図2に示すように、第一加工装置2Aは、第一加工具5Aと、第一加工具5Aを駆動する第一駆動装置6Aと、第一加工具5Aにガラス板Gを押圧する力を付与する第一押圧機構7Aと、第一押圧機構7Aを移動させることによって第一加工具5Aの位置を調整する第一位置調整機構8Aと、を備える。
【0025】
第二加工装置2Bは、第二加工具5Bと、第二加工具5Bを駆動する第二駆動装置6Bと、第二加工具5Bにガラス板Gを押圧する力を付与する第二押圧機構7Bと、第二押圧機構7Bを移動させることによって第二加工具5Bの位置を調整する第二位置調整機構8Bと、を備える。
【0026】
各加工具5A,5Bは、例えば回転可能な砥石(研削砥石又は研磨砥石)により構成される。各加工具5A,5Bは、各駆動装置6A,6Bに連結されるとともに、各押圧機構7A,7Bの一部に回転可能に支持されている。
【0027】
各駆動装置6A,6Bは、各加工具5A,5Bを回転駆動する電動モータにより構成される。電動モータとしては、同期モータ、インダクションモータ、サーボモータ等が使用される。各駆動装置6A,6Bは、各押圧機構7A,7Bの一部に支持されている。
【0028】
図1及び
図2に示すように、各押圧機構7A,7Bは、各加工具5A,5Bを回転可能に支持する支持部材としてのアーム部材9と、アーム部材9を駆動する駆動部10と、アーム部材9及び駆動部10を支持する基台11と、を備える。
【0029】
アーム部材9は、例えば長尺状の板部材により構成されるが、アーム部材9の形状は本実施形態に限定されない。アーム部材9の一端部は、加工具5A,5B及び駆動装置6A,6Bを支持する。アーム部材9の他端部は、駆動部10に連結されている。
【0030】
アーム部材9の中途部は、支持軸部材12により支持されている。アーム部材9は、この支持軸部材12を中心(軸)として回動(揺動)可能に構成される。アーム部材9は、その回動動作により、送り方向Xに直交する方向(以下「切り込み方向」という)Yにおける加工具5A,5Bの位置(以下「切り込み位置」という)を調整することができる。換言すれば、アーム部材9は、その回動動作により、加工具5A,5Bがガラス板Gを押圧する力(押圧力)を調整することができる。
【0031】
駆動部10は、アーム部材9に連結されるリンク機構13と、リンク機構13を駆動する電動モータ14とを備える。
【0032】
各リンク機構13は、第一リンク部材15と、第二リンク部材16とを備える。第一リンク部材15は、その一端部が電動モータ14の軸部(回動軸)14aに固定され、その他端部が第一ジョイント17を介して第二リンク部材16に回動自在に連結されている。第二リンク部材16は、その一端部が第一リンク部材15に連結され、その他端部が第二ジョイント18を介してアーム部材9の端部に回動自在に連結されている。
【0033】
押圧機構7A,7Bは、このリンク機構13により、電動モータ14の軸部14aの回動力をアーム部材9にモーメントとして作用させる。アーム部材9は、このモーメントにより、加工具5A,5Bに、ガラス板Gに対する押圧力を生じさせる。
【0034】
電動モータ14は、例えばサーボモータにより構成される。電動モータ14は、ガラス板Gに対する各加工具5A,5Bの押圧力を一定に維持するように、リンク機構13を駆動する。すなわち、電動モータ14は、そのフィードバック制御により、トルクに基づいて、リンク機構13によるアーム部材9に対する駆動力を調整する。
【0035】
押圧機構7A,7Bは、制御装置4に対して通信可能に接続されている。押圧機構7A,7Bは、電動モータ14におけるトルクや軸部14aの回動角度に係る情報を制御装置4に送信することができる。
【0036】
図2に示すように、基台11は、支持軸部材12を介してアーム部材9を支持する第一支持部11aと、第一支持部11aを支持する第二支持部11bとを備える。
【0037】
第一支持部11aは、板状又はブロック状に構成されるが、第一支持部11aの形状は本実施形態に限定されない。第一支持部11aは、支持軸部材12の他、押圧機構7A,7Bの電動モータ14を支持している。第二支持部11bは、上下方向に延びる長尺状の部材として例示されるが、第二支持部11bの形状は本実施形態に限定されない。第二支持部11bの上部は、第一支持部11aの下部に連結されている。第二支持部11bの下部は、位置調整機構8A,8Bに支持されている。
【0038】
位置調整機構8A,8Bは、押圧機構7A,7Bの基台11を移動させる駆動部19を備える。駆動部19は、例えばサーボモータにより駆動されるボールねじ機構、リニアサーボモータ等のリニアアクチュエータにより構成される。位置調整機構8A,8Bは、駆動部19により、基台11の第二支持部11bを切り込み方向Yに沿って直線的に移動させることができる。すなわち、位置調整機構8A,8Bは、押圧機構7A,7Bを移動させることで、加工具5A,5Bの切り込み位置を調整する。
【0039】
移動装置3は、各加工装置2A,2Bの下方に配置されている。移動装置3は、例えばレール搬送装置等の各種搬送装置により構成される。移動装置3は、位置調整機構8A,8Bを案内するガイド部20を備える。移動装置3は、位置調整機構8A,8Bを送り方向Xに移動させることで、各加工装置2A,2Bをガラス板Gの端面ESの長手方向に沿って移動させる。なお、ガラス板Gは、吸着定盤SPに固定されている。
【0040】
移動装置3は、上記の構成に限定されず、加工具5A,5Bとガラス板Gを送り方向Xに沿って相対的に移動させるものであればよい。移動装置3は、例えば各加工装置2A,2Bを送り方向Xに移動させることなく固定した状態で、ガラス板Gを送り方向Xに搬送するものであってもよい。
【0041】
制御装置4は、例えばCPU、ROM、RAM、HDD、モニタ、入出力インターフェース等の各種ハードウェアを実装するコンピュータ(例えばPC、制御盤)を含む。
【0042】
図3に示すように、制御装置4は、各種の演算を実行する演算処理部21と、ガラス板Gの加工に必要なデータや各種プログラムを記憶する記憶部22と、駆動装置6A,6Bの制御を実行する駆動装置制御部23と、押圧機構7A,7Bの制御を実行する押圧機構制御部24と、位置調整機構8A,8Bの制御を実行する位置調整機構制御部25と、移動装置3の制御を実行する移動装置制御部26と、を備える。これらの構成要素はバスにより相互に接続されている。
【0043】
演算処理部21は、記憶部22に記憶される各種データ及び各種プログラムに基づいて、駆動装置6A,6B、押圧機構7A,7B、位置調整機構8A,8B及び移動装置3の制御に必要な演算処理を実行する。
【0044】
記憶部22は、ガラス板Gの寸法等に係るデータ、加工具5A,5Bの種別や回転速度、送り速度に係るデータ、押圧機構7A,7Bから取得したデータ等を記憶する。その他、記憶部22は、駆動装置6A,6B、押圧機構7A,7B、位置調整機構8A,8B及び移動装置3を制御するための各種プログラムを記憶している。
【0045】
駆動装置制御部23は、演算処理部21と協働して、駆動装置6A,6Bに制御信号を送信する。これにより、駆動装置制御部23は、駆動装置6A,6Bにおける電動モータの始動・停止、回転速度の変更等の制御を実行する。
【0046】
押圧機構制御部24は、演算処理部21と協働して、押圧機構7A,7Bのフィードバック制御に必要な信号を当該押圧機構7A,7Bに送信する。これにより、押圧機構制御部24は、押圧機構7A,7Bによって加工具5A,5Bに付与される押圧力を制御する。
【0047】
押圧機構制御部24は、押圧機構7A,7Bから受信した電動モータ14の軸部14aの回動角度に関するデータを演算処理部21に入力する。演算処理部21は、この回動角度に係るデータに基づいて、各加工具5A,5Bの切り込み位置を算出することができる。演算処理部21は、第一加工具5Aの切り込み位置に応じて、第二加工具5Bの切り込み位置を調整する補正値を算出することができる。
【0048】
位置調整機構制御部25は、演算処理部21と協働して、位置調整機構8A,8Bに制御信号を送信する。これにより、位置調整機構制御部25は、各加工装置2A,2B(加工具5A,5B)の切り込み位置を制御する。
【0049】
移動装置制御部26は、演算処理部21と協働して、移動装置3に制御信号を送信する。これにより、移動装置制御部26は、送り方向Xにおける各加工装置2A,2Bの移動速度を制御する。
【0050】
以下、上記の製造装置1を用いてガラス板Gを製造する方法について説明する。
【0051】
本方法は、例えば大型のガラス原板から切り出されたガラス板Gの端面ESを各加工装置2A,2Bによって加工する端面加工工程を備える。端面加工工程は、ガラス板Gの端面ESを第一加工装置2Aにより加工する第一加工工程と、第一加工工程後にガラス板Gの端面ESを第二加工装置2Bにより加工する第二加工工程とを備える。本実施形態では、第一加工工程を研削加工工程とし、第二加工工程を研磨加工工程とする例を示すが、本方法は、この構成に限定されない。具体的には、第一加工工程及び第二加工工程を、いずれも研削加工工程としてもよく、いずれも研磨加工工程としてもよい。
【0052】
第一加工工程及び第二加工工程は、第一加工装置2Aと第二加工装置2Bとを離間させた状態で、送り方向Xに同時に移動させることにより実行される。この場合において、第一加工装置2Aが先行してガラス板Gの端面ESを研削し、後続の第二加工装置2Bがガラス板Gの端面ESを研磨する。第一加工装置2Aにおける送り方向Xの移動速度と第二加工装置2Bにおける送り方向Xの移動速度は等しいことが望ましい。
【0053】
図4に示すように、加工具5A,5Bには、切り込み位置に関し、一点鎖線で示す基準位置RP(参照位置)が設定されている。
【0054】
第一加工工程及び第二加工工程において、制御装置4は、各加工具5A,5Bが一定の押圧力によってガラス板Gの端面ESを加工するように、押圧機構7A,7Bを制御する。
【0055】
また、制御装置4は、第二位置調整機構8Bを制御することにより、ガラス板Gの端面ESを先行して加工する第一加工具5Aの切り込み位置に応じて、第二加工具5Bの切り込み位置を調整する(位置調整工程)。
【0056】
以下、制御装置4による第二加工具5Bの位置調整工程について、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
【0057】
図4及び
図5に示すように、ガラス板Gの端面ESに凸部Pが存在する場合、第一加工具5Aがこの凸部Pを通過する際に、当該第一加工具5Aの切り込み位置が変化する。第一加工具5Aの切り込み位置の変化により、第一押圧機構7Aのアーム部材9が回動し、その姿勢を変更する。リンク機構13は、アーム部材9の姿勢変更に応じて第一リンク部材15及び第二リンク部材16を回動させる。これにより、リンク機構13に連結される電動モータ14の軸部14aが回動する。
【0058】
第一押圧機構7Aの電動モータ(サーボモータ)14は、軸部14aの回動角度及びトルクを検出しながら、第一加工具5Aの押圧力が一定に維持されるように、トルクを一定に制御する(フィードバック制御)。また、第一押圧機構7Aは、電動モータ14が検出した軸部14aの角度に係る情報、すなわち第一加工具5Aの切り込み位置に関する情報(信号)を制御装置4の押圧機構制御部24に送信する。押圧機構制御部24は、軸部14aの角度情報を演算処理部21に入力する。
【0059】
図5に示すように、第一加工具5Aの切り込み位置が変化すると、第一加工具5Aの切り込み位置と、第二加工具5Bの切り込み位置(基準位置RP)とに差Dが生じる。制御装置4の演算処理部21は、第一加工装置2A(第一押圧機構7A)から受信した電動モータ14の軸部14aに係る角度情報に基づいて、第一加工具5Aの切り込み位置を算出する。演算処理部21は、第二加工装置2B(第二押圧機構7B)から受信した電動モータ14の軸部14aに係る角度情報に基づいて、第二加工具5Bの切り込み位置を算出する。
【0060】
演算処理部21は、算出した第一加工具5Aの切り込み位置と、第二加工具5Bの切り込み位置との差Dを算出する。演算処理部21は、この差Dを第二加工具5Bの切り込み位置を調整するための補正値として設定する。制御装置4は、演算処理部21が算出した補正値Dに係る制御信号を、位置調整機構制御部25を通じて第二位置調整機構8Bに送信する。
【0061】
第二位置調整機構8Bは、制御装置4から受信した補正値Dに係る制御信号に基づいて、第二押圧機構7Bの基台11を切り込み方向Yに沿って移動させる。これにより、第二加工具5Bの切り込み位置が変更される。第二加工装置2Bは、変更された第二加工具5Bの切り込み位置を基準位置RPとして、この第二加工具5Bによる凸部Pの研磨加工を実行する。ガラス板Gの端面ESの全長にわたって上記のような位置調整を行うことで、第二加工具5Bは、第一加工具5Aに倣うように移動しつつ、ガラス板Gの端面ES全体を一定の押圧力で研磨加工する。
【0062】
以上説明した本実施形態に係るガラス板Gの製造方法及び製造装置1によれば、第一加工工程における第一加工具5Aの切り込み位置に応じて、第二加工具5Bの切り込み位置(第二押圧機構7Bの位置)を第二位置調整機構8Bによって調整することで、ガラス板Gの端面ESの形状や位置に応じて第二押圧機構7Bを好適な位置に移動させることが可能となる。また、第二位置調整機構8Bによって、第二加工具5Bの切り込み位置を調整することで、第二押圧機構7Bにおけるアーム部材9を、第二加工具5Bの押圧力を一定に維持するために適した姿勢にすることができる。これにより、第二押圧機構7Bによって第二加工具5Bに付与される押圧力を一定にでき、ガラス板Gの端面ESを所望の加工量で加工することが可能となる。
【0063】
その結果、例えば、ガラス板Gの端面ESの長手方向において、端面ESが直線状でなく、一部が切断予定線から逸れている場合であっても、ガラス板Gの端面ESを所望の加工量で加工することが可能となる。あるいは、第一加工工程及び第二加工工程において、ガラス板Gに位置ずれが発生している場合であっても、ガラス板Gの端面ESを所望の加工量で加工することが可能となる。したがって、端面加工において、ガラス板Gの位置決めを簡略化できる。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0065】
上記の実施形態では、第一加工装置2A及び第二加工装置2Bによってガラス板Gの端面ESを加工する例を示したが、ガラス板Gを加工する加工装置の数は、本実施形態に限定されない。上記の実施形態では、第一加工装置2Aを先頭としてガラス板Gを加工する例示したが、これに限らず、複数の加工装置のうち、任意の加工装置を第一加工装置とし、後続する任意の加工装置を第二加工装置として、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 製造装置
2A 第一加工装置
2B 第二加工装置
4 制御装置
5A 第一加工具
5B 第二加工具
7A 第一押圧機構
7B 第二押圧機構
8B 第二位置調整機構
9 アーム部材(支持部材)
13 リンク機構
14 電動モータ(サーボモータ)
ES ガラス板の端面
G ガラス板
X 送り方向