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特開2022-45815耐熱性熱可塑性樹脂ペレットの製造方法
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  • 特開-耐熱性熱可塑性樹脂ペレットの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045815
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】耐熱性熱可塑性樹脂ペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 9/06 20060101AFI20220314BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20220314BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20220314BHJP
   C22C 38/48 20060101ALN20220314BHJP
   C21D 9/18 20060101ALN20220314BHJP
【FI】
B29B9/06
C22C38/60
C22C38/00 302Z
C22C38/00 302H
C22C38/00 302E
C22C38/48
C21D9/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151613
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇賀村 忠慶
【テーマコード(参考)】
4F201
4K042
【Fターム(参考)】
4F201AA40
4F201BA02
4F201BL11
4F201BL36
4F201BL38
4F201BL50
4K042AA10
4K042BA03
4K042CA04
4K042CA06
4K042CA08
4K042CA13
4K042DA01
4K042DA02
4K042DC02
4K042DD02
4K042DD05
4K042DE02
4K042DE03
(57)【要約】
【課題】耐熱性熱可塑性樹脂を低い不良率でカットしてペレットにする。
【解決手段】耐熱性熱可塑性樹脂をガラス転移温度以上に加熱して溶融状態とし、複数個の細孔を有するダイスから押し出す工程と、
前記細孔から押し出された溶融状態の前記耐熱性熱可塑性樹脂を複数の回転刃で切断し、冷却水に投入する切断工程とを有する耐熱性熱可塑性樹脂ペレットを製造する方法であり、
前記回転刃がロックウェル硬さ(HRC)が62以上である鋼材から形成されるものであり、
前記回転刃における刃部のダイス接触面の幅が0.2mm以上1.0mm以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融押出により耐熱性熱可塑性樹脂ペレットを製造する方法であって、
耐熱性熱可塑性樹脂をガラス転移温度以上に加熱して溶融状態とし、複数個の細孔を有するダイスから押し出す工程と、
前記細孔から押し出された溶融状態の前記耐熱性熱可塑性樹脂を複数の回転刃で切断し、冷却水に投入する切断工程とを有し、
前記切断工程に用いられる回転刃は、焼き入れ焼き戻し時のロックウェル硬さ(HRC)が62以上である鋼材から形成されるものであり、
前記回転刃における刃部のダイス接触面の幅が0.2mm以上1.0mm以下であることを特徴とする耐熱性熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
【請求項2】
前記回転刃を構成する鋼材が、高速度工具鋼である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記回転刃を構成する鋼材の化学成分組成が、C:0.70質量%以上1.50質量%以下、Si:0質量%超0.45質量%以下、Mn:0質量%超0.40質量%以下、P:0質量%超0.05質量%以下、S:0質量%超0.05質量%以下、及びCr:3.00質量%以上5.00質量%以下を含み、さらにMo:2.00質量%以上10.0質量%以下、W:1.00質量%以上20.0質量%以下、V:1.00質量%以上5.00質量%以下、及びCo:3.00質量%以上12.00質量%以下から選ばれる少なくとも1種を含み、残部がFe及び不可避不純物である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記回転刃を構成する鋼材が、Mo、W、及びVから選ばれる少なくとも1種を含む請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記回転刃を構成する鋼材が、Mo、W、及びVを含む請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記回転刃を構成する鋼材が、Coを含まない請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記耐熱性熱可塑性樹脂が主鎖に環構造を有し、ガラス転移温度が130℃以上190℃以下である請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマレイミド系重合体などの耐熱性熱可塑性樹脂のペレットを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マレイミド系重合体などの耐熱性に優れた熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が高くて脆いため、ストランドカット方式によって樹脂ペレットを製造することが難しい。そのためノズル孔から押し出された溶融樹脂を回転刃(カッタ刃)で切断し、ケース内の水膜で切断樹脂を冷却する水冷タイプのセンターホットカット方式によって樹脂ペレットが製造されている(例えば、特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-271928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、回転刃で樹脂をカットしてペレットを製造する方法で耐熱性熱可塑性樹脂のペレットを製造すると、カッティング不良が発生することが多く、ペレットの粒径が揃わなかったり、歩留まりが低下したり、後工程の不具合を誘発したりすることがあった。
従って、本発明は、耐熱性熱可塑性樹脂を低い不良率でカットしてペレットにする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は、以下の構成からなる。
[1] 溶融押出により耐熱性熱可塑性樹脂ペレットを製造する方法であって、
耐熱性熱可塑性樹脂をガラス転移温度以上に加熱して溶融状態とし、複数個の細孔を有するダイスから押し出す工程と、
前記細孔から押し出された溶融状態の前記耐熱性熱可塑性樹脂を複数の回転刃で切断し、冷却水に投入する切断工程とを有し、
前記切断工程に用いられる回転刃は、焼き入れ焼き戻し時のロックウェル硬さ(HRC)が62以上である鋼材から形成されるものであり、
前記回転刃における刃部のダイス接触面の幅が0.2mm以上1.0mm以下であることを特徴とする耐熱性熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
[2] 前記回転刃を構成する鋼材が、高速度工具鋼である[1]に記載の製造方法。
[3] 前記回転刃を構成する鋼材の化学成分組成が、C:0.70質量%以上1.50質量%以下、Si:0質量%超0.45質量%以下、Mn:0質量%超0.40質量%以下、P:0質量%超0.05質量%以下、S:0質量%超0.05質量%以下、及びCr:3.00質量%以上5.00質量%以下を含み、さらにMo:2.00質量%以上10.0質量%以下、W:1.00質量%以上20.0質量%以下、V:1.00質量%以上5.00質量%以下、及びCo:3.00質量%以上12.00質量%以下から選ばれる少なくとも1種を含み、残部がFe及び不可避不純物である[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 前記回転刃を構成する鋼材が、Mo、W、及びVから選ばれる少なくとも1種を含む[3]に記載の製造方法。
[5] 前記回転刃を構成する鋼材が、Mo、W、及びVを含む[3]に記載の製造方法。
[6] 前記回転刃を構成する鋼材が、Coを含まない[5]に記載の製造方法。
[7] 前記耐熱性熱可塑性樹脂が主鎖に環構造を有し、ガラス転移温度が130℃以上190℃以下である[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐熱性熱可塑性樹脂を低い不良率でカットしてペレットにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は本発明で使用するペレタイザの一例を示す概略断面図である。
図2図2は本発明で使用するカッタ刃の一例を示す概略斜視図である。
図3図3は本発明で使用するカッタ刃の一例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の対象とする耐熱性熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が、例えば、130℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは150℃以上である樹脂が挙げられる。ガラス転移温度が高いほど、ストランドカット方式によるペレット化が難しくなり、センターホットカット方式によるペレット化が必要となる。なお耐熱性熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、例えば、200℃以下、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下であってもよい。
【0009】
また本発明の対象とする耐熱性熱可塑性樹脂は、脆い樹脂であることが多い。樹脂が脆くなるほど、回転刃(カッタ刃)によるカッティングが難しくなるため、本発明によって不良率を改善する必要性が高くなる。
【0010】
ガラス転移温度が高く、脆い耐熱性熱可塑性樹脂としては、主鎖に環構造を有する樹脂が挙げられ、該環構造としては、ラクトン環構造、ラクタム環構造、環状イミド構造(例えば、スクシンイミド構造、グルタルイミド構造等)、環状無水物構造(例えば、無水コハク酸構造、無水グルタル酸構造等)等が挙げられ、スクシンイミド構造を有する樹脂が好ましい。スクシンイミド構造を有する樹脂は、マレイミド系単量体(a)を重合させることによって得ることができ、マレイミド系重合体と称されることがある。
【0011】
マレイミド系重合体は、マレイミド系単量体(a)を単独で重合させることで、又は他の単量体(b)と共重合させることで得られる樹脂であり、共重合体であることが好ましい。
【0012】
マレイミド系単量体(a)としては、下式(1):
【化1】
(式中、R1は水素、または、炭素数1~15の、アルキル基、シクロアルキル基、置換アルキル基、アリール基もしくは置換アリール基を示す)
で表される化合物が挙げられる。マレイミド系単量体(a)としては、例えば、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-イソブチルマレイミド、N-ターシャリブチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-クロルフェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-ブロモフェニルマレイミド、N-ナフチルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、2-ヒドロキシエチルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-カルボキシフェニルマレイミド、N-ニトロフェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド等が挙げられ、耐熱性に優れる観点からN-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミドなどが好ましい。マレイミド系単量体(a)は、1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0013】
前記マレイミド系単量体(a)と共重合可能な単量体(b)としては、エチレン性不飽和結合を持つ化合物が挙げられ、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;シクロアルキル基およびベンジル基を含む、炭素数1~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等);エチレン、プロピレン、イソブチレン、ジイソブチレン等のオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の飽和モノカルボン酸のビニルエステル類;酢酸アリル、プロピオン酸アリル等の飽和脂肪族モノカルボン酸のアリルエステル類またはメタリルエステル類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物のジメタクリレート、ハロゲン化ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物のジまたはトリ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート類;トリアリルイソシアヌレート等の多価アリレート類;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸あるいはこれらの半エステル化物等が挙げられ、芳香族ビニル系単量体、不飽和ニトリル類、(メタ)アクリル酸エステルなどが好ましい。単量体(b)は、1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0014】
マレイミド系共重合体中のマレイミド系単量体(a)単位の割合は、単量体(a)単位と単量体(b)単位の合計100質量%中、例えば、10~70質量%であり、好ましくは15~60質量%、より好ましくは20~50質量%ある。マレイミド系単量体(a)単位が多いほど、耐熱性が向上する。但し、マレイミド系単量体単位が多くなるほど、樹脂が脆くなってペレット化時の回転刃によるカッティングが難しくなるため、本発明によって不良率を改善する必要性が高くなる。
【0015】
耐熱性熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、例えば、3万~50万、好ましくは5万~40万、より好ましくは8万~30万である。特に重量平均分子量が18万以下のときに不良ペレットが発生しやすくなっているところ、本発明によれば、該不良ペレットの発生を抑制できる。
【0016】
前記耐熱性熱可塑性樹脂は、例えば、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合など種々の重合法で製造でき、溶液重合、塊状重合などによって製造することが好ましい。溶液重合、塊状重合などによれば、乳化剤の混入の恐れがなく、マレイミド系単量体(a)と他の単量体(b)の交互共重合体の生成を抑制できたり、重合率の低下を抑制できる。
【0017】
前記溶液重合で使用できる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のエステル系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。重合溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒及びケトン系溶媒が好ましく、より好ましく芳香族炭化水素系溶媒、特に好ましくはトルエンである。これらの重合溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
重合反応は、重合触媒(重合開始剤)の存在下で行うことが好ましい。重合触媒としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)・二塩酸塩、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)等のアゾ化合物;過硫酸カリウム等の過硫酸塩類;クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシオクトエート、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート等の有機過酸化物等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水素引き抜き力が強い有機過酸化物を用いることが好ましい。重合触媒の使用量は、例えば、マレイミド系単量体(a)と他の単量体(b)の合計100質量部に対して0.001~0.1質量部とすることが好ましい。
【0019】
また、重合反応においては、連鎖移動剤を添加しておくことが好ましい。連鎖移動剤としては、例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2-メルカプトプロピオン酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシルエステル、オクタン酸2-メルカプトエチルエステル、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、n-ドデシルメルカプタン、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオブタネート、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(4-メルカプトブタネート)、ペンタエリストールテトラキス(6-メルカプトヘキサネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等のメルカプタン;四塩化炭素、四臭化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化合物;等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、メルカプタンを用いることが好ましい。連鎖移動剤の使用量は、マレイミド系単量体(a)と他の単量体(b)の合計100質量部に対して0.001~0.5質量部とすることが好ましい。
【0020】
溶液重合によってマレイミド系単量体(a)と他の単量体(b)とから共重合体を製造する場合、マレイミド系単量体(a)を溶融状態で仕込み、そこに他の単量体(b)と溶媒を仕込んで全体を溶液にした後、重合を開始してもよく;マレイミド系単量体(a)と他の単量体(b)を溶媒に溶解した状態で仕込んで重合を開始してもよく;他の単量体(b)を溶媒に溶解した状態で仕込んで重合を開始した後、そこに溶媒に溶かしたマレイミド系単量体(a)を添加しながら重合を継続してもよく;マレイミド系単量体を溶融状態で仕込み、そこに他の単量体(b)と溶媒を添加して全体を溶液にした後、重合を開始してもよい。
【0021】
重合終了後、耐熱性熱可塑性樹脂が溶媒又は水との混合物になっている場合、該混合物は、押出機に供給(移送)し、押出機内で脱揮又は脱水して溶融状態にしてもよいし、予め脱揮又は脱水し溶融状態にした後で押出機に供給してもよい。溶液重合物を押出機に供給(移送)し、押出機内で加熱しながら脱揮して溶融状態にすることが、再溶融工程が不要となるため、工程を省略でき、また耐熱性熱可塑性樹脂の熱劣化を抑制でき、好ましい。
【0022】
押出機内での脱揮では、複数のベントを有するスクリュー押出機を使用することが好ましい。原料投入部から移送方向に向かって最下流側のベント(最終フォアベント)での減圧は、例えば、絶対圧として900hPa以下とすることが好ましく、500hPa以下がより好ましく、200hPa以下がさらに好ましい。一方、減圧状態を実現するための設備を過剰仕様にしない観点から、最終フォアベントで減圧する際の絶対圧は1hPa以上が好ましく、10hPa以上がより好ましい。
【0023】
以上の様にして調製された耐熱性熱可塑性樹脂の溶融物は、溶融押出によってペレットにされる。以下、図面を適宜参照しながら、ペレットの製造方法について説明する。本発明では、耐熱性熱可塑性樹脂をガラス転移温度以上に加熱して溶融状態とした耐熱性熱可塑性樹脂を複数個の細孔を有するダイスから押し出す工程と、前記細孔から押し出された溶融状態の前記耐熱性熱可塑性樹脂を複数のカッタ刃(回転刃)で切断し、冷却水に投入する切断工程とを行うことが可能なセンターホットカット方式でペレットを製造する。耐熱性熱可塑性樹脂を溶融状態にするときの加熱温度(Th)と、耐熱性熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)との差(Th-Tg)は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、よりさらに好ましくは100℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、よりさらに好ましくは160℃以下である。
【0024】
図1は、前記センターホットカット方式で使用するウォータリングペレタイザ1の一例を示す概略断面図である。該ペレタイザ1は溶融熱可塑性樹脂2の押出面に存在する概略円盤型のダイス3と、ダイス3の表面で回転するカッタ刃4とを備えており、ダイス3からの樹脂2をカッタ刃4でカットすることでペレット11が製造される。また前記ペレタイザ1は、ダイス3のカッタ刃4側を覆う概略円筒型のケース6を備え、このケース6には流入パイプを通じて冷却水10が導入され、ケース6の内周面に水膜9が形成される。カッタ刃4でカットされたペレット11は、この水膜9で冷却されるとともに、流出パイプから冷却水と共にケース6外に排出される様になっている。なお図示例では2つのカッタ刃4が使用され、これらカッタ刃4は概略円板型のカッタホルダ5に固定され、このカッタホルダ5に取り付けられた回転軸7がモータ8で回転することで、カッタ刃4がダイス3の表面に沿って回転可能になっている。
【0025】
図2は前記カッタ刃4の回転状況を示す一部切り欠き概略斜視図であり、図3はカッタ刃4による樹脂2の切断状況を示す概略側面図である。図示例のカッタ刃4は、ダイス3の表面上を時計回りに回転しており、複数のノズル孔31から出てきた樹脂2をカッタ刃4の刃先20で切断する。この刃先20は、鉛直面24からカッタ刃4の逆進行方向に向けて徐々に傾くすくい面21と、刃先20から逆進行方向に向かう第1逃げ面(ダイスとの“接触面”という場合もある)22とから構成され、第1逃げ面22の進行方向後側には第2逃げ面23が連続して形成されている。この構造を有する刃先20で切断されて生じるペレット11はカッタ刃4の回転円外側に進み、前記水膜9に向けて押し出される。
【0026】
前記第1逃げ面(接触面)22の幅w(言い換えれば、刃先20と第2逃げ面23との間の距離)は、0.2mm以上1.0mm以下である。幅wを従来よりも小さい前記所定の範囲にすることで、不良ペレットの発生率(不良率)を下げることができる。幅wは、0.3mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましい。また幅wは、0.8mm以下が好ましく、0.6mm以下がより好ましい。
【0027】
第2逃げ面23とカッタ刃の進行面とがなす角(第2逃げ角)γは、例えば、5~50°、好ましくは5~40°、より好ましくは10~30°である。
【0028】
刃先20での鉛直面24とすくい面21との間の角(すくい角)αは、鉛直面24からカッタ刃4の逆進行方向に向かう角度を正として、例えば、30~80°、好ましくは40~80°、より好ましくは50~70°である。すくい角αを大きくするほど、不良ペレットの発生を抑制できる。またすくい角を小さくするほど、刃先20の寿命を大きくできる。
【0029】
ダイス3と刃先20の間の距離(ギャップ)tは、例えば、0.01~0.50mm、好ましくは0.03~0.20mm、より好ましくは0.04~0.10mmである。ギャップtが大きくなるほど、刃先20とダイス3との接触を防ぐことができ、刃先20の寿命を大きくできる。またギャップtが小さくなるほど、不良ペレットの発生を抑えやすくなる。
【0030】
前記カッタ刃に使用される鋼材の焼き入れ焼き戻し時のロックウエル硬さ(HRC)は、例えば、62以上、好ましくは63以上、より好ましくは64以上であり、例えば、80以下、好ましくは75以下、より好ましくは70以下である。なお焼き入れ条件は、温度1200℃からの油冷であり、焼き戻し条件は温度560℃からの空冷であり、この焼き入れ焼き戻しは2回繰り返される。またカッタ刃のロックウエル硬さ(HRC)は、例えば、55以上、好ましくは56以上、より好ましくは57以上であり、例えば、75以下、好ましくは70以下、より好ましくは68以下である。カッタ刃が所定のロックウエル硬さを有することによって、不良ペレットの発生を抑制できる。
【0031】
前記カッタ刃を構成する鋼材は、高速度工具鋼であることが好ましく、タングステン系高速度工具鋼、モリブデン系高速度工具鋼などであることがより好ましく、モリブデン系高速度工具鋼であることがよりさらに好ましい。
【0032】
前記鋼材としては、C:0.70質量%以上1.50質量%以下、Si:0質量%超0.45質量%以下、Mn:0質量%超0.40質量%以下、P:0質量%超0.05質量%以下、S:0質量%超0.05質量%以下、及びCr:3.00質量%以上5.00質量%以下を含み、さらにMo:2.00質量%以上10.0質量%以下、W:1.00質量%以上20.0質量%以下、V:1.00質量%以上5.00質量%以下、及びCo:3.00質量%以上12.00質量%以下から選ばれる少なくとも1種を含み、残部がFe及び不可避不純物である化学成分組成を有するものが好ましい。
【0033】
Cは鋼の硬さに影響を与える基本成分であり、好ましくは0.75質量%以上、より好ましくは0.80質量%以上、よりさらに好ましくは0.90質量%以上であり、好ましくは1.40質量%以下、より好ましくは1.30質量%以下、よりさらに好ましくは1.20質量%以下である。
【0034】
Siは、好ましくは0.40質量%以下、より好ましくは0.30質量%以下であり、Mnは、好ましくは0.30質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下であり、Pは、好ましくは、0.04質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下であり、Sは
、好ましくは0.04質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下である。
【0035】
Cr、Mo、W、V、Coなども鋼の硬さに強く影響を与える成分であり、Crは、好ましくは3.20質量%以上、より好ましくは3.50質量%以上、よりさらに好ましくは4.00質量%以上であり、好ましくは4.90質量%以下、より好ましくは4.70質量%以下である。Moは、好ましくは3.00質量%以上、より好ましくは5.00質量%以上、よりさらに好ましくは5.50質量%以上、特に好ましくは5.8質量%以上であり、好ましくは8.50質量%以下、より好ましくは7.00質量%以下である。Wは、好ましくは3.00質量%以上、より好ましくは5.00質量%以上、よりさらに好ましくは6.00質量%以上、特に好ましくは6.50質量%以上であり、好ましくは12.00質量%以下、より好ましくは8.00質量%以下である。Vは、好ましくは1.50質量%以上、より好ましくは2.00質量%以上であり、好ましくは4.00質量%以下、より好ましくは3.00質量%以下である。Coは、好ましくは10.00質量%以下、より好ましくは5.00質量%以下である。
【0036】
前記鋼材は、Mo、W、及びVから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、Mo、W、及びVを含むことがより好ましい。また前記鋼材は、Coを含まないことが好ましい。
【0037】
カッタ刃として好ましい鋼材には、SKH2、SKH3、SKH4、SKH10、SKH40、SKH50、SKH51、SKH52、SKH53、SKH54、SKH55、SKH56、SKH57、SKH58、SKH59などが含まれ、SKH52、SKH53、SKH54、SKH55、SKH56、SKH57、SKH58、SKH59などがより好ましく、SKH52、SKH53がよりさらに好ましい。
【0038】
回転するカッタ刃の数(n)と回転速度(rpm)の積は、例えば、3000~20000、好ましくは4000~15000、より好ましくは5000~10000である。
【0039】
ノズル孔31の孔径は、例えば、1.0~5.0mm、好ましくは2.0~4.0mm、より好ましくは2.5~3.5mmである。1つのノズル孔当たりの樹脂の押し出し量は、好ましくは5.0~25.0kg/hであり、より好ましくは7.5~17.5kg/hであり、よりさらに好ましくは8.5~13.5kg/hである。
【0040】
ダイスを構成する鋼材としては、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼などのステンレス鋼が好ましく、析出硬化系ステンレス鋼(SUS630、SUS631など)などが好ましく、SUS630がより好ましい。
【0041】
ダイスを構成する好ましい鋼材の化学成分組成は、C:0.07質量%以下、Si:1.00質量%以下、Mn:1.00質量%以下、P:0.040質量%以下、S:0.030質量%以下、Ni:3.00~5.00質量%、Cr:15.00~17.50質量%、Cu:3.00~5.00質量%、Nb:0.15~0.45質量%であり、残部がFe及び不可避不純物である。
【0042】
以上の様にして得られるペレットの1つ当たりの質量は、最頻値(モード)で、例えば、10mg以上、好ましくは15mg以上、より好ましくは20mg以上であり、例えば、50mg以下、好ましくは40mg以下、より好ましくは35mg以下である。またペレットの短径(モード径)は、例えば、1~4mmであることが好ましく、長径(モード径)は、例えば、2~8mmであることが好ましい。
【実施例0043】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
以下、特に断りがない限り、部は質量部を意味する。
【0044】
樹脂製造例1
コンデンサー、撹拌機および2つの滴下ロートを備えた重合反応槽にN-フェニルマレイミド(PMI)8.1部とN-シクロヘキシルマレイミド(CHMI)1.8部を溶融状態(モルテン)のまま仕込み、そこにメタクリル酸メチル(MMA)32.8部、トルエン55.0部、及びn-ドデシルメルカプタン(n-DM)0.01部を投入し混合した。混合物を撹拌しながら、窒素で反応槽内を置換すると共に100℃まで昇温した。この反応槽内に重合開始剤としてt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.02部を添加して反応を開始させるとともに、予め調製しておいた、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.02部とトルエン0.10部とからなる滴下液、およびスチレン(St)2.2部を各滴下ロートから4時間にわたって均一な速度で滴下しながら還流状態で重合を行った。滴下終了後、反応混合物をさらに3時間以上加温し続けることにより、トルエン55質量%、残存モノマー4質量%、及び熱可塑性樹脂(1)41質量%の組成を有する熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた組成物中の熱可塑性樹脂はPMI単位18.8質量%、CHMI単位3.8質量%、MMA単位72.2質量%、及びSt単位5.2質量%からなるものであり、そのガラス転移温度(Tg)は141℃であった。
【0045】
樹脂製造例2
コンデンサー、撹拌機および2つの滴下ロートを備えた重合反応槽にN-フェニルマレイミド(PMI)8.1部とN-シクロヘキシルマレイミド(CHMI)1.8部、メタクリル酸メチル(MMA)32.8部、トルエン55.0部、及びn-ドデシルメルカプタン(n-DM)0.01部を仕込んだ。仕込みに際し、PMIとCHMIはそれぞれ事前に75℃に加温した調製槽にて濃度30%のトルエン溶液とした。反応層に仕込んだ混合物を撹拌しながら、窒素で反応槽内を置換すると共に100℃まで昇温した。この反応槽内に重合開始剤としてt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.02部を添加して反応を開始させるとともに、予め調製しておいた、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.02部とトルエン0.10部とからなる滴下液、およびスチレン(St)2.2部を各滴下ロートから4時間にわたって均一な速度で滴下しながら還流状態で重合を行った。滴下終了後、反応混合物をさらに3時間以上加温し続けることにより、トルエン55質量%、残存モノマー4質量%、及び熱可塑性樹脂(2)41質量%の組成を有する熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた組成物中の熱可塑性樹脂はPMI単位18.8質量%、CHMI単位3.8質量%、MMA単位72.3質量%、及びSt単位5.1質量%からなるものであり、そのガラス転移温度(Tg)は141℃であった。
【0046】
樹脂製造例3
コンデンサー、撹拌機および2つの滴下ロートを備えた重合反応槽にスチレン(St)6.3部とアクリロニトリル(AN)3.2部、トルエン44.3部を仕込み、窒素で反応槽内を置換するとともに、100℃に昇温した。この反応槽内に重合開始剤としてt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.02部を添加して反応を開始させるとともに、予め調製しておいた、N-フェニルマレイミド(PMI)17.0部とAN1.0部、トルエン11.4部とからなる滴下液(1)を75℃に加温しながら3時間かけて滴下し、スチレン16.8部とt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.03部とからなる滴下液(2)をもう一つの滴下ロートから3.5時間かけて滴下しながら、還流状態で重合を行った。滴下終了後、反応混合物をさらに1.5時間以上加温し続けることによりトルエン55質量%、残存モノマー4質量%、及び熱可塑性樹脂(3)41質量%の組成を有する熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた組成物中の熱可塑性樹脂はPMI単位40.4質量%、AN単位9.4質量%、及びSt単位50.2質量%からなるものであり、そのガラス転移温度(Tg)は165℃であった。
【0047】
樹脂製造例4
コンデンサー、撹拌機および2つの滴下ロートを備えた重合反応槽にN-フェニルマレイミド(PMI)11.9部を溶融状態(モルテン)のまま仕込み、そこにメタクリル酸メチル(MMA)30.0部、トルエン54.0部、及びn-ドデシルメルカプタン(n-DM)0.10部を投入し混合した。混合物を撹拌しながら、窒素で反応槽内を置換すると共に100℃まで昇温した。この反応槽内に重合開始剤としてt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.05部を添加して反応を開始させるとともに、予め調製しておいた、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.05部とトルエン1.9部とからなる滴下液、およびスチレン(St)2.2部を各滴下ロートから4時間にわたって均一な速度で滴下しながら還流状態で重合を行った。滴下終了後、反応混合物をさらに3時間以上加温し続けることにより、トルエン55質量%、残存モノマー2質量%、及び熱可塑性樹脂(4)43質量%の組成を有する熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた組成物中の熱可塑性樹脂はPMI単位27.8質量%、MMA単位67.2質量%、及びSt単位5.0質量%からなるものであり、そのガラス転移温度(Tg)は151℃であった。
【0048】
実施例1
樹脂製造例1で得られた熱可塑性樹脂組成物(1)をギアポンプでスタティックミキサー式熱交換器内を通過させて240℃に加熱し、圧力調整弁により20kg/cm2となるように保持した後、バレル温度が290℃に設定された2軸同方向かみ合い方式のベントタイプスクリュー押出機〔株式会社日本製鋼所製、スクリュー径(D)140mm、シリンダ長さ(L)6200mm、L/D=44.5、ベント数5(リアベント1つ、フォアベント4つ)〕に組成物(1)を供給した。押出機のリアベント減圧度800hPa、第1ベント減圧度270hPa、第2~4ベント減圧度70hPaとなるように操作して揮発性成分を除去し、押出機のシリンダ先端に設けられた押出ダイに有する直径3mmφのノズル孔から450kg/h(ノズル孔1つあたり、11.3kg/h)で溶融状態の熱可塑性樹脂を押し出した。尚、第2~4ベントの各前段において各々1.5%/樹脂の水を注入した。
【0049】
図1に示した構造を有するウォーターリングペレタイザを押出ダイに設置し、SKH52鋼(ただし、Cr4.5質量%、Mo6.0質量%、W6.5質量%、V2.4質量%を含有。HRC=65)からなる図2図3に示す形状の2つのカッタ刃(ダイス接触面の幅w=0.5mm、すくい角α=60°、第2逃げ角γ=20°)をダイス表面に沿ってギャップt=0.06mm、回転速度3500rpmで回転させ、ノズル孔から押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂を約0.03g毎に切断し、冷却用の水層に投入した。水層の水温は40℃に温調してあり、冷却された熱可塑性樹脂ペレットは、ケーシングの軸方向の端部で水と共に搬出された後、水と分離して回収した。
【0050】
得られた熱可塑性樹脂ペレットは、重量平均分子量が20万であり、長径4mm、短径2mmの偏平球状であった。得られたペレットは、切断不具合に伴う塊品や連球状の不良ペレットはほとんど見られず、それらが起因となる装置トラブルも発生しなかった。
【0051】
実施例2~4
樹脂製造例2~4で得られた熱可塑性樹脂組成物(2)~(4)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、それぞれの熱可塑性樹脂ペレットを得た。結果を表1にまとめる。表1に記載した通り、いずれも不良ペレットの発生が見られなかった。
【0052】
【表1】
【0053】
比較例1~4
幅wが1.5mmのカッタ刃を用いたこと以外は実施例1~4と同様の操作を行い、重合例1~4で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットをそれぞれ取得した。結果を表2にまとめる。表2に記載した通り、得られたペレットは、切断不良に伴う塊品や2つ以上のペレットが繋がった連球状ペレット、及びつぶれた形状の樹脂塊が散見され、良品の歩留まりが低下した。
【0054】
【表2】
【符号の説明】
【0055】
1 ペレタイザ
2 溶融熱可塑性樹脂
3 ダイス
4 カッタ刃(回転刃)
5 カッタホルダ
6 ケース
7 回転軸
8 モータ
9 水膜
10 冷却水
11 ペレット
20 刃先
21 すくい面
22 第1逃げ面(接触面)
23 第2逃げ面
24 鉛直面
31 ノズル孔
γ 第2逃げ角
w 第1逃げ面(接触面)の幅
α すくい角
t ギャップ
図1
図2
図3