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  • -靴紐の保持具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045820
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】靴紐の保持具
(51)【国際特許分類】
   A43C 7/04 20060101AFI20220314BHJP
   A43C 3/00 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
A43C7/04
A43C3/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151623
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】520349654
【氏名又は名称】有限会社いなふ
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】田井 忍
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050MA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ウレタンやシリコーンゴムなどのような弾性を有する樹脂製の紐を用いた場合であっても、紐を容易に保持させておくことができ、しかも、シュータンを常に上方に持ち上げて履きやすくすることができるとともに、余剰部分の紐が邪魔にならないようにした靴紐の保持具を提供する。
【解決手段】シューレースホールやシュータンを有する靴に使用される靴紐の保持具2であって、前記シューレースホールを通された余剰の紐を外周部分から挟み込んで保持する挟持部Aと、前記シュータンに取り付けられるシュータン取付部Bとを備えて構成する。この挟持部Aは、中間部材3と上片4によって構成され、また、シュータン取付部Bは、中間部材3と下片5によって構成される。そして、上片4と下片5を同時に回動させることで、紐挟持とシュータンへの取り付けを同時に行えるようにする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューレースホールやシュータンを有する靴に使用される靴紐の保持具であって、
前記シューレースホールを通された余剰の紐を外周部分から挟み込んで保持する挟持部と、
前記シュータンに取り付けられるシュータン取付部と、
を備えてなる靴紐の保持具。
【請求項2】
前記挟持部が、靴の長手方向に沿って余剰の紐を保持させる溝部を有してなるものである請求項1に記載の靴紐の保持具。
【請求項3】
前記シュータン取付部が、シュータンの上縁部を挟み込むように取り付けられるものである請求項1に記載の靴紐の保持具。
【請求項4】
前記挟持部が、前記中間部材に設けられた溝部に対して、紐を押さえ付けて挟持させる上片を設けて構成されるものであり、
前記シュータン取付部が、前記中間部材に対して、シュータンを挟み込ませる下片を設けて構成されるものであり、
前記上片と下片を同時に中間部材側に回動させることで、紐の押さえつけとシュータンへの取り付けを行えるようにした請求項1に記載の靴紐の保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴紐の余剰部分を保持できるようにした靴紐(以下、「紐」とも称する)の保持具に関するものであって、より具体的には、ウレタンやシリコーンゴムなどのような結びにくい紐を用いた場合であっても、余剰部分を保持させておくことができるとともに、靴のシュータンを常に上方に持ち上げておくことができるようにした靴紐の保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、紐靴は、図6に示すように、アッパー部分の開口部11の左右縁部に設けられたシューレースホール12や、その開口部11を覆うシュータン13を設けて構成されており、このような紐靴1を履く際には、シューレースホール12や、シュータン13の上面に設けられた紐挿通部15に靴紐を通し、足の形状に合わせて紐を締め付けた後、シューレースホール12から余った余剰部分を蝶結びなどで保持させて使用される。
【0003】
ところで、このような紐靴は、脱ぎ履きする際に、紐を緩める作業や紐を結ぶ作業を行わなければならないが、その作業が面倒な場合は、常に緩めた状態で使用されることが多い。また、特に、高齢者や手の不自由な者などが使用する場合、補助者が必要になってしまうといった問題があった。
【0004】
これに対して、このような紐をウレタン、シリコーンゴムなどの弾性素材を用いて、脱ぎ履きを容易にできるようにするとともに、適度に足を締め付けられるようにした方法も提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2016/162651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなウレタンやシリコーンゴムなどの弾性素材を用いた場合、次のような問題を生ずる。
【0007】
すなわち、ウレタンやシリコーンゴムなどの弾性素材は、布素材の紐と異なり、表面が平滑化されており、また、硬さについても布素材の紐よりも硬いために、蝶結びなどを行うことができない。
【0008】
また、ウレタンやシリコーンゴムなどのような断面円形状の紐は、シュータンの紐挿通部の内側通路に対して径の大きい場合が多いため、紐挿通部を通しにくくなる。このため、紐を紐挿通部に通さない場合があるが、このように紐挿通部に紐を通さないと、シュータンが自重で落ちてしまい、靴を履く際には、シュータンを手で持ち上げて履く必要があるために、却って靴を履くのが面倒になるといった問題がある。
【0009】
さらに、ウレタンやシリコーンゴムなどの紐は、布素材の紐に比べて硬いため、余剰の紐が上方や横方向に飛び出てしまい、歩行の邪魔になったり、見た目も悪くなるといった問題もある。
【0010】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、ウレタンやシリコーンゴムなどのような弾性を有する樹脂製の紐を用いた場合であっても、余剰の紐を容易に保持させておくことができ、しかも、シュータンを常に上方に持ち上げて履きやすくすることができるとともに、余剰部分の紐が邪魔にならないようにした靴紐の保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明の靴紐の保持具は、シューレースホールやシュータンを有する靴に使用される靴紐の保持具であって、前記シューレースホールを通された余剰の紐を外周部分から挟み込んで保持する挟持部と、前記シュータンに取り付けられるシュータン取付部とを備えて構成するようにしたものである。
【0012】
このように構成すれば、ウレタンやシリコーンゴムなどのような弾性を有する樹脂製の紐を用いた場合であっても、余剰の紐を容易に保持させておくことができるとともに、シュータン取付部を設けることで、シュータンを常に上方に持ち上げて履きやすくすることができるようになる。
【0013】
また、このような発明において、前記挟持部を設ける場合、靴の長手方向に沿って余剰の紐を保持させる溝部を設けて構成する。
【0014】
このように構成すれば、靴の長手方向の溝部に紐を保持させることができるため、紐の余剰部分が左右に飛び出したり、上方に飛び出したりすることで、歩行の邪魔になるようなことがなくなる。
【0015】
さらに、前記シュータン取付部を設ける場合、シュータンの上縁部を挟み込めるように構成する。
【0016】
このように構成すれば、シュータンの上縁部を常に上側に持ち上げた状態に維持させておくことができるため、靴を履く際に、シュータンが邪魔になるようなことがなくなる。
【0017】
また、前記挟持部を構成する場合、中間部材に設けられた溝部に対して、紐を押さえ付けて挟持させる上片を設けるとともに、前記シュータン取付部を構成する場合、前記中間部材に対して、シュータンを挟み込ませる下片を設け、このような上片と下片を同時に中間部材側に回動させることで、紐の押さえつけとシュータンへの取り付けを行えるようにする。
【0018】
このように構成すれば、紐の保持とシュータンへの取り付けを同時に行うことができ、靴を履く際の手間を省くことができるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シューレースホールやシュータンを有する靴に使用される靴紐の保持具を構成する際に、前記シューレースホールを通された余剰の紐を外周部分から挟み込んで保持する挟持部と、前記シュータンに取り付けられるシュータン取付部とを備えて構成するようにしたので、ウレタンやシリコーンゴムなどのような弾性を有する樹脂製の紐を用いた場合であっても、容易に紐を保持させておくことができるとともに、シュータン取付部を設けることで、シュータンを常に上方に持ち上げて履きやすくすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態における靴に靴紐と保持具を取り付けた状態を示す図
図2】同形態における保持具の各パーツを示す斜視図
図3】同形態における中間部材に対して上片および下片を開いた状態を示す図
図4】同形態における中間部材に対して上片を回転中心まで回動させた状態を示す図
図5】同形態における中間部材に対して上片および下片を閉じた状態を示す図
図6】従来の靴紐を結んだ状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
この実施の形態における靴紐の保持具2は、図1に示すような、靴本体のアッパー部分に開口する開口部11の左右両側に複数のシューレースホール12を有するとともに、その開口部11の下方にシュータン13を設けて構成される靴1に使用されるものであって、シューレースホール12を通された余剰の紐6の外周部分を挟み込んで保持する挟持部A(図2参照)と、前記シュータン13の上縁部14を挟み込むように取り付けられるシュータン取付部B(図2参照)とを備えて構成されるものである。そして、このように構成することによって、結びにくいウレタンやシリコーンゴムなどのような弾性を有する樹脂製の紐6を用いた場合であっても、外周部分を挟み込んで確実に保持させることができるようにするとともに、シュータン13の上縁部14を持ち上げて、靴1を履きやすくできるようにしたものである。以下、本実施の形態における靴紐の保持具2について詳細に説明する。
【0023】
まず、紐6は、ウレタンやシリコーンゴムなどのような弾性を有する樹脂製の素材で設けられるものであって、しかも、市販の靴のシューレースホール12に通すことができるような径を有するものが使用される。ここでは、シューレースホール12よりも若干径の大きな断面円形状を有する弾性の樹脂であって、引張強さが30kg/平方cmから150kg/平方cmのものを用いる。なお、このような弾性を有する樹脂として、ウレタンやシリコーンゴムを例に挙げるが、これ以外に、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、フッ素ゴム、エチレン酢酸ビニルゴム、アクリルゴムなどのような多種多様な素材を用いてもよい。そして、このような弾性を有する樹脂製の紐6を引っ張って径を小さくした状態でシューレースホール12に通すとともに、シューレースホール12を通した後は、引っ張った状態から元の状態に戻して径を太くし、シューレースホール12の穴の内側を押圧して紐6が止まるようにしている。
【0024】
このようなシューレースホール12から延出された余剰の紐6を保持させるための保持具2は、プラスチックなどで構成されるものであって、図2に示すように、中間部材3を挟んで上下に設けられた上片4と下片5を備えて構成される。
【0025】
このうち、中間部材3は、縦長扁平状に構成されるものであって、その左右両側に、紐6を上から挿入して、その外周部分を挟み込めるようにした溝部31が設けられている。この左右の溝部31は、紐6の外径よりも幅狭の上側開口部32をそれぞれ有しており、中間部材3の長手方向に沿ってそれぞれ平行となるように設けられている。そして、その溝部31の上側開口部32から紐6を引っ張った状態で径を細くし、その状態で上側開口部32から奥方へと押し込んで紐6を収容できるようにするとともに、その後、紐6の引っ張った状態を戻して径を太くし、溝部31の内壁を強く押圧できるようにしている。
【0026】
一方、この中間部材3の上側に設けられる上片4は、この溝部31に挟み込まれた紐6を上側開口部32の上方から押圧して強く固定できるようにしたものであって、前記溝部31の上側開口部32を覆う押圧片44を有するように構成されている。なお、本発明における挟持部Aは、この溝部31と押圧片44などによって構成される。この押圧片44には、溝部31に収容された紐6を強く押圧させるための線状突起43が長手方向に設けられており、これによって、紐6を押圧して固定できるようにしている。なお、この上片4によって紐6を押圧する場合、上片4の左右両側に設けられたピン41を中心に上片4を回動させ(図3参照)、また、そのおピン41の下方に設けられた押圧突起42をピン41の回動中心CLを超える位置まで変位させ(図4から図5の状態)、これによって中間部材3を押圧させた状態に固定できるようにしている。
【0027】
また、下片5は、この中間部材3との間にシュータン13を挟み込んで固定できるようにしたものであって、中間部材3の下面側に設けられた凹凸部34に対応する上向きの凹凸部55を設け、これによってシュータン13を挟み込んで抜けないようにしている。なお、本発明におけるシュータン取付部Bは、この下片5の凹凸部55と中間部材3の凹凸部34などによって構成される。また、この下片5の奥方には、中間部材3の奥方に設けられたL字状の屈曲部33を保持させておくための起立部51が設けられており、この起立部51と下片5の奥壁52との間に屈曲部33を収容させて(図3参照)、中間部材3を抜けないように保持させている。また、この下片5の左右両側には、起立した側壁53が設けられており、この側壁53の上方部分に設けられた穴54に前記上片4のピン41を収容させるようにしている。
【0028】
次に、このように構成された靴紐の保持具2の使用方法について説明する。
【0029】
まず、この靴1のシューレースホール12にウレタンやシリコーンゴムの紐6を引っ張りながら通し、最終的に、最上部のシューレースホール12から紐6を延出させる。このとき、紐6は、シュータン13に設けられた紐挿通部15(図6参照)に通してもよく、あるいは、紐6の径が太くて通しにくい場合は、紐挿通部15に通さなくてもよい。
【0030】
次に、このように紐6を通した後、シューレースホール12から延出した左右の紐6を引っ張った状態にして径を細くし、その状態で、中間部材3の溝部31に押し込む。そして、紐6の引っ張り状態を戻すと、紐6の径が太い状態に戻り、紐6で溝部31の内壁を押圧して軽く固定された状態となる。
【0031】
そして、このように紐6を中間部材3の溝部31に収容した状態で、今度は、その保持具2をシュータン13の上縁部14の位置まで引っ張り上げ、その状態で、中間部材3と下片5との間にシュータン13の上縁部14を上下から挟み込ませる(図1の状態)。
【0032】
そして、この状態で、下片5と上片4をそれぞれ中間部材3側に押圧するように回動させる。このとき、上片4の回転中心CLの位置まで上辺の押圧突起42の接触部分が移動すると(図4の状態)、その押圧突起42によって中間部材3が下方に最も押圧された状態になり、さらに、その回転中心CLを超えた位置に押圧突起42が移動すると(図5の状態)、上片4が元の状態に戻らないようになる。これにより、上片4に設けられた線状突起43によって紐6を押圧して強く固定しておくことができると同時に、中間部材3と下片5との間にシュータン13を挟み込んで、シュータン13を持ち上げた状態に維持させておくことができるようになる。
【0033】
なお、このように紐6を保持具2で固定し、シュータン13に取り付けた状態では、図1に示すように、紐6が靴1の長手方向に沿って延出された状態となり、歩行時に、その紐6が邪魔になるようなことがなくなる。
【0034】
そして、このように保持具2を取り付けた靴1を履く際には、紐6の余剰部分を手で持ち上げると、靴1のシュータン13が上向きに開いた状態になり、足を入れる開口部分が広くなる。そして、その状態で足を入れると、ウレタンやシリコーンゴムで構成された紐6の弾性力によって、左右に広がって足を入れやすくすることができるとともに、足を入れた後は、適度に足をホールドさせておくことができるようになる。
【0035】
このように上記実施の形態によれば、シューレースホール12やシュータン13を有する靴1に使用される靴紐(紐6)の保持具2であって、前記シューレースホール12を通された余剰の紐6を外周部分から挟み込んで保持する挟持部Aと、前記シュータン13に取り付けられるシュータン取付部Bとを備えて構成するようにしたので、ウレタンやシリコーンゴムなどのような弾性を有する樹脂製の紐6を用いた場合であっても、紐6を容易に保持させておくことができるとともに、シュータン取付部Bを設けることで、シュータン13を常に上方に持ち上げて履きやすくすることができるようになる。
【0036】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0037】
例えば、上記実施の形態では、溝部31を中間部材3の左右から延出させて設けるようにしたが、中間部材3の中央部分に溝部31を設けて収容させるようにしてもよい。
【0038】
また、上記実施の形態では、中間部材3を上片4と下片5の間に設ける際、下片5の奥壁52と起立部51その間に中間部材3の屈曲部33を収容させて設けるようにしたが、下片5の左右の側壁53に穴54を設け、その穴54にピン41を通して中間部材3を回動可能に保持させるようにしてもよい。
【0039】
さらに、上記実施の形態では、押圧突起42を回転中心CLを超える位置まで回動させて上片4と下片5で中間部材3を挟み込ませるようにしたが、上片4と下片5との間にバネなどを設けておき、このバネの力で、常に上片4と下片5によって中間部材3を挟み込ませるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1・・・靴
11・・・開口部
12・・・シューレースホール
13・・・シュータン
14・・・シュータンの上縁部
2・・・保持具
3・・・中間部材
31・・・溝部
32・・・上側開口部
33・・・屈曲部
34・・・凹凸部
4・・・上片
41・・・ピン
42・・・押圧突起
43・・・線状突起
44・・・押圧片
5・・・下片
51・・・起立部
52・・・奥壁
53・・・側壁
54・・・穴
55・・・凹凸部
6・・・紐
A・・・挟持部
B・・・シュータン取付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6