(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045837
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】新規エマルション
(51)【国際特許分類】
C08F 220/56 20060101AFI20220314BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20220314BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
C08F220/56
B01D21/01 101A
B01D21/01 107Z
C08F220/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151663
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】宮野 淳次
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和也
【テーマコード(参考)】
4D015
4J100
【Fターム(参考)】
4D015BA06
4D015BA17
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4J100FA20
4J100JA18
(57)【要約】
【課題】新規なエマルションを提供する。
【解決手段】エマルションを、アミド基含有モノマー由来の構造単位(A1)を有するポリマー(A)を含有するO/W型(水中油型)エマルションであって、ポリマー(A)が構造単位(A1)を0.1~35質量%の割合で含むエマルション、とする
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド基含有モノマー由来の構造単位(A1)を有するポリマー(A)を含有するO/W型エマルションであって、ポリマー(A)が構造単位(A1)を0.1~35質量%の割合で含むエマルション。
【請求項2】
アミド基含有モノマーが、(メタ)アクリルアミドを含む請求項1記載のエマルション。
【請求項3】
ポリマー(A)における構造単位(A1)の割合が0.5~25質量%である、請求項1又は2記載のエマルション。
【請求項4】
ポリマー(A)が、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位(A2)を有する、請求項1~3のいずれかに記載のエマルション。
【請求項5】
構造単位(A2)が(メタ)アクリル酸C1-3アルキルエステル由来の構造単位を有する請求項4記載のエマルション。
【請求項6】
ポリマーにおける構造単位(A2)の割合が20質量%以上である、請求項4又は5記載のエマルション。
【請求項7】
構造単位(A1)1質量部に対して構造単位(A2)を2質量部以上含む、請求項4~6のいずれかに記載のエマルション。
【請求項8】
ポリマー(A)が、酸基含有モノマー由来の構造単位(A3)を有する、請求項1~7のいずれかに記載のエマルション。
【請求項9】
ポリマーにおける構造単位(A3)の割合が5質量%以上である、請求項8記載のエマルション。
【請求項10】
構造単位(A1)1質量部に対して構造単位(A3)を0.5質量部以上含む、請求項8又は9記載のエマルション。
【請求項11】
ポリマー(A)が、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位(A2)及び酸基含有モノマー由来の構造単位(A3)を有し、構造単位(A2)1質量部に対して構造単位(A1)及び構造単位(A3)を3質量部以上含む、請求項1~10のいずれかに記載のエマルション。
【請求項12】
ポリマー(A)が、アミド基含有モノマー由来の構造単位(A1)と、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位(A2)と、酸基含有モノマー由来の構造単位(A3)とを有し、
構造単位(A2)が(メタ)アクリル酸C1-3アルキルエステル由来の構造単位を有し、
構造単位(A3)が(メタ)アクリル酸由来の構造単位を有し、
ポリマー(A)における構造単位(A1)の割合が1~20質量%であり、
ポリマーにおける構造単位(A2)の割合が30質量%以上であり、
ポリマーにおける構造単位(A3)の割合が10質量%以上である、請求項1~11のいずれかに記載のエマルション。
【請求項13】
ポリマー(A)の重量平均分子量が100万以上である、請求項1~12のいずれかに記載のエマルション。
【請求項14】
ポリマー(A)の平均粒子径が1000nm以下である、請求項1~13のいずれかに記載のエマルション。
【請求項15】
pHが5以下である、請求項1~14のいずれかに記載のエマルション。
【請求項16】
固形分20質量%における粘度(25℃、BM型粘度計、30rpm)が1000mPa・s以下、固形分1質量%における粘度(25℃、BM型粘度計、30rpm)が100mPa・s以下である、請求項1~15のいずれかに記載のエマルション。
【請求項17】
固形分濃度20質量%におけるエマルションの粘度をV20(mPa・s)、固形分濃度1質量%におけるエマルションの粘度をV1(mPa・s)、固形分濃度0.1質量%におけるエマルションの粘度をV0.1(mPa・s)とするとき、V20-V1の値が100mPa・s以下、V20-V0.1の値が300mPa・s以下である、請求項1~16のいずれかに記載のエマルション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なエマルション等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凝集剤として種々の成分が開発されている。例えば、特許文献1(特開2013-188731号公報)には、汚泥の凝集剤として、硫酸アルミニウム等の無機系凝集剤の他、ポリアクリルアミドといった有機系合成高分子凝集剤が知られていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-188731号公報(段落番号[0003])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新規なエマルション等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述のように、ポリアクリルアミドは高分子型の凝集剤(凝固剤)として知られている。このような高分子型凝集剤は、粉体のまま利用すると、配合(添加)対象において、ままこ状になるなど、効率よい凝集力を発揮しがたくなる場合がある。
【0006】
そのため、高分子型凝集剤には、用途等に応じて、適当な溶媒(水等)に溶解・分散(希釈)した液として使用する態様がある。
【0007】
しかし、このような液状で使用しても、溶媒中で凝集剤が高粘度化してしまい、使用性の点で依然として十分でない場合がある。特に、このような傾向は、凝集剤の濃度が高くなる程、顕著になる場合が多い。
【0008】
一方、高粘度化の低減は、元来、凝集剤の凝集機能の低減につながる場合が多く、使用性(低粘度の液)と、十分な凝集性との両立は困難であった。
【0009】
このような中、本発明者は、ポリマー組成とエマルション型とを特定のものに選択することで新規なエマルションが得られること、このようなエマルションによれば、十分な凝集性と、優れた使用性(低粘性の液の提供)とを両立(発揮)しうること等を見出した。
【0010】
本発明者らは、上記以外にも下記するように種々の新知見を得て、さらに鋭意検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記の発明等を含む。
[1]
アミド基含有モノマー由来の構造単位(A1)を有するポリマー(A)を含有するO/W型(水中油型)エマルションであって、ポリマー(A)が構造単位(A1)を0.1~35質量%の割合で含むエマルション。
[2]
アミド基含有モノマーが、(メタ)アクリルアミドを含む[1]記載のエマルション。
[3]
ポリマー(A)における構造単位(A1)の割合が0.5~25質量%である、[1]又は[2]記載のエマルション。
[4]
ポリマー(A)が、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位(A2)を有する、[1]~[3]のいずれかに記載のエマルション。
[5]
構造単位(A2)が(メタ)アクリル酸C1-3アルキルエステル由来の構造単位を有する[4]記載のエマルション。
[6]
ポリマーにおける構造単位(A2)の割合が20質量%以上である、[4]又は[5]記載のエマルション。
[7]
構造単位(A1)1質量部に対して構造単位(A2)を2質量部以上含む、[4]~[6]のいずれかに記載のエマルション。
[8]
ポリマー(A)が、酸基含有モノマー由来の構造単位(A3)を有する、[1~[7]のいずれかに記載のエマルション。
[9]
ポリマーにおける構造単位(A3)の割合が5質量%以上である、[8]記載のエマルション。
[10]
構造単位(A1)1質量部に対して構造単位(A3)を0.5質量部以上含む、[8]又は[9]記載のエマルション。
[11]
ポリマー(A)が、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位(A2)及び酸基含有モノマー由来の構造単位(A3)を有し、構造単位(A2)1質量部に対して構造単位(A1)及び構造単位(A3)を3質量部以上含む、[1]~[10]のいずれかに記載のエマルション。
[12]
ポリマー(A)が、アミド基含有モノマー由来の構造単位(A1)と、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位(A2)と、酸基含有モノマー由来の構造単位(A3)とを有し、
構造単位(A2)が(メタ)アクリル酸C1-3アルキルエステル由来の構造単位を有し、
構造単位(A3)が(メタ)アクリル酸由来の構造単位を有し、
ポリマー(A)における構造単位(A1)の割合が1~20質量%であり、
ポリマーにおける構造単位(A2)の割合が30質量%以上であり、
ポリマーにおける構造単位(A3)の割合が10質量%以上である、[1]~[11]のいずれかに記載のエマルション。
[13]
ポリマー(A)の重量平均分子量が100万以上である、[1]~[12]のいずれかに記載のエマルション。
[14]
ポリマー(A)(又はエマルションを構成する粒子)の平均粒子径が1000nm以下である、[1]~[13]のいずれかに記載のエマルション。
[15]
pHが5以下である、[1]~[14]のいずれかに記載のエマルション。
[16]
固形分20質量%における粘度(25℃、BM型粘度計、30rpm)が1000mPa・s以下、固形分1質量%における粘度(25℃、BM型粘度計、30rpm)が100mPa・s以下である、[1]~[15]のいずれかに記載のエマルション。
[17]
固形分濃度20質量%におけるエマルションの粘度をV20(mPa・s)、固形分濃度1質量%におけるエマルションの粘度をV1(mPa・s)、固形分濃度0.1質量%におけるエマルションの粘度をV0.1(mPa・s)とするとき、V20-V1の値が100mPa・s以下、V20-V0.1の値が300mPa・s以下である、[1]~[16]のいずれかに記載のエマルション。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、新規なエマルション等を提供できる。
このようなエマルションは、意外にも、十分な凝集力と、優れた使用性(低粘性の液の提供)とを両立(発揮)しうる。
しかも、このようなエマルションによれば、比較的高濃度においても低粘性の液とすることができる。そのため、高濃度で低粘度のエマルションを提供することもできる。
また、本発明のエマルションは、エマルションタイプ(さらには低粘度溶液)であるため、凝固剤用途等において、粉体タイプのものとは異なり、溶解するための設備を省くことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のエマルションは、アミド基含有モノマー由来の構造単位(A1)を有するポリマー(A)を含有するO/W型(水中油型)エマルションである。
【0014】
[ポリマー(A)]
ポリマー(A)は、少なくともアミド基含有モノマー由来の構造単位(A1)を有する(又はアミド基含有モノマーを重合成分とする)。
【0015】
(アミド基含有モノマー単位(A1))
アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド系モノマー{例えば、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド[例えば、N-アルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド等のN-モノC1-4アルキル(メタ)アクリルアミド)、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジC1-4アルキル(メタ)アクリルアミド)等]等}、環状アミド系モノマー(例えば、N-ビニルピロリドン等)等が挙げられる。
【0016】
なお、アミド基含有モノマーは、通常、酸基を有しなくてもよい。
【0017】
アミド基含有モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい(構造単位(A1)において由来してもよい)。
【0018】
アミド基含有モノマーの中でも、(メタ)アクリルアミド系モノマー等の鎖状アミド系モノマー、特に、(メタ)アクリルアミドが、凝集力(ポリマー(A)の高分子量化)等の点で有利である。
【0019】
そのため、アミド基含有モノマーは、少なくとも(メタ)アクリルアミド系モノマー[特に、(メタ)アクリルアミド]を含んで[又は構造単位(A1)(以下、アミド含有モノマー単位(A1)等ということがある。以下同じ)は、少なくとも(メタ)アクリルアミド系モノマー[特に、(メタ)アクリルアミド]単位を含んで]いてもよい。
【0020】
アミド基含有モノマーが、(メタ)アクリルアミドを含有する場合、アミド基含有モノマー単位における(メタ)アクリルアミド単位の割合[又はアミド含有モノマーに占める(メタ)アクリルアミドの割合]は、例えば、30質量%以上、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であってもよく、80質量%以上(例えば、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、100質量%等)等であってもよい。
【0021】
ポリマー(A)において、アミド基含有モノマー単位の割合(ポリマー(A)を構成する構造単位に占めるアミド基含有モノマー単位の割合又はポリマー(A)の重合成分に占めるアミド基含有モノマーの割合)は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であってもよく、35質量%以下、好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下(例えば、20質量%以下)程度であってもよい。
なお、範囲は、下限値・上限値を適宜組み合わせたもの(例えば、0.1~35質量%、0.5~25質量%等)であってもよい。以下、範囲の記載について同じ。
【0022】
このような割合で構造単位(A1)を含むことで、十分な凝集力を有するO/Wエマルションを効率よく得やすい。
【0023】
((メタ)アクリル酸エステル単位(A2))
ポリマー(A)は、(メタ)アクリル系モノマーとの重合性やO/Wエマルションの形成性等と観点から、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位(A2)を有して(又はポリマー(A)は、(メタ)アクリル酸エステルを重合成分として)もよい。
(メタ)アクリル系モノマーをアミド基含有モノマーと組み合わせることで、十分な凝集力(さらには十分な高分子量)を有するO/W型のエマルションとしやすい。
【0024】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、鎖状脂肪族(メタ)アクリレート{直鎖状又は分岐鎖状脂肪族(メタ)アクリレート、例えば、アルキル(メタ)アクリレート[例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のC1-20アルキル(メタ)アクリレート(例えば、C1-18アルキル(メタ)アクリレート)]、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル等のC1-12アルコキシC1-12アルキルメタクリレート等)等]等}、脂環式(メタ)アクリレート[例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のC4-20シクロアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC4-10シクロアルキル(メタ)アクリレート)、シクロアルキルアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、4-メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のC4-10シクロアルキルC1-4アルキル(メタ)アクリレート)、架橋環式(メタ)アクリレート(例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等)等]、芳香族(メタ)アクリレート(芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル)[例えば、アリール(メタ)アクリレート(例えば、フェニル(メタ)アクリレート等のC6-10アリール(メタ)アクリレート)、アラルキル(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等のC6-10アリールC1-4アルキル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキルメタクリレート(例えば、フェノキシエチルメタクリレート等のC6-10アリールオキシC1-4アルキルメタクリレート)等]等が挙げられる。
【0025】
なお、(メタ)アクリル酸エステルは、通常、官能基(例えば、ヒドロキシ基、メルカプト基、酸基、エポキシ基、アミノ基等)を有しなくてもよい。
また、(メタ)アクリル酸エステルは、単官能性[1個の重合性基((メタ)アクリロイルオキシ基)を有する(メタ)アクリル酸エステル]であってもよい。
【0026】
これらのうち、脂肪族(メタ)アクリレート[例えば、アルキルアクリレート(例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のC1-18アルキルアクリレート)、アルキルメタクリレート(例えば、メタクリル酸メチル等のC1-18アルキルメタクリレート)、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート等]、特に、アミド基含有モノマーとの重合性やO/Wエマルションの形成性(安定性)等の観点から、(メタ)アクリル酸C1-3アルキルエステル(特に、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、中でもアクリル酸エチル等)が好ましい。
【0027】
そのため、ポリマー(A)は、脂肪族(メタ)アクリレート単位(特に、(メタ)アクリル酸エチル単位等の(メタ)アクリル酸C1-3アルキルエステル単位)を少なくとも有していてもよい。
【0028】
(メタ)アクリル酸エステルが、脂肪族(メタ)アクリレートを含有する場合、(メタ)アクリル酸エステル単位における脂肪族(メタ)アクリレート単位の割合[又は(メタ)アクリル酸エステルに占める脂肪族(メタ)アクリレートの割合]は、例えば、30質量%以上、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であってもよく、80質量%以上(例えば、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、100質量%等)等であってもよい。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステルが、(メタ)アクリル酸C1-3アルキルエステルを含有する場合、(メタ)アクリル酸エステル単位における(メタ)アクリル酸C1-3アルキルエステル単位の割合[又は(メタ)アクリル酸エステルに占める(メタ)アクリル酸C1-3アルキルエステルの割合]は、例えば、20質量%以上、好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であってもよく、70質量%以上(例えば、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、100質量%等)等であってもよい。
【0030】
(メタ)アクリル酸エステルが、(メタ)アクリル酸エチルを含有する場合、(メタ)アクリル酸エステル単位における(メタ)アクリル酸エチル単位の割合[又は(メタ)アクリル酸エステルに占める(メタ)アクリル酸エチルの割合]は、例えば、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であってもよく、30質量%以上(例えば、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、100質量%等)等であってもよい。
【0031】
ポリマー(A)が(メタ)アクリル酸エステル単位を有する場合、(メタ)アクリル酸エステル単位の割合(ポリマー(A)を構成する構造単位に占める(メタ)アクリル酸エステル単位の割合又はポリマー(A)の重合成分に占める(メタ)アクリル酸エステルの割合)は、例えば、1質量%以上(例えば、5質量%以上)、好ましくは10質量%以上(例えば、15質量%以上)、さらに好ましくは20質量%以上(例えば、25質量%以上)、特に30質量%以上(例えば、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上等)であってもよい。
なお、(メタ)アクリル酸エステル単位の割合の上限値は、例えば、95質量%、90質量%、85質量%、80質量%、75質量%等であってもよい。
【0032】
ポリマー(A)が(メタ)アクリル酸エステル単位(A2)を有する場合、構造単位(A2)の割合は、構造単位(A1)1質量部に対して、例えば、1質量部以上(例えば、1.5質量部以上)、さらに好ましくは2質量部以上(例えば、2.5質量部以上)、特に3質量部以上(例えば、3.5質量部以上、4質量部以上)であってもよい。
【0033】
このような割合で構造単位(A2)を含むことで、十分な凝集力を有するO/Wエマルションをより一層効率よく得やすい。
【0034】
(酸基含有モノマー単位(A3))
ポリマー(A)は、凝集力、アルカリ可溶性(塩基で粒子構造から可溶化して均一ポリマーになる)等の観点から、酸基含有モノマー由来の構造単位(A3)を有していてもよい。なお、アルカリ可溶性であると、例えば、塩基性条件下での使用で、粒子状のポリマー(エマルション粒子)を、可溶化してポリマーを均一化しやすく、用途によっては効率よくポリマー(A)の機能(凝縮力等)をより一層発揮しやすくなる。
【0035】
このような酸基含有モノマー(酸基含有単量体)としては、例えば、カルボキシル基又は酸無水物基含有モノマー[例えば、不飽和モノカルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の脂肪族不飽和モノカルボン酸)、不飽和ポリカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸)又はその部分エステル(例えば、ジカルボン酸のモノエステル(ハーフエステル)等)、これらの酸無水物(例えば、無水マレイン酸等)等]、スルホン酸基含有単量体[例えば、スチレン系単量体(例えば、スチレンスルホン酸等)、(メタ)アクリル酸スルホン酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸2-スルホン酸エチル)、アルケニルスルホン酸(例えば、ビニルスルホン酸)、(メタ)アクリロイルアミノアルキルスルホン酸(例えば、2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸)等]等が挙げられる。
【0036】
代表的な酸基含有モノマーには、カルボキシル基又は酸無水物基含有モノマーが含まれ、中でも(メタ)アクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸)等が好ましく、特に、低粘性の観点からは、メタクリル酸をより好適に使用してもよい。
【0037】
なお、酸基含有モノマーは、(メタ)アクリロイルアミノアルキルスルホン酸を含んでいなくてもよい。
【0038】
酸基含有モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0039】
なお、酸基含有モノマー単位は、ポリマー(A)において中和されていてもよい(塩を形成していてもよい)が、通常、中和されていても一部の単位であってもよく、ポリマー(A)は、少なくとも遊離の形態で酸基含有モノマー単位を有するのが好ましい。
【0040】
酸基含有モノマーが、(メタ)アクリル酸単位を含有する場合、酸基含有モノマー単位における(メタ)アクリル酸単位の割合[又は酸基含有モノマーに占める(メタ)アクリル酸の割合]は、例えば、30質量%以上、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であってもよく、75質量%以上(例えば、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、100質量%等)等であってもよい。
【0041】
ポリマー(A)が酸基含有モノマー単位を有する場合、酸基含有モノマー単位の割合(ポリマー(A)を構成する構造単位に占める酸基含有モノマー単位の割合又はポリマー(A)の重合成分に占める酸基含有モノマーの割合)は、例えば、0.1質量%以上(例えば、1質量%以上)、好ましくは3質量%以上(例えば、5質量%以上)、さらに好ましくは8質量%以上(例えば、10質量%以上)、特に12質量%以上(例えば、15質量%以上、18質量%以上、20質量%以上等)であってもよい。
なお、酸基含有モノマー単位の割合の上限値は、例えば、90質量%、80質量%、75質量%、70質量%、65質量%、60質量%、55質量%、50質量%、45質量%等であってもよい。
【0042】
ポリマー(A)が酸基含有モノマー単位(A3)を有する場合、構造単位(A3)の割合は、構造単位(A1)1質量部に対して、例えば、0.1質量部以上(例えば、0.3質量部以上)、さらに好ましくは0.5質量部以上(例えば、0.8質量部以上)、特に1質量部以上(例えば、1.2質量部以上、1.5質量部以上、1.8質量部以上、2質量部以上、2.5質量部以上)であってもよい。
【0043】
ポリマー(A)が、構造単位(A2)と酸基含有モノマー単位(A3)とを有する場合、構造単位(A3)の割合は、構造単位(A2)1質量部に対して、例えば、0.05質量部以上(例えば、0.08質量部以上)、さらに好ましくは0.1質量部以上(例えば、0.12質量部以上)、特に0.15質量部以上(例えば、0.18質量部以上、0.2質量部以上、0.25質量部以上)であってもよい。
【0044】
ポリマー(A)が、構造単位(A2)と酸基含有モノマー単位(A3)とを有する場合、構造単位(A1)及び構造単位(A3)総量の割合は、構造単位(A2)1質量部に対して、例えば、1質量部以上(例えば、2質量部以上)、さらに好ましくは3質量部以上(例えば、3.5質量部以上)、特に4質量部以上(例えば、4.5質量部以上、5質量部以上、5.5質量部以上、6質量部以上、6.5質量部以上、7質量部以上)であってもよい。
【0045】
このような割合で構造単位(A3)(さらには構造単位(A2))を含むことで、十分な凝集力(さらには十分な高分子量)を有するO/W型のエマルションとしやすい。
【0046】
(他の単位)
ポリマー(A)は、必要に応じて、他のモノマー由来の構造単位(他のモノマー単位)を有して(又は他のモノマーを重合成分として)もよい。
【0047】
他のモノマーとしては、例えば、官能基(酸基以外の官能基)を有するモノマー(官能基含有モノマー)、多官能性モノマー、スチレン系モノマー[又は芳香族ビニル系モノマー、例えば、スチレン、α-アルキルスチレン(例えば、α-メチルスチレン等のα-C1-4アルキルスチレン)、アルキルスチレン(例えば、ビニルトルエン等のC1-4アルキルスチレン)、ハロスチレン(例えば、クロロスチレン等)、ハロアルキルスチレン(例えば、クロロメチルスチルレン)等]、ビニルエステル系モノマー[例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステル(例えば、C1-10脂肪酸ビニルエステル、C2-6脂肪酸ビニルエステル等)等]、ビニルエーテル系モノマー(例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル)、オレフィン系モノマー[例えば、アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-オクテン等のC2-10アルケン)等]、ハロゲン含有モノマー[例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロC2-10アルケン;クロロエチルビニルエーテル等のハロアルキルビニルエーテル(ハロC1-10アルキルビニルエーテル等)等]、不飽和ニトリル(例えば、(メタ)アクリロニトリル等)等が挙げられる。
【0048】
官能基含有モノマーとしては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー{例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシC2-10アルキル(メタ)アクリレート等]、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート[例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリC2-4アルカンジオール(モノ)メタアクリレート等]、3以上のヒドロキシ基を有するポリオールのモノ(メタ)アクリレート[例えば、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等のトリ乃至ヘキサヒドロキシC3-10ポリオールのモノ(メタ)アクリレート]等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート等}、エポキシ基含有モノマー[例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2-グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート等のグリシジルオキシC2-4アルキル(メタ)アクリレート)等]、オキサゾリン基含有モノマー[例えば、アルケニルオキサゾリン(例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等のC2-6アルケニルオキサゾリン)、アルケニル-アルキルオキサゾリン(例えば、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロぺニル-5-エチル-2-オキサゾリン等のC2-6アルケニル-C1-10アルキルオキサゾリン)等]等が挙げられる。
【0049】
多官能性モノマーとしては、例えば、多官能性(メタ)アクリレート{例えば、ポリオール[又は多価アルコール、例えば、ジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のアルカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、3以上のヒドロキシ基を有するポリオール(例えば、グリセリン、トリメチルロールプロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール等)等]のポリ(メタ)アクリレート}、アルケニル(メタ)アクリレート(例えば、(メタ)アクリル酸アリル)、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等が挙げられる。
【0050】
ポリマー(A)が、他の単位を有する場合、ポリマー(A)における他の単位の割合[又はポリマー(A)の重合成分に占める他のモノマーの割合]は、例えば、0.01質量%以上(例えば、0.05質量%以上)、好ましくは0.1質量%以上(例えば、0.2質量%以上)、さらに好ましくは0.3質量%以上(例えば、0.5質量%以上、0.8質量%以上、1質量%以上、1.2質量%以上、1.5質量%以上、1.8質量%以上、2質量%以上)等であってもよい。
【0051】
ポリマー(A)が、他の単位を有する場合、ポリマー(A)における他の単位の割合[又はポリマー(A)の重合成分に占める他のモノマーの割合]は、例えば、50質量%以下(例えば、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下)、好ましくは25質量%以下(例えば、20質量%以下)、さらに好ましくは15質量%以下(例えば、12質量%以下、10質量%以下、5質量%以下)等であってもよい。
【0052】
特に、ポリマー(A)が、多官能性モノマー単位を有する場合、ポリマー(A)における多官能性モノマー単位の割合[又はポリマー(A)の重合成分に占める多官能性モノマーの割合]は、例えば、15質量%以下(例えば、12質量%以下)、好ましくは10質量%以下(例えば、8質量%以下)、さらに好ましくは5質量%以下(例えば、3質量%以下)、特に2質量%以下(例えば、1.5質量%以下)等であってもよい。
【0053】
多官能性モノマーは、ポリマー(A)を架橋成分となりうるが、作業性等の観点から、多官能性モノマーを使用する場合でも、架橋の程度は高すぎず、上記の割合程度であるのが好ましい。
【0054】
なお、ポリマー(A)(エマルション粒子)は、単層(単一層、一層、単層構造)のポリマー又は多層(多層構造)のポリマー(例えば、コアシェル型ポリマー)のいずれであってもよく、容易に生産できる等の観点からは、単層のポリマーであってもよい。
【0055】
(物性等)
ポリマー(A)(エマルション粒子)の重量平均分子量は、凝集力等の観点から、例えば、100万以上、好ましくは300万以上、さらに好ましくは500万以上であってもよい。なお、ポリマー(A)の重量平均分子量の上限値は、凝集力等の観点から、例えば、5000万、1億、3億、5億、10億等であってもよい。
【0056】
このようなポリマー(A)は、十分な凝集力等を保持しやすい。
【0057】
なお、重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーを用いた測定(例えば、ポリスチレン換算)や、静的光散乱法による分子量測定器(例えば、大塚電子製DLS-8000)による測定等により、決定していてもよい。
【0058】
ポリマー(A)のガラス転移温度は、例えば、80℃以下、好ましくは75℃以下(例えば、65℃以下)、さらに好ましくは50℃以下等であってもよく、-40℃以上、好ましくは-30℃以上(例えば、-20℃以上)、さらに好ましくは-10℃以上等であってもよい。
【0059】
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(例えば、JIS-K7121に準拠した測定)、示差熱量分析(DTA)、熱機械分析(TMA)等により決定してもよい。
あるいは、ガラス転移温度は、ポリマーを構成するモノマー成分に使用されているモノマーの単独重合体のガラス転移温度を用いて、
式(I): 1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100 (I)
〔式中、Wmは重合体を構成するモノマー成分における単量体mの含有率(質量%)、Tgmはモノマーmの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて決定してもよい。
ガラス転移温度の一例を挙げると、例えば、メチルメタクリレートの単独重合体では105℃、2-エチルヘキシルアクリレートの単独重合体では-70℃、n-ブチルアクリレートの単独重合体では-56℃、シクロヘキシルメタクリレートの単独重合体では83℃、tert-ブチルメタクリレートの単独重合体では107℃、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの単独重合体では55℃、アクリル酸の単独重合体では95℃、メタクリル酸の単独重合体では130℃、スチレンの単独重合体では100℃等である。
なお、特殊単量体、多官能単量体などのようにガラス転移温度が不明の単量体については、単量体成分における当該ガラス転移温度が不明の単量体の合計量が質量分率で10質量%以下である場合、ガラス転移温度が判明している単量体のみを用いてガラス転移温度を求めてもよい。一方、単量体成分におけるガラス転移温度が不明の単量体の合計量が質量分率で10質量%を超える場合には、他の方法(示差走査熱量測定、示差熱量分析、熱機械分析等の前記方法)により測定してもよい。
【0060】
[エマルション及びその製造方法]
本発明のエマルションは、ポリマー(A)を含有するO/W型(水中油型)のエマルションである。
【0061】
このようなエマルションは、例えば、ポリマー(A)の重合成分を、水中(水性溶媒中)、乳化剤の存在下で重合(乳化重合)すること等により得られ、そのため、乳化剤がポリマー(A)を被覆する構造を有する(ポリマー(A)(粒子)とこの表面(表層)に存在する乳化剤とで構成される)場合が多い。
【0062】
換言すれば、本発明のエマルションは、通常、ポリマー(A)がその表面に存在する乳化剤とともに粒子状(エマルション粒子、エマルションを構成する粒子)で水中(水性溶媒中)に分散(溶解)したエマルション(O/W型エマルション)であってもよい。
【0063】
なお、乳化剤は、通常、ポリマー(A)の表面を被覆しているが、ポリマー(A)(粒子)の内部にまで侵入していてもよい。
【0064】
ポリマー(A)は、O/W型エマルションに含まれるポリマーでありながら、比較的親水性の程度が大きいポリマーである場合がある。そのため、このような親水性の程度が大きいポリマーを含む、安定したO/W型エマルションとするためには、乳化剤を比較的多く使用する場合があり、このような場合ではポリマー(A)の内部にまで乳化剤が侵入する場合がある。
【0065】
乳化剤としては、O/W型エマルションを形成できれば特に限定されず、例えば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤などが挙げられる。
【0066】
これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0067】
アニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(例えば、第一工業製薬製のハイテノールシリーズ等);ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸-ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩などが挙げられる。
【0068】
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合体などが挙げられる。
【0069】
カチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0070】
両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤などが挙げられる。
【0071】
乳化剤は、高分子乳化剤(高分子型乳化剤)であってもよい。高分子乳化剤としては、例えば、アニオン性乳化剤(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリ(メタ)アクリル酸塩)、ノニオン性乳化剤(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシエチルアクリレート等のポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート)、これらの重合体を構成する単量体のうちの1種類以上の単量体を共重合成分とする重合体等が挙げられる。
【0072】
乳化剤は、反応性乳化剤(反応性基を有する乳化剤)であってもよい。
【0073】
反応性乳化剤としては、例えば、プロペニル-アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS-10、アクアロンBC-10など〕、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンKH-10など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSE-10など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10、SR-30など〕、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩〔例えば、日本乳化剤(株)製、商品名:アントックスMS-60など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER-20など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンRN-20など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープNE-10など〕などが挙げられる。
【0074】
乳化剤のHLBは、ポリマー(A)の組成等に応じてO/W型エマルションが得られる範囲で選択でき、例えば、7~17、好ましくは8~16程度であってもよい。
【0075】
前記のように、ポリマー(A)は比較的親水性の程度が高い場合が多く、このようなポリマー(A)をO/Wエマルションに含有させる(安定して分散させる)等の観点からは、比較的高いHLB値を有する乳化剤を少なくとも使用してもよい。
このような乳化剤の具体的な使用形態としては、例えば、比較的高いHLB値を有する乳化剤(例えば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤)を単独で使用する形態、比較的高いHLB値を有する乳化剤とアニオン性乳化剤とを併用する形態等が挙げられる。
【0076】
乳化剤の割合(使用割合)は、例えば、ポリマー(A)(又はその重合成分)100質量部に対して、例えば、1質量部以上(例えば、1~5質量部、1.5質量部以上)、好ましくは2質量部以上(例えば、2.5質量部以上)、さらに好ましくは3質量部以上程度であってもよい。
【0077】
エマルション粒子(エマルションを構成する粒子)の平均粒子径は、例えば、3000nm以下、好ましくは1000nm以下、さらに好ましくは500nm以下程度であってもよく、30nm以上(例えば、50nm以上)程度であってもよい。
このような比較的小さい粒子径のエマルション粒子は、浸透性、凝集力の他、目詰まりの発生を抑制ないし防止しやすい等、使用性の点でも好適である。
【0078】
なお、エマルション粒子の平均粒子径は、動的光散乱法による多検体ナノ粒子径測定装置(大塚電子製nanoSAQLA)を用いてJISZ8828-2019に準拠して測定してもよい。
【0079】
エマルション粒子(ポリマー(A))が、酸基(少なくとも中和されていない形態の酸基)を有する場合、酸価は、例えば、5mgKOH/g以上(例えば、10mgKOH/g以上)、好ましくは20mgKOH/g以上(例えば、25mgKOH/g以上)、さらに好ましくは30mgKOH/g以上(例えば、40mg KOH/g以上)、特に50mgKOH/g以上(例えば、80mgKOH/g以上、100mg KOH/g以上)等であってもよく、500mgKOH/g以下(例えば、400mgKOH/g以下、300mgKOH/g以下)等であってもよい。
【0080】
エマルション(A)の酸価は、例えば、自動滴定装置(商品名:COM-555、平沼産業社製)を用いてJISK0070:1992に従い樹脂固形分1g当たりの酸価(mgKOH/g)を測定してもよい。
【0081】
エマルションを構成する溶媒は、通常、水であるが、水に加えて他の溶媒を含む水混合液[例えば、水を含む溶媒[例えば、水とアルコール(例えば、メタノール、エタノール等のC1-4アルコール)の混合溶媒]等の水性溶媒]であってもよい。
【0082】
このような水混合液において、他の溶媒の割合は、溶媒全体に対して、例えば、50質量%以下(例えば、30質量%以下)、好ましくは20質量%以下(例えば、15質量%以下)、さらに好ましくは10質量%以下(例えば、5質量%以下)であってもよい。
【0083】
エマルションにおいて、固形分(不揮発分)の割合は、用途、取扱性等に応じて適宜選択でき、例えば、0.1質量%以上(例えば、1質量%以上)、好ましくは2質量%以上(例えば、3質量%以上)、さらに好ましくは5質量%以上(例えば、8質量%以上、10質量%以上、15質量%以上)等であってよく、60質量%以下、好ましくは50質量%以下等であってもよい。
【0084】
エマルションを構成する溶媒に溶解する無機塩の濃度は、例えば、溶媒全体(溶媒と無機塩の総量)に対して10質量%以下、好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下が好ましい。無機塩の濃度の下限値は0質量%であってよく、0.5質量%、1質量%であってもよい。
【0085】
無機塩としては、有機鎖を有さない無機塩を意図し、乳化剤は含まれない。無機塩の具体例としては、塩化物イオンや多価アニオンを含有する塩が挙げられる。塩化物イオンを含有する塩として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム塩等が挙げられる。多価アニオンを含有する塩として、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム塩等が挙げられる。
【0086】
なお、エマルションは、希釈して使用してもよい。
【0087】
エマルションの粘度は、固形分濃度によるが、比較的高濃度のエマルションにおいても比較的粘度が低い場合が多い。
【0088】
例えば、エマルションの粘度は、固形分濃度20質量%において、例えば、1000mPa・s以下(例えば、800mPa・s以下、500mPa・s以下、300mPa・s以下、200mPa・s以下)であってもよく、100mPa・s以下(例えば、80mPa・s以下、50mPa・s以下、30mPa・s以下、20mPa・以下)、10mPa・s以下程度とすることもできる。
【0089】
エマルションの粘度は、固形分濃度1質量%において、例えば、1000mPa・s以下(例えば、800mPa・s以下、500mPa・s以下、300mPa・s以下、200mPa・s以下)程度の範囲から選択でき、通常、100mPa・s以下(例えば、80mPa・s以下、50mPa・s以下、30mPa・s以下、20mPa・以下)、代表的には、10mPa・s以下であってもよい。
【0090】
エマルションの粘度は、固形分濃度0.1質量%において、例えば、100mPa・s以下(例えば、80mPa・s以下、50mPa・s以下、30mPa・s以下、20mPa・以下)程度の範囲から選択でき、代表的には、10mPa・s以下であってもよい。
【0091】
上記のように、エマルションの粘度は、通常、幅広い濃度において(特に高濃度であっても)比較的低粘度であるが、固形分濃度の上昇(変動)に伴う粘度上昇(粘度の変動)の程度も比較的小さいものである。
【0092】
例えば、固形分濃度20質量%におけるエマルションの粘度をV20(mPa・s)、固形分濃度1質量%におけるエマルションの粘度をV1(mPa・s)とするとき、V20-V1の値は、例えば、1000mPa・s以下(例えば、800mPa・s以下、500mPa・s以下、300mPa・s以下、200mPa・s以下)であってもよく、100mPa・s以下(例えば、80mPa・s以下、50mPa・s以下、30mPa・s以下、20mPa・以下)、10mPa・s以下程度とすることもできる。
【0093】
固形分濃度20質量%におけるエマルションの粘度をV20(mPa・s)、固形分濃度0.1質量%におけるエマルションの粘度をV0.1(mPa・s)とするとき、V20-V0.1の値は、例えば、1000mPa・s以下(例えば、800mPa・s以下、500mPa・s以下、300mPa・s以下、200mPa・s以下)であってもよく、100mPa・s以下(例えば、80mPa・s以下、50mPa・s以下、30mPa・s以下、20mPa・以下)、10mPa・s以下程度とすることもできる。
【0094】
固形分濃度1質量%におけるエマルションの粘度をV1(mPa・s)、固形分濃度0.1質量%におけるエマルションの粘度をV0.1(mPa・s)とするとき、V1-V0.1の値は、例えば、100mPa・s以下(例えば、80mPa・s以下、50mPa・s以下、30mPa・s以下、20mPa・s以下)であってもよく、10mPa・s以下(例えば、8mPa・s以下、5mPa・s以下、3mPa・s以下、2mPa・以下、1mPa・s以下)程度とすることもできる。
【0095】
なお、エマルションの粘度は、例えば、BM粘度計(例えば、東機産業製、品番:TVB-10M)を用い、回転速度30rpmでの25℃における粘度を測定してもよい。
【0096】
エマルションは、凝集力等の観点から、酸性であってもよい。このような酸性のエマルションにおいて、pHは、例えば、6以下程度の範囲から選択でき、5.5以下、好ましくは5以下(例えば、1~4.5)、さらに好ましくは4以下(例えば、1.5~4)等であってもよい。
エマルションのpHは、例えば、25℃でpHメーター(株式会社 堀場製作所製 LAQUA)を用いてJISZ8802に準拠し測定できる。
【0097】
前述のように、本発明のエマルション(O/W型エマルション)は、例えば、水(水性溶媒)中で、ポリマー(A)の重合成分を乳化重合することにより製造できる。
【0098】
重合成分を乳化重合させる方法としては、特に限定されないが、例えば、乳化剤を含む溶媒に、重合成分を滴下等して重合する方法、予め乳化剤によって乳化させておいた重合成分を溶媒に滴下等して重合する方法等が挙げられる。
【0099】
なお、溶媒の量は、得られるエマルションに含まれる不揮発分量等を考慮して適宜設定すればよい。
【0100】
乳化重合において、重合開始剤は特に限定されず慣用の成分を使用でき、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)等のアゾ化合物;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウム等の過酸化物等が挙げられる。
【0101】
重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0102】
また、乳化重合は、連鎖移動剤等の存在下で行ってもよい。その他、乳化重合条件(温度、時間等)は、適宜選択できる。
【0103】
なお、乳化重合により得られたエマルション粒子は、水(水性溶媒)中に分散した状態で得られる。このような溶媒は、その一部を除去するか又は新たに添加(希釈)して、エマルションの不揮発分量(固形分量)を調整することもできる。
本発明のエマルションは、水(水性溶媒)を新たに添加した場合であっても、比較的粘度(特に、低粘度)を維持しやすい。
【0104】
[用途等]
本発明のエマルションは、種々の用途に使用できる。例えば、本発明のエマルションは、凝集剤(凝固剤)、造粒剤、増粘剤(塗料用の増粘剤等)等に利用できる。
【0105】
特に、本発明のエマルションは、その凝集力や、取扱性ないし使用性(例えば、高濃度でも比較的低粘度である点等)を考慮し、凝集剤や造粒剤用途(例えば、粉塵防止剤又は粉塵防止用途)等に好適に使用してもよい。
【0106】
このような用途において、配合(適用)対象としては、特に限定されないが、例えば、土、砂、土砂、鉱物(例えば、鉄鉱石、スラグ、石灰石等)、炭素質物質(例えば、石炭、コークス等)、塗料等が挙げられる。
【0107】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明に含まれる。
【実施例0108】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではない。
なお、「部」「%」は断りのない限り、それぞれ「質量(重量)部」「質量%」を意味する。
また、各種分析・評価等は次のようにして行った。
【0109】
<粒子径>
エマルション粒子の平均粒子径は、動的光散乱法による多検体ナノ粒子径測定装置(大塚電子製nanoSAQLA)を用いてJISZ8828:2019に準拠して測定した。
【0110】
<ガラス転移温度(Tg)>
前述のフォックス(Fox)の式に基づいて求めた。
ただし、参考例2で得られたエマルション粒子については、DSC(示差走査熱量測定)により測定した。
【0111】
<分子量>
静的光散乱法による分子量測定器(大塚電子製DLS-8000)と高感度示差屈折計(大塚電子製DRM-3000)を用いて、重量平均分子量Mwの計算に必要なパラメーターの示差屈折率dn/dcを求め、以下式から重量平均分子量Mwを求めた。
【0112】
Is/I0=[4π2n2Mw×c(dn/dc)2]×(1+cos2θ)÷(λ0
4r2NA)
【0113】
入射光波長:λ0、入射光強度:I0)
散乱光強度:Is
溶媒の屈折率:n
重量平均分子量:Mw
溶質の濃度:c
屈折率差の濃度増分:dn/dc
散乱物質から検出機器までの距離:r
アボガドロ数:NA
【0114】
サンプル調製条件、測定条件を以下に示す。
サンプル調製条件
各サンプルを110℃、1時間で乾燥させ固体試料を得る。次に1mol/L NaCl水溶液を用いて、以下4つの濃度になるように希釈した。
濃度1 0.100mg/mL
濃度2 0.200mg/mL
濃度3 0.300mg/mL
濃度4 0.400mg/mL
測定条件
希釈後の各濃度サンプルは十分に攪拌した後にφ21円筒セルにサンプルを入れて、
DLS-8000にて、角度40°~120°で10°間隔で測定を行った。
測定温度は25℃で、積算回数は100回で行った。
溶媒条件は、25℃における水の値(屈折率1.3328)を使用した。
【0115】
<酸価>
自動滴定装置(商品名:COM-555、平沼産業社製)を用いてJISK0070:1992に従い樹脂固形分1g当たりの酸価(mgKOH/g)を測定した。
【0116】
<pH>
pHは、25℃でpHメーター(株式会社 堀場製作所製 LAQUA)を用いてJISZ8802に準拠し測定した。
【0117】
<固形分(不揮発分)>
エマルションにおける固形分量は、エマルション1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔樹脂エマルションにおける不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔樹脂エマルション1g〕)×100
に基づいて求めた。
【0118】
<凝集力評価>
酸化鉄(III)(富士フィルム和光純薬(株)から購入)の粉末75部に水を25部添加して含水率25%の酸化鉄(III)のスラリーを調製し、そこから30部を取り出した。各試料(エマルション又は粉体)を固形分として0.02部となるように添加して、よく掻き混ぜた。
凝集力
得られた混合物を以下基準で評価した。
(評価基準)
◎:スラリーが乾燥しており、細かい粉末となった。
○:スラリーが凝集して団子状の塊となった。
△:スラリーに少し水浮きが見られるが増粘、凝集した。
×:スラリーが凝集せず低粘度溶液のまま。
【0119】
<水溶液粘度>
JIS-7117-1:1999に準拠して、以下条件で測定を行った。
各試料(エマルション、粉体)を脱イオン水で希釈又は溶解して、20%水溶液と1%水溶液、0.1%水溶液を調整し、密閉容器内に入れ、室温で1日間養生させた後、BM粘度計(東機産業製、品番:TVB-10M)を用い、回転速度30rpmでの25℃における粘度を測定し、以下の評価基準に基づいて粘度を評価した。
【0120】
(評価基準)
◎:粘度が10mPa・s以下である。
〇:粘度が10mPa・sを超え、100mPa・s以下である。
△:粘度が100mPa・sを超え1,000mPa・s以下である
×:粘度が1,000mPa・sを超える。もしくは溶解しない。
【0121】
(実施例1)
滴下ロート、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水660部を仕込んだ。
【0122】
滴下ロートに脱イオン水570部、乳化剤〔(株)第一工業製薬製、商品名:ハイテノールLA-10〕の20%水溶液30部、エチルアクリレート371部、メタクリル酸256部およびアクリルアミド13部からなるプレエマルションを調製し、そのうちの62部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら67℃まで昇温し、過硫酸アンモニウムの0.5%水溶液8部をフラスコ内に添加することにより、重合を開始した。
【0123】
次に、滴下用プレエマルションの残部を120分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコの内容物を60℃で100分間維持し、冷却して重合反応を終了した。
【0124】
得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュ(JISメッシュ、以下同じ)の金網で濾過することにより、不揮発分量が30質量%であるエマルションを得た。当該エマルションに含まれるエマルション粒子は、平均粒子径が150nmでエマルション粒子全体のガラス転移温度は26℃であった。その他、エマルションについて、その性質等を含めて記載したものを表1に示す。
【0125】
(実施例2~4)
実施例1で使用した単量体成分(重合成分)を表1に示す単量体成分に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてエマルションを得た。当該エマルションに用いられた単量体成分の組成、当該エマルションの性質等を表1に示す。
【0126】
(参考例1)
攪拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に炭化水素系溶剤[(株)エクソンモービル製、アイソパーM]140部、ソルビタンモノステアレート9部を仕込んだ。
【0127】
次に、脱イオン水200部、アクリル酸12部およびアクリルアミド170部からなる単量体溶液を調製し、単量体溶液に水酸化ナトリウム11.5部加えてpH8.5に調整した。単量体溶液を急速にかき混ぜながら有機相に添加した。ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら60℃まで昇温し、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.35部をフラスコ内に添加することにより、重合を開始した。
【0128】
次に、フラスコの内容物を60℃で150分間維持し、冷却して重合反応を終了した。
【0129】
得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、不揮発分量が40質量%であるエマルションを得た。当該樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、平均粒子径が3μmでエマルション粒子全体のガラス転移温度は140℃であった。その他、エマルションについて、その性質等を含めて記載したものを表1に示す。
【0130】
(参考例2)
攪拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水150部、硫酸アンモニウム140部を仕込んだ。
【0131】
次に2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸(以下AMPSと略す)中和物の50%水溶液22部、アクリル酸8.4部、水酸化ナトリウム2.7部およびアクリルアミド106部を調製した。さらに100モル%中和した重合平均分子量40万のAMPSの15%ホモポリマー水溶液を58部添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら30℃に調温し、過硫酸アンモニウムの0.5%水溶液0.5部と亜硫酸水素アンモニウムの0.5%水溶液0.5部をフラスコ内に添加することにより、重合を開始した。
【0132】
重合開始7時間後に過硫酸アンモニウムの0.5%水溶液0.5部と亜硫酸水素アンモニウムの0.5%水溶液0.5部を追加して、さらに8時間30℃で維持し重合反応を終了した。
【0133】
得られた反応液を300メッシュの金網で濾過することにより、不揮発分量が45質量%であるエマルションを得た。当該樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、平均粒子径が5μmでエマルション粒子全体のガラス転移温度は140℃であった。その他、エマルションについて、その性質等を含めて記載したものを表1に示す。
【0134】
(参考例3)
粉体のポリアクリルアミド(アクリルアミド100mol%の単独重合体、Mw500~600万、Polyscience,Incより入手)を用いた。この粉体ポリマーについて、その性質等を含めて記載したものを表1に示す。
【0135】
(参考例4)
粉体のアクリル酸ソーダ/アクリルアミド共重合体[アクリル酸ソーダ/アクリルアミド=70/30(mol%)=66/34(wt%)、Mw1,800万、Polyscience,Incより入手)を用いた。この粉体ポリマーについて、その性質等を含めて記載したものを表1に示す。
【0136】
結果を表1に示す。なお、表1において、EAとはアクリル酸エチル、MAAとはメタクリル酸、AAとはアクリル酸、Aamとはアクリルアミドを示す。
【0137】