(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045845
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】ワーク位置決めクランプ
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20220314BHJP
B23K 37/04 20060101ALI20220314BHJP
B25B 5/12 20060101ALI20220314BHJP
F16B 2/18 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
B23Q3/06 302L
B23K37/04 M
B25B5/12
B23Q3/06 302H
F16B2/18 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151681
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】520349724
【氏名又は名称】株式会社STN
(74)【代理人】
【識別番号】100093816
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】伊多 重人
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 正夫
(72)【発明者】
【氏名】足立 直樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 一輝
【テーマコード(参考)】
3C016
3C020
3J022
【Fターム(参考)】
3C016CA09
3C016CB02
3C016CC02
3C020CC08
3C020EE03
3C020FF01
3J022DA11
3J022EA41
3J022EB03
3J022EC02
3J022ED02
3J022FB07
3J022FB12
3J022FB22
3J022GA06
3J022GA18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】工作機械などにおける加工対象物(ワーク)を押さえる際に、ワーク付近のデッドスペース軽減する、例えば、トーチによるロボット溶接の際、トーチ動線、トーチの溶接部へのアプローチをできるだけ邪魔しないようワークを位置決めするワーク位置決めクランプを提供する。
【解決手段】取付面に立設する縦材に回動可能に設けたハンドル4及び前記ハンドルの回動に伴ってワーク方向に回動又は直動し、トグル機構によってロックされるアーム5,6を備えるトグルクランプ1において、前記アームの先端に上下回動するとともに位置固定可能な、ワークに接触し押さえつける当接部8bを備えることを特徴とするワーク位置決めクランプの構成とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付面に立設する縦材に回動可能に設けたハンドル及び前記ハンドルの回動に伴ってワーク方向に回動又は直動し、トグル機構によってロックされるアームを備えるトグルクランプにおいて、
前記アームの先端に上下回動するとともに位置固定可能な、ワークに接触し押さえつける当接部を備えることを特徴とするワーク位置決めクランプ。
【請求項2】
前記アームに、前記当接部の上下方向の回転を阻害するストッパーを備え、
前記ストッパーの位置により前記当接部の回動停止位置を調節可能とし、
前記当接部の前記位置固定を実現するとともに、ワークへの前記当接部の押圧力を調節可能としたことを特徴とする請求項1に記載のワーク位置決めクランプ。
【請求項3】
前記当接部がテーパー状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワーク位置決めクランプ。
【請求項4】
前記ハンドルが、バネの収縮で前記トグル機構のロックの開放を補助するものであって、
前記バネが、前記アームと前記取付面に渡されたことを特徴とする請求項1~請求項3の何れか1項に記載のワーク位置決めクランプ。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のワーク位置決めクランプが、ロボットトーチの溶接の際の、ワーク押え用であることを特徴とするワーク位置決めクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械などにおける加工対象物(ワーク)を押さえる際に、ワーク付近のデッドスペース軽減する、例えば、トーチによるロボット溶接の際、トーチ動線、トーチの溶接部へのアプローチをできるだけ邪魔しないようワークを位置決めするワーク位置決めクランプに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来のワーク位置決めクランプは、
図1に示すように、トグルクランプ1(非特許文献1)が知られている。
【0003】
トグルクランプ1は、取付部材2と、左連結材3と、右連結材3cと、ハンドル4と、左アーム5及び右アーム6と、上前後位置決め7及び下前後位置決め7aと、押え部材8とからなり、ワークへの処理の際、例えば溶接の際に、ワークの位置決め専用の冶具に押し付けて、ワークを位置決めする補助具である。
【0004】
取付部材2は、ワークを処理する作業台、押さえ冶具にトグルクランプ1を固定する部分で、作業台にネジ留めするネジ(図示省略)を通す穴2bを穿設した取付面2aと、取付面2aから立設した縦材2cとからなる。ここでは、穴2bは四隅に穿設したが、縦材2cの左右に各1つあればよい。
【0005】
左連結材3は、一端を縦材2cの端部に回動可能に第一ビス3aで連結し、他端を把持するハンドル4に第二ビス3bで回動可能に連結する。縦材2c及びハンドル4を挟み、左連結材3の対抗する位置に右連結材3cを配置し、第一ビス3a、第二ビス3bで回動可能に連結する。ハンドルは、通常、カバー4aを備える。カバー4aを含めハンドルということもある。
【0006】
左アーム5及び右アーム6は、L字状の板で、縦材2c及びハンドル4を挟み配置され、左アーム5及び右アーム6の先端が第三ビス5aで縦材2cに回動可能に連結し、第三ビス5aより
図1上方において第二ビス3bにより反把持側の先端側で先端がハンドル4に第四ビス5bで回動可能に連結する。左右アームの他にも、一枚の板、一本の棒のアームもある。ここでは、アームの形状、数に拘泥されず、ハンドル4の回動に伴って、回動或いは直動する構造を、総称して単にアームという。
【0007】
上下前後位置決め7、7aは、ワークに当接する押え部材8のハンドル4方向の前後の位置決めをするもので、コの字型で穴が穿設され、左右アーム5、6の上下に位置し、前記前後方向に位置移動可能である。後述の押え部材8の機能により左右アーム5、6において位置固定される。
【0008】
押え部材8は、ここではネジと二つのナットで、上下前後位置決め7、7aを挿通するネジ山を穿設した軸8aと、軸8aの下端部に位置しワークに触れ、ワークを直接的に押さえる部分である当接部8b(頭)と、軸8aを螺合して、軸8aの回転により当接部8bの位置(高さ(一点鎖線両矢印C)、トグル機構のロック時のワークへの押圧力)を調整するとともに、上下前後位置決め7、7aの左右アーム5、6における位置を固定する、上下前後位置決め7、7aの上下に位置する上ナット8c、下ナット8dとからなる。
【0009】
回動(一点鎖線両矢印A)するハンドル4、左右連結材3、3c及び左右アーム5、6の回動(一点鎖線両矢印B)で、トグル機構を構成する。トグル機構とは、作動過程で、ある死点を過ぎると反力の向きが逆になり、セルフロックする機構である(非特許文献1)。
【0010】
図1においては、ハンドル横型下方押さえ形式で、ハンドル4が横方向に位置し押え部材8がワーク(図示省略)を押さえ、ロックする。他方、ハンドル4を手で把持し、
図1垂直方向に回転させることで、押え部材8のロックが解除される。また、ハンドルを横方向に位置させロック開放、垂直方向でロックするハンドル縦型下方押さえ形式もある。さらに、アームの横押し型などもある(非特許文献1)。ここでは、それらトグル機構を備える押さえ装置を総称してトグルクランプという。
【0011】
従来のトグルクランプは、ワークを押さえることについては問題ないが、例えば、左右アーム5、6、当接部8bの付近の溶接ロボットのトーチによる自動溶接(CO2アーク溶接など)時にトーチの移動動線の邪魔、またトーチの溶接部のアプローチを阻害することがある。そうすると、目的とした溶接部の溶接を1溶接工程で溶接できないこととなる。そのため、溶接工程の増加、押さえクランプ、冶具の増設を必要として、非効率で高コストになっていた。
【0012】
他方、押さえるスペースが少ない小物ワークにおいては、従来のネジ頭の当接部8bでは、適性に押さえることができず、ワーク処理精度、例えば溶接精度が低く、品質にバラツキがあり、歩留まりの悪化、補修などの付加作業を必要として、処理工程のコスト高が問題であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0271.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は、工作機械などにおける加工対象物(ワーク)を押さえる際に、ワーク付近のデッドスペース軽減する、例えば、トーチによるロボット溶接の際、トーチ動線、トーチの溶接部へのアプローチをできるだけ邪魔しないようワークを位置決めするワーク位置決めクランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために、
(1)
取付面に立設する縦材に回動可能に設けたハンドル及び前記ハンドルの回動に伴ってワーク方向に回動又は直動し、トグル機構によってロックされるアームを備えるトグルクランプにおいて、
前記アームの先端に上下回動するとともに位置固定可能な、ワークに接触し押さえつける当接部を備えることを特徴とするワーク位置決めクランプ。
(2)
前記アームに、前記当接部の上下方向の回転を阻害するストッパーを備え、
前記ストッパーの位置により前記当接部の回動停止位置を調節可能とし、
前記当接部の前記位置固定を実現するとともに、ワークへの前記当接部の押圧力を調節可能としたことを特徴とする(1)に記載のワーク位置決めクランプ。
(3)
前記当接部がテーパー状であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のワーク位置決めクランプ。
(4)
前記ハンドルが、バネの収縮で前記トグル機構のロックの開放を補助するものであって、
前記バネが、前記アームと取付面に渡されたことを特徴とする(1)~(3)の何れか1つに記載のワーク位置決めクランプ。
(5)
(1)~(4)のいずれか1つに記載のワーク位置決めクランプが、ロボットトーチの溶接の際の、ワーク押え用であることを特徴とするワーク位置決めクランプ。
の構成とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以上の構成であるから、工作機械などにおける加工対象物(ワーク)を押さえる際に、ワーク付近のデッドスペース軽減することができる。例えば、トーチによるロボット溶接の際、トーチ動線、トーチの溶接部へのアプローチへの邪魔を低減することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】従来のトグルクランプの部分透視斜視図である。一部透過線(点線)を追記している。
【
図2】本発明である第一実施形態のワーク位置決めクランプのロック時の略側面写真である。一部透過線(点線)を追記している。
【
図3】本発明である第一実施形態のワーク位置決めクランプのロック開放時の側面写真である。
【
図4】本発明である第一実施形態のワーク位置決めクランプの溶接補助具としての使用模式図である。
【
図5】本発明である第二実施形態のワーク位置決めクランプの正面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0019】
図2に示すように、本発明であるワーク位置決めクランプ11は、従来のトグルクランプ1において、左右アームの先端に上下回動するとともに、位置固定可能な、ワークに接触し押さえつける当接部14aを備える。なお、従来のトグルクランプ1と同一の名称、符号は、同一の構造、機能であるので、従来のトグルクランプ1を参照できるので、その説明をここでは省略する。ワーク位置決めクランプ11の右側面視は
図2の左側面視と同様である。
【0020】
ワーク位置決めクランプ11は、具体的には、トグルクランプ1において、左アーム5の先端に穴を穿設した左アーム12、右アーム6の先端に穴を穿設した右アーム13に変更のうえ、それら穴に挿通する上ネジ13cと、上ネジ13cに螺合する上ナット13dと、上ネジ13cに回動可能(一点鎖線両矢印D)かつ位置固定可能に取り付けた棒状の当接部14aとからなる押え部材14を備える。上ネジ13cを強く螺合させれば、それで当接部14aの位置固定も可能である。なお、より確実、強固の位置固定をするためには、後述の押圧力調整機構15が例示できる。
【0021】
棒状の当接部14aを採用することで、当接部14aが接触するワーク付近に、従来の左右アーム5、6及び押え部材8では形成されたデッドスペースを解消し、ワークへの加工の作業性、作業工程を効率化させることができる。
【0022】
当接部14aは、先端向け薄くなるテーパー14bである。形状としては、円柱、角柱など対象により好適な形状、太さ、長さを選択すればよい。テーパー14bとすることで、当接部14aが接触するワーク付近に加工機器の到達、移動を阻害するデッドスペースを一層低減させることができる。
【0023】
さらに、ワーク位置決めクランプ11には、トグルクランプ1において、当接部14aの位置固定をするストッパー15bを含む押圧力調整機構15を備える。ここでは、押圧力調整機構15は、左右アーム12、13の底面に固定した第一ナット15aと、第一ナット15aに螺合するネジであるストッパー15bと、ストッパー15bに螺合する第二ナット15cとからなり、第二ナット15cを第一ナット15aに接触するまで締め付けることで、ストッパー15bの位置を固定する。
【0024】
ストッパー15bを第一ナット15aへ螺合していくと、ストッパー15bの末端で当接部14aの末端側を
図2に上方に押し上げ(一点鎖線両矢印E)、当接部14aのワークに接触する先端部をワーク側に移動させ、ワークへの当接部14aによる押圧力を高めることができる。逆にストッパー15bの螺合を緩めれば、当接部14aの先端は
図2においてワーク側から離れ(一点鎖線両矢印D)、ワークへの当接部14aによる押圧力を低減させることでききる。
【0025】
当接部14aの位置固定ができれば、押圧力調整機構15、ストッパー15bによらなくてもよく、例えば、左右アーム12、13に複数穿設した穴にピンを挿通するなどしてストッパーとし、当接部14aの押圧力を調節してもよい。
【0026】
図3に、ワーク位置決めクランプ11のロック開放時の写真を掲載した。ハンドル4を一点鎖線矢印Fへ回動させると、それに連動して左右アーム12、13及び当接部14aは一点鎖線G方向に回動し、トグル機構のロックが開放され、当接部14aをワークの接触から離すことができる。
【0027】
図4に、本発明であるワーク位置決めクランプ11(押圧力調整機構15図示省略)を溶接補助具として使用したときの模式図を示す。合わせて、従来のトグルクランプ1の一部分も掲載した。トグルクランプ1、ワーク位置決めクランプ11の取付面2aの取り付け先は図示省略した。取付面2aは、通常、押さえ冶具9、作業台などから起立した台(図示省略)などにネジ(図示省略)で固定される。
【0028】
図4に示すように、例えば、ロボットトーチの溶接時には、ワーク10、10aは、溶接部10bを位置決めするめ、押さえ冶具9に固定される。押さえ冶具9は、ワーク10、10aに合わせ作成、設定され、押圧を受けとめる受け9aと、押圧手段の一種の螺合により締結する留具9bからなる。より精度を高め、作業性よくワーク10、10aを固定するため、従来のトグルクランプ1、さらに本発明のワーク位置決めクランプ11を用いて位置決めする。
【0029】
溶接部10b付近は、細かなところ、狭いところは、本発明のワーク位置決めクランプ11を用いる。
図4で明らかなように、溶接部10b近傍のワーク10aをトグルクランプ1で押さえた場合、ワーク位置決めクランプ11より溶接部10b周辺での空間占有率が高まる。その結果、トーチ(図示省略)が到達できない、トーチの動線を邪魔し、一度の溶接工程で溶接できないデットスペースが生じる。
【0030】
他方、本発明のワーク位置決めクランプ11であれば、ワーク10、10aの周辺に、従来のトグルクランプ1より広い作業スペースを確保することができる。
これにより、バネ24の収縮でトグル機構のロックの開放を補助することができ、且つ押え部材14が、重力あるいはロック状態を解除した際の反動により、ロック状態近傍に戻ることを防止することができる。それにより、溶接完了後にワークを押え治具9から取り外す際、ワークがワーク位置決めクランプ21に当たることなく、スムーズに取り外すことができ、作業の効率化、作業工程時間の短縮が可能となる。