(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045879
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014421
(22)【出願日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2020151236
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 武馬
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 大祐
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA35
5E316AA43
5E316CC08
5E316CC09
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5E316GG17
5E316GG28
5E316HH11
5E316HH13
5E316HH33
(57)【要約】
【課題】配線基板の品質向上。
【解決手段】実施形態の配線基板は、所定の導体パターンを含む第1導体層11と、第1導体層11を覆う絶縁層22と、絶縁層22の上に形成されている第2導体層と、第1導体層11と第2導体層とを接続する接続導体4と、第1導体層11における絶縁層22と向かい合う表面に少なくとも部分的に形成されていて第1導体層11と絶縁層22との密着性を向上させる被覆膜5と、を備えている。そして、第1導体層11は、接続導体4と接する導体パッド1aと、絶縁層22に覆われている配線パターン1bと、を含み、配線パターン1bにおける絶縁層22と向かい合う表面1b1は被覆膜5に覆われており、導体パッド1aにおける絶縁層22と向かい合う表面1a1は、表面1b1が有する面粗度よりも高い面粗度を有するように粗化されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の導体パターンを含む第1導体層と、
前記第1導体層を覆う絶縁層と、
前記絶縁層の上に形成されている第2導体層と、
前記絶縁層を貫通して前記第1導体層と前記第2導体層とを接続する接続導体と、
前記第1導体層における前記絶縁層と向かい合う表面に少なくとも部分的に形成されていて前記第1導体層と前記絶縁層との密着性を向上させる被覆膜と、
を備える配線基板であって、
前記第1導体層は、前記接続導体と接する導体パッドと、前記絶縁層に覆われている配線パターンと、を含み、
前記配線パターンにおける前記絶縁層と向かい合う表面は前記被覆膜に覆われており、
前記導体パッドにおける前記絶縁層と向かい合う表面は、前記配線パターンの前記表面が有する第2面粗度よりも高い第1面粗度を有するように粗化されている。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記導体パッドにおける前記絶縁層と向かい合う前記表面は前記被覆膜に覆われている。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、前記導体パッドにおける前記絶縁層と向かい合う前記表面の算術平均粗さ(Ra)が、前記配線パターンにおける前記絶縁層と向かい合う前記表面の算術平均粗さ(Ra)の2倍以上である。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、前記導体パッドにおける前記接続導体に覆われている表面は、前記第1面粗度よりも低く且つ前記第2面粗度よりも高い第3面粗度を有している。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、前記導体パッドを構成する金属と前記接続導体を構成する金属とが、前記導体パッドと前記接続導体との界面において有機材料を介さずに直接接している。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、前記導体パッドにおける前記絶縁層と向かい合う前記表面と前記絶縁層とが前記被覆膜を介さずに直接接している。
【請求項7】
請求項1記載の配線基板であって、
前記第1導体層は、さらに、前記導体パッド及び前記配線パターンが形成されていない領域に広がる平板状の導体パターンを含み、
前記平板状の導体パターンにおける前記絶縁層と向かい合う表面は、前記第1面粗度を有するように粗化されている。
【請求項8】
請求項7記載の配線基板であって、
前記平板状の導体パターンの前記表面は前記被覆膜に覆われている。
【請求項9】
請求項1記載の配線基板であって、
前記第1導体層は、さらに、前記導体パッド及び前記配線パターンが形成されていない領域に広がる平板状の導体パターンを有し、
前記平板状の導体パターンにおける前記絶縁層と向かい合う表面は前記第2面粗度を有しており、
前記平板状の導体パターンの前記表面は前記被覆膜に覆われている。
【請求項10】
導体パッド及び配線パターンを有する第1導体層を形成することと、
前記第1導体層の露出面を粗化することと、
前記第1導体層の露出面の一部又は全部に被覆膜を設けることと、
前記第1導体層及び前記被覆膜を覆う絶縁層を形成することと、
前記絶縁層の上に第2導体層を形成すると共に、前記絶縁層を貫通して前記導体パッドと前記第2導体層とを接続する接続導体を形成することと、
を含んでいる、配線基板の製造方法であって、
前記第1導体層の露出面を粗化することにおいて、前記配線パターンの露出面は粗化されずに前記導体パッドの露出面が粗化される。
【請求項11】
請求項10記載の配線基板の製造方法であって、
前記配線基板の製造方法は、さらに、前記導体パッドを覆っている前記被覆膜を前記絶縁層の形成の前に除去することを含んでいる。
【請求項12】
請求項10記載の配線基板の製造方法であって、前記被覆膜を設けることにおいて、前記被覆膜は、前記導体パッドの露出面には設けられずに前記配線パターンの露出面に設けられる。
【請求項13】
請求項10記載の配線基板の製造方法であって、前記第1導体層の前記露出面を粗化することは、前記配線パターンを覆うレジスト膜を設けることを含んでいる。
【請求項14】
請求項10記載の配線基板の製造方法であって、
前記配線基板の製造方法は、さらに、前記導体パッドの表面における前記接続導体に接続される部分の面粗度を低下させることを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プリント配線板に関し、低粗化又は無粗化の金属配線層の表面に化成皮膜が形成され、この化成皮膜を介して金属配線層上に絶縁樹脂層が形成されることが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の方法では、金属配線層の表面上に形成された化成皮膜が、後工程における各種の処理によって溶解することがある。そのため、特許文献1の方法で製造されたプリント配線板に化成皮膜の溶解液による意図せぬ不具合がもたらされ、プリント配線板の品質劣化を招くことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、所定の導体パターンを含む第1導体層と、前記第1導体層を覆う絶縁層と、前記絶縁層の上に形成されている第2導体層と、前記絶縁層を貫通して前記第1導体層と前記第2導体層とを接続する接続導体と、前記第1導体層における前記絶縁層と向かい合う表面に少なくとも部分的に形成されていて前記第1導体層と前記絶縁層との密着性を向上させる被覆膜と、を備えている。そして、前記第1導体層は、前記接続導体と接する導体パッドと、前記絶縁層に覆われている配線パターンと、を含み、前記配線パターンにおける前記絶縁層と向かい合う表面は前記被覆膜に覆われており、前記導体パッドにおける前記絶縁層と向かい合う表面は、前記配線パターンの前記表面が有する第2面粗度よりも高い第1面粗度を有するように粗化されている。
【0006】
本発明の配線基板の製造方法は、導体パッド及び配線パターンを有する第1導体層を形成することと、前記第1導体層の露出面を粗化することと、前記第1導体層の露出面の一部又は全部に被覆膜を設けることと、前記第1導体層及び前記被覆膜を覆う絶縁層を形成することと、前記絶縁層の上に第2導体層を形成すると共に、前記絶縁層を貫通して前記導体パッドと前記第2導体層とを接続する接続導体を形成することと、を含んでいる。そして、前記第1導体層の露出面を粗化することにおいて、前記配線パターンの露出面は粗化されずに前記導体パッドの露出面が粗化される。
【0007】
本発明の実施形態によれば、配線パターンに所望される特性及び配線パターンと絶縁層との密着性を確保し、しかも、導体層同士を接続する接続導体と接する導体パッドと絶縁層との剥離などによる配線基板の品質劣化を抑制し得ることがある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
【
図2】本発明の一実施形態における第1導体層の導体パターンの一例を示す平面図。
【
図5A】本発明の一実施形態の配線基板の他の例を示す断面図。
【
図5B】本発明の一実施形態の配線基板のさらに他の例を示す断面図。
【
図5C】本発明の一実施形態の配線基板のさらに他の例を示す断面図。
【
図5D】本発明の一実施形態の配線基板のさらに他の例を示す断面図。
【
図6A】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図6B】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図6C】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図6D】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図6E】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図6F】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図6G】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図6H】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【
図7A】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の他の例を示す断面図。
【
図7B】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の他の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。
図1は一実施形態の配線基板の一例である配線基板100を示す断面図であり、
図2は、配線基板100の第1導体層11の一部の導体パターンの一例を示す平面図である。
図1には
図2のI-I線に重なる切断線での断面図が示されている。なお、配線基板100は本実施形態の配線基板の一例に過ぎない。実施形態の配線基板の積層構造、並びに、導体層及び絶縁層それぞれの数は、
図1の配線基板100の積層構造、並びに配線基板100に含まれる導体層及び絶縁層それぞれの数に限定されない。
【0010】
図1に示されるように、配線基板100は、コア基板3と、コア基板3におけるその厚さ方向において対向する2つの主面(第1面3a及び第2面3b)それぞれの上に交互に積層されている絶縁層及び導体層を含んでいる。コア基板3は、絶縁層32と、絶縁層32の両面それぞれの上に形成されている導体層31とを含んでいる。
【0011】
なお、実施形態の説明では、配線基板100の厚さ方向において絶縁層32から遠い側は「上側」もしくは「上方」、又は単に「上」とも称され、絶縁層32に近い側は「下側」もしくは「下方」、又は単に「下」とも称される。さらに、各導体層及び各絶縁層において、絶縁層32と反対側を向く表面は「上面」とも称され、絶縁層32側を向く表面は「下面」とも称される。
【0012】
配線基板100は、コア基板3の第1面3aの上に、第1面3a側から順に積層されている、第1絶縁層21、第1導体層11、第2絶縁層22、及び第2導体層12を備えている。第1絶縁層21はコア基板3の第1面3aを覆っており、第2絶縁層22は、第1導体層11、及び、第1導体層11に覆われずに露出する第1絶縁層21を覆っている。配線基板100は、さらに、コア基板3の第2面3bの上に交互に積層されている2つの絶縁層23及び2つの導体層13を備えている。
【0013】
各絶縁層には、各絶縁層を貫通し、各絶縁層を介して隣接する導体層同士を接続する接続導体が形成されている。第1絶縁層21、第2絶縁層22、及び2つの絶縁層23は、それぞれ、接続導体4を含んでいる。コア基板3の絶縁層32は接続導体33を含んでいる。接続導体33は、コア基板3の両面それぞれの導体層31同士を接続する、所謂スルーホール導体である。
【0014】
接続導体4は、順次ビルドアップされる各絶縁層内に形成される所謂ビア導体である。第1絶縁層21に含まれる接続導体4は、導体層31と第1導体層11とを接続している。第2絶縁層22に含まれる接続導体4は、第1導体層11と第2導体層12とを接続している。2つの絶縁層23それぞれに含まれる接続導体4は、導体層31と導体層13とを接続するか、導体層13同士を接続している。
【0015】
第1及び第2の絶縁層21、22、絶縁層23、及び絶縁層32は、任意の絶縁性樹脂によって形成される。絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)又はフェノール樹脂などが例示される。
図1の例では、絶縁層32は、ガラス繊維やアラミド繊維などで形成される芯材(補強材)32aを含んでいる。
図1には示されていないが、絶縁層32以外の各絶縁層も、ガラス繊維などからなる芯材を含み得る。各絶縁層は、さらに、シリカ(SiO
2)、アルミナ、又はムライトなどの微粒子からなる無機フィラー(図示せず)を含み得る。
【0016】
第1及び第2の導体層11、12、導体層13、及び導体層31、並びに、接続導体4及び接続導体33は、銅又はニッケルなどの任意の金属を用いて形成される。
図1の例において、導体層31は、金属箔31a、金属膜31b、及びめっき膜31cを含んでいる。接続導体33は導体層31と一体的に形成されており、金属膜31b及びめっき膜31cによって構成されている。
【0017】
一方、第1及び第2の導体層11、12、及び導体層13、並びに接続導体4は、それぞれ、金属膜10b及びめっき膜10cによって構成されている。各接続導体4は、第1導体層11、第2導体層12、又は導体層13と一体的に形成されている。めっき膜31c、10cは、例えば電解めっき膜である。金属膜31b及び金属膜10bは、例えば無電解めっき膜又はスパッタリング膜であり、それぞれ、めっき膜31c及びめっき膜10cが電解めっきで形成される際の給電層として機能する。
【0018】
第2絶縁層22及び第2導体層12の上には、ソルダーレジスト6が形成されている。コア基板3の第2面3b側の表層の絶縁層23及び導体層13の上にもソルダーレジスト6が形成されている。ソルダーレジスト6には、第2導体層12又は導体層13の一部を露出させる開口6aが設けられている。ソルダーレジスト6は、例えば、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などで形成される。
【0019】
第1導体層11、第2導体層12、2つの導体層13、及び2つの導体層31は、それぞれ、所定の導体パターンを含んでいる。第1導体層11は、導体パッド1aと、配線パターン1bと、を含んでいる。
【0020】
導体パッド1aは、第2絶縁層22を貫通する接続導体4と接している。すなわち、導体パッド1aは、その上に接続導体4が形成される導体パッドであり、第2絶縁層22を貫通する接続導体4に対する、所謂受けパッドである。そのため、導体パッド1aの第2絶縁層22側の表面の一部は、第2絶縁層22を貫通する接続導体4に覆われている。換言すると、導体パッド1aの第2絶縁層22側の表面の一部は、第2絶縁層22を貫通する接続導体4の底面に対向している。
図1の例では、第1絶縁層21を貫通する接続導体4と第2絶縁層22を貫通する接続導体4とが積み重なるように形成されており、所謂スタックビア導体が形成されている。従って導体パッド1aは、第1絶縁層21を貫通する接続導体4(ビア導体)の所謂ビアパッドとして設けられている。
【0021】
配線パターン1bは、任意の電気信号の伝送や電力の供給に用いられる導電路として機能する導体パターンである。配線パターン1bは、第1絶縁層21を向く表面以外の表面を第2絶縁層22に覆われている。配線パターン1bは、例えば電気信号の所定の送信元と送信先とを単独で又は他の導体パターンと連携して接続していてもよく、電力の所定の給電元と給電先とを接続していてもよい。配線パターン1bは、例えば数GHzを超えるような高周波信号の伝送路であってもよい。
【0022】
図2に示されるように、
図1の例の2つの配線パターン1bは、第1導体層11内の2つの導体パッド1d同士を接続している。なお、
図2の例の導体パッド1a、1dにおいて二点鎖線で囲まれている部分1a2、1d2は、導体パッド1a、1dそれぞれの表面のうちで第2絶縁層22を貫通する接続導体4に覆われている部分を示している。部分1a2は「導体パッド1aにおける接続導体4に覆われている表面1a2」とも称される。
【0023】
図1及び
図2の例では、第1導体層11は、さらに、導体パターン1cを含んでいる。導体パターン1cは、導体パッド1a及び配線パターン1bが形成されていない領域に広がる平板状の形体を有する導体パターンである。導体パターン1cは、第1導体層11において導体パターン1c以外の配線や接続パッドなどの導体が形成されない領域を略埋め尽くすように設けられる所謂ベタパターンであってもよい。導体パターン1cは、例えば、グランド電位又は特定の電源の電位が印加されるグランドプレーン又は電源プレーンとして用いられる。
【0024】
図3には、
図1のIII部の拡大図が示されており、
図4には
図3のIV部のさらなる拡大図が示されている。これまで参照された
図1及び
図2では省略されているが、
図3及び
図4に示されるように、第1導体層11における第2絶縁層22と向かい合う表面に被覆膜5が形成されている。すなわち、配線基板100は、さらに、第1導体層11と第2絶縁層22との間に介在する被覆膜5を備えている。なお「第1導体層11における第2絶縁層22と向かい合う表面」は、第1導体層11の表面のうちの第2絶縁層22と向かい合っている領域を意味している。同様に、後述する導体パッド1a、配線パターン1b、及び導体パターン1cそれぞれにおける「第2絶縁層22と向かい合う表面」は、導体パッド1a、配線パターン1b、及び導体パターン1cの表面それぞれのうちの第2絶縁層22と向かい合っている領域を意味している。
【0025】
図3に示される例では、第1導体層11における第2絶縁層22と向かい合う表面の全部に被覆膜5が形成されている。しかし、被覆膜5は、後に参照される
図5Bに示されるように、第1導体層11における第2絶縁層22と向かい合う表面の一部だけに形成されていてもよい。すなわち、被覆膜5は、第1導体層11における第2絶縁層22と向かい合う表面に少なくとも部分的に形成されている。なお、「第1導体層11における第2絶縁層22と向かい合う表面」には、導体パッド1aの表面のうちで第2絶縁層22を貫通する接続導体4に覆われている部分は含まれない。
【0026】
被覆膜5は、第1導体層11と第2絶縁層22との密着性を向上させる。被覆膜5は、例えば、第2絶縁層22を構成する樹脂などの有機材料、及び第1導体層11を構成する金属などの無機材料の両方と結合し得る材料によって形成される。被覆膜5は、例えば、有機材料と化学結合し得る反応基及び無機材料と化学結合し得る反応基の両方を含む材料によって形成される。そのため、被覆膜5に覆われている第1導体層11の各導体パターンと第2絶縁層22とが十分な強度で密着する。被覆膜5の材料としては、トリアゾール化合物などのアゾールシラン化合物を含むシランカップリング剤が例示される。なお、被覆膜5の材料は、第1導体層11の上に第2絶縁層22が直接形成される場合と比べて、第1導体層11と第2絶縁層22との密着強度を高め得るものであればよく、シランカップリング剤に限定されない。
【0027】
図3に示されるように、本実施形態では、第1導体層11の配線パターン1bにおける第2絶縁層22と向かい合う表面1b1は、被覆膜5に覆われている。すなわち、被覆膜5がない場合と比べて配線パターン1bと第2絶縁層22との密着性が高められている。従って、配線パターン1bからの第2絶縁層22の浮きや剥離が生じ難いと考えられる。
【0028】
図3の例では、導体パッド1aにおける第2絶縁層22と向かい合う表面1a1、及び平板状の導体パターン1cにおける第2絶縁層22と向かい合う表面1c1それぞれも、被覆膜5に覆われている。すなわち、被覆膜5がない場合と比べて導体パッド1a及び導体パターン1cそれぞれと第2絶縁層22との密着性が高められている。従って、導体パッド1a及び導体パターン1cそれぞれからの第2絶縁層22の浮きや剥離が生じ難いと考えられる。
【0029】
先に参照された
図1では省略されているが、
図3に示されるように、第1導体層11の各導体パターン(導体パッド1a、配線パターン1b、及び導体パターン1cなど)は、第1絶縁層21と接していない表面に、互いに程度の異なる凹凸を有している。換言すると、第1導体層11は、第2絶縁層22と向かい合う表面(表面1a1、表面1b1、及び表面1c1)及び接続導体4に覆われる表面1a2において互いに面粗度の異なる複数の領域を有している。
図3の例において表面1a1、表面1b1、及び表面1c1の凹凸の凹部は、被覆膜5で充填されている。
【0030】
図3に示される第1導体層11では、導体パッド1aにおける第2絶縁層22と向かい合う表面1a1上の凹凸の高低差は、配線パターン1bにおける第2絶縁層22と向かい合う表面1b1上の凹凸の高低差よりも大きい。導体パッド1aの表面1a1は、配線パターン1bの表面1b1が有する面粗度(第2面粗度)よりも高い面粗度(第1面粗度)を有している。導体パッド1aの表面1a1は、第2面粗度よりも高い第1面粗度を有するように粗化されている。後述されるように、導体パッド1aの表面1a1は、例えばマイクロエッチングなどによって粗化されている。
【0031】
一方、配線パターン1bの表面1b1は、表面1b1の粗化のために積極的に設けられた工程で粗化されていなくてもよい。表面1b1の凹凸は、めっき膜10cの粒界やめっき膜10cの形成時のめっきレジストの表面の凹凸によって生じていてもよい。
【0032】
本実施形態の配線基板100では、導体パッド1aの表面1a1は、比較的高い面粗度(第1面粗度)を有するように粗化されている。そのため、導体パッド1aと第2絶縁層22との剥離が抑制されることがある。具体的には、導体パッド1aと第2絶縁層22との界面への意図せぬ液体の浸入が、比較的高い第1面粗度を有する導体パッド1aの表面1a1の凹凸によって防がれる。その結果、そのような液体の浸入によって引き起こされ得る導体パッド1aと第2絶縁層22との剥離が抑制されることがある。
【0033】
詳述すると、配線基板100の製造工程では、接続導体4の形成のために第2絶縁層22に設けられた貫通孔4aの内壁が、各種の処理溶液やめっき液になどに晒されることがある。そしてそれらの液体が、貫通孔4aの内壁から導体パッド1aと第2絶縁層22との界面に侵入し、導体パッド1aと第2絶縁層22との剥離を引き起こすことがある。しかし、本実施形態では、そのような剥離を引き起こし得る意図せぬ液体の浸入が、比較的高い第1面粗度を有する導体パッド1aの表面1a1の凹凸によって防がれる。
【0034】
一方、配線パターン1bの表面1b1は、導体パッド1aの表面1a1が有する第1面粗度よりも低い面粗度(第2面粗度)を有している。例えば高度に粗化された表面を有する配線パターンでは、高周波信号の伝送において、表皮効果の影響を受けて実質的なインピーダンスが増加して伝送特性が低下することがある。また、例えば10μm/10μm(配線幅/配線間隔)程度以下のファインな配線パターンでは、その表面が高度に粗化されると、設計上の配線幅や厚さに対して粗化後に所望の形状が得られないことがある。しかし本実施形態では、配線パターン1bの表面1b1は、比較的低い面粗度、少なくとも第1面粗度よりも低い第2面粗度を有しているので、高い面粗度に起因する高周波伝送特性の低下などの問題が生じ難いと考えられる。
【0035】
そして配線パターン1bの表面1b1は、配線パターン1bと第2絶縁層22との密着性を向上させる被覆膜5に覆われている。一般に、比較的低い面粗度の表面を有する導体層とその表面上に形成される絶縁層との間には、所謂アンカー効果の作用が十分に得られず、その結果、導体層と絶縁層との剥離が生じることがある。しかし本実施形態の配線パターン1bの表面1b1は被覆膜5に覆われているので、配線パターン1bと第2絶縁層22との間の剥離が生じ難いと考えらえられる。
【0036】
さらに本実施形態では、導体パッド1aの表面1a1上に形成された被覆膜5の溶解による品質の劣化が、導体パッド1aの表面1a1の凹凸によって防がれることがある。前述したように、配線基板100の製造工程では、第2絶縁層22に設けられた貫通孔4aの内壁は各種の液体に晒され得る。その液体が導体パッド1aと第2絶縁層22との界面に浸入すると、浸入した液体が導体パッド1aの表面1a1上に形成されている被覆膜5を溶解させることがある。その場合、被覆膜5が貫通孔4a内に溶出して接続導体4と導体パッド1aとの接続不良を引き起こしたり、被覆膜5の溶解箇所において導体パッド1aと第2絶縁層22との剥離が発生したりすることがある。しかし本実施形態では、そのような被覆膜5の溶解をもたらし得る意図せぬ液体の浸入が、比較的高い第1面粗度を有する導体パッド1aの表面1a1の凹凸によって防がれる。
【0037】
このように、配線基板100では、配線パターン1bにおいて良好な伝送特性及び第2絶縁層22との十分な密着性が得られ、しかも、接続導体4と接する導体パッド1aと第2絶縁層22との剥離などによる品質劣化が抑制される。このように本実施形態によれば、配線パターンに所望される特性及び配線パターンと絶縁層との密着性を確保し、しかも、導体層同士を接続する接続導体と接する導体パッドと絶縁層との剥離などによる配線基板の品質劣化を抑制し得ることがある。
【0038】
配線パターン1bにおける良好な高周波伝送特性、及び、導体パッド1aと第2絶縁層22との界面への液体の浸入の確実な防止の両立のためには、導体パッド1aの表面1a1と配線パターン1bの表面1b1との面粗度の差は大きい方が好ましいと考えられる。例えば、導体パッド1aの表面1a1の面粗度(第1面粗度)は、配線パターン1bの表面1b1の面粗度(第2面粗度)よりも100%以上高い。その場合、導体パッド1aと第2絶縁層22との界面への液体の浸入を略確実に防ぎながら、配線パターン1bにおいて、数GHzオーダーの高周波信号に対する良好な伝送特性が得られると考えられる。
【0039】
第1面粗度は、第2面粗度の200%以上、1200%以下であってもよい。その場合、導体パッド1aの表面1a1の粗化工程が過剰な時間を必要とせず、また、粗化工程中の第1絶縁層21などへのダメージも少ないと考えられる。導体パッド1aの表面1a1が有する第1面粗度は、例えば、算術平均粗さ(Ra)で0.3μm以上、0.6μm以下である。また、配線パターン1bの表面1b1が有する第2面粗度は、例えば、算術平均粗さ(Ra)で0.05μm以上、0.15μm以下である。すなわち、導体パッド1aの表面1a1の算術平均粗さ(Ra)は、配線パターン1bの表面1b1の算術平均粗さ(Ra)の2倍以上である。
【0040】
図3の例では、導体パッド1aの表面1a1を覆う被覆膜5における第2絶縁層22と向かい合う表面は、表面1a1の凹凸に基づく起伏を有している。被覆膜5の表面が平坦な場合と比べて、被覆膜5と第2絶縁層22との接触面積が増大していると考えられる。被覆膜5による密着性向上作用に加えて、接触面積の増大による密着性向上作用が得られることがある。
【0041】
一方、導体パッド1aにおける接続導体4に覆われている表面1a2と接続導体4との間には被覆膜5は介在していない。すなわち、導体パッド1aと接続導体4とが直接接している。例えばシランカップリング剤のような有機材料を介さずに、導体パッド1aを構成する銅などの金属と接続導体4を構成する銅などの金属とが導体パッド1aと接続導体4との界面において直接接している。従って、導体パッド1aと接続導体4との界面において金属同士による機械的に強固で電気的抵抗の小さい接合が得られていると考えられる。
【0042】
図3の例では、平板状の導体パターン1cにおける第2絶縁層22と向かい合う表面1c1は、導体パッド1aの表面1a1が有する第1面粗度よりも低い面粗度を有している。表面1c1は、表面1c1の粗化のために積極的に設けられた工程で粗化されていなくてもよい。
図3の例の導体パターン1cの表面1c1は、配線パターン1bの表面1b1の面粗度(第2面粗度)と略同じ面粗度を有している。導体パターン1cの表面1c1は第2面粗度を有していてもよい。従って、導体パターン1cにおいても、良好な高周波伝送特性が得られると考えられる。その反面、導体パターン1cの表面1c1において得られるアンカー効果は小さいと推察されるが、導体パターン1cの表面1c1は、前述したように被覆膜5に覆われている。被覆膜5によって密着性を高められている導体パターン1cと第2絶縁層22との間の界面剥離は生じ難いと考えられる。
【0043】
配線基板100では、
図4に示されるように、導体パッド1aにおける接続導体4に覆われている表面1a2は、導体パッド1aの表面1a1が有する第1面粗度よりも低い面粗度(第3面粗度)を有している。第3面粗度は、
図3に示される配線パターン1bの表面1b1が有する第2面粗度よりも高い。表面1a2は、第2絶縁層22のような樹脂と接しておらず、また、表皮効果によって電流の集中が生じる「伝送路の表面」でもない。従って、表面1a2には、大きな凹凸及び平坦性のいずれも特に求められない。従って、
図3及び
図4に示されるように、導体パッド1aの表面1a2は、導体パッド1aの表面1a1が有する第1面粗度と配線パターン1bの表面1b1が有する第2面粗度との間の任意の面粗度(第3面粗度)を有し得る。
【0044】
図5A~
図5Dには、本実施形態の配線基板の他の例が示されている。
図5A~
図5Dは、本実施形態の配線基板の他の例における
図1のIII部に相当する部分の拡大図である。
図5Aの例では、平板状の導体パターン1cにおける第2絶縁層22と向かい合う表面1c1は、配線パターン1bの表面1b1が有する面粗度(第2面粗度)よりも高い面粗度を有するように粗化されている。
図5Aの例において表面1c1は、導体パッド1aの表面1a1と略同じ面粗度を有している。このように導体パターン1cの表面1c1も導体パッド1aの表面1a1と同様に第1面粗度を有するように粗化されていてもよい。例えば導体パターン1cにおいて高周波信号が伝送されない場合には、表面1c1の高い面粗度が特に問題とならないと考えられる。
【0045】
図5Aの例においても、導体パターン1cの表面1c1は、
図3の例と同様に、被覆膜5に覆われている。そして表面1c1を覆う被覆膜5の表面は、表面1c1の凹凸に基づく起伏を有している。被覆膜5による密着性向上作用に加えて、被覆膜5と第2絶縁層22との接触面積の増大による密着性向上作用が得られることがある。
【0046】
なお
図5Aの例では、導体パッド1aにおける接続導体4に覆われている表面1a2は、導体パッド1aにおける第2絶縁層22と向かい合う表面1a1が有する面粗度(第1面粗度)と略同じ面粗度を有している。しかし、前述したように、表面1a2は表皮効果が作用する「伝送路の表面」ではないので、特に高周波伝送特性の低下などの問題は生じ難い。一方、表面1a2の高い面粗度によって、導体パッド1aと接続導体4との間で、より高いアンカー効果の作用が得られると推察される。
【0047】
図5Bの例では、配線パターン1bの表面1b1だけが、被覆膜5に覆われており、導体パッド1aの表面1a1及び導体パターン1cの表面1c1は被覆膜に覆われていない。すなわち、導体パッド1aの表面1a1と第2絶縁層22とが被覆膜5を介さずに直接接している。また、導体パターン1cの表面1c1と第2絶縁層22とが被覆膜5を介さずに直接接している。一方、導体パッド1aの表面1a1及び導体パターン1c1の表面1c1のいずれも、
図5Aの例と同様に、配線パターン1bの表面1b1が有する面粗度(第2面粗度)よりも高い面粗度(第1面粗度)を有している。従って、導体パッド1aと第2絶縁層22との間及び導体パターン1cと第2絶縁層22との間のいずれにおいても十分なアンカー効果が得られるため、界面剥離が生じ難いと考えられる。
【0048】
図5Cの例では、導体パッド1aの表面1a1は、
図5Bの例と同様に、被覆膜5に覆われずに、配線パターン1bの表面1b1が有する面粗度よりも高い面粗度(第1面粗度)を有している。導体パッド1aと第2絶縁層22との間に十分なアンカー効果が得られるため、界面剥離が生じ難いと考えられる。配線パターン1bは、先に参照した
図3、並びに、
図5A及び
図5Bの例と同様に、導体パッド1aの表面1a1よりも低い面粗度(第2面粗度)を有していて被覆膜5に覆われている。良好な高周波伝送特性が得られると共に、被覆膜5による第2絶縁層22との密着性向上作用が得られていると考えられる。
【0049】
一方、
図5Cの例の導体パターン1cの表面1c1は、導体パッド1aの表面1a1が有する第1面粗度よりも低い面粗度を有すると共に、被覆膜5に覆われている。
図5Cの例の導体パターン1cの表面1c1も、配線パターン1bの表面1b1と同様に第2面粗度を有し得る。従って、
図5Cの導体パターン1cにおいても、良好な高周波伝送特性が得られると共に、被覆膜5による第2絶縁層22との密着性向上作用が得られていると考えられる。
【0050】
図5A~
図5Cに示されるように、本実施形態では、導体パッド1aにおける第2絶縁層22と向かい合う表面1a1は、配線パターン1bの表面1b1よりも高い面粗度を有していれば、被覆膜5に覆われていてもよく、覆われていなくてもよい。また、導体パターン1cの表面1c1も、被覆膜5に覆われていてもよく、覆われていなくてもよい。さらに表面1c1は、導体パッド1aの表面1a1と同様の面粗度を有していてもよく、配線パターン1bの表面1b1と同様の面粗度を有していてもよい。
【0051】
図3及び
図5A~
図5Cの例では、被覆膜5は第1導体層11の一部又は全部の表面を覆っているだけで第1絶縁層21の表面を覆っていない。しかし、被覆膜5は、
図5Dに示される実施形態の配線基板の他の例のように、第1絶縁層21の表面を覆っていてもよい。
図5Dの例の被覆膜5は、導体パッド1aの表面1a1、配線パターン1bの表面1b1、及び導体パターン1cの表面1c1に加えて、第1導体層11に覆われていない第1絶縁層21の表面21aも覆っている。剥離膜5は、このように第1絶縁層21の露出面を覆っていてもよい。
【0052】
被覆膜5は、第1絶縁層21全体にわたってその露出面の全面を覆っていてもよい。被覆膜5は、第1絶縁層11の露出面の全面、及び、第1導体層11における第2絶縁層22と向かい合う表面の全面を覆っていてもよい。その場合、第1絶縁層21上に被覆膜5の端面が存在しないので、例えば端面を起点とする被覆膜5の剥離が生じ難いと考えられる。
図5A~
図5Dにおいて、
図3に示される構成要素と同様の構成要素には、
図3に付されている符号と同じ符号が付されるか適宜省略され、その同様の構成要素についての繰り返しとなる説明は省略される。
【0053】
つぎに、一実施形態の配線基板の製造方法が、
図1の配線基板100を例に用いて
図6A~
図6Hを参照して説明される。
【0054】
図6Aに示されるように、コア基板3の絶縁層32となる絶縁層と、この絶縁層の両表面にそれぞれ積層された金属箔31aを含む出発基板(例えば両面銅張積層板)が用意され、コア基板3の導体層31及び接続導体33が形成される。例えばドリル加工又は炭酸ガスレーザー光の照射によって接続導体33の形成位置に貫通孔が形成され、その貫通孔内及び金属箔31a上に無電解めっき又はスパッタリングなどによって金属膜31bが形成される。そして金属膜31bを給電層として用いる電解めっきによってめっき膜31cが形成される。その結果、3層構造の導体層31、及び2層構造の接続導体33が形成される。その後、サブトラクティブ法によって導体層31をパターニングすることによって所定の導体パターンを備えるコア基板3が得られる。
【0055】
そして
図6Aに示されるように、第1絶縁層21及び絶縁層23が、コア基板3の第1面3a上及び第2面3b上にそれぞれ形成される。第1絶縁層21及び絶縁層23それぞれの形成では、例えばフィルム状のエポキシ樹脂が、コア基板3の上に積層され、加熱及び加圧される。その結果、第1絶縁層21及び絶縁層23が、それぞれ形成される。第1絶縁層21及び絶縁層23は、フィルム状のエポキシ樹脂に限らず、BT樹脂、又はフェノール樹脂などの任意の樹脂によって形成され得る。第1絶縁層21及び絶縁層23には、接続導体4を形成するための貫通孔4aが、例えば炭酸ガスレーザー光の照射などによって形成される。
【0056】
本実施形態の配線基板の製造方法は、
図6Aに示されるように、導体パッド1a及び配線パターン1bを有する第1導体層11を形成することを含んでいる。
図6Aの例では、導体パッド1a及び配線パターン1bに加えて導体パターン1cを含む第1導体層11が形成される。コア基板3の第2面3b側には導体層13が形成される。第1絶縁層21及び絶縁層23それぞれには接続導体4が形成される。第1導体層11、導体層13、及び接続導体4は、例えばセミアディティブ法を用いて形成される。すなわち、貫通孔4a内、並びに、第1絶縁層21及び絶縁層23の表面上に、例えば無電解めっき又はスパッタリングによって金属膜10bが形成される。
【0057】
金属膜10bの上に、導体パッド1a、配線パターン1b、及び導体パターン1cに対応する開口、又は、導体層13に含まれるべき導体パターンに対応する開口を有するめっきレジスト(図示せず)が設けられる。そして、金属膜10bを給電層として用いる電解めっきによって、めっきレジストの開口内にめっき膜10cが形成される。その結果、金属膜10b及びめっき膜層10cからなる第1導体層11及び導体層13それぞれが形成される。貫通孔4a内には、金属膜10b及びめっき膜層10cからなる接続導体4が形成される。その後、めっきレジストが、例えば水酸化ナトリウムなどのアルカリ性剥離剤を用いて除去され、その後、金属膜10bにおいてめっき膜10cに覆われずに露出している部分がエッチングなどによって除去される。
【0058】
本実施形態の配線基板の製造方法は、
図6B及び
図6Cに示されるように、第1導体層11の表面のうちの第1絶縁層21と接していない領域である露出面を粗化することを含んでいる。但し、本実施形態の配線基板の製造方法では、第1導体層11の露出面の粗化において、配線パターン1bの露出面は粗化されない。一方、導体パッド1aの露出面は粗化される。そのため、
図6Bに示されるように、配線パターン1bを覆うレジスト膜R1が設けられる。このように、第1導体層11の露出面を粗化することは、配線パターン1bを覆うレジスト膜R1を設けることを含んでいてもよい。
【0059】
第1導体層11の露出面の粗化は任意の方法で行われ得る。例えば、黒化処理又はブラウン処理と呼ばれる表面酸化処理や、酸性の溶剤を用いたマイクロエッチング処理によって、第1導体層11の露出面のうちのレジスト膜R1に覆われていない部分が粗化される。
【0060】
なお、
図1の配線基板100では導体パターン1cの表面も粗化されないので、
図6Bの例では、レジスト膜R1は、導体パターン1cも覆うように設けられている。レジスト膜R1は、例えば感光性樹脂を含むフィルムの積層によって形成される。レジスト膜R1には、露光及び現像などのフォトリソグラフィ技術を用いて、導体パッド1aなどを露出させる開口R1aが設けられる。レジスト膜R1は、前述した第1導体層11の形成に用いられるめっきレジスト(図示せず)と同様の材料で形成されてもよい。
【0061】
図6Cに示されるように、導体パッド1aの露出面が粗化される。
図6Cは、
図6BのVIC部における第1導体層11の露出面の粗化処理後の拡大図である。導体パッド1aの露出面は、少なくとも、配線パターン1bの粗化されない表面1b1が有する面粗度(第2面粗度)よりも高い面粗度を有するように粗化される。導体パッド1aの露出面は、例えば、算術平均粗さ(Ra)で、0.3μm以上、0.6μm以下の面粗度を有するように粗化される。
【0062】
図6Dに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、第1導体層11の露出面に被覆膜5を設けることを含んでいる。
図6Dは、
図6Cと同様の部分についての被覆膜5の形成後の状態を示している。
図6Dの例では、被覆膜5は、導体パッド1aの露出面、配線パターン1bの露出面、及び導体パターン1cの露出面を含む、第1導体層11の露出面の全部に設けられている。なお、本実施形態において被覆膜5は、後述されるように第1導体層11の露出面の一部に設けられてもよい。
【0063】
被覆膜5は、第1導体層11と、後工程で形成される第2絶縁層22(
図6E参照)との密着性を向上させる。被覆膜5は、例えば、シランカップリング剤などの、有機材料及び無機材料の両方と結合し得る材料を含む液体への第1導体層11の浸漬や、そのような液体の噴霧(スプレーイング)によって形成される。しかし、被覆膜5の形成方法は任意であり、被覆膜5を構成する材料への浸漬や、そのような材料の噴霧に限定されない。
【0064】
図6E及び
図6Fに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、第1導体層11を覆う第2絶縁層22を形成することを含んでいる。コア基板3の第2面3b側には、さらに絶縁層23が形成される。なお、
図6Fには
図6EにおけるVIF部の拡大図が示されている。
図6Fに示されるように、第2絶縁層22は、被覆膜5も覆っている。第2絶縁層22及び絶縁層23は、第1絶縁層21と同様に、例えば、フィルム状のエポキシ樹脂の積層、並びに加熱及び加圧によって形成される。
【0065】
第2絶縁層22及び絶縁層23には、後工程で接続導体4(
図6G参照)を形成するための貫通孔4aが、例えば炭酸ガスレーザー光の照射などによって形成される。第2絶縁層22における導体パッド1a上の領域に貫通孔4aが形成される。貫通孔4aによって導体パッド1aの表面の一部(表面1a2)が露出する。
【0066】
図6Fの例では、貫通孔4aの形成によって貫通孔4a内に露出する導体パッド1aの表面1a2上に形成されていた被覆膜5が除去されている。表面1a2上に形成されていた被覆膜5は、例えば、貫通孔4aの形成時のレーザー光の照射を受けて、溶解及び気化するか、又は昇華する。その結果、表面1a2上に形成されていた被覆膜5が除去され得る。本実施形態の配線基板の製造方法は、
図6Fの例のように、導体パッド1aの表面1a2から被覆膜5を除去することを含んでいてもよい。表面1a2から被覆膜5を除去することによって、後工程で導体パッド上に形成される接続導体4と導体パッド1aとを、金属同士で強固に、且つ小さな電気抵抗で接合させることができる。
【0067】
なお、被覆膜5の除去時の被覆膜5の溶解液による導体パッド1aと第2絶縁層22との界面への浸透が、前述したように比較的高い面粗度を有するように粗化されている導体パッド1aの表面1a1の凹凸によって妨げられる。導体パッド1aと第2絶縁層22との界面剥離が防止されることがある。
【0068】
また
図6Fの例では、貫通孔4aの形成時のレーザー光の照射によって、導体パッド1aの表面1a2の凹凸の凸部の高さが、貫通孔4aの形成前と比べて低くなっている。例えば、貫通孔4aの形成時のレーザー光の照射によって、表面1a2の凹凸の凸部が丸められるか、又は溶解している。その結果、表面1a2の面粗度が、貫通孔4aの形成前と比べて低下している。本実施形態の配線基板の製造方法は、
図6Fの例のように、導体パッド1aの表面の一部である表面1a2の面粗度を低下させることを含んでいてもよい。表面1a2は、導体パッド1aの表面のうちの、後述する接続導体4に接続される部分である。
【0069】
貫通孔4aの形成後、好ましくは、貫通孔4aの形成によって生じた樹脂残渣(スミア)を除去するデスミア処理が行われる。例えばアルカリ性過マンガン酸溶液などの処理液に貫通孔4aの内壁を晒すことによって貫通孔4a内のスミアが除去される。このデスミア処理のための処理液による、導体パッド1aと第2絶縁層22との界面への浸入が、導体パッド1aの粗化された表面1a1の凹凸によって妨げられる。処理液による表面1a1上の被覆膜5の溶解や、それに伴う界面剥離などの不具合が防止されると考えられる。
【0070】
図6G及び
図6Hに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、第2絶縁層22の上に第2導体層12を形成すると共に、第2絶縁層22を貫通して導体パッド1aと第2導体層12とを接続する接続導体4を形成することを含んでいる。コア基板3の第2面3b側には、さらに、導体層13及び接続導体4が形成される。
図6Hには、
図6GのVIH部の拡大図が示されている。
【0071】
第2導体層12及び第2絶縁層22を貫通する接続導体4は、例えば、前述した第1導体層11及び第1絶縁層21を貫通する接続導体4の形成方法と同様の方法で形成される。例えば、第2導体層12及び第2絶縁層22を貫通する接続導体4、並びにコア基板3の第2面3b側にさらに形成される導体層13及び接続導体4は、セミアディティブ法によって形成される。
【0072】
配線基板100が製造される
図6Gの例では、ソルダーレジスト6が形成されている。ソルダーレジスト6には第2導体層12又は導体層13の一部を露出させる開口6aが設けられる。ソルダーレジスト6及び開口6aは、例えば感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを含む樹脂層の形成と、適切な開口パターンを有するマスクを用いた露光及び現像とによって形成される。
【0073】
セミアディティブ法による第2絶縁層22への接続導体4の形成では、
図6Hに示されるように、貫通孔4a内に例えば無電解めっきによって金属膜10bが形成され、さらに電解めっきによってめっき膜10cが形成される。本実施形態の配線基板の製造方法では、金属膜10bの形成時のめっき液による導体パッド1aと第2絶縁層22との界面への浸入が、導体パッド1aの粗化された表面1a1の凹凸によって妨げられる。めっき液による、表面1a1上の被覆膜5の溶解や、それに伴う界面剥離などの不具合が防止されると考えられる。
【0074】
以上の工程を経る事によって、
図1の例の配線基板100が完成する。ソルダーレジスト6の開口6a内に露出する第2導体層12又は導体層13の一部の表面上には、無電解めっき、半田レベラ、又はスプレーコーティングなどによって表面保護膜(図示せず)が形成されてもよい。
【0075】
なお、本実施形態の配線基板の製造方法は、
図7Aに示されるように、さらに、導体パッド1aを覆っている被覆膜5を第2絶縁層22の形成の前に除去することを含んでいてもよい。
図7Aは、先に参照した
図6Dに例示される被覆膜5の形成後に導体パッド1aを覆う被覆膜5がレーザー光Lの照射によって除去される例を示している。第2絶縁層22の形成の前に導体パッド1a上の被覆膜5を除去することによって、貫通孔4a(
図6F参照)の形成時における被覆膜5の溶解液による導体パッド1aと第2絶縁層22との界面への浸入を根本的に防ぐことができる。
【0076】
被覆膜5の除去に用いるレーザー光としては、炭酸ガスレーザー光、YAGレーザー光などが例示されるが、被覆膜5の除去に用いるレーザー光は、これらに限定されない。また、導体パッド1a上の被覆膜5を除去する方法はレーザー光の照射に限定されず、例えばプラズマ処理によって被覆膜5が除去されてもよい。なお、導体パッド1a上の被覆膜5が除去される際には、
図7Aに示されるように、導体パッド1a以外の第1導体層11の導体パターン(配線パターン1b及び導体パターン1c)を覆うレジスト膜R2が設けられてもよい。
【0077】
先に参照した
図6Dの例では、被覆膜5が第1導体層11の露出面の全部に設けられたが、本実施形態の配線基板の製造方法において、被覆膜5は、その形成時に、導体パッド1aの露出面には設けられずに第1導体層11の露出面の一部だけに設けられてもよい。その場合、被覆膜5は、配線パターン1bの露出面及び導体パターン1cの露出面だけに設けられてもよい。
【0078】
図7Bには、被覆膜5の形成時に、被覆膜5が導体パッド1aの露出面には設けられずに配線パターン1b及び導体パターン1cそれぞれの露出面に設けられる例が示されている。
図7Bに示されるように、導体パッド1aを覆うレジスト膜R3が形成されており、その結果、配線パターン1b及び導体パターン1cそれぞれの露出面だけに被覆膜5が設けられている。このように、被覆膜5が、その形成時に導体パッド1a上に形成されない場合、前述した被覆膜5の溶解液による導体パッド1aと第2絶縁層22との界面への浸入を根本的に防ぐことができ、しかも、前述した被覆膜5の除去工程を省略することができる。
【0079】
なお、先に参照した
図5Aの例の配線基板100が製造される場合は、
図6Cに例示の工程において、導体パターン1cを覆うレジスト膜R1が設けられずに、第1導体層11の露出面が粗化される。その結果、導体パターン1cの表面1c1も導体パターン1aの露出面と略同じ面粗度を有するように粗化される。なお、貫通孔4a(
図6F参照)の形成時のレーザー光のパワーの調整などによって、貫通孔4aに露出する導体パッド1aの表面1a2の面粗度を、低下させずに表面1a1と略同じ面粗度に維持させることができる。
【0080】
また、先に参照した
図5Bの例の配線基板100が製造される場合は、
図7Aに例示の工程において、導体パターン1cを覆うレジスト膜R2が設けられずに、被覆膜5の除去が行われる。その結果、導体パターン1cの表面1c1上の被覆膜5も除去される。或いは、
図7Bに例示の工程において、導体パターン1c上にもレジスト膜R3が設けられ、被覆膜5の形成が行われる。その結果、配線パターン1bの表面1b1上だけに、被覆膜5が形成される。
【0081】
本実施形態の配線基板の製造方法によれば、配線パターン1bの表面1b1は粗化されずに導体パッド1aの表面が粗化される。そのため、導体パッド1aに接する接続導体4の形成用の貫通孔4aの内壁から導体パッド1aと第2絶縁層22との界面への各種の液体の浸入が、導体パッド1aの表面の凹凸によって防がれる。従って、導体パッド1aと第2絶縁層22との界面剥離が防がれることがある。一方、粗化されない良好な高周波伝送特性などを有し得る配線パターン1bの表面1b1には、第1導体層11と第2絶縁層22との密着性を向上させる被覆膜5が形成される。従って、配線パターン1bでは、例えば、良好な高周波伝送特性と共に、第2絶縁層22との間の十分な密着性が得られる。このように本実施形態の配線基板の製造方法によれば、配線パターンに所望される特性及び配線パターンと絶縁層との密着性を確保し、しかも、導体層同士を接続する接続導体と接する導体パッドと絶縁層との剥離などによる配線基板の品質劣化を抑制し得ることがある。
【0082】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。前述したように、実施形態の配線基板は任意の積層構造を有し得る。例えば実施形態の配線基板はコア基板を含まないコアレス基板であってもよい。実施形態の配線基板は、任意の数の導体層及び絶縁層を含み得る。第1導体層11は、配線基板の積層構造上の任意の階層に存在し得る。第1導体層11は、電解めっき膜からなるめっき膜10cを含まなくてもよく、例えば無電解めっき膜からなる金属膜10bだけを含んでいてもよい。また、配線基板に含まれる複数の導体層の全部又は一部の複数の導体層が、第1導体層11に含まれているような導体パッド1a、配線パターン1b、及び導体パターン1cを含んでいてもよい。また、導体パッド1aは、第1導体層11の下層の絶縁層(配線基板100における第1絶縁層21)を貫通する接続導体のビアパッドでなくてもよい。
【0083】
実施形態の配線基板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されない。例えば第1及び第2の導体層11、12はフルアディティブ法によって形成されてもよい。また、第1及び第2の絶縁層21、22は、フィルム状の樹脂に限らず、任意の形態の樹脂を用いて形成され得る。また、第2絶縁層22以外の絶縁層には、接続導体が形成されなくてもよい。実施形態の配線基板の製造方法には、前述された各工程以外に任意の工程が追加されてもよく、前述された工程のうちの一部が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
100 配線基板
11 第1導体層
1a 導体パッド
1a1 第2絶縁層と向かい合う表面
1a2 接続導体に覆われている表面
1b 配線パターン
1b1 第2絶縁層と向かい合う表面
1c 平板状の導体パターン
1c1 第2絶縁層と向かい合う表面
12 第2導体層
21 第1絶縁層
22 第2絶縁層
4 接続導体(ビア導体)
5 被覆膜
R1 レジスト膜