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特開2022-45889真空ポンプ用のロータアセンブリ、真空ポンプ及びロータアセンブリを製造する方法
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  • 特開-真空ポンプ用のロータアセンブリ、真空ポンプ及びロータアセンブリを製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045889
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】真空ポンプ用のロータアセンブリ、真空ポンプ及びロータアセンブリを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
F04D19/04 D
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021080163
(22)【出願日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】20195315
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520415627
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・テクノロジー・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ・メコタ
【テーマコード(参考)】
3H131
【Fターム(参考)】
3H131AA02
3H131BA09
3H131CA01
(57)【要約】
【課題】分解に対するロータアセンブリの強度の向上が容易に達成される、真空ポンプ用のロータアセンブリを提供する。
【解決手段】ロータボディ15を備え、ロータボディは、真空ポンプの運転時に回転軸線13を中心に回転し、ロータボディの外周25に、回転軸線を中心に環状に補強帯29が少なくとも完全に1周巻き付けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータボディ(15)を備え、ロータボディ(15)は、真空ポンプの運転時に回転軸線(13)を中心に回転し、ロータボディ(15)の外周(25)に、回転軸線(13)を中心に環状に少なくとも完全に1周、補強帯(29)が巻き付けられている、真空ポンプ用、特にターボ分子ポンプ用のロータアセンブリ(11)。
【請求項2】
補強帯(29)は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を含む、請求項1に記載のロータアセンブリ(11)。
【請求項3】
ロータアセンブリ(11)は、少なくとも2つのポンプ段(19)を有し、ポンプ段(19)は、回転軸線(13)に沿って相互に距離を置いて配置されているとともに、ポンピング作用を奏する要素(21)をそれぞれ有し、要素(21)は、ロータボディ(15)の外周(25)に位置し、
補強帯(29)は、軸方向で2つのポンプ段(19)の間に延在する中間空間(23)内に配置されている、請求項1又は2に記載のロータアセンブリ(11)。
【請求項4】
ロータアセンブリ(11)は、3以上のポンプ段(19)を有し、ポンプ段(19)は、回転軸線(13)に沿って相互に距離を置いて配置されていて、
軸方向にポンプ段(19)同士の間に延在する少なくとも2つ、特に全ての中間空間(23)内で、それぞれ1つの補強帯(29)が、ロータボディ(15)の周りに巻き付けられている、請求項3に記載のロータアセンブリ(11)。
【請求項5】
補強帯(29)は、複数の層でかつ/又は相並んで軸方向でそれぞれ異なる複数の位置においてそれぞれ環状に少なくとも完全に1周、ロータボディ(15)の外周(25)の周りに巻き付けられている、請求項1から4のいずれか一項に記載のロータアセンブリ(11)。
【請求項6】
ロータボディ(15)の外周(25)に、軸方向でそれぞれ異なる複数の位置において環状に少なくとも完全に1周、それぞれの補強帯(29)が巻き付けられていて、
それぞれの補強帯(29)の巻数は様々である、請求項1から5のいずれか一項に記載のロータアセンブリ(11)。
【請求項7】
ロータボディ(15)は、釣鐘状に形成されていて、かつ内室(17)を有し、内室(17)の、回転軸線(13)に対して直角の横断面積は、軸方向で、ロータアセンブリ(11)の高真空側を起点として増加する、請求項1から6のいずれか一項に記載のロータアセンブリ(11)。
【請求項8】
ロータボディ(15)は、一体に構成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のロータアセンブリ(11)。
【請求項9】
補強帯(29)は、自己接着性を有する、かつ/又は巻き付けられた後で、周辺環境温度よりも高い、高められた温度を作用させることによって、ロータボディ(15)に接合されている、請求項1から8のいずれか一項に記載のロータアセンブリ(11)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のロータアセンブリ(11)を有する、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプ。
【請求項11】
真空ポンプ用、特にターボ分子ポンプ用の、特に請求項1から9のいずれか一項に記載のように構成されたロータアセンブリ(11)を製造する方法であって、
ロータアセンブリ(11)は、ロータボディ(15)を有し、ロータボディ(15)は、真空ポンプの運転時に回転軸線(13)を中心に回転し、
方法は、ロータボディ(15)の外周(25)に、回転軸線(13)を中心に環状に少なくとも完全に1周、補強帯(29)を巻き付けることを含む、方法。
【請求項12】
補強帯(29)を、複数の層でかつ/又は相並んで軸方向にそれぞれ異なる複数の位置においてそれぞれ環状に少なくとも完全に1周、ロータボディ(15)の外周(25)の周りに巻き付ける、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ロータアセンブリ(11)は、3以上のポンプ段(19)を有し、ポンプ段(19)は、回転軸線(13)に沿って相互に距離を置いて配置されているとともに、ポンピング作用を奏する要素(21)をそれぞれ有し、要素(21)は、ロータボディ(15)の外周(25)に配置されていて、
方法は、軸方向でポンプ段(19)同士の間に延在する少なくとも2つ、特に全ての中間空間(23)内で、それぞれ1つの補強帯(29)を、ロータボディ(15)の周りに巻き付けることを含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
それぞれの補強帯(29)の巻数を、ロータアセンブリ(11)の定格回転数に依存して選択する、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
補強帯(29)を、自己接着性を有する帯として、ロータボディ(15)の周りに巻き付ける、かつ/又は巻き付けた後で、周辺環境温度よりも高い、高められた温度を作用させることによって、ロータボディ(15)に接合する、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ用、特にターボ分子ポンプ用のロータアセンブリ、真空ポンプ及びロータアセンブリを製造する方法に関する。
【0002】
例えばターボ分子ポンプ等の真空ポンプは、例えば半導体製造等の様々な技術分野で、それぞれのプロセスにとって必要な真空を提供するために使用される。ターボ分子ポンプは、一般的にロータアセンブリを有する。ロータアセンブリは、ターボ分子ポンプの運転時、ターボ分子ポンプのステータ又はハウジングに対して、通常は毎分10000回転を超える極めて高い回転数で回転する。
【0003】
ゆえに、ロータアセンブリが、ターボ分子ポンプの動作中に極めて高い運動エネルギを有するので、いわゆる「ロータクラッシュ」が生じる場合、ロータアセンブリが例えば短時間動かず、極めて高いトルクがターボ分子ポンプのハウジングへ、さらに、ハウジングを介して、ターボ分子ポンプが中にある真空設備全体へ伝達され得る。したがって、ロータクラッシュが生じる場合、ターボ分子ポンプの周辺環境内で重大な破壊及び負傷のリスクが生じる。
【0004】
この問題は、磁気軸受式のターボ分子ポンプにおいて、これが、磁気軸受部と場合によってはロータアセンブリの駆動装置とを釣鐘状のロータアセンブリ内の中空室内に格納するために、釣鐘状のロータアセンブリを有するとき、特に重要である。ロータクラッシュに際して、そのような釣鐘状のロータアセンブリは、突然、それぞれ極めて高い運動エネルギを有する数個の部品に分解され得る。そのようなロータアセンブリの分解は、「バースト」とも称される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、分解に対するロータアセンブリの強度の向上が容易に達成される、真空ポンプ用のロータアセンブリ、真空ポンプ及びロータアセンブリを製造する方法を提供することである。さらに、ロータアセンブリの分解が生じる場合でも、真空ポンプの周辺環境内での危険性が低減されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、独立請求項の対象によって解決される。
【0007】
本発明に係る、真空ポンプ用、特にターボ分子ポンプ用のロータアセンブリは、ロータボディを備え、ロータボディは、ロータボディの外周に、回転軸線を中心に環状に少なくとも完全に1周、補強帯が巻き付けられている。
【0008】
ロータボディの外周に補強帯を設けることによって、分解に対するロータアセンブリの強度が向上される。これにより、真空ポンプの周辺環境内で危険にさらされるおそれが低減される。
【0009】
ロータアセンブリの分解又は「バースト」が生じる場合、補強帯は、ロータアセンブリの個々の部品を依然として所定の期間結合保持し、これにより、バーストがより長い時間にわたって引き延ばされる。これにより、真空ポンプのハウジングへのロータアセンブリの運動エネルギ又は相応のトルクの伝達もまた引き延ばされた期間にわたって行われ、これにより、真空ポンプに及ぼされる全体のトルクが低減され、例えばポンプフランジから真空ポンプが剥離されるおそれが低下する。したがって、総じて、補強帯によって、ロータクラッシュ又はバーストが生じる場合であっても真空ポンプの周辺環境内での破壊及び負傷のリスクが低減される。
【0010】
さらに、ロータボディに巻き付けることによって、ロータボディの外周に補強帯を容易に取り付けることができ、補強材としてロータボディに例えば収縮嵌めされる、事前に製作される管又はリングを製造しなくてよい。したがって、ロータボディの補強は、補強帯を用いて低コストで達成することができる。
【0011】
本発明の有利な発展形態は、従属請求項、明細書及び図面に示されている。
【0012】
補強帯は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を含むことができる。この場合、CFRPの炭素繊維又はカーボンファイバは、例えばエポキシ樹脂、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含むことができるプラスチックマトリックスに埋め込まれている。この場合、プラスチックマトリックスへの繊維の組込みは、補強帯がロータボディの周りに巻き付けられるとき、梱包用粘着テープ等と同様に繰り出することができる柔軟な補強帯が全体として提供されるように行うことができる。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、高い剛性にもかかわらず小さな質量を有する。したがって、補強帯にCFRPを組み込むことによって、ロータボディ及びロータアセンブリの強度を全体として向上させることができる。
【0013】
一実施形態によれば、ロータアセンブリは、少なくとも2つのポンプ段を有し、ポンプ段は、回転軸線に沿って相互に距離を置いて配置されているとともに、ポンピング作用を奏する要素をそれぞれ有し、要素は、ロータボディの外周に位置する。この実施形態では、補強帯は、軸方向で2つのポンプ段の間に延在する中間空間内に配置することができる。好ましくは、ロータアセンブリは、3以上のポンプ段を有し、軸方向にポンプ段同士の間に延在する少なくとも2つ、特に全ての中間空間内で、それぞれ1つの補強帯が、ロータボディの周りに巻き付けられている。
【0014】
ポンプ段同士の間の1つ又は複数の中間空間においてロータボディに補強帯が巻き付けられることによって、ロータアセンブリの強度を効率的に向上させることができる。というのも、ロータアセンブリを、先ずは補強帯なく製造することができ、ポンプ段同士の間の中間空間が後で補強帯を巻き付けるためにアクセス可能であるからである。その中でロータボディに補強帯が巻き付けられるべき中間空間の数は、例えば定格回転数等のロータアセンブリの所定の運転パラメータに基づいて選択することができる。したがって、ポンプ段同士の間の1つ又は複数の中間空間内での巻付けによるロータボディの補強は、真空ポンプの運転中の状況に柔軟に適合させることができる。
【0015】
ポンプ段を有するロータボディは、本発明では、必須ではない。1つ又は複数の補強帯を、ポンプ段を有しないロータボディに設けることもできる。代替的に、ロータボディは、1つ又は複数のポンプ段を有する1つ又は複数の軸方向の領域と、ポンプ段を有しない少なくとも1つの領域とを有することができ、1つ又は複数の補強帯を、ポンプ段を有しない少なくとも1つのそのような領域に配置することができる。
【0016】
さらに、補強帯を、複数の層でかつ/又は相並んで軸方向でそれぞれ異なる複数の位置においてそれぞれ環状に少なくとも完全に1周、ロータボディの外周の周りに巻き付けることができる。それぞれ異なる軸方向の位置は、ポンプ段同士の間のそれぞれ異なる中間空間によって設定することができる。ただし、これは必須ではない。複数の補強帯を、それぞれ異なる軸方向のポンプ段で直接に上下に位置する2つのポンプ段の間の単一の中間空間に、又はポンプ段を有しないロータボディに、又はロータボディの、ポンプ段を有しない領域に配置することもできる。
【0017】
ロータボディには、その外周に、軸方向でそれぞれ異なる複数の位置において環状に少なくとも完全に1周、それぞれの補強帯を巻き付けることができる。それぞれの補強帯の巻数は、様々であってよい。このことは、全体的に、つまり補強帯が個々のポンプ段同士の間のそれぞれ異なる中間空間内に配置されているか、又は全体としてそれぞれ異なる複数の軸方向の位置に配置されているかにかからわらず当てはまる。
【0018】
さらに、ロータボディに、1つ又は複数の軸方向の領域で、それぞれ螺旋状に又はねじ山状に補強帯の1つ又は複数の層が巻き付けられていることが想定され得る。要するに、補強帯は、軸方向の1つの位置だけに位置しなくてよい。
【0019】
それぞれの補強帯の巻数は、例えば定格回転数等の、ロータアセンブリの所定の運転パラメータに基づいて選択することができる。
【0020】
したがって、補強帯の巻数又は層の数は、ロータボディの外周に沿った、ロータボディのバーストに対して又はそのようなバーストの発生時に特に危険性をはらんでいるとみなされる箇所、例えばロータボディの、外周が大きな又は質量が大きな箇所で増やすことができる。したがって、補強材の全体の厚さは、ロータボディの外周に沿って又は軸方向に回転軸線に沿って柔軟に変化させることができ、予期されるバーストのリスクに適合させることができる。
【0021】
別の一実施形態によれば、ロータボディは、釣鐘状に形成されていて、かつ内室を有し、内室の、回転軸線に対して直角の横断面積は、軸方向で、ロータアセンブリの高真空側を起点として増加する。そのような釣鐘状のロータボディの内室の横断面積は、軸方向で増加するので、ロータボディの外周も同一方向で増大する。ロータボディの補強材を作製するための補強帯による巻付けは、そのような釣鐘状のロータでは、特に有利である。というのも、そうでないとき、補強管又は補強リングを使用するとき、先ずはそれぞれ異なる直径を有する多数の補強材を製造しなければならないからである。かくして、補強帯による巻付けでは、特に釣鐘状のロータボディの場合、補強材を作製する労力が低減される。この場合、ロータボディには、好ましくは、ロータアセンブリの高真空側から最も遠く離れたポンプ段同士の間の1つ又は複数の中間空間内で、それぞれ補強帯が巻き付けられる。
【0022】
さらに、ロータボディは、一体に構成することができる。補強帯による巻付けは、そのようなロータボディでは、総じて補強材をロータボディに取り付けるための簡単で低コストの手段をなす。例えば、一体のロータのポンプ段同士の間の中間空間内に補強管又は補強リングを取り付けることは、不可能ではないにしても極めて困難である。
【0023】
別の一実施形態によれば、補強帯は、自己接着性を有する、かつ/又は巻き付けられた後で、周辺環境温度よりも高い、高められた温度を作用させることによって、ロータボディに接合することができる。自己接着性の補強帯では、ロータボディへの巻付けに伴う労力が特に小さい。というのも、補強帯とロータボディとの間に例えば接着剤等の接合剤を使用しなくてよいからである。例えば補強帯をロータボディと一緒に炉内で「熱処理」することによって、同様に、補強帯とロータボディとの間の特に強固な接合部を作製することができる。接合の方式、例えば自己接着式又は「熱処理」は、補強帯のそれぞれの構成に依存してよい。
【0024】
さらに、本発明は、特にターボ分子ポンプであって、前述されたようなロータアセンブリを備える、真空ポンプに関する。
【0025】
本発明の更なる対象は、真空ポンプ用のロータアセンブリを製造する方法であって、この方法では、ロータボディの外周に、回転軸線を中心に環状に少なくとも完全に1周、補強帯を巻き付ける。
【0026】
そのような方法によって、簡単で低コストに、ロータボディに補強材を作製することができるので、バーストに対するロータボディの強度を向上させることができる。補強材を作製する労力は、補強帯を巻き付けるとき、特に、補強管又は補強リングと比較して、そのような補強管又は補強リングの直径をロータボディの直径に正確に適合させなければならず、補強帯を巻き付けるときにはそのような適合が不要であることによって、軽減される。前述の利点並びに本発明に係るロータアセンブリ及びその実施形態について記載された開示内容は、本発明に係る方法にも準用される。
【0027】
補強帯は、好ましくは、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を含む。
【0028】
方法の一実施形態では、補強帯を、複数の層でかつ/又は相並んで軸方向にそれぞれ異なる複数の位置においてそれぞれ環状に少なくとも完全に1周、ロータボディの外周の周りに巻き付けることができる。さらに、ロータアセンブリは、3以上のポンプ段を有することができ、ポンプ段は、回転軸線に沿って相互に距離を置いて配置されているとともに、ポンピング作用を奏する要素をそれぞれ有し、要素は、ロータボディの外周に配置されている。軸方向でポンプ段同士の間に延在する少なくとも2つ、特に全ての中間空間内で、それぞれ1つの補強帯を、ロータボディの周りに巻き付けることができる。ロータボディに、複数の層をかつ/又はロータボディに沿った軸方向で複数の箇所で巻き付けることで、ロータアセンブリ及び真空ポンプの運転特性に合わせた、補強材の位置及び厚さに関する補強材の柔軟な適合が可能となる。
【0029】
それぞれの補強帯の巻数を、ロータアセンブリの定格回転数に依存して選択することができる。したがって、補強材の強さを、ロータアセンブリの定格回転数に適合させることができるので、一方では、補強材は十分に強く、他方では、不要な付加質量が過度に強い補強材によってロータボディに加えられることがない。
【0030】
方法の更なる一実施形態によれば、補強帯を、自己接着性を有する帯として、ロータボディの周りに巻き付ける、かつ/又は巻き付けた後で、周辺環境温度よりも高い、高められた温度を作用させることによって、ロータボディに接合することができる。補強帯が自己接着性を有するとき、例えば接着剤を用いて補強帯とロータボディとを接合するための付加的な労力が不要であり、その一方で、巻付け後に高められた温度を作用させることによって、補強帯とロータボディとの間の接合部を代替的に作製する又は付加的に硬化させることができる。
【0031】
以下、本発明を、例としての有利な実施形態に基づいて、添付の図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】Aは、本発明に係るロータアセンブリを略示し、Bは、Aに示されたロータアセンブリの一部を略示する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1のAは、本発明による、ターボ分子ポンプ用のロータアセンブリ11の考えられる一例を示す。ターボ分子ポンプの運転時、ロータアセンブリ11は、回転軸線13を中心に、例えば毎分10000回転より高い回転数で回転する。ロータアセンブリ11は、ロータボディ15を有する。ロータボディ15は、釣鐘状に形成されているので、ロータアセンブリ11は、内室17を有し、内室17の、回転軸線13に対して直角の横断面積が、軸方向で、ロータアセンブリ11の高真空側を起点として、つまり図1のAでは上側から、下側へ増加する。ターボ分子ポンプにはそのためにロータアセンブリ11が設けられていて、ターボ分子ポンプの高真空側は、図1のAでは上側である。ロータボディ15の釣鐘状の構成に基づいて、ロータアセンブリ11は、ベルロータとも称される。
【0034】
ロータボディ15の外側で、ロータアセンブリ11は、複数のポンプ段19を有し、ポンプ段19は、ポンプ作用を奏する要素としてロータディスク21を有する。ロータディスク21は、図示されていないそれぞれのステータディスクと相俟って、そのためにロータアセンブリ11が設けられたターボ分子ポンプのそれぞれのポンプ段を形成する。ロータディスク21同士の間に、中間空間23がそれぞれ存在し、中間空間23には、ターボ分子ポンプにロータアセンブリ11を組み付けた後で、ステータディスクがそれぞれ設けられている。
【0035】
最下位の2つのロータディスク21の間の中間空間23内で、ロータボディ15の外周25に、補強材27が取り付けられている。補強材27は、補強帯29の3つの層を有する。補強帯29は、ロータボディ15の外周25の周りに、回転軸線13を中心に環状に完全に3周巻き付けられている。
【0036】
図1のBは、図1のAの拡大された一部を示す。その一部において、最下位の2つのロータディスク21の間の中空室23内に補強帯29の3つの層が認められる。本実施例では、ロータアセンブリ11の高真空側から最も遠く離れていて、その中間空間23におけるロータボディ15の外径が他の全ての中間空間23における外径よりも大きい2つのロータディスク21の間のロータボディ15の外周25に、補強帯29の3つの層が、補強材27を形成する。したがって、補強材27は、他の中間空間23に対してより大きな慣性モーメントを有する、ロータボディ15の領域に位置する。補強材27を最下位の2つのロータディスク21の間に設けることが有利である。というのも、補強材27は、この箇所で、分解又はバーストに対するロータボディ15の強度を最も向上させるからである。
【0037】
補強材27は、図1のA及びBの実施例では、最下位の2つのロータディスク21の間にしか示されていないが、その一方で、補強材27を、ロータディスク21同士の間の他の中間空間23にも、それぞれの中間空間23において補強帯29の1つ又は複数の層がロータディスク15の外周25の周りに巻き付けられることによって、配置することができる。補強帯29の少なくとも1つの層を有するそれぞれの補強材27を、ロータディスク21同士の間の全ての中間空間23に取り付けることも可能である。
【0038】
補強帯29は、自己接着性を有し、かつ梱包用粘着テープ等と同様に繰り出される柔軟なプラスチック素材からなる。補強帯29は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を含み、炭素繊維プラスチックでは、補強帯29の強度を向上させるために、繊維が、プラスチックマトリックスに埋め込まれている。補強材27を作製するために、CFRP補強帯29は、ロータボディ15の外周の周りに、回転軸線13を中心に環状に完全に3周巻き付けられる。補強帯29を用いた補強材27によって、ロータアセンブリ11の強度が向上され、高い回転数のときの遠心力の作用下での伸長がわずかにしか生じない。これにより、ロータアセンブリ11は、補強材27を有しない相応のロータアセンブリよりも高い定格回転数を達成することができる。
【0039】
ターボ分子ポンプの運転時にロータボディ15の分解又はバーストを伴うロータクラッシュが起こったとしても、ロータボディ15の破断片は、補強材27によって、依然として所定期間結合保持されるので、ロータアセンブリ1の運動エネルギ又はトルクがターボ分子ポンプのハウジングへ、又はロータアセンブリ11及びターボ分子ポンプの周辺環境へ伝達されるのに掛かる全体期間が引き延ばされる。したがって、ロータクラッシュに際してターボ分子ポンプのステータ及びハウジングに作用するトルクが全体として低減される。したがって、補強帯29を用いた補強材27によって、ロータクラッシュに際して負傷及び破壊のリスクが低減される。
【符号の説明】
【0040】
11 ロータアセンブリ
13 回転軸線
15 ロータボディ
17 内室
19 ポンプ段
21 ロータディスク
23 中間空間
25 外周
27 補強材
29 補強帯
図1
【外国語明細書】