(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045897
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】毛髪用組成物、助剤組成物、及び毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20220314BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20220314BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20220314BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q5/00
A61K8/35
A61K8/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122832
(22)【出願日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2020151582
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正人
(72)【発明者】
【氏名】丸山 亮
(72)【発明者】
【氏名】山内 朝夫
(72)【発明者】
【氏名】畠中 芳▲郎▼
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC491
4C083AC492
4C083CC31
4C083DD27
4C083DD33
4C083EE22
4C083EE28
4C083EE29
(57)【要約】
【課題】毛髪の物性を向上させる毛髪用組成物、助剤組成物、および毛髪処理方法の提供。
【解決手段】毛髪用組成物は、カテコール、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、2以上の4-ヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、1又は2以上の3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、及び1又は2以上の3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、から選ばれた一種又は二種以上が配合され、pHが9.0以下のものであり、助剤組成物は、マンガン塩、鉄塩、及び銅塩から選ばれた一種又は二種以上の金属塩が配合され、毛髪用組成物を毛髪に塗布する前または塗布した後に使用されるものであり、毛髪処理方法は、上記毛髪用組成物を使用するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテコール、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、
2以上の4-ヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、
1又は2以上の3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、及び
1又は2以上の3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、から選ばれた一種又は二種以上が配合され、
pHが9.0以下であることを特徴とする毛髪用組成物。
【請求項2】
酸化反応を伴う化学的な処理が行われた毛髪に適用される請求項1に記載の毛髪用組成物。
【請求項3】
マンガン塩、鉄塩、及び銅塩から選ばれた一種又は二種以上の金属塩が配合された請求項1又は2に記載の毛髪用組成物。
【請求項4】
マンガン塩、鉄塩、及び銅塩から選ばれた一種又は二種以上の金属塩が配合され、
請求項1又は2に記載の毛髪用組成物を毛髪に塗布する前または塗布した後に使用されるものであることを特徴とする助剤組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の毛髪用組成物、又は、請求項1~3のいずれか1項に記載の毛髪用組成物および請求項4に記載の助剤組成物、を使用することを特徴とする毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪に塗布して使用される毛髪用組成物、助剤組成物、及びその毛髪用組成物を使用する毛髪処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラッシング、ハンドドライヤー、熱アイロンなどによる物理的処理、及び酸化染毛処理、パーマネントウェーブ処理などの化学的処理は、毛髪に損傷を与える。損傷した毛髪は、損傷を受ける前に比して、毛髪の感触(例えば、はり、こし、柔らかさ)、外観(例えば、艶、まとまり)、強度(例えば、引張り強度)などの毛髪物性が悪化したものとなる。
【0003】
従来から毛髪物性の向上のための提案が行われており、その例として、トリートメントなどの毛髪用組成物への天然物由来ペプチドの配合が知られている。また、所定の変性基を導入した変性ペプチドの配合も、公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
毛髪物性の向上が可能であれば、天然物由来ペプチドや変性ペプチドに限らず、新たな成分を配合しても良く、そのような配合提案が望まれる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、毛髪の物性を向上させる毛髪用組成物、当該組成物と併用される助剤組成物、および毛髪処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る毛髪用組成物は、カテコール、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、2以上の4-ヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、1又は2以上の3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、及び1又は2以上の3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、から選ばれた一種又は二種以上が配合され、pHが9.0以下であることを特徴とする。ここで、本発明における「ポリフェノール」とは、分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基(ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香環に結合したヒドロキシ基)を持つ化合物を意味する。この本発明に係る毛髪用組成物を使用することで、破断強度、初期弾性率などのいずれかの毛髪物性が向上する。
【0008】
本発明に係る毛髪用組成物は、酸化反応を伴う化学的な処理が行われた毛髪に適用されるものであると良い。酸化染料が配合された第1剤と酸化剤が配合された第2剤との混合物を毛髪に塗布する酸化染毛処理、還元剤が配合されたパーマネントウェーブ剤を毛髪に塗布するパーマネントウェーブ処理などが酸化反応を伴う化学的な処理に該当し、この化学的処理を行った毛髪は、損傷を受け易い。このような損傷した毛髪に本発明に係る毛髪用組成物を適用すれば、当該損傷の補修に適する。
【0009】
本発明に係る毛髪用組成物は、マンガン塩、鉄塩、及び銅塩から選ばれた一種又は二種以上の金属塩が配合されたものが良い。当該金属塩が配合されていると、毛髪物性の向上に好適である。
【0010】
また、本発明に係る助剤組成物は、マンガン塩、鉄塩、及び銅塩から選ばれた一種又は二種以上の金属塩が配合され、上記本発明に係る毛髪用組成物を毛髪に塗布する前または塗布した後に使用されるものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る毛髪処理方法は、上記本発明に係る毛髪用組成物、又は、上記本発明に係る毛髪用組成物および上記本発明に係る助剤組成物、を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る毛髪用組成物は、カテコール、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、及び所定のポリフェノールから選ばれた一種又は二種以上が配合され、pHが9.0以下のものなので、毛髪物性を向上させることができる。
【0013】
本発明に係る助剤組成物は、マンガン塩、鉄塩、及び銅塩から選ばれた一種又は二種以上の金属塩が配合され、本発明に係る毛髪用組成物を毛髪に塗布する前または塗布した後に使用されるものなので、毛髪物性をより向上させることができる。
【0014】
また、本発明に係る毛髪処理方法は、本発明に係る毛髪用組成物が使用されるものなので、毛髪物性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】SDS-PAGE法による参考例1a~1c、比較参考例1a~1bの分子量確認結果を示す撮影画像
【
図2】SDS-PAGE法による比較参考例2、参考例2a~2gの分子量確認結果を示す撮影画像
【
図3】SDS-PAGE法による参考例3a~3gの分子量確認結果を示す撮影画像
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。本実施形態の毛髪処理方法では、本実施形態の毛髪用組成物、又は、本実施形態の毛髪用組成物および本実施形態の助剤組成物が使用される。
【0017】
(毛髪用組成物)
本実施形態の毛髪用組成物は、カテコールなどの毛髪物性を向上させる特定成分(詳細は後述)が配合されたものである。また、その特定成分が配合されている限り本実施形態の毛髪用組成物に該当するが、本実施形態の毛髪用組成物は、水と配合されたものが典型的であり、当該毛髪用組成物における水の配合量は、例えば60質量%以上である。そして、公知の毛髪用組成物に配合されている成分を任意成分として、本実施形態の毛髪用組成物に配合しても良い。
【0018】
上記毛髪物性を向上させる特定成分は、カテコール、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、2以上の4-ヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、1又は2以上の3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、及び1又は2以上の3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、から選ばれた一種又は二種以上である(この一種又は二種以上の特定成分を、以下において、単に「特定成分」と称することがある。)。この特定成分の配合により、毛髪物性である破断強度および/または初期弾性率が向上する。
【0019】
カテコールなどの上記特定成分の配合による毛髪物性の向上と、特定成分が存在する条件におけるリゾチーム同士の連結とに、相関関係を見出している。後者のリゾチーム同士の連結は、リゾチーム同士の架橋連結に特定成分が関与すると考えられるので、本実施形態の毛髪用組成物の使用において、毛髪の構成タンパク質における架橋が特定成分により生じ、毛髪物性が向上すると考えられる。
【0020】
本実施形態の毛髪用組成物における特定成分の配合量は、特に限定されないが、0.001質量%以上1.0質量%未満が良く、0.003質量%以上0.5質量%未満が好ましく、0.005質量%以上0.3質量%未満がより好ましく、0.01質量%以上0.1質量%未満が更に好ましい。0.001質量%以上であると、毛髪物性の向上に好適であり、1.0質量%未満であると、低コスト化に好適である。
【0021】
特定成分として配合されるポリフェノールは、上記の通り、2以上の4-ヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、1又は2以上の3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、又は、1又は2以上の3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールである。当該ポリフェノールとしては、4-ヒドロキシフェニル基のみを有するもの、3,4-ジヒドロキシフェニル基のみを有するもの、3,4,5-トリヒドロキシフェニル基のみを有するもの、4-ヒドロキシフェニル基と3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するもの、4-ヒドロキシフェニル基と3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するもの、3,4-ジヒドロキシフェニル基と3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するもの、4-ヒドロキシフェニル基と3,4-ジヒドロキシフェニル基と3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するものが挙げられる。
【0022】
上記の4-ヒドロキシフェニル基、3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノール、又は、3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールは、フラボノイド(フラボン、フラバナール、フラボノールなど)、クロロゲン酸類などに属する公知のポリフェノールとして知られており、植物エキスに含まれている。本実施形態において、2以上の4-ヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールとしては、例えば、チリロシドが挙げられ、チリロシドを含有するエキスとしては、イチゴ種子エキスなどである。1つの3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールとしては、例えば、ルテオリン、カテキン、ケルセチン、クロロゲン酸、カフェオイルグルコース、クエルシトリン、ルチンが挙げられ、ルテオリンを含有するエキスとしては、シソ種子エキス、キク花エキスなどであり、カテキンを含有するエキスとしては、チャ葉エキスなどであり、ケルセチンを含有するエキスとしては、タマネギ根エキスなどであり、クロロゲン酸を含有するエキスとしては、ロブスターコーヒーノ木種子エキスなどであり、カフェオイルグルコースを含有するエキスとしては、サトザクラ花エキスなどであり、クエルシトリンを含有するエキスとしては、キウイ種子エキスなどであり、ルチンを含有するエキスとしては、ソバ葉エキスなどである。2以上の3,4-ジヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールとしては、例えば、フキノール酸、チコリ酸、エキナコシドが挙げられ、フキノール酸を含有するエキスとしては、フキ葉/茎エキスなどであり、チコリ酸を含有するエキスとしては、ムラサキバレンギクエキスなどであり、エキナコシドを含有するエキスとしては、シスタンチェツブロサ根エキスなどである。1つの3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールとしては、例えば、没食子酸、デルフィニジン-3,5-グルコシドが挙げられ、没食子酸を含有するエキスとしては、メマツヨイグサ種子エキスなどであり、デルフィニジン-3,5-グルコシドを含有するエキスとしては、アリストテリアチレンシス果実エキスなどである。2以上の3,4,5-トリヒドロキシフェニル基を有するポリフェノールとしては、例えば、GHG(1,2-di-Galloyl-4,6-Hexahydroxydiphenoyl-β-D-Glucose)が挙げられ、GHG(1,2-di-Galloyl-4,6-Hexahydroxydiphenoyl-β-D-Glucose)を含有するエキスとしては、チャ葉エキスなどである。
【0023】
本実施形態の毛髪用組成物に配合される特定成分に該当するポリフェノールは、毛髪物性を向上させるために毛髪内部に浸透させる観点から、分子量1000未満のものが良く、分子量800未満のものが好ましく、分子量600未満のものがより好ましい。このような分子量1000未満の上記ポリフェノールは、本実施形態の毛髪用組成物において、特に限定されないが、0.001質量%以上1.0質量%未満が良く、0.003質量%以上0.5質量%未満が好ましく、0.005質量%以上0.3質量%未満がより好ましく、0.01質量%以上0.1質量%未満が更に好ましい。0.001質量%以上であると、毛髪物性の向上に好適であり、1.0質量%未満であると、低コスト化に好適である。
【0024】
本実施形態の毛髪用組成物には、マンガン塩、鉄塩、及び銅塩から選ばれた一種又は二種以上の金属塩を配合すると良く、鉄塩及び/又は銅塩の配合が好ましい。この金属塩の配合により、毛髪物性の更なる向上を期待できる。
【0025】
上記の通り、カテコールなどの特定成分の配合による毛髪物性の向上と、特定成分の存在条件において生じるリゾチーム同士の連結とに、相関関係を見出しており、マンガン塩などの上記金属塩がその連結を進行させる。そのため、マンガン塩などの上記金属塩の配合が、毛髪物性をより高めると考えられる。また、毛髪の構成タンパク質であるケラチンにはチオール基が存在しているのが知られているところ、溶液中でのケラチンのチオール基は、上記の特定成分と金属塩を併存させた場合に減少することが確認されている。これは、上記金属塩の併用が、特定成分とチオール基との連結反応に関わった結果、特定成分とケラチンの結合が生じ、毛髪物性の向上に有効な補修効果を奏すると考えられる。そして、毛髪が受ける損傷によりチオール基が増加するので、特定成分とチオール基の連結反応は、損傷した毛髪の補修に効果的であるといえる。
【0026】
上記マンガン塩などの金属塩の配合量は、特に限定されないが、例えば、上記特定成分の配合量に対する質量比として、0.0001以上0.01以下である。
【0027】
また、上記金属塩としては、公知の水溶性金属塩から選択すると良く、例えば、グルコン酸銅、(クロロフィリン/銅)複合体、硫酸銅、塩化第二銅、グルコン酸鉄、(クロロフィリン/鉄)複合体、グルコン酸マンガン、塩化マンガンが挙げられる。
【0028】
本実施形態の毛髪用組成物には、上記の通り、公知の毛髪用組成物に配合されている成分を任意成分として配合しても良い。この任意成分としては、例えば、高級アルコール、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、香料、防腐剤である。
【0029】
本実施形態の毛髪用組成物に高級アルコールとカチオン界面活性剤を配合する場合、高級アルコールは炭素数12以上22以下のものが良く、この高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの直鎖状飽和アルコール;ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、テトラデシルオクタデカノールなどの分岐状飽和アルコール;が挙げられる。高級アルコールの配合量は、特に限定されないが、例えば1質量%以上10質量%以下である。また、上記カチオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミドアミン塩、アーコベル型3級アミン塩、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩が挙げられる(なお、上記「長鎖アルキル」は、炭素数12以上22以下のアルキル基であると良い。)。カチオン界面活性剤の配合量は、特に限定されないが、例えば1質量%以上5質量%以下である。
【0030】
本実施形態の毛髪用組成物を使用する際の剤型は、毛髪に塗布して馴染ませることが容易なものが好適であり、液状、乳液状、ローション状、クリーム状、フォーム状(泡状)、霧状が挙げられる。剤型の粘度は、B型粘度計を使用して25℃で計測した60秒後の粘度が、例えば80000mPa・s以下であり、50000mPa・s以下が良い。
【0031】
本実施形態の毛髪用組成物のpHは、9.0以下であり、2.5以上8.5以下が良く、5.5以上8.0以下が好ましく、6.0以上8.0以下がより好ましい。pHが9.0を超えると、毛髪の物性が低下する傾向が生じやすい。この物性低下は、pHが高まるにつれて膨潤した毛髪からのタンパク質の流出が原因と考えられる。
【0032】
(助剤組成物)
本実施形態の助剤組成物は、本実施形態の毛髪用組成物による毛髪物性の向上をより高めるものである。当該助剤組成物は、本実施形態の毛髪用組成物にマンガン塩、鉄塩、及び銅塩のいずれの金属塩も配合しない場合に、好適に使用されるものである。
【0033】
上記の助剤組成物は、マンガン塩、鉄塩、及び銅塩から選ばれた一種又は二種以上の金属塩が配合されたものであり、鉄塩及び/又は銅塩が配合されたものが好ましい。また、その金属塩が配合されている限り本実施形態の助剤組成物に該当するが、本実施形態の助剤組成物は、水と配合されたものが典型的であり、当該助剤組成物における水の配合量は、例えば60質量%以上である。そして、公知の毛髪用組成物に配合されている成分を任意成分として、本実施形態の助剤組成物に配合しても良い。
【0034】
本実施形態の助剤組成物に配合されるマンガン塩、鉄塩、及び銅塩から選ばれた一種又は二種以上の金属塩は、本実施形態の毛髪用組成物による毛髪物性の向上を更に高める。この毛髪物性の向上は、本実施形態の毛髪用組成物にマンガン塩などの金属塩を配合する場合と同様に生じるものである。
【0035】
本実施形態の助剤組成物におけるマンガン塩などの金属塩の配合量は、特に限定されないが、例えば、当該助剤組成物と本実施形態の毛髪用組成物の総使用量において、上記特定成分に対する質量比として0.0001以上0.01以下である。
【0036】
また、上記助剤組成物に配合する金属塩としては、公知の水溶性金属塩から選択すると良く、例えば、グルコン酸銅、(クロロフィリン/銅)複合体、硫酸銅、塩化第二銅、グルコン酸鉄、(クロロフィリン/鉄)複合体、グルコン酸マンガン、塩化マンガンが挙げられる。
【0037】
本実施形態の助剤組成物には、上記の通り、公知の毛髪用組成物に配合されている成分を任意成分として配合しても良い。この任意成分としては、例えば、高級アルコール、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、香料、防腐剤である。
【0038】
本実施形態の助剤組成物に高級アルコールとカチオン界面活性剤を配合する場合、高級アルコールは炭素数12以上22以下のものが良く、この高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの直鎖状飽和アルコール;ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、テトラデシルオクタデカノールなどの分岐状飽和アルコール;が挙げられる。高級アルコールの配合量は、特に限定されないが、例えば1質量%以上10質量%以下である。また、上記カチオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミドアミン塩、アーコベル型3級アミン塩、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩が挙げられる(なお、上記「長鎖アルキル」は、炭素数12以上22以下のアルキル基であると良い。)。カチオン界面活性剤の配合量は、特に限定されないが、例えば1質量%以上5質量%以下である。
【0039】
本実施形態の助剤組成物を使用する際の剤型は、毛髪に塗布して馴染ませることが容易なものが好適であり、液状、乳液状、ローション状、クリーム状、フォーム状(泡状)、霧状が挙げられる。剤型の粘度は、B型粘度計を使用して25℃で計測した60秒後の粘度が、例えば80000mPa・s以下であり、50000mPa・s以下が良い。
【0040】
本実施形態の助剤組成物のpHは、9.0以下であり、2.5以上8.5以下が良く、5.5以上8.0以下が好ましく、6.0以上8.0以下がより好ましい。pHが9.0を超えると、毛髪の物性が低下する傾向が生じやすい。この物性低下は、pHが高まるにつれて膨潤した毛髪からのタンパク質の流出が原因と考えられる。
【0041】
(毛髪処理方法)
本実施形態の毛髪処理方法は、(A)本実施形態の毛髪用組成物、又は、(B)本実施形態の毛髪用組成物および本実施形態の助剤組成物を使用するものである。
【0042】
本実施形態の毛髪処理方法が(A)本実施形態の毛髪用組成物である場合、この毛髪用組成物を毛髪に塗布し、水で洗い流し又は洗い流さない手順で行われると良い。また、本実施形態の毛髪処理方法が(B)本実施形態の毛髪用組成物および本実施形態の助剤組成物を使用するものである場合、前者の毛髪用組成物を毛髪に塗布する前または塗布した後に、後者の助剤組成物を毛髪に塗布する。(B)の方法としては、例えば、(b1)本実施形態の毛髪用組成物を塗布した後に、水で洗い流さず、本実施形態の助剤組成物を塗布する態様、(b2)本実施形態の毛髪用組成物を塗布した後に、水で洗い流し、本実施形態の助剤組成物を塗布する態様、(b3)本実施形態の助剤組成物を塗布した後に、水で洗い流さず、本実施形態の毛髪用組成物を塗布する態様、(b4)本実施形態の助剤組成物を塗布した後に、水で洗い流し、本実施形態の毛髪用組成物を塗布する態様、が挙げられる。
【0043】
上記毛髪処理方法で対象となる毛髪は、特に限定されない。物理的処理(例えば、ブラッシング)や化学的処理(例えば、酸化染毛処理、縮毛矯正処理、パーマネントウェーブ処理)により毛髪物性が低下するので、このような毛髪を本実施形態の毛髪処理方法の対象とすると良い。上記の化学的処理では過酸化水素などの酸化剤による酸化反応を伴い、物性を低下させる損傷を毛髪が受けるので、本実施形態の毛髪処理方法では、酸化反応を伴う化学的な処理が行われた毛髪を対象にすると良い。
【0044】
また、本実施形態の毛髪処理方法は、本実施形態の毛髪用組成物、又は本実施形態の毛髪用組成物と本実施形態の助剤組成物を使用するものであれば、その方法は特に限定されない。本実施形態の毛髪処理方法としては、コンディショナー、トリートメント(例えば、洗い流さないトリートメント、洗い流すトリートメント、整髪兼用トリートメント、多剤式トリートメントの一構成剤、パーマの前処理のためのトリートメント、パーマの後処理のためのトリートメント、カラーリングの前処理のためのトリートメント、カラーリングの後処理のためのトリートメント、ブリーチの前処理のためのトリートメント、ブリーチの後処理のためのトリートメント)、スタイリングなどで、本実施形態の毛髪用組成物、又は本実施形態の毛髪用組成物と本実施形態の助剤組成物を使用する方法が挙げられる。
【実施例0045】
以下、実施例などに基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0046】
実施例及び比較例の毛髪用組成物を使用した毛髪処理を行い、毛髪物性(破断強度、初期弾性率)を測定した。詳細は、次の通りである。
【0047】
(実施例1a~実施例1c、比較例1)
実施例1a~実施例1c、比較例1の毛髪用組成物を、カテコール、ヒドロキノン、チコリ酸、又はレゾルシンと、銅クロロフィリンナトリウム(日本葉緑素社製「クロロンG」)と、水とを混合して製造した。各毛髪用組成物において、カテコール、ヒドロキノン、チコリ酸、又はレゾルシンを混合する場合の濃度は、0.8mol/Lとし、銅クロロフィリンナトリウムの濃度は、0.0002質量%とした。実施例1a~実施例1c、比較例1で配合した水以外の成分は、下記表1の通りである。
【0048】
(実施例2a~実施例2g、比較例2a~2c)
実施例2a~実施例2g、比較例2a~2cの毛髪用組成物を、ヒドロキノン、フェルラ酸、レスベラトロール、イチゴ種子エキス(チリロシド含有)、チャ葉エキス(カテキン含有)、ムラサキバレンギクエキス(チコリ酸含有)、メマツヨイグサ種子エキス(没食子酸含有)、レゾルシン、又はコウジ酸を0.2質量%又は無配合に設定したpH7.4の0.1Mリン酸緩衝液と、グルコン銅(Copper(II) Gluconate)を0.2質量%に設定した水溶液とを、1:1の質量比で混合して製造した。この製造過程でリン酸緩衝液に配合した成分は、下記表2の通りである。
【0049】
(実施例3a~3g、比較例3a~3b)
実施例3a~実施例3g、比較例3a~2bの毛髪用組成物を、チコリ酸を含有するムラサキバレンギクエキスを0.2質量%に設定したBritton-Robinson緩衝液と、グルコン銅(Copper(II) Gluconate)を0.2質量%に設定したBritton-Robinson緩衝液とを、1:1の質量比で混合して製造した。ここで使用したBritton-Robinson緩衝液のpHは、下記表3のpHの通りである。
【0050】
(実施例4a~4g)
実施例4a~実施例4gの毛髪用組成物を、チコリ酸を含有するムラサキバレンギクエキスを0.2質量%に設定したpH7.4の0.1Mリン酸緩衝液と、金属塩を無配合又は0.2質量%に設定した水溶液とを、1:1の質量比で混合して製造した。ここで使用した金属塩は、実施例4bがグルコン酸カリウム(Potassium Gluconate)、実施例4cがグルコン酸カルシウム(Calcium Gluconate Monohydrate)、実施例4dがグルコン酸マンガン(Manganese(II)Gluconate)、実施例4eがグルコン酸鉄(Iron(II) D-Guconate dehydrate)、実施例4fがグルコン酸銅(Copper(II) Gluconate)、実施例4gがグルコン酸亜鉛(Zinc Gluconate n-Hydrate)である。
【0051】
(毛髪処理)
実施例及び比較例の毛髪用組成物のいずれかに毛束(詳細は後記)を浸漬し、静置した(静置条件:実施例1a~実施例1c及び比較例1は、20℃程度の室内で24時間。その他の実施例及び比較例は、40℃の環境下で15分。)。次に、毛束を流水で洗い流し、温風で乾燥させた。以上をもって、毛髪処理とした。
【0052】
毛髪処理における対象毛束は、次の通り、日本人女性から採取した黒髪の毛束に対して事前処理を行って作成したものである。当該事前処理は、毛束に脱色剤(ミルボン社製「パウダーブリーチ」1質量部と、ミルボン社製「オルディーブ オキシダン6.0」2質量部との混合物)を塗布してから室温で30分放置した後、毛束を水洗し、温風で乾燥させ、脱色剤の塗布から乾燥までを合計3回行ったものである。
【0053】
(毛髪物性の測定)
毛髪処理後の毛髪について、破断強度及び/又は初期弾性率を測定した。測定条件は、以下の通りである。測定値は、毛髪20本の平均値を採用した。
測定装置:Dia-Stron社製引張試験機「MTT686」
測定サンプル毛髪長:30mm
測定前処理:水に12時間浸漬
測定環境:水中
延伸速度:10%/min(3mm/min)
【0054】
下記表1は、実施例1a~実施例1c、比較例1の毛髪用組成物を使用した毛髪処理を行った場合の毛髪物性結果である(なお、表1における「基準」は毛髪処理を行わなかった毛髪物性の測定結果である。)。表1において、特定成分(カテコール、ヒドロキノン、チコリ酸)を配合した場合、毛髪物性(初期弾性率、破断強度)が基準よりも向上したことを確認できる。
【0055】
【0056】
下記表2は、実施例2a~実施例2g、比較例2a~2cの毛髪用組成物を使用した毛髪処理を行った場合の毛髪物性結果である。表2において、表1と同様、特定成分を配合した場合、毛髪物性(破断強度)が向上したことを確認できる。
【0057】
【0058】
下記表3は、実施例3a~3g、比較例3a~3bの毛髪用組成物を使用した毛髪処理を行った場合の毛髪物性結果である。表3において、pHが9.0を上回る比較例3a~3bよりも、pH9.0以下の実施例3a~3fの方が毛髪物性(破断強度)に優れることを確認できる。
【0059】
【0060】
下記表4は、実施例4a~4gの毛髪用組成物を使用した毛髪処理を行った場合の毛髪物性結果である。実施例4a~4c及び4gと、実施例4d~4fとの比較において、マンガン塩(グルコン酸マンガン)、鉄塩(グルコン酸鉄)、銅塩(グルコン酸銅)の配合が、毛髪物性(破断強度)の向上に好適であると確認できる。
【0061】
【0062】
毛髪物性の向上と相関関係があるリゾチームの架橋連結について、参考例及び比較参考例のリゾチームの分子量測定により確認した。詳細は以下の通りとした。
【0063】
(参考例1a~1c、比較参考例1a~1b)
25μlのリゾチーム水溶液(I)と、12.5μlの特定成分水溶液(I)とを混合し(参考例2aのような金属塩水溶液は混合しなかった。)、40℃で24時間静置した。この静置後の混合液を、参考例1a~1c、比較参考例1a~1bとした。ここで使用した各水溶液は、次の通りとした。
<リゾチーム水溶液(I)>
0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.4)にリゾチームを配合した水溶液。リゾチーム濃度は0.8質量%。
<特定成分水溶液(I)>
0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.4)にジメチルスルホキシド及び特定成分を配合した水溶液。ジメチルスルホキシド濃度は7.5質量%、特定成分の濃度が0.9mol/L。配合した特定成分は、参考例1がカテコール、参考例1bがヒドロキノン、参考例1cがチコリ酸、比較参考例1aがレゾルシン、比較参考例1bが特定成分の配合なし、である。
【0064】
(参考例2a~2g、比較参考例2)
25μlのリゾチーム水溶液(II)と、12.5μlの特定成分水溶液(II)と、12.5μlの金属塩水溶液(II)とを混合し、40℃で24時間静置した。この静置後の混合液を、参考例2a~2gとした。比較参考例2は、リゾチームが0.4質量%のものとした(特定成分及び金属塩は無配合)。ここで使用した各水溶液は、次の通りとした。
<リゾチーム水溶液(II)>
Britton-Robinson緩衝液にリゾチームを配合した水溶液。Britton-Robinsonの緩衝液のpHは、参考例2aが2.87、参考例2bが4.10、参考例2cが5.02、参考例2dが6.09、参考例2eが7.00、参考例2fが7.96、参考例2gが8.95。リゾチーム濃度は0.8質量%。
<特定成分水溶液(II)>
Britton-Robinsonの緩衝液に、チコリ酸を含有するムラサキバレンギクエキスを配合した水溶液。Britton-Robinsonの緩衝液のpHは、上記リゾチーム水溶液(II)と同様。ムラサキバレンギクエキスの配合量は0.4質量%。
<金属塩水溶液(II)>
Britton-Robinsonの緩衝液に、グルコン酸銅(Copper(II) Gluconate)を配合した水溶液。Britton-Robinsonの緩衝液のpHは、上記リゾチーム水溶液(II)と同様。グルコン酸銅の濃度は0.4質量%。
【0065】
(参考例3a~3g)
参考例2aにおいて、リゾチーム水溶液(II)をリゾチーム水溶液(III)に変更、特定成分水溶液(II)を特定成分水溶液(III)に変更、金属塩水溶液(II)を金属塩水溶液(III)に変更した以外は、参考例2aと同様にしたものを、参考例3a~3gとした。ここで使用した各水溶液は、次の通りとした。
<リゾチーム水溶液(III)>
リゾチーム水溶液(I)と同様。
<特定成分水溶液(III)>
0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.4)に、チコリ酸を含有するムラサキバレンギクエキスを配合した水溶液。ムラサキバレンギクエキスの配合量は0.4質量%。
<金属塩水溶液(III)>
配合した金属塩が0.4質量%である水溶液。ここでの金属塩は、参考例3aが金属塩無配合、参考例3bがグルコン酸カリウム(Potassium Gluconate)、参考例3cがグルコン酸カルシウム(Calcium Gluconate Monohydrate)、参考例3dがグルコン酸マンガン(Manganese(II)Gluconate)、参考例3eがグルコン酸鉄(Iron(II) D-Guconate dehydrate)、参考例3fがグルコン酸銅(Copper(II) Gluconate)、参考例3gがグルコン酸亜鉛(Zinc Gluconate n-Hydrate)。
【0066】
(分子量の確認)
上記各参考例の溶液内のリゾチームの分子量を、Sodium Dodecyl Sulfate-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE法)により確認した。このSodium Dodecyl Sulfate-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE法)による分子量バンド確認方法の条件は、以下の通り。
<基準物質(分子量マーカー)>
TEFCO社製「タンパク質分子量マーカーII」
基準物質の詳細は、Myosin, rabbit muscle(分子量205kDa)、β-galactosidase, E.coli (分子量116kDa)、Phosphorylase b, rabbit muscle(分子量97.4kDa)、Bovine serum albumin(分子量69kDa)、Glutamic dehydrogenase(分子量55kDa)、Lactic dehydrogenase,porcine muscle(分子量36.5kDa)、Carbonic anhydrase, bovine liver(分子量29kDa)、Trypsin inhibitor, soybean(分子量20.1kDa)、Lysozyme, chicken egg white(分子量14.3kDa)、Aprotinin, bovine lung(分子量6.5kDa)、Insulin B chain, bovine pancreas (分子量3.5kDa)の以上11物質
<ポリアクリルアミドゲル>
キシダ化学社製のプレキャストアクリルアミドゲルである「ハイブリッド ゲル 10-20%」
<試料溶液>
1容量部の参考例、比較参考例、又は基準物質(分子量マーカー)と、1容量部のBioRad社製「2xLaemmli サンプルバッファー」とを混合し、100℃で1分間の加熱処理を行ったもの。
<泳動条件>
20mA、40分間
<泳動槽用緩衝液>
BioRad社製「10x(Tris/Glycine/SDS)Buffer」の10倍希釈水溶液
<染色条件>
クマジーブリリアントブルー溶液で1時間染色後、脱色液で約6時間脱色処理
【0067】
参考例1a~1c、比較参考例1a~1bの分子量確認の結果は、
図1の通りである。分子量マーカーのバンドが示す分子量範囲と、各参考例および比較参考例のバンドに関して、6.5kDa~14.3kDaの範囲に入るものはリゾチームであり、20.1kDa以上の範囲に入るものはリゾチーム同士の架橋連結物である。後者の架橋連結物を示すバンドは、参考比較例1a~1bに比べて、参考例1a~1cの方が明確に視認できる。つまり、特定成分(カテコール、ヒドロキノン、チコリ酸)を使用した場合には、リゾチーム同士の架橋連結物が生じやすい傾向であった。このことは、表1における特定成分(カテコール、ヒドロキノン、チコリ酸)による毛髪物性(初期弾性率、破断強度)の向上傾向と一致する。
【0068】
比較参考例2、参考例2a~2gの分子量確認の結果は、
図2の通りである。20.1kDa以上の範囲に入るリゾチーム同士の架橋連結物を示すバンドの濃淡は、pH設定により変動していた。つまり、リゾチーム同士の架橋連結物の生成は、pH設定により影響を受ける。このことは、表3におけるpH設定と毛髪物性(破断強度)と関係と同様である。
【0069】
参考例3a~3gの分子量確認の結果は、
図3の通りである。20.1kDa以上の範囲に入るリゾチーム同士の架橋連結物を示すバンドについて、参考例3d~3f(マンガン塩、鉄塩、銅塩)は、その他の参考例に比べて、濃いバンドの結果であった。つまり、リゾチーム同士の架橋連結物は、マンガン塩、鉄塩、又は銅塩が併存すると生成し易い。このことは、表4においてマンガン塩、鉄塩、又は銅塩を使用した実施例4d~4fが、高い毛髪物性(破断強度)であった結果と相関する。