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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045926
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】遊星歯車駆動機
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/46 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
F16H1/46
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146421
(22)【出願日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】10-2020-0115100
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】319012978
【氏名又は名称】ネイバーラボス コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】516317159
【氏名又は名称】韓國技術教育大學校産學協力團
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY OF TECHNOLOGY AND EDUCATION INDUSTRY-UNIVERSITY COOPERATION FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】1600,Chungjeol-ro,Byeongcheong-myeon,Dongnam-gu,Cheonan-si,Chungcheongnam-do 31253,Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンジェ
(72)【発明者】
【氏名】ユン ソンホ
(72)【発明者】
【氏名】ソ ジウォン
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FB32
3J027GB03
3J027GC25
3J027GD04
3J027GD07
3J027GD12
(57)【要約】
【課題】遊星歯車セットを用いて高い減速比を提供する遊星歯車駆動機を提供する。
【解決手段】遊星歯車駆動機100は、太陽歯車110と、太陽歯車110と同心に配置される回転内接歯車120と、太陽歯車110と同心に配置される固定内接歯車130と、複数の複合遊星歯車140と、複数の複合遊星歯車140にそれぞれ相対回転可能に連結されるキャリア150、160、180とを含み、複数の複合遊星歯車140は、太陽歯車110と噛み合う第1遊星歯車141と、第1遊星歯車141の一側に配置されて回転内接歯車120と噛み合い、歯数が第1遊星歯車141より少ない第2遊星歯車142と、第1遊星歯車141の他側に配置されて固定内接歯車130と噛み合い、歯数が第1遊星歯車141より少ない第3遊星歯車143とを備え、複数の複合遊星歯車140のいずれか1つは、複数の複合遊星歯車140の他の1つと厚さ方向に重なるように配置される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽歯車と、
前記太陽歯車と同心に配置される回転内接歯車と、
前記太陽歯車と同心に配置される固定内接歯車と、
複数の複合遊星歯車と、
前記複数の複合遊星歯車にそれぞれ相対回転可能に連結されるキャリアとを含み、
前記複数の複合遊星歯車は、
前記太陽歯車と噛み合う第1遊星歯車と、
前記第1遊星歯車の一側に配置されて前記回転内接歯車と噛み合い、歯数が前記第1遊星歯車より少ない第2遊星歯車と、
前記第1遊星歯車の他側に配置されて前記固定内接歯車と噛み合い、歯数が前記第1遊星歯車より少ない第3遊星歯車とを備え、
前記複数の複合遊星歯車のいずれか1つは、前記複数の複合遊星歯車の他の1つと厚さ方向に重なるように配置されることを特徴とする遊星歯車駆動機。
【請求項2】
前記いずれか1つの複合遊星歯車の前記第1遊星歯車は、前記他の1つの複合遊星歯車の前記第1遊星歯車と厚さ方向に重なるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の遊星歯車駆動機。
【請求項3】
前記いずれか1つの複合遊星歯車の前記第1遊星歯車は、前記いずれか1つの複合遊星歯車の前記第3遊星歯車から所定間隔だけ離隔して配置され、前記いずれか1つの複合遊星歯車の前記第3遊星歯車と共に第1離隔部を規定し、
前記他の1つの複合遊星歯車の前記第1遊星歯車は、前記他の1つの複合遊星歯車の前記第2遊星歯車から所定間隔だけ離隔して配置され、前記他の1つの複合遊星歯車の前記第2遊星歯車と共に第2離隔部を規定することを特徴とする請求項2に記載の遊星歯車駆動機。
【請求項4】
前記いずれか1つの複合遊星歯車の前記第1遊星歯車の一部は、前記第2離隔部内に配置され、
前記他の1つの複合遊星歯車の前記第1遊星歯車の一部は、前記第1離隔部内に配置されることを特徴とする請求項3に記載の遊星歯車駆動機。
【請求項5】
前記いずれか1つの複合遊星歯車の前記第1遊星歯車は、前記他の1つの複合遊星歯車の前記第2及び第3遊星歯車の少なくとも一方と厚さ方向に重なるように配置されることを特徴とする請求項2に記載の遊星歯車駆動機。
【請求項6】
前記第1遊星歯車の一部は、前記固定内接歯車と前記回転内接歯車との間に配置されることを特徴とする請求項2に記載の遊星歯車駆動機。
【請求項7】
前記太陽歯車は、前記いずれか1つの複合遊星歯車の前記第1遊星歯車及び前記他の1つの複合遊星歯車の前記第1遊星歯車と半径方向に重なるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の遊星歯車駆動機。
【請求項8】
前記回転内接歯車の歯数は、前記固定内接歯車の歯数より少なく、
前記第2遊星歯車の歯数は、前記第3遊星歯車の歯数より少ないことを特徴とする請求項1に記載の遊星歯車駆動機。
【請求項9】
前記回転内接歯車の歯数は、前記固定内接歯車の歯数より多く、
前記第2遊星歯車の歯数は、前記第3遊星歯車の歯数より多いことを特徴とする請求項1に記載の遊星歯車駆動機。
【請求項10】
前記第1遊星歯車は、
一側に延びて前記第2遊星歯車と結合される第1延長部と、
他側に延びて前記第3遊星歯車と結合される第2延長部とを含み、
前記第2及び第3遊星歯車は、前記第1遊星歯車と歯端部(tooth
end)が一致するように整列されることを特徴とする請求項1に記載の遊星歯車駆動機。
【請求項11】
前記第1遊星歯車の厚さ方向に延びる貫通孔に挿入されて前記第1及び第2延長部内に配置されるピンベアリングと、
前記キャリアを前記ピンベアリングに回転可能に結合する締結ユニットとをさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の遊星歯車駆動機。
【請求項12】
太陽歯車と、
前記太陽歯車と同心に配置される回転内接歯車と、
前記太陽歯車と同心に配置される固定内接歯車と、
前記太陽歯車と噛み合う第1遊星歯車、前記第1遊星歯車の一側に配置されて前記回転内接歯車と噛み合う第2遊星歯車、及び前記第1遊星歯車の他側に配置されて前記固定内接歯車と噛み合う第3遊星歯車を備え、前記第1~第3遊星歯車が同一回転軸上に一体に結合される複数の複合遊星歯車と、
前記複数の複合遊星歯車にそれぞれ相対回転可能に連結されるキャリアとを含み、
前記複数の複合遊星歯車のいずれか1つの前記第1遊星歯車の一部は、前記複数の複合遊星歯車の他の1つの前記第1遊星歯車と厚さ方向に重なるように配置されることを特徴とする遊星歯車駆動機。
【請求項13】
前記いずれか1つの複合遊星歯車の前記第2及び第3遊星歯車の間の間隔と、前記他の1つの複合遊星歯車の前記第2及び第3遊星歯車の間の間隔とは、同じであり、
前記いずれか1つの複合遊星歯車の前記第1遊星歯車と、前記他の1つの複合遊星歯車の前記第1遊星歯車とは、前記間隔内で一部が重なった状態でずれて配置されることを特徴とする請求項12に記載の遊星歯車駆動機。
【請求項14】
前記いずれか1つの複合遊星歯車の前記第1遊星歯車の一部は、前記他の1つの複合遊星歯車の前記第2及び第3遊星歯車の少なくとも一方と厚さ方向に重なるように配置されることを特徴とする請求項12に記載の遊星歯車駆動機。
【請求項15】
前記太陽歯車は、前記いずれか1つの複合遊星歯車の前記第1遊星歯車及び前記他の1つの複合遊星歯車の前記第1遊星歯車と半径方向に重なるように配置されることを特徴とする請求項12に記載の遊星歯車駆動機。
【請求項16】
前記回転内接歯車の歯数は、前記固定内接歯車の歯数より少なく、
前記第2遊星歯車の歯数は、前記第3遊星歯車の歯数より少ないことを特徴とする請求項12に記載の遊星歯車駆動機。
【請求項17】
前記回転内接歯車の歯数は、前記固定内接歯車の歯数より多く、
前記第2遊星歯車の歯数は、前記第3遊星歯車の歯数より多いことを特徴とする請求項12に記載の遊星歯車駆動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車セットを用いて高い減速比を提供する駆動機に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動機は、電気エネルギーなどを機械的駆動力に変換する装置であって、動きを必要とする装置に必要不可欠な構成である。駆動機の動力源(モータ、エンジンなど)からは速い速度の回転が発生するのに対して回転力(トルク)が低いので、動力源だけで被駆動装置の動きを実現するには限界があった。
【0003】
このような理由により、通常、駆動機には減速機が付加される。減速機は、動力源と被駆動装置との間に配置され、動きの実現に適するように回転数を減少させて回転力を増加させるように構成される。
【0004】
特に、ロボットの制御などのように非常に精巧(精密)な動作が要求される場合は、動力源から出力される回転を高い減速比で減速させる必要がある。また、駆動機には、高い回転力、低い摩擦力、高い逆駆動性が求められる。
【0005】
駆動機が十分な減速比を提供できない場合、多くの段階にわたって回転を減速させる過程が必要であり、それは駆動機の構造の大きさ及び複雑度を増加させ得る。よって、高い減速比を提供できる駆動機に対する要求がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の目的は、遊星歯車セットを改良して高い減速比、高い回転力、高い効率、低い摩擦力、高い逆駆動性が得られる駆動機を提供することにある。
【0007】
本発明の第2の目的は、上記性能を実現しながらも遊星歯車駆動機の体積を減少させることのできる構造を提供することにある。
【0008】
本発明の第3の目的は、遊星歯車駆動機の部品点数及び加工コストを低減することのできる構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の目的を達成するために、本発明は、太陽歯車と、前記太陽歯車と同心に配置される回転内接歯車と、前記太陽歯車と同心に配置される固定内接歯車と、前記太陽歯車と噛み合う第1遊星歯車、前記第1遊星歯車の一側に配置されて前記回転内接歯車と噛み合う第2遊星歯車、及び前記第1遊星歯車の他側に配置されて前記固定内接歯車と噛み合う第3遊星歯車を備え、前記第1~第3遊星歯車が同一回転軸上に一体に結合される複数の複合遊星歯車と、前記複数の複合遊星歯車にそれぞれ相対回転可能に連結されるキャリアとを含み、前記複数の複合遊星歯車のいずれか1つの前記第1遊星歯車の一部は、前記複数の複合遊星歯車の他の1つの前記第1遊星歯車と厚さ方向に重なるように配置される、遊星歯車駆動機を提供する。
【0010】
本発明の第2の目的を達成するために、前記いずれか1つの複合遊星歯車の前記第2及び第3遊星歯車の間の間隔と、前記他の1つの複合遊星歯車の前記第2及び第3遊星歯車の間の間隔とは、同じであり、前記いずれか1つの複合遊星歯車の前記第1遊星歯車と、前記他の1つの複合遊星歯車の前記第1遊星歯車とは、前記間隔内で一部が重なった状態でずれて配置される。
【0011】
本発明の第3の目的を達成するために、前記第2遊星歯車は、前記第1遊星歯車の第1延長部に圧入固定され、前記第3遊星歯車は、前記第1遊星歯車の第2延長部に圧入固定される。また、前記遊星歯車駆動機は、前記第1遊星歯車の厚さ方向に延びる貫通孔に挿入されて前記第1及び第2延長部内に配置されるピンベアリングと、前記キャリアを前記ピンベアリングに回転可能に結合する締結ユニットとをさらに含む。
【発明の効果】
【0012】
上記解決手段により得られる本発明の効果は次の通りである。
【0013】
第一に、第1遊星歯車が太陽歯車からの駆動力により複合遊星歯車を自転させ、固定内接歯車と噛み合った第3遊星歯車が太陽歯車を中心に複合遊星歯車を公転させ、第2遊星歯車がそれに噛み合った回転内接歯車を回転させる。その過程で、太陽歯車と第1遊星歯車との歯数差、固定内接歯車と第3遊星歯車との歯数差、及び回転内接歯車と第2遊星歯車との歯数差により、高い減速比を得ることができる。
【0014】
第二に、いずれか1つの複合遊星歯車の第1遊星歯車とそれに隣接する他の1つの複合遊星歯車の第1遊星歯車とが厚さ方向に重なるようにずれて配置されることにより、遊星歯車駆動機の体積を減少させることができる。通常の遊星歯車減速機が2段に構成された構造と比較すると、本発明においては、体積がより小さいながらも、より高い減速比及び高い回転力を有するようにすることができる。また、複合遊星歯車が2つの遊星歯車で構成された構造と比較すると、本発明においては、より高い効率、低い摩擦力、高い逆駆動性を有するようにすることができる。さらに、本発明においては、波動歯車装置に比べて、高い回転力、高い効率、低い摩擦力を有するようにすることができる。
【0015】
第三に、第2及び第3遊星歯車が第1遊星歯車に圧入固定され、ピンベアリングが第1遊星歯車の貫通孔に圧入固定されることにより、複合遊星歯車の組立及び回転のための部品点数を削減することができ、加工コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態による遊星歯車駆動機を示す斜視図である。
図2図1に示す遊星歯車駆動機の分解斜視図である。
図3図2に示す遊星歯車駆動機のA-A線断面図である。
図4図1に示す遊星歯車駆動機のB-B線断面図である。
図5図4に示す遊星歯車セットのスティック線図である。
図6図2に示す複合遊星歯車を示す概念図である。
図7図2に示す互いに隣接して配置された2つの複合遊星歯車と太陽歯車との配置関係を示す概念図である。
図8図6の(a)に示す複合遊星歯車のC-C線断面図である。
図9図1に示す遊星歯車セットの一設計例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本明細書に開示される実施形態について詳細に説明するが、図面番号に関係なく同一又は類似の構成要素には同一又は類似の符号を付し、その説明は省略する。以下の説明で用いる構成要素の接尾辞である「モジュール」及び「部(ユニット)」は、明細書の作成を容易にするために付与又は混用されるものであり、それ自体が有意性や有用性を有するものではない。また、本明細書に開示される実施形態について説明するにあたって、関連する公知技術についての具体的な説明が本明細書に開示される実施形態の要旨を不明瞭にする恐れがあると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。なお、添付図面は本明細書に開示される実施形態を容易に理解できるようにするためのものにすぎず、添付図面により本明細書に開示される技術的思想が限定されるものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物又は代替物が本発明に含まれるものと理解されるべきである。
【0018】
第1、第2などのように序数を含む用語は様々な構成要素を説明するために用いられるが、上記構成要素は上記用語により限定されるものではない。上記用語は1つの構成要素を他の構成要素と区別する目的でのみ用いられる。
【0019】
ある構成要素が他の構成要素に「連結」又は「接続」されていると言及された場合は、他の構成要素に直接連結又は接続されていてもよく、中間にさらに他の構成要素が存在してもよいものと解すべきである。それに対して、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結」又は「直接接続」されていると言及された場合は、中間にさらに他の構成要素が存在しないものと解すべきである。
【0020】
単数の表現には、特に断らない限り複数の表現が含まれる。
【0021】
本明細書において、「含む」や「有する」などの用語は、明細書に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はそれらの組み合わせが存在することを指定しようとするもので、1つ又はそれ以上の他の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はそれらの組み合わせの存在や付加可能性を予め排除するものではないと理解すべきである。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態による遊星歯車駆動機100を示す斜視図であり、図2は、図1に示す遊星歯車駆動機100の分解斜視図であり、図3は、図2に示す遊星歯車駆動機100のA-A線断面図であり、図4は、図1に示す遊星歯車駆動機100のB-B線断面図である。
【0023】
図1図4に示すように、遊星歯車駆動機100は、動力源であるモータ196と、減速機である遊星歯車セットとを含む。遊星歯車セットは、モータ196と被駆動装置(例えば、ロボットの腕や脚など)との間に配置され、動きの実現に適するように回転数を減少させて回転力を増加させるように構成される。
【0024】
遊星歯車セットは、太陽歯車110、回転内接歯車120、固定内接歯車130、複数の複合遊星歯車140、及びキャリア150、160、180を含む。複合遊星歯車140は、太陽歯車110と噛み合う第1遊星歯車141、回転内接歯車120と噛み合う第2遊星歯車142、及び固定内接歯車130と噛み合う第3遊星歯車143を含む。遊星歯車セットの詳細構造については後述する。
【0025】
遊星歯車駆動機100は、リングフレーム191と、クロスローラベアリング193と、アウトプットフレーム194と、ハウジング195とをさらに含む。
【0026】
リングフレーム191とハウジング195とは、互いに結合されて遊星歯車駆動機100の外形を形成し、その内部に遊星歯車セットとモータ196を収容するようになっている。
【0027】
アウトプットフレーム194は、回転内接歯車120に結合され、回転内接歯車120の回転時に共に回転する。つまり、アウトプットフレーム194は、遊星歯車駆動機100から発生した回転力が最終的に伝達される部分である。アウトプットフレーム194は、被駆動装置に連結され、前記回転力を伝達する。
【0028】
アウトプットフレーム194とハウジング195間には、アウトプットフレーム194を回転可能に支持するクロスローラベアリング193が配置される。
【0029】
上記構造により、アウトプットフレーム194は、位置が固定されたリングフレーム191に対して相対回転可能になる。
【0030】
リングフレーム191には、アウトプットフレーム194の回転を検知するように形成される第1エンコーダ192が装着されてもよい。第1エンコーダ192は、電源供給状態と無関係に、常に絶対位置値を測定するアブソリュートエンコーダ(Absolute Encoder)であってもよい。
【0031】
モータ196は、固定子(stator)196a及び回転子(rotor)196bを備え、駆動力を発生するように形成される。
【0032】
モータ196に隣接するハウジング195の内面には、モータ196の回転を検知するように形成される第2エンコーダ197が装着されてもよい。第2エンコーダ197は、基点からの相対的な位置を測定するインクリメンタルエンコーダ(Incremental Encoder)であってもよい。
【0033】
以下、減速機として機能する遊星歯車セットについてより具体的に説明する。
【0034】
図5は、図4に示す遊星歯車セットのスティック線図であり、図6は、図2に示す複合遊星歯車140を示す概念図である。
【0035】
図5及び図6に示すように、遊星歯車セットは、太陽歯車110、回転内接歯車120、固定内接歯車130、複数の複合遊星歯車140、及びキャリア150、160、180を含む。
【0036】
本実施形態において、キャリア150、160、180は、複数の複合遊星歯車140の一側に配置される第1キャリアフレーム150、複数の複合遊星歯車140の他側に配置される第2キャリアフレーム160、及びそれぞれの複合遊星歯車140を貫通して第1キャリアフレーム150と第2キャリアフレーム160に連結される締結ユニット180を含む構造を有する。
【0037】
太陽歯車110,Sは、モータ196の回転子196bに連結され、モータ196から発生する駆動力を複合遊星歯車140に伝達する。太陽歯車110,Sは、キャリア(本実施形態においては、第2キャリアフレーム160)を貫通して複合遊星歯車140の第1遊星歯車141,P1と噛み合う。
【0038】
回転内接歯車120,R1は、太陽歯車110,Sと同心に配置される。回転内接歯車120,R1の回転中心は、太陽歯車110,Sの回転中心に一致する。回転内接歯車120,R1は、固定内接歯車130,R2より内径が小さく、歯数が少ない。
【0039】
固定内接歯車130,R2は、太陽歯車110,Sと同心に配置される。固定内接歯車130,R2の中心は、太陽歯車110,Sの回転中心に一致する。固定内接歯車130,R2は、遊星歯車セットの厚さ方向に回転内接歯車120,R1に対向して配置される。本実施形態において、固定内接歯車130,R2と回転内接歯車120,R1との間には、第1遊星歯車141,P1が配置される。前述した配置構造と後述する配置構造(隣接する第1遊星歯車141、141’同士が一部重なった状態でずれて配置される構造)により、第1遊星歯車141,P1が定まった空間内で最大の直径と最大の歯数を有するようにすることができる。
【0040】
複合遊星歯車140は、第1遊星歯車141,P1、第2遊星歯車142,P2、及び第3遊星歯車143,P3を含む。第1遊星歯車141,P1、第2遊星歯車142,P2、及び第3遊星歯車143,P3は、同一回転軸上に一体に結合されて共に回転する。
【0041】
本実施形態においては、複合遊星歯車140が6個備えられ、各複合遊星歯車140の回転軸が、太陽歯車110の中心から半径方向に所定距離だけ離隔した位置で、前記中心を基準として所定角度毎に(同図においては、60°毎に)配置された場合を示す。
【0042】
第1遊星歯車141,P1は、太陽歯車110,Sと噛み合う。第1遊星歯車141,P1は、第2遊星歯車142,P2及び第3遊星歯車143,P3より直径が大きく、歯数が多い。
【0043】
第2遊星歯車142,P2は、第1遊星歯車141,P1の一側に配置され、回転内接歯車120,R1と噛み合う。本実施形態において、第2遊星歯車142,P2は、第3遊星歯車143,P3より直径が小さく、歯数が少ない。
【0044】
第3遊星歯車143,P3は、第1遊星歯車141,P1の他側に配置され、固定内接歯車130,R2と噛み合う。
【0045】
第1キャリアフレーム150は、複数の複合遊星歯車140の一側に配置され、複数の複合遊星歯車140と相対回転可能に連結される。つまり、各複合遊星歯車140の回転軸は、第1キャリアフレーム150に回転可能に連結される。
【0046】
第2キャリアフレーム160は、複数の複合遊星歯車140の他側に配置され、複数の複合遊星歯車140と相対回転可能に連結される。つまり、各複合遊星歯車140の回転軸は、第2キャリアフレーム160に回転可能に連結される。第2キャリアフレーム160の中央部には、太陽歯車110乃至回転子196bが貫通するように開口が形成される。
【0047】
上記構造により、遊星歯車セットは次のように駆動される。
【0048】
モータ196が駆動されると、モータ196から発生する駆動力により太陽歯車110が回転する。太陽歯車110は、それに噛み合った第1遊星歯車141に駆動力を伝達する。以下、太陽歯車110が時計方向に回転する場合を例に説明する。
【0049】
第1遊星歯車141は、太陽歯車110からの回転力により複合遊星歯車140を自転させる。本例において、複合遊星歯車140は半時計方向に自転する。
【0050】
このとき、固定内接歯車130と噛み合った第3遊星歯車143が太陽歯車110を中心に複合遊星歯車140を公転させる。本例において、複合遊星歯車140は時計方向に公転する。
【0051】
複合遊星歯車140が自転及び公転することにより、第2遊星歯車142は、それに噛み合った回転内接歯車120を回転させる。本例において、回転内接歯車120は時計方向に回転する。
【0052】
上記過程で、太陽歯車110と第1遊星歯車141との歯数差、固定内接歯車130と第3遊星歯車143との歯数差、及び回転内接歯車120と第2遊星歯車142との歯数差により、高い減速比を得ることができる。
【0053】
減速比は、入力速度(すなわち、太陽歯車110の回転速度)に対する出力速度(すなわち、回転内接歯車120の回転速度)であり、(P1/S+P3/R2)/(P3/R2-P2/R1)で計算される。当該減速比の計算式で、Sは太陽歯車110の歯数、R1は回転内接歯車120の歯数、R2は固定内接歯車130の歯数、P1は第1遊星歯車141の歯数、P2は第2遊星歯車142の歯数、及びP3は第3遊星歯車143の歯数である。
【0054】
なお、内接歯車120、130の歯数に対する、内接歯車120、130に噛み合った遊星歯車142、143の歯数の比(Px/Ry)は、内接歯車120、130の直径(歯数に比例)が大きいほどより大きい。
【0055】
よって、上記構造のように、回転内接歯車120が固定内接歯車130より直径が小さく、歯数が少なく、また、第2遊星歯車142が第3遊星歯車143より直径が小さく、歯数が少ない場合は、常にP3/R2がP2/R1より大きいので、減速比は常に正数となる。すなわち、回転内接歯車120が太陽歯車110と同じ方向に回転する。
【0056】
しかし、本発明は、これに限定されるものではない。回転内接歯車120は、固定内接歯車130より直径が大きく、歯数が多くしてもよく、また、第2遊星歯車142は、第3遊星歯車143より直径が大きく、歯数が多くしてもよい。この場合は、常にP3/R2がP2/R1より小さいので、減速比は常に負数となる。すなわち、回転内接歯車120が太陽歯車110の回転方向の逆方向に回転する。
【0057】
以下、上記性能を実現しながらも遊星歯車駆動機100の体積を減少させることのできる構造について説明する。
【0058】
図7は、図2に示す互いに隣接して配置された2つの複合遊星歯車140と太陽歯車110との配置関係を示す概念図である。なお、(a)では、太陽歯車110の相当部分が2つの複合遊星歯車140、140’に隠れている。(b)は、(a)の逆方向から見た図であり、太陽歯車110が2つの複合遊星歯車140、140’の一部を隠している。
【0059】
図7の(a)を図2及び図3と共に参照すると、いずれか1つの複合遊星歯車140は、それに隣接する他の1つの複合遊星歯車140’と厚さ方向に重なるように配置される。すなわち、いずれか1つの複合遊星歯車140と他の1つの複合遊星歯車140’とがずれて配置され、遊星歯車駆動機100がコンパクトに構成されるようにする。
【0060】
具体的には、いずれか1つの複合遊星歯車140に備えられる第1遊星歯車141と、他の1つの複合遊星歯車140’に備えられる第1遊星歯車141’とは、厚さ方向に重なるように配置される。
【0061】
ここで、いずれか1つの複合遊星歯車140に備えられる第2及び第3遊星歯車142、143の間の間隔と、他の1つの複合遊星歯車140’に備えられる第2及び第3遊星歯車142’、143’の間の間隔とは、同一になっている。
【0062】
ただし、いずれか1つの複合遊星歯車140に備えられる第1遊星歯車141と、他の1つの複合遊星歯車140’に備えられる第1遊星歯車141’とは、前記間隔内で一部が重なった状態でずれて配置される。
【0063】
上記構造を実現するために、いずれか1つの複合遊星歯車140に備えられる第1遊星歯車141は、第3遊星歯車143から所定間隔だけ離隔して配置され、第3遊星歯車143と共に第1離隔部140aを規定する。それに対して、他の1つの複合遊星歯車140’に備えられる第1遊星歯車141’は、第2遊星歯車142’から所定間隔だけ離隔して配置され、第2遊星歯車142’と共に第2離隔部140bを規定する。
【0064】
上記構造において、いずれか1つの複合遊星歯車140に備えられる第1遊星歯車141の一部は、第2離隔部140b内に配置され、他の1つの複合遊星歯車140’に備えられる第1遊星歯車141’の一部は、第1離隔部140a内に配置される。
【0065】
これによれば、第1遊星歯車141の直径及び歯数を増加させて減速比を高めながらも、隣接する2つの複合遊星歯車140、140’の間で干渉が生じないコンパクトな構造を実現することができる。
【0066】
遊星歯車減速機が2段に積層された構造と比較すると、本構造は、体積がより小さいながらも、より高い減速比及び高い回転力を有する。また、複合遊星歯車140が2つの遊星歯車で構成された構造と比較すると、本構造は、より高い効率、低い摩擦力、高い逆駆動性を有する。さらに、本構造は、波動歯車装置に比べて、高い回転力、高い効率、低い摩擦力を有する。
【0067】
一方、いずれか1つの複合遊星歯車140に備えられる第1遊星歯車141は、他の1つの複合遊星歯車140’に備えられる第2及び第3遊星歯車142’、143’の少なくとも一方と厚さ方向に重なるように配置されてもよい。本実施形態においては、いずれか1つの複合遊星歯車140に備えられる第1遊星歯車141が他の1つの複合遊星歯車140’に備えられる第1~第3遊星歯車141’、142’、143’の全てと厚さ方向に重なるように配置された場合を示す。
【0068】
図7の(a)及び(b)を共に参照すると、太陽歯車110は、各複合遊星歯車140の第1遊星歯車141と噛み合って駆動力を伝達するように形成される。隣接する2つの第1遊星歯車141、141’がずれて配置される構造を有するので、太陽歯車110は、いずれか1つの複合遊星歯車140に備えられる第1遊星歯車141及び他の1つの複合遊星歯車140’に備えられる第1遊星歯車141’と半径方向に重なるように配置される。
【0069】
太陽歯車110の歯厚(tooth thickness)は、いずれか1つの複合遊星歯車140に備えられる第1遊星歯車141の歯厚と他の1つの複合遊星歯車140’に備えられる第1遊星歯車141’の歯厚の和より厚い。
【0070】
以下、遊星歯車駆動機100の部品点数及び加工コストを低減することのできる構造について説明する。
【0071】
図8は、図6の(a)に示す複合遊星歯車140のC-C線断面図である。
【0072】
図8に示すように、第1~第3遊星歯車141、142、143は、同一回転軸上に一体に結合される。そのために、第1遊星歯車141は、第1延長部141a及び第2延長部141bを含む。
【0073】
第1延長部141aは、第1遊星歯車141の一側に延びて第2遊星歯車142と結合される。第2遊星歯車142は、第1延長部141aに圧入固定されてもよい。
【0074】
第1延長部141aの外周には、ガイド突起が回転軸方向に沿って延設され、第2遊星歯車142の内周には、ガイド突起に挿入されて第1延長部141aへの挿入がガイドされるガイド溝が形成されるようにしてもよい。ガイド突起とガイド溝とは、互いに形成位置が変わってもよい。
【0075】
また、第1延長部141aには、第2遊星歯車142の挿入量を制限するストッパが備えられてもよい。
【0076】
第2延長部141bは、第1遊星歯車141の他側に延びて第3遊星歯車143と結合される。第3遊星歯車143は、第2延長部141bに圧入固定されてもよい。
【0077】
第2延長部141bの外周には、ガイド突起が回転軸方向に沿って延設され、第3遊星歯車143の内周には、ガイド突起に挿入されて第2延長部141bへの挿入がガイドされるガイド溝が形成されるようにしてもよい。ガイド突起とガイド溝とは、互いに形成位置が変わってもよい。
【0078】
また、第2延長部141bには、第3遊星歯車143の挿入量を制限するストッパが備えられてもよい。
【0079】
第2及び第3遊星歯車142、143は、第1遊星歯車141と歯端部(tooth
end)が一致するように整列される。このために、前述したガイド突起及びガイド溝は、予め設定された位置に形成されて前記整列をガイドするようにしてもよい。
【0080】
一方、第1遊星歯車141には、厚さ方向に第1遊星歯車141の中心を貫通する貫通孔141cが延設される。貫通孔141cは、第1及び第2延長部141a、141bを貫通するように形成される。
【0081】
貫通孔141cには、ピンベアリング170が挿入される。ピンベアリング170は、貫通孔141cに挿入されて第1及び第2延長部141a、141b内に配置される。
【0082】
第1キャリアフレーム150及び第2キャリアフレーム160は、締結ユニット180によりピンベアリング170に回転可能に結合される。本実施形態において、締結ユニット180は、シャフト181、第1締結ピン182a及び第2締結ピン182bを含む。シャフト181は、ピンベアリング170に挿入され、第1締結ピン182aは、第1キャリアフレーム150を貫通してシャフト181に挿入され、第2締結ピン182bは、第2キャリアフレーム160を貫通してシャフト181に挿入される。
【0083】
上記構造によれば、第2及び第3遊星歯車142、143が第1遊星歯車141に圧入固定され、ピンベアリング170が第1遊星歯車141の貫通孔141cに圧入固定されることにより、複合遊星歯車140の組立及び回転のための部品点数を削減することができ、加工コストを低減することができる。
【0084】
以下、図9を参照して、図1に示す遊星歯車セットの一設計例について説明する。
【0085】
図9に示すように、太陽歯車110は、18個の歯数(S=18)を有し、回転内接歯車120は、90個の歯数(R1=90)を有し、固定内接歯車130は、96個の歯数(R2=96)を有する。また、複合遊星歯車140において、第1遊星歯車141は、48個の歯数(P1=48)を有し、第2遊星歯車142は、24個の歯数(P2=24)を有し、第3遊星歯車143は、30個の歯数(P3=30)を有する。ここで、各歯車の直径は歯数に比例する。
【0086】
減速比は、(P1/S+P3/R2)/(P3/R2-P2/R1)で計算される。当該計算式で計算すると、前述した遊星歯車セットの減速比は65である。すなわち、前記遊星歯車セットを用いると、65:1に減速することができる。
【0087】
一方、本発明の詳細な説明は例示的なものであり、あらゆる面で限定的に解釈されてはならない。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲の合理的解釈により定められるべきであり、本発明の等価的範囲内でのあらゆる変更が本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
100 遊星歯車駆動機
110 太陽歯車
120 回転内接歯車
130 固定内接歯車
140 複合遊星歯車
140a 第1離隔部
140b 第2離隔部
141 第1遊星歯車
141a 第1延長部
141b 第2延長部
141c 貫通孔
142 第2遊星歯車
143 第3遊星歯車
150 第1フレーム
160 第2フレーム
170 ピンベアリング
180 締結ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9