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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045930
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】マンコンベアの長尺物監視システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/02 20060101AFI20220315BHJP
   B66B 31/00 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
B66B29/02 Z
B66B31/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148817
(22)【出願日】2020-09-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石塚 智也
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321AA04
3F321EB07
3F321EC07
3F321GA31
3F321HA01
(57)【要約】
【課題】乗客が持つ長尺物を検知して対処する。
【解決手段】一実施形態に係るマンコンベアの長尺物監視システムは、長尺物検知手段と、制御手段とを備える。上記長尺物検知手段は、マンコンベアの乗り口と降り口との間の移動経路上で、高さ方向に一定値以上の長さを有する長尺物が縦向きで侵入したことを検知する。上記制御手段は、上記長尺物検知手段によって上記長尺物が検知された場合に、上記長尺物に対する対応処理を実行する。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンコンベアの乗り口と降り口との間の移動経路上で、高さ方向に一定値以上の長さを有する長尺物が縦向きで侵入したことを検知する長尺物検知手段と、
上記長尺物検知手段によって上記長尺物が検知された場合に、上記長尺物に対する対応処理を実行する制御手段と
を具備したことを特徴とするマンコンベアの長尺物監視システム。
【請求項2】
上記制御手段は、
上記長尺物の検知状況に応じて、上記対応処理を段階的に実行することを特徴とする請求項1記載のマンコンベアの長尺物監視システム。
【請求項3】
上記制御手段は、
上記長尺物が検知されたときに、第1段階の処理として警告を発することを特徴とする請求項2記載のマンコンベアの長尺物監視システム。
【請求項4】
上記制御手段は、
上記長尺物が第1の時間の間に継続的に検知されている場合に、第2段階の処理として上記マンコンベアの運転を減速することを特徴とする請求項3記載のマンコンベアの長尺物監視システム。
【請求項5】
上記制御手段は、
上記長尺物が上記第1の時間よりも長く設定された第2の時間の間、継続的に検知されている場合に、第3段階の処理として上記マンコンベアの運転を停止することを特徴とする請求項4記載のマンコンベアの長尺物監視システム。
【請求項6】
上記マンコンベアの上記降り口付近に上記乗り口に向けて設置されたセンサを備え、
上記長尺物検知手段は、
上記センサの信号に基づいて、上記移動経路上で上記長尺物を検知することを特徴とする請求項1記載のマンコンベアの長尺物監視システム。
【請求項7】
上記マンコンベアの上記乗り口付近に上記降り口に向けて設置されたセンサを備え、
上記長尺物検知手段は、
上記センサの信号に基づいて、上記移動経路上で上記長尺物を検知することを特徴とする請求項1記載のマンコンベアの長尺物監視システム。
【請求項8】
上記マンコンベアの上記降り口付近の所定の高さ位置に設置され、上記降り口に向けて水平方向にレーザ光を投光するセンサを備え、
上記長尺物検知手段は、
上記センサの信号に基づいて、上記移動経路上で上記長尺物を検知することを特徴とする請求項1記載のマンコンベアの長尺物監視システム。
【請求項9】
上記乗り口から上記降り口までの範囲を撮影するカメラを備え、
上記長尺物検知手段は、
上記センサの信号と上記カメラの画像情報とに基づいて、上記移動経路上で上記長尺物を検知することを特徴とする請求項6または7記載のマンコンベアの長尺物監視システム。
【請求項10】
上記長尺物検知手段は、
上記カメラの画像情報を解析処理し、上記センサによって検知された物体が上記長尺物であるか否かを判断することを特徴とする請求項9記載のマンコンベアの長尺物監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エスカレータや動く歩道などのマンコンベアに用いられる長尺物監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マンコンベアは、複数の踏段(ステップ)が移動することで、踏段に乗った乗客を乗り口から降り口まで移動させる構成にある。ここで、マンコンベアの上り運転において、乗客が乗り口から長尺物(竿や角材など)を縦(垂直方向)に持って乗り込むと、建物の天井の構造によっては、天井と踏段との間に長尺物が挟まり、踏段を押し下げて欠落させる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-80268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、マンコンベアの踏段の下は機械室が配置されている。このため、踏段が欠落すると、乗客が機械室に落下する危険がある。したがって、長尺物の持ち込みに対し、安全対策を施しておく必要がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、乗客が持つ長尺物を検知して対処することのできるマンコンベアの長尺物監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るマンコンベアの長尺物監視システムは、長尺物検知手段と、制御手段とを備える。上記長尺物検知手段は、マンコンベアの乗り口と降り口との間の移動経路上で、高さ方向に一定値以上の長さを有する長尺物が縦向きで侵入したことを検知する。上記制御手段は、上記長尺物検知手段によって上記長尺物が検知された場合に、上記長尺物に対する対応処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は一実施形態に係るエスカレータの外観構成を示す斜視図である。
図2図2は上記エスカレータの内部を含む全体的な構成を模式的に示した図である。
図3図3は上記エスカレータの乗り口側にセンサを設置した例を示す図である。
図4図4は上記エスカレータの乗り口側にセンサを設置した別の例を示す図である。
図5図5は上記エスカレータの乗り口付近にセンサを配置し、レーザ光を各踏段の移動方向と垂直する方向に投光する構成の問題点を説明するための図である。
図6図6は上記センサとして拡散反射形光電センサを用いた場合の構成を示す図である。
図7図7は上記センサとして回帰反射形光電センサを用いた場合の構成を示す図である。
図8図8は上記センサとしてエリアセンサを用いた場合の構成を示す図である。
図9図9は上記エスカレータに用いられる長尺物監視システムの機能構成を示すブロック図である。
図10図10は上記長尺物監視システムの動作を示すフローチャートである。
図11図11は上記長尺物監視システムによって実行される対応処理のタイミングを説明するための図である。
図12図12は変形例としてカメラを補助的に用いる例を示す図である。
図13図13は上記カメラを備えた長尺物監視システムの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
なお、以下ではマンコンベアの一つであるエスカレータを例にして説明する。各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0009】
図1は一実施形態に係るエスカレータの外観構成を示す斜視図である。図2はエスカレータの内部を含む全体的な構成を模式的に示した図である。図中の10はエスカレータ全体を示す。
【0010】
エスカレータ10は、例えば建物の上階と下階との間に傾斜して設置される。エスカレータ10は、隙間なく連結された多数の踏段(ステップ)11を乗降口12と乗降口13との間で循環移動させることで、踏段11上に搭乗した乗客を搬送する。乗客が踏段11に乗り降りするための乗降口12,13の床面には、それぞれに踏段11の移動方向に所定の長さを有する乗降板14,15が配設されている。
【0011】
各踏段11は、無端状の連結チェーン18によって連結されており、建物の床下に設置されたトラス19内に配置されている。トラス19の内部には、下部スプロケット20と上部スプロケット21が配置されており、これらの間に連結チェーン18が巻き掛けられている。
【0012】
下部スプロケット20と上部スプロケット21のいずれか一方(この例では上部スプロケット21)には、モータや減速機などを有する駆動装置22が連結されている。この駆動装置22により、下部スプロケット20と上部スプロケット21が回転し、連結チェーン18を介して複数の踏段11が図示しない案内レールにガイドされながら下部機械室16の乗降口12と上部機械室17の乗降口13との間を循環移動する。
【0013】
トラス19の上部には、各踏段11の両側面と対向するように一対のスカートガード23a,23bが踏段11の移動方向に沿って設置されている。この一対のスカートガード23a,23b上にそれぞれ欄干24a,24bが立設されている。欄干24a,24bの周囲にはベルト状のハンドレール25a,25bが装着されている。ハンドレール25a,25bは、踏段11に搭乗している乗客が把持する手摺であり、例えば駆動装置22の駆動力が伝達されることで、踏段11の移動と同期して周回する。
【0014】
ここで、本実施形態では、建物の乗降口13付近の天井面30にセンサ31が乗降口12に向けて設置されている。センサ31は、例えば光電センサであり、乗降口13から乗降口12に向けてレーザ光を投光し、高さ方向に一定値L以上の長さを有する長尺物32を検知する。長尺物32は、例えば竿や角材などである。
【0015】
いま、エスカレータ10が上昇運転中であり、各踏段11が矢印a方向に移動している場合を想定する。この場合、下側の乗降口12は乗り口、上側の乗降口13は降り口になる。乗客P1が長尺物32を縦(垂直方向)に持った状態で、乗降口12から乗り込むと、乗降口13に近づくに連れて、長尺物32の先端部と天井面30との間隔が狭まる。上記一定値Lは、乗客P1が乗降口13に到着するまでの間に、長尺物32の先端部が天井面30に接触する高さに合わせて定められている。このような長尺物32を縦に持って乗客P1がエスカレータ10に乗り込んだ場合に、センサ31のレーザ光が遮断されるように、センサ31の設置位置の高さと向きが調整されている。
【0016】
図3は、エスカレータ10の乗降口12(乗り口)側にセンサ31を設置した例を示している。センサ31は、例えば乗降口12付近の壁面33に乗降口13に向けて設置され、乗降口12から乗降口13に向けてレーザ光を投光し、高さ方向に一定値L以上の長さを有する長尺物32を検知する。
【0017】
図4は、エスカレータ10の乗降口12(乗り口)側にセンサ31を設置した別の例を示している。センサ31は、例えば乗降口12付近の壁面33の上部に乗降口13に向けて設置され、所定の高さHの位置から乗降口13に向けて水平方向にレーザ光を投光し、高さ方向に一定値L以上の長さを有する長尺物32を検知する。センサ31の設置位置の高さHは、例えばエスカレータ10の中間位置付近で一定値L以上の長さを有する長尺物32を検知するように調整されている。図4の例では、乗客P1が乗降口12よりも上の位置(中間位置以降)に進んだときに、センサ31のレーザ光が遮断されて長尺物32を検知できる。
【0018】
なお、例えば図5に示すように、乗降口12(乗り口)付近でセンサ31を所定の高さ位置に配置し、レーザ光を各踏段11の移動方向と垂直する方向に投光する構成が考えられる。しかし、この構成では、乗客P1が持つ長尺物32を乗降口12付近でしか検知できない問題がある。このため、例えば乗客P1が乗降口12付近では長尺物32を横(水平方向)に持ち、途中で長尺物32を縦に持ち変えた場合には見逃してしまう可能性が高い。したがって、乗降口12から乗客P1の持つ長尺物32を継続的に検知するためには、図2または図3の例のように、センサ31のレーザ光を各踏段11の移動経路に沿って投光する構成が好ましい。
【0019】
図6乃至図8にセンサ31の構成を示す。
図6に示すように、センサ31として、例えば拡散反射形光電センサ34が用いられる。拡散反射形光電センサ34は、投光器34aと受光器34bとが一体型化された構造を有し、投光器34aから投光されたレーザ光が検出体である長尺物32で反射して受光器34bで受光されたときの光量から長尺物32を検知する。
【0020】
また、図7に示すような回帰反射形光電センサ35が用いても良い。回帰反射形光電センサ35は、投光器35aと受光器35bとが一体型化された構造を有し、さらに、検出体を挟んで反射板35cを有する。投光器35aから投光されたレーザ光は、反射板35cに反射して受光器35bに戻る。検出体である長尺物32がレーザ光を遮ると、受光器35bに戻る光の量が減少する。回帰反射形光電センサ35は、この光の量の減少をとらえて、長尺物32を検知する。
【0021】
回帰反射形光電センサ35の検出距離は、本体(投光器35aと受光器35b)から反射板35cまでの距離であり、拡散反射形光電センサ34よりも長い。エスカレータ10の距離が長い場合には、回帰反射形光電センサ35を使用する方が好ましい。ただし、拡散反射形でも回帰反射形でも、一次元の光電センサ(ラインセンサ)の場合、乗客P1が持つ長尺物32にレーザ光が当たらず、検知できない可能性がある。そこで、図8に示すように、レーザ光を走査可能なエリアセンサ36を用いて、長尺物32の幅方向に検知範囲を広げて、長尺物32を検知する構成が最も好ましい。
【0022】
図9は長尺物監視システムの機能構成を示すブロック図である。
本実施形態における長尺物監視システムは、図2に示したセンサ31、駆動装置22の他に、長尺物検知装置41と、制御装置42と、警告装置45とを備える。
【0023】
センサ31は、上述した拡散反射形光電センサ34、回帰反射形光電センサ35、エリアセンサ36などである。センサ31は、エスカレータ10の乗降口13付近に乗降口12に向けて設置されるか(図2参照)、あるいは、乗降口12付近に乗降口13に向けて設置される(図3または図4参照)。
【0024】
長尺物検知装置41は、センサ31から出力される信号に基づいて、エスカレータ10に長尺物32が縦向きで侵入したことを検知する。なお、図9の例では、長尺物検知装置41と制御装置42とを独立して設けているが、制御装置42に長尺物検知装置41の機能を備えることでも良い。
【0025】
制御装置42は、コンピュータからなり、図2に示した上部機械室17などに設置される。制御装置42は、本システムを実現するための構成要素として、制御部43と記憶部44とを備える。制御部43は、具体的にはマイクロプロセッサからなり、長尺物検知装置41によって長尺物32が検知された場合に、長尺物32に対する対応処理を実行する。対応処理には少なくとも3つの処理(警告処理、減速処理、停止処理)を含み、制御部43は、長尺物32の検知状況に応じて、これらの処理を段階的に実行する。記憶部44は、本システムを実現するためのプログラムを含み、制御部43の処理に必要な情報を記憶している。
【0026】
なお、制御装置42とは別に、本システム専用の端末装置を設け、その端末装置が本システムに関する処理を実行する構成としても良い。当該端末装置はエスカレータ10の機械室16または機械室17のいずれかに設けられていても良い。また、当該端末装置はエスカレータ10が存する建屋内に設けられて、通信により本システムを制御しても良い。
【0027】
駆動装置22は、図2で説明したようにモータや減速機などを有し、下部スプロケット20と上部スプロケット21を回転させて、複数の踏段11を循環移動させる。警告装置45は、乗降口12側のスカートガード23a,23bの一方に設けられ、乗降口12付近で長尺物32が検知された場合に、乗客P1に対して長尺物32が危険である旨を音声アナウンスする。
【0028】
次に、本実施形態における長尺物監視システムの動作について説明する。
図10は長尺物監視システムの動作を示すフローチャートであり、主として制御装置42の処理動作が示されている。
【0029】
いま、図2に示したように、エスカレータ10が上昇運転中であり、各踏段11が矢印a方向に移動している場合を想定する。この場合、乗降口12は乗り口、乗降口13は降り口となる。乗降口13付近にセンサ31が乗降口12に向けて設置されているとする。
【0030】
乗客P1が高さ方向に一定値L以上の長さを有する長尺物32を縦に持って乗降口12から入ると、センサ31によって検知される。長尺物検知装置41は、このセンサ31から出力される信号を受けて、エスカレータ10の乗降口12と乗降口13との間の移動経路上に長尺物32が縦向きで侵入したことを検知する。
【0031】
長尺物検知装置41によって長尺物32が検知されると(ステップS11のYes)、制御装置42は、長尺物32の検知状況に応じて、以下のような対応処理を段階的に実行する。
【0032】
すなわち、まず、第1の時間t1以内の間に乗降口12で長尺物32が検知されたときに(ステップS12のNo)、制御装置42は、第1段階の対応処理として、警告装置45を起動して警告を発する(ステップS13)。具体的には、例えば「天井にぶつかる危険がありますので、ご注意ください」といったように、乗客P1に対して長尺物32が危険である旨を音声アナウンスする。この間、エスカレータ10の運転は継続されている(ステップS14)。
【0033】
長尺物32が検知されてから第1の時間t1が経過しても継続的に検知されている場合、つまり、警告しても乗客P1が長尺物32を縦に持ったままで進み、第2の時間t2以内で長尺物32が検知された場合(ステップS12のYes→ステップS15のNo)、制御装置42は、第2段階の対応処理として、エスカレータ10の運転を減速する(ステップS16)。詳しくは、制御装置42は、駆動装置22を制御し、各踏段11の移動速度を例えば通常速度の半分に切り替えて運転を継続する。この間、警告が継続的に発せられているものとする。
【0034】
長尺物32が検知されてから第1の時間t1よりも長く設定された第2の時間t2(t2>t1)が経過しても継続的に検知されている場合、つまり、減速運転しても乗客P1が長尺物32を縦に持ったままで進んでしまった場合(ステップS15のYes)、制御装置42は、第3段階の対応処理として、エスカレータ10の運転を停止する(ステップS17)。詳しくは、制御装置42は、駆動装置22に駆動停止信号を出力して、各踏段11の移動を停止させる。
【0035】
図11に示すように、t1,t2の時間は、長尺物32が天井にぶつかる前に対応処理を段階的に実行できるように、エスカレータ10の長さや運転速度などを考慮して予め適切な値に決められている。なお、図4の例のように、乗客P1がエスカレータ10の中間位置付近に来たときにセンサ31によって長尺物32が検知される構成の場合には、t1,t2の時間を短くするか、あるいは、検知開始から第1の時間t1が経過するまでの間は「警告と減速」を行い、時間t1経過後は、すぐに「運転停止」としても良い。
【0036】
以上のように本実施形態によれば、一定値L以上の長尺物32が縦向きで侵入したことを検知して対処することができる。これにより、長尺物32が天井面30と踏段11との間に挟まり、踏段11が抜け落ちるなどの事故を未然に防ぐことができる。
【0037】
(変形例)
図12に変形例としてカメラ50を補助的に用いる例を示す。
例えば、乗客P1が風船を浮かせて持っているような場合に、センサ31では物体を特定できないため、長尺物と誤検知する可能性がある。風船は、高い位置にあっても支障はなく、天井面30と踏段11との間に挟まることもないため、必ずしも対応処理を行う必要はない。そのような場合に備えて、図12に示すように、カメラ50を天井面30などに設置しておき、そのカメラ50の撮影画像を利用して、センサ31によって検知された物体が長尺物32であるか否かを判断する構成としても良い。
【0038】
図13はカメラ50を備えた長尺物監視システムの機能構成を示すブロック図である。図13において、図9と同じ部分には同一符号を付して説明する。
【0039】
カメラ50は、例えばセンサ31と共に天井面30に設置され、乗降口12から乗降口13までの範囲を撮影対象とする。長尺物検知装置41は、画像処理機能41aを備え、センサ31によって何らかの物体が検知されたときに、カメラ50から画像情報を取得し、その画像情報を解析処理して当該物体を認識する。詳しくは、長尺物検知装置41は、撮影画像上でセンサ31の走査線上で各踏段11の移動方向(矢印a方向)に動くに物体を認識対象として抽出し、一般的に知られている画像認識方法を用いて、当該物体が長尺物32であるか否かを判断する。
【0040】
当該物体が長尺物32であった場合に、長尺物検知装置41は、その旨を制御装置42に出力する。これにより、制御装置42は、図10で説明したような対応処理を実行する。一方、当該物体が長尺物32でなかった場合には、長尺物検知装置41は、検知結果の出力を禁止する。この場合、対応処理は実行されず、エスカレータ10はそのまま運転を継続することになる。なお、当該物体が長尺物32でなかった場合に、カメラ50で特定した物体を制御装置42に与えて、例えば「○○が天井にぶつかる危険がありますので、ご注意ください」といったように、警告を行うようにしても良い。このように、カメラ50を補助的に用いることで、長尺物32でない物体が高い位置に存在する場合に適切に対処することができる。
【0041】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、乗客が持つ長尺物を検知して対処することのできるマンコンベアの長尺物監視システムを提供することができる。
【0042】
なお、本発明はエスカレータに限らず、動く歩道などを含む乗客コンベアのすべてに適用可能であり、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
要するに、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
10…エスカレータ、11…踏段、12,13…乗降口、14,15…乗降板、16,17…機械室、18…連結チェーン、19…トラス、20,21…スプロケット、22…駆動装置、23a,23b…スカートガード、24a,24b…欄干、25a,25b…ハンドレール、30…天井面、31…センサ、32…長尺物、33…壁面、34…拡散反射形光電センサ、35…回帰反射形光電センサ、36…エリアセンサ、41…長尺物検知装置、42…制御装置、43…制御部、44…記憶部、46…警告装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2021-12-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り口から降り口に向かって、踏段から天井面までの高さが狭まるマンコンベアの長尺物監視システムにおいて、
上記乗り口と上記降り口までの移動経路の中間位置付近で、高さ方向に一定値以上の長さを有する長尺物が縦向きで侵入したことを検知する長尺物検知手段と、
上記長尺物検知手段によって上記長尺物が検知された場合に、上記長尺物に対する対応処理を実行する制御手段と
を具備したことを特徴とするマンコンベアの長尺物監視システム。
【請求項2】
上記制御手段は、
上記長尺物の検知状況に応じて、上記対応処理を段階的に実行することを特徴とする請求項1記載のマンコンベアの長尺物監視システム。
【請求項3】
上記制御手段は、
上記長尺物が検知されたときに、第1段階の処理として警告を発することを特徴とする請求項2記載のマンコンベアの長尺物監視システム。
【請求項4】
上記制御手段は、
上記長尺物が第1の時間の間に継続的に検知されている場合に、第2段階の処理として上記マンコンベアの運転を減速することを特徴とする請求項3記載のマンコンベアの長尺物監視システム。
【請求項5】
上記制御手段は、
上記長尺物が上記第1の時間よりも長く設定された第2の時間の間、継続的に検知されている場合に、第3段階の処理として上記マンコンベアの運転を停止することを特徴とする請求項4記載のマンコンベアの長尺物監視システム。
【請求項6】
上記マンコンベアの上記降り口付近に上記乗り口に向けて設置されたセンサを備え、
上記長尺物検知手段は、
上記センサの信号に基づいて、上記移動経路上で上記長尺物を検知することを特徴とする請求項1記載のマンコンベアの長尺物監視システム。
【請求項7】
上記マンコンベアの上記乗り口付近に上記降り口に向けて設置されたセンサを備え、
上記長尺物検知手段は、
上記センサの信号に基づいて、上記移動経路上で上記長尺物を検知することを特徴とする請求項1記載のマンコンベアの長尺物監視システム。
【請求項8】
上記マンコンベアの上記乗り口付近の所定の高さ位置に設置され、上記降り口に向けて水平方向にレーザ光を投光するセンサを備え、
上記長尺物検知手段は、
上記センサの信号に基づいて、上記移動経路上で上記長尺物を検知することを特徴とする請求項1記載のマンコンベアの長尺物監視システム。
【請求項9】
上記乗り口から上記降り口までの範囲を撮影するカメラを備え、
上記長尺物検知手段は、
上記センサの信号と上記カメラの画像情報とに基づいて、上記移動経路上で上記長尺物を検知することを特徴とする請求項6または7記載のマンコンベアの長尺物監視システム。
【請求項10】
上記長尺物検知手段は、
上記カメラの画像情報を解析処理し、上記センサによって検知された物体が上記長尺物であるか否かを判断することを特徴とする請求項9記載のマンコンベアの長尺物監視システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
一実施形態に係るマンコンベアの長尺物監視システムは、乗り口から降り口に向かって、踏段から天井面までの高さが狭まるマンコンベアの長尺物監視システムにおいて、長尺物検知手段と、制御手段とを備える。上記長尺物検知手段は、上記乗り口と上記降り口までの移動経路の中間位置付近で、高さ方向に一定値以上の長さを有する長尺物が縦向きで侵入したことを検知する。上記制御手段は、上記長尺物検知手段によって上記長尺物が検知された場合に、上記長尺物に対する対応処理を実行する。