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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046022
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】電子機器および構造体
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/02 20060101AFI20220315BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20220315BHJP
   F16B 41/00 20060101ALI20220315BHJP
   H05K 5/03 20060101ALN20220315BHJP
   H05K 7/14 20060101ALN20220315BHJP
【FI】
H05K5/02 Q
F16B5/02 Y
F16B41/00 B
H05K5/03 H
H05K7/14 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151844
(22)【出願日】2020-09-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】潮田 達也
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 純
(72)【発明者】
【氏名】坂東 正明
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 諒太
(72)【発明者】
【氏名】山崎 央
【テーマコード(参考)】
3J001
4E360
5E348
【Fターム(参考)】
3J001FA03
3J001HA02
3J001HA09
3J001JA03
3J001KA26
3J001KB06
4E360AB09
4E360AB42
4E360BA02
4E360BC01
4E360EA24
4E360EB03
4E360ED02
4E360GA06
4E360GA32
4E360GA53
4E360GB46
5E348AA02
5E348AA32
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で、固定材と被固定材とを固定するネジおよびワッシャが脱落することのない電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器10は、下カバー21と、スタッド32が設けられたメイン基板24と、ネジ30と、ワッシャ38と、スポンジ40とを備える。ネジ30は、取付孔36より大径のヘッド部30aと、雌ネジ部32cに螺合する雄ネジ部30bと、雄ネジ部30bの谷径より小径の円柱部30cとを有する。ワッシャ38は、取付孔36より大径のフランジ部38bと、取付孔36より小径の円筒部38aと、雄ネジ部30bが螺合および通過可能な雌ネジ部38cとを有する。雄ネジ部30bが雌ネジ部38cを通過して雌ネジ部32cに螺合することによりヘッド部30aが下カバー21に当接して該下カバー21を固定する。フランジ部38bはスタッド32と下カバー21との間に配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付孔が形成された被固定材と、
第1雌ネジ部を有するスタッドが設けられた固定材と、
前記被固定材と前記固定材とを固定するネジと、
前記ネジに対して取り付けられるワッシャと、
を備え、
前記ネジは、基端に設けられて前記取付孔より大径のヘッド部と、
先端に設けられて前記第1雌ネジ部に螺合する雄ネジ部と、
前記ヘッド部と前記雄ネジ部との間に設けられて前記雄ネジ部の谷径より小径の円柱部と、
を有し、
前記ワッシャは、先端に設けられて前記取付孔より大径のフランジ部と、
基端に設けられて前記取付孔より小径の円筒部と、
軸方向に貫通し、前記雄ネジ部が螺合および通過可能な第2雌ネジ部と、
を有し、
前記雄ネジ部が前記第2雌ネジ部を通過して前記第1雌ネジ部に螺合することにより前記ヘッド部が前記被固定材に当接して該被固定材を固定し、
前記フランジ部が前記スタッドと前記被固定材との間に配置されていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記フランジ部と前記被固定材との間を塞ぐスポンジが設けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器において、
前記被固定材における前記スポンジとの当接面、前記固定材における前記スタッドとの当接面、前記スタッド、前記ワッシャおよび前記スポンジは、それぞれ導電性を有することを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子機器において、
電子部品を収納する筐体を備え、
前記被固定材は、前記筐体の一部を構成するカバーであることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子機器において、
電子部品を収納する筐体を備え、
前記被固定材は、前記筐体内に設けられて前記電子部品を放熱させるヒートスプレッダであることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記フランジ部の外形は非円形であることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
取付孔が形成された被固定材と、
第1雌ネジ部を有するスタッドが設けられた固定材と、
前記被固定材と前記固定材とを固定するネジと、
前記ネジに対して取り付けられるワッシャと、
を備え、
前記ネジは、基端に設けられて前記取付孔より大径のヘッド部と、
先端に設けられて前記第1雌ネジ部に螺合する雄ネジ部と、
前記ヘッド部と前記雄ネジ部との間に設けられて前記雄ネジ部の谷径より小径の円柱部と、
を有し、
前記ワッシャは、先端に設けられて前記取付孔より大径のフランジ部と、
基端に設けられて前記取付孔より小径の円筒部と、
軸方向に貫通し、前記雄ネジ部が螺合および通過可能な第2雌ネジ部と、
を有し、
前記雄ネジ部が前記第2雌ネジ部を通過して前記第1雌ネジ部に螺合することにより前記ヘッド部が前記被固定材に当接して該被固定材を固定し、
前記フランジ部が前記スタッドと前記被固定材との間に配置されていることを特徴とする構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジにより固定材と被固定材とを固定する電子機器および構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートブック型のパーソナルコンピュータ(ノート型PC)やタブレット型のパーソナルコンピュータ(タブレット型PC)等の電子機器の筐体には、2つの筐体部材を重ねて連結することで扁平箱状に構成した構造が広く用いられている。
【0003】
ノート型PCでは、キーボードを設けた本体筐体として、上下2つの筐体部材を重ね、両筐体部材をネジ止めした構造体が用いられており、その内部空間にCPU、メモリ、バッテリ等の電子部品が収納されている。2つの筐体部材同士を固定するのには比較的小さい締結力で足りることから小型のネジ、例えばM2またはM3サイズなどが使用される。小型のネジを用いるとデザイン上も好適である。
【0004】
また、ネジ等の締結部材によって二つの部材を締結する際、締結時の緩みを防止等するためにワッシャを用いる場合がある。ノート型PCではユーザが部品交換などのために筐体部材のネジを外す場合があるが、その際、ネジやワッシャを紛失し、またはワッシャの取り付けを忘れるという懸念がある。
【0005】
特許文献1に記載のノート型PCでは、固定材におけるスタッドに右ネジの雌ネジ部を形成し、被固定材における取付孔に左ネジの雌ネジ部を形成している。そして使用するネジには先端に右ネジの雄ネジ部を有している。つまり右ネジ部と左ネジ部とを隣接配置している。左ネジの部分は、取付孔の左ネジ部分に螺合して通過する。そうすると、ネジ山の外径は、取付孔における雌ねじの内径より大きいことから、ネジが抜けてしまうことがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-44590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のノート型PCで用いる筐体部材の構造体は、右ネジ部と左ネジ部とを備える特殊ネジを使用しており、製造コストおよび製品コストが上昇する。
【0008】
また、特許文献1に記載のノート型PCではワッシャが設けられていない。ワッシャを設けるためには、例えば、ネジ部の外形よりも内径がわずかに小さいプラスチックワッシャをやや強い力ではめ込むと、該プラスチックワッシャがネジ部とヘッド部との間に介在させることができるが、組み立て作業性に劣る。
【0009】
さらに、本体筐体にはCPUなどのノイズ発生源が含まれており、筐体部材はそのシールドとして機能させる場合がありグランドパターンと導通していることが好ましい。そのためには、グランドパターンに接触するスタッドからワッシャを介して筐体部材に導通させることが考えられるが、プラスチックワッシャは絶縁体であって導通がない。通常の円環状のワッシャでなく、いわゆるCリングやEリングであれば金属製のものがあるが、小型のネジに適用すると脱落してしまう懸念があり、しかも部品が小さいことから装着するのにはある程度の技能を要する。
【0010】
ワッシャを介さずに筐体部材をグランドパターンと導通させるためには、例えばCPUが実装されているメイン基板と筐体部材との間に導電性スポンジを介在させることが考えられるが、十分な導通を確保するためにはある程度多くの導電性スポンジを設けるため、メイン基板上で導電性スポンジ配置のための面積を確保しなければならない。また、導電性スポンジはある程度強く圧縮させる必要があり、組み立て作業性に劣る。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、簡易な構造でありながら固定材と被固定材とを固定するネジおよびワッシャが脱落することのない電子機器および構造体を提供することを目的とする。また、ワッシャを介して固定材と被固定材との間で導通が確保できると一層好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1態様に係る電子機器は、取付孔が形成された被固定材と、第1雌ネジ部を有するスタッドが設けられた固定材と、前記被固定材と前記固定材とを固定するネジと、前記ネジに対して取り付けられるワッシャと、を備え、前記ネジは、基端に設けられて前記取付孔より大径のヘッド部と、先端に設けられて前記第1雌ネジ部に螺合する雄ネジ部と、前記ヘッド部と前記雄ネジ部との間に設けられて前記雄ネジ部の谷径より小径の円柱部と、を有し、前記ワッシャは、先端に設けられて前記取付孔より大径のフランジ部と、基端に設けられて前記取付孔より小径の円筒部と、軸方向に貫通し、前記雄ネジ部が螺合および通過可能な第2雌ネジ部と、を有し、前記雄ネジ部が前記第2雌ネジ部を通過して前記第1雌ネジ部に螺合することにより前記ヘッド部が前記被固定材に当接して該被固定材を固定し、前記フランジ部が前記スタッドと前記被固定材との間に配置されている。
【0013】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第2態様に係る構造体は、取付孔が形成された被固定材と、第1雌ネジ部を有するスタッドが設けられた固定材と、前記被固定材と前記固定材とを固定するネジと、前記ネジに対して取り付けられるワッシャと、を備え、前記ネジは、基端に設けられて前記取付孔より大径のヘッド部と、先端に設けられて前記第1雌ネジ部に螺合する雄ネジ部と、前記ヘッド部と前記雄ネジ部との間に設けられて前記雄ネジ部の谷径より小径の円柱部と、を有し、前記ワッシャは、先端に設けられて前記取付孔より大径のフランジ部と、基端に設けられて前記取付孔より小径の円筒部と、軸方向に貫通し、前記雄ネジ部が螺合および通過可能な第2雌ネジ部と、を有し、前記雄ネジ部が前記第2雌ネジ部を通過して前記第1雌ネジ部に螺合することにより前記ヘッド部が前記被固定材に当接して該被固定材を固定し、前記フランジ部が前記スタッドと前記被固定材との間に配置されている。
【0014】
このような電子機器および構造体では、雄ネジ部の外径は第2雌ネジ部の内径よりも大きいことから、ネジは下方に抜けてしまうことがなく、ワッシャは上方に抜けてしまうことがない。したがって、ネジとワッシャはいずれも取付孔から脱落してしまうことがない。また、ネジおよびワッシャは逆ネジなどのない簡易な構造である。
【0015】
前記フランジ部と前記被固定材との間を塞ぐスポンジが設けられていてもよい。このようなスポンジによれば、被固定材を適度に押圧してがたつきなく固定することができる。
【0016】
前記被固定材における前記スポンジとの当接面、前記固定材における前記スタッドとの当接面、前記スタッド、前記ワッシャおよび前記スポンジは、それぞれ導電性を有してもよい。このような構造により、ワッシャを介して固定材と被固定材との間で導通を確保することができる。
【0017】
電子部品を収納する筐体を備え、前記被固定材は、前記筐体の一部を構成するカバーであると、カバーの着脱時にネジおよびワッシャの紛失を防止できる。
【0018】
電子部品を収納する筐体を備え、前記被固定材は、前記筐体内に設けられて前記電子部品を放熱させるヒートスプレッダであると、ヒートスプレッダの着脱時にネジおよびワッシャの紛失を防止できる。
【0019】
前記フランジ部の外形は非円形であると、治具等に取り付けてネジを螺合させるときに連れ回りすることがない。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、雄ネジ部の外径は第2雌ネジ部の内径よりも大きいことから、ネジは下方に抜けてしまうことがなく、ワッシャは上方に抜けてしまうことがない。したがって、ネジとワッシャはいずれも取付孔から脱落してしまうことがない。また、ネジおよびワッシャは逆ネジなどのない簡易な構造である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器の斜視図である。
図2図2は、斜め下方向から見た本体筐体の分解斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る構造体の断面側面図である。
図4図4は、ネジ、下カバー、ワッシャおよび組立治具の分解斜視図である。
図5図5は、ネジ、下カバー、ワッシャおよび組立治具の断面側面図である。
図6図6は、下カバーおよびワッシャが取り付けられた状態のネジの断面側面図である。
図7図7は、第1変形例に係る構造体の断面側面図である。
図8図8は、第2変形例に係る構造体の断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る電子機器および構造体の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態である電子機器10を示す斜視図である。電子機器10はノート型PCである。本発明はデスクトップ型PC、タブレット型PC、スマートフォン又は携帯電話等、各種電子機器に利用可能である。また、本発明は、例えば折り畳み可能なディスプレイ(有機ELタイプなど)を備える、いわゆるフォルダブル型PCにも適用可能である。
【0024】
電子機器10は、本発明の一実施形態にかかる構造体12(図3参照)を含む。本発明に係る構造体は、これ以外にもネジにより固定材と被固定材とを固定する構造に適用可能である。
【0025】
以下、電子機器10および構造体12について図1に示す使用形態を基準とし、電子機器10を構成する本体筐体14におけるキーボード装置16が露呈する側を「上」、その反対側を「下」とする。上下方向は軸方向とも呼ぶ。
【0026】
図1に示すように、電子機器10は、キーボード装置16やタッチパッド17等の入力手段を有する本体筐体14と、液晶ディスプレイ等からなるディスプレイ装置18を有する矩形平板状のディスプレイ筐体20とを備える。
【0027】
本体筐体(筐体)14は、下カバー(カバー)21と上カバー22とを連結した扁平箱状である。下カバー21および上カバー22はそれぞれ本体筐体14を構成している。下カバー21および上カバー22は導電性のある電磁ノイズ遮蔽材で構成されており、例えばマグネシウム合金、アルミニウム合金またはカーボン材などである。本体筐体14の内部にはメイン基板24やバッテリ26(図2参照)等の各種電子部品が収納されている。キーボード装置16及びタッチパッド17は、本体筐体14の上面を構成する上カバー22の中央部分に配設されている。
【0028】
ディスプレイ筐体20は、本体筐体14の後縁部に対してヒンジ23を介して開閉可能に連結されており、ヒンジ23を通過した図示しないケーブルにより本体筐体14と電気的に接続されている。ディスプレイ装置18は、例えば液晶ディスプレイである。
【0029】
図2は、斜め下方向から見た本体筐体14の分解斜視図である。図2に示すように本体筐体14における上カバー22には、メイン基板24、バッテリ26などが収納されている。メイン基板24にはCPU(電子部品)24aが実装されている。CPU24aは発熱体であり、ヒートパイプ24bおよびファン24cが放熱および冷却する。また、ヒートスプレッダ28もCPU24aを放熱および冷却させる。ヒートスプレッダ28は熱伝達性および導電性のよい金属板であり、例えば銅板である。ヒートスプレッダ28は適度に広い面積を有し、凸部28aでCPU24aに対して熱的に当接し、該CPU24aの熱を放散させる。ヒートスプレッダ28はCPU24aを覆っており、該CPU24aの電磁ノイズを遮蔽する作用がある。
【0030】
ヒートスプレッダ28には複数のネジ30が設けられており、該ネジ30によってメイン基板24に固定される。メイン基板24にはネジ30が螺合するスタッド32が設けられている。スタッド32は上カバー22にも設けられている。ネジ30およびスタッド32の詳細については後述する。
【0031】
下カバー21には縁に沿って複数の凹部34が形成されている。凹部34には取付孔36(図3参照)が設けられている。各取付孔36にはネジ30が設けられている。このネジ30は、ヒートスプレッダ28に設けられているものと同じである。ネジ30のヘッド部30aは凹部34の中に納まっており、電子機器10を載置する載置面との干渉がなく、目立たないことからデザイン的にも好適である。下カバー21の表面には塗膜21a(図3参照)が形成されている。
【0032】
図3は、本発明の一実施形態に係る構造体12の断面側面図である。構造体12は、取付孔36が形成された被固定材である下カバー21とスタッド32が設けられた固定材であるメイン基板24とを固定するものである。本願でいう固定材と被固定材とは識別上の呼称であり、逆の呼称でも構わない。構造体12は下カバー21およびメイン基板24の他に、ネジ30と、スタッド32と、ワッシャ38と、スポンジ40とを有する。なお、構造体12の構成要素の各部の径については図3が煩雑となってしまうため、一部を図4に示している。構造体12については、下側端部を「基端」、上側端部を「先端」とも呼ぶ。
【0033】
構造体12は、上記のとおり下カバー21とメイン基板24との固定の他に、ヒートスプレッダ28とメイン基板24の固定、および下カバー21と上カバー22との固定にも適用されている(図2参照)。これらの図示は省略するが、ヒートスプレッダ28とメイン基板24の固定箇所では図3における下カバー21をヒートスプレッダ28に置き換え、下カバー21と上カバー22の固定箇所では図3におけるメイン基板24を上カバー22に置き換えればよい。また構造体12は、例えば上カバー22に対してキーボード装置16を固定するのに用いることもできる。
【0034】
ネジ30は、基端に設けられたヘッド部30aと、先端に設けられた雄ネジ部30bと、ヘッド部30aと雄ネジ部30bとの間に設けられた円柱部30cとを有する。ネジ30は金属製であるが、樹脂製であってもよい。下カバー21の固定は比較的小さい締結力で足りることから、雄ネジ部30bおよび後述する雌ネジ部32c,38cは、例えばM2またはM3など小型のものが適用可能である。
【0035】
スタッド32は金属製の段付き円筒形状部品であり、下側の小径部32aと上側の大径部32bとを有する。スタッド32おける中心の軸方向貫通孔には雌ネジ部(第1雌ネジ部)32cが形成されている。雌ネジ部32cにはネジ30の雄ネジ部30bが螺合している。大径部32bはメイン基板24に固定されており、グランドパターン24dと接し、導通している。
【0036】
ワッシャ38は金属製の段付き形状部品であり、基端(つまり下側)に設けられた円筒部38aと、先端(つまり上側)に設けられたフランジ部38bとを有する。ワッシャ38における軸方向貫通孔には雌ネジ部(第2雌ネジ部)38cが形成されている。雌ネジ部38cはネジ30の雄ネジ部30bが螺合可能な形状である。つまり、スタッド32の雌ネジ部32cとワッシャ38の雌ネジ部38cとは同規格ネジである。構造体12によって下カバー21とメイン基板24とが固定されている状態では、雄ネジ部30bは雌ネジ部38cを通り抜けており、雌ネジ部38cによって囲まれた中空部にはネジ30の円柱部30cが配置されている。ワッシャ38はヘッド部30aとスタッド32とによって挟持されている。構造体12が下カバー21とメイン基板24とを締結する前の状態では(図6参照)、ワッシャ38はネジ30に対して回転可能になっている。
【0037】
スポンジ40は円環形状であり、凹部34の上面に相当する座面34aとフランジ部38bとによって弾性的に挟持される適度な厚みを有する。スポンジ40は導電性を有する。スポンジ40は、座面34aに対して導電性の接着剤または粘着テープなどで固定されており、下カバー21と導通している。スポンジ40はフランジ部38bと座面34aとの間を塞いでおり、下カバー21を適度に押圧してがたつきなく固定することができる。また、スポンジ40が介在していることにより、取付孔36、ワッシャ38およびスタッド32は軸方向について多少の寸法誤差が許容される。
【0038】
ヘッド部30aの外径DAaは、凹部34の内径DBaより小さく、取付孔36の内径DBbより大きい。したがって、ヘッド部30aは、凹部34内に収納されてその座面が凹部34の底面に当接して下カバー21を固定することができる。
【0039】
雄ネジ部30bの外径DAbはいわゆる呼び径であり、雌ネジ部32cおよび雌ネジ部38cの谷径と実質的に等しい。また、雄ネジ部30bの谷径は、雌ネジ部32cの内径DCcおよび雌ネジ部38cの内径DDcと実質的に等しい。円柱部30cの外径DAcは、雄ネジ部32bの谷径および雌ネジ部38cの内径DCcよりやや小さく、円柱部30cと雌ネジ部38cとの間には隙間G2が形成される。円柱部30cの軸方向長さはワッシャ38よりも長い。また、円柱部30cと雄ネジ部30bとの軸方向合計長さは、ワッシャ38とスタッド32との合計長さより短い。
【0040】
円筒部38aの軸方向長さは、取付孔36の厚みとスポンジ40の非圧縮状態厚みとの合計よりやや小さい。ワッシャ38の円筒部38aの外径DCaは取付孔36の内径DBbより小さく、円筒部38aと取付孔36との間には隙間G1が形成される。すなわち、取付孔36と円柱部30cとの間には、ワッシャ38の円筒部38aを介して隙間G1と隙間G2とが形成されており、これらの合計幅分だけ下カバー21とメイン基板24とは横方向に相対的な移動代が確保されている。したがって、構造体12を複数設けていても、相互間の位置ずれを吸収することができ、下カバー21に歪みが生じることがない。これにより、机等の載置面上に載置した際にロッキングを生じて不安定になることがなく、製品品質の低下を抑えることができる。
【0041】
フランジ部38bは後述する組立治具50に対して回り止め作用を奏するように外形が六角形となっている(図4参照)。回り止め作用のためには、フランジ部38bの外形は六角形以外の非円形にしてもよいが、六角形であると簡易な形状で製造しやすく、バランスもよい。また、六角形であれば組立具50以外に六角ソケットなど汎用工具を利用することもできる。フランジ部38bの外形は、六角形の外接円直径に相当する最大径DCbaと、内接円直径に相当する最小径DCbbとによって表される。フランジ部38bは適度に薄い。
【0042】
フランジ部38bは、少なくとも最大径DCbaが取付孔36の内径DBbより大きく設定されており、より好ましくは最小径DCbbが取付孔36の内径DBbより大きく設定されている。これにより、フランジ部38bはスポンジ40を介して座面34aに当接することからワッシャとして機能する。ワッシャの機能とは、例えばネジ30の緩み止めや、スタッド32とヘッド部30aとの間のなじみをよくすることである。また、最小径DCbbが取付孔の内径DBbより大きく設定されていることから、ワッシャ38は下方に抜けることがない。
【0043】
スタッド32における小径部32aの外径DDaはフランジ部38bと当接するのに適度な寸法となっている。スタッド32における大径部32bの外径DDbはメイン基板24に固定するのに適度な寸法となっている。スタッド32の形状はこれに限定されず、例えば外径DDaと外径DDbを等しくしてもよい。スポンジ40の内径は取付孔36の内径DBbとほぼ等しい。
【0044】
次に、構造体12の組み立て方法について説明する。
【0045】
図4は、ネジ30、下カバー21、ワッシャ38および組立治具50の分解斜視図である。図5は、ネジ30、下カバー21、ワッシャ38および組立治具50の断面側面図である。図6は、下カバー21およびワッシャ38が取り付けられた状態のネジ30の断面側面図である。
【0046】
図4および図5に示すように、下カバー21、ネジ30およびワッシャ38は、組立治具50を用いて組み立てられる。組立治具50は固定された柱状部50aで構成されている。柱状部50aの中心には一方に開口した位置決凹部50bが形成されている。位置決凹部50bはワッシャ38のフランジ部38bが嵌り込む六角形の凹部である。位置決凹部50bの底面には貫通孔50cが形成されている。貫通孔50cの内径は雄ネジ部30bよりも大径である。
【0047】
図5に示すように、下カバー21、ネジ30およびワッシャ38を組み立てるには、フランジ部38bを位置決凹部50bに嵌め込み、ワッシャ38の円筒部38aと取付孔36とが同心状となるように下カバー21をセットする。下カバー21のセットについては、所定の位置決め治具を用いてもよい。座面34aにはあらかじめスポンジ40を取り付けておく。
【0048】
そして、ネジ30のヘッド部30aをドライバなどの回転手段によって回転させ、雄ネジ部30bをワッシャ38の雌ネジ部38cに螺合させる。このとき、外形が非円形であるフランジ部38bは同形状の位置決凹部50bに嵌り込んでいることから、ワッシャ38はネジ30と連れ回りすることがない。
【0049】
さらに、雄ネジ部30bが雌ネジ部38cを通過するまでネジ30を十分に回転させる。雌ネジ部38cを通過した雄ネジ部30bは、貫通孔50cも通過して組立治具50から突出する。この後、組立治具50をワッシャ38から取り外す。そうすると、組み立てられた下カバー21、ネジ30およびワッシャ38は図6に示す状態となる。
【0050】
図6に示すように、ヘッド部30aが取付孔36よりも大径であることから、ネジ30は上方に抜けてしまうことがない。フランジ部38bは取付孔36よりも大径であることから、ワッシャ38は下方に抜けてしまうことがない。雄ネジ部30bの外径は雌ネジ部38cの内径よりも大きいことから、ネジ30は下方に抜けてしまうことがなく、ワッシャ38は上方に抜けてしまうことがない。ネジ30の雄ネジ部30bおよびワッシャ38の雌ネジ部38cは相互のネジ山が軸方向に干渉し合うためである。このように、ネジ30とワッシャ38はいずれも取付孔36から脱落してしまうことがない。したがって、ユーザが本体筐体14から下カバー21を取り外したとき、または電子機器10の製造組み立て工程において、ネジ30およびワッシャ38の紛失や、ワッシャ38の取付忘れを防止できる。
【0051】
下カバー21を本体筐体14に組み付ける際には、ネジ30のヘッド部30aをドライバなどの回転手段によって回転させ、雄ネジ部30bをスタッド32の雌ネジ部32cに螺合させる。これにより図3に示す構造体12が形成される。
【0052】
このように構成される電子機器10および構造体12においては、下カバー21とメイン基板24とを固定する固定部材であるネジ30およびワッシャ38が脱落してしまうことがない。また、ネジ30およびワッシャ38は逆ネジなどのない簡易な構造であって製造コストおよび製品コストを抑制することができる。
【0053】
ワッシャ38をネジ30に取り付けるのは、ワッシャ38を組立治具50で固定した上で、ネジ30を回転させて雄ネジ部30bを雌ネジ部38cに螺合させるだけで足りる。したがって、ネジ30およびワッシャ38が小さい部品であっても特段の技能を要せず、作業性に優れる。ワッシャ38は環状であってCリングのような開口部がないためネジ30から径方向に外れてしまうことがない。
【0054】
スポンジ40は取付孔36と同心状に配置されていることから座面34aとフランジ部38bとにより直接的に圧縮されており、適度に強く挟持されて導通性および防塵性がよい。
【0055】
図3に示すように、被固定材である下カバー21は少なくともスポンジ40との当接面である座面34aが導電性を有しており、固定材であるメイン基板24は少なくともスタッド32との当接面であるグランドパターン24dが導電性を有している。また、スタッド32、ワッシャ38およびスポンジ40についても導電性を有していることから、太矢印で示すように下カバー21とメイン基板24との間が導通する。したがって、下カバー21はCPU24aなどのノイズ発生源に対するシールド作用を奏する。なお、下カバー21をヒートスプレッダ28で置き換えた場合には、該ヒートスプレッダ28がシールド作用を奏することはもちろんである。
【0056】
構造体12では、ワッシャ38およびスポンジ40を介して座面34aとグランドパターン24dとの間で導通が確保されることから、ネジ30については絶縁体を用いてもよい。また、塗膜21aについても絶縁膜であってもよい。
【0057】
一般的にノート型PCの本体筐体でカバーを固定するには複数のネジが用いられる。本実施形態に係る電子機器10においても下カバー21を本体筐体14に固定するのに構造体12が複数設けられている。したがって、スポンジ40を介した下カバー21とメイン基板24との導通経路も複数個所で形成され、適度な導通性が確保される。これによりメイン基板24と下カバー21との間の他の導通手段を不要とし、またはその数を低減させることができ、メイン基板24に面積の余裕が得られて部品レイアウトの自由度が向上する。
【0058】
図7は、第1変形例に係る構造体12Aの断面側面図である。図8は、第2変形例に係る構造体12Bの断面側面図である。構造体12A,12Bで上記の構造体12と同様の構成要素については、同符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0059】
図7に示すように、第1変形例に係る構造体12Aでは、スタッド32が上カバー22の内面に設けられ、メイン基板24がスタッド32の大径部32bとフランジ部38bとによって挟持されている。スタッド32の小径部32aはメイン基板24のスルーホール24eに入り込んでおり、該スルーホール24eから下方には突出していない。メイン基板24の両面にグランドパターン24dが設けられ、それぞれフランジ部38bおよび大径部32bに接していれば、2つの太矢印で示すようにメイン基板24は下カバー21および上カバー22との導通を確保することができる。
【0060】
この構造体12Aでは、被固定材としての下カバー21と固定材としての上カバー22とを固定するとともに、さらにメイン基板24を固定することができる。構造体12Aでは、概念的にはメイン基板24をスタッド32の一部と見做すことができる。
【0061】
図8に示すように、第2変形例に係る構造体12Bにおけるワッシャ38は、フランジ部38bがやや厚くなっており、その分上記のスポンジ40が省略されている。すなわち、取付孔36の軸方向厚みとワッシャ38における円筒部38aの軸方向長さとが精度よく一致していれば、スポンジ40を省略して構成を一層簡便化することができる。この構造体12Bにおいても、太矢印で示すようにメイン基板24と下カバー21との間の導通が確保される。
【0062】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
10 電子機器
12,12A,12B 構造体
14 本体筐体(筐体)
21 下カバー(カバー)
22 上カバー
24 メイン基板
24a CPU(電子部品)
24d グランドパターン
28 ヒートスプレッダ
30 ネジ
30a ヘッド部
30b 雄ネジ部
30c 円柱部
32 スタッド
32a 小径部
32b 大径部
32c 雌ネジ部(第1雌ネジ部)
34 凹部
34a 座面
36 取付孔
38 ワッシャ
38a 円筒部
38b フランジ部
38c 雌ネジ部(第2雌ネジ部)
40 スポンジ
50 組立治具
50a 柱状部
50b 位置決凹部
50c 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8