IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人京都大学の特許一覧

特開2022-46028コンクリート3Dプリンティング用補強材
<>
  • 特開-コンクリート3Dプリンティング用補強材 図1
  • 特開-コンクリート3Dプリンティング用補強材 図2
  • 特開-コンクリート3Dプリンティング用補強材 図3
  • 特開-コンクリート3Dプリンティング用補強材 図4
  • 特開-コンクリート3Dプリンティング用補強材 図5
  • 特開-コンクリート3Dプリンティング用補強材 図6
  • 特開-コンクリート3Dプリンティング用補強材 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046028
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】コンクリート3Dプリンティング用補強材
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/18 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
E04C5/18
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151853
(22)【出願日】2020-09-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 裕一
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164AA02
2E164AA13
2E164AA25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自由な造型が可能である付加製造の特性を生かしつつ、構造物の強度や耐久性に必要となる鉄筋コンクリート材料を用いた付加製造が可能になる、コンクリート3Dプリンティング用補強材を提供する。
【解決手段】S字状に加工した鉄筋を、先端が放射状に広がるように3個を組み合わせ、中心を結束線で固定する。これがコンクリート3Dプリンティング用補強材3の最小単位となる。コンクリートの吐出前にノズル装置7内でコンクリート材料とコンクリート3Dプリンティング用補強材3を混ぜ合わせることにより、コンクリート3Dプリンティング用補強材3にコンクリート材料が十分に付着されて、空隙などの欠陥が少ない、自由な造型が可能である付加製造の特性を保ちながら、品質の高い鉄筋コンクリート構造物が可能になる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート材料の3Dプリンティングに使用する補強材であって、
鉄筋コンクリート構造物の部材の引張強度が必要な箇所に埋め込むための補強材であって、
S字状に加工した棒状の鉄筋を、先端が放射状に広がるように、少なくとも3個以上、中心で組み合わせた形状を持つことを特徴とする補強材。
【請求項2】
中心を通るワイヤーで複数が数珠つなぎに連結した形状とされることを特徴とする請求項1に記載の補強材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート材料の3Dプリンティング(付加製造)に使用する補強材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土木建築構造物では、鉄筋コンクリートが主要な材料として用いられている。従来の鉄筋コンクリートの施工方法は、あらかじめ、鉄筋及び型枠を組み立てたのち、流動性の高い生コンクリートを流し込む。これにより鉄筋とコンクリートを一体化し、引張力に強い鉄筋と圧縮力に強いコンクリートを組み合わせた高い強度を持つ鉄筋コンクリートになる。
【0003】
このような鉄筋コンクリート構造物を、付加製造技術を用い製作するには、非特許文献1の付加製造方法で挙げられている材料押出方式が適していると考えられている。この方式を用い、適切に調整されたセメント系の材料をノズルから押出し、堆積させて固化していく。
【0004】
しかし、この方法では、あらかじめ鉄筋を組み立てておくと、ノズルの動線と鉄筋とが干渉して施工できないため、鉄筋を配置しない無筋コンクリート構造物に限られてくる。
【0005】
あるいは、積層ごとにノズルを止めて鉄筋を設置していくこと、又は、特許文献1の強化材のように面状の鉄筋を積層ごとに設置していくことも考えられるが、作業を中断すること、及び、別の労働力が必要となること、後から鉄筋を設置すると鉄筋とコンクリート間の付着性が十分でなくなることから、付加製造技術の利点を生かせず、強度的にも弱くなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2018-535861号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】特許庁、「平成25年度特許出願技術動向調査報告書(概要)3Dプリンター」、平成26年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
鉄筋コンクリート構造物を、付加製造技術を用い製作する際に、セメント系の材料を吐出するノズルの動線と鉄筋の干渉を避ける必要がある、という課題がある。
【0009】
付加製造技術による施工の自動化という利点をそのままにして、コンクリートの内部に鉄筋を埋め込む必要がある、という課題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、容易に吐出機構に組み込むことができ、鉄筋をコンクリート内に配置することが可能になる、コンクリート3Dプリンティング用補強材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のコンクリート3Dプリンティング用補強材は、鉄筋コンクリート構造物の部材の引張強度が必要な箇所に埋め込むための補強材であって、S字状に加工した棒状の鉄筋を、先端が放射状に広がるように、少なくとも3個以上、中心で組み合わせた形状を持つことを特徴とする。
【0012】
また、前記補強材は、中心を通るワイヤーで複数を数珠つなぎに連結した形状にすることができる。
【0013】
前記補強材を流し込む生コンクリート材料に浸しておき、同時にノズルから吐出する。吐出後の前記補強材が絡み合うことで連結し、従来の鉄筋が担っていた部材の引張力を負担する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、自由な造型が可能である付加製造の特性を生かしつつ、構造物の強度や耐久性に必要となる鉄筋コンクリート材料を用いた付加製造が可能になる。
【0015】
通常の施工で必要となる鉄筋をあらかじめ設置しておく必要がないため、大幅な省力化が可能である。
【0016】
また、あらかじめ補強材を生コンクリート材料に浸しておくことで、補強材とコンクリート材料間の付着性が向上する。
【0017】
また、鉄筋設置の工程の自動化可能となり、建設現場の生産性向上に大きく貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】S字状に加工した鉄筋を3個組み合わせた、1個のコンクリート3Dプリンティング用補強材の一例である。
図2】複数のコンクリート3Dプリンティング用補強材を用い、全体として強度が発現できるようにした組み合わせの一例である。
図3】複数のコンクリート3Dプリンティング用補強材の中心をワイヤーでつないだ、施工の一例である。
図4】付加製造の材料押出方式のノズル装置、及びコンクリート材料の施工の一例である。
図5】コンクリート3Dプリンティング用補強材の送り出し装置を取り付けた図4のノズル装置、及びコンクリート材料とコンクリート3Dプリンティング用補強材を同時に押し出して付加製造により施工した一例である。
図6】コンクリート材料とコンクリート3Dプリンティング用補強材を同時に押し出して付加製造により施工した壁面の一例である。
図7】コンクリート材料とコンクリート3Dプリンティング用補強材を部分的に同時に押し出して付加製造により施工した梁の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
実施例1
実施例1は、コンクリート3Dプリンティング用補強材の最小単位の一例である。
【0021】
図1は、S字状に加工した鉄筋1を、先端が放射状に広がるように3個を組み合わせ、中心を結束線2で固定したコンクリート3Dプリンティング用補強材3である。
【0022】
S字状への加工に限らず、先端を鉤形状にする加工、又は、機械的に接続する機構を設けることもできる。また、3個の組み合わせに限らず、4個以上を組み合わせることもできる。鉄筋に限らず、引張強度の高い材料を用いることもできる。結束線の材質も鋼製に限らず、他の材料でも可能であり、溶接により固定することもできる。
【0023】
図2は、複数のコンクリート3Dプリンティング用補強材3を用い、全体として強度が発現できるようにした組み合わせの一例である。コンクリート3Dプリンティング用補強材3同士が引っ掛り合い、コンクリートの内部にあることでコンクリート自体もコンクリート3Dプリンティング用補強材3の動きを妨げ、従来の鉄筋コンクリートと同等の強度が可能になる。
【0024】
図3は、複数のコンクリート3Dプリンティング用補強材3をこれらの中心を通るワイヤー4で数珠つなぎに連結した形状にした一例である。この例では、一個一個のコンクリート3Dプリンティング用補強材3を等間隔で配置することができ、ワイヤー4自体にもコンクリート3Dプリンティング用補強材3が引っ掛かることができ、コンクリート3Dプリンティング用補強材3同士の一体性が高くなる。
【0025】
鋼製のワイヤー4に限らず、引張強度の高い材料を用いることもできる。また、ワイヤーに限らず、鎖や棒を用いることもできる。
【0026】
実施例2
実施例2は、付加製造の材料押出方式のノズル装置、及びコンクリート3Dプリンティング用補強材の施工方法の一例である。
【0027】
図4は、付加製造の材料押出方式のノズル装置7、及びコンクリート材料の施工の一例である。コンクリート輸送管8をノズル装置7につなぎ、位置制御アーム9でノズル装置の位置を制御し、ノズル装置7からコンクリート材料6を吐出し、施工済みの層5の上に、積層状に施工していく。
【0028】
図5は、コンクリート3Dプリンティング用補強材の送り出し装置10を取り付けた図4のノズル装置7、及びコンクリート材料6とコンクリート3Dプリンティング用補強材3を同時に押し出して付加製造による施工方法の一例である。
【0029】
コンクリートの吐出前にノズル装置7内でコンクリート材料とコンクリート3Dプリンティング用補強材3を混ぜ合わせることにより、コンクリート3Dプリンティング用補強材3にコンクリート材料が十分に付着されて、空隙などの欠陥が少ない、品質の高い鉄筋コンクリート構造物が可能になる。
【0030】
図3のワイヤー4で数珠つなぎに連結した形状にしたコンクリート3Dプリンティング用補強材3を用いることもできる。
【0031】
実施例3
実施例3は、付加製造により施工した擁壁の一例である。
【0032】
図6は、実施例3の構成全体を示した図である。コンクリート材料とコンクリート3Dプリンティング用補強材3を同時にノズル装置から吐出し、積層して施工した擁壁11である。コンクリート3Dプリンティング用補強材3同士がコンクリート内部で引っ掛り合い、全体として、従来の鉄筋コンクリートと同等の強度が可能になる。
【0033】
実施例4
実施例4は、付加製造により施工した梁部材の一例である。
【0034】
図7は、実施例4の構成全体を示した図である。引張強度が必要な箇所ではコンクリート材料とコンクリート3Dプリンティング用補強材3を同時にノズル装置から吐出し、それ以外の箇所ではコンクリート材料のみ吐出し、積層して施工した梁部材12である。
【0035】
コンクリート3Dプリンティング用補強材を配置する位置は部材の要求性能によって自由に決めることができる。また、コンクリート3Dプリンティング用補強材の大きさは、部材の要求性能によって変えることができる。
【0036】
本発明は、以上説明した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、当分野において通常の知識を有する者により可能な実施形態の変更は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1 S字状に加工した鉄筋
2 結束線
3 コンクリート3Dプリンティング用補強材
4 ワイヤー
5 付加製造において下層になる層
6 付加製造において新たな層になる吐出されたコンクリート材料
7 ノズル装置
8 コンクリート輸送管
9 ノズル装置の位置制御機構アームの先端
10 コンクリート3Dプリンティング用補強材送り出し装置
11 付加製造により施工した擁壁
12 付加製造により施工した梁部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-10-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート材料の3Dプリンティングに使用する補強材であって、
鉄筋コンクリート構造物の部材の引張強度が必要な箇所に埋め込むための補強材であって、
両端に、補強材同士が引っ掛り合うための折り返し部分を有し、全体としてS字状に加工した棒状の鉄筋を、先端が放射状に広がるように、少なくとも3個以上、中心で組み合わせた形状を持つことを特徴とする補強材。
【請求項2】
中心を通るワイヤーで複数が数珠つなぎに連結した形状とされることを特徴とする請求項1に記載の補強材。