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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046055
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】半導体基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220315BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20220315BHJP
   B24B 37/12 20120101ALI20220315BHJP
   B24B 53/017 20120101ALI20220315BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20220315BHJP
   C11D 7/18 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622M
B24B37/00 H
B24B37/12 D
B24B53/017 Z
C09K3/14 550C
C11D7/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151900
(22)【出願日】2020-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】亀井 康孝
(72)【発明者】
【氏名】西村 康平
(72)【発明者】
【氏名】石牧 昂輝
(72)【発明者】
【氏名】中村 柊平
(72)【発明者】
【氏名】馬場 淳
【テーマコード(参考)】
3C047
3C158
4H003
5F057
【Fターム(参考)】
3C047AA15
3C047AA21
3C047AA34
3C047EE11
3C158AA07
3C158CA04
3C158CB01
3C158CB03
3C158CB10
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED02
3C158ED10
3C158ED24
3C158ED26
3C158ED28
4H003DA15
4H003ED02
4H003EE08
4H003EE11
5F057AA25
5F057AA28
5F057BA21
5F057BB31
5F057CA12
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA02
5F057EA06
5F057EA16
5F057EA22
5F057EA26
5F057EA27
5F057EA28
5F057EA29
5F057EA33
5F057EB03
5F057EB07
5F057EB27
5F057FA39
5F057GA29
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ルテニウムを含む配線が設けられた半導体基板を安定した研磨速度を維持しながら化学機械研磨を行うことができる、安全性に優れた半導体基板処理方法を提供する。
【解決手段】化学機械研磨装置200は、砥粒と、過ヨウ素酸イオン(IO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )及び次亜臭素酸イオン(BrO)からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオン種と、水と、を含有する化学機械研磨用組成物により、ルテニウムを含む配線層が設けられた半導体基板50を研磨する研磨工程及び研磨工程の後、過ヨウ素酸イオン(IO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )及び次亜臭素酸イオン(BrO)からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオン種と、水と、を含有する洗浄用組成物58を、研磨用パッド46の表面に10mL/分以上500mL/分以下の流量で供給する洗浄工程を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒と、過ヨウ素酸イオン(IO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )及び次亜臭素酸イオン(BrO)からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオン種と、水と、を含有する化学機械研磨用組成物を、
研磨用パッドの表面に15mL/分以上400mL/分以下の流量で供給し、ルテニウムを含む配線層が設けられた半導体基板を研磨する研磨工程、及び
前記研磨工程の後、
過ヨウ素酸イオン(IO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )及び次亜臭素酸イオン(BrO)からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオン種と、水と、を含有する洗浄用組成物を、研磨パッドの表面に10mL/分以上500mL/分以下の流量で供給する洗浄工程
を備える、半導体基板処理方法。
【請求項2】
前記化学機械研磨用組成物が前記イオン種を0.004mol/L以上0.03mol/L以下含有する、請求項1に記載の半導体基板処理方法。
【請求項3】
前記化学機械研磨用組成物のpHが7以上12以下である、請求項1または請求項2に記載の半導体基板処理方法。
【請求項4】
前記洗浄用組成物が前記イオン種を0.0001mol/L以上0.5mol/L以下含有する、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の半導体基板処理方法。
【請求項5】
前記洗浄用組成物のpHが7以上13以下である、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の半導体基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の製造技術の向上に伴い、半導体素子の高集積化、高速動作が求められている。これに伴い、半導体素子における微細回路の製造工程において要求される半導体基板表面の平坦性はより厳しくなってきており、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)が半導体素子の製造工程に不可欠な技術となっている。
【0003】
CMPは、定盤上に貼り付けた研磨用パッド上に化学機械研磨用組成物を供給し、そこへ半導体基板を押し当て、半導体基板と研磨用パッドとを相互に摺動させることにより半導体基板を化学的かつ機械的に研磨する技術である。CMPでは、試薬による化学的な反応と砥粒による機械的な研磨により半導体基板表面の凹凸を削り、その表面を平坦化することができる。
【0004】
近年、このようなCMPを経て製造される半導体基板の銅配線を作成する際の凹部への銅の埋め込み性を改善するために、ルテニウム膜を使用する方法が検討されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009-514219号公報
【特許文献2】特表2010-535424号公報
【特許文献3】国際公開第2019/151145号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなCMPにおいて、人体への毒性が強い四酸化ルテニウムガスの発生を抑制し、ルテニウムを含む部位を研磨するためには、塩基性の化学機械研磨用組成物と、過ヨウ素酸カリウムや次亜塩素酸カリウムのような、高い酸化力を有するハロゲン系酸化剤を用いて化学機械研磨を行う必要がある。しかしながら、このような塩基性の化学機械研磨用組成物を用いると、四酸化ルテニウムガスの発生を抑制できるが、不十分に酸化した酸化ルテニウムが研磨用パッド上に付着し、研磨用パッドの特性を変化させてしまう。その結果、ルテニウムを含む配線が設けられた半導体基板を、安定した研磨速度を維持しながら化学機械研磨を行うことは困難となる。
【0007】
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、ルテニウムを含む配線が設けられた半導体基板を安定した研磨速度を維持しながら化学機械研磨を行うことができる、安全性に優れた半導体基板処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下のいずれかの態様として実現することができる。
【0009】
本発明に係る半導体基板処理方法の一態様は、
砥粒と、過ヨウ素酸イオン(IO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )及び次亜臭素酸イオン(BrO)からなる群から選ばれる少なくと
も1種のイオン種と、水と、を含有する化学機械研磨用組成物を、
研磨用パッドの表面に15mL/分以上400mL/分以下の流量で供給し、ルテニウムを含む配線層が設けられた半導体基板を研磨する研磨工程、及び
前記研磨工程の後、
過ヨウ素酸イオン(IO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )及び次亜臭素酸イオン(BrO)からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオン種と、水と、を含有する洗浄用組成物を、研磨パッドの表面に10mL/分以上500mL/分以下の流量で供給する洗浄工程
を備える。
【0010】
前記半導体基板処理方法の一態様において、
前記化学機械研磨用組成物が前記イオン種を0.004mol/L以上0.03mol/L以下含有してもよい。
【0011】
前記半導体基板処理方法のいずれかの態様において、
前記化学機械研磨用組成物のpHが7以上12以下であってもよい。
【0012】
前記半導体基板処理方法のいずれかの態様において、
前記洗浄用組成物が前記イオン種を0.0001mol/L以上0.5mol/L以下含有してもよい。
【0013】
前記半導体基板処理方法のいずれかの態様において、
前記洗浄用組成物のpHが7以上13以下であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る半導体基板処理方法によれば、ルテニウムを含む配線が設けられた半導体基板を化学機械研磨した後、所定流量でハロゲン系酸化剤を含有する組成物を動的にフローさせながら洗浄することにより研磨用パッドを回復させて、引き続き安定した研磨速度を維持しながらルテニウムを含む配線が設けられた半導体基板を化学機械研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る研磨工程での使用に適した被処理体を模式的に示した断面図である。
図2】第1研磨工程終了時での被処理体を模式的に示した断面図である。
図3】第2研磨工程終了時での被処理体を模式的に示した断面図である。
図4】化学機械研磨装置を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0017】
本明細書において、「A~B」のように記載された数値範囲は、数値Aを下限値として含み、かつ、数値Bを上限値として含むものとして解釈される。
【0018】
1.半導体基板処理方法
本発明の一実施形態に係る半導体基板処理方法は、
砥粒と、過ヨウ素酸イオン(IO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )及び次亜臭素酸イオン(BrO)からなる群から選ばれる少なくと
も1種のイオン種と、水と、を含有する化学機械研磨用組成物を、
研磨用パッドの表面に15mL/分以上400mL/分以下の流量で供給し、ルテニウムを含む配線層が設けられた半導体基板を研磨する研磨工程、及び
前記研磨工程の後、
過ヨウ素酸イオン(IO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )及び次亜臭素酸イオン(BrO)からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオン種と、水と、を含有する洗浄用組成物を、研磨パッドの表面に10mL/分以上500mL/分以下の流量で供給する洗浄工程を備える。
以下、本実施形態に係る半導体基板処理方法について詳細に説明する。
【0019】
1.1.研磨工程
研磨工程は、前述の化学機械研磨用組成物を用いて、ルテニウムを含む配線が設けられた半導体基板を化学機械研磨する工程である。
【0020】
1.1.1.化学機械研磨用組成物
研磨工程で使用する化学機械研磨用組成物は、砥粒と、過ヨウ素酸イオン(IO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )及び次亜臭素酸イオン(BrO)からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオン種と、水と、を含有する。以下、研磨工程で使用する化学機械研磨用組成物に含まれる各成分について説明する。
【0021】
<砥粒>
研磨工程で使用する化学機械研磨用組成物は、砥粒を含有する。砥粒としては、シリカ、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の無機粒子が挙げられるが、中でもシリカ粒子が好ましい。シリカ粒子としては、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等が挙げられるが、中でもコロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカは、スクラッチ等の研磨欠陥を低減する観点から好ましく用いられる。コロイダルシリカとしては、例えば特開2003-109921号公報等に記載されている方法で製造されたものを使用することができる。
【0022】
砥粒の平均粒子径は、特に制限されないが、その下限値は、好ましくは5nmであり、より好ましくは10nmであり、その上限値は、好ましくは300nmであり、より好ましくは150nmである。前記範囲の平均粒子径を有することで、ルテニウム含有膜に対して十分な研磨速度が得られると共に、粒子の沈降・分離を生じ難い安定性に優れた化学機械研磨用組成物が得られるため、良好なパフォーマンスを達成できる。なお、砥粒の平均粒子径は、砥粒分散体の一部を乾燥させて得られた試料について、例えば自動画像処理解析装置(ニレコ製 ルーゼックスAP)を用いて画像処理を行い、2000個の粒子について一次粒子径を測定し、その測定値から算出して求めることができる。
【0023】
砥粒の含有量の下限値は、化学機械研磨用組成物の全質量に対して、好ましくは0.05質量%であり、より好ましくは0.1質量%である。砥粒の含有量の上限値は、化学機械研磨用組成物の全質量に対して、好ましくは10質量%であり、より好ましくは5質量%である。砥粒の含有割合が前記範囲である場合には、ルテニウム含有膜に対する実用的な研磨速度を得ることができる。
【0024】
<イオン種>
研磨工程で使用する化学機械研磨用組成物は、過ヨウ素酸イオン(IO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )及び次亜臭素酸イオン(BrO)からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオン種を含有する。このようなイオン種は、酸化剤として機能し、ルテニウムを酸化して研磨を促進するものと推測される。このようなイオン種は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
化学機械研磨用組成物を製造する際には、前記イオン種は塩を原料とすることができる。このような塩としては、例えば、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸アンモニウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜臭素酸ナトリウム等が挙げられる。これらの塩のうち、過ヨウ素酸カリウム及び次亜塩素酸カリウムから選択される少なくとも1種が好ましい。これらの塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
イオン種の含有量の下限値は、化学機械研磨用組成物1Lに対して、好ましくは0.0001mol/Lであり、より好ましくは0.001mol/Lであり、特に好ましくは0.01mol/Lである。イオン種の含有量の上限値は、化学機械研磨用組成物1Lに対して、好ましくは0.5mol/Lであり、より好ましくは0.25mol/Lであり、特に好ましくは0.1mol/Lである。イオン種の含有量が前記範囲にあると、ルテニウムを酸化して研磨を促進させると共に、ルテニウムとイオン種との過剰な反応を防ぎ、ハロゲンガスが発生するのを抑制できる場合がある。
【0027】
<水>
本実施形態で使用される化学機械研磨用組成物は、主要な液状媒体として水を含有する。水の原料としては純水を好ましく使用することができる。水は、前述の砥粒、イオン種及び後述の添加剤等の構成材料の残部として配合されていればよい。
【0028】
<その他の添加剤>
研磨工程で使用する化学機械研磨用組成物は、必要に応じて、水溶性高分子、有機酸及びその塩、含窒素複素環化合物、界面活性剤、無機酸及びその塩、等を含有してもよい。
【0029】
水溶性高分子としては、特に限定されないが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアリルアミン、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性高分子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
有機酸としては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、グリコール酸、フタル酸、マレイン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、コハク酸、安息香酸、キノリン酸、キナルジン酸、アミド硫酸;グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、芳香族アミノ酸及び複素環型アミノ酸等のアミノ酸が挙げられる。これらの有機酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
有機酸の塩としては、前述の有機酸と塩基が反応して生成される塩が挙げられる。このような塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等の有機アルカリ化合物、及びアンモニア等が挙げられる。
【0032】
含窒素複素環化合物とは、少なくとも1個の窒素原子を有する、複素五員環及び複素六員環から選択される少なくとも1種の複素環を含む有機化合物のことである。前記複素環としては、ピロール構造、イミダゾール構造、トリアゾール構造等の複素五員環;ピリジン構造、ピリミジン構造、ピリダジン構造、ピラジン構造等の複素六員環が挙げられる。該複素環は縮合環を形成していてもよい。具体的には、インドール構造、イソインドール構造、ベンゾイミダゾール構造、ベンゾトリアゾール構造、キノリン構造、イソキノリン構造、キナゾリン構造、シンノリン構造、フタラジン構造、キノキサリン構造、アクリジ
ン構造等が挙げられる。このような構造を有する複素環化合物のうち、ピリジン構造、キノリン構造、ベンゾイミダゾール構造、ベンゾトリアゾール構造を有する複素環化合物が好ましい。
【0033】
含窒素複素環化合物の具体例としては、アジリジン、ピリジン、ピリミジン、ピロリジン、ピペリジン、ピラジン、トリアジン、ピロール、イミダゾール、インドール、キノリン、イソキノリン、ベンゾイソキノリン、プリン、プテリジン、トリアゾール、トリアゾリジン、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられ、さらに、これらの骨格を有する誘導体が挙げられる。これらの中でも、ベンゾトリアゾール及びトリアゾールから選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの含窒素複素環化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
界面活性剤としては、特に制限されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸塩;パーフルオロアルキル化合物等の含フッ素系界面活性剤等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩及び脂肪族アンモニウム塩等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール、アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコール等の三重結合を有する非イオン性界面活性剤;ポリエチレングリコール型界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、及びリン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。無機酸の塩としては、前述の無機酸と塩基が反応して生成される塩が挙げられる。このような塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等の有機アルカリ化合物、及びアンモニア等が挙げられる。
【0036】
<pH>
化学機械研磨用組成物のpHの下限値は、好ましくは7であり、より好ましくは8である。化学機械研磨用組成物のpHの上限値は、好ましくは12であり、より好ましくは11.5である。pHが前記範囲であると、毒性が強い四酸化ルテニウムガスの発生を抑制することができる。
【0037】
なお、化学機械研磨用組成物のpHは、例えば水酸化カリウム、エチレンジアミン、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)、アンモニア等を添加することにより調整することができ、これらの1種以上を用いることができる。
【0038】
本発明において、pHは、水素イオン指数のことを指し、その値は、市販のpHメーター(例えば、株式会社堀場製作所製、卓上型pHメーター)を用いて測定することができる。
【0039】
<化学機械研磨用組成物の調製方法>
研磨工程で使用される化学機械研磨用組成物は、水等の液状媒体に前述した各成分を溶解又は分散させることにより調製することができる。溶解又は分散させる方法は、特に制限されず、均一に溶解又は分散できればどのような方法を適用してもよい。また、前述した各成分の混合順序や混合方法についても特に制限されない。
【0040】
また、化学機械研磨用組成物は、濃縮タイプの原液として調製し、使用時に水等の液状媒体で希釈して使用することもできる。
【0041】
1.1.2.研磨方法
本実施形態に係る研磨工程では、前述の化学機械研磨用組成物を用いて、ルテニウムを含む配線が設けられた半導体基板を化学機械研磨する。以下、図1図4を参照しながら研磨工程について詳細に説明する。
【0042】
ルテニウムを含む配線が設けられた半導体基板としては、例えば図1に示すような被処理体100が挙げられる。図1に、被処理体100を模式的に示した断面図を示す。被処理体100は、以下の工程(1)~(4)を経ることにより作製される。
【0043】
(1)まず、図1に示すように、基体10を用意する。基体10は、例えばシリコン基板とその上に形成された酸化シリコン膜とから構成されていてもよい。さらに、基体10には、(図示しない)トランジスタ等の機能デバイスが形成されていてもよい。次に、基体10の上に、熱酸化法を用いて絶縁膜である酸化シリコン膜12を形成する。
【0044】
(2)次いで、酸化シリコン膜12をパターニングする。得られたパターンをマスクとして、フォトリソグラフィー法により酸化シリコン膜12に配線用溝14を形成する。
【0045】
(3)次いで、酸化シリコン膜12の表面及び配線用溝14の内壁面にルテニウム含有膜16を形成する。ルテニウム含有膜16は、例えば、ルテニウムプレカーサを用いた化学気相成長法(CVD)や原子層堆積法(ALD)、またはスパッタリングなどの物理気相堆積法(PVD)により形成することができる。
【0046】
(4)次いで、化学蒸着法または電気めっき法により、膜厚10,000~15,000Å(ここで、「Å」とは0.1nmのことを指す)の銅膜18を堆積させる。銅膜18の材料としては、純度の高い銅だけでなく、銅を含有する合金を使用することもできる。銅を含有する合金中の銅含有量としては、95質量%以上であることが好ましい。
【0047】
続いて、被処理体100の第1研磨工程を行う。図2は、第1研磨工程終了時での被処理体100を模式的に示した断面図である。図2に示すように、第1研磨工程では、銅膜用の化学機械研磨用組成物を用いてルテニウム含有膜16が露出するまで銅膜18を研磨する。銅膜用の化学機械研磨用組成物としては、例えば特開2010-153790号公報に記載の化学機械研磨用水系分散体が挙げられる。
【0048】
続いて、被処理体100の第2研磨工程を行う。図3は、第2研磨工程終了時での被処理体100を模式的に示した断面図である。図3に示すように、第2研磨工程では、前記「1.1.1.化学機械研磨用組成物」の項で述べた化学機械研磨用組成物を用いてルテニウム含有膜16、銅膜18、及び酸化シリコン膜12の一部を研磨する。
【0049】
前述の第1研磨工程及び第2研磨工程には、例えば図4に示すような研磨装置200を用いることができる。図4は、研磨装置200を模式的に示した斜視図である。前述の第1研磨工程及び第2研磨工程は、スラリー供給ノズル42から化学機械研磨用組成物を供給し、かつ研磨用パッド46が貼付されたターンテーブル48を回転させながら、半導体基板50を保持したキャリアーヘッド52を当接させることにより行う。なお、図4には、洗浄液供給ノズル54及びドレッサー56も併せて示してある。
【0050】
研磨用パッド46の材質は、発泡ポリウレタンタイプ、不織布タイプ、スウェードタイ
プの何れであってもよいが、発泡ポリウレタンタイプであることが好ましい。
【0051】
キャリアーヘッド52の研磨荷重は、0.7~70psiの範囲内で選択することができ、好ましくは1.5~35psiである。また、ターンテーブル48及びキャリアーヘッド52の回転数は10~400rpmの範囲内で適宜選択することができ、好ましくは30~150rpmである。スラリー供給ノズル42から供給される前述の化学機械研磨用組成物の流量の下限値は15mL/分であり、好ましくは50mL/分であり、その流量の上限値は400mL/分であり、好ましくは300mL/分である。
【0052】
市販の研磨装置としては、例えば、荏原製作所社製、型式「EPO-112」、「FREX300SII」;ラップマスターSFT社製、型式「LGP-510」、「LGP-552」;アプライドマテリアル社製、型式「Mirra」、「Reflexion」;G&P TECHNOLOGY社製、型式「POLI-400L」;AMAT社製、型式「Reflexion LK」等が挙げられる。
【0053】
1.2.洗浄工程
洗浄工程は、前述の研磨工程後の研磨用パッド表面に、過ヨウ素酸イオン(IO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )及び次亜臭素酸イオン(BrO)からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオン種と、水と、を含有する洗浄用組成物を、10mL/分以上500mL/分以下の流量で供給して洗浄する工程である。ルテニウムを含む配線が設けられた半導体基板が化学機械研磨されて酸化ルテニウムが発生すると、この酸化ルテニウムが研磨用パッドの表面に付着して、研磨速度を極端に低下させてしまう。そのため、研磨工程後に、所定流量でハロゲン系酸化剤を含有する組成物を動的にフローさせながら洗浄することにより研磨パッドを回復させ、引き続き安定した研磨速度を維持しながら半導体基板を化学機械研磨することができる。以下、洗浄工程について詳細に説明する。
【0054】
1.2.1.洗浄用組成物
本実施形態に係る洗浄工程においては、過ヨウ素酸イオン(IO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )及び次亜臭素酸イオン(BrO)からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオン種と、水と、を含有する洗浄用組成物を使用する。以下、洗浄工程で使用する洗浄用組成物に含まれる各成分について説明する。
【0055】
<イオン種>
洗浄工程で使用される洗浄用組成物は、過ヨウ素酸イオン(IO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )及び次亜臭素酸イオン(BrO)からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオン種を含有する。これらのイオン種は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
一般的にルテニウムの酸化数は0から+8及び-2の範囲で変化し、各酸化状態において水への溶解度は大きく異なる。ルテニウムの酸化還元反応は平衡反応であるため、静的な状態(流量がゼロの状態)で前述の洗浄用組成物に含侵するだけでは、いずれ化学平衡に達し、研磨用パッド表面に付着した水不溶性のルテニウム酸化物を十分に除去することは不可能である。しかしながら、本実施形態における洗浄工程では、前記イオン種と水とを含有する洗浄用組成物を研磨用パッド表面に10mL/分以上500mL/分以下の流量で供給して、このようなルテニウムの酸化反応の化学平衡を動的に動かすことによりルテニウムを含む配線が設けられた半導体基板を研磨した後の研磨用パッドの表面から酸化ルテニウム等のルテニウム残渣を効率よく除去することができる。その結果、ルテニウム残渣により減少した研磨速度を回復することができると推測される。
【0057】
洗浄用組成物を製造する際には、前記イオン種は塩を原料とすることができる。このような塩としては、例えば、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸アンモニウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜臭素酸ナトリウム等が挙げられる。これらの塩のうち、過ヨウ素酸カリウム及び次亜塩素酸カリウムから選択される少なくとも1種が好ましい。これらの塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
本実施形態で使用される洗浄用組成物中のイオン種の含有量の下限値は、洗浄用組成物1Lに対して、好ましくは0.0001mol/Lであり、より好ましくは0.001mol/Lであり、特に好ましくは0.01mol/Lである。洗浄用組成物中のイオン種の含有量の上限値は、洗浄用組成物1Lに対して、好ましくは0.5mol/Lであり、より好ましくは0.25mol/Lであり、特に好ましくは0.1mol/Lである。洗浄用組成物中のイオン種の含有量が前記範囲にあると、ルテニウムの酸化反応の化学平衡を動的に動かしやすくなり、ルテニウムを含む配線が設けられた半導体基板を研磨した後の研磨用パッドの表面から酸化ルテニウム等のルテニウム残渣を効率よく除去できる場合がある。また、ルテニウムとハロゲン系酸化剤との過剰な反応を防ぎ、ハロゲンガスが発生するのを抑制できる場合がある。
【0059】
<水>
本実施形態で使用される洗浄用組成物は、主要な液状媒体として水を含有する。水の原料としては純水を好ましく使用することができる。水は、前述のイオン種及び後述の添加剤等の構成材料の残部として配合されていればよい。
【0060】
<その他の添加剤>
本実施形態で使用される洗浄用組成物は、必要に応じて、水溶性高分子、有機酸及びその塩、含窒素複素環化合物、界面活性剤、無機酸及びその塩、等の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤の具体例については、前述の化学機械研磨用組成物の項で説明したものと同様である。
【0061】
<pH>
本実施形態で使用される洗浄用組成物のpHの下限値は、好ましくは7であり、より好ましくは8である。洗浄用組成物のpHの上限値は、好ましくは13であり、より好ましくは12.5である。pHが前記範囲であると、毒性が強い四酸化ルテニウムガスの発生を抑制することができる。
【0062】
なお、洗浄用組成物のpHは、例えば水酸化カリウム、エチレンジアミン、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)、アンモニア等を添加することにより調整することができ、これらの1種以上を用いることができる。
【0063】
<洗浄用組成物の調製方法>
本実施形態で使用される洗浄用組成物は、水等の液状媒体に前述した各成分を溶解又は分散させることにより調製することができる。溶解又は分散させる方法は、特に制限されず、均一に溶解又は分散できればどのような方法を適用してもよい。また、前述した各成分の混合順序や混合方法についても特に制限されない。
【0064】
また、本実施形態で使用される洗浄用組成物は、濃縮タイプの原液として調製し、使用時に水等の液状媒体で希釈して使用することもできる。
【0065】
1.2.2.洗浄方法
洗浄工程では、研磨工程後の研磨用パッドの表面に、前述の洗浄用組成物を10mL/
分以上500mL/分以下の流量で供給する。
【0066】
研磨工程後の研磨用パッドの表面を洗浄する方法としては、例えば図4に示すような研磨装置200を用いて研磨工程を行った後、引き続き洗浄液供給ノズル54から前述の洗浄用組成物58を研磨用パッド46の表面に供給し、かつ研磨用パッド46が貼付されたターンテーブル48を回転させながら、ドレッサー56を当接させることにより行う方法が好ましい。
【0067】
かかる洗浄方法において、ドレッサー56の研磨荷重は、0.7~70psiの範囲内で選択することができ、好ましくは1.5~35psiである。また、ターンテーブル48及びドレッサー56の回転数は10~400rpmの範囲内で適宜選択することができ、好ましくは30~150rpmである。
【0068】
洗浄液供給ノズル54から供給される洗浄用組成物の流量の下限は、10mL/分であり、好ましくは50mL/分であり、より好ましくは100mL/分である。また、洗浄液供給ノズル54から供給される洗浄用組成物の流量の上限は、500mL/分であり、好ましくは450mL/分であり、より好ましくは400mL/分である。供給される組成物の流量が前記範囲にあると、ルテニウムの酸化反応の化学平衡を動的に動かすことができ、ルテニウムを含む配線が設けられた半導体基板を研磨した後の研磨用パッドの表面からルテニウム残渣を効率よく除去することができる。
【0069】
洗浄液供給ノズル54から供給される洗浄用組成物の供給時間の下限は、好ましくは10秒であり、より好ましくは30秒であり、特に好ましくは50秒である。洗浄液供給ノズル54から供給される洗浄用組成物の供給時間の上限は、好ましくは300秒であり、より好ましくは270秒であり、特に好ましくは250秒である。供給される洗浄用組成物の供給時間が前記範囲にあると、ルテニウムの酸化反応の化学平衡を動的に動かすことができ、ルテニウムを含む配線が設けられた半導体基板を研磨した後の研磨用パッドの表面からルテニウム残渣を効率よく除去することができる場合がある。また、ルテニウムとハロゲン系酸化剤との過剰な反応を防ぎ、ハロゲンガスが発生するのを抑制することができる場合がある。
【0070】
2.実施例
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、本実施例における「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0071】
2.1.化学機械研磨用組成物の調製
ポリエチレン製容器に、シリカ水分散体(扶桑化学工業社製、商品名「PL-3」)を10質量部(シリカとして2質量部)、酢酸(関東化学社製)を0.9質量部、ベンゾトリアゾール(城北化学工業社製)を0.1質量部添加し、さらに下表1~下表2に示す組成となるようにイオン源を添加し、必要に応じて水酸化カリウム(関東化学社製)を添加して下表1~下表2に示すpHとなるように調整し、全成分の合計量が100質量部となるように純水で調整することにより、各実施例及び各比較例で使用する化学機械研磨用組成物を調製した。
【0072】
2.2.研磨速度評価
上記で調製した化学機械研磨用組成物を用いて、直径8インチのルテニウム膜50nm付きウエハ100枚を被研磨体として、下記の研磨条件で100枚のウエハにつき各々30秒間の化学機械研磨試験を行った。
(研磨条件)
・研磨装置:荏原製作所社製、型式「F-REX300SII」
・研磨パッド:ニッタ・ハース社製、「多孔質ポリウレタン製パッド;C1000 CMP Polishing pad」
・化学機械研磨用組成物供給速度:300mL/分
・定盤回転数:100rpm
・ヘッド回転数:90rpm
・ヘッド押し付け圧:2psi
・研磨速度(Å/分)=(研磨前の膜の厚さ-研磨後の膜の厚さ)/研磨時間
【0073】
なお、ルテニウム膜の厚さは、抵抗率測定機(ケーエルエー・テンコール社製、型式「RS-100」)により直流4探針法で抵抗を測定し、このシート抵抗値とルテニウムの体積抵抗率から下記式によって算出した。
膜の厚さ(Å)=[ルテニウム膜の体積抵抗率(Ω・m)÷シート抵抗値(Ω/sq)]×1010
【0074】
研磨速度の評価基準は下記の通りである。ルテニウム膜の研磨速度及びその評価結果を下表1~下表2に併せて示す。なお、下表1~下表2には、1枚目のウエハの研磨速度を初期研磨速度(nm/min)とし、100枚目のウエハの研磨速度を洗浄前研磨速度(nm/min)として記載した。
(評価基準)
・研磨速度が50nm/分以上である場合、実用的であり良好と判断した。
・研磨速度が50nm/分未満である場合、研磨速度が小さく実用困難であるため不良と判断した。
【0075】
2.3.洗浄用組成物の調製
ポリエチレン製容器に、下表1~下表2に示す組成となるようにイオン源を添加し、必要に応じて水酸化カリウム(関東化学社製)を添加し、下表1~下表2に示すpHとなるように調整し、全成分の合計量が100質量部となるように純水で調整することにより、各実施例及び各比較例で使用する洗浄用組成物を調製した。
【0076】
2.4.研磨用パッド表面の洗浄
上記で調製した洗浄用組成物を用いて、上記の研磨速度評価を行った後の研磨用パッドを、下記の洗浄条件及び下表1~下表2に示す供給流量、供給時間にて洗浄した。
(洗浄条件)
・ドレッサー:CMPドレッサーA2813(3M社製)
・ドレッサー回転数:90rpm
・パッド回転数:80rpm
【0077】
2.5.ハロゲンガス発生評価
上記条件にて研磨用パッドを洗浄した後5分間放置し、さらにATI D16 ポータブルガス検知器(ATI社製)に塩素ガス用スマートセンサー(型式00-1002)、ヨウ素ガス用スマートセンサー(型式00-1036)又は臭素ガス用スマートセンサー(型式00-1000)を順番に装着し、洗浄後のパッド上部のハロゲンガスを測定した。その結果を下表1~下表2に示す。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
・検出されるハロゲンガスが検知できない場合、安全に実用に供することができるため良好と判断し「A」と表記した。
・ハロゲンガスが検知される場合、人体に有害であり、実用に供することができないため不良と判断し「B」と表記した。
【0078】
2.6.洗浄後の研磨速度評価
上記条件にて洗浄した研磨用パッドを使用し、上記で調製した化学機械研磨用組成物を再度使用して、直径8インチのルテニウム膜50nm付きウエハを被研磨体として、上記「2.2.研磨速度評価」と同じ研磨条件にて化学機械研磨試験を行い、1枚目のウエハの研磨速度を洗浄後研磨速度(nm/min)として下表1~下表2に結果を記載した。
【0079】
初期研磨速度(nm/min)と洗浄後研磨速度(nm/min)を用いて、研磨速度回復率(%)を下記式によって算出した。評価基準は以下の通りである。
研磨速度回復率(%)=洗浄後研磨速度(nm/min)/初期研磨速度(nm/min)×100
(評価基準)
・研磨速度回復率が80%以上である場合、実用的であり良好と判断した。
・研磨速度回復率が80%未満である場合、安定した研磨速度を維持できないため実用困難であり不良と判断した
【0080】
2.7.評価結果
下表1~下表2に、各実施例及び各比較例で使用した化学機械研磨用組成物の組成、研磨条件、洗浄用組成物の組成、洗浄条件及び各評価結果を示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
上表1~上表2中の各成分は、それぞれ下記の商品又は試薬を用いた。
<イオン源>
・HIO(過ヨウ素酸):日宝化学社製、商品名「H5IO6」
・KIO(ヨウ素酸カリウム):日宝化学社製、商品名「KIO3」
・KIO(過ヨウ素酸カリウム):富士フイルム和光純薬社製、商品名「過よう素酸カリウム」
・NaIO(過ヨウ素酸ナトリウム):日宝化学社製、商品名「NaIO4」
・NHIO(過ヨウ素酸アンモニウム):HIO(過ヨウ素酸、日宝化学社製、商品名「HIO4」)と三菱ガス化学社製、製品名「超純アンモニア水」とを、HIOとNH3が等モルとなるよう混合し、水溶液状態のまま使用した。
・KClO(次亜塩素酸カリウム):関東化学社製、商品名「次亜塩素酸カリウム溶液」・KClO(亜塩素酸カリウム):Angene社製、製品名「Potassium Chlorite」・NaBrO(次亜臭素酸ナトリウム):関東化学社製、商品名「次亜臭素酸ナトリウム」
・NaClO(次亜塩素酸ナトリウム):関東化学社製、商品名「次亜塩素酸ナトリウム溶液」
【0084】
実施例1~9によれば、ルテニウム膜付きウエハを100枚研磨した後の研磨用パッドの表面に、特定のハロゲン系酸化剤を含む洗浄用組成物を、10mL/分以上500mL/分以下の流量で供給することにより、研磨用パッドの研磨特性が回復することがわかった。実施例1~9の結果より、ルテニウムの酸化還元反応の化学平衡を動的に動かすことで、研磨用パッドの表面からルテニウム残渣を効率よく除去することができたものと推測される。したがって、本願発明の半導体基板処理方法を実施することにより、ルテニウムを含む配線が設けられた半導体基板を、安定した研磨速度を維持しながら化学機械研磨することができる。
【0085】
これに対し、比較例1では、ハロゲン系酸化剤を含まない洗浄用組成物を用いて研磨用パッドを洗浄した。ハロゲン系酸化剤を含まない洗浄用組成物を用いても、研磨用パッドの研磨特性を回復することはできなかった。
【0086】
比較例2では、ハロゲン系酸化剤を含む洗浄用組成物を5mL/分の流量で供給した。このように洗浄用組成物の供給流量が少なすぎると、ルテニウムの酸化還元反応の化学平衡を動的に動かすことができず、研磨用パッドの表面からルテニウム残渣を除去できなかったため、研磨用パッドの研磨特性を回復することはできなかった。
【0087】
比較例3では、ハロゲン系酸化剤を含む洗浄用組成物を600mL/分の流量で供給した。このようにハロゲン系酸化剤を含む洗浄用組成物の供給流量が多すぎると、ハロゲン系酸化剤とルテニウムが過剰に反応してハロゲンガスが発生しやすくなることがわかった。
【0088】
比較例4では、化学機械研磨用組成物を10mL/分の流量で供給して研磨試験を実施した。このように化学機械研磨用組成物の供給量が少なすぎると、ルテニウム膜に対する十分な研磨速度が得られなかった。また、比較例4では、ハロゲン系酸化剤を含む洗浄用組成物を550mL/分の大流量で供給しているため、ハロゲン系酸化剤とルテニウムが過剰に反応してハロゲンガスが発生しやすくなることがわかった。
【0089】
比較例5では、ハロゲン系酸化剤を含まない化学機械研磨用組成物を450mL/分の流量で供給して研磨試験を実施した。このような化学機械研磨用組成物では、ルテニウムを酸化することができず、ルテニウム膜に対する十分な研磨速度が得られなかった。
【0090】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0091】
10…基体、12…酸化シリコン膜、14…配線用溝、16…ルテニウム含有膜、18…銅膜、42…スラリー供給ノズル、46…研磨用パッド、48…ターンテーブル、50…半導体基板、52…キャリアーヘッド、54…洗浄液供給ノズル、56…ドレッサー、58…洗浄用組成物、100…被処理体、200…研磨装置
図1
図2
図3
図4