(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046066
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】形鋼の引張試験方法、及び形鋼の引張試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/08 20060101AFI20220315BHJP
G01N 3/04 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
G01N3/08
G01N3/04 D
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151916
(22)【出願日】2020-09-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】308037764
【氏名又は名称】ヤマトスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西谷 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 修
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA01
2G061AB03
2G061BA04
2G061CA02
2G061CB03
2G061CC01
2G061CC14
2G061CC18
2G061CC20
2G061EA01
2G061EA02
2G061EA03
2G061EA04
2G061EB07
2G061EC02
2G061EC04
2G061EC05
2G061EC09
(57)【要約】
【課題】容易に試験片の伸びを測定することが可能な、形鋼の引張試験方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る形鋼の引張試験方法は、前記形鋼の試験片、及びカメラを準備する第1ステップと、前記試験片のうち、引っ張り方向において離間した二か所に目印を付ける第2ステップと、前記二か所の目印を前記カメラにより撮像しながら、前記試験片を引っ張って破断させる第3ステップと、前記第3ステップで前記カメラにより撮像した画像又は映像に基づき、前記試験片が破断したときの前記二か所の目印間の距離を測定する第4ステップと、前記第3ステップで前記試験片を引っ張る前の前記試験片の基準状態における前記二か所の目印間の距離、及び、前記第4ステップで測定した前記二か所の目印間の距離に基づき、前記試験片の伸びを測定する第5ステップと、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形鋼の引張試験方法であって、
前記形鋼の試験片、及びカメラを準備する第1ステップと、
前記試験片のうち、引っ張り方向において離間した二か所に目印を付ける第2ステップと、
前記二か所の目印を前記カメラにより撮像しながら、前記試験片を引っ張って破断させる第3ステップと、
前記第3ステップで前記カメラにより撮像した画像又は映像に基づき、前記試験片が破断したときの前記二か所の目印間の距離を測定する第4ステップと、
前記第3ステップで前記試験片を引っ張る前の前記試験片の基準状態における前記二か所の目印間の距離、及び、前記第4ステップで測定した前記二か所の目印間の距離に基づき、前記試験片の伸びを測定する第5ステップと、
を備えることを特徴とする、形鋼の引張試験方法。
【請求項2】
前記二か所の目印は、それぞれ、前記試験片の厚み方向又は幅方向に延びる直線状であり、
前記第3ステップにおいて、前記試験片を前記試験片の長さ方向に引っ張って破断させ、
前記試験片の基準状態において、前記二か所の目印間の距離は、前記試験片の長さ方向において、180mm以上220mm以下であり、
前記試験片が破断するとき、前記二か所の目印間の距離は、320mm以下である、請求項1に記載の形鋼の引張試験方法。
【請求項3】
前記第1ステップにおいて、前記カメラは、前記二か所の目印それぞれに対して一台ずつ設けられる、請求項1又は2に記載の形鋼の引張試験方法。
【請求項4】
前記第1ステップにおいて、前記試験片とは別個に前記形鋼の基準試験片をさらに準備し、
前記第3乃至前記第5ステップを行う前に、前記基準試験片の少なくとも二か所に基準目印を付ける第6ステップと、
前記第3乃至前記第5ステップを行う前に、前記少なくとも二か所の基準目印間の距離を測定する第7ステップと、
前記第3乃至前記第5ステップを行う前に、前記少なくとも二か所の基準目印を前記カメラにより撮像する第8ステップと、
前記第3乃至前記第5ステップを行う前に、前記第7ステップで測定した前記少なくとも二か所の基準目印間の距離、及び、前記第8ステップで前記カメラにより撮像した画像又は映像に基づき、前記少なくとも二か所の基準目印間の距離と前記画像又は前記映像の画素との相関関係を決定する第9ステップと、をさらに備え、
前記第4ステップにおいて、前記第3ステップで前記カメラにより撮像した画像又は映像に加えて、前記第9ステップで決定した前記相関関係に基づき、前記試験片が破断したときの前記二か所の目印間の距離を測定する、請求項1乃至3のいずれかに記載の形鋼の引張試験方法。
【請求項5】
前記第3ステップにおいての、前記カメラから前記目印までの前記カメラの光軸方向における距離と、前記第7ステップにおいての、前記カメラから前記基準目印までの前記カメラの光軸方向における距離と、が同じである、請求項4に記載の形鋼の引張試験方法。
【請求項6】
前記第2ステップにおいて、前記試験片の表面に下地処理を施したうえで、前記試験片に前記二か所の目印を付ける、請求項1乃至5のいずれかに記載の形鋼の引張試験方法。
【請求項7】
前記第1ステップにおいて、前記第3ステップで前記試験片を引っ張って破断させるための引張装置をさらに準備し、
前記引張装置は、
前記試験片の一方端を把持するための第1把持機構と、
前記試験片の他方端を把持するための第2把持機構と、
前記第1及び前記第2把持機構の動作を制御するための制御装置と、を有し、
前記第3ステップにおいて、前記第1及び前記第2把持機構により前記試験片を把持させた状態で、前記第1及び前記第2把持機構の少なくともいずれかを前記引っ張り方向に移動させることにより、前記試験片を引っ張って破断させる、請求項1乃至6のいずれかに記載の形鋼の引張試験方法。
【請求項8】
前記第1ステップにおいて、前記試験片を搬送するためのロボットをさらに準備し、
前記第3ステップにおいて、前記ロボットにより前記試験片を前記引張装置に設置する、請求項7に記載の形鋼の引張試験方法。
【請求項9】
前記第1ステップにおいて、前記引張装置で前記試験片を引っ張っているときに前記試験片に生じる応力を測定するための応力測定装置をさらに準備し、
前記第3ステップにおいて、前記制御装置は、前記応力測定装置による測定値に基づき得られる前記試験片の応力ひずみ曲線において、前記応力が最大値を過ぎたあとの領域で前記応力が前記最大値よりも所定値だけ小さくなった時点から、前記第1及び前記第2把持機構の相対速度が遅くなるように、前記第1及び前記第2把持機構の少なくともいずれかを前記引っ張り方向に移動させる、請求項7又は8に記載の形鋼の引張試験方法。
【請求項10】
前記第1ステップにおいて、前記第3ステップを行ったあとに前記第1及び前記第2把持機構に貼り付いた前記試験片の欠片を前記第1及び前記第2把持機構から取り除くために、前記第1及び前記第2把持機構を介して前記試験片の欠片に衝撃を加える衝撃装置をさらに準備する、請求項7乃至9のいずれかに記載の形鋼の引張試験方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の形鋼の引張試験方法を行うための引張試験装置であって、
少なくとも、前記第3ステップで前記二か所の目印を撮像するための前記カメラを備えることを特徴とする、引張試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形鋼の引張試験方法、及び形鋼の引張試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1で提案されているような形鋼の引張試験方法が知られている。
【0003】
特許文献1では、一対の荷重平衡組立体により、形鋼の試験片の両端部を把持し、人間又は機械が、一対の荷重平衡組立体を互いに離間させていくことで、試験片が破断されるまで該試験片を引っ張る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、一般に、特許文献1のような従来からある形鋼の引張試験方法では、試験片のうち、引っ張り方向において離間した二か所に目印が付けられており、試験片を引っ張る前の該試験片の基準状態における二か所の目印間の距離、及び、引っ張って破断した試験片の欠片同士を突き合わせた状態における二か所の目印間の距離に基づき、試験片の伸びを測定する。しかし、このような方法では、試験片の伸びを測定するのに手間や時間が掛かってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、容易に試験片の伸びを測定することが可能な、形鋼の引張試験方法、及び形鋼の引張試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る形鋼の引張試験方法は、前記形鋼の試験片、及びカメラを準備する第1ステップと、前記試験片のうち、引っ張り方向において離間した二か所に目印を付ける第2ステップと、前記二か所の目印を前記カメラにより撮像しながら、前記試験片を引っ張って破断させる第3ステップと、前記第3ステップで前記カメラにより撮像した画像又は映像に基づき、前記試験片が破断したときの前記二か所の目印間の距離を測定する第4ステップと、前記第3ステップで前記試験片を引っ張る前の前記試験片の基準状態における前記二か所の目印間の距離、及び、前記第4ステップで測定した前記二か所の目印間の距離に基づき、前記試験片の伸びを測定する第5ステップと、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、カメラにより撮像した画像又は映像に基づき、試験片が破断したときの二か所の目印間の距離を測定することができる。そして、試験片を引っ張る前の該試験片の基準状態における二か所の目印間の距離、及び、試験片が破断したときの二か所の目印間の距離に基づき、該試験片の伸びを測定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容易に試験片の伸びを測定することが可能な、形鋼の引張試験方法、及び形鋼の引張試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る引張試験装置を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る引張試験装置で、試験片、照明装置及び二台のカメラの配置関係を示す概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る引張試験装置で用いられる基準試験片及び試験片の斜視図であり、(A)が基準試験片を示す図、(B)が試験片を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る引張試験装置で、引張装置に把持された状態の基準試験片をカメラで撮像している様子を示す概略図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る引張試験装置で、三か所の基準目印間の距離と画像又は映像の画素との相関関係を決定している様子を示す概略図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る引張試験装置で、副カメラにより試験片の刻印を読み取っている様子を示す概略図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る引張試験装置で、試験片の三か所の厚みを測定している様子を示す概略図であり、(A)が試験片の長さ方向の一方端側の厚みを測定している図、(B)が試験片の長さ方向の中央の厚みを測定している図、(C)が試験片の長さ方向の他方端側の厚みを測定している図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る引張試験装置で、ロボットにより試験片を引張装置に設置している様子を示す概略図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る引張試験装置で、引張装置により試験片を引っ張って破断している様子を示す概略図であり、(A)が試験片を引っ張り始めた状態の図、(B)が試験片が破断するときの図、(C)が試験片が破断したあとの図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る引張試験装置で、試験片を引っ張っているときに該試験片に生じる応力ひずみ曲線を示す概略図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る引張試験装置で、ロボットにより試験片の欠片を引張装置から取り除いている様子を示す概略図であり、(A)が下把持機構から試験片の欠片を取り除いている図、(B)が上把持機構から試験片の欠片を取り除いている図、(C)が上及び下把持機構から試験片の欠片を取り除いたあとの図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る引張試験装置で、ロボットにより上把持機構から試験片の欠片を取り除く作業を、衝撃装置により補助している様子を示す概略図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る引張試験装置の衝撃装置の動作を概略的に示す断面図であり、(A)がシリンダ内にエアを注入する前の初期状態を示す図、(B)がシリンダ内にエアを注入したあとピストンが先端側に移動したときの図、(C)がシリンダ内にエアを注入したあとピストンが基端側に戻ってきたときの図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る引張試験方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る引張試験装置について図面を参照して説明する。なお、本実施形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0012】
(引張試験装置10)
図1は、本実施形態に係る引張試験装置を示す概略図である。本実施形態に係る引張試験装置10は、形鋼の試験片Tの引張試験を行い、該試験片Tの伸びを測定するために用いられる。
図1に示すように、引張試験装置10は、試験片Tを引っ張って破断させるための引張装置20と、試験片Tの二か所に付けられた目印La、Lb(
図2参照)を撮像するための
図1において破線で示す二台のカメラ11a、11bと、を備える。
【0013】
(引張装置20)
図1に示すように、引張装置20は、基台21と、試験片Tの長さ方向の一方端を把持するための上把持機構30(第1把持機構)と、試験片Tの長さ方向の他方端を把持するための下把持機構40(第2把持機構)と、基台21上に立設され、上及び下把持機構30、40を支持するための四本の支柱22a~22dと、を有する。また、引張装置20は、上及び下把持機構30、40の動作を制御するための制御装置60をさらに有する。
【0014】
(ロボット70)
図1に示すように、引張試験装置10は、試験片Tを搬送するためのロボット70をさらに備える。ロボット70は、引張装置20に隣接して配置される。ロボット70は、六つの関節軸を有するいわゆる垂直多関節ロボットである。すなわち、ロボット70は、基台71と、その基端部が基台71に連結され、六つの関節軸を含むロボットアーム72と、ロボットアーム72の先端に設けられ、試験片Tを保持するためのロボットハンド73と、を有する公知の構造である。
【0015】
(カメラ11a、11b)
図2は、本実施形態に係る引張試験装置で、試験片、照明装置及び二台のカメラの配置関係を示す概略図である。なお、
図2では、見た目の煩雑さを避けるため、引張装置20などの図示を省略してある。
図2に示すように、カメラ11aは、試験片Tが引張装置20に把持された状態において、該試験片Tの上側に位置する目印Laを撮像するために設けられる。一方、カメラ11bは、試験片Tが引張装置20に把持された状態において、試験片Tの下側に位置する目印Lbを撮像するために設けられる。カメラ11a、11bは、互いに同じ型番の製品を用いることが好ましい。カメラ11a、11bは、それぞれ、制御装置60に接続される。
【0016】
引張試験装置10は、カメラ11a、11bにより撮像される画像又は映像を鮮明にするために、引張装置20に把持された状態の試験片Tを光で照らす照明装置13a、13bをさらに備える。
【0017】
カメラ11a、11bは、それぞれ、光軸が水平面内を延びるように、試験片Tの正面に配置される。カメラ11a、11bは、それぞれ、水平方向において試験片Tから距離D1(例えば、300mm程度)離れて配置される。また、カメラ11a、11bは、鉛直方向において互いに距離D2(例えば、200mm程度)離れて配置される。
【0018】
照明装置13aは、カメラ11aよりも僅かに試験片T側で該カメラ11aよりも上方に配置され、主として試験片Tの目印La及びその周辺を照らすように配置される。一方、照明装置13bは、カメラ11bよりも僅かに試験片T側で該カメラ11bよりも下方に配置され、主として試験片Tの目印Lb及びその周辺を照らすように配置される。
【0019】
(基準試験片BT、試験片T)
図3は、本実施形態に係る引張試験装置で用いられる基準試験片及び試験片の斜視図であり、(A)が基準試験片を示す図、(B)が試験片を示す図である。
【0020】
図3(A)に示すように、基準試験片BTは、直方体状である。換言すれば、基準試験片BTは、長さ方向において幅が均一な板状である。基準試験片BTの長さ方向における一方側の端面には、トレーサビリティのための試験片番号が示された基準刻印BSが彫られている。
【0021】
基準試験片BTの幅方向における一方側の側面のうち、長さ方向における一方側の部分には、基準試験片BTの厚み方向に延びる直線状の基準目印BLa~BLcが付けられている。基準目印BLa~BLcは、基準試験片BTの長さ方向において互いに等間隔に並列される。すなわち、基準目印BLa~BLcは、試験片Tの引っ張り方向に対応する方向において互いに離間している。
【0022】
基準試験片BTの幅方向における一方側の側面のうち、長さ方向における他方側の部分には、基準試験片BTの厚み方向に延びる直線状の基準目印BLd~BLfが付けられている。基準目印BLd~BLfは、基準試験片BTの長さ方向において互いに等間隔に並列される。すなわち、基準目印BLd~BLfは、試験片Tの引っ張り方向に対応する方向において互いに離間している。
【0023】
なお、基準目印BLa、BLb間の距離、基準目印BLb、BLc間の距離、基準目印BLd、BLe間の距離、及び基準目印BLe、BLf間の距離は、互いに等しくすることが好ましい。また、後述するように試験片Tを上側に引っ張って該試験片Tの伸びを測定することを考慮して、基準試験片BTの一方側の端面(換言すれば、基準試験片BTの、基準目印BLaに近い側の端面)から基準目印BLaまでの距離は、基準試験片BTの他方側の端面(換言すれば、基準試験片BTの、基準目印BLfに近い側の端面)から基準目印BLfまでの距離よりも短いことが好ましい。
【0024】
なお、基準目印BLa~BLfは、それぞれ、基準試験片BTの表面に下地処理STを施したうえで、該基準試験片BTに付けられてもよい。このとき、例えば、下地処理が白色であり、基準目印BLa~BLfが、それぞれ、黒色であってもよい。
【0025】
基準試験片BTは、例えば、耐熱性及び耐食性を有するステンレスなどの材料から成形されてもよいし、或いは、試験片Tと同じ材料から同様の製法により成形されてもよい。なお、試験片Tの製法については後述する。
【0026】
図3(B)に示すように、試験片Tは、板状であり、長さ方向において幅が均一な平行部Taと、平行部Taの長さ方向における一方端に設けられ、平行部Taよりも幅が大きい掴み部Tbと、平行部Taの長さ方向における他方端に設けられ、掴み部Tbと同じ形状である掴み部Tcと、を有する。掴み部Tbの端面(換言すれば、試験片Tの一方側の端面)には、トレーサビリティのための試験片番号が示された刻印Sが彫られている。
【0027】
平行部Taの幅方向における一方側の側面のうち、掴み部Tb側の部分には、試験片Tの厚み方向に延びる直線状の目印Laが付けられている。また、平行部Taの幅方向における一方側の側面のうち、掴み部Tc側の部分には、試験片Tの厚み方向に延びる直線状の目印Lbが付けられている。すなわち、目印La、Lbは、引っ張り方向において離間している。
【0028】
なお、目印La、Lbは、それぞれ、基準目印BLa、BLbと同様に、試験片Tの表面に下地処理STを施したうえで、該試験片Tに付けられてもよい。このとき、例えば、下地処理が白色であり、目印La、Lbが、それぞれ、黒色であってもよい。
【0029】
試験片Tの大きさや形状などにもよるが、該試験片Tを引っ張る前の該試験片Tの基準状態における目印La、Lb間の距離は、例えば、180mm以上220mm以下である。また、試験片Tが破断するとき、例えば、目印La、Lb間の距離は、320mm以下である。この試験片Tが破断するときの目印La、Lb間の最大距離は、例えば、距離D
1、D
2(
図2参照)及び後述する撮像範囲Ra、Rb(
図4参照)などによって規定される。
【0030】
試験片Tは、例えば、日本産業規格(JIS)又は船級に基づき、一つの溶鋼から形鋼(例えば、H形鋼、I形鋼、溝形鋼、又は平鋼など)を製造し、製造した形鋼から切り出すことで成形されてもよい。
【0031】
図4は、本実施形態に係る引張試験装置で、引張装置に把持された状態の基準試験片をカメラで撮像している様子を示す概略図である。ここで、
図4に基づき、上及び下把持機構30、40の詳細な構造について説明する。
【0032】
図4に示すように、上把持機構30は、一対の上被摺動部31a、31bと、該一対の上被摺動部31a、31bよりも内側に配置される一対の上摺動部36a、36bと、を有する。
【0033】
一対の上被摺動部31a、31bは、鉛直方向に延びる上把持機構30及び下把持機構40の中心軸線Cに沿った鉛直面に対して互いに面対称である。一対の上被摺動部31a、31bは、それぞれ、下面32と、該下面32の内側端縁から上側に延びる被摺動面33と、を有する。被摺動面33は、下面32から上側に向かうに連れて上把持機構30の幅方向の外側へと広がるように傾斜する。
【0034】
一対の上摺動部36a、36bは、一対の上被摺動部31a、31bと同様に、中心軸線Cに沿った鉛直面に対して互いに面対称である。一対の上摺動部36a、36bは、それぞれ、下面37と、該下面37の外側端縁から上側に延びる摺動面38と、該下面37の内側端縁から上側に延びる把持面39と、を有する。摺動面38は、下面32から上側に向かうに連れて、被摺動面33に対応する角度で、上把持機構30の幅方向の外側へと広がるように傾斜する。把持面39は、中心軸線Cに沿った鉛直面と平行である。把持面39には、試験片Tの掴み部Tbに当接する当接部材51が設けられる。
【0035】
一対の上摺動部36a、36bは、中心軸線Cに沿った鉛直面に対して互いに面対称である状態を保ちつつ、上摺動部36aの摺動面38が上被摺動部31aの被摺動面33上を摺動し、同様に、上摺動部36bの摺動面38が上被摺動部31bの被摺動面33上を摺動する。このとき、一対の上被摺動部31a、31bそれぞれの被摺動面33と、一対の上摺動部36a、36bそれぞれの摺動面38とが上記のように傾斜しているので、一対の上摺動部36a、36bが上側に摺動するに連れて、該一対の上摺動部36a、36bそれぞれの把持面39同士の間隔が大きくなる。
【0036】
下把持機構40は、上把持機構30を上下反転した構造であり、上記した一対の上被摺動部31a、31bに対応する一対の下被摺動部41a、41bと、上記した一対の上摺動部36a、36bに対応する一対の下摺動部46a、46bと、を有する。一対の下被摺動部41a、41bは、それぞれ、上面42及び被摺動面43を有する。また一対の下摺動部46a、46bは、それぞれ、上面47、摺動面48及び把持面49を有する。一対の下摺動部46a、46bそれぞれの把持面49には、試験片Tの掴み部Tcに当接する当接部材52が設けられる。
【0037】
一対の下摺動部46a、46bは、中心軸線Cに沿った鉛直面に対して互いに面対称である状態、及び一対の上摺動部36a、36bを上下反転した状態を保ちつつ、下摺動部46aの摺動面48が下被摺動部41aの被摺動面43上を摺動し、下摺動部46bの摺動面48が下被摺動部41bの被摺動面43上を摺動する。
【0038】
上把持機構30において、一対の上被摺動部31a、31bに対して一対の上摺動部36a、36bを摺動させることで、一対の上摺動部36a、36bそれぞれの把持面39同士の間隔を調整することができる。また、下把持機構40において、上把持機構30と上下反転した状態を保ちつつ、一対の下被摺動部41a、41bに対して一対の下摺動部46a、46bを摺動させることで、一対の下摺動部46a、46bそれぞれの把持面49同士の間隔を調整することができる。これにより、一対の上摺動部36a、36bそれぞれの把持面39同士の間隔と、一対の下摺動部46a、46bそれぞれの把持面49同士の間隔とは、常に互いに同じとなる。
【0039】
上記のように、一対の上摺動部36a、36bそれぞれの把持面39同士の間隔、及び一対の下摺動部46a、46bそれぞれの把持面49同士の間隔を調整できるので、上及び下把持機構30、40は、
図4に示すように、基準試験片BT(及び試験片T)の厚みに応じて適切に該基準試験片BT(同前)を把持することが可能となる。
【0040】
(基準目印BLa~BLfと画素Pとの相関関係の決定)
ここで、
図4及び
図5に基づき、引張試験装置10を用いて、基準目印BLa、BLb間の距離、及び基準目印BLb、BLc間の距離と、カメラ11aにより撮像される画像又は映像の画素Pとの相関関係を決定し、かつ、基準目印BLd、BLe間の距離、及び基準目印BLe、BLf間の距離と、カメラ11bにより撮像される画像又は映像の画素Pとの相関関係を決定する態様の一例について説明する。
図5は、本実施形態に係る引張試験装置で、三か所の基準目印間の距離と画像又は映像の画素との相関関係を決定している様子を示す概略図である。
【0041】
まず、基準試験片BTに付けられた基準目印BLa、BLb間の距離、基準目印BLb、BLc間の距離、基準目印BLd、BLe間の距離、及び基準目印BLe、BLf間の距離を予め測定しておく。
【0042】
次に、
図4に示すように、基準目印BLa~BLfが引張装置20の正面に現れるように、基準試験片BTの掴み部BTbを上把持機構30で把持し、基準試験片BTの掴み部BTcを下把持機構40で把持する。
【0043】
さらに、
図4において破線で示すカメラ11aによる撮像範囲Ra内に基準目印BLa~BLcが位置するように該撮像範囲Raを調整し、カメラ11aにより基準目印BLa~BLcを撮像する。同様に、同図において破線で示すカメラ11bによる撮像範囲Rb内に基準目印BLd~BLfが位置するように該撮像範囲Rbを調整し、カメラ11bにより基準目印BLd~BLfを撮像する。
【0044】
ここで、上記したように、カメラ11a、11bは互いに同じ型番の製品であることが好ましい。また、例えば、カメラ11a、11bにより撮像される画像又は映像の画素P、及び撮像範囲Ra、Rbの大きさなどは互いに同等であることが好ましい。なお、上記した場合に限定されず、カメラ11a、11bは互いに異なる型番の製品であってもよい。また、カメラ11a、11bにより撮像される画像又は映像の画素P、及び撮像範囲Ra、Rbの大きさなどは互いに異なっていてもよい。
【0045】
また、上記したように、基準試験片BTの一方側の端面から基準目印BLaまでの距離が、基準試験片BTの他方側の端面から基準目印BLfまでの距離よりも短いので、基準試験片BTの一方側の端面から撮像範囲Raの上端辺までの距離は、基準試験片BTの他方側の端面から撮像範囲Rbの下端辺までの距離よりも短いことが好ましい。
【0046】
なお、このとき調整したカメラ11aによる撮像範囲Raは、後に
図9に基づき説明する試験片Tの目印Laを撮像する際のカメラ11aによる撮像範囲Raと同じ位置及び大きさである。換言すれば、カメラ11aから目印Laまでの該カメラ11aの光軸方向における距離と、カメラ11aから基準目印BLaまでの該カメラ11aの光軸方向における距離と、が同じである。なお、カメラ11bによる撮像範囲Rbについても同様であるため、ここではその説明を繰り返さない。
【0047】
そして、
図5に示すように、予め測定した基準目印BLa、BLb間の距離、及び基準目印BLb、BLc間の距離、並びにカメラ11aにより撮像した画像又は映像に基づき、基準目印BLa、BLb間の距離、及び基準目印BLb、BLc間の距離と、前記画像又は前記映像の画素Pとの相関関係を決定する。同様に、予め測定した基準目印BLd、BLe間の距離、及び基準目印BLe、BLf間の距離、並びにカメラ11bにより撮像した画像又は映像に基づき、基準目印BLd、BLe間の距離、及び基準目印BLe、BLf間の距離と、前記画像又は前記映像の画素Pとの相関関係を決定する。
【0048】
(試験片Tの伸びを測定する態様の一例)
図1及び
図6~13に基づき、引張試験装置10を用いて、試験片Tの伸びを測定する態様の一例について説明する。
【0049】
まず、
図1に示すように、ロボット70に並設されたテーブル14上に、複数の試験片Tを準備する。ここで、例えば、引張試験装置10は、一度に最大50本の試験片Tの伸びを測定できるように構成されてもよい。このような場合、例えば、50本の試験片Tは、各々の刻印Sが後述する副カメラ12(
図1及び
図6参照)で撮像できるように、厚み方向に25本積み重ねたものを2つ隣接してテーブル14上に配置されてもよい。
【0050】
図6は、本実施形態に係る引張試験装置で、副カメラにより試験片の刻印を読み取っている様子を示す概略図である。
【0051】
次に、
図6に示すように、副カメラ12により試験片Tの刻印Sに示された試験片番号を読み取る。副カメラ12により読み取られた前記試験片番号は、制御装置60へと送信される。
【0052】
図7は、本実施形態に係る引張試験装置で、試験片の三か所の厚みを測定している様子を示す概略図であり、(A)が試験片の長さ方向の一方端側の厚みを測定している図、(B)が試験片の長さ方向の中央の厚みを測定している図、(C)が試験片の長さ方向の他方端側の厚みを測定している図である。
【0053】
さらに、
図7に示すように、ロボットハンド73により試験片Tの掴み部Tbを保持し、ロボットアーム72の姿勢を変更して、試験片Tをロボット70に並設された断面測定装置15まで搬送する。
【0054】
断面測定装置15は、上下方向に対向して配置された光学センサ16a、16bを有する。ロボット70は、光学センサ16a、16bの間に試験片Tを挿入することで、試験片Tのうち、該試験片Tの長さ方向において目印La、Lb間の部分の三か所の厚みを測定する。また、ロボット70は、試験片Tの向きを変更し、光学センサ16a、16bの間に試験片Tを挿入することで、試験片Tのうち、該試験片Tの長さ方向において目印La、Lb間の部分の三か所の幅を測定する。
【0055】
上記のように測定した試験片Tの厚み又は幅に異常がなければ、ロボット70により試験片Tを引張装置20まで搬送する。一方、試験片Tの厚み又は幅に異常があれば(例えば、該試験片Tの三か所の厚み又は幅が許容値以上にバラ付いていることに基づき、制御装置60により異常と判定された場合)、該試験片Tを引張装置20以外の所定の場所まで搬送して以降の処理を行わない(すなわち、異常と判定した試験片Tを伸びの測定対象から除外する)。
【0056】
図8は、本実施形態に係る引張試験装置で、ロボットにより試験片を引張装置に設置している様子を示す概略図である。
【0057】
そして、
図8に示すように、ロボット70により試験片Tを引張装置20に設置する。なお、ロボット70は、制御装置60に接続されており、該制御装置60に記憶された試験片Tの試験片番号に基づき、引張装置20に対する試験片Tの高さ位置を調整する。
【0058】
例えば、
図8に示すように、試験片Tの掴み部Tb側の端面が一対の上摺動部36a、36bの上面と同じ高さとなり、試験片Tの掴み部Tc側の端面が一対の下摺動部46a、46bの下面と同じ高さとなるように、上及び下把持機構30、40で試験片Tを把持する場合、一対の上被摺動部31a、31bに対する一対の上摺動部36a、36bの高さ位置、一対の下被摺動部41a、41bに対する一対の下摺動部46a、46bの高さ位置、並びにロボット70が試験片Tを搬送すべき高さ位置は、試験片Tの厚みに依存する。また、制御装置60は、試験片Tの試験片番号に基づき、試験片Tの厚みを導出可能である。
【0059】
上記の通りであるため、ロボット70は、制御装置60に記憶された試験片Tの試験片番号に基づき、該試験片Tが上及び下把持機構30、40により把持されるべき高さ位置まで該試験片Tを正確に搬送し、該試験片Tを上及び下把持機構30、40に適切に受け渡すことが可能である。
【0060】
図9は、本実施形態に係る引張試験装置で、引張装置により試験片を引っ張って破断している様子を示す概略図であり、(A)が試験片を引っ張り始めた状態の図、(B)が試験片が破断するときの図、(C)が試験片が破断したあとの図である。また、
図10は、本実施形態に係る引張試験装置で、試験片を引っ張っているときに該試験片に生じる応力ひずみ曲線を示す概略図である。
【0061】
次に、
図9(A)~(C)に示すように、目印Laをカメラ11aにより撮像し、かつ、目印Lbをカメラ11bにより撮像しながら、引張装置20により試験片Tを引っ張って破断させる。なお、
図9(A)~(C)に示すように、本実施形態では、上把持機構30(換言すれば一対の上被摺動部31a、31b及び一対の上摺動部36a、36b)が、支柱22a~22d(
図1参照)に設けられる昇降機構により、該支柱22a~22dに対して昇降可能である。一方、下把持機構40(換言すれば、一対の下被摺動部41a、41b及び一対の下摺動部46a、46b)は、支柱22a~22dに固定されており、上把持機構30のように該支柱22a~22dに対して昇降しない。
【0062】
ここで、
図1に示すように、引張試験装置10は、載置面に立設されたフレーム19に固定される距離センサ18a、18bをさらに備える。距離センサ18aは、上把持機構30に取り付けられた反射板17aとの距離を測定するために設けられ、距離センサ18bは、下把持機構40に取り付けられた反射板17bとの距離を測定するために設けられる。すなわち、距離センサ18a、18bにより、上及び下把持機構30、40それぞれの高さ位置を測定することが可能である。距離センサ18a、18bは、それぞれ、制御装置60に接続されている。制御装置60は、距離センサ18a、18bによる測定値に基づき、上把持機構30の昇降動作を制御可能である。
【0063】
また、
図1に示すように、引張試験装置10は、引張装置20で試験片Tを引っ張っているときに該試験片Tに生じる応力を測定するための応力測定装置80をさらに備える。応力測定装置80は、試験片Tに加わる引張荷重を測定するための図示しない荷重計と、該引張荷重の大きさを表示するための引張荷重表示器82と、応力測定装置80による測定値に基づき得られる試験片Tの応力ひずみ曲線(
図10参照)を表示するためのモニタ84と、を有する。
【0064】
応力測定装置80は、制御装置60に接続されている。そして、制御装置60は、
図10に示す応力ひずみ曲線において、応力が最大値MVを過ぎたあとの領域で該応力が最大値MVよりも所定値Vだけ小さくなった時点Sから、上把持機構30の上昇速度を遅くする。換言すれば、制御装置60は、時点Sから上及び下把持機構30、40の相対速度が遅くなるように、上把持機構30を試験片Tの長さ方向に移動させる。
【0065】
制御装置60は、カメラ11a、11bにより撮像した
図9(B)の画像又は映像に加えて、基準目印BLa、BLb間の距離、及び基準目印BLb、BLc間の距離とカメラ11aにより撮像した画像又は映像の画素Pとの相関関係、並びに基準目印BLd、BLe間の距離、及び基準目印BLe、BLf間の距離とカメラ11bにより撮像した画像又は映像の画素Pとの相関関係に基づき、試験片Tが破断したときの目印La、Lb間の距離を測定する。
【0066】
なお、試験片Tを引っ張る前の該試験片Tの基準状態における目印La、Lb間の距離は、カメラ11a、11bにより撮像した
図9(A)の画像又は映像などに基づき測定されてもよいし、或いは、試験片Tに目印La、Lbを付ける際に予め測定しておいてもよい。
【0067】
そして、制御装置60は、試験片Tを引っ張る前の該試験片Tの基準状態における目印La、Lb間の距離、並びに、
図9(B)の画像又は映像及び前記相関関係に基づき測定した目印La、Lb間の距離に基づき、試験片Tの伸びを測定する。
【0068】
図11は、本実施形態に係る引張試験装置で、ロボットにより試験片の欠片を引張装置から取り除いている様子を示す概略図であり、(A)が下把持機構から試験片の欠片を取り除いている図、(B)が上把持機構から試験片の欠片を取り除いている図、(C)が上及び下把持機構から試験片の欠片を取り除いたあとの図である。
【0069】
図11(A)に示すように、試験片Tが破断したあと、試験片Tの欠片T
1が上把持機構30に把持され、試験片Tの欠片T
2が下把持機構40に把持された状態となる。そして、同図に示すように、下把持機構40に把持された欠片T
2をロボットハンド73で把持し、下把持機構40から欠片T
2を解放することで、下把持機構40からロボットハンド73に欠片T
2を受け渡す。このようにして、ロボット70により、下把持機構40から欠片T
2を取り除くことができる。
【0070】
なお、上記したように、一対の下被摺動部41a、41bに対する一対の下摺動部46a、46bの高さ位置は、試験片Tの厚みに依存し、かつ、制御装置60は、試験片Tの試験片番号に基づき、該試験片Tの厚みを導出可能である。したがって、制御装置60は、一対の下被摺動部41a、41bそれぞれの上面42と、一対の下摺動部46a、46bそれぞれの上面47と、の高さ方向における距離を導出可能である。また、制御装置60は、距離センサ18a、18bによる測定値に基づき、下把持機構40の高さ位置を導出可能である。
【0071】
上記のように導出した情報に基づき、制御装置60は、ロボットハンド73を適切な高さ位置に移動させ、下把持機構40からロボットハンド73に欠片T2を確実に受け渡すことが可能となる。
【0072】
図11(B)に示すように、下把持機構40から欠片T
2を取り除いたあと、上把持機構30に把持された欠片T
1をロボットハンド73で把持し、上把持機構30から欠片T
1を解放することで、上把持機構30からロボットハンド73に欠片T
1を受け渡す。このようにして、ロボット70により、上把持機構30から欠片T
1を取り除き、
図11(C)に示す状態とすることができる。
【0073】
なお、制御装置60が、ロボットハンド73を適切な高さ位置に移動させ、上把持機構30からロボットハンド73に欠片T1を確実に受け渡す態様の詳細は、上記した下把持機構40からロボットハンド73に欠片T2を確実に受け渡す態様と同様であるため、ここではその説明を繰り返さない。
【0074】
(衝撃装置90)
図12は、本実施形態に係る引張試験装置で、ロボットにより上把持機構から試験片の欠片を取り除く作業を、衝撃装置により補助している様子を示す概略図である。また、
図13は、衝撃装置の動作を概略的に示す断面図であり、(A)がシリンダ内にエアを注入する前の初期状態を示す図、(B)がシリンダ内にエアを注入したあとピストンが先端側に移動したときの図、(C)がシリンダ内にエアを注入したあとピストンが基端側に戻ってきたときの図である。
【0075】
図12及び
図13に示すように、上摺動部36aの背面の下面37近傍には、衝撃装置90が取り付けられる。衝撃装置90は、シリンダ91と、シリンダ91内を往復運動可能なピストン96と、を有する。
【0076】
シリンダ91の基端には、シリンダ91内にエアを注入するための注入孔92aが設けられる。また、シリンダ91の側面には、該シリンダ91内に注入されたエアを外部へと排出するための排出孔92bが設けられる。さらに、シリンダ91の先端には、ピストン96の軸部97の先端部分が貫通するための貫通孔92cが設けられる。
【0077】
シリンダ91の内部空間の基端側には、シリンダ91と同軸状に基端バネ部材93aが設けられる。基端バネ部材93aは、その基端がシリンダ91の内部空間の基端面に固定される。一方、シリンダ91の内部空間の先端側には、シリンダ91及び基端バネ部材93aと同軸状に先端バネ部材93bが設けられる。先端バネ部材93bは、その基端がシリンダ91の内部空間の先端面に固定される。
【0078】
ピストン96は、シリンダ91と同軸状の軸部97を有する。上記したように、軸部97の先端部分は、ピストン96の貫通孔92cを貫通する。ピストン96は、軸部97の基端に設けられる基端フランジ98aと、軸部97の中央に設けられる中央フランジ98bと、をさらに有する。また、ピストン96は、基端フランジ98aから軸部97とは反対側に突出し、基端バネ部材93a内に挿入される位置決め部99をさらに有する。位置決め部99が基端バネ部材93aに挿入されることで、ピストン96は、ピストン96の軸方向に直交する平面内で位置決めされつつ、シリンダ91内を軸方向に往復運動することができる。
【0079】
図13(A)~(C)に基づき、衝撃装置90の動作を詳細に説明する。
【0080】
図13(A)に示すように、シリンダ91内にエアを注入する前の初期状態において、ピストン96の基端フランジ98aが、シリンダ91の排出孔92bよりも基端側に位置する。このとき、基端バネ部材93aが基端フランジ98aを先端側に付勢する付勢力(以下、単に「基端バネ部材93aによる付勢力」と言う)と、先端バネ部材93bが軸部97及び中央フランジ98bを介して基端フランジ98aを基端側に付勢する付勢力(以下、単に「先端バネ部材93bによる付勢力」と言う)と、が釣り合った状態である。
【0081】
次に、
図13(B)に白抜き矢印で示すように、シリンダ91内に注入孔92aからエアを注入する。このようにエアを注入した直後は、同図において黒塗り矢印で示すように、基端バネ部材93aによる付勢力と、シリンダ91の内部空間において基端フランジ98aよりも基端側に存在するエアが基端フランジ98aを先端側に付勢する圧力(以下、単に「基端側のエアによる圧力」と言う)との合力が、先端バネ部材93bによる付勢力と、シリンダ91の内部空間において基端フランジ98aよりも先端側に存在するエアが基端フランジ98aを基端側に付勢する圧力(以下、単に「先端側のエアによる圧力」と言う)との合力よりも大きくなるので、基端フランジ98a(換言すれば、ピストン96)が先端側へと移動する。
【0082】
シリンダ91内に注入孔92aからエアを注入して一定時間経過すると、
図13(B)に示すように、基端フランジ98aが排出孔92bよりも先端側に位置するようになる。これにより、同図に白抜き矢印で示すように基端側のエアが排出孔92bから排出され、かつ、基端フランジ98aが基端バネ部材93aから離間するので、基端バネ部材93aによる付勢力と基端側のエアによる圧力との合力が小さくなる。一方、基端フランジ98aが先端側に移動し、シリンダ91の内部空間において基端フランジ98aよりも先端側の体積が小さくなるので、先端側のエアによる圧力が大きくなる。上記の通りであるため、
図13(B)に黒塗り矢印で示すように、基端バネ部材93aによる付勢力と基端側のエアによる圧力との合力が、先端バネ部材93bによる付勢力と先端側のエアによる圧力との合力よりも小さくなるので、基端フランジ98a(換言すれば、ピストン96)が基端側へと押し戻される。
【0083】
そして、
図13(B)の状態からさらに一定時間経過すると、
図13(C)に示すように、基端フランジ98aが基端側へと押し戻され、該基端フランジ98aが排出孔92bよりも基端側に位置するようになる。これにより、同図において白抜き矢印で示すように先端側のエアが排出孔92bから排出され、かつ、中央フランジ98bが先端バネ部材93bから離間するので、先端バネ部材93bによる付勢力と先端側のエアによる圧力との合力が小さくなる。一方、基端フランジ98aが基端側に移動し、シリンダ91の内部空間において基端フランジ98aよりも基端側の体積が小さくなるので、先端側のエアによる圧力が大きくなる。また、基端フランジ98aが基端バネ部材93aに当接するので、基端バネ部材93aによる付勢力も大きくなる。上記の通りであるため、
図13(C)に黒塗り矢印で示すように、基端バネ部材93aによる付勢力と基端側のエアによる圧力との合力が、先端バネ部材93bによる付勢力と先端側のエアによる圧力との合力よりも再び大きくなるので、基端フランジ98a(換言すれば、ピストン96)が先端側へと押し戻される。
【0084】
上記のようにピストン96が繰り返し往復運動することで、ピストン96の先端部分が上摺動部36aを繰り返し叩く。これにより、衝撃装置90は、上摺動部36aを介して試験片Tの欠片T1に繰り返し衝撃を加えることができる。なお、上摺動部36b及び一対の下摺動部46a、46bそれぞれにも、同様の衝撃装置90が取り付けられてもよい。なお、衝撃装置90を設けることによる効果については後述する。
【0085】
(効果)
本実施形態に係る引張試験装置10は、カメラ11a、11bにより撮像した
図9(B)の画像又は映像に基づき、試験片Tが破断したときの目印La、Lb間の距離を測定することができる。そして、試験片Tを引っ張る前の該試験片Tの基準状態における目印La、Lb間の距離、及び、試験片Tが破断したときの目印La、Lb間の距離に基づき、該試験片Tの伸びを測定することができる。これにより、例えば、従来のように、試験片Tの基準状態における目印La、Lb間の距離、及び、引っ張って破断した試験片Tの欠片T
1、T
2同士を突き合わせた状態における目印La、Lb間の距離に基づき、試験片Tの伸びを測定する場合と比較して、容易に試験片Tの伸びを測定することが可能となる。
【0086】
また、本実施形態では、目印La、Lbが、それぞれ、試験片Tの厚み方向に延びる直線状であり、試験片Tの基準状態において、目印La、Lb間の距離は、試験片Tの長さ方向において、180mm以上220mm以下であり、試験片Tを該試験片Tの長さ方向に引っ張って破断させ、該試験片Tが破断するとき、目印La、Lb間の距離は、320mm以下であるため、カメラ11a、11bにより撮像した
図9(B)の画像又は映像に基づき、試験片Tが破断したときの目印La、Lb間の距離を正確に測定することができる。これにより、試験片Tの伸びの測定精度が向上する。
【0087】
さらに、本実施形態では、カメラ11a、11bが、目印La、Lbそれぞれに対して一台ずつ設けられるので、試験片Tが破断したときの目印La、Lb間の距離をいっそう正確に測定することができる。これにより、試験片Tの伸びの測定精度がいっそう向上する。
【0088】
そして、本実施形態では、カメラ11a、11bにより撮像した
図9(B)の画像又は映像に加えて、基準目印BLa、BLb間の距離、及び基準目印BLb、BLc間の距離とカメラ11aにより撮像した画像又は映像の画素Pとの相関関係、並びに基準目印BLd、BLe間の距離、及び基準目印BLe、BLf間の距離とカメラ11bにより撮像した画像又は映像の画素Pとの相関関係に基づき、試験片Tが破断したときの目印La、Lb間の距離を測定するので、試験片Tが破断したときの目印La、Lb間の距離をいっそう正確に測定することができる。これにより、試験片Tの伸びの測定精度がいっそう向上する。
【0089】
また、本実施形態では、カメラ11aから目印Laまでの該カメラ11aの光軸方向における距離と、カメラ11aから基準目印BLaまでの該カメラ11aの光軸方向における距離と、が同じであるため、試験片Tが破断したときの目印La、Lb間の距離をいっそう正確に測定することができる。同様に、カメラ11bから目印Lbまでの該カメラ11bの光軸方向における距離と、カメラ11bから基準目印BLbまでの該カメラ11bの光軸方向における距離と、が同じであるため、試験片Tが破断したときの目印La、Lb間の距離をいっそう正確に測定することができる。上記の通りであるため、試験片Tの伸びの測定精度がいっそう向上する。
【0090】
さらに、本実施形態では、試験片Tの表面に下地処理STを施したうえで、該試験片Tに目印La、Lbを付けるので、カメラ11a、11bにより撮像した
図9(B)の画像又は映像に基づき、目印La、Lbを判別し易くなる。これにより、試験片Tが破断したときの目印La、Lb間の距離をいっそう正確に測定することができる。その結果、試験片Tの伸びの測定精度がいっそう向上する。なお、基準試験片BTの基準目印BLa~BLfについても同様であるため、ここではその説明を繰り返さない。
【0091】
また、本実施形態に係る引張試験装置10は、試験片Tを搬送するためのロボット70をさらに備えるので、該ロボット70により容易に試験片Tを引張装置20に設置することができる。さらに、引っ張って破断した試験片Tの欠片T1、T2を該ロボット70により容易に引張装置20から取り除くことができる。
【0092】
そして、本実施形態に係る引張試験装置10は、応力測定装置80をさらに備え、該応力測定装置80による測定値に基づき得られる試験片Tの応力ひずみ曲線において、応力が最大値MVよりも所定値Vだけ小さくなった時点Sから、上把持機構30の上昇速度を遅くするので、試験片Tが破断するときの目印La、Lbの速度を遅くすることができる。これにより、カメラ11a、11bにより撮像した
図9(B)の画像又は映像に基づき、目印La、Lbを判別し易くなるので、試験片Tが破断したときの目印La、Lb間の距離をいっそう正確に測定することができる。その結果、試験片Tの伸びの測定精度がいっそう向上する。
【0093】
また、本実施形態に係る引張試験装置10は、上及び下把持機構30、40を介して試験片Tの欠片T1、T2に衝撃を加える衝撃装置90をさらに備える。ここで、引張装置20は、試験片Tを破断させるために、該試験片Tを比較的大きな力で引っ張る必要がある。この際、試験片Tの掴み部Tbが上把持機構30による把持位置からずれないように、かつ、試験片Tの掴み部Tcが下把持機構40による把持位置からずれないように、上及び下把持機構30、40が、該試験片Tの掴み部Tb、Tcを比較的大きな力で把持する必要がある。
【0094】
上記の通りであるため、引っ張って破断したあとの試験片Tの欠片T1が、上把持機構30による把持から解放されたあと、上把持機構30の当接部材50に貼り付いてしまう場合がある。そこで、例えば、ロボット70により上把持機構30から欠片T1を取り除く際に、上把持機構30による欠片T1の把持を解放しつつ(又は上把持機構30による欠片T1の把持を解放したあと)、上把持機構30の当接部材50に貼り付いた欠片T1をロボットハンド73により掴んで該欠片T1を揺らし、かつ、衝撃装置90により上把持機構30を介して欠片T1に繰り返し衝撃を加えることで、上把持機構30の当接部材50から欠片T1を引き剥がすことができる。
【0095】
(形鋼の引張試験方法の一例)
最後に、
図14に基づき、形鋼の引張試験方法の一例について説明する。なお、ここでは、上記した引張試験装置10を用いて行われる引張試験方法の一例について説明する。
【0096】
まず、試験片T、基準試験片BT、カメラ11a、11b、引張装置20、ロボット70、及び応力測定装置80を準備するステップS1(第1ステップ)を行う。このとき、例えば、50本の試験片T及び1本の基準試験片BTが準備されてもよい。また、例えば、副カメラ12、照明装置13a、13b、テーブル14、断面測定装置15、距離センサ18a、18b、制御装置60、及び衝撃装置90などがさらに準備されてもよい。
【0097】
次に、基準試験片BTに基準目印BLa~BLfを付けるステップS2(第6ステップ)を行う。なお、基準目印BLa~BLfは、基準試験片BTの表面に下地処理STを施したうえで、該基準試験片BTに付けられてもよい。
【0098】
さらに、基準目印BLa、BLb間の距離、基準目印BLb、BLc間の距離、基準目印BLd、BLe間の距離、及び基準目印BLe、BLf間の距離を測定するステップS3(第7ステップ)を行う。
【0099】
次に、引張装置20により基準試験片BTを把持させた状態で、基準目印BLa~BLcをカメラ11aにより撮像し、基準目印BLd~BLfをカメラ11bにより撮像するステップS4(第8ステップ)を行う。
【0100】
さらに、ステップS3で測定した基準目印BLa、BLb間の距離、及び基準目印BLb、BLc間の距離と、ステップS4でカメラ11aにより撮像した画像又は映像の画素Pと、の相関関係を決定し、かつ、ステップS3で測定した基準目印BLd、BLe間の距離、及び基準目印BLe、BLf間の距離と、ステップS4でカメラ11bにより撮像した画像又は映像の画素Pと、の相関関係を決定するステップ5(第9ステップ)を行う。
【0101】
次に、試験片Tのうち、引っ張り方向において離間した二か所に目印La、Lbを付けるステップS6を行う(第2ステップ)。なお、目印La、Lbは、試験片Tの表面に下地処理STを施したうえで、試験片Tに付けられてもよい。
【0102】
さらに、目印Laをカメラ11aにより撮像し、目印Lbをカメラ11bにより撮像しながら、引張装置20により試験片Tを引っ張って破断させるステップS7(第3ステップ)を行う。このとき、ロボット70により試験片Tを引張装置20に設置してもよい。また、ステップS7を行う前に、副カメラ12により試験片Tの刻印Sを撮像してもよい。さらに、ステップS7を行う前に、断面測定装置15により試験片Tの三か所の厚み及び三か所の幅を測定し、この測定値に基づき試験片Tに異常を確認した場合は、該試験片Tを引張装置20以外の所定の場所まで搬送し、該試験片Tに対して以降の処理を行わないようにしてもよい。
【0103】
次に、ステップS7でカメラ11a、11bにより撮像した画像又は映像に基づき、試験片Tが破断したときの目印La、Lb間の距離を測定するステップS8(第4ステップ)を行う。このとき、ステップS7でカメラ11a、11bにより撮像した画像又は映像に加えて、ステップS5で決定した相関関係に基づき、試験片Tが破断したときの目印La、Lb間の距離が測定されてもよい。また、試験片Tの応力ひずみ曲線において、応力が最大値MVを過ぎたあとの領域で該応力が最大値MVよりも所定値Vだけ小さくなった時点Sから、上把持機構30の上昇速度を遅くしてもよい(換言すれば、上及び下把持機構30、40の相対速度を遅くしてもよい)。
【0104】
最後に、試験片Tの基準状態における目印La、Lb間の距離、及び、ステップS8で測定した目印La、Lb間の距離に基づき、試験片Tの伸びを測定するステップS9(第5ステップ)を行う。なお、試験片Tの基準状態における目印La、Lb間の距離は、カメラ11a、11bにより撮像した
図9(A)の画像又は映像などに基づき測定されてもよいし、或いは、試験片Tに目印La、Lbを付ける際に予め測定しておいてもよい。また、このステップS8を行ったあとで、ロボット70により、下把持機構40から同試験片Tの欠片T
2を取り除き、上把持機構30から試験片Tの欠片T
1を取り除いてもよい。さらに、このようにロボット70により欠片T
1、T
2を取り除く作業を、衝撃装置90により補助してもよい。
【0105】
上記したステップS1~S9を行うことで、容易に試験片Tの伸びを測定することが可能となる。なお、例えば、ステップS1で50本の試験片Tを準備し、ステップS6で50本の試験片Tそれぞれに目印La、Lbを付けることで、最初にステップS1~S9を一通り行ったあと、ステップS7~S9のみを繰り返し行い、効率良く50本の試験片Tの伸びを測定することが可能となる。
【0106】
さらに、例えば、50本の試験片Tの伸びを測定する前(換言すれば、最初にステップS1~S6を行うとき)、25本の試験片Tの伸びを測定したあと、及び、50本の試験片Tの伸びを全て測定したあとのそれぞれで、基準目印BLaをカメラ11aにより撮像し、基準目印BLbをカメラ11bにより撮像するステップS4、並びに、ステップS3で測定した基準目印BLa、BLb間の距離、基準目印BLb、BLc間の距離、基準目印BLd、BLe間の距離、及び基準目印BLe、BLf間の距離と、ステップS4でカメラ11a、11bにより撮像した画像又は映像の画素Pと、の相関関係を決定するステップS5が行われてもよい。これにより、試験片Tが破断したときの目印La、Lb間の距離をいっそう正確に測定することができる。その結果、試験片Tの伸びの測定精度がいっそう向上する。
【0107】
(変形例)
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0108】
上記実施形態では、目印Laをカメラ11aにより撮像し、目印Lbをカメラ11bにより撮像する場合について説明した(換言すれば、二か所の目印それぞれに対してカメラが一台ずつ設けられる場合について説明した)。しかし、この場合に限定されず、目印La、Lbを一台のカメラ11aで撮像してもよい。
【0109】
上記実施形態では、下把持機構40が固定され、上把持機構30が上昇することで、試験片Tを引っ張って破断させる場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、上把持機構30が上昇することに加えて、下把持機構40が下降することで、試験片Tを引っ張って破断させてもよいし、或いは、上把持機構30が固定され、下把持機構40が下降することで、試験片Tを引っ張って破断させてもよい。
【0110】
上記実施形態では、距離センサ18a、18b(及び反射板17a、17b)により、上及び下把持機構30、40それぞれの高さ位置を測定し、この測定値に基づき、上把持機構30の上昇速度を制御する場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、例えば、試験片Tを引っ張っているときに、カメラ11a、11bにより撮像している画像又は映像から目印La、Lbの速度を導出し、導出した前記速度に基づき、上把持機構30の上昇速度を制御してもよい。或いは、精度を向上させるために、前段と後段の両方に基づき、上把持機構30の上昇速度を制御してもよい。
【0111】
上記実施形態では、目印La、Lbが試験片Tの厚み方向に延びる直線状であり、基準目印BLa~BLfが基準試験片BTの厚み方向に延びる直線状である場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、例えば、目印La、Lbが試験片Tの幅方向に延びる直線状であり、基準目印BLa~BLfが基準試験片BTの幅方向に延びる直線状であってもよい。
【0112】
上記実施形態では、基準試験片BTに六つの基準目印BLa~BLfが付けられ、該基準目印BLa~BLfがカメラ11a、11bにより撮像される場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、基準試験片BTには、少なくとも二か所の基準目印が付けられれば良く、該少なくとも二か所の基準目印それぞれを一台のカメラにより撮像してもよい。或いは、該少なくとも二か所の基準目印を少なくとも一台のカメラにより撮像してもよい。
【0113】
(まとめ)
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る形鋼の引張試験方法は、前記形鋼の試験片、及びカメラを準備する第1ステップと、前記試験片のうち、引っ張り方向において離間した二か所に目印を付ける第2ステップと、前記二か所の目印を前記カメラにより撮像しながら、前記試験片を引っ張って破断させる第3ステップと、前記第3ステップで前記カメラにより撮像した画像又は映像に基づき、前記試験片が破断したときの前記二か所の目印間の距離を測定する第4ステップと、前記第3ステップで前記試験片を引っ張る前の前記試験片の基準状態における前記二か所の目印間の距離、及び、前記第4ステップで測定した前記二か所の目印間の距離に基づき、前記試験片の伸びを測定する第5ステップと、を備えることを特徴とする。
【0114】
上記構成によれば、カメラにより撮像した画像又は映像に基づき、試験片が破断したときの二か所の目印間の距離を測定することができる。そして、試験片を引っ張る前の該試験片の基準状態における二か所の目印間の距離、及び、試験片が破断したときの二か所の目印間の距離に基づき、該試験片の伸びを測定することができる。その結果、容易に試験片の伸びを測定することが可能となる。
【0115】
前記二か所の目印は、それぞれ、前記試験片の厚み方向又は幅方向に延びる直線状であり、前記第3ステップにおいて、前記試験片を前記試験片の長さ方向に引っ張って破断させ、前記試験片の基準状態において、前記二か所の目印間の距離は、前記試験片の長さ方向において、180mm以上220mm以下であり、前記試験片が破断するとき、前記二か所の目印間の距離は、320mm以下であってもよい。
【0116】
上記構成によれば、カメラにより撮像した画像又は映像に基づき、試験片が破断したときの二か所の目印間の距離を正確に測定することができる。これにより、試験片の伸びの測定精度が向上する。
【0117】
前記第1ステップにおいて、前記カメラは、前記二か所の目印それぞれに対して一台ずつ設けられてもよい。
【0118】
上記構成によれば、試験片が破断したときの二か所の目印間の距離をいっそう正確に測定することができるので、試験片の伸びの測定精度がいっそう向上する。
【0119】
前記第1ステップにおいて、前記試験片とは別個に前記形鋼の基準試験片をさらに準備し、前記第3乃至前記第5ステップを行う前に、前記基準試験片の少なくとも二か所に基準目印を付ける第6ステップと、前記第3乃至前記第5ステップを行う前に、前記少なくとも二か所の基準目印間の距離を測定する第7ステップと、前記第3乃至前記第5ステップを行う前に、前記少なくとも二か所の基準目印を前記カメラにより撮像する第8ステップと、前記第3乃至前記第5ステップを行う前に、前記第7ステップで測定した前記少なくとも二か所の基準目印間の距離、及び、前記第8ステップで前記カメラにより撮像した画像又は映像に基づき、前記少なくとも二か所の基準目印間の距離と前記画像又は前記映像の画素との相関関係を決定する第9ステップと、をさらに備え、前記第4ステップにおいて、前記第3ステップで前記カメラにより撮像した画像又は映像に加えて、前記第9ステップで決定した前記相関関係に基づき、前記試験片が破断したときの前記二か所の目印間の距離を測定してもよい。
【0120】
上記構成によれば、試験片が破断したときの二か所の目印間の距離をいっそう正確に測定することができるので、試験片の伸びの測定精度がいっそう向上する。
【0121】
前記第3ステップにおいての、前記カメラから前記目印までの前記カメラの光軸方向における距離と、前記第7ステップにおいての、前記カメラから前記基準目印までの前記カメラの光軸方向における距離と、が同じであってもよい。
【0122】
上記構成によれば、試験片が破断したときの二か所の目印間の距離をいっそう正確に測定することができるので、試験片の伸びの測定精度がいっそう向上する。
【0123】
前記第2ステップにおいて、前記試験片の表面に下地処理を施したうえで、前記試験片に前記二か所の目印を付けてもよい。
【0124】
上記構成によれば、試験片が破断したときの二か所の目印間の距離をいっそう正確に測定することができるので、試験片の伸びの測定精度がいっそう向上する。
【0125】
前記第1ステップにおいて、前記第3ステップで前記試験片を引っ張って破断させるための引張装置をさらに準備し、前記引張装置は、前記試験片の一方端を把持するための第1把持機構と、前記試験片の他方端を把持するための第2把持機構と、前記第1及び前記第2把持機構の動作を制御するための制御装置と、を有し、前記第3ステップにおいて、前記第1及び前記第2把持機構により前記試験片を把持させた状態で、前記第1及び前記第2把持機構の少なくともいずれかを前記引っ張り方向に移動させることにより、前記試験片を引っ張って破断させてもよい。
【0126】
上記構成によれば、容易に試験片を引っ張って破断させることができる。
【0127】
前記第1ステップにおいて、前記試験片を搬送するためのロボットをさらに準備し、前記第3ステップにおいて、前記ロボットにより前記試験片を前記引張装置に設置してもよい。
【0128】
上記構成によれば、ロボットにより容易に試験片を引張装置に設置することができる。
【0129】
前記第1ステップにおいて、前記引張装置で前記試験片を引っ張っているときに前記試験片に生じる応力を測定するための応力測定装置をさらに準備し、前記第3ステップにおいて、前記制御装置は、前記応力測定装置による測定値に基づき得られる前記試験片の応力ひずみ曲線において、前記応力が最大値を過ぎたあとの領域で前記応力が前記最大値よりも所定値だけ小さくなった時点から、前記第1及び前記第2把持機構の相対速度が遅くなるように、前記第1及び前記第2把持機構の少なくともいずれかを前記引っ張り方向に移動させてもよい。
【0130】
上記構成によれば、カメラにより撮像した画像又は映像に基づき、二か所の目印を判別し易くなるので、試験片が破断したときの二か所の目印間の距離をいっそう正確に測定することができる。その結果、試験片の伸びの測定精度がいっそう向上する。
【0131】
前記第1ステップにおいて、前記第3ステップを行ったあとに前記第1及び前記第2把持機構に貼り付いた前記試験片の欠片を前記第1及び前記第2把持機構から取り除くために、前記第1及び前記第2把持機構を介して前記試験片の欠片に衝撃を加える衝撃装置をさらに準備してもよい。
【0132】
上記構成によれば、引っ張って破断した試験片の欠片が引張装置に貼り付いた場合、該引張装置から該試験片の欠片を容易に引き剥がすことが可能となる。
【0133】
上記課題を解決するために、上記いずれかの形鋼の引張試験方法を行うための引張試験装置であって、少なくとも、前記第3ステップで前記二か所の目印を撮像するための前記カメラを備えることを特徴とする。
【0134】
上記構成によれば、容易に試験片の伸びを測定することが可能となる。
【符号の説明】
【0135】
10 引張試験装置
11a、11b カメラ
20 引張装置
30 上把持機構(第1把持機構)
31a、31b 一対の上被摺動部
36a、36b 一対の上摺動部
40 下把持機構(第2把持機構)
41a、41b 一対の下被摺動部
46a、46b 一対の下摺動部
60 制御装置
70 ロボット
80 応力測定装置
90 衝撃装置
T 試験片
T1、T2 欠片
La、Lb 目印
BT 基準試験片
BLa~BLf 基準目印
P 画素
【手続補正書】
【提出日】2020-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形鋼の引張試験方法であって、
前記形鋼の試験片、及びカメラを準備する第1ステップと、
前記試験片のうち、引っ張り方向において離間した二か所に目印を付ける第2ステップと、
前記二か所の目印を前記カメラにより撮像しながら、前記試験片を引っ張って破断させる第3ステップと、
前記第3ステップで前記カメラにより撮像した画像又は映像に基づき、前記試験片が破断したときの前記二か所の目印間の距離を測定する第4ステップと、
前記第3ステップで前記試験片を引っ張る前の前記試験片の基準状態における前記二か所の目印間の距離、及び、前記第4ステップで測定した前記二か所の目印間の距離に基づき、前記試験片の伸びを測定する第5ステップと、
を備え、
前記第1ステップにおいて、前記第3ステップで前記試験片を引っ張って破断させるための引張装置をさらに準備し、
前記引張装置は、
前記試験片の一方端を把持するための第1把持機構と、
前記試験片の他方端を把持するための第2把持機構と、
前記第1及び前記第2把持機構の動作を制御するための制御装置と、を有し、
前記第3ステップにおいて、前記第1及び前記第2把持機構により前記試験片を把持させた状態で、前記第1及び前記第2把持機構の少なくともいずれかを前記引っ張り方向に移動させることにより、前記試験片を引っ張って破断させ、
前記第1ステップにおいて、前記引張装置で前記試験片を引っ張っているときに前記試験片に生じる応力を測定するための応力測定装置をさらに準備し、
前記第3ステップにおいて、前記制御装置は、前記応力測定装置による測定値に基づき得られる前記試験片の応力ひずみ曲線において、前記応力が最大値を過ぎたあとの領域で前記応力が前記最大値よりも所定値だけ小さくなった時点から、前記第1及び前記第2把持機構の相対速度が遅くなるように、前記第1及び前記第2把持機構の少なくともいずれかを前記引っ張り方向に移動させることを特徴とする、形鋼の引張試験方法。
【請求項2】
前記二か所の目印は、それぞれ、前記試験片の厚み方向又は幅方向に延びる直線状であり、
前記第3ステップにおいて、前記試験片を前記試験片の長さ方向に引っ張って破断させ、
前記試験片の基準状態において、前記二か所の目印間の距離は、前記試験片の長さ方向において、180mm以上220mm以下であり、
前記試験片が破断するとき、前記二か所の目印間の距離は、320mm以下である、請求項1に記載の形鋼の引張試験方法。
【請求項3】
前記第1ステップにおいて、前記カメラは、前記二か所の目印それぞれに対して一台ずつ設けられる、請求項1又は2に記載の形鋼の引張試験方法。
【請求項4】
前記第1ステップにおいて、前記試験片とは別個に前記形鋼の基準試験片をさらに準備し、
前記第3乃至前記第5ステップを行う前に、前記基準試験片の少なくとも二か所に基準目印を付ける第6ステップと、
前記第3乃至前記第5ステップを行う前に、前記少なくとも二か所の基準目印間の距離を測定する第7ステップと、
前記第3乃至前記第5ステップを行う前に、前記少なくとも二か所の基準目印を前記カメラにより撮像する第8ステップと、
前記第3乃至前記第5ステップを行う前に、前記第7ステップで測定した前記少なくとも二か所の基準目印間の距離、及び、前記第8ステップで前記カメラにより撮像した画像又は映像に基づき、前記少なくとも二か所の基準目印間の距離と前記画像又は前記映像の画素との相関関係を決定する第9ステップと、をさらに備え、
前記第4ステップにおいて、前記第3ステップで前記カメラにより撮像した画像又は映像に加えて、前記第9ステップで決定した前記相関関係に基づき、前記試験片が破断したときの前記二か所の目印間の距離を測定する、請求項1乃至3のいずれかに記載の形鋼の引張試験方法。
【請求項5】
前記第3ステップにおいての、前記カメラから前記目印までの前記カメラの光軸方向における距離と、前記第7ステップにおいての、前記カメラから前記基準目印までの前記カメラの光軸方向における距離と、が同じである、請求項4に記載の形鋼の引張試験方法。
【請求項6】
前記第2ステップにおいて、前記試験片の表面に下地処理を施したうえで、前記試験片に前記二か所の目印を付ける、請求項1乃至5のいずれかに記載の形鋼の引張試験方法。
【請求項7】
前記第1ステップにおいて、前記試験片を搬送するためのロボットをさらに準備し、
前記第3ステップにおいて、前記ロボットにより前記試験片を前記引張装置に設置する、請求項1乃至6のいずれかに記載の形鋼の引張試験方法。
【請求項8】
前記第1ステップにおいて、前記第3ステップを行ったあとに前記第1及び前記第2把持機構に貼り付いた前記試験片の欠片を前記第1及び前記第2把持機構から取り除くために、前記第1及び前記第2把持機構を介して前記試験片の欠片に衝撃を加える衝撃装置をさらに準備する、請求項1乃至7のいずれかに記載の形鋼の引張試験方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の形鋼の引張試験方法を行うための引張試験装置であって、
少なくとも、前記第3ステップで前記二か所の目印を撮像するための前記カメラと、前記第3ステップで前記試験片を引っ張って破断させるための前記引張装置と、前記引張装置で前記試験片を引っ張っているときに前記試験片に生じる応力を測定するための前記応力測定装置と、を備えることを特徴とする、引張試験装置。