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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046070
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】気体案内装置
(51)【国際特許分類】
   A62B 7/12 20060101AFI20220315BHJP
   A61M 16/06 20060101ALI20220315BHJP
   A62B 7/10 20060101ALI20220315BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20220315BHJP
   A62B 29/00 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
A62B7/12
A61M16/06 A
A62B7/10
A62B18/02 C
A62B29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】65
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151921
(22)【出願日】2020-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】517127584
【氏名又は名称】株式会社MAGOS
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】新田 一福
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA08
2E185BA02
2E185CB07
(57)【要約】
【課題】利用者の口の前方側の口近傍領域に気体を供給する気体案内装置を提供する。
【解決手段】本発明の気体案内装置1は、気体を供給する気体供給部2と、気体供給部2から供給される気体を外部に放出する供給孔50を有する気体供給側管部4と、供給孔50が利用者の口の前方側の口近傍領域を向く姿勢で気体供給側管部4を利用者の顔の所定の位置に配置させる配置部6とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を供給する気体供給部と、
前記気体供給部の前記気体を案内し、前記気体供給部から供給される気体を放出する供給孔を有する気体供給側管部と、
前記供給孔が利用者の顔の近傍に位置する姿勢で前記気体供給側管部を前記利用者の頭部に配置させる配置部と、
を備えることを特徴とする、
気体案内装置。
【請求項2】
前記配置部は、前記供給孔が前記利用者の口の近傍領域に位置するように、前記気体供給側管部を配置させることを特徴とする、
請求項1に記載の気体案内装置。
【請求項3】
前記気体供給部における前記気体の吸引側に配置されるフィルタを備えることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の気体案内装置。
【請求項4】
前記供給孔は、複数の孔を組み合わせる態様及び/又はスリット形状の長孔によって形成される帯状放出領域から前記気体を放出することを特徴とする、
請求項1~3のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項5】
前記供給孔の前記帯状放出領域は、前記利用者の顔の幅方向に延在することを特徴とする、
請求項4に記載の気体案内装置。
【請求項6】
前記供給孔の前記帯状放出領域は、前記利用者の顔の長さ方向に延在することを特徴とする、
請求項4に記載の気体案内装置。
【請求項7】
前記配置部は、前記供給孔を前記利用者の口よりも下側に配置させることを特徴とする、
請求項1~6のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項8】
前記配置部は、前記供給孔を前記利用者の目よりも上側に配置させることを特徴とする、
請求項1~6のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項9】
前記配置部は、前記供給孔を前記利用者の口の幅方向の一方側に配置させることを特徴とする、
請求項1~6のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項10】
前記供給孔は、少なくとも、前記利用者の鼻の幅方向両外側の場所から前記気体を放出することを特徴とする、
請求項1~9のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項11】
前記供給孔は、前記利用者の鼻近傍に配置されて目の前方側に向かって前記気体を放出する上方側孔と、前記利用者の鼻近傍に配置されて前記口の前方側に向かって前記気体を放出する下方側孔を有することを特徴とする、
請求項1~10のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項12】
前記上方側孔から前記目に向かう方向を基準方向とした時、前記基準方向の前記目よりも鼻側の場所で前記上方側孔に対向すると共に、顔の前方側に傾斜する案内面を備えることを特徴とする、
請求項11に記載の気体案内装置。
【請求項13】
前記配置部は、前記利用者の耳に掛けて装着する耳掛け部を有することを特徴とする、
請求項1~12のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項14】
(後頭部又は首装着部)
前記配置部は、前記利用者の後頭部又は首の幅方向に、前記後頭部又は前記首を跨って前記後頭部又は前記首に装着される背面側装着部を有することを特徴とする、
請求項1~13のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項15】
前記配置部は、前記利用者が自発呼吸可能な開放状態で少なくとも前記利用者の口を覆い、該口からの飛沫を抑止する覆い部材と係合可能な覆い部材係合構造を備え、
前記供給孔は、前記覆い部材と前記利用者の間に前記気体を供給することを特徴とする、
請求項1~14のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項16】
前記覆い部材は、前記利用者が自発呼吸可能な程度の通気性を有するシート材によって前記利用者の鼻及び口を覆うマスクであり、
前記覆い部材係合構造は、前記マスクの両耳に掛ける部分と係合する引掛け部を有することを特徴とする、
請求項15に記載の気体案内装置。
【請求項17】
前記覆い部材は、前記利用者が自発呼吸可能な程度の通気性を有するシート材によって前記利用者の鼻及び口を覆うマスクであり、
前記配置部は、マスクの内側面側に配置されて該マスクの内側面又は周縁と係合することで、マスクの内側面側に位置決めされる係合部を有することを特徴とする、
請求項15に記載の気体案内装置。
【請求項18】
前記配置部は、前記利用者の口及び鼻を覆うように前記利用者の口及び鼻の周囲で位置決めされつつ、前記利用者の口及び鼻の間に空間が形成されるように前記利用者の口及び鼻から離れる側に凸となる立体フレームを有し、
前記マスクは、前記立体フレームに重ねて装着され、前記利用者の口及び鼻から離れる側に凸となる三次元形状に変形することを特徴とする、
請求項17に記載の気体案内装置。
【請求項19】
前記配置部は、前記供給孔から前記マスクの内部に放出される気体を、前記マスクの外部に排気する排気孔を備えることを特徴とする、
請求項1~18のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項20】
前記排気孔は、前記配置部によって、前記マスクの内面と前記利用者の間に位置決めされることを特徴とする、
請求項19に記載の気体案内装置。
【請求項21】
前記覆い部材は、周縁が外部に開放される状態で少なくとも前記利用者の鼻及び口を覆うフェイスガードであり、
前記覆い部材係合構造は、
前記利用者の頭部の周囲に延在するフェイスガード側フレーム部と、
前記フェイスガードの周縁の一部を前記フェイスガード側フレーム部に沿って取り付けるフェイスガード側取付部と、
を有することを特徴とする、
請求項15に記載の気体案内装置。
【請求項22】
前記覆い部材は、周縁が外部に開放される状態で少なくとも前記利用者の鼻及び口を覆うフェイスガードであり、
前記覆い部材係合構造は、
前記フェイスガードに固定されるフェイスガード固定部を有することを特徴とする、
請求項15に記載の気体案内装置。
【請求項23】
前記フェイスガードの周縁の一部を開放した状態で、該周縁の残部と前記利用者の隙間を埋める緩衝部を備えることを特徴とする、
請求項21又は22に記載の気体案内装置。
【請求項24】
前記周縁の一部を、前記気体供給部に繋ぐダクト部を備えることを特徴とする、
請求項23に記載の気体案内装置。
【請求項25】
前記覆い部材係合構造は、
揺動軸を中心に前記フェイスガードを揺動させる揺動機構を有することを特徴とする、
請求項21又は22に記載の気体案内装置。
【請求項26】
前記利用者が自発呼吸可能な開放状態で前記利用者の鼻及び口、並びに前記供給孔を覆う覆い部材を備えることを特徴とする、
請求項1~24のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項27】
前記覆い部材は、前記利用者が呼吸可能な程度の通気性を有するシート材によって前記利用者の鼻及び口を覆うマスクであることを特徴とする、
請求項26に記載の気体案内装置。
【請求項28】
前記マスクの前記シート材は、呼気によって変形可能な可撓性を有することを特徴とする、
請求項27に記載の気体案内装置。
【請求項29】
前記利用者の無呼吸状態を仮定した際の前記覆い部材の内側の圧力は、大気圧をA(cmHO)とした場合に、A+0.2(cmHO)以上となることを特徴とする、
請求項15~28のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項30】
前記利用者の無呼吸状態を仮定した際の前記覆い部材の内側の圧力は、大気圧をA(cmHO)とした場合に、A+3.0(cmHO)以下となることを特徴とする、
請求項15~28のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項31】
前記覆い部材の内側の圧力の最低値は、大気圧をA(cmHO)とした場合に、A-1.0(cmHO)以上となることを特徴とする、
請求項15~28のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項32】
前記覆い部材の内側の圧力の最低値が、大気圧以上となることを特徴とする、
請求項15~24のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項33】
前記覆い部材は、周縁が開放される状態で少なくとも前記利用者の鼻及び口を覆うフェイスガードであることを特徴とする、
請求項26に記載の気体案内装置。
【請求項34】
前記供給孔から利用者の口の近傍領域に供給される前記気体の流量が20(L/分)以上となることを特徴とする、
請求項1~32のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項35】
(排気オンリー/マスクの外に排出するだけで目的達成)
前記供給孔から放出される気体を排気する排気孔を備えることを特徴とする、
請求項1~ 33のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項36】
気体を回収する回収孔を有する気体回収側管部と、
前記気体回収側管部内を負圧にする負圧生成部と、
前記回収孔が利用者の顔の近傍に位置する姿勢で前記気体回収側管部を前記利用者の頭部に配置させる配置部と、
を備えることを特徴とする、
気体案内装置。
【請求項37】
前記供給孔から放出される気体を回収する回収孔を有する気体回収側管部と、
前記気体回収側管部内を負圧にする負圧生成部と、
を備え、
前記配置部は、前記回収孔が前記利用者の顔の近傍に位置するように、前記気体回収側管部を前記利用者の頭部に配置させることを特徴とする、
請求項1~34のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項38】
(気体回収量の定義)
前記供給孔から排出される気体の流量に対して、前記回収孔から回収される流量が小さいことを特徴とする、
請求項35又は36に記載の気体案内装置。
【請求項39】
前記回収孔は、複数の孔を組み合わせる態様及び/又はスリット形状の長孔によって形成される帯状回収領域から前記気体を放出することを特徴とする、
請求項35~37のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項40】
前記回収孔の前記帯状回収領域は、前記利用者の顔の幅方向に延在することを特徴とする、
請求項38に記載の気体案内装置。
【請求項41】
前記回収孔の前記帯状回収領域は、前記利用者の顔の長さ方向に延在することを特徴とする、
請求項38に記載の気体案内装置。
【請求項42】
前記供給孔と前記回収孔の間に前記利用者の口が位置するように、前記配置部が気体供給側管部及び前記気体回収側管部を配置させることを特徴とする、
請求項35~40のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項43】
前記配置部は、前記供給孔を前記利用者の口よりも上側に配置させると共に、前記回収孔を前記利用者の口よりも下側に配置させることを特徴とする、
請求項41に記載の気体案内装置。
【請求項44】
前記配置部は、前記回収孔を前記利用者の口よりも上側に配置させると共に、前記供給孔を前記利用者の口よりも下側に配置させることを特徴とする、
請求項41に記載の気体案内装置。
【請求項45】
前記配置部は、前記供給孔を前記利用者の口の幅方向の一方側に配置させると共に、前記回収孔を前記利用者の口の幅方向の他方側に配置させることを特徴とする、
請求項41に記載の気体案内装置。
【請求項46】
前記配置部は、
前記供給孔を位置決めする気体供給側フレーム部と、
前記回収孔を位置決めする気体回収側フレーム部と、
前記気体供給側フレーム部と前記気体回収側フレーム部を繋ぐ連絡部と、
を有することを特徴とする、
請求項35~44のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項47】
前記気体供給部は、気体を吸引して所定の圧力を付与して出力する送風機を有し、
前記負圧生成部は、前記送風機の吸引側に前記気体回収側管部を連結することことで、前記送風機の吸引力によって前記気体回収側管部を負圧にすることを特徴とする、
請求項35~45のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項48】
前記気体供給部は、前記気体回収側管部から回収される前記気体及び大気の双方を吸引して、前記気体供給側管部に供給することを特徴とする、
請求項35~46のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項49】
前記回収孔から回収される気体が通過するフィルタを有することを特徴とする、
請求項35~47のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項50】
前記フィルタを通過した前記気体が、前記気体供給部の吸引側に案内されることを特徴とする、
請求項48に記載の気体案内装置。
【請求項51】
前記水を保持可能な吸水部材を備え、
前記供給孔から放出される気体によって前記水が気化されることを特徴とする、
請求項1~49のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項52】
前記吸水部材と前記利用者の顔の間に配置されて、前記吸水部材の前記水と前記顔を隔離する顔側隔離部材を備えることを特徴とする、
請求項50に記載の気体案内装置。
【請求項53】
前記吸水部材における前記利用者の顔と反対側に配置されて、前記吸水部材の前記水の移動を抑制する外側隔離部材を備えることを特徴とする、
請求項50又は51に記載の気体案内装置。
【請求項54】
前記気体供給部の前記気体を案内し、前記気体供給部から供給される気体を前記利用者の首近傍に放出する首側供給孔を有する首用気体供給側管部を備えることを特徴とする、
請求項1~52のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項55】
前記首側供給孔の近傍に配置されて水を保持可能な首側吸水部材を備え、
前記首側供給孔から放出される気体によって前記水が気化されることを特徴とする、
請求項53に記載の気体案内装置。
【請求項56】
前記配置部は、前記利用者の耳に掛けて装着する耳掛け部を有することを特徴とする、
請求項1~54のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項57】
前記配置部は、前記利用者の後頭部又は首の幅方向に、前記後頭部又は前記首を跨って装着される背面側装着部を有することを特徴とする、
請求項1~55のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項58】
前記配置部は、外部部材を着脱自在に挟持可能な外部固定具を有することを特徴とする、
請求項1~56のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項59】
前記供給孔から放出される気体の圧力を測定する圧力測定部と、
計算機を有する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記圧力測定部の圧力測定結果から導かれる圧力評価値に基づいて、前記供給孔から放出する気体の流量を制御する供給流量制御部を有することを特徴とする、
請求項1~57のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項60】
前記制御部は、前記圧力評価値が下限閾値より小さいことを判定する下限閾値判定部を備え、
前記供給流量制御部は、前記下限閾値判定部で前記圧力評価値が前記下限閾値より小さいと判定される際に、前記気体の供給量を増大させることを特徴とする、
請求項58に記載の気体案内装置。
【請求項61】
前記供給孔から排出される気体の圧力を測定する圧力測定部と、
計算機を有する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記圧力測定部の圧力測定結果から導かれる圧力評価値に基づいて、前記回収孔からの前記気体の回収量を制御する回収流量制御部を有することを特徴とする、
請求項35~49のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項62】
前記制御部は、
前記回収孔から回収される気体の流量を判定する回収流量判定部と、
前記回収流量判定部の判定結果に基づいて、前記回収孔からの前記気体の回収量を制御する回収流量制御部を有することを特徴とする、
請求項35~49のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項63】
前記気体供給部の吸引経路又は供給経路のいずれかの位置に設けられフィルタを備えることを特徴とする、
請求項1~61のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項64】
前記気体供給部は、送風機を有し、
前記送風機の消費電力を測定する消費電力測定部と、
計算機を有する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記消費電力測定部の消費電力測定結果から導かれる評価値に基づいて、前記供給孔から放出する気体の流量を制御する供給流量制御部を有することを特徴とする、
請求項1~57のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【請求項65】
前記気体供給部は、送風機を有し、
前記送風機の消費電力を測定する消費電力測定部と、
計算機を有する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記圧力測定部の消費電力測定結果から導かれる評価値に基づいて、前記回収孔からの前記気体の回収量を制御する回収流量制御部を有することを特徴とする、
請求項35~49のいずれか一項に記載の気体案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の顔に気体を供給したり、顔の気体を排出したりする気体案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウイルスの出現により、マスクの着用機会が増えてきている。そして、マスクの着用中に、マスクが鼻及び口に張り付いて不快に感じることも多い。
【0003】
マスクが鼻や口に張り付く不快感を解消するものとして、マスク本体と、上記マスク本体と顔面との間に介在させる補助スペーサが提案されている(例えば、特許文献1参照)。上記補助スペーサは、マスクの内部に収容されることで、マスク本体と使用者の鼻孔や口との間に空間を確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-019920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記マスクでは、マスク本体と使用者の鼻孔や口との間に隙間空間が確保されるが、口を取り囲む補助スペーサ自身が外気を通さない構造となるので、一層、マスクの通気抵抗が増加し、息苦しくなる。
【0006】
また、このようなマスクを利用して激しい運動を行うと、マスクの通気抵抗によって心肺機能が低下して、生命が危険にさらされる場合もある。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、マスク等を使用する利用者に快適な使用感を提供する気体案内装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に鑑みてなされた本発明は、気体を供給する気体供給部と、前記気体供給部の前記気体を案内し、前記気体供給部から供給される気体を放出する供給孔を有する気体供給側管部と、前記供給孔が利用者の顔の近傍に位置する姿勢で前記気体供給側管部を前記利用者の頭部に配置させる配置部と、を備えることを特徴とする気体案内装置である。
【0009】
上記気体案内装置に関連して、前記配置部は、前記供給孔が前記利用者の口の近傍領域に位置するように、前記気体供給側管部を配置させることを特徴とできる。
【0010】
上記気体案内装置に関連して、前記気体供給部における前記気体の吸引側に配置されるフィルタを備えることを特徴とできる。
【0011】
上記気体案内装置に関連して、前記供給孔は、複数の孔を組み合わせる態様及び/又はスリット形状の長孔によって形成される帯状放出領域から前記気体を放出することを特徴とできる。
【0012】
上記気体案内装置に関連して、前記供給孔の前記帯状放出領域は、前記利用者の顔の幅方向に延在することを特徴とできる。
【0013】
上記気体案内装置に関連して、前記供給孔の前記帯状放出領域は、前記利用者の顔の長さ方向に延在することを特徴とできる。
【0014】
上記気体案内装置に関連して、前記配置部は、前記供給孔を前記利用者の口よりも下側に配置させることを特徴とできる。
【0015】
上記気体案内装置に関連して、前記配置部は、前記供給孔を前記利用者の目よりも上側に配置させることを特徴とできる。
【0016】
上記気体案内装置に関連して、前記配置部は、前記供給孔を前記利用者の口の幅方向の一方側に配置させることを特徴とできる。
【0017】
上記気体案内装置に関連して、前記供給孔は、少なくとも、前記利用者の鼻の幅方向両外側の場所から前記気体を放出することを特徴とできる。
【0018】
上記気体案内装置に関連して、前記供給孔は、前記利用者の鼻近傍に配置されて目の前方側に向かって前記気体を放出する上方側孔と、前記利用者の鼻近傍に配置されて前記口の前方側に向かって前記気体を放出する下方側孔を有することを特徴とできる。
【0019】
上記気体案内装置に関連して、前記上方側孔から前記目に向かう方向を基準方向とした時、前記基準方向の前記目よりも鼻側の場所で前記上方側孔に対向すると共に、顔の前方側に傾斜する案内面を備えることを特徴とできる。
【0020】
上記気体案内装置に関連して、前記配置部は、前記利用者の耳に掛けて装着する耳掛け部を有することを特徴とできる。
【0021】
上記気体案内装置に関連して、前記配置部は、前記利用者の後頭部又は首の幅方向に、前記後頭部又は前記首を跨って前記後頭部又は前記首に装着される背面側装着部を有することを特徴とできる。
【0022】
上記気体案内装置に関連して、前記配置部は、前記利用者が自発呼吸可能な開放状態で少なくとも前記利用者の口を覆い、該口からの飛沫を抑止する覆い部材と係合可能な覆い部材係合構造を備え、前記供給孔は、前記覆い部材と前記利用者の間に前記気体を供給することを特徴とできる。
【0023】
上記気体案内装置に関連して、前記覆い部材は、前記利用者が自発呼吸可能な程度の通気性を有するシート材によって前記利用者の鼻及び口を覆うマスクであり、前記覆い部材係合構造は、前記マスクの両耳に掛ける部分と係合する引掛け部を有することを特徴とできる。。
【0024】
上記気体案内装置に関連して、前記覆い部材は、前記利用者が自発呼吸可能な程度の通気性を有するシート材によって前記利用者の鼻及び口を覆うマスクであり、前記配置部は、マスクの内側面側に配置されて該マスクの内側面又は周縁と係合することで、マスクの内側面側に位置決めされる係合部を有することを特徴とできる。
【0025】
上記気体案内装置に関連して、前記配置部は、前記利用者の口及び鼻を覆うように前記利用者の口及び鼻の周囲で位置決めされつつ、前記利用者の口及び鼻の間に空間が形成されるように前記利用者の口及び鼻から離れる側に凸となる立体フレームを有し、
前記マスクは、前記立体フレームに重ねて装着され、前記利用者の口及び鼻から離れる側に凸となる三次元形状に変形することを特徴とできる。
【0026】
上記気体案内装置に関連して、前記配置部は、前記供給孔から前記マスクの内部に放出される気体を、前記マスクの外部に排気する排気孔を備えることを特徴とできる。
【0027】
上記気体案内装置に関連して、前記排気孔は、前記配置部によって、前記マスクの内面と前記利用者の間に位置決めされることを特徴とできる。
【0028】
上記気体案内装置に関連して、前記覆い部材は、周縁が外部に開放される状態で少なくとも前記利用者の鼻及び口を覆うフェイスガードであり、前記覆い部材係合構造は、前記利用者の頭部の周囲に延在するフェイスガード側フレーム部と、前記フェイスガードの周縁の一部を前記フェイスガード側フレーム部に沿って取り付けるフェイスガード側取付部と、を有することを特徴とできる。
【0029】
上記気体案内装置に関連して、前記覆い部材は、周縁が外部に開放される状態で少なくとも前記利用者の鼻及び口を覆うフェイスガードであり、前記覆い部材係合構造は、前記フェイスガードに固定されるフェイスガード固定部を有することを特徴とできる。
【0030】
上記気体案内装置に関連して、前記フェイスガードの周縁の一部を開放した状態で、該周縁の残部と前記利用者の隙間を埋める緩衝部を備えることを特徴とできる。
【0031】
上記気体案内装置に関連して、前記周縁の一部を、前記気体供給部に繋ぐダクト部を備えることを特徴とできる。
【0032】
上記気体案内装置に関連して、前記覆い部材係合構造は、揺動軸を中心に前記フェイスガードを揺動させる揺動機構を有することを特徴とできる。
【0033】
上記気体案内装置に関連して、前記利用者が自発呼吸可能な開放状態で前記利用者の鼻及び口、並びに前記供給孔を覆う覆い部材を備えることを特徴とできる。
【0034】
上記気体案内装置に関連して、前記覆い部材は、前記利用者が呼吸可能な程度の通気性を有するシート材によって前記利用者の鼻及び口を覆うマスクであることを特徴とできる。
【0035】
上記気体案内装置に関連して、前記マスクの前記シート材は、呼気によって変形可能な可撓性を有することを特徴とできる。
【0036】
上記気体案内装置に関連して、前記利用者の無呼吸状態を仮定した際の前記覆い部材の内側の圧力は、大気圧をA(cmHO)とした場合に、A+0.2(cmHO)以上となることを特徴とできる。
【0037】
上記気体案内装置に関連して、前記利用者の無呼吸状態を仮定した際の前記覆い部材の内側の圧力は、大気圧をA(cmHO)とした場合に、A+3.0(cmHO)以下となることを特徴とできる。
【0038】
上記気体案内装置に関連して、前記覆い部材の内側の圧力の最低値は、大気圧をA(cmH20)とした場合に、A-1.0(cmHO)以上となることを特徴とできる。
【0039】
上記気体案内装置に関連して、前記覆い部材の内側の圧力の最低値が、大気圧以上となることを特徴とできる。
【0040】
上記気体案内装置に関連して、前記覆い部材は、周縁が開放される状態で少なくとも前記利用者の鼻及び口を覆うフェイスガードであることを特徴とできる。
【0041】
上記気体案内装置に関連して、前記供給孔から利用者の口の近傍領域に供給される前記気体の流量が20(L/分)以上となることを特徴とできる。
【0042】
上記気体案内装置に関連して、前記供給孔から放出される気体を排気する排気孔を備えることを特徴とできる。
【0043】
上記気体案内装置に関連して、前記供給孔から放出される気体を回収する回収孔を有する気体回収側管部と、前記気体回収側管部内を負圧にする負圧生成部と、を備え、前記配置部は、前記回収孔が前記利用者の顔の近傍に位置するように、前記気体回収側管部を前記利用者の頭部に配置させることを特徴とできる。
【0044】
上記気体案内装置に関連して、前記供給孔から排出される気体の流量に対して、前記回収孔から回収される流量が小さいことを特徴とできる。
【0045】
上記気体案内装置に関連して、前記回収孔は、複数の孔を組み合わせる態様及び/又はスリット形状の長孔によって形成される帯状回収領域から前記気体を放出することを特徴とできる。
【0046】
上記気体案内装置に関連して、前記回収孔の前記帯状回収領域は、前記利用者の顔の幅方向に延在することを特徴とできる。
【0047】
上記気体案内装置に関連して、前記回収孔の前記帯状回収領域は、前記利用者の顔の長さ方向に延在することを特徴とできる。
【0048】
上記気体案内装置に関連して、前記供給孔と前記回収孔の間に前記利用者の口が位置するように、前記配置部が気体供給側管部及び前記気体回収側管部を配置させることを特徴とできる。
【0049】
上記気体案内装置に関連して、前記配置部は、前記供給孔を前記利用者の口よりも上側に配置させると共に、前記回収孔を前記利用者の口よりも下側に配置させることを特徴とできる。
【0050】
上記気体案内装置に関連して、前記配置部は、前記回収孔を前記利用者の口よりも上側に配置させると共に、前記供給孔を前記利用者の口よりも下側に配置させることを特徴とできる。
【0051】
上記気体案内装置に関連して、前記配置部は、前記供給孔を前記利用者の口の幅方向の一方側に配置させると共に、前記回収孔を前記利用者の口の幅方向の他方側に配置させることを特徴とできる。
【0052】
上記気体案内装置に関連して、前記配置部は、前記供給孔を位置決めする気体供給側フレーム部と、前記回収孔を位置決めする気体回収側フレーム部と、前記気体供給側フレーム部と前記気体回収側フレーム部を繋ぐ連絡部と、を有することを特徴とできる。
【0053】
上記気体案内装置に関連して、前記気体供給部は、気体を吸引して所定の圧力を付与して出力する送風機を有し、前記負圧生成部は、前記送風機の吸引側に前記気体回収側管部を連結することことで、前記送風機の吸引力によって前記気体回収側管部を負圧にすることを特徴とできる。
【0054】
上記気体案内装置に関連して、前記気体供給部は、前記気体回収側管部から回収される前記気体及び大気の双方を吸引して、前記気体供給側管部に供給することを特徴とできる。
【0055】
上記気体案内装置に関連して、前記回収孔から回収される気体が通過するフィルタを有することを特徴とできる。
【0056】
上記気体案内装置に関連して、前記フィルタを通過した前記気体が、前記気体供給部の吸引側に案内されることを特徴とできる。
【0057】
上記気体案内装置に関連して、前記水を保持可能な吸水部材を備え、前記供給孔から放出される気体によって前記水が気化されることを特徴とできる。
【0058】
上記気体案内装置に関連して、前記吸水部材と前記利用者の顔の間に配置されて、前記吸水部材の前記水と前記顔を隔離する顔側隔離部材を備えることを特徴とできる。
【0059】
上記気体案内装置に関連して、前記吸水部材における前記利用者の顔と反対側に配置されて、前記吸水部材の前記水の移動を抑制する外側隔離部材を備えることを特徴とできる。
【0060】
上記気体案内装置に関連して、前記気体供給部の前記気体を案内し、前記気体供給部から供給される気体を前記利用者の首近傍に放出する首側供給孔を有する首用気体供給側管部を備えることを特徴とできる。
【0061】
上記気体案内装置に関連して、前記首側供給孔の近傍に配置されて水を保持可能な首側吸水部材を備え、前記首側供給孔から放出される気体によって前記水が気化されることを特徴とできる。
【0062】
上記気体案内装置に関連して、前記配置部は、前記利用者の耳に掛けて装着する耳掛け部を有することを特徴とできる。
【0063】
上記気体案内装置に関連して、前記配置部は、前記利用者の後頭部又は首の幅方向に、前記後頭部又は前記首を跨って装着される背面側装着部を有することを特徴とできる。上記気体案内装置に関連して、前記配置部は、外部部材を着脱自在に挟持可能な外部固定具を有することを特徴とできる。
【0064】
上記気体案内装置に関連して、前記供給孔から放出される気体の圧力を測定する圧力測定部と、計算機を有する制御部と、を備え、前記制御部は、前記圧力測定部の圧力測定結果から導かれる圧力評価値に基づいて、前記供給孔から放出する気体の流量を制御する供給流量制御部を有することを特徴とできる。
【0065】
上記気体案内装置に関連して、前記制御部は、前記圧力評価値が下限閾値より小さいことを判定する下限閾値判定部を備え、前記供給流量制御部は、前記下限閾値判定部で前記圧力評価値が前記下限閾値より小さいと判定される際に、前記気体の供給量を増大させることを特徴とできる。
【0066】
上記気体案内装置に関連して、前記供給孔から排出される気体の圧力を測定する圧力測定部と、計算機を有する制御部と、を備え、前記制御部は、前記圧力測定部の圧力測定結果から導かれる圧力評価値に基づいて、前記回収孔からの前記気体の回収量を制御する回収流量制御部を有することを特徴とできる。
【0067】
上記気体案内装置に関連して、前記制御部は、前記回収孔から回収される気体の流量を判定する回収流量判定部と、前記回収流量判定部の判定結果に基づいて、前記回収孔からの前記気体の回収量を制御する回収流量制御部を有することを特徴とできる。
【0068】
上記気体案内装置に関連して、前記気体供給部の吸引経路又は供給経路のいずれかの位置に設けられフィルタを備えることを特徴とできる。
【0069】
上記気体案内装置に関連して、前記気体供給部は、送風機を有し、前記送風機の消費電力を測定する消費電力測定部と、計算機を有する制御部と、を備え、前記制御部は、前記消費電力測定部の消費電力測定結果から導かれる評価値に基づいて、前記供給孔から放出する気体の流量を制御する供給流量制御部を有することを特徴とできる。
【0070】
上記気体案内装置に関連して、前記気体供給部は、送風機を有し、前記送風機の消費電力を測定する消費電力測定部と、計算機を有する制御部と、を備え、前記制御部は、前記圧力測定部の消費電力測定結果から導かれる評価値に基づいて、前記回収孔からの前記気体の回収量を制御する回収流量制御部を有することを特徴とできる。
【0071】
また、本発明は、気体を回収する回収孔を有する気体回収側管部と、前記気体回収側管部内を負圧にする負圧生成部と、前記回収孔が利用者の顔の近傍に位置する姿勢で前記気体回収側管部を前記利用者の頭部に配置させる配置部と、を備えることを特徴とする気体案内装置である。
【発明の効果】
【0072】
本発明の気体案内装置によれば、利用者の口近傍領域に気体を供給するため、利用者がマスクを着用した状態でも、利用者の口に気体が供給される。結果、利用者がマスクを着用した状態でも、利用者は呼吸を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】(A)は、本発明の第一実施形態における気体案内装置を装着した際の利用者の正面図である。(B)は、同第一実施形態における気体案内装置を装着した際の利用者のマスクの内側を描いた利用者の正面図である。
図2】(A)は、本発明の第一実施形態における気体案内装置を、マスク未着用の状態で装着した際の利用者の側面図である。(B)は、本発明の第一実施形態における気体案内装置をマスクと共に装着した際の利用者の側面図である。
図3】(A)は、本発明の第一実施形態における気体案内装置の配置部の側面図である。(B)は、本発明の第一実施形態における気体案内装置を装着した際、気体の進行方向が上方側案内部によって変更される様子を示す利用者の側面図である。
図4】(A)は、本発明の第一実施形態における気体案内装置の制御部のハード構成を示す図である。(B)は、本発明の第一実施形態における気体案内装置の制御部の機能ブロック図である。
図5】(A)は、マスクのみを着用する者の口近傍領域又は鼻近傍領域における時間経過時の圧力の変動を示すモデル図である。(B)~(D)は、マスクを着用しつつ、第一実施形態における気体案内装置を装着した者の口近傍領域又は鼻近傍領域における時間経過時の圧力の変動を示すモデル図である。
図6】(A)は、マスクのみを着用した者の顔にマスクが張り付いた状態を示す側面図である。(B)は、本発明の第一実施形態における気体案内装置をマスクと共に装着した者のマスクと顔の間の気体の流れを示す側面図である。
図7】マスクを着用せずに、本発明の第一実施形態における気体案内装置を装着した者の顔の前面側の気体の流れを示す利用者の側面図である。
図8】(A)は、本発明の第一実施形態における気体案内装置の変形例を装着した際の利用者の正面図であり、(B)はその側面図である。
図9】(A)は、本発明の第二実施形態における気体案内装置を装着した際の利用者の正面図であり、(B)はその側面図である。
図10】(A)は、同第二実施形態における気体案内装置の配置部を装着した際の利用者の背面図であり、(B)は同第二実施形態における気体案内装置の変形例を装着した際の利用者の側面図である。
図11】(A)は、本発明の第三実施形態における気体案内装置をマスクと共に装着した際の利用者の正面図である。(B)は、同第三実施形態における気体案内装置を装着した際の利用者のマスクの内側を描いた正面図である。
図12】(A)は、マスク未着用の態様で、同第三実施形態における気体案内装置を装着した際の利用者の側面図である。(B)は、マスク着用の態様で同第三実施形態における気体案内装置を装着した際の利用者の側面図である。
図13】同第三実施形態における気体案内装置の配置部の側面図である。
図14】同第三実施形態における気体案内装置の制御部の機能ブロック図である。
図15】(A)及び(B)は、マスク着用態様にて同第三実施形態における気体案内装置を装着した者の口近傍領域又は鼻近傍領域における時間経過時の圧力の変動及び流量変動を示すモデル図である。
図16】(A)及び(B)は、マスク着用態様にて同第三実施形態における気体案内装置を装着した者の口近傍領域又は鼻近傍領域における時間経過時の圧力の変動、気体の供給流量変動、及び、気体の回収流量変動を示すモデル図である。
図17】(A)は、同第三実施形態における気体案内装置の変形例を装着した際の利用者の側面図であり、(B),(C)は変形例における気体の供給流量変動、及び、気体の回収流量変動を示すモデル図である。
図18】(A)は、マスク着用態様で本発明の第四実施形態における気体案内装置を装着した際の利用者の正面図である。(B)は、マスク未着用態様で、同第四実施形態における気体案内装置を装着した際の利用者の側面図である。
図19】(A)は、マスク着用態様で本発明の第五実施形態における気体案内装置を装着した際の利用者の正面図であり、(B)はその背面図である。
図20】マスク着用態様で本発明の第六実施形態における気体案内装置を装着した際の利用者の正面図である。
図21】(A)は同第六実施形態における気体案内装置の変形例を装着した際の利用者の正面図である。(B)は(A)のB-B矢視断面図である。
図22】(A)は、マスク着用態様で本発明の第七実施形態の気体案内装置を装着した際の利用者の正面図であり、(B)はその側面の部分拡大断面図である。
図23】マスク着用態様で本発明の第八実施形態の気体供給装を装着した際の利用者の正面図である。
図24】(A)は、マスク着用態様で本発明の第九実施形態の気体案内装置を装着した際の利用者の正面図であり、(B)は、マスク着用態様で本発明の第九実施形態の気体案内装置を装着した際のマスクの内側を描いた利用者の正面図である。
図25】(A)は、マスク着用態様で本発明の第九実施形態の気体案内装置を装着した際の利用者の側面図であり、(B)は、マスク未着用態様で本発明の第九実施形態の気体案内装置を装着した際の利用者の側面図である。
図26】マスク着用態様で本発明の第九実施形態の気体案内装置の変形例を装着した際の利用者の正面図である。
図27】(A)は、マスク着用態様で本発明の第十実施形態の気体案内装置を装着した際の利用者の正面図であり、(B)はその側面図である。
図28】マスク着用態様で本発明の第十実施形態の気体案内装置を装着した際の利用者の側面図である。
図29】(A)は、マスク着用態様で本発明の第十実施形態の気体案内装置の変形例を装着した際の利用者の正面図であり、(B)は、マスク着用態様で本発明の第十実施形態の気体案内装置の別の変形例を装着した際の利用者の正面図である。
図30】(A)は、マスク着用態様で本発明の第十一実施形態の気体案内装置を装着した際のマスクの内側を描いた利用者の正面図である。
図31】(A)は、マスク着用態様で本発明の第十二実施形態の気体案内装置を装着した際の利用者の正面図であり、(B)はその側面図である。
図32】マスク着用態様で本発明の第十二実施形態の気体案内装置の変形例を装着した際の利用者の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図中において、互いに同一の符号を付した部分又は部材は、同一部品又は類似部品を表わす。
【0075】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態における気体案内装置1について説明する。本実施形態における気体案内装置1は、図1(A)に示すように、マスク800を装着した利用者900の顔に装着して、利用者900の顔に気体を供給したり、利用者900の顔の気体を排出したりするものである。気体案内装置1は、図1(B)及び図2(A),(B)に示すように、気体供給部2と、気体供給側調整弁部3と、気体供給側管部4と配置部6と、上方側案内部7と、フィルタ部8と、圧力測定部9と、制御部10と、マスク係合構造11と、を備える。
【0076】
<気体供給部>
気体供給部2は、気体を供給するものである。気体供給部2は、入力された気体に所定の圧力を付加して出力する。気体供給部2は、例えば、筐体の内部に、ブロワやファン等の圧縮機(広義には送風機)を備えて構成される。気体供給部2は、例えば、バッテリ等によって駆動されて、利用者900の(図示しない)洋服の胸ポケットに入れられるくらいの小型のものが好ましい。送風機の昇圧能力は、5(cmHO)以上であることが好ましく、望ましくは10(cmHO)以上とし、更に望ましくは20(cmHO)以上とする。
【0077】
<気体供給側調整弁部>
気体供給側調整弁部3は、気体供給側管部4を流れる気体の量(又は供給孔50から放出される気体の量)を調整するものであり、図1(B)に示すように、入力ポート部30と、気体供給側出力ポート部31と、大気開放側出力ポート部32を有する。入力ポート部30は、フィルタ部8を経た気体供給部2の出力側に接続される。気体供給側出力ポート部31は気体供給側管部4に接続され、大気開放側出力ポート部32は大気に開放される。気体供給側調整弁部3は、制御部10に制御され、気体供給側出力ポート部31及び大気開放側出力ポート部32が開閉される。気体供給側調整弁部3は、例えば、電磁弁等の電気的に開閉制御可能な弁で構成される。弁は、気体供給側出力ポート部31及び大気開放側出力ポート部32の開閉比率を可変調整できるように構成されることが好ましい。
【0078】
<気体供給側管部>
気体供給側管部4は、気体供給側調整弁部3を介して気体供給部2から供給される気体を供給孔50まで案内する管であり、図1(B)に示すように、導入管部5Aと延在管部5Bを備える。導入管部5Aは、一端が気体供給側調整弁部3の一方の気体供給側出力ポート部31に接続され、他端が延在管部5Bに接続される。導入管部5Aは、例えば、樹脂製のチューブにより構成される。樹脂として、例えば、シリコン等が挙げられる。
【0079】
延在管部5Bは、導入管部5Aを介して気体供給部2から供給される気体を通す管であり、図1(B)に示すように、一端が導入管部5Aに繋がり、他端が閉塞する。延在管部5Bは、例えば、樹脂製のチューブにより構成される。樹脂として、例えば、シリコン等が挙げられる。そして、延在管部5Bは、配置部6により利用者900の顔に配置される。
【0080】
一方、導入管部5Aは、気体供給部2の配置場所に自由度を持たせるために設けられるものである。従って、気体供給部2(気体供給側調整弁部3)を利用者900の顔の近傍に配置可能であれば、導入管部5Aを省略して、気体供給部2に延在管部5Bを直接接続してもよい。また、気体供給側管部4と延在管部5Bは、一体形成されてもよいし、それぞれ独立した別部材として構成されてもよい。
【0081】
また、延在管部5Bは、図1(B)に示すように、気体を外部に放出する複数の供給孔50を有する。供給孔50は、延在管部5Bの周壁を貫通する孔であり、延在管部5Bの内外に連通する。複数の供給孔50のうち、一部の供給孔50の集まりである第一供給孔群51は、延在管部5Bの軸方向に沿って列状に並ぶように設けられる。結果、この第一供給孔群51は、全体として帯状に気体を放出する帯状放出領域となる。また、複数の供給孔50のうち、残りの少なくとも一部の供給孔50の集まりである第二供給孔群52は、第一供給孔群51とは別の位置で、延在管部5Bの軸方向(長手方向)に沿って列状に並ぶように設けられる。結果、この第二供給孔群52は、全体として帯状に気体を放出する帯状放出領域となる。なお、第一供給孔群51、及び第二供給孔群52の少なくとも一方が、スリット形状の長孔で構成されてもよい。
【0082】
第一供給孔群51は、利用者900の鼻910近傍(鼻910の幅方向両外側)及び/又は頬近傍に配置されて口の前方側に向かって気体を放出する。また、第二供給孔群52は、利用者の鼻近傍及び/又は頬近傍に配置されて目の前方側に向かって気体を放出する。
【0083】
<配置部>
本実施形態において配置部6は、図1(B)に示すように、延在管部5Bを利用者900の鼻910の鼻背部に配置させる。具体的に、延在管部5Bは、利用者900の顔の幅方向Wに延在し、更に利用者900の鼻910の鼻背部を跨るような姿勢に位置決めされる。この際、複数の供給孔50のうち、第一供給孔群51は、利用者900の口920の前方側の近傍領域(以下、口近傍領域と呼ぶ。)930を向く。つまり、第一供給孔群51を構成する供給孔50は、下方側を向く下方側孔となる。また、複数の供給孔50のうち、第二供給孔群52は、利用者900の目940の前方側の近傍領域(以下、目近傍領域と呼ぶ。)990を向く。つまり、第二供給孔群52を構成する供給孔50は、上方側を向く上方側孔となる。
【0084】
配置部6は、例えば、図2(A)に示すように、気体供給側フレーム部60と、取付部61と、頭部固定側フレーム部62と、を有する。気体供給側フレーム部60は、図1(B)に示すように、利用者900の顔の幅方向Wに延在する姿勢を取り、利用者900の鼻910の鼻背部を跨るように配置される。図3(C)に示すように、気体供給側フレーム部60は、利用者の顔(ここでは鼻910)と接触する場所に通気層60Aを有する。この通気層60Aは、供給孔50から供給される気体が通過する。この通気層60Aは、例えば、多孔質状のスポンジやウレタン等の樹脂材、ギャザー状の生地、不織布、厚み方向に三次元的に樹脂成形した立体メッシュ、繊維を厚み方向に三次元的に編み込んだメッシュ繊維などを採用できる。取付部61は、気体供給側フレーム部60の表面に延在管部5Bを沿わせた状態で、延在管部5Bを気体供給側フレーム部60に保持させる治具である。これらの構造により、気体供給側フレーム部60が、延在管部5Bの供給孔50の位置決めできるようになっている。
【0085】
頭部固定側フレーム部62は、図2(A)に示すように、気体供給側フレーム部60の両端からそれぞれ連続して、利用者900の頭部の両側面に延在し、その一部を耳950に掛ける構造となる。より詳細に、頭部固定側フレーム部62は、図2(A)に示すように、利用者900の耳950の上方側付け根951に当接する耳掛け部620と、耳掛け部620から利用者900の耳950の背後側に回り込むように延びるストッパ部621を有する。耳掛け部620は、利用者900の耳950の前方側から後方側に延在する。ストッパ部621は、利用者900の耳950の形状に沿うように湾曲する。ストッパ部621は、気体供給側フレーム部60が利用者900の前方側にずれた際、利用者900の耳950の背後側に当接して、それ以上、利用者900の前方側にずれること防ぐ。なお、頭部固定側フレーム部62と気体供給側フレーム部60は、一体形成されていてもよいし、それぞれ独立した別部材として構成されてもよい。
【0086】
頭部固定側フレーム部62が利用者900の耳950に掛けられると、気体供給側フレーム部60が利用者900の鼻910の鼻背部を跨るように配置された状態となる。なお、ここでは頭部固定側フレーム部62を両耳に掛ける状態を示すが、頭部固定側フレーム部62を片方のみに形成し、一方の耳のみに掛けて固定することもできる。また、頭部固定側フレーム部62が剛性を有する材料で構成する場合を例示したが、頭部固定側フレームを省略して、配置部6が頭部固定用のゴムや紐を備えるようにし、このゴムや紐を耳950に掛けたり、頭部を周回させたりして、頭部に固定することもできる。
【0087】
<上方側案内部>
上方側案内部7は、図3(B)に示すように、利用者900の目940に直接向かう気体の流れを、目から前方側に離れた目近傍領域990に案内するものである。上方側案内部7は、図3(A)に示すように、気体供給側フレーム部60に設けられる。
【0088】
また、上方側案内部7は、第二供給孔群52から目に直接向かう方向を基準方向Kとした時、基準方向Kにおいて第二供給孔群52に対向すると共に、基準方向Kよりも利用者900の顔の前方側に傾斜する案内面70を有する。例えば、案内面70は、利用者900の顔の前方側に反り返るような反り区間Sとすることが好ましい。この案内面70は、第二供給孔群52と利用者900の目940の間に介在する。利用者900の目940に矢印G1方向に直接向かおうとする気体は、案内面70に当たって進行方向を矢印G2方向に変更する。結果、利用者900の顔の前方において、目940から離れた場所を上方に流れる。結果、気体が直接当たることに起因する利用者900の目940の乾きを防止することができる。
【0089】
<フィルタ部>
フィルタ部8は、図1(B)に示すように、気体供給部2から供給される気体が通過する経路(供給経路)のいずれかの位置に設けられ、花粉、塵埃、細菌、ウイルス等を除去するものである。本実施形態においてフィルタ部8は、気体供給部2から延在管部5Bの供給孔50の手前までのいずれかの位置に設けられれば良いが、本実施形態では、気体供給部2の上流側(吸引側)に配置される。フィルタ部8は、例えば、通過する浮遊ウイルスを捕獲できるものであることが好ましい。
【0090】
<圧力測定部>
圧力測定部9は、供給孔50から利用者900の鼻910又は口920の前方に供給される気体のいずれかの位置の圧力を測定する。本実施形態において圧力測定部9は、図1(B)に示すように、延在管部5Bの表面又は内部、或いは気体供給側フレーム部60の表面に設けられて、マスク800の内部空間側に位置する第一気圧センサ9Aと、気体供給部2側に設けられて大気圧を測定する第二気圧センサ9Bを有する。結果、圧力測定部9は、第一気圧センサ9Aによって、利用者900の鼻910の前方の近傍領域(以下、鼻近傍領域と呼ぶ。)960(図2(A)参照)の圧力を測定する。結果、マスク800の内圧を測定可能となる。なお、圧力測定部9は、利用者900の口近傍領域930の圧力を測定するように配置されてもよい。また、圧力測定部9は、気体供給側管部4の管内の圧力を測定し、その測定結果から、マスク800内(鼻近傍領域960や口近傍領域930)の圧力を推測することもできる。第二気圧センサ9Bで大気圧を測定することで、大気圧を基準とした鼻近傍領域960や口近傍領域930の圧力差を測定できることになる。なお、送風機をOFFにした状態や、マスク800を取り外した状態で、第一気圧センサ9Aで圧力を測定すれば、大気圧を測定できるので、第二気圧センサ9Bを省略しても良い。
【0091】
<制御部>
制御部10は、図4(A)に示すように、CPU100、RAM101、ROM102、記憶装置103、外部インターフェース104、及び操作インターフェース105等を備えた計算機10Aを有する。CPU100は、中央演算処理装置を構成する。RAM101は、作業領域として一時的なデータを読み書きするためのメモリである。ROM102は、所定のプログラムを格納する読み出し専用メモリである。記憶装置103は、所定のプログラムやデータ等を格納するために書き込み可能なハードディスク(HDD)またはソリッドステートドライブ(SSD)により構成される。外部インターフェース(I/F)104は、外部装置との間での通信制御を行う。操作インターフェース105は、利用者の操作を受け付ける。操作インターフェース105には、例えば、電源スイッチ、処理モード切替スイッチ、気体の供給量(回収量)を調整するつまみ等が含まれる。なお、制御部10は、(図示しない)表示部を備えてもよい。この場合、例えば、操作インターフェース105は、表示部に実装されたタッチパネル方式のもので実現されてもよい。そして、表示部には、気体の供給量(回収量)、処理モード、マスク800内の圧力等の様々な情報が表示される。
【0092】
本実施形態において制御部10は、圧力測定部9での測定結果に基づいて、気体供給部2の送風機の回転数や、気体供給側調整弁部3の開閉動作を制御する。具体的に制御部10は、図4(B)に示すように、呼吸判別部106と、下限閾値判定部107と、上限閾値判定部108と、供給流量制御部109と、を有する。
【0093】
呼吸判別部106は、圧力測定部9の測定結果から得られる呼吸波形に基づいて、利用者900の呼気状態及び吸気状態を判別する。この呼吸判別部106を参照することで、呼吸波形と関連の無い圧力のノイズ波形を除去できる。また、詳細は後述するが、呼吸判別部106で判別される呼気タイミングと吸気タイミングの信号に基づいて、供給流量制御部109が、供給流量を変動させることもできる。
【0094】
下限閾値判定部107は、圧力測定部9によって測定された圧力を利用して算出された圧力評価値が、下限閾値S1を下回るか否かを判定する。なお、この圧力評価値は、様々な値を採用し得るが、本実施形態では、大気圧を基準としたマスク800内の吸気時圧力の最低値とする。なお最低値として、複数回の呼吸波形における吸気時最低値を平均化した値を用いても良い。また、圧力評価値として、増減を含む全圧力値を平均化した圧力平均値を利用しても良い。更に、この圧力評価値は、圧力の絶対値を用いても良いが、好ましくは、大気圧を基準とした差分値を採用することが好ましい。従って、下限閾値S1も、圧力の絶対値を用いても良いが、好ましくは、大気圧を基準とした差分値を用いることが好ましい。
【0095】
上限閾値判定部108は、圧力測定部9によって測定された圧力を利用して算出された圧力評価値が、上限閾値S2を上回るか否かを判定する。なお、この圧力評価値は、下限閾値判定部107と同様に様々な値を採用し得る。本実施形態では、大気圧を基準としたマスク800内の呼気時圧力の最高値を採用する。この圧力評価値は、圧力の絶対値を用いても良いが、好ましくは、大気圧を基準とした差分値を採用することが好ましい。従って、上限閾値S2も、圧力の絶対値を用いても良いが、好ましくは、大気圧を基準とした差分値を用いることが好ましい。
【0096】
供給流量制御部109は、下限閾値判定部107によってマスク800内の最低圧力が下限閾値S1を下回ると判定された場合に、供給孔50から供給される気体の流量を増大させる。結果、マスク800内の最低圧力が上昇して、下限閾値S1と一致又は上回る。具体的には、気体供給側調整弁部3の気体供給側出力ポート部31を開きつつ、大気開放側出力ポート部32を閉じるように両ポートの開閉比率を調整して、延在管部5Bへの気体の供給量を増大させる。送風機の回転数を増大させて供給量を増やすこともできる。
【0097】
更に供給流量制御部109は、上限閾値判定部108によってマスク800内の最高圧力が上限閾値S2を上回ると判定された場合に、供給孔50から供給される気体の流量を減少させる。結果、マスク800内の最高圧力が下降して、上限閾値S2と一致又は下回る。具体的には、気体供給側調整弁部3の気体供給側出力ポート部31を閉じつつ、大気開放側出力ポート部32を開くように両ポートの開閉比率を調整して、延在管部5Bへの気体の供給量を低減させる。送風機の回転数を減少させて供給量を低減することもできる。しかし、上限閾値判定部108と下限閾値判定部107の判定動作が共存した場合は、下限閾値判定部107の制御を優先させることが好ましい。
【0098】
更にまた、供給流量制御部109は、利用者900の吸気時には供給流量を大きくし、呼気時には供給流量を小さくすることもできる。この吸気及び呼気タイミングは、呼吸判別部106で判別する。
【0099】
<マスク係合構造>
マスク係合構造11は、図2(B)に示すように、配置部6が備えるものであり、マスク800と係合可能な構造である。マスク800がマスク係合構造11に係合すると、利用者900にマスク800が装着される。なお、マスク800は、それ自体が、外部補助が不要な状態で、利用者が容易に自発呼吸可能な程度の通気性を有するシート状の材料(シート材)で構成されている。例えば、不織布、多孔質樹脂、布等の可撓性を有する材料で構成される。従って、マスク800は、唾液等の飛沫の通過を抑止する機能を有するが、ウイルス等の通過を防ぐ機能は低い(又はほとんど無い)。この「外部補助が不要な状態で、利用者が容易に自発呼吸可能な程度の通気性」を有するマスク800は、例えばサージカルマスクと称されており、防塵マスクとは異なる。具体的に、マスク800のシート材の通気性は、米国規格ASTM F2100における圧力損失値で4.0mmH2O/cm2未満であることが好ましく、より望ましくは2.0mmH2O/cm2以下、更に好ましくは1.8mmH2O/cm2以下とし、最も望ましくは1.5mmH2O/cm2以下とする。この圧力損失値は、マスク圧力損失試験(MIL-M-36954C)で規定される手法を採用しており、調湿したシート材を資料ホルダ(直径2.5cm)に取り付け、吸引ポンプによって流量が8L/minとなるように通気させ、その時の圧力損失(mmH2O)を測定し、測定面積で除した結果となる。他の通気性評価観点として、マスク800の全面に対して流量40L/minの空気を通気させ、その時の圧力損失(Pa)を測定する手法を採用する場合、マスク800の通気性は、10.0Pa未満であることが好ましく、より望ましくは5.0Pa以下、更に望ましくは4.5Pa以下とする。
【0100】
更にこのマスク800のシート材(フィルタ材)は、呼気によって変形可能な程度の可撓性を有することが好ましい。マスク800の中には、装着中において、成形されたお椀型形状を維持できる程度の剛性を有するものも存在するが、日常生活における可搬性、保管の利便性から、そのような高剛性のマスクを利用している者は少ない。そこで、本実施形態では、汎用的に利用されている呼気によって変形可能な可撓性のマスク800を利用しつつ、様々な機能を付加できるようにしている。
【0101】
マスク800の装着位置は、マスク800が、利用者900の鼻910及び口920、並びに、延在管部5Bの少なくとも第一供給孔群51を覆う姿勢とする。本実施形態では、配置部6の頭部固定側フレーム部62が、マスク係合構造11を兼ねる。マスク係合構造11は、第一案内部113、引掛け部114、第二案内部115を有する。第一案内部113は、利用者900の耳950に引っ掛けるマスク800の紐部810を、利用者900の耳950の前方側から後方側に案内する。引掛け部114は、第一案内部113により後方側に案内されたマスク800の紐部810に係合して、マスク800の紐部810を引っ掛ける部分である。第二案内部115は、マスク800の紐部810を利用者900の耳950の後方側から前方側に案内する。
【0102】
より詳細に、第一案内部113は、図3(A)に示すように、例えば、耳掛け部620の上面625に沿い、且つ、この耳掛け部620の縦厚み方向に凹む溝により構成される。なお、縦厚み方向とは、耳掛け部620の上面625から下面622に向かう方向を指す。第一案内部113を構成する溝は、引掛け部114の手前まで設けられる。
【0103】
引掛け部114は、図3(A)に示すように、ストッパ部621の後面627に沿い、且つ、ストッパ部621の前後厚み方向に凹む溝により構成される。なお、前後厚み方向とは、ストッパ部621の後面627から前面626に向かう方向を指す。引掛け部114に相当する溝の両端は、第一案内部113と第二案内部115に連続することが好ましい。
【0104】
第二案内部115は、図2(B)及び図3(A)に示すように、ストッパ部621における後頭部970又は首980に近い領域において、頭部と接触しない外側面629(図3(B)ではストッパ部621の紙面手前側の面)に沿い、且つ、ストッパ部621の左右幅方向に凹む溝により構成される。なお、ストッパ部621の左右幅方向とは、ストッパ部621の外側面629から内側面628(この内側面628は頭部に対向する)に向かう方向を指す。第二案内部115に相当する溝は、引掛け部114に相当する溝に連続する。
【0105】
図2(B)のように、第一案内部113、引掛け部114、及び第二案内部115に相当する溝にマスク800の紐部810を嵌め込むと、マスク800の紐部810は、利用者900の皮膚に接触することなく、利用者900の耳950の周りに案内される。結果、利用者900は、マスク800の紐部810からの負荷を受けることなく、マスク800を装着することができる。
【0106】
図3(C)のように、マスク800の上縁近傍は延在管部5Bの前面側に接触する。結果、延在管部5B自体が、マスク800の内部と外部を区画する境界となり、第一供給孔群51は、マスク800の内部空間側に気体を放出し、第二供給孔群52は、マスク800の外側に気体を放出する。なお、第一供給孔群51から放出される気体によって、マスク800の内圧が高くなるので、内部の気体の一部は、通気層60Aを介してマスク800の外部に放出される。結果、配置部6と利用者の肌との接触部分が冷却されるので、快適な装着感が得られる。ちなみに、マスク800の内部空間とは、利用者900の顔(口920、鼻910等)とマスク800の内側面の間の空間を指す。
【0107】
<制御部による圧力制御の詳細説明>
次に、制御部10による圧力制御について説明する。図5(A)に、マスク800のみを着用し、日常生活状態(定常状態)の利用者900の呼吸時のマスク800の内圧変動モデルを実線A1に示す。マスク800の通気抵抗の影響によって、大気圧を基準(0)とした場合に、呼気中が陽圧(正圧)となり、吸気中が陰圧(負圧)となる。この呼吸時の負荷によって、マスク800を使用する利用者900は疲れやすい。特に、この圧力変動によって容易に変形する可撓性のマスク800の場合、吸引時にマスク800が口元に接近し、陰圧側の減圧幅が大きくなるので、多少なりとも息苦しい感覚を得る。マスク800の空孔率(通気抵抗)にも依存するが、一般的には、大気圧を基準(0)とした場合のマスク800の内圧は、-1.0(cmHO)~+1.0(cmHO)の間、詳細には-0.5(cmHO)~+0.5(cmHO)の間で変動する。
【0108】
また、点線A2には、マスク800のみを着用したままの状態で激しい運動を行う場合(過活動状態)における圧力変動モデルを示す。過活動状態では、呼吸時の一回換気量が増大する結果、実線A1の定常状態と比較して圧力変動幅が増大する。例えば、陰圧側は-0.5(cmHO)を超える状態、更には-1.0(cmHO)を超える状態となり得る。陽圧側も+0.5(cmHO)を超える状態、更には+1.0(cmHO)を超える状態もあり得る。圧力変動幅が増大しすぎると、肺機能の低下を招く場合がある。
【0109】
図5(B)の実線B1に、本実施形態の気体案内装置1を利用した場合の定常状態のマスク800の内圧変動モデル示す。ここでは、図5(A)の定常状態と同じ活動レベルで、同一のマスク800を採用した場合を想定する。図5(B)における点線A1は、図5(A)の圧力変動モデルを示す。
【0110】
この気体案内装置1では、制御部10によって、供給孔50からマスク800の内部空間に気体が供給される。結果、マスク800の内圧が上昇する。制御部10は、図5(A)の圧力変動モデルA1(図5(A)の実線A1参照)(換言すると、気体案内装置1の気体供給OFF状態又は大気圧状態)を基準として、0.2(cmHO)以上の内圧上昇を生じさせるように気体の供給量を制御し、好ましくは0.4(cmHO)以上の上昇を生じさせる。
【0111】
即ち、利用者900が無呼吸となる状態(無呼吸状態)を仮定した際、マスク800の内圧が、大気圧+0.2(cmHO)以上となるように制御し、好ましくは0.4(cmHO)以上となるように制御する。
【0112】
一方、制御部10は、圧力変動モデルA1を基準とした内圧の上昇幅が3.0(cmHO)以下となるように気体の供給量を制御し、好ましくは2.0(cmHO)以下とし、更に望ましくは1.5(cmHO)以下とする。
【0113】
また、制御部10は、呼吸中にマスク800の内圧が陰圧とならない程度まで、圧力を上昇させることが好ましい。マスク800自身は、ウイルスの侵入を抑止できないが、内側を陽圧にすることで、マスク800の本体や周囲の隙間からのウイルスの侵入を抑制できることになる。
【0114】
上述の内圧上昇幅を得るためには、供給孔50からマスク800内に対して、20(L/分)以上の気体を供給することが好ましく、より好ましくは40(L/分)以上となる。一方で、供給孔50からマスク800内に対して60(L/分)以下の気体を供給することが好ましいく、より好ましくは50(L/分)以下とする。なお、この供給流量は、マスク800の生地や、マスク800と利用者900の間にできる隙間の程度によって変化させる必要がある。好ましくは30(L/分)~50(L/分)の気体を供給する。ちなみに、この気体は、マスク800内の空間を積極的に撹拌する役割も担う。
【0115】
本気体案内装置1によって、吸気時のマスク800の内圧(正圧)を陽圧に維持すれば、マスク800を装着しているにも関わらず、利用者にとっては、マスク未装着状態と同程度の吸気抵抗となり、長時間にわたって快適な使用感が得られる。ちなみに、定常状態では、実線A1の圧力変動モデルの下限値は下限閾値S1を下回っておらず、又は、上限値は、上限閾値S2を上回っていない。
【0116】
図5(C)の実線Cに、本実施形態の気体案内装置1を利用した場合において、過活動状態に対応して制御されたマスク800の内部空間の圧力変動モデルを示す。なお、図5(C)における点線B1は、図5(B)の実線B1の定常状態の圧力変動モデルを示す。また、二点鎖線B2は、図5(B)の実線B1の制御状態のままで、利用者が、定常状態から過活動状態に遷移した瞬間の圧力変動モデルを示す。
【0117】
二点鎖線B2の通り、図5(B)の定常状態の制御態様のまま過活動状態に遷移すると圧力変動幅が増大して、その下限値が、大気圧より低い陰圧(負圧)状態となる。更に、下限値が下限閾値S1を下回るので、その状態を制御部10の下限閾値判定部107が検知する。この判定結果に基づいて、供給流量制御部109が気体の供給量を増大させるように制御してマスク800の内圧を上昇させるので、圧力変動の下限値が下限閾値S1を一致又は上回るようになる。ここでは、陽圧となるまで圧力変動の下限値を増大させている。
【0118】
この結果、マスク800を装着しながら激しい運動を行っているにも関わらず、利用者にとっては、マスク未装着状態に近い状態の吸気抵抗となり、長時間にわたって快適な使用感が得られる。ちなみに、実線Cの圧力変動モデルの上限値は上限閾値S2を上回っているが、その場合であっても下限側の制御を優先させる。ただし、マスク800内の圧力の吸気時の最低値が下限閾値S1を上回っている状態で、呼気時の最高値が上限閾値S2を超えている状態を上限閾値判定部108が検知した際は、供給流量制御部109が、下限閾値S1を下回らない範囲で、供給孔50から供給される気体の流量を減少させることもできる。呼気時の圧力が高すぎると、利用者900は呼気時に息を吐きづらくなるからである。
【0119】
更に図5(B)又は(C)の制御の応用として、図5(D)の実線Dのように、吸気時に気体の供給量を増大させて、マスク800内圧の最低値が下限閾値S1を上回る状態又は陽圧となる状態を確保しつつ、呼気時には気体の供給量を減少又はゼロとして、マスク800内圧の上限値を減少させることが好ましい。呼気中に送風機の回転数を減少させることでバッテリーの消費量を削減できる。
【0120】
ここでは、下限閾値S1を、大気圧から-0.2(cmHO)の値に設定しているが、例えば、-0.5(cmHO)~+0.5(cmHO)の範囲内に設定することが好ましく、より好ましくは、-0.3(cmHO)~+0.3(cmHO)の範囲内に設定し、更に望ましくは、-0.1(cmHO)~+0.1(cmHO)の範囲内とする。下限閾値S1を大気圧(0.0(cmHO))又はそれ以下に設定することも望ましい。
【0121】
なお、図5に示す利用者900とマスク800の間の隙間領域(口近傍領域930又は鼻近傍領域960)における圧力変動波形はモデル的に示したものであり、実際の波形とは異なる。また、本実施形態では、下限閾値S1及び上限閾値S2を利用してマスク800の内圧状態を判定し、供給量を制御する場合を例示したが、全体の平均圧や、圧力に関する他の指標を利用して制御することも、本発明の制御手法に含まれる。更に、マスク800の内圧を測定することなく、手動で供給量を制御し、マスク800の内部を昇圧させる(特に陽圧にする)構造も本発明の概念に含まれる。
【0122】
<気体案内装置のその他の利点>
例えば、マスク800を装着した利用者900が走る等して、吸気量が通常よりも大きい状態にある時、図6(A)に示すように、吸気時に利用者900の顔(鼻910、口920)にマスク800が張り付いて通気面積が小さくなり、吸気抵抗が増大しやすい。本実施形態における気体案内装置1を用いると、図6(B)に示すように、鼻910から口近傍領域930に向かって供給された気体がマスク800に当たり、その風圧又は陽圧によって、外側に押し広げる。結果、常に、マスク800の全体を通気面積として活用できる。
【0123】
また、マスク800内に供給される気体は、フィルタ部8を通過しているのでウイルス等が除去されている。結果、マスク800内は常に清潔な気体が供給されるので、周囲の雰囲気中にウイルスが浮遊していたとしても、利用者への感染リスクを抑制できる。更に、マスク800自身が、通気性を有する材料で構成されていることから、内部に供給される清潔な気体が陽圧となって、常に、マスク800の素材を介して外部に緩やかに漏れ出す。結果、マスク800の素材を介して外部のウイルスが侵入するリスクを抑制できる。一方、利用者の咳やくしゃみ等による飛沫は、マスク800によって外部への放出を確実に抑制できる。同時に、第二供給孔群52から放出される清浄な気体は、エアカーテンとなって、利用者900の目の前方側を上方に向かう。結果、利用者900の目にウイルス等が侵入することを抑制できる。
【0124】
更に、マスク800内に供給される気体によって、マスク800の内部空間自体を冷却できる。また、マスク800内を陽圧として、利用者の肌との接触部分から供給気体が漏れ出すようにすると、その接触部分も冷却される。結果、快適な使用感を得ることが出来る。
【0125】
更にまた、本実施形態における気体案内装置1では、自発呼吸が十分に可能なレベルの通気性を有するマスク800の内部空間に対して、気体を供給しているので、マスク800内の内圧が極端に上昇することが無い。つまり、人工呼吸器やCPAP等の呼吸補助装置のように、利用者の呼吸そのものを補助するものではなく、自発呼吸する際の口外環境を制御する機能となるので、仮にバッテリー切れによって送風機が停止しても、利用者の心肺機能に対する影響を生じさせないで済む。
【0126】
以上は、利用者900がマスク800を装着している際の利点であるが、本実施形態における気体案内装置1は、マスク800を装着していない利用者900に用いても効果的である。つまり、図7に示すように、本実施形態における気体案内装置1を装着した利用者900には、鼻から下方側に向かって口近傍領域930を通過する清浄な気体の流れが形成されると共に、鼻から上方側に向かって目近傍領域990を通過する清浄な気体の流れが形成される。これらの気体の流れは、利用者900の顔の前方側の近傍領域(以下、顔近傍領域と呼ぶ。)においてエアカーテン200となるので、利用者900の顔を通じてウイルス等が体内に侵入することを阻止する。従って、食事等において、マスク800を装着できない場合でも、ウイルスの感染リスクを抑制できる。
【0127】
<本実施形態の変形例>
また、本実施形態の気体案内装置1の変形例として、図8(A),(B)に示すように、利用者900の目940よりも顔の長さ方向Hの上方側に延在管部5Bを配置する構造が挙げられる。具体的には延在管部5Bは、配置部6(気体供給側フレーム部60)により、利用者900の額に配置させることが好ましい。
【0128】
配置部6(気体供給側フレーム部60)は、利用者900の耳950に掛けられて利用者900に装着されてもよいが、図8(A),(B)に示すように、例えば、利用者900の目940よりも顔の長さ方向Hの上方側において、利用者900の頭部を一周して利用者900に装着されるものであってもよい。この際、利用者900の両側の側頭975から後頭部970を跨る頭側装着部69は、気体供給側フレーム部60と協働して利用者900の頭を一周する。
【0129】
本変形例の第一供給孔群51を構成する供給孔50それぞれが、排出された気体が目近傍領域990及び口近傍領域930を通過するような方向を向く。第一供給孔群51から排出された気体が目近傍領域990及び口近傍領域930を通過するように、配置部6(気体供給側フレーム部60)に下方側案内部72を設けてもよい。
【0130】
下方側案内部72は、排出された気体を目近傍領域990及び口近傍領域930に案内する案内面73を有する。案内面73は、第一供給孔群51に対向すると共に、供給孔群よりも顔の長さ方向Hの上方側の起点から下方側に進むに従って顔の長さ方向Hを基準とした傾斜角が小さくなるような区間を有する。排出された気体は、案内面73の当該区間で方向転換されて、目近傍領域990及び口近傍領域930に向かう。
【0131】
本変形例の気体案内装置1の場合、利用者900の顔近傍領域においてエアカーテン200となって、利用者900の顔を通じてウイルス等が体内に侵入することを阻止する。
【0132】
この際、気体案内装置1は、図8(A),(B)に示すように、利用者900の顔の全体を覆うフェイスガード819を有することも好ましい。フェイスガード819は、供給孔50の先方側を覆う。このフェイスガード819は、透明樹脂プレートによって構成されている。そして、その透明樹脂プレートは、透明樹脂プレート(フェイスガード819)と係合可能なフェイスガード係合構造12において配置部6に係合する。フェイスガード係合構造12は、透明樹脂プレートの上縁近傍を配置部6(気体供給側フレーム部60)に固定するフェイスガード固定部125を有する。これにより、透明樹脂プレートは、配置部6に固定される。従って、フェイスガード819の上縁近傍と利用者900の間は、配置部6や延在管部5Bが延在して閉じられた構造となる。一方、フェイスガード819の両側縁と下側縁は、利用者900から離反した開放構造となる。
【0133】
従って、供給孔50から放出されるエアカーテン200が、フェイスガード819の内側(顔側)の表面に沿って下降しつつ、その気体が両側縁と下側縁の開放端から外部に放出される。フェイスガード819の上縁側は閉構造となるので、エアカーテン200に連動して、上部から外気を取り込んでしまうことを防止できる。結果、フェイスガード819の内側に、外部のウイルスが侵入し難い状態となる。なお、フェイスガード819を採用する場合、供給孔50から放出される気体を、フェイスガード819側に衝突させることが好ましく、フェイスガード819の表面に沿って気体を流すことができる。
【0134】
<第二実施形態>
次に本発明の第二実施形態における気体案内装置1について説明する。本実施形態における気体案内装置1は、図9(A),(B)に示すように、フェイスガード820を装着しようとする利用者900の顔に装着するものである。フェイスガード820は、マスク800と同様に、利用者900の鼻910及び口920を覆うが、両側縁及び下側縁は、利用者900から離反した開放構造となる。本実施形態における気体案内装置1は、第一実施形態における気体案内装置1及び図8の変形例と大部分において同じ構造を有し、構造が相違する点について以下説明する。
【0135】
本実施形態における気体案内装置1は、第一実施形態におけるマスク係合構造11に代わってフェイスガード係合構造12を備える。フェイスガード係合構造12は、配置部6が備えるものであり、フェイスガード820と係合可能な構造である。フェイスガード820がフェイスガード係合構造12に係合すると、利用者900の鼻910及び口920、並びに、延在管部5Bを覆うようにフェイスガード820が利用者900に装着される。フェイスガード係合構造12は、図9(B)に示すように、例えば、フェイスガード側フレーム部120と、フェイスガード側取付部121と、を有する。
【0136】
フェイスガード側フレーム部120は、図9(A)に示すように、利用者900の鼻910の鼻背部を跨って利用者900の顔の幅方向Wに延在するものである。フェイスガード側フレーム部120は、気体供給側フレーム部60又は頭部固定側フレーム部62に繋がり、気体供給側フレーム部60又は頭部固定側フレーム部62で保持される。なお、一つの共通フレーム部材が、フェイスガード側フレーム部120と気体供給側フレーム部60を兼ねるように構成されてもよい。
【0137】
フェイスガード側フレーム部120は、揺動機構122を有する。揺動機構122は、利用者900の顔の幅方向Wに延在する(図示しない)揺動軸を中心に対象物を揺動させるものである。
【0138】
フェイスガード側取付部121は、フェイスガード820の上端又はその近傍を、揺動機構122(フェイスガード側フレーム部120)に取り付けるものである。これにより、フェイスガード820は、図9(B)の矢印Rに示すように、前後方向に揺動可能となる。利用者900は、食事の時などは、口920からフェイスガード820を離すように前方側に揺動させる。
【0139】
気体供給側フレーム部60は、図9(A)に示すように、両端において頭部固定側フレーム部62に繋がる。また、2つの頭部固定側フレーム部62の間には、図9(B)及び図10に示すように、2つの頭部固定側フレーム部62の間を架け渡す架設部68が設けられる。
【0140】
2つの頭部固定側フレーム部62が利用者900の両方の耳950に掛けられると、気体供給側フレーム部60が利用者900の鼻910の鼻背部を跨るように配置された状態となると共に、図10(A)に示すように、架設部68が利用者900の後頭部970又は首980に沿って、後頭部970又は首980を幅方向に跨るように配置された状態となる。このように配置部6が構成されると、気体供給側フレーム部60は、2つの頭部固定側フレーム部62で支持される。また、架設部68が、配置部6が利用者900の前方側へずれることを阻止するストッパとして機能するため、利用者900に対する延在管部5Bの姿勢が安定する。このため、架設部68は、利用者900の背面側で利用者900に装着される背面側装着部としての役割を有する。また、第一実施形態における気体案内装置1では、頭部固定側フレーム部62のストッパ部621によって、前方側へのずれを抑制していたが、第二実施形態では、架設部68がその役割を担うことが出来るので、ストッパ部621を省略しても良い。
【0141】
第二実施形態の気体案内装置1によれば、下側を向く第一供給孔群51によって形成される下方側のエアカーテン200が、フェイスガード820の内側(顔側)の表面に沿って下降しつつ、その気体がフェイスガード820の両側縁と下側縁の開放端から外部に放出される。フェイスガード819の上縁側では、第二供給孔群52によって上方に向かう上方側のエアカーテン200が形成されるので、下方側のエアカーテン200に連動して、上方から外気を取り込んでしまうことを防止できる。結果、フェイスガード820の内側に、外部のウイルスが侵入し難い状態となる。
【0142】
更に図10(B)に示す第二実施形態の変形例となる気体案内装置1では、気体供給側フレーム部60及びフェイスガード側フレーム部120が、利用者900の顎の近くを幅方向に跨って延在する。フェイスガード820の下端又はその近傍が、フェイスガード側フレーム部120によって保持される。従って、上側を向く第二供給孔群52によって形成される上方側のエアカーテン200が、フェイスガード820の内側(顔側)の表面に沿って上昇しつつ、その気体がフェイスガード820の両側縁と上側縁の開放端から外部に放出される。フェイスガード819の下縁側では、第一供給孔群51によって下方に向かう下方側のエアカーテン200が形成されるので、上方側のエアカーテン200に連動して、顎下から外気を取り込んでしまうことを防止できる。結果、フェイスガード820の内側に、外部のウイルスが侵入し難い状態となる。更に、フェイスガード820を通過したエアカーテン200は、利用者900の目の前方も通過するので、目に周囲のウイルスが侵入することを抑制できる。
【0143】
<第三実施形態>
本発明の第三実施形態における気体案内装置1について説明する。本実施形態における気体案内装置1は、図11(A)に示すように、マスク800を装着しようとする利用者900の顔に装着するものである。本実施形態における気体案内装置1は、第一実施形態における気体案内装置1と大部分において同じ構造を有するので、構造が相違する点について以下説明する。
【0144】
本実施形態における気体案内装置1は、図11(B)に示すように、気体回収側管部13と、気体回収側調整弁部15と、負圧生成部2Aを備える。また、本実施形態における気体案内装置1の配置部6及び制御部10は、第一実施形態における気体案内装置1における配置部6及び制御部10と構成が異なる。
【0145】
<気体回収側管部>
気体回収側管部13は、供給孔50から排出される気体を回収する複数の回収孔130を有する管となる。気体回収側管部13は、回収側延在管部14Aと導出管部14Bを備える。導出管部14Bは、一端が回収側延在管部14Aに繋がり、他端が、気体回収側調整弁部15を経由して負圧生成部2A(気体供給部2が兼ねている)に繋がる。この導出管部14Bは、例えば、樹脂製のチューブにより構成される。樹脂として、例えば、シリコン等が挙げられる。
【0146】
なお、この回収孔130と供給孔50の間に、利用者900の口が位置するようにしている。即ち、供給孔50から供給される気体は、口の前を通過して、回収孔130に到達する。
【0147】
回収側延在管部14Aは、一端が回収側延在管部14Aに繋がっているが他端が閉塞されている。回収側延在管部14Aは、例えば、樹脂製のチューブにより構成される。樹脂として、例えば、シリコン等が挙げられる。
【0148】
なお、回収側延在管部14Aは、配置部6により利用者900の顔(口の下側から顎の先端の間)に利用者900の顔の幅方向Wに平行な姿勢で配置される。一方、導出管部14Bは、負圧生成部2Aの配置場所に自由度を持たせるために設けられるものである。従って、負圧生成部2Aを利用者900の顔の近傍に配置可能であれば、導出管部14Bを省略して、回収側延在管部14Aに直接接続してもよい。
【0149】
回収側延在管部14Aは、周囲の気体を回収する複数の回収孔130を有する。この回収孔130は、回収側延在管部14Aの周壁を貫通する孔であり、回収側延在管部14Aの内外に連通する。複数の回収孔130の集まりである回収孔群131は、回収側延在管部14Aの軸方向(長手方向)に沿って列状に並ぶように設けられる。結果、この回収孔群131は、全体として帯状に気体を吸引する帯状回収領域となる。なお、回収孔130は、一つでもよい。回収孔130の形状を長孔にすることもできる。
【0150】
<気体回収側調整弁部>
気体回収側調整弁部15は、負圧生成部2Aに向かって流れる気体の量(又は回収孔130から回収される気体の量)を調整したり、負圧生成部2Aに案内する気体の種類を調整したりする。気体供給側調整弁部3や気体回収側調整弁部15によって、気体の供給量と回収量を各々独立して制御できるようにしている。
【0151】
図11(B)に示すように、気体回収側調整弁部15は、気体回収側入力ポート部150と、大気開放側入力ポート部151と、出力ポート部152と、を有する。気体回収側入力ポート部150は、導出管部14Bに接続される。大気開放側入力ポート部151は、大気に開放される。出力ポート部152は、フィルタ部8を介して、負圧生成部2Aの入力側(気体供給部2の吸引側)に接続される。気体回収側調整弁部15は制御部10で制御され、気体回収側入力ポート部150及び大気開放側入力ポート部151が開閉される。弁は、気体回収側入力ポート部150及び大気開放側入力ポート部151の開閉比率を可変調整可能に構成されることが好ましい。
【0152】
以上のように、導出管部14Bは、気体回収側調整弁部15を介して負圧生成部2Aに接続されるため、導出管部14B及び回収側延在管部14Aの内部が負圧となる。
【0153】
<負圧生成部>
負圧生成部2Aは、広義の送風機(気体供給部2)の吸引側により構成される。負圧生成部2Aに気体回収側管部13(導出管部14B)を連結することことで、広義の送風機(気体供給部2)の吸引力によって気体回収側管部13(導出管部14B)を負圧にする。
【0154】
<配置部>
本実施形態における配置部6は、図11(B)及び図12(A)に示すように、気体回収側フレーム部63と、気体回収側取付部64と、回収用頭部固定側フレーム部65と、連絡部66を更に有する。
【0155】
気体回収側フレーム部63は、図11(B)に示すように、利用者900の顔の幅方向Wに延在する姿勢を取り、利用者900の口920の下側に配置される。気体回収側取付部64は、気体回収側フレーム部63に回収側延在管部14Aを沿わせた状態で、回収側延在管部14Aを気体回収側フレーム部63に取り付けるものである。結果、気体回収側フレーム部63によって、回収側延在管部14Aの回収孔130の位置決めが実現される。
【0156】
回収用頭部固定側フレーム部65は、図12(A)に示すように、気体回収側フレーム部63の両端からそれぞれ連続して、利用者900の頭部の両側面に延在し、連絡部66に繋がる構造となる。より詳細に、回収用頭部固定側フレーム部65は、利用者900の耳950の下側を、前方側から後方側に向かって通過して耳950の背後に回り込む。連絡部66は、(供給用となる)頭部固定側フレーム部62と、回収用頭部固定側フレーム部65を連結して一体構造とするものであり、詳細には、頭部固定側フレーム部62のストッパ部621の下端と回収用頭部固定側フレーム部65を接続する。。
【0157】
また、回収用頭部固定側フレーム部65は、図12(A),(B)に示すように、導出管部14Bを案内する管部側案内部67を有する。管部側案内部67は、回収用頭部固定側フレーム部65の利用者900と対向しない外側面に沿って形成される溝となる。
【0158】
<フィルタ部>
本実施形態においてフィルタ部8は、気体の回収側経路(吸引経路)の途中に設けられる。呼気中のウイルスの一部は、気体回収側管部13によって回収されてフィルタ部8で取り除いてから大気に放出される。
【0159】
<制御部>
本実施形態における気体案内装置1の制御部10は、図14に示すように、に、更に回収流量制御部110と回収流量判定部111を有する。回収流量制御部110は、回収孔130から回収する気体の流量を制御(調整)する。詳細に回収流量制御部110は、下限閾値判定部107によってマスク800内の最低圧力が下限閾値S1を下回ると判定された場合に、回収孔130から回収する気体の流量を減少させる。結果、マスク800内の最低圧力が上昇して、下限閾値S1と一致又は上回る。具体的には、気体回収側調整弁部15の気体回収側入力ポート部150を閉じつつ、大気開放側入力ポート部151を開くように両ポートの開閉比率を調整して、回収孔130に印加される負圧を弱めることで、気体の回収量を低減させる。送風機の回転数を減少させて回収量を低減することもできる。
【0160】
更に回収流量制御部110は、上限閾値判定部108によってマスク800内の最高圧力が上限閾値S2を上回ると判定された場合に、回収孔130から回収される気体の流量を増大させる。結果、マスク800内の最高圧力が下降して、上限閾値S2と一致又は下回る。具体的には、気体回収側調整弁部15の気体回収側入力ポート部150を開きつつ、大気開放側入力ポート部151を閉じるように両ポートの開閉比率を調整して、回収孔130に印加される負圧を高めることで、気体の回収量を増大させる。送風機の回転数を増大させて回収量を増大することもできる。しかし、上限閾値判定部108と下限閾値判定部107の判定動作が共存した場合は、下限閾値判定部107の制御を優先させることが好ましい。
【0161】
更に回収流量制御部110は、利用者900の呼気時に気体の回収量を大きくし、吸気時に気体の回収量を小さくすることもできる。利用者900の呼気及び吸気は、呼吸判別部106で判別する。具体的に、利用者900の呼気時には、気体回収側入力ポート部150を開きつつ、大気開放側入力ポート部151を閉じるように両ポートの開閉比率を調整して、呼気を積極的に回収孔130から回収する。一方、吸気時は、気体回収側入力ポート部150を閉じつつ、大気開放側入力ポート部151を開くように両ポートの開閉比率を調整することで、大気開放側入力ポート部151から取り入れられた新鮮な気体を気体供給部2(負圧生成部2A)に入力する。これにより、吸気時に利用者900に供給される気体には、循環する気体のみならず、新たに外気から取り入れたものも含まれるため、マスク800内の冷却効率を高めることが出来ると同時に、気体の酸素含有量を維持できる。
【0162】
気体回収側管部13によって回収される気体は、全て、フィルタ部8を通過してろ過された後に、気体供給側調整弁部3の大気開放側出力ポート部32から大気側に放出されるか、気体供給側管部4を介してマスク800内に循環される。従って、仮に利用者自身がウイルス等に感染していたとしても、呼気中のウイルスの一部は、気体回収側管部13によって回収されてフィルタ部8で取り除いてから大気に放出される。結果、ウイルスの周囲への拡散を抑制できる。
【0163】
なお、マスク800の内圧は、供給孔50からの気体の供給量と、回収孔130からの気体の回収量の比率によって決定される。即ち、本実施形態では、気体の回収量を一定にして供給量のみを制御しても良く、反対に、気体の供給量を一定にして回収量のみを制御しても良く、更に、気体の供給量と回収量を同時に制御しても良い。
【0164】
回収流量判定部111は、回収孔130から回収される気体の流量を判定する。例えば、特に図示しない流量センサや気体供給部2の送風機の回転数、気体供給側調整弁部3・気体回収側調整弁部15の開閉比率等から、回収孔130から回収される流量を算出し、更に、これらの値から、マスク800内の気体の回収量評価値を導く。この回収量評価値が、所定の下限閾値よりも小さい場合は、送風機の回転数を増大させたり、気体供給側調整弁部3の気体供給側出力ポート部31を開いたり、気体回収側調整弁部15の気体回収側入力ポート部150を開いたりして、マスク800の内圧を所定範囲(制御目標値)に維持したまま、気体の回収量のみを増大させる。
【0165】
一方、回収量評価値が所定の上限閾値よりも大きい場合は、送風機の回転数を減少させたり、気体供給側調整弁部3の気体供給側出力ポート部31を閉じたり、気体回収側調整弁部15の気体回収側入力ポート部150を閉じたりすることで、マスク800の内圧を所定範囲(制御目標値)に維持したまま、気体の回収量を減少させる。なお、特に図示しない入力インターフェースから入力される利用者の指示に基づいて、回収量を調整することもできる。
【0166】
回収量を増大させる程、マスク800内において、呼気の換気能力(回収能力)を上昇させることができる。また、マスク800の内圧を目標制御値に維持する観点から、回収量の増大に伴い、気体の供給量も同時に増大する。結果、外気導入によるマスク800内の冷却能力も増大する。これは、マスク800内や、顔の前面空間の空気清浄化能力の増大にもつながる。
【0167】
また、呼気の瞬間吐出流量(一般的には20~30(L/分))に対して、回収量(これはマスク800内の空気の循環量と表現することもできる)をその20%以上(具体的には4(L/分)以上)とする。好ましくは50%以上(具体的には10(L/分)以上)とする。更に好ましくは80%以上(具体的には16(L/分)以上)とする。本実施形態では20L/分に設定している。このようにすることで、呼気の大半を、回収孔130から素早く回収することが可能となる。結果、呼気中に含まれるウイルス等を、フィルタ部8で回収することができるので、マスク800から漏れ出すウイルス量を低減できる。
【0168】
<制御部による圧力制御及び流量制御の詳細説明>
次に、制御部10による制御について説明する。図15(A)の実線A1に、この気体案内装置1を利用した場合の定常状態のマスク800の内圧変動モデル示す。図15(A)における点線X1は、マスク800のみを装着した場合の圧力変動モデルを示す。
【0169】
この気体案内装置1では、制御部10によって、供給孔50からマスク800の内部空間に気体が供給されると同時に、回収孔130から気体か回収される。図15(A)における供給流量K1の通り、時間領域T1の範囲では、供給孔50から50(L/分)の気体が供給され、時間領域T2の範囲では、供給孔50から60(L/分)の気体が供給される。また、回収流量K2の通り、時間領域T1の範囲では、回収孔130から20(L/分)の気体が回収され、時間領域T2の範囲では回収孔130から30(L/分)の気体が回収される。結果、時間領域T1及びT2の双方において、マスク800内には実質30(L/分)の気体が供給される状態となり、マスク800の内圧が同じレベルで上昇する。一方で、時間領域T1の範囲では、マスク800内に20(L/分)のエアカーテン200が形成され、時間領域T2の範囲では、マスク800内に30(L/分)のエアカーテン200が形成される(図12参照)。このエアカーテン200の流量は、回収流量判定部111によって適宜調整可能である。
【0170】
制御部10は、図15(A)の圧力変動モデルX1(図15(A),(B)の点線X1参照)(換言すると、気体案内装置1の気体供給OFF状態又は大気圧状態)を基準として、0.2(cmHO)以上の内圧上昇を生じさせるように気体の供給量を制御し、好ましくは0.4(cmHO)以上の上昇を生じさせる。
【0171】
特に制御部10は、呼吸中にマスク800の内圧が陰圧とならない程度まで、圧力を上昇させるように制御することが好ましい。マスク800自身は、ウイルスの侵入を抑止できないが、内側を陽圧にすることで、マスク800の本体や周囲の隙間からのウイルスの侵入を抑制できることになる。
【0172】
なお、上述の内圧上昇幅を得るためには、供給孔50からマスク800内に対して、実質的に30(L/分)~60(L/分)の気体を供給することが好ましい。即ち、供給流量K1と回収流量K2の差が、30(L/分)~60(L/分)となるように設定する。
【0173】
図15(A)のように、吸気時のマスク800の内圧(正圧)を陽圧に維持すれば、マスク800を装着しているにも関わらず、利用者にとっては、マスク未装着状態と同程度の吸気抵抗となり、長時間にわたって快適な使用感が得られる。更に、マスク800内には、エアカーテン200が形成されるため、利用者900の呼気を効率よく回収できる。結果、利用者900が呼気から放出するウイルスを、エアカーテン200を介して回収できることになる。なお、このエアカーテン200は、利用者900から放出される唾液等の飛沫を抑制する効果も間接的に得られる。
【0174】
なお、ここでは任意のタイミングで回収流量を変化させる場合を例示したが、図15(B)に示すように、吸気タイミングにおける回収流量(エアカーテン200の流量)を小さく制御し、呼気タイミングにおける回収流量(エアカーテン200の流量)を大きくするように制御することも好ましい。結果、呼気時のみの回収効率を高めることが出来る。ちなみに図15(B)では、吸気タイミング中は気体の回収を停止している。
【0175】
次に、図16(A)の実線B1に、気体案内装置1を利用した場合において呼気の回収効率を高めるように制御されたマスク800の内部空間の圧力変動モデルを示す。図16(A)における点線X1は、マスク800のみを装着した場合の圧力変動モデルを示す。
【0176】
図15(B)における一点鎖線M1の通り、吸気タイミングでは、供給孔50から50(L/分)の気体が供給され、呼気タイミングでは、供給孔50から20(L/分)の気体が供給される。また実線M2の通り、呼気及び吸気タイミング共に、回収孔130から20(L/分)の気体が回収される。結果、マスク800内が陰圧となりやすい吸気タイミング中は、マスク800内には実質30(L/分)の気体が供給される状態となり、マスク800の内圧が上昇する。一方、マスク800内が陽圧となりやすい吸気タイミング中は実質0(L/分)の供給状態となり、内圧が低下してマスク800のみを装着した状態に近似する。この呼気タイミングでも、マスク800内に20(L/分)のエアカーテン200が形成されるので、呼気を効率よく回収可能となっている。
【0177】
このように、エアカーテン200の流量を一定に維持したまま、吸気タイミング中の実質的な気体供給量(供給量と回収量の差)を大きくしてマスク800の内圧を高くし、呼気タイミング中の実質的な気体供給量を小さくしてマスク800の内圧を低くして、呼気の回収効率を高めるようにしても良い。
【0178】
次に、図16(B)の実線C1に、図15(B)と比較して、更に呼気の回収効率を高めるように制御されたマスク800の内部空間の圧力変動モデルを示す。図16における点線X1は、マスク800のみを装着した場合の圧力変動モデルを示す。
【0179】
図16(B)における一点鎖線N1の通り、吸気タイミング及び呼気タイミング共に、供給孔50から50(L/分)の気体が供給される。また、実線N2の通り、呼気タイミングでは、回収孔130から60(L/分)の気体が回収され、吸気タイミングでは、回収孔130から20(L/分)の気体が回収される。
【0180】
結果、マスク800内が陰圧となりやすい吸気タイミング中は、マスク800内には実質30(L/分)の気体が供給される状態となり、マスク800の内圧が上昇して陽圧となる。一方、マスク800内が陽圧となりやすい吸気タイミング中は実質-10(L/分)の供給状態(つまり吸引状態)となり、内圧が低下してマスク800のみを装着した状態によりも負圧側に遷移して、利用者900の呼気を効率的に回収する。この呼気タイミング中でも、マスク800内に20(L/分)のエアカーテン200が形成されるので、呼気を効率よく回収可能となっている。
【0181】
例えば、ウイルスに既に感染していることが明らかな利用者900が、清潔な雰囲気環境で日常生活する際は、この図16(B)の制御モードを利用すれば、呼気タイミング中は、回収の流速を維持したままマスク800の内圧を減少させて、自身のウイルスの拡散を積極的に抑制する一方、吸気タイミングはマスク800の内圧を陽圧にすることで、利用者900の吸気負荷を低減でき、疲れさせないで済む。
【0182】
なお、ここではマスク800を装着する場合を例示しているが、図17(A)に示す変形例のように、フェイスガード820を装着しても良い。このようにすると、フェイスガード820の内側において、早い流速でエアカーテン200を生成できる。この場合は、図17(B)に示す実線R1の通り、供給孔50から50(L/分)の気体が供給され、また実線R2の通り、回収孔130から70(L/分)の気体が回収される。このように、気体の供給量よりも回収量を大きく設定したとしても、フェイスガード820の場合は、周囲が開放されていることから、鼻や口の周囲は大気圧状態となるので、利用者900に対して、呼吸負荷は増大しないで済む。しかも、吸引過多状態よって、周囲の雰囲気と一緒に、利用者の呼気を積極的に回収できるので、利用者900が保有するウイルスの拡散を抑制できる。なお、フェイスガード820を省略しても、エアカーテン200によるウイルスの拡散防止効果と、回収孔130を利用したウイルスの回収を両立させることができる。
【0183】
また、図17(C)に示す実線R3の通り、供給孔50から70(L/分)の気体が供給され、また実線R4の通り、回収孔130から50(L/分)の気体が回収されるようにしてもよい。気体の回収量よりも供給量を大きく設定したとしても、フェイスガード820の場合は、周囲が開放されていることから、鼻や口の周囲は大気圧状態となるので、利用者900に対して、呼吸しづらい状態にはならない。しかも、供給過多状態よって、鼻や口の周囲から飛び込んでくるウイルスを吹き飛ばすことができるので、利用者900がウイルスに感染することを防止することができる。なお、フェイスガード820を省略しても、エアカーテン200によるウイルスの感染防止効果は成立する。
【0184】
図17(B)に示すような気体の供給量よりも回収量を大きく設定したモードを感染処理モードと定義し、図17(C)に示すような気体の回収量よりも供給量を大きく設定したモードを未感染処理モードと定義し、それ以外の処理に関するモードを通常処理モードと定義した際、制御部10は、気体案内装置1の操作インターフェース105のモード切替スイッチで操作を受け付けて、操作に対応するいずれかの処理モードに切り替える(図示しない)モード切替部を有するように構成されてもよい。モード切替部は、受け付けた操作に対応する処理モードの処理を行うよう供給流量制御部109及び回収流量制御部110に対して指示する。なお、処理モードは、上記3種類に限定されるものではなく、その他のものが含まれていてもよい。また、この感染処理モードや未感染処理モードの切り変え制御は、供給機能と回収機能を併用する他のすべての実施形態の気体案内装置1にも適用可能である。
【0185】
ちなみに、マスク800の本体自体の空孔を小さくして、マスク800のみでウイルスを捕獲する機能を付与することも考えられるが、極めて高価となり、日常生活で頻繁に交換しながら利用するには現実的ではない。マスク800の通気抵抗が大きくなりすぎて、日常生活の負担が大きくなる。
【0186】
そこで本実施形態によれば、頻繁に交換を要するマスク800やフェイスガード820は、唾液等の飛沫抑制効果に止めておきながらも、マスク800やフェイスガード820内の限定的な空間に対して清浄気体を供給したり、利用者900から呼気として放出される汚染気体を回収したりすることによって、自らへのウイルス感染抑制と、周囲へのウイルス拡散抑制を両立できることになる。
【0187】
<第四実施形態>
次に本発明の第四実施形態における気体案内装置1について説明する。本実施形態における気体案内装置1は、図18(A)に示すように、マスク800を装着しようとする利用者900の顔に装着するものである。本実施形態における気体案内装置1は、第一実施形態における気体案内装置1と大部分において同じ構造を有するが、構造が相違する点について以下説明する。
【0188】
本実施形態における気体案内装置1は、図18(A),(B)に示すように、気体供給側部分と気体回収側部分が、本発明の第三実施形態における気体案内装置1とは、反対になっている。つまり、延在管部5Bは、配置部6により利用者900の口920の下側に配置される。また、回収側延在管部14Aは、配置部6により利用者900の鼻910の鼻背部に配置される。従って、マスク800内の気体の内圧を高めたり、気体を循環させたりすることができる。
【0189】
なお、回収側延在管部14Aは、利用者900の目940よりも顔の長さ方向Hの上方側(額側)に配置されてもよい。この場合、マスク800を取り外したり、フェイスガードを採用したりすることで、延在管部5Bの供給孔50から排出される気体が口近傍領域930のみならず、目近傍領域を通過して、回収孔130から回収されるする。このように構成されれば、目近傍領域にも、空気の流れであるエアカーテン200が生成されるため、目940に向かってウイルスが飛んできても、エアカーテン200によりウイルスは上方に流される。結果、ウイルスが目940に入ることを阻止することができる。
【0190】
<第五実施形態>
本発明の第五実施形態における気体案内装置1について説明する。本実施形態における気体案内装置1は、図19に示すように、マスク800を装着しようとする利用者900の顔に装着するものである。本実施形態における気体案内装置1は、第一実施形態における気体案内装置1と大部分において同じ構造を有するが、構造が相違する点について以下説明する。
【0191】
本実施形態では、図19(A)に示すように、延在管部5Bと回収側延在管部14Aは、共に、利用者900の顔の長さ方向Hと略平行となるように延在する。更に延在管部5Bの第一供給孔群51と回収側延在管部14Aの回収孔群131とが、口近傍領域930を介して利用者900の顔の幅方向Wの両外側に配置されて互いに対向する。結果、気体供給部2から供給される気体は、口近傍領域930において、利用者900の顔の幅方向Wに流れる。
【0192】
図19(A)に示すように、延在管部5Bを取付部61によって保持する気体供給側フレーム部60と、これを頭部に固定する頭部固定側フレーム部62は、利用者900の一方の耳側に配置される。頭部固定側フレーム部62の一端は、気体供給側フレーム部60の一端に連結され、他端は、気体供給側フレーム部60の他端に連結される。気体供給側フレーム部60の一端から延びる頭部固定側フレーム部62は、利用者900の耳950の前方側から後方側に向かって耳950の上方側を通過して耳950の背後に回り込んで折り返し、更に、耳950の下方側を後方側から前方側に向かって通過して気体供給側フレーム部60の他端に繋がる。
【0193】
同様に、回収側延在管部14Aを気体回収側取付部64によって保持する気体回収側フレーム部63と、これを頭部に固定する回収用頭部固定側フレーム部65は、利用者900の他方の耳側に配置される。回収用頭部固定側フレーム部65の一端は、気体回収側フレーム部63の一端に連結され、他端は、気体回収側フレーム部63の他端に連結される。気体回収側フレーム部63の一端から延びる回収用頭部固定側フレーム部65は、利用者900の耳950の前方側から後方側に向かって耳950の上方側を通過して耳950の背後に回り込んで折り返し、更に、耳950の下方側を後方側から前方側に向かって通過して気体回収側フレーム部63の他端に繋がる。
【0194】
頭部固定側フレーム部62及び回収用頭部固定側フレーム部65は、図19(B)に示すように、第二実施形態において説明した架設部68(連結部68Aと定義することもできる)により繋がっていてもよい。なお、ここでは架設部68が後頭部側に配置される場合を例示するが、顔の鼻背部や顎部側に配置して、両者を連結させても良い。
【0195】
本実施形態における気体案内装置1では、気体は、口近傍領域930において利用者900の顔の幅方向Wに流れるため、マスク800の内圧を上昇させたり、マスク800が顔に張り付くことを抑止したりできる。また、マスク800を着用していない状態でも口近傍領域930にエアカーテン200を形成することができる。
【0196】
<第六実施形態>
本発明の第六実施形態における気体案内装置1について説明する。本実施形態における気体案内装置1は、第一実施形態における気体案内装置1と大部分において同じ構造を有するので、相違点について以下説明する。
【0197】
気体案内装置1は、図20に示すように、配置部6がクリップ等の着脱自在の外部固定具62Xを有している。この外部固定具62Xによって、配置部6自体が、マスク800やフェイスガード等の覆い部材(外部部材)側の周縁を挟み込むようにして着脱自在に固定される。結果、マスク800が有する耳掛け用のゴム紐や、フェイスガード装置自体が備える頭部固定部によって、配置部6が間接的に頭部に固定されることになる。なお、この外部固定具62Xの固定方法は、クリップ等の挟持構造に限定されず、ボタン、面ファスナー、両面テープ、その他の着脱自在構造を採用しても良い。
【0198】
なお、図21に示すように気体案内装置1の変形例のように、マスク800自身が通気部805を備えることも好ましい。この通気部805は、マスク800の本体となるシート材の周縁近傍において、利用者900の肌とマスク800のシート材の間に介在して、供給孔50からマスク800内に供給される気体を外部に放出する。この通気部805は、多孔質状のスポンジやウレタン等の樹脂材、ギャザー状の生地、不織布、厚み方向に三次元的に樹脂成形した立体メッシュ、繊維を厚み方向に三次元的に編み込んだメッシュ繊維などを利用できる。マスク800は、その周縁が利用者900の肌に密着することから、その周縁に熱が籠りやすい。そこで本変形例のように、マスク800の本体シートと肌の接触部分の通気部805を形成しておき、内部から外部に向かって気体を通過させることで、体熱を放出できる。
【0199】
また、本実施形態においてマスク800は、吸水性又は親水性を有する材質で構成されることが好ましい。水分を吸収した状態のマスク800を着用すれば、供給孔50から放出される気体によってマスク800の内部の気体が撹拌され、その気流がマスク800に含まれる水分を気化させる。この気化熱によって、マスク800の内部空間を冷却することができる。また、通気部805は、撥水材料により構成されることが好ましい。通気部805が水分を吸収可能な材料で構成されると、マスク800の水分を肌に接触する通気部805が吸収してしまい、常に肌が濡れた状態になり、肌荒れを招くが、このようなことを防止するためである。
【0200】
<第七実施形態>
本発明の第七実施形態における気体案内装置1について説明する。本実施形態における気体案内装置1は、第一実施形態における気体案内装置1と大部分において同じ構造を有するので、相違点について以下説明する。
【0201】
図22に示すように、気体案内装置1は、水分を保持可能な吸水部材80を有する。この吸水部材80はシート状になっており、スポンジ等の多孔質材や不織布、繊維、吸水ポリマー等を利用できる。配置部6には、鼻背部に配置される気体供給側フレーム部60から下側(口側)に延長されるようにして、吸水部材80を保持する吸水部材保持部81が形成される。結果、吸水部材80は、マスク800の内部において、延在管部5Bの第一供給孔群51の近傍に位置決めされる。なお、吸水部材保持部81による吸水部材80の保持は、例えば、両面テープ等の接着構造、面ファスナー等の面保持構造、クリップ等の挟持構造等を採用できる。
【0202】
吸水部材保持部81は、吸水部材80と利用者900の間に介在して両者を隔離する顔側隔離部材を兼ねている。これにより、吸水部材80の水分が、利用者900の肌に常に触れることによる肌荒れを抑制する。
【0203】
更に、気体案内装置1は、吸水部材80における利用者900の顔と反対側、即ちマスク800側に配置されて、吸水部材80の水がマスク800側に移動することを抑制する外側隔離部材82を有する。本実施形態では、この外側隔離部材82が、撥水性を有する樹脂フィルムとなっており、吸水部材80の外側表面を覆う。外側隔離部材82は、配置部6の気体供給側フレーム部60や延在管部5Bに固定される。延在管部5Bの第一供給孔群51から放出される気体は、吸水部材80の外側面と外側隔離部材82の隙間を通過して流れることで、吸水部材80の水分を気化させる。この気化熱によって、マスク800の内部空間を冷却できる。顔側隔離部材や外側隔離部材82は、上述と異なる構造を採用できる。例えば、樹脂成型等による立体メッシュシート等を採用することで、水分の移動を抑止しながらも、気体を積極的に通気させるようにしても良い。
【0204】
なお、特に図示しないが、配置部6やその外部に給水タンクを備えるようにし、吸水部材80に水を補充しても良い。給水タンクから吸水部材80までの水の移送は、給水管や、毛管現象を生じさせる通水素材等を採用できる。
【0205】
また、本実施形態において、マスク800の内側面に給水タンクの水を霧状にして放出する霧化部を備えてもよい。ちなみに、給水タンクは、マスク800の外側にあってもよい。霧化部は、吸水部材80に代わって、吸水部材80の位置に配置されてもよいし、吸水部材80の位置とは別の位置に配置されてもよい。これにより、マスク800の内部空間には、水分を十分に含んだ空気が充満し、利用者900の喉を潤すことができる。なお、霧化部としては超音波霧化装置を配置することができる。
【0206】
<第八実施形態>
本発明の第八実施形態における気体案内装置1について説明する。本実施形態における気体案内装置1は、第一実施形態における気体案内装置1と大部分において同じ構造を有するので、相違点について以下説明する。
【0207】
図23に示すように、気体案内装置1は、気体供給部2から供給される気体を、利用者900の首近傍まで案内する首用気体供給側管部500を有する。この首用気体供給側管部500には、首側供給孔550が形成されており、首の周囲に気体を放出する。なお、本実施形態では、首用気体供給側管部500は、首を周回するリング状の管路となっているが、首の周囲の一部に配置されていても良い。
【0208】
更に気体案内装置1は、首回りに配置されて水を保持可能な首側吸水部材580を有する。本実施形態では、布や不織布、スポンジ、吸水ポリマー等によって構成される環状材となっており、首側供給孔550の外側を覆うようにして、首回りに配置される。首側供給孔550から放出される気体は、首側吸水部材580の内周面を通過して外部に放出されるので、首側吸水部材580の水分を気化させる。この気化熱によって、首回り、特に頸動脈が通過する領域を冷却することができ、熱中症の抑制につながる。首用気体供給側管部500や首側吸水部材580は、上述と異なる構造・形状を採用できる。なお、ここでは首近傍に気体を案内する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、チューブ配管によって、被服や帽子に気体を案内して冷却効果を付加しても良い。
【0209】
なお、利用者900は、マスク800及びフェイスガード820を着用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、マスク800及びフェイスガード820以外の覆い部材を採用しても良い。一方、この覆い部材は、仮に気体供給部2の送風機が停止しても、利用者900が自発呼吸できる程度の通気性又は開放性を有することが望ましい。つまり、覆い部材は、利用者900が自発呼吸可能な開放状態で少なくとも利用者900の口920を覆い、該口920からの飛沫を抑止する。なお、覆い部材は、利用者900の鼻910及び口920を覆う大きさを有するものや、利用者900の目940、鼻910及び口920を覆う大きさを有するもの等、様々な大きさを有するものが想定されるが、少なくとも口920を覆う大きさ、好ましくは少なくとも鼻910及び口920を覆う大きさを有することが望ましい。そして、覆い部材は、利用者900の口920からの飛沫を抑止する。この場合、本発明の気体案内装置1は、利用者900の鼻910及び口920、並びに、供給孔50を覆うように装着させる。また、覆い部材と係合可能な構造を覆い部材係合構造と称し、覆い部材係合構造には、マスク係合構造11、及びフェイスガード係合構造12が含まれる。
【0210】
<第九実施形態>
図24図26を参照して、本発明の第九実施形態における気体案内装置1について以下説明する。本実施形態における気体案内装置1は、第一実施形態における気体案内装置1と異なり、マスク係合構造11を備えず、図24(A)及び図25(A)に示すように、マスク800と利用者900の間に、立体フレーム16を備える。
【0211】
立体フレーム16は、図24(B)及び図25(B)に示すように、利用者900が装着した際、利用者900の口920及び鼻910の周囲を取り囲む顔領域に接触して、利用者900の口920及び鼻910の周囲で位置決めされる環状の基部160と、基部160を起点として利用者900の口920及び鼻910から離れる側に凸となって口920及び鼻910を覆う覆い部161と、を有する。覆い部161における口920及び鼻910に対する対向面161Aは、利用者900の口920及び鼻910から離れる側に凸となっているため、図25(B)に示すように、対向面161Aと、口920及び鼻910との間には十分な広さの空間165が形成される。結果、利用者900がマスク800を立体フレーム16の上から重ねて装着すると、マスク800は、利用者900の口920から離れる側に凸となる三次元形状に変形し、マスク800と利用者900の口920及び鼻910との間に十分な広さの空間が形成される。この意味で、立体フレーム16は、マスク800に対して、三次元形状変形部として機能する。ちなみに、空間165には、口近傍領域930及び鼻近傍領域960の少なくとも一部が含まれる。
【0212】
また、覆い部161は、自身を貫通する通気孔163を有する。立体フレーム16を利用者900が装着した際、通気孔163は、口920の両脇に相当する覆い部161の領域において利用者900の顔の長さ方向Hに沿って複数設けられる。また、通気孔163は、口920と顎1100の間に相当する覆い部161の領域にも設けられる。また、覆い部161の中央領域は、周囲の通気孔163よりも大きく開口(4つの通気孔161E)している。
【0213】
なお、覆い部161は、図24(A)に示すように、通気孔163を有し、利用者900の口920及び鼻910の周囲を取り囲む環状の第一フレーム片161Bと、第一フレーム片に繋がり、利用者900の口920から離れる側に凸となる第二フレーム片161C及び第三フレーム片161Dとにより構成される。第二フレーム片161Cは、利用者900の顔の長さ方向に延在し、第三フレーム片161Dは、利用者900の顔の幅方向Wに延在する。第二フレーム片161C及び第三フレーム片161Dは、利用者900の口920の前方で交差し、覆い部161の中央領域が開口して、4つの通気孔161Eが形成される。この4つの通気孔161Eは、通気孔163よりも開口面積が大きい。そして、空間165は、通気孔163及び通気孔161Eを通じて外部に開放される。
【0214】
本実施形態においてマスク800は、図25(A)に示すように、マスク800の紐部810が利用者900の耳950に直接引っ掛けられ、立体フレーム16の上から重ねて利用者900に装着される。立体フレーム16は、鼻背部を跨る跨り部162を有し、気体供給側フレーム部60と跨り部162で連結される。そして、立体フレーム16は、利用者900に対向するマスク800の内側面850側に配置されて、マスク800の内側面850と係合することで、マスク800の内側面850と利用者900の顔の間のマスク800の内部空間において位置決めされる。立体フレーム16が位置決めされると、延在管部5Bは、利用者900の顔の幅方向Wに延在し、更に利用者900の鼻910の鼻背部を跨るような姿勢に位置決めされる。更に、この時、通気孔163もマスク800の内側面850と利用者900の顔の間において位置決めされる。つまり、立体フレーム16は、気体供給側フレーム部60と協働して、配置部6を構成すると捉えることができる。なお、立体フレーム16と気体供給側フレーム部60は一体形成されたものであってもよい。また、立体フレーム16自体を、気体供給側フレーム部として用いることもできる。
【0215】
この意味で、立体フレーム16は、マスク800に対して係合部として配置部6を所定の位置に位置決めする係合部として機能する。そして、立体フレーム16は、単に、マスク800の押圧力により利用者900の顔に押さえ付けられて、マスク800と利用者900の間で位置決めされてもよいが、立体フレーム16が位置決めされた位置から動かないように、立体フレーム16は、フック、テープ等の固定手段でマスク800の内側面850側に固定されても良い。
【0216】
また、延在管部5Bの供給孔50から供給される気体は、対向面161Aと、口920及び鼻910との間に形成される(口近傍領域930及び鼻近傍領域960を含む)空間165から周囲の通気孔163、及び中央の4つの開口部分(通気孔161E)を通過して、利用者900の顔の幅方向Wの両側、及び、利用者900の顔の長さ方向Hの下方側、マスク800の中央領域に向かって進む。そして、気体は、マスク800の外縁、及びマスク800の中央領域から外部に排出される。特に、マスク800を装着した状態で利用者900が呼吸を繰り返すと、上記空間165内の空気は、高温となる。このため、本実施形態のように気体案内装置1が構成されると、高温となった空気を、供給孔50から供給される気体で全体的に撹拌しながら外部に排出できるため、上記空間165内の温度を下げることができる。特に、立体フレーム16によって、マスク800によって覆われる両頬及び耳近傍にも微小な隙間が形成されることから、供給孔50から供給される気体は、マスク800内の両頬に流れ込んで撹拌できるので、マスク800内の熱を効率的に排出できることになる。
【0217】
また、上記空間165、又は、その近傍領域に、水分を含有可能な吸水部材80を設けると、上記空間165内の熱を水分が吸収して気化熱として外部に排出される。吸水部材80は、水分を吸収可能な材料で構成される。水分を吸収可能な材料として、例えば、布、不織布、スポンジ等が挙げられる。従って、水分含有部166は、例えば、布や不織布で構成されたマスク800により構成されてもよいし、立体フレーム16に別途設けられた布、不織布、スポンジ等で構成されてもよい。
【0218】
ところで、一般的に、利用者900の顔にマスク800を装着する場合、マスク800は、マスク800の幅方向の両端及びその近傍において顔に密着する。このため、マスク800の幅方向の両端から、マスク800と顔の間の空気を外部に排気することが難しくなることが想定される。確実に空気を外部に排気するため、更に、立体フレーム16に、図26に示すように、通気孔163に相当する部分を起点としてマスク800の外側まで延在する排気管164を設けることが好ましい。これにより、利用者900の顔の幅方向Wにおけるマスク800の両端と顔との密着度合いに関係なく、上記空間165内の空気を外部に確実に排気することができる。なお、排気管164は、必ずしも排気管164の内部が他の実施形態のように負圧生成部により負圧にされている必要はなく、排気管164のマスク800の外側における開口が外部空間に開放されるように配置されているだけでもよい。この場合、マスク800の内部空間の空気は、排気管164を通じて外部に自然排気される。
【0219】
また、図25(A)に示すように、利用者900が立体フレーム16に重ねてマスク800を装着すると、マスク800は、立体フレーム16の外側面167に沿って変形して、利用者900の顔から離れる側に凸となる三次元形状に変形する。この際、マスク800の中央領域が利用者900の顔から離れる側に引っ張られると、マスク800の幅方向の両端及びその近傍領域も同様に利用者900の顔から離れる側に引っ張られ、マスク800の幅方向の両端(図25(A)の二点鎖線領域参照)と利用者900の顔との間に隙間ができるか、又は、密着度合いが弱くなる。上記隙間及び上記密着度合いは、立体フレーム16の形状により調整可能である。上記隙間ができるように立体フレーム16の形状が形成されれば、排気管164を設けなくても、気流が上記隙間に流れ込んで撹拌できるので、そのの撹拌された空気が、マスク800の表面又は周縁を介して外部に確実に排気することができる。なお、上記隙間が形成されても、上記隙間から排出される空気が外部から侵入するウイルスを吹き飛ばすため、特に問題は生じない。
【0220】
また、立体フレーム16の材質は、樹脂が好ましく、特に、可撓性を有する樹脂が更に好ましい。
【0221】
<第十実施形態>
図27及び図28を参照して、本発明の第十実施形態における気体案内装置1について以下説明する。本実施形態における気体案内装置1は、第一実施形態の気体案内装置1の変形例をベースとしたものである。第一実施形態の気体案内装置1の変形例では、フェイスガード819を配置部6に固定したが、本実施形態では、配置部6又は延在管部5Bをフェイスガード819に固定する点が異なる。
【0222】
フェイスガード819は、図27(A),(B)に示すように、透明樹脂プレート817と、透明樹脂プレート817を利用者900の頭に取り付ける帯状の装着バンド部818を有する。透明樹脂プレート817は、顔の正面を覆うものである。透明樹脂プレート817は、自身の上端近傍で装着バンド部818に固定される。装着バンド部818は、利用者900に装着すると、利用者900の頭部に当接して利用者900の頭部を一周し、頭部を適度に締め付けることにより装着される。
【0223】
気体供給側フレーム部60(配置部6)及び延在管部5Bは、フェイスガード係合構造12を通じてフェイスガード819に固定される。本実施形態におけるフェイスガード係合構造12は、図27(A),(B)に示すように、気体供給側フレーム部60(配置部6)を装着バンド部818に固定するフェイスガード固定部125を有する。他の実施形態では、フェイスガード819を気体供給側フレーム部60(配置部6)に固定していたが、本実施形態では、フェイスガード819(装着バンド部818)に、気体供給側フレーム部60(配置部6)をフェイスガード固定部125により固定する。具体的に気体供給側フレーム部60と装着バンド部818を重畳させて、フェイスガード固定部125により装着バンド部818に気体供給側フレーム部60が固定される。なお、気体供給側フレーム部60の代わりに、装着バンド部818に延在管部5Bを直接フェイスガード固定部125により固定してもよい。この場合、装着バンド部818は、気体供給側フレーム部60と同様の機能を果たし、配置部6を構成すると見做してもよい。
【0224】
フェイスガード固定部125は、気体供給側フレーム部60(配置部6)、又は、延在管部5Bを装着バンド部818に固定することができるものであれば、どのような態様であってもよい。
【0225】
また、本実施形態では、図27(A),(B)に示すように、透明樹脂プレート817の幅方向両端の周縁又はその近傍に、緩衝部126が2つ設けられる。緩衝部126は、透明樹脂プレート817の長さ方向(利用者900の顔の長さ方向と平行)に延在する。フェイスガード819を利用者900が装着すると、2つの緩衝部126は、利用者900の顔の幅方向Wの両脇において顔に接触する。結果、利用者900の顔と透明樹脂プレート817の間の隙間が2つの緩衝部126で埋められ、塞がれている。一方、透明樹脂プレート817の下端側の周縁には、緩衝部126は設けられず、透明樹脂プレート817の下端側の周縁は外部に開放された状態にある。この外部に開放された透明樹脂プレート817の下端側の周縁と利用者900の間の隙間は、透明樹脂プレート817と利用者900の顔の間の空気を外部に排気するための排気孔として機能する。このため、供給孔50から供給される空気が利用者900の顔の側方に向かっていっても、緩衝部126で反射されて利用者900の顔の長さ方向の下方側に向かう。つまり、緩衝部126は、供給孔50から供給される空気が利用者900の顔の長さ方向の下方側に向かうように案内している。
【0226】
また、緩衝部126は、延在管部5Bよりも利用者900の顔の長さ方向Hの上方側に設けられる。この緩衝部126は、利用者900の顔の幅方向Wに延在し、利用者900の顔の長さ方向Hの上方側において、透明樹脂プレート817と利用者900の顔の間の隙間を埋めて、塞いでいる。結果、利用者900の顔の上方側に向かう空気は、この緩衝部126でせき止められる。
【0227】
緩衝部126は、利用者900の顔に接触するため、軟質性の材料により構成されることが好ましい。軟質性の材料として、例えば、シリコンやゴム等の非通気性を有する材料等が挙げられる。また、軟質性の材料は、隙間を無くす観点から利用者900の顔に沿って変形することが好ましいため、可撓性を有する方が好ましい。
【0228】
また、軟質性の材料として、例えば、スポンジ等の通気性を有する材料が挙げられる。通気性を有する材料で緩衝部126が構成されると、透明樹脂プレート817と利用者900の顔の間の空気の一部は、緩衝部126を通じて外部に排気される。この場合、利用者900の顔の脇を空気が通過するため利用者900は顔の脇も涼しく感じる。
【0229】
また、本実施形態における気体案内装置1は、ダクト部17を有する。ダクト部17は、透明樹脂プレート817と利用者900の顔の間の空気を気体供給部2で回収するためのものであり、透明樹脂プレート817と利用者900の顔の間の空気を気体供給部2に案内する。ダクト部17は、透明樹脂プレート817の下方側の周縁の少なくとも一部を気体供給部2に繋ぐ。
【0230】
本実施形態においてダクト部17は、シート状のシート部材170で構成される。シート部材170は、自身の上端又はその近傍において透明樹脂プレート817の下方側の周縁又はその近傍で透明樹脂プレート817に接続される。そして、シート部材170は、気体供給部2まで延在して、気体供給部2に覆い被さる。ちなみに、気体供給部2は、シート部材170と利用者900の胴部1000との間に位置する。結果、シート部材170と利用者900の胴部1000との間に、透明樹脂プレート817と利用者900の顔の間の空気を気体供給部2まで案内するダクトとして機能する通路が形成される。つまり、シート部材170と利用者900の胴部1000は、相互に協働してダクトとして機能する通路を構成する。即ち、この胴部(ダクト)1000は、気体回収側管部13の役割を担うことになる。
【0231】
なお、図28において気体供給部2は、利用者900の首に紐220を通じてぶら下がる筐体210の内部に収容される。また、筐体210には、図11に示すような気体回収側調整弁部15、フィルタ部8、気体供給側調整弁部3、制御部10が収容される。筐体210は、利用者900の胸ポケットに入る程度の大きさであることが好ましい。
【0232】
なお、シート部材170は、布、又は、フィルム等の変形可能な材料であってもよいし、変形しない材料であってもよい。
【0233】
以上のように構成されたダクト部17は、所謂、シート部材170と利用者900の胴部が協働して構成される簡易型のダクトであったが、これに限定されるものではなく、単独でダクトを構成可能な管で構成されたものであってもよい。
【0234】
<第十実施形態の変形例>
なお、本実施形態における緩衝部126は、他の実施形態にも採用可能である。例えば、図29(A)に示すように、第二実施形態におけるタイプのフェイスガード820にも適用可能である。また、図29(B)に示すように、第三実施形態における気体回収側管部13を、利用者900の口920の下側から顎1100の先端までの間のいずれかの位置を起点として、顎1100の先端よりも下側まで延在する管132により構成してもよい。この場合、気体回収側管部13を構成する管132の排気口133は、例えば、マスク800の下方側の周縁の少なくとも一部を気体供給部2に繋ぐダクト部17内に位置する。
【0235】
<第十一実施形態>
本発明の第十一実施形態における気体案内装置1について以下説明する。本実施形態における気体案内装置1では、圧力測定部9の態様が他の実施形態とは異なる。本実施形態において気体供給部2は、送風機を備えて構成される。なお、送風機とは、広義の意味でのものを指し、当然、圧縮機も含む。
【0236】
そして、他の実施形態では、圧力測定部9は、利用者900の鼻910又は口920の前方における圧力を直接測定し、その測定値の大きさに基づいて、送風機の流量を制御部10で制御していた。本実施形態では、利用者900の鼻910又は口920の前方における圧力を直接測定せず、送風機の消費電力に基づいて、送風機の送風流量を制御部10で制御していく。
【0237】
利用者900の鼻910又は口920の前方における圧力が高い状態にある場合、延在管部5Bの供給孔50を通じて多くの気体を供給できない。結果、送風機の送風流量は低下せざるを得ず、送風機の消費電力は低下する。一方、利用者900の鼻910又は口920の前方における圧力が低い状態にある場合、延在管部5Bの供給孔50を通じて多くの気体を供給できる。結果、送風機の送風流量は増大し、送風機の消費電力は増大する。この原理を用いると、送風機の消費電力が高い場合、利用者900の鼻910又は口920の前方における圧力は高く、送風機の消費電力が低い場合、利用者900の鼻910又は口920の前方における圧力は低いと考えられる。
【0238】
そこで、本実施形態では、送風機の消費電力の値に基づいて、間接的に、利用者900の鼻910又は口920の前方における圧力状態を予測して、送風機の送風流量を制御する。具体的に、利用者900の鼻910又は口920の前方における圧力が高い状態にある場合、制御部10は、送風機の送風流量を減少させ、逆の場合、制御部10は、送風機の送風流量を増大させる。
【0239】
以上のような本実施形態における気体案内装置1は、図30に示すように、送風機の消費電力を測定する消費電力測定部18を有する。そして、制御部10は、第一実施形態におけるものと同様に、呼吸判別部106と、下限閾値判定部107と、上限閾値判定部108と、供給流量制御部109と、を有する(図4参照。)。ただし、本実施形態では、下限閾値判定部107と、上限閾値判定部108と、供給流量制御部109は、消費電力測定部18での測定結果に基づいて、動作する。
【0240】
なお、送風機の消費電力と、利用者900の鼻910又は口920の前方における圧力との関係を測定して求め、送風機の消費電力を上記圧力に換算するための関数、又は換算表を導出しておけば、消費電力測定部18での測定結果を、圧力測定部9での測定結果と見做すことができる。このため、下限閾値判定部107における圧力評価値及び下限閾値S1、上限閾値判定部108における圧力評価値及び上限閾値S2は、それぞれ、第一実施形態において決定された圧力に関する値を送風機の消費電力に換算した消費電力に関する値に読み替えれば良い。
【0241】
つまり、下限閾値判定部107は、消費電力測定部18によって測定された送風機の消費電力を利用して算出された評価値が、下限閾値S1を下回るか否かを判定する。上限閾値判定部108は、消費電力測定部18によって測定された送風機の消費電力を利用して算出された評価値が、上限閾値S2を上回るか否かを判定する。供給流量制御部109は、下限閾値判定部107によって上記評価値が下限閾値S1を下回ると判定された場合に、供給孔50から供給される気体の流量を増大させる。更に供給流量制御部109は、上限閾値判定部108によって上記評価値が上限閾値S2を上回ると判定された場合に、供給孔50から供給される気体の流量を減少させる。ただし、供給流量制御部109は、呼吸判別部106での判別結果を参照することで、呼吸とは関連の無い送風機の消費電力の増減の影響を除去することができる。また、上記評価値、下限閾値S1、及び上限閾値S2は、消費電力に関するものであってもよいし、上記関数、又は上記換算表等を利用して消費電力を圧力に換算したものであってもよい。
【0242】
<第十二実施形態>
本発明の第十二実施形態における気体案内装置1について以下説明する。本実施形態における気体案内装置1は、図31(A),(B)に示すように、他の実施形態における気体案内装置1と異なり、気体供給側管部4を備えておらず、代わりに、気体回収側管部13のみを備えている。つまり、他の実施形態における気体案内装置1が気体を供給する気体供給装置として機能するものであるのに対し、本実施形態における気体案内装置1は、気体回収装置として機能する。
【0243】
本実施形態における気体案内装置1は、第九実施形態における気体案内装置1をベースにして、気体を供給する構成要素を取り除いたものである。本実施形態における気体案内装置1は、配置部6と、気体回収側管部13と、負圧生成部2Aと、を備える。
【0244】
配置部6は、立体フレーム16により構成される。立体フレーム16は、第九実施形態における気体案内装置1で説明したので、説明を省略する。気体回収側管部13は、排気管164により構成される。そして、排気管164は、立体フレーム16により構成される空間165とマスク800の外側の空間とを連通させるような姿勢で立体フレーム16により配置される。つまり、排気管164は、立体フレーム16により排気管164の入口開口(排気孔164A)が利用者900の顔の近傍である空間165内に配置され、出口開口がマスク800の外側の空間に配置される。本実施形態において排気管164は、利用者900の口920よりも下方側を構成する立体フレーム16の下方部を起点として、顎1100の先端よりも下方側まで延在する。そして、排気管164は、負圧生成部2Aに繋がる。
【0245】
負圧生成部2Aは、排気管164の内部を負圧にするものである、本実施形態では、負圧生成部2Aは、筐体210に収容される気体供給部2が兼ねている。なお、筐体210には、第十実施形態の場合と同様に、負圧生成部2Aを兼ねる気体供給部2の他に、気体回収側調整弁部15、フィルタ部8、気体供給側調整弁部3、制御部10が収容される。これにより、立体フレーム16により構成される空間165の空気は、常に、外部に放出される。本実施形態のように、マスク800の内部の気体を積極的に外部に排出しても、立体フレーム16の存在によって、マスク800内の空間が広く確保されるので、利用者に不快感を生じさせないで済む。また、マスク800を介して外気をマスク800内に積極的に取り込むことが出来るので、内部空間を常に涼しい状態に維持できる。
【0246】
<第十二実施形態の変形例>
本実施形態における気体案内装置1の変形例は、図32に示すように、第三実施形態における気体案内装置1をベースにして、気体を供給する構成要素を取り除いたものである。本実施形態における気体案内装置1では、気体回収側管部13の回収側延在管部14Aが利用者900の顔(口の下側から顎の先端の間)に利用者900の顔の幅方向Wに平行な姿勢で配置される。この際、回収側延在管部14Aが有する複数の回収孔130は、利用者900の顔の近傍において、利用者900の顔の幅方向Wに列状に並ぶ。そして、気体回収側管部13の導出管部14Bは、一端が回収側延在管部14Aに繋がり、他端が、負圧生成部2A(気体供給部2が兼ねている)に繋がる。このため、回収側延在管部14A及び導出管部14Bは、内部が負圧になる。これにより、マスク800の内部空間の空気は、常に、外部に放出される。
【0247】
なお、本実施形態及び変形例の気体案内装置1において、負圧生成部2Aを備えていないものも本発明の範囲に含まれる。つまり、排気管164又は導出管部14Bは、必ずしも自身の内部が他の実施形態のように負圧生成部により負圧にされている必要はなく、排気管164又は導出管部14Bのマスク800の外側における開口が外部空間に開放されるように配置されているだけでもよい。この場合、マスク800の内部空間の空気は、排気管164又は導出管部14Bを通じて外部に自然排気される。
【0248】
以上において説明した第一~十二実施形態における気体案内装置1の各構成要素を自由に組み合わせたものも、本発明の範囲に含まれる。
【0249】
尚、本発明の気体案内装置は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0250】
1 気体案内装置
2 気体供給部
2A 負圧生成部
3 気体供給側調整弁部
4 気体供給側管部
5A 導入管部
5B 延在管部
6 配置部
8 フィルタ部
9 圧力測定部
10 制御部
10A 計算機
13 気体回収側管部
14A 回収側延在管部
14B 導出管部
15 気体回収側調整弁部
16 立体フレーム
17 ダクト部
18 消費電力測定部
50 供給孔
60A 通気層
80 吸水部材
81 吸水部材保持部
82 外側隔離部材
106 呼吸判別部
107 下限閾値判定部
108 上限閾値判定部
109 供給流量制御部
110 回収流量制御部
111 回収流量判定部
130 回収孔
131 回収孔群
200 エアカーテン
500 首用気体供給側管部
550 首側供給孔
580 首側吸水部材
800 マスク
805 通気部
810 紐部
819,820 フェイスガード
900 利用者
930 口近傍領域
960 鼻近傍領域
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