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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046139
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】車両用内装装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/04 20060101AFI20220315BHJP
   B60R 7/06 20060101ALI20220315BHJP
   E05D 7/00 20060101ALI20220315BHJP
   E05D 7/085 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
B60R7/04 C
B60R7/04 T
B60R7/06 G
E05D7/00
E05D7/085
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152046
(22)【出願日】2020-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】309018445
【氏名又は名称】明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083091
【弁理士】
【氏名又は名称】田渕 経雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141416
【弁理士】
【氏名又は名称】田渕 智雄
(72)【発明者】
【氏名】西尾 和久
(72)【発明者】
【氏名】古山 陽司
【テーマコード(参考)】
2E030
3D022
【Fターム(参考)】
2E030AB00
2E030BB01
2E030BB07
2E030FA00
2E030FB03
2E030FD00
3D022CA07
3D022CA08
3D022CA16
3D022CB01
3D022CC02
3D022CC16
3D022CC18
3D022CD17
(57)【要約】
【課題】2つのガイド溝と2つのピンを有してドアの回転中心が開閉途中で切り替わる場合であっても、ドアの動きが悪くなることを抑制できる、車両用内装装置の提供。
【解決手段】閉作動時にドア30が軸切り替わり位置30cに達するまでは、第1のガイドピン42が位置する部位(第2の回転中心P2)を中心としてドア30は回転する。ドア30が軸切り替わり位置30cに達した時、当接部45が当接し、その後は当接部45が当接することによって生じる仮想軸位置(第1の回転中心P1)を中心としてドア30が回転する。そして、ドア30が軸切り替わり位置30cに達した後は、第1、第2のガイド溝41,43がいずれも第1の回転中心P1を中心として円弧状に延びており、ドア30に付与される閉操作荷重によるドア回転力を、第1、第2のガイド溝41,43の延び方向と一致させることができる。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに開閉可能に支持されるドアと、
前記ドアが開位置と閉位置との間にある軸切り替わり位置と該軸切り替わり位置より前記閉位置側にあるときには、前記ドアを第1の回転中心を中心として回転させ、前記ドアが前記軸切り替わり位置よりも前記開位置側にあるときには、前記ドアを第2の回転中心を中心として回転させる、回転中心変化機構と、
を有しており、
前記回転中心変化機構は、
前記ベースと前記ドアの一方に設けられる第1のガイド溝と、前記ベースと前記ドアの他方に設けられ前記第1のガイド溝内を移動可能な第1のピンと、
前記ベースと前記ドアの一方に設けられる第2のガイド溝と、前記ベースと前記ドアの他方に設けられ前記第2のガイド溝内を移動可能な第2のピンと、
前記ベースに設けられるベース側当接部と前記ドアに設けられるドア側当接部とからなり、前記ドアが前記軸切り替わり位置と該軸切り替わり位置より前記閉位置側にあるときにのみこれらが互いに接触し合う当接部と、
を有しており、
前記ドアが前記軸切り替わり位置と該軸切り替わり位置より前記閉位置側にあるとき、前記当接部が当接することによって生じる仮想軸位置が前記第1の回転中心となっており、
前記ドアが前記軸切り替わり位置よりも前記開位置側にあるとき、前記第1のピンが位置する部位が前記第2の回転中心となっており、
前記第1のガイド溝は、前記ドアが前記軸切り替わり位置と該軸切り替わり位置より前記閉位置側にあるときに、前記第1の回転中心を中心とする円弧状に延びており、
前記第2のガイド溝は、前記ドアが前記軸切り替わり位置と該軸切り替わり位置より前記閉位置側にあるときに、前記第1の回転中心を中心とする円弧状に延びる第2のガイド溝閉側部と、該第2のガイド溝閉側部に連なっており前記ドアが前記軸切り替わり位置よりも前記開位置側にあるときに、前記第2の回転中心を中心とする円弧状に延びる第2のガイド溝開側部と、を有する、
車両用内装装置。
【請求項2】
前記ドアの前記ベースに対する開閉速度を低減させる制動機構をさらに有しており、
前記制動機構は、前記ベースと前記ドアのうち前記第2のガイド溝が設けられる側に該第2のガイド溝に沿って延びて設けられるラックと、該ラックと噛合するダンパギアを備え前記ベースと前記ドアのうち前記第2のガイド溝が設けられていない側に設けられるダンパと、を有する、請求項1記載の車両用内装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能なドアを有する車両用内装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図12は、ベース2aと、開閉の全領域でベース2aに対して単一の回転中心Paを中心として開閉するドア3aと、を有する車両用内装装置1aを開示している。また、図13は、ベース2bに対するドア3bの回転軌跡を小さくするために(開位置におけるドア3bのベース2bからの突出量を小さくするために)、ドア3bの軌跡を単一の回転中心Pbまわりの回転とは異ならせるギア4bを有する車両用内装装置1bを開示している。
【0003】
しかし、図12に示す装置1aでは、ドア3aが単一の軸まわり(1軸まわり)に回転するため、ドア回転軌跡が大きくなってしまう。図13に示す装置1bでは、ギア4bを有するため、図12に示す場合に比べてドア回転軌跡を小さくすることができる。しかし、ギアを用いてドア回転軌跡を小さくするため、ドア回転軌跡を小さくする度合いを大きくすることが困難である。
【0004】
特開2003-227268号公報は、2つのガイド溝(第1、第2の案内溝)と2つのピン(第1、第2の軸)とを有し、閉作動時にドアが、先ず第2の回転中心まわりに回転し始め、途中で第2の回転中心から第1の回転中心に切り替わり、その後第1の回転中心まわりに回転する、車両用内装装置を開示している。
【0005】
上記公報開示の技術では、ドアの回転中心が途中で切り替わるため、ドアが単一の回転中心まわりに回転する場合(図12)に比べて、ドア回転軌跡を小さくすることができる。また、2つのガイド溝と2つのピンを用いてドア回転軌跡を小さくするため、ギアを用いてドア回転軌跡を小さくする場合(図13)に比べて、ドアの回転軌跡の自由度が高く、ドア回転軌跡を小さくする度合いを大きくすることができる。
【0006】
しかし、上記公報開示の技術には次の問題点がある。
第2の回転中心まわりの回転から第1の回転中心まわりの回転に切り替わった後、ドアの閉操作荷重の伝達(分力)が小さくなりドアの動きが悪くなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-227268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、2つのガイド溝と2つのピンを有してドアの回転中心が開閉途中で切り替わる場合であっても、ドアの動きが悪くなることを抑制できる、車両用内装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) ベースと、
前記ベースに開閉可能に支持されるドアと、
前記ドアが開位置と閉位置との間にある軸切り替わり位置と該軸切り替わり位置より前記閉位置側にあるときには、前記ドアを第1の回転中心を中心として回転させ、前記ドアが前記軸切り替わり位置よりも前記開位置側にあるときには、前記ドアを第2の回転中心を中心として回転させる、回転中心変化機構と、
を有しており、
前記回転中心変化機構は、
前記ベースと前記ドアの一方に設けられる第1のガイド溝と、前記ベースと前記ドアの他方に設けられ前記第1のガイド溝内を移動可能な第1のピンと、
前記ベースと前記ドアの一方に設けられる第2のガイド溝と、前記ベースと前記ドアの他方に設けられ前記第2のガイド溝内を移動可能な第2のピンと、
前記ベースに設けられるベース側当接部と前記ドアに設けられるドア側当接部とからなり、前記ドアが前記軸切り替わり位置と該軸切り替わり位置より前記閉位置側にあるときにのみこれらが互いに接触し合う当接部と、
を有しており、
前記ドアが前記軸切り替わり位置と該軸切り替わり位置より前記閉位置側にあるとき、前記当接部が当接することによって生じる仮想軸位置が前記第1の回転中心となっており、
前記ドアが前記軸切り替わり位置よりも前記開位置側にあるとき、前記第1のピンが位置する部位が前記第2の回転中心となっており、
前記第1のガイド溝は、前記ドアが前記軸切り替わり位置と該軸切り替わり位置より前記閉位置側にあるときに、前記第1の回転中心を中心とする円弧状に延びており、
前記第2のガイド溝は、前記ドアが前記軸切り替わり位置と該軸切り替わり位置より前記閉位置側にあるときに、前記第1の回転中心を中心とする円弧状に延びる第2のガイド溝閉側部と、該第2のガイド溝閉側部に連なっており前記ドアが前記軸切り替わり位置よりも前記開位置側にあるときに、前記第2の回転中心を中心とする円弧状に延びる第2のガイド溝開側部と、を有する、
車両用内装装置。
(2) 前記ドアの前記ベースに対する開閉速度を低減させる制動機構をさらに有しており、
前記制動機構は、前記ベースと前記ドアのうち前記第2のガイド溝が設けられる側に該第2のガイド溝に沿って延びて設けられるラックと、該ラックと噛合するダンパギアを備え前記ベースと前記ドアのうち前記第2のガイド溝が設けられていない側に設けられるダンパと、を有する、(1)記載の車両用内装装置。
【発明の効果】
【0010】
上記(1)の車両用内装装置によれば、つぎの効果を得ることができる。
(a)ドアが開位置と閉位置との間にある軸切り替わり位置と該軸切り替わり位置より閉位置側にあるときには、ドアを第1の回転中心を中心として回転させ、ドアが軸切り替わり位置よりも開位置側にあるときには、ドアを第2の回転中心を中心として回転させる、回転中心変化機構を有する。そのため、閉作動時にドアは、先ず第2の回転中心まわりに回転し始め、軸切り替わり位置に達した時、第2の回転中心から第1の回転中心に切り替わり、その後第1の回転中心まわりに回転する。
また、(b)回転中心変化機構が、第1、第2のガイド溝と第1、第2のピンに加えて、さらに、ベース側当接部とドア側当接部とからなりドアが軸切り替わり位置と該軸切り替わり位置より閉位置側にあるときにのみこれらが互いに接触し合う当接部を有する。(c)ドアが軸切り替わり位置と該軸切り替わり位置より閉位置側にあるとき、当接部が当接することによって生じる仮想軸位置が第1の回転中心となっている。(d)第1のガイド溝が、ドアが軸切り替わり位置と該軸切り替わり位置より閉位置側にあるときに、第1の回転中心を中心とする円弧状に延びており、第2のガイド溝が、ドアが軸切り替わり位置と該軸切り替わり位置より閉位置側にあるときに、第1の回転中心を中心とする円弧状に延びる第2のガイド溝閉側部を有する。
以上(a)~(d)より、閉作動時にドアが軸切り替わり位置に達した時、当接部が当接し、その後は当接部が当接することによって生じる仮想軸位置(第1の回転中心)を中心としてドアが回転する。そして、ドアが軸切り替わり位置に達した後は、第1、第2のガイド溝がいずれも第1の回転中心を中心として円弧状に延びているため、ドアに付与される閉操作荷重によるドア回転力を、第1、第2のガイド溝の延び方向と一致させることができる。よって、閉作動時のドアが軸切り替わり位置に達したとき及びその後において、ドアの閉操作荷重の伝達(分力)が小さくなることを抑制でき、ドアの動きが悪くなることを抑制できる。
【0011】
上記(2)の車両用内装装置によれば、つぎの効果を得ることができる。
制動機構が設けられているため、ドアがベースに対して動く速度を抑えることができ、装置に高級感を付与することができる。
また、制動機構のラックが第2のガイド溝に沿って延びて設けられているため、ドアの回転中心が開閉途中で第1の回転中心と第2の回転中心の一方から他方に切り替わる場合であっても、ドアの開閉の全領域で比較的容易にダンパギアとラックとを常時噛合させることができる。よって、制動機構の設計の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明実施例の車両用内装装置の分解斜視図である。
図2】本発明実施例の車両用内装装置の、ドアの斜視図である。
図3】本発明実施例の車両用内装装置の、制動機構位置での断面図である。
図4図3の部分拡大図である。
図5】本発明実施例の車両用内装装置の、ドアの開閉軌跡を示す断面図である。
図6】本発明実施例の車両用内装装置の、ドアが閉位置から軸切り替わり位置まで移動するときにおける第1のガイド溝及び第1のピン位置での断面図である。なお、ドアが閉位置にあるときを実線で示し、ドアが軸切り替わり位置にあるときを2点鎖線で示す。
図7】本発明実施例の車両用内装装置の、ドアが閉位置から軸切り替わり位置まで移動するときにおける第2のガイド溝及び第2のピン位置での断面図である。なお、ドアが閉位置にあるときを実線で示し、ドアが軸切り替わり位置にあるときを2点鎖線で示す。
図8】本発明実施例の車両用内装装置の、ドアが軸切り替わり位置から開位置まで移動するときにおける第1のガイド溝及び第1のピン位置での断面図である。なお、ドアが開位置にあるときを実線で示し、ドアが軸切り替わり位置にあるときを2点鎖線で示す。
図9】本発明実施例の車両用内装装置の、ドアが軸切り替わり位置から開位置まで移動するときにおける第2のガイド溝及び第2のピン位置での断面図である。なお、ドアが開位置にあるときを実線で示し、ドアが軸切り替わり位置にあるときを2点鎖線で示す。
図10】本発明実施例の車両用内装装置の、閉作動時におけるドアが軸切り替わり位置に達したときにおける、ドア閉操作力の伝達を示す説明図である。
図11】本発明実施例の車両用内装装置の比較例(本発明実施例ではない)を示す図の、閉作動時におけるドアが軸切り替わり位置に達したときにおける、ドア閉操作力の伝達を示す説明図である。
図12】従来の車両用内装装置の、ドアが開閉の全領域でベースに対して単一の回転中心を中心として開閉する場合における、模式断面図である。
図13】従来の車両用内装装置の、ドアの軌跡を単一の回転中心まわりの回転とは異ならせるギアを有する場合における、模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明実施例の車両用内装装置10を説明する。なお、図中INは車室内を示す。
【0014】
本発明実施例の車両用内装装置(以下、単に内装装置または装置ともいう)10は、特に限定されるものではないが、たとえば、車両の内装部材であるインストルメントパネル、コンソールパネル、オーバーヘッドコンソールパネル等に配設される車両用小物入れ装置である。ただし、装置10は、車両用小物入れ装置に限定されるものではなく、車両用カップホルダ装置等であってもよい。
【0015】
装置10は、図1に示すように、ベース20と、ドア30と、回転中心変化機構40と、付勢部材50と、制動機構60と、を有する。
【0016】
ベース20は、車両内装部材に固定されている。ベース20は、収容部21aを有するベース本体21と、ベース本体21に固定して取付けられるカバー22と、を有する。
【0017】
ベース本体21の収容部21aは、図示略の小物類を収容可能なスペースである。収容部21aの開放方向は、車室内に向っていれば、上方であってもよく、水平方向であってもよく、下方であってもよい。
【0018】
カバー22は、ベース本体21と一体に形成されていてもよく、別体に形成されてベース本体21に固定されていてもよい。カバー22は、図3に示すように、ドア30が開位置30bにあるときにおけるドア30の裏側(ドア30の意匠面33側)に設けられており、開位置30bにあるドア30の裏側に落ちた異物(カードやコイン等)をドア30に設けられる掻き出し部34で掻き出すことができるようにするために設けられている。
【0019】
ドア30は、ベース20(ベース本体21)に可動に支持されている。ドア30は、ベース20に対して移動し収容部21aを開閉する。ドア30は閉位置30aにあるとき、収容部21aを閉塞しており、開位置30bにあるとき、収容部21aを開放している。図1に示すように、ドア30は、ドアインナ31と、ドアアウタ32と、を有する。
【0020】
ドアインナ31は、装置幅方向(ドア30の幅方向)の両側部にベース20側に延びるドアアーム31aを有する。ドアアーム31aは、ベース20(ベース本体21)に支持されている。これにより、ドア30は、ベース20に支持される。ドアアウタ32は、意匠部材を構成しており、ドアインナ31と別体に形成されてドアインナ31に固定される。ただし、ドアアウタ32は、ドアインナ31と一体に形成されていてもよい。
【0021】
回転中心変化機構40は、図5に示すように、ドア30が開位置30bと閉位置30aとの間にある軸切り替わり位置30cと該軸切り替わり位置30cより閉位置30a側にあるときには、ドア30を第1の回転中心P1を中心として回転させ、ドア30が軸切り替わり位置30cよりも開位置30b側にあるときには、ドア30を第2の回転中心P2を中心として回転させる機構である。第1の回転中心P1と第2の回転中心P2は、互いに異なる位置にある。第1の回転中心P1は、第2の回転中心P2よりも車室内側にある。
【0022】
回転中心変化機構40は、図6に示すように、ベース20とドア30の一方に設けられる第1のガイド溝41と、ベース20とドア30の他方に設けられ第1のガイド41溝内を移動可能な第1のピン42と、を有する。回転中心変化機構40は、また、図7に示すように、ベース20とドア30の一方に設けられる第2のガイド溝43と、ベース20とドア30の他方に設けられ第2のガイド溝43内を移動可能な第2のピン44と、を有する。図6に戻って、回転中心変化機構40は、さらに、ベース20に設けられるベース側当接部45aとドア30に設けられるドア側当接部45bとからなり、ドア30が軸切り替わり位置30cと該軸切り替わり位置30cより閉位置30a側にあるときにのみこれらが互いに接触し合う当接部45を有する。
【0023】
なお、本発明実施例および図示例では、第1のガイド溝41がドア30に設けられ、第1のピン42がベース20に設けられ、第2のガイド溝43がベース20に設けられ、第2のピン44がドア30に設けられる場合を、例にとって説明する。
【0024】
第1のガイド溝41は、ドアアーム31aの延び方向中間部に設けられている。第1のガイド溝41は、ドア30が軸切り替わり位置30cと該軸切り替わり位置30cより閉位置30a側にあるときに、第1の回転中心P1を中心とする円弧状に延びている。
【0025】
第1のピン42は、ベース本体21と別体に形成されてベース本体21に固定される段付きビスからなる。ただし、第1のピン42は、ベース本体21に固定される単なるビスであってもよく、ベース本体21に一体に形成されておりベース本体21から突出するピン部(ボス部)であってもよい。第1のピン42は、第1のガイド溝41内に常時入り込んでいる。第1のピン42は、第1のガイド溝41に対して相対的に、第1のガイド溝41内を第1のガイド溝41の長手方向に移動可能であるとともに第1のガイド溝41内で回動可能とされている。
【0026】
第2のガイド溝43は、図7に示すように、ベース本体21に設けられている。第2のガイド溝43は、(i)ドア30が軸切り替わり位置30cと該軸切り替わり位置30cより閉位置30b側にあるときに、第1の回転中心P1を中心とする円弧状に延びる第2のガイド溝閉側部43aと、(ii)第2のガイド溝閉側部43aに連なっておりドア30が軸切り替わり位置30cよりも開位置30b側にあるときに、第2の回転中心P2を中心とする円弧状に延びる第2のガイド溝開側部43bと、を有する。
【0027】
第2のピン44は、図2に示すように、ドアアーム31aの延び方向先端部(その近傍を含む)に設けられている。第2のピン44は、ドアアーム31aの延び方向で第1のガイド溝41よりも延び方向先端側に設けられている。第2のピン44は、ドアアーム31aに一体に形成されておりドアアーム31aから突出するピン部(ボス部)からなる。ただし、第2のピン44は、ドアアーム31aと別体に形成されてドアアーム31aに固定される段付きビスまたは単なるビスであってもよい。図7に示すように、第2のピン44は、第2のガイド溝43内に常時入り込んでいる。第2のピン44は、第2のガイド溝43に対して相対的に、第2のガイド溝43内を第2のガイド溝43の長手方向に移動可能であるとともに第2のガイド溝43内で回動可能とされている。
【0028】
図6に示すように、当接部45は、ベース側当接部45aとドア側当接部45bとからなり、ドア30が軸切り替わり位置30cと該軸切り替わり位置30cより閉位置30a側にあるときにのみこれらが互いに接触し合う部分である。すなわち、当接部45(ベース側当接部45aとドア側当接部45b)は、ドア30が軸切り替わり位置30cを含んで軸切り替わり位置30cよりも閉位置30a側にあるときには当接しており、ドア30が軸切り替わり位置30cを含まず軸切り替わり位置30cよりも開位置30b側にあるときには当接しない。
【0029】
図1に示すように、ベース側当接部45aは、ベース本体21の一部からなる。ベース側当接部45aは、収容部21aを構成するベース本体21の側壁の車室側面21bと該車室側面21bに連なる連結面21cとの境部(その近傍を含む)からなる。ドア側当接部45bは、ドアインナ31の一部からなる。ドア側当接部45bは、ドアアーム31aの根元部(その近傍を含む)に設けられる凹部31bを形成する壁面からなる。
【0030】
図6に示すように、ドア30が軸切り替わり位置30cと該軸切り替わり位置30cより閉位置30a側にあるとき、当接部45が当接することによって生じる仮想軸位置が第1の回転中心P1となっている。すなわち、ドア30が軸切り替わり位置30cと該軸切り替わり位置30cより閉位置30a側にあるとき、当接部45が当接することによって生じる仮想軸位置まわりにドア30が回転する。一方、図8に示すように、ドア30が軸切り替わり位置30cよりも開位置30b側にあるとき、第1のピン42が位置する部位が第2の回転中心P2となっている。すなわち、ドア30が軸切り替わり位置30cよりも開位置30b側にあるとき、第1のピン42まわりにドア30が回転する。
【0031】
図1に示すように、付勢部材50は、ドア30を開方向に常時付勢する部材であり、たとえばコイルスプリングからなる。付勢部材50が設けられているため、ドア30は、たとえばハートカムロック71(図2)とロックピン72からなるロック機構70によって閉位置30aにてロック可能とされている。これにより、ドア30が閉位置30aにあるときには、ロック機構70によって閉位置30aを維持でき、ロック解除することで、付勢部材50によって自動で開位置30bまで回転させることができる。なお、ドア30が開位置30bに達したとき、ドア30に設けられる図示略のストッパがベース20に設けられる図示略のストッパ受け部に当接して止まり、開位置30bを超えてそれ以上ベース20に対して回動することが抑制されている。
ただし、ドア30は、付勢部材50によって、ベース20に対して常時閉方向に付勢されるとともに、ロック機構70によって開位置30bにてロック可能とされていてもよく、付勢部材50およびロック機構70の代わりに図示略のターンオーバースプリングを用いて付勢されていてもよく、付勢部材50を設けずに手動で開閉されていてもよい。
【0032】
制動機構60は、ドア30のベース20に対する開閉速度を低減させる機構である。制動機構60が設けられているため、付勢部材50の付勢力でドア30が動く速度を低減させることができる。
【0033】
制動機構60は、ベース20とドア30のうち第2のガイド溝43が設けられる側に第2のガイド溝43に沿って延びて設けられるラック61と、ラック61と噛合するダンパギア62aを備えベース20とドア30のうち第2のガイド溝43が設けられていない側に設けられるダンパ62と、を有する。本発明実施例および図示例では、第2のガイド溝43がベース20に設けられているため、ラック61はベース20に設けられており、ダンパ62はドア30に設けられる。
【0034】
ラック61は、ベース20に一体に形成されている。ラック61は、第2のガイド溝43を構成する第2のガイド溝構成壁21dの外面に一体に形成されている。ダンパ62は、ドアアーム31aに固定して取付けられている。そのため、ダンパ62はベース20に対してドア30と一体的に動くようになっている。すなわち、ダンパ62は、ドア30が軸切り替わり位置30cと該軸切り替わり位置30cよりも閉位置30a側にあるときには、第1の回転中心P1まわりに回転し、ドア30が軸切り替わり位置30cよりも開位置30b側にあるときには、第2の回転中心P2まわりに回転する。
【0035】
ここで、本発明実施例の作動を説明する。
【0036】
(a)ドア30を開けるとき
(a1)ドア30が閉位置30aにあるとき(図6図7
ロック機構70のロックがかかっている。回転中心変化機構40の当接部45は当接している(ベース側当接部45aとドア側当接部45bとが互いに接触(当接)し合っている)(図6)。第1のピン42は第1のガイド溝41の一端部41aまたはその近傍に位置している(図6)。第2のピン44は、第2のガイド溝43の第2のガイド溝閉側部43aに位置している(図7)。
【0037】
(a2)ロック機構70のロックを解除する
ドア30を押し込む等してロック機構70のロックを解除すると、当接部45が当接している(ベース側当接部45aとドア側当接部45bとが互いに接触(当接)し合っている)ため、ドア30が、付勢部材50の付勢力により、開位置30b側に第1の回転中心P1まわりに回転する。回転中心変化機構40の第1のピン42は、第1のガイド溝41内を第1のガイド溝41の一端部41aから他端部41bに向って相対的に移動する(図6)。第2のピン44は、第2のガイド溝43の第2のガイド溝閉側部43a内を第2のガイド溝開側部43bに近づく方向に向かって相対的に移動する。
【0038】
(a3)ドア30が軸切り替わり位置30cを超えたとき(図8図9
ドア30が軸切り替わり位置30cを超えると、当接部45の当接(ベース側当接部45aとドア側当接部45bとの接触(当接))がなくなる。回転中心変化機構40の第1のピン42は、第1のガイド溝41の他端部41bに位置しており、ドア30の回転中心は、第1回転中心P1から第2の回転中心(第1のガイド溝41の他端部41bに位置する第1のピン42)P2に切り替わる(図8)。第2のピン44は、第2のガイド溝43内で、第2のガイド溝閉側部43aから第2のガイド溝開側部43bに移動する(図9)。
【0039】
(a4)ドア30が軸切り替わり位置30cを超えて開位置30bに移動するとき
当接部45の当接は無い。ドア30は、付勢部材50の付勢力により、開位置30b側に第2の回転中心P2(第1のピン42)まわりに回転する(図8)。第1のピン42は、位置は変わらずに、第1のガイド溝41の他端部41bで第1のガイド溝41に対して相対回転のみする(図8)。第2のピン44は、第2のガイド溝43の第2のガイド溝開側部43b内を、第2のガイド溝閉側部43aから離れる方向に移動する(図9)。
【0040】
(a5)ドア30が開位置30bにあるとき
当接部45の当接は無い。ドア30は、ドア30に設けられる図示略のストッパがベース20に設けられる図示略のストッパ受け部に当接して止まっている。第1のピン42は、第1のガイド溝41の他端部41bに位置している(図8)。第2のピン44は、第2のガイド溝43の第2のガイド溝開側部43bに位置している(図9)。
【0041】
(b)ドア30を閉めるとき
(b1)ドア30を開位置30bから閉めるとき(軸切り替わり位置30cに達するまで)
ドア30に閉方向操作力を付与して、ドア30を付勢部材50の付勢力に抗して閉位置30a側に移動させると、当接部45の当接は無いため、ドア30は、閉位置30a側に第2の回転中心P2(第2のピン42)まわりに回転する。第1のピン42は、位置は変わらずに、第1のガイド溝41の他端部41bで第1のガイド溝41に対して相対回転のみする(図8)。第2のピン44は、第2のガイド溝43の第2のガイド溝開側部43b内を、第2のガイド溝閉側部43aに近づく方向に相対的に移動する(図9)。
【0042】
(b2)ドア30が軸切り替わり位置30cに達したとき(図6図7
ドア30が軸切り替わり位置30cに達すると、当接部45が当接し始める(図6)。すなわち、ベース側当接部45aとドア側当接部45bとが互いに接触(当接)し始める。これにより、ドア30の回転中心が、第2の回転中心P2から第1の回転中心P1に切り替わる。第1のピン42は、第1のガイド溝41の他端部41bに位置している(図6)。第2のピン44は、第2のガイド溝43内で、第2のガイド溝開側部43bから第2のガイド溝閉側部43aに移動する(図7)。
【0043】
(b3)ドア30を軸切り替わり位置30cを超えて閉位置30aに移動させるとき
当接部45が当接しているため、ドア30は、閉位置30a側に第1の回転中心P1まわりに回転する(図6)。第1のピン42は、第1のガイド溝41内を第1のガイド溝41の他端部41bから一端部41aに向って相対的に移動する(図6)。第2のピン44は、第2のガイド溝43の第2のガイド溝閉側部43a内を第2のガイド溝開側部43bから離れる方向に向かって相対的に移動する(図7)。
そして、ドア30が閉位置30aに達してロック機構70のロックがかかったとき、上記(a1)となる。
【0044】
つぎに、本発明実施例の効果を説明する。
【0045】
まず、本発明実施例の比較例(本発明ではない)を、図11を参照して、説明する。該比較例では、本発明実施例とは異なり、ドア30の開閉の全領域で当接部45が当接しない場合を示している。その他の構成は、本発明実施例に準じるため、本発明実施例と同一の符号を付す。
【0046】
比較例では、当接部45が当接しないため、閉作動時であってドア30が軸切り替わり位置30cに達した時、ドア30に閉方向に操作力αを加えても、第1、第2のガイド溝41,43と第1、第2のピン42,44による規制だけである。そのため、第1のピン42または第2のピン44支点のトルクになり、ガイド溝内の可動方向の分力成分が小さくなり作動しにくい。
【0047】
詳しく説明する。閉作動時であってドア30が軸切り替わり位置30cに達した時、ドア30に操作力(閉方向荷重)αを加えると、第1の回転中心P1は仮想軸なためトルクの起点にならず、第1、第2のガイド溝41,43と第1、第2のピン42,44による規制だけであるため、第1のピン42位置がトルクの起点になる。このとき、操作力αは、回転力βと移動力γに分解される。回転力βは第1のピン42中心のトルクになるため、回転力β´に伝達されるが、本来動きたい方向(第2のガイド溝43の延び方向で第2のピン44が動くことができる方向)とズレているため、抵抗が発生する。また、移動力γはそのまま第1のピン42位置に伝達されるが、ここでも本来動きたい方向(第1のガイド溝41の延び方向で第1のピン42が動くことができる方向)とズレているため、抵抗が発生する。そのため、ドア30をスムーズに作動させることが困難になる。
【0048】
それに対して、本発明実施例では、図10に示すように、当接部45が設けられており、閉作動時であってドア30が軸切り替わり位置30cに達した時、当接部45が当接する。そのため、ドアが軸切り替わり位置30cと該軸切り替わり位置30cより閉位置30a側にあるとき、当接部45が当接することによって生じる仮想軸位置(第1の回転中心P1)がトルクの起点となり、ドア操作力αは、回転力δと、もう一つの力εに分力される。回転力δは、回転力δ´と回転力δ´´に伝達され、その方向は本来動きたい方向と一致しているため、無駄な抵抗を発生させることなくドア30をスムーズに作動させることができる。なお、もう一つの力εは、当接部45からの反力と相殺され、ドア30の回転力には寄与しない。
【0049】
(A)(a)ドア30が開位置30bと閉位置30aとの間にある軸切り替わり位置30cと該軸切り替わり位置30cより閉位置30a側にあるときには、ドア30を第1の回転中心P1を中心として回転させ、ドア30が軸切り替わり位置30cよりも開位置30b側にあるときには、ドア30を第2の回転中心P2を中心として回転させる、回転中心変化機構40を有する。そのため、閉作動時にドア30は、先ず第2の回転中心P2まわりに回転し始め、軸切り替わり位置30cに達した時、第2の回転中心P2から第1の回転中心P1に切り替わり、その後第1の回転中心P1まわりに回転する。
また、(b)回転中心変化機構40が、第1、第2のガイド溝41,43と第1、第2のピン42,44に加えて、さらに、ベース側当接部45aとドア側当接部45bとからなりドア30が軸切り替わり位置30cと該軸切り替わり位置30cより閉位置30a側にあるときにのみこれらが互いに接触し合う当接部45を有する。(c)ドア30が軸切り替わり位置30cと該軸切り替わり位置30cより閉位置30a側にあるとき、当接部45が当接することによって生じる仮想軸位置が第1の回転中心P1となっている。(d)第1のガイド溝41が、ドア30が軸切り替わり位置30cと該軸切り替わり位置30cより閉位置30a側にあるときに、第1の回転中心P1を中心とする円弧状に延びており、第2のガイド溝43が、ドア30が軸切り替わり位置30cと該軸切り替わり位置30cより閉位置30a側にあるときに、第1の回転中心P1を中心とする円弧状に延びる第2のガイド溝閉側部43aを有する。
以上(a)~(d)より、閉作動時にドア30が軸切り替わり位置30cに達した時、当接部45が当接し、その後は当接部45が当接することによって生じる仮想軸位置(第1の回転中心P1)を中心としてドア30が回転する。そして、ドア30が軸切り替わり位置30cに達した後は、第1、第2のガイド溝41,43がいずれも第1の回転中心P1を中心として円弧状に延びているため、ドア30に付与される閉操作荷重によるドア回転力を、第1、第2のガイド溝41,43の延び方向と一致させることができる。よって、閉作動時のドア30が軸切り替わり位置40cに達したとき及びその後において、ドア30の閉操作荷重の伝達(分力)が小さくなることを抑制でき、ドア30の動きが悪くなることを抑制できる。すなわち、第1のピン42と第1のガイド溝41の壁面とで生じる抵抗力、第2のピン44と第2のガイド溝43の壁面とで生じる抵抗力、の両方の抵抗力が発生することを抑制でき、ドア30をスムーズに作動させることができる。
【0050】
(B)制動機構60が設けられているため、ドア30がベース20に対して動く速度を抑えることができ、装置10に高級感を付与することができる。
また、制動機構60のラック61が第2のガイド溝43に沿って延びて設けられているため、ドア30の回転中心が開閉途中で第1の回転中心P1と第2の回転中心P2の一方から他方に切り替わる場合であっても、ドア30の開閉の全領域で比較的容易にダンパギア62aとラック61とを常時噛合させることができる。よって、制動機構60の設計の容易化を図ることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 車両用内装装置
20 ベース
21 ベース本体
22 カバー
21a 収容部
30 ドア
30a 閉位置
30b 開位置
30c 軸切り替わり位置
31 ドアインナ
31a ドアアーム
31b 凹部
32 ドアアウタ
40 回転中心変化機構
41 第1のガイド溝
41a 第1のガイド溝の一端部
41b 第1のガイド溝の他端部
42 第1のピン
43 第2のガイド溝
43a 第2のガイド溝閉側部
43b 第2のガイド溝開側部
44 第2のピン
45 当接部
45a ベース側当接部
45b ドア側当接部
50 付勢部材
60 制動機構
61 ラック
62 ダンパ
62a ダンパギア
70 ロック機構
71 ハートカムロック
72 ロックピン
P1 第1の回転中心
P2 第2の回転中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13