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  • 特開-放送受信装置及び放送受信プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046163
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】放送受信装置及び放送受信プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/16 20060101AFI20220315BHJP
   H04N 21/438 20110101ALI20220315BHJP
【FI】
H04B1/16 A
H04N21/438
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152076
(22)【出願日】2020-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100183760
【弁理士】
【氏名又は名称】山鹿 宗貴
(72)【発明者】
【氏名】松倉 雄二郎
【テーマコード(参考)】
5C164
5K061
【Fターム(参考)】
5C164FA04
5C164TA04S
5C164UB21P
5C164UB41S
5C164YA21
5K061BB01
5K061BB06
5K061CC18
5K061CC45
5K061CD04
5K061FF16
(57)【要約】
【課題】放送受信装置の電源オン後や選局操作後に発生する無音状態を短く抑えること。
【解決手段】デジタル放送信号と、デジタル放送信号と放送フォーマットが異なるサイマル放送のアナログ放送信号を受信可能な放送受信装置を、デジタル放送信号とアナログ放送信号の一方を所定の出力装置に出力する出力部と、デジタル放送信号を出力部に出力させることが可能になるまでの信号処理が完了したか否かを判定する判定部と、判定部により信号処理が完了したと判定されない場合にアナログ放送信号を出力部に出力させる出力制御部と、を備える構成とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル放送信号と、前記デジタル放送信号と放送フォーマットが異なるサイマル放送のアナログ放送信号を受信可能な放送受信装置において、
前記デジタル放送信号と前記アナログ放送信号の一方を所定の出力装置に出力する出力部と、
前記デジタル放送信号を前記出力部に出力させることが可能になるまでの信号処理が完了したか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記信号処理が完了したと判定されない場合に前記アナログ放送信号を前記出力部に出力させる出力制御部と、
を備える、
放送受信装置。
【請求項2】
前記判定部により前記信号処理が完了したと判定されると、前記出力制御部は、前記デジタル放送信号を前記出力部に出力させる、
請求項1に記載の放送受信装置。
【請求項3】
前記デジタル放送信号を識別する第1の識別情報、及び前記第1の識別情報と一致する又は関連付けられた、前記アナログ放送信号を識別する第2の識別情報を記憶するメモリと、
前記メモリに記憶された第1の識別情報に基づいて前記デジタル放送信号の選局を行う第1の選局部と、
前記メモリに記憶された第2の識別情報に基づいて前記アナログ放送信号の選局を行う第2の選局部と、
を更に備え、
前記判定部は、
前記第1の選局部により選局された前記デジタル放送信号を前記出力部に出力させることが可能になるまでの信号処理が完了したか否かを判定し、
前記出力制御部は、
前記判定部により前記信号処理が完了したと判定されない場合、前記第2の選局部により選局された前記アナログ放送信号を前記出力部に出力させる、
請求項1又は請求項2に記載の放送受信装置。
【請求項4】
デジタル放送信号と、前記デジタル放送信号と放送フォーマットが異なるサイマル放送のアナログ放送信号を受信し、受信した前記デジタル放送信号と前記アナログ放送信号の一方を所定の出力装置に出力する出力部を備える放送受信装置が実行する放送受信プログラムにおいて、
前記デジタル放送信号を前記出力部に出力させることが可能になるまでの信号処理が完了したか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにて前記信号処理が完了したと判定されない場合、前記アナログ放送信号を前記出力部に出力させる出力制御ステップと、
を含む、
放送受信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送受信装置及び放送受信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
DAB(Digital Audio Broadcasting)のアンサンブル信号とFM(Frequency Modulation)のRDS(Radio Data System)の放送信号(以下「RDS信号」と記す。)の双方を受信可能な放送受信装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この種の放送受信装置では、例えばアンサンブル信号の受信信号品質が劣化すると、アンサンブル信号による放送サービス(以下「DABサービス」と記す。)のSID(Service Identifier)及びRDS信号によるサイマル放送(以下「RDSサイマル放送」と記す。)を放送する放送局のPI(Program Identifier)に基づいて同一のサービスを放送するサイマル放送への自動追従が行われる。すなわち、アンサンブル信号の受信信号品質が劣化すると、再生される放送がDABサービスからRDSサイマル放送へ自動的に切り替えられる。
【0003】
前回の電源オン時にDABサービスを再生していた場合、放送受信装置は、電源がオンされると、このDABサービスに対する選局処理を行う。また、DABサービスに対する選局操作が行われると、放送受信装置は、操作により指定されたDABサービスに対する選局処理を行う。選局処理では、アンサンブル信号が復調されて音声信号がデコードされる。この音声信号がスピーカにて再生されることにより、ユーザは、DABサービスを聴取することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-152653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンサンブル信号の復調には時間がかかる。そのため、放送受信装置の電源オン後や選局操作後、DABサービスが暫く再生されず、無音状態が継続するという問題がある。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、放送受信装置の電源オン後や選局操作後に発生する無音状態を短く抑えることができる放送受信装置及び放送受信プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る放送受信装置は、デジタル放送信号と、デジタル放送信号と放送フォーマットが異なるサイマル放送のアナログ放送信号を受信可能な装置であり、デジタル放送信号とアナログ放送信号の一方を所定の出力装置に出力する出力部と、デジタル放送信号を出力部に出力させることが可能になるまでの信号処理が完了したか否かを判定する判定部と、判定部により信号処理が完了したと判定されない場合にアナログ放送信号を出力部に出力させる出力制御部と、を備える。
【0008】
このような構成によれば、例えば放送受信装置の電源オン後や選局操作後に信号処理が完了していないことによってデジタル放送信号を出力できない場合にも、サイマル放送のアナログ放送信号を出力することができるため、放送受信装置の電源オン後や選局操作後に発生する無音状態を短く抑えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、放送受信装置及び放送受信プログラムにおいて、放送受信装置の電源オン後や選局操作後に発生する無音状態を短く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る放送受信システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態においてMPU(Micro Processing Unit)により実行される放送信号出力処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下においては、本発明の一実施形態として、デジタル放送信号であるDABのアンサンブル信号とアナログ放送信号であるRDS信号を受信可能な放送受信装置を備える放送受信システムを例に取り説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る放送受信システム1の構成を示すブロック図である。図1に示されるように、本実施形態に係る放送受信システム1は、放送受信装置10、オーディオアンプ20及びスピーカ30を備える。
【0013】
放送受信装置10は、DABのアンサンブル信号と、アンサンブル信号と放送フォーマットが異なるサイマル放送のRDS信号を受信可能な装置であり、例えば車両に設置されている。なお、放送受信装置10は車載された装置に限らず、例えば、スマートフォン、フィーチャフォン、PHS(Personal Handy phone System)、タブレット端末、ノートPC、PDA(Personal Digital Assistant)、PND(Portable Navigation Device)、携帯ゲーム機等の携帯型端末に備えられるものであってもよい。
【0014】
図1に示されるように、放送受信装置10は、MPU110、HMI(Human Machine Interface)120、DAB信号処理回路130、RDS信号処理回路140、セレクタ150及びフラッシュメモリ160を備える。放送受信装置10(具体的にはセレクタ150)の後段には、オーディオアンプ20及びスピーカ30が接続される。
【0015】
なお、図1では、本実施形態の説明に必要な主たる構成要素を図示しており、例えば放送受信装置10として必須な構成要素である筐体など、一部の構成要素については、その図示を適宜省略する。
【0016】
例えば車両にエンジンが掛けられると、図示省略されたバッテリから放送受信装置10の各回路に電源ラインを通じて電源供給が行われる。MPU110は電源供給後、内部メモリに格納された制御プログラムを読み出してワークエリアにロードし、ロードされた制御プログラムを実行することにより、放送受信装置10全体の制御を行う。
【0017】
HMI120は、ユーザと放送受信装置10とが情報をやり取りするためのインタフェースであり、具体的には、タッチパネルディスプレイ及びその周りに配置されたメカニカルキー、リモートコントローラ等である。MPU110は、HMI120に対する選局操作に従い、DAB信号処理回路130及びRDS信号処理回路140に受信制御信号を出力する。
【0018】
DAB信号処理回路130は、アンサンブル信号の受信処理を行う回路であり、アンテナ131、DABチューナ132、DABデコーダ133及び信号検出部134を備える。
【0019】
アンテナ131は、アンサンブル信号を受信する。DABチューナ132は、MPU110より入力される受信制御信号に従い、アンテナ131にて受信されたアンサンブル信号をRF信号からベースバンド信号に変換して、DABデコーダ133に出力する。
【0020】
DABデコーダ133は、DABチューナ132より入力されるベースバンド信号をOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)復調する。
【0021】
アンサンブル信号は、概略的には、復調の際にフレーム同期に用いられる同期チャンネル、サービス構成情報等が含まれるFIC(Fast Information Channel)、音声サービスやデータサービスが含まれるMSC(Main Service Channel)で構成される。
【0022】
FICは、FIB(Fast Information Block)で構成されており、SID、EID(Ensemble Identifier)、SCIdS(Service Component Identifier within the Service)等の各識別子及び該識別子に関連付けられたラベルデータ(例えば放送サービス名(放送番組名)を示すサービスラベル)を含む。FIBは、FIG(Fast Information Group)及びCRC(Cyclic Redundancy Check)を含む。FIGは、その用途によりType 0からType 7の8種類で分類される。
【0023】
FIGには、サービス・リンキング情報が含まれる。サービス・リンキング情報は、DABの何れのSIDとRDSの何れのPIとがリンクしているかを示す情報を含む。MPU110は、このサービス・リンキング情報により、SIDとPIとが一致する放送に限らず、SIDとPIとが一致しない放送であっても、現在受信しているDABの放送局と同一内容のサービスを放送するRDSの放送局を特定することができる。
【0024】
DABデコーダ133は、OFDM復調によって得たFICをMPU110に送信する。MPU110は、このFICの情報に基づいて、アンサンブル信号に多重化された複数のDABサービスの中から、再生するDABサービスを選択する。
【0025】
DABデコーダ133は、MSCに含まれる音声データ及び表示用データであって、MPU110により選択されたDABサービスに対応するサブチャンネルの音声データ及び表示用データをデコードし、デコードされた音声データ(以下「DAB音声信号」と記す。)をセレクタ150に出力するとともに、デコードされた表示用データをHMI120に出力する。
【0026】
信号検出部134は、ビットエラーレートに基づいて受信信号品質に関する情報(以下「DAB受信信号品質情報」と記す。)を検出する。
【0027】
RDS信号処理回路140は、RDS信号の受信処理を行う回路であり、アンテナ141、RDSチューナ142及び信号検出部143を備える。
【0028】
アンテナ141は、RDS信号を受信する。RDSチューナ142は、MPU110より入力される受信制御信号に従い、アンテナ141にて受信されたRDS信号をFM復調する。FM復調により選局されるRDSサイマル放送は、DABサービスのSIDと同一PIの放送局が放送するRDSサイマル放送(以下「同一PIサイマル放送」と記す。)又はサービス・リンキング情報によってDABサービスのSIDと関連付けられたPIの放送局が放送するRDSサイマル放送(以下「リンクPIサイマル放送」と記す。)である。
【0029】
FM復調により、音声信号(以下「RDS音声信号」と記す。)及び文字情報データが得られる。FM復調によって得られたRDS音声信号、文字情報データは、それぞれ、オーディオアンプ20、HMI120に出力される。
【0030】
信号検出部143は、RDSサイマル放送の受信レベル等に基づいて受信信号品質に関する情報(以下「RDS受信信号品質情報」と記す。)を検出する。
【0031】
MPU110は、セレクタ信号をセレクタ150に出力する。セレクタ150は、MPU110より入力されるセレクタ信号に従い、アンサンブル信号の受信信号品質が劣化した状態にあるとき(例えばアンサンブル信号のビットエラーレートが所定閾値以上のとき)にはRDS音声信号を出力し、アンサンブル信号の受信信号品質が良好又は改善された状態にあるとき(例えばアンサンブル信号のビットエラーレートが所定閾値未満のとき)にはDAB音声信号を出力する。セレクタ150より出力される音声信号は、オーディオアンプ20にて増幅されて、スピーカ30にて再生される。
【0032】
このように、セレクタ150は、デジタル放送信号とアナログ放送信号の一方を所定の出力装置(具体的にはスピーカ30)に出力する出力部として動作する。
【0033】
MPU110は、信号検出部134にて検出されたDAB受信信号品質情報に基づいてアンサンブル信号の受信信号品質をチェックするとともに、信号検出部143にて検出されたRDS受信信号品質情報に基づいてRDS信号の受信信号品質をチェックする。これらの受信信号品質は、放送受信装置10が設置された車両が受信可能エリアから外れたり建物やトンネル等の遮蔽物の影響を受けたりした場合に劣化する。MPU110は、アンサンブル信号の受信信号品質が劣化すると、セレクタ信号をセレクタ150に出力して、再生される放送を、DABサービスと同一内容のサービスを放送するRDSサイマル放送へ切り替える。
【0034】
DABのステーションリストについて説明する。ステーションリストは、周波数チャンネル、アンサンブルラベル、サービスラベル、SID、SCIdS、種別(Primary, Secondary)、ハードリンク・サービス情報、FI、OEサービス等の各情報を関連付けて保持するリストデータである。
【0035】
例えば、MPU110は、DAB信号処理回路130を制御して、DABのアンサンブル信号を放送する全ての周波数チャンネルをシークする。概説すると、MPU110は、DAB信号処理回路130に受信制御信号を出力して、1つの周波数チャンネルの選局を指示する。DAB信号処理回路130では、MPU110より入力される受信制御信号に従って受信処理が行われる。DAB信号処理回路130にてアンサンブル信号が検出されて復調処理が成功すると、ステーションリスト162の作成に必要なサービス構成情報が得られて、MPU110に出力される。MPU110は、DAB信号処理回路130よりサービス構成情報を取得すると、次の周波数チャンネルの選局をDAB信号処理回路130に指示して、次の周波数チャンネルについても同様にサービス構成情報の取得を試みる。MPU110は、一定時間内にDAB信号処理回路130よりサービス構成情報を取得できなかった場合にも、次の周波数チャンネルの選局をDAB信号処理回路130に指示してサービス構成情報の取得を試みる。MPU110は、このシーク処理を、アンサンブル信号を放送する全ての周波数チャンネルについて行う。
【0036】
MPU110は、アンサンブル信号を放送する全ての周波数チャンネルについてサービス構成情報の取得・取得失敗の結果が得られると、取得されたサービス構成情報に基づいてステーションリスト162を作成し、作成したステーションリスト162をフラッシュメモリ160に格納する。
【0037】
ステーションリスト162が保持するサービスラベルは、例えばHMI120のタッチパネルディスプレイ上に表示される。ユーザは、HMI120のタッチパネルディスプレイ上に表示されたステーションリスト162の中から希望するサービスラベル(言い換えるとDABサービス)をタッチ操作によって選択することができる。ステーションリスト162上のDABサービスが選択操作されると、MPU110は、選択されたDABサービスに関連付けられて記憶されたアンサンブル信号の周波数、EID、SID等に基づいてアンサンブル信号を受信し、受信したアンサンブル信号に含まれる選択局のDABサービスのDAB音声信号をスピーカ30にて再生させるとともに、このDABサービスの表示用データをタッチパネルディスプレイ上に表示させる。
【0038】
なお、HMI120のタッチパネルディスプレイ上には、プリセット操作により登録されたサービスラベル(言い換えるとDABサービス)を表示させることもできる。ユーザは、プリセット登録されたDABサービスに対する選択操作を行い、このDABサービスのDAB音声信号をスピーカ30にて再生させるとともに、このDABサービスの表示用データをタッチパネルディスプレイ上に表示させることもできる。
【0039】
フラッシュメモリ160には、RDSサイマル放送のリスト(以下「RDSリスト164」と記す。)も保存される。RDSリスト164は、周波数チャンネル、PI、PS(Program Service)等の各情報を関連付けて保持するリストデータである。MPU110は、ステーションリスト162を作成する場合と同様に、RDS信号を放送する全ての周波数チャンネルについてシーク処理を行って各情報を取得し、RDSリスト164を作成する。
【0040】
このように、フラッシュメモリ160は、デジタル放送信号を識別する第1の識別情報(すなわちSID)、及び第1の識別情報と一致する又は関連付けられた、アナログ放送信号を識別する第2の識別情報(すなわちPI)を記憶するメモリである。
【0041】
フラッシュメモリ160には、放送受信装置10が最後に受信したサービスの情報(DABサービスの場合、少なくとも周波数チャンネル及びSIDを含む情報であり、また、RDSサイマル放送の場合、少なくとも周波数チャンネル及びPIを含む情報であり、以下「ラストワン」と記す。)が保存される。MPU110は、電源がオンされると、フラッシュメモリ160に保存されたラストワンを読み出して、ラストワンが示すサービスを受信するための受信制御信号をDAB信号処理回路130やRDS信号処理回路140に出力する。
【0042】
なお、以下においては、ラストワンがDABサービスである場合の放送受信装置10の動作を説明する。
【0043】
MPU110は、電源がオンされると、ラストワンが示すDABサービスを受信するための受信制御信号をDAB信号処理回路130に出力する。ここで、OFDM復調処理には、数秒程度の時間がかかり、また、アンサンブル信号の受信信号品質によっては数十秒程度の時間がかかる。そのため、電源がオンされてから暫くの間、DABサービスがスピーカ30にて再生されず、無音状態が継続する。
【0044】
また、HMI120に対する選局操作(例えばステーションリスト162からDABサービスを選択する操作やプリセット登録されたDABサービスを選択する操作)を行う場合も、操作により指定されたDABサービスを含むアンサンブル信号のOFDM復調処理に時間がかかるため、選局操作後暫くの間、DABサービスがスピーカ30にて再生されず、無音状態が継続する。この種の無音状態が長く継続すると、ユーザが不満を感じる虞がある。
【0045】
そこで、本実施形態に係る放送受信装置10は、以下に説明する処理を実行することにより、これらの無音状態を短く抑えるように構成されている。
【0046】
図2は、本実施形態においてMPU110により実行される放送信号出力処理のフローチャートである。図2に示される放送信号出力処理は、例えば、放送受信装置10の電源がオンされた時点又はHMI120に対するDABサービスの選局操作が行われた時点で開始される。
【0047】
MPU110は、ラストワンが示すDABサービス又は選局操作により指定されたDABサービスに対する選局処理を開始するとともに(ステップS101)、このDABサービスと同一内容のサービスを放送するRDSサイマル放送に対する選局処理を開始する(ステップS102)。
【0048】
ラストワンが示すDABサービス又は選局操作により指定されたDABサービスを受信するための受信制御信号がMPU110からDAB信号処理回路130に入力されることにより、DABサービスに対する選局処理が開始される。また、ラストワンに含まれるSID又は選局操作により指定されたDABサービスのSIDとPIが一致する同一PIサイマル放送、もしくはSIDとPIが関連付けられたリンクPIサイマル放送を受信するための受信制御信号がMPU110からRDS信号処理回路140に入力されることにより、RDSサイマル放送に対する選局処理が開始される。
【0049】
DAB信号処理回路130は、ラストワンが示すDABサービス又は選局操作により指定されたDABサービスを受信するための受信制御信号が入力されると、アンサンブル信号をRF信号からベースバンド信号に変換し、変換によって得たベースバンド信号をOFDM復調し、OFDM復調によって得たMSCから、当該DABサービスに対応するサブチャンネルのDAB音声信号をデコードする。すなわち、DAB信号処理回路130は、フラッシュメモリ160に記憶された第1の識別情報(具体的には、ラストワンに含まれるSID又は選局操作により指定されたDABサービスのSID)に基づいてデジタル放送信号の選局を行う第1の選局部として動作する。
【0050】
RDS信号処理回路140は、同一PIサイマル放送又はリンクPIサイマル放送を受信するための受信制御信号が入力されると、RDS信号をFM復調して、RDS音声信号を得る。すなわち、RDS信号処理回路140は、フラッシュメモリ160に記憶された第2の識別情報(具体的には、RDSリスト164に含まれるPI)に基づいてアナログ放送信号の選局を行う第2の選局部として動作する。
【0051】
RDSサイマル放送を放送する放送局は、1局だけ存在する場合(例えばSIDと一致するPIの放送局が1局だけ存在する場合や、サービス・リンキング情報により関連付けられたPIの放送局が1局だけ存在する場合など)に限らず、複数存在する場合がある。RDSサイマル放送を放送する放送局が複数存在する場合、RDS信号処理回路140は、受信信号品質が一定レベル以上のRDS信号を検出するまで、所定の優先順位(例えば、サービス・リンキング情報により関連付けられたPIの放送局よりもSIDと一致するPIの放送局を優先するなど)に従い、各放送局に対する選局処理を繰り返す。
【0052】
MPU110は、DAB音声信号をセレクタ150に出力させることが可能になるまでの信号処理が完了したか否かを判定する(ステップS103)。具体的には、MPU110は、DAB信号処理回路130にて一連の処理(RF信号からベースバンド信号への変換、ベースバンド信号のOFDM復調及びサブチャンネルの音声データのデコード)が完了し、ラストワンが示すDABサービス又は選局操作により指定されたDABサービスに対応するサブチャンネルのDAB音声信号がDAB信号処理回路130からセレクタ150に入力されたか否かを判定する。
【0053】
このように、MPU110は、デジタル放送信号を出力部に出力させることが可能になるまでの信号処理が完了したか否かを判定する判定部として動作する。
【0054】
DAB音声信号をセレクタ150に出力させることが可能になるまでの信号処理が完了した(言い換えると、上記の一連の処理が完了してDAB音声信号がセレクタ150に入力された)場合(ステップS103:YES)、MPU110は、DAB音声信号を出力させるためのセレクタ信号をセレクタ150に出力する(ステップS104)。これにより、DAB音声信号がセレクタ150より出力されてオーディオアンプ20にて増幅され、スピーカ30にて再生される。
【0055】
但し、ベースバンド信号のOFDM復調処理に時間がかかることから、少なくとも数秒の間、ステップS103はNO判定となる。DAB音声信号をセレクタ150に出力させることが可能になるまでの信号処理が完了しない限り、DAB音声信号を再生させることができないため、無音状態が継続してしまう。
【0056】
そこで、DAB音声信号をセレクタ150に出力させることが可能になるまでの信号処理が完了していない(言い換えると、DAB音声信号がセレクタ150に入力されていない)場合(ステップS103:NO)、MPU110は、RDS信号に対する選局処理が完了して、RDS音声信号がRDS信号処理回路140からセレクタ150に入力されたか否かを判定する(ステップS105)。RDS音声信号がセレクタ150に入力されていない場合(ステップS105:NO)、MPU110は、ステップS103の処理に戻る。
【0057】
なお、アンサンブル信号の受信レベルがDAB音声信号を再生できる最低限のレベルの場合、受信環境が僅かでも悪化すると、DAB音声信号を再生できなくなってしまう。そのため、アンサンブル信号の受信レベルが上記の最低限のレベルに所定のマージンを加えたレベルに達していなければ、MPU110は、上記の信号処理が完了した場合であっても(ステップS103:YES)、処理をステップS104でなくステップS105に進めてもよい。
【0058】
RDS音声信号がセレクタ150に入力された場合(ステップS105:YES)、MPU110は、RDS音声信号を出力させるためのセレクタ信号をセレクタ150に出力する(ステップS106)。これにより、RDS音声信号がセレクタ150より出力されてオーディオアンプ20にて増幅され、スピーカ30にて再生される。
【0059】
このように、MPU110は、判定部により、デジタル放送信号を出力部に出力させることが可能になるまでの信号処理が完了したと判定されない場合、アナログ放送信号を出力部に出力させる出力制御部として動作する。
【0060】
本実施形態では、電源オン後又は選局操作を行ってからスピーカ30にて再生されるまでに時間のかかるDABサービスに先立ってRDSサイマル放送がスピーカ30にて再生される。そのため、OFDM復調処理に時間がかかることに起因する無音状態の発生が短く抑えられる。
【0061】
MPU110は、DAB音声信号がセレクタ150に入力されるまで(ステップS107:YES)、DAB音声信号をセレクタ150に出力させることが可能になるまでの信号処理が完了したか否かを繰り返し判定する(ステップS107)。
【0062】
DAB音声信号がセレクタ150に入力されると(ステップS107:YES)、MPU110は、DAB音声信号を出力させるためのセレクタ信号をセレクタ150に出力する(ステップS104)。これにより、DAB音声信号がセレクタ150より出力されてオーディオアンプ20にて増幅され、スピーカ30にて再生される。
【0063】
なお、セレクタ150には、DAB音声信号とRDS音声信号との相互相関関数を演算する相関器及びタイミングを同期させる遅延量可変のバッファが備えられる。セレクタ150は、相関器にて演算される相互相関関数に基づいてRDS音声信号に付与する遅延量を演算し、演算された遅延量をバッファに設定する。これにより、DAB音声信号とRDS音声信号の出力タイミングが同期する。そのため、ステップS104にてDAB音声信号を出力させるためのセレクタ信号がセレクタ150に入力されると、スピーカ30にて再生される音声が、RDSサイマル放送の音声からDABサービスの音声にシームレスに切り替わる。これにより、音声の切り替わりの際の、聴感上の違和感が低減される。この違和感を更に低減するため、音声の切り替わりの際にクロスフェードを併用してもよい。
【0064】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施例等又は自明な実施例等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 :放送受信システム
10 :放送受信装置
20 :オーディオアンプ
30 :スピーカ
110 :MPU
120 :HMI
130 :DAB信号処理回路
131 :アンテナ
132 :DABチューナ
133 :DABデコーダ
134 :信号検出部
140 :RDS信号処理回路
141 :アンテナ
142 :RDSチューナ
143 :信号検出部
150 :セレクタ
160 :フラッシュメモリ
162 :ステーションリスト
164 :RDSリスト
図1
図2