(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046164
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】レンズ駆動モジュール、撮像モジュール、電子機器及びレンズユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20220315BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20220315BHJP
G03B 11/00 20210101ALI20220315BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20220315BHJP
G03B 5/00 20210101ALN20220315BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G03B17/02
G03B11/00
H04N5/225 100
H04N5/225 700
G03B5/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152077
(22)【出願日】2020-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(72)【発明者】
【氏名】木村 勝治
(72)【発明者】
【氏名】國光 孝行
(72)【発明者】
【氏名】今吉 孝平
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】山本 勲
(72)【発明者】
【氏名】岡野 英暁
(72)【発明者】
【氏名】廣野 大輔
【テーマコード(参考)】
2H044
2H083
2H100
2K005
5C122
【Fターム(参考)】
2H044BE02
2H044BE07
2H044BE10
2H083AA04
2H083AA26
2H083AA32
2H100CC07
2K005CA14
2K005CA23
2K005CA53
5C122EA41
5C122EA52
5C122EA55
5C122GE05
5C122GE11
5C122HA75
5C122HA82
5C122HB06
(57)【要約】
【課題】簡素な構成を有し消費電力を抑えるのに有利なレンズ駆動モジュール、撮像モジュール、電子機器及びレンズユニットを提供する。
【解決手段】レンズ駆動モジュールは、複数のレンズと当該複数のレンズのうち隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられ強磁性体を含むスペーサーとを具備するレンズユニットと、通電に応じてレンズユニットに電磁力を作用させるレンズアクチュエータと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズと、前記複数のレンズのうち隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられ強磁性体を含むスペーサーと、を具備するレンズユニットと、
通電に応じて前記レンズユニットに電磁力を作用させるレンズアクチュエータと、を備えるレンズ駆動モジュール。
【請求項2】
前記レンズユニットは、隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられるスペーサーを複数具備し、
前記レンズユニットが具備するすべてのスペーサーが、強磁性体を含む請求項1に記載のレンズ駆動モジュール。
【請求項3】
前記レンズユニットは、隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられるスペーサーを複数具備し、
前記複数のスペーサーは、前記強磁性体を含むスペーサーと、非強磁性体を含むスペーサーと、を含む請求項1に記載のレンズ駆動モジュール。
【請求項4】
前記レンズアクチュエータは、
前記レンズユニットと一体的に設けられ、通電可能に設けられるコイルと、
前記コイルに磁場を与える磁石と、を含む請求項1に記載のレンズ駆動モジュール。
【請求項5】
前記コイルは、前記強磁性体を含むスペーサーと前記磁石との間に位置する請求項4に記載のレンズ駆動モジュール。
【請求項6】
前記強磁性体を含むスペーサー、前記コイル及び前記磁石は、前記複数のレンズの光軸と直角を成す方向に延びる同一直線上に位置する請求項4に記載のレンズ駆動モジュール。
【請求項7】
複数のレンズと、前記複数のレンズのうち隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられ強磁性体を含むスペーサーと、を具備するレンズユニットと、
前記複数のレンズを介して入射した光の光電変換を行う撮像素子と、
通電に応じて前記レンズユニットに電磁力を作用させて、前記レンズユニットと前記撮像素子との間の距離を調整するレンズアクチュエータと、を備える撮像モジュール。
【請求項8】
前記撮像素子は、フリップチップ構造を有する請求項7に記載の撮像モジュール。
【請求項9】
前記撮像素子は、CSP構造を有する請求項7に記載の撮像モジュール。
【請求項10】
前記レンズユニットと前記撮像素子との間に位置し、前記レンズユニットが具備する前記複数のレンズとは別体として設けられるレンズを備える請求項7に記載の撮像モジュール。
【請求項11】
赤外線カットフィルタを備える請求項7に記載の撮像モジュール。
【請求項12】
複数のレンズと、前記複数のレンズのうち隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられ強磁性体を含むスペーサーと、を具備するレンズユニットと、
前記複数のレンズを介して入射した光の光電変換を行う撮像素子と、
通電に応じて前記レンズユニットに電磁力を作用させて、前記レンズユニットと前記撮像素子との間の距離を調整するレンズアクチュエータと、
前記撮像素子からの電気信号を受信する回路基体と、を具備する電子機器。
【請求項13】
複数のレンズと、
前記複数のレンズのうち隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられ強磁性体を含むスペーサーと、を備えるレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レンズ駆動モジュール、撮像モジュール、電子機器及びレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像装置の高画素化、大口径化、高性能化及び小型化が進んでいる。撮像装置の高画素化及び高性能化に伴い、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサなどの固体撮像素子の消費電力は増大傾向にある。また撮像装置の大口径化に伴ってレンズが大きく且つ重くなっているので、焦点調節等のためにレンズを移動させるアクチュエータの消費電力も増大傾向にある。
【0003】
このような消費電力の増大傾向を背景に、装置全体として電力消費量を低減させる必要がある。例えばレンズを移動させるアクチュエータにおける消費電力を低減させるため、磁界を制御しつつレンズの移動駆動を行う装置が提案されている。
【0004】
特許文献1の
図15に示す撮像モジュールでは、レンズ積層体の外周に磁性層が設けられている。電磁コイルにより発生される磁界と、磁性層及び固定側レンズ駆動機構の位置関係とに応じた電磁駆動力が磁性層に作用し、レンズ積層体が光軸方向に移動する。
【0005】
特許文献2が開示するレンズ駆動装置では、マグネットの外側にL字状のヨークを配置することで、レンズ筺体の外側への磁力の漏れを防ぎ、マグネットの磁束をヨークに引き込んでアクチュエータの推力の低下が抑制されている。
【0006】
特許文献3が開示するレンズ駆動装置では、移動体及び固定体のうちの一方に第1駆動コイル及び第2駆動コイルが設けられ、他方に駆動マグネットが設けられている。レンズを具備する移動体は、駆動マグネットと第1駆動コイル及び第2駆動コイルとの間の磁気吸引力及び磁気反発力によって、光軸方向に移動させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-106239号公報
【特許文献2】特開2010-85494号公報
【特許文献3】特開2005-37865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の撮像モジュールでは、通常の撮像モジュールでは不要な磁性層をレンズ積層体の外周に設ける必要があるため、装置構成が複雑になり、製造の手間も増える。また特許文献1の撮像モジュールではレンズ同士の接合に強磁性の樹脂が用いられるが、そのような樹脂の塗布には精密なコントロールが要求されるため、生産性を向上させることが難しく、撮像モジュールを安価に作製することが難しい。また近年の移動端末に搭載される撮像モジュールでは、レンズホルダーを使ってレンズ同士の位置合わせ及び固定が行われることが多い。そのようなレンズホルダーを用いる場合、樹脂を用いたレンズ同士の接合がそもそも不要である。また特許文献1の撮像モジュールは、スペーサーを有していないので、フレア光などの迷光を除去することができず、光学性能に劣る。
【0009】
特許文献2のレンズ駆動装置で用いられる特有の形状を有するヨークは高価であり、そのようなヨークの設置は構造の複雑化を招く。また近年広く採用されているムービングマグネット方式の手振れ補正機構を特許文献2のレンズ駆動装置に応用する場合、ヨークの重量のために、手振れ補正に要する電力消費量が大きい。そのため、レンズ駆動装置における発熱が顕著になりやすく、バッテリー駆動の際には駆動時間が短くなる懸念がある。
【0010】
特許文献3のレンズ駆動装置では、レンズを具備する移動体を移動させる際に、重量のある駆動マグネットを移動させる必要がある。そのため、ムービングマグネット方式の手振れ補正機構を特許文献3のレンズ駆動装置に応用する場合、消費電力量が大きく、レンズ駆動装置における発熱及びバッテリー駆動の際の駆動時間短縮の懸念がある。
【0011】
そこで本開示は、簡素な構成を有し消費電力を抑えるのに有利なレンズ駆動モジュール、撮像モジュール、電子機器及びレンズユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様は、複数のレンズと、複数のレンズのうち隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられ強磁性体を含むスペーサーと、を具備するレンズユニットと、通電に応じてレンズユニットに電磁力を作用させるレンズアクチュエータと、を備えるレンズ駆動モジュールに関する。
【0013】
レンズユニットは、隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられるスペーサーを複数具備し、レンズユニットが具備するすべてのスペーサーが、強磁性体を含んでもよい。
【0014】
レンズユニットは、隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられるスペーサーを複数具備し、複数のスペーサーは、強磁性体を含むスペーサーと、非強磁性体を含むスペーサーと、を含んでもよい。
【0015】
レンズアクチュエータは、レンズユニットと一体的に設けられ、通電可能に設けられるコイルと、コイルに磁場を与える磁石と、を含んでもよい。
【0016】
コイルは、強磁性体を含むスペーサーと磁石との間に位置してもよい。
【0017】
強磁性体を含むスペーサー、コイル及び磁石は、複数のレンズの光軸と直角を成す方向に延びる同一直線上に位置してもよい。
【0018】
本開示の他の態様は、複数のレンズと、複数のレンズのうち隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられ強磁性体を含むスペーサーと、を具備するレンズユニットと、複数のレンズを介して入射した光の光電変換を行う撮像素子と、通電に応じてレンズユニットに電磁力を作用させて、レンズユニットと撮像素子との間の距離を調整するレンズアクチュエータと、を備える撮像モジュールに関する。
【0019】
撮像素子は、フリップチップ構造を有してもよい。
【0020】
撮像素子は、CSP構造を有してもよい。
【0021】
レンズユニットと撮像素子との間に位置し、レンズユニットが具備する複数のレンズとは別体として設けられるレンズを備えてもよい。
【0022】
赤外線カットフィルタを備えてもよい。
【0023】
本開示の他の態様は、複数のレンズと、複数のレンズのうち隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられ強磁性体を含むスペーサーと、を具備するレンズユニットと、複数のレンズを介して入射した光の光電変換を行う撮像素子と、通電に応じてレンズユニットに電磁力を作用させて、レンズユニットと撮像素子との間の距離を調整するレンズアクチュエータと、撮像素子からの電気信号を受信する回路基体と、を具備する電子機器に関する。
【0024】
本開示の他の態様は、複数のレンズと、複数のレンズのうち隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられ強磁性体を含むスペーサーと、を備えるレンズユニットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、レンズ駆動モジュールの一例の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、レンズ駆動モジュールの他の例の概略構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すレンズ駆動モジュールにおけるレンズユニットの位置及び推力比率の関係の検証結果の一例を示すグラフである。
【
図4】
図4は、電子機器(撮像装置)の一例の概略構成を示す図である。
【
図5】
図5は、電子機器(撮像装置)の他の例の概略構成を示す図である。
【
図6】
図6は、電子機器(撮像装置)の他の例の概略構成を示す図である。
【
図7】
図7は、電子機器(撮像装置)の他の例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[レンズ駆動モジュール]
図1は、レンズ駆動モジュール11の一例の概略構成を示す断面図である。
【0027】
レンズ駆動モジュール11は、複数のレンズ20を具備するレンズユニット10と、通電に応じてレンズユニット10に電磁力を作用させるレンズアクチュエータ24とを備える。
【0028】
レンズユニット10が具備する複数のレンズ20は、光軸Axが延びる方向(以下「光軸方向」と称する)に並べられている。
図1に示すレンズユニット10は4枚のレンズ20を具備するが、レンズ20の具体的な数は限定されない。
【0029】
各レンズ20は、光軸Ax上に位置付けられ光線が透過するレンズ中央部と、当該レンズ中央部から外側に延在するレンズ周辺部とを有する。各レンズ20のレンズ中央部は被写体からの光が通過する。各レンズ20のレンズ周辺部(例えばレンズ側面及び/又は後述の強磁性スペーサー21aが接する表面)には、迷光を遮断する遮光膜(図示省略)が設けられていてもよい。
【0030】
光軸方向に隣り合って位置する2つのレンズ20間(特にレンズ周辺部間)には、強磁性体を含むスペーサー(以下「強磁性スペーサー」と称する)21aが設けられている。
図1に示す例では、レンズユニット10が具備する複数のスペーサーのすべてが、強磁性スペーサー21aである。
【0031】
各強磁性スペーサー21aは、後述のように磁束を引き込むヨークとしての役割を果たす。したがって各強磁性スペーサー21aは、全体として強磁性を示せばよく、全体が強磁性体により構成されていてもよいし、部分的に強磁性体を含んでいてもよい。各強磁性スペーサー21aに含まれる強磁性体の材料及び形態は限定されない。例えば軟磁性材料、硬磁性材料及び他の磁性材料によって、各強磁性スペーサー21aに含まれる強磁性体が構成されてもよい。典型的には、各強磁性スペーサー21aは、室温(例えば1~30℃)で強磁性を示すフェライト、鉄、コバルト或いはニッケルなどに代表される物質を、部分的に又は全体的に含みうる。
【0032】
各強磁性スペーサー21aは、隣り合うレンズ間の間隔を定める接合部として働く。
図1に示す各強磁性スペーサー21aは黒色を有し、レンズにおける乱反射などに起因するフレア光等の迷光を遮断して取り除く遮光性を有する。
【0033】
レンズユニット10が具備する複数のレンズ20及び複数の強磁性スペーサー21aは、ホルダー22によって一体的に支持されている。ホルダー22は、ポリカーボネート等のプラスチック材料により構成可能であり、黒色を有し、遮光性を有する。
【0034】
図1に示すホルダー22は、貫通孔を有する筒状の形状を有する。複数のレンズ20及び複数の強磁性スペーサー21aは、ホルダー22の貫通孔において層状に配置されて固定的に支持される。ホルダー22における複数のレンズ20及び複数の強磁性スペーサー21aの支持態様は限定されない。
図1に示す例では、ホルダー22が有する一方のレンズ支持部22a及び他方のレンズ支持部(図示省略)が、複数のレンズ20及び複数の強磁性スペーサー21aを光軸方向に挟んで支持する。このようにしてホルダー22は、スペーサー(本例では強磁性スペーサー21a)と協働して、複数のレンズ20及び複数の強磁性スペーサー21aを位置合わせしつつ固定的に支持する。
【0035】
レンズアクチュエータ24は、ボイスコイルモータ駆動方式のアクチュエータであり、レンズ駆動モジュール11と一体的に設けられる第1コイル25と、第1コイル25に磁場を与える磁石(すなわち永久磁石)26とを含む。
【0036】
図1に示す例では、ホルダー22の外周に第1コイル25が固定的に巻き付けられており、第1コイル25はレンズユニット10とともに光軸方向へ移動する。第1コイル25よりも光軸Axから離れた位置には、複数の磁石26が光軸Axを中心に等角度間隔で設けられている。各磁石26は、第1コイル25から離れた位置で第1コイル25と対向し、第1コイル25に磁場をもたらす。なお
図1に示す「N」は各磁石26のN極側を示し、「S」は各磁石26のS極側を示す。
【0037】
レンズユニット10の光軸方向位置にかかわらず、第1コイル25は、少なくとも一部が強磁性スペーサー21aと磁石26との間に位置する。すなわちレンズユニット10の光軸方向位置にかかわらず、少なくとも1つ以上の強磁性スペーサー21a、第1コイル25及び磁石26は、光軸Axと直角を成す方向に延びる同一直線上に位置する。
【0038】
上述の構成を有するレンズ駆動モジュール11において、レンズアクチュエータ24は、レンズユニット10を光軸方向に移動させて、レンズユニット10(すなわち複数のレンズ20)の焦点位置を調整する。フレミングの左手の法則の下、第1コイル25に流す電流の向き及び大きさを制御することで、第1コイル25に作用する電磁気力の大きさ及び向きを調整し、ひいてはレンズユニット10に作用する推力の大きさ及び向きを調整することができる。このように第1コイル25の通電に応じて第1コイル25に作用する電磁気力(ローレンツ力)を利用し、レンズユニット10を光軸Ax上の所望位置に配置して、焦点位置を調整することができる。
【0039】
なおレンズユニット10は、図示しない支持ユニットによって、光軸方向に移動可能に支持されている。当該支持ユニットは、光軸方向に働く電磁気力が第1コイル25に作用しない間は、レンズユニット10を基準位置に位置付けつつ支持する。一方、光軸方向に働く電磁気力が第1コイル25に作用する場合、支持ユニットは、レンズユニット10の光軸方向への移動を許容しつつレンズユニット10を支持する。レンズユニット10は、第1コイル25を介してもたらされる光軸方向に働く電磁気力と、支持ユニットによってもたらされる支持力とが釣り合う位置に配置される。このような支持ユニットは任意の構成によって実現可能である。典型的には、支持ユニットはばね等の弾性要素を具備し、当該弾性要素によりもたらされる弾性力を、レンズユニット10の支持に利用することができる。
【0040】
本実施形態のレンズ駆動モジュール11では、強磁性スペーサー21aによって、各磁石26によってもたらされる磁場を、有効的に第1コイル25に作用させることができる。強磁性スペーサー21aは、各磁石26によってもたらされる磁場を積極的に引き込み、各磁石26から強磁性スペーサー21aに向かう磁場の強さ(磁束密度)を増大させる。そのため、強磁性スペーサー21aと各磁石26との間に位置する第1コイル25に作用する磁場の強さも増大する。その結果、第1コイル25に流す電流量が小さくても、第1コイル25には大きな電磁気力が作用することになる。
【0041】
なお、強磁性スペーサー21aが大きくなるほど(すなわち強磁性スペーサー21aが占める範囲が大きくなるほど)、各磁石26から強磁性スペーサー21aに向かう磁場の強さが増大する傾向がある。一方、望遠用(テレ用)のレンズユニットは、一般に、レンズ間の間隔が大きくなる傾向があり、レンズ間に設けられるスペーサーも大きくなる傾向がある。したがって上述の本実施形態のレンズユニット10が望遠用の場合には、特に大きな強磁性スペーサー21aを用いて、第1コイル25に作用させる磁場の強さを効果的に増大させうる。
【0042】
このように本実施形態のレンズユニット10及びレンズ駆動モジュール11によれば、第1コイル25及びレンズユニット10の移動に要する電力量を抑えることができる。このようなレンズユニット10の低電力駆動によって、レンズ駆動モジュール11における発熱を抑えることができ、バッテリー駆動の際の駆動時間を長期化することが可能である。
【0043】
また本実施形態のレンズユニット10は、既存のレンズユニットが有する非強磁性スペーサーを強磁性スペーサー21aに置き換えるだけで実現可能であり、構造の複雑化(特にレンズ20よりも外側の構造の複雑化)を回避することができる。そのため本実施形態のレンズユニット10及びレンズ駆動モジュール11は、従来と同様の簡素な構成を維持しつつ、消費電力を従来よりも抑えることができる。
【0044】
またレンズユニット10の移動に要する電力消費量が低減することで、使用可能なレンズ20の大きさ及び重さの制限を緩和することができる。レンズユニット10の移動のために使用可能な電流量はバッテリー能力等に応じて制限され、そのような制限された電流量の許容範囲内で、レンズ20の大きさ及び重さを適宜選定する必要がある。本実施形態によれば、上述のようにレンズユニット10の低電力駆動が可能であるため、従来よりも大きくて重い高性能なレンズ20を使用することが可能である。
【0045】
図2は、レンズ駆動モジュール11の他の例の概略構成を示す断面図である。
【0046】
図2に示すレンズユニット10は、
図1に示すレンズユニット10と同様に複数のスペーサーを具備するが、当該複数のスペーサーは、強磁性スペーサー21aだけではなく、非強磁性体を含むスペーサー(以下「非強磁性スペーサー」と称する)21bも含む。
【0047】
非強磁性スペーサー21bは、全体として殆ど磁気を帯びておらず、磁場が作用しても磁場の方向に殆ど磁化しない常磁性体によって構成可能である。非強磁性スペーサー21bを構成する材料は限定されない。例えば、非強磁性スペーサー21bは、アルミニウムやプラスチック系物質に代表される合成樹脂などの非磁性物質によって構成可能である。
【0048】
図2に示すレンズユニット10では、光軸方向の両端側に位置する2つのスペーサーが非強磁性スペーサー21bであり、中央に位置する1つのスペーサーが強磁性スペーサー21aである。ただし、強磁性スペーサー21a及び非強磁性スペーサー21bの位置及び数は限定されない。例えば、第1コイル25に大きな磁場を作用させる観点からは、最も大きなスペーサーを強磁性スペーサー21aによって構成してもよい。またレンズユニット10の光軸方向位置にかかわらず、常に、磁石26及び第1コイル25とともに、光軸Axと直角を成す方向に延びる同一直線上に位置するスペーサーを、強磁性スペーサー21aによって構成してもよい。
【0049】
図2に示すレンズユニット10及びレンズ駆動モジュール11によれば、強磁性スペーサー21aの使用に伴うコストの増大を抑えつつ、レンズユニット10の低電力駆動が可能である。
【0050】
本件発明者は、
図2に示すレンズ駆動モジュール11に基づいてシミュレーションを行い、レンズユニット10の位置及び推力比率の関係を検証した。
【0051】
図3は、
図2に示すレンズ駆動モジュール11におけるレンズユニット10の位置及び推力比率の関係の検証結果の一例を示すグラフである。
【0052】
図3に示す「レンズユニット位置」は、レンズユニット10及び第1コイル25の光軸方向位置を示し、基準位置が「0μm」で表されている。
図3に示す「推力比率」は、すべてのスペーサーが非強磁性スペーサーであるレンズユニット(以下「基準レンズユニット」と称する)の第1コイルに作用する電磁気力の大きさを基準として、第1コイル25に作用する電磁気力の大きさの比率を示す。すなわち
図3の「推力比率」は、「推力比率=
図2のレンズ駆動モジュール11の第1コイル25に作用する電磁気力/基準レンズユニットの第1コイルに作用する電磁気力」によって表すことができる。なお
図3に示す検証において、
図2のレンズユニット10と基準レンズユニットとの間において、スペーサー以外の特性は同じにした。例えば推力比率を得るための「第1コイルに作用する電磁気力」の導出において、第1コイルに流す電流の大きさは、
図2のレンズユニット10と基準レンズユニットとの間で同じにした。
【0053】
図3において、
図2のレンズ駆動モジュール11の強磁性スペーサー21aとして、強磁性特性を持つ一般的なフェライト材料(電気伝導率=1S/m、比透磁率=640、及び比誘電率=1)から成るスペーサーを用いた。
【0054】
図3において、
図2のレンズ駆動モジュール11の「推力比率」は、レンズユニット10の光軸方向位置にかかわらず、「1.00」よりも大きな値を示している。したがって強磁性スペーサー21aを具備するレンズユニット10によれば、強磁性スペーサー21aを具備しない基準レンズユニットよりも、大きな電磁気力を得られることが分かる。
図2に示すレンズ駆動モジュール11によれば、製造誤差等に起因して、磁石26に対するレンズユニット10及び第1コイル25の相対位置が光軸方向に基準位置から50μmずれていても、基準レンズユニットよりも15%以上大きな推力が得られる。また
図2に示すレンズ駆動モジュール11によれば、磁石26に対するレンズユニット10及び第1コイル25の相対位置を最適化することによって、基準レンズユニットよりも20%以上大きな推力が得られる(
図3の「レンズユニット位置=0μm」参照)。
【0055】
このようにレンズユニット10が強磁性スペーサー21aを具備することによって、より小さな電力消費量で、大きな電磁気力(すなわち推力)を得られることが、
図3の検証結果から証明された。すなわちレンズユニット10が強磁性スペーサー21aを具備することによって、所望の推力を得るための消費電力を有効に低減できることが、
図3の検証結果から証明された。
【0056】
なお、
図3では強磁性スペーサー21aとして上述の一般的なフェライト材料からなるスペーサーを用いたが、上述の作用及び効果は、強磁性スペーサー21aの具体的な材料を限定するものではない。強磁性特性を示す任意の材料で作られた強磁性スペーサー21は、各磁石26によりもたらされる磁場を有効的に引き込んで第1コイル25に作用させる磁場の強さを増大させ、所望の推力を得るための消費電力を有効に低減することができる。
【0057】
[撮像モジュール及び電子機器]
図1及び
図2に例示される強磁性スペーサー21aを具備するレンズ駆動モジュール11は、固体撮像素子を含む撮像モジュールに応用することができ、上述のレンズアクチュエータ24を例えばAF(オートフォーカス)調整機構として利用することができる。そのような撮像モジュールは、更に様々な電子機器に応用することができる。例えば撮像装置(例えばデジタルカメラ等)や携帯端末(例えば携帯電話、スマートフォン、タブレット及びコンピュータ等)に搭載される撮像モジュールにおいて、上述のレンズ駆動モジュール11を有利に用いることが可能である。なお、撮像装置などの電子機器は、それ自体が独立した装置であってもよいし、独立した装置の一部分として構成されてもよい。
【0058】
以下に、強磁性スペーサー21aを具備するレンズ駆動モジュール11を応用可能な撮像モジュール及び電子機器の典型形態を例示する。以下では、撮像モジュール及び電子機器の一部構成のみが説明されており、実際の撮像モジュール及び電子機器は下述されない要素及び構成を適宜有しうる。また強磁性スペーサー21aを具備するレンズ駆動モジュール11を応用可能な撮像モジュール及び電子機器は、以下の例に限定されない。
【0059】
[撮像モジュール及び電子機器の第1の例]
図4は、電子機器13の一例の概略構成を示す図である。
図4において、上述の
図1及び
図2に示す要素と同一又は類似の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
図4に示す電子機器13が具備する撮像モジュール12は、上述の
図1に示すレンズ駆動モジュール11と、撮像素子35(例えばCCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサ)とを備える。すなわち撮像モジュール12は、強磁性スペーサー21aを具備するレンズユニット10と、複数のレンズ20を介して入射した光の光電変換を行う撮像素子35と、レンズユニット10と撮像素子35との間の距離を調整するレンズアクチュエータ24とを備える。
【0061】
撮像素子35は、支持部材37を介して回路基体38に固定され、複数のレンズ20と光軸方向に対向するように光軸Ax上に位置付けられている。被写体光は、複数のレンズ20によって撮像素子35の受光面上に集光され、撮像素子35は、図示しないコントローラの制御下で、被写体の画像データ(すなわち撮像データ)を取得する。
【0062】
撮像素子35は、金属ワイヤーにより構成される配線36を介し、回路基体38の回路(図示省略)に電気的に接続されている。回路基体38の回路は、撮像素子35からの電気信号(例えば撮像データ)を受信して、外部に出力することができる。
図4に示す回路基体38は板状の形状を有するが、回路基体38の形状及び構成は限定されず、回路基体38は非板状の形状を有していてもよい。
【0063】
複数のレンズ20と撮像素子35との間には、赤外光を取り除く赤外線カットフィルタ32が設けられている。複数のレンズ20(特にレンズ中央部)を透過して赤外線カットフィルタ32に入射した光は、赤外線カットフィルタ32によって赤外光成分が取り除かれた状態で赤外線カットフィルタ32から出射し、撮像素子35に向かう。
【0064】
回路基体38には、複数の接続支持部34、レンズコントローラ39、センサ40、記憶デバイス41及びコネクタ42が固定的に取り付けられている。
【0065】
各接続支持部34の上部には第2コイル33が固定されている。各接続支持部34は、回路基体38の回路と対応の第2コイル33とを電気的に接続する。各第2コイル33には、レンズコントローラ39から回路基体38の回路及び対応の接続支持部34を介して電流が供給される。
【0066】
各第2コイル33は、アクチュエータホルダー31により保持されている対応の磁石26と光軸方向に対向するように位置付けられており、通電に応じて光軸Axと垂直を成す方向に電磁気力が作用する。このようにして各第2コイル33に作用する電磁気力により、レンズユニット10(特に複数のレンズ20)と撮像素子35(特に受光面)との間の相対位置が調整され、手振れの影響が低減される。このように各第2コイル33及び各磁石26は、OIS(Optical Image Stabilizer)式手振れ補正用のアクチュエータとして働く。なおアクチュエータホルダー31内に設けられている各磁石26は、上述のように第1コイル25と協働することで、オートフォーカス用のレンズアクチュエータ24としても働く。
【0067】
レンズコントローラ39は、IC(集積回路)により構成されており、手振れ補正用ドライバーとして機能するとともに、オートフォーカス用ドライバーとして機能する。レンズコントローラ39は、上述のように回路基体38の回路及び接続支持部34を介して第2コイル33に電気的に接続されるとともに、回路基体38の回路及び図示しない配線を介して第1コイル25に電気的に接続されている。またレンズコントローラ39は、回路基体38の回路を介して、センサ40、記憶デバイス41、コネクタ42及び他のデバイスに電気的に接続されている。
【0068】
例えば、センサ40に含まれるジャイロセンサが手振れを検出した際、レンズコントローラ39は、ジャイロセンサからの手振れ検出信号に応じた電流を第2コイル33に供給することで、手振れ補正を行う。またレンズコントローラ39は、図示しないデバイスからのオートフォーカス信号に応じた電流を第1コイル25に供給することで、レンズユニット10を光軸方向に移動させて、焦点調整を行う。
【0069】
記憶デバイス41は、各種のデータ(プログラムを含む)を記憶保持する。例えば、撮像モジュール12のばらつき(個体差)を補償するための補正値が、記憶デバイス41に記憶されている。記憶デバイス41に記憶されているデータの読み出しや記憶デバイス41に対するデータの書き込み(更新を含む)は、回路基体38の回路を介して電気的に記憶デバイス41に接続されている各種デバイスによって適宜行われる。
【0070】
コネクタ42は、図示されていない他の装置とのインターフェースを構成する。すなわちコネクタ42は、他の装置(例えば図示しないコントローラ)に接続され、当該他の装置に対するデータ(例えばレンズ駆動モジュール11から送られてくる撮像データ)の送受信を行う。
【0071】
上述の
図4に示す撮像モジュール12及び電子機器13においても、レンズユニット10が強磁性スペーサー21aを具備することで、オートフォーカス駆動の際のレンズユニット10の移動に要する消費電力を低減することができる。
【0072】
[撮像モジュール及び電子機器の第2の例]
図5は、電子機器13の他の例の概略構成を示す図である。
図5において、上述の
図4に示す要素と同一又は類似の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0073】
本例の撮像モジュール12が具備する撮像素子35は、フリップチップ構造を有する。すなわち撮像素子35は、金属ワイヤー(
図4参照)ではなくバンプ(すなわち突起状端子)によって構成される配線36を介し、回路基体38の回路と電気的に接続されている。
図5に示す撮像素子35は、回路基体38のうちレンズユニット10と対向する側の面(以下「表側回路面」と称する)とは反対側の面(以下「裏側回路面」と称する)に露出する回路に対し、配線36を介して電気的に接続されている。
【0074】
撮像素子35及び配線36は、回路基体38の裏側回路面に取り付けられた保護材51により囲まれている。保護材51は、撮像素子35を回路基体38に対して実装する際や撮像モジュール12を電子機器13に対して実装する際に、撮像素子35及び配線36を保護する。
【0075】
回路基体38は、光を透過する透光部52を有する。透光部52は、貫通孔又は透光部材により構成され、光軸Ax上に位置し、撮像素子35(特に撮像素子35の受光面の全体)と光軸方向に対向する。赤外線カットフィルタ32は、回路基体38の表側回路面に取り付けられ、透光部52の全体を覆う。
【0076】
複数のレンズ20(特にレンズ中央部)を透過した光は、赤外線カットフィルタ32及び透光部52を順次通過して、撮像素子35の受光面に入射し、撮像素子35は撮像データを取得する。
【0077】
図5に示すレンズコントローラ39、センサ40、記憶デバイス41及びコネクタ42は、回路基体38の裏側回路面に取り付けられ、裏側回路面に露出する回路に電気的に接続されている。回路基体38の表側回路面に露出する回路及び裏側回路面に露出する回路は、お互いに電気的につながっている。そのため上述の
図4に示す例と同様に、
図5に示すレンズコントローラ39は、回路基体38の回路及び接続支持部34を介して第2コイル33に接続されるとともに、回路基体38の回路及び図示しない配線を介して第1コイル25に接続されている。なおレンズコントローラ39、センサ40、記憶デバイス41及びコネクタ42は、
図4に示す例と同様に、回路基体38の表側回路面に取り付けられていてもよい。
【0078】
図5に示す電子機器13の他の構成は、上述の
図4に示す電子機器13と同様である。
【0079】
上述の
図5に示す撮像モジュール12及び電子機器13においても、レンズユニット10が強磁性スペーサー21aを具備することで、オートフォーカス駆動の際のレンズユニット10の移動に要する消費電力を低減することができる。
【0080】
[撮像モジュール及び電子機器の第3の例]
図6は、電子機器13の他の例の概略構成を示す図である。
図6において、上述の
図4に示す要素と同一又は類似の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0081】
本例の撮像モジュール12が具備する撮像素子35は、CSP(Chip Size Package)構造を有する。すなわち撮像素子35は、超小型パッケージの一部として設けられている。
【0082】
図6に示す撮像素子35は配線層58を介して回路基体38に取り付けられている。回路基体38の表側回路面のうち撮像素子35と接続支持部34との間には、遮光性を有する固定部59が設けられている。撮像素子35は、固定部59によって、回路基体38の表側回路面に対して接着され、固定されている。撮像素子35のうちレンズユニット10と対向する側の面(受光面を含む)には、第2透明樹脂57を介してガラス層56が接着されている。ガラス層56には、更に第1透明樹脂55を介して赤外線カットフィルタ32が接着されている。
【0083】
複数のレンズ20(特にレンズ中央部)を透過した光は、赤外線カットフィルタ32、第1透明樹脂55、ガラス層56及び第2透明樹脂57を順次通過して、撮像素子35の受光面に入射し、撮像素子35は撮像データを取得する。
【0084】
図6に示す電子機器13の他の構成は、上述の
図4に示す電子機器13と同様である。
【0085】
上述の
図6に示す撮像モジュール12及び電子機器13においても、レンズユニット10が強磁性スペーサー21aを具備することで、オートフォーカス駆動の際のレンズユニット10の移動に要する消費電力を低減することができる。
【0086】
[撮像モジュール及び電子機器の第4の例]
図7は、電子機器13の他の例の概略構成を示す図である。
図7において、上述の
図6に示す要素と同一又は類似の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0087】
本例の撮像モジュール12は、レンズユニット10と撮像素子35との間に位置するレンズ63であって、レンズユニット10が具備する複数のレンズ20とは別体として設けられるレンズ(すなわち固定レンズ)63を備える。
図7に示す固定レンズ63は、レンズユニット10の複数のレンズ20と赤外線カットフィルタ32との間に位置し、赤外線カットフィルタ32に対してインプリント接合方式で固定的に取り付けられている。
【0088】
固定レンズ63は、レンズユニット10が具備する複数のレンズ20とともに、撮像モジュール12の光学レンズ系を構成する。ただしオートフォーカス駆動の際には、レンズユニット10が具備する複数のレンズ20は上述のようにレンズアクチュエータ24によって光軸方向に移動させられるが、撮像素子35と一体的に設けられている固定レンズ63は移動しない。すなわち、レンズユニット10が具備する複数のレンズ20と撮像素子35との間の光軸方向距離は可変であるが、固定レンズ63と撮像素子35との間の光軸方向距離は不変である。
【0089】
図7に示す電子機器13の他の構成は、上述の
図6に示す電子機器13と同様である。
【0090】
上述の
図7に示す撮像モジュール12及び電子機器13においても、レンズユニット10が強磁性スペーサー21aを具備することで、オートフォーカス駆動の際のレンズユニット10の移動に要する消費電力を低減することができる。
【0091】
以上説明したように強磁性スペーサー21aを具備するレンズユニット10、レンズ駆動モジュール11、撮像モジュール12及び電子機器13によれば、レンズユニット10の移動に要する消費電力を有効に抑えることができる。
【0092】
特に、既存のレンズユニットのスペーサーの少なくとも一部を強磁性スペーサー21aに置き換えることで、上述のレンズユニット10を実現することができる。そのため上述のレンズユニット10は、構造を複雑化する必要がなく、様々な形態のレンズ駆動モジュール11、撮像モジュール12及び電子機器13に対して広く且つ柔軟に応用可能である。また上述のレンズユニット10は、製造コストの上昇の抑制や装置の小型化(例えば光軸方向の装置サイズの縮小化)に対しても、有効に寄与することができる。
【0093】
また本来的に磁束密度の小さい磁石や小型の磁石が上述の磁石26として用いられる場合でも、強磁性スペーサー21aが第1コイル25に磁場を効率的に作用させるため、レンズアクチュエータ24によりレンズユニット10を適切に駆動することが可能である。したがって強磁性スペーサー21aを具備する上述のレンズユニット10によれば、磁石26の選定の自由度が増すとともに、比較的安価な永久磁石を磁石26として使用することも可能である。
【0094】
本明細書で開示されている実施形態及び変形例はすべての点で例示に過ぎず限定的には解釈されないことに留意されるべきである。上述の実施形態及び変形例は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態での省略、置換及び変更が可能である。例えば上述の実施形態及び変形例が全体的に又は部分的に組み合わされてもよく、また上述以外の実施形態が上述の実施形態又は変形例と組み合わされてもよい。また、本明細書に記載された本開示の効果は例示に過ぎず、その他の効果があってもよい。
【0095】
また上述の技術的思想を具現化する技術的カテゴリーは限定されない。例えば上述の装置制御方法に含まれる1又は複数の手順(ステップ)をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムによって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。またそのようなコンピュータプログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な非一時的(non-transitory)な記録媒体によって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。
【0096】
なお、本開示は以下の構成を取ることもできる。
[項目1]
複数のレンズと、前記複数のレンズのうち隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられ強磁性体を含むスペーサーと、を具備するレンズユニットと、
通電に応じて前記レンズユニットに電磁力を作用させるレンズアクチュエータと、を備えるレンズ駆動モジュール。
[項目2]
前記レンズユニットは、隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられるスペーサーを複数具備し、
前記レンズユニットが具備するすべてのスペーサーが、強磁性体を含む項目1に記載のレンズユニット。
[項目3]
前記レンズユニットは、隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられるスペーサーを複数具備し、
前記複数のスペーサーは、前記強磁性体を含むスペーサーと、非強磁性体を含むスペーサーと、を含む強磁性体を含む項目1に記載のレンズユニット。
[項目4]
前記レンズアクチュエータは、
前記レンズユニットと一体的に設けられ、通電可能に設けられるコイルと、
前記コイルに磁場を与える磁石と、を含む項目1~3のいずれかに記載のレンズユニット。
[項目5]
前記コイルは、前記強磁性体を含むスペーサーと前記磁石との間に位置する項目4に記載のレンズ駆動モジュール。
[項目6]
前記強磁性体を含むスペーサー、前記コイル及び前記磁石は、前記複数のレンズの光軸と直角を成す方向に延びる同一直線上に位置する項目4又は5に記載のレンズ駆動モジュール。
[項目7]
複数のレンズと、前記複数のレンズのうち隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられ強磁性体を含むスペーサーと、を具備するレンズユニットと、
前記複数のレンズを介して入射した光の光電変換を行う撮像素子と、
通電に応じて前記レンズユニットに電磁力を作用させて、前記レンズユニットと前記撮像素子との間の距離を調整するレンズアクチュエータと、を備える撮像モジュール。
[項目8]
前記撮像素子は、フリップチップ構造を有する項目7に記載の撮像モジュール。
[項目9]
前記撮像素子は、CSP構造を有する項目7に記載の撮像モジュール。
[項目10]
前記レンズユニットと前記撮像素子との間に位置し、前記レンズユニットが具備する前記複数のレンズとは別体として設けられるレンズを備える項目7~9のいずれかに記載の撮像モジュール。
[項目11]
赤外線カットフィルタを備える項目7~10のいずれかに記載の撮像モジュール。
[項目12]
複数のレンズと、前記複数のレンズのうち隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられ強磁性体を含むスペーサーと、を具備するレンズユニットと、
前記複数のレンズを介して入射した光の光電変換を行う撮像素子と、
通電に応じて前記レンズユニットに電磁力を作用させて、前記レンズユニットと前記撮像素子との間の距離を調整するレンズアクチュエータと、
前記撮像素子からの電気信号を受信する回路基体と、を具備する電子機器。
[項目13]
複数のレンズと、前記複数のレンズのうち隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられ強磁性体を含むスペーサーと、を備えるレンズユニット。
[項目14]
隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられるスペーサーを複数具備し、
すべてのスペーサーが強磁性体を含む項目13に記載のレンズユニット。
[項目15]
隣り合って位置する2つのレンズ間に設けられるスペーサーを複数具備し、
前記複数のスペーサーは、前記強磁性体を含むスペーサーと、非強磁性体を含むスペーサーと、を含む項目13に記載のレンズユニット。
【符号の説明】
【0097】
10 レンズユニット
11 レンズ駆動モジュール
12 撮像モジュール
13 電子機器
20 レンズ
21a 強磁性スペーサー
21b 非強磁性スペーサー
24 レンズアクチュエータ
25 第1コイル
26 磁石
32 赤外線カットフィルタ
35 撮像素子
38 回路基体
63 固定レンズ
Ax 光軸