(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046202
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】抗ウイルス性床材用樹脂組成物および抗ウイルス性床材
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20220315BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20220315BHJP
C08K 5/1515 20060101ALI20220315BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20220315BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220315BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20220315BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20220315BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20220315BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
C08L27/06
C08K5/101
C08K5/1515
C08K3/08
C08K3/22
C08K3/26
A01P1/00
A01N59/16 A
E04F15/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152131
(22)【出願日】2020-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000217365
【氏名又は名称】田島ルーフィング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】砂澤 周一
(72)【発明者】
【氏名】小西 啓代
【テーマコード(参考)】
2E220
4H011
4J002
【Fターム(参考)】
2E220AA13
2E220FA03
2E220GA24X
2E220GA26X
2E220GB02X
2E220GB32X
2E220GB34X
4H011AA04
4H011BB18
4H011BC06
4H011BC18
4H011BC19
4H011BC22
4H011DA07
4H011DH02
4J002FD207
(57)【要約】
【課題】非フタル酸系可塑剤を用い、ノニルアルコール、2-エチルヘキサノールの発生が生じず、かつ抗ウイルス効果が持続し、樹脂の変色が生じない、抗ウイルス性床材用塩化ビニル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】塩化ビニル樹脂と、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、不飽和基をエポキシ化したオレイン酸エステル、不飽和基をエポキシ化したリノール酸エステルおよび不飽和基をエポキシ化したリノレン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の可塑剤と、金属を含む平均粒径が2~30ナノメートルの無機抗ウイルス剤とを含む抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂と、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、不飽和基をエポキシ化したオレイン酸エステル、不飽和基をエポキシ化したリノール酸エステルおよび不飽和基をエポキシ化したリノレン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の可塑剤と、金属を含む平均粒径が2~30ナノメートルの無機抗ウイルス剤とを含む抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
【請求項2】
無機抗ウイルス剤が、銅、銀および亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と酸化チタンとを含むことを特徴とする請求項1に記載の抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
【請求項3】
可塑剤が、パルミチン酸エステルおよびステアリン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種と、不飽和基をエポキシ化したオレイン酸エステル、不飽和基をエポキシ化したリノール酸エステルおよび不飽和基をエポキシ化したリノレン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載の抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
【請求項4】
乾性油をさらに含む請求項1~3のいずれか1項に記載の抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
【請求項5】
乾性油が亜麻仁油であることを特徴とする請求項4に記載の抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
【請求項6】
エポキシ化大豆油をさらに含む請求項1~5のいずれか1項に記載の抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
【請求項7】
充填材をさらに含む請求項1~6のいずれか1項に記載の抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
【請求項8】
充填材が炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項7に記載の抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
【請求項9】
安定剤をさらに含む請求項1~8のいずれか1項に記載の抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる抗ウイルス性床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス性床材用樹脂組成物および抗ウイルス性床材に関し、詳しくは可塑剤としてフタル酸エステルを使用しないことおよび抗ウイルス性を有することを特徴とする抗ウイルス性床材用塩化ビニル樹脂組成物および前記組成物からなる抗ウイルス性床材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル樹脂は加工性が良く、また機械的強度や耐久性が高く、かつポリオレフィンと比較して燃焼性が低いことから、建築物の内装材として広く利用されている。
【0003】
塩化ビニル樹脂を内装材として使用するためには、柔軟性を付与するために、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOP)やフタル酸ジイソノニル(DINP)などのフタル酸エステルを添加し、可塑化塩化ビニル樹脂組成物として使用するのが一般的である。
【0004】
しかし、近年、DOP、DINP等の汎用フタル酸エステルは、人体への影響の懸念から使用が制限されてきている。
【0005】
また、DOPを塩化ビニル床材に使用した場合には、アルカリ性の下地湿気によりDOPが加水分解し、2-エチルヘキサノールが放散され、室内空気質を汚染し、臭気を発する問題が指摘されている。DINPを使用した場合には、加水分解によりイソノニルアルコールが放散されるため、同様の問題が生じる。
【0006】
フタル酸に代わる非フタル酸系の可塑剤としては、シクロヘキサン系可塑剤、アジピン系可塑剤、テレフタル酸系可塑剤などが挙げられる。
【0007】
特許文献1には、可塑剤としてジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート(BASF社製ヘキサモールDINCH(登録商標))、テレフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(ジェイプラス社製DOTP)を可塑剤とした塩化ビニル樹脂組成物が開示されている。
【0008】
上記のDINCH(登録商標)やDOTPは非フタル酸可塑剤であるため、人体への影響の懸念は低下するが、床材に使用した場合、アルカリ性の下地湿気との接触により可塑剤の加水分解が生じ、ノニルアルコール、2-エチルヘキサノールが発生するため、臭気を発し、室内空気質を汚染する懸念がある。
【0009】
また、2019年に中国で発生した新型コロナウイルスにより、世界中で感染拡大が起こり、1800万人以上が罹患し、およそ70万人が死亡している。さらに現在も感染拡大は続いており、この数はさらに増加すると予想されている。今のところ有効な治療薬やワクチンが無いことから、感染症予防に寄与する技術や製品に関心が集まっている。
【0010】
ウイルスは他生物の細胞を利用し自己を複製させ増殖する。基本構造はタンパク質の殻(カプシド)と内部の核酸(DNA、RNA)からなり、細胞や細胞膜を持たない。核酸がDNAであるかRNAであるかにより二種に大別され、さらにカプシドが脂質二重膜からなるエンベロープで覆われているものとそうでないものに分類される。
【0011】
具体的には、例えば核酸がDNAでエンベロープを持つものとしてヘルペスウイルス、持たないものとしてアデノウイルスがある。核酸がRNAでエンベロープを持つものとしてインフルエンザウイルス、持たないものとしてノロウイルスがある。新型コロナウイルスは、核酸がRNAでエンベロープを持つため、インフルエンザウイルスと同じエンベロープウイルスに分類される。
【0012】
こうしたウイルスの活性を不活性化させる抗ウイルス剤として、塩化ビニル樹脂に添加して用いられるものとしては、従来からスルホン酸系界面活性剤、金属酸化物、銅化合物などが知られている。
【0013】
特許文献2には、スルホン酸系界面活性剤を添加した抗ウイルス性の塩化樹脂組成物が開示されている。
【0014】
特許文献3には、銀、銅、亜鉛のいずれかの酸化物とモリブデン酸化物の複塩を塩化ビニル樹脂に添加したプラスチックが開示されている。
【0015】
特許文献4には、塩化物、酢酸化合物、硫化物、ヨウ化物などの1価の銅化合物と、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤等の可塑剤とを含む塩化ビニル部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2017-115043号公報
【特許文献2】特開2015-17078号公報
【特許文献3】特開2018-172462号公報
【特許文献4】特開2019-44096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記のDINCH(登録商標)やDOTPは非フタル酸可塑剤であるため、人体への影響の懸念は低下するが、床材に使用した場合、アルカリ性の下地湿気との接触により可塑剤の加水分解が生じ、ノニルアルコール、2-エチルヘキサノールが発生するため、臭気を発し、室内空気質を汚染する懸念がある。
【0018】
また、塩化ビニル樹脂に界面活性剤を添加する方法では、界面活性剤が次第に染み出して薬剤量が減少するために、抗ウイルス効果の持続性に問題が生じ、また、金属酸化物を添加する方法では、樹脂に変色が生じるため、内装材に適した樹脂組成物とはならないという欠点がある。
【0019】
本発明の課題は、非フタル酸系可塑剤を用い、ノニルアルコール、2-エチルヘキサノールの発生が生じず、かつ抗ウイルス効果が持続し、樹脂の変色が生じない、抗ウイルス性床材用塩化ビニル樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本件第一発明は、塩化ビニル樹脂と、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、不飽和基をエポキシ化したオレイン酸エステル、不飽和基をエポキシ化したリノール酸エステルおよび不飽和基をエポキシ化したリノレン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の可塑剤と、金属を含む平均粒径が2~30ナノメートルの無機抗ウイルス剤とを含む抗ウイルス性床材用樹脂組成物である。
本件第二発明は、本件第一発明の樹脂組成物からなる抗ウイルス性床材である。
【0021】
本発明は以下の実施態様を含む。
[1]塩化ビニル樹脂と、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、不飽和基をエポキシ化したオレイン酸エステル、不飽和基をエポキシ化したリノール酸エステルおよび不飽和基をエポキシ化したリノレン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の可塑剤と、金属を含む平均粒径が2~30ナノメートルの無機抗ウイルス剤とを含む抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
[2]無機抗ウイルス剤が、銅、銀および亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と酸化チタンとを含むことを特徴とする[1]に記載の抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
[3]可塑剤が、パルミチン酸エステルおよびステアリン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種と、不飽和基をエポキシ化したオレイン酸エステル、不飽和基をエポキシ化したリノール酸エステルおよび不飽和基をエポキシ化したリノレン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種とを含む、ことを特徴とする[1]または[2]に記載の抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
[4]乾性油をさらに含む[1]~[3]のいずれかに記載の抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
[5]乾性油が亜麻仁油であることを特徴とする[4]に記載の抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
[6]エポキシ化大豆油をさらに含む[1]~[5]のいずれかに記載の抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
[7]充填材をさらに含む[1]~[6]のいずれかに記載の抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
[8]充填材が炭酸カルシウムであることを特徴とする[7]に記載の抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
[9]安定剤をさらに含む[1]~[8]のいずれかに記載の抗ウイルス性床材用樹脂組成物。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物からなる抗ウイルス性床材。
【発明の効果】
【0022】
本発明の樹脂組成物によれば、フタル酸系可塑剤を用いなくとも、柔軟性を有する塩化ビニル樹脂成型体が得られ、床材に使用する場合に下地湿気による2-エチルヘキサノールの放散が生じ、かつ抗ウイルス性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
本件第一発明は、塩化ビニル樹脂と、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、不飽和基をエポキシ化したオレイン酸エステル、不飽和基をエポキシ化したリノール酸エステルおよび不飽和基をエポキシ化したリノレン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の可塑剤と、金属を含む平均粒径が2~30ナノメートルの無機抗ウイルス剤とを含む抗ウイルス性床材用樹脂組成物である。
【0024】
[塩化ビニル樹脂]
本発明の床材用樹脂組成物は塩化ビニル樹脂を含む。本発明で用いる塩化ビニル樹脂は特に限定されず、塩化ビニルの単独重合体の他、共重合可能な他のモノマーとの共重合体が使用できる。塩化ビニル樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上をブレンドして使用してもよい。また、塩化ビニル樹脂の製造方法や重合度にも制限は無い。
【0025】
[可塑剤]
本発明の床材用樹脂組成物は可塑剤を含む。本発明に用いる可塑剤は、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、不飽和基をエポキシ化したオレイン酸エステル、不飽和基をエポキシ化したリノール酸エステルおよび不飽和基をエポキシ化したリノレン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である。パルミチン酸エステルの好ましい例としては、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチルが挙げられ、ステアリン酸エステルの好ましい例としては、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチルが挙げられ、不飽和基をエポキシ化したオレイン酸エステルの好ましい例としては、cis-9,10-エポキシオクタデカン酸メチル、cis-9,10-エポキシオクタデカン酸エチルなどが挙げられ、不飽和基をエポキシ化したリノール酸エステルの好ましい例としては、9,10:12,13-ジエポキシオクタデカン酸メチル、9,10:12,13-ジエポキシオクタデカン酸エチルなどが挙げられ、不飽和基をエポキシ化したリノレン酸エステルの好ましい例としては、9,10:12,13:15,16-トリエポキシオクタデカン酸メチル、9,10:12,13:15,16-トリエポキシオクタデカン酸エチルなどが挙げられる。これらの可塑剤は、単独で使用してもよいし、2種以上をブレンドして使用してもよい。
【0026】
2種以上の可塑剤をブレンドして使用する場合には、パルミチン酸エステルおよびステアリン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種と不飽和基をエポキシ化したオレイン酸エステル、不飽和基をエポキシ化したリノール酸エステルおよび不飽和基をエポキシ化したリノレン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種とを組み合わせて使用するのが特に好ましい。
【0027】
可塑剤の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して10~100質量部であることが好ましく、30~60質量部がより好ましく、40~50質量部がさらに好ましい。
【0028】
[無機抗ウイルス剤]
本発明に用いる無機抗ウイルス剤としては、金属を含む平均粒径が2~30ナノメートルの無機抗ウイルス剤が好ましく用いられる。金属としては、銀、亜鉛、銅などが好ましく用いられる。無機抗ウイルス剤は、好ましくは、それらの金属イオンの少なくとも1種を、ゼオライト、シリカゲル、モンモリロナイトのいずれかに担持されたものである。また、酸化チタンを含む無機抗ウイルス剤もまた好ましく用いられる。無機抗ウイルス剤は、より好ましくは、銅、銀および亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と酸化チタンとを含む。その具体的な例としては、酸化チタンに銀を担持したもの、酸化チタンに亜鉛を担持したものを挙げることができる。
無機抗ウイルス剤中の金属イオンの含有量は、抗ウイルス作用を発現する限り限定されないが、好ましくは5~70質量%であり、より好ましくは10~60質量%であり、さらに好ましくは20~50質量%である。含有量が少なすぎると、十分な抗ウイルス性が発現しない。含有量が多すぎると、樹脂の変色性が低下する。
無機抗ウイルス剤の平均粒径は、好ましくは2~30ナノメートルであり、より好ましくは2~25ナノメートルであり、さらに好ましくは3~20ナノメートルである。平均粒径が小さすぎると、抗ウイルス性が低下する。平均粒径が大きすぎると、可塑剤への分散性が低下する。
平均粒径は、動的光散乱法によって、測定する。
無機抗ウイルス剤の添加量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~1.0質量部であり、より好ましくは0.3~0.9質量部であり、さらに好ましくは0.2~0.8質量部である。この添加量が少なすぎると、抗ウイルス性が低下する。この添加量が多すぎると、可塑剤への分散性が低下する。
【0029】
[乾性油]
本発明の床材用樹脂組成物は好ましくは乾性油を含む。乾性油を含めることにより、表面に被膜ができることで耐汚染性が向上する。乾性油としては、亜麻仁油、ひまし油、桐油等が挙げられるが、なかでも亜麻仁油が好ましい。乾性油の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、0~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましく、1~3質量部がさらに好ましい。
【0030】
[エポキシ化大豆油]
本発明の床材用樹脂組成物は好ましくはエポキシ化大豆油を含む。エポキシ化大豆油を含めることにより、酸化劣化の安定性が向上する。エポキシ化大豆油の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、0~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、2~7質量部がさらに好ましい。
【0031】
[充填材]
本発明の床材用樹脂組成物は好ましくは充填材を含む。充填材を含めることにより、寸法安定性と耐摩耗性が向上する。充填材としては、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ゼオライト、タルク、シリカ等の無機充填材が使用できる。なかでも炭酸カルシウムが好ましい。充填材の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、10~1000質量部が好ましく、30~800質量部がより好ましく、50~500質量部がさらに好ましい。
【0032】
[安定剤]
本発明の床材用樹脂組成物は好ましくは安定剤を含む。安定剤を含めることにより、成形加工時の変色安定性、および成形品使用時の経時での耐劣化性が向上する。安定剤としては、例えばバリウム、亜鉛、カルシウム等の金属とラウリン酸、ステアリン酸等の脂肪酸から誘導される金属セッケン系安定剤や滑剤、酸化防止剤、助剤等を配合してなる安定剤が使用できる。安定剤の添加量は特に限定されないが、塩化ビニル樹脂100質量部に対し、0.1~5質量部が好ましい。
【0033】
[その他の添加剤]
その他、顔料、帯電防止剤、抗菌剤、発泡剤なども、本発明の効果を損なわない限りにおいて任意に配合することができる。
【0034】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物を得る方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、塩化ビニル樹脂および可塑剤、必要に応じてその他の添加剤をヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、リボンブレンダーなどで混合することで得ることができる。
【0035】
[床材]
本件第二発明は、本件第一発明の樹脂組成物からなる抗ウイルス性床材である。床材としては、床タイル、床シート、カーペットタイル等が挙げられる。床材は、前記樹脂組成物を、公知の成形方法、例えば射出成形、押し出し成形、カレンダー成形などで成形することにより製造することができる。なかでも、カレンダー成形が好ましい。
【実施例0036】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。なお評価は下記により行った。
(1)成形体からのアルコール放散
塩化ビニル樹脂組成物の成形体の厚さ2mmのシートを165mm角に裁断し、片面に5%NaOH水溶液を2mL滴下し24時間放置し、成形体中の可塑剤の加水分解を行った。その後、滴下溶液を拭き取り、JIS A1901に準拠し、成形体から放散されるアルコール放散速度(μg/m2・h)を測定した。
【0037】
(2)抗ウイルス性
抗ウイルス性試験はISO 21702に準拠して評価した。具体的には、塩化ビニル樹脂組成物の成形体の厚さ2mmのシートを50mm角に裁断し、試験ウイルス液濃度2.6×107PFU/mLを表面に滴下し、ポリエチレンフィルムで覆い、24時間後に洗い出し液で、ウイルス液を洗い出しウイルス濃度の変化を測定することで評価した。試験ウイルスとして、インフルエンザウイルス(Influenza A virus(H3N2):ATCC VR-1679)およびネコカリシウイルス(Feline calicivirus:ATCC VR-782)を用いた。Antiviral activityが2.0以上のとき、抗ウイルス性があると判定される。
【0038】
(3)変色性
厚さ2mmのシートを100mm角に裁断し、200℃のオーブンで1時間加熱し、表面の色の変化を目視で評価した。
◎:変色無し。
○:一部変色が生じる
△:全体的に変色が生じる。
×:著しい変色が生じる。
【0039】
[製造例1]可塑剤(P-1)の製造
日油株式会社製のステアリン酸メチル(商品名:ステアリン酸メチル95)を100質量部とオレイン酸メチル(商品名:ユニスター(登録商標)M-182A)のエポキシ化物100質量部とを混合し、可塑剤(P-1)を製造した。
【0040】
可塑剤(P-2)
パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、エポキシ化オレイン酸、エポキシ化リノール酸メチル、エポキシ化リノレン酸メチルの混合物であるJIAAO社の可塑剤(商品名:JEG3-33)を可塑剤(P-2)として使用した。
【0041】
[実施例1]
塩化ビニル樹脂100質量部(信越化学工業株式会社製、商品名:TK-1000)に製造例1で製造した可塑剤(P-1)50質量部、表面処理炭酸カルシム100質量部(白石カルシウム株式会社製、商品名:CCR)、バリウム亜鉛安定剤(株式会社ADEKA製、アデカスタブ(登録商標)AP-627)2質量部および無機抗ウイルス剤(日揮触媒化成株式会社製、商品名:ATOMY BALL-(S)、組成:Ag/TiO2、平均粒径:5nm)0.5質量部をバンバリーミキサーで混合し、抗ウイルス性床材用樹脂組成物を調製した。調製した床材用樹脂組成物をカレンダー加工機で2mm厚のシートに加工し、得られたシートについて、成形体からのアルコール放散、抗ウイルス性および変色性を評価した。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例2]
可塑剤(P-1)に代えて、可塑剤(P-2)を使用した点以外は、実施例1と同様に実施し、抗ウイルス性床材用樹脂組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0043】
[実施例3]
可塑剤(P-1)50質量部に代えて、可塑剤(P-1)25質量部および可塑剤(P-2)25質量部を使用し、さらに乾性油(日清オイリオグループ株式会社製亜麻仁油)2質量部を添加した点以外は、実施例1と同様に実施し、抗ウイルス性床材用樹脂組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0044】
[実施例4]
可塑剤(P-1)に代えて、可塑剤(P-2)を使用し、さらに乾性油(日清オイリオグループ株式会社製亜麻仁油)2質量部およびエポキシ化大豆油(日油株式会社製、商品名:ニューサイザー(登録商標)510R)5質量部を添加した点以外は、実施例1と同様に実施し、抗ウイルス性床材用樹脂組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0045】
[比較例1]
可塑剤(P-1)に代えて、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(株式会社ジェイプラス製DOP)を使用し、無機抗ウイルス剤を添加しなかった点以外は、実施例1と同様に実施し、抗ウイルス性床材用樹脂組成物を調製し、評価した。アルコール放散の評価試験において2-エチルヘキサノールが放散した。結果を表1に示す。
【0046】
[比較例2]
可塑剤(P-1)に代えて、ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート(BASF社製、ヘキサモールDINCH(登録商標))を使用し、無機抗ウイルス剤を添加しなかった点以外は、実施例1と同様に実施し、抗ウイルス性床材用樹脂組成物を調製し、評価した。アルコール放散の評価試験においてイソノニルアルコールが放散した。結果を表1に示す。
【0047】
[比較例3]
可塑剤(P-1)に代えて、テレフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(株式会社ジェイプラス製DOTP)を使用し、無機抗ウイルス剤を添加しなかった点以外は、実施例1と同様に実施し、抗ウイルス性床材用樹脂組成物を調製し、評価した。アルコール放散の評価試験において2-エチルヘキサノールが放散した。結果を表1に示す。
【0048】