(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046228
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/20 20060101AFI20220315BHJP
C01B 11/02 20060101ALI20220315BHJP
B01J 7/02 20060101ALI20220315BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20220315BHJP
A61L 101/06 20060101ALN20220315BHJP
【FI】
A61L2/20
C01B11/02 F
B01J7/02 Z
A61L9/01 F
A61L101:06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152163
(22)【出願日】2020-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】592135797
【氏名又は名称】第一制電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】青柳 祐二
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
4G068
【Fターム(参考)】
4C058AA20
4C058AA23
4C058BB07
4C058EE26
4C058JJ16
4C180AA07
4C180CA06
4C180EA57X
4C180HH05
4C180HH11
4C180LL06
4C180MM10
4G068DA10
4G068DB08
4G068DC04
4G068DC10
4G068DD20
(57)【要約】
【課題】発生させたガスを安定して供給できるガス供給装置を提供する。
【解決手段】二酸化塩素ガス供給装置1は、亜塩素酸ソーダ水溶液6を貯留した貯留容器2と、ファン3と、屈折流路4と、紫外線ランプ7とを備える。ファン3が、吸込口3Aから放出口3Bへ進む気流を生成し、気流は屈折流路4を通る。気流が屈折流路4を通るときに気流の速度は下がる。紫外線ランプ7が照射した紫外線が亜塩素酸ソーダ水溶液6に当たって二酸化塩素ガスを発生させ、屈折流路4において速度が下げられた気流に、二酸化塩素ガスを接触させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス発生誘発物が適用されてガスを発生する物質を貯留可能な貯留部と、
外部と内部を連通した一の開口部と、外部と内部を連通した他の開口部との間を流れる気流を生成可能な気流生成部と、
前記貯留部に貯留された前記物質から発生したガスに当たるときの、前記気流生成部が生成した前記気流の速度を下げることが可能な気流速度低減部とを備える
ガス供給装置。
【請求項2】
前記気流速度低減部は、前記気流が通過可能な屈折した流路で構成されており、
前記一の開口部と前記他の開口部は前記貯留部の位置よりも鉛直方向上方の位置に形成されており、
前記貯留部は前記流路よりも鉛直方向下方に配置されており、同貯留部の上部と同流路とが連通した
請求項1に記載のガス供給装置。
【請求項3】
前記気流生成部が生成した気流を乾燥可能な乾燥部を備え、
前記気流速度低減部は、前記乾燥部が乾燥させた気流の速度を下げることが可能である
請求項1または請求項2に記載のガス供給装置。
【請求項4】
前記ガス発生誘発物は紫外線であり、前記物質は、紫外線を照射されて二酸化塩素ガスを発生可能な溶液であり、
紫外線を前記貯留部へ向けて照射可能な紫外線照射部と、
該紫外線照射部と前記貯留部に貯留された前記溶液の液面との間に配置されており、同紫外線照射部から照射された紫外線の同溶液に当たる紫外線量と、同貯留部に貯留された同溶液から発生した二酸化塩素ガスの拡散量とを制限可能な制限部とを備える
請求項1、請求項2または請求項3に記載のガス供給装置。
【請求項5】
前記制限部は、ガラス繊維ストランドを含む不織布で構成された
請求項4に記載のガス供給装置。
【請求項6】
平板状の水平部材と、該水平部材に対して略直交する方向に延びて同水平部材に接続された垂直部材とを有すると共に、前記溶液を吸い上げ可能な吸上体を備え、
前記制限部は該吸上体の前記水平部材に載置された
請求項4または請求項5に記載のガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス供給装置に関する。詳しくは、例えば二酸化塩素ガスを供給するガス供給装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
二酸化塩素は強い酸化力を有することから、ウイルス除去や除菌などの効果を発揮できることが知られており、プールにおける消毒剤や、低濃度での空間除菌剤として使用されている。
【0003】
すなわち、二酸化塩素は酸化作用により、標的とするウイルスや細菌などのタンパク質を変化させ、その機能を低下させて不活性化させると考えられている。
【0004】
そこで、医療施設、オフィス、学校、スポーツ施設など人が集まるあらゆる場所のウイルス除去などのための様々な装置が提案されている。
【0005】
例えば特許文献1には、
図3に示す二酸化塩素を発生させる装置が記載されている。
すなわち、特許文献1に記載の二酸化塩素を発生させる装置110の装置本体112の下方側壁部116Bには、装置本体112内外のエア流通が可能となるエア供給排出口120が設けられており、装置本体112の上方側壁部116Aには、装置本体112の内外のエア流通が可能となるエア供給排出口122が設けられている。
【0006】
また、装置本体112の下部にはファン124が設けられており、ファン124が駆動することにより装置本体112の内部において上昇気流が発生する。
また、ファン124の上方には、金網などからなる設置台126が設けられている。
また、設置台126には、上方が開放したカートリッジ128が載せられており、カートリッジ128の内部には、亜塩素酸塩を含む薬剤130が収納されている。
【0007】
また、装置本体112内部の上部には紫外線LEDランプ132が設けられており、カートリッジ128へ向けて紫外線を発している。
発光された紫外線がカートリッジ128内の亜塩素酸ナトリウムに照射されると、亜塩素酸ナトリウムから次第に二酸化塩素ガスが発生し、二酸化塩素ガスがカートリッジ128から放出される。
【0008】
また、ファン124の駆動により、
図3に矢印で示したようなエアの流れが起こり、装置本体112内部の二酸化塩素ガスは外部に放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の二酸化塩素を発生させる装置は、単に、ファンによって外部から取込まれた後に装置内部を通って外部へと放出されるエア(空気)の流れる力を利用して二酸化塩素ガスを外部に放出するものであり、二酸化塩素ガスが充分に空気に混合されておらず、二酸化塩素ガスがほとんど含まれていない気体を放出してしまう可能性があり、発生させた二酸化塩素ガスを安定して供給できていなかった。
【0011】
また、特許文献1に記載の二酸化塩素を発生させる装置においては、薬剤が消化減少していくにつれて紫外線LEDランプと薬剤との間の距離が拡がり、二酸化塩素ガス発生量が減少していくという問題があった。
すなわち、二酸化塩素ガスは発生当初に大量に発生するが、二酸化塩素ガスの発生が続くとその発生量は減少していくため、効率よくかつ安定した二酸化塩素ガスの発生濃度をコントロールすることが困難であった。
【0012】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、発生させたガスを安定して供給できるガス供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明のガス供給装置は、ガス発生誘発物が適用されてガスを発生する物質を貯留可能な貯留部と、外部と内部を連通した一の開口部と、外部と内部を連通した他の開口部との間を流れる気流を生成可能な気流生成部と、前記貯留部に貯留された前記物質から発生したガスに当たるときの、前記気流生成部が生成した前記気流の速度を下げることが可能な気流速度低減部とを備える。
【0014】
ここで、外部と内部を連通した一の開口部と、外部と内部を連通した他の開口部との間を流れる気流を生成可能な気流生成部によって、一の開口部及び他の開口部を通過する気流を生成し、ガス供給装置の外部へ流れる気流を生成できる。
【0015】
また、貯留部に貯留された物質から発生したガスに当たるときの、気流生成部が生成した気流の速度を下げることが可能な気流速度低減部によって、気流の空気と発生させたガスとを充分に混合させることができる。
【0016】
また、本発明のガス供給装置において、気流速度低減部は、気流が通過可能な屈折した流路で構成されており、一の開口部と他の開口部は貯留部の位置よりも鉛直方向上方の位置に形成されており、貯留部は流路よりも鉛直方向下方に配置されており、貯留部の上部と流路とが連通した構成とすることができる。
【0017】
この場合、屈折した流路構造の方がメッシュ網目構造よりもゴミの付着量が少なく、清掃頻度を低減することができる。
また、一の開口部と他の開口部は貯留部の位置よりも鉛直方向上方の位置に形成されており、貯留部は流路よりも鉛直方向下方に配置されているので、貯留部は気流の影響を受け難く、貯留部から安定してガスが発生できる。
【0018】
さらに本発明のガス供給装置は、気流生成部が生成した気流を乾燥可能な乾燥部を備え、気流速度低減部は、乾燥部が乾燥させた気流の速度を下げることが可能である構成とすることができる。
【0019】
この場合、気流にガスを取り込み易くなり、また、周囲雰囲気の湿度によるガス取り込み量の変化が少なくなる。
【0020】
また、本発明のガス供給装置において、ガス発生誘発物は紫外線であり、物質は、紫外線を照射されて二酸化塩素ガスを発生可能な溶液であり、紫外線を貯留部へ向けて照射可能な紫外線照射部と、紫外線照射部と貯留部に貯留された溶液の液面との間に配置されており、紫外線照射部から照射された紫外線の溶液に当たる紫外線量と、貯留部に貯留された溶液から発生した二酸化塩素ガスの拡散量とを制限可能な制限部とを備える構成とすることができる。
【0021】
この場合、紫外線量が制限されるので、紫外線が溶液の内部にまで浸透し難くなって溶液内での化学反応を抑制し、過剰な二酸化塩素ガスの発生を抑制できる。
【0022】
また、本発明のガス供給装置において、制限部が、ガラス繊維ストランドを含む不織布で構成された場合、ガラス繊維ストランドが紫外線を乱反射して溶液に当たる紫外線量を制限できると共に、二酸化塩素ガスを不織布の隙間から通して拡散量を制限できる。
【0023】
また、本発明のガス供給装置は、平板状の水平部材と、水平部材に対して略直交する方向に延びて水平部材に接続された垂直部材とを有すると共に、溶液を吸い上げ可能な吸上体を備え、制限部は吸上体の水平部材に載置された構成とすることができる。
【0024】
この場合、紫外線照射部との間の距離が一定の位置すなわち水平部材が配置された位置に、溶液を吸い上げて保持しておくことが可能であり、溶液が減っても紫外線照射部と溶液との間の距離を一定に保つことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るガス供給装置は、発生させたガスを安定して供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明を適用した二酸化塩素ガス供給装置の天面部を外した状態の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図1に示すA-A線に沿った本発明の二酸化塩素ガス供給装置の概略断面図である。
【
図3】従来の二酸化塩素を発生させる装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用した二酸化塩素ガス供給装置の天面部を外した状態の一例を示す概略断面図である。
また、
図2は、
図1に示すA-A線に沿った本発明の二酸化塩素ガス供給装置の概略断面図である。
なお、
図2では天面部も示している。
【0028】
図1に示す本発明の二酸化塩素ガス供給装置1の装置本体1Aは、6つの面を有する筐体である。
【0029】
すなわち、装置本体1Aは、正面部1Bと、正面部1Bに対向する位置にある背面部1Cと、正面部1B及び背面部1Cに対して略直交した状態で正面部1B及び背面部1Cに接続された右側面部1Dと、右側面部1Dに対向する位置にあり正面部1B及び背面部1Cに接続された左側面部1Eと、正面部1B、背面部1C、右側面部1D及び左側面部1Eに対して略直交した状態でこれらの面に接続された天面部1Fと、天面部1Fに対向する位置にあり正面部1B、背面部1C、右側面部1D及び左側面部1Eに接続された底面部1Gを有し、これらの面に囲まれた空間が内部に形成されている。
【0030】
また、装置本体1Aの内部の空間は、正面部1Bと背面部1Cそれぞれから突出した仕切部材1Hによって、上方の空間と下方の空間とに仕切られているが、装置本体1Aの内部の空間の略中央領域は吹き抜けとなっていて、上方の空間と下方の空間は連通している。
【0031】
また、本発明の二酸化塩素ガス供給装置1は、貯留容器2を備える。
ここで、貯留容器2は、装置本体1Aの下方の空間の略中央領域に移動可能に配置されている。
【0032】
また、貯留容器2は、亜塩素酸ソーダ水溶液6を貯留しており、また、貯留容器2の上部は常に開口しており、貯留容器2の内部と外部とを連通している。
また、貯留容器2の上部の開口面積は、60~65cm2、好ましくは63cm2である。
【0033】
また、貯留容器2の内側面には、水平方向へ突起した環状の突起部2Aが設けられている。
ここで、亜塩素酸ソーダ水溶液6の液面の位置が、突起部2Aよりも鉛直方向下方に位置するように亜塩素酸ソーダ水溶液6を貯留容器2に貯留するようにする。
【0034】
また、図示していないが、例えば右側面部1Dまたは左側面部1Eには開閉扉が設けられており、開閉扉を開けて貯留容器2を出し入れしたり、装置本体1Aの内部の点検を行なったりすることができる。
また、貯留容器2は貯留部の一例である。
【0035】
また、本発明の二酸化塩素ガス供給装置1は、ファン3を備える。
ここで、ファン3は、装置本体1Aの内部であって正面部1B近くに配置されている。
【0036】
また、背面部1Cの、装置本体1Aの鉛直方向上方の空間に面した箇所には、装置本体1Aの外部と内部を連通した吸込口3Aが形成されている。
また、正面部1Bの、装置本体1Aの鉛直方向上方の空間に面した箇所には、装置本体1Aの外部と内部を連通した放出口3Bが形成されている。
すなわち、吸込口3Aと放出口3Bは貯留容器2の位置よりも鉛直方向上方の位置に形成されている。
【0037】
また、ファン3は、正面部1Bに形成された放出口3Bの近くに配置されており、放出口3Bと同一の直線上に位置している。
【0038】
従って、ファン3が駆動することによって、吸込口3Aを通って装置本体1Aの外部の空気が装置本体1Aの内部に吸い込まれ、装置本体1Aの内部の空間を通って放出口3Bから放出される。
すなわち、ファン3は、吸込口3Aと放出口3Bの間を流れる気流を生成する。
また、ファン3は気流生成部の一例であり、吸込口3Aと放出口3Bは開口部の一例である。
【0039】
また、本発明の二酸化塩素ガス供給装置1は、屈折流路4を備える。
ここで、屈折流路4は、装置本体1Aの上方の空間の、気流が通る領域でもある略中央領域に配置されている。
【0040】
すなわち、屈折流路4は、第1の流路壁4Aと第2の流路壁4Bとで構成されている。
また、第1の流路壁4Aは、正面部1Bと背面部1Cとを結ぶ仮想の垂線に対して斜め方向に突出した状態で左側面部1Eに取付けられている。
【0041】
また、第1の流路壁4Aの突出先端は右側面部1Dに接していない。すなわち、第1の流路壁4Aの突出先端と右側面部1Dとの間には空間が設けられている。
【0042】
また、第2の流路壁4Bは、正面部1Bと背面部1Cとを結ぶ仮想の垂線に対して斜め方向であると共に、第1の流路壁4Aとの間に一定の間隔を設けて第1の流路壁4Aに対して略平行に突出した状態で右側面部1Dに取付けられている。
【0043】
また、第2の流路壁4Bの突出先端は左側面部1Eに接していない。すなわち、第2の流路壁4Bの突出先端と左側面部1Eとの間には空間が設けられている。
【0044】
従って、気流は吸込口3Aから放出口3Bへ向けて進むときに、第1の流路壁4Aと第2の流路壁4Bに当たって進む向きが変わり、蛇行するように進むので、気流が直進するときよりも気流の速度を低減できる。
なお、
図1に示す例では、2回大きく気流の進行方向が変わっているが、これに限定されないことは勿論であり、さらに多くの流路壁を使うなどして気流の進行方向をさらに多数回変えることもできる。
【0045】
また、第1の流路壁4Aと第2の流路壁4Bは、天面部1Fと仕切部材1Hに接しており、気流は必ず屈折流路4を通過して放出口3Bへ到達するようになっている。
ここで、
図1及び
図2に示す実線矢印が、気流の進行方向を示している。
【0046】
また、このように屈折流路4を構成する第1の流路壁4Aと第2の流路壁4Bはそれぞれ、左側面部1Eと右側面部1Dに突出して取付けられたものであって、屈折流路4の下部は開口しており、また、屈折流路4は、装置本体1Aの上方の空間の略中央領域に配置されているので、開口した貯留容器2の上部と屈折流路4の下部とは連通している。
また、屈折流路4は気流速度低減部の一例である。
【0047】
また、本発明の二酸化塩素ガス供給装置1は、ヒータ5を備える。
ここで、ヒータ5は、装置本体1Aの内部であって背面部1C近くに配置されている。
すなわち、ヒータ5は、背面部1Cに形成された吸込口3Aの近くに配置されており、ファン3が駆動して吸込口3Aから吸い込まれた外部の空気に熱を加えて乾燥させる。
【0048】
すなわちヒータ5は、気流を乾燥させる。
また、ヒータ5は乾燥部の一例である。
【0049】
また、ヒータ5の位置は、屈折流路4の位置よりも気流の上流域に存在するので、屈折流路4は、ヒータ5が乾燥させた気流の速度を下げることになる。
【0050】
また、本発明の二酸化塩素ガス供給装置1は、紫外線ランプ7を備える。
ここで、紫外線ランプ7は、装置本体1Aの天面部1Fの略中央領域に取付けられており、紫外線を照射可能である。
【0051】
また、屈折流路4は、装置本体1Aの略中央領域に配置されており、第1の流路壁4Aと第2の流路壁4Bは、天面部1Fにまで延びて接しているので、天面部1Fの略中央領域に取付けられた紫外線ランプ7は、屈折流路4内に位置している。
【0052】
そして、開口した貯留容器2の上部と屈折流路4の下部とは連通しているので、紫外線ランプ7は貯留容器2へ向けて紫外線を照射可能である。
また、紫外線ランプ7は紫外線照射部の一例である。
【0053】
また、本発明の二酸化塩素ガス供給装置1は、吸上体9を備える。
ここで、吸上体9は、平板状の水平部材9Aを有する。
また、吸上体9は、垂直部材9Bを有しており、垂直部材9Bは、水平部材9Aに対して略直交する方向に延びて水平部材9Aに接続されている。
【0054】
また、水平部材9A及び垂直部材9Bは、繊維から成る吸水性が良い不織布で構成されている。
また、水平部材9Aは、貯留容器2に設けられた突起部2Aに載置されており、垂直部材9Bは、突起部2Aの先端に囲まれた空間を通って亜塩素酸ソーダ水溶液6に漬けられている。
【0055】
従って、垂直部材9Bが亜塩素酸ソーダ水溶液6を吸い上げ、さらに垂直部材9Bに接続した水平部材9Aも亜塩素酸ソーダ水溶液6を吸って保持する。
【0056】
また、本発明の二酸化塩素ガス供給装置1は、ガラス繊維ストランド不織布シート8を備える。
ここで、ガラス繊維ストランド不織布シート8は、50mm程度にカットされたガラス繊維ストランドが無方向に均一に分散され、シラン系樹脂で不織布シート状に成形されたものである。
また、ガラス繊維ストランド不織布シート8の固形物密度は450g/m2である。
【0057】
また、ガラス繊維ストランド不織布シート8は、吸上体9の水平部材9Aに載置されている。
【0058】
すなわち、ガラス繊維ストランド不織布シート8は、紫外線ランプ7と亜塩素酸ソーダ水溶液6の液面との間に配置されている。
また、ガラス繊維ストランド不織布シート8はこのように配置されているので、紫外線ランプ7が照射した紫外線が、吸上体9の水平部材9Aに保持された亜塩素酸ソーダ水溶液6に当たる前に、紫外線に当たる。
【0059】
そして、ガラス繊維ストランド不織布シート8のガラス繊維ストランドが紫外線を乱反射するので、亜塩素酸ソーダ水溶液6に当たる紫外線量を制限できる。
また、ガラス繊維ストランド不織布シート8を通った紫外線が亜塩素酸ソーダ水溶液6に当たり、その結果発生した二酸化塩素ガスは、ガラス繊維ストランド不織布シート8の隙間を通ってしか拡散しないので、二酸化塩素ガスの拡散量も制限できる。
ガラス繊維ストランド不織布シート8は制限部の一例である。
【0060】
本発明の二酸化塩素ガス供給装置すなわちガス供給装置において、気流の速度を下げるために必ずしも屈折流路構造でなくてもよく、例えばメッシュの網目に気流を通過させて気流の速度を下げることもできる。
【0061】
しかし、屈折流路構造であれば、メッシュ網目構造よりもゴミの付着量が少なく、清掃頻度を低減することができるので好ましい。
【0062】
また、本発明のガス供給装置において、必ずしも吸込口と放出口は貯留容器すなわち貯留部の位置よりも鉛直方向上方の位置に形成されていなくてもよく、また、必ずしも貯留部は屈折流路よりも鉛直方向下方に配置されていなくてもよい。
【0063】
しかし、このような配置であれば、貯留部は気流の影響を受け難く、貯留部から安定してガスが発生できる。
【0064】
また、本発明のガス供給装置は、必ずしもヒータすなわち乾燥部を備えていなくてもよく、また、気流速度低減部は必ずしも乾燥部が乾燥させた気流の速度を下げるようにしなくてもよい。
【0065】
しかし、本発明のガス供給装置が乾燥部を備え、気流速度低減部が、乾燥部が乾燥させた気流の速度を下げるようにすることで、気流にガスを取り込み易くなり、また、周囲雰囲気の湿度によるガス取り込み量の変化が少なくなるので好ましい。
【0066】
また、本発明のガス供給装置は、必ずしもガラス繊維ストランド不織布シートすなわち制限部を備えていなくてもよい。
【0067】
しかし、本発明のガス供給装置が制限部を備えていれば、紫外線量が制限されるので、紫外線が溶液の内部にまで浸透し難くなって溶液内での化学反応を抑制し、過剰な二酸化塩素ガスの発生を抑制できるので好ましい。
【0068】
また、制限部は必ずしもガラス繊維ストランド不織布シート、すなわちガラス繊維ストランドを含む不織布で構成されていなくてもよい。
しかし、制限部がガラス繊維ストランドを含む不織布で構成されていれば、ガラス繊維ストランドが紫外線を乱反射して溶液に当たる紫外線量を制限できると共に、二酸化塩素ガスを不織布の隙間から通して拡散量を制限でき、好ましい。
【0069】
また、本発明のガス供給装置は、必ずしも吸上体を備えていなくてもよい。
【0070】
しかし、本発明のガス供給装置が吸上体を備えていれば、紫外線ランプすなわち紫外線照射部との間の距離が一定の位置すなわち水平部材が配置された位置に、溶液を吸い上げて保持しておくことが可能であり、溶液が減っても紫外線照射部と溶液との間の距離を一定に保つことができるので好ましい。
【0071】
また、貯留部に貯留される物質は必ずしも亜塩素酸ソーダ水溶液でなくてもよく、例えば安定化二酸化塩素水溶液を貯留部に貯留しておくこともできる。
また、貯留部に貯留された物質に適用して二酸化塩素ガスを発生させるものであれば、必ずしも紫外線を貯留部へ向けて照射しなくてもよく、例えばオゾンを貯留部へ向けて照射することもできる。
【0072】
また、貯留容器すなわち貯留部は、必ずしも内側面に突起部が設けられていなくてもよく、例えば貯留部の上部の開口面積よりも溶液が貯留される箇所の開口面積を小さくすることで段差を設け、この段差部分に吸上体の水平部材を載置するようにすることもできる。
【0073】
次に、本発明の二酸化塩素ガス供給装置の動作を説明する。
亜塩素酸ソーダ水溶液6を貯留した貯留容器2を、本発明の二酸化塩素ガス供給装置1の装置本体1Aの内部の下方の空間に配置する。
また、貯留容器2には、亜塩素酸ソーダ水溶液6に垂直部材9Bを浸した吸上体9と、吸上体9の水平部材9Aに載置されたガラス繊維ストランド不織布シート8も配置する。
【0074】
そして、本発明の二酸化塩素ガス供給装置1の電源をオンにして、ファン3を駆動させると共に紫外線ランプ7も点灯させる。
【0075】
すると、装置本体1Aに形成された吸込口3Aを通って装置本体1Aの外部の空気を装置本体1Aの内部に吸い込み、装置本体1Aの内部の空間を通って放出口3Bから放出させるという気流を生成する。
また、吸込口3Aにおける気流の速度は0.6m/sである。
【0076】
また、吸込口3Aを通って装置本体1Aの内部に吸い込まれた空気に、ヒータ5が熱を加えて空気を乾燥させる。
【0077】
熱を加えられて乾燥した気流の空気は、屈折流路4に入り込み、第1の流路壁4Aと第2の流路壁4Bに当たって進む向きが変わり、蛇行するように進んで気流の速度が低下する。
すなわち、屈折流路4における気流の速度は0.4m/sとなる。
【0078】
一方、紫外線ランプ7から照射された紫外線は貯留容器2へ入射し、ガラス繊維ストランド不織布シート8に当たる。
【0079】
ここで、吸上体9の垂直部材9Bが亜塩素酸ソーダ水溶液6を吸い上げ、さらに垂直部材9Bに接続した水平部材9Aも亜塩素酸ソーダ水溶液6を吸って保持している。
【0080】
また、ガラス繊維ストランド不織布シート8は、入射した紫外線を乱反射して、水平部材9Aに保持された亜塩素酸ソーダ水溶液6に当たる紫外線量を制限する。
【0081】
また、ガラス繊維ストランド不織布シート8を通った紫外線が亜塩素酸ソーダ水溶液6に当たると、二酸化塩素ガスが発生し、発生した二酸化塩素ガスは、ガラス繊維ストランド不織布シート8の隙間を通って、拡散量が制限されながら拡散していく。
【0082】
すなわち、ガラス繊維ストランド不織布シート8の隙間を通った二酸化塩素ガスは、開口した貯留容器2の上部を通り、開口した貯留容器2の上部と連通した屈折流路4へと入り込む。
【0083】
そして、屈折流路4において、乾燥した気流の空気と二酸化塩素ガスとを0.1~0.3秒接触させて気流の空気と二酸化塩素ガスとを混合し、二酸化塩素ガスを含む混合ガスを、放出口3Bから装置本体1Aの外部へ放出し、本発明の二酸化塩素ガス供給装置1の周囲の雰囲気中に二酸化塩素ガスを供給する。
【0084】
また、放出口3Bにおける、気流の速度は1.1m/sである。
また、放出口3Bから放出される、二酸化塩素ガスを含む混合ガスの流量は、0.58±0.1m3/minであり、混合ガスの二酸化塩素濃度は0.1ppm±0.05である。
【0085】
また、気流の速度は適宜変更できるが、二酸化塩素ガスを含む混合ガスの二酸化塩素濃度0.1ppm±0.05を保つためには、貯留容器2の上部の開口面積が63cm2であり、屈折流路4における、乾燥した気流の空気と二酸化塩素ガスとの接触時間が0.1~0.3秒であり、二酸化塩素ガスを含む混合ガスの流量が0.58±0.1m3/minであることが好ましい。
【0086】
以上のように、本発明の二酸化塩素ガス供給装置すなわちガス供給装置は、ファンすなわち気流生成部を備えているので、二つの開口部を通過する気流を生成し、ガス供給装置の外部へ流れる気流を生成できる。
【0087】
また、本発明のガス供給装置は、屈折流路すなわち気流速度低減部を備えているので、気流の空気と、発生させた二酸化塩素ガスすなわちガスとを充分に混合させることができる。
【0088】
従って、本発明のガス供給装置は、発生させたガスがほとんど含まれない気体を放出することなく、発生させたガスを安定して供給できる。
すなわち、本発明のガス供給装置は、一定の二酸化塩素濃度を有する、発生させた二酸化塩素ガスと空気との混合ガスを一定の流量で、装置の外部へ供給できる。
【0089】
また、本発明の出願人は日本国特許第5015651号の権利者でもあり、本発明と日本国特許第5015651号の発明は互いに補完する関係である。
【符号の説明】
【0090】
1 二酸化塩素ガス供給装置
1A 装置本体
1B 正面部
1C 背面部
1D 右側面部
1E 左側面部
1F 天面部
1G 底面部
1H 仕切部材
2 貯留容器
2A 突起部
3 ファン
3A 吸込口
3B 放出口
4 屈折流路
4A 第1の流路壁
4B 第2の流路壁
5 ヒータ
6 亜塩素酸ソーダ水溶液
7 紫外線ランプ
8 ガラス繊維ストランド不織布シート
9 吸上体
9A 水平部材
9B 垂直部材