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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046236
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】金属管ライニング方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/28 20060101AFI20220315BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220315BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20220315BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20220315BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20220315BHJP
   B05D 7/22 20060101ALI20220315BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
B05D1/28
B05D7/24 303C
B05D7/24 301A
B05D3/00 C
B05D3/02 Z
B05D3/12 Z
B05D7/22 C
B05D7/22 E
B05D7/14 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152174
(22)【出願日】2020-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000208695
【氏名又は名称】第一高周波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】羽石 亮平
(72)【発明者】
【氏名】松本 俊也
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AC64
4D075AC79
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC96
4D075BB07Y
4D075BB29Z
4D075BB35Y
4D075BB91Y
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA15
4D075DA19
4D075DB01
4D075EA02
4D075EC10
(57)【要約】
【課題】金属管の内面に金属層を形成する金属管ライニング方法において、特に長尺の金属管であっても、熱膨張による伸びを吸収し、安定した加工を行うことのできる金属管ライニング方法を提供する。
【解決手段】管内部に粉末金属20が供給された金属管Wの両端を把持手段2a、3aにより把持し、牽引手段7、8により軸方向に沿って管中心よりも外側に牽引しながら、回転手段2,3により該金属管を軸周り所定方向に回転させるとともに、加熱手段15により前記金属管を加熱し、前記粉末金属を前記金属管の内面に溶融付着する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管の内面に金属層を形成する金属管ライニング方法において、
管内部に粉末金属が供給された前記金属管の両端を把持手段により把持し、牽引手段により軸方向に沿って管中心よりも外側に牽引しながら、回転手段により該金属管を軸周り所定方向に回転させるとともに、
加熱手段により前記金属管を加熱し、前記粉末金属を前記金属管の内面に溶融付着することを特徴とする金属管ライニング方法。
【請求項2】
前記把持手段により前記金属管の両端を把持し、前記牽引手段により軸方向に沿って管中心よりも外側に牽引する際、伸び量検出手段により前記金属管の伸び量を検出するとともに金属管の加熱部の温度を検出し、検出した伸び量及び温度に基づき制御手段が牽引力を制御することを特徴とする請求項1に記載された金属管ライニング方法。
【請求項3】
前記金属管の加熱部の温度により算出される変形抵抗に基づき、前記制御手段が牽引力を制御することを特徴とする請求項2に記載された金属管ライニング方法。
【請求項4】
前記回転手段により前記金属管を軸周り所定方向に回転させる際、
前記金属管の両端側にそれぞれ設けられた前記回転手段を互いに同期させて所定方向に回転駆動させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された金属管ライニング方法。
【請求項5】
前記加熱手段により前記金属管の外面を加熱する際、誘導加熱により加熱を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された金属管ライニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属管ライニング方法に関し、特に長尺の金属管であっても、熱膨張による伸びを吸収し、安定した加工を行うことのできる金属管ライニング方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属管(鋼管)の内面に金属膜(層)を形成する方法としては、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された方法が実施される装置は、例えば図5に示す構成のように金属管51と、金属管51内に粉末金属53を供給するための粉末金属供給管52と、金属管51の外側から加熱する予熱装置54と、金属管51の内部側から管内面を加熱する加熱装置55とを備えている。
【0003】
更には金属管51の端部を保持する管支持部材56と、前記管支持部材56が先端に取り付けられ、金属管51を中心軸周りに回転させる回転装置57とを備えている。
【0004】
このような構成において、金属管51の一端部を管支持部材56によって支持する一方、金属管51内に粉末金属供給管52と、内部からの加熱装置55とを挿入し、金属管51の外周面側に外側からの予熱装置54を配置する。
そして、回転装置57を駆動して金属管51を内面の遠心力が3G以上になるように回転させながら、粉末金属供給管52から粉末金属53を金属管51内部に供給する。
【0005】
回転する金属管51の内面には、遠心力により粉末金属の層が形成される。この層を含め、外部からの予熱装置54により金属管51の内面が粉末金属の融点よりも200~300℃程度低い温度になるまで予熱し、その後速やかに内部からの加熱装置55により前記層及び金属管51内面が粉末金属の融点よりも50~100℃程度高くなるように加熱して、金属管51の内面に金属層58を形成する。
【0006】
尚、粉末金属供給管52、予熱装置54及び加熱装置55は、互いに一定間隔を保持したまま、一定速度で金属管51の一端側から他端側まで移動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平5-33307号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記のように金属管の内面に金属層を形成する場合、ワークである金属管51の軸方向の長さは限定されるものではない。
しかしながら、金属管51が長尺の場合、金属管51が熱膨張により軸方向に無視できない程度に伸びるという問題があった。ここで、金属管51の両端は、回転装置57の管支持部材56により保持されているため、前記熱膨張による伸び(撓み)を逃がすことができず、回転する金属管51が暴れ、加工が不可能になるという課題があった。
【0009】
本発明は、このような課題のもとになされたものであり、金属管の内面に金属層を形成する金属管ライニング方法において、特に長尺の金属管であっても、熱膨張による伸びを吸収し、安定した加工を行うことのできる金属管ライニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る金属管ライニング方法は、金属管の内面に金属層を形成する金属管ライニング方法において、管内部に粉末金属が供給された前記金属管の両端を把持手段により把持し、牽引手段により軸方向に沿って管中心よりも外側に牽引しながら、回転手段により該金属管を軸周り所定方向に回転させるとともに、加熱手段により前記金属管を加熱し、前記粉末金属を前記金属管の内面に溶融付着することに特徴を有する。
【0011】
尚、前記把持手段により前記金属管の両端を把持し、前記牽引手段により軸方向に沿って管中心よりも外側に牽引する際、伸び量検出手段により前記金属管の伸び量を検出するとともに金属管の加熱部の温度を検出し、検出した伸び量及び温度に基づき制御手段が牽引力を制御することが望ましい。
また、前記金属管の加熱部の温度により算出される変形抵抗に基づき、前記制御手段が牽引力を制御することが望ましい。
また、前記回転手段により前記金属管を軸周り所定方向に回転させる際、前記金属管の両端側にそれぞれ設けられた前記回転手段を互いに同期させて所定方向に回転駆動させることが望ましい。
また、前記加熱手段により前記金属管の外面を加熱する際、誘導加熱により加熱を行うことが望ましい。
【0012】
このような方法によれば、ワークである金属管の両端側を保持し軸周りに高速回転させるとともに、所定の牽引力で金属管の両端を軸方向に沿って管中心よりも外側に牽引するように構成した。
それにより、熱膨張により伸びが発生した金属管の両端が引き離す方向に引っ張られ、金属管の撓みを吸収することができる。その結果、長尺の金属管であっても、金属管が暴れることのない安定した高速回転が得られ、精度良い加工を行うことができる。
また、金属管の両端側を把持手段により保持し、左右両端の回転手段を同期して回転させるため、負荷を分け、回転手段のモータを小型化することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金属管の内面に金属層を形成する金属管ライニング方法において、特に長尺の金属管であっても、熱膨張による伸びを吸収し、安定した加工を行うことのできる金属管ライニング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の金属管ライニング方法が適用される金属管ライニング装置の全体構成を模式的に示す側面図である。
図2図2は、図1の金属管ライニング装置の要部拡大断面図である。
図3図3は、図2の金属管内の金属粉末が層状に変化した状態を示す断面図である。
図4図4は、本発明の金属管ライニング方法の処理を説明するためのフローである。
図5図5は、従来の金属管ライニング装置の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る金属管ライニング方法の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本発明の金属管ライニング方法が適用される金属管ライニング装置の全体構成を模式的に示す側面図であり、図2は、図1の要部拡大断面図である。
【0016】
図1に示す金属管ライニング装置1は、ワークである長尺の金属管Wの内面に、金属層を形成するための装置である。この金属管ライニング装置1は、金属管Wの両端部をそれぞれチャック2a、3a(把持手段)により把持するとともに互いに同期して金属管Wを所定方向に回転させるモータを有する回転装置2、3(回転手段)と、前記回転装置2、3をそれぞれ保持する台車5、6とを備える。
【0017】
前記台車5、6は、レール台4上面に形成された直線のレール4a上を走行可能に設置され、それにより回転装置2、3に保持された直管の金属管Wは、前記直線のレール4aに平行となるように保持される。
また、レール4aに沿った前記一対の台車5、6の外側には、これら台車5、6を牽引するための一対の引張シリンダ7、8(牽引手段)が設けられている。即ち、台車5、6に保持された回転装置2、3は、レール4aに沿って、互いに引き離される方向に牽引され得る構成となされ、それによって金属管Wを左右両端側に引っ張ることが可能となされている。
【0018】
また、前記引張シリンダ7、8の駆動制御は、コンピュータからなる制御部30(制御手段)により行われる。具体的には、引張シリンダ7、8は、図示するピストン7a(8a)、シリンダチューブ7b(8b)、ピストンロッド7c(8c)を有し、例えば空圧方式の場合、シリンダチューブ7b(8b)内においてピストン7a(8a)によって仕切られる容積室内の空気量を出し入れすることによりピストン7a(8a)及びピストンロッド7c(8c)が移動する。前記容積内の空気の出し入れ制御(バルブ制御)を制御部30が行うことになる。
【0019】
また、台車5、6には、ワイヤ式エンコーダ9、10(伸び量検出手段)がそれぞれ接続され、ワイヤの巻取り量に応じて台車5、6の移動量(金属管Wの引き伸ばし量)を検出可能に構成されている。
このワイヤ式エンコーダ9、10の検出結果は、制御部30に入力される。制御部30では、取得した伸び量(検出伸び量)を、別途測定した温度におけるワークである金属管Wの径、長さ、材質といった属性により予め把握している伸び量の値(目標値)と比較し、検出伸び量が目標値に達していなければ引張シリンダ7、8により更に金属管Wを牽引するように制御する。前記検出伸び量が目標値に達していれば、引張シリンダ7、8による金属管Wの牽引を停止するように制御するように構成されている。
【0020】
また、図2に金属管Wの一端側のみを拡大して示すように、金属管Wの端部は回転装置2(3)のチャック2a(3a)に固定される。また、金属管Wの端部側管内には、金属管内に予め供給された金属粉末20が管外に漏れないように堰き止めるための堰き止め板11(12)が挿嵌されている。この堰き止め板11(12)は、回転装置2(3)の先端側に取り付けられている。
【0021】
また、図2に示すように金属管Wの外周を取り囲むように環状に加熱コイル15(加熱手段)が配置される。この加熱コイル15には、コイルに高周波電流(交流)を流すための電流供給部16が接続されている。
電流供給部16が加熱コイル15に高周波電流を流すと、交番磁束が金属管Wを貫通し、金属管Wには高密度の渦電流が流れる。そして、金属管Wは抵抗を有するため、ジュール熱が発生し、それによって金属管Wが急速に加熱(誘導加熱)されるようになっている。
【0022】
また、加熱コイル15は、スライダ17によって支持され、このスライダ17は、スライドレール18に沿って移動可能となされている。前記スライドレール18は、金属管Wに平行に、金属管Wの一端側から他端側まで延設されている。スライダ駆動部19の駆動によりスライダ17とともに加熱コイル15が金属管Wの一端側から他端側まで移動することによって、金属管Wの全体を加熱できるように構成されている。
【0023】
続いて、このように構成された金属管ライニング装置1による金属管Wの内面への金属層の形成方法(ライニング方法)について説明する。
先ず、ワークである金属管Wの中に所定量の金属粉を供給し(図4のステップS1)、金属管Wの両端を回転装置2、3のチャック2a、3aにより把持する(図4のステップS2)。
【0024】
次いで、制御部30の制御により、金属管Wの両端側にそれぞれ設けられた回転装置2、3を互いに同期させて所定方向に回転駆動させる。尚、このように回転装置2、3を同期して回転させるため、負荷を分け、回転装置2、3のモータを小型化することができ、金属管Wのねじれが発生することがなくなる。
【0025】
また、電流供給部16により加熱コイル15に高周波電流が流され、金属管Wに流れる渦電流により生じたジュール熱によって誘導加熱が開始されるとともに、加熱コイル15が金属管Wの軸方向に沿って所定速度で移動開始される(図4のステップS3)。尚、温度計が加熱コイル15に追随して移動し、コイルが通り過ぎた直後の部分の金属管Wの温度を測定するように設置される。
【0026】
金属管Wが内部の金属粉の融点より高い温度で加熱されると、金属粉は溶融し、層となって管内面に付着する。金属管Wは所定速度で回転しているため、所定Gの遠心力が働き、図3に示すように管内面に均一な膜厚の金属層21として形成される。
【0027】
一方、制御部30は、引張シリンダ7,8を制御し、所定の牽引力で金属管Wの両端を軸方向に沿って管中心よりも外側に牽引させる(図4のステップS4)。ここで、前記牽引力は、金属管Wの加熱部の温度により算出される変形抵抗に基づき、前記制御部30が制御する。具体的には、前記変形抵抗は材質、断面積、温度で決まるものであり、制御部30は、索引力を変形抵抗よりも小さくなるよう制御する。
加熱されている金属管Wは、特に管が長尺の場合、熱膨張により軸方向に無視できない程度に伸びが発生している。ここで、前述のように金属管Wの両端を引き離す方向に引っ張っているため、金属管Wの撓みが吸収され、回転する金属管Wが暴れることなく加工を続けることができる。
【0028】
また、金属管Wの伸びは、ワイヤ式エンコーダ9、10によって検出され、制御部30に入力される(図4のステップS5)。
制御部30では、取得した伸び量(検出伸び量)を、取得した温度におけるワークである金属管Wの径、長さ、材質といった属性により予め把握している伸び量の値(目標値)と比較し、検出伸び量が目標値に達していなければ引張シリンダ7、8により更に金属管Wを牽引するように制御する。前記検出伸び量が目標値に達していれば、引張シリンダ7、8による金属管Wの牽引を停止するように制御する。
【0029】
加熱時間が予め設定された時間に達すると、金属管Wに対する加熱が停止される(図4のステップS6)。
次いで、金属管Wの放冷による冷却処理が施される(図4のステップS7)
【0030】
尚、このとき、金属管Wの回転と金属管W両端の牽引は継続して行われる。それにより残留応力によって発生する金属管Wの反りを抑制することができる。
そして、所定の冷却工程が終了すると、金属管Wの回転及び牽引が停止され、金属管Wのライニング処理が完了する(図4のステップS8)。
【0031】
以上のように本発明に係る金属管ライニング方法によれば、ワークである金属管Wの両端側を保持し軸周りに高速回転させるとともに、所定の牽引力で金属管Wの両端を軸方向に沿って管中心よりも外側に牽引するように構成した。
それにより、熱膨張により伸びが発生した金属管Wの両端が引き離す方向に引っ張られ、金属管Wの撓みを吸収することができる。その結果、長尺の金属管Wであっても、金属管Wが暴れることのない安定した高速回転が得られ、精度良い加工を行うことができる。
また、金属管Wの両端側を回転装置2、3により保持し、同期して回転させるため、負荷を分け、回転装置2、3のモータを小型化することができる。
【0032】
尚、前記実施の形態においては、金属管Wの加熱方法として加熱コイル15を用いた誘導加熱を行うものとしたが、本発明にあっては、金属管Wの加熱方法は限定されず、種々の加熱方法を採用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 金属管ライニング装置
2 回転装置(回転手段)
2a チャック(把持手段)
3 回転装置(回転手段)
3a チャック(把持手段)
4 レール台
4a レール
5 台車
6 台車
7 引張シリンダ(牽引手段)
8 引張シリンダ(牽引手段)
9 ワイヤ式エンコーダ(伸び量検出手段)
10 ワイヤ式エンコーダ(伸び量検出手段)
15 加熱コイル(加熱手段)
20 粉末金属
30 制御部(制御手段)
W 金属管
図1
図2
図3
図4
図5