(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046270
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】電圧調整装置及び電圧調整装置の部品交換方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/12 20060101AFI20220315BHJP
H02J 3/18 20060101ALI20220315BHJP
H02M 5/12 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
H02J3/12
H02J3/18 178
H02M5/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152215
(22)【出願日】2020-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 博宣
【テーマコード(参考)】
5G066
5H750
【Fターム(参考)】
5G066DA01
5G066FA01
5H750BA01
5H750BA05
5H750CC03
5H750CC12
5H750DD14
5H750DD18
5H750DD25
5H750FF05
(57)【要約】
【課題】部品の交換が容易な電圧調整装置及び電圧調整装置の部品交換方法を提供する。
【解決手段】電圧調整装置(100)は、三相の交流電圧を配電する配電線(1u,1v,1W)に二次巻線が直列に接続される直列変圧器(1)と、配電線に一次巻線が並列に接続される調整変圧器(2)と、配電線の電圧を計測するための計測用変圧器(PT1,PT2)と、調整変圧器の二次巻線のタップを切換スイッチ(Thm_X)により切り換えて直列変圧器の一次巻線に接続するタップ切換器(3)と、切換スイッチをオンに制御する制御部(4)と、直列変圧器に対してタップ切換器を離接するための第1接続部(TB1)と、調整変圧器に対してタップ切換器を離接するための第2接続部(TB2)と、計測用変圧器に対して制御部を離接するための第3接続部(TB3)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相の交流電圧を配電する配電線に二次巻線が直列に接続される直列変圧器と、
前記配電線に一次巻線が並列に接続される調整変圧器と、
前記配電線の電圧を計測するための計測用変圧器と、
前記調整変圧器の二次巻線のタップを切換スイッチにより切り換えて前記直列変圧器の一次巻線に接続するタップ切換器と、
前記切換スイッチをオンに制御する制御部と、
前記直列変圧器に対して前記タップ切換器を離接するための第1接続部と、
前記調整変圧器に対して前記タップ切換器を離接するための第2接続部と、
前記計測用変圧器に対して前記制御部を離接するための第3接続部と
を備える電圧調整装置。
【請求項2】
前記切換スイッチは、複数の半導体スイッチを含み、
該複数の半導体スイッチからの熱を放熱する放熱器を更に備え、
前記タップ切換器は、前記放熱器と分離可能に接触して前記複数の半導体スイッチを保持する保持部材を有する請求項1に記載の電圧調整装置。
【請求項3】
前記タップ切換器は、前記直列変圧器の一次巻線に接続する電路に並列に接続された限流抵抗器及び矯絡用スイッチの直列回路を有し、
前記第1接続部は、前記直列変圧器に対して前記タップ切換器のうち前記限流抵抗器を除く他の部分を離接するためのものである
請求項1又は請求項2に記載の電圧調整装置。
【請求項4】
前記タップ切換器は、前記直列変圧器の一次巻線に接続する電路に流れる電流を計測するための変流器と、前記電路に並列に接続された電磁接触器と、前記電路に印加する電圧を計測するための第2の計測用変圧器とのうちの少なくとも1つを有する請求項1から請求項3の何れか1項に記載の電圧調整装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の電圧調整装置の部品を交換する方法であって、
前記タップ切換器を、前記直列変圧器の一次巻線を短絡する素通しタップの状態にする工程と、
前記配電線に前記電圧調整装置を迂回する迂回路を接続する工程と、
前記配電線から前記電圧調整装置を切り離す工程と、
前記第1接続部及び前記第2接続部にて前記タップ切換器を切り離し、前記第3接続部にて前記制御部を切り離す工程と、
前記タップ切換器及び前記制御部それぞれを新旧交換する工程と、
前記第1接続部及び前記第2接続部にて交換後の前記タップ切換器を接続し、前記第3接続部にて交換後の前記制御部を接続する工程と、
前記配電線に前記電圧調整装置を接続する工程と、
前記配電線から前記迂回路を切り離す工程と、
前記タップ切換器を前記素通しタップの状態から復帰させる工程と
を含む電圧調整装置の部品交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電系統における配電線の三相交流電圧を変圧して調整する電圧調整装置及び電圧調整装置の部品交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる間接切換式の電圧調整装置は、二次巻線が配電線に直列に接続される直列変圧器と、一次巻線が配電線に並列に接続され、二次巻線に複数のタップが設けられた調整変圧器と、該複数のタップを切り換えて直列変圧器の一次巻線に接続するタップ切換器とを備えている(特許文献1参照)。
【0003】
タップ切換器は、直列変圧器の一次巻線に接続するタップを切り換えるための切換スイッチと、タップ切換を行う過程でタップ間に流れる矯絡電流を制限する限流抵抗器及び矯絡用スイッチの直列回路と、運用停止時に閉路して直列変圧器の一次巻線を短絡する電磁接触器とを有する。
【0004】
タップ切換器は、切換スイッチ及び矯絡用スイッチを所定のシーケンスでオンオフすることにより、調整変圧器から直列変圧器の一次巻線に印加する調整電圧の大きさ及び極性を切り換える。切換スイッチをオンオフする制御を行う制御部は、負荷側である二次側の電圧を降圧した電圧を計測用変圧器から取得し、取得した電圧に基づいて計測した二次側の電圧が基準電圧に近づくように制御する。
【0005】
電圧調整装置は、直列変圧器、調整変圧器、計測用変圧器及び限流抵抗器を収納する油入変圧器側と、限流抵抗器を除くタップ切換器及び制御部を含む制御装置側とに分けて構成されている。保守時に交換が必要とされるのは制御装置側に含まれている構成品である。特にタップ切換器は部品点数が多く、保守交換での作業性の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された電圧調整装置では、構成品の保守交換について特段の考慮がなされていなかった。以下では構成品及び該構成品の構成部品を含めて部品と言う。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、部品の交換が容易な電圧調整装置及び電圧調整装置の部品交換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る電圧調整装置は、三相の交流電圧を配電する配電線に二次巻線が直列に接続される直列変圧器と、前記配電線に一次巻線が並列に接続される調整変圧器と、前記配電線の電圧を計測するための計測用変圧器と、前記調整変圧器の二次巻線のタップを切換スイッチにより切り換えて前記直列変圧器の一次巻線に接続するタップ切換器と、前記切換スイッチをオンに制御する制御部と、前記直列変圧器に対して前記タップ切換器を離接するための第1接続部と、前記調整変圧器に対して前記タップ切換器を離接するための第2接続部と、前記計測用変圧器に対して前記制御部を離接するための第3接続部とを備える。
【0010】
本態様にあっては、直列変圧器の二次巻線が配電線に直列に接続され、調整変圧器の一次巻線が配電線に並列に接続される。制御部は、配電線の電圧を計測用変圧器によって計測し、計測した電圧に基づいてタップ切換器の切換スイッチをオンに制御することにより、調整変圧器の二次巻線のタップを切り換えて直列変圧器の一次巻線に接続する。タップ切換器は直列変圧器に対して第1接続部にて分離/接続が可能である。タップ切換器は、更に調整変圧器に対して第2接続部にて分離/接続が可能である。制御部は計測用変圧器に対して第3接続部にて分離/接続が可能である。これにより、直列変圧器、調整変圧器及び計測用変圧器に対してタップ切換器及び制御部を容易に分離し、且つ容易に再接続することができる。
【0011】
本発明の一態様に係る電圧調整装置は、前記切換スイッチは、複数の半導体スイッチを含み、該複数の半導体スイッチからの熱を放熱する放熱器を更に備え、前記タップ切換器は、前記放熱器と分離可能に接触して前記複数の半導体スイッチを保持する保持部材を有する。
【0012】
本態様にあっては、保持部材が、切換スイッチである複数の半導体スイッチを保持すると共に、放熱器と接触して半導体スイッチからの熱を放熱する。タップ切換器が交換される場合は、タップ切換器に含まれる保持部材を放熱器に対して容易に分離し、且つ容易に再接触させることができる。
【0013】
本発明の一態様に係る電圧調整装置は、前記タップ切換器は、前記直列変圧器の一次巻線に接続する電路に並列に接続された限流抵抗器及び矯絡用スイッチの直列回路を有し、前記第1接続部は、前記直列変圧器に対して前記タップ切換器のうち前記限流抵抗器を除く他の部分を離接するためのものである。
【0014】
本態様にあっては、直列変圧器に対し、第1接続部にて限流抵抗器を除くタップ切換器の他の部分の分離/接続が可能である。これにより、発熱量が比較的大きい限流抵抗器をタップ切換器の他の部分とは別に配置した場合であっても、タップ切換器の他の部分を直列変圧器に対して容易に分離し、且つ容易に再接続することができる。
【0015】
本発明の一態様に係る電圧調整装置は、前記タップ切換器は、前記直列変圧器の一次巻線に接続する電路に流れる電流を計測するための変流器と、前記電路に並列に接続された電磁接触器と、前記電路に印加する電圧を計測するための第2の計測用変圧器とのうちの少なくとも1つを有する。
【0016】
本態様にあっては、変流器、電磁接触器及び第2の計測用変圧器のうちの何れかがタップ切換器に含まれる場合であっても、直列変圧器及び調整変圧器に対し、第1接続部及び第2接続部にてタップ切換器を容易に分離し、且つ容易に再接続することができる。
【0017】
本発明の一態様に係る電圧調整装置の部品交換方法は、上述の電圧調整装置の部品を交換する方法であって、前記タップ切換器を、前記直列変圧器の一次巻線を短絡する素通しタップの状態にする工程と、前記配電線に前記電圧調整装置を迂回する迂回路を接続する工程と、前記配電線から前記電圧調整装置を切り離す工程と、前記第1接続部及び前記第2接続部にて前記タップ切換器を切り離し、前記第3接続部にて前記制御部を切り離す工程と、前記タップ切換器及び前記制御部それぞれを新旧交換する工程と、前記第1接続部及び前記第2接続部にて交換後の前記タップ切換器を接続し、前記第3接続部にて交換後の前記制御部を接続する工程と、前記配電線に前記電圧調整装置を接続する工程と、前記配電線から前記迂回路を切り離す工程と、前記タップ切換器を前記素通しタップの状態から復帰させる工程とを含む。
【0018】
本態様にあっては、先ずタップ切換器を素通しタップの状態にすることによって直列変圧器の二次巻線に誘起する電圧を0にする。その後、配電線に迂回路を接続して電気所と負荷とを直結した上で、配電線から直列変圧器、調整変圧器及び計測用変圧器を含む電圧調整装置全体を切り離す。電圧調整装置の切り離しによって、制御部への電圧供給が絶たれ、制御部の動作が停止する。次いで、タップ切換器及び制御部を第1接続部、第2接続部及び第3接続部にて切り離し、新たなタップ切換器及び制御部を第1接続部、第2接続部及び第3接続部にて接続する。そして、配電線に直列変圧器、調整変圧器及び計測用変圧器を含む電圧調整装置全体を再接続して制御部の動作を再開させた後に迂回路を切り離す。最後に、タップ切換器を素通しタップの状態から復帰させて運用状態とする。これにより、電圧調整装置の運用を停止してから再開するまでの間に、直列変圧器、調整変圧器及び計測用変圧器に対してタップ切換器及び制御部を容易に分離し、且つ容易に再接続することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、部品の交換を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係る電圧調整装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】制御部とタップ切換器及び計測用変圧器との間で授受される信号を示す説明図である。
【
図4】電圧調整装置のタップ切換器及び制御部を交換する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態)
図1は、実施形態に係る電圧調整装置100の構成例を示すブロック図である。サイリスタ式の電圧調整装置(TVR=Thyristor type step Voltage Regulator)100は、配電線1u,1v,1wの一次側にある電気所から供給されるU相,V相,W相の交流電圧を調整して、配電線1u,1v,1wの二次側の負荷へu相,v相,w相の交流電圧を配電する。
【0022】
電圧調整装置100は、配電線1u,1v,1wの一次側及び二次側それぞれにて開閉器SW1及びSW2により、配電線1u,1v,1wに対する分離/接続が可能である。開閉器SW1,SW2及び電圧調整装置100を迂回する迂回路10u,10v,10wは、開閉器SW3により、配電線1u,1v,1wに対する分離/接続が可能である。
【0023】
電圧調整装置100は、配電線1u,1v,1wそれぞれに二次巻線112,122,132が直列に接続される直列変圧器1と、配電線1u,1v,1wの二次側に一次巻線211,221,231がΔ結線される調整変圧器2とを備える。電圧調整装置100は、更に、調整変圧器2の二次巻線212,222,232及び直列変圧器1の一次巻線111,121,131の間に設けられたタップ切換器3と、該タップ切換器3に対する切換指令を発令する制御部4とを備える。配電線1u,1v、1wの二次側には、制御部4が線間電圧を計測するための計測用変圧器PT1,PT2がV結線されている。
【0024】
調整変圧器2の二次巻線212,222,232のそれぞれは、一端及び他端から引き出されたタップt1及びt4と,一端及び他端の間から引き出された中間のタップt2及びt3とを有する。二次巻線212,222,232のそれぞれは、タップt1~t4の何れか1つが第2接続部TB2及びタップ切換器3を介して直列変圧器1の一次巻線111,121,131の一端と、一次巻線121,131,111の他端とに接続され、該1つと同一又は異なる他の1つが第2接続部TB2及びタップ切換器3を介して中性点Nに接続される。即ち、調整変圧器2に対し、タップ切換器3は第2接続部TB2にて分離/接続が可能である。なお、同一のタップが中性点Nに接続されるのは、直列変圧器1の一次巻線111,121,131それぞれの両端がタップ切換器3によって短絡されるいわゆる素通しタップの場合である。
【0025】
タップ切換器3は、調整変圧器2の二次巻線212のタップt1~t4を切り換えるための8つの切換スイッチThm_U(m=A,B,C,D,1,2,3,4)と、二次巻線222のタップt1~t4を切り換えるための8つの切換スイッチThm_Vと、二次巻線232のタップt1~t4を切り換えるための8つの切換スイッチThm_Wとを有する。各切換スイッチは、例えば双方向に導通するトライアック又は逆並列に接続されたサイリスタ対(半導体スイッチに相当)を含む。
【0026】
二次巻線212のタップt1は、保護用のヒューズ(
図1では不図示:以下同様)を介して切換スイッチThA_U及びTh1_Uの一端に接続され、タップt2は、ヒューズを介して切換スイッチThB_U及びTh2_Uの一端に接続され、タップt3は、ヒューズを介して切換スイッチThC_U及びTh3_Uの一端に接続され、タップt4は、切換スイッチThD_U及びTh4_Uの一端に接続されている。切換スイッチThA_U,ThB_U,ThC_U,ThD_Uの他端同士は、中性点Nに接続されている。切換スイッチTh1_U,Th2_U,Th3_U,Th4_Uの他端同士は、接続線3u及び第1接続部TB1を介して直列変圧器1の一次巻線111の一端及び一次巻線121の他端に接続されている。
【0027】
二次巻線222のタップt1は、ヒューズを介して切換スイッチThA_V及びTh1_Vの一端に接続され、タップt2は、ヒューズを介して切換スイッチThB_V及びTh2_Vの一端に接続され、タップt3は、ヒューズを介して切換スイッチThC_V及びTh3_Vの一端に接続され、タップt4は、切換スイッチThD_V及びTh4_Vの一端に接続されている。切換スイッチThA_V,ThB_V,ThC_V,ThD_Vの他端同士は、中性点Nに接続されている。切換スイッチTh1_V,Th2_V,Th3_V,Th4_Vの他端同士は、接続線3v及び第1接続部TB1を介して直列変圧器1の一次巻線121の一端及び一次巻線131の他端に接続されている。
【0028】
二次巻線232のタップt1は、ヒューズを介して切換スイッチThA_W及びTh1_Wの一端に接続され、タップt2は、ヒューズを介して切換スイッチThB_W及びTh2_Wの一端に接続され、タップt3は、ヒューズを介して切換スイッチThC_W及びTh3_Wの一端に接続され、タップt4は、切換スイッチThD_W及びTh4_Wの一端に接続されている。切換スイッチThA_W,ThB_W,ThC_W,ThD_Wの他端同士は、中性点Nに接続されている。切換スイッチTh1_W,Th2_W,Th3_W,Th4_Wの他端同士は、接続線3w及び第1接続部TB1を介して直列変圧器1の一次巻線131の一端及び一次巻線111の他端に接続されている。
【0029】
制御部4は、CPUを有し、予めROMに記憶された制御プログラムに従って、電圧の調整を制御する。一時的に発生した情報はRAMに記憶される(CPU,ROM,RAMは何れも不図示)。制御部4は、切換指令に応じた駆動信号によって各切換スイッチをオンに駆動する駆動部(不図示)を含んでいる。制御部4には、第3接続部TB3を介して計測用変圧器PT1,PT2の二次巻線が接続(不図示)されている。また、制御部4には、後述する計測用変圧器PT3,PT4及び変流器CT_U,CT_Wの二次巻線と、矯絡用スイッチThS_UV,ThS_VWと、電磁接触器MC_UV,MC_VWとが接続(何れも不図示)されている。
【0030】
接続線3u及び3v間には、限流抵抗器R_UV及び矯絡用スイッチThS_UVの直列回路と、電磁接触器MC_UVと、タップ切換器3によって直列変圧器1の一次巻線111,121,131に印加される電圧を制御部4が計測するための計測用変圧器PT3とが並列に接続されている。接続線3uにおける電磁接触器MC_UVとの接続点と、矯絡用スイッチThS_UVとの接続点との間には、制御部4が接続線3uに流れる電流を計測するための変流器CT_Uが結合している。接続線3v及び3w間には、矯絡用スイッチThS_VW及び限流抵抗器R_VWの直列回路と、電磁接触器MC_VWと、タップ切換器3によって直列変圧器1の一次巻線111,121,131に印加される電圧を制御部4が計測するための計測用変圧器PT4とが並列に接続されている。接続線3wにおける電磁接触器MC_VWとの接続点と、矯絡用スイッチThS_VWとの接続点との間には、制御部4が接続線3wに流れる電流を計測するための変流器CT_Wが結合している。
【0031】
なお、限流抵抗器R_UV及びR_VWそれぞれの一端は、第1接続部TB1を介して矯絡用スイッチThS_UV及びThS_VWと接続されている。また、限流抵抗器R_UV及びR_VWそれぞれの他端は、第1接続部TB1を介して接続線3vと接続されている。即ち、直列変圧器1及び限流抵抗器R_UV及びR_VWに対して、タップ切換器3の限流抵抗器R_UV及びR_VWを除く部分は、第1接続部TB1にて分離/接続が可能である。
【0032】
矯絡用スイッチThS_UV及びThS_VWは、二次巻線212,222,232のタップt1~t4を切り換える過程で、それぞれ限流抵抗器R_UV及びを介してタップ間を矯絡させておくために、制御部4がタップ間への限流抵抗器R_UV及びR_VWの接続及び切り離しを行うためのものである。電磁接触器MC_UV及びMC_VWは、過電流が検出されて全ての切換スイッチがオフされる場合、又はタップ切換器3の運用が停止される場合に、直列変圧器1の一次巻線111,121,131の両端を矯絡して、開放状態にしないようにするためのものである。
【0033】
上述の通り構成された電圧調整装置100の制御部4は、計測用変圧器PT1,PT2が降圧した電圧を、例えば交流電圧の半周期毎に取得して配電線1u,1v,1wの電圧を計測する。更に、制御部4は、計測した電圧に基づいて切換指令を発令し、切換指令に応じた駆動信号によって各切換スイッチをオンに駆動する。タップ切換器3は、発令された切換指令に応じたタップ位置にタップ切換する。タップ切換中に2つのタップが橋絡された時に流れる循環電流は、限流抵抗器R_UV,R_VWによって制限される。
【0034】
次に、
図1では図示しなかった信号線に係る信号について説明する。
図2は、制御部4とタップ切換器3及び計測用変圧器PT1,PT2との間で授受される信号を示す説明図である。制御部4は、切換スイッチThm_X(m=A,B,C,D,1,2,3,4;X=U,V,W)をオンに駆動する駆動信号を与える。制御部4は、タップ切換器3に含まれるヒューズFn_X(n=1,2,3)(後述する
図3参照)の溶断を示す警報接点信号を取得する。制御部4は、計測用変圧器PT3,PT4が降圧した電圧を二次巻線から取得し、取得した電圧に基づいてタップ切換器3が直列変圧器1に印加する電圧、即ち接続線3u,3v,3wの線間電圧を計測する。
【0035】
制御部4は、電磁接触器MC_UV,MC_VWの投入コイル又は引外しコイル(開放コイル)に励磁信号を与え、電磁接触器MC_UV,MC_VWから補助接点の接点信号を取得する。制御部4は、変流器CT_U,CT_Wの二次巻線から変流された電流を取得し、取得した電流に基づいて接続線3u,3v,3wに流れる電流を計測する。制御部4は、矯絡用スイッチThS_UV,ThS_VWをオンに駆動する駆動信号を与える。制御部4は、また、計測用変圧器PT1,PT2の二次巻線から第3接続部TB3を介して降圧された電圧を取得する。
【0036】
制御部4とタップ切換器3との間で授受される信号の信号線は、例えばワイヤハーネスによって配線される。各信号線の両端又は一端がコネクタによって接続されるようにすることにより、制御部4とタップ切換器3との接続及び切り離しが容易になる。制御部4と第3接続部TB3との間の信号線についても同様である。
【0037】
次に、電圧調整装置100内における配線の引き回しを実際に即して説明する。
図3は、電圧調整装置100の実体的な配線図である。電圧調整装置100は、絶縁油が満たされた絶縁油タンク11と、板金で構成された架台12とを備える。架台12には、制御部4がスペーサ13,13を介して保持されている。架台12は、絶縁油タンク11と連結されている不図示の筐体内に配置されている。図中の太い実線は、交流電圧を配線する複数のブスバー又は複数の電線を表している。また、矢印付きの細い実線は、矢印の向きに信号が授受される信号線を表している。
【0038】
絶縁油タンク11には、直列変圧器1、調整変圧器2、計測用変圧器PT1,PT2及び限流抵抗器R_UV,R_VWが収納されて絶縁油に浸されている。絶縁油タンク11には、更に、切換スイッチThm_X(m=A,B,C,D,1,2,3,4;X=U,V,W)からの熱を放熱する放熱器Hsが外部から嵌め込まれている。放熱器Hsと絶縁油タンク11との隙間にはパッキングが装着されている。
【0039】
絶縁油タンク11内の構成品と、絶縁油タンク11外の構成品との接続は、第1接続部TB1、第2接続部TB2及び第3接続部TB3を介して行われる。これらの接続部は、例えば貫通端子台である。外部の構成品から第1接続部TB1、第2接続部TB2及び第3接続部TB3に対して接続を行うには、例えば各接続部に配線するブスバーの端部又は電線の端部に圧接された端子を、それぞれの接続部に螺子止めする。電線の端部に圧接されたコンタクトを収納するコネクタプラグを、接続部側のコネクタソケットに嵌合させるようにしてもよい。
【0040】
架台12には、主にタップ切換器3の構成部品が搭載されている。具体的には、矯絡用スイッチThS_UV,ThS_VW、変流器CT_U,CT_W及び電磁接触器MC_UV,MC_VWが架台12上に螺子止めされている。調整変圧器2の二次巻線212,222,232それぞれのタップt1,t2,t3に直列接続されているヒューズFn_X(n=1,2,3;X=U,V,W)も架台12上に螺子止めされている。
【0041】
切換スイッチThm_Xは、熱を伝導させるアルミニウム合金製の保持部材Hss上に螺子止めされている。保持部材Hssは、架台12に固定された状態で放熱器Hsと分離可能に接触する。これにより、切換スイッチThm_Xからの熱は、保持部材Hss及び放熱器Hsを介して絶縁油タンク11内の絶縁油に放熱される。
【0042】
制御部4は、不図示のCPU等が搭載された制御基板41と、該制御基板41に動作電源を供給するスイッチング電源である電源42とを有する。制御基板41と、架台12上のタップ切換器3の構成部品及び第3接続部TB3との間の信号の授受については、
図2で説明した通りワイヤハーネスを介して行われる。
【0043】
交流電圧の配線については、以下の通りである。開閉器SW1からの配電線1u,1v、1wは、直列変圧器1の二次巻線112,122,132を介して調整変圧器2の一次巻線211,221,231及び計測用変圧器PT1,PT2の一次巻線に接続され、更に開閉器SW2に接続される。調整変圧器2の二次巻線212,222,232それぞれのタップt1,t2,t3からの配線は、ヒューズFn_X(n=1,2,3;X=U,V,W)を介して切換スイッチThi_X(i=A,B,C,1,2,3)の一端に接続されている(
図1参照)。なお、各タップt4からの配線は直接的に切換スイッチThD_X及びTh4_Xの一端に接続されているが、
図3ではその配線を省略する。
【0044】
切換スイッチThm_Xの他端からの配線、即ち接続線3u,3v,3wは、線間に計測用変圧器PT3,PT4の一次巻線及び電磁接触器MC_UV,MC_VWが接続されており、変流器CT_U,CT_Wが結合されている。この配線は、第1接続部TB1を介して直列変圧器1の一次巻線111,121,131に接続されると共に、配線の一部が矯絡用スイッチThS_UV,ThS_VW及び第1接続部TB1を介して限流抵抗器R_UV,R_VWの一端に接続されている。限流抵抗器R_UV,R_VWの他端からの配線は、第1接続部TB1にて直列変圧器1への配線と合流している。
【0045】
計測用変圧器PT1,PT2からの配線のうち、二次巻線からの配線は、前述の通り第3接続部TB3を介して制御基板41に接続されている。計測用変圧器PT1又はPT2には、制御部4の動作電源用の巻線が巻回されており、この巻線からの配線は、第3接続部TB3を介して制御部4の電源42に接続されている。電源42に交流電圧を供給するために、配電線1u,1v,1wの何れかの線間に一次巻線が接続された他の変圧器を用いてもよい。
【0046】
以上の通り配線された電圧調整装置100は、直列変圧器1、調整変圧器2、計測用変圧器PT1,PT2及び限流抵抗器R_UV,R_VWに対し、該限流抵抗器R_UV,R_VWを除くタップ切換器3及び制御部4を、第1接続部TB1、第2接続部TB2及び第3接続部TB3にて容易に分離し、接続することができる。
【0047】
以下では、電圧調整装置100の構成品を交換する方法について、フローチャートを用いて説明する。
図4は、電圧調整装置100のタップ切換器3及び制御部4を交換する処理手順を示すフローチャートである。
図4の処理の一部は、制御部4に含まれるCPUにより実行される。
図4の処理は、電圧調整装置100の運用中に実行される。即ち、開閉器SW1及びSW2が投入され、開閉器SW3が開放されていることを前提とする。
【0048】
図4の処理手順を開始する場合、例えば不図示の操作パネルに対して特定の操作が加えられた場合に、CPUがタップ切換器3の運用を停止して素通しタップの状態にする(S11)。タップ切換器3が素通しタップの状態になると、直列変圧器1の一次巻線111,121,131に印加される電圧が実質的に0となり、二次巻線112,122,132に誘起する電圧も0となる。
【0049】
その後、例えば使用者が手動で開閉器SW3を投入することにより、配電線1u,1v,1wの一次側及び二次側の間に迂回路10u,10v,10wを接続する(S12)。これにより、一次側の電気所から二次側の負荷への配電経路は、実質的に迂回路10u,10v,10wに迂回されることとなる。
【0050】
その後、例えば使用者が手動で開閉器SW1,SW2を開放することにより、配電線1u,1v,1wから電圧調整装置(TVR)100を切り離す(S13)。この場合、電源42に対する交流電圧の供給が絶たれるため、制御部4及びタップ切換器3における活電部が無くなり、以後の構成品の取り外し及び取り付けが安全に行える。
【0051】
その後、例えば使用者が第1接続部TB1、第2接続部TB2及び第3接続部TB3にて配線を取り外すことにより、タップ切換器3及び制御部を切り離す(S14)。これにより、直列変圧器1、調整変圧器2、計測用変圧器PT1,PT2及び限流抵抗器R_UV,R_VWと、該限流抵抗器R_UV,R_VWを除くタップ切換器3及び制御部4とが電気的に切り離される。
【0052】
その後、例えば使用者が不図示の筐体から制御部4を含む架台12を取り外して新たな架台12を取り付けることにより、限流抵抗器R_UV,R_VWを除くタップ切換器3及び制御部4のそれぞれを新旧交換する(S15)。この場合、保持部材Hssが放熱器Hsから分離可能であるため、架台12を放熱器Hsからも取り外すことができる。
【0053】
その後、例えば使用者が第1接続部TB1、第2接続部TB2及び第3接続部TB3にて配線を取り付けることにより、タップ切換器3及び制御部を接続する(S16)。次いで、例えば使用者が手動で開閉器SW1,SW2を投入することにより、配電線1u,1v,1wに電圧調整装置100を接続する(S17)。この場合、電源42に対する交流電圧の供給が再開されるが、電源断直前の切換スイッチの状態が記憶されるようにしておくことにより、素通しタップの状態を維持することができる。制御部4の初期化時に素通しタップの状態となるようにしてもよい。
【0054】
その後、例えば使用者が手動で開閉器SW3を開放することにより、配電線1u,1v,1wから迂回路10u,10v,10wを切り離す(S18)。そして、例えば不図示の操作パネルに対して他の特定の操作が加えられた場合に、CPUがタップ切換器3を素通しタップの状態から復帰させて運用を再開し(S19)、
図4の処理を終了する。
【0055】
また、本実施形態にあっては、調整変圧器2の二次巻線212,222,232がタップ切換器3を介してY結線され、直列変圧器1の一次巻線111,121,131がΔ結線されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、調整変圧器2の二次巻線212,222,232がタップ切換器を介してΔ結線され、直列変圧器1の一次巻線111,121,131がY結線されていてもよい。また、調整変圧器2の二次巻線212,222がタップ切換器を介してV結線され、直列変圧器1の一次巻線111,121,131がY結線されていてもよい。これらの場合であっても、実施形態と同様の効果を奏する。
【0056】
以上のように本実施形態によれば、直列変圧器1の二次巻線112,122,132が配電線1u,1v,1wに直列に接続され、調整変圧器2の一次巻線211,221,231が配電線1u,1v,1wの二次側に並列に接続される。制御部4は、配電線1u,1v,1wの二次側の電圧を計測用変圧器PT1,PT2によって計測し、計測した電圧に基づいてタップ切換器3の切換スイッチThm_Xをオンに制御する。これにより、制御部4は、調整変圧器2の二次巻線212,222,232それぞれのタップt1,t2,t3,t4を切り換えて直列変圧器1の一次巻線111,121,131に接続する。タップ切換器3は直列変圧器1に対して第1接続部TB1にて分離/接続が可能である。タップ切換器3は、更に調整変圧器2に対して第2接続部TB2にて分離/接続が可能である。制御部4は計測用変圧器PT1,PT2に対して第3接続部TB3にて分離/接続が可能である。これにより、電圧調整装置100の運用を停止してから再開するまでの間に、直列変圧器1、調整変圧器2及び計測用変圧器PT1,PT2に対してタップ切換器3及び制御部4を容易に分離し、且つ容易に再接続することができる。従って、部品を容易に交換することが可能である。
【0057】
また、実施形態によれば、保持部材Hssが、切換スイッチThm_Xである複数の半導体スイッチ(トライアック又はサイリスタ対)を保持すると共に、放熱器Hsと接触して半導体スイッチからの熱を放熱する。タップ切換器3が交換される場合は、タップ切換器3に含まれる保持部材Hssを放熱器Hsに対して容易に分離し、且つ容易に再接触させることができる。
【0058】
更に、実施形態によれば、直列変圧器1に対し、第1接続部TB1にて限流抵抗器R_UV,R_VWを除くタップ切換器3の他の部分の分離/接続が可能である。従って、発熱量が比較的大きい限流抵抗器R_UV,R_VWをタップ切換器3の他の部分とは別に配置した場合であっても、タップ切換器3の他の部分を直列変圧器1に対して容易に分離し、且つ容易に再接続することができる。
【0059】
更に、実施形態によれば、変流器CT_U,CT_W、電磁接触器MC_UV,MC_VW及び計測用変圧器PT3,PT4がタップ切換器3に含まれる場合であっても、直列変圧器1及び調整変圧器2に対し、第1接続部TB1及び第2接続部TB2にてタップ切換器3を容易に分離し、且つ容易に再接続することができる。
【0060】
更に、実施形態によれば、先ずタップ切換器3を素通しタップの状態にすることによって直列変圧器1の二次巻線112,122,132に誘起する電圧を0にする。その後、配電線1u,1v,1wに迂回路10u,10v,10wを接続して電気所と負荷とを直結した上で、配電線1u,1v,1wから直列変圧器1、調整変圧器2及び計測用変圧器PT1,PT2を含む電圧調整装置100全体を切り離す。電圧調整装置100の切り離しによって、制御部4への電圧供給が絶たれ、制御部4の動作が停止する。次いで、タップ切換器3及び制御部4を第1接続部TB1、第2接続部TB2及び第3接続部TB3にて切り離し、新たなタップ切換器3及び制御部4を第1接続部TB1、第2接続部TB2及び第3接続部TB3にて接続する。そして、配電線1u,1v,1wに直列変圧器1、調整変圧器2及び計測用変圧器PT1,PT2を含む電圧調整装置100全体を再接続して制御部4の動作を再開させた後に迂回路10u,10v,10wを切り離す。最後に、タップ切換器3を素通しタップの状態から復帰させて運用状態とする。これにより、電圧調整装置100の運用を停止してから再開するまでの間に、直列変圧器1、調整変圧器2及び計測用変圧器PT1,PT2に対してタップ切換器3及び制御部4を容易に分離し、且つ容易に再接続することができる。従って、部品を容易に交換することが可能である。
【0061】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、各実施形態で記載されている技術的特徴は、お互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1u,1v,1w 配電線、 10u,10v,10w 迂回路、 SW1,SW2,SW3 開閉器、 100 電圧調整装置、 11 絶縁油タンク、 12 架台、 13 スペーサ、 TB1 第1接続部、 TB2 第2接続部、 TB3 第3接続部、 Hs 放熱器、 Hss 保持部材、 1 直列変圧器、 111,121,131 一次巻線、 112,122,132 二次巻線、 2 調整変圧器、 211,221,231 一次巻線、 212,222,232 二次巻線、 t1,t2,t3,t4 タップ、 3 タップ切換器、 4 制御部、 41 制御基板、 42 電源、 Thm_X(m=A,B,C,D,1,2,3,4;X=U,V,W) 切換スイッチ、 Fn_X(n=1,2,3;X=U,V,W) ヒューズ、 3u,3v,3w 接続線、 ThS_UV,ThS_VW 矯絡用スイッチ、 R_UV,R_VW 限流抵抗器、 MC_UV,MC_VW 電磁接触器、 CT_U,CT_W 変流器、 PT1,PT2,PT3,PT4 計測用変圧器