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特開2022-46355高温流体計測装置及び高温流体計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046355
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】高温流体計測装置及び高温流体計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/00 20220101AFI20220315BHJP
   C21B 7/24 20060101ALI20220315BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20220315BHJP
   G01F 1/20 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
G01F1/00 P
C21B7/24
F27D21/00 A
G01F1/00 F
G01F1/20 F
G01F1/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020152361
(22)【出願日】2020-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 研作
(72)【発明者】
【氏名】高野 英二
【テーマコード(参考)】
2F030
4K015
4K056
【Fターム(参考)】
2F030CA02
2F030CC18
2F030CE02
2F030CE24
2F030CE25
4K015KA00
4K056AA01
4K056FA11
(57)【要約】
【課題】高炉などから吐出される銑鉄又は溶滓のような高温流体の量を簡単な構成で計測できるようにする。
【解決手段】吐出口を撮像する撮像部と、撮像部が撮像した画像から、吐出口を流れる高温流体の幅を計測する画像処理部と、吐出口から吐出されて所定箇所に蓄積された高温流体の体積の入力部と、高温流体の幅の時間履歴と入力部により入力された高温流体の体積との情報から、高温流体の量を算出して出力する演算処理部とを備える。演算処理部は、高温流体の幅の時間履歴と入力部により入力された高温流体の体積との情報を蓄積し、蓄積した計測幅の時間履歴と体積との関係を使って、画像処理部が取得した高温流体の幅から、吐出口から吐出される高温流体の流量を算出し、算出した流量を積算して高温流体の量を算出して出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口から吐出される高温流体の量を計測する高温流体計測装置であり、
前記吐出口を撮像する撮像部と、
前記撮像部が撮像した画像から、前記吐出口を流れる高温流体の幅を計測する画像処理部と、
前記吐出口から吐出されて所定箇所に蓄積された高温流体の体積の入力部と、
前記画像処理部が取得した高温流体の計測幅の時間履歴と前記入力部により入力された高温流体の体積との情報を蓄積し、蓄積した計測幅の時間履歴と体積との関係を使って、前記画像処理部が取得した高温流体の幅から、前記吐出口から吐出される高温流体の流量を算出し、算出した流量を積算して高温流体の量を算出して出力する演算処理部と、を備える
高温流体計測装置。
【請求項2】
蓄積した計測幅の時間履歴と体積との関係は、計測幅の時間履歴とn次多項式(nは2以上の整数)の係数とから体積を求めるものであり、蓄積した情報の数を少なくともn+1とする
請求項1に記載の高温流体計測装置。
【請求項3】
前記演算処理部は、高温流体の量を算出する毎に、前記係数を更新するようにした
請求項2に記載の高温流体計測装置。
【請求項4】
前記入力部は、前記所定箇所に設置された重量又は体積のセンサの計測値を入力する
請求項3に記載の高温流体計測装置。
【請求項5】
前記入力部は、前記所定箇所に予め決められた一定の体積の高温流体が蓄積されたとき、蓄積された体積を前記演算処理部に通知する
請求項3に記載の高温流体計測装置。
【請求項6】
前記撮像部は、熱画像を取得する赤外線サーモグラフィカメラである
請求項1~5のいずれか1項に記載の高温流体計測装置。
【請求項7】
前記高温流体は、前記吐出口から吐出される銑鉄又は溶滓であり、
前記演算処理部は、前記吐出口から吐出される銑鉄又は溶滓の量を算出する
請求項1~6のいずれか1項に記載の高温流体計測装置。
【請求項8】
吐出口から吐出される吐出口から吐出される高温流体の量を計測する高温流体計測方法であり、
前記吐出口を撮像する撮像処理と、
前記撮像処理により撮像した画像から、前記吐出口を流れる高温流体の幅を計測する画像処理と、
前記吐出口から吐出されて所定箇所に蓄積された高温流体の体積の入力処理と、
前記画像処理により取得し高温流体の計測幅の時間履歴と前記入力処理により入力された高温流体の体積との情報を蓄積し、蓄積した計測幅の時間履歴と体積との関係を使って、前記画像処理で取得した高温流体の幅から、前記吐出口から吐出される高温流体の流量を算出し、算出した流量を積算して高温流体の量を算出して出力する演算処理と、を含む
高温流体計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉などから吐出される銑鉄などの高温流体を計測する高温流体計測装置及び高温流体計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高炉では、その上部から鉄鉱石、コークス、石灰石などを層状に装入し、下部から熱風を吹き込んで、鉄鉱石の還元、溶解などの一連の反応を行わせ、溶銑(銑鉄)を製造している。
製造された溶銑は、溶滓(溶融スラグ)が混在した出銑滓流の状態で高炉下部に備えられた出銑口から吐出される。出銑口から吐出される出銑滓流から溶滓を分離した溶銑の量(出鉄量)は、操業中、常に計測されている。
【0003】
一方、出銑口から吐出される出銑滓流は、従来、正確には計測されていない。したがって、出銑滓流に含まれる溶滓の量も、吐出時には計測されていない。
高炉において安定した操業を行う上で、出銑滓流中の溶滓の量を正確に知ることは重要である。従来は、例えば高炉鋳床にて分別された後に、溶滓は溶滓処理設備で冷却されるが、溶滓の量を前もって知ることができないため、予め最大量の冷却材を準備する必要があった。溶滓処理設備で溶滓の量を計測できるものの、冷却処理準備を行う時点で知ることはできなかった。
特許文献1には、出銑滓流の量を計測する技術の一例が記載されている。
特許文献1に記載される技術は、出銑滓流を撮像手段で撮像し、撮像した熱画像から、出銑滓流の半径を求め、得られた半径と出銑滓流の流速から、溶滓の量を算出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-6221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、出銑口から吐出される銑鉄を撮像手段で撮像して、得られた熱画像から銑鉄又は溶滓の量を算出することは従来から提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載される技術では、出銑口から吐出される銑鉄の流速を求める必要がある。したがって、特許文献1に記載される技術は、流速の計測手段が撮像手段と別に必要であり、銑鉄量を算出するための構成が複雑化するという問題があった。
なお、ここまでの説明では、銑鉄の量を算出する場合の問題を述べたが、銑鉄以外であっても、銑鉄と同様に高温になった流体が所定の吐出口から吐出される場合に、その高温流体の量を算出する場合には、同様の問題がある。
【0006】
本発明の目的は、高炉などから吐出される銑鉄又は溶滓などの高温流体を簡単な構成で計測できる高温流体計測装置及び高温流体計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の高温流体計測装置は、吐出口から吐出される高温流体の量を計測するものであり、構成として、吐出口を撮像する撮像部と、撮像部が撮像した画像から、吐出口を流れる高温流体の幅を計測する画像処理部と、吐出口から吐出されて所定箇所に蓄積された高温流体の体積の入力部と、高温流体の幅の時間履歴と入力部により入力された高温流体の体積との情報を蓄積し、蓄積した計測幅の時間履歴と体積との関係を使って、画像処理部が取得した高温流体の幅から、吐出口から吐出される高温流体の流量を算出し、算出した流量を積算して高温流体の量を算出して出力する演算処理部と、を備える。
【0008】
また、本発明の高温流体計測方法は、吐出口から吐出される高温流体の量を計測する銑鉄量計測方法であり、吐出口を撮像する撮像処理と、撮像処理により撮像した画像から、吐出口を流れる高温流体の幅を計測する画像処理と、吐出口から吐出されて所定箇所に蓄積された高温流体の体積の入力処理と、画像処理により取得した高温流体の計測幅の時間履歴と入力処理により入力された高温流体の体積との情報を蓄積し、蓄積した計測幅の時間履歴と体積との関係を使って、画像処理で取得した高温流体の幅から、吐出口から吐出される高温流体の流量を算出し、算出した流量を積算して高温流体の量を算出して出力する演算処理と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吐出口を撮像部で撮像して、その撮像画像から得た高温流体の計測幅の時間履歴から高温流体の量を算出することができ、高温流体の流量を計測するセンサなどを設けることなく簡単に銑鉄又は溶滓の量などの高温流体の量を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態例による銑鉄量計測装置の概略構成を示す図である。
図2】本発明の一実施の形態例による熱画像の例を示す図である。
図3】本発明の一実施の形態例による銑鉄量計測装置が備える演算処理装置の構成例を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施の形態例による演算処理装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図5】本発明の一実施の形態例による試行フェーズでの処理手順の例を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施の形態例による測定フェーズでの処理手順の例を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施の形態例による係数算出用のデータの取得例(例1)を示す図である。
図8】本発明の一実施の形態例による係数算出用のデータの取得例(例2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)を、添付図面を参照して説明する。
[銑鉄量計測装置の概略構成]
図1は、本例の銑鉄量計測装置の概略構成を示す。
図1に示すように、高炉の下部に備えられた吐出口(出銑口)10から、溶滓が含まれた出銑滓流の銑鉄1aが吐出される。
【0012】
吐出口10は、左右の側壁11,12を備えて、先端部10aから下部に配置された銑鉄蓄積容器20に銑鉄1bが吐出され、樋13に銑鉄1cが受けられ、さらにその樋13を流れた銑鉄1cが、銑鉄蓄積容器20に銑鉄1dとして収容される。したがって、吐出口10から銑鉄1aが吐出されてから、銑鉄蓄積容器20に銑鉄1dとして収容されるまでには、ある程度の時間が必要である。
吐出口10から吐出される銑鉄1bの流量を算出することで、銑鉄蓄積容器20に銑鉄1dが収容されたのちの処理に必要な準備を予め行うことが可能となる。
なお、吐出口10から吐出される銑鉄1bは、正確には溶滓(溶融スラグ)が混在した出銑滓流であるが、以下の説明では特に区別が必要な場合を除いて銑鉄と称する。
銑鉄蓄積容器20に収容された銑鉄1dは、不図示の分離機構で銑鉄と溶滓とに分離された上で、それぞれの処理設備に送られる。
銑鉄蓄積容器20には、重量センサ21が取り付けられ、銑鉄蓄積容器20に収容された銑鉄1dの重量が計測される。
【0013】
吐出口10の先端部10aから吐出される銑鉄1bは、左右の側壁11,12があるために、その側壁11,12の間隔以内の幅W(図2参照)で吐出されることになる。図1は、ほぼ側壁11,12の間を全て埋めるような状態で比較的大量の銑鉄1bが吐出されている状態を示すが、吐出される銑鉄1bの量が少ない場合には、先端部10aから吐出される銑鉄1bの幅Wは、側壁11,12の間隔よりも小さくなる。
【0014】
また、本例の銑鉄量計測装置は、赤外線サーモグラフィカメラ30と演算処理装置40とを備える。
赤外線サーモグラフィカメラ30は、吐出口10を撮像する撮像処理を行って、熱画像を取得する撮像部である。
【0015】
図2は、赤外線サーモグラフィカメラ30が吐出口10を撮像した場合の熱画像の例を示す。
図2に示すように、吐出口10から吐出される銑鉄1bは非常に高温であり、熱画像の中のあらかじめ定めた閾値温度以上の高温の箇所から、吐出中の銑鉄1bの幅Wを測定することができる。
赤外線サーモグラフィカメラ30は、ケーブル31により演算処理装置40に接続されており、赤外線サーモグラフィカメラ30が撮像して得た熱画像のデータが演算処理装置40に伝送される。
【0016】
演算処理装置40は、例えばコンピュータ装置で構成され、吐出口10から吐出される銑鉄の流量及び銑鉄量を、伝送される熱画像から算出する演算処理を行う。そして、算出された銑鉄の流量及び銑鉄量が演算処理装置40から出力される。
【0017】
[演算処理装置の構成]
図3は、本例の銑鉄量計測装置が備える演算処理装置40の機能から見た構成を示す図である。
演算処理装置40は、画像処理部41、時間履歴取得部42、体積入力部43、データファイル作成部44、データ蓄積部45、演算処理部46、及び出力部47を備える。
【0018】
画像処理部41は、赤外線サーモグラフィカメラ30から伝送された熱画像を画像解析処理して、高温の銑鉄の領域を検出する。そして、画像処理部41は、画像解析で検出した銑鉄の領域から、吐出口10の先端部10aでの銑鉄の幅W(図2)を計測する。
時間履歴取得部42は、画像処理部41で計測した銑鉄の幅Wのデータを取得して、幅Wの変化履歴である時間履歴を取得する。時間履歴取得部42で取得された銑鉄の幅Wの時間履歴のデータは、データファイル作成部44と演算処理部46に供給される。
【0019】
体積入力部43は、銑鉄蓄積容器20に収容された銑鉄1dの体積についてのデータが入力される。例えば、演算処理装置40が備えるキーボードなどの入力部40f(図4)で作業者が入力した体積の値が、体積入力部43に入力される。この場合には、作業者が銑鉄蓄積容器20への銑鉄1dの蓄積状況を目視などで判断して、体積の値を入力する。ここで、体積の値の入力処理としては、作業者が目視などで判断した体積の値を直接入力してもよいが、例えば、銑鉄蓄積容器20への銑鉄1dの蓄積状況が満杯になったとき、銑鉄蓄積容器20に蓄積できる容積を、作業者が体積の値として入力値としてもよい。
【0020】
あるいは、銑鉄蓄積容器20に設置した重量センサ21の検出データを体積入力部43が取得して、体積入力部43が重量の取得値を銑鉄1dの体積に換算してもよい。
【0021】
データファイル作成部44は、時間履歴取得部42が取得した時間履歴のデータと、その時間履歴と同時に体積入力部43が得た最終的な体積のデータとを、1つのデータファイルとして作成する。データファイル作成部44が作成したデータファイルは、データ蓄積部45に蓄積される。このデータファイルの作成と蓄積は、後述する試行フェーズで実行される。試行フェーズでは、複数回の時間履歴と体積を計測する処理が実行され、それぞれの計測で作成されたデータファイルが、全てデータ蓄積部45に蓄積される。
【0022】
データ蓄積部45は、データファイル作成部44が作成したデータファイルを蓄積する他に、後述する演算処理部46で求めた銑鉄の計測幅Wと流量との関係式のデータを蓄積する。銑鉄の計測幅Wと流量との関係式のデータには、その関係式の係数のデータも含まれる。
【0023】
演算処理部46は、試行フェーズでデータ蓄積部45に蓄積された複数のデータファイルを読み出し、銑鉄の計測幅Wと流量との関係式(本例の場合には2次多項式)の係数を最適化して求める。そして、演算処理部46は、算出した係数のデータをデータ蓄積部45に蓄積する。なお、銑鉄の計測幅Wと流量との関係式(2次多項式)の具体例については後述する。
【0024】
また、演算処理部46は、試行フェーズが完了した後に行われる測定フェーズで、時間履歴取得部42から銑鉄の幅Wの時間履歴が供給されたとき、その銑鉄の幅Wと、データ蓄積部45に蓄積された関係式とを使って、銑鉄の流量を算出する。さらに、演算処理部46は、算出した銑鉄の流量を積算して、吐出開始から銑鉄蓄積容器20に貯まった銑鉄量を算出することができる。
なお、銑鉄の流量を算出する際の関係式の係数としては、試行フェーズで求めた係数が使用される。
【0025】
出力部47は、測定フェーズで演算処理部46が算出した銑鉄の流量及び銑鉄量を出力する。例えば、出力部47として用意された表示部40g(図4参照)に、銑鉄の流量及び銑鉄量が表示される。あるいは、出力部47は、外部の別の端末などに、銑鉄の流量及び銑鉄量のデータを伝送するようにしてもよい。
【0026】
図4は、演算処理装置40をコンピュータ装置で構成した場合のハードウェア構成の例を示す。
演算処理装置40は、バスラインでデータ転送可能に接続されている、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)40a、ROM(Read Only Memory)40b、RAM(Random Access Memory)40c、不揮発性ストレージ40d、及び画像キャプチャ部40eを備える。また、演算処理装置40は、入力部40f及び表示部40gも、CPU40aなどとバスラインでデータ転送可能に接続されている。
【0027】
CPU40aは、銑鉄の流量や銑鉄量を算出する処理を行う機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM40bなどから読み出して実行する演算処理部である。
ROM40bには、銑鉄量計測装置の各種機能を実行するプログラムコードが記憶されている。
RAM40cは、演算処理の途中に発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれるワークメモリである。
不揮発性ストレージ40dには、プログラムコードの他に、データファイルや画像データなどが記憶される。
【0028】
画像キャプチャ部40eには、赤外線サーモグラフィカメラ30からの画像(熱画像)データが供給される。そして、画像キャプチャ部40eは、供給される画像データを、1フレームずつキャプチャ処理して、不揮発性ストレージ40dなどに記憶する。
入力部40fには、キーボードやマウスなどが接続され、入力部40fからキーボードやマウスなどの操作に基づいたデータが入力される。
表示部40gにおける表示は、CPU191の制御下で実行され、銑鉄の流量や銑鉄量などの測定結果が表示される。
【0029】
[試行フェーズの処理の流れ]
図5は、試行フェーズでの処理の流れを示すフローチャートである。
試行フェーズでは、吐出口10からの銑鉄の吐出を複数回実行し、演算処理装置40は、それぞれの銑鉄の吐出時の状態の計測値からデータファイルを作成する処理を行う。
すなわち、まず画像処理部41が銑鉄の吐出時の熱画像を取得し(ステップS11)、時間履歴取得部42が熱画像から銑鉄の吐出幅Wの時間履歴を取得する(ステップS12)。
【0030】
その後、データファイル作成部44は、体積入力部43に体積の値の入力があるか否かを判断する(ステップS13)。ステップS13で、体積の値の入力がない場合(ステップS13のNO)、ステップS11の画像処理部41での熱画像の取得処理に戻る。
また、ステップS13で、体積の値の入力がある場合(ステップS13のYES)、データファイル作成部44は、現時点までの銑鉄の吐出幅Wの時間履歴と、体積入力部43で取得した体積の値とに基づいて、データファイルを作成する(ステップS14)。作成したデータファイルは、データ蓄積部45に蓄積される。なお、銑鉄の吐出幅Wの時間履歴と体積の例については後述する。
【0031】
次に、演算処理部46は、データ蓄積部45に蓄積されたデータファイルが予め規定された数m(mは整数)に到達したか否かを判断する(ステップS15)。ステップS15で、規定数mに到達していない場合(ステップS15のNO)、ステップS11の画像処理部41での次回の熱画像の取得処理に戻る。
【0032】
ステップS15で、規定数mに到達したと判断したとき(ステップS15のYES)、演算処理部46は、データ蓄積部45に蓄積されたデータファイルを読み出し、それぞれのデータファイルでの銑鉄の吐出幅Wを使ったn次多項式で流量を表わす演算処理を行う(ステップS16)。ここで、データファイルの数mとn次多項式のnは、(m≧n+1)の関係となるようにする。そして、演算処理部46は、n次多項式の係数について、最小2乗近似法で最適な係数を算出し、算出した係数をデータ蓄積部45に登録する。
この係数の登録により、試行フェーズが終了する。
【0033】
次に、銑鉄の吐出幅Wと流量との関係式の具体例について説明する。
ここでは、n次多項式の簡単な例として、n=2の2次多項式の場合を説明する。
単位時間当たりの流量dv/dtは、時間tでの幅Wの値W(t)の関数fで示され、2次多項式とした場合、[数1]式のようになる。
【0034】
【数1】
【0035】
[数1]式において、a,a,aが係数であり、それぞれの係数a,a,aが最適化されていれば、幅Wの値W(t)から、流量dv/dtが求まる。
この[数1]式の関係が成り立つとき、各データファイルで示される最終体積Vは、[数2]式に示すように計測幅Wの時間履歴と多項式係数で表される。
[数2]式において、V~Vは、m個のデータファイルのそれぞれの最終体積であり、W~Wは、m個のデータファイルのそれぞれの時間t11~t1mでの幅Wを示す。[数2]式では、それぞれのデータファイルごとに時間tから時間t11~t1mまでの計測幅Wの時間履歴を積分した式で示される。
【0036】
【数2】
【0037】
ここで、[数2]式に示すVの式は、[数3]式に示すように変形することができる。
【0038】
【数3】
【0039】
[数2]式に示すように、m個のデータファイル毎に2次多項式を生成したとき、演算処理部46は、最小2乗近似法で、m個のデータファイルの2次多項式の誤差が最小となる係数a,a,aを算出する。算出した係数a,a,aの値は、データ蓄積部45に登録される。
【0040】
m個のデータファイルの2次多項式の誤差が最小となる係数a,a,aを算出する処理は、[数4]式の誤差関数E(誤差の2乗和)を最小にするように係数a,a,aを求めることである。
【0041】
【数4】
【0042】
ここで、[数5]式に示すように、係数a,a,aで偏微分した結果を「0」とおき、連列方程式を解くことで、係数a,a,aを求めることができる。
【0043】
【数5】
【0044】
[測定フェーズの処理の流れ]
図6は、測定フェーズでの処理の流れを示すフローチャートである。
測定フェーズでは、まず画像処理部41が銑鉄の吐出時の熱画像を取得し(ステップS21)、時間履歴取得部42が熱画像から銑鉄の吐出幅Wの時間履歴を取得する(ステップS22)。
【0045】
次に、演算処理部46が、試行フェーズで使用した関係式(n次多項式)を使って、銑鉄の吐出幅Wから、銑鉄の吐出量を算出する(ステップS23)。このとき、演算処理部46は、試行フェーズで取得した係数a,a,aをデータ蓄積部45から読み出し、その係数a,a,aを使って関係式による銑鉄の吐出流量の算出を行う。
【0046】
さらに、演算処理部46は、算出した銑鉄の吐出流量を積算して、銑鉄の体積(銑鉄量)を算出する(ステップS24)。ステップS23で算出した銑鉄の吐出量や、ステップS24で算出した銑鉄の体積(銑鉄量)は、表示部40gに表示される。
その後、演算処理部46は、熱画像などから銑鉄の吐出が終了したか否かを判断する(ステップS25)。
ステップS25で、銑鉄の吐出が終了していない場合(ステップS25のNO)、画像処理部41での熱画像の取得処理に戻る。
【0047】
そして、ステップS25で、銑鉄の吐出が終了した場合(ステップS25のYES)、演算処理部46は、重量センサ21の出力から吐出された銑鉄の体積値を取得する(ステップS26)。そして、演算処理部46は、ステップS26で取得した体積と、ステップS24で算出した銑鉄の体積とを比較して、所定値以上の差があるとき、重量センサ21の出力に基づいて、試行フェーズでデータ蓄積部45に蓄積された係数a,a,aを更新する(ステップS27)。
【0048】
[試行フェーズで作成されるデータファイルの例]
図7は、試行フェーズで作成されるデータファイルの例を示す図である。
図7の例は、実測データ1、実測データ2、実測データ3、・・・実測データmのm個の実測データを作成する例を示している。
【0049】
図7に示すm個の各実測データ1~mは、吐出口10からの銑鉄の吐出開始をタイミングt0とし、吐出終了を各データで個別のタイミングt11~t1mとする。そして、図7のグラフでは、タイミングt0から各吐出終了タイミングt11~t1mまでの銑鉄の吐出幅Wの変化を示している。それぞれの実測データ1~mでの銑鉄の吐出幅Wの時間履歴と、各吐出終了タイミングt11~t1mでの体積値V、V、V、・・・Vが、各実測データ1~mのデータファイルに付加される。
【0050】
図7に示す各データファイルは、吐出終了時の体積値V、V、V、・・・Vを異なる値としたが、図8に示すように全て同じ体積値としてもよい。
すなわち、図8に示す例では、各実測データ1~mは、吐出口10からの銑鉄の吐出開始をタイミングt0とし、各吐出終了タイミングt11~t1mとした点は図7の例と同じであるが、吐出終了タイミングt11~t1mでの体積値V、V、V、・・・Vは、全て同じ値1としている。すなわち、図8の例は、その一定の体積の銑鉄が吐出される際の吐出幅Wの変化を示している。
この図8の例の場合にも、それぞれの実測データ1~mでの銑鉄の吐出幅Wの時間履歴と、吐出終了タイミングt11~t1mでの体積値(全て同じ値)が、各実測データ1~mのデータファイルに付加される。
【0051】
これら図7又は図8に示すように、試行フェーズでは、銑鉄の吐出幅Wの時間履歴と体積値からなるm個のデータファイルが取得される。
【0052】
以上説明したように、本例の銑鉄量計測装置によると、銑鉄の吐出幅Wの時間履歴を銑鉄量に変換する関係式を使って、吐出口10を撮像した画像から、銑鉄量を取得できるようになる。したがって、出銑口から吐出される銑鉄の流速を求めることなく、簡単に銑鉄量を算出することができる。
この場合、銑鉄の吐出幅Wの時間履歴を銑鉄量に変換する関係式の係数を、試行フェーズで得たデータファイルから算出することで、最適化した係数値が得られるので、正確な銑鉄量を算出することができる。
【0053】
なお、ここまでの説明では、吐出口10から吐出される銑鉄量を算出すると述べたが、吐出口10から吐出される銑鉄は、正確には溶滓(溶融スラグ)が混在した出銑滓流であり、上述した関係式を使って、銑鉄から分離した溶滓量を算出するようにしてもよい。
【0054】
[変形例]
なお、本発明は、上述した実施の形態例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
例えば、上述した実施の形態例では、吐出口10を撮像する撮像部として、熱画像を取得する赤外線サーモグラフィカメラを適用した。これに対して、通常の可視光画像を撮像するカメラを撮像部として適用してもよい。通常のカメラで吐出口10を撮像したとき、画像内のあらかじめ定めた閾値輝度以上の箇所が銑鉄の部分に相当し、熱画像と同様に銑鉄の幅を画像処理で取得することができる。
【0055】
また、上述した実施の形態例で説明した計測幅と流量の関係を示すn次多項式は、一つの例であり、その他の関係式を使って、流量を算出してもよい。
【0056】
また、上述した実施の形態例では、試行フェーズで複数のデータファイルを取得して、その複数のデータファイルから最適な係数値を求めた上で、測定フェーズで画像から銑鉄量(溶滓量)を算出するようにした。これに対して、試行フェーズを省略して、測定フェーズでの初回の測定時には、係数値として何らかの初期値を設定し、測定フェーズでの測定終了時の係数値の更新(図6のフローチャートのステップS27での更新)を繰り返すことで、徐々に係数値を最適化するようにしてもよい。
【0057】
逆に、試行フェーズで十分な数のデータファイルが取得できた場合には、測定フェーズでのステップS26での体積取得処理とステップS27での更新を省略してもよい。
【0058】
また、上述した実施の形態例では、吐出口から吐出される銑鉄又は溶滓の量を計測する銑鉄量計測装置に適用した例としたが、本発明は、銑鉄以外の各種高温流体が吐出口から吐出される場合の、その吐出された高温流体の量を計測する高温流体計測装置にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1a,1b,1c,1d…銑鉄(溶滓)、10…吐出口、11,12…側壁、13…樋、20…銑鉄(溶滓)蓄積容器、21…重量センサ、30…赤外線サーモグラフィカメラ、31…ケーブル、40…演算処理装置、40a…CPU(中央処理ユニット)、40b…ROM、40c…RAM、40d…不揮発性ストレージ、40e…画像キャプチャ部、40f…入力部、40g…表示部、41…画像処理部、42…時間履歴取得部、43…体積入力部、44…データファイル作成部、45…データ蓄積部、46…演算処理部、47…銑鉄量(溶滓量)出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8