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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046390
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】白内障手術評価システム
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20220315BHJP
   G09B 23/30 20060101ALI20220315BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20220315BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
G09B9/00 Z
G09B23/30
G09B19/00 H
A61F9/007 130Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020166363
(22)【出願日】2020-09-10
(71)【出願人】
【識別番号】518148973
【氏名又は名称】株式会社シンクアウト
(72)【発明者】
【氏名】田淵 仁志
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032CA06
(57)【要約】
【課題】強膜内固定術の習熟度を評価することの可能な白内障手術評価システムを提供する。
【解決手段】本発明の一側面である白内障手術評価システムは、模擬眼球を用いた強膜内固定術の実習の様子を撮像することにより得られた動画データが入力されると、動画データに含まれる手術工程を分類するとともに、分類した手術工程における習熟度を評価し、分類結果および評価結果を出力する評価モデルを備えている。この白内障手術評価システムは、さらに、記評価モデルに対して動画データを評価モデルに入力することにより評価モデルから分類結果および評価結果を取得する取得部を備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
模擬眼球を用いた強膜内固定術の実習の様子を撮像することにより得られた動画データが入力されると、前記動画データに含まれる手術工程を分類するとともに、分類した手術工程における習熟度を評価し、分類結果および評価結果を出力する評価モデルと、
前記評価モデルに対して前記動画データを前記評価モデルに入力することにより前記評価モデルから前記分類結果および前記評価結果を取得する取得部と
を備えた
白内障手術評価システム。
【請求項2】
前記評価モデルは、前記模擬眼球と同様の模擬眼球を用いた強膜内固定術の実習の様子を撮像することにより得られた学習用動画データを用いて生成されたパラメータを用いて、前記動画データを解析することにより前記分類結果および前記評価結果を生成し、出力する人工知能モデルである
請求項1に記載の白内障手術評価システム。
【請求項3】
撮像により前記動画データを取得する撮像部を更に備えた
請求項1または請求項2に記載の白内障手術評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白内障手術評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
白内障とは眼の中でレンズの機能を果たしている水晶体が混濁する病気である。水晶体は、虹彩の後ろに位置しており、前嚢および後嚢に包まれている。白内障手術では、例えば、前嚢を引き裂き、前嚢の切開部分から、混濁した水晶体を超音波乳化吸引術によって吸引除去し、人工水晶体としての眼内レンズを切開部分から嚢内に挿入する。
【0003】
上述の白内障手術を上達するにはかなりの数の症例の積み重ねが必要である。しかし、現在では、医療訴訟の多発や患者へのインフォームドコンセントの徹底によって、未熟な若い医師に対する、臨床での手術実践を通しての手術教育が非常に難しい。そのため、白内障手術の訓練として、新鮮な摘出豚眼を使用した手術実習が多用されている。しかし、豚眼の場合には、すぐに痛むため摘出して早期に使用しなければならず、さらに、手術室で豚眼を使用するのは不衛生である。そこで、例えば、手術実習用の模擬眼球(例えば特許文献1参照)や、手術実習用のCG(Computer Graphics)を用いたシミュレータが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-028305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、白内障手術の最中に、前嚢および後嚢が何らかの理由で脱落することがある。このような場合には、眼内レンズを前嚢および後嚢で支持することができないので、強膜に眼内レンズを固定する強膜内固定術が用いられる。強膜内固定術は、白内障手術の中で難易度が非常に高い術式である。しかし、模擬眼球を使用した手術実習では、強膜内固定術の習熟度を評価することが難しいという問題があった。また、CGを用いたシミュレータでは、パラメータ設定が複雑で、強膜内固定術の実習をそもそも実用的なレベルを行うことが困難であった。従って、強膜内固定術の習熟度を評価することの可能な白内障手術評価システムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面である白内障手術評価システムは、模擬眼球を用いた強膜内固定術の実習の様子を撮像することにより得られた動画データが入力されると、動画データに含まれる手術工程を分類するとともに、分類した手術工程における習熟度を評価し、分類結果および評価結果を出力する評価モデルを備えている。この白内障手術評価システムは、さらに、記評価モデルに対して動画データを評価モデルに入力することにより評価モデルから分類結果および評価結果を取得する取得部を備えている。
【0007】
本発明の一側面である白内障手術評価システムでは、評価モデルにおいて、模擬眼球を用いた強膜内固定術の実習の様子を撮像することにより得られた動画データに含まれる手術工程が分類され、分類された手術工程における習熟度が評価される。これにより、摘出豚眼を使用した場合と比べて、動画データに含まれる、習熟度の評価の点で不要な情報を削減することができるので、習熟度の評価を高精度に行うことができる。また、CGを用いたシミュレータと比べて、評価モデルのパラメータ設定が容易なので、強膜内固定術の実習を実用的なレベルで行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面である白内障手術評価システムによれば、評価モデルにおいて、模擬眼球を用いた強膜内固定術の実習の様子を撮像することにより得られた動画データに含まれる手術工程を分類し、分類した手術工程における習熟度を評価するようにしたので、強膜内固定術の習熟度を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係る白内障手術評価システムの概略構成例を表す図である。
図2図1の模擬眼球の斜視構成例を表す図である。
図3図2の模擬眼球の展開斜視構成例を表す図である。
図4図2の模擬眼球の断面構成例を表す図である。
図5図1の白内障手術評価システムの内部構成例を表す図である。
図6図5の動画データの一例を表す図である。
図7図5の動画データの一例を表す図である。
図8図5の動画データの一例を表す図である。
図9図5の評価モデルの概略構成例を表す図である。
図10図5の学習モジュールの機能ブロック例を表す図である。
図11図1の白内障手術評価システムの概略構成の一変形例を表す図である。
図12図11の白内障手術評価システムの内部構成例を表す図である。
図13図1の白内障手術評価システムの概略構成の一変形例を表す図である。
図14図13の白内障手術評価システムの内部構成例を表す図である。
図15図1の白内障手術評価システムの概略構成の一変形例を表す図である。
図16図15の白内障手術評価システムの内部構成例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は本発明の一具体例であって、本発明は以下の態様に限定されるものではない。また、本発明は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比などについても、それらに限定されるものではない。また、以下の説明において、上下、左右、前後等の方向は、特に言及しない限り医療従事者側から見た方向とする。なお、上下方向については、後述の対物レンズから術野に向かう方向を下方とし、これの反対方向を上方とする。一般に患者は仰向け状態で手術を受けるので、上下方向と垂直方向とは同じになる。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.実施の形態(図1図10
手術工程の分類や評価をサーバ装置で行う例
2.変形例
変形例A:サーバ装置を省略し、手術分類や評価を
情報処理装置で行う例(図11図12
変形例B:カメラ付き情報処理装置を用いる例(図13図14
変形例C:サーバ装置を省略し、手術分類や評価を
カメラ付き情報処理装置で行う例(図15図16
【0011】
<1.実施の形態>
[構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る白内障手術評価システム100の概略構成の一例を表したものである。白内障手術評価システム100は、白内障手術の中で難易度が非常に高い術式である強膜内固定術の習熟度を評価するためのシステムである。この白内障手術評価システム100では、模擬眼球400と、眼科手術用顕微鏡システム200が用いられる。
【0012】
(模擬眼球400)
図2は、模擬眼球400斜視構成例を表したものである。図3は、模擬眼球400の展開斜視構成例を表したものである。図4は、模擬眼球400の断面構成例を表したものである。
【0013】
模擬眼球400は、強膜内固定術の実習用の装置であり、実際の眼の一部を模したものである。模擬眼球400は、例えば、下側部材410と、上側部材420とを備えている。下側部材410は、上側部材420を支持する部材であり、眼の後眼部に相当する箇所の一部を模した形状となっている。上側部材420は、眼の前眼部の一部を模した形状となっている。
【0014】
下側部材410は、上部に平坦な円環状の上端面411Aを有するほぼ半球形の殻状本体部411と、殻状本体部411の上端面411Aに固定された窪み部412とを有している。窪み部412の上端部が円形の開口部で開口されており、殻状本体部411の上端面411Aに固定されている。窪み部412内には、後述の眼内レンズ500が配置される。下側部材410は、例えば、樹脂成型によって形成されている。
【0015】
上側部材420は、下側部材410の上端面411Aに載置される円環状の模擬強膜部421と、模擬強膜部421に固定された円環状の模擬角膜部422および円環状の模擬虹彩部423とを有している。模擬強膜部421は、下側部材410の上端面411Aに載置される円環状の部材であり、実際の眼の強膜の一部を模した形状および柔らかさとなっている。模擬強膜部421は、例えば、白濁樹脂で形成されている。模擬角膜部422は、模擬強膜部421に固定された円環状の部材であり、実際の角膜を模した形状および柔らかさとなっている。模擬角膜部422には、実習を行う上での視野を確保するための窓(角膜窓422A)が設けられている。模擬虹彩部423は、模擬強膜部421に固定された円環状の部材であり、実際の眼の虹彩を模した形状および柔らかさとなっている。
【0016】
上側部材420には、眼内レンズ500を包むための模擬嚢部が省略されている。模擬嚢部は、実際の眼の上嚢および下嚢を模したものである。実際に強膜内固定術を行う際には、下嚢は、何らかの理由で脱落し、水晶体を保持する機能を果たさない状態になっている。従って、模擬嚢部は、強膜内固定術の実習において不要な部材である。従って、下側部材410の窪み部412は、上側部材420を下側部材410に載置した状態で、外部と連通している。
【0017】
白内障手術では、水晶体に代えて眼内レンズ500が用いられる。眼内レンズ500は、例えば、図2に示したように、眼内レンズ500を実際の強膜部(または模擬強膜部421)に固定するための2本の連結部520が本体レンズ部510の端縁に設けられた部材である。2本の連結部520は、例えば、本体レンズ部510の端縁のうち、本体レンズ部510の中央部分を間にして互いに対向する位置に固定されている。各連結部520は、例えば、糸状となっており、視認性を向上させるために白色以外の色の材料(例えば青色)で構成されている。本体レンズ部510は、実際の眼の水晶体の代替品である。本体レンズ部510は、例えば、レンズ形状となっており、透明樹脂で形成されている。
【0018】
(眼科手術用顕微鏡システム200)
続いて、白内障手術評価システム100に付随して用いられる眼科手術用顕微鏡システム200ついて説明する。眼科手術用顕微鏡システム200は、例えば、支柱210と、第1アーム220と、第2アーム230と、駆動装置240と、医療従事者用顕微鏡250と、フットスイッチ260とを備えている。
【0019】
支柱210は、眼科手術用顕微鏡システム200の全体を支持する。支柱210の上端には、第1アーム220の一端が接続されている。第1アーム220の他端には、第2アーム230の一端が接続されている。第2アーム230の他端には、駆動装置240が接続されている。医療従事者用顕微鏡250は、駆動装置240により懸架されている。白内障手術評価システム100に用いられるカメラ120が、医療従事者用顕微鏡250に付設されている。カメラ120が本発明の「撮像部」の一具体例に相当する。フットスイッチ260は、各種操作を医療従事者等の足で行うために用いられる。駆動装置240は、医療従事者等による操作に応じて、医療従事者用顕微鏡250とカメラ120とを上下方向および水平方向に3次元的に移動させる。
【0020】
医療従事者用顕微鏡250は、各種光学系や駆動系などを収納する鏡筒部251と、左右一対の接眼部252とを有している。医療従事者は、接眼部252を覗き込んで、鏡筒部251を介して術野を両眼で観察する。鏡筒部251は、例えば、対物レンズと、照明光学系と、観察光学系と、撮影光学系とを含んで構成されている。観察光学系は、対物レンズに連結される光学系であり、撮影光学系は、カメラ120に連結される光学系である。
【0021】
照明光学系は、対物レンズを介して術野を照明する。観察光学系は、照明光学系により照明されている術野を、対物レンズを介して医療従事者用顕微鏡250により観察するために用いられる。観察光学系は、左右一対設けられており、右側の観察光学系は、右側の接眼部252に連結され、左側の観察光学系は、左側の接眼部252に連結されている。右側の観察光学系には、例えば、ビームスプリッタが設けられており、術野から右側の観察光学系を導光する光の一部がビームスプリッタによって撮影光学系に導かれる。
【0022】
(白内障手術評価システム100)
続いて、白内障手術評価システム100の内部構成について説明する。図5は、白内障手術評価システム100の内部構成の一例を表したものである。白内障手術評価システム100は、例えば、情報処理装置110と、カメラ120と、サーバ装置130とを備えている。情報処理装置110およびサーバ装置130は、ネットワーク140を介して接続されている。情報処理装置110は、ネットワーク140を介してサーバ装置130と通信することができるように構成されている。サーバ装置130は、ネットワーク140を介して情報処理装置110と通信することができるように構成されている。情報処理装置110およびカメラ120は、ネットワーク140を介して接続されている。情報処理装置110は、ネットワーク140を介してカメラ120と通信することができるように構成されている。カメラ120は、ネットワーク140を介して情報処理装置110と通信することができるように構成されている。
【0023】
ネットワーク140は、例えば、インターネットで標準的に利用されている通信プロトコル(TCP/IP)を用いて通信を行うネットワークである。ネットワーク140は、例えば、そのネットワーク独自の通信プロトコルを用いて通信を行うセキュアなネットワークであってもよい。ネットワーク140は、例えば、インターネット、イントラネット、または、ローカルエリアネットワークである。ネットワーク140と、情報処理装置110、サーバ装置130またはカメラ120との接続は、例えば、イーサネット等の有線LAN(Local Area Network)であってもよいし、Wi-Fi等の無線LANや、携帯電話回線などであってもよい。
【0024】
情報処理装置110は、例えば、制御部111、メモリ112、表示部113、入力部114およびネットワークIF(Interface)115を含んで構成されている。制御部111が本発明の「取得部」の一具体例に相当する。制御部111は、CPU(Central Processing Unit)およびGPU(Graphics Processing Unit)などを含んで構成され、例えば、メモリ112に記憶されたオペレーティングシステムなど(図示せず)を実行する。制御部111は、さらに、例えば、メモリ112に記憶されたプログラム112Aを実行する。プログラム112Aは、術野に含まれる模擬眼球400に対して、ユーザが強膜内固定術の実習を行ったときの、その手術の習熟度を評価するための一連の手順を制御部111に実行させる。プログラム112Aが制御部111に実行させる一連の手順については、後に詳述する。
【0025】
メモリ112は、制御部111によって実行されるプログラム(例えば、オペレーティングシステム)などを記憶している。メモリ112は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置(ハードディスク等)等によって構成される。メモリ112は、さらに、プログラム112Aを記憶している。
【0026】
表示部113は、例えば、液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネル等の表示装置からなる。表示部113は、制御部111からの映像信号に基づく画像を表示面110Aに表示する。入力部114は、外部(例えば、ユーザ)からの指示を受け付け、受け付けた指示を制御部111に出力する。入力部114は、例えば、ボタンやダイヤルなどを含む機械的な入力インターフェースであってもよいし、マイクロフォンなどを含む音声入力インターフェースであってもよい。入力部114は、例えば、情報処理装置110の表示面110Aに設けられたタッチパネルであってもよい。ネットワークIF115は、ネットワーク140を介してカメラ120およびサーバ装置130と通信するための通信インターフェースである。
【0027】
カメラ120は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサもしくはCMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)イメージセンサを含んで構成されている。カメラ120は、模擬眼球400を用いた強膜内固定術の実習の様子を撮像する。カメラ120は、例えば、情報処理装置110による制御に従って撮像を行い、それにより得られた動画(動画データIa)を、ネットワーク140を介して情報処理装置110に出力する。
【0028】
サーバ装置130は、例えば、制御部131、評価モデル132、学習モジュール133、メモリ134,135およびネットワークIF136などを含んで構成されている。評価モデル132が、本発明の「評価モデル」の一具体例に相当する。制御部131は、CPUおよびGPUなどを含んで構成され、例えば、メモリ134に記憶されたオペレーティングシステムなどを実行する。制御部131は、さらに、例えば、評価モデル132に動画データIaを入力したり、動画データIaの入力に対する応答として評価モデル132から取得した工程評価データDaを、ネットワークIF136を介して情報処理装置110に送信したりする。
【0029】
ネットワークIF136は、ネットワーク140を介して情報処理装置110と通信するための通信インターフェースである。メモリ134は、制御部131によって実行されるプログラム(例えば、オペレーティングシステム)などを記憶する。メモリ134は、例えば、RAM、ROM、補助記憶装置(ハードディスク等)等によって構成される。メモリ134には、さらに、工程データ134Aおよびパラメータ134Bが記憶されている。
【0030】
工程データ134Aは、学習モジュール133の入力データとして用いられるデータであり、各動画データ135A、各動画データ135Bおよび各動画データ135Cに含まれる手術工程の分類についてのデータである。工程データ134Aには、例えば、各動画データ135Aに含まれる手術工程が強膜内固定術の前段の工程であることが記述されており、各動画データ135Bに含まれる手術工程が強膜内固定術の中段の工程であることが記述されており、各動画データ135Cに含まれる手術工程が強膜内固定術の後段の工程であることが記述されている。パラメータ134Bは、評価モデル132で用いられるデータであり、例えば、後述のニューラルネットワークに関するデータであり、例えば、ニューラルネットワークの層数、各層におけるニューロンの個数、ニューロン同士の結合関係、各ニューロン間の結合の重み、及び各ニューロンの閾値を含む。パラメータ134Bは、学習モジュール133によって導出される。
【0031】
メモリ135は、例えば、RAM、ROM、補助記憶装置(ハードディスク等)等によって構成される。メモリ135には、例えば、複数の動画データ135A、複数の動画データ135Bおよび複数の動画データ135Cが記憶されている。
【0032】
各動画データ135A、各動画データ135Bおよび各動画データ135Cは、学習モジュール133の入力データとして用いられるデータである。各動画データ135A、各動画データ135Bおよび各動画データ135Cは、模擬眼球400を用いた強膜内固定術の実習の様子をカメラ120で撮像することにより得られた動画データである。各動画データ135Aは、例えば、強膜内固定術の前段の手術の様子をカメラ120で撮像することにより得られたデータである。各動画データ135Aには、例えば、図6に示したような、模擬眼球400を用いた強膜内固定術の実習において、眼内レンズ500を窪み部412内に入れる様子をカメラ120で撮像することにより得られたデータである。各動画データ135Bは、例えば、強膜内固定術の中段の手術の様子をカメラ120で撮像することにより得られたデータである。各動画データ135Bには、例えば、図7に示したような、模擬眼球400を用いた強膜内固定術の実習において、眼内レンズ500の2本の連結部520を模擬強膜部421に通す様子をカメラ120で撮像することにより得られたデータである。各動画データ135Cは、例えば、強膜内固定術の後段の手術の様子をカメラ120で撮像することにより得られたデータである。各動画データ135Cには、例えば、例えば、図8に示したような、模擬眼球400を用いた強膜内固定術の実習において、模擬強膜部421に通された2本の連結部520を模擬強膜部421に固定する様子をカメラ120で撮像することにより得られたデータである。
【0033】
評価モデル132は、画像解析のための人工知能モデルである。評価モデル132は、学習モジュール133で生成されたパラメータ134Bを用いて、入力された動画データIaを解析して、動画データIaに含まれる手術工程(例えば、前段、中段、後段)を所定の期間ごとに分類するとともに、分類した手術工程における習熟度を評価し、分類結果および評価結果を工程評価データDaとして出力する。動画データIaは、模擬眼球400を用いて強膜内固定術を実習している様子をカメラ120で撮像することにより得られたデータである。分類結果は、動画データIaに含まれる手術工程を所定の時間ごとに分類したデータを含む。習熟度は、動画データIaに含まれる手術の習熟度を評価したデータを含む。動画データIaに、手術工程の分類が複数含まれる場合には、習熟度は、動画データIaに含まれる手術の習熟度を手術工程の分類ごとに評価したデータを含む。
【0034】
評価モデル132は、例えば、図9に示したようなニューラルネットワークを含む。評価モデル132は、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)などのディープニューラルネットワークを含む。評価モデル132におけるニューラルネットワークは、例えば、入力層132A、中間層132B(隠れ層)、及び出力層132Cを含む。各層(132A,132B,132C)は、1又は複数のニューロンを備えている。例えば、入力層132Aのニューロンの数は、動画データIaに含まれる各画像データの画素数に応じて設定することができる。中間層132Bのニューロンの数は、適宜設定することができる。出力層132Cは、強膜内固定術に含まれる手術工程数(分類数)に応じて設定することができる。
【0035】
互いに隣接する層のニューロン同士は結合されており、各結合には重み(結合荷重)が設定されている。ニューロンの結合数は、適宜設定されてよい。各ニューロンには閾値が設定されており、各ニューロンへの入力値と重みとの積の和が閾値を超えているか否かによって各ニューロンの出力値が決定される。
【0036】
入力層132Aには、画像データIaが入力される。出力層132Cからは、工程評価データDaが出力される。評価モデル132は、画像データIaが入力されると、工程評価データDaを出力するように学習済みである。学習によって得られた評価モデル132の学習済みパラメータ(パラメータ134B)は、メモリ134に記憶されている。なお、サーバ装置130とは異なる装置においてパラメータ134Bが導出され、導出されたパラメータ134Bがメモリ134に格納されてもよい。この場合、サーバ装置130において、学習モジュール133、工程データ134A、複数の動画データ135A、複数の動画データ135Bおよび複数の動画データ135Cを省略することが可能である。
【0037】
次に、評価モデル132の学習方法について説明する。図10は、評価モデル132の学習を行う学習モジュール133の機能ブロックを表したものである。学習モジュール133は、例えば、プロセッサおよびメモリを含んで構成されている。
【0038】
学習モジュール133は、学習データ生成モジュール133Aおよびパラメータ生成モジュール133Bを含む。学習データ生成モジュール133Aは、工程データ134Aおよび動画データ135A,135B,135Cから学習データDbを生成する。動画データ135A,135B,135Cは,動画データIaの撮像時に用いられた模擬眼球400と同様の模擬眼球(または同一構成の模擬眼球400)を用いた強膜内固定術の実習の様子をカメラ120で撮像することにより取得される。パラメータ生成モジュール133Bは、学習データDbによって評価モデル132を学習させることで、評価モデル132のパラメータを最適化する。パラメータ生成モジュール133Bは、最適化されたパラメータを学習済みパラメータ(パラメータ134B)として取得する。
【0039】
なお、パラメータ134Bの初期値は、テンプレートにより与えられてもよい。或いは、パラメータ134Bの初期値は、人間の入力により手動で与えられてもよい。学習モジュール133は、評価モデル132の再学習を行ってもよい。評価モデル132の再学習を行うときには、学習モジュール133は、再学習を行う対象となる評価モデル132の学習済みパラメータ(パラメータ134B)に基づいて、新たなパラメータ134Bを生成してもよい。学習モジュール133は、評価モデル132の学習を定期的に実行することで、パラメータ134Bを更新してもよい。
【0040】
[動作]
次に、白内障手術評価システム100の動作について説明する。
【0041】
まず、カメラ120が、模擬眼球400を用いた強膜内固定術の実習の様子を撮像し、それにより得られた動画データIaを、ネットワーク140を介して情報処理装置110に出力する。情報処理装置110は、カメラ120からの動画データIaの入力が終了すると、カメラ120から得られた動画データIaを、ネットワーク140を介してサーバ装置130に出力する。なお、情報処理装置110は、カメラ120からの動画データIaをリアルタイムに、または、所定時間ごとにサーバ装置130に出力してもよい。
【0042】
サーバ装置130は、動画データIaを取得すると、取得した動画データIaを評価モデル132に入力する。評価モデル132は、入力された動画データIaについて動画解析を実行する。例えば、評価モデル132は、入力された動画データIaについて、ニューラルネットワークに基づく画像解析を実行する。評価モデル132は、入力された動画データIaに対する応答として、工程評価データDaを出力する。サーバ装置130は、評価モデル132から得られた工程評価データDaを、ネットワーク140を介して情報処理装置110に出力する。情報処理装置110は、サーバ装置130から得られた工程評価データDaを表示面110Aに表示する。
【0043】
[効果]
次に、白内障手術評価システム100の効果について説明する。
【0044】
白内障手術では、例えば、前嚢を引き裂き、前嚢の切開部分から、混濁した水晶体を超音波乳化吸引術によって吸引除去し、人工水晶体としての眼内レンズを切開部分に挿入する。上述の白内障手術を上達するにはかなりの数の症例の積み重ねが必要である。しかし、現在では、医療訴訟の多発や患者へのインフォームドコンセントの徹底によって、未熟な若い医師に対する、臨床での手術実践を通しての手術教育が非常に難しい。そのため、白内障手術の訓練として、新鮮な摘出豚眼を使用した手術実習が多用されている。しかし、豚眼の場合には、すぐに痛むため摘出して早期に使用しなければならず、さらに、手術室で豚眼を使用するのは不衛生である。
【0045】
ところで、白内障手術の最中に、前嚢および後嚢が何らかの理由で脱落することがある。このような場合には、眼内レンズを前嚢および後嚢で支持することができないので、細い糸を用いて強膜に眼内レンズを固定する強膜内固定術が用いられる。模擬眼球を使用した手術実習では、強膜内固定術の習熟度を評価することが難しいという問題があった。また、CGを用いたシミュレータでは、パラメータ設定が複雑で、強膜内固定術の実習をそもそも実用的なレベルを行うことが困難であった。
【0046】
一方、本実施の形態では、評価モデル132において、模擬眼球を用いた強膜内固定術の実習の様子を撮像することにより得られた動画データIaに含まれる手術工程が分類され、分類された手術工程における習熟度が評価される。これにより、摘出豚眼を使用した場合と比べて、動画データIaに含まれる、習熟度の評価の点で不要な情報を削減することができるので、習熟度の評価を高精度に行うことができる。また、CGを用いたシミュレータと比べて、評価モデル132のパラメータ設定が容易なので、強膜内固定術の実習を実用的なレベルを行うことができる。従って、白内障手術評価システム100において、強膜内固定術の習熟度を評価することができる。
【0047】
また、本実施の形態において、模擬眼球400と同様の模擬眼球400を用いた強膜内固定術の実習の様子を撮像することにより得られた学習用動画データ(135A,135B,135C)を用いて生成されたパラメータ134Bを用いて、動画データIaを解析することにより工程評価データDaを生成し、出力する人工知能モデルが評価モデル132として用いられる。これにより、CGを用いたシミュレータと比べて、評価モデル132のパラメータ設定が容易なので、強膜内固定術の実習を実用的なレベルを行うことができる。従って、白内障手術評価システム100において、強膜内固定術の習熟度を評価することができる。
【0048】
また、本実施の形態において、撮像により動画データIaを取得するカメラ120が設けられている。これにより、評価モデル132を用いて動画データIaを解析することにより工程評価データDaを取得することができる。従って、白内障手術評価システム100において、強膜内固定術の習熟度を評価することができる。
【0049】
<2.変形例>
次に、上記実施の形態に係る白内障手術評価システム100の変形例について説明する。
【0050】
[[変形例A]]
上記実施の形態において、例えば、図11に示したように、サーバ装置130が省略されるとともに、情報処理装置110がサーバ装置130の機能を備えていてもよい。このとき、情報処理装置110は、例えば、図12に示したように、評価モデル132および学習モジュール133を更に備えるとともに、工程データ134Aおよびパラメータ134Bを記憶するメモリ134と、複数の動画データ135A、複数の動画データ135Bおよび複数の動画データ135Cを記憶するメモリ135とを更に備えていてもよい。このようにした場合には、工程評価データDaの導出を情報処理装置110で行うことができる。
【0051】
[[変形例B]]
上記実施の形態において、例えば、図13図14に示したように、情報処理装置110とカメラ120との通信が、ネットワーク140とは別のネットワーク150を介して行われてもよい。また、上記変形例Aにおいて、例えば、図15図16に示したように、情報処理装置110とカメラ120との通信が、ネットワーク140とは別のネットワーク150を介して行われてもよい。このとき、ネットワーク150は、例えば、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信であってもよい。このような構成となっている場合であっても、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
【0052】
[[変形例C]]
上記実施の形態およびその変形例において、強膜内固定術で使用する手術器具の、模擬強膜部421に対する入射角度などを検出する装置が設けられていてもよい。このようにした場合には、強膜内固定術で使用する手術器具の、模擬強膜部421に対する入射角度などを強膜内固定術の習熟度の評価に盛り込むことができるので、強膜内固定術の習熟度の評価をより緻密に行うことが可能となる。
【0053】
[[変形例D]]
上記実施の形態およびその変形例において、カメラ120とは異なるカメラで得られた動画データIaが用いられてもよい。このとき、カメラ120とは異なるカメラは、医療従事者が接眼部252を覗き込んだときの術野の観察方向とは異なる方向から術野を撮像するように構成されている。カメラ120とは異なるカメラが、術野に対して斜めの方向から術野を撮像することにより動画データIaを取得してもよい。このように、術野に対して斜めの方向から術野を撮像した場合には、強膜内固定術で使用する手術器具の、模擬強膜部421に対する入射角度などを検出する装置を設けていなくても、上記入射角度などを動画データIaから知ることが可能となる。従って、上記入射角度などを検出する装置を省略することができる分だけ、白内障手術評価システム100の構成を簡素化することができる。
【符号の説明】
【0054】
100…白内障手術評価システム、110…情報処理装置、110A…表示面、111…制御部、112…メモリ、112A…プログラム、113…表示部、114…入力部、115…ネットワークIF、120…カメラ、130…サーバ装置、131…制御部、132…評価モデル、132A…入力層、132B…中間層、132C…出力層、133…学習モジュール、133A…学習データ生成モジュール、133B…パラメータ生成モジュール、134…メモリ、134A…工程データ、134B…パラメータ、135…メモリ、135A,135B,135C…動画データ、136…ネットワークIF、140,150…ネットワーク、200…眼科手術用顕微鏡システム、210…支柱、220…第1アーム、230…第2アーム、240…駆動装置、250…医療従事者用顕微鏡、260…フットスイッチ、300…手術台、400…模擬眼球、410…下側部材、411…殻状本体部、411A…上端面、412…窪み部、420…上側部材、421…模擬強膜部、422…模擬角膜部、423…模擬虹彩部、500…眼内レンズ、510…本体レンズ部、520…連結部、Da…工程評価データ、Db…学習データ、Ia…動画データ。
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