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特開2022-46425物体検出用センサ及びセンサ信号の評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046425
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】物体検出用センサ及びセンサ信号の評価方法
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/95 20060101AFI20220315BHJP
【FI】
H03K17/95 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021137119
(22)【出願日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】20195414.6
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ぺーター
(72)【発明者】
【氏名】サッシャ トス
(72)【発明者】
【氏名】オラフ マッフル
【テーマコード(参考)】
5J050
【Fターム(参考)】
5J050AA13
5J050AA36
5J050AA48
5J050FF22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】物体検出用センサ及び物体の特性を決定する機械学習の方法を提供する。
【解決手段】センサ10は、センサ信号を検出するための、少なくとも1つのコイルを備える検出ユニット(受信コイル12、A/D変換器22)と、制御及び評価ユニット24と、を備えている。該ユニットは、センサ信号を評価することにより物体の特性を特定し、センサ信号から機械学習の方法を用いてセンサ環境からの妨害の影響についての補正値を決定し、物体の特性の特定の際に該補正値を考慮するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体検出用センサ(10)、特に誘導型近接センサであって、センサ信号を検出するための検出ユニット(12、22)と、前記センサ信号を評価することにより物体の特性を特定するように構成された制御及び評価ユニット(24)とを備えるセンサ(10)において、
前記制御及び評価ユニット(24)が更に、前記センサ信号から機械学習の方法を用いてセンサ環境からの妨害の影響についての補正値を決定し、前記物体の特性の特定の際に該補正値を考慮するように構成されていることを特徴とするセンサ(10)。
【請求項2】
前記検出ユニット(12、22)が少なくとも1つのコイル(12)を備えていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項3】
パルス信号を生成するための少なくとも1つのコイル(12、14)を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ(10)。
【請求項4】
前記検出ユニットの特性又は生成されたパルス信号の特性を変化させることで前記センサ環境に関する補足情報を捕らえるための補助要素(14,14a、14b)を備えていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項5】
前記補助要素(14、14a、14b)が垂直コイル(14)、同軸コイル(14a)又は短絡リング(14b)であることを特徴とする請求項5に記載のセンサ(10)。
【請求項6】
前記制御及び評価ユニット(24)が物体の特性として二値的な物体確認信号を決定するように構成されており、特にセンサ(10)が該物体確認信号をスイッチ信号として出力するためのスイッチ出力(34)を備えていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項7】
前記検出ユニット(12、22)に前記センサ信号をデジタル化するためのA/D変換器(22)が割り当てられていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項8】
前記制御及び評価ユニット(24)が、参照信号及び前記センサ信号から中間信号を生成し、該中間信号に基づいて前記物体の特性を特定する及び/又は前記補正値を決定するように構成されており、特に前記参照信号が事前に記録及び保存されたセンサ(10)自身のセンサ信号又は参照センサのセンサ信号であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項9】
前記制御及び評価ユニット(24)が、特に変換及び/又は次元縮小の後で、前記センサ信号から特徴ベクトルを生成するように構成されていることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項10】
前記制御及び評価ユニット(24)が、前記センサ信号を積分し、特に積分した前記センサ信号を閾値と比較するように構成されており、特に前記補正値が、積分されたセンサ信号のための補正値であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項11】
前記制御及び評価ユニット(24)が、線形モデル、決定木、ニューラルネットワーク、ガウス過程回帰、k近傍法又はサポートベクターマシンのうち少なくとも1つの機械学習の方法のために構成されていることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項12】
前記機械学習の方法が、様々なセンサ環境におけるセンサ信号、特に取り付け深さ、取り付け材料、物体の距離及び物体の材料を様々に変えた条件下でのセンサ信号を用いて訓練されていることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項13】
前記制御及び評価ユニット(24)が、前記補正値を時間に沿って追跡し、その履歴に基づき、特に予測フィルタを用いて、該補正値を適応させるように構成されていることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項14】
センサ(10)のセンサ信号、特に誘導型近接センサのセンサ信号の評価方法であって、前記センサ信号を検出して評価することで物体の特性を決定する方法において、
前記センサ信号から機械学習の方法を用いてセンサ環境からの妨害の影響についての補正値を決定し、前記物体の特性の特定の際に該補正値を考慮することを特徴とする方法。
【請求項15】
前記機械学習の方法を、様々なセンサ環境におけるセンサ信号、特に取り付け深さ、取り付け材料、物体の距離及び物体の材料を様々に変えた条件下でのセンサ信号を用いて訓練することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1又は14のプレアンブルに記載の物体検出用センサ及びセンサ信号の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば非接触型のスイッチとして機能する誘導型近接センサ等のセンサはしばしば厳しい環境で使用される。その際に重要な品質上の特徴の一つは最大の到達可能なスイッチング距離である。物体をより遠くで早めに検出できるという明白な利点の他、スイッチング距離が大きくなると更に別の利点がある。センサのスイッチング距離が大きければ大きいほど、物体が検出される可能性がある距離を大きくすることができる。これにより機械的な破壊の可能性が低くなる。スイッチング距離を大きくすることの別の利点は取り付け公差が大きくなることである。これにより、技術者がセンサの取り付け時にさほど精度よく作業を行う必要がなくなり、時間と金銭を節約するとともにシステムの可用性を高めることができる。ある一定のセンサ径でより大きなスイッチング距離を達成できれば、状況によっては検出上の課題をより小さいセンサで解決することができる。これはしばしば設計上有利である。
【0003】
誘導型近接センサの別の重要な品質上の特徴として、鋼鉄に対して定義される名目スイッチング距離Snの他、別の材料の場合に達成される実際のスイッチング距離の大きさもある。これらのスイッチング距離はいわゆる減少係数により特徴付けられる。理想的にはセンサは任意の金属に対して等しく大きなスイッチング距離を持つ。この場合、減少係数は最大値1であり、故に「F1(Faktor 1)センサ」とも呼ばれる。
【0004】
センサのスイッチング距離に影響を及ぼす第3の特性は取り付けに対するセンサの敏感さである。ここで目指すべき理想は、取り付け深さ及び取り付け材料に対して全く敏感さを持たず、常にその仕様通りのスイッチング距離を持ち続けるセンサであろう。ところが実際には取り付け依存性がある。その作用を「取り付けによる跳び(Einbausprung)」と呼ぶ。
【0005】
誘導型近接センサとしては、例えばプラスチックキャップを用いて少なくとも幾つかの型式で標準名目スイッチング距離の4倍の値を達成したものが入手可能である。これは古典的な等級法に従って作動するセンサである。これらのセンサにはF1特性を持たないという欠点がある。これらのセンサでは一般に1つの周波数での正弦波振動の振幅しか情報として利用できないから、前記の欠点はインテリジェントなアルゴリズムによっても取り除くことができない。
【0006】
正弦波振動の代わりにパルス法を用いて動作する誘導型近接センサがかなりある。パルスは周波数、振幅及び位相の異なる正弦波信号の混合物とみなすことができるため、補足的な情報をもたらす。このようなセンサは少なくとも鋼鉄とアルミニウムの場合にほぼF1特性を示すものの、取り付け依存性が依然として比較的強い。
【0007】
取り付けによる跳びを最小限にするため、コア部の周りに巻き付けられた箔や追加の補償パルスといった補助的措置を講じるアプローチがある。これにより取り付け状況に対する敏感さは低減されるものの、取り付けによる跳びが完全に補償されるわけではない。加えて、このようなハードウェア措置はスイッチング距離に負の影響を及ぼすとともに製造コストを増大させる。
【0008】
これに関して従来技術から幾つか例を挙げる。特許文献1から、主発信コイルとそれを同軸状に囲繞する逆巻きの補償コイルとを有する誘導型近接センサが知られている。特許文献2は測定コイルと別のコイルとを有する誘導的に作動するセンサ装置に関するものである。特許文献3には、誘導型近接スイッチとそのためのコアコイルが記載されており、そのコアコイルには部分的な流れを検出するための少なくとも2つのセンサコイルが割り当てられている。特許文献4では、別々に制御可能な電流源を有する第1コイルと補償コイルが誘導型近接スイッチ内に設けられている。特許文献5は、複数のコイルを有する近接センサであって、二つのコイルに設けられた受信回路の検出結果から取り付け金具に起因する第1成分と検出物体に起因する第2成分とを抽出し、第1成分を利用して第2成分を補償するものを開示している。
【0009】
今日現場で用いられている誘導型近接センサは、1つの周波数の正弦波振動を用いる等級法であろうとパルス法であろうと、ほぼ全てが古典的な評価法を用いて作動する。一方、機械学習の方法により評価を行う最初のアプローチもある。特許文献6に記載のパルス応答のデジタル化は、該文献では機械学習と関連付けられていないものの、それを前提とみなすことができる。それによりデジタル的な信号処理の手法の全帯域が利用可能になる。
【0010】
未公開の欧州特許出願第19212336.2号には参照信号を用いてセンサ信号を前処理して中間信号にする誘導型近接センサが記載されている。その中間信号から、機械学習法に従って訓練された評価ユニットを用いてセンサの出力値が算出される。
【0011】
特許文献7は誘導型路程センサとその駆動方法に関するものである。インパルス応答が人工的なニューラルネットワークにより直接評価される。そのニューラルネットワークは膨大なコストをかけてセンサ毎に個別に訓練する必要がある。インパルス応答が直接評価されることと、特許文献7ではインテリジェントな前処理が全く提案されていないことから、同じタイプの複数のセンサ間でも公差がなくならず、従って個別の訓練を行わずに済ませることができない。また、該文献では論じられていないが、様々な取り付け状況に対処すべき場合は、そうでなくても既に対処しにくい、個々のセンサに対する訓練コストが更に何倍にもなる。
【0012】
特許文献8から、少なくとも1つの測定コイルを有するセンサの構成であって、その評価ユニットがニューラルネットワークを備えており、該ニューラルネットワークの層間の接続の重みが学習段階において決定され、保存されるものが知られている。ここでも測定信号が直接、学習と評価に用いられる。様々な材料について訓練が行われるが、様々な取り付け状況については行われない。
【0013】
非特許文献1に材料に依存しないコンパクトな誘導型距離センサが記載されている。ここでも信号が人工的なニューラルネットワークで評価されるが、そのニューラルネットワークはセンサ毎に個別に訓練しなければならない。前処理されていない信号の使用、膨大で大量生産において支払い得ない訓練コスト、そして依然として存在する具体的な取り付け状況に対する敏感さといったこれまで何度も述べた欠点は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】DE 10 2006 053 023 B4
【特許文献2】DE 10 2007 027 822 A1
【特許文献3】DE 10 2007 045 18 A1
【特許文献4】DE 10 2017 109 813 A1
【特許文献5】DE 10 2018 102 898 A1
【特許文献6】EP 3 282 586 B1
【特許文献7】WO 2014/146623 A1
【特許文献8】DE 44 33 772 A1
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Kantor, Zoltan, and Zoltan Polik. "Artificial neural network assisted compact inductive distance sensor." Procedia Engineering 168 (2016): 23-26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
故に本発明の課題は、センサ信号、特に誘導型近接センサの信号の評価を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題は、請求項1又は14に記載の物体検出用センサ及びセンサ信号の評価方法により解決される。本センサ(特に誘導型近接センサ)は検出ユニットを用いてセンサ信号を検出する。制御及び評価ユニットがセンサ信号を評価することにより物体の特性を特定する。この評価は好ましくは古典的な手段を用いて、つまり機械学習の方法を用いることなく行われる。
【0018】
本発明の出発点となる基本思想は、センサ信号の全体又はその一部をもう一度機械学習の方法で評価することにある。この評価の目的は、センサ環境からの妨害の影響についての補正値を決定することにある。この補正値はセンサ信号の評価の際に物体の特性を特定するために考慮される、あるいは物体の特性を補正する。従って、機械学習の方法を用いて妨害的な環境の影響の見積もりが行われる。好ましい実装ではその評価を、物体の特性を得るための古典的な手法を用いる主経路と機械学習の方法を用いる補正経路とに分ける。これにより、古典的な手法でセンサ信号を簡単な信号処理で非常に高速に処理し、機械学習の方法でも複雑且つ低速に処理することができる。
【0019】
本発明には、冒頭で論じた誘導型近接センサの3つの重要な特性、即ち大きなスイッチング距離、F1特性、及び低い取り付け依存性が1つの装置において一体になる、乃至はこれらの主要な特性の少なくとも1つが最適化されるという利点がある。本発明に係るセンサの基本設計により少なくとも4倍のスイッチング距離と同時に少なくともアルミニウムと鋼鉄に対するF1特性が達成できる。これらの特性は取り付け深さ及び取り付け材料から十分に独立した状態に保たれる。機械学習の方法により一般に被検出物の標的材料を認識することが可能になる。従って、材料に依存しないスイッチング点つまりF1特性の他に、例えば非鉄金属を隠蔽し、狙いを定めて強磁性材料だけを認識することも可能である。本発明ではセンサの1つのクラス全体に対してタイプ特化型の訓練を行えば十分であり、センサを個々に訓練する必要はない。
【0020】
検出ユニットは少なくとも1つのコイルを備えていることが好ましい。これを用いて誘導型近接センサがそのセンサ信号を検出する。検出ユニットが正確に1つだけコイルを備えていればより好ましい。
【0021】
本センサはパルス信号を生成するための少なくとも1つのコイルを備えていることが好ましい。そのために該コイルには特に発信電流パルスが供給され、そのパルスが今度は電圧パルスをセンサ信号として誘導する。これをパルス応答とも呼ぶ。機械学習の方法を用いれば、例えば積分値のみからの情報よりもはるかに多くの情報をパルス応答から得ることができる。一実施形態では発信コイルを受信コイルと同一とすることができる。別の実施形態では発信用の第1コイルと受信ユニットの第2コイルとが少なくとも設けられ、好ましくは受信ユニットの第2コイルは正確に1つである。
【0022】
本センサは、検出ユニットの特性又は生成されたパルス信号の特性を変化させることでセンサ環境に関する補足情報を捕らえるための補助要素を備えていることが好ましい。補助要素の助けにより得られたセンサ信号を区別のために補助信号とも呼ぶ。一方、センサ信号も同様に残っており、これも同じように評価することができるが、傾向として、センサ信号はどちらかと言えば求める測定結果、補助信号は妨害の影響に関する情報を含んでいる。ただしこの区別は明確ではなく、センサ信号も補助信号も、実施形態によっては物体情報の特定にも補正値の決定にも寄与し得る。補助要素は補正値の見積もりを支援する。なぜならセンサが取り付け状況についてより多くの情報を得るからである。補助要素を用いて追加の測定を実行したり測定条件を様々に変えたりする。機械学習の方法は訓練の間、特にこの補足情報と突き合わされる。例えば、補正値を用いて妨害的な環境の影響を隠蔽することで、あらゆる取り付け状況において大きなスイッチング距離を均一に得るようにすることができる。
【0023】
補助要素は垂直コイル、同軸コイル又は短絡リングであることが好ましい。別体の垂直コイル又は別体の同軸コイルを用いて、好ましくは別のセンサ信号を生み出す特殊なパルスが送出される。非常に好ましい実施形態では、パルスの送出が、一方で唯一の受信コイルを介して、他方で補助的な垂直コイル又は同軸コイルを介して行われる。短絡リングの任意選択的な接続によっても補足的な情報を得ることができる。
【0024】
制御及び評価ユニットが物体の特性として二値的な物体確認信号を決定するように構成されており、特に本センサが該物体確認信号をスイッチ信号として出力するためのスイッチ出力を備えていることが好ましい。この場合、物体の特性とは「物体あり」又は「物体なし」という二値的な存在情報であり、その有無に所定の距離又は特定の材料といった特定の条件を更に課すことができる。このセンサは好ましくは、前記二値的な物体確認信号に対応するそのスイッチ出力を物体の進入及び退出のたびに切り替えるスイッチとして機能する。
【0025】
検出ユニットにはセンサ信号をデジタル化するためのA/D変換器が割り当てられていることが好ましい。このようにすればセンサ信号をデジタル的に処理することができる。デジタル化は、例えばセンサ信号のうち発信電流パルスの印加から誘導電圧パルスの減衰までの部分で行う。デジタル化されたセンサ信号は、一方で例えば積分値の算出により簡単に処理することができ、他方で機械学習の方法により複数のサンプリング値をほぼ任意に一緒に計算に入れたり組み合わせたりすることで1つのパルスから多くの情報を得ることができる。
【0026】
制御及び評価ユニットは、参照信号及びセンサ信号から中間信号を生成し、該中間信号に基づいて物体の特性を特定する及び/又は補正値を決定するように構成されていることが好ましい。この場合、中間信号が更に処理されるが、これは依然として元の入力量としてのセンサ信号の評価である。参照信号は、好ましくは、事前に記録及び保存されたセンサ自身のセンサ信号又は参照センサのセンサ信号である。センサ自身のセンサ信号、特にセンサ自身の参照パルスは、特定のセンサについて又は個々のセンサ毎に例えば製造時に記録及び保存される。例えば最終検査時に行われるこのようなステップは機械学習の方法のための個別訓練に比べて時間的がかからない。代わりに、参照信号として参照センサのセンサ信号を利用することが考えられる。参照センサは同じ構造又は同じタイプであることが好ましい。そうすれば個々のセンサ毎に参照信号を記録する必要がない。異なる使用状況に対して複数の参照信号を保存しておき、それらの間でパラメータ設定による選択を行ったり、それらを多重評価において利用したりすることも考えられる。
【0027】
制御及び評価ユニットは、特に変換及び/又は次元縮小の後で、センサ信号から特徴ベクトルを生成するように構成されていることが好ましい。特徴ベクトルはセンサ信号の前処理に相当し、特に機械学習の方法により補正値を決定するために利用される。特徴ベクトルは評価のための古典的な方法にも利用できるが、ここでは好ましくはセンサ信号又はデジタル化したセンサ信号が処理される。変換とは、例えばフーリエ変換、ウェーブレット変換、アダマール変換、離散コサイン変換又は主成分変換(PCA, Principal Component Analysis)である。変換後の信号においては重要な情報がより良く捕らえられることが多い。これにより多数の走査点を重要な特徴にまで縮小する次元縮小を行うことができる。これらの特徴は例えば変換後の信号において閾値より上で見つかる。特徴ベクトルを複数のパルス応答から生成することもできる。
【0028】
制御及び評価ユニットは、センサ信号を積分し、特に積分したセンサ信号を閾値と比較するように構成されていることが好ましい。これは古典的な手段により物体の特性を特定する方法又は主経路に関することであり、補正値を求めるための機械学習の方法に関することではない。実施形態によっては生のセンサ信号ではなくそれを前処理した結果が積分される。その後、好ましくは積分値を閾値と比較することで、二値的な物体確認信号又はスイッチ信号を導き出す。
【0029】
補正値は積分されたセンサ信号のための補正値であることが好ましい。この実施形態では、機械学習の方法により、具体的なセンサ環境及び取り付け状況に応じて積分を補正する補正値が算出される。
【0030】
制御及び評価ユニットは、線形モデル、決定木、ニューラルネットワーク、ガウス過程回帰、k近傍法又はサポートベクターマシンのうち少なくとも1つの機械学習の方法のために構成されていることが好ましい。適切な機械学習の方法は、利用可能な評価リソース、訓練データ、並びに考えられる用途及び取り付け状況の必要条件に基づいて選ぶことができる。
【0031】
機械学習の方法は、様々なセンサ環境におけるセンサ信号、特に取り付け深さ、取り付け材料、物体の距離及び物体の材料を様々に変えた条件下でのセンサ信号を用いて訓練されていることが好ましい。これにより、機械学習の方法及びそれを用いて決定される補正値において、センサ環境からの重大な影響が考慮される。言い換えれば、取り付け状況が様々な検出状況にどのように影響するかを再現することができる。この訓練はセンサ毎に実施する必要はなく、センサの1つのクラス全体に対して行うことができる。個々のセンサの公差は機械学習の方法で対処することができるし、しかも公差は個々の参照信号を用いて少なくとも低減することが可能である。
【0032】
制御及び評価ユニットは、補正値を時間に沿って追跡し、その履歴に基づき、特に予測フィルタを用いて、該補正値を適応させるように構成されていることが好ましい。取り付け状況及び他のセンサ環境はかなり安定しているのが典型的である。それ故、過去に決定された補正値は依然として少なくとも良い見積もりである。故に、予測フィルタを用いれば、残存する強弱性を十分に捕らえることができる。最も簡単な場合は単なる平均値又は移動平均値を計算するが、カルマンフィルタやウィーナーフィルタのようなより複雑な予測フィルタの使用も考えられる。
【0033】
本発明に係る方法では、センサ信号として特に本発明に係るセンサ信号が評価される。機械学習の方法が特に事前に様々なセンサ環境におけるセンサ信号を用いて訓練される。その際、特に好ましくは、取り付け深さ、取り付け材料、物体の距離及び物体の材料という量の少なくとも1つを変化させる。従って、余りに多くの訓練状況を用意する必要はなく、それでもなお重要な影響が捕らえられる。
【0034】
本発明に係る方法は、前記と同様のやり方で仕上げていくことが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そのような効果をもたらす特徴は、例えば本願の独立請求項に続く従属請求項に模範的に記載されているが、それらに限られるものではない。
【0035】
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明に係るセンサの模範的な構成を示す図。
図2】模範的なセンサ信号(ここではパルス応答)とそのデジタル化を示す図。
図3図2に示したセンサ信号から得られた模範的な特徴ベクトルを示す図。
図4】機械学習の方法により補正されたスイッチ信号を決定するための模範的なフローチャート。
図5】センサ環境をより良好に捕らえるための補助的な垂直コイルの3次元図。
図6】センサ環境をより良好に捕らえるための補助的な同軸コイルの3次元図。
図7】センサ環境をより良好に捕らえるための接続可能な短絡リングの3次元図。
図8】様々な取り付け深さにおける誘導型センサの未補正の特性曲線の模範例を示す図。
図9】発信コイルと補助的なコイルに対するパルス応答の模範例を示す図。
図10図9に示したパルス応答についての変換後の信号を示す図。
図11図10に示した変換後の信号から得られた模範的な特徴ベクトルを示す図。
図12図8と同様の図であって、様々な取り付け深さにおける誘導型センサの補正後の特性曲線を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は本発明の一実施形態におけるセンサ10の構成を模範的に示している。センサ10は発信及び受信コイル12と補助コイル14を含んでいる。2つのコイル12、14はコイル駆動部16により第1スイッチ18又は第2スイッチ20を介して発信パルスで駆動することができる。それにより発信及び受信コイル12に誘導されるセンサ信号が読み取りアンプ及びA/D変換器22に送られ、そこでデジタル化される。その後のデジタル的な処理は好ましくはソフトウェア内で、例えばマイコン、信号プロセッサ、デジタル信号コントローラ又は他の処理部品上において実行される。これをまとめて制御及び評価ユニット24と呼ぶ。これにコイル駆動部16を含めることもできる。
【0038】
デジタル化されたセンサ信号は、分かれた経路上で古典的な方法を用いる主経路(ここでは模範的に積分ユニット26で表されている)及び機械学習の方法を用いる補正経路(ここではそれを担う補正値ユニット28が単に模範的にニューラルネットワークとして描かれている)において評価される。結合ユニット30において積分ユニット26の積分が補正値ユニット28の補正値の分だけ補正される。古典的な方法及び機械学習の方法によってはこの補正はより複雑になり得る。補正された積分は論理回路32において、好ましくはヒステリシスを考慮した上でスイッチ閾値と比較され、センサ10はそれに応じたスイッチ信号を一又は複数のスイッチ出力34に出力する。センサ10の他の実施形態ではセンサ信号からスイッチ信号の代わりに他の物体情報が作り出される。
【0039】
図2はセンサ10の模範的なセンサ信号36を示している。センサ10は特にパルスを用いて作動する。即ち、発信及び受信コイル12及び/又は補助コイル14において、スイッチ18、20を通じて電流パルスが発せられ、図2に模範的に描いたように電圧パルスがパルス応答として発信及び受信コイル12に誘導される。つまり本センサ10は2つの発信コイルと正確に1つの受信コイルを有する好ましい実施形態で作動し、発信及び受信コイル12は2重の役割を果たしている。センサ信号36はサンプリング点38においてサンプリングされ、以てデジタル化される。
【0040】
図3はデジタル化されたセンサ信号36から得られた特徴ベクトルを示している。これにより重要な情報が更に濃縮される。言い換えれば、次元縮小が行われる。特徴は好ましくはセンサ信号36自身からではなくその変換後の信号から得られる。これについては後で例を挙げて図9~11を参照しながらより詳しく説明する。
【0041】
図4図1に示したセンサ10を用いたセンサ信号の評価の模範的なフローチャートである。ここではパルスベースの方法を用いたフローを説明するが、本発明は他の方法にも適用可能である。
【0042】
ステップS1では、発信及び受信コイル12でパルスを生成し、それにより発信及び受信コイル12に誘導されるパルスを記録、増幅及びデジタル化することにより、センサ信号を検出する。
【0043】
同様にステップS2では、センサ環境に関する情報を取得するために、補助コイル14でパルスを生成し、それにより発信及び受信コイル12に誘導されるパルスを記録、増幅及びデジタル化することにより、補助信号と呼ばれる別のセンサ信号を検出する。実施形態によってはステップS2を省略したり、発信及び受信コイル12と補助コイル14に同時に生成されたパルスに対するパルス応答を補助信号としたりすることもできる。原理的には、ステップS2による補助コイル14のパルスに対するパルス応答だけを評価し、ステップS1を少なくとも一時的に省略することも考えられる。
【0044】
任意選択ではあるが非常に有用なステップS3ではセンサ信号と参照信号から中間信号が生成される。ステップS2で補助信号が記録されたなら、好ましくはここでその補助信号と別の参照信号からも中間信号が生成される。そして各中間信号がその後の評価のために元のセンサ信号及び補助信号の代わりとなるか、それらを補う。参照信号は予めセンサ10に保存されたパルスであり、好ましくは正にこの個体のセンサ10のために、例えば取り付け方、取り付け材料、目標物距離及び標的材料に関する規定の環境において取得されたパルスである。あるいはそれはセンサの1つのクラスを代表して全体のために測定された参照信号である。参照信号を用いた補償は差分計算によって非常に良好に機能するが、より複雑な補償を排除するものではない。参照信号を考慮することは、冒頭で挙げた未公開の欧州特許出願第19212336.2号でより詳しく説明されている。
【0045】
ステップS4では中間信号から特徴ベクトルが生成される。非常に簡単な特徴ベクトルはサンプリング点から直接構成される。しかしそうするとその後の解析が高次元になって厄介である。それ故、好ましくは、例えばフーリエ変換、ウェーブレット変換、アダマール変換、離散コサイン変換又は主成分分析(PCA, Principal Component Analysis)により中間信号を変換する。続いて、変換後の信号において、最も重要な情報を持っていると推定される値を例えば閾値演算で見つけ出す。そしてそれらの値から特徴ベクトルを構成する。
【0046】
ステップS3とS4は特に制御及び評価ユニット24においてソフトウェア内で実行される。図1であればそれに対応する機能ブロックがA/D変換器22より後段、積分ユニット26又は補正値ユニット28より前段に配置されることになる。
【0047】
ステップS5では、検出された物体の距離情報又はスイッチ信号を取得するために古典的な信号評価が行われる。そのために例えばセンサ信号及び/又は補助信号が積分される。古典的な信号評価はステップS4で得られた特徴ベクトルに基づくものとすることができる。あるいは、センサ信号及び/又は補助信号そのものに基づいて古典的な信号評価を行ってもよいが、その場合はステップS3に従って参照信号を考慮することが好ましい。これは図1において積分ユニット26を有する主経路に相当する。積分法は古典的な信号評価の一例に過ぎない。
【0048】
ステップS6では、センサ環境及び特にその取り付け状況を考慮した補正値を取得するために機械学習の方法を用いた評価が行われる。補正値の決定には、補助信号に基づき、センサ環境に関する補足情報が利用できる。好適な機械学習の方法はセンサ10、利用分野及び考えられるセンサ環境に応じて様々であり、例えば線形モデル、決定木、ニューラルネットワーク、ガウス過程回帰、k近傍法又はサポートベクターマシン等がある。
【0049】
ステップS7では古典的な信号評価の結果が、機械学習の方法で得られた補正値を用いて補正される。例えば、その補正値を積分から減算し、こうして補正された値をスイッチ閾値と比較することでスイッチ信号を得る。積分を経由するものとは別の古典的な信号評価の場合、他の補正値や、該補正値を用いて古典的な信号評価を補正する他のやり方が考えられる。
【0050】
センサ10がその都度最新のスイッチ信号をそのスイッチ出力34に供給するように、図4に示したフローは巡回的に繰り返される。
【0051】
妨害的な環境の影響をより良く特定できるようにするため、追加の測定により狙いを定めてセンサ環境を捕らえることが有利である。図1ではそのために補助コイル14が設けられている。ただしこのコイルは図1では単に記号的に且つその配線だけが示されている。図5~7に補助信号を検出するための要素の具体的な実装例が描かれている。
【0052】
図5は補助コイル14としての垂直コイルの3次元図を示している。センサ10は全体として典型的な円筒形状を有している。フェライト40とそれに付設されたコイル42が示されており、このコイルが発信及び受信コイル12として機能する。別体の垂直コイル14が検出対象の物体又は目標物よりも強くセンサ10の周囲を励起し、それによりセンサ環境に関する情報を生み出す。
【0053】
図6は代案として同軸コイルとしてコア部の周りに形成された補助コイル14aの3次元図を示している。同軸コイルは目標物及び取り付け箇所の磁場から異なる起磁力を受けるため、本来の測定信号と環境の影響との区別を可能にする。
【0054】
図7はスイッチング可能な短絡リング14bの形をした更に別の代案を示す3次元図である。短絡リング14bはコイルではないが、補助コイル14と完全に似た機能を果たす。短絡リング14bを交互に測定に接続すると、それによりセンサ10の取り付け箇所の周囲における磁場が2回の測定の間で変化する。
【0055】
機械学習の方法による本発明に従った訓練とその後の補正の適用について図8~12を参照しながら模範的なデータを挙げて説明する。まず図8は比較のため、センサ10の未補正の特性曲線、つまり古典的な信号評価の未補正の積分をそのまま基礎とした場合の特性曲線を示している。特性曲線は様々な取り付け深さについて決定されており、それぞれ異なる記号でデータ点が表されている。水平な破線はスイッチ閾値に相当する。工場においてある特定の取り付け深さで調整が行われた結果、スイッチング距離が右の垂直線に当たる14mmになっている。さて、センサ10がそれより大きな取り付け深さで駆動されるとスイッチング距離が短くなり、今の例では左の垂直線に当たる8.2mmしかない。従って、本発明による補正がなければ、センサ10は取り付け状況から独立しているとはとても言えない。
【0056】
機械学習の方法の訓練のために訓練データが作られる。本発明では訓練をセンサ10毎に実施する必要はなく、ある型式又はセンサのクラスを代表して1つのセンサを訓練すればよい。また、複数のセンサを用いて訓練を行うことで、予想される公差をより良くカバーすることも考えられる。訓練データを取得するためにセンサが様々な取り付け状況及び検出状況に置かれる。そのために、取り付け材料、取り付け深さ、検出対象の物体又は目標物の材料及び距離が様々に変えられる。起こり得る状況をより多くカバーするほど、そして取り付け深さと距離のステップ幅がより小さくなるほど訓練データはより高精度になるが、同時にデータ量も多くなり、それにより機械学習の方法のためのモデルの訓練と決定にかかるコストも増大する。パルスに対する発信及び受信コイル12並びに補助コイル14のパルス応答がその都度記録される。例として図9では本来のセンサ信号を円で、補助信号を三角で示している。また、目標物の通過を例えば取り付け深さ又は取り付け材料の異なる複数のセンサで同時に測定することにより、複数の訓練状況を同時に用意することも考えられる。
【0057】
訓練データの取得の最中に、図4の任意選択のステップS3において必要となる参照信号を記録することもできる。参照信号の基礎にあるのは特に固定的な検出状況、例えばある特定の取り付け材料と標的材料の場合の最大の目標物距離と最大の取り付け深さ等である。参照信号を発信及び受信コイル12並びに補助コイル14のパルス応答のたびに記録し、ステップS3において各時点のセンサ信号又は補助信号から減算することができる。
【0058】
図9に模範的に示したパルス応答は、好ましくはそれぞれ該当する参照信号により補正された上で、今度は変換される。好適な変換の例は先に挙げた通りである。変換後の信号を図10に示す。図10ではセンサ信号と補助信号が区別されていないが、好ましくはそれぞれ別々に変換されてベクトルにまとめられる。
【0059】
図11は変換後の信号から抽出された特徴ベクトルを示している。全ての訓練データにわたって最大の分散を持つような変換後の信号を選択して、そこから特徴ベクトルを作り出すことが有利である。次元縮小又はデータ整理のために、データセット全体にわたる分散が規定の閾値を超えるような値だけがモデルの特徴として選択される。故に図11に示した特徴ベクトルは図10に示した変換後の信号よりも要素数が明らかに少ない。
【0060】
こうして訓練データから得られた各特徴ベクトルに対し、その検出及び取り付け状況の場合の望ましい補正値に相当する補正基準値Yが割り当てられる。こうして、教師付き学習用のアノテーション又はラベルが付された訓練データが得られる。これにより原理的にはどのような機械学習の方法でも訓練することができる。そのうちいくつかは先に列挙した。稼働時には、訓練された係数又は重みをその都度の新たな測定の特徴ベクトルとともに計算に入れることで、目的の補正値が得られ、その値が例えば古典的な信号評価の積分値に加算される、又は該積分値から減算される。好ましくはセンサ10の型式又はクラス毎に専用のモデルを作って訓練する。
【0061】
図12は、訓練の終了後に機械学習の方法で補正されたセンサ10の特性曲線を図8と同様の図で示している。工場での調整でスイッチング距離を14mmにした場合のスイッチング距離に対応する2本の垂直線は、今度は工場での調整から取り付け深さを変化させてもほぼ重なっている。スイッチング点は13.5mm付近にあり、本発明による補正のおかげでずれはもうほとんどない。
【0062】
まとめて言えば、本発明の着想は、機械学習の方法を単独で用いるのではなく、また従来技術のように生のセンサ信号に基づいて用いるのでもないということにある。むしろ機械学習は従来の信号評価を補っており、その際に機械学習は妨害的なセンサ環境の検出及びそこから算出可能な補正値の取得を担う。この分担があるから、本発明に係るセンサの基本的な機能性はまた機械学習だけに依存するものでもない。補正値はより低速のサイクルで、従ってより少ない計算リソースで得ることができる。センサを個々に訓練する必要はなく、1つのクラスの個々のセンサ間の公差は参照信号により調整することができる。そのためのコストは、特別に個々のセンサ毎に全ての検出状況をカバーしなければならない場合と比べれば比較にならないほど少ない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【外国語明細書】