(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046426
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】水処理システム、純水製造方法及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/42 20060101AFI20220315BHJP
C02F 1/20 20060101ALI20220315BHJP
C02F 1/58 20060101ALI20220315BHJP
C02F 9/08 20060101ALI20220315BHJP
C02F 1/70 20060101ALI20220315BHJP
C02F 1/76 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
C02F1/42 D
C02F1/20 A
C02F1/58 L
C02F9/08
C02F1/70 Z
C02F1/76 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137253
(22)【出願日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2020152091
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 悠介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慶介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一重
【テーマコード(参考)】
4D025
4D037
4D038
4D050
【Fターム(参考)】
4D025AA01
4D025AB34
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4D050CA07
4D050CA08
4D050CA09
4D050CA10
4D050CA15
(57)【要約】
【課題】難分解性有機物をより効果的に除去する。
【解決手段】純水製造装置1A(水処理システム)は、有機物を含む被処理水にハロゲンオキソ酸を添加するハロゲンオキソ酸添加手段21と、ハロゲンオキソ酸添加手段21の下流に位置し、少なくともアニオン交換体が充填されたイオン交換体充填装置14と、を有している。イオン交換体充填装置14に、ハロゲンオキソ酸が添加された被処理水が通水される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む被処理水にハロゲンオキソ酸を添加するハロゲンオキソ酸添加手段と、
前記ハロゲンオキソ酸添加手段の下流に位置し、少なくともアニオン交換体が充填されたイオン交換体充填装置と、を有し、
前記イオン交換体充填装置に、前記ハロゲンオキソ酸が添加された被処理水が通水される、水処理システム。
【請求項2】
前記ハロゲンオキソ酸添加手段と前記イオン交換体充填装置との間に、有機材料からなる接液部を有する水処理装置が設けられていない、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記ハロゲンオキソ酸が添加された被処理水は1200(/h)以下の空間速度で前記イオン交換体充填装置に供給される、請求項1または2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記イオン交換体充填装置は非再生式である、請求項1から3のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記イオン交換体充填装置の下流に位置するハロゲンオキソ酸除去手段を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記イオン交換体充填装置の入口における前記被処理水の溶存酸素濃度が1mg/L以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項7】
前記イオン交換体充填装置の上流に位置し、前記イオン交換体充填装置の前記入口における前記被処理水の前記溶存酸素濃度を1mg/L以下に調整する脱酸素装置を有する、請求項6に記載の水処理システム。
【請求項8】
前記脱酸素装置の出口における前記被処理水の溶存酸素濃度を測定する溶存酸素計と、
前記溶存酸素計が測定した前記溶存酸素濃度に基づき、前記溶存酸素計で測定される前記溶存酸素濃度が0.1mg/L以上、1mg/L以下となるように前記脱酸素装置を制御する制御装置と、を有する、請求項7に記載の水処理システム。
【請求項9】
前記イオン交換体充填装置の入口における前記被処理水の2価のアニオン濃度が0.4mmol/L以下である、請求項1から8のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項10】
前記イオン交換体充填装置の入口において、前記被処理水の前記ハロゲンオキソ酸の濃度が、前記被処理水の全有機炭素の6~200重量倍である、請求項1から9のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項11】
酸化剤が含まれる被処理水が供給され、有機材料からなる接液部を有する水処理装置を有し、前記水処理装置の入口における前記被処理水の溶存酸素濃度が1mg/L以下である、水処理システム。
【請求項12】
前記水処理装置の上流に位置し、前記水処理装置の入口における前記被処理水の溶存酸素濃度を1mg/L以下に調整する脱酸素装置を有する、請求項11に記載の水処理システム。
【請求項13】
前記水処理装置の上流に位置し、前記被処理水に酸化剤を添加する酸化剤添加手段を有する、請求項11に記載の水処理システム。
【請求項14】
ハロゲンオキソ酸添加手段によって、有機物を含む被処理水にハロゲンオキソ酸を添加することと、
前記ハロゲンオキソ酸が添加された前記被処理水を、少なくともアニオン交換体が充填されたイオン交換体充填装置に通水することと、を有する、純水製造方法。
【請求項15】
有機材料からなる接液部を有する水処理装置に、酸化剤を含む被処理水を供給することを有し、
前記水処理装置の入口における前記被処理水の溶存酸素濃度が1mg/L以下である、水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水処理システム、純水製造方法及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
純水水質への高度な要求が顕在化するに伴って、近年、純水中に含まれる微量の有機物、特に尿素などの難分解性有機物を分解し除去する方法が検討されている。特許文献1,2には、尿素を含む被処理水に臭化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムとを添加し、この被処理水を反応槽で滞留させることで尿素を除去する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-183275号公報
【特許文献2】特開2012-11356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示された方法は被処理水を反応槽で長時間滞留させる必要があり、尿素を効率的に除去することができない。本発明は、難分解性有機物をより効果的に除去することのできる水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の水処理システムは、有機物を含む被処理水にハロゲンオキソ酸を添加するハロゲンオキソ酸添加手段と、ハロゲンオキソ酸添加手段の下流に位置し、少なくともアニオン交換体が充填されたイオン交換体充填装置と、を有している。イオン交換体充填装置に、ハロゲンオキソ酸が添加された被処理水が通水される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、難分解性有機物をより効果的に除去することのできる水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
【
図2】第2の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
【
図3】第3の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
【
図4】第4の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
【
図5】第5の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
【
図6】第6の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
【
図7】第7の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
【
図8】被処理水の空間速度と尿素除去率の関係を示すグラフである。
【
図9】被処理水の通水時間と尿素除去率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の水処理システム、純水製造方法及び水処理方法の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る純水製造装置1Aの概略構成を示している。純水製造装置1Aは水処理システムの一例である。純水製造装置1A(1次システム)は下流側のサブシステム(2次システム)とともに超純水製造装置を構成する。純水製造装置1Aに供給される原水(以下、被処理水という)は尿素を含む有機物を含有している。
【0009】
純水製造装置1Aは、ろ過器11、活性炭塔12、第1のイオン交換装置13、イオン交換体充填装置14、逆浸透膜装置15、紫外線照射装置(紫外線酸化装置)16、第2のイオン交換装置17、脱気装置18を有し、これらは被処理水の流通方向Dに関し上流から下流に向かって、母管L1に沿ってこの順序で直列に配置されている。被処理水は原水ポンプ(図示せず)で昇圧された後、ろ過器11で比較的粒径の大きな塵埃等が除去され、活性炭塔12で高分子有機物などの不純物が除去される。ろ過器11の構成は限定されないが、本実施形態では砂ろ過器を用いている。第1のイオン交換装置13は、カチオン交換樹脂が充填されたカチオン塔(図示せず)と、脱炭酸塔(図示せず)と、アニオン交換樹脂が充填されたアニオン塔(図示せず)と、を有し、これらは上流から下流に向けてこの順で直列に配置されている。被処理水はカチオン塔でカチオン成分を、脱炭酸塔で炭酸を、アニオン塔でアニオン成分をそれぞれ除去される。
【0010】
純水製造装置1Aは、尿素を含有する被処理水にハロゲンオキソ酸を添加するハロゲンオキソ酸添加手段21を有している。ハロゲンオキソ酸はpHによってイオンまたは酸として存在することがある。ハロゲンオキソ酸とはこれらの形態を総称したものである。本実施形態では、ハロゲンオキソ酸は次亜ハロゲン酸であるが、ハロゲン酸、過ハロゲン酸、亜ハロゲン酸などでもよい。安定性の面で、次亜ハロゲン酸を用いるのが好ましい。また、本実施形態では、次亜ハロゲン酸は次亜臭素酸であるが、次亜塩素酸または次亜ヨウ素酸であってもよい。ハロゲンオキソ酸以外に、例えば結合塩素、または結合臭素など、一般的な残留塩素計にて測定可能な物質を用いることもできるが、尿素の除去効率の面でハロゲンオキソ酸が好ましい。ハロゲンオキソ酸添加手段21は、臭化物塩の貯蔵タンク21a(臭化物塩の供給手段)と、酸化剤の貯蔵タンク21b(酸化剤の供給手段)と、臭化物塩と酸化剤の滞留槽21c(臭化物塩と酸化剤の混合手段)と、移送ポンプ21dと、を有する。臭化物塩として、臭化ナトリウム(NaBr)や臭化カリウムなどが挙げられる。酸化剤として、次亜塩素酸塩(例えば、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO))、過マンガン酸塩、過酸化水素、過硫酸塩などが挙げられる。次亜臭素酸は長期間の保存が困難であるため、使用するタイミングに合わせて臭化物塩と酸化剤を混合して生成する。滞留槽21cで生成された次亜臭素酸は、移送ポンプ21dで昇圧され、母管L1を通る被処理水に添加される。臭化物塩と酸化剤を直接母管L1に供給し、母管L1内の被処理水の流れによってこれらを攪拌して、次亜臭素酸を生成してもよい。次亜臭素酸は連続的に被処理水に添加してもよいし、間欠的に被処理水に添加してもよい。あるいは、ラインミキサーや、オリフィスなどを母管L1に設置し、これらの設備で乱流を作り、臭化物塩と酸化剤を混合させて、次亜臭素酸を生成してもよい。添加するハロゲンオキソ酸は1種類だけでもよいし、2種類以上のハロゲンオキソ酸の混合物を添加してもよい。
【0011】
ハロゲンオキソ酸の濃度は被処理水中のTOC(全有機炭素)の6~200重量倍であることが好ましく、30重量倍以上であることがさらに好ましい。200重量倍を超えるハロゲンオキソ酸を添加すると後段設備の負荷が高くなる。後述の実施例5に示すように、要求水質によっては6重量倍のハロゲンオキソ酸の添加で十分な尿素除去効果が得られる可能性がある。また、後述の実施例4でも述べるが、被処理水に含まれる2価のアニオン濃度は0~0.4mmol/Lの範囲にあることが好ましい。被処理水におけるハロゲンオキソ酸の濃度、TOC及び2価のアニオン濃度は、イオン交換体充填装置14の入口における値である。
【0012】
ハロゲンオキソ酸添加手段21の母管L1との接続部、すなわち、ハロゲンオキソ酸の被処理水への添加部は第1のイオン交換装置13とイオン交換体充填装置14の中間にある。すなわち、イオン交換体充填装置14は、ハロゲンオキソ酸添加手段21の母管L1との接続部のすぐ下流に位置し、ハロゲンオキソ酸が添加された被処理水は直ちにイオン交換体充填装置14で処理される。「すぐ下流」とは、ハロゲンオキソ酸添加手段21の添加部とイオン交換体充填装置14との間に、有機材料からなる接液部を有する水処理装置が設けられていないことを意味する。水処理装置は被処理水に含まれる不純物を除去するための任意の装置であり、逆浸透膜、限外ろ過膜、精密ろ過膜などのろ過膜、イオン交換装置、脱気装置などを含むが、熱交換器、ポンプ、弁、計器などは含まない。
【0013】
イオン交換体充填装置14は、少なくともアニオン交換体が充填された塔である。イオン交換体充填装置14にはカチオン交換体がさらに充填されていてもよい。この場合、カチオン交換体はアニオン交換体と混床充填されるが、複床充填されてもよく、後者の場合、アニオン交換体がカチオン交換体の上流側にあることが好ましい。後述の実施例1で述べるように、尿素除去効率の観点からは、イオン交換体充填装置14にはアニオン交換体だけが充填されていることがより好ましい。一方、カチオン交換体とアニオン交換体を混床充填する場合、アニオン交換体から流出する正に帯電した溶出物をカチオン交換体で吸着することができる。アニオン交換体及びカチオン交換体としてはアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂が好適に使用されるが、モノリス状ないし繊維状のアニオン交換体及びカチオン交換体を使用することもできる。イオン交換樹脂は、ゲル型、MR型のどちらでもよい。アニオン交換樹脂は限定されず、強塩基性樹脂、弱塩基性樹脂のどちらでもよく、強塩基性樹脂の場合、OH形でもよいし、Cl形等であってもよい。また、イオン交換体充填装置14は、アニオン交換樹脂を充填した電気式脱イオン水製造装置(EDI)であってもよい。
【0014】
ハロゲンオキソ酸が添加された被処理水を、イオン交換体充填装置14に充填されたアニオン交換体に接触させることで、尿素を短時間で効率的に除去することができる。尿素の大半は、被処理水がイオン交換体充填装置14を通過する数秒~数分程度の時間で除去される、従来の反応槽では数時間オーダーの滞留時間を要していたことから、反応槽と比べて極めて短時間で尿素を除去することができる。また、従来の反応槽の場合、被処理水の滞留時間を確保するために装置の大型化が避けられないが、イオン交換体充填装置14は一般的なイオン交換装置と同様の構成を有しているため、設置面積の観点からも反応槽より有利である。
【0015】
このようにハロゲンオキソ酸、特に次亜ハロゲン酸が添加された被処理水をアニオン交換体に接触させることで、尿素を短時間で効率的に除去できる理由について、発明者は以下のように考えている。ハロゲンオキソ酸がアニオン交換体に接触することで、ハロゲンオキソ酸イオンがアニオン交換体に捕捉される。この結果、アニオン交換体の内部にハロゲンオキソ酸イオンが濃縮される。また、被処理水はアニオン交換体の空隙(樹脂の場合は、樹脂同士の隙間)に沿って流れるため、アニオン交換体には尿素が滞留しやすい。以上より、ハロゲンオキソ酸イオンが尿素と接触する可能性が高くなり、短時間で尿素を除去することができる。従って、イオン交換体充填装置14には、ハロゲンオキソ酸イオンを捕捉するために、少なくともアニオン交換体が充填されている必要がある。
【0016】
イオン交換体充填装置14と逆浸透膜装置15との間に還元剤添加手段22が設置されている。還元剤添加手段22は被処理水中に残存したハロゲンオキソ酸の除去手段である。還元剤としては過酸化水素が用いられるが、亜硫酸塩を用いることができる。還元剤添加手段22は還元剤の貯蔵タンク22aと、移送ポンプ22bと、を有している。還元剤は、移送ポンプ22bで昇圧され、イオン交換体充填装置14と逆浸透膜装置15との間で、母管L1を通る被処理水に添加される。ハロゲンオキソ酸の除去手段は、同様の効果を有する限り還元剤添加手段22に限定されず、例えばパラジウム(Pd)等の白金族金属触媒担体、活性炭などであってもよい。あるいは、これらのハロゲンオキソ酸の除去手段を直列で組み合わせてもよい。
【0017】
逆浸透膜装置15は余剰の還元剤を除去する。還元剤の除去手段は、イオン交換樹脂、電気式脱イオン水製造装置、紫外線照射装置、白金族金属触媒担体などであってもよく、これらの還元剤除去手段は直列で組み合わせてもよい。白金族金属触媒担体は、白金族金属からなる白金族金属触媒がアニオン交換体に担持されたものである。アニオン交換体としては、アニオン交換樹脂、モノリス状有機多孔質アニオン交換体などを用いることができる。白金族金属触媒は、その触媒作用によって過酸化水素などの還元剤を分解する。白金族金属としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)などが挙げられ、これらの一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの白金族金属の中ではPtとPdが好ましく、コストの観点からはPdがさらに好ましい。白金族金属触媒担体の設置位置は、還元剤の添加位置の下流であれば特に限定されないが、後述する第2のイオン交換装置17の下流が好ましい。第2のイオン交換装置17によってアニオン成分が除去されるため、白金族金属触媒の還元剤除去性能が向上する。
【0018】
紫外線照射装置16は被処理水に紫外線を照射する。紫外線照射装置16としては、例えば254nm、185nm、172nmの少なくともいずれかの波長を含む紫外線ランプを用いることができる。イオン交換体充填装置14に充填されたアニオン交換体(及びカチオン交換体)は、酸化剤であるハロゲンオキソ酸に接触することで劣化し、有機物が被処理水中に流出する。この有機物は逆浸透膜装置15、紫外線照射装置16、第2のイオン交換装置17(カチオン交換体)によって分解される。この点について以下に詳細に説明する。
【0019】
次亜臭素酸などのハロゲンオキソ酸は酸化作用が強いため、例えば有機材料で形成された膜を容易に劣化させる。従って、本来は、本実施形態のようにハロゲンオキソ酸をアニオン交換体などの有機構造体に接触させることは、有機材料の剥離による被処理水の水質低下を招きやすく、望ましくない。一方、ハロゲンオキソ酸が添加された被処理水をアニオン交換体に接触させることによって、尿素を短時間で且つ高効率で除去することが本願発明者により見出された。このため、本実施形態では有機材料の剥離の可能性が高まるという問題点に拘わらず、敢えてハロゲンオキソ酸が添加された被処理水をアニオン交換体に接触させている。そして、その結果発生する可能性のある有機物を後工程で除去するため、逆浸透膜装置15、紫外線照射装置16及び第2のイオン交換装置17を設けている。
【0020】
換言すれば、以下のように説明することもできる。本実施形態ではアニオン交換体は尿素を除去するために必須であるため、イオン交換体充填装置14のアニオン交換体は敢えてハロゲンオキソ酸に接触させている。しかし、それ以外の、有機材料からなる接液部を有する水処理装置(有機膜など)は、ハロゲンオキソ酸を接触させても尿素の除去に寄与しないか、または尿素を除去する寄与度が小さい。また、ハロゲンオキソ酸を接触させると、有機材料の劣化のために、他成分の処理性能が低下する。このため、これらの水処理装置は高濃度のハロゲンオキソ酸に接触させないように、イオン交換体充填装置14の後段に配置している。つまり、本実施形態では、ハロゲンオキソ酸の被処理水への添加部とイオン交換体充填装置14との間に、ハロゲンオキソ酸が添加された被処理水が接する、有機材料からなる接液部を有する水処理装置が設けられていない。イオン交換体充填装置14の下流側では、イオン交換体充填装置14におけるハロゲンオキソ酸の消費と、還元剤によるハロゲンオキソ酸の分解によって、被処理水のハロゲンオキソ酸濃度は大幅に低下する。このため、イオン交換体充填装置14の下流側、特に還元剤添加手段22の下流側での各水処理装置からの有機材料の剥離や溶出による被処理水の水質悪化は、たとえあるとしても限定的である。要するに、本実施形態では、ハロゲンオキソ酸に接触する、有機材料からなる接液部を有する水処理装置を、尿素除去のために必要不可欠なものだけに限定することで、尿素の除去効率の改善と有機材料の流出の抑制を両立している。
【0021】
紫外線照射装置16の下流に位置する第2のイオン交換装置17は、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂とが充填された再生式イオン交換樹脂塔である。紫外線照射によって被処理水中に発生する有機物の分解生成物は、第2のイオン交換装置17によって除去される。その後、被処理水中の溶存酸素、炭酸等が脱気装置18によって除去される。
【0022】
次に、
図2~7を参照して、本発明の純水製造装置の他の実施形態について説明する。説明を省略した構成及び効果については第1の実施形態と同様である。第2~第6の実施形態からわかるように、ハロゲンオキソ酸添加手段21とイオン交換体充填装置14は不可分のセットとして純水製造装置に組み込まれ、また、このセットの設置位置は自由度が高い。
【0023】
(第2の実施形態)
図2に、第2の実施形態に係る純水製造装置1Bの概略構成を示している。ハロゲンオキソ酸は活性炭塔12の処理水に添加される。これに伴い、イオン交換体充填装置14はハロゲンオキソ酸の添加部と第1のイオン交換装置13との間に設けられている。すなわち、母管L1上には、被処理水の流通方向Dに関し上流から下流に向かって、活性炭塔12、ハロゲンオキソ酸の添加部、イオン交換体充填装置14、還元剤の添加部、第1のイオン交換装置13がこの順序で直列に配置されている。本実施形態でも、ハロゲンオキソ酸の添加部とイオン交換体充填装置14との間に、有機材料からなる接液部を有する水処理装置が存在しないため、有機材料の剥離や溶出による被処理水の水質悪化が防止される。また、酸化剤由来の成分(本実施形態では、臭化物イオン、塩化物イオン、Naイオン)と還元剤由来の成分は、逆浸透膜装置15及び第2のイオン交換装置17だけでなく、第1のイオン交換装置13でも除去することができる。従って、第1のイオン交換装置13の後段の水処理装置の負荷を軽減することができる。
【0024】
(第3の実施形態)
図3に、第3の実施形態に係る純水製造装置1Cの概略構成を示している。ハロゲンオキソ酸はろ過装置11の上流と下流の2か所で添加される。具体的には、ろ過装置11の下流にハロゲンオキソ酸添加手段21が接続されている。ろ過装置11の上流に反応槽20が設けられ、反応槽20に他のハロゲンオキソ酸添加手段23が接続されている。図示は省略するが、反応槽20の上流に他のハロゲンオキソ酸添加手段23が接続されていてもよい。ハロゲンオキソ酸添加手段21と他のハロゲンオキソ酸添加手段23は、貯蔵タンク21a,21b、滞留槽21c及び移送ポンプ21dを共用しているが、これらの設備はハロゲンオキソ酸添加手段21と他のハロゲンオキソ酸添加手段23で別々に設けてもよい。反応槽20の被処理水にハロゲンオキソ酸が添加され、被処理水は反応槽20で所定時間滞留した後、ろ過装置11に送られる。ろ過装置11にはハロゲンオキソ酸濃度の高い被処理水が供給されるが、ろ過装置11は砂ろ過装置であるため、ハロゲンオキソ酸に接することによる劣化は生じない。また、ハロゲンオキソ酸は活性炭塔12で除去可能なため、還元剤添加手段22を設ける必要がない。
【0025】
反応槽20の構成は従来の反応槽の構成と基本的に同じである。すなわち反応槽20は内部に流路(図示せず)を備え、被処理水が流路に沿って所定時間流れる間に尿素が除去される。ただし、本実施形態では反応槽20を流出した被処理水に再度ハロゲンオキソ酸が添加されるため、反応槽20で尿素を取りきる必要はない。一般に尿素除去効率は尿素濃度が低くなるに従い低下する傾向がある。例えば、尿素濃度を当初の濃度の10%まで下げるための時間と、10%から1%まで下げるための時間は同程度である。本実施形態では、反応槽20は尿素を粗取りすればよいため、長い滞留時間を必要としない。従って、従来と比べて短時間での尿素の処理が可能となり、反応槽20の小型化も可能となる。一方、イオン交換体充填装置14で処理する尿素の量は反応槽20によって大幅に低減するため、イオン交換体充填装置14の負荷が軽減する。これによりアニオン交換体(及びカチオン交換体)の交換頻度が低減し、アニオン交換体(及びカチオン交換体)の劣化による有機物の発生量も低減する。なお、本実施形態のハロゲンオキソ酸添加手段21はろ過装置11の出口で母管L1に接続されている。しかし、ハロゲンオキソ酸添加手段21の接続部の位置はこれに限定されず、ハロゲンオキソ酸添加手段21は他の実施形態の位置で母管L1に接続されてもよい。
【0026】
反応槽20は省略することもできる。また、ハロゲンオキソ酸添加手段21と他のハロゲンオキソ酸添加手段23はいずれかだけを設けてもよいし、両方を設けてもよい。例えば、反応槽20を設け、ハロゲン酸添加手段として他のハロゲンオキソ酸添加手段23だけを設けた場合、反応槽20で消費されなかったハロゲンオキソ酸を、イオン交換体充填装置14に充填されたアニオン交換体に接触させることができる。また、本実施形態でも、第2の実施形態と同様、酸化剤由来の成分と還元剤由来の成分を第1のイオン交換装置13でも除去することができる。
【0027】
(第4の実施形態)
図4には第4の実施形態に係る純水製造装置1Dの概略構成を示している。ハロゲンオキソ酸はろ過装置11の上流で添加される。これに伴い、イオン交換体充填装置14がハロゲンオキソ酸の添加部とろ過装置11との間に設けられている。すなわち、母管L1上には、被処理水の流通方向Dに関し上流から下流に向かって、ハロゲンオキソ酸の添加部、イオン交換体充填装置14、ろ過装置11、活性炭塔12、第1のイオン交換装置13がこの順序で直列に配置されている。なお、ろ過装置11は砂ろ過装置であるため、前述の通りハロゲンオキソ酸の影響を受けにくい。従って、ろ過装置11はハロゲンオキソ酸の添加部とイオン交換体充填装置14との間に設けてもよい。本実施形態では、イオン交換体充填装置14のアニオン交換体から微量な破砕物が流出した場合、下流のろ過装置11で除去することが可能である。また、ハロゲンオキソ酸は活性炭塔12で除去可能なため、還元剤添加手段22を設ける必要がない。本実施形態でも、第3の実施形態と同様、イオン交換体充填装置14の上流に反応槽20を設けることができる。また、本実施形態でも、第2の実施形態と同様、酸化剤由来の成分と還元剤由来の成分を第1のイオン交換装置13でも除去することができる。
【0028】
(第5の実施形態)
図5には第5の実施形態に係る純水製造装置1Eの概略構成を示している。ろ過装置はイオン交換体充填装置114と一体化されている。具体的には共通の塔に砂とイオン交換体が複床混床で充填されている。本実施形態では装置のコストダウン及び装置の設置面積の低減が可能である。また、本実施形態でも、第2の実施形態と同様、酸化剤由来の成分と還元剤由来の成分を第1のイオン交換装置13でも除去することができる。ハロゲンオキソ酸は活性炭塔12で除去可能なため、還元剤添加手段22を設ける必要がない。
【0029】
(第6の実施形態)
図6には第6の実施形態に係る純水製造装置1Fの概略構成を示している。本実施形態の純水製造装置1Fは、溶存酸素の調整手段(脱酸素装置18A、溶存酸素計19)を備えている。脱酸素装置18Aが、ハロゲンオキソ酸添加手段21の上流、具体的には第1のイオン交換装置13とイオン交換体充填装置14との間に設けられている。ハロゲンオキソ酸の添加部は脱酸素装置18Aとイオン交換体充填装置14との間に設けられている。脱酸素装置18Aはイオン交換体充填装置14の入口における被処理水の溶存酸素濃度を0.1mg/L以上、1mg/L以下に調整する。脱酸素装置18Aとイオン交換体充填装置14の間には、溶存酸素計19が設けられている。溶存酸素計19は、脱酸素装置18Aの出口における被処理水の溶存酸素濃度を測定する。溶存酸素計19で測定された溶存酸素濃度は脱酸素装置18Aの制御装置24に送られる。制御装置24はこの溶存酸素濃度に基づき、溶存酸素計19で測定される溶存酸素濃度が0.1mg/L以上、1mg/L以下となるように脱酸素装置18Aを制御する。この結果、イオン交換体充填装置14の入口における被処理水の溶存酸素濃度は1mg/L以下に制御される。
【0030】
脱酸素装置18Aは被処理水から酸素を除去し、被処理水の溶存酸素濃度を低下させるもので、第1~第5の実施形態における脱気装置18と同一または同様の装置である。このため、本実施形態では脱気装置18は省略されているが、第1~第5の実施形態と同様の位置に脱気装置18を設けることもできる。脱酸素装置18Aの種類は限定されず、例えば、真空脱気装置を用いることができる。一般的に真空脱気装置では、水の表面積を増大させるための気液接触材を脱気塔に充填し、脱気塔内の気体圧力を真空ポンプで減圧し、被処理水である純水を真空状態におき、溶存酸素を除去する。溶存酸素濃度は、真空ポンプを用いて脱気塔内の真空度を調整することによって制御可能である。さらに、窒素を流入させることで脱気性能を向上することができる。この場合、溶存酸素濃度は、真空度と窒素流入量(窒素分圧)を調整することによって制御可能である。脱気膜を用いた脱酸素装置を用いてもよい。この場合も真空脱気装置と同様に真空ポンプが用いられ、溶存酸素濃度は真空度を調整することによって制御可能である。これらの脱酸素装置18Aを2段以上直列に設けてもよい。その他の脱酸素装置18Aとして、被処理水に水素(H2)を添加し、被処理水をパラジウム(Pd)触媒に接触させる構成を用いることもできる。パラジウム触媒によって酸素が水素と反応して水となることで、酸素を除去することができる。
【0031】
イオン交換体充填装置14に充填された樹脂は有機材料からなる接液部であるため、ハロゲンオキソ酸などの酸化剤がこのような接液部に接触すると、接液部である樹脂が酸化劣化し、処理水質が低下する。また、樹脂が酸化劣化によって膨潤することで、通水差圧が上昇する。発明者は、溶存酸素濃度が1mg/Lを上回ると酸化剤による酸化が促進され、水質低下、通水差圧上昇などが生じることを見出した。被処理水の溶存酸素濃度を1mg/L以下に調整することで、酸化剤の酸化力が軽減され、樹脂の酸化劣化を緩和することができる。被処理水の溶存酸素濃度の下限は特に制限されないが、0.1mg/L以上が好ましい。溶存酸素濃度が0.1mg/L未満であると接液部の酸化劣化を防止する効果は小さく、あるとしても限定的である。また、溶存酸素濃度を0.1mg/L未満まで下げるためには、脱酸素装置18Aの真空ポンプの大型化や、真空ポンプの動力費の増加を招き、好ましくない。
【0032】
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本発明の純水製造装置はこれらに限定されない。例えば、第1~第6の実施形態において、第1のイオン交換装置13を省略し、逆浸透膜装置15と紫外線照射装置16の間にEDIを設けてもよい。また、上記のすべての実施形態において、複数の逆浸透膜装置15を多段ないし直列に設けてもよい。この場合、前段の逆浸透膜装置と後段の逆浸透膜装置の間に、ハロゲンオキソ酸添加手段21、イオン交換体充填装置14、還元剤添加手段22をこの順で設けてもよい。第6の実施形態において、溶存酸素の調整手段(脱酸素装置18A、溶存酸素計19)の設置箇所は特に制限されない。例えば、複数の逆浸透膜装置15を直列で設け、その中間に、溶存酸素の調整手段とハロゲンオキソ酸添加手段21とイオン交換体充填装置14と還元剤添加手段22を設けてもよい。換言すれば、
図6において、第1のイオン交換装置13と脱酸素装置18Aとの間に他の逆浸透膜装置15を設けてもよい。この場合、第1のイオン交換装置13は省略してもよい。
【0033】
また、例えば、ハロゲンオキソ酸添加手段21とイオン交換体充填装置14と還元剤添加手段22は、逆浸透膜装置15の下流に設けてもよい。第2のイオン交換装置17は電気式脱イオン水製造装置(EDI)であってもよい。また、本発明は回収水の処理、排水の処理にも使用できる。
【0034】
(第7の実施形態)
さらに、第6の実施形態に示す技術的思想は、ハロゲンオキソ酸を含む酸化剤あるいはハロゲンオキソ酸以外の酸化剤を被処理水に添加する水処理システムに拡張可能である。すなわち、水処理システムに用いられる一般的な水処理装置(逆浸透膜、イオン交換樹脂など)は、酸化剤が流入すると酸化劣化を引き起こし、その処理性能を著しく低下させる。そのため、水処理装置の上流、または酸化剤の被処理水への添加部の下流に活性炭塔などの酸化剤除去手段を設けるのが一般的である。しかし、活性炭は経年劣化すると酸化剤除去性能が低下するため、酸化剤が下流の水処理装置に流入する可能性がある。また、活性炭自体が酸化劣化することで有機物が溶出し、後段装置への負荷となることがある。これによって、下流の水処理装置が劣化し、純水水質低下の原因となる。また、水処理装置の殺菌を目的として、水処理装置が劣化しない程度に殺菌剤(酸化剤)を水処理装置に通水することがある。しかし、条件によっては、水処理装置が殺菌剤で酸化劣化する可能性がある。還元剤の添加により酸化剤を除去する方法は、活性炭塔などと違い、設備の経年劣化の可能性は低いものの、残留した還元剤が後段の水処理装置の負荷になる。酸化剤を用いた促進酸化処理(AOP)においても、残留する酸化剤が後段の水処理装置の樹脂などを劣化させる可能性がある。
【0035】
図7には第7の実施形態に係る純水製造装置1Gの概略構成を示している。本実施形態では、第6の実施形態の第1のイオン交換装置13に代えて、軟化装置25が設けられている。また、ハロゲンオキソ酸添加手段21に代えて、より一般的な酸化剤添加手段27が設けられている。軟化装置25はカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を除去する装置で、一般的に内部にイオン交換樹脂が充填されている。逆浸透膜装置15は硬度存在下で、残留塩素などによる酸化劣化が促進されることが一般的であるため、逆浸透膜装置15の上流に軟化装置25を設置している。軟化装置25の設置場所は、逆浸透膜装置15の上流である限り限定されない。逆浸透膜装置15と紫外線照射装置16の間にEDI26が設けられている。逆浸透膜装置15の処理水に酸化剤がリークした場合、酸化剤を含む処理水がEDI26に通水される。しかし、脱酸素装置18Aで被処理水の溶存酸素濃度を1mg/L以下に調整しているため、EDI26に充填された樹脂の酸化劣化が抑制され、安定した処理水質を得ることができる。なお、本実施形態において軟化装置25とEDI26は必須ではない。図示は省略するが、純水製造装置は、ろ過器11、活性炭塔12、第1のイオン交換装置13、脱酸素装置18A、溶存酸素計19、逆浸透膜装置15、紫外線照射装置(紫外線酸化装置)16、第2のイオン交換装置17、脱気装置18をこの順で設け、溶存酸素計19と逆浸透膜装置15との間に酸化剤添加手段27を設けてもよい。
【0036】
従って、水処理システムは有機材料からなる接液部を有する水処理装置と、水処理装置の上流に位置し、被処理水に酸化剤を添加する酸化剤添加手段と、水処理装置の上流に位置し、水処理装置の入口における溶存酸素濃度を1mg/L以下に調整する脱酸素装置と、を有する。水処理装置の例として、逆浸透膜装置、イオン交換樹脂が充填されたイオン交換装置またはEDIが挙げられる。また、水処理方法は、有機材料からなる接液部を有する水処理装置の上流で、酸化剤添加手段によって被処理水に酸化剤を添加することと、水処理装置の上流に位置する脱酸素装置によって、水処理装置の入口における溶存酸素濃度を1mg/L以下に調整することと、を有する。酸化剤は次亜ハロゲン酸などのハロゲンオキソ酸に限定されず、過マンガン酸、過酸化水素、過硫酸などでもよく、水処理装置に用いられる殺菌剤でもよい。また、被処理水は遊離塩素、結合塩素、結合臭素等を含んでいてもよい。
【0037】
また、酸化剤添加手段27を省略し、酸化剤添加手段27による酸化剤の添加がないが、被処理水中に酸化剤が含まれる場合も、本発明は適用できる。あるいは、第6の実施形態において、ハロゲンオキソ酸添加手段21と還元剤添加手段22を削除することも可能である。この場合、溶存酸素の調整手段(脱酸素装置18A、溶存酸素計19)によって、逆浸透膜装置15、EDI26に充填されたイオン交換樹脂の酸化劣化が抑制される。
【0038】
従って、水処理システムは、酸化剤が含まれる被処理水が供給され、有機材料からなる接液部を有する水処理装置と、水処理装置の上流に位置し、水処理装置の入口における被処理水の溶存酸素濃度を1mg/L以下に調整する脱酸素装置と、を有する。また、水処理方法は、有機材料からなる接液部を有する水処理装置に、酸化剤を含む被処理水を供給することと、水処理装置の入口における被処理水の溶存酸素濃度を1mg/L以下に調整することと、を有する。
【0039】
(実施例1)
超純水にハロゲンオキソ酸を添加して作成した被処理水を、イオン交換装置を模擬したカラムに通水して、尿素除去率を測定した。カラムにはイオン交換樹脂を100mL充填し、被処理水を流量12L/h(SV120(/h))で通水した。尿素の添加量は、尿素濃度が80μg/Lとなるように調整した。ハロゲンオキソ酸として次亜臭素酸を2mg-Cl2/L(塩素換算濃度)の濃度で添加した。臭化物塩としてNaBrを、酸化剤としてNaClOをそれぞれ選定し、次亜臭素酸は、NaBrとNaClOとを混合して生成した。次亜臭素酸の濃度は試料水にグリシンを添加し、遊離塩素を結合塩素に変化させた後、遊離塩素試薬にて残塩濃度計(HANNA製)を用いて測定した。比較例1ではカチオン交換樹脂だけをカラムに100mL充填した。実施例1-1ではアニオン交換樹脂だけをカラムに100mL充填した。実施例1-2ではアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を容積比2:1で、合計100mLとなるようにカラムに混床充填した。カチオン交換樹脂としてAMBERJET 1024 H型(オルガノ(株)製)を、アニオン交換樹脂としてAMBERJET 4002 OH型(オルガノ(株)製)を用いた。尿素除去率は、カラムの入口側における被処理水の尿素濃度をC1,カラムの処理水の尿素濃度をC2としたときに、(C1-C2)/C1×100(%)として求めた。尿素濃度はICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)にて測定した。尿素除去率は実施例1-1で98%、実施例1-2で95%、比較例で0.5%であった。これより、次亜臭素酸を含む被処理水をアニオン交換体と接触させることで、尿素が効率的に除去されることが分かった。
【0040】
(実施例2)
実施例1と同様の装置を用いて、被処理水がカラムに供給される空間速度をパラメータとして尿素除去率を求めた。具体的には、実施例1-1の条件で複数のSV(120,240,500,1000,1200)(単位(/h))に対する尿素除去率を求めた。アニオン交換樹脂の添加量はすべてのSVで100mLとして、被処理水の通水流量を変化させた。
図8にSVと尿素除去率の関係を示す。SVが小さいほど被処理水とアニオン交換体の接触時間が長くなるため尿素除去率が向上する。SVが大きいほど尿素除去率は減少するが、SV1200(/h)でも44%の除去率が実現されており、純水の要求水質によってはこの程度でも十分な効果が得られる。従って、被処理水は1200(/h)以下の空間速度SVでイオン交換体充填装置14に供給されることが好ましく、70%以上の尿素除去率を得ようとする場合はSV500(/h)以下とすることが好ましく、90%以上の尿素除去率を得ようとする場合はSV240(/h)以下とすることが好ましい。
【0041】
(実施例3)
実施例1と同様の装置を用いて、尿素除去率と、被処理水のイオン交換体充填装置14への通水時間と、の関係を求めた。具体的には、実施例1-1と同じ条件で超純水に尿素と次亜塩素酸を添加し、被処理水を作成した。この被処理水を、BrO
-の累積供給量がアニオン交換樹脂のイオン交換容量の約2倍当量に達するまで、通水流量120L/hで通水した(通水時間は約700時間)。
図9に通水時間と尿素除去率の関係を示す。使用したアニオン交換樹脂は非再生型であるが、長時間の通水に対しても良好な尿素除去率を維持した。従って、イオン交換体充填装置14を非再生式とすることで、長期間の運転が可能であり、再生も不要となる。
【0042】
(実施例4)
実施例1と同様の装置を用いて、尿素除去率と、被処理水の硫酸イオン濃度と、の関係を求めた。具体的には、実施例1-1と同様にしてカラムにイオン交換樹脂を100mL充填し、被処理水を流量12L/h(SV120(/h))で通水した。尿素の添加量は、尿素濃度が80μg/Lとなるように調整した。ハロゲンオキソ酸として次亜臭素酸を2mg-Cl2/L(塩素換算濃度)の濃度で添加した。さらにこの被処理水に硫酸を添加した。これによって、被処理水に2価のアニオン(SO4
2-)が含まれる。結果を表1に示す。2価のアニオン濃度が増加するにつれ尿素除去率は低下する。これは2価のアニオンが共存すると、ハロゲンオキソ酸が樹脂に捕捉されにくくなるためである。但し、尿素除去率が36%でも要求水質によっては十分な効果となる場合がある。従って、被処理水に含まれる2価のアニオン濃度は0.4mmol/L以下であることが好ましく、0.1mmol/L以下であることがさらに好ましい。
【0043】
【0044】
(実施例5)
実施例1と同様の装置を用いて、尿素除去率と、被処理水のハロゲンオキソ酸濃度/TOC比(重量比)と、の関係を求めた。具体的には、実施例1-1と同様にしてカラムにイオン交換樹脂を100mL充填し、被処理水を流量12L/h(SV120(/h))で通水した。尿素の添加量は、尿素濃度が80μg/Lとなるように調整した。ハロゲンオキソ酸として次亜臭素酸を2mg-Cl2/L(塩素換算濃度)の濃度で添加した。結果を表2に示す。表中の「次亜臭素酸/TOC比」がハロゲンオキソ酸濃度/TOC比であり、次亜臭素酸/TOC比が大きくなるほど尿素除去率が向上する。但し、尿素除去率が50%でも要求水質によっては十分な効果となり得る。従って、被処理水のハロゲンオキソ酸濃度/TOC比は6重量倍以上であることが好ましく、30重量倍以上がさらに好ましい。前述の通り、後段の設備への影響を抑制するため、ハロゲンオキソ酸濃度/TOC比は200重量倍以下とすることが好ましい。なお、本実施例のTOCは尿素の濃度をTOCで換算した値である。
【0045】
【0046】
(実施例6)
実施例1と同様の装置を用いて、溶存酸素濃度と樹脂の通水差圧の関係、及び溶存酸素濃度とTOCと、の関係を求めた。具体的には純水に次亜ハロゲン酸を添加して作成した被処理水を、実施例1-1と同様の条件で流量12L/h(SV120(/h))でカラムに通水して、尿素除去率を測定した。尿素の添加量は、尿素濃度が80μg/Lとなるように調整した。次亜ハロゲン酸として、次亜臭素酸を2mg-Cl2/L(塩素換算濃度)の濃度で添加した。被処理水の溶存酸素濃度を変えて、250時間通水した後の通水差圧とTOCの増分を測定した。TOCの増分は、供給水のTOCと処理水のTOCから、それぞれ尿素由来のTOCを除き、尿素由来のTOCを除いた処理水のTOCと、尿素由来のTOCを除いた供給水のTOCの差分として求めた。表3に結果を示す。前述のように、通水差圧は樹脂の膨潤の程度と相関するため、低い通水差圧は、樹脂が膨潤せずに健全性を維持していることを意味する。また、通水差圧が低いほどポンプの動力費も低減する。実施例6-1,6-2、比較例6のいずれでも、尿素除去率は90%以上であった。溶存酸素を1mg/L以下にすることで、TOCの増加が抑えられ、通水差圧の上昇も確認されなかった。
【0047】
【0048】
(実施例7)
実施例1と同様の装置を用いて、溶存酸素濃度と樹脂の通水差圧の関係、及び溶存酸素濃度とTOCと、の関係を求めた。カラムにはイオン交換樹脂を100mL充填し、被処理水を流量12L/h(SV120(/h))で通水した。具体的には、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を容積比2:1で、合計100mLとなるようにカラムに混床充填した。純水に酸素を溶解した供給水に次亜塩素酸を0.1mg‐Cl2/L添加して、カラムに通水した。カチオン交換樹脂としてAMBERJET 1024 H型(オルガノ(株)製)を、アニオン交換樹脂としてAMBERJET 4002 OH型(オルガノ(株)製)を用いた。次亜塩素酸の濃度は残塩濃度計(HANNA製)を用いて測定した。カラム出口における被処理水のTOCはTOC計(Sievers社製 M9e)で測定した。被処理水の溶存酸素濃度を変えて、通水差圧とTOCの増分を測定した。TOCの増分はカラムの出口と入口における被処理水のTOCの差分として求めた。表4に結果を示す。実施例7-1~7-3では通水差圧の上昇は確認されず、TOCは20~40μg/Lであった。比較例7では、0.2MPa以上の通水差圧が生じ、TOCは100μg/Lであった。
【0049】
【0050】
(実施例8)
イオン交換樹脂カラムの代わりにEDIを用いて、実施例7と同様に、溶存酸素濃度とEDIの通水差圧との関係、及び溶存酸素濃度とTOCとの関係を評価した。EDIには第1の脱塩室と第2の脱塩室が設けられており、第1の脱塩室、第2の脱塩室の順に被処理水を通水した。第1の脱塩室にはアニオン交換樹脂、第2の脱塩室にはカチオン交換樹脂を充填した。濃縮室にはアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を混床で充填した。第1及び第2の脱塩室流量は20L/h、濃縮室の流量は5L/hで通水し、電流値は0.5Aとした。純水に酸素を溶解した供給水に次亜塩素酸を0.1mg‐Cl2/L添加して、EDIに通水した。表5に結果を示す。TOCの増分はEDIの出口と入口における被処理水のTOCの差分として求めた。実施例8-1~8-3では通水差圧の上昇は確認されず、TOCの増加は最大で2μg/Lであった。比較例8では、0.1MPa以上の通水差圧が生じ、TOCは14μg/Lであった。
【0051】
【符号の説明】
【0052】
1A~1G 純水製造装置
11 ろ過器
12 活性炭塔
13 第1のイオン交換装置
14 イオン交換体充填装置
15 逆浸透膜装置
16 紫外線照射装置(紫外線酸化装置)
17 第2のイオン交換装置
18 脱気装置
18A 脱酸素装置
19 溶存酸素計
21 ハロゲンオキソ酸添加手段
22 還元剤添加手段
23 他のハロゲンオキソ酸添加手段
27 酸化剤添加手段