(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046449
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】顆粒、顆粒を含む製剤、顆粒の製造方法、及び顆粒を含む製剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/16 20060101AFI20220315BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220315BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220315BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220315BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220315BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220315BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220315BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20220315BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K45/00
A61K47/38
A61K47/10
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/42
A61K31/4985
A61P3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146436
(22)【出願日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】63/076,654
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】吉原 尚輝
(72)【発明者】
【氏名】木全 崚太
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA44
4C076BB01
4C076CC21
4C076DD27
4C076DD29
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD47
4C076EE06P
4C076EE07
4C076EE09P
4C076EE13
4C076EE16
4C076EE23P
4C076EE30P
4C076EE32P
4C076EE36P
4C076EE42P
4C076FF52
4C076GG16
4C084AA17
4C084MA41
4C084NA20
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA41
4C086NA09
4C086ZC35
(57)【要約】
【課題】本発明の課題の1つは、苦味の十分なマスキングが可能な顆粒を提供することである。または、本発明の課題の1つは、苦味の十分なマスキングが可能な顆粒を含む製剤を提供することである。
【解決手段】本発明の一実施形態によると、溶融成分と、原薬とが配置された核物質と、前記溶融成分と、前記原薬とが配置された表面に配置されたゲル化物質含有層と、前記ゲル化物質含有層の表面に配置された疎水性ポリマー含有層と、を含む顆粒が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融成分と、原薬とが配置された核物質と、
前記溶融成分と、前記原薬とが配置された表面に配置されたゲル化物質含有層と、
前記ゲル化物質含有層の表面に配置された疎水性ポリマー含有層と、を含む顆粒。
【請求項2】
前記核物質の表面に配置され、前記溶融成分を含む溶融成分層をさらに含み、
前記溶融成分層の表面に、前記溶融成分と、前記原薬とを含む原薬含有層が配置される、請求項1に記載の顆粒。
【請求項3】
前記疎水性ポリマー含有層の表面に配置されたオーバーコート層をさらに含む、請求項2に記載の顆粒。
【請求項4】
前記ゲル化物質含有層は、2%水溶液の粘度が10mPa・s以上であるゲル化物質を含む、請求項1乃至3の何れか一に記載の顆粒。
【請求項5】
前記ゲル化物質含有層は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、カラギーナン、グァーガム、タラガム、ペクチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、アラビアガム、カラヤガム、寒天、ゼラチン、ポリビニルアルコール、及びポリビニルアルコールを一部とした共重合体からなる群から選択される1つ以上のゲル化物質を含む、請求項4に記載の顆粒。
【請求項6】
前記疎水性ポリマー含有層は、エチルセルロース、アセチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、メチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、乾燥メタクリル酸コポリマーLD、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、及びポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートから選択される1つ以上の疎水性ポリマーを含む、請求項1乃至5の何れか一に記載の顆粒。
【請求項7】
前記ゲル化物質含有層に含まれるゲル化物質と、前記疎水性ポリマー含有層に含まれる前記疎水性ポリマーとの、含有量の比が、2:3~3:8の範囲にある、請求項6に記載の顆粒。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一に記載の顆粒と、
医薬的に許容された1つ以上の添加剤と、を含む、製剤。
【請求項9】
核物質の表面に溶融成分と、原薬とを配置し、
前記溶融成分と、前記原薬とが配置された表面に、乾式コーティングによりゲル化物質を配置して、ゲル化物質含有層を形成し、
前記ゲル化物質含有層の表面に、疎水性ポリマーを配置して、疎水性ポリマー含有層を形成する、顆粒の製造方法。
【請求項10】
前記核物質の表面に配置され、前記溶融成分を含む溶融成分層をさらに形成し、
前記溶融成分層の表面に、前記溶融成分と、前記原薬とを含む原薬含有層が形成される、請求項9に記載の顆粒の製造方法。
【請求項11】
前記疎水性ポリマー含有層の表面に、オーバーコート層をさらに形成する、請求項9又は10に記載の顆粒の製造方法。
【請求項12】
前記ゲル化物質含有層は、2%水溶液の粘度が10mPa・s以上であるゲル化物質を含む、請求項9乃至11の何れか一に記載の顆粒の製造方法。
【請求項13】
前記ゲル化物質含有層は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、カラギーナン、グァーガム、タラガム、ペクチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、アラビアガム、カラヤガム、寒天、ゼラチン、ポリビニルアルコール、及びポリビニルアルコールを一部とした共重合体からなる群から選択される1つ以上のゲル化物質を含む、請求項12に記載の顆粒の製造方法。
【請求項14】
前記疎水性ポリマー含有層は、エチルセルロース、アセチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、メチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、乾燥メタクリル酸コポリマーLD、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、及びポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートから選択される1つ以上の疎水性ポリマーを含む、請求項9乃至13の何れか一に記載の顆粒の製造方法。
【請求項15】
前記ゲル化物質含有層に含まれるゲル化物質と、前記疎水性ポリマー含有層に含まれる前記疎水性ポリマーとの、含有量の比が、2:3~3:8の範囲にある、請求項14に記載の顆粒の製造方法。
【請求項16】
請求項9乃至15の何れか一に記載の製造方法により製造された顆粒と、
医薬的に許容された1つ以上の添加剤と、を混合する、製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、原薬の苦味をマスクした顆粒若しくは顆粒を含む製剤に関する。または、本発明の一実施形態は、原薬の苦味をマスクした顆粒の製造方法若しくは顆粒を含む製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
苦味を呈する原薬が数多く知られているが、原薬が口腔内で放出されると、患者に強い不快感を与え、服用コンプライアンスを著しく低下させる場合がある。少なくとも薬剤が口腔内に存在する間は、薬剤からの原薬の放出が抑制されることが必要である。
【0003】
従来、例えば、特許文献1に記載されたような、水不溶性ポリマーを含むテイスト・マスキング層で原薬含有層を覆って、苦味のマスキングを行っていた。
【0004】
また、特許文献2には、不快な味の遮蔽と溶出性の改善の両立を目的として、薬物を含有する核粒子と、水溶性のゲル化膨潤物質を含有して核粒子の外側を被覆する中間層と、水不溶性物質を含有して中間層の外側を被覆する外層とを備える、医薬組成物粒子が記載されている。
【0005】
特許文献1及び特許文献2では、原薬含有組成物を被覆することで苦味をマスクしているが、苦味が強い原薬の場合は被覆層を厚くする必要がある。この場合、被覆後の医薬組成物粒子が大きくなり、服用感を損ねるという問題がある。また、被覆層を厚くする場合、その分、コーティング時間が長くなり、製造効率が悪くなる。そこで、苦味のマスキングを達成しつつ、服用しやすい製剤を簡便に作成できる製剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第02/096392号
【特許文献2】国際公開第2017/146052号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一実施形態は、苦味の十分なマスキングが可能な顆粒を提供することを課題の1つとする。または、本発明の一実施形態は、苦味の十分なマスキングが可能な顆粒を含む製剤を提供することを課題の1つとする。または、本発明の一実施形態は、苦味の十分なマスキングが可能な顆粒の製造方法を提供することを課題の1つとする。または、本発明の一実施形態は、苦味の十分なマスキングが可能な顆粒を含む製剤の製造方法を提供することを課題の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、溶融成分と、原薬とが配置された核物質と、前記溶融成分と、前記原薬とが配置された表面に配置されたゲル化物質含有層と、前記ゲル化物質含有層の表面に配置された疎水性ポリマー含有層と、を含む顆粒が提供される。
【0009】
前記核物質の表面に配置され、前記溶融成分を含む溶融成分層をさらに含み、前記溶融成分層の表面に、前記溶融成分と、前記原薬とを含む原薬含有層が配置されてもよい。
【0010】
前記疎水性ポリマー含有層の表面に配置されたオーバーコート層をさらに含んでもよい。
【0011】
前記ゲル化物質含有層は、2%水溶液の粘度が10mPa・s以上であるゲル化物質を含んでもよい。
【0012】
前記ゲル化物質含有層は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、カラギーナン、グァーガム、タラガム、ペクチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、アラビアガム、カラヤガム、寒天、ゼラチン、ポリビニルアルコール、及びポリビニルアルコールを一部とした共重合体からなる群から選択される1つ以上のゲル化物質を含んでもよい。
【0013】
前記疎水性ポリマー含有層は、エチルセルロース、アセチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、メチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、乾燥メタクリル酸コポリマーLD、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、及びポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートから選択される1つ以上の疎水性ポリマーを含んでもよい。
【0014】
前記ゲル化物質含有層に含まれるゲル化物質と、前記疎水性ポリマー含有層に含まれる前記疎水性ポリマーとの、含有量の比が、2:3~3:8の範囲にあってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態によると、上記何れかの顆粒と、医薬的に許容された1つ以上の添加剤と、を含む、製剤が提供される。
【0016】
本発明の一実施形態によると、核物質の表面に溶融成分と、原薬とを配置し、前記溶融成分と、前記原薬とが配置された表面に、乾式コーティングによりゲル化物質を配置して、ゲル化物質含有層を形成し、前記ゲル化物質含有層の表面に、疎水性ポリマーを配置して、疎水性ポリマー含有層を形成する、顆粒の製造方法が提供される。
【0017】
前記核物質の表面に配置され、前記溶融成分を含む溶融成分層をさらに形成し、前記溶融成分層の表面に、前記溶融成分と、前記原薬とを含む原薬含有層が形成されてもよい。
【0018】
前記疎水性ポリマー含有層の表面に、オーバーコート層をさらに形成してもよい。
【0019】
前記ゲル化物質含有層は、2%水溶液の粘度が10mPa・s以上であるゲル化物質を含んでもよい。
【0020】
前記ゲル化物質含有層は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、カラギーナン、グァーガム、タラガム、ペクチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、アラビアガム、カラヤガム、寒天、ゼラチン、ポリビニルアルコール、及びポリビニルアルコールを一部とした共重合体からなる群から選択される1つ以上のゲル化物質を含んでもよい。
【0021】
前記疎水性ポリマー含有層は、エチルセルロース、アセチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、メチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、乾燥メタクリル酸コポリマーLD、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、及びポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートから選択される1つ以上の疎水性ポリマーを含んでもよい。
【0022】
前記ゲル化物質含有層に含まれるゲル化物質と、前記疎水性ポリマー含有層に含まれる前記疎水性ポリマーとの、含有量の比が、2:3~3:8の範囲にあってもよい。
【0023】
本発明の一実施形態によると、前記何れかに記載の製造方法により製造された顆粒と、医薬的に許容された1つ以上の添加剤と、を混合する、製剤の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一実施形態は、苦味の十分なマスキングが可能な顆粒を提供することができる。または、本発明の一実施形態は、苦味の十分なマスキングが可能な顆粒を含む製剤を提供することができる。または、本発明の一実施形態は、苦味の十分なマスキングが可能な顆粒の製造方法を提供することができる。または、本発明の一実施形態は、苦味の十分なマスキングが可能な顆粒を含む製剤の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る顆粒10の断面構造を示す模式図である。
【
図2】比較例の顆粒90の断面構造を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施例の製剤における、シタグリプチンリン酸塩の溶出率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明に係る顆粒及びそれを用いた製剤について説明する。なお、本発明の顆粒及びそれを用いた製剤は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び後述する実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る顆粒10を示す模式図(断面図)である。顆粒10は、核物質11と、核物質11の表面に配置された溶融成分層12と、溶融成分層12の表面に配置された原薬含有層13と、原薬含有層13の表面に配置されたゲル化物質含有層15と、ゲル化物質含有層15の表面に配置された疎水性ポリマー含有層17と、疎水性ポリマー含有層17の表面に配置されたオーバーコート層19と、を含む。なお、核物質11と原薬含有層13との密着性が良好な場合は、溶融成分層12を省略してもよい。また、オーバーコート層19を省略してもよい。
【0028】
核物質11は、溶融成分層12、原薬含有層13、ゲル化物質含有層15、疎水性ポリマー含有層17及びオーバーコート層19を配置するための担体である。また、核物質11は、顆粒10を製造する際に、溶融成分層12、原薬含有層13、ゲル化物質含有層15、疎水性ポリマー含有層17及びオーバーコート層19を配置するための核となる物質である。溶融成分層12との密着性を得るため、核物質11として、吸着剤を用いる。核物質11としては、例えば、アンバーライトIRP―64、イオン交換樹脂、カオリン、カルメロースカルシウム、含水二酸化ケイ素、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、軽質流動パラフィン、ケイソウ土、合成ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、脱脂綿、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、デキストリン、二酸化ケイ素、複合ケイ酸アルミニウムカリウム粒、ベントナイト、ポリエチレン繊維、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、及び薬用炭等で構成された吸着剤を用いることができる。
【0029】
核物質11は、溶融成分層12、原薬含有層13、ゲル化物質含有層15、疎水性ポリマー含有層17及びオーバーコート層19を均一に配置するために球形であることが好ましい。
【0030】
溶融成分層12は、核物質11と原薬含有層13との間に配置される層である。溶融成分層12は、原薬含有層13を配置するための下地層である。原薬自体に核物質への付着性が強い、又は核物質が原薬を担持する能力が高い場合には、核物質に溶融成分と原薬を直接配置してもよい。一方、核物質11に対する付着性が高い溶融成分で構成された溶融成分層12を核物質11の表面に配置することにより、溶融成分層12により多くの原薬を付着させることができ、顆粒10における原薬の含有量を効果的に高めることができる。
【0031】
溶融成分層12を構成する溶融成分(第1の溶融成分)は、油性の添加剤から選択することができる。また、第1の溶融成分は、原薬との接触により原薬が変性したり類縁物質の顕著な増加が認められたりしない添加剤から選択されることが好ましい。溶融成分層12は、溶融積層法により形成することが好ましく、第1の溶融成分は、常温で固体の添加剤から選択してもよい。溶融積層法に一般に用いられる温度範囲を考慮すると、第1の溶融成分は100℃以下の融点を有する添加剤から選択されることが好ましく、原薬が変性したり類縁物質の顕著な増加が認められたりしない温度範囲に融点を有する添加剤から選択されることが好ましい。このような特性を有する添加剤として、例えば、モノステアリン酸グリセリン、マクロゴール(ポリエチレングリコール)、ラウロマクロゴール及びステアリン酸等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
溶融成分層12は、原薬含有層13を配置可能な量で核物質11の表面に配置されていればよく、核物質11の表面の少なくとも一部に配置されていればよい。溶融成分層12が核物質11の表面の90%以上を覆っていることが好ましく、核物質11の表面の全面を覆っていることが好ましい。溶融成分層12の厚さは特には限定されないが、1つの顆粒10当たりの原薬含有量を高める観点から、溶融成分層12の厚さは可能な限り薄い方が好ましい。一実施形態において、溶融成分層12を構成する第1の溶融成分は、核物質11が有する細孔にも配置されることが好ましい。一実施形態において、核物質11と溶融成分層12との界面においては、溶融成分層12を構成する溶融成分が核物質11の表面から入り込んだ構造を有してもよい。この場合、核物質11と溶融成分層12とは明確な界面を有さなくてもよい。溶融成分が核物質11の表面のみならず、核物質11の表面に接続する細孔にも配置されることにより、溶融成分層12に核物質11へのアンカー効果が付与され、核物質11への溶融成分層12の密着性が向上する。
【0033】
原薬含有層13は、原薬と溶融成分を含む層であり、核物質11の表面に配置されてもよく、溶融成分層12を介して配置されてもよい。顆粒10において、原薬は特には限定されない。
【0034】
核物質11の表面に溶融成分層12を配置した場合は、原薬どうしを結着させるとともに、原薬を溶融成分層12の表面に結着させるために、原薬含有層13に第2の溶融成分を含む。第2の溶融成分は、原薬との接触により原薬が変性したり類縁物質の顕著な増加が認められたりしない添加剤から選択されることが好ましい。溶融積層法により原薬含有層13を形成するため、第2の溶融成分は、常温で固体の添加剤から選択される。溶融積層法に一般に用いられる温度範囲を考慮すると、第2の溶融成分は100℃以下の融点、又は120℃以下のガラス転移点を有する添加剤から選択されることが好ましく、原薬が変性したり類縁物質の顕著な増加が認められたりしない温度範囲に融点、又はガラス転移点を有する添加剤から選択されることが好ましい。また、第2の溶融成分として、第1の溶融成分の融点よりも低い融点、又はガラス転移点を有する添加剤を選択する場合、溶融積層法により原薬含有層13を形成する際に、溶融成分層12の表面構造に大きな影響を与えることなく、又は溶融成分層12の表面構造を変更することなく、溶融成分層12の表面に原薬含有層13を配置することができる。一方、第2の溶融成分として、第1の溶融成分の融点よりも高い融点、又はガラス転移点を有する添加剤を選択する場合、溶融積層法により原薬含有層13を形成する際に、溶融成分層12の表面がわずかに溶けて、溶融成分層12と原薬含有層13との界面が融合して、溶融成分層12に対する原薬含有層13の付着性を向上することができる。
【0035】
第2の溶融成分として用いる添加剤としては、例えば、ステアリン酸、モノステアリン酸グリセリン、マクロゴール(ポリエチレングリコール)、カルナウバロウ、硬化油、ラウロマクロゴール、パルミチン酸、セチルアルコール、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、乾燥メタクリル酸コポリマー、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。なお、原薬含有層13に含まれる溶融成分(第2の溶融成分)は、溶融成分層12に含まれる溶融成分(第1の溶融成分)と同じ添加剤であってもよく、異なっていてもよい。
【0036】
原薬含有層13は、主成分として、原薬を含む。原薬含有層13には、原薬と第2の溶融成分の質量の合計に対して、50質量%以上の原薬が含まれることが好ましい。換言すれば、原薬含有層13においては、溶融成分層12の表面に原薬含有層13を形成可能な範囲で第2の溶融成分を少なく含有させることが好ましい。これにより、顆粒10における原薬の含有量を効果的に高めることができる。
【0037】
ゲル化物質含有層15は、原薬含有層13からの原薬の溶出を調整する機能を有する。後述するように、疎水性ポリマー含有層17は口腔内の水分(唾液)が原薬含有層13へ流入するのを抑制するが、ゲル化物質含有層15に含まれるゲル化物質は、疎水性ポリマー含有層17から染み込んだ水分を吸収して、ゲル化してゲル層を形成する。このゲル層が、口腔内での原薬含有層13への水分の流入を抑制して、原薬含有層13からの原薬の溶出を防ぐことができる。また、胃液の大量の水分がゲル層を溶解させるため、ゲル化物質含有層15は、胃における原薬含有層13からの原薬の速やかな溶出を実現することができる。
【0038】
本実施形態において、2%水溶液の粘度が10mPa・s以上であるゲル化物質を用いることができる。ゲル化物質としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、カラギーナン、グァーガム、タラガム、ペクチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、アラビアガム、カラヤガム、寒天、ゼラチン、ポリビニルアルコール、及びポリビニルアルコールを一部とした共重合体などから選択されるゲル化物質を1つ又は2つ以上組合せて用いることができる。
【0039】
疎水性ポリマー含有層17は、口腔内の水分が原薬含有層13へ流入するのを抑制する機能を有する。疎水性ポリマー含有層17は、水に溶けにくい、又はほとんど溶けない水不溶性物質により構成される。水不溶性物質としては、例えば、エチルセルロース、アセチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、メチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、乾燥メタクリル酸コポリマーLD、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、及びポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートなどから選択される1つ又は2つ以上の疎水性ポリマーを組合せて用いることができる。
【0040】
実施形態に係る顆粒10においては、ゲル化物質含有層15を有することにより、口腔内の水分が原薬含有層13へ流入することを十分に抑制可能なため、疎水性ポリマー含有層17を薄くすることができる。疎水性ポリマー含有層17を薄くすることにより、顆粒10の製造にかかる時間を削減することができる。また、実施形態に係る顆粒10においては、ゲル化物質含有層15を溶融積層法により配置するため、ゲル化物質含有層15の配置にかかる時間を従来に比して大幅に削減することができる。
【0041】
オーバーコート層19は、疎水性ポリマー含有層17の表面に配置することにより、服用性を向上させ、原薬の溶出遅延を抑制する。オーバーコート層19には、例えば、アルファー化デンプン、カゼインナトリウム、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルスターチナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、プルラン、ポリビニルピロリドン、コポリビドン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコール、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ポリビニルアルコール、マクロゴール、ポリエチレンオキサイド、グリシンやアラニンなどのアミノ酸、グリチルリチン酸などの甘味剤、デキストリンや乳糖などの糖類、マンニトールやキシリトールなどの糖アルコール、結晶セルロース、クロスポビドン、及びクエン酸トリエチルなどから選択される1つ又は2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
[顆粒の製造方法]
一実施形態において、本発明に係る顆粒10は、以下のように製造することができる。核物質11と第1の溶融成分を混合し、核物質11の表面に第1の溶融成分を配置する。また、溶融積層法により、第1の溶融成分を溶融させて、核物質11の表面に溶融成分層12を形成する。このとき、核物質11と第1の溶融成分を第1の溶融成分の融点以上の温度に加熱する。溶融積層法に一般に用いられる温度範囲を考慮すると、加熱温度は100℃以下である。また、第1の溶融成分が核物質11の表面のみならず、核物質11の表面に接続する細孔にも配置されることにより、溶融成分層12に核物質11へのアンカー効果を付与して、核物質11への溶融成分層12の密着性を向上させることが好ましい。
【0043】
溶融成分層12を配置した核物質11を、原薬と第2の溶融成分と混合し、溶融成分層12の表面に原薬と第2の溶融成分を配置する。また、溶融積層法により、第2の溶融成分を溶融させて、溶融成分層12の表面に原薬含有層13を形成する。このとき、溶融成分層12を配置した核物質11と、原薬と第2の溶融成分を、第2の溶融成分の融点以上の温度に加熱する。溶融積層法に一般に用いられる温度範囲を考慮すると、加熱温度は100℃以下である。
【0044】
一実施形態において、第2の溶融成分として、第1の溶融成分の融点よりも低い融点、又はガラス転移点を有する添加剤を選択する場合、溶融積層法により原薬含有層13を形成する際に、第2の溶融成分の融点又はガラス転移点よりも高く、且つ第1の溶融成分の融点よりも低い温度に加熱することにより、溶融成分層12の表面構造に大きな影響を与えることなく、又は溶融成分層12の表面構造を変更することなく、溶融成分層12の表面に原薬含有層13を形成することができる。一方、第2の溶融成分として、第1の溶融成分の融点よりも高い融点又はガラス転移点を有する添加剤を選択する場合、溶融積層法により原薬含有層13を形成する際に、第2の溶融成分の融点又はガラス転移点よりも高い温度に加熱することにより、溶融成分層12の表面がわずかに溶けて、溶融成分層12と原薬含有層13との界面が融合して、溶融成分層12に対する原薬含有層13の付着性を向上することができる。なお、原薬が変性したり類縁物質の顕著な増加が認められたりしない温度範囲で溶融積層することが好ましい。
【0045】
原薬含有層13の表面にゲル化物質を配置する。本実施形態において、ゲル化物質含有層15は、乾式コーティングにより形成する。一実施形態において、ゲル化物質含有層15は、溶融積層法により好適に形成することができる。
【0046】
ゲル化物質含有層15の表面に疎水性ポリマー含有層17を配置する。疎水性ポリマー含有層17は、親水性の有機溶媒と水の混合溶媒を用いて、疎水性ポリマーをゲル化物質含有層15の表面にコーティングすることにより形成することができる。なお、親水性の有機溶媒は、例えば、エタノールやイソプロパノール等を好適に用いることができる。また、水:有機溶媒=1:2~1:100の範囲の混合溶媒を用いる事が好ましい。
【0047】
疎水性ポリマー含有層17の表面にオーバーコート層19を配置する。オーバーコート層19は、水等の水系の溶媒、または、アルコール等の非水系の溶媒を用いて、上述した添加剤を疎水性ポリマー含有層17の表面にコーティングすることにより形成することができる。
【0048】
本実施形態においては、原薬含有層13と疎水性ポリマー含有層17との間に、ゲル化物質含有層15を形成するため、疎水性ポリマー含有層17を薄くすることができる。疎水性ポリマー含有層17を薄くすることにより、顆粒10の製造にかかる時間を削減することができる。また、実施形態に係る顆粒10においては、ゲル化物質含有層15を溶融積層法により配置するため、ゲル化物質含有層15の配置にかかる時間を従来に比して大幅に削減することができる。
【0049】
[製剤]
顆粒10を用いた製剤を製造することができる。例えば、顆粒10と医薬的に許容された公知の1つ以上の添加剤とを混合して医薬組成物としてもよい。また、医薬組成物を打錠して錠剤としてもよい。また、崩壊剤を添加した医薬組成物を打錠して口腔内崩壊錠としてもよい。また、医薬組成物をカプセルに封入してカプセル錠としてもよい。
【0050】
[苦味抑制効果の評価]
本実施形態に係る顆粒10の苦味の抑制効果は、官能試験により評価することができる。また、本実施形態に係る製剤の苦味の抑制効果は、第十七改正日本薬局方の溶出試験法(、パドル法)に準じて評価することができる。
【実施例0051】
[実施例1]
核物質11として含水二酸化ケイ素(富士シリシア化学株式会社、Sylopure(登録商標)P100) 256gと、第1の溶融成分としてステアリン酸(日油株式会社、さくら微粉) 384gを用いた。含水二酸化ケイ素とステアリン酸を高速撹拌造粒機(深江工業株式会社社、ハイスピードミキサ、FS―GS―5J)に投入し、アジテータ回転数 300rpm、チョッパ回転数 1,500rpm、水温約80℃で11分間造粒した。このとき、添加剤の温度は約70℃であった。
【0052】
溶融成分層12が表面に配置された核物質 80.0gと、原薬としてシタグリプチンリン酸塩 248.12g、及び第2の溶融成分としてアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(Evonik Roehm、EUDRAGIT(登録商標)EPO) 24.0gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)に投入し、給気温度80.0~85.0℃、ローター回転数400rpmで造粒した。このとき、添加剤の温度は約60℃であった。
【0053】
原薬含有層13が表面に配置された核物質 352.12gと、カルボキシビニルポリマー(ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ,インコーポレイテッド、CARBOPOL(登録商標)971P NF) 32.0gと、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社、P) 6.0gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)に投入し、給気温度80.0~85.0℃、ローター回転数400rpmで乾式コーティングを行った。このとき、添加剤の温度は約60℃であった。なお、CARBOPOL(登録商標)971P NFは、0.5%水溶液の粘度が4000~11000mPa・sである。
【0054】
乾燥メタクリル酸コポリマーLD(Evonik Roehm、EUDRAGIT(登録商標)L100-55) 48.0g、ヒプロメロース(信越化学工業株式会社、TC-5(登録商標)E) 1.44g、タルク(富士タルク工業株式会社、ML115) 14.4g、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社、アドソリダー(登録商標)101) 4.8gをエタノール 560g、精製水 96.0gに分散して、コーティング液を調製した。ゲル化物質含有層15が表面に配置された核物質 390.12gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)投入して、コーティング剤を噴霧して、疎水性ポリマー含有層17を形成した。
【0055】
D-マンニトール(三菱商事フードテック株式会社、マンニットP) 32.0g、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社、P)4.0gを精製水 280gに溶解して、コーティング液を調製した。疎水性ポリマー含有層17が表面に配置された核物質 458.76gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)投入して、コーティング剤を噴霧して、オーバーコート層19を形成して、実施例1の粒子を得た。
【0056】
1錠あたりD-マンニトール(三菱商事フードテック株式会社、マンニットP) 113.4mg、結晶セルロース(旭化成株式会社、セオラス(登録商標)PH-101) 14.0mg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業株式会社、L-HPC(登録商標)NDB-022) 7.0mg、クロスポビドン(BASF、Kollidon(登録商標)CL-F) 2.8mg及びクロスポビドン(BASF、Kollidon(登録商標)CL-M) 2.8mgからなる造粒物140mg、実施例1の粒子 247.38mg、D-マンニトール(フロイント産業株式会社、グラニュトール(登録商標)F) 34.62mg、ケイ酸処理結晶セルロース(JRS PHARMA、PROSOLV(登録商標)SMCC50) 20.0mg、クロスポビドン(BASF、Kollidon(登録商標)CL-F) 16.0mg、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(富士化学工業株式会社ノイシリン(登録商標)UFL-2) 10.0mg及びフマル酸ステアリルナトリウム(レッテンマイヤージャパン株式会社、PRUV(登録商標)) 12.0mgとなるようポリ袋にて混合し、混合した粉末を、ロータリー打錠機(菊水製作所、VELA5)を用いて打錠圧11.3kNで打錠した。
【0057】
[比較例1]
図2は、比較例1の顆粒90の断面を示す模式図である。比較例1の顆粒90は、ゲル化物質含有層15に代えて、原薬含有層13の表面にアンダーコート層95を配置した点で、実施例1の顆粒10とは異なる。
【0058】
ヒプロメロース(信越化学工業株式会社、TC-5(登録商標)E) 32.0g、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社、アドソリダー(登録商標)101) 1.6gを精製水 640gに分散して、コーティング液を調製した。実施例と同様の方法により得られた原薬含有層13が表面に配置された核物質 352.12gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)投入して、コーティング剤を噴霧して、アンダーコート層95を形成した。
【0059】
乾燥メタクリル酸コポリマーLD(Evonik Roehm、EUDRAGIT(登録商標)L100-55) 80.0g、ヒプロメロース(信越化学工業株式会社、TC-5(登録商標)E) 3.2g、タルク(富士タルク工業株式会社、ML115) 24.0g、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社、アドソリダー(登録商標)101) 8.0gをエタノール 1000g、精製水 200.0gに分散して、コーティング液を調製した。アンダーコート層95が表面に配置された核物質 390.12gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)投入して、コーティング剤を噴霧して、疎水性ポリマー含有層17を形成した。
【0060】
実施例1と同様の方法によりオーバーコート層19を形成して、比較例1の粒子を得た。
【0061】
1錠あたりD-マンニトール(マンニットP) 103.68mg、結晶セルロース(PH-101) 12.8mg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(NDB-022) 6.4mg、クロスポビドン(CL-F) 2.56mg及びクロスポビドン(CL-M) 2.56mgからなる造粒物138.68mg、比較例1の粒子 278.46mg、D-マンニトール(グラニュトール(登録商標)F) 35.54mg、ケイ酸処理結晶セルロース(SMCC50) 16.0mg、クロスポビドン(CL-F) 10.0mg、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(UFL-2) 16.0mg及びフマル酸ステアリルナトリウム(PRUV) 16.0mgとなるようポリ袋にて混合し、混合した粉末を、ロータリー打錠機(菊水製作所、VELA5)を用いて打錠圧13.2kNで打錠した。
【0062】
[苦味抑制効果の評価]
苦味抑制効果の評価は、試験者3名が実施例1、比較例1の顆粒 300mgを口に含み、苦みマスクの効果を評価した。実施例1の顆粒は、比較例1の顆粒に比して疎水性ポリマーの含有量が低いものの、苦味を抑制することができた。
【0063】
比較例1では、アンダーコート層95を形成するために150分程度を要したが、実施例1では、ゲル化物質含有層15を形成するために要した時間は、わずか15分程度であった。したがって、実施例1の顆粒は、製造時間を大幅に削減可能であることが明らかとなった。
【0064】
[実施例2]
核物質11として含水二酸化ケイ素(富士シリシア化学株式会社、Sylopure(登録商標)P100) 256gと、第1の溶融成分としてステアリン酸(日油株式会社、さくら微粉) 384gを用いた。含水二酸化ケイ素とステアリン酸を高速撹拌造粒機(深江工業株式会社社、ハイスピードミキサ、FS―GS―5J)に投入し、アジテータ回転数 300rpm、チョッパ回転数 1,500rpm、水温約80℃で11分間造粒した。このとき、添加剤の温度は約70℃であった。
【0065】
溶融成分層12が表面に配置された核物質 80.0gと、原薬としてシタグリプチンリン酸塩 248.12g、及び第2の溶融成分としてアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(Evonik Roehm、EUDRAGIT(登録商標)EPO) 24.0gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)に投入し、給気温度80.0~85.0℃、ローター回転数400rpmで造粒を行った。このとき、添加剤の温度は約60℃であった。
【0066】
原薬含有層13が表面に配置された核物質 352.12gと、カルボキシビニルポリマー(ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ,インコーポレイテッド、CARBOPOL(登録商標)971P NF) 32.0gと、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社、P) 6.0gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)に投入し、給気温度80.0~85.0℃、ローター回転数400rpmで乾式コーティングを行った。このとき、添加剤の温度は約60℃であった。なお、カルボキシビニルポリマーは、0.5%水溶液の粘度が4000~11000mPa・sである。
【0067】
乾燥メタクリル酸コポリマーLD(Evonik Roehm、EUDRAGIT(登録商標)L100-55) 48.0g、ヒプロメロース(信越化学工業株式会社、TC-5(登録商標)E) 1.44g、タルク(富士タルク工業株式会社、ML115) 14.4g、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社、アドソリダー(登録商標)101) 4.8gをエタノール 560g、精製水 96.0gに分散して、コーティング液を調製した。ゲル化物質含有層15が表面に配置された核物質 390.12gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)投入して、コーティング剤を噴霧して、疎水性ポリマー含有層17を形成した。
【0068】
D-マンニトール(三菱商事フードテック株式会社、マンニットP) 32.0g、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社、P) 4.0gを精製水 280gに溶解して、コーティング液を調製した。疎水性ポリマー含有層17が表面に配置された核物質 458.76gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)投入して、コーティング剤を噴霧して、オーバーコート層19を形成して、実施例2の粒子を得た。
【0069】
1錠あたりD-マンニトール(三菱商事フードテック株式会社、マンニットP) 113.4mg、結晶セルロース(旭化成株式会社、セオラス(登録商標)PH-101) 14.0mg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業株式会社、L-HPC(登録商標)NDB-022) 7.0mg、クロスポビドン(BASF、Kollidon(登録商標)CL-F) 2.8mg及びクロスポビドン(BASF、Kollidon(登録商標)CL-M) 2.8mgからなるD-マンニトール・結晶セルロース・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース・クロスポビドン造粒物 140mg、実施例2の粒子 247.38mg、D-マンニトール(フロイント産業株式会社、グラニュトール(登録商標)F) 34.62mg、ケイ酸処理結晶セルロース(JRS PHARMA、PROSOLV(登録商標)SMCC50) 20.0mg、クロスポビドン(BASF、Kollidon(登録商標)CL-F) 10.0mg、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(富士化学工業株式会社ノイシリン(登録商標)UFL-2) 16.0mg及びフマル酸ステアリルナトリウム(レッテンマイヤージャパン株式会社、PRUV(登録商標)) 12.0mgとなるようポリ袋にて混合し、混合した粉末を、ロータリー打錠機(菊水製作所、VELA5)を用いて打錠圧11.3kNで打錠した。
【0070】
[実施例3]
実施例2の原薬含有層13が表面に配置された核物質 352.12gを用い、カルボキシビニルポリマーを24.0g、スクラロースを6.2gに変更したこと以外は、実施例2と同様の方法により、実施例3のゲル化物質含有層15を形成した。
【0071】
ゲル化物質含有層15が表面に配置された核物質 382.52gを用い、実施例2と同様の方法により、実施例3の疎水性ポリマー含有層17を形成した。
【0072】
疎水性ポリマー含有層17が表面に配置された核物質 451.2gを用い、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社、P)を4.8gに変更したこと以外は実施例2と同様の方法により、実施例3のオーバーコート層19を形成して、実施例3の粒子を得た。
【0073】
1錠あたりD-マンニトール・結晶セルロース・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース・クロスポビドン造粒物 160mg、実施例3の粒子 243.98mg、D-マンニトール(フロイント産業株式会社、グラニュトール(登録商標)F) 29.22mg、ケイ酸処理結晶セルロース(JRS PHARMA、PROSOLV(登録商標)SMCC50) 16.0mg、クロスポビドン(BASF、Kollidon(登録商標)CL-F) 10.0mg、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(富士化学工業株式会社ノイシリン(登録商標)UFL-2) 16.0mg及びフマル酸ステアリルナトリウム(レッテンマイヤージャパン株式会社、PRUV(登録商標)) 4.8mgとなるようポリ袋にて混合し、混合した粉末を、ロータリー打錠機(菊水製作所、VELA5)を用いて打錠圧11.3kNで打錠した。
【0074】
[実施例4]
実施例2の原薬含有層13が表面に配置された核物質 352.12gを用い、カルボキシビニルポリマーを24.0g、スクラロースを含水二酸化ケイ素(エボニック、カープレックス(登録商標)#80) 4.0gに変更したこと以外は、実施例2と同様の方法により、実施例4のゲル化物質含有層15を形成した。
【0075】
乾燥メタクリル酸コポリマーLD(Evonik Roehm、EUDRAGIT(登録商標)L100-55) 62.0g、ヒプロメロース(信越化学工業株式会社、TC-5(登録商標)E) 2.4g、含水二酸化ケイ素(エボニック、カープレックス(登録商標)#80) 8.0gをエタノール 640g、精製水 160gに分散して、コーティング液を調製した。ゲル化物質含有層15が表面に配置された核物質 380.12gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)投入して、コーティング剤を噴霧して、実施例4の疎水性ポリマー含有層17を形成した。
【0076】
疎水性ポリマー含有層17が表面に配置された核物質 454.6gを用い、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社、P)を8.0gに変更したこと以外は実施例2と同様の方法により、実施例3のオーバーコート層19を形成して、実施例4の粒子を得た。
【0077】
1錠あたりD-マンニトール・結晶セルロース・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース・クロスポビドン造粒物176mg、実施例4の粒子 247.26mg、D-マンニトール(フロイント産業株式会社、グラニュトール(登録商標)F) 10.74mg、クロスポビドン(BASF、Kollidon(登録商標)CL-F) 10.0mg、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(富士化学工業株式会社ノイシリン(登録商標)UFL-2) 24.0mg及びフマル酸ステアリルナトリウム(レッテンマイヤージャパン株式会社、PRUV(登録商標)) 12.0mgとなるようポリ袋にて混合し、混合した粉末を、ロータリー打錠機(菊水製作所、VELA5)を用いて打錠圧11.3kNで打錠した。
【0078】
[実施例5]
実施例2の原薬含有層13が表面に配置された核物質 352.12gを用い、カルボキシビニルポリマーを24.0gに変更し、スクラロースを添加しなかったこと以外は、実施例2と同様の方法により、実施例5のゲル化物質含有層15を形成した。
【0079】
乾燥メタクリル酸コポリマーLD(Evonik Roehm、EUDRAGIT(登録商標)RSPO) 80.0gをエタノール 400g、精製水 100.0gに分散して、コーティング液を調製した。ゲル化物質含有層15が表面に配置された核物質 376.12gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)投入して、コーティング剤を噴霧して、実施例5の疎水性ポリマー含有層17を形成した。
【0080】
疎水性ポリマー含有層17が表面に配置された核物質 456.2gを用い、実施例4と同様の方法により、実施例5のオーバーコート層19を形成して、実施例5の粒子を得た。
【0081】
1錠あたりD-マンニトール・結晶セルロース・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース・クロスポビドン造粒物 160mg、実施例5の粒子 248.06mg、D-マンニトール(フロイント産業株式会社、グラニュトール(登録商標)F) 17.14mg、ケイ酸処理結晶セルロース(JRS PHARMA、PROSOLV(登録商標)SMCC50) 17.14mg、クロスポビドン(BASF、Kollidon(登録商標)CL-F) 10.0mg、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(富士化学工業株式会社ノイシリン(登録商標)UFL-2) 24.0mg及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社) 4.8mgとなるようポリ袋にて混合し、混合した粉末を、ロータリー打錠機(菊水製作所、VELA5)を用いて打錠圧11.3kNで打錠した。
【0082】
[比較例2]
ステアリン酸(日油株式会社、さくら微粉)をステアリン酸(日油株式会社、植物性)に変更したこと以外は実施例2と同様の方法により、溶融成分層12が表面に配置された核物質を得た。
【0083】
比較例2の溶融成分層12が表面に配置された核物質を用いたこと以外は実施例2と同様の方法により、比較例2の原薬含有層13が表面に配置された核物質を得た。
【0084】
ヒプロメロース(信越化学工業株式会社、TC-5(登録商標)E) 32.0g、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社、アドソリダー(登録商標)101) 1.6gを精製水 640gに分散して、コーティング液を調製した。比較例2の原薬含有層13が表面に配置された核物質 352.12gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)投入して、コーティング剤を噴霧して、アンダーコート層95を形成した。
【0085】
乾燥メタクリル酸コポリマーLD(Evonik Roehm、EUDRAGIT(登録商標)L100-55) 48.0g、ヒプロメロース(信越化学工業株式会社、TC-5(登録商標)E) 1.92g、タルク(富士タルク工業株式会社、ML115) 14.2g、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社、アドソリダー(登録商標)101) 4.8gをエタノール 600g、精製水 120.0gに分散して、コーティング液を調製した。アンダーコート層95が表面に配置された核物質 385.72gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)投入して、コーティング剤を噴霧して、疎水性ポリマー含有層17を形成した。
【0086】
D-マンニトール(三菱商事フードテック株式会社、マンニットP) 48.0g、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社、P) 8.0gを精製水 400gに溶解して、コーティング液を調製した。疎水性ポリマー含有層17が表面に配置された核物質 454.84gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)投入して、コーティング剤を噴霧して、オーバーコート層19を形成して、比較例2の粒子を得た。
【0087】
1錠あたりD-マンニトール・結晶セルロース・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース・クロスポビドン造粒物 152mg、比較例2の粒子 255.42mg、D-マンニトール(フロイント産業株式会社、グラニュトール(登録商標)F) 34.58mg、ケイ酸処理結晶セルロース(JRS PHARMA、PROSOLV(登録商標)SMCC50) 16.0mg、クロスポビドン(BASF、Kollidon(登録商標)CL-F) 10.0mg、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(富士化学工業株式会社ノイシリン(登録商標)UFL-2) 16.0mg及びフマル酸ステアリルナトリウム(レッテンマイヤージャパン株式会社、PRUV(登録商標)) 16.0mgとなるようポリ袋にて混合し、混合した粉末を、ロータリー打錠機(菊水製作所、VELA5)を用いて打錠圧11.3kNで打錠した。
【0088】
[比較例3]
乾燥メタクリル酸コポリマーLD(Evonik Roehm、EUDRAGIT(登録商標)L100-55) 80.0g、ヒプロメロース(信越化学工業株式会社、TC-5(登録商標)E) 3.2g、タルク(富士タルク工業株式会社、ML115) 24.0g、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社、アドソリダー(登録商標)101) 8.0gをエタノール 1000g、精製水 200.0gに分散して、コーティング液を調製した。比較例2のアンダーコート層95が表面に配置された核物質 385.72gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)投入して、コーティング剤を噴霧して、疎水性ポリマー含有層17を形成した。
【0089】
比較例3の疎水性ポリマー含有層17が表面に配置された核物質 500.92gを用いて、比較例2と同様の方法により、オーバーコート層19を形成して、比較例3の粒子を得た。
【0090】
1錠あたりD-マンニトール・結晶セルロース・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース・クロスポビドン造粒物を128mg、比較例3の粒子を278.46mg、D-マンニトール(フロイント産業株式会社、グラニュトール(登録商標)F)を35.54mgに変更したこと以外は比較例2と同様の方法により、比較例3の製剤を得た。
【0091】
[苦味抑制効果の評価]
第十七改正日本薬局方の溶出試験法(パドル法)に準じて、実施例2~5及び比較例2~3の製剤について、シタグリプチンリン酸塩の溶出性を評価した。試験液として、水 900ml用いた。パドルの回転速度は、50rpmとした。試験開始後5分、10分、15分及び30分の時点でのシタグリプチンリン酸塩の溶出率を測定した。シタグリプチンリン酸塩の溶出率の測定結果を
図3に示す。ゲル化物質含有層15にゲル化物質であるカーボポールを用いた実施例2~5の製剤は、ヒプロメロースを含むアンダーコート層95を有する比較例2~3の製剤に比して、シタグリプチンリン酸塩の溶出が抑えられており、カーボポールがシタグリプチンリン酸塩の溶出抑制(苦み制御)に機能することが明らかとなった。
【0092】
特に、実施例2~4の製剤は比較例3の製剤よりも疎水性ポリマー含有層17における疎水性ポリマー(Eudragid(登録商標)L100-55)の含有量が少ないにも関わらずシタグリプチンリン酸塩の溶出が抑えられており、ゲル化物質をゲル化物質含有層15に含むことにより、少ないコーティング量(ゲル化物質含有層15の形成時間の短縮)でシタグリプチンリン酸塩の苦みを抑えることができる。実施例2の製剤と実施例5の製剤を比較すると、実施例2の製剤では疎水性ポリマー含有層17における疎水性ポリマーの含有量が60重量%まで低減されているにも関わらず、同等のシタグリプチンリン酸塩の溶出挙動を示した。この結果より、ゲル化物質:疎水性ポリマー=2:3~3:8の範囲であれば、本発明に係る製剤において苦味の抑制を達成することができることが明らかとなった。なお、製造時間を短縮する観点から、疎水性ポリマー含有層17における疎水性ポリマーの含有量は可能な限り少ないほうがよい。
【0093】
[実施例6]
核物質11として含水二酸化ケイ素(富士シリシア化学株式会社、Sylopure(登録商標)P100) 256gと、第1の溶融成分としてステアリン酸(日油株式会社、さくら微粉) 384gを用いた。含水二酸化ケイ素とステアリン酸を高速撹拌造粒機(深江工業株式会社社、ハイスピードミキサ、FS―GS―5J)に投入し、アジテータ回転数 300rpm、チョッパ回転数 1,500rpm、水温約80℃で11分間造粒した。このとき、添加剤の温度は約70℃であった。
【0094】
溶融成分層12が表面に配置された核物質を80.0g用いて、実施例2と同様の方法により、原薬含有層13が表面に配置された核物質を得た。
【0095】
原薬含有層13が表面に配置された核物質 319.70gと、ポリエチレンオキシド(ダウ ケミカル、POLYOX(登録商標)WSR N-60K) 20.4gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)に投入し、給気温度80.0~85.0℃、ローター回転数400rpmで乾式コーティングを行った。このとき、添加剤の温度は約60℃であった。なお、ポリエチレンオキシドは、2%水溶液の粘度が2000~4000mPa・sである。
【0096】
実施例6のゲル化物質含有層15が表面に配置された核物質を390.12g用いたこと以外は実施例4と同様の方法により、実施例6の疎水性ポリマー含有層17を形成した。
【0097】
実施例6の疎水性ポリマー含有層17が表面に配置された核物質を458.76g用いたこと以外は実施例4と同様の方法により、実施例6の粒子を得た。
【0098】
[比較例4]
核物質11として含水二酸化ケイ素(富士シリシア化学株式会社、Sylopure(登録商標)P100) 256gと、第1の溶融成分としてステアリン酸(日油株式会社、植物性) 153.6gと、ステアリン酸(BASF Pharma、Kolliwax(登録商標)S Fine) 204.8gを用いた。含水二酸化ケイ素とステアリン酸を高速撹拌造粒機(深江工業株式会社社、ハイスピードミキサ、FS―GS―5J)に投入し、アジテータ回転数 300rpm、チョッパ回転数 1,500rpm、水温約80℃で11分間造粒した。このとき、添加剤の温度は約70℃であった。
【0099】
溶融成分層12が表面に配置された核物質 80.0gと、原薬としてシタグリプチンリン酸塩 210.9g、及び第2の溶融成分としてアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(Evonik Roehm、EUDRAGIT(登録商標)EPO) 27.2gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)に投入し、給気温度80.0~85.0℃、ローター回転数400rpmで造粒を行った。このとき、添加剤の温度は約60℃であった。
【0100】
ヒプロメロース(信越化学工業株式会社、TC-5(登録商標)E) 24.0g、含水二酸化ケイ素(エボニック、カープレックス(登録商標)#80) 1.2gを精製水 360gに分散して、コーティング液を調製した。比較例2の原薬含有層13が表面に配置された核物質 376.12gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)投入して、コーティング剤を噴霧して、アンダーコート層95を形成した。
【0101】
乾燥メタクリル酸コポリマーLD(Evonik Roehm、EUDRAGIT(登録商標)L100-55) 76.0g、ヒプロメロース(信越化学工業株式会社、TC-5(登録商標)E) 2.4g、及び酸化チタン(東邦チタニウム株式会社、NA61) 14.2gをエタノール 600g、精製水 120.0gに分散して、コーティング液を調製した。アンダーコート層95が表面に配置された核物質 401.32gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)投入して、コーティング剤を噴霧して、疎水性ポリマー含有層17を形成した。
【0102】
D-マンニトール(三菱商事フードテック株式会社、マンニットP) 32.0g、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社、P) 12.0gを精製水 280gに溶解して、コーティング液を調製した。疎水性ポリマー含有層17が表面に配置された核物質 494.12gを、転動流動層造粒装置(株式会社パウレック、機種:MP-01)投入して、コーティング剤を噴霧して、オーバーコート層19を形成して、比較例4の粒子を得た。
【0103】
[苦味抑制効果の評価]
実施例4、6及び比較例4の粒子について、苦味抑制効果を評価した。具体的には、試験者2名が実施例4、6又は比較例4の顆粒 300mgを口に含み、苦味抑制効果を評価した。実施例4、6及び比較例4の粒子の苦味抑制効果の評価結果、ゲル化物質含有層15及びアンダーコート層95の形成時間を表1に示す。
【表1】
【0104】
実施例4及び6の粒子はゲル化物質含有層15にゲル化物質を含むため、口に含んだ際に、疎水性ポリマー含有層17の隙間から浸透した唾液によってゲル化物質が膨潤し、原薬由来の苦味を抑制した。比較例4の粒子はアンダーコート層95にゲル化物質を含まないため、苦味を抑制できなかった。実施例4、6及び比較例4の粒子の疎水性ポリマー含有層17に含まれる疎水性ポリマー(Eudragit(登録商標)L100-55)の添加量を比較すると、それぞれ32mgと38mgであり、実施例4及び6の粒子の方が比較例4の粒子よりも疎水性ポリマーの含有量が少量であるにも関わらず苦味を抑制したことから、ゲル化物質が苦味抑制に寄与していることが明らかとなった。苦味抑制効果を評価結果から、本発明に係る粒子はゲル化物質含有層15の製造時間が短時間になることだけではなく、疎水性ポリマー含有層17に含まれる疎水性ポリマーの量も従来技術より減らすことができる。実施例4の粒子の苦味抑制効果と実施例6の粒子の苦味抑制効果との差は見られず、原理上、一般にゲル化物質として扱われ、乾式コーティングできる添加剤であれば、本発明に係る粒子に適用可能であることが示された。
10 顆粒、11 核物質、12 溶融成分層、13 原薬含有層、15 ゲル化物質含有層、17 疎水性ポリマー含有層、19 オーバーコート層19、90 顆粒、95 アンダーコート層