(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046455
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】海ぶどうの保存方法
(51)【国際特許分類】
A23L 17/60 20160101AFI20220315BHJP
【FI】
A23L17/60 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147490
(22)【出願日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2020151832
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520350351
【氏名又は名称】株式会社NINE
(71)【出願人】
【識別番号】520350362
【氏名又は名称】照木 康訓
(74)【代理人】
【識別番号】100076082
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 康文
(74)【代理人】
【識別番号】100192496
【弁理士】
【氏名又は名称】西平 守秀
(72)【発明者】
【氏名】照木 康訓
【テーマコード(参考)】
4B019
【Fターム(参考)】
4B019LC04
4B019LE09
4B019LK01
4B019LP09
4B019LP16
(57)【要約】
【課題】簡便かつ低コストでありながら、海ぶどうの味および食感の両方を損なうことなく長期間に亘って保存して、時間および距離の制約を抑制して幅広く流通させることができる海ぶどうの保存方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る海ぶどうの保存方法は、収穫された生の海ぶどうCLを真空用パック1(シート状包装体)の内部に装入する装入工程S11と、装入工程S11後、真空用パック1の内部を脱気して減圧する減圧工程S12Aと、減圧工程S12A後、減圧された状態で真空用パック11を密封する密封工程S12Bと、密封工程S12B後、真空用パック1を冷却された液体に漬けて-23℃以下に冷凍する冷凍工程S13と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫された生の海ぶどうをシート状包装体の内部に装入する装入工程と、
前記装入工程後、前記シート状包装体の内部を脱気して減圧する減圧工程と、
前記減圧工程後、減圧された状態で前記シート状包装体を密封する密封工程と、
前記密封工程後、前記シート状包装体を冷却された液体に漬けて-23℃以下に冷凍する冷凍工程と、を含む、
海ぶどうの保存方法。
【請求項2】
前記冷凍工程において前記海ぶどうが装入された前記シート状包装体を-25℃以下に冷凍する、
請求項1に記載の保存方法。
【請求項3】
前記減圧工程において前記シート状包装体の内部圧力を0.085MPaから0.09MPaの範囲となるように減圧する、
請求項1または2に記載の海ぶどうの保存方法。
【請求項4】
前記装入工程において前記海ぶどうを50g以下で前記シート状包装体に装入する、
請求項1~3のいずれか1つに記載の海ぶどうの保存方法。
【請求項5】
前記シート状包装体は一対のフィルムを貼り合わせて設けられており、
前記フィルムそれぞれの厚さは75μm~80μmの範囲に設定される、
請求項1~4のいずれか1つに記載の海ぶどうの保存方法。
【請求項6】
所定量の水に対し塩を溶解して、収穫された生の海ぶどうにおけるブドウの房状の小枝の内部の塩水よりも塩分濃度が高い塩水を精製する精製工程と、
前記精製工程後、シート状包装体の内部に前記塩水および前記生の海ぶどうを装入する装入工程と、
前記装入工程後、前記シート状包装体の内部空気を脱気して減圧する減圧工程と、
前記減圧工程後、脱気され減圧された状態の前記シート状包装体を密封する密封工程と、
前記密封工程後、前記シート状包装体を冷却された液体に漬けて冷凍する冷凍工程と、を含む、
海ぶどうの保存方法。
【請求項7】
前記冷凍工程では、前記シート状包装体を-30℃以下に冷凍する、
請求項6に記載の海ぶどうの保存方法。
【請求項8】
前記精製工程では、過熱処理および冷却処理もしない常温の状態で前記所定量の水に対し、限界濃度の塩を溶解して前記塩水を精製する、
請求項6または7に記載の海ぶどうの保存方法。
【請求項9】
前記装入工程では、前記シート状包装体の内部に前記塩水および前記生の海ぶどうを前記海ぶどうの全体が前記塩水に漬かった状態で装入する、
請求項6~8のいずれか1つに記載の海ぶどうの保存方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海ぶどうを長期間保存するための海ぶどうの保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海ぶどうは沖縄の名産品として有名な食品である。海ぶどうはクビレズタ(括れ蔦)という海藻の一種であり、クビレズタはイワズタ科イワズタ属に属する海藻である。また、海ぶどうは国内では沖縄を含め南西諸島において自然生育するが、沖縄および鹿児島では養殖が活発に行われており、養殖された海ぶどうは品質も安定しており清潔であることから全国各地に出荷されている。近年では養殖された海ぶどうは中国にも出荷されるようになっている。
なお、海ぶどうはその食感からグリーンキャビアともいわれており、生食で醤油(しょうゆ)または酢などのタレが付けられて食され、その食感(いわゆるプチプチ感)が主な特徴とされる。そのため、海ぶどうの食感が、商品価値を決める上で非常に重要な要素に位置付けられている。
【0003】
海ぶどうは、匍匐茎と、茎と、小枝と、を有する。匍匐茎は海ぶどうの中心骨格として海中で大きく伸長し、茎はその匍匐茎の途中から直立して生える。この茎には球状(房状、粒状)の小枝が果物のブドウのように密生して生える。この茎および小枝が食用になる部分であり、一般的に収穫された海ぶどうは匍匐茎からその茎および小枝の部分が切り取られ、その部分は水きりされた状態で蓋つき発泡スチロールなどの運搬容器に収納される。この運搬容器に収納された状態で海ぶどうは国内または海外に出荷(流通)される。
【0004】
ところで、海ぶどうの食感はブドウの房状の小枝が外形的に瞬間的に破裂することによって主に発生するため、海ぶどうが食されるまでその外形が萎縮したり破裂したりしないようにその小枝の外形(粒形状)が維持されて流通される必要がある。
【0005】
しかしながら、海ぶどうは温度の変化に敏感であり、特に低温では海ぶどうの小枝が萎縮してしまう。海ぶどうは常温(15℃~26℃)での保存が原則であり、それでも1週間弱が保存限度とされる。そのため、生きた状態で流通させる場合、海ぶどうの鮮度を維持するため温度管理が重要な要素とされる。
【0006】
たとえば、夏場の気温が高い時期であればそのまま出荷された場合でも海ぶどうの鮮度はある程度維持可能であるが、冬場の気温が低い時期であれば運搬容器の内部をカイロなどで温める必要がある。また、生きた状態で流通させる場合、温度を適切に管理したとしてもその鮮度を維持できる期間(保存期間)はたかだか数週間が限度であり、そのため、流通可能な時間および距離(流通可能な地域)に制約があった。
【0007】
そこで、収穫した海ぶどうの食感が長期間、損なわれないように保存する従来の方法としては、海ぶどうを、ミョウバンを含有する塩水で処理したり、海ぶどう加工品をpH6.5以上の保存液とともに密封したりするものが知られる(たとえば特許文献1参照)。また、塩分濃度3.5質量%以上の塩水または溶質濃度3.5質量%以上のタレなどからなる、濃度の濃い養液を60℃以上の温度に加熱し、この中に生の海ぶどうを漬けて萎縮させて保存するものも知られる(たとえば特許文献2参照)。
【0008】
また、保存の際のパック詰めに関し、特許文献2には海ぶどうを保存処理した後、海ぶどうを小球状の塊とし、この塊をパック内に入れてその塊と略同形の凹(おう)球状部を有する治具でパックの外側から押さえて、パック内の空気を排除して密封することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-200228号公報
【特許文献2】特許第5685530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記特許文献1、2では、保存の際にミョウバンを含有する塩水、所定の濃度の塩水、または所定の濃度の保存液を添加するものであり、その添加物によって味を変化させる可能性がある。さらに、その添加物自体の仕入れコスト、および添加物を海ぶどうに混合する工程を要するものであるため、製造コストが増加したり製造工程が煩雑になったりする可能性がある。また、前記特許文献2では、保存のパック詰めの際に、治具を用いて空気を排除するものであり、パック詰め作業が煩雑で改善の余地があった。
【0011】
また、海ぶどうの消費者はその食感だけではなく、その味の善しあしにも敏感であり、海ぶどうを保存する場合、その食感を維持することは無論のこと、味も損なわないようにする必要がある。食感は良くても味が悪いと海ぶどうの商品価値は下がってしまう(購買行動には繋がらない可能性が高い)。すなわち、海ぶどうを保存しようとする場合、海ぶどうの味および食感の両方を同時に損なわないようにすることが強く求められる。
【0012】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、簡便かつ低コストでありながら、海ぶどうの味および食感の両方を損なうことなく長期間に亘って保存して、時間および距離の制約を抑制して幅広く流通させることができる海ぶどうの保存方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の前述した目的は、後記の構成により達成される。
(1)収穫された生の海ぶどうをシート状包装体の内部に装入する装入工程と、前記装入工程後、前記シート状包装体の内部を脱気して減圧する減圧工程と、前記減圧工程後、減圧された状態で前記シート状包装体を密封する密封工程と、前記密封工程後、前記シート状包装体を冷却された液体に漬けて-23℃以下に冷凍する冷凍工程と、を含む、海ぶどうの保存方法。
(2)前記冷凍工程において前記海ぶどうが装入された前記シート状包装体を-25℃以下に冷凍する、(1)に記載の保存方法。
(3)前記減圧工程において前記シート状包装体の内部圧力を0.085MPaから0.09MPaの範囲となるように減圧する、(1)または(2)に記載の海ぶどうの保存方法。
(4)前記装入工程において前記海ぶどうを50g以下で前記シート状包装体に装入する、(1)~(3)のいずれか1つに記載の海ぶどうの保存方法。
(5)前記シート状包装体は一対のフィルムを貼り合わせて設けられており、前記フィルムそれぞれの厚さは75μm~80μmの範囲に設定される、(1)~(4)のいずれか1つに記載の海ぶどうの保存方法。
(6)所定量の水に対し塩を溶解して、収穫された生の海ぶどうにおけるブドウの房状の小枝の内部の塩水よりも塩分濃度が高い塩水を精製する精製工程と、前記精製工程後、シート状包装体の内部に前記塩水および前記生の海ぶどうを装入する装入工程と、前記装入工程後、前記シート状包装体の内部空気を脱気して減圧する減圧工程と、前記減圧工程後、脱気され減圧された状態の前記シート状包装体を密封する密封工程と、前記密封工程後、前記シート状包装体を冷却された液体に漬けて冷凍する冷凍工程と、を含む、海ぶどうの保存方法。
(7)前記冷凍工程では、前記シート状包装体を-30℃以下に冷凍する、(6)に記載の海ぶどうの保存方法。
(8)前記精製工程では、過熱処理および冷却処理もしない常温の状態で前記所定量の水に対し限界濃度の塩を溶解して前記塩水を精製する、(6)または(7)に記載の海ぶどうの保存方法。
(9)前記装入工程では、前記シート状包装体の内部に前記塩水および前記生の海ぶどうを前記海ぶどうの全体が前記塩水に漬かった状態で装入する、(6)~(8)のいずれか1つに記載の海ぶどうの保存方法。
【0014】
前記(1)の構成によれば、海ぶどうが装入された状態のシート状包装体の内部を脱気して減圧するため、海ぶどうの小枝(粒)の膜からその内部の水分が適度に浸透して外部に出る。これにより、この減圧工程では海ぶどうの小枝は若干萎(しぼ)むが、後工程である冷凍工程においてその残った内部の水分がその冷凍で膨張したとしても小枝(粒)の膜を損傷させることはない。また、シート状包装体を冷却された液体に漬けて-23℃以下に冷凍するため、急速に冷凍して長期間保存可能とし、海ぶどうの味および食感の両方を損なうことはなく生きた状態と同様な品質を維持することができる。また、収穫された海ぶどうに保存料として何ら他の素材を添加するものではなく、または治具などを別途用意して作業する必要がないため、製造コストの増加および製造工程の煩雑化を抑制することができる。以上により、簡便かつ低コストでありながら、海ぶどうの味および食感の両方を損なうことなく長期間に亘って保存して、時間および距離の制約を抑制して幅広く流通させることができる。
前記(2)の構成によれば、冷凍工程において海ぶどうが装入されたシート状包装体を-25℃以下に冷凍するため、海ぶどうの味および食感の両方をより損なうことはなく生きた状態と同様な品質をより確かに維持することができる。
前記(3)の構成によれば、減圧工程においてシート状包装体の内部圧力を0.085MPaから0.09MPaの範囲で減圧する。このため、海ぶどうの小枝(粒)の膜から内部の水分がより適度に浸透して外部に出せることができ、冷凍工程で急速冷凍した場合でもより確かに海ぶどうの小枝(粒)の膜が損傷するのを防止することができる。その結果、生きた状態の海ぶどうと同様な食感をより確かに再現することができる。
前記(4)の構成によれば、装入工程において海ぶどうを50g以下でシート状包装体に装入するため、海ぶどうの味および食感の両方をより一層確かに損なうことなく長期間に亘って保存することができる。また、使い切りパックとして購入者の利便性を高めることができる。
前記(5)の構成によれば、シート状包装体は一対のフィルムを貼り合わせて設けられており、そのフィルムそれぞれの厚さは75μm~80μmの範囲に設定される。このため、減圧工程の際、海ぶどうの小枝(粒)の外形に適度に倣ってフィルム表面が変形して、減圧工程時で小枝の膜を潰すことなくその損傷を防止することができる。また、シート状包装体の内部での海ぶどうの移動を規制して保管性または取り扱い性を高めることができる。
前記(6)の構成によれば、所定量の水に対し塩を溶解して、収穫された生の海ぶどうにおけるブドウの房状の小枝の内部の塩水よりも塩分濃度が高い塩水を精製し、その塩水を用いてシート状包装体の内部に生の海ぶどうを装入してその塩水とともに冷凍保存する。このため、海ぶどうの小枝(粒)の膜からその内部の水分がその塩水側に浸透する(浸透圧効果)。これにより、海ぶどうの小枝は若干萎(しぼ)んで、後工程である冷凍工程にてその残った内部の水分がその冷凍で膨張したとしても小枝(粒)の膜を損傷させることはない。また、塩水とともに冷凍保存されるため、保存期間を伸長させることができる。以上により、簡便かつ低コストでありながら、海ぶどうの味および食感の両方を損なうことなく長期間に亘って保存して、時間および距離の制約を抑制して幅広く流通させることができる。
前記(7)の構成によれば、シート状包装体を冷却された液体に漬けて-30℃以下に冷凍するため、塩水とともに冷凍保存した場合でも、急速に冷凍して長期間保存可能とし、海ぶどうの味および食感の両方を損なうことはなく生きた状態と同様な品質を維持することができる。
前記(8)の構成のように、過熱処理および冷却処理もしない常温の状態で所定量の水に対し、限界濃度の塩を溶解して塩水を精製するとよい。この場合、作業の煩雑さを解消して製造の効率化を高めることができる。また、冷凍庫から取り出した際の常温での保存時間を長くすることが可能となる。
前記(9)の構成のように、シート状包装体の内部に塩水および生の海ぶどうを海ぶどうの全体が塩水に漬かった状態で装入するとよい。この場合、シート状包装体の内部で保存される海ぶどうの小枝全体を適切に保存して、品質を損なうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡便かつ低コストでありながら、生きた状態の海ぶどうを味および食感の両方を損なうことなく長期間に亘って保存して、時間および距離の制約を抑制して幅広く流通させることができる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)またはその例(以下「実施例」ともいう。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細はさらに明確化されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る海ぶどうの保存方法での工程の流れを説明するフロー図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す装入工程が行われている様子を示す模式図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す減圧工程および密封工程が行われている様子を示す模式図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す冷凍工程が行われている様子を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る海ぶどうの保存方法での工程の流れを説明するフロー図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す装入工程が行われている様子を示す模式図である。
【
図7】
図7は、装入工程の際、真空用パックが次工程まで一時載置されている様子を示す模式図である。
【
図8】
図8は、
図5に示す減圧工程および密封工程が行われている様子を示す模式図である。
【
図9】
図9は、
図5に示す冷凍工程が行われている様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る海ぶどうの保存方法に関する複数の実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。たとえば、すでによく知られた事項の詳細説明および/または実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。また、各図面は符号の向きに従って視るものとする。
【0019】
(第1実施形態)
まず
図1~
図4を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る海ぶどうの保存方法について説明する。
【0020】
[・本実施形態に係る保存方法の工程について]
図1~
図4を参照して、本実施形態の海ぶどうCLの保存方法について説明する。
図1は、本実施形態に係る海ぶどうCLの保存方法での工程の流れを説明するフロー図である。
図2は、
図1に示す装入工程S11が行われている様子を示す模式図である。
図3は、
図1に示す減圧工程S12Aおよび密封工程S12Bが行われている様子を示す模式図である。
図4は、
図1に示す冷凍工程S13が行われている様子を示す模式図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の海ぶどうCLの保存方法は、装入工程S11と、減圧工程S12Aと、密封工程S12Bと、冷凍工程S13と、を少なくとも含んで構成される。本実施形態の冷凍方法は、装入工程S11、減圧工程S12A、密封工程S12Bおよび冷凍工程S13の順で実行される。ただし、本実施形態では下述するように減圧工程S12Aと密封工程S12Bとが同時に実行される。
【0022】
図2に示すように、装入工程S11では、所定の作業者は真空用パック1(シート状包装体の一例)を用意し、この真空用パック1の内部に収穫された生の海ぶどうCLを装入する。ただし、装入工程S11の前には、作業者はその前処理として養殖場より海ぶどうCLを引き上げ、その場の海水を用いて洗浄して、付着しているカニおよび/または小エビを除去する。除去した後に、作業者は、茎切り、すなわち海ぶどうCLの匍匐茎からその茎および小枝の部分を切り取る。その切り取られた部分が食用部分であり、作業者はその食用部分を水切りし、その水切りした状態の海ぶどうCLが上述の真空用パック1に装入される。
なお、真空用パック1は透明の合成樹脂素材からなり、その一例として透明ナイロンポリ袋などが挙げられる。
【0023】
また、真空用パック1は、三方シール袋であり、一対のフィルムを貼り合わせて設けられる(不図示)。本実施形態ではそのフィルムそれぞれの厚さは75μm~80μmの範囲に設定される。この真空用パック1に海ぶどうCLの食用部分を装入する際、作業者は海ぶどうCLの食用部分を50g以下となるように計量器2で計量して小分けして装入する。またそれと同時に、作業者はその海ぶどうCLをヘラまたはお箸なども用いて、真空用パック1内において扁平状に広がるように分散して配置させる。
【0024】
図3に示すように、装入工程S11の後、作業者はたとえばチャンバー方式の真空包装機3を用いて、海ぶどうCLが装入された状態の真空用パック1に対し減圧工程S12Aと密封工程S12Bとを同時に行う。すなわち、真空包装機3によって真空用パック1の空気が除去された状態で真空用パック1は密封シールされる。具体的には、作業者は、真空用パック1の開口部を真空包装機3の押さえバー5およびヒーター(不図示)によって、挟持可能に真空可能なチャンバー4内に配置して真空包装機3の蓋6を閉じる。この状態で真空用パック1の内部が脱気されて減圧されるとともに、真空用パック1が熱溶着されて完全に密封される。真空用パック1の内部が減圧される際、その内部圧力は0.085MPaから0.09MPaの範囲で減圧される。
【0025】
図4に示すように、前述の減圧工程S12Aおよび密封工程S12Bが完了した後、作業者は密封された真空用パック1を、液体冷凍機7を用いて冷凍する。具体的には、液体冷凍機7では、真空用パック1は冷却されたアルコールAL(液体)に漬けられて本実施形態では-23℃以下、より好ましくは-25℃に冷凍される。アルコールALは熱伝導率が空気などの気体に比べ高く、冷却されたアルコールALによって急速冷凍が実現される。これにより、海ぶどうCLの小枝(以下「粒」ともいう)の膜内部においてその水分が冷凍過程で最大氷結晶生成帯を素早く通過するため、冷凍時における膜内部での氷結晶の大きさを小さく抑えることが可能となる。その結果、膜内部の水分においてその膨張の程度を抑制し、かつ海ぶどうCLの粒の細胞破壊を防止し、解凍後も生きた状態の海ぶどうCLと同様な品質を維持することが可能となる。
なお、液体冷凍機7としては株式会社テクニカン社製の液体急速凍結機「凍眠」(登録商標)シリーズなどが好適に例示される。なお、本実施形態でいう「液体」とは、アルコールALに限定されず、たとえばマイナスの温度でも液体の状態を維持し、つまり凍結温度が非常に低く、また熱伝導率がよい種々のものを採用することが可能である。
【0026】
このように、装入工程S11、減圧工程S12A、密封工程S12Bおよび冷凍工程S13が順に実行されることで、海ぶどうCLは小分けされた状態でそれぞれパック詰めされて冷凍保存される。この冷凍保存された状態で、パック詰めされた海ぶどうCLは所定数の数量単位で箱詰めされて出荷(流通)される。
【0027】
[・本実施形態の利点について]
以上説明したように本実施形態によれば、収穫された生の海ぶどうCLを真空用パック1(シート状包装体の一例)の内部に装入する装入工程S11と、装入工程S11後、真空用パック1の内部を脱気して減圧する減圧工程S12Aと、減圧工程S12A後、減圧された状態で真空用パック1を密封する密封工程S12Bと、密封工程S12B後、真空用パック1を冷却されたアルコールAL(液体の一例)に漬けて-23℃以下に冷凍する冷凍工程S13と、を含む。
【0028】
このため、海ぶどうCLが装入された状態の真空用パック1(シート状包装体の一例)の内部を脱気して減圧するため、海ぶどうCLの小枝(粒)の膜からその内部の水分が適度に浸透して外部に出る。これにより、この減圧工程S12Aでは海ぶどうCLの小枝は若干萎(しぼ)むが、後工程である冷凍工程S13においてその残った内部の水分がその冷凍で膨張したとしても小枝(粒)の膜を損傷させることはない。また、真空用パック1を冷却されたアルコールAL(液体)に漬けて-23℃以下に冷凍するため、急速に冷凍して長期間保存可能とし、海ぶどうCLの味および食感の両方を損なうことはなく生きた状態と同様な品質を維持することができる。また、収穫された海ぶどうCLに保存料として何ら他の素材を添加するものではなく、または治具などを別途用意して作業する必要がないため、製造コストの増加および製造工程の煩雑化を抑制することができる。以上により、簡便かつ低コストでありながら、海ぶどうCLの味および食感の両方を損なうことなく長期間に亘って保存して、時間および距離の制約を抑制して幅広く流通させることができる。
【0029】
また、本実施形態によれば、冷凍工程S13において海ぶどうCLが装入された真空用パック1(シート状包装体)を-25℃以下に冷凍する。そのため、海ぶどうCLの味および食感の両方をより損なうことはなく生きた状態と同様な品質をより確かに維持することができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、減圧工程S12Aにおいて真空用パック1(シート状包装体の一例)の内部圧力を0.085MPaから0.09MPaの範囲で減圧する。このため、海ぶどうCLの小枝(粒)の膜から内部の水分がより適度に浸透して外部に出せることができ、冷凍工程S13で急速冷凍した場合でもより確かに海ぶどうCLの小枝(粒)の膜が損傷するのを防止することができる。その結果、生きた状態の海ぶどうCLと同様な食感をより確かに再現することができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、装入工程S11において海ぶどうCLを50g以下で真空用パック1(シート状包装体の一例)に装入するため、海ぶどうCLの味および食感の両方をより一層確かに損なうことなく長期間に亘って保存することができる。また、使い切りパックとして購入者の利便性を高めることができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、真空用パック1(シート状包装体の一例)は一対のフィルムを貼り合わせて設けられており、そのフィルムそれぞれの厚さは75μm~80μmの範囲に設定される。このため、減圧工程S12Aの際、海ぶどうCLの小枝(粒)の外形に適度に倣ってフィルム表面が変形して減圧工程S2A時で小枝の膜を潰すことなくその損傷を防止することができる。また、真空用パック1の内部での海ぶどうCLの移動を規制して保管性または取り扱い性を高めることができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に
図5~
図9を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る海ぶどうの保存方法について説明する。
なお、前述の第1実施形態と同一または同等部分については、図面に同一あるいは同等符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する場合がある。
【0034】
[・本実施形態に係る保存方法の工程について]
図5~
図9を参照して、本実施形態の海ぶどうCLの保存方法について説明する。
図5は、本実施形態に係る海ぶどうの保存方法での工程の流れを説明するフロー図である。
図6は、
図5に示す装入工程S21が行われている様子を示す模式図である。
図7は、装入工程S21の際、真空用パック1が次工程まで一時載置されている様子を示す模式図である。
図8は、
図5に示す減圧工程S22Aおよび密封工程S22Bが行われている様子を示す模式図である。
図9は、
図5に示す冷凍工程S23が行われている様子を示す模式図である。
【0035】
図5に示すように、本実施形態の海ぶどうCLの保存方法は、精製工程S20と、装入工程S21と、減圧工程S22Aと、密封工程S22Bと、冷凍工程S23と、を少なくとも含んで構成される。
【0036】
本実施形態の冷凍方法は、精製工程S20、装入工程S21、減圧工程S22A、密封工程S22Bおよび冷凍工程S23の順で実行される。本実施形態の海ぶどうCLの保存方法は、前述の第1実施形態と比べて、精製工程S20をさらに含んで構成されており、海ぶどうCLは精製工程S20で精製される塩水SW(後述参照)とともに真空用パック1に封入(装入)される。すなわち、本実施形態では、海ぶどうCLは、真空用パック1内で一緒に装入される塩水SWが凍結することで冷凍保存されることになる。
【0037】
装入工程S21の前工程では、作業者はたとえば容器に所定量で貯水された水に対し塩(たとえば結晶塩、粉状塩など)を溶解して塩水SWを精製しておく(すなわち精製工程S20)。精製工程S20では、収穫された生の海ぶどうにおけるブドウの房状の小枝の内部の塩水SWよりも塩分濃度が高い塩水SWとなるように精製し、たとえば塩分濃度を3%~6%の範囲に設定されるとよい。より好適には、過熱および冷却もしない常温の状態でその所定量の水に対し限界濃度の塩を溶解して塩水SWを精製するとさらによい。この場合、作業の煩雑さを解消して製造の効率化を高めることが可能となる。また、冷凍庫から取り出した際の常温での保存時間を長くすることが可能となる。
【0038】
装入工程S21では、作業者は海ぶどうCLの食用部分を計量器2で計量して小分けして装入する。
図6に示すように、海ぶどうCLの装入後、作業者は前述の精製工程S20で精製した塩水SWも真空用パック1に装入して、たとえば真空用パック1の開口側の両隅部を両手で把持して持ち上げてその底側に海ぶどうCLおよび塩水SWを片寄らせる。それにより、真空用パック1の内部に塩水SWおよび生の海ぶどうを海ぶどうの全体が、塩水SWに漬かった状態で装入することが可能となる。
【0039】
また、このとき、
図7に示すように、この状態を維持するため、真空用パック1はその半分で、あるいは塩水SWおよび海ぶどうCLの装入(存在)部分と不装入(不存在)部分との境界で折り曲げられた状態で、次工程までたとえば箱状の容器に一時的に載置されてもよい。
【0040】
図8に示すように、装入工程S21の後、作業者は真空包装機3を用いて、海ぶどうCLおよび塩水SWが装入された状態の真空用パック1に対し減圧工程S22Aと密封工程S22Bとを同時に行う。減圧工程S22Aでは、真空用パック1の内部空気を脱気して減圧する。このとき、作業者は、真空用パック1において前述の折り曲げ部またはその近傍を、真空包装機3の押さえバー5およびヒーターによって挟持して密封する(すなわち密封工程S22B)。
なお、真空用パック1の内部は、過度に減圧されないように調整される。それにより、海ぶどうCLの小枝が圧力により潰されて破裂しないように抑制(予防)された状態で、密封されることになる。具体的には、その内部圧力が0.2標準大気圧から0.3標準大気圧の範囲で設定(調整)されて、密封されるとよい。
【0041】
図9に示すように、前述の減圧工程S22Aおよび密封工程S22Bが完了した後、作業者は密封された真空用パック1を、液体冷凍機7を用いて冷凍する。本実施形態では、真空用パック1に海ぶどうCLおよび塩水SWの両方が装入された状態で真空用パック1が冷凍される。
その他の構成は前述の第1実施形態と同様である。
【0042】
[・本実施形態の利点について]
以上説明したように本実施形態によれば、所定量の水に対し塩を溶解して、収穫された生の海ぶどうCLにおけるブドウの房状の小枝の内部の塩水SWよりも塩分濃度が高い塩水SWを精製する精製工程S20と、精製工程S20後、真空用パック1(シート状包装体の一例)の内部に塩水SWおよび生の海ぶどうCLを装入する装入工程S21と、装入工程S21後、真空用パック1の内部空気を脱気して減圧する減圧工程S22Aと、減圧工程S22A後、脱気され減圧された状態の真空用パック1を密封する密封工程S22Bと、密封工程S22B後、真空用パック1を冷却されたアルコールAL(液体の一例)に漬けて冷凍する冷凍工程S23と、を含む。
【0043】
このため、所定量の水に対し塩を溶解して、収穫された生の海ぶどうにおけるブドウの房状の小枝の内部の塩水SWよりも塩分濃度が高い塩水SWを精製し、その塩水SWを用いて真空用パック1(シート状包装体の一例)の内部に生の海ぶどうを装入してその塩水SWとともに冷凍保存する。このため、海ぶどうの小枝(粒)の膜からその内部の水分がその塩水SW側に浸透する(浸透圧効果)。これにより、海ぶどうの小枝は若干萎んで、後工程である冷凍工程S23にてその残った内部の水分がその冷凍で膨張したとしても小枝(粒)の膜を損傷させることはない。また、塩水SWとともに冷凍保存されるため、保存期間を伸長させることができる。以上により、簡便かつ低コストでありながら、海ぶどうの味および食感の両方を損なうことなく長期間に亘って保存して、時間および距離の制約を抑制して幅広く流通させることができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、真空用パック1(シート状包装体の一例)を冷却されたアルコールAL(液体の一例)に漬けて-30℃以下に冷凍するため、塩水SWとともに冷凍保存した場合でも、急速に冷凍して長期間保存可能とし、海ぶどうの味および食感の両方を損なうことはなく生きた状態と同様な品質を維持することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、過熱処理および冷却処理もしない常温の状態で所定量の水に対し限界濃度の塩を溶解して塩水SWを精製するとよい。この場合、作業の煩雑さを解消して製造の効率化を高めることができる。また、冷凍庫から取り出した際の常温での保存時間を長くすることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態によれば、真空用パック1(シート状包装体の一例)の内部に塩水SWおよび生の海ぶどうCLを海ぶどうCLの全体が、塩水SWに漬かった状態で装入するとよい。この場合、真空用パック1の内部で保存される海ぶどうCLの小枝全体を適切に保存して、品質を損なうことを抑制することができる。
その他の作用効果は前述の第1実施形態と同様である。
【実施例0047】
以下、本発明に係る実施例を複数挙げて本発明の有効性をより具体的に説明する。
ただし、下述する実施例は、本発明の一例として詳細に説明するためのものに過ぎず、本発明の技術的範囲を制限するためにいかなる意味でも解釈されない。
また、以下に説明されていない内容は、この技術分野に属する熟練した者であれば十分に技術的に類推可能なものであるので、その記載を省略する。
【0048】
(第1実施例)
本実施例では、前述の第1実施形態に係る冷凍温度について官能試験を行った。冷凍工程(S13)における冷凍温度を変化させて官能試験を行った。すなわち、評価サンプルは、上述の冷凍工程(S13)において冷凍温度の条件のみを変更し-21℃、-22℃、-23℃、-24℃および-25℃で冷凍された5種類を用意して評価した。また、それ以外の条件については、真空用パック(1)のフィルムの厚さは80μm、装入工程(S11)での装入量は25g、減圧工程(S12A)での減圧値は0.09MPaに評価サンプル間ですべて揃(そろ)えられた。
【0049】
また、官能試験の評価項目は食感、味、色、後味および総合評価の5項目であった。それぞれの評価項目の評価尺度は「1」から「7」までのスケール値とし、「1」を「商品価値が全くない」、「7」を「生きた状態の海ぶどうと同程度である」と定義した。
【0050】
評価項目それぞれは、10人の評価者によって評価された。評価者はいずれも飲食店の経営者またはその関係者であり、日ごろから海ぶどう(CL)をその飲食店で扱っている者で募集した。評価者の内訳は男性が8名であり女性が2名であり、平均年齢は36.3歳であった。また、評価者の年齢の標準偏差は5.3であった。
なお、官能試験では、常時、取れたて品の海ぶどう(CL)、および従来の冷凍品の海ぶどうを評価者のそれぞれで皿に盛って試験中でもこれら基準を食することが可能な環境とした。また、サンプルの評価順序をランダムにして試験を行った。
【0051】
-20℃、-21℃、-22℃、-23℃、-24℃および-25℃で冷凍された6種類のそれぞれのサンプルにおいて、各評価者によって評価(選択)されたスケール(評価尺度)を表1~表6に示す。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
評価項目それぞれにおいて、評価者によって評価(選択)されたスケール(評価尺度)を評価項目ごとに平均値を算出した。その結果を表7に示す。また、その平均値が0以上3未満の範囲であれば“不可”を意味する「×」、3以上4.5未満であれば“良”を意味する「○」、4.5以上であれば“優秀”を意味する「◎」としてランク付けの最終評価を行った。その評価結果を表8に示す。
【0059】
【0060】
【0061】
表7および表8に示すように、いずれの評価項目で「○」あるいは「◎」であるのは-23℃以下の評価サンプルであることが分かる。特に-25℃の評価サンプルは、「味」、「後味」および「総合」で最も良い数値を示しており、そして「◎」の数も最も多い。また、温度が低くなるほどその数値および最終評価が高く傾向があることが分かる。
【0062】
すなわち、本官能試験を通じて、冷凍工程(S13)において海ぶどう(CL)が装入された真空用パック(1、シート状包装体)を-23℃以下、より好ましくは-25℃に冷凍するとよいことが分かった。すなわち、このように冷凍することで、海ぶどう(CL)の味および食感の両方をより損なうことはなく、生きた状態と同様な品質をより確かに維持することができることが明らかにされた。
【0063】
(第2実施例)
本実施例では、前述の第2実施形態に係る冷凍温度について官能試験を行った。前述の第1実施例に係る試験と同様に、冷凍工程(S23)における冷凍温度を変化させるとともに、冷凍時間も変化させて官能試験を行った。すなわち、前述の冷凍工程(S23)において冷凍温度および冷凍時間の条件のみを変更し-20℃で30分間の冷凍、-22℃で20分間の冷凍、-22℃で30分間の冷凍、-24℃で20分間の冷凍、-24℃で30分間の冷凍、-26℃で20分間の冷凍、-26℃で30分間の冷凍、-28℃で20分間の冷凍、-28℃で30分間の冷凍、-30℃で20分間の冷凍および-30℃の30分間の冷凍、の11種類について、その評価順序をランダムにして官能試験を行った。
【0064】
本実施例において評価項目それぞれは、11人の評価者によって評価された。これら評価者いずれも前述の第2実施例と同様に海ぶどう(CL)を日常的に扱っている者に対して募集したが、その募集は前述の第1実施例とは別に行った。本実施例に係る試験は、前述の第1実施例とは別の試験として別日に実施された。評価者の内訳は男性が10人であり女性が1名であった。年齢層は、20代が3名、30代が4名、40代が4名であり、平均年齢は34.5歳であった。
【0065】
また、本実施例でも同様に、官能試験の評価項目は食感、色、味、後味および総合評価の5項目とした。ただし、本実施例では、それぞれの評価項目の評価尺度は「1」から「5」までのスケール値とし、「1」を「商品価値が全くない」、「5」を「生きた状態の海ぶどうと同程度である」と定義した。
なお、本実施例でも同様に、常時、取れ立て品の海ぶどう(CL)、および従来の冷凍品の海ぶどうを評価者のそれぞれで皿に盛って試験中でもこれら基準を食することが可能な環境とした。
【0066】
-20℃で30分間の冷凍、-22℃で20分間の冷凍、-22℃で30分間の冷凍、-24℃で20分間の冷凍、-24℃で30分間の冷凍、-26℃で20分間の冷凍、-26℃で30分間の冷凍、-28℃で20分間の冷凍、-28℃で30分間の冷凍、-30℃で20分間の冷凍および-30℃の30分間の冷凍、の11種類のそれぞれのサンプルにおいて、各評価者によって評価(選択)されたスケール(評価尺度)を表9~表19に示す。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
-20℃で30分間の冷凍、-22℃で20分間の冷凍、-22℃で30分間の冷凍、-24℃で20分間の冷凍、-24℃で30分間の冷凍、-26℃で20分間の冷凍、-26℃で30分間の冷凍、-28℃で20分間の冷凍、-28℃で30分間の冷凍、-30℃で20分間の冷凍および-30℃の30分間の冷凍、の11種類のそれぞれにおいて、評価者によって選択された評価尺度を評価項目ごとに平均値を算出した。この算出した平均値を評価項目のそれぞれの最終的な評価とした。その評価結果を表20に示す。また、その平均値が0以上3.5未満の範囲であれば“不可”を意味する「×」、3.5以上4.0未満であれば“良”を意味する「○」、4.0以上であれば“優秀”を意味する「◎」としてランク付けの最終評価を行った。その評価結果を表21に示す。
【0079】
【0080】
【0081】
表20および表21に示すように、いずれの評価項目で「◎」であるのは-30℃で20分間、および-30℃の30分間で冷凍保存された評価サンプルであることが分かる。冷凍工程(S23)での冷凍時間(20分、30分)についてその差異は認められなかった。すなわち、すなわち、本官能試験を通じて、冷凍工程(S23)において海ぶどう(CL)および塩水(SW)の両方が装入された真空用パック(1、シート状包装体の一例)を-30℃以下に冷凍するとよいことが分かった。このように冷凍することで海ぶどう(CL)の味および食感の両方を損なうことはなく生の状態と近い品質を得ることができることが明らかにされた。
【0082】
以上で具体的実施形態および実施例の説明を終えるが、本開示はかかる例としての実施形態および実施例に限定されないことはいうまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
本発明は、簡便かつ低コストでありながら、海ぶどうの味および食感の両方を損なうことなく長期間に亘って保存して、時間および距離の制約を抑制して幅広く流通させることができる海ぶどうの保存方法として有用である。