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特開2022-46487トリアシルグリセロールの部分的酵素加水分解
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046487
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】トリアシルグリセロールの部分的酵素加水分解
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/19 20060101AFI20220315BHJP
   C12P 7/6432 20220101ALI20220315BHJP
   C12P 7/6434 20220101ALI20220315BHJP
   C12P 7/6445 20220101ALI20220315BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20220315BHJP
   C12N 9/20 20060101ALN20220315BHJP
【FI】
C12N1/19 ZNA
C12P7/6432
C12P7/6434
C12P7/6445
C12N15/55
C12N9/20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021196980
(22)【出願日】2021-12-03
(62)【分割の表示】P 2018534130の分割
【原出願日】2016-12-29
(31)【優先権主張番号】62/272,829
(32)【優先日】2015-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】マグフォード, ポール
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー, モーニカ
(72)【発明者】
【氏名】シュールマン, マーティン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】オイル中の長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)を精製し、かつ濃縮する方法を提供する。
【解決手段】特定の配列からなるアミノ酸配列と少なくとも90%同一性を有するポリペプチドを発現する宿主細胞であって、前記ポリペプチドが、少なくとも1種類のLC-PUFAを含むオイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解する、宿主細胞を使用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載のポリペプチドを発現する宿主細胞。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001]本出願は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2015年12月30日出願の米国仮特許出願第62/272,829号明細書の出願日の利益を主張する。
【0002】
[発明の分野]
[0002]本発明は、ポリペプチドを発現する宿主細胞であって、そのポリペプチドが宿主細胞において発現されて、少なくとも1種類の長鎖多価不飽和脂肪酸を含むオイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解する能力が付与される、宿主細胞、ならびにそのポリペプチドが宿主細胞において発現されて、少なくとも1種類の長鎖多価不飽和脂肪酸を含むオイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解する能力が付与される、ポリペプチドを発現する宿主細胞を使用する方法に関する。その宿主細胞を用いて、長鎖多価不飽和脂肪酸が豊富なオイル組成物の商業生産に有用であるように、十分な量のこのポリペプチドを製造する。
【0003】
[背景技術]
[0003]オメガ-3脂肪酸などの長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)は、日常の生活および機能に不可欠である。例えば、血清トリグリセリドの低下に関する、シス-5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸(EPA)およびシス-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸(DHA)などのオメガ-3脂肪酸の有益な効果は、現在、十分に確立されている。これらの化合物は、他の心臓保護的利点についても知られている。実際に、アメリカ心臓協会(American Heart Association)も、オメガ-3脂肪酸が心血管および心疾患リスクを下げ得ることを報告している。LC-PUFAの他の利点は、炎症、神経変性疾患の予防および/または治療、および認知発達に関連する利点である。オメガ-3脂肪酸などのLC-PUFAが豊富な食事は、心疾患、癌、関節炎、アレルギー、および他の慢性疾患に有益な作用を有することも示されている。
【0004】
[0004]例えば、オメガ-3脂肪酸などのLC-PUFAは、海産オイル、微生物および/または藻類のオイルに由来する場合が多い。かかる供給源は通常、トリアシルグリセロールの形でLC-PUFAを含有し、他の不要な脂肪酸(例えば、飽和脂肪酸)は、トリアシルグリセロール分子において目的のLC-PUFAと並んで存在する。したがって、オイル中のLC-PUFAを精製し、かつ濃縮することが一般に望まれている。
【0005】
[0005]魚、微生物および/または藻類のオイルなど、オイルからLC-PUFA濃縮物を生成する様々な方法が知られている。例えば、トリアシルグリセロールからエチルエステルへと飽和脂肪酸をエステル交換するために、リパーゼが使用されている。次いで、蒸留によって、混合物から飽和脂肪酸を除去し、不飽和エステルを時に、エステル交換してトリアシルグリセロールへと戻す。他の方法では、トリアシルグリセロールからの飽和脂肪酸をリパーゼで選択的に加水分解し、得られた遊離飽和脂肪酸は、尿素との錯体を形成することによって除去される。これらの方法によって得られたオイル中に含有されるLC-PUFAの量は、脂肪酸の量に対して一般に60重量%以上、または70重量%以上である。
【0006】
[0006]加水分解反応で使用される場合、特に未精製および精製魚油において使用される場合、現在市販のリパーゼは、様々な程度の有効性を有することが判明している。リパーゼの選択性および反応率を向上させれば、オイルの収率が高くなり、処理の効率が高くなると考えられる。例えば、一部のリパーゼは、グリセリドからのすべての利用可能な脂肪酸を無差別に加水分解する。他のリパーゼは、脂肪酸がグリセリドから加水分解されることに対して、望ましくない選択性を示す。EPAおよびDHAなどの所望のLC-PUFAをグリセリド上に残し、後の下流処理工程でこれらのLC-PUFAをより効率的かつ有効に濃縮することを可能にすることは有利であるだろう。したがって、かかる選択性および/または向上した反応率を可能にする、リパーゼの同定および単離は非常に有用であるだろう。本発明者らは、EPAおよびDHAなどの目的のLC-PUFAに対してより選択的であり、かつより高い反応率を有する、リパーゼのアイソフォームを同定した。
【0007】
[発明の概要]
[0007]ポリペプチドを発現する宿主細胞であって、そのポリペプチドが、オイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解する、宿主細胞、かかる宿主細胞を使用する方法、およびかかる宿主細胞を用いて、リパーゼであるポリペプチドを生成するプロセスが本明細書において開示される。
【0008】
[0008]一部の実施形態において、そのポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する。一部の実施形態において、そのポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する。一部の実施形態において、そのポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する。
【0009】
[0009]一部の実施形態において、そのポリペプチドはリパーゼである。好ましい実施形態において、ポリペプチドは、リパーゼのアイソフォームである。さらに好ましい実施形態において、ポリペプチドは、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)またはゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum)に由来するリパーゼのアイソフォームである。
【0010】
[0010]一部の実施形態において、その宿主細胞は酵母である。好ましい実施形態において、宿主細胞はピキア・パストリス(Pichia pastoris)である。
【0011】
[0011]一部の実施形態において、トリアシルグリセロールは、少なくとも1種類の長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)を含む。一部の実施形態において、LC-PUFAは、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、およびそれらの混合物を含む。他の実施形態において、LC-PUFAはDHAである。更なる実施形態において、LC-PUFAはEPAである。
【0012】
[本発明の説明]
[0012]添付の配列表に列挙される核酸配列および推定アミノ酸翻訳配列は、37C.F.R.§1.822に定義されるように、ヌクレオチド塩基およびアミノ酸の標準的な文字省略形を用いて示されている。
【0013】
[0013]添付の配列表において、配列番号1は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)由来のカンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)アイソフォームリパーゼ1タンパク質(α-接合因子なし)のアミノ酸配列を示す:
【化1】
【0014】
[0014]配列番号2は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)由来のカンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)アイソフォームリパーゼ3タンパク質(α-接合因子なし)のアミノ酸配列を示す:
【化2】
【0015】
[0015]配列番号3は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)由来のゲオトリクム・カンジダ(Geotrichum Candida)アイソフォームリパーゼ2タンパク質(α因子シグナルペプチドまたは8×ヒスタミンタグなし)のアミノ酸配列を示す:
【化3】
【0016】
[詳細な説明]
[0016]本発明の特徴および利点は、以下の詳細な説明を読めば、当業者によってより容易に理解され得る。本発明の特定の特徴は、明確にするために上記および下記に記述され、個々の実施形態の文脈において、そのサブコンビネーションを形成するように組み合わせてもよいことは理解されよう。
【0017】
[0017]具体例として本明細書において確認される実施形態は、例証的であり、制限的ではないことが意図される。
【0018】
[0018]以下の本明細書において、かつ特許請求の範囲において、数多くの用語が参照され、以下の意味を有すると定義されるべきである:
【0019】
[0019]本発明を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)は、「a」および「an」および「the」という用語および同様な指示の使用は、本明細書において別段の指定がない限り、または文脈で明確に矛盾していない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈される。
【0020】
[0020]「含む」、「有する」、「包含する」および「含有する」という用語は、別段の指定がない限り、制限のない用語として解釈される(つまり、「限定されないが、~を含む」を意味する)。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指定がない限り、単にその範囲内にあるそれぞれの値に個々に言及する簡略な方法としての役割を果たすことが意図され、それぞれの異なる値は、あたかも個々に本明細書に記載されるかのように、明細書に組み込まれる。
【0021】
[0021]「任意選択の」または「任意選択的に」とは、その後に記載の事象または状況が起こり得る、または起こり得ないこと、および明細書は、その事象または状況が起こる場合および起こらない場合も包含することを意味する。
【0022】
[0022]「トリアシルグリセロール」または「TAG」という用語は、脂肪酸のグリセロールエステルを含む分子を意味するために使用される。この用語は、「トリグリセリド」(TG)と同義でも使用される。「グリセリド」は、文脈で指示される場合にモノ、ジおよび/またはトリグリセリドを意味するために使用される。
【0023】
[0023]多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、脂肪酸のメチル末端からの最初の二重結合の位置に基づいて分類され;オメガ-3(n-3)脂肪酸は、第3の炭素で第1二重結合を含有するのに対して、オメガ-6(n-6)脂肪酸は、第6炭素で第1二重結合を含有する。例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)は、「22:6n-3」としばしば命名される、炭素22個および二重結合6個の長さの鎖を有するオメガ-3長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)である。長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)は、20~24個の多くの炭素原子を有し、不飽和の数は4または5である。PUFAおよびLC-PUFAは、遊離型、エステル、またはグリセリド型である。
【0024】
[配列同一性および類似性]
[0024]配列同一性は、本明細書において、配列を比較することによって決定される、2つ以上のアミノ酸(ポリペプチドまたはタンパク質)配列または2つ以上の核酸(ポリヌクレオチド)配列との関係性として定義される。当技術分野において、「同一性」とは、場合により、かかる配列のストリング(string)間のマッチによって決定される、アミノ酸または核酸配列間の配列関連性の程度も意味する。2つのアミノ酸配列間の「類似性」は、アミノ酸配列および第2ポリペプチドの配列と、一方のポリペプチドのアミノ酸配列およびその保存アミノ酸置換を比較することによって決定される。「同一性」および「類似性」は、限定されないが、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heine,G.,Academic Press,1987;およびSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991;およびCarillo,H.,and Lipman,D.,SIAM J.Applied Math.,48:1073(1988)に記載の方法を含む既知の方法によって容易に計算することができる。
【0025】
[0025]同一性を決定する好ましい方法は、調べられる配列間で最も大きなマッチが得られるように設計される。同一性および類似性を決定する方法は、公的に入手可能なコンピュータープログラムにおいて体系化されている。2つの配列間の同一性および類似性を決定する好ましいコンピュータープログラム方式としては、例えばGCGプログラムパッケージ(Devereux,J.,et al.,Research 12(1):387(1984)),BestFit,BLASTP,BLASTN,およびFASTA(Altschul,S.F.et al,J.Mol.Biol.215:403-410(1990))が挙げられる。BLAST Xプログラムは、NCBIおよび他の供給元から公的に入手可能である(BLAST Manual,Altschul,S.,et al,NCBI NLM NIH Bethesda,Md.20894;Altschul,S.,et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990))。既知のSmith Watermanアルゴリズムを使用して、同一性を決定することもできる。
【0026】
[0026]ポリペプチド配列の比較に好ましいパラメーターは以下の:アルゴリズム:Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443-453(1970);比較マトリックス(Comparison matrix):Hentikoff and Hentikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.89:10915-10919(1992)からのBLOSSUM62;ギャップペナルティ:12;およびギャップ長ペナルティ:4を含む。これらのパラメーターを用いた有用なプログラムは、ウィスコンシン州マディソン(Madison,Wis)のGenetics Computer Groupからの「Ogap」プログラムとして公的に入手可能である。前述のパラメーターは、アミノ酸比較のデフォルトパラメーターである(末端ギャップに対するペナルティなし)。
【0027】
[0027]核酸の比較に好ましいパラメーターは以下の:アルゴリズム:Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443-453(1970);比較マトリックス:マッチ=+10,ミスマッチ=0;ギャップペナルティ:50;ギャップ長ペナルティ:3を含む。核酸比較のためのデフォルトパラメーターは、上記のウィスコンシン州マディソンに位置するGenetics Computer Groupからのギャッププログラム(Gap program)として入手可能である。任意選択的に、アミノ酸類似性の程度の決定において、当業者には明らかであるように、いわゆる「保存的」アミノ酸置換も考慮に入れられ得る。保存的アミノ酸置換とは、類似の側鎖を有する残基の互換性を意味する。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり;脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびトレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンであり;硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換の群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミンである。本明細書に開示されるアミノ酸配列の置換の変異配列(variant)は、開示される配列における少なくとも1つの残基が除去されており、その場所に異なる残基が挿入されている変異配列である。好ましくは、アミノ酸の変更は保存的である。天然アミノ酸それぞれに対して好ましい保存的置換は以下の通りである:AlaからSer;ArgからLys;AsnからGlnまたはHis;AspからGlu;CysからSerまたはAla;GlnからAsn;GluからAsp;GlyからPro;HisからAsnまたはGln;IleからLeuまたはVal;LeuからIleまたはVal;LysからArg;GlnまたはGlu;MetからLeuまたはIle;PheからMet、LeuまたはTyr;SerからThr;ThrからSer;TrpからTyr;TyrからTrpまたはPhe;および、ValからIleまたはLeuへの置換である。
【0028】
[0028]ポリペプチドを発現する宿主細胞であって、そのポリペプチドが、少なくとも1種類の長鎖多価不飽和脂肪酸を含むオイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解する、宿主細胞、かかる宿主細胞を使用する方法、およびリパーゼであるポリペプチドを、かかる宿主細胞を用いて製造するプロセスが、本明細書において開示される。
【0029】
[0029]一実施形態において、宿主細胞が、高収率でトリグリセリド-加水分解性ポリペプチドを生成する能力を有する。これらのポリペプチドを生成する能力は、標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸構築物で宿主細胞を形質転換することによって、宿主細胞に付与される。これらのリパーゼを生成する形質転換宿主細胞の能力は、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)またはゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum)などの発現宿主からのリパーゼコード配列のトランスベクションとAOXまたはGAPなどのプロモーター遺伝子の組み合わせである。リパーゼは、培養上清への組換えリパーゼの分泌を可能にする、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のα接合因子に融合される。α接合因子は、天然タンパク質のエクスポートで切断される。これによって、宿主細胞を破壊することなく、リパーゼを収集することも可能となる。
【0030】
[0030]そのアミノ酸配列は、形質転換宿主細胞において、好ましくは排出可能な形態で発現され、次いで宿主細胞から活性型で排出されるリパーゼである。したがって、宿主細胞におけるアミノ酸配列の発現によって、宿主細胞外へ輸送された場合に、1U/mL細胞培養液を超える、好ましくは少なくとも2、3、4、5、10、20、40、60、または80U/mL(28℃)の発現レベルを有するリパーゼが産生される。1活性単位(U)は、標準条件(100mM MOPSバッファー(pH7.5)、0.24mM p-ニトロフェニルエステル、37℃)下にて、p-ニトロフェノール1μmol/分を生成する酵素の量として定義される。リパーゼ活性、細胞培養液の量の決定、および細胞不含リパーゼの調製は、基質として酪酸p-ニトロフェニル(p-NPD)を用いて、相当する試験法セクションに記載の分光光度的活性アッセイによって測定された。
【0031】
[0031]そのポリペプチドが、少なくとも1種類の長鎖多価不飽和脂肪酸を含むオイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解する、ポリペプチドを発現する宿主細胞は好ましくは、好気性発酵の能力がある宿主である。宿主細胞はさらに好ましくは、エタノール、および乳酸、酢酸もしくはギ酸などの有機酸、およびフルフラールおよびヒドロキシメチルフルフラールなどの糖分解生成物に対する高い耐性を有する。宿主細胞のこれらの特徴および活性は、宿主細胞に天然に存在するか、あるいは遺伝子修飾によって導入または修飾され得る。適切な宿主細胞は、細菌または真菌のような微生物であるが、宿主細胞として最も適しているのは、酵母または糸状菌である。酵母は本明細書において、真核微生物として定義され、単細胞形で主に成長するエウミコティナ(Eumycotina)亜門のすべての種(Alexopoulos,C.J.,1962,In:Introductory Mycology,John Wiley&Sons,Inc.,New York)を含む。酵母は、単細胞葉状体の出芽によって成長するか、または生体の分裂によって成長し得る。宿主細胞として好ましい酵母は、サッカロミセス属(Saccharomyces)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、カンジダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)、シゾサッカロミケス属(Schizosaccharomyces)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、クロエケラ属(Kloeckera)、シュワンニオマイセス属(Schwanniomyces)、ゲオトリキア属(Geotrichia)、およびヤロウイア属(Yarrowia)に属する。
【0032】
[0032]好ましい実施形態において、核酸構築物は、リパーゼ酵素などのポリペプチドを産生し、細胞からそれを排出する能力を宿主細胞に与える。形質転換された宿主細胞は、酵母の培養のためにデザインされた種々の培地で成長する能力を有する。したがって、本発明の形質転換宿主細胞は、プラスミドのデザインおよび培養条件に依存する特定の活性レベルにて細胞外でリパーゼを発現する。
【0033】
[0033]上述のように、本発明の核酸構築物での宿主細胞の形質転換、および宿主細胞、好ましくは酵母の更なる遺伝子修飾は、当技術分野でよく知られている方法によって行うことができる。かかる方法は例えば、Sambrook and Russel(2001)“Molecular cloning:A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press、またはF.Ausubel et al,eds.,“Current protocols in molecular biology”,Green Publishing and Wiley Interscience,New York(1987)などの標準的専門書から知られている。真菌宿主細胞を形質転換および遺伝子修飾する方法は、例えば欧州特許出願公開第0635574号明細書、国際公開第98/46772号パンフレット、国際公開第99/60102号パンフレットおよび国際公開第00/37671号パンフレットから知られている。
【0034】
[0034]一部の実施形態において、核酸構築物は、リパーゼをコードし、かつ宿主細胞の形質転換に使用される、ポリヌクレオチド配列を含む。核酸構築物において、リパーゼをコードするポリヌクレオチド配列は好ましくは、宿主細胞におけるポリヌクレオチド配列の転写をコントロールおよび開始するための、プロモーターに作動可能に連結される。プロモーターは好ましくは、リパーゼを産生し、かつ細胞からそれを排出する能力を宿主細胞に付与するのに十分に、宿主細胞においてリパーゼを発現させることができる。好ましくは、プロモーターは、宿主細胞におけるリパーゼ産生を最大にする。本発明の核酸構築物において有用なプロモーターは、構成的および誘導性天然プロモーターならびに改変(engineered)プロモーターを含む。これらの特徴を有するプロモーターは、広く入手可能であり、当業者に公知である。かかるプロモーターの適切な例としては、例えば、糖分解遺伝子からの酵母プロモーター、例えば酵母ホスホフルクトキナーゼ(PPK)、トリオースホスフェートイソメラーゼ(TPI)、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GPD、TDH3またはGAPDH)、ピルビン酸キナーゼ(PYK)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、TEF1-α遺伝子プロモーター、PHO90、TH11、およびAODプロモーターが挙げられ;かかるプロモーターについてのより詳細な内容は(国際公開第93/03159号パンフレット)に記載されている。他の有用なプロモーターは、リボソームタンパク質をコードする遺伝子プロモーター、ラクターゼ遺伝子プロモーター(LAC4)、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター(ADH1、ADH4等)、およびエノラーゼプロモーター(ENO)である。最も好ましいのは、ピキア(Pichia)発現ベクターpD912(強いメタノール誘導性AOXプロモーター)およびピキア(Pichia)発現ベクターpD915(中程度に強い構成的GAPプロモーター)からのプロモーターである。構成的かつ誘導性の他のプロモーター、およびエンハンサーまたは上流活性化配列は、当業者には知られている。所望の場合には、その制御特性に影響を及ぼすように、本発明の核酸構築物において使用されるプロモーターを修飾してもよい。好ましくは、リパーゼの発現のために、核酸構築物において使用されるプロモーターは、リパーゼイソメラーゼが発現される、宿主細胞と相同している。
【0035】
[0035]核酸構築物において、リパーゼをコードするヌクレオチド酸配列の3’末端は好ましくは、培養上清への組換えリパーゼの分泌を可能にする、分泌因子配列に作動可能に連結され、続いて、リパーゼのエクスポートで切断される。好ましくは、分泌因子配列は、例えば、選択される酵母種など、選択される宿主細胞において作動可能である。分泌因子は時に、非酵母、真核生物遺伝子由来である場合に機能するが、因子の選択が重要ではない場合には、それは例えば、いずれかの酵母遺伝子由来であり得る。分泌因子配列はさらに好ましくは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のα接合因子を含む。
【0036】
[0036]任意選択的に、選択マーカーが、核酸構築物に存在し得る。本明細書で使用される、「マーカー」という用語は、マーカーを含有する宿主細胞の選択、またはスクリーニングを可能にする、形質または表現型をコードする遺伝子を意味する。そのマーカー遺伝子は抗生物質耐性遺伝子であってもよく、それによって、適切な抗生物質を使用して、形質転換されていない細胞の中から形質転換細胞を選択することができる。適切な抗生物質耐性マーカーの例としては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素、ハイグロマイシン-B-ホスホトランスフェラーゼ、ゼオシン(zeocin)、3’-О-ホスホトランスフェラーゼII(カナマイシン、ネオマイシンおよびG418耐性)が挙げられる。抗生物質耐性マーカーの使用は、倍数性宿主細胞の形質転換には最も簡便であり得るが、好ましくは、栄養要求性マーカー(URA3、TRP1、LEU2)またはS.pombe TPI遺伝子(Russell P R,1985,Gene 40:125-130に記述されている)などの非抗生物質耐性マーカーが使用される。核酸構築物で形質転換された宿主細胞は、マーカー遺伝子不含であり得る。組換えマーカー遺伝子不含の微生物宿主細胞を構築する方法は、欧州特許出願公開第0635574号明細書に開示されており、二方向性マーカー、例えばアスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)amdS(アセトアミダーゼ)遺伝子または酵母URA3およびLYS2遺伝子の使用に基づく。代替方法としては、緑色蛍光タンパク質、lacZ、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β-グルクロニダーゼなどのスクリーニング可能な(screenable)マーカーが、本発明の核酸構築物に組み込まれ、形質転換細胞のスクリーニングが可能となる。
【0037】
[0037]本発明の核酸構築物中に存在し得る、任意選択の更なる要素としては、限定されないが、1つまたは複数のリーダー配列、エンハンサー、組み込み(integration)因子、および/またはレポーター遺伝子、イントロン配列、セントロメア、テロマーおよび/またはマトリックス結合(MAR)配列が挙げられる。本発明の核酸構築物はさらに、ARS配列などの自律的増殖のための配列を含み得る。適切なエピソーム核酸構築物は、例えば酵母2.mu.またはpKDl(Fleer et al.,1991,Biotechnology 9:968-975)プラスミドをベースとし得る。代替方法として、核酸構築物は、好ましくは相同的組換えによる組み込みのための配列を含み得る。したがって、かかる配列は、宿主細胞のゲノムにおける組み込みのための標的部位と相同な配列であり得る。本発明の核酸構築物は、それ自体が公知の手法で提供することができ、その手法は一般に、Sambrook and Russel(2001)“Molecular cloning:A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press、またはF.Ausubel et al,eds.,“Current protocols in molecular biology”,Green Publishing and Wiley Interscience,New York(1987)など、標準的な専門書に言及されている、核酸/核酸配列の制限および連結などの技術を含む。
【0038】
[0038]一実施形態において、本発明は、ポリペプチドを発現する宿主細胞であって、そのポリペプチドが、少なくとも1種類の長鎖多価不飽和脂肪酸を含むオイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解する、宿主細胞に関する。
【0039】
[0039]他の実施形態において、本発明は、ポリペプチドを発現する宿主細胞を使用する方法であって、そのポリペプチドが、少なくとも1種類の長鎖多価不飽和脂肪酸を含むオイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解する、方法に関する。
【0040】
[0040]一部の実施形態において、宿主細胞は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の同一性を有するポリペプチドを発現し、そのポリペプチドは、少なくとも1種類の長鎖多価不飽和脂肪酸を含むオイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解する。一部の実施形態において、宿主細胞は、配列番号1のアミノ酸配列と90~99%、91~99%、92~99%、93~99%、94~99%、95~99%、96~99%、97~99%、または98~99%の同一性を有するポリペプチドを発現し、そのポリペプチドは、少なくとも1種類の長鎖多価不飽和脂肪酸を含むオイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解する。
【0041】
[0041]他の実施形態において、宿主細胞は、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の同一性を有するポリペプチドを発現し、そのポリペプチドは、少なくとも1種類の長鎖多価不飽和脂肪酸を含むオイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解する。一部の実施形態において、宿主細胞は、配列番号2のアミノ酸配列と90~99%、91~99%、92~99%、93~99%、94~99%、95~99%、96~99%、97~99%、または98~99%の同一性を有するポリペプチドを発現し、そのポリペプチドは、少なくとも1種類の長鎖多価不飽和脂肪酸を含むオイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解する。
【0042】
[0042]他の実施形態において、宿主細胞は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の同一性を有するポリペプチドを発現し、そのポリペプチドは、少なくとも1種類の長鎖多価不飽和脂肪酸を含むオイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解する。一部の実施形態において、宿主細胞は、配列番号3のアミノ酸配列と90~99%、91~99%、92~99%、93~99%、94~99%、95~99%、96~99%、97~99%、または98~99%の同一性を有するポリペプチドを発現し、そのポリペプチドは、少なくとも1種類の長鎖多価不飽和脂肪酸を含むオイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解する。
【0043】
[0043]一部の実施形態において、そのポリペプチドはリパーゼである。好ましい実施形態において、ポリペプチドはリパーゼのアイソフォームである。さらに好ましい実施形態において、ポリペプチドは、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)またはゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum)に由来するアイソフォームである。
【0044】
[0044]一部の実施形態において、オイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解するポリペプチドはリパーゼである。好ましい実施形態において、オイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解するポリペプチドは、リパーゼのアイソフォームである。さらに好ましい実施形態において、オイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解するポリペプチドは、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)またはゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum)に由来するリパーゼのアイソフォームである。
【0045】
[0045]一部の実施形態において、宿主細胞は酵母である。好ましい実施形態において、宿主細胞はピキア・パストリス(Pichia pastoris)である。
【0046】
[0046]一実施形態において、リパーゼは、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)に由来するアイソフォームの混合物である。好ましい実施形態において、リパーゼは、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)に由来するアイソフォームである。さらに好ましい実施形態において、リパーゼはカンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)アイソフォームリパーゼ1、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)アイソフォームリパーゼ3、およびそれらの混合物である。一実施形態において、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)アイソフォームリパーゼ1は、配列番号1のアミノ酸配列を有する。一実施形態において、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)アイソフォームリパーゼ3は、配列番号3のアミノ酸配列を有する。
【0047】
[0047]一実施形態において、リパーゼは、ゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum)に由来するアイソフォームの混合物である。好ましい実施形態において、リパーゼは、ゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum)に由来するアイソフォームである。さらに好ましい実施形態において、リパーゼは、ゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum)アイソフォームリパーゼ2である。一実施形態において、ゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum)アイソフォームリパーゼ2は、配列番号3のアミノ酸配列を有する。
【0048】
[0048]一部の実施形態において、トリアシルグリセロールは、少なくとも1種類の長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)を含む。一部の実施形態において、LC-PUFAは、オメガ-3脂肪酸、オメガ-6脂肪酸、およびそれらの混合物を含む。好ましい実施形態において、LC-PUFAは、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、アラキドン酸(ARA)、γ-リノレン酸(GLA)、ジホモ-γ-リノレン酸(DGLA)、ステアリドン酸(SDA)、およびそれらの混合物を含む。さらに好ましい実施形態において、LC-PUFAは、DHA、EPA、およびそれらの混合物を含む。更なる実施形態において、LC-PUFAはDHAである。また更なる実施形態において、LC-PUFAはEPAである。
【0049】
[0049]一部の実施形態において、宿主細胞は酵母である。好ましくは、酵母は、好気性発酵することができる。一実施形態において、宿主細胞は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)である。他の実施形態において、宿主細胞は大腸菌(Escherichia coli)である。
【0050】
[0050]一部の実施形態において、そのオイルは、魚油などの海産オイルに由来し得る。かかるオイルは通常、飽和および不飽和脂肪酸、それらのエステルおよびグリセリドの混合物を含有するが、処理して、脂肪酸(例えば、すべての飽和、すべての不飽和、両方の混合物、または特定の鎖長もしくは特定の鎖長の範囲の脂肪酸との混合物を含有する)の特定の混合物を得ることができる。開示される化合物および方法においていずれの魚油も使用することができる。適切な魚油の例としては、限定されないが、大西洋魚油、太平洋魚油、地中海魚油、ライトプレス(light pressed)魚油、アルカリ処理魚油、熱処理魚油、淡茶色および濃茶色の魚油、カツオ油、ピルチャード油、マグロ油、シーバス油、ハリバ油、フウライカジキ油、バラクーダ油、タラ油、メンハーデン油、イワシ油、アンチョビ油、カラフトシシャモ油、ニシン油、タイセイヨウサバ油、サケ油およびサメ油、それらの混合物およびそれらの組み合わせなどが挙げられる。非アルカリ処理魚油も適している。本明細書で使用するのに適している他の海産オイルとしては、限定されないが、イカ油、コウイカ油、タコ油、オキアミ油、アザラシ油、鯨油、それらの混合物およびそれらの組み合わせなどが挙げられる。海産オイルおよび海産オイルの組み合わせは、開示の組成物において、かつそれを製造する開示の方法において使用することができる。更なるオイルとしては、藻類オイル(例えば、クリプテコディニウム・コニー(Crypthecodinium cohnii)、ピシウム(Phythium)などの渦鞭毛藻類由来のオイル)である微生物オイル、真菌オイル(例えば、トラウストキトリウム(Thraustochytrium)、シゾキトリウム(Schizochytrium)、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)由来のオイル、またはそれらの混合物)である微生物オイル、および/または植物油、それらの混合物および組み合わせが挙げられる。好ましい実施形態において、オイルは粗製または未精製オイルである。
【0051】
[0051]一実施形態において、リパーゼであるポリペプチドを生成するプロセスは、以下の工程:a)形質転換された宿主細胞を培地中で発酵させて、本明細書で定義される、リパーゼであるポリペプチドを産生および排出し、それによって、宿主細胞が発酵し、リパーゼであるポリペプチドを同時に産生および排出する工程;および任意選択的に、b)リパーゼであるポリペプチドを回収する工程;を含む。その発酵プロセスは好ましくは、形質転換された宿主細胞に最適な温度で実施される。したがって、大部分の酵母または真菌宿主細胞に関して、発酵プロセスは、38℃未満の温度で行われる。酵母または線維状真菌宿主細胞については、発酵プロセスは好ましくは、35、33、30または28℃より低い温度で、かつ20、22、または25℃よりも高い温度で行われる。当業者に公知の様々な培地組成物によって、プロセス工程を向上させるために、発酵培地をさらに最適化してもよい。好ましい実施形態において、リパーゼであるポリペプチドは、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼ1、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼ3、およびゲオトリクム・カンジダ(Geotrichum Candida)リパーゼ2からなる群から選択される。
【0052】
[実施例]
[試験方法]
[0052]分光光度的活性アッセイ:リパーゼの活性を決定するために、37℃での分光光度的アッセイを用い、そのアッセイではp-ニトロフェニルエステルが加水分解される。形成されたp-ニトロフェノールによって生じる410nmでの吸光度の増加が測定され、酵素活性と相関する。1活性単位(U)は、用いられる条件下にてp-ニトロフェノール1μmol/分を生成する酵素の量として定義される。したがって、適切な希釈液中に100mM MOPSバッファー、pH7.5、0.24mM p-ニトロフェニルエステルおよびCFE38μl/mlを含有する反応混合物、ならびにCFEの代わりにバッファーを含有するブランクを用い、吸光度の変化を5分間記録した。このΔabs/分に基づいて、容量活性(U/ml、等式1参照)およびタンパク質特異的活性(U/mg総タンパク質、等式2)を計算することができる。可溶性タンパク質画分を含有するCFE(可溶性(Soluble))および総タンパク質を含有するCFE(総(Total))を測定した。最初の事例では、酪酸p-ニトロフェニル(pNPB)を基質として使用した。
【数1】
【0053】
[0053]遊離脂肪酸の決定:遊離脂肪酸のパーセンテージ(%FFA)を決定するために、Titrino 718での終点滴定を用いた。溶媒(トルエン/イソプロパノール/水=500/500/10)50mlをフェノールフタレイン(イソプロパノール中0.8%(w/w))2滴と混合し、溶液の色が10~15秒間ピンク色を維持するまで、0.15M KOH(水50mlにKOH10.0gを溶解し、エタノール950mlで満たした)で滴定した。力価を決定するために、既知量の安息香酸をその溶液に添加し、滴定した。力価を等式3に示すように計算し、さらに計算するために、3つの独立的な力価決定値の平均を用いた。試料の測定のために、試料の既知量の油層をピンク色の溶媒に添加し、十分に混合し、滴定してピンク色に戻した。FFAのパーセンテージを等式4に示すように計算した。
【数2】
【0054】
[0054]LC-MSによる、油相(グリセロール)中のEPAおよびDHA濃度の決定:EPAおよびDHA濃度を分析するために、油層約40mgをテトラヒドロフラン25mlに溶解し、さらに1:4に希釈した。LC-MSによって、かかる装置の通常のプロトコルに従って、試料を分析した。使用したカラムは、プレカラムVanGuardを備えたWaters Acquity UPLC BEH C18(50×2.1mm、内径1.8μm)であった。DHAおよびEPAに対してそのシステムを較正した。両方の化合物に対して較正曲線を作成した。その結果から、EPAおよびDHAがはっきりと分離し、したがって、それぞれの遊離脂肪酸を正確に計算することが可能であることが分かった。
【0055】
[実施例1-ピキア・パストリス(Pichia pastoris)におけるカンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼアイソフォームの発現]
[0055]タンパク質-MSシーケンシングによって、2つの市販のカンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼ、Amano AYおよびBioCataysts Lipomod 034におけるアイソフォームを測定した。5CRアイソフォームを見つけ、両方のリパーゼにおいて同定された2つの主要なアイソフォームはCR Lip1およびCR Lip3であった。5つのアイソフォームすべての遺伝子を作成し、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)における発現に関してDNA2.0(カリフォルニア州メンローパーク(Menlo Park,CA))によってコドン最適化した。培養上清への組換えリパーゼの分泌を可能にするサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のα接合因子遺伝子に、リパーゼ遺伝子を融合した。天然タンパク質のエクスポートでα接合因子が切断された。1つはAOXプロモーター(pD912)を有し、もう1つはGAPプロモーター(pD915)を有する2種類の発現ベクターを作成し、個々にそれぞれが、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)ヘクローニングされた。pD912において、対象の遺伝子は下流で、かつα因子と融合して、クローニングされ、強いメタノール誘導性AOXプロモーターの制御下にある。pD915において、対象の遺伝子は下流で、かつα因子と融合してクローニングされ、中程度に強い構成的GAPプロモーターの制御下にある。pD912およびpD915の両方に関して、zeocinが選択マーカーであり、ピキア(Pichia)ゲノムに組み込まれると、大腸菌(E.coli)における増殖に必要なpUC開始点は除去された。DNA構築物のうちの10をDNA2.0(カリフォルニア州メンローパーク)によって作成し、DNA2.0によって作成された2つのベクターそれぞれで使用した。ポジティブコントロールも使用した(DNA2.0からのpJ912_クチナーゼ)。
【0056】
[カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼアイソフォーム遺伝子を含有する、ピキア(Pichia)発現ベクターpD912およびpD915での大腸菌(E.coli)の形質転換]
[0056]
ピキア・パストリス(P.pastoris)の形質転換のために、多量のプラスミドDNAが必要である。DNA2.0によって作成されたプラスミドDNAは大腸菌(E.coli)において増殖された。コンピテントセルを作成した。得られたストックをグリセロールストックに変換し、残りの培養物を使用して、プラスミドDNAを抽出した。
【0057】
[大腸菌(E.coli)からのプラスミド-DNAの抽出]
[0057]キアゲン社(Qiagen)からの標準プロトコル(「Qiagen Plasmid Midi Kitを使用したプラスミドDNAの精製」)を用いて、残りの培養物からのプラスミド-DNAの抽出を達成した。得られたプラスミドDNAを0.8%アガロースゲル上で分析し、DNA濃度を測定した。その結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
[カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼアイソフォーム遺伝子を含有するpD912およびpD915でのピキア・パストリス(Pichia pastoris)PPS9010の形質転換]
[0058]プラスミド直鎖化:増殖され、したがってより多い量で利用可能なプラスミドは、直鎖化しなければならなかった(直鎖状DNAは、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)の形質転換に必要である)。直鎖化のために、以下の制限酵素が使用された:pD912-構築物には、SacIが使用され(インキュベーション温度37℃)、pD915-構築物には、SwaIが使用された(インキュベーション温度25℃)。
【0060】
[0059]DNA(Midiprepから得られた)20μgに、10×バッファー10μlおよび制限酵素2.5μlを添加した。混合物を水で満たして100μlにした。制限酵素に適した温度でインキュベーションを2時間行った。次いで、混合物を65℃で20分間曝露することによって、酵素を不活性化した。混合物1μlを0.8%アガロースゲル上で分析し、制限が成功したことが検証された。以下の供給元のマニュアルによってQuiagen PCR Purification Kitを使用して、得られた直鎖化DNAを精製した。精製後、DNA濃度を測定した。その結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
[ピキア・パストリス(Pichia pastoris)コンピテントセルの作成]
[0060]白金耳を使用して、グリセロールストックからのピキア・パストリス(Pichia pastoris)PPS9010細胞をYPD培地5mlに接種し、30℃および180rpmにて一晩インキュベートした。この培養物を使用して、新鮮YPD培地100mlをOD6000.15~0.2に接種し、次いで、これを30℃および120rpmにてインキュベートした。OD600が1.3~1.5に達したら、培養物を2本の50ml Falconチューブに満たし、500*gにて4℃で10分間遠心した。上清をデカントし、廃棄した。氷冷の滅菌、超純水50mlにペレットを再懸濁し、500*gにて4℃で5分間遠心した。この上清もデカントし、廃棄した。再び、氷冷の滅菌、超純水50mlにペレットを再懸濁し、500*gにて4℃で5分間遠心した。この上清もデカントし、廃棄した。次いで、この細胞を氷冷の滅菌1Mソルビトール20mlに再懸濁し、500*gにて4℃で5分間遠心した。再び、上清をデカントし、廃棄した。次いで、細胞を最後に、1Mソルビトール250μlに再懸濁した。
【0063】
[コンピテントなピキア・パストリス(Pichia pastoris)の形質転換]
[0061]作成されたピキア(Pichia)コンピテント細胞を直鎖化プラスミドで形質転換し、上述のように大腸菌(E.coli)を使用してその量を増大した。ピキア(Pichia)コンピテント細胞100μlに、直鎖化プラスミド(2~4μg)10μlを添加し、ギャップ2mmの電気穿孔キュベットに懸濁液を移した。細胞を氷上で5分間インキュベートし、1500V、200Ω、25μFで電気穿孔処理した。この混合物に、氷冷の1Mソルビトール1mlを添加し、混合物を30℃で1時間インキュベートした。次いで、混合物を1000*gで21℃にて5分間遠心し、上清をデカントした。上清の残りの液滴中にペレットを再懸濁した。200μg/mlのゼオシン(zeocin)を有するYPD培地5mlにそれぞれのコロニーを白金耳で移し、28℃および180rpmにて一晩インキュベートした。長期間貯蔵するために、培養液1mlを50%グリセロール0.5mlと混合し、室温で15分間振とうし、-80℃で貯蔵した。
【0064】
[クローンの発現および活性の検証]
[0062]トリブチリン寒天平板アッセイおよびSDS-PAGE分析をすべての試料で行い、試験されたすべてのクローンがトリブチリンに対する活性を示すこと、および予想されるリパーゼバンドが確認されることを検証した。培養物の活性は、基質としてp-NPDを用いて分光光度的活性アッセイによって測定された。試料のタンパク質含有量は、標準手順に従ってブラッドフォード(Bradford)試薬によって分析された。この結果から、CR Lip1クローンがリパーゼの高レベルの発現を有することが分かった。CR Lip5クローンのいずれについても、活性は検出されず、いくつかのCR Lip3クローンおよびCR Lip4クローンについては、中程度の活性が測定された。CR Lip2クローンの活性は一般に非常に低い。振とうフラスコ発現には、より一定の成長条件を受け、したがってより信頼できるデータを得られるように行う必要があった。
【0065】
[AOXおよびGAP構築物の振とうフラスコ発現]
[0063]AOX-構築物の振とうフラスコ発現に関して、バッフルを備えた300mlフラスコ中のBMGY培地25mlに、グリセロールストックを用いて接種した。この前培養物を28℃で110rpmにて24時間インキュベートした。細胞を遠心(3000*g、5分、室温)することによって収集し、BMMY培地50mlに再懸濁し、バッフルおよび気泡プラグ(foam plug)を備えた1000mlフラスコに満たした。発現のために、培養物を28℃および110rpmにて96時間インキュベートした。誘導を維持するため、メタノール250μlを1日に1回添加した。96時間後、培養物を遠心し(3000*g、5分、4℃)、上清を別のチューブに移し、それを-20℃で保存した。
【0066】
[0064]GAP-構築物の振とうフラスコ発現に関して、バッフルを備えた300mlフラスコ中のYPD培地25mlに、グリセロールストックを用いて接種した。この前培養物を28℃で110rpmにて一晩インキュベートした。細胞を遠心(3000*g、5分、室温)することによって収集し、YPD培地100mlに再懸濁し、バッフルおよび気泡プラグを備えた1000mlフラスコに満たした。発現のために、培養物を28℃および110rpmにて96時間インキュベートした。96時間後、培養物を遠心し(5000*g、10分、4℃)、上清を別のチューブに移し、それを-20℃で保存した。
【0067】
[分光光度的活性アッセイ]
[0065]上述の分光光度的活性アッセイによって、培養物の上清の活性を測定した。基質として、p-NPD(p-ニトロフェニルデカノエート)を使用した。
【0068】
[0066]以下の標準手順に従ってブラッドフォード試薬によって、試料のタンパク質含有量を分析した。総タンパク質中の試料の特異的活性(U/mg)をアルカリゲネス属(Alcaligness sp.)由来の他の市販の4種のリパーゼ(Al-1、Al-2、Al-3およびAl-4)および市販のCRL製剤(preparation)L11の活性と比較した。その結果を表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
[実施例2-ピキア・パストリス(P.pastoris)および大腸菌(E.coli)における発現レベルの比較]
[0067]比較のために、大腸菌(Escherichia coli)におけるリパーゼアイソフォームの発現も実施した。遺伝子構築物をDNA2.0から合成DNAとしてオーダーし、ネオマイシン耐性遺伝子を保持する発現ベクターにおいてクローニングし;対象の遺伝子は、pBADプロモーターを介してL-アラビノースによって誘導される。その結果を表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
[実施例3-カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼの加水分解の実験]
[0068]魚油の加水分解について、実施例1に従って作成されたカンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼアイソフォームを試験するために、pH-スタット装置で滴定なしで40mlスケールにて、35℃での反応をセットアップした。Amanoから市販のカンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼAY-30(CRL11と呼ばれる)を比較用リパーゼとして使用した。CR Lip2およびCR Lip5の活性が乏しいため、CR Lip1、CR Lip3およびCR Lip4のみを使用した。魚油濃度は50%(v/v)であった。CR Lip1およびCR Lip4については、市販のリパーゼの0.1%(w/w)E/Sに相当する、8.6U(p-NPD活性に基づく)/魚油(g)を用いた。バッファーとして、50mM KPi(pH7.5)を使用した。酵素の量が少ないために、CR Lip3の酵素濃度は、6.8U/魚油(g)に制限され、CR Lip2の酵素濃度は、0.9U(市販のリパーゼの0.01%(w/w)E/Sに相当する)に制限された。
【0073】
[0069]可能である場合には、酵素を添加する前に、pHをモニターしながら、pH-スタットにおいて約30分間、魚油をバッファーと共に2000rpmにて攪拌した。酵素を添加することによって反応を開始した後、0時間、1時間、4時間、18時間および24時間の異なる時点で試料2mlを採取した。これらの試料を、遊離脂肪酸(FFA)の濃度およびEPAおよびDHA濃度に関して分析した。油層にすべての遊離脂肪酸を取り入れるために、エマルジョンを3M HClで酸性化し、よく混合し、遠心して、層を分離した。必要であれば、60℃のオーブン内で数分加熱することによって、試料を液化した。
【0074】
[0070]加水分解の結果を表5および6に示し、反応の転化および選択性を例証する。反応が転化率100%まで行われると、すべての選択性がすべての酵素によって失われると予想されるため、比較のために、転化の程度を用いて、市販の比較例CRL11試料の選択性をCR Lip1、CR Lip3およびCR Lip4試料と比較した。したがって、反応時間ではなく、比較のためのマイルストーン(milestone)として比較の程度を用いることが有用である。反応の時間は様々な酵素アイソフォームで異なると予想され、反応の時間は、多くの様々な条件によって最適化することができるため、反応時間は当然、確実に確認されるように記録されるが、比較のためのマイルストーンとして使用されない。
【0075】
【表5】
【0076】
【表6】
【0077】
[実施例4-ゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum)リパーゼ加水分解実験]
[0071]これらの実施例において、ゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum)由来のリパーゼをコードするポリヌクレオチド配列が同定され、上記の実施例1に記載のようにピキア・パストリス(Pichia pastoris)において発現された。Amanoから市販のカンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼAY-30(CRL11と呼ばれる)を比較用リパーゼとして使用した。
【0078】
[0072]それぞれの試料(GC Lip1、GC Lip2およびCRL11)について、以下のプロセスを用いた:魚油約20g、0.95mg/mLリパーゼ溶液3mL、およびBESバッファー(50mM、pH7.0)12.0mLを100mLフラスコに入れ、37℃、360rpmにてNガス下にて攪拌した。上述の方法で酸価をモニターすることによって、反応の進行をモニターした。遊離脂肪酸の決定。85℃に10分間加熱することによって、反応を止めた。混合物をブライン25mL、水25mLで洗浄し、真空下(1トル)にてオイルを乾燥させた。グリセリドおよび脂肪酸を以下のように分離した:ヘキサン75mLおよび酢酸エチル25mLにオイル10gを添加した。次いで、有機層を0.5M水酸化ナトリウム40mLとエタノール40mLの溶液で2回抽出した。次いで、上部の有機層を水で洗浄し、減圧下にて溶媒を除去し、高真空下にて乾燥させて、グリセリドを得た。次いで、下のアルカリ層を3M HClでpH1に酸性化し、ヘキサン75mLおよびクロロホルム75mLで抽出し、合わせた有機物を蒸発させて、脂肪酸層を得た。EP2.4.29法によって、分離されたグリセリドおよび脂肪酸の脂肪酸プロファイルを決定した。結果を表7および8に示す。
【0079】
[0073]GC Lip2と、EPA約22%およびDHA10%を含有するオイル組成物とを使用して、実験を繰り返し行った。その結果を表9および10に示す。
【0080】
【表7】
【0081】
【表8】
【0082】
【表9】
【0083】
【表10】
【0084】
好適な実施形態
1.配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%同一性を有するポリペプチドを発現する宿主細胞であって、前記ポリペプチドが、少なくとも1種類の長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)を含むオイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解する、宿主細胞。
2. 前記宿主細胞がピキア・パストリス(Pichia pastoris)である、実施形態1に記載の宿主細胞。
3.前記ポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列と90~99%の同一性を有する、実施形態1または2に記載の宿主細胞。
4.前記ポリペプチドがリパーゼである、実施形態1~3のいずれか一つに記載の宿主細胞。
5.前記ポリペプチドが、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)アイソフォームリパーゼ1である、実施形態1~4のいずれか一つに記載の宿主細胞。
6.前記ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列を有する、実施形態5に記載の宿主細胞。
7.前記ポリペプチドが、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)アイソフォームリパーゼ3である、実施形態1~4のいずれか一つに記載の宿主細胞。
8.前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸配列を有する、実施形態7に記載の宿主細胞。
9.前記ポリペプチドが、ゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum)アイソフォームリパーゼ2である、実施形態1~4のいずれか一つに記載の宿主細胞。
10.前記ポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列を有する、実施形態9に記載の宿主細胞。
11.前記長鎖多価不飽和脂肪酸が、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、およびそれらの組み合わせを含む、実施形態1~10のいずれか一つに記載の宿主細胞。
12.前記オイルが粗製または未精製オイルである、実施形態1~11のいずれか一つに記載の宿主細胞。
13.前記オイルが海産オイルである、実施形態1~12のいずれか一つに記載の宿主細胞。
14.配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するポリペプチドを発現する宿主細胞を使用する方法であって、前記ポリペプチドが、少なくとも1種類の長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)を含むオイル中のトリアシルグリセロールのエステル結合を加水分解する、方法。
15.前記宿主細胞がピキア・パストリス(Pichia pastoris)である、実施形態14に記載の方法。
16.前記ポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列と90~99%の同一性を有する、実施形態14または15に記載の方法。
17.前記ポリペプチドがリパーゼである、実施形態14~16のいずれか一つに記載の方法。
18.前記ポリペプチドがカンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)アイソフォームリパーゼ1である、実施形態14~17のいずれか一つに記載の方法。
19.前記ポリペプチドが配列番号1のアミノ酸配列を有する、実施形態18に記載の方法。
20.前記ポリペプチドがカンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)アイソフォームリパーゼ3である、実施形態14~17のいずれか一つに記載の方法。
21.前記ポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列を有する、実施形態20に記載の方法。
22.前記ポリペプチドが、ゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum)アイソフォームリパーゼ2である、実施形態14~17のいずれか一つに記載の方法。
23.前記ポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸配列を有する、実施形態22に記載の方法。
24.前記多価不飽和脂肪酸が、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、およびそれらの組み合わせを含む、実施形態14~23のいずれか一つに記載の方法。
25.前記オイルが粗製または未精製オイルである、実施形態14~24のいずれか一つに記載の方法。
26.前記オイルが海産オイルである、実施形態14~25のいずれか一つに記載の方法。
【配列表】
2022046487000001.app
【外国語明細書】