(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046510
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】血清アルブミン結合フィブロネクチンIII型ドメイン
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20220315BHJP
C07K 14/78 20060101ALI20220315BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220315BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220315BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220315BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220315BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220315BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220315BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20220315BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220315BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/78 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K47/64
A61K47/42
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021199610
(22)【出願日】2021-12-08
(62)【分割の表示】P 2018562935の分割
【原出願日】2017-06-01
(31)【優先権主張番号】62/345,190
(32)【優先日】2016-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】ディーム,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブス,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】オニール,キャリン
(72)【発明者】
【氏名】ルツコスキ,トーマス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】診断および治療上の用途において、分子の半減期を延長するのに有用である、血清アルブミンと特異的に結合するフィブロネクチンIII型ドメイン(FN3)、血清アルブミン特異的FN3ドメインをコードする能力を有する関連ポリヌクレオチド、FN3ドメインを発現する細胞、ならびに関連ベクター、検出可能に標識されたFN3ドメイン、および異種部分に融合したFN3ドメインを提供する。
【解決手段】単離されたフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインであって、前記FN3ドメインが、ヒト血清アルブミンのドメインIまたはIIIに特異的に結合し、前記FN3ドメインの血清半減期が、特定の配列のアミノ酸配列を有するTencon25タンパク質の血清半減期よりも少なくとも10倍高い、単離されたFN3ドメインを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインであって、前記FN3ドメイ
ンが、ヒト血清アルブミンのドメインIまたはIIIに特異的に結合し、前記FN3ドメ
インの血清半減期が、配列番号67のアミノ酸配列を有するTencon25タンパク質
の血清半減期よりも少なくとも10倍高い、単離されたFN3ドメイン。
【請求項2】
カニクイザル血清アルブミンと交差反応する、請求項1に記載の単離されたFN3ドメ
イン。
【請求項3】
a.配列番号1のTenconアミノ酸配列もしくは配列番号4のTencon27ア
ミノ酸配列に基づき、配列番号1の前記アミノ酸配列もしくは配列番号4の前記アミノ酸
配列が、残基位置11、14、17、37、46、73、および/もしくは86において
置換を任意選択的に有する、または
b.配列番号2、3、5、6、7、もしくは8のアミノ酸配列を含むライブラリーから
単離された、
請求項1に記載の単離されたFN3ドメイン。
【請求項4】
配列番号1のTenconアミノ酸配列と比較して、Cストランド、CDループ、Fス
トランド、および/またはFGループ内に修飾されたアミノ酸配列を含む、請求項1に記
載の単離されたFN3ドメイン。
【請求項5】
配列番号51のアミノ酸配列と90%同一である、または配列番号55のアミノ酸配列
と比較したとき、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、もし
くは14個の置換を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から4のいずれかに記載の単離
されたFN3ドメイン。
【請求項6】
配列番号51~53からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の
単離されたFN3ドメイン。
【請求項7】
前記FN3ドメインの血清半減期が、配列番号67のTencon25アミノ酸配列を
含むタンパク質の血清半減期よりも少なくとも10倍高い、請求項4から6のいずれか一
項に記載の単離されたFN3ドメイン。
【請求項8】
前記FN3ドメインの血清半減期が、カニクイザルにおいて少なくとも約25時間であ
る、請求項4から7のいずれか一項に記載の単離されたFN3ドメイン。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のFN3ドメインをコードする、単離されたポリ
ヌクレオチド。
【請求項10】
請求項9に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項11】
請求項10に記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項12】
FN3ドメインを産生する方法であって、請求項11に記載の単離された宿主細胞を、
前記FN3ドメインが発現するような条件下で培養すること、および前記FN3ドメイン
を精製することを含む、方法。
【請求項13】
請求項1から8のいずれか一項に記載のFN3ドメインと、薬学的に許容される担体と
を含む、医薬組成物。
【請求項14】
生体サンプル中のヒト血清アルブミンの存在を検出する方法であって、前記生体サンプ
ルを、請求項1から8のいずれか一項に記載のFN3ドメインと接触させること、および
前記生体サンプルと前記FN3ドメインとの結合を評価することを含む、方法。
【請求項15】
請求項1から8のいずれかに記載のFN3ドメインを含む、キット。
【請求項16】
第1のFN3ドメインと第2のFN3ドメインとを含む単離された二重特異性FN3分
子であって、前記第1のFN3ドメインが、請求項1から8のいずれか一項に記載のFN
3ドメインと結合し、それを含み、前記第2のFN3ドメインが、ヒト血清アルブミン以
外の標的タンパク質と結合する、単離された二重特異性FN3分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、本明細書に、
その全体が参照により組み込まれている。2017年5月31日に作成された前記ASC
IIコピーの名称は、JBI5089WOPCT.txtであり、そのサイズは49,2
28バイトである。
【0002】
技術分野
本発明は、血清アルブミンに特異的に結合するフィブロネクチンIII型(FN3)ド
メインに関する。そのようなFN3ドメインは、例えば、それにコンジュゲートしている
薬物またはタンパク質のin vivoでの血清半減期を延長するのに利用され得る。そ
のような分子の製造方法およびそれらを含む医薬組成物も提供される。
【0003】
背景
生物学的治療用分子が血流から急速に除去されると、このような分子の臨床的有効性を
限定的にする原因となり得、またはより高頻度での患者への投薬をもたらし得る。一般的
に生ずる除去方式の1つとして、糸球体濾過に起因する腎クリアランスが挙げられる。腎
臓濾過速度は50,000ダルトンより大きい分子量を有する分子では大幅に低減するの
で、この除去経路は、より小型の生物学的製剤と最も関連性が高い(Kontermann, Curr O
pin Biotechnol 2011)。いくつかの承認された生物学的治療用薬物は、それ自体が濾過
限界を下回り、したがって迅速に排除される活性な部分を含有する。この限界を克服する
ために、治療用分子サイズを有効に増加させて腎臓濾過を低減させるいくつかの技術が導
入されている。
【0004】
ヒト血清アルブミン(HSA)を付加する治療用タンパク質の修飾が、タンパク質の流
体力学的半径を増加させ、糸球体濾過を低減させるのに有効な手段であることが示されて
いる。HSAは、FcRnのリサイクリングに起因するin vivoでの長期半減期を
示し、HSAは約40g/Lの濃度を有し、血液中に見出される最も豊富なタンパク質で
ある。FcRnのリサイクリングは、ヒトでは約19日間の長期半減期をもたらす。さら
に、生体分布試験より、アルブミンは、身体内において、標的とする疾患にとって重要な
エリア、例えば炎症性の関節または腫瘍に分布する可能性があることが示唆される(Wund
er, Muller-Ladner, Stelzer, Funk, Neumann, Stehle, Pap, Sinn, Gay and Fiehn, J I
mmunol 170: 4793-4801 2003)。したがって、いくつかのタンパク質を、HSAとのC末
端またはN末端融合体として産生させることにより、そのようなタンパク質の血清半減期
が増加した。融合に成功したものとして、とりわけ、インターフェロンアルファ(Flisia
k and Flisiak, Expert Opin Biol Ther 10: 1509-1515 2010)、ヒト成長ホルモン(Osb
orn, Sekut, Corcoran, Poortman, Sturm, Chen, Mather, Lin and Parry, Eur J Pharma
col 456: 149-158 2002)、腫瘍壊死因子(Muller, Schneider, Pfizenmaier and Wajant
, Biochem Biophys Res Commun 396: 793-799 2010)、凝固因子IX(Metzner, Weimer,
Kronthaler, Lang and Schulte, Thromb Haemost 102: 634-644 2009)、凝固因子VI
Ia(Schulte, Thromb Res 122 Suppl 4: S14-19 2008)、インスリン(Duttaroy, Kana
karaj, Osborn, Schneider, Pickeral, Chen, Zhang, Kaithamana, Singh, Schulingkamp
, Crossan, Bock, Kaufman, Reavey, Carey-Barber, Krishnan, Garcia, Murphy, Siskin
d, McLean, Cheng, Ruben, Birse and Blondel, Diabetes 54: 251-258 2005)、ウロキ
ナーゼ(Breton, Pezzi, Molinari, Bonomini, Lansen, Gonzalez De Buitrago and Prie
to, Eur J Biochem 231: 563-569 1995)、ヒルジン(Sheffield, Smith, Syed and Bhak
ta, Blood Coagul Fibrinolysis 12: 433-443 2001)、および二重特異性抗体断片(Mull
er, Karle, Meissburger, Hofig, Stork and Kontermann, J Biol Chem 282: 12650-1266
0 2007)が挙げられる。HSA融合タンパク質は、長い血清半減期を有し得るが、ただし
そのような融合タンパク質の大スケール製造は、真核生物発現系に限定される。さらに、
HSAはサイズが大きいので、立体障害に起因する治療薬の活性喪失を引き起こし得る。
【0005】
アルブミンの長い血清半減期の利益を享受する代替的方法として、血液中の血清アルブ
ミンに結合するペプチドまたはタンパク質ドメインとの融合体として治療用タンパク質を
作り出すことが挙げられる。このような分子は、様々な親和性でアルブミンに結合するよ
うに選択可能であり、融合タンパク質がアルブミンと結合し、そして定義されたin v
ivoでの速度および滞留時間でそれから放出するのを可能にする。例えば、異なる種の
アルブミンに結合する一連のシステインコンストレインドペプチド(cysteine-constrain
ed peptide)を選択するのに、ファージディスプレーが使用された。このペプチドとの融
合体としてFab抗体断片を発現させると、マウスおよびウサギにおけるFabの血清半
減期が有意に増加した(Dennis, Zhang, Meng, Kadkhodayan, Kirchhofer, Combs and D
amico, J Biol Chem 277: 35035-35043 2002)(米国特許出願公開第200402532
47号明細書)。後続する試験より、このペプチドを抗体断片と融合させると、同じ抗原
を標的とするFabおよびmAb分子と比較して、腫瘍蓄積ピークがより良好となり、ま
た腫瘍分布がより均質となることを示した(Dennis, Jin, Dugger, Yang, McFarland, Og
asawara, Williams, Cole, Ross and Schwall, Cancer Res 67: 254-261 2007)(米国特
許出願公開第20050287153号明細書)。アルブミンと特異的に結合するいくつ
かの抗体断片が、同様に選択されている。HSAと結合するラクダ類VHH抗体断片(ナ
ノボディー)を、TNF-アルファと結合する別のナノボディーに融合させた。この分子
の血清半減期は、マウスにおいて54分から2.2日に延長し、そして関節リウマチのマ
ウスモデルにおいて炎症性の関節への蓄積および有効性を示した(Coppieters, Dreier,
Silence, de Haard, Lauwereys, Casteels, Beirnaert, Jonckheere, Van de Wiele, Sta
elens, Hostens, Revets, Remaut, Elewaut and Rottiers, Arthritis Rheum 54: 1856-1
866 2006)。同じアルブミン結合性ナノボディーを、抗EGFRナノボディーに融合させ
たが、その結果、異種移植モデルにおいて半減期が増加し、腫瘍蓄積の良化をもたらした
(Tijink, Laeremans, Budde, Stigter-van Walsum, Dreier, de Haard, Leemans and va
n Dongen, Mol Cancer Ther 7: 2288-2297 2008)。同様に、アルブミンに結合する抗ア
ルブミンドメイン抗体(dAb)が生成された。このようなdAbsをインターロイキン
-1受容体と融合させると、ラットにおいて半減期が2分から4.3時間に増加した(Ho
lt, Basran, Jones, Chorlton, Jespers, Brewis and Tomlinson, Protein Eng Des Sel
21: 283-288 2008)。また、この技術は、インターフェロンアルファ2bとの融合にも
適用された(Walker, Dunlevy, Rycroft, Topley, Holt, Herbert, Davies, Cook, Holme
s, Jespers and Herring, Protein Eng Des Sel 23: 271-278 2010)。同様の方式で、ア
ルブミンに対して親和性を有する細菌由来の天然アルブミン結合ドメインが、in vi
voでの半減期を延長するために検討された(Anderson et al. 2011, Orlova et al., 2
013, Malm et al., 2014)。Jacobsらは、コンセンサス設計された(consensus de
signed)アルブミン結合ドメインについて最近記載し、アルブミンに対する親和性に基づ
き血清曝露プロファイルを調節することについて、その可能性を実証した(Jacobs, Gibb
s, Conk, Yi, Maguire, Kane, O’Neil, Protein Eng Des Sel 10:385-93, 2015)。研究
ツールとして、それらの有用性は実証されているにもかかわらず、治療用途での、そのよ
うな細菌由来のドメインの有用性は、それらが免疫原性を有する可能性、および生じた抗
体による薬物排出により限定される可能性がある。
【0006】
したがって、治療薬の血清半減期を増加可能であり、望ましい生物物理学的特性(例え
ば、実質的に単量体で、十分に折り畳まれた状態等)を保持可能であり、コスト的に有効
な方式で製造可能であり、および組織透過を可能にするのに十分小型である血清アルブミ
ン結合分子が必要とされている。
【0007】
概要
本発明は、血清アルブミン結合フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインを含む。
また、提示されたFN3ドメインをコードする能力を有する関連ポリヌクレオチド、提示
されたFN3ドメインを発現する細胞、ならびに関連ベクターについても記載されている
。さらに、提示されたFN3ドメインを使用する方法について記載されている。例えば、
アルブミンの血清半減期が長いことを踏まえれば、アルブミン結合ペプチドは、血清半減
期が長い治療用タンパク質の構築において理想的な融合パートナーとなる。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明は、単離されたFN3ドメインを含み、該FN3ドメ
インは、ヒト血清アルブミンのドメインIまたはIIIと結合し、FN3ドメインの血清
半減期は、配列番号67のTencon配列の血清半減期よりも少なくとも10倍長い。
他の実施形態では、アルブミン特異的FN3ドメインは、ヒト血清アルブミンおよびカニ
クイザル血清アルブミンと結合する。なおも他の実施形態では、アルブミン特異的FN3
ドメインは、配列番号1のTencon配列に基づく。さらなる実施形態では、アルブミ
ン特異的FN3ドメインは、配列番号4のTencon27配列に基づく。いくつかの実
施形態では、アルブミン特異的FN3ドメインは、配列番号1または配列番号4に基づき
、任意選択的に、残基位置11、14、17、37、46、73、および/または86に
置換を有する。いくつかの実施形態では、アルブミン特異的FN3ドメインは、配列番号
2、3、5、6、7、または8の配列を含むライブラリーから単離される。
【0009】
いくつかの実施形態では、アルブミン特異的FN3ドメインは、配列番号1のTenc
on配列と比較して、C、CD、F、およびFGループ内に修飾されたアミノ酸配列を含
む。いくつかの実施形態では、アルブミン特異的FN3ドメインは、配列番号51~53
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、アルブミン特
異的FN3ドメインは、カニクイザルにおいて少なくとも約25時間の血清半減期を有す
る。
【0010】
記載されているアルブミン特異的FN3ドメインに加えて、記載されている抗体および
抗原結合断片をコードする能力を有するポリヌクレオチド配列も提供される。本明細書の
アルブミン特異的FN3ドメインを発現する細胞と同様に、記載されているポリヌクレオ
チドを含むベクターも提供される。開示されるベクターを発現する能力を有する細胞につ
いても記載されている。このような細胞は、哺乳動物細胞(例えば293F細胞、CHO
細胞)、昆虫細胞(例えばSf7細胞)、酵母菌細胞、植物細胞、または細菌細胞(例え
ば大腸菌(E. coli))であり得る。記載されているFN3ドメインの製造方法も提供さ
れる。
【0011】
本発明は、記載されているアルブミン特異的FN3ドメインを様々な分子に融合させ、
または、さもなければ会合させてそのような分子の半減期を延長する方法も含む。例えば
、血清アルブミンの血清半減期は長期化していることから、血清アルブミンは、血清半減
期が長い治療用タンパク質を構築するための理想的な融合パートナーとなる。したがって
、アルブミン特異的FN3ドメインは、治療用薬物の半減期を延長するのに有用である。
【0012】
一実施形態では、アルブミン特異的FN3ドメインを含む医薬組成物は、治療パートナ
ーのin vivoでの半減期を改善するために投与される。そのような半減期の延長は
、例えば、アルブミン結合FN3ドメインの薬物動態を監視することを含む、当技術分野
において公知の様々な方法によりアッセイ可能である。このような方法のための特異的ア
ッセイが実施例で提示される。
【0013】
本発明の範囲に含まれるものとして、開示されるアルブミン特異的(結合性)FN3ド
メインを含むキットが挙げられる。該キットは、本明細書に提示するアルブミン特異的F
N3ドメインを使用する方法、または当業者にとって公知のその他の方法を実施するのに
使用され得る。いくつかの実施形態では、記載されているキットは、本明細書に記載する
FN3ドメイン、および生体サンプル中のヒト血清アルブミンの存在を検出する際に使用
される試薬を含み得る。記載されているキットは、本明細書に記載するFN3ドメインの
うちの1つまたは複数、ならびに本明細書に記載するような、未使用時にFN3ドメイン
を収納する容器、固体支持体に固定されたFN3ドメインおよび/またはFN3ドメイン
の検出可能に標識された形態の使用説明書を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】アルブミン結合FN3ドメインを使用する、カニクイザルおよびヒト血清からの内因性アルブミンの間接的プルダウンを示す図である。アルブミンのドメイン1に結合するFN3ドメインを点線四角で示す;アルブミンのドメイン3に結合するFN3ドメインを実線四角で示す。すべての構築物は、1つのヌルFN3ドメイン(TC25)および1つのアルブミン結合FN3ドメインを用いた二重特異性遺伝子融合として調製される。
*ABDは、アルブミン結合ドメインを表す(J.T. Andersen, R. Pehrson, V. Tolmachev, M.B. Daba, L. Abrahmsen, C. Ekblad, J. Biol. Chem. 286:5234-5241 2011を参照)。
【
図2】1mg/kg(H9)または2mg/kg(ALB18、またはALB33)をIVで単回投与した後の、カニクイザルにおけるアルブミン結合FN3ドメインの薬物動態プロファイルを示す図である。
【0015】
実施形態の詳細な記述
定義
本記載の態様に関係する様々な用語が、本明細書および特許請求の範囲全体を通じて使
用される。そのような用語は、別途明示しない限り、当技術分野におけるそれらの通常の
意味を有する。他の特に定義された用語は、本明細書に提示する定義と整合するように解
釈される。
【0016】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1
つの(an)」、および「その(the)」には、記載内容が別途明確に定義しない限り複数
形の指示物が含まれる。したがって、例えば「細胞(a cell)」という場合、2つ以上の
細胞の組合せ等が含まれる。
【0017】
用語「約」は、本明細書で使用する場合、測定可能な数値、例えば量、時間等を指すと
き、所定の数値から最大±10%の変動を包含するように意図されており、したがって変
動は開示される方法を実施するのに適する。別途明示しない限り、本明細書および特許請
求の範囲で使用される成分の量、特性を表すすべての数字、例えば分子量、反応条件等は
、すべての事例において、用語「約」により修飾されるものと理解される。したがって、
そうでないと明示しない限り、下記の明細書および添付の特許請求の範囲に記載する数値
パラメーターは、本発明により取得されるように追及される所望の特性に依存して変化し
得る近似値である。最低限度において、また特許請求の範囲に対する同等物の原則の適用
に制限を加えるつもりもなく、各数値パラメーターは、報告された有効数字の数に照らし
、および通常の丸め技法を適用することにより、少なくとも解釈されるべきである。
【0018】
本発明の幅広い範囲を定める数値範囲およびパラメーターは近似であるものの、具体的
な実施例において記載される数値は、できる限り正確に報告されている。ただし、任意の
数値は、それらのそれぞれの試験測定に見出される標準偏差に必然的に起因する一定の誤
差を本質的に含有する。
【0019】
「単離された」とは、成分が自然に生ずる生物の他の生体成分、すなわち、他の染色体
および染色体外のDNAおよびRNA、ならびにタンパク質から実質的に分離した、それ
らとは区別して産生された、またはそれらを取り除いて精製された生体成分(例えば核酸
、ペプチド、またはタンパク質)を意味する。「単離された」核酸、ペプチド、およびタ
ンパク質には、したがって、標準精製法により精製された核酸およびタンパク質が含まれ
る。「単離された」核酸、ペプチド、およびタンパク質は、組成物の一部であり得、その
ような組成物が、核酸、ペプチド、またはタンパク質の本来の環境の一部でなくても、な
おも単離され得る。該用語は、宿主細胞内での組換え発現により調製された核酸、ペプチ
ド、およびタンパク質、ならびに化学的に合成された核酸も包含する。「単離された」F
N3ドメインは、本明細書で使用する場合、異なる抗原特異性を有するその他のFN3ド
メインを実質的に含まないFN3ドメインを指すように意図されている(例えば、ヒト血
清アルブミンに特異的に結合する単離されたFN3ドメインは、ヒト血清アルブミン以外
の抗原と特異的に結合するFN3ドメインを実質的に含まない)。ヒト血清アルブミンの
エピトープ、アイソフォーム、またはバリアントに特異的に結合する単離されたFN3ド
メインは、ただし、例えばその他の種に由来するその他の関連抗原(例えば、血清アルブ
ミンの種間相同体)と交差反応性を有してもよい。
【0020】
用語「フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン」(FN3ドメイン)とは、本明
細書で使用する場合、フィブロネクチン、テネイシン、細胞内の細胞骨格タンパク質、サ
イトカイン受容体、および原核生物の酵素を含むタンパク質において高頻度で生ずるドメ
インを意味する(Bork and Doolittle, Proc Nat Acad Sci USA 89:8990-8994, 1992; Me
inke et al., J Bacteriol 175:1910-1918, 1993; Watanabe et al., J Biol Chem 265:1
5659-15665, 1990)。例示的なFN3ドメインは、ヒトテネイシンC中に存在する15の
異なるFN3ドメインであり、この15の異なるFN3ドメインは、ヒトフィブロネクチ
ン(FN)、および例えば米国特許第8,278,419号明細書に記載されている非天
然の合成FN3ドメイン中に存在する。個々のFN3ドメインは、ドメイン番号とタンパ
ク質の名称により、例えば、テネイシンの第3のFN3ドメイン(TN3)、またはフィ
ブロネクチンの第10のFN3ドメイン(FN10)のように命名される。
【0021】
用語「特異的に結合する」または「特異的結合」とは、本明細書で使用する場合、約1
×10-6M以下、例えば、約1×10-7M以下、約1×10-8M以下、約1×10
-9M以下、約1×10-10M以下、約1×10-11M以下、約1×10-12M以
下、または約1×10-13M以下の解離定数(KD)で、事前に決定された抗原に結合
する本発明のFN3ドメインの能力を意味する。典型的には、記載されているFN3ドメ
インは、例えば、Proteon Instrument(BioRad)を使用する表
面プラズモン共鳴法により測定されるように、非特異的抗原(例えば、カゼイン)に対す
るそのKDよりも少なくとも1/10未満であるKDで、事前に決定された抗原(すなわ
ち、ヒト血清アルブミン)と結合する。ヒト血清アルブミンと特異的に結合する、記載さ
れているFN3ドメインは、ただしその他の関連抗原、例えばその他の種、例えばマカク
・ファシクラリス(Macaca Fascicularis)(カニクイザル、cyno)またはパン・ト
ログロダイト(Pan troglodytes)(チンパンジー)に由来する、同一の事前に決定され
た抗原(相同体)との交差反応性を有してもよい。
【0022】
「血清半減期」とは、本明細書で使用する場合、アミノ酸配列、化合物、またはポリペ
プチドの血清濃度が、例えば、天然の機構による配列もしくは化合物の分解、および/ま
たは配列もしくは化合物の排出もしくは隔離に起因して、in vivoで50%低減す
るのに要する時間として一般的に定義することができる。本発明のアミノ酸配列、化合物
、またはポリペプチドのin vivoでの半減期は、それ自体が公知である任意の方式
、例えば薬物動態分析により決定可能である。好適な技術は、当業者にとって明白であり
、また例えば、温血動物(すなわち、ヒト、または別の好適な哺乳動物、例えばマウス、
ウサギ、ラット、ブタ、イヌ、もしくは霊長類、例えば、マカク属(genus Macaca)(例
えば、特に、カニクイザル(マカク・ファシクラリス(Macaca fascicularis))および
/またはアカゲザル(マカク・ムラッタ(Macaca mulatta)))、ならびにヒヒ(パピオ
・ウルシヌス(Papio ursinus))に由来するサル)に、好適な用量の本開示のアミノ酸
配列、化合物、またはポリペプチドを好適に投与し;前記動物から血液サンプルまたはそ
の他のサンプルを収集し;前記血液サンプル中の本発明のアミノ酸配列、化合物、もしく
はポリペプチドのレベルまたは濃度を決定し;このようにして得られたデータ(のプロッ
ト)から、本発明のアミノ酸配列、化合物、またはポリペプチドのレベルまたは濃度が、
投薬時の初期のレベルと比較して50%低減するまでの時間を計算するステップを一般的
に含み得る。例えば、下記の実験パート、ならびに標準ハンドブック、例えばKenneth, A
et al: Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacists and Pe
ters et al, Pharmacokinete analysis: A Practical Approach (1996)等を参照されたい
。"Pharmacokinetics", M Gibaldi & D Perron, published by Marcel Dekker, 2nd Rev.
edition (1982)も参照されたい。
【0023】
当業者にとってやはり明白なように(例えば、国際公開第04/003019号パンフ
レットの6および7頁、ならびに同号で引用されたさらなる参考資料を参照)、半減期は
、パラメーター、例えばt1/2-アルファ、t1/2-ベータおよび曲線下面積(AU
C)を使用して表すことができる。本明細書では、「半減期」とは、このようなパラメー
ターのうちの任意の1つ、例えばこのようなパラメーターのうちの任意の2つ、または本
質的にこのようなパラメーターの3つすべての減少を意味する。
【0024】
用語「薬物動態(pharmacokinetics)」または「薬物動態学的(pharmacokinetic)」
は、その技術分野で受け入れられている意味に基づき使用され、身体内での薬物の作用、
例えば薬物作用の効果および期間、薬物が身体により吸収、分配、代謝、および除去され
る速度等の試験を意味する。
【0025】
用語「置換すること」もしくは「置換された」、または「変異すること」もしくは「変
異した」とは、本明細書で使用する場合、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列内の
1つもしくは複数のアミノ酸またはヌクレオチドを変化させ、削除し、または挿入して、
当該配列のバリアントを生成することを意味する。
【0026】
用語「ランダム化すること」もしくは「ランダム化」、または「多様化した」もしくは
「多様化すること」とは、本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドまたはポリペプチ
ド配列内に少なくとも1つの置換、挿入、または欠損を作出することを意味する。
【0027】
「バリアント」とは、本明細書で使用する場合、1つまたは複数の修飾、例えば置換、
挿入、または欠損により、参照ポリペプチドまたは参照ポリヌクレオチドと異なるポリペ
プチドまたはポリヌクレオチドを意味する。
【0028】
用語「ライブラリー」とは、バリアントの集合を意味する。ライブラリーは、ポリペプ
チドまたはポリヌクレオチドバリアントから構成され得る。
【0029】
「Tencon」とは、本明細書で使用する場合、配列番号1に示す、および米国特許
出願公開第2010/0216708号明細書に記載されている配列を有する合成フィブ
ロネクチンIII型(FN3)ドメインを意味する。
【0030】
「核酸分子」、「ヌクレオチド」、または「核酸」と同義的に呼ばれる「ポリヌクレオ
チド」とは、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを意味し
、非修飾型のRNAもしくはDNA、または修飾型のRNAもしくはDNAであり得る。
「ポリヌクレオチド」には、非限定的に、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本
鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、ならびに一本鎖および二本鎖
領域の混合物であるRNA、一本鎖もしくはより一般的には二本鎖、または一本鎖および
二本鎖領域の混合物であり得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子が含まれる。
さらに、「ポリヌクレオチド」とは、RNAもしくはDNA、またはRNAおよびDNA
の両方を含む三重鎖領域を意味する。ポリヌクレオチドという用語には、1つもしくは複
数の修飾された塩基を含有するDNAまたはRNA、および安定性またはその他の理由に
より修飾された骨格を有するDNAまたはRNAも含まれる。「修飾された」塩基として
、例えば、トリチル化された塩基およびまれな塩基、例えばイノシンが挙げられる。様々
な修飾をDNAおよびRNAに加えることができ;したがって、「ポリヌクレオチド」は
、一般的に天然において見出されるような化学的、酵素的、または代謝的に修飾された形
態のポリヌクレオチド、ならびにウイルスおよび細胞に特有の化学的形態のDNAおよび
RNAを包含する。また「ポリヌクレオチド」は、多くの場合オリゴヌクレオチドと呼ば
れる比較的短い核酸の鎖も包含する。
【0031】
「ベクター」は、レプリコン、例えばプラスミド、ファージ、コスミド、またはウイル
スであり、その中に別の核酸セグメントが、該セグメントの複製または発現を引き起こす
ために作動可能に挿入され得る。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」は、任意の種類の細胞、例えば、初代細胞
、培養中の細胞、または細胞株由来の細胞であり得る。特別な実施形態では、用語「宿主
細胞」とは、核酸分子がトランスフェクトされた細胞、およびそのような細胞の子孫また
は潜在的子孫を意味する。そのような細胞の子孫は、例えば、後継世代において生ずる可
能性がある変異もしくは環境影響、または宿主細胞ゲノム内への核酸分子の組み込みに起
因して、核酸分子がトランスフェクトされた親細胞と同一でない可能性がある。用語「発
現」および「産生」は、本明細書では同義的に使用され、遺伝子産物の生合成を指す。こ
のような用語は、RNAへの遺伝子の転写を包含する。またこのような用語は、1つまた
は複数のポリペプチドへのRNAの翻訳も包含し、またあらゆる天然の転写後および翻訳
後修飾をさらに包含する。抗体またはその抗原結合断片の発現または産生は、細胞の細胞
質内、または細胞外環境、例えば細胞培養の増殖培地内であり得る。「実質的に同一」の
意味は、該用語が使用される文脈に応じて異なる可能性がある。天然に生ずる配列変動が
重鎖および軽鎖ならびにそれらをコードする遺伝子において存在する可能性があるので、
本明細書に記載するアミノ酸配列または抗体もしくは抗原結合断片をコードする遺伝子に
おいて、それらの固有の結合特性(例えば、特異性および親和性)にほとんどまたはまっ
たく影響を与えることのない、あるレベルの変動が見出されるものと予想される。そのよ
うな予想は、遺伝子コードの縮重、ならびに保存的なアミノ酸配列変動の進化的奏功に一
部起因し、これらはコードされたタンパク質の性質を目立つ程に変化させることはない。
【0033】
開示されるFN3ドメインの概要
Tencon(配列番号1)は、ヒトテネイシン-Cに由来する15のFN3ドメイン
のコンセンサス配列から設計された、非天然型のフィブロネクチンIII型(FN3)ド
メインである(Jacobs et al., Protein Engineering, Design, and Selection, 25:107-
117, 2012;米国特許出願公開第2010/0216708号明細書)。Tenconの結
晶構造は、FN3ドメインに特徴的である7つのベータ-ストランド、すなわちA、B、
C、D、E、F、およびGと呼ばれるベータ-ストランドを結びつける6つの表面露出型
ループを示し、該ループはAB、BC、CD、DE、EF、およびFGループと呼ばれる
(Bork and Doolittle, Proc Natl Acad Sci USA 89:8990-8992, 1992;米国特許第6,6
73,901号明細書)。このようなループまたは各ループ内の選択された残基は、血清
アルブミンと結合する新規分子を選択するのに使用され得るフィブロネクチンIII型(
FN3)ドメインのライブラリーを構築するためにランダム化され得る。表1は、Ten
con(配列番号1)内の各ループおよびベータ-ストランドの位置および配列を示す。
【0034】
Tencon配列に基づき設計されたライブラリーは、したがってランダム化したFG
ループ、またはランダム化したBCおよびFGループ、例えば以下に記載するようなライ
ブラリーTCL1またはTCL2を有し得る。Tencon BCループは長さが7アミ
ノ酸であり、したがって1、2、3、4、5、6、または7個のアミノ酸が、Tenco
n配列に基づき設計された、BCループにおいて多様化しているライブラリー内でランダ
ム化され得る。Tencon FGループは長さが7アミノ酸であり、したがって1、2
、3、4、5、6、または7個のアミノ酸が、FGループにおいて多様化している、およ
びTencon配列に基づき設計されたライブラリー内でランダム化され得る。Tenc
onライブラリー内のループにおけるさらなる多様性は、ループでの残基の挿入および/
または欠損により達成され得る。例えば、FGループおよび/またはBCループは、アミ
ノ酸1~22個分延長され得る、またはアミノ酸1~3個分減少し得る。Tencon内
のFGループは長さが7アミノ酸であり、抗体重鎖内の対応するループは4~28残基の
範囲である。多様性を最大にするために、長さの範囲が4~28残基の抗体CDR3に対
応するように、FGループを配列ならびに長さにおいて多様化させることができる。例え
ば、FGループは、1、2、3、4、または5個の追加のアミノ酸によりループを延長す
ることで、長さにおいてさらに多様化可能である。
【0035】
Tencon配列に基づき設計されたライブラリーは、FN3ドメインの側面に形成さ
れ、そして2個以上のベータストランド、および少なくとも1つのループを含むランダム
化された代替表面も有し得る。1つのそのような代替表面は、CおよびFのベータ-スト
ランドならびにCDおよびFGのループ内のアミノ酸により形成される(C-CD-F-
FG表面)。Tenconの代替的C-CD-F-FG表面に基づくライブラリー設計は
、米国特許出願公開第2013/0226834号明細書に記載されている。Tenco
n配列に基づき設計されたライブラリーには、Tenconバリアント、例えば残基位置
11、14、17、37、46、73、または86(配列番号1に対応する残基ナンバリ
ング)に置換を有するTenconバリアント、およびどのバリアントが熱安定性の改善
を示すかに基づき設計されたライブラリーも含まれる。例示的なTenconバリアント
が、米国特許出願公開第2011/0274623号明細書に記載されており、配列番号
1のTenconと比較したとき、置換E11R、L17A、N46V、およびE86I
を有するTencon27(配列番号4)を含む。
【0036】
【0037】
Tenconおよびその他のFN3配列に基づくライブラリーは、ランダムな、または
定義された一連のアミノ酸を使用して、選択した残基位置においてランダム化され得る。
例えば、ランダムな置換を有するライブラリー内のバリアントは、20種類すべての天然
アミノ酸をコードするNNKコドンを使用して生成され得る。他の多様化スキームでは、
DVKコドンが、アミノ酸Ala、Trp、Tyr、Lys、Thr、Asn、Lys、
Ser、Arg、Asp、Glu、Gly、およびCysをコードするのに使用され得る
。あるいは、NNSコドンは、20種類すべてのアミノ酸残基を生じさせ、同時に終止コ
ドンの頻度を低減させるのに使用され得る。多様化される位置においてアミノ酸分布が偏
っているFN3ドメインのライブラリーが、例えば、Slonomics(登録商標)技
術(http:_//www_sloning_com)を使用して合成され得る。この技術は、数千もの遺伝子
合成プロセスにとって十分なユニバーサル構成ブロックとして作用する既製の二本鎖トリ
プレットのライブラリーを使用する。トリプレットライブラリーは、任意の所望のDNA
分子を構築するのに必要な、考えられ得るすべての配列の組合せを代表する。コドンの名
称は、周知のIUBコードに基づく。
【0038】
スキャフォールドタンパク質をコードするDNA断片を、RepAをコードするDNA
断片にライゲートして、in vitroでの翻訳後に形成されたタンパク質-DNA複
合体(この場合、各タンパク質は、該タンパク質をコードするDNAと安定的に会合して
いる)のプールを生成するために、cisディスプレーを使用して、FN3ライブラリー
、例えばTenconライブラリーを生成すること(米国特許第7,842,476号明
細書;Odegrip et al., Proc Natl Acad Sci U S A 101, 2806-2810, 2004)、および当
技術分野において公知であり、また実施例に記載する任意の方法により該ライブラリーを
ヒト血清アルブミンとの特異的結合についてアッセイすることにより、本明細書に記載す
る、ヒト血清アルブミンと特異的に結合するFN3ドメインが単離され得る。使用可能で
ある例示的な周知の方法としては、ELISA、サンドイッチイムノアッセイ法、ならび
に競合的および非競合的アッセイ法がある(例えば、Ausubel et al., eds, 1994, Curre
nt Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参
照)。ヒト血清アルブミンに特異的に結合する、同定されたFN3ドメインは、所望の特
徴に基づきさらに特徴づけられる。
【0039】
本明細書に記載する、ヒト血清アルブミンと特異的に結合するFN3ドメインは、テン
プレートとして任意のN3ドメインを使用してライブラリーを生成し、該ライブラリーを
本文書内で提供される方法を使用してヒト血清アルブミンと特異的に結合する分子につい
てスクリーニングして、生成され得る。使用され得る例示的なFN3ドメインは、テネイ
シンCの第3のFN3ドメイン(TN3)(配列番号68)、フィブコン(Fibcon)(配
列番号69146)、およびフィブロネクチンの第10のFN3ドメイン(FN10)(
配列番号70)である。標準的なクローニングおよび発現技術が、ライブラリーをベクタ
ー中にクローン化して、またはライブラリーの二本鎖cDNAカセットを合成して、ライ
ブラリーをin vitroで発現もしくは翻訳するのに使用される。例えば、リボソー
ムディスプレー(Hanes and Pluckthun, Proc Natl Acad Sci USA, 94, 4937-4942, 1997
)、mRNAディスプレー(Roberts and Szostak, Proc Natl Acad Sci USA, 94, 12297
-12302, 1997)、またはその他の無細胞系(米国特許第5,643,768号明細書)が
使用可能である。FN3ドメインバリアントのライブラリーが、例えば、任意の適するバ
クテリオファージの表面に提示される融合タンパク質として発現され得る。バクテリオフ
ァージの表面に融合ポリペプチドを提示する方法は周知されている(米国特許出願公開第
2011/0118144号明細書;国際公開第2009/085462号パンフレット
;米国特許第6,969,108号明細書;同第6,172,197号明細書;同第5,
223,409号明細書;同第6,582,915号明細書;同第6,472,147号
明細書)。
【0040】
本明細書に記載するいくつかの実施形態では、ヒト血清アルブミンと特異的に結合する
FN3ドメインは、配列番号1のTencon配列、または配列番号4のTencon2
7配列に基づき、配列番号1または配列番号4は、任意選択的に、残基位置11、14、
17、37、46、73、および/または86に置換を有する。
【0041】
本開示のヒト血清アルブミンと特異的に結合するFN3ドメインは、それらの特性を改
善する、例えば熱安定性、および熱フォールディングとアンフォールディングとの可逆性
を改善するために修飾され得る。高度に耐熱性の類似した配列との比較に基づく合理的な
設計、ジスルフィド架橋を安定化させる設計、アルファ-ヘリックスの性質を増大する変
異、塩橋のエンジニアリング、タンパク質の表面電荷の変更、指向性進化、およびコンセ
ンサス配列の構成を含むいくつかの方法が、タンパク質および酵素の見かけの熱安定性を
増加させるのに適用されてきた(Lehmann and Wyss, Curr Opin Biotechnol, 12, 371-37
5, 2001)。高温での安定性は、発現タンパク質の収率を増大し、溶解度または活性を改
善し、免疫原性を減少させ、および製造におけるコールドチェーンの必要性を最低限にす
る可能性がある。Tencon(配列番号1)の熱安定性を改善するために置換され得る
残基は、残基位置11、14、17、37、46、73、または86であり、米国特許出
願公開第2011/0274623号明細書に記載されている。このような残基に対応す
る置換は、本発明の分子を含有するFN3ドメインに組み込まれ得る。
【0042】
タンパク質の安定性およびタンパク質の易変性を測定すれば、タンパク質の完全性につ
いて、その同一の側面または異なる側面が見えてくる。タンパク質は、熱、紫外線または
電離照射を原因とする変性、液体溶液中では周囲の浸透圧およびpHの変化、微細ポアサ
イズ濾過により引き起こされた機械的剪断力、紫外線照射、ガンマ線照射等による電離照
射、化学的脱水もしくは加熱脱水、またはタンパク質の構造破壊の原因となり得る任意の
他の作用もしくは力に対して感受性が高い、または「不安定」である。分子の安定性は、
標準的な方法を使用して決定可能である。例えば、分子の安定性は、標準的な方法を使用
して、熱融解(「Tm」)温度、分子の半分が折り畳まれていない状態となるセルシウス
(℃)で表される温度を測定することにより決定可能である。一般的に、Tmが高いほど
、分子の安定性が高まる。熱に付加して、化学的環境もまた特定の3次元構造を維持する
タンパク質の能力を変化させる。
【0043】
一実施形態では、本開示のヒト血清アルブミンと特異的に結合するFN3ドメインは、
Tmの増加により測定したとき、エンジニアリング前の同一のドメインと比較して、少な
くとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50
%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95
%以上増大した安定性を示し得る。
【0044】
化学的変性は、様々な方法により同様に測定可能である。化学的変性剤として、グアニ
ジニウム塩酸塩、グアニジニウムチオシアン酸塩、尿素、アセトン、有機溶媒(DMF、
ベンゼン、アセトニトリル)、塩(硫酸アンモニウム、臭化リチウム、塩化リチウム、臭
化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム);還元剤(例えば、ジチオスレイトー
ル、ベータ-メルカプトエタノール、ジニトロチオベンゼン、および水素化物、例えば水
素化ホウ素ナトリウム)、非イオン性およびイオン性界面活性剤、酸(例えば、塩酸(H
Cl)、酢酸(CH3COOH)、ハロゲン化酢酸)、疎水性分子(例えば、リン脂質)
、および標的型変性剤が挙げられる。変性度の定量は、機能的特性、例えば標的分子と結
合する能力の喪失、または物理化学的特性、例えば凝集傾向、今まで溶媒が接近不可能な
残基の露出、またはジスルフィド結合の破壊もしくは形成に立脚することができる。
【0045】
本開示のFN3ドメインは、単量体、二量体、または多量体として、例えば標的分子結
合の結合価、したがってアビディティーを増加させる手段、または2つ以上の異なる標的
分子と同時に結合する二重もしくは多重特異性スキャフォールドを生成する手段として生
成され得る。二量体および多量体は、例えば、アミノ酸リンカー、例えば、ポリ-グリシ
ン、グリシンおよびセリン、またはアラニンおよびプロリンを含有するリンカーの組入れ
により、単一特異性、二重または多重特異性タンパク質スキャフォールドを連結させるこ
とにより生成され得る。例示的なリンカーとして、(GS)2、(配列番号54)、(G
GGS)2(配列番号55)、(GGGGS)5(配列番号56)、(AP)2(配列番
号57)、(AP)5(配列番号58)、(AP)10(配列番号59)、(AP)20
(配列番号60)、およびA(EAAAK)5AAA(配列番号61)が挙げられる。二
量体および多量体は、NからC方向で相互に連結し得る。天然ならびに人工ペプチドリン
カーを使用してポリペプチドを結びつけ、新規連結型融合ポリペプチドにすることは、文
献で周知されている(Hallewell et al., J Biol Chem 264, 5260-5268, 1989; Alfthan
et al., Protein Eng. 8, 725-731, 1995; Robinson & Sauer, Biochemistry 35, 109-11
6, 1996;米国特許第5,856,456号明細書)。
【0046】
ヒト血清アルブミン結合体
FN3ドメインは、それらのサイズが約10kDaと小さいことに起因する腎臓濾過、
および分解により循環から急速に排出される。ある特定の側面では、本開示は、血清アル
ブミン、例えばヒト血清アルブミン(HSA)と特異的に結合してFN3ドメインの半減
期を延ばすFN3ドメインを提供する。
【0047】
記載されているアルブミン特異的FN3ドメインは、ヒト血清アルブミンのドメインI
またはIIIに結合し、配列番号67のTencon配列の血清半減期と比較して、それ
より少なくとも10倍より高い血清半減期を有し、これによりそれとコンジュゲートした
薬物またはタンパク質のin vivoでの血清半減期を延長する効率的な手段を提供す
る。
【0048】
いくつかの実施形態では、単離されたFN3ドメインは、配列番号62のヒト血清アル
ブミンのドメインIに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、単離されたFN3ド
メインは、配列番号62のヒト血清アルブミンのドメインIIIに特異的に結合する。い
くつかの実施形態では、アルブミン特異的抗体は、配列番号67のTencon配列の血
清半減期と比較して、それより少なくとも10倍より高い血清半減期を有する。
【0049】
いくつかの実施形態では、記載されているFN3ドメインは、配列番号63のマカク・
ファシクラリス(Macaca Fascicularis)(カニクイザル)の血清アルブミンと交差反応
する。
【0050】
いくつかの実施形態では、ヒト血清アルブミン結合FN3ドメインは、分子のN末端に
連結したイニシエータメチオニン(Met)を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、ヒト血清アルブミン結合FN3ドメインは、FN3ドメイン
のC末端に連結したシステイン(Cys)を含む。
【0052】
N末端Metおよび/またはC末端Cysの付加は、半減期延長分子の発現および/ま
たはコンジュゲーションを促進する可能性がある。
【0053】
いくつかの実施形態では、単離されたFN3ドメインは、配列番号51、52、または
53のアミノ酸配列を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、単離されたFN3ドメインは、配列番号51のアミノ酸配列
と90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、単離されたFN3ドメインは、配列番号51のアミノ酸配列
と比較したときに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、ま
たは14個の置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、ヒト血清アルブミンと特異的に結合する単離されたFN3ド
メインは、配列番号1の残基位置6、11、22、25、26、52、53、61に対応
する少なくとも1つの残基位置、またはC末端にシステイン残基を含む。
【0057】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載する単離されたFN3ドメインは、配列番号
51~53に記載する配列を含み得るが、その場合、Cストランド、CDループ、Fスト
ランド、およびFGループは、記載されているアルブミン特異的FN3ドメイン配列のい
ずれかに由来する特定のCストランド、CDループ、Fストランド、およびFGループの
それぞれのセット(すなわち、配列番号51~53)、または4コアFN3ドメイン配列
のCストランド、CDループ、Fストランド、およびFGループ配列と少なくとも85%
、90%、95%、97%、98%、もしくは99%同一の配列と置き換える。
【0058】
いくつかの実施形態では、単離されたアルブミン特異的FN3ドメインは、配列番号5
1に記載する配列を含む。このアルブミン特異的FN3ドメインは、ヒト血清アルブミン
のドメインIまたはIIIと結合し得る。このアルブミン特異的FN3ドメインは、配列
番号67のTencon配列の血清半減期と比較して、少なくとも10倍より高い血清半
減期を有し得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、単離されたアルブミン特異的FN3ドメインは、配列番号5
2に記載する配列を含む。このアルブミン特異的FN3ドメインは、ヒト血清アルブミン
のドメインIまたはIIIと結合し得る。このアルブミン特異的FN3ドメインは、配列
番号67のTencon配列の血清半減期と比較して、少なくとも10倍より高い血清半
減期を有し得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、単離されたアルブミン特異的FN3ドメインは、配列番号5
3に記載する配列を含む。このアルブミン特異的FN3ドメインは、ヒト血清アルブミン
のドメインIまたはIIIと結合し得る。このアルブミン特異的FN3ドメインは、配列
番号67のTencon配列の血清半減期と比較して、少なくとも10倍より高い血清半
減期を有し得る。
【0061】
ヒト血清アルブミン特異的FN3ドメインの融合
本開示の1つの態様は、血清アルブミン結合FN3ドメインおよび少なくとも1つの追
加部分を含むコンジュゲートを提供する。追加部分は、あらゆる診断上、画像化上、また
は治療上の目的に有用であり得る。
【0062】
ある特定の実施形態では、記載されているFN3ドメインに融合した部分の血清半減期
は、FN3ドメインにコンジュゲートしていないときの該部分の血清半減期と比較して、
それより増加している。ある特定の実施形態では、FN3ドメイン融合体の血清半減期は
、記載されているFN3ドメインと融合していないときの該部分の血清半減期と比較して
、それより少なくとも20、40、60、80、100、120、150、180、20
0、400、600、800、1000、1200、1500、1800、1900、2
000、2500、または3000%より長い。他の実施形態では、FN3ドメイン融合
体の血清半減期は、記載されているFN3ドメインと融合していないときの該部分の血清
半減期を、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5
倍、6倍、7倍、8倍、10倍、12倍、13倍、15倍、17倍、20倍、22倍、2
5倍、27倍、30倍、35倍、40倍、または50倍上回る。いくつかの実施形態では
、FN3ドメイン融合体の血清半減期は、カニクイザルでは少なくとも2時間、2.5時
間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、15時間、
20時間、25時間、30時間、35時間、または40時間である。
【0063】
したがって、本明細書にも記載されている、記載されているFN3ドメイン融合分子は
、治療部分と記載されているFN3ドメインとの間の融合を形成することにより、該治療
部分の半減期を増加させるのに有用である。そのような融合分子は、融合体に含有される
治療部分の生物学的活性に応答する状態を治療するのに使用され得る。本開示は、下記の
タンパク質または分子のいずれかの異常調節により引き起こされた疾患での、記載されて
いるFN3ドメイン融合分子の使用について検討する。
【0064】
異種部分
いくつかの実施形態では、記載されているFN3ドメインは、低有機分子、核酸、また
はタンパク質である第2の部分に融合している。いくつかの実施形態では、記載されてい
るFN3ドメインは、受容体、受容体リガンド、ウイルス外被タンパク質、免疫系タンパ
ク質、ホルモン、酵素、抗原、または細胞シグナル伝達タンパク質を標的とする治療部分
に融合している。融合体は、第2の部分を、記載されているFN3ドメインのいずれかの
端部に、すなわち、FN3ドメイン-治療分子、または治療分子-FN3ドメインの配置
で結合させることにより形成され得る。
【0065】
他の例示的な実施形態では、記載されているFN3ドメインは、1つまたは複数の追加
のFN3ドメインに融合している。例えば、記載されているFN3ドメインは、1、2、
3、4個以上の追加のFN3ドメインに融合し得る。追加のFN3ドメインは、同一の標
的または血清アルブミン以外の異なる標的と結合し得る。
【0066】
ある特定の実施形態では、本出願は、式:FN3-X Y、またはY-X FN3(式
中、FN3は本明細書に記載するようなFN3ドメインであり(任意のN末端および/ま
たはC末端延長部分を含む)、Xiはポリペプチドリンカーであり(適するリンカーとし
て、例えば、配列番号54~61のうちのいずれか1つが挙げられる)、およびYは本明
細書に記載するような治療部分である)により表され得るFN3-Y融合体を提供する。
【0067】
ある特定の実施形態では、本出願は、式:FN3-Xi-Cys-X2-Y、またはY
-Xi-Cys-X2-FN3(式中、FN3は本明細書に記載するような単離されたF
N3ドメインであり(任意のN末端および/またはC末端延長部分を含む)、Xiは任意
選択的なポリペプチドリンカーであり(適するリンカーとして、例えば、配列番号54~
61のうちのいずれか1つが挙げられる)、Cysはシステイン残基であり、X2は化学
的に誘導されたスペーサーであり、Yは本明細書に記載するような治療部分である)によ
り表され得るFN3-Y融合体を提供する。例示的な実施形態では、化学的に誘導された
スペーサーは、本明細書でさらに記載されるマイケル付加反応により、治療部分を記載さ
れているFN3ドメインのC末端Cysとコンジュゲートさせる、または記載されている
FN3ドメインを治療部分のC末端Cysとコンジュゲートさせるのに使用され得るマレ
イミド部分を包含する。他の側面では、記載されているFN3ドメインは、2つ以上の治
療部分と結合し得る。例えば、2つの部分は、様々な配置で、例えば、融合配列のN末端
からC末端へ、X-Y-FN3、X-FN3-Y、またはFN3-X-Yで、記載されて
いるFN3ドメインと結合可能であり、ここで、XおよびYは2つの異なる治療部分を表
す。2つの異なる治療部分は、本明細書に開示の部分のいずれかから選択され得る。
【0068】
結合ポリペプチドの脱免疫化(deimmunization)
血清アルブミン結合体およびそれらの融合体のアミノ酸配列は、1つもしくは複数のB
細胞またはT細胞エピトープを取り除くために変更し得る。本明細書に記載されている、
記載されているFN3ドメイン融合体を含むタンパク質は、所与の種に対して免疫原性を
有さない、または免疫原性がより少なくなるように脱免疫化され得る。脱免疫化は、タン
パク質に構造的な変更を加えることにより達成され得る。当業者にとって公知の任意の脱
免疫化技術が用いられ得、例えば、その開示が本明細書においてその全体が組み込まれて
いる国際公開第00/34317号パンフレットを参照のこと。
【0069】
一実施形態では、血清アルブミン結合体およびそれらの融合体の配列は、MHCクラス
II結合モチーフの存在について分析可能である。例えば、sitewehil.wehi.edu.auの国
際的なウェブ上で、「モチーフ」データベースを検索することにより、例えばMHC結合
モチーフのデータベースと比較することができる。あるいは、MHCクラスII結合ペプ
チドは、計算スレッディング法、例えばAltuviaら(J. Mol. Biol. 249 244-250
(1995))により考案されたものを使用して同定することができ、それによってポリペプチ
ドに由来する連続した重複ペプチドが、MHCクラスIIタンパク質に対するそれらの結
合エネルギーについて試験している。計算方式の結合予測アルゴリズムとして、iTop
e(商標)、Tepitope、SYFPEITHI、EpiMatrix(EpiVa
x)、およびMHCpredが挙げられる。MHCクラスII結合ペプチドの同定を支援
するために、提示に成功したペプチドと関連する関連配列特性、例えば両親媒性およびR
othbardモチーフ、ならびにカテプシンBおよびその他のプロセシング酵素の切断
部位について検索可能である。
【0070】
潜在的な(例えば、ヒトの)T細胞エピトープを同定したら、T細胞エピトープを取り
除く必要があることから、このようなエピトープは、次に1つまたは複数のアミノ酸の変
更により取り除かれる。通常、これは、T細胞エピトープそのものの中の1つまたは複数
のアミノ酸の変更を含む。これは、タンパク質の一次構造においてエピトープに隣接して
いるアミノ酸、または一次構造では隣接していないが、分子の二次構造において隣接して
いるアミノ酸の変更を含み得る。検討される通常の変更は、アミノ酸置換であるが、ある
特定の状況では、アミノ酸の付加または欠損が適切であり得る。最終分子が例えば十分に
確立された方法により組換え宿主からの発現により調製され得るように、すべての変更が
組換えDNA技術により実現可能であるが、分子を変更するタンパク質化学または任意の
その他の手段の使用も使用可能である。
【0071】
同定されたT細胞エピトープが除去されたら、新たなT細胞エピトープが形成されなか
ったこと、およびT細胞エピトープが形成された場合には、該エピトープが除去可能であ
ることを確実にするために、脱免疫化された配列が再度分析され得る。
【0072】
計算上同定されたすべてのT細胞エピトープが除去される必要はない。当業者であれば
、特定のエピトープの「強度」、またはむしろ潜在的免疫原性の重要性について理解する
であろう。様々な計算方法により、潜在的エピトープのスコアが生成される。当業者であ
れば、高スコアのエピトープに限り除去する必要があり得ることを認識するであろう。ま
た当業者であれば、潜在的エピトープを除去することと、タンパク質の結合親和性または
その他の生物学的活性を維持することとの間にバランスが存在することも認識するであろ
う。したがって、1つの戦略としては、記載されているFN3ドメインまたはFN3ドメ
イン融合タンパク質に置換を連続的に導入し、次いで標的結合またはその他の生物学的活
性および免疫原性について試験することがある。
【0073】
追加の修飾
ある特定の実施形態では、血清アルブミン結合体およびそれらの融合体は、翻訳後修飾
をさらに含み得る。例示的な翻訳後のタンパク質修飾として、リン酸化、アセチル化、メ
チル化、ADP-リボシル化、ユビキチン化、グリコシル化、カルボニル化、SUMO化
、ビオチン化、またはポリペプチド側鎖もしくは疎水基の付加が挙げられる。その結果、
修飾された血清アルブミン結合体およびそれらの融合体は、非アミノ酸要素、例えば脂質
、多糖または単糖、およびリン酸塩を含有し得る。好ましいグリコシル化の形態は、1つ
または複数のシアル酸部分をポリペプチドとコンジュゲートさせるシアリル化である。シ
アル酸部分は、溶解度および血清半減期を改善する一方、タンパク質の考え得る免疫原性
も低減させる。例えば、Raju et al. Biochemistry. 2001 Jul 31;40(30):8868-76を参照
。そのような非アミノ酸要素が血清アルブミン結合体またはその融合体の機能性に与える
効果は、特定の血清アルブミン(例えば、HSAまたはRhSA)と結合するそれらの能
力、および/または融合の文脈において、特異的非FN3部分により付与された機能的役
割(例えば、FGF21のグルコースの取り込みに対する効果)について試験され得る。
【0074】
ベクターおよびポリヌクレオチドの実施形態
本明細書に記載するタンパク質のいずれかをコードする核酸配列も本開示に含まれる。
当業者が認識するように、第3塩基の縮重(third base degeneracy)により、ほとんど
すべてのアミノ酸をコーディングヌクレオチド配列において2つ以上のトリプレットコド
ンにより表すことができる。さらに、軽微な塩基対変化は、コードされるアミノ酸配列内
で保存的置換を引き起こす可能性があるが、遺伝子産物の生物学的活性を実質的に変化さ
せないものと予想される。したがって、本明細書に記載するタンパク質をコードする核酸
配列は、配列についてわずかに修飾され得るが、なおもそのそれぞれの遺伝子産物をコー
ドする。本明細書に記載する血清アルブミン結合体およびそれらの融合体をコードするあ
る特定の例示的核酸には、配列番号69~72に記載する配列を有する核酸が含まれる。
【0075】
本明細書に開示の様々なタンパク質またはポリペプチドのいずれかをコードする核酸が
、化学的に合成可能である。コドンの利用法は、細胞内での発現を改善するために選択さ
れ得る。そのようなコドンの利用法は、選択された細胞型に依存する。特殊なコドンの利
用パターンが、大腸菌(E.coli)、およびその他の細菌、ならびに哺乳動物細胞、植物細
胞、酵母菌細胞、および昆虫細胞について開発されている。例えば、Mayfield et al, Pr
oc Natl Acad Sci U S A. 2003 100(2):438- 42; Sinclair et al. Protein Expr Purif.
2002 (1):96-105; Connell ND. Curr Opin Biotechnol. 2001 (5):446-9; Makrides et
al. Microbiol Rev. 1996 60(3):512-38; and Sharp et al. Yeast. 1991 7(7):657-78を
参照。
【0076】
核酸操作に関する一般的な技法は、当業者の理解の範囲内であり、また例えば、本明細
書に参照により組み込まれているSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory M
anual, Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2 ed., 1989、またはF. Aus
ubel et al, Current Protocols in Molecular Biology (Green Publishing and Wiley-I
nterscience: New York, 1987)、および定期的更新版にも記載されている。タンパク質を
コードするDNAは、哺乳動物、ウイルス、または昆虫の遺伝子に由来する、好適な転写
上または翻訳上の制御要素と作動可能に連結している。そのような調節エレメントとして
、転写プロモーター、転写を制御する任意選択的なオペレーター配列、好適なmRNAリ
ボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写および翻訳の終了を制御する配列が挙
げられる。複製開始点によって通常付与される宿主内複製能力、および形質転換体の認識
を容易にするための選択遺伝子が追加的に組み込まれる。好適な調節エレメントは、当技
術分野において周知されている。
【0077】
本明細書に記載するタンパク質および融合タンパク質は、好ましくはシグナル配列であ
る異種ポリペプチド、または成熟タンパク質もしくはポリペプチドのN末端において特異
的切断部位を有するその他のポリペプチドとの融合タンパク質として産生され得る。選択
される異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識および処理される(すな
わち、シグナルペプチダーゼによって切断される)配列である。天然のシグナル配列を認
識および処理しない原核生物宿主細胞では、シグナル配列は、例えば、アルカリホスファ
ターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、または耐熱性エンテロトキシンIIリーダーの群から
選択される原核生物シグナル配列によって置換される。酵母の分泌では、天然のシグナル
配列は、例えば、酵母インベルターゼリーダー、a因子リーダー(サッカロマイセス(Sa
ccharomyces)およびクリヴェロマイセス(Kluyveromyces)アルファ因子リーダーを含む
)、または酸性ホスファターゼリーダー、C.アルビカンス(C. albicans)グルコアミ
ラーゼリーダー、または国際公開第90/13646号パンフレットに記載のシグナルに
よって置換され得る。哺乳動物細胞の発現では、哺乳動物シグナル配列ならびにウイルス
分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。そのような前駆体
領域のDNAは、リーディングフレーム内で、タンパク質をコードするDNAにライゲー
トされ得る。
【0078】
真核生物宿主細胞(例えば、酵母菌、菌類、昆虫、植物、動物、ヒト、またはその他の
多細胞生物に由来する有核細胞)で使用される発現ベクターは、転写の終了およびmRN
Aの安定化に必要な配列も含有する。そのような配列は、真核生物もしくはウイルスのD
NAまたはcDNAの5’および場合により3’非翻訳領域から一般的に入手可能である
。このような領域は、多価抗体をコードするmRNAの非翻訳部分内で、ポリアデニル化
断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含有する。1つの有用な転写終了成分と
して、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域が挙げられる。国際公開第94/11026
号パンフレットおよびそこで開示される発現ベクターを参照。
【0079】
組換えDNAは、タンパク質を精製するのに有用であり得る任意の種類のタンパク質タ
グ配列も含むことができる。タンパク質タグの例として、ヒスチジンタグ、FLAGタグ
、mycタグ、HAタグ、またはGSTタグが挙げられるが、ただしこれらに限定されな
い。細菌、真菌、酵母、および哺乳動物細胞宿主とともに使用される適切なクローニング
および発現ベクターは、その関連する開示が本明細書に参照により組み込まれているClon
ing Vectors: A Laboratory Manual, (Elsevier, New York, 1985)に見出すことができる
。当業者にとって明白であるように、発現構築物は、宿主細胞にふさわしい方法を使用し
て宿主細胞に導入される。エレクトロポレーション;塩化カルシウム、塩化ルビジウム、
リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、またはその他の物質を用いるトランスフェ
クション;マイクロプロジェクタイルボンバードメント;リポフェクション;および感染
(ここで、ベクターは感染因子である)を含む、ただしこれらに限定されない、核酸を宿
主細胞に導入するための多様な方法が、当該技術分野において公知である。
【0080】
好適な宿主細胞として、原核細胞、酵母、哺乳動物細胞、または細菌細胞が挙げられる
。好適な細菌として、グラム陰性菌またはグラム陽性菌、例えば、大腸菌(E.coli)また
はバチルス属(Bacillus spp.)が挙げられる。好ましくは、サッカロマイセス(Sacchar
omyces)種、例えばS.セレビシエ(S.cerevisiae)に由来する酵母もまた、ポリペプチ
ドの産生に使用され得る。様々な哺乳動物または昆虫細胞の培養系を用いて、組換えタン
パク質を発現させることもできる。昆虫細胞における異種タンパク質産生用のバキュロウ
イルス系が、LuckowおよびSummers(Bio/Technology, 6:47, 1988)によっ
てレビューされている。いくつかの事例では、例えばグリコシル化のために脊椎動物細胞
内でタンパク質を産生するのが望ましく、培養(組織培養)での脊椎動物細胞増殖がルー
チン手順となっている。好適な哺乳動物宿主細胞株の例として、内皮細胞、COS-7サ
ル腎細胞、CV-1、L細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO
)、ヒト胎児腎細胞、HeLa、293、293T、およびBHK細胞株が挙げられる。
多くの用途において、本明細書に記載するする小型のタンパク質多量体を用いる場合、大
腸菌(E.coli)が好ましい発現方法となる。
【0081】
タンパク質の産生
宿主細胞を、本明細書に記載のタンパク質産生用の発現またはクローニングベクターで
形質転換し、そしてプロモーターを誘発し、形質転換体を選択し、または所望の配列をコ
ードする遺伝子を増幅するために、必要に応じて修飾された従来型の栄養培地内で培養す
る。
【0082】
本発明のタンパク質を産生させるために使用される宿主細胞は、様々な培地内で培養さ
れ得る。市販の培地、例えばハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、S
igma)、RPMI-1640(Sigma)、およびダルベッコ変法イーグル培地(
(DMEM)、Sigma)が、宿主細胞を培養するのに好適である。加えて、Ham et a
l., Meth. Enz. 58:44 (1979)、Barnes et al., Anal. Biochem.102:255 (1980)、米国特
許第4,767,704号明細書;同第4,657,866号明細書;同第4,927,
762号明細書;同第4,560,655号明細書;もしくは同第5,122,469号
明細書;国際公開第90/03430号パンフレット;同第87/00195号パンフレ
ット;または米国特許第Re.30,985号明細書に記載の培地のいずれも、宿主細胞
用の培養培地として使用され得る。これらの培地のいずれも、必要であれば、ホルモンお
よび/またはその他の増殖因子(例えばインスリン、トランスフェリン、または上皮増殖
因子)、塩(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩)、緩
衝剤(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシンおよびチミジン)、抗生物
質(例えば、GENTAMYCIN(商標)薬物)、微量元素(マイクロモルの範囲の最
終濃度で通常存在する無機化合物として定義される)、およびグルコースまたは同等のエ
ネルギー源を補充することができる。その他の任意の必要なサプリメントも、当業者に公
知である適切な濃度で含まれ得る。培養条件、例えば温度、pH等は、発現用に選択され
た宿主細胞でこれまでに使用されている条件であり、当業者には明白であろう。
【0083】
本明細書に開示するタンパク質は、細胞翻訳系を使用しても産生可能である。そのよう
な目的のために、タンパク質をコードする核酸を修飾して、mRNAを産生させるための
インビトロ転写を可能にし、利用する特定の無細胞系におけるmRNAの無細胞翻訳を可
能にしなければならない。例示的な真核細胞を含まない翻訳系として、例えば、哺乳動物
または酵母菌の細胞を含まない翻訳系が挙げられ、例示的な原核細胞を含まない翻訳系と
して、例えば、細菌細胞を含まない翻訳系が挙げられる。
【0084】
また、本明細書に開示するタンパク質は、化学合成によって(例えば、Solid Phase Pe
ptide Synthesis, 2nd ed., 1984, The Pierce Chemical Co., Rockford, ILに記載の方
法によって)も産生させることができる。またタンパク質の修飾も化学合成によって産生
することができる。
【0085】
本明細書に開示のタンパク質は、タンパク質化学の分野において一般的に公知のタンパ
ク質の単離/精製法によって精製可能である。非制限的な例として、抽出、再結晶、塩析
(例えば、硫酸アンモニウムまたは硫酸ナトリウムによる)、遠心分離、透析、限外濾過
、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー
、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲル濾過、ゲル浸透クロマトグラ
フィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動法、向流分配法、またはそれらの
任意の組合せが挙げられる。精製後、濾過および透析を含むが、これらに限定されない、
当技術分野において公知の任意の様々な方法によって、タンパク質は、異なる緩衝液中に
交換され得る、および/または濃縮され得る。
【0086】
精製されたタンパク質は、好ましくは少なくとも85%純粋、より好ましくは少なくと
も95%純粋、および最も好ましくは少なくとも98%純粋である。純度の数値が正確で
あってもなくても、タンパク質は、医薬品として使用するのに十分に純粋である。
【0087】
画像化、診断、およびその他の用途
本明細書に提供するFN3ドメイン融合体は、記載されているFN3ドメインに融合し
た異種の分子の同一性に基づき、様々な疾患および障害を治療するのに使用され得る。F
N3ドメイン融合体の用途は、当技術分野における知識および本明細書に提供する情報に
基づき、当業者により決定され得る。様々なFN3ドメイン融合タンパク質に関する使用
は、本明細書に詳細に記載されている。FN3ドメイン融合体は、ヒトおよび非ヒトの生
物の両方を含む、任意の哺乳動物の対象または患者に投与され得る。
【0088】
本明細書に記載する血清アルブミン結合体および融合分子は、検出可能に標識され得る
が、また例えば、画像化または診断の用途で、融合分子が結合するタンパク質を発現する
細胞と接触させるのに使用される。Hunter, et al, Nature 144:945 (1962); David, et
al, Biochemistry 13: 1014 (1974); Pain, et al, J. Immunol. Meth. 40:219 (1981);
および Nygren, J. Histochem. and Cytochem. 30:407 (1982)により記載される方法を含
め、タンパク質を検出可能な部分にコンジュゲートさせるための当技術分野において公知
の任意の方法が用いられ得る。
【0089】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載する血清アルブミン結合体および融合分子は
、検出可能な標識とさらに結合する(例えば、標識は、放射性同位体、蛍光化合物、酵素
または酵素補助因子であり得る)。標識は、放射性の薬剤、例えば放射性の重金属、例え
ば鉄キレート、ガドリニウムまたはマンガンの放射性キレート、酸素、窒素、鉄、炭素、
またはガリウムの陽電子放出体、43K、52Fe、57Co、67Cu、67Ga、6
8Ga、123I、125I、13T、132I、または99Tc等であり得る。そのよ
うな部分に取り付けられた血清アルブミン結合体または融合分子は、造影剤として使用可
能であり、また哺乳動物、例えばヒトを対象とする診断用途において有効な量で投与され
、そして造影剤の局在位置および蓄積が次に検出される。造影剤の局在位置および蓄積は
、放射性シンチグラフィー、核磁気共鳴画像化法、コンピュータ断層映像法、または陽電
子放出型コンピュータ断層撮影法により検出可能である。当業者にとって明白なように、
投与される放射性同位体の量は、放射性同位体に依存する。当業者は、活性な部分として
使用される所与の放射性核種の比活性およびエネルギーに基づき、投与される造影剤の量
を容易に処方することができる。
【0090】
血清アルブミン結合体および融合分子は、アフィニティー精製剤としても有用である。
このプロセスでは、タンパク質は、適する支持体、例えばセファデックス樹脂または濾紙
に、当技術分野において周知の方法を使用して固定化される。タンパク質は、任意の公知
のアッセイ法、例えば競合結合アッセイ法、直接および間接サンドイッチアッセイ法、お
よび免疫沈降アッセイ等で用いられ得る(Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of T
echniques, pp. 147-158 (CRC Press, Inc., 1987))。代表的な
【0091】
治療用製剤および投与様式
本発明は、記載されているFN3ドメインと融合した治療部分を投与する方法を提供し
、該記載されているFN3ドメインと融合しているとき、治療部分の半減期は延長化して
いる。融合構築物を投与するための技術および投薬量は、記載されているFN3ドメイン
と融合している治療部分の種類に応じて変化するが、治療される特定の状態は、当業者に
より容易に決定可能である。一般的に、規制当局は、治療薬として使用されるタンパク質
試薬は、パイロジェンのレベルが許容できるほどに低くなるように製剤化されることを要
求する。したがって、治療用製剤は、該製剤が実質的にパイロジェンフリーであり、また
は少なくとも該当する規制当局(例えば、FDA)により決定されるパイロジェン許容レ
ベルを超えないレベルでパイロジェンを含有するという点において、その他の製剤とは一
般的に区別される。ある特定の実施形態では、記載されているFN3ドメインおよびのそ
れらの融合分子の医薬製剤は、pH4.0~7.0において、例えば、1~20mMのコ
ハク酸、2~10%のソルビトール、および1~10%のグリシンを含む。例示的な実施
形態では、記載されているFN3ドメインおよびそれらの融合分子の医薬製剤は、pH6
.0において、例えば、10mMのコハク酸、8%のソルビトール、および5%のグリシ
ンを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、記載されているFN3ドメインおよびその融合体は、哺乳動
物、特にヒトにとって薬学的に許容される。「薬学的に許容される」ポリペプチドとは、
重大で有害な医学的結果を伴わずに動物に投与されるポリペプチドを意味する。本明細書
に開示の薬学的に許容されるFN3ドメインおよびその融合体の例として、インテグリン
-結合ドメイン(RGD)を欠くFN3ドメイン、および実質的にエンドトキシンフリー
である、またはエンドトキシンレベルが非常に低い組成物が挙げられる。
【0093】
治療組成物は、単位投与剤形で、薬学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤と共
に投与され得る。投与は、非限定的な例であるが、非経口(例えば、静脈内、皮下)、経
口、または局所的であり得る。組成物は、経口投与用の丸剤、錠剤、カプセル剤、液剤、
または持続放出型錠剤;静脈内、皮下、または非経口投与用の液体;あるいは局所投与用
のゲル剤、ローション剤、軟膏剤、クリーム剤、もしくはポリマー、またはその他の持続
放出型媒体の形態であり得る。
【0094】
製剤作製のための当技術分野において周知の方法は、例えば、「Remington: The Scien
ce and Practice of Pharmacy」(20th ed., ed. A.R. Gennaro AR., 2000, Lippincott W
illiams & Wilkins, Philadelphia, PA)に見出される。非経口投与用の製剤は、例えば、
賦形剤、滅菌水、生理食塩水、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコー
ル、植物起源の油、または水素化ナフタレンを含有し得る。生体適合性、生分解性ラクチ
ドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、またはポリオキシエチレン-ポリオキシ
プロピレンコポリマーを用いて、化合物の放出を制御することができる。ナノ粒子製剤(
例えば、生分解性ナノ粒子、固体脂質ナノ粒子、リポソーム)を用いて、化合物の生体内
分布を制御することができる。その他の可能性のある有用な非経口送達システムには、エ
チレン-酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な注入システム、およびリ
ポソームが含まれる。製剤中の化合物の濃度は、投与される薬物の投薬量および投与経路
を含む、いくつかの要因によって変化する。
【0095】
ポリペプチドは、薬学的に許容される塩、例えば製薬業界で一般的に使用される非毒性
の酸付加塩または金属錯体等として任意選択的に投与され得る。酸付加塩の例として、有
機酸、例えば酢酸、乳酸、パモ酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、
コハク酸、安息香酸、パルミチン酸、スベリン酸、サリチル酸、酒石酸、メタンスルホン
酸、トルエンスルホン酸、またはトリフルオロ酢酸等;ポリマー酸、例えばタンニン酸、
カルボキシメチルセルロース等;および無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸
などが挙げられる。金属錯体としては、亜鉛、鉄などが挙げられる。1つの例では、ポリ
ペプチドは、熱安定性を増大するために酢酸ナトリウムの存在下で製剤化される。経口使
用のための製剤として、非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物中に有効成分を含
有する錠剤が挙げられる。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤または充填剤(例え
ば、スクロースおよびソルビトール)、滑沢剤、流動促進剤、および付着防止剤(例えば
、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、硬化植物油、
またはタルク)であり得る。
【0096】
また経口使用のための製剤は、咀嚼錠剤として、または有効成分が不活性固体希釈剤と
ともに混合されている硬ゼラチンカプセル剤として、または有効成分が水もしくは油媒体
とともに混合されている軟ゼラチンカプセル剤としても提供され得る。
【0097】
治療的に有効な用量とは、投与された場合に、治療的効果を生み出す用量を意味する。
正確な用量は、治療される障害に依存し、公知の技術を用いて当業者によって確認され得
る。一般に、FN3ドメイン融合体は、1日当たり約0.01μg/kg~約50mg/
kg、好ましくは1日当たり0.01mg/kg~約30mg/kg、最も好ましくは1
日当たり0.1mg/kg~約20mg/kg投与される。ポリペプチドは、毎日(例え
ば、1日1回、2回、3回、または4回)、またはより低い頻度で(例えば、2日に1回
、1週間に1もしくは2回、または1ヶ月に1回)提供され得る。さらに、当技術分野で
公知なように、年齢ならびに体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、薬物相互作
用、および疾患の重症度に応じた調整が必要とされる場合もあり、当業者によるルーチン
的な実験で確認することができる。
【0098】
ヒト血清アルブミンを検出するためのキット
生体サンプル中のヒト血清アルブミンを検出するキットが本明細書で提示される。この
ようなキットは、本明細書に記載する1つまたは複数の血清アルブミン特異的FN3ドメ
インおよびキットの使用説明書を含む。
【0099】
提供される血清アルブミン特異的FN3ドメインは、溶液の状態であるか、凍結乾燥さ
れるか、基材、担体、もしくはプレートに取り付けられるか、または検出可能に標識され
得る。
【0100】
記載されているキットは、本明細書に記載する方法を実施するのに役立つ追加の成分も
含み得る。例として、キットは、対象からサンプルを取得する手段、対照もしくは参照サ
ンプル、例えば、ゆっくりと進行するがんを有する対象および/もしくはがんを有さない
対象から得たサンプル、1つもしくは複数のサンプルコンパートメント、ならびに/また
は本発明の方法の性能を記載する説明資料および組織特異的な対照もしくは標準物質を含
み得る。
【0101】
血清アルブミンのレベルを決定する手段は、例えば、バッファーまたは血清アルブミン
のレベルを決定するアッセイで使用されるその他の試薬をさらに含むことができる。説明
書は、例えば、アッセイを実施するための印刷された説明書、および/または血清アルブ
ミンのレベルを評価するための説明書であり得る。
【0102】
記載されているキットは、対象からサンプルを単離するための手段も含み得る。このよ
うな手段は、対象から体液または組織を取得するのに使用可能である機器または試薬のう
ちの1つまたは複数の品目を含み得る。対象からサンプルを取得する手段は、血液サンプ
ルから血液成分、例えば血清を単離する手段も含み得る。好ましくは、キットは、ヒト対
象で使用されるように設計される。
【実施例0103】
下記の実施例は、これまでの開示を補完し、および本明細書に記載する主題のより良好
な理解を提供するために提示される。このような実施例は、記載されている主題を制限す
るものとみなしてはならない。本明細書に記載する実施例および実施形態は、説明目的に
限定され、およびそれらを前提した様々な修正または変更は当業者にとって明白であり、
および本発明の真の範囲に含まれるものであり、ならびにその範囲から逸脱せずになし得
るものと理解される。
【0104】
[実施例1]
ランダム化ループを有するTENCONライブラリーの構築
Tencon(配列番号1)は、ヒトテネイシン-C由来の15個のFN3ドメインの
コンセンサス配列から設計された、免疫グロブリン様スキャフォールドであるフィブロネ
クチンIII型(FN3)ドメインである(Jacobs et al., Protein Engineering, Des
ign, and Selection, 25:107-117, 2012; 米国特許第8,278,419号明細書)。T
enconの結晶構造は、7つのベータストランドを結びつける6つの表面露出型ループ
を示す。このようなループ、または各ループ内の選択された残基は、特定の標的に結合す
る新規分子を選択するのに使用可能であるフィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン
のライブラリーを構築するためにランダム化され得る。
Tencon:
【0105】
【化1】
tenconスキャフォールドおよび様々な設計戦略を使用して、様々なライブラリーを
生成した。一般的に、ライブラリーTCL1およびTCL2は良好な結合体を産生した。
TCL1およびTCL2ライブラリーの生成は、国際公開第2014081944A2号
パンフレットに詳記されている。
【0106】
TCL1ライブラリーの構築
Tencon(配列番号1)のFGループのみをランダム化するように設計されたライ
ブラリー、TCL1を、cis-ディスプレー系で使用するために構築した(Jacobs et
al., Protein Engineering, Design, and Selection, 25:107-117, 2012)。この系では
、Tacプロモーターの配列、Tenconライブラリーコーディング配列、RepAコ
ーディング配列、cis-エレメント、およびoriエレメントを組み込む二本鎖DNA
が産生される。In vitroでの転写/翻訳系において発現させたら、タンパク質を
コードするDNAとcisで結合したTencon-RepA融合タンパク質の複合体を
産生する。以下に記載するように、標的分子に結合する複合体を次に単離し、そしてポリ
メラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する。
【0107】
cis-ディスプレーで使用されるTCL1ライブラリーの構築を、連続ラウンドのP
CRを実施して二等分の最終的な直鎖状二本鎖DNA分子を産生することにより実現した
;5’断片はプロモーターおよびTencon配列を含有する一方、3’断片はrepA
遺伝子およびcis-エレメントとoriエレメントを含有する。これらの二等分を、全
構築物を産生するために、制限消化により組み合わせた。TenconのFGループ、K
GGHRSN(配列番号32)内にランダムなアミノ酸のみが組み込まれるように、TC
L1ライブラリーを設計した。NNSコドンを、このライブラリーの構築で使用したが、
その結果、FGループ内に20種類のアミノ酸すべて、および1つの終止コドンが組み込
まれたはずである。TCL1ライブラリーは、6つの異なるサブライブラリーを含有し、
それぞれ、さらに多様性を増加させるために、長さが7~12残基の異なるランダム化F
Gループを有する。
TCL1ライブラリー(配列番号2)
【0108】
【化2】
(式中、
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7は、任意のアミノ酸であり、ならびに
X
8、X
9、X
10、X
11、およびX
12は、任意のアミノ酸である、または欠損して
いる)
【0109】
TCL2ライブラリーの構築
TenconのBCループおよびFGループの両方がランダム化されたTCL2ライブ
ラリーを構築し、各位置のアミノ酸の分布を厳密に制御した。表2は、TCL2ライブラ
リー内の所望のループ位置におけるアミノ酸分布を示す。設計されたアミノ酸分布は、2
つの目的を有した。第1に、ライブラリーは、Tencon結晶構造分析に基づき、およ
び/または相同性モデリングから、Tenconのフォールディングおよび安定性にとっ
て構造的に重要であると予測された残基に偏りを有した。例えば、29位の残基はTen
conフォールドの疎水的コア内に埋め込まれているので、疎水性アミノ酸のサブセット
のみとなるように29位を固定した。設計の第2層には、高親和性の結合体が能率的に産
生するように、抗体の重鎖HCDR3に優先的に見出される残基のアミノ酸分布に偏りを
持たせることが含まれた(Birtalan et al., J Mol Biol 377:1518-28, 2008; Olson et
al., Protein Sci 16:476-84, 2007)。これを最終目的とした場合、表1の「設計された
分布」とは、6%アラニン、6%アルギニン、3.9%アスパラギン、7.5%アスパラ
ギン酸、2.5%グルタミン酸、1.5%グルタミン、15%グリシン、2.3%ヒスチ
ジン、2.5%イソロイシン、5%ロイシン、1.5%リジン、2.5%フェニルアラニ
ン、4%プロリン、10%セリン、4.5%トレオニン、4%トリプトファン、17.3
%チロシン、および4%バリンの分布を意味する。この分布は、メチオニン、システイン
、および終止コドンを欠損している。
TCL2ライブラリー(配列番号3)
【0110】
【化3】
(式中、
X
1は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、
Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValであ
り、
X
2は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、
Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValであ
り、
X
3は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、
Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValであ
り、
X
4は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、
Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValであ
り、
X
5は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、
Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValであ
り、
X
6は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、
Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValであ
り、
X
7は、Phe、Ile、Leu、Val、またはTyrであり、
X
8は、Asp、Glu、またはThrであり、
X
9は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、
Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValであ
り、
X
10は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile
、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValで
あり、
X
11は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile
、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValで
あり、
X
12は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile
、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValで
あり、
X
13は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile
、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValで
あり、
X
14は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile
、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValで
あり、
X
15は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile
、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValで
ある)。
【0111】
【0112】
その後、野生型のtenconと比較したときに、E11R/L17A/N46V/E
86Iの置換(Tencon27;配列番号4)が組み込まれた安定化したTencon
フレームワーク上でのライブラリー構築(米国特許第8,569,227号明細書)、な
らびにBCループおよびFGループ内のランダム化された位置の変更を含む様々な手段に
より、このライブラリーを改善した。Tencon27は、国際公開第20130492
75号パンフレットに記載されている。これから、TenconのFGループ(ライブラ
リーTCL9)のみ、またはBCループおよびFGループの組合せ(ライブラリーTCL
7)をランダム化するように設計された新しいライブラリーを生成した。これらのライブ
ラリーを、cis-ディスプレー系で使用されるように構築した(Odegrip et al., Proc
Natl Acad Sci U S A 101: 2806-2810, 2004)。この設計の詳細を下記に示す:
安定化したTencon(Tencon27)(配列番号4)
【0113】
【化4】
TCL7(ランダム化したFGループおよびBCループ)(配列番号5)
【0114】
【化5】
(式中
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
10、X
11、X
12、X
13、X
14、X
1
5、およびX
16は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、
V、W、またはYであり、
X
7、X
8、X
9、X
17、X
18、およびX
19は、A、D、E、F、G、H、I、K
、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yである、または削除されている)。
TCL9(ランダム化したFGループ)(配列番号6)
【0115】
【化6】
(式中
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、およびX
7は、A、D、E、F、G、H、I、K
、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYであり、
X
8、X
9、X
10、X
11、およびX
12は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、
N、P、Q、R、S、T、V、W、Yである、または削除されている)。
【0116】
ライブラリーの構築において、ライブラリーのアミノ酸分布を制御し、および終止コド
ンを取り除くために、ランダム化したBCループ(長さ6~9位)またはFGループ(長
さ7~12位)をコードするDNA断片を、Slonomics技術(Sloning
Biotechnology GmbH)を使用して合成した。BCループまたはFGル
ープをランダム化するDNA分子の2つの異なるセットを独立に合成し、その後PCRを
使用して組み合わせ、完全ライブラリー生成物を産生した。
【0117】
FGループライブラリーの構築(TCL9)
5’Tacプロモーターとそれに続くTenconの完全遺伝子配列、ただし例外的に
FGループ内にランダム化したコドンを有する同配列からなる一連の合成DNA分子を産
生した(配列番号26~31)。FGループのランダム化では、システインおよびメチオ
ニンを除くすべてのアミノ酸が、等しい割合でコードされた。多様化された部分の長さは
、それらがFGループ内の7、8、9、10、11、または12個のアミノ酸をコードす
るような長さである。各長さが変化したサブライブラリーを、2μgのスケールで個別に
合成し、次にoligos Sloning-FOR(配列番号9)およびSlonin
g-Rev(配列番号10)を使用してPCRにより増幅した。
【0118】
ライブラリーの3’断片は、PspOMI制限部位、repA遺伝子のコード領域、お
よびcis-エレメントとoriエレメントを含む、ディスプレーのためのエレメントを
含有する一定のDNA配列である。M13フォアワードプライマーおよびM13リバース
プライマーを有するテンプレートとして、プラスミド(pCR4Blunt)(Invi
trogen)を使用してこの断片を増幅するために、PCR反応を実施した。得られた
PCR産物を、PspOMIにより一晩で消化し、そしてゲル精製した。ライブラリーD
NAの5’部分を、repA遺伝子を含有する3’DNAにライゲートするために、2p
mol(約540ng~560ng)の5’DNAを、等モル(約1.25μg)の3’
repA DNAに、NotIおよびPspOMI酵素およびT4リガーゼの存在下、3
7℃で、一晩ライゲートした。ライゲートしたライブラリー生成物を、oligos P
OP2250(配列番号11)およびDigLigRev(配列番号12)とともに12
サイクルのPCRを使用することにより増幅した。サブライブラリー毎に、12回のPC
R反応から得られたDNAを組み合わせ、Qiagenスピンカラムにより精製した。T
CL9の各サブライブラリーの収率は、32~34μgの範囲であった。
【0119】
FG/BCループライブラリーの構築(TCL7)
TCL7ライブラリーは、ランダム化したTenconのBCループおよびFGループ
を有するライブラリーを提供する。このライブラリーでは、長さが6~9アミノ酸のBC
ループを、長さが7~12アミノ酸のランダム化されたFGループとコンビナトリアルに
混合した。タンパク質のN末端部分を残基VXまで、これを含めてコードするTenco
n遺伝子を含むように、合成Tencon断片BC6、BC7、BC8、およびBC9(
配列番号13~16)を産生したが、そうすれば、BCループは、6、7、8、または9
個のランダム化したアミノ酸で置き換わる。これらの断片を、L17A、N46V、およ
びE83I変異(CEN5243)の発見前に合成したが、これらの変異は、以下に記載
する分子生物学ステップに導入された。この断片をランダム化したFGループをコードす
る断片と組み合わせるために、下記のステップを実施した。
【0120】
第1に、Tacプロモーターおよびアミノ酸A17をコードするヌクレオチドまでTe
nconの5’配列をコードするDNA断片(130mer-L17A、配列番号17)
を、oligos POP2222ext(配列番号18)およびLS1114(配列番
号19)を使用してPCRにより産生した。ライブラリー(CEN5243)内にL17
A変異を含むようにこれを実施した。次に、ランダム化したBCループを含むTenco
n残基R18~V75をコードするDNA断片を、テンプレートとしてBC6、BC7、
BC8、またはBC9、ならびにoligos LS1115(配列番号20)およびL
S1117(配列番号21)を使用してPCRにより増幅した。このPCRステップでは
、BsaI部位が3’末端に導入された。これらのDNA断片を、その後、oligos
POP2222extおよびLS1117をプライマーとして使用して、オーバーラッ
ピングPCRにより繋いだ。240bpの得られたPCR産物をプールし、そしてQia
gen PCR精製キットにより精製した。精製されたDNAをBsaI-HFで消化し
、そしてゲル精製した。
【0121】
FGループをコードする断片を、FG7(配列番号31)、FG8(配列番号30)、
FG9(配列番号29)、FG10(配列番号28)、FG11(配列番号27)、およ
びFG12(配列番号26)をテンプレートとして使用して、オリゴヌクレオチドSDG
10(配列番号22)およびSDG24(配列番号23)とともにPCRにより増幅して
、BsaI制限部位、ならびにN46VおよびE86I変異(CEN5243)を組み込
んだ。
【0122】
消化したBC断片およびFG断片を、3ウェイライゲーションを使用する単一ステップ
で一緒にライゲートした。16個の有望な組合せで4回のライゲーション反応を計画し、
各ライゲーション反応では、2つのBCループ長を2つのFGループ長と組み合わせた。
各ライゲーションは、約300ngの全BC断片および300ngのFG断片を含有した
。これらの4つのライゲーションプールを、次にoligos POP2222(配列番
号24)およびSDG28(配列番号25)を使用してPCRにより増幅した。各反応生
成物、7.5μgを、次にNot1で消化し、そしてQiagen PCR精製カラムを
用いて洗浄した。このDNA、5.2μgを、PspOMIで消化した等モル量のRep
A DNA断片(約14μg)にライゲートし、生成物をoligos POP2222
を使用してPCRにより増幅した。
【0123】
[実施例2]
代替的結合表面を有するTENCONライブラリーの生成
特定のライブラリー設計においてランダム化される残基の選択により、形成される相互
作用表面の全体的な形状が支配される。BC、DE、およびFGの各ループがランダム化
されているライブラリーから、マルトース結合タンパク質(MBP)と結合するように選
択されたスキャフォールドタンパク質を含有するFN3ドメインについてX線結晶解析を
行い、MBPの活性部位に適合する概ね湾曲した界面を有することが明らかとなった(Ko
ide et al., Proc Natl Acad Sci U S A 104: 6632-6637, 2007)。対照的に、MBPに
結合するように選択されたアンキリンリピートスキャフォールドタンパク質は、はるかに
平面的な相互作用表面を有し、また活性部位からは遠いMBPの外部表面に結合すること
が判明した(Binz et al., Nat Biotechnol 22: 575-582, 2004)。このような結果は、
スキャフォールド分子の結合表面の形状(湾曲型と平面型)が、どの標的タンパク質、ま
たはそのような標的タンパク質上のどの特異的エピトープが、スキャフォールドと有効に
結合することができるか、について説明し得ることを示唆する。タンパク質と結合するた
めのFN3ドメインを含有するタンパク質スキャフォールドのエンジニアリングに関する
公表された努力は、標的と結合するための隣接ループを工学的に作出すること、したがっ
て湾曲した結合表面を産生することに準拠する。このアプローチは、そのようなスキャフ
ォールドが接近できる標的およびエピトープの数に限界をもたらす可能性がある。
【0124】
Tenconおよびその他のFN3ドメインは、分子の対向面上に位置する2セットの
CDR様のループ、BC、DE、およびFGループにより形成される第1のセット、およ
びAB、CD、およびEFループにより形成される第2のセットを含む。2セットのルー
プは、FN3構造の中心部を形成するベータストランドにより分離している。Tenco
nの画像を90度回転させれば、代替的表面が可視化され得る。このわずかに凹な面は、
CDループおよびFGループ、ならびに2つのアンチパラレルベータストランドであるC
およびFのベータストランドにより形成され、本明細書ではC-CD-F-FG表面と呼
ばれる。C-CD-F-FG表面は、該表面を形成する残基のサブセットをランダム化す
ることにより、タンパク質スキャフォールド相互作用表面のライブラリーを設計するため
のテンプレートとして使用可能である。ベータストランドは、一つおきにタンパク質の表
面に露出した残基の側鎖を備えた反復構造を有する。したがって、ライブラリーは、ベー
タストランド内の一部または全部の表面露出残基をランダム化することにより作成可能で
ある。ベータストランド内のふさわしい残基を選択することにより、その他のタンパク質
と相互作用するための独特なスキャフォールド表面を提供しつつ、損なわれるTenco
nスキャフォールドの固有の安定性は最低限度に抑えられるはずである。
【0125】
ライブラリーTCL14(配列番号7)を、Tencon27スキャフォールド(配列
番号4)内に設計した。
【0126】
このライブラリーを構築するために使用される方法の詳細説明は、米国特許出願公開第
2013/0226834号明細書に記載されている。
TCL14ライブラリー(配列番号7):
【0127】
【化7】
(式中
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
10、X
11、X
12、およびX
13は、A、
D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W,Y、またはMであ
る)。
【0128】
Tencon27においてC-CD-F-FG表面を形成する2つのベータストランド
は、ランダム化され得る合計9個の表面露出残基、Cストランド:S30、L32、Q3
4、Q36;Fストランド:E66、T68、S70、Y72、およびV74を有する一
方、CDループは、6個の潜在的残基:S38、E39、K40、V41、G42、およ
びE43を有し、ならびにFGループは、7個の潜在的残基:K75、G76、G77、
H78、R79、S80、およびN81を有する。22個すべての残基がランダム化され
た場合、ライブラリーの理論的サイズが大型化するため、選択残基は、TCL14設計に
組み込まれるように選択した。
【0129】
Tencon内の13個の位置、すなわちCストランド内のL32、Q34、およびQ
36、CDループ内のS38、E39、K40、およびV41、Fストランド内のT68
、S70、およびY72、FGループ内のH78、R79、およびN81を選択してラン
ダム化した。CおよびFストランドでは、S30およびE66はCDループおよびFGル
ープのすぐ向こう側に位置すること、ならびに明らかにC-CD-F-FG表面の一部と
は思われないことから、それらをランダム化しなかった。CDループの場合、可撓性をも
たらすグリシンはループ領域において有用であり得、E43は表面接合部に位置するので
、G42およびE43はランダム化しなかった。FGループでは、K75、G76、G7
7、およびS80を除外した。上記理由からグリシンを除外したが、一方、結晶構造の慎
重な調査から、S80はコアと重要な接触を引き起こし、安定なFGループを形成するの
に役立っていることが判明した。K75は、C-CD-F-FG面の表面とは異なる方向
を向いており、ランダム化の候補としては魅力に欠けた。上記残基はオリジナルのTCL
14設計においてランダム化されなかったが、それらの残基は、新規選択、または例えば
選択TCL14標的特異的ヒット上の親和性熟成ライブラリーに対して追加の多様性を提
供するために、後続するライブラリー設計に含めることも可能であった。
【0130】
TCL14の産生に後続して、類似設計の追加のTenconライブラリー3つを産生
した。これらの2つのライブラリー、TCL19、TCL21、およびTCL23は、T
CL14と同一の位置においてランダム化されるが(上記を参照)、ただしこれらの位置
で生ずるアミノ酸の分布は異なる(表3)。TCL19およびTCL21を、各位置にお
いて、システインおよびメチオニンのみを除く18種類の天然アミノ酸について等しい分
布を含むように設計した(各5.55%)。表2の記載にするように、各ランダム化位置
が、機能的抗体のHCDR3ループに見出されるアミノ酸分布に匹敵するように、TCL
23を設計した(Birtalan et al., J Mol Biol 377: 1518-1528, 2008)。TCL21ラ
イブラリーと同様に、システインおよびメチオニンを除外した。
【0131】
その他のライブラリーの潜在的標的結合表面を拡張するために、第3の追加のライブラ
リーを構築した。このライブラリー、TCL24では、ライブラリーTCL14、TCL
19、TCL21、およびTCL23と比較して、4つの追加のTencon位置がラン
ダム化された。これらの位置には、Dストランドに由来するN46およびT48、ならび
にGストランドに由来するS84およびI86が含まれる。位置46、48、84、およ
び86の残基側鎖は、ベータストランドDおよびGから表面曝露しており、またCおよび
Fストランドのランダム化部分と構造的に隣接した場所に位置し、したがって標的タンパ
ク質が結合するために接近できる表面積が増加するので、これらの位置を特に選択した。
TCL24おいて各位置で使用されるアミノ酸分布は、表2でTCL19およびTCL2
1について記載した分布と同一である。
TCL24ライブラリー(配列番号8)
【0132】
【化8】
(式中
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
10、X
11、X
12、およびX
13は、A、
D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、またはWである)。
【0133】
【0134】
TCL21、TCL23、およびTCL24ライブラリーの生成
アミノ酸分布を制御するために、Colibraライブラリー技術(Isogenic
a)を使用して、TCL21ライブラリーを生成した。Slonomics技術(Mor
phosys)を使用してTCL19、TCL23、およびTCL24の遺伝子断片を生
成させ、アミノ酸分布を制御した。ループライブラリーについて上記したように、初期の
合成後に、PCRを使用して各ライブラリーを増幅し、その後、cis-ディスプレー系
を使用する選択で使用されるようにRepAの遺伝子にライゲートした(Odegrip et al.
, Proc Natl Acad Sci U S A 101: 2806-2810, 2004)。
【0135】
[実施例3]
ヒト血清アルブミンと結合するフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインの選択
ライブラリースクリーニング
cis-ディスプレーを、TCL14、TCL19、TCL21、TCL23、および
TCL24ライブラリーからヒト血清アルブミン結合ドメインを選択するのに使用した。
血清(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)から精製したヒトおよび
ウサギ血清アルブミンを、標準法を使用してビオチン化し、そしてパニングで使用した。
In vitroでの転写および翻訳(ITT)では、3μgのライブラリーDNAを、
0.1mMの完全アミノ酸、1×S30の事前混合成分、および15μLのS30抽出物
(Promega)とともに、総容積50μLでインキュベートし、30℃でインキュベ
ートした。1時間後、375μLのブロッキング溶液((0.1%のカゼイン(Ther
mo Fisher、Rockford、IL)、100mg/mlのニシン精子DNA
(Promega、Madison、WI)、1mg/mLのヘパリン(Sigma-A
ldrich、St.Louis、MO))を添加し、反応物を氷上で15分間をインキ
ュベートした。選択では、ビオチン化された抗原を、400nM(ラウンド1)、200
nM(ラウンド2および3)、および100nM(ラウンド4および5)の濃度で添加し
た。結合したライブラリーメンバーを、ニュートラアビジンマグネットビーズ(Ther
mo Fisher、Rockford、IL)(ラウンド1、3、および5)、または
ストレプトアビジンマグネットビーズ(Promega、Madison、WI)(ラウ
ンド2および4)を使用して回収し、ビーズを500μLのPBSTで5~14回洗浄し
、その後に500μLのPBSで2回洗浄することにより、未結合のライブラリーメンバ
ーを除去した。親和性が改善したスキャフォールド分子を同定するために、追加の選択ラ
ウンドを実施した。要するに、ラウンド5からのアウトプットを上記のように調製し、そ
して下記の変更を加えて選択の追加の反復ラウンドにかけた:ビオチン化された抗原との
インキュベーションを1時間から15分に減らし、およびビーズ捕捉を20分から15分
に減らし、bt-HSAを25nM(ラウンド6および7)、または2.5nM(ラウン
ド8および9)に減らし、ならびに過剰の非ビオチン化標的タンパク質の存在下で追加の
1時間洗浄を実施した。このような変更の目的は、オンレート(on-rate)がより速く、
かつオフレート(off-rate)がより遅いと思われる結合体を同時に選択して、実質的によ
り低いKDを得ることである。
【0136】
パニングの後、選択されたFN3ドメインを、oligos Tcon6(配列番号3
3)およびTcon5shortE86I(配列番号34)を使用してPCRにより増幅
し、pET15-LIC中にアニーリングすることによりサブクローン化し、大腸菌(E.
coli)で可溶性発現させるために、標準的な分子生物学技術を使用してBL21-GOL
D(DE3)細胞(Agilent、Santa Clara、CA)に変換した。単一
クローンを取り出し、96ディープウェルプレートにおいて、アンピシリンを含むLB、
1mL中で飽和するまで37℃で増殖させた。翌日、25μLを、96ディープウェルプ
レートにおいて新鮮なLB-Amp培地、1mLに移し、37℃で2時間増殖させた。I
PTGを1mMの最終濃度で添加し、タンパク質の発現を30℃で16時間誘発した。遠
心分離により細胞を採取し、その後、最終0.2mg/mLの鶏卵卵白リゾチーム(Si
gma-Aldrich、St.Louis、MO)が補充されたBugbuster
HT(EMD Chemicals、Gibbstown、NJ)により溶解した。溶菌
液を遠心分離により清澄化し、上清を新しい96ディープウェルプレートに移し、ELI
SAにより標的タンパク質との結合について試験した。
【0137】
ヒト血清アルブミンと結合するFN3ドメインの選択
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を、選択されたパニングアウトプットに由来す
る個々のクローン上で実施して、ヒト血清アルブミン結合体を同定した。Maxisor
pプレート(Nunc、Rochester、NY)を、5μgのHSA、rabSA、
または5μg/mlのオバルブミン(Sigma-Aldrich、St.Louis、
MO)を用いて一晩コーティングし、0.05%のTween-20を含むトリス緩衝生
理食塩水(TBST)、pH7.4で洗浄し、Starting Block T20(
Thermo Fisher、Rockford、IL)を使用して遮断した。清澄化し
た溶菌液(上記)を、HSA、rabSA、およびオバルブミンがコーティングされたプ
レートのウェルに適用した。プレートを、1時間インキュベートし、TBSTで洗浄し、
センチリン(centyrin)の結合を、Molecular Devices M5プレート
リーダーを使用して、pAb25-HRP(Janssen R&D、Springho
use PA)およびPOD化学発光基質(Roche、Indianapolis、I
N)により検出した。ヒットを、[ヒト血清アルブミンに対する結合シグナル/オバルブ
ミンに対する結合シグナル]>10として定義した。
【0138】
クローンを、異なるヒト血清アルブミンドメイン構築物との結合、および様々な種に由
来するアルブミン:アルブミンドメインI(Albumin Biosciences、
Huntsville、AL)、ドメインII(Albumin Bioscience
s、Huntsville、AL)、ドメインIII(Albumin Bioscie
nces、Huntsville、AL)、ドメインI-II(Albumin Bio
sciences、Huntsville、AL)、アカゲザル血清アルブミン(Sig
ma-Aldrich、St.Louis、MO)、およびマウス血清アルブミン(Si
gma-Aldrich、St.Louis、MO)との交差反応性について、上記EL
ISAアッセイにおいてさらに特徴付けた。ドメインI、II、およびIIIを、1μg
/mlの濃度で、ドメインI-IIを2μg/mlの濃度で、ならびに完全長アカゲザル
アルブミンおよびマウスアルブミンを3μg/mlで、陽性結合対照として働く3μg/
mlのヒト血清アルブミンを含めコーティングした。選択されたFN3ドメインのアルブ
ミン結合ドメイン特異性を表4に示す。表5は、選択されたFN3ドメインの全アミノ配
列を示す。
【0139】
【0140】
【0141】
同定されたFN3ドメイン結合ヒト血清アルブミンの小規模発現および精製
選択FN3ドメインクローンを取り出し、そして100μg/mLのアンピシリンが補
充されたルリアブロス(Luria Broth)(LB)(LB-Amp培地)、1mL中で飽和
するまで96ディープウェルプレートにおいて37℃で増殖させた。翌日、25μLを、
24ディープウェルプレート内の新鮮なLB-Amp培地、5mLに移し、37℃で2時
間増殖させた。IPTGを1mMの最終濃度で添加し、タンパク質の発現を30℃で16
時間誘発した。細胞を遠心分離により採取し、最終0.2mg/mLの鶏卵卵白リゾチー
ム(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)が補充されたBugbus
ter HT(EMD Chemicals、Gibbstown、NJ)で溶解した。
溶菌液を遠心分離により清澄化し、上清を新しい96ディープウェルプレートに移した。
製造業者(GE Lifesciences、Piscataway、NJ)の推奨に従
い、96ウェルNi-NTA Multitrapプレートを使用して、Hisタグ付き
FN3ドメインを精製した。
【0142】
サイズ排除クロマトグラフィー分析
サイズ排除クロマトグラフィーを、FN3ドメイン結合ヒト血清アルブミンの凝集状態
を決定するのに使用した。各精製されたFN3ドメインの一定分量(10μL)を、0.
3mL/分の流速で、移動相がPBS、pH7.4でSuperdex75 5/150
カラム(GE Healthcare)に注入した。カラムからの溶出を、280nmに
おける吸収によりモニタリングした。SECにより高レベルの凝集を示したFN3ドメイ
ンを、さらなる分析から除外した。
【0143】
[実施例4]
ヒト血清アルブミン結合FN3ドメインの特徴付け
ヒト血清アルブミン-FN3ドメイン複合体の免疫沈降
結合体の機能性を評価するために、選択されたFN3ドメインを、通常の血清内で内因
性アルブミンと複合体形成するそれらの能力について試験した。選択されたFN3ドメイ
ンが別のFN3ドメインのアミノまたはカルボキシ末端に結合したときに、アルブミン結
合が保たれることを確実にするために、2価のFN3遺伝子を調製して、構築物ALB1
8、ALB30、ALB21、ALB33、ALB34、およびALB35を生成した(
表6)。
【0144】
【0145】
C末端にHis
6タグ化された(配列番号72)2価のFN3ドメイン(カルシウムま
たはマグネシウムを含まない1×DPBS中で0.25~2.0mg/mLの濃度)を、
通常の血清と1:1の容積比で混合し、そして室温で1時間インキュベートして、血清中
での内因性アルブミンとの結合を可能にした。His
6タグ化された(配列番号72)F
N3ドメイン-アルブミン複合体を、500mMのNaClおよび10mMのイミダゾー
ルを含有する50mMのトリス、pH7.0で事前平衡化した5μLの樹脂ベッドを含有
する200+PhyTipカラム(Rainin Instrument LLC製Pu
reSpeed(商標)Protein Tip IMAC;Oakland、CA)を
使用して、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(immobilized metal affinity
chromatography)(IMAC)により血清から回収した。未結合の血清タンパク質を、
平衡バッファーを用いた樹脂の徹底洗浄により除去した。結合したタンパク質を、25~
100μLの溶出バッファー(500mMのNaClおよび250mMのイミダゾール、
pH7.5を含有する50mMのトリス、pH7.0)を用いて溶出させた。溶出液を、
アルブミンの共沈殿についてSDS-PAGEにより分析した。SDS-PAGEゲルを
、コロイダルクーマシーで染色した。アルブミン結合FN3ドメインを含有するレーンは
、血清アルブミン+FN3ドメインの分子量と一致する高強度のバンドを有した。対照的
に、Tencon25(配列番号73)の場合、アルブミンは複合体を形成せず、血清ア
ルブミンに対して親和性を有さないFN3ドメインを、IMAC精製により血清から抽出
した(
図2を参照)。
【0146】
カニクイザルにおけるアルブミン結合FN3ドメインの薬物動態:
ALB18およびALB33についてin-vivo試験を実施した。試験品は、2.
0mg/mLで試験施設に提供され、-70±10℃で保管された。投薬前にFN3ドメ
インを室温で24時間解凍し、2~8℃で保管した。投薬当日、試験品を室温まで加温し
た。投薬時2.0~4.0kgの範囲内にある未処置の雌カニクイザル9匹を3群に分割
した。FN3ドメインを、静脈内(IV)ボーラス注射(全体的な投与容積に対して、目
標時間1~3分)により、1日目に2mg/kgで投与した。送達される各用量の容積(
mL)は、投薬前に1~2日間記録した個々の動物の体重に基づいた。投与前1日、投与
後10分および6時間および24時間において、末梢血管から全血、約1mLを収集した
。追加のサンプルを、3、4、5、6、7、9、11、14、および21日目に、1日の
うちほぼ同一時刻において収集した。すべての血液サンプルを、抗凝固剤を含まない血清
分離チューブ内に収集した。血液サンプルを30分間凝固させ、次に冷却した遠心機内で
15分間遠心分離した。血清、約1mLを、2つのエッペンドルフチューブに移し(各0
.5mL)、スポンサーに出荷するまで-65℃で保管した。
【0147】
H9を以下の通り評価した。2.2~4.4kgの範囲の未処置の雄カニクイザル3匹
に、1mg/kgのH9(PBS中0.5mg/mLに調製した)を、2mL/kgのI
Vボーラス注射で投与した。血液サンプル(約1mL)を、橈側皮静脈または大腿静脈か
ら、抗凝固剤を含まないBD Vacutainer(登録商標)SST(商標)3.5
mLチューブ(カタログ番号367957)内に収集した。下記の時点:すなわち投与前
(t=0)、および投与後10分、1時間、6時間、24時間、48時間、72時間(4
日目)、168時間(8日目)、240時間(11日目)、336時間(15日目)、お
よび504時間(22日目)において、サンプルを取得した。各時点における血液サンプ
ルを、室温で30~60分間凝固させた後、室温で15分間遠心分離した。約0.5mL
の血清を、予めラベル表示したポリプロピレンマイクロチューブ内に移し、ドライアイス
上に速やかに置いた後、-70℃以下で保管した。血清サンプルをドライアイス同梱で出
荷した。
【0148】
血清サンプル中に存在するFN3ドメインの濃度を決定するために、アルブミン結合F
N3ドメインのH9、ALB18、およびALB33について、標準曲線を、300ng
/mlおよびアッセイバッファー(Super Block T20(TBS)ブロッキ
ングバッファー(Thermo Scientific)中10%対照未処理カニクイザ
ル血清(Bioreclamation))中での連続3倍希釈において調製して11p
t曲線を得た。すべての試験血清サンプルを室温で解凍し、アッセイバッファー中、1:
10の希釈で調製し、アッセイバッファー中での5倍希釈法を使用してさらに連続希釈し
た。捕捉および検出用の均質なマスターミックスを、Super Block中で0.6
25μg/mlに調製したビオチン化された捕捉およびルテニウム標識検出抗体(ポリク
ロナール抗FN3ドメイン抗体pab139、Janssen Pharmaceuti
cals)を使用して生成した。40μLのマスターミックスおよび10μLの希釈サン
プル、標準または対照を、96ウェルStreptavidin Goldプレート(M
esoscale Discovery)に添加した。プレートを、遮光して室温で2時
間インキュベートした。プレートを300μLのTBS-T、0.05%のTween-
20(Sigma)を使用して洗浄し、そして乾燥ブロットした。界面活性剤を含むRe
ad Buffer Tの1×溶液(Mesoscale Discovery)を蒸留
水中で調製した。Read Bufferを、アッセイプレートに150μL/ウェルで
添加し、そしてQuickPlex SQ 120リーダー(Mesoscale Di
scovery)を使用して電気化学ルミネセンスを測定した。
【0149】
X軸およびY軸をX=log(X)およびY=log(Y)に変換することにより、G
raphPad Prism内で標準曲線を生成した。シグモイド型の用量応答性(可変
性のスロープ)を使用して非線形回帰(曲線近似)を実施した;未知の値は標準曲線から
内挿した。初期の変換について補正するために、内挿した結果の平均値を、X=10^X
およびY=10^Yを使用して変換した。標準曲線の直線部分を、目視により決定した。
すべての内挿された濃度を、アッセイで使用した希釈係数について補正した。最終濃度を
、すべての希釈について有効な結果を平均化し、g/mlからnMに変換することにより
決定した。
【0150】
エクセル用のPKSolver add-in(Zhang, Y. et al. (2010) Comput. Me
thods Programs Biomed., 99 306-314)をPK分析に使用した。非コンパートメント解析
を動物毎に実施した。構築物毎に3動物について半減期および排出を平均化して、最終結
果を決定した。アルブミン結合FN3ドメインの薬物動態データを、
図2および表7に示
す。アルブミンドメイン3結合体のH9、およびALB18は、類似した曝露プロファイ
ルおよび末端半減値(terminal half-life value)(33~47時間)を示した。アルブ
ミンドメイン1結合体のALB33は、中間的な曝露および約26時間の末端半減期を実
証する。
【0151】
【0152】
配列情報
配列番号1=オリジナルのTencon配列
【0153】
【0154】
【化10】
(式中
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7は、任意のアミノ酸であり、
X
8、X
9、X
10、X
11、およびX
12は、任意のアミノ酸である、または削除され
ている)
配列番号3=TCL2ライブラリー
【0155】
【化11】
(式中
X
1は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、
Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValであ
り、
X
2は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、
Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValであ
り、
X
3は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、
Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValであ
り、
X
4は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、
Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValであ
り、
X
5は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、
Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValであ
り、
X
6は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、
Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValであ
り、
X
7は、Phe、Ile、Leu、Val、またはTyrであり、
X
8は、Asp、Glu、またはThrであり、
X
9は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、
Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValであ
り、
X
10は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile
、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValで
あり、
X
11は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile
、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValで
あり、
X
12は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile
、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValで
あり、
X
13は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile
、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValで
あり、
X
14は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile
、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValで
あり、
X
15は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile
、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはValで
ある)。
配列番号4=安定化したTencon(Tencon27)
【0156】
【化12】
配列番号5=TCL7(FGループおよびBCループ)
【0157】
【化13】
(式中
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
10、X
11、X
12、X
13、X
14、X
1
5、およびX
16は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、
V、W、またはYであり、
X
7、X
8、X
9、X
17、X
18、およびX
19は、A、D、E、F、G、H、I、K
、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、Yである、または削除されている)
配列番号6=TCL9(FGループ)
【0158】
【化14】
(式中
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、およびX
7は、A、D、E、F、G、H、I、K
、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYであり、
X
8、X
9、X
10、X
11、およびX
12は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、
N、P、Q、R、S、T、V、W、Yである、または削除されている)。
配列番号7=TCL14ライブラリー
【0159】
【化15】
(式中
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
10、X
11、X
12、およびX
13は、A、
D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W,Y、またはMであ
る)。
配列番号8=TCL24ライブラリー
TCL24ライブラリー(配列番号8)
【0160】
【化16】
(式中
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
10、X
11、X
12、およびX
13は、A、
D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、またはWである)。
配列番号9=Sloning-FOR
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【化39】
配列番号32 TenconのFGループ
【0184】
【0185】
【化41】
配列番号34=Tcon5E86Ishort
【0186】
【化42】
配列番号35 オリジナルのtenconCストランド
【0187】
【化43】
配列番号36 ALB-E05 Cストランド
【0188】
【化44】
配列番号37 ALB-E07 Cストランド
【0189】
【化45】
配列番号38 ALB-H9 Cストランド
【0190】
【化46】
配列番号39 オリジナルのtencon CDループ
【0191】
【化47】
配列番号40 ALB-E05 CDループ
【0192】
【化48】
配列番号41 ALB-E07 CDループ
【0193】
【化49】
配列番号42 ALB-H9 CDループ
【0194】
【化50】
配列番号43 オリジナルのtencon Fストランド
【0195】
【化51】
配列番号44 ALB-E05 Fストランド
【0196】
【化52】
配列番号45 ALB-E07 Fストランド
【0197】
【化53】
配列番号46 ALB-H9 Fストランド
【0198】
【化54】
配列番号47 オリジナルのtencon FGループ
【0199】
【化55】
配列番号48 ALB-E05 FGループ
【0200】
【化56】
配列番号49 ALB-E07 FGループ
【0201】
【化57】
配列番号50 ALB-H9 FGループ
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【化68】
配列番号61 A(EAAAK)
5AAA
【0213】
【0214】
【化70】
配列番号63 カニクイザル血清アルブミン
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【化75】
配列番号68 第3FN3ドメイン ヒトテネイシンC
【0220】
【化76】
配列番号69 フィブコン(Fibcon)
【0221】
【化77】
配列番号70 第10FN3ドメイン ヒトフィブロネクチン
【0222】