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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046517
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】電子材料用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20220315BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220315BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20220315BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20220315BHJP
   C08L 61/34 20060101ALI20220315BHJP
   C08K 5/315 20060101ALI20220315BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20220315BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220315BHJP
   B32B 15/088 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
H05K1/03 610P
C08L63/00 A
C08K5/3415
C08L71/00 Z
C08L61/34
C08K5/315
C08J5/24 CEZ
B32B15/08 J
B32B15/088
H05K1/03 630H
H05K1/03 610L
H05K1/03 610K
H05K1/03 630C
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200181
(22)【出願日】2021-12-09
(62)【分割の表示】P 2016236665の分割
【原出願日】2016-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大西 展義
(72)【発明者】
【氏名】富澤 克哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 環
(72)【発明者】
【氏名】志賀 英祐
(72)【発明者】
【氏名】古賀 将太
(57)【要約】
【課題】熱膨張率がより低く、誘電率及び誘電正接等の電気特性に優れる硬化物を与える
電子材料用樹脂組成物、並びに、該電子材料用樹脂組成物を用いた、プリプレグ、レジン
シート、金属箔張積層板、及びプリント配線板を提供することを目的とする。
【解決手段】ビスマレイミド化合物(A)を含み、
該ビスマレイミド化合物(A)が、マレイミド基2個と、下記式(1)で表されるポリ
イミド基1個以上と、を有し、
【化1】
2個の前記マレイミド基は、各々独立して、8以上の原子が直鎖状に連結した第1の連
結基を少なくとも介して、前記ポリイミド基の両端に結合している、
電子材料用樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマレイミド化合物(A)を含み、
該ビスマレイミド化合物(A)が、マレイミド基2個と、下記式(1)で表されるポリ
イミド基1個以上と、を有し、
2個の前記マレイミド基は、各々独立して、8以上の原子が直鎖状に連結した第1の連
結基を少なくとも介して、前記ポリイミド基の両端に結合している、
電子材料用樹脂組成物。
【化1】
【請求項2】
前記ビスマレイミド化合物(A)が、環を構成する原子数が4以上10以下のヘテロ原
子を含んでもよい環状炭化水素基1個以上をさらに有し、
2個の前記マレイミド基は、各々独立して、8以上の原子が直鎖状に連結した前記第1
の連結基を介して前記環状炭化水素基に結合し、
前記ポリイミド基は、各々独立して、8以上の原子が直鎖状に連結した第2の連結基を
介して前記環状炭化水素基に結合している、
請求項1に記載の電子材料用樹脂組成物。
【請求項3】
前記環状炭化水素基が、脂環基である、
請求項2に記載の電子材料用樹脂組成物。
【請求項4】
前記第1の連結基及び/又は前記第2の連結基が、置換又は非置換の2価の炭化水素基
である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物。
【請求項5】
前記ビスマレイミド化合物(A)が下記式(2)で表される繰返し単位を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物。
【化2】
(式中、R1及びR3は、各々独立して、8以上の原子が直鎖状に連結した炭化水素基を表
し、R2は、置換又は非置換の、環を構成する原子数が4以上10以下のヘテロ原子を含
んでもよい環状炭化水素基を表す。)
【請求項6】
前記ビスマレイミド化合物(A)が下記式(3)で表される直鎖状ポリマー構造を有す
る、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物。
【化3】
(式中、R1及びR3は、各々独立して、8以上の原子が直鎖状に連結した炭化水素基を表
し、R2は、各々独立して、置換又は非置換の、環を構成する原子数が4以上10以下の
ヘテロ原子を含んでもよい環状炭化水素基を表し、nは1~10の数を表す。)
【請求項7】
前記ビスマレイミド化合物(A)の重量平均分子量が、1×103~1×104である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物。
【請求項8】
前記ビスマレイミド化合物(A)以外のマレイミド化合物(B)、シアン酸エステル化
合物(C)、エポキシ樹脂(D)、フェノール樹脂(E)、オキセタン樹脂(F)、ベン
ゾオキサジン化合物(G)、及び重合可能な不飽和基を有する化合物(H)からなる群よ
り選ばれる1種以上をさらに含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物。
【請求項9】
前記ビスマレイミド化合物(A)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、5~
60質量部である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物。
【請求項10】
前記シアン酸エステル化合物(C)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、1
0~60質量部である、
請求項8又は9に記載の電子材料用樹脂組成物。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂(D)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、10~45質
量部である、
請求項8~10のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物。
【請求項12】
充填材(I)をさらに含む、
請求項1~11のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物。
【請求項13】
前記充填材(I)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、50~300質量部
である、
請求項12に記載の電子材料用樹脂組成物。
【請求項14】
基材と、
該基材に含浸又は塗布された、請求項1~13のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂
組成物と、を有する、
プリプレグ。
【請求項15】
シート基材と、
該シート基材の片面または両面に積層された、請求項1~13のいずれか一項に記載の
電子材料用樹脂組成物と、を有する、
レジンシート。
【請求項16】
絶縁層と、
該絶縁層の片面又は両面に積層形成された導体層と、を有し、
前記絶縁層が、請求項1~13のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物を含む、
金属箔張積層板。
【請求項17】
絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成された導体層とを有し、
前記絶縁層が、請求項1~13のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物を含む、
プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や通信機、パーソナルコンピューター等に広く用いられている半導体パ
ッケージの高機能化、小型化が進むに従い、半導体パッケージ用の各部品の高集積化や高
密度実装化が近年益々加速している。それに伴い、半導体素子と半導体プラスチックパッ
ケージ用プリント配線板との熱膨張率の差によって生じる半導体プラスチックパッケージ
の反りが問題となっており、様々な対策が講じられてきている。
【0003】
その対策の一つとして、プリント配線板に用いられる絶縁層の低熱膨張化が挙げられる
。これは、プリント配線板の熱膨張率を半導体素子の熱膨張率に近づけることで反りを抑
制する手法であり、現在盛んに取り組まれている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-216884号公報
【特許文献2】特許第3173332号公報
【特許文献3】特開2009-035728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に記載の従来の手法によるプリント配線板の低熱膨張化
は既に限界が近づいており、さらなる低熱膨張化が困難となっている。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、熱膨張率がより低く、誘電率及び
誘電正接等の電気特性に優れる硬化物を与える電子材料用樹脂組成物、並びに、該電子材
料用樹脂組成物を用いた、プリプレグ、レジンシート、金属箔張積層板、及びプリント配
線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、所定のビスマレイ
ミド化合物(A)を用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完
成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
ビスマレイミド化合物(A)を含み、
該ビスマレイミド化合物(A)が、マレイミド基2個と、下記式(1)で表されるポリ
イミド基1個以上と、を有し、
【化1】
2個の前記マレイミド基は、各々独立して、8以上の原子が直鎖状に連結した第1の連
結基を少なくとも介して、前記ポリイミド基の両端に結合している、
電子材料用樹脂組成物。
〔2〕
前記ビスマレイミド化合物(A)が、環を構成する原子数が4以上10以下のヘテロ原
子を含んでもよい環状炭化水素基1個以上をさらに有し、
2個の前記マレイミド基は、各々独立して、8以上の原子が直鎖状に連結した前記第1
の連結基を介して前記環状炭化水素基に結合し、
前記ポリイミド基は、各々独立して、8以上の原子が直鎖状に連結した第2の連結基を
介して前記環状炭化水素基に結合している、
〔1〕に記載の電子材料用樹脂組成物。
〔3〕
前記環状炭化水素基が、脂環基である、
〔1〕又は〔2〕に記載の電子材料用樹脂組成物。
〔4〕
〔1〕の連結基及び/又は前記第2の連結基が、置換又は非置換の2価の炭化水素基で
ある、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物。
〔5〕
前記ビスマレイミド化合物(A)が下記式(2)で表される繰返し単位を有する、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物。
【化2】
(式中、R1及びR3は、各々独立して、8以上の原子が直鎖状に連結した炭化水素基を表
し、R2は、置換又は非置換の、環を構成する原子数が4以上10以下のヘテロ原子を含
んでもよい環状炭化水素基を表す。)
〔6〕
前記ビスマレイミド化合物(A)が下記式(3)で表される直鎖状ポリマー構造を有す
る、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物。
【化3】
(式中、R1及びR3は、各々独立して、8以上の原子が直鎖状に連結した炭化水素基を表
し、R2は、各々独立して、置換又は非置換の、環を構成する原子数が4以上10以下の
ヘテロ原子を含んでもよい環状炭化水素基を表し、nは1~10の数を表す。)
〔7〕
前記ビスマレイミド化合物(A)の重量平均分子量が、1×103~1×104である、
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物。
〔8〕
前記ビスマレイミド化合物(A)以外のマレイミド化合物(B)、シアン酸エステル化
合物(C)、エポキシ樹脂(D)、フェノール樹脂(E)、オキセタン樹脂(F)、ベン
ゾオキサジン化合物(G)、及び重合可能な不飽和基を有する化合物(H)からなる群よ
り選ばれる1種以上をさらに含む、
〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物。
〔9〕
前記ビスマレイミド化合物(A)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、5~
60質量部である、
〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物。
〔10〕
前記シアン酸エステル化合物(C)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、1
0~60質量部である、
〔8〕又は〔9〕に記載の電子材料用樹脂組成物。
〔11〕
前記エポキシ樹脂(D)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、10~45質
量部である、
〔8〕~〔10〕のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物。
〔12〕
充填材(I)をさらに含む、
〔1〕~〔11〕のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物。
〔13〕
前記充填材(I)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対して、50~300質量部
である、
〔12〕に記載の電子材料用樹脂組成物。
〔14〕
基材と、
該基材に含浸又は塗布された、〔1〕~〔13〕のいずれか一項に記載の電子材料用樹
脂組成物と、を有する、
プリプレグ。
〔15〕
シート基材と、
該シート基材の片面または両面に積層された、〔1〕~〔13〕のいずれか一項に記載
の電子材料用樹脂組成物と、を有する、
レジンシート。
〔16〕
絶縁層と、
該絶縁層の片面又は両面に積層形成された導体層と、を有し、
前記絶縁層が、〔1〕~〔13〕のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物を含む

金属箔張積層板。
〔17〕
絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成された導体層とを有し、
前記絶縁層が、〔1〕~〔13〕のいずれか一項に記載の電子材料用樹脂組成物を含む

プリント配線板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱膨張率がより低く、誘電率及び誘電正接等の電気特性に優れる硬化
物を与える電子材料用樹脂組成物、並びに、該電子材料用樹脂組成物を用いた、プリプレ
グ、レジンシート、金属箔張積層板、及びプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に
説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々
な変形が可能である。
【0011】
〔電子材料用樹脂組成物〕
本実施形態の電子材料用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、ビス
マレイミド化合物(A)を含み、該ビスマレイミド化合物(A)が、マレイミド基2個と
、下記式(1)で表されるポリイミド基1個以上と、を有し、2個の前記マレイミド基は
、各々独立して、8以上の原子が直鎖状に連結した第1の連結基を少なくとも介して、前
記ポリイミド基の両端に結合しているものである。
【化4】
【0012】
〔ビスマレイミド化合物(A)〕
ビスマレイミド化合物(A)は、マレイミド基2個と、上記式(1)で表されるポリイ
ミド基1個以上と、を有し、2個の前記マレイミド基は、各々独立して、8以上の原子が
直鎖状に連結した第1の連結基を少なくとも介して、前記ポリイミド基の両端に結合して
いるものである。このような構造を有するビスマレイミド化合物(A)は、マレイミド基
、ポリイミド基の分子内位置の自由度が増加し、結果として、硬化物にしたときの応力緩
和能が高く、熱膨張率の低い硬化物が得られる。このような応力緩和能の高いビスマレイ
ミド化合物(A)を用いることにより、後述するプリプレグを例にすれば、樹脂と基材(
非樹脂)の応力差が小さくなり、基材の物性に追従し熱膨張量がより低減する。また、こ
のような応力差の減少によって、反りの発生も抑制することが可能となる。さらに、マレ
イミド基、ポリイミド基の分子内位置の自由度の増加により、硬化物における誘電率及び
誘電正接等の電気特性もより向上する傾向にある。したがって、このようなビスマレイミ
ド化合物(A)を用いることにより、高いガラス転移温度(Tg)、耐熱性だけでなく、
低熱膨張性、誘電率及び誘電正接等の電気特性に優れる硬化物を与える電子材料用樹脂組
成物、並びに、該電子材料用樹脂組成物を用いた、プリプレグ、レジンシート、金属箔張
積層板、及びプリント配線板を製造できるようになる。
【0013】
第1の連結基は、8以上の原子が直鎖状に連結したものであれば特に限定されないが、
例えば、8以上の炭素原子を有する、置換又は非置換の2価の炭化水素基であることが好
ましく、8~10の炭素原子を有する、置換又は非置換の2価の炭化水素基であることが
より好ましい。置換又は非置換の2価の炭化水素基としては、特に限定されないが、例え
ば、置換又は非置換の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換又は非置換の分岐状脂肪族炭化水素
基、及び置換又は非置換の環状脂肪族炭化水素基が挙げられる。なかでも、置換又は非置
換の直鎖状脂肪族炭化水素基がより好ましく、オクチレン基、ノナメチレン基、デカメチ
レン基、ドデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、オクタデカメチレン基等の非置換の
直鎖状脂肪族炭化水素基がより好ましく、オクチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン
基が特に好ましい。
【0014】
2個のマレイミド基は、各々独立して、8以上の原子が直鎖状に連結した第1の連結基
を少なくとも介して、ポリイミド基の両端に結合していればよく、第1の連結基と第1の
連結基以外の基を介して、2個のマレイミド基がポリイミド基の両端に結合していてもよ
い。なかでも、ビスマレイミド化合物(A)が、環を構成する原子数が4以上10以下の
ヘテロ原子を含んでもよい環状炭化水素基1個以上をさらに有し、2個の前記マレイミド
基は、各々独立して、8以上の原子が直鎖状に連結した前記第1の連結基を介して前記環
状炭化水素基に結合し、前記ポリイミド基は、各々独立して、8以上の原子が直鎖状に連
結した第2の連結基を介して前記環状炭化水素基に結合しているものであるのが好ましい
。このように、第2の連結基を有するビスマレイミド化合物(A)は、マレイミド基、ポ
リイミド基の分子内位置の自由度がさらに増加する傾向にある。また、第2の連結基と環
状炭化水素基とを有することにより、自由体積が増加し、結果として、分子の自由度がよ
り一層向上する傾向にある。そのため、このようなビスマレイミド化合物(A)は、より
高い応力緩和能を有する傾向にある。したがって、このようなビスマレイミド化合物(A
)を用いることにより、上述したとおり、得られる硬化物の熱膨張率がより低下する傾向
にあり、誘電率及び誘電正接等の電気特性がより優れる傾向にある。
【0015】
ここで、ヘテロ原子を含んでもよい環状炭化水素基としては、環を構成する原子数が4
以上10以下のものであれば特に限定されないが、例えば、置換又は非置換の脂環基、置
換又は非置換の芳香族基、及び置換又は非置換の複素環基が挙げられる。このなかでも、
置換又は非置換の脂環基、置換又は非置換の芳香族基が好ましく、置換又は非置換の脂環
基がより好ましく、アルキル基置換の脂環基がさらに好ましい。なお、環を構成する原子
数とは、環状に連結している原子の数であって、側鎖の置換基等の原子数は含まれない。
このような環状炭化水素基を有することにより、ビスマレイミド化合物(A)はより高い
応力緩和能を有する傾向にあり、結果として、得られる硬化物の熱膨張率がより低下する
傾向にあり、誘電率及び誘電正接等の電気特性がより優れる傾向にある。置換又は非置換
の脂環基における脂環部分の基としては、例えば、2価又は2価以上の、シクロブチル基
、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基が挙げられ
る。また、アルキル基置換の脂環基におけるアルキル基は、特に限定されないが、炭素数
1~10のアルキル基が好ましく、炭素数3~10のアルキル基がより好ましい。炭素数
1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプ
ロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチ
ル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、テキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基
、n-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基が挙げられる。アルキル基置換の
脂環基におけるアルキル基は、1つでもよく、2以上であってもよい。
【0016】
また、第2の連結基は、8以上の原子が直鎖状に連結したものであれば特に限定されな
いが、例えば、8以上の炭素原子を有する、置換又は非置換の2価の炭化水素基であるこ
とが好ましく、8~10の炭素原子を有する、置換又は非置換の2価の炭化水素基である
ことがより好ましい。置換又は非置換の2価の炭化水素基としては、特に限定されないが
、例えば、置換又は非置換の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換又は非置換の分岐状脂肪族炭
化水素基、及び置換又は非置換の環状脂肪族炭化水素基が挙げられる。なかでも、置換又
は非置換の直鎖状脂肪族炭化水素基がより好ましく、オクチレン基、ノナメチレン基、デ
カメチレン基、ドデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、オクタデカメチレン基等の非
置換の直鎖状脂肪族炭化水素基がより好ましく、オクチレン基、ノナメチレン基、デカメ
チレン基が特に好ましい。
【0017】
上記ビスマレイミド化合物(A)は、下記式(2)で表される繰返し単位を有する化合
物が好ましい。このようなビスマレイミド化合物(A)はより高い応力緩和能を有する傾
向にあり、結果として、得られる硬化物の熱膨張率がより低下する傾向にあり、誘電率及
び誘電正接等の電気特性がより優れる傾向にある。
【化5】
(式中、R1及びR3は、各々独立して、8以上の原子が直鎖状に連結した炭化水素基を表
し、R2は、置換又は非置換の、環を構成する原子数が4以上10以下のヘテロ原子を含
んでもよい環状炭化水素基を表す。)
【0018】
ここで、R2が環を構成する原子数が4以上10以下のヘテロ原子を含んでもよい環状
炭化水素基を表し、R3が、第2の連結基を表す。また、環状炭化水素基R2と結合するR
1は、その他端がマレイミド基と結合する場合には第1の連結基を表し、他端がポリイミ
ド基と結合する場合には第2の連結基を表す。一方、R1の他端が、例えば、環状炭化水
素基R2と結合する場合には、R1は、2つの環状炭化水素基R2を結合するものであって
もよい。なお、式(2)における、8以上の原子が直鎖状に連結した炭化水素基及び環を
構成する原子数が4以上10以下の環状炭化水素基は、上記と同様のものを例示すること
ができる。
【0019】
より具体的には、上記ビスマレイミド化合物(A)は、下記式(3)で表される直鎖状
ポリマー構造を有するものであることが好ましい。このようなビスマレイミド化合物(A
)はより高い応力緩和能を有する傾向にあり、結果として、得られる硬化物の熱膨張率が
より低下する傾向にあり、誘電率及び誘電正接等の電気特性がより優れる傾向にある。
【化6】
(式中、R1及びR3は、各々独立して、8以上の原子が直鎖状に連結した炭化水素基を表
し、R2は、各々独立して、置換又は非置換の、環を構成する原子数が4以上10以下の
ヘテロ原子を含んでもよい環状炭化水素基を表し、nは1~10の数を表す。)
【0020】
式(3)において、R1及びR3が、オクチレン基であり、R2が、炭素原子数6~8の
アルキル基を置換基として有するシクロアルキレン基であることが好ましい。
【0021】
上記式(3)で表されるビスマレイミド化合物(A)としては、特に限定されないが、
例えば、BMI-5000(Designer Molecules inc.製)を用
いることができる。このような化合物を用いることにより、熱膨張率がより低下する傾向
にある。
【0022】
ビスマレイミド化合物(A)の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは1
×103~1×104であり、より好ましくは2×103~9×103であり、特に好ましく
は3×103~8×103である。ビスマレイミド化合物(A)の重量平均分子量が上記範
囲内であることにより、得られる硬化物の熱膨張率がより低下する傾向にある。なお、重
量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により、ポリスチレン換算
の重量平均分子量(Mw)として求めることができる。
【0023】
ビスマレイミド化合物(A)の含有量は、特に限定されないが、樹脂固形分100質量
部に対して、好ましくは5~60質量部であり、好ましくは10~55質量部であり、好
ましくは15~50質量部である。ビスマレイミド化合物(A)の含有量が上記範囲内で
あることにより、得られる硬化物の熱膨張率、誘電率、誘電正接、弾性率がより低下する
傾向にある。なお、本実施形態において、「樹脂固形分」とは、特に断りのない限り、樹
脂組成物における、溶剤及び充填材を除いた成分をいい、「樹脂固形分100質量部」と
は、樹脂組成物における溶剤及び充填材を除いた成分の合計が100質量部であることを
いうものとする。
【0024】
〔その他の成分〕
本実施形態の樹脂組成物は、上記ビスマレイミド化合物(A)に加えて、必要に応じて
、上記ビスマレイミド化合物(A)以外のマレイミド化合物(B)、シアン酸エステル化
合物(C)、エポキシ樹脂(D)、フェノール樹脂(E)、オキセタン樹脂(F)、ベン
ゾオキサジン化合物(G)、及び重合可能な不飽和基を有する化合物(H)からなる群よ
り選ばれる1種以上をさらに含むことができる。このなかでも、マレイミド化合物(B)
、シアン酸エステル化合物(C)、エポキシ樹脂(D)を含むことが好ましい。以下、各
成分について説明する。
【0025】
(マレイミド化合物(B))
上記ビスマレイミド化合物(A)以外のマレイミド化合物(B)としては、特に限定さ
れないが、マレイミド化合物としては、分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物
であれば特に限定されないが、例えば、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニ
ルマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレ
イミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフ
ェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビ
ス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、式(6)で表されるマレイミ
ド化合物、これらマレイミド化合物のプレポリマー、若しくはマレイミド化合物とアミン
化合物のプレポリマーが挙げられる。このなかでも、ビス(4-マレイミドフェニル)メ
タン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(
3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、及び式(6)で表されるマ
レイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。このようなマレイミ
ド化合物を含むことにより、得られる硬化物の熱膨張率がより低下し、耐熱性がより向上
する傾向にある。マレイミド化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用し
てもよい。
【化7】
(式中、R5は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、n1は1以上の整数を表す
。)
【0026】
マレイミド化合物(B)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは5
~30質量部であり、より好ましくは10~25質量部であり、さらに好ましくは15~
20質量部である。マレイミド化合物(B)の含有量が上記範囲内であることにより、耐
熱性、硬化性がより優れる傾向にある。
【0027】
(シアン酸エステル化合物(C))
シアン酸エステル化合物(C)としては、特に限定されないが、例えば、式(7)で示
されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル、式(8)で示されるノボラック型シア
ン酸エステル、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル、ビス(3,5-ジメチル4-
シアナトフェニル)メタン、ビス(4-シアナトフェニル)メタン、1,3-ジシアナト
ベンゼン、1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、1,3-
ジシアナトナフタレン、1,4-ジシアナトナフタレン、1,6-ジシアナトナフタレン
、1,8-ジシアナトナフタレン、2,6-ジシアナトナフタレン、2、7-ジシアナト
ナフタレン、1,3,6-トリシアナトナフタレン、4、4’-ジシアナトビフェニル、
ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、
ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、及び2、2’-ビス(4-シアナトフェニル)
プロパン;これらシアン酸エステルのプレポリマー等が挙げられる。上述したシアン酸エ
ステル化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【化8】
(式(7)中、R6は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、このなかでも水素原
子が好ましい。また、式(7)中、n2は1以上の整数を表す。n2の上限値は、通常は1
0であり、好ましくは6である。)
【化9】
(式(8)中、R7は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、このなかでも水素原
子が好ましい。また、式(8)中、n3は1以上の整数を表す。n3の上限値は、通常は1
0であり、好ましくは7である。)
【0028】
このなかでも、シアン酸エステル化合物(C)が、式(7)で示されるナフトールアラ
ルキル型シアン酸エステル、式(8)で示されるノボラック型シアン酸エステル、及びビ
フェニルアラルキル型シアン酸エステルからなる群より選ばれる1種以上を含むことが好
ましく、式(7)で示されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル及び式(8)で示
されるノボラック型シアン酸エステルからなる群より選ばれる1種以上を含むことがより
好ましい。このようなシアン酸エステル化合物(C)を用いることにより、難燃性により
優れ、硬化性がより高く、かつ熱膨張係数がより低い硬化物が得られる傾向にある。
【0029】
シアン酸エステル化合物(C)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、好まし
くは10~60質量部であり、より好ましくは10~55質量部であり、さらに好ましく
は10~50質量部である。シアン酸エステル化合物(C)の含有量が上記範囲内である
ことにより、耐熱性、低誘電、低誘電正接等により優れる傾向にある。
【0030】
(エポキシ樹脂(D))
エポキシ樹脂(D)としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシナフチレン型
エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビ
スフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノ
ボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ
樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、キシレンノボラック型エポキシ樹脂、多官
能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラッ
ク型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキ
シ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノ
ール型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジルエステル型エポキシ
樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニ
ルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフト
ールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフ
ェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペン
タジエン型エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、グリシジ
ルアミン、ブタジエンなどの二重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコーン樹
脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物、或いはこれらのハロゲン化物
等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用
いることができる。このなかでも、ポリオキシナフチレン型エポキシ樹脂が好ましい。こ
のようなエポキシ樹脂(D)を含むことにより、得られる硬化物の難燃性及び耐熱性がよ
り向上する傾向にある。
【0031】
エポキシ樹脂(D)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは10~
45質量部であり、より好ましくは10~40質量部であり、さらに好ましくは10~3
5質量部である。エポキシ樹脂(D)の含有量が上記範囲内であることにより、接着性や
可撓性等により優れる傾向にある。
【0032】
(フェノール樹脂(E))
フェノール樹脂(E)としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型フ
ェノール樹脂、ビスフェノールE型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂
、ビスフェノールS型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノ
ボラック型フェノール樹脂、グリシジルエステル型フェノール樹脂、アラルキルノボラッ
ク型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型
フェノール樹脂、多官能フェノール樹脂、ナフトール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、
多官能ナフトール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック
型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フ
ェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、
脂環式フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、水酸基
含有シリコーン樹脂類等が挙げられるが、特に制限されるものではない。これらのフェノ
ール樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
フェノール樹脂(E)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは10
~45質量部であり、より好ましくは10~40質量部であり、さらに好ましくは10~
35質量部である。フェノール樹脂(E)の含有量が上記範囲内であることにより、接着
性や可撓性等により優れる傾向にある。
【0034】
(オキセタン樹脂(F))
オキセタン樹脂(F)としては、特に限定されないが、例えば、オキセタン、2-メチ
ルオキセタン、2,2-ジメチルオキセタン、3-メチルオキセタン、3,3-ジメチル
オキセタン等のアルキルオキセタン、3-メチル-3-メトキシメチルオキセタン、3,
3’-ジ(トリフルオロメチル)パーフルオキセタン、2-クロロメチルオキセタン、3
,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、ビフェニル型オキセタン、OXT-101(東
亞合成製商品名)、OXT-121(東亞合成製商品名)等が挙げられる。これらのオキ
セタン樹脂は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
オキセタン樹脂(F)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは10
~45質量部であり、より好ましくは10~40質量部であり、さらに好ましくは10~
35質量部である。オキセタン樹脂(F)の含有量が上記範囲内であることにより、密着
性や可撓性等により優れる傾向にある。
【0036】
(ベンゾオキサジン化合物(G))
ベンゾオキサジン化合物(G)としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノー
ルA型ベンゾオキサジンBA-BXZ(小西化学製商品名)ビスフェノールF型ベンゾオ
キサジンBF-BXZ(小西化学製商品名)、ビスフェノールS型ベンゾオキサジンBS
-BXZ(小西化学製商品名)等が挙げられる。これらのベンゾオキサジン化合物(G)
は、1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0037】
ベンゾオキサジン化合物(G)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、好まし
くは10~45質量部であり、より好ましくは10~40質量部であり、さらに好ましく
は10~35質量部である。ベンゾオキサジン化合物(G)の含有量が上記範囲内である
ことにより、耐熱性等により優れる傾向にある。
【0038】
(重合可能な不飽和基を有する化合物(H))
重合可能な不飽和基を有する化合物(H)としては、特に限定されないが、例えば、エ
チレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のビニル化合
物;メチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒ
ドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(
メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリ
スリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1価又は多価アルコールの(メタ)アクリレ
ート類;ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキ
シ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート類;ベンゾシクロブテン樹脂
;(ビス)マレイミド樹脂等が挙げられる。これらの重合可能な不飽和基を有する化合物
は、1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0039】
重合可能な不飽和基を有する化合物(H)の含有量は、樹脂固形分100質量部に対し
て、好ましくは10~45質量部であり、より好ましくは10~40質量部であり、さら
に好ましくは10~35質量部である。重合可能な不飽和基を有する化合物(H)の含有
量が上記範囲内であることにより、耐熱性や靱性等により優れる傾向にある。
【0040】
〔充填材(I)〕
本実施形態の樹脂組成物は、充填材(I)をさらに含有してもよい。充填材(I)とし
ては、公知のものを適宜使用することができ、その種類は特に限定されず、積層板用途に
おいて一般に使用されている無機充填材及び/又は有機充填材を好適に用いることができ
る。
【0041】
無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、合成シ
リカ、アモルファスシリカ、アエロジル、中空シリカなどのシリカ類;ホワイトカーボン
などのケイ素化合物;チタンホワイト、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム
などの金属酸化物;窒化ホウ素、凝集窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの
金属窒化物;硫酸バリウムなどの金属硫酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウ
ム加熱処理品(水酸化アルミニウムを加熱処理し、結晶水の一部を減じたもの)、ベーマ
イト、水酸化マグネシウムなどの金属水和物;酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛などの
モリブデン化合物;ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛などの亜鉛化合物;アルミナ、クレー、カオリ
ン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、E-ガラス、A-ガラス
、NE-ガラス、C-ガラス、L-ガラス、D-ガラス、S-ガラス、M-ガラスG20
、ガラス短繊維(Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラスなどのガラス微粉
末類を含む。)、中空ガラス、球状ガラスなどが挙げられる。無機充填材は、1種単独で
用いても、2種以上を併用してもよい。このなかでも、ベーマイト及び/又はシリカ類を
含むことが好ましい。このような無機充填材を用いることにより、熱膨張率がより低下す
る傾向にある。
【0042】
また、有機充填材としては、特に限定されないが、例えば、スチレン型、ブタジエン型
、アクリル型などのゴムパウダー;コアシェル型のゴムパウダー;シリコーンレジンパウ
ダー;シリコーンゴムパウダー;シリコーン複合パウダーなどが挙げられる。これらの充
填材は、1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0043】
充填材(I)の含有量は、特に限定されないが、樹脂固形分100質量部に対して、好
ましくは50~300質量部であり、より好ましくは75~250質量部であり、さらに
好ましくは100~200質量部である。充填材(I)の含有量が上記範囲内であること
により、熱膨張率がより低下する傾向にある。
【0044】
〔シランカップリング剤及び湿潤分散剤〕
本実施形態の樹脂組成物は、シランカップリング剤や湿潤分散剤をさらに含んでもよい
。シランカップリング剤や湿潤分散剤を含むことにより、上記充填材の分散性、樹脂成分
、充填材、及び後述する基材の接着強度がより向上する傾向にある。
【0045】
シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカッ
プリング剤であれば、特に限定されないが、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシ
ラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ
シラン系化合物;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系
化合物;γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン系化合物;
N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン
塩酸塩などのカチオニックシラン系化合物;フェニルシラン系化合物などが挙げられる。
シランカップリング剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0046】
湿潤分散剤としては、塗料用に使用されている分散安定剤であれば、特に限定されない
が、例えば、ビッグケミー・ジャパン(株)製のDISPER-110、111、118
、180、161、BYK-W996、W9010、W903等が挙げられる。
【0047】
〔硬化促進剤〕
本実施形態の樹脂組成物は、硬化促進剤をさらに含んでもよい。硬化促進剤としては、
特に限定されないが、例えば、トリフェニルイミダゾール等のイミダゾール類;過酸化ベ
ンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、パラクロロベンゾイル
パーオキサイド、ジ-tert-ブチル-ジ-パーフタレートなどの有機過酸化物;アゾ
ビスニトリルなどのアゾ化合物;N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルア
ニリン、N,N-ジメチルトルイジン、2-N-エチルアニリノエタノール、トリ-n-
ブチルアミン、ピリジン、キノリン、N-メチルモルホリン、トリエタノールアミン、ト
リエチレンジアミン、テトラメチルブタンジアミン、N-メチルピペリジンなどの第3級
アミン類;フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン、カテコールなどのフェ
ノール類;ナフテン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オレイン
酸錫、ジブチル錫マレート、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸コバルト、アセチルアセト
ン鉄などの有機金属塩;これら有機金属塩をフェノール、ビスフェノールなどの水酸基含
有化合物に溶解してなるもの;塩化錫、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどの無機金属塩;
ジオクチル錫オキサイド、その他のアルキル錫、アルキル錫オキサイドなどの有機錫化合
物などが挙げられる。これらのなかでも、トリフェニルイミダゾールが硬化反応を促進し
、ガラス転移温度、熱膨張率が優れる傾向にあるため、特に好ましい。
【0048】
〔溶剤〕
本実施形態の樹脂組成物は、溶剤をさらに含んでもよい。溶剤を含むことにより、樹脂
組成物の調製時における粘度が下がり、ハンドリング性がより向上するとともに後述する
基材への含浸性がより向上する傾向にある。
【0049】
溶剤としては、樹脂組成物中の樹脂成分の一部又は全部を溶解可能なものであれば、特
に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセルソルブなどのケ
トン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミドなどのアミ
ド類;プロピレングリコールモノメチルエーテル及びそのアセテートなどが挙げられる。
溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0050】
〔樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上述した各成分
を順次溶剤に配合し、十分に攪拌する方法が挙げられる。この際、各成分を均一に溶解或
いは分散させるため、攪拌、混合、混練処理などの公知の処理を行うことができる。具体
的には、適切な攪拌能力を有する攪拌機を付設した攪拌槽を用いて攪拌分散処理を行うこ
とで、樹脂組成物に対する充填材の分散性を向上させることができる。上記の攪拌、混合
、混練処理は、例えば、ボールミル、ビーズミルなどの混合を目的とした装置、又は、公
転又は自転型の混合装置などの公知の装置を用いて適宜行うことができる。
【0051】
また、樹脂組成物の調製時においては、必要に応じて有機溶剤を使用することができる
。有機溶剤の種類は、樹脂組成物中の樹脂を溶解可能なものであれば、特に限定されない
。その具体例は、上述したとおりである。
【0052】
〔用途〕
上記電子材料用樹脂組成物は、プリプレグ、レジンシート、金属箔張積層板、又はプリ
ント配線板として好適に用いることができ、プリント配線板用途により好適に用いること
ができる。以下、プリプレグ、レジンシート、金属箔張積層板、又はプリント配線板につ
いて説明する。
【0053】
〔プリプレグ〕
本実施形態のプリプレグは、基材と、該基材に含浸又は塗布された、上記樹脂組成物と
、を有する。プリプレグの製造方法は、常法にしたがって行うことができ、特に限定され
ない。例えば、本実施形態における樹脂成分を基材に含浸又は塗布させた後、100~2
00℃の乾燥機中で1~30分加熱するなどして半硬化(Bステ-ジ化)させることで、
本実施形態のプリプレグを作製することができる。
【0054】
樹脂組成物(充填材(I)を含む)の含有量は、プリプレグの総量に対して、好ましく
は30~90質量%であり、より好ましくは35~85質量%であり、好ましくは40~
80質量%である。樹脂組成物の含有量が上記範囲内であることにより、成形性がより向
上する傾向にある。
【0055】
(基材)
基材としては、特に限定されず、各種プリント配線板材料に用いられている公知のもの
を、目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。基材を構成する繊
維の具体例としては、特に限定されないが、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Q
ガラス、球状ガラス、NEガラス、Lガラス、Tガラスなどのガラス繊維;クォーツなど
のガラス以外の無機繊維;ポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、
デュポン株式会社製)、コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタ
ラミド(テクノーラ(登録商標)、帝人テクノプロダクツ株式会社製)などの全芳香族ポ
リアミド;2,6-ヒドロキシナフトエ酸・パラヒドロキシ安息香酸(ベクトラン(登録
商標)、株式会社クラレ製)、ゼクシオン(登録商標、KBセーレン製)などのポリエス
テル;ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(ザイロン(登録商標)、東洋紡績株式会
社製)、ポリイミドなどの有機繊維が挙げられる。これらのなかでも低熱膨張率の観点か
ら、Eガラスクロス、Tガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス、及び有機繊維
からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。これら基材は、1種単独で用いても
、2種以上を併用してもよい。
【0056】
基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョ
ップドストランドマット、サーフェシングマットなどが挙げられる。織布の織り方として
は、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これ
ら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また
、これらを開繊処理したものやシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布が好
適に使用される。基材の厚さや質量は、特に限定されないが、通常は0.01~0.3m
m程度のものが好適に用いられる。とりわけ、強度と吸水性との観点から、基材は、厚み
200μm以下、質量250g/m2以下のガラス織布が好ましく、Eガラス、Sガラス
、及びTガラスのガラス繊維からなるガラス織布がより好ましい。
【0057】
〔レジンシート〕
本実施形態のレジンシートは、シート基材と、該シート基材の片面または両面に積層さ
れた、上記樹脂組成物と、を有する。レジンシートとは、薄葉化の1つの手段として用い
られるもので、例えば、金属箔やフィルムなどのシート基材(支持体)に、直接、プリプ
レグ等に用いられる熱硬化性樹脂(無機充填材を含む)を塗布及び乾燥して製造すること
ができる。
【0058】
シート基材としては、特に限定されないが、各種プリント配線板材料に用いられている
公知の物もの使用することができる。例えばポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、
ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレン
テレフタレート(PBT)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(
PE)フィルム、アルミ箔、銅箔、金箔など挙げられる。その中でも電解銅箔、PETフ
ィルムが好ましい。
【0059】
塗布方法としては、例えば、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、バー
コーター、ダイコーター、ドクターブレード、ベーカーアプリケーター等でシート基材上
に塗布する方法が挙げられる。
【0060】
レジンシートは、上記樹脂組成物をシート基材に塗布後、半硬化(Bステージ化)させ
たものであることが好ましい。具体的には、例えば、上記樹脂組成物を銅箔などのシート
基材に塗布した後、100~200℃の乾燥機中で、1~60分加熱させる方法などによ
り半硬化させ、レジンシートを製造する方法などが挙げられる。シート基材に対する樹脂
組成物の付着量は、樹脂シートの樹脂厚で1~300μmの範囲が好ましい。
【0061】
なお、レジンシートは、シート基材から剥離して用いることもできる。
【0062】
〔金属箔張積層板〕
本実施形態の金属箔張積層板は、絶縁層と、該絶縁層の片面または両面に積層形成され
た導体層と、を有し、絶縁層が、上記樹脂組成物を含む。より具体的には、絶縁層はプリ
プレグ又は上記レジンシートを用いることができる。すなわち、本実施形態の金属箔張積
層板は、上記プリプレグ及び上記レジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種と
、金属箔とを積層して硬化して得られるものである。
【0063】
絶縁層は、上記樹脂組成物、1層のプリプレグ、又はレジンシートからなるものであっ
ても、上記樹脂組成物、プリプレグ、又はレジンシートを2層以上積層したものであって
もよい。
【0064】
導体層は、銅やアルミニウムなどの金属箔とすることができる。ここで使用する金属箔
は、プリント配線板材料に用いられるものであれば、特に限定されないが、圧延銅箔や電
解銅箔などの公知の銅箔が好ましい。また、導体層の厚みは、特に限定されないが、1~
70μmが好ましく、より好ましくは1.5~35μmである。
【0065】
金属箔張積層板の成形方法及びその成形条件は、特に限定されず、一般的なプリント配
線板用積層板及び多層板の手法及び条件を適用することができる。例えば、金属箔張積層
板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機な
どを用いることができる。また、金属箔張積層板の成形において、温度は100~300
℃、圧力は面圧2~100kgf/cm2、加熱時間は0.05~5時間の範囲が一般的
である。さらに、必要に応じて、150~300℃の温度で後硬化を行うこともできる。
また、上述のプリプレグと、別途作成した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形する
ことにより、多層板とすることも可能である。
【0066】
〔プリント配線板〕
本実施形態のプリント配線板は、絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成された導体層とを
含むプリント配線板であって、前記絶縁層が、上記樹脂組成物を含む。上記の金属箔張積
層板は、所定の配線パターンを形成することにより、プリント配線板として好適に用いる
ことができる。そして、上記の金属箔張積層板は、低い熱膨張率、良好な成形性及び耐薬
品性を有し、そのような性能が要求される半導体パッケージ用プリント配線板として、殊
に有効に用いることができる。
【0067】
本実施形態のプリント配線板は、具体的には、例えば、以下の方法により製造すること
ができる。まず、上述の金属箔張積層板(銅張積層板等)を用意する。金属箔張積層板の
表面にエッチング処理を施して内層回路の形成を行い、内層基板を作成する。この内層基
板の内層回路表面に、必要に応じて接着強度を高めるための表面処理を行い、次いでその
内層回路表面に上述のプリプレグを所要枚数重ね、更にその外側に外層回路用の金属箔を
積層し、加熱加圧して一体成形する。このようにして、内層回路と外層回路用の金属箔と
の間に、基材及び熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層が形成された多層の積層板
が製造される。次いで、この多層の積層板にスルーホールやバイアホール用の穴あけ加工
を施した後、硬化物層に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアを除去
するためデスミア処理が行われる。その後この穴の壁面に内層回路と外層回路用の金属箔
とを導通させるめっき金属皮膜を形成し、更に外層回路用の金属箔にエッチング処理を施
して外層回路を形成し、プリント配線板が製造される。
【0068】
例えば、上述のプリプレグ(基材及びこれに添着された上述の樹脂組成物)、金属箔張
積層板の樹脂組成物層(上述の樹脂組成物からなる層)が、上述の樹脂組成物を含む絶縁
層を構成することになる。
【0069】
また、金属箔張積層板を用いない場合には、上記プリプレグ、上記レジンシート、上記
樹脂組成物に、回路となる導体層を形成しプリント配線板を作製してもよい。この際、導
体層の形成に無電解めっきの手法を用いることもできる。
【0070】
本実施形態のプリント配線板は、上述の絶縁層が半導体実装時のリフロー温度下におい
ても優れた弾性率を維持することで、半導体プラスチックパッケージの反りを効果的に抑
制することから、半導体パッケージ用プリント配線板として、殊に有効に用いることがで
きる。
【実施例0071】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実
施例によって何ら限定されるものではない。
【0072】
〔合成例1〕
反応器内で、α-ナフトールアラルキル型フェノール樹脂(SN495V、OH基当量
:236g/eq.、新日鐵化学(株)製:ナフトールアラルキルの繰り返し単位数nは
1~5のものが含まれる。)0.47mol(OH基換算)を、クロロホルム500mL
に溶解させ、この溶液にトリエチルアミン0.7molを添加した。温度を-10℃に保
ちながら反応器内に0.93molの塩化シアンのクロロホルム溶液300gを1.5時
間かけて滴下し、滴下終了後、30分撹拌した。その後さらに、0.1molのトリエチ
ルアミンとクロロホルム30gの混合溶液を反応器内に滴下し、30分撹拌して反応を完
結させた。副生したトリエチルアミンの塩酸塩を反応液から濾別した後、得られた濾液を
0.1N塩酸500mLで洗浄した後、水500mLでの洗浄を4回繰り返した。これを
硫酸ナトリウムにより乾燥した後、75℃でエバポレートし、さらに90℃で減圧脱気す
ることにより、褐色固形のα-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(SNCN
)を得た。得られたα-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂を赤外吸収スペク
トルにより分析したところ、2264cm-1付近のシアン酸エステル基の吸収が確認され
た。
【0073】
〔実施例1〕
ノボラック型マレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株)製)を17.
3質量部、合成例1で得られたナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂を28.7
質量部、ポリオキシナフチレン型エポキシ樹脂(HP-6000、DIC(株)製)を2
9.4質量部、ビスマレイミド化合物(BMI-5000、Designer Mole
cules inc.製)を24.6質量部、シリカ(SC-5050MOB、平均粒子
径1.5μm、アドマテックス(株)製)を120質量部、2,4,5-トリフェニルイ
ミダゾール(東京化成工業(株)製)を0.5質量部を混合してワニスを得た。このワニ
スをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのTガラス織布に含浸塗工し、140
℃で3分間加熱乾燥して、樹脂含有量44.5質量%のプリプレグを得た。得られたプリ
プレグを用いて金属箔張積層板を作製し、下記のTMA引張法にて熱膨張係数を測定した
結果を表1に示した。
【0074】
なお、ビスマレイミド化合物(BMI-5000)は、式(3)において、R1及びR3
が、オクチル基であり、R2が、ヘキシル基とオクチル基を置換基として有するシクロヘ
キシル基であり、重量平均分子量が5000である化合物である。
【0075】
〔比較例1〕
ノボラック型マレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株)製)を24.
6質量部、合成例1で得られたナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂を36.8
質量部、ポリオキシナフチレン型エポキシ樹脂(HP-6000、DIC(株)製)を3
8.6質量部、シリカ(SC-5050MOB、平均粒子径1.5μm、アドマテックス
(株)製)を120質量部、2,4,5-トリフェニルイミダゾール(東京化成工業(株
)製)を0.5質量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈
し、厚さ0.1mmのTガラス織布に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、樹脂
含有量44.5質量%のプリプレグを得た。得られたプリプレグを用いて金属箔張積層板
を作製し、下記のTMA引張法にて熱膨張係数を測定した結果を表1に示した。
【0076】
〔比較例2〕
ノボラック型マレイミド化合物(BMI-2300、大和化成工業(株)製)を12.
7質量部、合成例1で得られたナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂を30.9
質量部、ポリオキシナフチレン型エポキシ樹脂(HP-6000、DIC(株)製)を3
1.8質量部、下記式で表されるビスマレイミド化合物(BMI-1000P、大和化成
工業(株)製)を24.6質量部、シリカ(SC-5050MOB、平均粒子径1.5μ
m、アドマテックス(株)製)を120質量部、2,4,5-トリフェニルイミダゾール
(東京化成工業(株)製)を0.5質量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチル
エチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのTガラス織布に含浸塗工し、140℃で3分間
加熱乾燥して、樹脂含有量44.5質量%のプリプレグを得た。得られたプリプレグを用
いて金属箔張積層板を作製し、下記のTMA引張法にて熱膨張係数を測定した結果を表1
に示した。
【化10】
(式中、nの平均値は14である。)
【0077】
〔金属箔張積層板の作製〕
実施例1、比較例1又は比較例2で得られたプリプレグを8枚重ねて、12μm厚の電
解銅箔(3EC-III、三井金属鉱業(株)製)を上下に配置し、圧力30kgf/c
2、温度220℃で120分間の積層成型を行い、絶縁層厚さ0.8mmの金属箔張積
層板を得た。
【0078】
〔熱膨張係数(TMA引張法)〕
得られた8枚重ねの金属箔張積層板に対し、JlS C 6481に規定されるTMA
法(Thermo-mechanical analysis)により積層板の絶縁層に
ついてガラスクロスの縦方向の熱膨張係数を測定し、その値を求めた。具体的には、上記
で得られた金属箔張積層板の両面の銅箔をエッチングにより除去した後に、熱機械分析装
置(TAインスツルメント製)でTMA引張法にて測定を実施した。TMA引張法では、
荷重2.5g、チャック間10mm、40℃から340℃まで毎分10℃で昇温し、60℃
から120℃における線熱膨張係数(ppm/℃)を測定した。
【0079】
【表1】
【0080】
〔実施例2〕
合成例1で得られたナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂を50質量部、ビス
マレイミド化合物(BMI-3000J、Designer Molecules in
c.製)を50質量部、シリカ(SC-5050MOB、平均粒子径1.5μm、アドマ
テックス(株)製)を100質量部、オクチル酸亜鉛(日本化学産業(株)製)を0.0
5質量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.
1mmのTガラス織布に含浸塗工し、140℃で3分間加熱乾燥して、樹脂含有量50質
量%のプリプレグを得た。得られたプリプレグを用いて金属箔張積層板を作製し、下記の
方法にて物性評価した結果を表2に示した。なお、熱膨張係数はTMA圧縮法で測定した
【0081】
なお、ビスマレイミド化合物(BMI-3000J)は、式(3)において、R1及び
3が、オクチル基であり、R2が、ヘキシル基とオクチル基を置換基として有するシクロ
ヘキシル基であり、重量平均分子量が3000である化合物である。
【0082】
〔比較例3〕
ビスマレイミド化合物(BMI-3000J)に代えて、ノボラック型マレイミド化合
物(BMI-2300、大和化成工業(株)製)を50質量部用い、オクチル酸亜鉛の使
用量を0.1質量部としたこと以外は、実施例2と同様にして、樹脂含有量50質量%の
プリプレグを得た。得られたプリプレグを用いて金属箔張積層板を作製し、下記の方法に
て物性評価した結果を表2に示した。なお、熱膨張係数はTMA圧縮法で測定した。
【0083】
〔金属箔張積層板の作製〕
実施例2又は比較例3で得られたプリプレグを8枚重ねて、12μm厚の電解銅箔(3
EC-M3-VLP、三井金属(株)製)を上下に配置し、圧力30kgf/cm2、温
度220℃で120分間の積層成型を行い、絶縁層厚さ0.8mmの金属箔張積層板を得
た。
【0084】
〔ガラス転移温度〕
得られた8枚重ねの金属箔張積層板について、JIS C6481に準拠して動的粘弾
性分析装置(TAインスツルメント製)でDMA法によりガラス転移温度を測定した。
【0085】
〔熱膨張係数(TMA圧縮法)〕
得られた8枚重ねの金属箔張積層板に対し、JlS C 6481に規定されるTMA
法(Thermo-mechanical analysis)により積層板の絶縁層に
ついてガラスクロスの縦方向の熱膨張係数を測定し、その値を求めた。具体的には、上記
で得られた金属箔張積層板の両面の銅箔をエッチングにより除去した後に、熱機械分析装
置(TAインスツルメント製)でTMA圧縮法にて測定を実施した。TMA圧縮法では、
荷重5g、40℃から340℃まで毎分10℃で昇温し、60℃から120℃における線
熱膨張係数(ppm/℃)を測定した。
【0086】
〔積層板誘電率〕
銅張り積層板の銅箔を除去した試験片(n=1)を使用し、空洞共振器摂動法(Agi
lent 8722ES,アジレントテクノロジー製)にて2、10GHzの誘電率の測
定を3回実施し、その平均値を求めた。
【0087】
〔積層板誘電正接〕
銅張り積層板の銅箔を除去した試験片(n=1)を使用し、空洞共振器摂動法(Agi
lent 8722ES,アジレントテクノロジー製)にて2、10GHzの誘電正接の
測定を3回実施し、その平均値を求めた。
【0088】
〔熱重量減少率〕
得られた絶縁層厚さ0.8mmの金属箔張積層板の銅箔をエッチングにより除去した後
に、JIS K7120-1987に準拠し、示差熱熱重量同時測定装置TG/DTA6
200(エス・アイ・アイ・ナノテクノロジー(株)製)により、試験片3mm×3mm
×0.8mm、窒素流通下、開始温度300℃、昇温速度10℃/分で昇温した際の45
0℃到達時点における熱重量減少率(熱分解量(%))、また、熱重量減少率が1%とな
る温度について、下記式に基づき求めた。
熱重量減少率(%)=(I-J)/I×100
(Iは開始温度での重量を、Jは450℃における重量を表す。)
【0089】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の電子材料用樹脂組成物は、プリプレグ、レジンシート、金属箔張積層板、又は
プリント配線板の材料として産業上の利用可能性を有する。