(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046525
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】PEBAベースの組成物、及び耐疲労性の透明な物体を製造するための、該組成物の使用
(51)【国際特許分類】
C08G 81/00 20060101AFI20220315BHJP
C08G 69/48 20060101ALI20220315BHJP
C08G 65/32 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
C08G81/00
C08G69/48
C08G65/32
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021200732
(22)【出願日】2021-12-10
(62)【分割の表示】P 2019561760の分割
【原出願日】2018-05-04
(31)【優先権主張番号】1754153
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】トゥラン-アルトゥンタス, インシ
(72)【発明者】
【氏名】ピノー, クエンタン
(72)【発明者】
【氏名】ブロンデル, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】サバード, マチュー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】透明であり、容易に射出成型可能であり、透明性及び疲労強度を兼ね備える優れた特性の物体の製造を可能にする、熱可塑性エラストマーポリマーを提供する。
【解決手段】硬質のポリアミドブロックと、可撓性のポリエーテルブロック又はポリエステルブロックとのコポリマーであって、前記ポリアミドブロックは、半結晶性であり、かつX.X’/Y.Z型のコポリアミドから成り、ここで(i)X.X’は、脂肪族ジアミン.二酸のペアであり、(ii)Yは、脂環式ジアミンであり、(iii)Zは、脂肪族及び/又は芳香族ジカルボン酸である、コポリマーを使用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質のポリアミドブロックと、可撓性のポリエーテルブロック又はポリエステルブロックとのコポリマーであって、前記ポリアミドブロックは、半結晶性であり、かつX.X’/Y.Z型のコポリアミドから成り、ここで
(i)X.X’は、脂肪族ジアミン.二酸のペアであり、
(ii)Yは、脂環式ジアミンであり、
(iii)Zは、脂肪族及び/又は芳香族ジカルボン酸である、
コポリマー。
【請求項2】
X.X’/Y.Zのモル比が、5/1から25/1の範囲内、好ましくは7/1から20/1の範囲内、好ましくは7/1から17/1の範囲内、好ましくは7/1から10/1の範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
様々な成分の重量パーセンテージが、以下のようになる:
(i)モノマーX.X’のパーセンテージは、75~98重量%の範囲内、好ましくは80~90重量%の範囲内にあり、
(ii)モノマーY.Zのパーセンテージは、2~25重量%の範囲内、好ましくは10~20重量%の範囲内にあり、
合計で100%のポリアミドブロックを形成する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項4】
コポリマー中のポリアミドブロックのパーセンテージが、60~97重量%の範囲内、好ましくは65~95重量%の範囲内にあり、コポリマー中のポリエーテルブロックのパーセンテージが、3~40重量%の範囲内、好ましくは5~35重量%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項5】
ジアミン.二酸のペアX.X’が、6.10、6.12、6.14、10.10、10.12、10.14、12.10、12.12、12.14から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項6】
脂環式ジアミンYが、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)ブタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM又はMACM)、p-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、イソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)(PACP)、イソホロンジアミン(IPD)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項7】
脂肪族及び/又は芳香族ジカルボン酸が、6~36個の炭素原子、好ましくは9~18個の炭素原子を有する脂肪族及び/又は芳香族ジカルボン酸、特にプリポール、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、及び1,18-オクタデカンジカルボン酸から選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項8】
・PAブロックの数平均分子量が、500~18,000g/molの範囲内、好ましくは1000~15,000g/molの範囲内にあり、かつ
・PEブロックの数平均分子量が、500~2000g/molの範囲内、好ましくは650~1000g/molの範囲内にある、
ことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項9】
PEブロックが、少なくとも1つのポリアルキレンエーテルポリオール、特にポリアルキレンエーテルジオール、ジェフアミン、及びこれらの混合物から誘導されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項10】
ポリアルキレンエーテルジオールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項9に記載のコポリマー。
【請求項11】
・厚さ2mmのシートを通した560nmでの透過率が少なくとも85%、好ましくは少なくとも88%である透明性、
・130℃~210℃の範囲にある融点、及び
・第二の加熱の間の溶融エンタルピー(ΔHm(2))が30~60J/gの範囲、好ましくは35~60J/gの範囲にある結晶性
を有し、
融点及び溶融エンタルピーは、ISO 11357-3:2013標準(DSC)に従って測定される、
ことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項12】
以下の工程:
・第一の工程においてポリアミドPAブロックを、
・非環状脂肪族ジアミンX及び脂肪族二酸X’と、
・脂環式ジアミンY及び脂肪族及び/又は芳香族カルボン二酸Zとの重縮合により、
・ジカルボン酸から選択される連鎖停止剤の任意選択的な存在下で、製造すること、それから、
・第二の工程において、得られたポリアミドPAブロックXX’/Y.Zを、ポリエーテルPEブロックと、触媒の存在下で反応させること、
を特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のコポリマーを製造する方法。
【請求項13】
・非環状脂肪族ジアミンX及び脂肪族二酸X’と、
・脂環式ジアミンY及び脂肪族及び/又は芳香族カルボン二酸Zとの重縮合を一工程で、
・ジカルボン酸から選択される連鎖停止剤の任意選択的な存在下で、
・ポリエーテルPEブロックの存在下で、
・PEブロックとPAブロックとの反応のための触媒の存在下で、
行うことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のコポリマーを製造する方法。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項に記載のコポリマーを含む透明な成形物品であって、例えば繊維、布、フィルム、シート、ロッド、管又は射出成型部材である、成形物品。
【請求項15】
スポーツ用品の物品、又はスポーツ用品の物品の構成要素、例えばスポーツシューズの構成要素、スポーツギアの品目、例えばアイススケート靴、スキーのビンディング、ラケット、スポーツ用バット、ボード、蹄鉄、フィン若しくはゴルフボール、レクレーション用若しくは日曜大工用の物品、又は天候にさらされ、機械的な攻撃にさらされる道路用ツール若しくは設備の部品、保護物品、例えばヘルメットのバイザー、眼鏡若しくは眼鏡のつる;自動車構成要素、例えばヘッドランプのプロテクタ、バックミラー、オフロード車用の小さな構成要素;タンク、特にスクーター、モペッド又は自動二輪車のタンク;工業的、電気的、電子的若しくはコンピュータ用部品、タブレット、電話、コンピュータ、セーフティ・アクセサリ、看板、コーニス照明、情報及び広告パネル、ディスプレイ・ケース、彫り細工、仕上げ、店舗設計、装飾、接触ボール、歯科用補綴、インプラント、眼科用物品、血液透析膜、光ファイバ、美術品、彫刻、カメラレンズ、使い捨てカメラレンズ、印刷用基材、特にUVインクで直接印刷するための写真用基材、グレージング、サンルーフから成ることを特徴とする、請求項14に記載の成形物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー(TPE)ポリマーの新規組成物の使用に関し、このポリマーは透明であり、容易に射出成型可能であり、透明性及び疲労強度(Rossflex)を兼ね備える優れた特性の物体の製造を可能にする。本発明はより具体的には、透明な物体の製造に関し、特にスポーツ、光学及び電子的な市場に適した透明な物体の製造に関する。
【0002】
本発明の目的のために、「透明な組成物」という用語は、ISO 13468標準に従って少なくとも85%以上の透明性を有するとともに、ASTM D1003 - 97標準に従って17%以下のヘイズ、好ましくは15%以下のヘイズ、好ましくは12%以下のヘイズを有する組成物を意味する(これら2つの特性は、厚さ2mmのシートを通して560nmで測定)。
【0003】
TPEの中でも、ポリアミドベースのもの、特に「ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとのコポリマー」を挙げることができ、これを以下では「PEBA」と省略する。これらのTPEの透明性を改善させるためには、主に2つのルートが探求されている。
【0004】
第一のルートは、ポリアミドの共重合であり、これはポリアミドベースTPEの結晶性低減を可能にして、その透明性を改善するものである。その欠点は、こうして得られるコポリアミドベースの生成物の射出成型性が悪いことである。
【0005】
第二のルートは、ポリアミドベースTPEの結晶性を崩壊させ、解体させる脂環式ジアミンの使用である。これにより、優れた光学特性を有する非晶質生成物が得られるが、その機械的特性は不充分であり、射出成型することが困難であるか、又はさらには射出成型不能である。
【0006】
特許文献WO 04037898は、結晶性を減少させるために、直鎖状半脂肪族主要モノマーと、充分な量の少なくとも1つのコモノマーとから成るPAブロックを使用することを記載している。具体的には、この種類のPEBAについて2つの例を挙げることができる:
・PA6/12-PTMG、ここでPAブロックは、1300g/molであり、PTMGブロックは、650g/molである;
・PA12/IPD.10/PTMG、ここでPAブロックは、1780g/molであり、PTMGは、650g/molである。
【0007】
このような生成物を射出成型する際には、問題が生じる。
【0008】
特許文献WO08/006987は、コポリマーの合成を記載しており、このコポリマーのアミド単位は主に、少なくとも1つのジアミンと、少なくとも1つのジカルボン酸との等モル組み合わせから成り、1つ又は複数のジアミンは主に脂環式であり、1つ又は複数のジカルボン酸は主に、直鎖状の脂肪族であり、アミド単位は任意で、少なくとも1つの他のポリアミドコモノマーを少量含むことができ、エーテルのモノマー及びアミド単位の割合はそれぞれ、コポリマーが非晶質であるように、又はISO 11357-2:2013(DSC)の第二の加熱の間の溶融エンタルピーが最大30J/gであり、Tgが少なくとも75℃である結晶性を有するように、選択される。このコポリマーの例としては特に、以下のPEBA:PAB.10/B.12-PTMGを挙げることができ、ここでPAブロックは、5000g/molであり、PTMGブロックは、650g/molであり、これは純粋なPAB.12に比して非常に良好な光学特性を有するが、機械的特性が不充分であり、特に疲労性の観点で不充分である。
【0009】
米国特許出願公開第2014134371号は、透明な非晶質エラストマーポリアミドを記載しており、ここでPAセグメントは、PAブロックにおける1つ又は複数のジアミンの合計量のうち、BMACM又はPACMを10~100mol%、含有する。この文献ではエラストマーが、ポリエーテルセグメントに由来する非晶質相を含み、DSCで測定して最大20℃というTgを示す。前述の文献に記載された調合物は、疲労強度(Rossflex)が不充分である。記載された調合物の中でも、PA B.12-Elastamine RP 409という製品を挙げることができ、ここでPAブロックは、1000g/molであり、PA相のガラス転移温度(Tg)は、80℃であり、溶融エンタルピーは、10J/gに近い。
【0010】
今日では前述のPEBAを、透明な耐衝撃性材料によって置き換えることが求められており、この透明な耐衝撃性材料には、射出成型後でも変形しないこと、機械的特性、特に弾性疲労強度が改善されていること、及び既存のポリマー造形処理又は装置による加工が容易であることが要求される。
【0011】
本発明の目的は、より具体的には、弾性疲労に対して耐性のある透明な物体を製造するために、容易に射出成型可能であるとともに、収縮の問題、特に射出成型後の収縮問題を回避可能な新規ポリマー組成物を提供することである。本発明の組成物は特に、射出成型により以下のような物体を得ることを目的としている:
・光学特性については、
・「透明性」:材料の透過率が、560nmで厚さ2mmのシートを通して80%超、好ましくは少なくとも85%以上である(ISO 13468標準に準拠)、
・「ヘイズ」:ヘイズ値が17を超えない、好ましくは12を超えない(ASTM D1003 - 97標準に従って測定)
を有するとともに、
・機械的特性については、
・「弾性疲労強度」又は「弾性疲労」又は「Rossflex」:材料が、「Ross-Flex」試験で破断せずに少なくとも50,000回曲げることが可能な、よって弾性回復を有する、
物体。
【0012】
「Ross-Flex」疲労試験は、ASTM D1052標準に従って行う。厚さ2mmの部材を製造する。これらの部材に、直径2.5mmの孔をあけ、それから15日間、23℃で、50%の相対湿度のもとでコンディショニングする。「Ross-Flex」試験を使用して、-10℃の温度で部材を孔のところで60°に曲げて破断した回数を特定する。部材は、サイクルの回数が50,000以上である場合に、この試験条件を満たすとされる。
【0013】
本発明の別の目的は、実施するのに単純かつ容易で、迅速な(あり得る工程が最小限の)TPEであって、変形又はアニールの問題、特に射出成型後の問題を回避可能なTPEの製造方法を提供することである。
【0014】
本発明に従って特定の範囲のポリエーテルブロックとポリアミドブロックとのコポリマーを使用することにより、これらの特性を全て兼ね備えるTPEを得るための手段が判明した。
【0015】
「ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとのコポリマー」は、以下では「PEBA」と省略する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書では、以下のように規定される:
・2つの限界値「の間(between)」と書かれている場合、これらの限界値は排除され、
・「XからZの範囲」又は「X~Y%を表す」と書かれている場合、これらの限界値が含まれる。
【0017】
よって本発明の1つの主題は、硬質のポリアミド(PA)ブロックと、可撓性のポリエーテル又はポリエステル(PE)ブロックとの(PEBA)コポリマーであり、ここでこのポリアミドブロックは、半結晶性であり、かつX.X’/Y.Z型のコポリアミドから成り、ここで
(i)X.X’は、脂肪族ジアミン.二酸のペアであり、
(ii)Yは、脂環式ジアミンであり、
(iii)Zは、脂肪族及び/又は芳香族ジカルボン酸である。
【0018】
本発明の意味合いにおいて、「(1つ又は複数の)PEブロック及び(1つ又は複数の)PAブロックを含有するコポリマー」という表現は特に、1つ又は複数のPEブロックと1つ又は複数のPAブロックとを含むPEBAを、カバーする。
【0019】
X.X’/Y.Zのモル比は好ましくは、5/1から25/1の範囲内、好ましくは7/1から20/1の範囲内、好ましくは7/1から17/1の範囲内、好ましくは7/1から10/1の範囲内にある。
【0020】
様々な成分の重量パーセンテージが、以下のようになるのが有利である:
(i)モノマーX.X’のパーセンテージは、75~98重量%の範囲内、好ましくは80~90重量%の範囲内にあり、
(ii)モノマーY.Zのパーセンテージは、2~25重量%の範囲内、好ましくは10~20重量%の範囲内にあり、
合計で100%のポリアミドブロックを形成する。
【0021】
有利には、コポリマー中のポリアミドブロックのパーセンテージが、60~97重量%の範囲内、好ましくは65~95重量%の範囲内にあり、コポリマー中のポリエーテルブロックのパーセンテージが、3~40重量%の範囲内、好ましくは5~35重量%の範囲内にある。
【0022】
PEBAについてPAブロックのこのような特定の組成(含有率及び化学的性質)は特に、本発明の要求を満たす透明性(少なくとも85%の透過率)を得るために役立つ。
【0023】
ポリアミドについて本明細書で「モノマー」という用語は、「繰り返し単位」という意味として捉えられるべきである。実際に、PAの繰り返し単位が二酸とジアミンとの組み合わせから成る場合が、特定の場合である。これはジアミンと二酸との組み合わせ、すなわちジアミン.二酸のペア(等モル量)とされる(モノマーに相当)。このことは、二酸又はジアミンが個々に、それ自体では重合するのに充分ではない単一の構造単位であるという事実によって説明される。
【0024】
非環状脂肪族ジアミンXとして挙げられるのは、直鎖状脂肪族ジアミン、例えば1,4-テトラメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,9-ノナジアミン、及び1,10-デカメチレンジアミンである。
【0025】
好ましい実施態様によれば、本発明によるコポリマーは、脂肪族ジアミン.二酸のペアX.X’が、6.10、6.12、6.14、10.10、10.12、10.14、12.10、12.12、12.14から選択されることを特徴とする。
【0026】
「Y.Z」は、少なくとも1つの脂環式ジアミンと、12~36個の炭素原子、好ましくは12~18個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族(好ましくは直鎖状)ジカルボン酸との等モルの組み合わせを形成する。36個の炭素原子を有する場合には特に、脂肪酸二量体(例えばPripol(登録商標)というブランドのもの、特にPripol(登録商標)1009)の使用が含まれる。ジカルボン酸Zは、芳香族二酸、特にイソフタル酸(I)、テレフタル酸(T)、及びこれらの混合物から選択され得る。
【0027】
有利には、脂環式ジアミンYが、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)ブタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM又はMACM)、p-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、イソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)(PACP)、イソホロンジアミン(IPD)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)(1,3-BAC)から選択される。
【0028】
PAブロックを得るためにはジアミンYとして、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンを使用するのが、有利である。
【0029】
脂肪族及び/又は芳香族ジカルボン酸は、6~36個の炭素原子、好ましくは9~18個の炭素原子を有する脂肪族及び/又は芳香族ジカルボン酸、特にプリポール、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、及び1,18-オクタデカンジカルボン酸から選択するのが、有利である。
【0030】
脂肪族ジカルボン酸X’又はZは好ましくは、C12~C36、好ましくはC12~C18ジカルボン酸であり、有利には1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、及び1,18-オクタデカンジカルボン酸から選択される。
【0031】
ジカルボン酸Zは、芳香族二酸、特にイソフタル酸(I)、テレフタル酸(T)及びこれらの混合物から選択され得る。
【0032】
本発明の好ましい実施態様によれば、このコポリマーは、以下のような特徴を有する:
・PAブロックの数平均分子量が、500~18,000g/molの範囲内、好ましくは1000~15,000g/molの範囲内にあり、かつ
・PEブロックの数平均分子量が、500~2000g/molの範囲内、好ましくは650~1000g/molの範囲内にある。
【0033】
本発明によるコポリマーのPEブロックは好ましくは、少なくとも1つのポリアルキレンエーテルポリオール、特にポリアルキレンエーテルジオール、ジェフアミン、及びこれらの混合物から誘導される。ポリアルキレンエーテルジオールは有利には、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリトリメチレングリコール(PO3G)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、及びこれらの混合物から選択される。PEブロックは、NH2末端鎖を有するポリオキシアルキレン配列を有することができ、このような配列は、脂肪族α,ω-ジヒドロキシ化ポリオキシアルキレン配列(ポリエーテルジオールと呼ばれる)のシアノアセチル化によって得られる。より具体的には、ジェフアミン(例えば、Huntsman社から市販のJeffamine(登録商標)D400、D2000、ED 2003、XTJ 542)が使用できる。
【0034】
前述の少なくとも1つのPEブロックは好ましくは、ポリアルキレンエーテルポリオール(例えばPEG、PPG、PO3G、PTMG)、NH2末端鎖を有するポリオキシアルキレン配列を含むポリエーテル、及びこれらの統計及び/又はブロックコポリマー(コポリエーテル)、並びにこれらの混合物から選択される少なくとも1つのポリエーテルを含む。
【0035】
本発明の意味合いにおけるポリエステルブロック(以下では、PESと省略する)は好ましくは、通常はジカルボン酸とジオールとの重縮合により製造されるポリエステルである。適切なカルボン酸には、ポリアミドブロックを形成するために使用される前述のものが含まれるが、芳香族酸(例えばテレフタル酸及びイソフタル酸)は除かれる。適切なジオールには、直鎖状脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキシレングリコール)、分枝状ジオール(例えばネオペンチルグリコール、3-メチルペンタングリコール、1,2-プロピレングリコール)、及び環状ジオール(例えば1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、及び1,4-シクロヘキサンジメタノール)が含まれる。
【0036】
ポリエステルもまた、ポリ(カプロラクトン)及び脂肪酸二量体ベースのPESを意味すると理解され、特にCroda社又はUniqema社からのPRIPLAST(登録商標)シリーズの製品である。
【0037】
PESブロックを、前述のPESのうち少なくとも2つの種類の鎖を有する交互、統計又はブロックの「コポリエステル」型と捉えることもできる。
【0038】
本発明によるコポリマーは有利には、
・厚さ2mmのシートを通した560nmでの透過率が少なくとも85%、好ましくは少なくとも88%である透明性、
・130℃~210℃の範囲にある融点、及び
・第二の加熱の間の溶融エンタルピー(ΔHm(2))が30~60J/gの範囲、好ましくは35~60J/gの範囲にある結晶性
を有し、質量は、含有されるアミド単位又は含有されるポリアミドの量に対するものであり、この溶融は、アミド単位の溶融に相当し、
融点及び溶融エンタルピーは、ISO 11357-3:2013標準(DSC)に従って測定される。
【0039】
本発明の別の対象は、先に既定した本発明によるコポリマーの製造方法であり、本製造方法は、以下の工程を特徴とする:
・第一の工程においてポリアミドPAブロックを、
・非環状脂肪族ジアミンX及び脂肪族二酸X’と、
・脂環式ジアミンY及び脂肪族及び/又は芳香族カルボン二酸Zとの重縮合により、
・ジカルボン酸から選択される連鎖停止剤の任意選択的な存在下で、製造すること、それから、
・第二の工程において、得られたポリアミドPAブロックXX’/Y.Zを、ポリエーテルPEブロックと、触媒の存在下で反応させること。
【0040】
代替的な実施態様によれば、本発明によるコポリマーの製造方法は、
・非環状脂肪族ジアミンX及び脂肪族二酸X’と、
・脂環式ジアミンY及び脂肪族及び/又は芳香族カルボン二酸Zとの重縮合を一工程で、
・ジカルボン酸から選択される連鎖停止剤の任意選択的な存在下で、
・ポリエーテルPEブロックの存在下で、
・PEブロックとPAブロックとの反応のための触媒の存在下で、
行うことを特徴とする。
【0041】
本発明のさらなる対象は、本発明によるコポリマーと、少なくとも1つの添加剤とを含む、組成物である。
【0042】
添加剤は特に、着色剤、特に顔料、染料、エフェクト顔料(例えば回折顔料)、干渉顔料(例えばパール顔料)、反射性顔料、及びこれらの混合物;UV安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、流動化剤、耐摩耗剤、離型剤、安定化剤、可塑剤、耐衝撃性改善剤、界面活性剤、増白剤、充填材、繊維、ワックス、及びこれらの混合物、並びに/又はポリマーの分野でよく知られたその他のあらゆる添加剤から選択される。
【0043】
充填材のなかでも特に、シリカ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、膨張黒鉛、酸化チタン、又はガラスビーズなどが挙げられる。
【0044】
添加剤は好ましくは、熱安定剤、UV安定剤、染料、核形成剤、可塑剤、耐衝撃性を改善させる薬剤から選択され、当該1つ又は複数の添加剤は、当該コポリマーの屈折率に近い屈折率を有する。
【0045】
添加剤は組成物中に、組成物の合計重量に対して0.01%~20%、好ましくは0.01%~10%、好ましくは0.01%~5%の量で存在するのが好ましい。
【0046】
1つの実施態様によれば、本発明による組成物は、様々な成分をコンパウンド化することによって、又はこれらをドライブレンドすることによって、製造される。工程数が少なく、一般的にはコンパウンド化よりも組成物のコンタミネーション(黒点、ゲル)の危険性が少ないため、ドライブレンドが好ましい。
【0047】
この組成物は、顆粒又は粉末を製造するために本発明に従って使用可能な一方、射出成型又は成形される、透明で耐疲労性(Rossflex試験)のフィラメント、管、フィルム、シート及び/又は物体を製造するために慣用のポリマー造形処理で使用可能である。
【0048】
本発明の1つの対象は特に、透明で耐疲労性の物体を製造するための方法であり、この製造方法は、
・先に既定したいずれかに従ってコポリマーを供給する工程、
・前記コポリマーを少なくとも1つの添加剤と混合して、先に既定した組成物を製造する任意の工程、
・特に型又はダイにおいて、コポリマー又は組成物を、180℃~270℃の範囲、好ましくは200℃~250℃の範囲にわたる温度T0で処理する工程、
・その後、透明な物体を回収する工程
を含むものである。
【0049】
ここで「処理」という用語は、本発明による組成物又はコポリマーから出発するあらゆるポリマー造形処理、例えば成形、射出成型、押出成形、共押出、熱間加工、マルチ射出成型、回転成形、焼結、レーザー焼結などを意味すると理解される。
【0050】
本発明による物体、特に成形、射出成型又は押出成形された本発明による物体の製造方法のためには、顆粒が好ましい。あまり一般的ではないが、体積メジアン径(ISO 9276標準 parts 1~6に従って測定)が400~600μmの範囲にある粉末を使用できる。特に焼結(例えば「レーザ焼結」)、又は回転成形を用いた、本発明のプロセスによる特定の造形方法によれば、本発明による組成物は好ましくは、粉末の形態であり、該組成物の粒子は、体積メジアン径が400μm未満、好ましくは200μm未満である。粉末製造法の中でも、低温粉砕及びマイクロ顆粒化を挙げることができる。
【0051】
本発明の方法について可能な別の実施態様はさらに、PEBAと、染料及び/又はその他の添加剤とをコンパウンド化する予備工程を、顆粒又は粉末を製造する工程の前に、含むことができる。
【0052】
本発明の別の対象は、成形物品、例えば繊維、布、フィルム、シート、ロッド、管、又は射出成形部材であり、このような成形物品は透明であるとともに、本発明によるコポリマー、又は先に既定した本発明による方法によって製造されたコポリマーを含有するものである。
【0053】
この物品は有利には、スポーツ用品の物品、又はスポーツ用品の物品の構成要素、例えばスポーツシューズの構成要素、スポーツギアの品目、例えばアイススケート靴、スキーのビンディング、ラケット、スポーツ用バット、ボード、蹄鉄、フィン若しくはゴルフボール、レクレーション用若しくは日曜大工用の物品、又は天候にさらされ、機械的な攻撃にさらされる道路用ツール若しくは設備の部品、保護物品、例えばヘルメットのバイザー、眼鏡若しくは眼鏡のつる;自動車構成要素、例えばヘッドランプのプロテクタ、バックミラー、オフロード車用の小さな構成要素;タンク、特にスクーター、モペッド又は自動二輪車のタンク;工業的、電気的、電子的若しくはコンピュータ用部品、タブレット、電話、コンピュータ、セーフティ・アクセサリ、看板、コーニス照明、情報及び広告パネル、ディスプレイ・ケース、彫り細工、仕上げ、店舗設計、装飾、接触ボール、歯科用補綴、インプラント、眼科用物品、血液透析膜、光ファイバ、美術品、彫刻、カメラレンズ、使い捨てカメラレンズ、印刷用基材、特にUVインクで直接印刷するための写真用基材、グレージング、サンルーフから成る。
【0054】
実施例
以下では実施例により本願発明を説明するが、これにより本願発明の範囲が制限されることはない。本実施例では、特に示さない限り、全てのパーセンテージ及び部は、重量で表す。
【0055】
【0056】
使用したPEBAは、PAブロック(それぞれ順にPA10.10/B.10、PA10.10/B.14、PA11/B.10、PAB.12及びPA12)と、PTMGブロックとを含む。
【0057】
以下の実施例では一般的に、PEブロックとしてPTMGブロックを用いているものの、本発明は明らかに、この実施態様に限定されるものではなく、PTMGブロックを、前述のその他のPEブロックと置き換えることは、本発明の範囲を超えるものではない。
【0058】
PEBAのPAブロック及びPEブロックのサイズ(数平均分子量)はそれぞれ、表1の上部に示してある。
【0059】
表1の全ての特性は、いずれも明細書の冒頭で先に示した標準規格によって測定した。
【0060】
シート及び試験体は、PEBA顆粒を用いた射出成型により得る。
上記表1では、
・「N/A」(特にTgについて)は、Tgが存在しないこと:Tgが無いことを表す。
・「OK」(特に射出成型性について)は、射出成型が容易なことを意味し、これに対して「OKではない」は、射出成型が不可能なことを示す。
・「nm」(特にCp3の機械的特性、又はCp6のヘイズについて)は、これらの特性が、これらの試験の間には測定されなかったことを意味する。
表1は、本発明による実施例1及び2(Ex1及びEx2)のPEBAのみが、以下の特性を同時に兼ね備えることを示している:
・良好な射出成型性
・高い透明性(厚さ2mmの研磨されたシート上で560nmで、分光光度計のKonica-Minolta 3610dにより、ISO 13468標準に従って測定して、少なくとも85%の透過率)、
・低いヘイズ(15を超えない)、及び
・弾性疲労に対する耐性(50,000超のRossflex)。
【0061】
これとは対照的に、比較例であるCp3、Cp4及びCp6の光学(透明)特性は、不充分である:85%未満の透過率、及び15超のヘイズ。比較例であるCp5は、射出成型法では加工できず、弾性疲労に対する耐性は、不充分である(50,000未満のRossflex)。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【外国語明細書】