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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046543
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】軽量複合合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20220315BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20220315BHJP
   B60J 1/00 20060101ALN20220315BHJP
【FI】
C03C27/12 R
C03C21/00 101
B60J1/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202346
(22)【出願日】2021-12-14
(62)【分割の表示】P 2020078997の分割
【原出願日】2014-07-07
(31)【優先権主張番号】13/937,707
(32)【優先日】2013-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】トーマス マイケル クリアリー
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー スコット フーテン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジョン ムーア
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両用途において、強度および音響減衰特性を損なわない、薄い軽量グレージングのための複合合わせガラスを提供する。
【解決手段】非化学強化外側ガラス板、強化内側ガラス板、および該外側ガラス板と該内側ガラス板の中間にある少なくとも1つのポリマー中間層、を有する合わせガラス構造であって、前記内側ガラス板が、約250MPaと約900MPaの間の表面圧縮応力を有する、合わせガラス構造を提供する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非化学強化外側ガラス板、
強化内側ガラス板、および
該外側ガラス板と該内側ガラス板の中間にある少なくとも1つのポリマー中間層、
を有する合わせガラス構造であって、
前記内側ガラス板が、約250MPaと約900MPaの間の表面圧縮応力を有する、合わせガラス構造。
【請求項2】
前記内側ガラス板が、約250MPaと約350MPaの間の表面圧縮応力および約20μm超の圧縮応力のDOLを有する、請求項1記載の合わせガラス構造。
【請求項3】
前記内側ガラス板の厚さが、約0.5mmから約1.5mmに及び、
前記外側ガラス板の厚さが、約1.5mmから約3.0mmに及び、
前記ポリマー中間層の厚さが、約0.4mmから約1.2mmである、請求項1または2記載の合わせガラス構造。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2011年6月24日に出願された米国仮特許出願第61/500766号の米国法典第35編第199条の下での優先権の恩恵を主張する、2011年9月28日に出願された、「軽量複合合わせガラス」と題する非仮出願である米国特許出願第13/274182号の一部継続出願であって、同時係属出願であり、米国法典第35編第120条の下での優先権の恩恵を主張する、2013年7月9日に出願された米国特許出願第13/937707号に優先権の恩恵を主張するものであり、これらの各出願の内容が依拠され、ここに全て引用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、合わせガラス(glass laminates)に関し、より詳しくは、化学強化された外側の窓ガラスおよび化学強化されていない内側の窓ガラスを含む複合(hybrid)合わせガラスに関する。そのような複合合わせガラスは、軽量、良好な音減衰性能、および高い耐衝撃性によって特徴付けられるであろう。特に、開示された複合合わせガラスは、フロントガラス以外の用途のための工業的に適用できる衝撃試験の判定基準を満たす。
【背景技術】
【0003】
合わせガラスが、建築用途、および自動車、鉄道車両および飛行機を含む輸送用途において、窓およびグレージング(glazing)として使用できる。ここに用いたように、グレージングは、壁や他の構造の透明または半透明の部材である。建築用途および自動車用途に用いられるグレージングの一般的なタイプとしては、積層ガラス(laminated glass)を含む、透明ガラスおよび着色ガラスが挙げられる。例えば、軟質ポリ(ビニルブチラール)(PVB)により隔てられた対向するガラス板からなる積層グレージングは、窓、フロントガラス、またはサンルーフとして使用できる。ある用途において、外部源からの音響透過を低減しながら、安全なバリアを提供するために、高い機械的強度および音響減衰特性を有する合わせガラスが望ましい。
【0004】
多くの車両用途において、燃料の経済性は車重の関数である。したがって、強度および音響減衰特性を損なわずに、そのような用途のためのグレージングの質量を減少させることが望ましい。この点で、合わせガラスが、闖入未遂または石や雹との接触などの外部接触事象に関して、機械的に頑丈でありながら、例えば、衝突の際、乗員との接触などの内部衝撃事象の結果としてのエネルギー(および割れ)を適切に消散させることが都合よいことがある。さらに、政府の規制により、路上走行車に、よりよい燃費、およびより少ない二酸化炭素排出量が要求されている。それゆえ、現行の政府と業界の安全基準を維持しながら、これらの車両重量を減少させるためにさらなる努力が払われている。ポリカーボネートなどの非ガラス系窓用材料が開発されてきた。これらの材料は、車両重量を減少させるが、環境上の破片、および他の懸念に対して適切な耐性を示していない。しかしながら、本開示の実施の形態は、相当な重量の減少、安全順守、有効耐久性および車両衝突の場合の減少した裂傷の可能性を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑みて、より厚くより重いグレージングに関連する耐久性および音減衰特性を有する薄い軽量グレージングが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの態様によれば、合わせガラスは、外側ガラス板、内側ガラス板、および外側と内側のガラス板の間に形成されたポリマー中間層を備えている。合わせガラスの衝撃挙動を最適化するために、外側ガラス板は、化学強化ガラスからなり、1mm以下の厚さを有し得る一方で、内側ガラス板は、非化学強化ガラスからなり、2.5mm以下の厚さを有し得る。実施の形態において、ポリマー中間層(例えば、ポリ(ビニルブチラール)またはPVB)は、1.6mm以下の厚さを有し得る。開示された複合合わせガラス構造は、衝撃に対して応力を分配できることが都合よい。例えば、開示された合わせガラスは、優れた耐衝撃性を提供でき、外部衝撃事象に対する破壊に抵抗でき、それでも、内部衝撃事象に対して、エネルギーを適切に消散し、適切に割れる。
【0007】
本開示の1つの非限定的実施の形態は、非化学強化外側ガラス板、化学強化内側ガラス板およびその外側ガラス板と内側ガラス板の中間にある少なくとも1つのポリマー中間層を有する合わせガラス構造であって、内側ガラス板の厚さが約0.5mmから約1.5mmに及び、外側ガラス板の厚さが約1.5mmから約3.0mmに及ぶ、合わせガラス構造を提供する。
【0008】
本開示の別の非限定的実施の形態は、非化学強化外側ガラス板、化学強化内側ガラス板およびその外側ガラス板と内側ガラス板の中間にある少なくとも1つのポリマー中間層を有する合わせガラス構造であって、内側ガラス板の表面圧縮応力が約250MPaと約900MPaとの間である、合わせガラス構造を提供する。
【0009】
請求項の主題の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白になるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む、ここに記載された請求項の主題を実施することによって認識されるであろう。
【0010】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、本開示の実施の形態を提示するものであり、請求項の主題の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供することが意図されているのが理解されよう。添付図面は、本開示をさらに理解するために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、様々な実施の形態を図解し、説明と共に、請求項の主題の原理および作動を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
説明目的のために、現在好ましい形態が図面に示されているが、ここに開示され論じられた実施の形態は、図示された正確な配置および手段に限定されないことが理解されよう。
図1】本開示のいくつかの実施の形態による例示の平らな複合合わせガラスの説明図
図2】本開示の他の実施の形態による例示の曲げられた複合合わせガラスの説明図
図3】本開示のさらに別の実施の形態による例示の曲げられた複合合わせガラスの説明図
図4】本開示のさらなる実施の形態による例示の曲げられた複合合わせガラスの説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の記載において、図に示されたいくつかの図面にわたり、同種の参照文字は、同種のまたは対応する部品を示す。特別に定めのない限り、「上部」「下部」、「外向き」「内向き」などの用語は、便宜上の単語であり、限定用語と考えるべきではない。その上、群が、複数の構成要素およびその組合せの群の少なくとも1つを含むと記載されているときはいつでも、その群は、個別に、または互いの組合せでのいずれかで、列挙されたそれらの構成要素をいくつ含んでも、それから実質的になっても、またはそれからなってもよいことが理解されよう。
【0013】
同様に、群が、複数の構成要素およびその組合せの群の少なくとも1つからなると記載されているときはいつでも、その群は、個別に、または互いの組合せでのいずれかで、列挙されたそれらの構成要素のいくつからなってもよいことが理解されよう。特別に定めのない限り、値の範囲は、列挙されている場合、その範囲の上限と下限の両方を含む。ここに用いたように、名詞は、特別に定めのない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」の対象を指す。
【0014】
本開示の以下の説明は、その実現を可能にする教示および現在知られているその最良の実施の形態として提供される。当業者には、本開示の有益な結果をまだ得ながら、ここに記載された実施の形態に多くの変更を行えることが認識されよう。本開示の所望の恩恵のいくつかは、本開示の特徴のいくつかを選択し、他の特徴を利用せずに、得られることも明白であろう。したがって、当業者には、本開示の多くの改変および適用が可能であり、さらには、ある環境では望ましいかもしれず、本開示の一部であることが認識されよう。それゆえ、以下の説明は、本開示の原理の実例として提供され、その限定ではない。
【0015】
当業者には、ここに記載された例示の実施の形態に対する多くの改変が、本開示の精神および範囲から逸脱せずに可能であることが認識されよう。それゆえ、その説明は、与えられた実施例に限定されることは意図されておらず、限定されると考えるべきではないが、添付の特許請求の範囲およびその同等物により与えられる保護の全範囲が供与されるべきである。その上、本開示の特徴のいくつかを、他の特徴を対応して使用せずとも使用することも可能である。したがって、例示のまたは実例の実施の形態の以下の説明は、本開示の原理を実証する目的のために与えられ、その限定のためではなく、その改変およびその置換を含むことがある。
【0016】
ここに開示された合わせガラスは、外側の化学強化ガラス板および内側の非化学強化ガラス板を含むように構成されている。ここに定義されるように、合わせガラスが実際に使用されるときに、外側ガラス板は環境に近いかまたは接触し、一方で、内側ガラス板は、合わせガラスが組み込まれた構造または車両(例えば、自動車)の内部(例えば、客室)に近いかまたは接触する。
【0017】
例示の合わせガラスが図1に示されている。合わせガラス100は、外側ガラス板110、内側ガラス板120、およびポリマー中間層130を備えている。このポリマー中間層は、それぞれの外側と内側のガラス板の各々と物理的に直接接触し得る(例えば、貼り合わせられる)。外側ガラス板110は外面112および内面114を有する。同じような文脈で、内側ガラス板120は外面122および内面124を有する。図解された実施の形態に示されるように、外側ガラス板110の内面114と内側ガラス板120の内面124は各々、ポリマー中間層130と接触している。
【0018】
使用中、合わせガラスは、外部衝撃事象に応答した割れに抵抗することが望ましい。しかしながら、合わせガラスに車両の乗員がぶつかったときなどの、内部衝撃事象に対して、合わせガラスは、乗員を車両内に保持し、それでも、怪我を最小にするために、衝突の際のエネルギーを消散することが望ましい。車両内部から生じる衝突事象をシミュレーションするECE R43頭部試験は、積層グレージングが特定の内部衝突を受けて割れることを要求する規制試験である。
【0019】
理論により拘束することを意図するものではないが、ガラス板/ポリマー中間層/ガラス板の1枚の合わせガラスに衝撃が与えられたときに、衝撃を受けた板の反対面、並びに反対側の板の外面が、張力状態に置かれる。二軸荷重下のガラス板/ポリマー中間層/ガラス板の合わせガラスに関して計算された応力分布により、衝撃を受けた板の反対面の引張応力の大きさは、荷重速度が低い反対側の板の外面で経験される引張応力の大きさに匹敵する(またはそれよりわずかに大きい場合さえある)であろう。しかしながら、自動車内で典型的に経験される衝撃の特徴である、荷重速度が速い場合、反対側の板の外面での引張応力の大きさは、衝撃を受けた板の反対面での引張応力よりもずっと大きいであろう。ここに開示されるように、複合合わせガラスを、化学強化外側ガラス板および非化学強化内側ガラス板を有するように構成することによって、外部と内部の衝撃事象の両方に関する耐衝撃性を最適化することができる。
【0020】
適切な内側ガラス板は、ソーダ石灰ガラスなどの非化学強化ガラス板である。必要に応じて、内側ガラス板を熱強化してもよい。ソーダ石灰ガラスが非化学強化ガラス板として使用される実施の形態において、従来の装飾材料および方法(例えば、ガラスフリットエナメルおよびスクリーン印刷)を使用することができ、これにより、合わせガラス製造プロセスを簡単にすることができる。電磁スペクトルに亘り所望の透過および/または減衰を達成するために、着色ソーダ石灰ガラス板を複合合わせガラスに組み込むことができる。
【0021】
適切な外側ガラス板は、イオン交換プロセスによって化学強化してよい。このプロセスにおいて、一般に、所定の期間に亘りガラス板を溶融塩浴中に浸漬することによって、ガラス板の表面のまたはその近くのイオンが、塩浴からのより大きい金属イオンと交換される。1つの実施の形態において、溶融塩浴の温度は約430℃であり、所定の期間は約8時間である。ガラス中へのより大きいイオンの取込みによって、表面近くの領域に圧縮応力を生じることによって、板が強化される。その圧縮応力と釣り合うように、対応する引張応力がガラスの中央領域に誘発される。
【0022】
複合合わせガラスを形成するのに適した例示のイオン交換可能なガラスは、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスまたはアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスであるが、他のガラス組成物も考えられる。ここに用いたように、「イオン交換可能な」とは、ガラスが、そのガラスの表面にまたはその近くに位置する陽イオンを、サイズがそれより大きいかまたは小さい、同じ原子価の陽イオンと交換することができることを意味する。一例のガラス組成物は、SiO2、B23およびNa2Oを含み、ここで、(SiO2+B23)≧66モル%、およびNa2O≧9モル%である。一例において、前記ガラス板は少なくとも6質量%の酸化アルミニウムを含む。さらに別の実施の形態において、ガラス板は、アルカリ土類酸化物の含有量が少なくとも5質量%となるように1種類以上のアルカリ土類酸化物を含む。適切なガラス組成物は、いくつかの実施の形態において、K2O、MgO、およびCaOの少なくとも1種類をさらに含む。特別な実施の形態において、前記ガラスは、61~75モル%のSiO2、7~15モル%のAl23、0~12モル%のB23、9~21モル%のNa2O、0~4モル%のK2O、0~7モル%のMgO、および0~3モル%のCaOを含み得る。
【0023】
複合合わせガラスを形成するのに適したさらに別の例示のガラス組成物は、60~70モル%のSiO2、6~14モル%のAl23、0~15モル%のB23、0~15モル%のLi2O、0~20モル%のNa2O、0~10モル%のK2O、0~8モル%のMgO、0~10モル%のCaO、0~5モル%のZrO2、0~1モル%のSnO2、0~1モル%のCeO2、50ppm未満のAs23、および50ppm未満のSb23を含み、12モル%≦(Li2O+Na2O+K2O)≦20モル%、および0モル%≦(MgO+CaO)≦10モル%である。
【0024】
またさらに別の例示のガラス組成物は、63.5~66.5モル%のSiO2、8~12モル%のAl23、0~3モル%のB23、0~5モル%のLi2O、8~18モル%のNa2O、0~5モル%のK2O、1~7モル%のMgO、0~2.5モル%のCaO、0~3モル%のZrO2、0.05~0.25モル%のSnO2、0.05~0.5モル%のCeO2、50ppm未満のAs23、および50ppm未満のSb23を含み、14モル%≦(Li2O+Na2O+K2O)≦18モル%、および2モル%≦(MgO+CaO)≦7モル%である。
【0025】
特別な実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、アルミナ、少なくとも1種類のアルカリ金属、およびいくつかの実施の形態において、50モル%超のSiO2、他の実施の形態において、少なくとも58モル%のSiO2、さらに他の実施の形態において、少なくとも60モル%のSiO2を含み、ここで、比(Al23+B23)/Σ改質剤>1、式中、この比において、成分はモル%で表され、改質剤はアルカリ金属酸化物である。このガラスは、特別な実施の形態において、58~72モル%のSiO2、9~17モル%のAl23、2~12モル%のB23、8~16モル%のNa2O、および0~4モル%のK2Oを含み、から実質的になり、またはからなり、ここで、比(Al23+B23)/Σ改質剤>1、である。
【0026】
別の実施の形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、61~75モル%のSiO2、7~15モル%のAl23、0~12モル%のB23、9~21モル%のNa2O、0~4モル%のK2O、0~7モル%のMgO、および0~3モル%のCaOを含む、から実質的になる、またはからなる。
【0027】
さらに別の実施の形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、60~70モル%のSiO2、6~14モル%のAl23、0~15モル%のB23、0~15モル%のLi2O、0~20モル%のNa2O、0~10モル%のK2O、0~8モル%のMgO、0~10モル%のCaO、0~5モル%のZrO2、0~1モル%のSnO2、0~1モル%のCeO2、50ppm未満のAs23、および50ppm未満のSb23を含み、12モル%≦Li2O+Na2O+K2O≦20モル%、および0モル%≦MgO+CaO≦10モル%である。
【0028】
さらに別の実施の形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、64~68モル%のSiO2、12~16モル%のNa2O、8~12モル%のAl23、0~3モル%のB23、2~5モル%のK2O、4~6モル%のMgO、および0~5モル%のCaOを含み、から実質的になり、またはからなり、ここで、66モル%≦SiO2+B23+CaO≦69モル%、Na2O+K2O+B23+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、(Na2O+B23)-Al23≦2モル%、2モル%≦Na2O-Al23≦6モル%、および4モル%≦(Na2O+K2O)-Al23≦10モル%である。
【0029】
いくつかの実施の形態において、化学強化ガラス並びに非化学強化ガラスに、Na2SO4、NaCl、NaF、NaBr、K2SO4、KCl、KF、NKr、およびSnO2を含む群から選択される少なくとも1種類の清澄剤が0~2モル%だけバッチ配合されている。
【0030】
1つの例示の実施の形態において、化学強化ガラス中のナトリウムイオンは、溶融バッチからのカリウムイオンにより置換され得るが、ルビジウムやセシウムなどの、原子半径がより大きい他のアルカリ金属イオンにより、そのガラス中のより小さいアルカリ金属イオンが置換されても差し支えない。特定の実施の形態によれば、ガラス中のより小さいアルカリ金属イオンは、Ag+イオンにより置換され得る。同様に、イオン交換プロセスに、以下に限られないが、硫酸塩、ハロゲン化物などの他のアルカリ金属塩を使用してもよい。
【0031】
ガラス網目構造が緩和し得る温度より低い温度で、より小さいイオンがより大きいイオンにより置換されると、ガラスの表面に亘りイオンの分布が生じ、これにより、応力プロファイルが生じる。入り込むイオンのより大きい体積により、ガラスの表面に圧縮応力(CS)が、その中央に張力(中央張力、またはCT)が生じる。この圧縮応力は、以下の関係式:
【0032】
【数1】
【0033】
により中央張力に関連付けられ、式中、tはガラス板の総厚であり、DOLは、層の深さとも称される、交換の深さである。
【0034】
様々な実施の形態によれば、イオン交換ガラスを含む複合合わせガラスは、軽量、高い耐衝撃性、および改善された音響減衰を含むたくさんの所望の特性を有する。
【0035】
1つの例示の実施の形態において、化学強化ガラス板は、少なくとも300MPa、例えば、少なくとも400、450、500、550、600、650、700、750または800MPaの表面圧縮応力、少なくとも約20μm(例えば、少なくとも約20、25、30、35、40、45、または50μm)の層の深さ、および/または40MPa超(例えば、40、45、または50MPa超)であるが、100MPa未満(例えば、100、95、90、85、80、75、70、65、60、または55MPa未満)の中央張力を有し得る。
【0036】
化学強化ガラス板の弾性率は、約60MPaから85GPa(例えば、60、65、70、75、80または85GPa)に及び得る。ガラス板およびポリマー中間層の弾性率は、結果として得られる合わせガラスの機械的性質(例えば、撓みおよび強度)および音響性能(例えば、透過損失)の両方に影響を与え得る。
【0037】
例示のガラス板形成方法としては、共にダウンドロー法の例であるフュージョンドロー法およびスロットドロー法、並びにフロート法が挙げられる。化学強化ガラス板および非化学強化ガラス板の両方を形成するために、これらの方法を使用することができる。フュージョンドロー法では、溶融ガラス原材料を受け取るための通路を有する板引タンクが使用される。この通路は、通路の両側で通路の長手方向に沿って、上面で開いた堰を有する。通路が溶融材料で満たされたときに、溶融ガラスは堰から溢れ出る。溶融ガラスは、重力のために、板引タンクの外面に流下する。これらの外面は、板引タンクの下の縁で接合するように、下方かつ内側に延在している。2つの流れるガラス表面がこの縁で接合して融合し、単一の流れる板を形成する。フュージョンドロー法は、通路を越えて流れるこの2つのガラス膜が互いに融合するので、結果として得られたガラス板のどちらの外面も、装置のどの部分にも接触しないという利点を提示する。それゆえ、フュージョンドロー法によるガラス板の表面特性は、そのような接触の影響を受けない。
【0038】
スロットドロー法は、フュージョンドロー法から区別される。ここで、溶融ガラス原材料は板引タンクに供給される。板引タンクの底には、開いたスロットがあり、このスロットは、スロットの長さに亘り延在するノズルを有する。溶融ガラスは、スロット/ノズルを通って流れ、連続板として下方に徐冷領域へと引っ張られる。スロットドロー法は、2枚の板が互いに融合されるのではなく、1枚の板がスロットを通じて引っ張られるだけなので、フュージョンドロー法より薄い板を提供できる。
【0039】
ダウンドロー法により、比較的無垢な表面を有する均一な厚さを有するガラス板が製造される。ガラス板の強度は、表面傷の量とサイズにより制御されるので、接触が最小である無垢な表面は高い初期強度を有する。次いで、この高強度のガラスが化学強化されたときに、結果として生じた強度は、ラップ仕上げされ、研磨された表面のものよりも高くなり得る。ダウンドロー法によるガラスは、約2mm未満の厚さまで板引きされ得る。その上、ダウンドロー法によるガラスは、費用のかかる研削および研磨なくして、最終用途に使用できる、非常に平滑な表面を有する。
【0040】
フロート法において、滑らかな表面および均一な厚さにより特徴付けられるガラス板は、溶融金属、典型的にスズの床上に溶融ガラスを浮遊させることによって製造される。例示のプロセスにおいて、溶融スズ床の表面上に供給された溶融ガラスが浮遊リボンを形成する。ガラスリボンがスズ浴に沿って流れるにつれて、固体のガラス板がスズからローラへと持ち上げられるまで、温度が徐々に減少する。一旦、スズ浴から離れたら、ガラス板をさらに冷却し、徐冷して、内部応力を減少させることができる。
【0041】
合わせガラスを形成するために、ガラス板を使用することができる。ここに定義されるように、複合合わせガラスは、外に面する化学強化ガラス板、内に面する非化学強化ガラス板、およびガラス板の間に形成されたポリマー中間層を備えている。このポリマー中間層は、モノリスポリマー板、多層ポリマー板、または複合ポリマー板を備えても差し支えない。ポリマー中間層は、例えば、軟質ポリ(ビニルブチラール)板であって差し支えない。
【0042】
構造の開口および自動車の開口、例えば、自動車のグレージングに光学的に透明なバリアを提供するために、合わせガラスを適応することができる。合わせガラスは、多種多様なプロセスを使用して形成できる。例示の実施の形態において、その組立ては、第1のガラス板を置く工程、PVB板などのポリマー中間層を被せる工程、第2のガラス板を置く工程、次いで、ガラス板の縁に対して過剰のPVBを切り取る工程を含む。接合工程は、界面から空気のほとんどを追い出し、PVBをガラス板に部分的に結合させる工程を含み得る。典型的に高温と高圧で行われる、仕上げ工程は、ガラス板の各々のポリマー中間層への結合を完了する。先の実施の形態において、第1のガラス板は化学強化ガラス板であって差し支えなく、第2のガラス板は非化学強化ガラス板であって差し支えなく、その逆も同様である。
【0043】
PVBなどの熱可塑性材料を予成形ポリマー中間層として適用してもよい。熱可塑性層は、ある実施の形態において、少なくとも0.125mm(例えば、0.125、0.25、0.38、0.5、0.7、0.76、0.81、1、1.14、1.19または1.2mm)の厚さを有し得る。熱可塑性層は、1.6mm以下(例えば、約0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1または1.2mmなどの0.4から1.2mm)の厚さを有し得る。熱可塑性層は、ガラスの2つの対向する主面のほとんどを、または好ましくは実質的に全てを覆い得る。熱可塑性層はガラスの縁面も覆ってよい。熱可塑性層と接触したガラス板は、熱可塑性材料のそれぞれのガラス板への結合を促進するために、例えば、熱可塑性材料の軟化点よりも少なくとも5℃または10℃高い温度などの、軟化点より高い温度に加熱されてもよい。その加熱は、圧力下で熱可塑性層と接触したガラスに実施しても差し支えない。
【0044】
選択された市販のポリマー中間層材料が表1に纏められている。この表は、各製品サンプルに関するガラス転移温度および弾性率も含んでいる。ガラス転移温度および弾性率のデータは、製造供給元より入手できる技術データから、もしくは、ガラス転移温度および弾性率については、それぞれ、DSC200示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社、日本国)を使用して、またはASTM D638方法により決定した。ISD樹脂に使用されるアクリル/シリコーン樹脂材料のさらに別の説明が米国特許第5624763号明細書に開示されており、遮音性改良PVB樹脂の説明が特開平5-138840号公報に開示されており、それらの内容がここに全て引用される。
【0045】
【表1】
【0046】
複合合わせガラスに1つ以上のポリマー中間層を組み込んでもよい。複数の中間層は、接着の促進、音響制御、UV透過制御、色つけ、着色および/またはIR透過制御を含む、相補的なまたは別個の機能性を提供するであろう。
【0047】
ポリマー中間層の弾性率は、約1MPaから75MPa(例えば、約1、2、5、10、15、20、25、50または75MPa)に及び得る。1Hzの荷重速度で、標準的なPVB中間層の弾性率は約15MPaであり得、遮音グレードのPVBの弾性率は約2MPaであり得る。
【0048】
貼合せプロセス中、中間層は、一般に、中間層を軟化させるのに効果的な温度に加熱され、これにより、ガラス板のそれぞれの表面への中間層の順応した接合(conformal mating)が促進される。PVBについて、貼合せ温度は約140℃であり得る。中間層材料内の可動性高分子鎖は、ガラス表面との結合を生じ、これにより、接着が促進される。高温によっても、ガラスとポリマーとの界面からの残留空気および/または水分の拡散が加速する。
【0049】
圧力の印加は、中間層材料の流れを促進し、かつ界面に捕捉された水と空気の総蒸気圧によって、そうでなければ誘発され得た気泡の形成を抑制する。気泡の形成を抑制するために、オートクレープ内のアセンブリに熱と圧力が同時に印加される。
【0050】
複合合わせガラスは、音響雑音の減衰、UVおよび/またはIR光透過の低減、および/または窓開口の審美的魅力の構造を含む、有益な効果を提供できる。開示された合わせガラスを構成する個々のガラス板、並びに形成された合わせガラスは、組成、密度、厚さ、表面形状測定を含む1つ以上の属性、並びに光学減衰、音減衰、および耐衝撃性などの機械的性質を含む様々な性質によって特徴付けられる。開示された複合合わせガラスの様々な態様がここに記載されている。
【0051】
複合合わせガラスは、例えば、窓またはグレージングとしての使用に適応でき、任意の適切なサイズおよび寸法に構成することができる。実施の形態において、合わせガラスは、10cmから1m以上(例えば、0.1、0.2、0.5、1、2、または5m)まで独立して様々である長さと幅を有する。合わせガラスは、独立して、0.1m2超、例えば、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、または25m2超の面積を有し得る。
【0052】
合わせガラスは、実質的に平らであっても、特定の用途のために成形されていても差し支えない。例えば、合わせガラスは、フロントガラスまたはカバープレートとして使用するために、曲げられた部品または成形部品として形成することもできる。成形合わせガラスの構造は、単純であっても、複雑であってもよい。ある実施の形態において、成形合わせガラスは、ガラス板が2つの独立した方向に別個の曲率半径を有する、複雑な曲率を有してもよい。それゆえ、そのような成形ガラス板は、ガラスが、所定の寸法に対して平行な軸に沿って曲げられ、かつ同じ寸法に対して垂直な軸に沿っても曲げられている、「交差曲率(cross curvature)」を有するものとして特徴付けてもよい。例えば、自動車のサンルーフは、一般に、約0.5m×1.0mであり、短軸に沿った2から2.5mの曲率半径、主軸に沿った4から5mの曲率半径を有する。
【0053】
ある実施の形態による成形合わせガラスは、曲げ係数により定義することができ、ここで、所定の部品の曲げ係数は、所定の軸の長さで割ったその軸に沿った曲率半径と等しい。それゆえ、それぞれ、0.5mおよび1.0mのそれぞれの軸に沿った2mおよび4mの曲率半径を有する例示の自動車サンルーフについて、各軸に沿った曲げ係数は4である。成形合わせガラスは、2から8(例えば、2、3、4、5、6、7、または8)に及ぶ曲げ係数を有し得る。
【0054】
例示の成形合わせガラス200が図2に示されている。この成形合わせガラス200は、合わせガラスの凸面に形成された外側(化学強化)ガラス板100を含み、一方で、内側(非化学強化)ガラス板120は合わせガラスの凹面に形成されている。しかしながら、図解されていない実施の形態の凸面が非化学強化ガラス板を含むことができ、一方で、反対の凹面が化学強化ガラス板を含むことができることが認識されよう。
【0055】
図3は、本開示のさらに別の実施の形態の断面図である。図4は、本開示のさらなる実施の形態の斜視図である。図3および4を参照すると、先の段落に論じたように、例示の積層構造10は、化学強化ガラス、例えば、Gorilla(登録商標)Glassの内側層16を有し得る。この内側層16は、熱処理、イオン交換および/または焼き鈍しされていてもよい。外側層12は、従来のソーダ石灰ガラス、焼き鈍しガラスなどの非化学強化ガラス板であってよい。積層構造10は、外側ガラス層と内側ガラス層の中間にポリマー中間層14も有して差し支えない。このガラスの内側層16は、厚さが1.0mm以下であり得、約250MPaと約350MPaの間の残留表面CSレベルおよび60マイクロメートル超のDOLを有し得る。別の実施の形態において、内側層16のCSレベルが約300MPaであることが好ましい。1つの実施の形態において、中間層14の厚さは約0.8mmであり得る。例示の中間層14としては、以下に限られないが、ポリビニルブチラールまたはここに記載された他の適切なポリマー材料が挙げられる。さらなる実施の形態において、外側および/または内側層12、16の表面のいずれも、外部衝撃事象に対する耐久性を改善するために、酸エッチングすることができる。例えば、1つの実施の形態において、外側層12の第1の表面13を酸エッチングすることができる、および/または前記内側層の別の表面17を酸エッチングすることができる。別の実施の形態において、前記外側層の第1の表面15を酸エッチングすることができる、および/または前記内側層の別の表面19を酸エッチングすることができる。それゆえ、そのような実施の形態は、従来の積層構造よりも大幅に軽く、規制衝撃要件に準拠する積層構造を提供することができる。外側および/または内側層12、16の例示の厚さは、0.5mmから1.5mmから2.0mm以上に及び得る。
【0056】
好ましい実施の形態において、この薄い化学強化内側層16は、約250MPaと約900MPaの間の表面応力を有することがあり、厚さは0.5から1.0mmに及び得る。この実施の形態において、外側層12は、約1.5mmから約3.0mm以上の厚さを有する、焼き鈍しされた(非化学強化)ガラスであり得る。もちろん、外側層および内側層12、16の厚さは、それぞれの積層構造10において異なって差し支えない。例示の積層構造の別の好ましい実施の形態は、0.7mmの化学強化ガラスの内側層、厚さが約0.76mmのポリビニルブチラール層、および2.1mmの焼き鈍しガラスの外側層を有することがある。
【0057】
例示のガラス層は、概して先に記載され、米国特許第7666511号、同第4483700号、および同第5674790号の各明細書(各々が全てここに引用される)に記載されているように、溶融延伸(fusion drawing)し、次いで、そのような延伸されたガラスを化学強化することによって、製造することができる。それゆえ、例示の化学強化ガラス層は、CSの深いDOLを持つことができ、高い曲げ強度、耐引掻性および耐衝撃性を示すことができる。例示の実施の形態は、耐衝撃性を大きくするために酸エッチングされたまたは加熱された(flared)表面も備えてもよく、これらの表面上の傷のサイズと程度を減少させることによって、そのような表面の強度を増加させることもできる。貼り合わせの直前にエッチングされる場合、中間層に結合される表面で、エッチングまたは加熱の強化の恩恵を維持することができる。
【0058】
本開示の1つの実施の形態は、非化学強化外側ガラス板、化学強化内側ガラス板、および外側ガラス板と内側ガラス板の中間にある少なくとも1つのポリマー中間層を有する例示の合わせガラス構造を提供する。このポリマー中間層は、単一のポリマー板、多層ポリマー板、または複合ポリマー板であって差し支えない。さらに、そのポリマー中間層は、以下に限られないが、PVB、ポリカーボネート、遮音PVB、エチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、イオノマー、熱可塑性材料、およびそれらの組合せなどの材料から構成され得る。内側ガラス板の厚さは、約0.5mmから約1.5mmに及び得、外側ガラス板の厚さは、約1.5mmから約3.0mmに及び得る。他の実施の形態において、内側ガラス板の厚さは、約0.5mmから約0.7mmであり得る、ポリマー中間層の厚さは約0.4mmから約1.2mmであり得る、および/または外側ガラス板の厚さは、約2.1mmであり得る。別の実施の形態において、内側ガラス板は、アルカリ土類酸化物の含有量が少なくとも約5質量%であるように、1種類以上のアルカリ土類酸化物を含んで差し支えない。内側ガラス板は、少なくとも約6質量%の酸化アルミニウムも含んで差し支えない。追加の実施の形態において、外側ガラス板は、以下に限られないが、ソーダ石灰ガラスおよび焼き鈍しガラスなどの材料から構成される。例示の積層板は、1m2超の面積を有し得、自動車のフロントガラス、サンルーフまたはカバープレートとして使用することができる。内側ガラス層は、さらに別の実施の形態において、約250MPaと約900MPaの間の表面圧縮応力を、または別の実施の形態において、約250MPaと約350MPaの間の表面圧縮応力および約20μm超の圧縮応力のDOLを有し得る。いくつかの実施の形態は、それらのガラス板の表面のいくつまたはどの部分を酸エッチングしても差し支えない。
【0059】
本開示の別の実施の形態は、非化学強化外側ガラス板、化学強化内側ガラス板、および外側ガラス板と内側ガラス板の中間にある少なくとも1つのポリマー中間層を有する合わせガラス構造であって、内側ガラス板が約250MPaと約900MPaの間の表面圧縮応力を有する、合わせガラス構造を提供する。追加の実施の形態において、内側ガラス板は、約250MPaと約350MPaの間の表面圧縮応力および約20μm超の圧縮応力のDOLを有し得る。内側ガラス板の例示の厚さは、約0.5mmから約1.5mmに及び得、外側ガラス板の厚さは、約1.5mmから約3.0mmに及び得る。例示のポリマー中間層は、以下に限られないが、PVB、ポリカーボネート、遮音PVB、EVA、TPU、イオノマー、熱可塑性材料、およびそれらの組合せなどの材料から構成され得る、および/または約0.4mmから約1.2mmの厚さを有し得る。
【0060】
このように、本開示の実施の形態は、光学的要求事項および安全要求事項を維持しながら、より薄いガラス材料を使用することによって、自動車のグレージングの重量を減少させる手段を提供するであろう。従来の積層フロントガラスは、車両のグレージングの総重量の62%を占めるであろう;しかしながら、例えば、2.1mm厚の非化学強化外側層と共に、0.7mm厚の化学強化内側層を用いることによって、フロントガラスの重量を33%減少させることができる。さらに、1.6mm厚の非化学強化外側層を、0.7mm厚の化学強化内側層と共に使用すると、全体で45%の重量が節減されることが分かった。このように、本開示の実施の形態による例示の積層構造を使用すると、積層フロントガラスが、内側と外側の物体の貫通抵抗性および許容される頭部傷害基準(HIC)値をもたらす適切な曲げを含む全ての規制安全要求事項に合格することができるであろう。その上、焼き鈍しガラスから構成された例示の外側層は、外部物体の衝撃により生じる許容される破損パターンを提示し、その衝撃の結果として欠けまたは亀裂が生じた場合のフロントガラスを通しての運転可能な視界を継続して可能にするであろう。研究により、非対称フロントガラスの内面として化学強化ガラスを利用すると、乗員が従来の焼き鈍しフロントガラスに激突することによって生じる裂傷と比べて、減少した裂傷の可能性という追加の恩恵が提供されることも実証された。
【0061】
合わせガラスを曲げるおよび/または成形する方法は、重力曲げ、プレス曲げ、およびその複合方法を含むことができる。自動車のフロントガラスなどの湾曲形状に薄い平らなガラス板を重力曲げする従来の方法において、曲げ設備の剛性の予成形された周囲支持表面上に、低温の予め切断された1つのまたは多数のガラス板を配置する。曲げ設備は、金属または耐火材料を使用して製造してよい。例示の方法において、連接型曲げ設備を使用してよい。曲げの前に、ガラスは、典型的に、いくつかの接点でのみ支持される。ガラスを、通常は、徐冷窯内の高温への曝露により加熱し、これにより、ガラスが軟化して、重力により、ガラスが周囲支持表面に一致するように垂れ下がるまたは落ち込むことができる。次いで、一般に、実質的に全支持表面がガラスの周囲と接触する。
【0062】
関連技法は、1枚の平らなガラス板が、ガラスの軟化点に実質的に相当する温度に加熱されるプレス曲げである。次いで、加熱された板は、相補的な成形表面を有する雄と雌の型部材の間で所望の曲率にプレスまたは成形される。型部材の成形表面は、ガラス板と係合するための真空またはエアジェットを含んでもよい。実施の形態において、成形表面は、対応するガラス表面の実質的に全体に接触するように構成されていてよい。あるいは、対向する成形表面の一方または両方が、個別の区域に亘り、または個別の接点で、それぞれのガラス表面と接触してもよい。例えば、雌の型部材は、リング形表面であってよい。実施の形態において、重力曲げ技法とプレス曲げ技法の組合せを使用しても差し支えない。
【0063】
合わせガラスの総厚は約2mmから5mmに及んで差し支えなく、ここで、外側および/または内側化学強化ガラス板は1mm以下の厚さ(例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1mmなどの、例えば、0.5から1mm)を有する。さらに、内側および/または外側非化学強化ガラス板は、2.5mm以下の厚さ(例えば、1、1.5、2または2.5mmなどの、例えば、1から2.5mm)を有し得るか、または2.5mm以上の厚さを有してもよい。実施の形態において、合わせガラスにおけるガラス板の総厚は3.5mm未満(例えば、3.5、3、2.5または2.3mm)である。
【0064】
例示の合わせガラス構造が表2に示されており、表中、GGは、化学強化アルミノケイ酸塩ガラス板を称し、「ガラス」という用語は、非化学強化ソーダ石灰(SL)ガラス板を称し、PVBはポリ(ビニルブチラール)を称し、これは、必要に応じて、遮音グレードのPVB(A-PVB)であってよい。
【0065】
【表2】
【0066】
出願人等は、ここに開示された合わせガラス構造が、優れた耐久性、耐衝撃性、靭性、および耐引掻性を有することを示してきた。当業者により認識されるように、ガラス板または合わせガラスの強度および機械的衝撃性能は、表面欠陥と内部欠陥の両方を含むガラス中の欠陥により制限される。合わせガラスに衝撃が与えられたとき、衝撃点が圧縮状態になり、一方で、衝撃点の周りのリングまたは「輪(hoop)」、並びに衝撃を受けた板の反対面は引張状態になる。一般に、破損の起点は、最高の張力の点またはその近くの、通常はガラス表面にある傷である。これは反対側の面にも生じるであろうが、リング内で生じ得る。ガラス中の傷が、衝撃事象中に張力状態になると、傷はおそらく伝搬し、ガラスは一般に壊れる。それゆえ、圧縮応力の大きい大きさおよび深さ(層の深さ)が好ましい。
【0067】
開示された複合合わせガラスに使用される化学強化ガラス板の表面の一方または両方は、化学強化のために、圧縮下にある。ガラスの表面に近い領域に圧縮応力を設けることによって、ガラス板の割れの伝搬と破損を妨げることができる。傷が伝搬し、破損が生じるために、衝撃からの引張応力は、傷の先端で表面の圧縮応力を超えなければならない。実施の形態において、化学強化ガラス板の高い圧縮応力および大きい層の深さにより、非化学強化ガラス板の場合におけるよりも薄いガラスを使用することができる。
【0068】
複合合わせガラスの場合、合わせガラス構造は、より厚いモノリスの非化学強化ガラス板、またはより厚い非化学強化合わせガラスよりも、機械的衝撃を受けて破壊せずに、ずっと大きく撓むことができる。この追加の撓みにより、合わせガラスの中間層へのより多いエネルギー伝達が可能となり、この中間層は、ガラスの反対側に到達するエネルギーを減少することができる。その結果、ここに開示された複合合わせガラスは、同様の厚さのモノリスの非化学強化ガラス板または非化学強化合わせガラスよりも高い衝撃エネルギーに耐えることができる。
【0069】
その機械的性質に加え、当業者に認識されるように、音波を減衰させるために、積層構造を使用できる。ここに開示された複合合わせガラスは、多くのグレージング用途に要求される機械的性質を有するより薄い(より軽い)構造を使用しながら、音響透過を劇的に減少させることができる。
【0070】
積層板およびグレージングの音響性能は、一般に、グレージング構造の曲げ振動によって影響を受ける。理論により拘束するものではなく、ヒトの音響応答は、一般に、空気中で約0.1~1m、ガラス中で1~10mの波長に相当する、500Hzと5000Hzとの間でピークになる。0.01m未満(<10mm)の厚さのグレージング構造について、透過は、主に、振動および音波のグレージングの曲げ振動への結合により生じる。積層グレージング構造は、グレージングの曲げモードからのエネルギーをポリマー中間層内の剪断歪みに変換するように設計することができる。より薄いガラス板を利用した合わせガラスにおいて、より薄いガラスの大きいコンプライアンスにより、より大きい振幅が可能になり、これは転じて、中間層により大きい剪断歪みを与えることができる。最も粘弾性であるポリマー中間層材料の低い剪断抵抗は、中間層が、分子鎖の滑りと緩和の影響下で熱に変換される高い剪断歪みによって、減衰を促進することを意味する。
【0071】
合わせガラスの厚さに加え、合わせガラスを構成するガラス板の性質も、音減衰特性に影響するであろう。例えば、化学強化ガラス板と非化学強化ガラス板との間では、ポリマー中間層におけるより大きい剪断歪みに寄与する小さいが重要な差が、ガラスとポリマー中間層との界面にあるであろう。また、明白な組成の違いに加え、アルミノケイ酸塩ガラスおよびソーダ石灰ガラスは、弾性率、ポアソン比、密度などを含む物理的性質と機械的性質が異なり、これにより、音響応答が異なるであろう。
【実施例0072】
ガラス材料およびセラミック材料の強度を測定するために、三点または四点曲げ試験などの従来の一軸強度試験が使用されてきた。しかしながら、測定された強度は、エッジ効果並びにバルク材料に依存するので、一軸強度試験結果の解釈は難題であることがある。
【0073】
他方で、縁から誘発された現象に関係なく強度評価を提供するために、二軸曲げ試験を使用することができる。二軸曲げ試験において、合わせガラスは、中心から等距離の周囲の近い三点または四点で支持され、次いで、合わせガラスが中心位置で荷重を受ける。それゆえ、最大引張応力の位置は、合わせガラスの表面の中心で生じ、エッジ条件とは関係ないことが都合よい。
【0074】
例示の平らな複合合わせガラスに、標準二軸曲げ試験(付属文書7/3に詳述されたECE R43頭部試験)を行った。さらに以下に説明されるように、本発明の合わせガラス(サンプル1)に、非化学強化(ソーダ石灰)側で衝撃を与えた場合、両方のガラス板が破損した。しかしながら、サンプル1の合わせガラスに、化学強化側で衝撃を与えた場合、非化学強化ガラス板は破損したが、化学強化ガラス板は、試験したサンプルの50%で無傷なままであった。
【0075】
1つの試験において、高荷重速度衝撃が内側(非化学強化)ガラス板120に向けられる。それに応答して、内側ガラス板120の内面124および外側ガラス板110の外面112の両方が張力状態に置かれる。外面112上の引張応力の大きさは内面124での引張応力よりも大きいので、この構成において、内面124上のより穏やかな引張応力は、非化学強化ガラス板120を破損させるのに十分であり、一方で、外面112上の高い引張応力は、同様に、化学強化ガラス板110を破損させるのに十分である。ガラス板が破損するので、PVB中間層は、変形するが、頭部衝撃装置が合わせガラスを貫通するのは防ぐ。これは、ECE R43頭部必要条件下で満足な応答である。
【0076】
関連試験において、衝撃は、代わりに、外側(化学強化)ガラス板110に向けられる。それに応答して、外側ガラス板110の内面114は穏やかな引張応力を経験し、内側ガラス板120の外面122はより大きい大きさの応力を経験する。この構成において、内側の非化学強化ガラス板120の外面122上の大きい応力により、この非化学強化ガラス板は破損する。しかしながら、外側ガラス板110の内面114の穏やかな引張応力は、化学強化ガラスの表面近くの領域におけるイオン交換により誘起された圧縮応力を克服するほど十分ではないであろう。研究室での実験において、高荷重速度の衝撃により、試験した6つのサンプルの内のたった2つしか、化学強化ガラス板110が破損しなかった。残りの4つのサンプルにおいて、非化学強化ガラス板120は破損したが、化学強化ガラス板110は無傷なままであった。本発明のサンプルの全ては、ECE R43頭部必要条件により述べられた非フロントガラスの衝撃必要条件を超えた。
【0077】
比較サンプルAおよびBにも二軸曲げ試験を行った。1mm厚の化学強化ガラス板/0.76mm厚の標準PVB/1mm厚の化学強化ガラス板の対称構造からなる比較サンプルAは、破損を示さず、よって、合わせガラスが破損しなければならないというECE R43の必要条件に不合格であった。
【0078】
比較サンプルBは、1.5mm厚のソーダ石灰ガラス板/0.76mm厚の標準PVB/1.5mm厚のソーダ石灰ガラス板の対称構造からなる。両方のガラス板は、二軸曲げ試験の結果として破損し、それゆえ、比較サンプルBは、ECE R43基準(付属文書7/3)に合格した。しかしながら、比較サンプルBの合わせガラスの両方のガラス板は、どの板に衝撃を与えたかにかかわらずに破損し、それゆえ、複合合わせガラスに実現される外部衝撃に対して丈夫な機械抵抗を提供できなかった。試験中に、頭部の反跳(すなわち、跳ね返り)は、サンプル1よりも、比較サンプルBのほうが大きく、比較構造は、本発明の実施例ほど効果的にはエネルギーを消散しなかったことを示唆したことも分かった。
【0079】
頭部傷害基準(HIC)は、合わせガラスの安全性を評価するために使用できる従来の測定基準である。HIC値は無次元の量であり、これは、衝撃の結果として傷害を被る可能性に相関させることができる。内部衝撃事象について、より低いHIC値が望ましい。
【0080】
例示の平らな複合合わせガラスについて、1.6mm厚のSL/0.8mm厚のA-PVB/0.7mm厚のGG積層板の非化学強化側への衝撃についての平均HIC値は175であり、一方で、0.7mm厚のGG/0.8mm厚のA-PVB/1.6mm厚のSL積層板の化学強化側への衝撃についての平均HIC値は381であった。自動車のグレージング用途について、化学強化側(外側)の衝撃に関する平均HIC値は、非化学強化側への衝撃に関する平均HIC値よりも大きいことが有利である。例えば、化学強化側のHIC値が非化学強化側のHIC値よりも少なくとも50(例えば、少なくとも50、100、150または200)大きいように、化学強化側のHIC値は、400以上(例えば、400、450または500以上)であり得、非化学強化側のHIC値は、400以下(例えば、400、350、300、250、200、150または100)以下であり得る。
【0081】
この記載は多くの詳細を含むであろうが、これらは、その範囲への限定と考えるべきでなく、むしろ、特定の実施の形態に特有であろう特徴の記載として考えるべきである。別々の実施の形態の文脈においてこれまで記載した特定の特徴は、1つの実施の形態において組合せで実施してもよい。反対に、1つの実施の形態の文脈において記載された様々な特徴は、別々に、またはどの適切な下位の組合せで、多数の実施の形態において実施してもよい。さらに、特徴は、特定の組合せで作用するものとして先に記載され、最初にそれ自体として請求項に記載されていることさえあるかもしれないが、請求項に記載された組合せからの1つ以上の特徴は、ある場合には、その組合せから削除されてもよく、その請求項に記載された組合せは、下位の組合せまたは下位の組合せの変形に関してもよい。
【0082】
同様に、操作が、特定の順序で図面または図に示されている一方で、これは、そのような操作が、図示された特定の順序または連続順序で行われること、または所望の結果を得るために、図示された操作の全てが行われることを要求するものとして理解すべきではない。ある環境においては、マルチタスク操作および並行処理が都合よいであろう。
【0083】
範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとしてここに表すことができる。そのような範囲が表された場合、例は、その1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、値が、先行詞「約」を用いて近似として表されている場合、特定の値は別の態様を形成することが理解されよう。範囲の各々の端点は、他の端点に関してと、他の端点に関係なくの両方で有意であることがさらに理解されよう。
【0084】
ここでの列挙は、特定の様式で機能するように「構成されている」または「適応されている」本開示の構成要素を称することも留意される。この点に関して、そのような構成要素は、特定の性質を具体化するように、または特定の様式で可能するように、「構成されており」または「適応されており」、ここで、そのような列挙は、意図する使用の列挙ではなく構造的列挙である。より詳しくは、構成要素が「構成されている」または「適応されている」様式のここでの列挙は、その構成要素の既存の物理的条件を意味し、それゆえ、その構成要素の構造的特徴の明確な列挙として解釈すべきである。
【0085】
図面に示された様々な構成および実施の形態に示されるように、様々な軽量複合合わせガラスを記載してきた。
【0086】
本開示の好ましい実施の形態を記載してきたが、記載された実施の形態は、ただの実例であり、本発明の範囲は、その精読により当業者が自然に思いつく等価、多くのバリエーションおよび改変の全範囲が認められる場合、添付の特許請求の範囲によってのみ定義されるべきであることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0087】
10 積層構造
12 外側層
14 中間層
16 内側層
100 合わせガラス
110 外側ガラス板
120 内側ガラス板
130 ポリマー中間層
200 成形合わせガラス
図1
図2
図3
図4