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特開2022-46591高い中間膜厚さ係数を有する遮音パネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046591
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】高い中間膜厚さ係数を有する遮音パネル
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20220315BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20220315BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
B32B7/022
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021205783
(22)【出願日】2021-12-20
(62)【分割の表示】P 2019520676の分割
【原出願日】2017-10-10
(31)【優先権主張番号】15/297,874
(32)【優先日】2016-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503316891
【氏名又は名称】ソルティア・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ジュン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】質量制御周波数領域における音響透過損失を増加させ、またコインシデンス周波数領域における音響透過損失も向上させる遮音多層パネルを提供する。
【解決手段】向上した遮音性を有する多層パネルを開示する。本多層パネルは、第1の厚さHを有する第1の硬質基材、第2の厚さHを有する第2の硬質基材(ここで、H≦H)、及び第1の硬質基材と第2の硬質基材の間の厚さHを有する多層遮音中間膜を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮音多層パネルであって、
第1の厚さHを有する第1の硬質基材;
第2の厚さHを有する第2の硬質基材、ここでH≦Hである;及び
前記第1の硬質基材と前記第2の硬質基材の間の、厚さHを有する多層遮音中間膜;を含み;
前記多層中間膜は、硬質層厚さを有する第1の硬質層、第2の硬質層厚さを有する第2の硬質層、及び前記第1の硬質層と前記第2の硬質層の間の軟質層を含み;
前記多層パネルは、少なくとも0.80の中間膜厚さ係数I(ここで、I=(H-0.84)÷[(H+H)(H+H+H)]×100)を有する上記遮音多層パネル。
【請求項2】
前記多層パネルが少なくとも0.90の中間膜厚さ係数Iを有する、請求項1に記載の多層パネル。
【請求項3】
前記多層中間膜の前記軟質層が非中心位置に配置されている、請求項1に記載の多層パネル。
【請求項4】
<Hである、請求項1に記載の多層パネル。
【請求項5】
=Hである、請求項1に記載の多層パネル。
【請求項6】
に対するHの比が0.23~0.95である、請求項1に記載の多層パネル。
【請求項7】
前記中間膜が第3の硬質層及び第2の軟質層を更に含み、前記第2の軟質層が前記第2の硬質層と前記第3の硬質層の間に配置されている、請求項1に記載の多層パネル。
【請求項8】
前記第1の硬質層厚さが前記第2の硬質層厚さよりも小さく、前記第2の軟質層が非中心位置に配置されている、請求項7に記載の多層パネル。
【請求項9】
前記軟質層のガラス転移温度が20℃未満である、請求項1に記載の多層パネル。
【請求項10】
前記軟質層が幾何中心位置を有し、前記中間膜が、前記幾何中心位置から前記第1の硬質層の外表面までの厚さである第1の厚さt、及び前記幾何中心位置から前記第2の硬質層の外表面までの厚さである第2の厚さtを有し、tに対するtの比が1未満である、請求項1に記載の多層パネル。
【請求項11】
非対称遮音多層パネルであって、
第1の厚さHを有する第1の硬質基材;
第2の厚さHを有する第2の硬質基材、ここでH<Hである;及び
前記第1の硬質基材と前記第2の硬質基材の間の、厚さHを有する多層遮音中間膜;を含み;
前記多層中間膜は、硬質層厚さを有する第1の硬質層、第2の硬質層厚さを有する第2の硬質層、及び前記第1の硬質層と前記第2の硬質層の間の軟質層を含み、前記軟質層は前記中間膜内の非中心位置に配置されており;
前記多層パネルは、少なくとも0.80の中間膜厚さ係数I(ここで、I=(H-0.84)÷[(H+H)(H+H+H)]×100)を有する上記非対称遮音多層パネル。
【請求項12】
に対するHの比が0.23~0.95である、請求項11に記載の多層パネル。
【請求項13】
前記中間膜が第3の硬質層及び第2の軟質層を更に含み、前記第2の軟質層が前記第2の硬質層と前記第3の硬質層の間に配置されている、請求項11に記載の多層パネル。
【請求項14】
前記第1の硬質層厚さが前記第2の硬質層厚さよりも小さく、前記第2の軟質層が非中心位置に配置されている、請求項13に記載の多層パネル。
【請求項15】
前記軟質層のガラス転移温度が20℃未満である、請求項11に記載の多層パネル。
【請求項16】
多層パネルの面密度を増加させて、前記パネルのコインシデンス周波数領域における音響透過損失を向上させる方法であって、
の厚さを有する第1の硬質基材を用意する工程;
の厚さを有する第2の硬質基材を用意する工程;
の厚さを有する多層中間膜を用意する工程;
等式:I=(H-0.84)÷[(H+H)(H+H+H)]×100にしたがって前記多層パネルの中間膜厚さ係数Iを求める工程;
前記パネルの中間膜厚さ係数Iを少なくとも0.80に増加させる工程;
前記中間膜を前記第1の硬質基材と前記第2の硬質基材の間に配置して予備積層体を与える工程;及び
前記予備積層体を熱及び圧力にかけて、向上した音響透過損失を有する多層パネルを形成する工程;
を含む上記方法。
【請求項17】
<Hである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記中間膜が、硬質層厚さを有する第1の硬質層、第2の硬質層厚さを有する第2の硬質層、及び前記第1の硬質層と前記第2の硬質層の間の軟質層を含み、前記軟質層が前記中間膜内の非中心位置に配置されている、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記中間膜が第3の硬質層及び第2の軟質層を更に含み、前記第2の軟質層が前記第2の硬質層と前記第3の硬質層の間に配置されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法によって製造される多層パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、多層中間膜を含む遮音多層パネルに関する。より具体的には、本発明は、約0.80より高い中間膜厚さ係数を有し、第1のガラスシート、第2のガラスシート、及び多層遮音中間膜を含む多層ガラス積層体を開示する。本多層ガラス積層体は、積層体のコインシデンス周波数領域において向上した遮音性を有する。
【背景技術】
【0002】
[0002]ポリ(ビニルブチラール)(PVB)は、ガラス又は他の硬質基材(rigid substrate)の2つのシートの間に中間膜をサンドイッチすることによって形成される多層パネ
ルにおいて中間膜として用いることができるポリマーシートの製造においてしばしば用いられている。かかる積層ガラス又はガラスパネルは、安全目的のために長い間供されており、しばしば建築及び自動車用途において透明なバリヤとして用いられている。その主要な機能の1つは、物体にガラスを貫通させることなく衝撃又は打撃から生成するエネルギーを吸収し、加えられた力がガラスを破損するのに十分である場合においてもガラスを結合した状態に維持することである。これにより、鋭利なガラスの破片が散乱するのが阻止され、これによって囲まれた領域内の人間又は物体に対する創傷及び損傷が最小になる。騒音の減衰に関する積層ガラスの有利性はあまり知られていない。ここ数十年の間、空港及び鉄道の付近の建物において、建物内部の騒音レベルを減少させて、それを占有者にとってより快適にするために、積層ガラスが建築用途で用いられている。更に、この技術は、現在は道路及び幹線道路の交通騒音が問題である建物において用いられている。最近では、中間膜技術における進歩により、自動車用ガラスのための騒音及び振動の改善を与える改良された積層ガラスが製造されている。
【0003】
[0003]伝統的に、自動車用途において用いられるガラスパネルは、それぞれが2.0~2.3ミリメートル(mm)の間の厚さを有する2つのガラスシートを用いる。殆どの場合においては、これらのシートはほぼ同じ厚さを有する。このタイプの構成によって最終パネルにおける強度及び剛性の両方が促進され、これは乗物本体の全体的な機械強度及び剛性に貢献する。一部では、乗物の全体的な剛性の30%以下がそのガラスに起因すると試算されている。而して、例えばフロントガラス、サンルーフ又はムーンルーフ、並びにサイドウィンドウ及びリアウィンドウのような乗物のグレージングを構成するために用いる多層ガラスパネルの設計及び剛性は、これらのパネルの性能のためだけでなく、乗物自体の全体的性能のためにも重要である。
【0004】
[0004]燃料効率がより良好な乗物が好まれる最近の傾向により、より軽量の乗物に対する需要がもたらされている。乗物の重量を減少させる1つの方法は、より薄いガラスシートを用いることによってガラスの量を減少させることであった。例えば、2.1mm/2.1mmのガラス構造、及び1.4mの表面積を有するフロントガラスに関して、パネルの1つの厚さを約0.5mm減少させると、他の事項が全て同じであるならば10%超の重量減少をもたらすことができる。
【0005】
[0005]より薄い多層パネルへの1つの取り組みは、パネルの1つが他よりも薄い「非対称」のガラス構造を用いることであった。対称構造を有するより薄いガラスパネルも用いられている。しかしながら、非対称構造がより多く用いられており、これは伝統的な2.0mm~2.3mmの厚さを有する「室外」ガラスパネル(即ち、乗物のキャビンの外側に面するガラスパネル)、及びより薄い「室内」ガラスパネル(即ち、キャビンの内部に面するガラスパネル)を用いることを伴っている。より厚い外側ガラスは、適当な強度、及び使用中に室外パネルが曝されるであろう石、砂利、砂、及び他の道路ゴミに対する耐
衝撃性を確保するためである。しかしながら、通常はこれらの非対称パネルは、撓み剛性、ガラス曲げ強さ、ガラスエッジ強度、ガラス衝撃強さ、ルーフ強度、及びねじれ剛性のような特性を許容しうる範囲内に維持するために、少なくとも3.7mmの合計ガラス厚さを有する。
【0006】
[0006]更に、非対称構造は、通常はより薄い室内ガラスシートを用いることによって形成されるので、これらのパネルの遮音特性は、より厚いガラスを用いる同様のパネルよりもしばしば劣る。したがって、キャビン内の交通騒音及び他の騒音を最小にするために、非対称多層パネルを形成するために用いる中間膜は、一般に遮音性、又は音響減衰性、或いは遮音特性を有する中間膜(即ち、遮音中間膜)である。従来は、非遮音中間膜は、良好な遮音性を必要とする殆どの用途のために十分な遮音性を提供していない。
【0007】
[0007]グレージングを通る騒音透過は、車室内の騒音レベルの消費者の知覚の主要な要因である。フロントガラス及びサイドウインドウは、室内の騒音レベルのために特に重要であり、より静かな自動車室内の設計に対する音響的な制限の1つである。音響エネルギーは、車室の境界の他の領域と比べてフロントガラス及びサイドウインドウを通ってかなり容易に透過し得る。高い運転速度においては、フロントガラス及びサイドウインドウの付近において車外の空気流によって生成する空気力学的圧力変動は非常に強く、ガラス表面によって騒音が車室内に放射される。パネルの縁部及び湾曲部への空気流の衝突によって音響騒音が生成して、次に車室内に空気伝搬し得る。隣を走る乗物によって生成する空気伝搬騒音及び車体の構造振動による構造伝搬騒音の透過も、フロントガラス及びサイドウィンドウを通る騒音の透過の一因になる。
【0008】
[0008]ガラスパネルの遮音特性は、音響透過損失(STL)によって特徴付けることができる。ガラスは、その固有振動数に合致する励振周波数に最も良く反応する。低い内部減衰のために、ガラスは低い周波数(これは、ガラスパネルの剛性、質量、及び寸法によって定まる)において容易に共振して、音響透過を増加させる。低周波数共鳴領域より上方でコインシデンス周波数領域よりも下方(通常はフロントガラス又はサイドガラスに関しては300ヘルツ(Hz)乃至2500Hz未満)においては、ガラスの質量が音響透過を支配し、ガラスは音響の質量則にしたがう。質量則で制御される領域においては、音響透過損失は、周波数が1オクターブバンド上昇すると約6デシベル(dB)増加し、ガラスの厚さ又はガラスの面密度を倍にすることによって約6dB増加する。伝統的に、ガラスパネルの面密度は、一方又は両方のガラスシートの厚さを増加させることによって増加させる。
【0009】
[0009]ガラスを通る音響透過はコインシデンス効果を示すことが周知である。ガラスは、空気中の入射音波の速度がガラスの屈曲波の速度と合致する、特異的な限界周波数又はコインシデンス周波数を有する。コインシデンス周波数においては、音波はガラスを振動させるのに特に有効であり、振動するガラスは、コインシデンス周波数又はその付近、及びコインシデンス周波数よりも高いか又は低い周波数、或いはコインシデンス周波数領域内において有効な音の放射体である。その結果、ガラスは音響透過損失のディップ又は減少(コインシデンスディップ又はコインシデンス効果と呼ばれる)を示し、ガラスは音に対して透過性になる。
【0010】
[0010]コインシデンス周波数は、等式(1)
=c/2π×[ρ/B]1/2 (1)
(式中、cは空気中の音速であり、ρsはガラスパネルの面密度であり、Bはガラスパネルの曲げ剛性である)
によって表すことができる。一般に、コインシデンス周波数はガラスパネルの厚さを減少させると増加する。自動車用グレージングに関しては、コインシデンス周波数は通常は3
150~6300Hzの範囲であり、これは十分に2000~8000Hzの風切音の周波数範囲内である。(窓のような)建築物用積層ガラスに関しては、コインシデンス周波数は一般に約3150Hz未満である。
【0011】
[0011]コインシデンス効果は、コインシデンス周波数における音響透過損失のディップ又は減少を引き起こすだけでなく、コインシデンス周波数領域内における音響透過損失も減少させる。コインシデンス周波数において激しいコインシデンス効果(低いSTL)を示すガラスパネルは、その周波数の音をより優勢に透過して、コインシデンス周波数又はその付近の音の強さが高い囲まれた領域(例えば車の車内又は建物の室内)を与える。
【0012】
[0012]上述したように、質量制御周波数領域における積層ガラスの音響透過損失を増加させることは、伝統的に、ガラスの合計厚さを増加させることなどによって積層体の面密度を増加させることによって達成されている。しかしながら、このアプローチは、高いか又は低いガラス構造の対称度のいずれかを有する積層ガラスパネルのコインシデンス周波数における変化は僅かしか乃至全く与えないか、或いは更にはマイナスの変化を与える。更に、3000~5000Hzの周波数範囲における音響透過損失は悪影響を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
[0013]而して、質量制御周波数領域における音響透過損失を増加させ、またコインシデンス周波数領域における音響透過損失も向上させる別の解決法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[0014]本発明の一態様は、遮音(sound insulating)多層パネルであって、第1の厚さHを有する第1の硬質基材;第2の厚さHを有する第2の硬質基材(ここでH≦H);及び、第1の硬質基材と第2の硬質基材の間の、厚さHを有する多層遮音(acoustic)中間膜;を含み;多層中間膜は、硬質層厚さを有する第1の硬質層(stiff layer)、第
2の硬質層厚さを有する第2の硬質層、及び第1の硬質層と第2の硬質層の間の軟質層を含み;多層パネルは、少なくとも0.80の中間膜厚さ係数I(ここで、I=(H-0.84)÷[(H+H)(H+H+H)]×100)を有する上記遮音多層パネルである。
【0015】
[0015]他の態様は、非対称遮音多層パネルであって、第1の厚さHを有する第1の硬質基材;第2の厚さHを有する第2の硬質基材(ここでH<H);及び、第1の硬質基材と第2の硬質基材の間の、厚さHを有する多層遮音中間膜;を含み;多層中間膜は、硬質層厚さを有する第1の硬質層、第2の硬質層厚さを有する第2の硬質層、及び第1の硬質層と第2の硬質層の間の軟質層を含み、軟質層は中間内の非中心位置に配置されており;多層パネルは、少なくとも0.80の中間膜厚さ係数I(ここで、I=(H-0.84)÷[(H+H)(H+H+H)]×100)を有する上記非対称遮音多層パネルである。
【0016】
[0016]他の態様は、多層パネルの面密度を増加させて、パネルのコインシデンス周波数領域における音響透過損失を向上させる方法であって、Hの厚さを有する第1の硬質基材を用意する工程;Hの厚さを有する第2の硬質基材を用意する工程;Hの厚さを有する多層中間膜を用意する工程;等式:I=(H-0.84)÷[(H+H)(H+H+H)]×100にしたがって多層パネルの中間膜厚さ係数Iを求める工程;パネルの中間膜厚さ係数Iを少なくとも0.80に増加させる工程;中間膜を第1の硬質基材と第2の硬質基材の間に配置して予備積層体を与える工程;及び、予備積層体を熱及び圧力にかけて、向上した音響透過損失を有する多層パネルを形成する工程;を含
む上記方法である。
【0017】
[0017]本発明方法によって製造される多層パネルも包含される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】[0018]図1aは、対称のガラス構造を有する多層ガラスパネルを示す。[0019]図1bは、非対称のガラス構造を有する多層ガラスパネルを示す。
図2】[0020]図2aは、中間膜内の中心位置の軟質層を有する対称の3層中間膜を示す。[0021]図2bは、中間膜内の中心から外れて配置されている軟質層を有する非対称の3層中間膜を示す。
図3】[0022]図3は、例1に記載のように形成して試験した幾つかの多層パネルの音響透過損失のグラフである。
図4】[0023]図4は、例1に記載のように形成して試験した幾つかの更なる多層パネルの音響透過損失のグラフである。
図5】[0024]図5は、例2に記載のように形成して試験した幾つかの多層パネルの音響透過損失のグラフである。
図6】[0025]図6は、例2に記載のように形成して試験した幾つかの更なる多層パネルの音響透過損失のグラフである。
図7】[0026]図7は、例2に記載のように形成して試験した幾つかの更なる多層パネルの音響透過損失のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0027]本発明は、特定の中間膜厚さ係数を有する多層パネル又は積層体を開示する。より具体的には、本発明は、多層パネル又は積層体であって、第1の基材又はシート厚さを有する第1の硬質基材又はシート、第2の基材又はシート厚さを有する第2の硬質基材又はシート、並びに、少なくとも2つの硬質層又はスキン層、及び硬質層の間に配置されてこれらと接触している少なくとも1つの軟質層又はコア層を含む多層遮音中間膜を含み、多層パネルは約0.80より大きい中間膜厚さ係数を有する上記多層パネル又は積層体を開示する。下記において更に記載するように、多層パネルは、1以下の基材の対称度(又はガラスの対称度)、1以下のコア層の対称度を有し、遮音中間膜には1つより多いコア層又は軟質層を含ませることができる。
【0020】
[0028]積層ガラスパネルのような多層パネルの面密度を2倍にすると、質量制御周波数領域における音響透過損失は約6デシベル(dB)増加することが周知である。言い換えれば、質量制御周波数領域における音響透過損失は、多層パネルの面密度を増加させると増加する。伝統的に、面密度は、合計基材厚さ又は合計ガラス厚さを増加させることによって増加させている。しかしながら、このアプローチは、積層ガラスのコインシデンス周波数においては僅かな変化しかもたらさず、3000~5000Hzの周波数の間の音響透過に悪影響を与える可能性がある。
【0021】
[0029]本発明によれば、驚くべきことに、積層ガラスパネルのような多層パネルの中間膜厚さ係数を増加させることが、パネルの面密度を増加させ、質量制御周波数領域だけでなく、コインシデンス周波数及び3000~5000Hzの間の周波数における音響透過損失も向上させる別の方法を提供することが見出された。別の言い方をすれば、多層パネルの中間膜厚さ係数を増加させてその面密度を増加させると、多層パネルの合計基材厚さを同等の面密度まで増加させることによっては達成することができない、3000~5000Hzの間の周波数範囲における音響透過損失も向上する。例えば、2つの多層ガラスパネルA及びBを考える。ガラスパネルAはガラスの2つのシート及び遮音中間膜Aを含み、ガラスパネルBはガラスの2つのシート及び遮音中間膜Bを含む。ガラスパネルBは、ガラスパネルAの合計ガラス厚さよりも小さい合計ガラス厚さ(T)を有する。ガラ
スパネルBの中間膜厚さ係数はガラスパネルAの中間膜厚さ係数よりも大きく、ガラスパネルA及びBは、同等の面密度、及び質量制御周波数領域において同等の音響透過損失を有する。その結果、ガラスパネルBは、コインシデンス周波数及び3000~5000Hzの間の周波数においてより高い音響透過損失を示す(即ち、ガラスパネルBの中間膜厚さ係数がより大きいので、ガラスパネルBはガラスパネルAよりも良好な遮音性を有する)。ガラスパネルBの中間膜厚さ係数を(ガラスパネルAのものと比べて)増加させると、ガラスパネルAの合計ガラス厚さを増加させることによって向上するよりも多く、コインシデンス周波数及び3000~5000Hzの間の周波数における音響透過損失が向上する。
【0022】
[0030]幾つかの態様においては、多層ガラスパネルの中間膜厚さ係数を増加させることにより、コインシデンス周波数において約4dBまで、そして3000~5000Hzの間の周波数において2dBまで、又は3dBまでの向上を達成することができる。而して、多層パネルの中間膜厚さ係数を増加させてその面密度を増加させることは、多層パネルの遮音特性を向上させる有効な方法である。本発明は、パネルの中間膜厚さ係数を増加させることによって多層パネルの面密度を増加させる方法を開示する。より具体的には、本発明は、パネルの中間膜厚さ係数を増加させることによって、広い周波数領域、例えば約200Hz~約10000Hzにわたって音響透過損失を増加させる方法を開示する。
【0023】
[0031]本明細書に記載する多層パネルは、概して、第1の基材厚さを有する第1の硬質基材シート、及び第2の基材厚さを有する第2の硬質基材シートを含む。第1及び第2の基材のそれぞれは、ガラスのような硬質材料で形成することができ、同じか又は異なる材料から形成することができる。幾つかの態様においては、第1及び第2の基材の少なくとも1つはガラス基材であってよく、一方で他の態様においては、第1及び第2のものの少なくとも1つは、例えば、ポリカーボネート、コポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、及びこれらの組合せのような硬質ポリマーなどの他の材料で形成することができる。幾つかの態様においては、両方の硬質基材がガラスである。求められる性能及び特性に応じて、任意の好適なタイプの非ガラス材料を用いてかかる基材を形成することができる。通常は、硬質基材のいずれも、下記において詳細に記載するような熱可塑性ポリマー材料などのより軟質のポリマー材料からは形成されない。
【0024】
[0032]任意の好適なタイプのガラスを用いて硬質ガラス基材を形成することができ、幾つかの態様においては、ガラスは、アルミナ-シリケートガラス、ホウケイ酸ガラス、石英又は溶融シリカガラス、及びソーダ石灰ガラスからなる群から選択することができる。ガラス基材は、用いる場合には、アニーリング、熱強化又は焼入れ、化学強化、エッチング、被覆、又はイオン交換による強化にかけることができ、或いは、これらの処理の1以上にかけたものであってよい。ガラスそれ自体は、圧延ガラス、フロートガラス、又は厚板ガラスであってよい。幾つかの態様においては、ガラスは化学的に処理されていなくてよく、又はイオン交換によって強化されていなくてよく、一方で他の態様においては、ガラスはアルミナシリケートガラスでなくてよい。第1及び第2の基材がガラス基材である場合には、それぞれの基材を形成するのに用いるガラスのタイプは同じか又は異なっていてよい。
【0025】
[0033]硬質基材は任意の好適な厚さを有していてよい。幾つかの態様においては、硬質基材が全てガラス基材である場合には、ガラスシート(第1又は第2のガラス)の少なくとも1つの呼び厚さは0.1mm~12.7mmの範囲であり、多層ガラスパネルは、第1及び第2のガラスシート(及び所望の場合には任意の他のガラス又は硬質シート)の任意の組合せの構造を含む。幾つかの態様においては、第1及び/又は第2の基材の呼び厚さは、少なくとも約0.4mm、少なくとも約0.7mm、少なくとも約1.0mm、少なくとも約1.3mm、少なくとも約1.6mm、少なくとも約1.9mm、少なくとも
約2.2mm、少なくとも約2.5mm、又は少なくとも約2.8mm、及び/又は約3.2mm未満、約2.9mm未満、約2.6mm未満、約2.3mm未満、約2.0mm未満、約1.7mm未満、約1.4mm未満、又は約1.1mm未満であってよい。更に、又は別の態様においては、第1及び/又は第2の基材は、少なくとも約2.3mm、少なくとも約2.6mm、少なくとも約2.9mm、少なくとも約3.2mm、少なくとも約3.5mm、少なくとも約3.8mm、又は少なくとも約4.1mm、及び/又は約12.7mm未満、約12.0mm未満、約11.5mm未満、約10.5mm未満、約10.0mm未満、約9.5mm未満、約9.0mm未満、約8.5mm未満、約8.0mm未満、約7.5mm未満、約7.0mm未満、約6.5mm未満、約6.0mm未満、約5.5mm未満、約5.0mm未満、又は約4.5mm未満の呼び厚さを有していてよい。用途及び所望の特性に応じて他の厚さが適切である可能性がある。
【0026】
[0034]図1aに示すように、多層パネルが同じ呼び厚さを有する2つの基材を含む場合には、かかるパネルは、1つの基材の呼び厚さの他の基材の呼び厚さに対する比が1に等しいので「対称構造」と呼ぶことができる。図1bに示すように、多層パネルが異なる呼び厚さを有する2つの基材を含む場合には、かかるパネルは、1つの基材の呼び厚さの他の基材の呼び厚さに対する比が1に等しくないので「非対称構造」と呼ぶことができる。本明細書において用いる非対称構造又は非対称パネルは、複数の基材(より厚い基材に対するより薄い基材)の厚さの比が1未満であることを特徴とし、対称構造又は対称パネルは、複数の基材の厚さの比が1に等しい(即ち、複数の基材が同じ厚さを有する)ことを特徴とする。
【0027】
[0035]幾つかの態様においては、多層パネルには、同じ呼び厚さを有する2つの基材を含ませることができる。他の態様においては、図1bに示すように、多層パネルに異なる呼び厚さを有する2つの基材を含ませることができる。本明細書において用いる「基材の対称度」及び「ガラスの対称度」という用語は、第2の基材又はより厚い基材(又はガラスシート)の呼び厚さに対する第1の基材又はより薄い基材(又はガラスシート)の呼び厚さの比を指し、これらの用語は互換的に用いることができる。「ガラスの対称度」は、等式(2):
ガラスの対称度(S)=H/H (2)
(式中、Hはより薄い(第1の)ガラス基材の呼び厚さであり、Hはより厚い(第2の)ガラス基材の厚さであり、H≦Hである)
によって定められる。図1aは対称構造を有するパネルの断面を示し、図1bは非対称構造を有するパネルの断面を示す。
【0028】
[0036]本明細書において用いる「対称構造の」という用語は、多層ガラスパネルに関する場合には、1に等しいガラスの対称度:Sを有することを意味し、「非対称構造の」という用語は、1未満のガラスの対称度を有することを意味する。「ガラスの対称度」、「対称構造の」、「対称構造」、及び「ガラス構造の対称度」という用語は、明細書全体で互換的に用いることができる。「非対称構造の」及び「非対称構造」という用語は、明細書全体で互換的に用いることができる。
【0029】
[0037]幾つかの態様においては、本明細書に記載する多層パネルは、少なくとも約0.10、少なくとも約0.15、少なくとも約0.20、少なくとも約0.23、少なくとも約0.25、少なくとも約0.30、少なくとも約0.35、少なくとも約0.40、少なくとも約0.45、少なくとも約0.50、少なくとも約0.55、少なくとも約0.60、少なくとも約0.65、少なくとも約0.70、少なくとも約0.75及び/又は約1、約0.99以下、約0.97以下、約0.95以下、約0.90以下、約0.85以下、約0.80以下、約0.75以下、約0.70以下、約0.65以下、約0.60以下、約0.55以下、約0.50以下、約0.45以下、約0.40以下、約0.3
5以下、約0.30以下のガラスの対称度を有していてよい。幾つかの態様においては、本明細書に記載する多層パネルは対称であってよく、1のガラスの対称度を有していてよい。
【0030】
[0038]多層パネルが非対称構造を有する場合には、より厚い基材の呼び厚さとより薄い基材の呼び厚さとの間の差は、少なくとも約0.05mmであってよい。幾つかの態様においては、少なくとも1つのガラスシートは、他のガラスシートの少なくとも1つ、又は他のガラスシートのそれぞれの呼び厚さよりも少なくとも約0.1mm、少なくとも約0.2mm、少なくとも約0.3mm、少なくとも約0.4mm、少なくとも約0.5mm、少なくとも約0.6mm、少なくとも約0.7mm、少なくとも約0.8mm、少なくとも約0.9mm、少なくとも約1.0mm、少なくとも約1.2mm、少なくとも約1.6mm、少なくとも約2.0mm、少なくとも約3.0mm、又は少なくとも約4.0mm厚くてよい呼び厚さを有する。
【0031】
[0039]具体的なガラス構造は、多層パネルの最終的な用途に応じて選択することができる。例えば、多層パネルを自動車用途において用いる幾つかの態様においては、1つの基材の呼び厚さは0.1~2.6mm、0.3~2.0mm、又は0.5~1.8mmの範囲であってよく、一方で他の基材の呼び厚さは0.5~3.0mm、0.6~2.8mm、1.0~2.6mm、又は1.6~2.4mmの範囲であってよい。基材の厚さの合計(H+H)は、4.6mm未満、4.2mm未満、4.0mm未満、3.7mm未満、3.4mm未満、又は3.2mm未満であってよい。呼び厚さの比(ガラスの対称度:S)は、上記に定義した範囲内であってよい。所望の用途及び性能によって、必要に応じてガラスの他の厚さ及び対称度の値を用いることができる。
【0032】
[0040]多層パネルを航空宇宙又は建築用途において用いる場合のような他の態様においては、1つの基材の呼び厚さは、2.2~12.7mm、2.6~8mm、又は2.8~5mmの範囲であってよく、一方で他の基材の呼び厚さは、1.6~12.6mm、1.8~7.5mm、又は2.3~5mmの範囲であってよい。これらの態様における基材の厚さの合計(H+H)は、4.6mmより大きく、5.0mmより大きく、5.5mmより大きく、又は6mmより大きくてよい。ガラスの対称度:Sは、上記に定義した範囲内であってよい。所望の用途及び性能によって、必要に応じてガラスの他の厚さ及び対称度の値を用いることができる。
【0033】
[0041]硬質基材に加えて、本明細書に記載する多層パネルは、少なくとも、第1及び第2の硬質基材の間に配置され、それぞれと接触しているポリマー多層遮音中間膜を含む。本明細書において用いる「多層中間膜」、「ポリマー多層中間膜」、及び「ポリマー多層中間膜」という用語は、多層パネルの形成において用いるのに好適な多層ポリマーシートを指す。本明細書において用いる「単層」及び「モノリス型」という用語は、1つの単一のポリマー層から形成される中間膜を指し、一方で「複数層」又は「多層」という用語は、互いに隣接して互いと接触している、共押出、積層、又は他の形態で互いと結合されている2以上のポリマー層を有する中間膜を指す。中間膜のそれぞれのポリマー層には、場合によっては1種類以上の可塑剤と混合した1種類以上のポリマー樹脂を含ませることができ、これを任意の好適な方法によってシートに成形している。中間膜中の1以上のポリマー層に更なる添加剤を更に含ませることができるが、これらは必須ではない。
【0034】
[0042]本明細書において用いる「第1」、「第2」、「第3」などの用語は種々の部材を説明するために用いるが、かかる部材はこれらの用語によって不必要に限定すべきではない。これらの用語は1つの部材を他から区別するためだけに用いられ、必ずしも具体的な順番又は更には具体的な部材を与えない。例えば、1つの部材は、矛盾なしに明細書において「第1の」部材、特許請求の範囲において「第2の」部材とみなすことができる。
明細書内及びそれぞれの独立請求項に関して一貫性が維持されるが、かかる命名は必ずしもそれらの間で一貫していることを意図していない。このような3層(又は3重層)中間膜は、2つの外側「スキン」層の間にサンドイッチされている少なくとも1つの内側「コア」層を有すると説明することができる。
【0035】
[0043]本明細書において用いる「ポリマー樹脂組成物」及び「樹脂組成物」という用語は、1種類以上のポリマー樹脂を含む組成物を指す。ポリマー組成物には、場合によって可塑剤及び/又は他の添加剤のような他の成分を含ませることができる。
【0036】
[0044]幾つかの態様においては、多層中間膜は、2つの硬質層又はスキン層、及び1つの軟質層又はコア層を含み、軟質層は2つの硬質層の間でそれらと接触している。コア層は、図2aに示すように中心位置に配置されているか、又は図2bに示すように非中心位置に配置されている。非中心位置に配置されているコア層を有するかかる多層中間膜は、ここでは「非対称中間膜」又は「非対称コア層」とも呼び、コア層の中心面(P)が多層中間膜の幾何中心面(P)から外れていて、コア層の中心面からより厚い硬質層の外表面までの厚さ(t)に対するコア層の中心面からより薄い硬質層の外表面までの厚さ(t)の比が1未満である(図2bを参照)ことを特徴とする。本明細書において用いるこの厚さの比(S)は、「コア層の対称度」又は「中間膜の対称度」と呼び、等式(3):
=t/t (3)
(式中、tはコア層の中心面からより薄い硬質層の外表面までの厚さであり、tはコア層の中心面からより厚い硬質層の外表面までの厚さであり、t≦tである)
によって示すことができる。対称の多層遮音中間膜(例えばコア層の対称度が1に等しい)は、コア層の中心面(P)が多層中間膜の幾何中心面(P)に重なっていて、コア層の中心面から硬質層の外表面の一方までの厚さ(t、t)の、コア層の中心面から硬質層の他の外表面までの厚さに対する比が1である(図2aを参照)ことを特徴とする。t=tの場合には、S=1である。
【0037】
[0045]本明細書において用いる「対称構造のコア層」及び「対称構造の中間膜」という用語は1のコア層の対称度(S)を有する多層中間膜を指し、「コア層の対称度」及び「中間膜の対称度」という用語は互換的に用いることができる。中間膜が複数のコア(軟質)層を含む場合には、コア層のそれぞれの対称度は上記に記載のように計算することができる。
【0038】
[0046]幾つかの態様においては、コア層の中心面(P)は、所望に応じて中間膜の幾何中心面(P)に対して任意の非対称位置にあってよい。1つの基材が他よりも厚い非対称多層パネルの幾つかの態様においては、コア層の中心面はより薄い基材(H)により近接して配置することができ、或いはコア層の中心面はより厚い基材(H)により近接して配置することができる。幾つかの態様においては、本明細書に記載する多層遮音中間膜は、約0.01より大きいコア層の対称度を有していてよい。対称度の範囲は、0.01~1、0.02~0.9、0.04~0.8、又は0.05~0.7であってよい。幾つかの態様においては、本明細書に記載する多層遮音中間膜は、1以下、0.90未満、0.80未満、0.70未満、0.60未満、0.50未満、0.40未満、及び/又は約0より大きく、約0.01より大きく、約0.05より大きく、0.10より大きく、0.20より大きく、又は約0.35より大きく、或いはそれ以上のコア層の対称度を有していてよい。幾つかの態様においては、多層遮音中間膜は1のコア層の対称度を有していてよい(即ち、中間膜は対称であってよい)。
【0039】
[0047]幾つかの態様においては、多層遮音中間膜は少なくとも1つの軟質又はコア層を含み、一方で他の態様においては、多層遮音中間膜は、少なくとも2つの軟質層、少なく
とも3つの軟質層、少なくとも4つの軟質層、少なくとも5つの軟質層、又は少なくとも6つの軟質層、或いはそれ以上の軟質層を含む。幾つかの態様においては、1つより多い軟質又はコア層(即ち、2以上の軟質層)を含む非対称多層遮音中間膜は、1つの軟質層しか含まない非対称多層遮音中間膜よりも、コインシデンス周波数領域における非対称ガラスパネルの遮音性のより多い向上を与え、したがってより有利である。
【0040】
[0048]非対称多層遮音中間膜が、2つ、3つ、又はそれ以上の軟質層を含む場合には、これらの軟質層は同一であっても又は異なっていてもよく、軟質層の少なくとも1つが非対称構造である(コア層の対称度が1未満である)限りにおいて異なる構造又は配置で中間膜内に配置することができる。例えば、少なくとも2つの軟質層が非対称構造であるか、或いは少なくとも1つの軟質層が非対称構造であり、少なくとも1つの軟質層が対称構造である少なくとも2つの軟質層を中間膜に含ませることができる。非対称構造である2以上の軟質層が存在する場合には、それぞれのコア層の対称度は同一であっても異なっていてもよい。
【0041】
[0049]多層パネルの面密度は、等式(4):
ρ=(H+H)×ρ/1000+H×ρ/1000 (4)
(式中、ρはガラスの密度(kg/m)であり、ρは中間膜の密度(kg/m)であり、H及びHは2つのガラスシートの厚さ(mm)であり、Hは中間膜の厚さ(ミリメートル)である)
によって計算することができる。
【0042】
[0050]本発明者らは、ガラスパネルの中間膜厚さ係数(I)を増加させることによって多層ガラスパネルの面密度(ρ、kg/m)を増加させることができることを見出した。ガラスパネルの中間膜厚さ係数は、中間膜からガラスパネルの面密度、したがって質量制御周波数領域、並びにコインシデンス周波数及びそれよりも高い周波数領域における音響透過損失への寄与の尺度である。多層ガラスパネルの中間膜厚さ係数は、等式(5):
=(H-0.84)÷[(H+H)(H+H+H)]×100 (5)
(式中、H、H、及びHは上記に規定した通りである)
にしたがって求められる。0.84mm以下の厚さを有する中間膜を含むガラスパネルに関しては、積層ガラスのSTLの向上に対する中間膜厚さの寄与はゼロ(0)である。中間膜厚さ係数の寄与を示すために、次の例を考える。第1の例においては、2.1mm/1.6mmのガラスパネルが厚さ1mmの中間膜を有し、面密度は10.3kg/m、Iは0.92である。この例においては、中間膜は面密度に10.3%寄与する。第2の例においては、2.3mm/2.3mmのガラスパネルが、厚さ1mmの中間膜、12.6kg/mの面密度、及び0.62の中間膜厚さ係数を有し、中間膜は面密度に8.5%寄与する。第1の例において、より大きな中間膜からの寄与がある。他の例においては、厚さ3.1mmの中間膜、12.6kg/mの面密度、9.0の中間膜厚さ係数を有する2.1mm/1.6mmのガラスパネルに関しては、中間膜は面密度に26.2%寄与し、一方で、厚さ1mmの中間膜、12.6kg/mの面密度、0.62の中間膜厚さ係数を有する2.3mm/2.3mmのガラスパネルに関しては、中間膜は面密度に8.5%しか寄与しない。ここでも、第1のパネルは第2のパネルよりも大きな中間膜から面密度への寄与を有する。
【0043】
[0051]上記で議論したように、質量制御周波数領域における多層ガラスパネルの音響透過損失は、パネルの中間膜厚さ係数を増加させることによって増加させることができ、これはSTLを増加させるために合計ガラス厚さを増加させる従来のアプローチよりも有効である。コインシデンス周波数における音響透過損失は多層ガラスパネルの合計ガラス厚
さとは実質的に無関係であるので、合計厚さを増加させる従来のアプローチは、コインシデンス周波数における音響透過損失における小さな変化しかもたらさず、合計ガラス厚さを増加させることは3000~5000Hzの周波数の間の音響透過に悪影響を与える可能性がある。例えば、対称の多層遮音中間膜(1のコア層の対称度)を含み、0の中間膜厚さ係数を有する従来の対称ガラスパネルは、図3に示されるように、コインシデンス周波数における音響透過損失(STL)によって測定して合計ガラス厚さとは実質的に無関係の遮音性、及び3000~5000Hzの間の周波数における遮音性の小さな低下を有する。対称の多層遮音中間膜(1のコア層の対称度)を含み、0の中間膜厚さ係数を有する従来の低対称度のガラスパネルは、図4に示されるように、ガラスの対称度を減少させると、合計ガラス厚さを増加させても、3000~5000Hzの間の周波数における減少した音響透過損失に加えて、コインシデンス周波数領域における音響透過損失によって測定して減少した遮音性を有する。
【0044】
[0052]対称遮音中間膜(1のコア層の対称度)及び0の中間膜厚さ係数を有する1つの従来の非対称ガラスパネル(1.6mm/0.7mmの構造、S=0.44、合計ガラス厚さ=2.3mm、ρ=6.6kg/m)においては、音響透過損失は、対称遮音中間膜(1のコア層の対称度)及び0の中間膜厚さ係数を有する第2の従来の非対称ガラスパネル(3.0mm/0.7mmの構造、S=0.23、合計ガラス厚さ=3.7mm、ρ=10.1kg/m)よりも、コインシデンス周波数においては1dB高く、3000~5000Hzの間の周波数においては4dB以下高い。
【0045】
[0053]幾つかの態様においては、3.1~6の中間膜厚さ係数を有する対称多層ガラスパネルは、コインシデンス周波数領域における音響透過損失によって測定される遮音性を、0の中間膜厚さ係数を有する従来の対称多層ガラスパネルよりも0.8~2.7dB以下向上させる。他の態様においては、3.9~7.3の中間膜厚さ係数を有する非対称積層ガラスパネル(S=0.23)は、コインシデンス周波数領域における音響透過損失によって測定される遮音性を、0の中間膜厚さ係数を有する従来の非対称積層ガラスパネル(S=0.23)よりも1.7dB以下乃至4.2dB以下向上させる。他の態様においては、3.9~7.3の中間膜厚さ係数を有する非対称積層ガラスパネル(S=0.76)は、コインシデンス周波数領域における音響透過損失によって測定される遮音性を、0の中間膜厚さ係数を有する従来の非対称積層ガラスパネル(S=0.76)よりも0.7dB以下乃至2.9dB以下向上させる。多層ガラスパネルの中間膜厚さ係数を増加させると、一般にパネルのコインシデンス周波数及び3000~5000Hzの間の周波数における音響透過損失が向上し、この向上は、特に0.76未満のガラスの対称度を有する非対称構造に関しては、対称ガラス構造よりも非対称ガラス構造に関してより効率的又は有効である。
【0046】
[0054]幾つかの態様においては、本発明の幾つかの態様による多層パネルの中間膜厚さ係数は、34ミル~180ミル(1ミル=0.0254mm)の範囲の多層中間膜厚さに関しては、少なくとも約0.80、少なくとも約0.90、少なくとも約1.0、少なくとも約1.5、少なくとも約2.0、少なくとも約3.0、少なくとも約4.0、少なくとも約5.0、少なくとも約10、又は少なくとも約20、及び/又は約76以下、約60以下、約50以下、約40以下、約30以下、約25以下であってよい。他の中間膜厚さ係数を、特定の用途に関して所望に応じて用いることができる。中間膜が2つの基材の間に積層されていない場合には、その平均厚さは、カリパス又は他の同等の装置を用いて中間膜の厚さを直接測定することによって求めることができる。中間膜が2つの基材の間に積層されている場合には、その厚さは、多層パネルの全厚さから基材の合計厚さを減じることによって求めることができる。
【0047】
[0055]幾つかの態様においては、1以上のポリマー層は、少なくとも約1ミル、少なく
とも約2ミル、少なくとも約3ミル、少なくとも約4ミル、少なくとも約5ミル、少なくとも約6ミル、少なくとも約7ミル、少なくとも約8ミル、少なくとも約9ミル、又は少なくとも約10ミル、或いはそれ以上の平均厚さを有していてよい。更に、又は別の態様においては、本明細書に記載する中間膜中の1以上のポリマー層は、約25ミル以下、約20ミル以下、約15ミル以下、約12ミル以下、約10ミル以下、約8ミル以下、約6ミル以下、約4ミル以下、又は約2ミル以下の平均厚さを有していてよいが、所望に応じて他の厚さを用いることができる。
【0048】
[0056]幾つかの態様においては、層又は中間膜に、シートの長さ若しくは最長寸法及び/又は幅若しくは第2の最長寸法に沿って実質的に同じ厚さを有する平坦なポリマー層を含ませることができ、一方で他の態様においては、例えば多層中間膜の1以上の層をくさび形状にするか、或いはくさび形状のプロファイルを与えて、中間膜の厚さがシートの長さ及び/又は幅に沿って変化して、層又は中間膜の一方の縁部が他の縁部よりも大きい厚さを有するようにすることができる。硬質/軟質/硬質の3層のような多層中間膜がくさび形状である場合には、中間膜の少なくとも軟質層及び硬質層の1つをくさび形状にすることができる。くさび形状の中間膜は、例えば自動車及び航空機用途におけるヘッドアップディスプレイ(HUD)パネルにおいて有用である可能性がある。くさび形状の中間膜を含む多層パネルの中間膜厚さ係数は等式(5)にしたがって求めることができ、この場合、Hは中間膜の最も小さい厚さの部分(通常はシートの長さ又は幅の端部の1つ)の厚さに等しい。
【0049】
[0057]好適な熱可塑性ポリマーの例としては、ポリ(ビニルアセタール)樹脂、ポリウレタン(PU)、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ(塩化ビニル-co-メタクリレート)、ポリエチレン、ポリオレフィン、エチレンアクリレートエステルコポリマー、ポリ(エチレン-co-ブチルアクリレート)、シリコーンエラストマー、エポキシ樹脂、並びに上記に示した任意のポリマーから誘導されるエチレン/カルボン酸コポリマー及びそのイオノマーのような酸コポリマー、並びにこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。幾つかの態様においては、多層中間膜の1以上の層に熱可塑性ポリマーを含ませることができ、これは、ポリ(ビニルアセタール)樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンビニルアセテート、及びポリウレタンからなる群から選択することができる。幾つかの態様においては、1以上のポリマー層に少なくとも1種類のポリ(ビニルアセタール)樹脂を含ませることができる。本明細書においては概してポリ(ビニルアセタール)樹脂に関して記載するが、本発明の種々の態様にしたがって、下記に記載するポリ(ビニルアセタール)樹脂と一緒か、又はこれに代えて1種類以上の上記のポリマー樹脂を含ませることができることを理解すべきである。
【0050】
[0058]層及び中間膜において用いるのに好適なポリウレタンは異なる硬度を有する可能性がある。代表的なポリウレタンポリマーは、ASTM-D2240にしたがって85未満のショアA硬度を有する。ポリウレタンポリマーの例は、20℃未満のガラス転移温度を有する脂肪族イソシアネートポリエーテル系ポリウレタンであるAG8451及びAG5050(Woburn, MAのThermedics Inc.から商業的に入手できる)である。EVAポリマーは、種々
の量の酢酸ビニル基を含む可能性がある。望ましい酢酸ビニル含量は、一般に約10~約90モル%である。より低い酢酸ビニル含量を有するEVAは、低温における遮音のために用いることができる。含ませる場合には、エチレン/カルボン酸コポリマーは、一般に約1~約25モル%のカルボン酸含量を有するポリ(エチレン-co-メタクリル酸)及びポリ(エチレン-co-アクリル酸)である。エチレン/カルボン酸コポリマーのイオノマーは、アルカリ金属(例えばナトリウム)及びアルカリ金属(alkaline metals)(例
えばマグネシウム)の水酸化物、アンモニア、又は亜鉛のような遷移金属の他の水酸化物のような塩基でコポリマーを部分的又は完全に中和することによって得ることができる。
好適なイオノマーの例としては、Surlyn(登録商標)イオノマー樹脂(Wilmington, DelawareのDuPontから商業的に入手できる)が挙げられる。
【0051】
[0059]本発明のガラスパネルにおいて用いる多層中間膜としては、少なくとも2つの層を有し、遮音特性を有する任意の中間膜、例えば少なくとも第1の硬質層、第2の硬質層、及び第1の硬質層と第2の硬質層の間に配置されている第3の軟質層を含む多層遮音中間膜が挙げられる。軟質/硬質/軟質、軟質/硬質/軟質/硬質/軟質、硬質/軟質/硬質/軟質/硬質、硬質/軟質/軟質/硬質のような更なる数の層及び中間膜の組合せ、及び当業者に公知の他の態様が可能である。本発明の多層ガラスパネルにおいて用いるのに好適な多層遮音中間膜としては、音響減衰特性を増大し、ガラス及び硬質の外側層、通常はスキン層を通る音響透過を減少させて、中間膜の取扱い性、加工性、及び機械的強度を与えるために変性された1以上の物理特性を有する軟質層を含む中間膜が挙げられる。本明細書において用いる「硬質層」又は「より硬質の層」とは、概して他の層よりも硬質又はより剛性であり、他の層よりも概して少なくとも2℃高いガラス転移温度を有する層を指す。本明細書において用いる「軟質層」又は「より軟質の層」とは、他の層よりも軟質であり、他の層よりも概して少なくとも2℃低いガラス転移温度を有する層を指す。向上した遮音特性を達成するために変性される固有の物理特性の1つは、軟質(コア)層のより低いガラス転移温度である。幾つかの態様においては、軟質層の好適なガラス転移温度は、約25℃未満、約20℃未満、約15℃未満、約10℃未満、約5℃未満、約0℃未満、又は約-5℃未満である。軟質層のより低いガラス転移温度に加えて、用いるのに好適な多層遮音中間膜としては、少なくとも0.10、少なくとも約0.15、少なくとも約0.20、又はそれ以上の20℃における減衰損失係数(damping loss factor)を有す
る中間膜を挙げることができる。
【0052】
[0060]多層ガラスパネルに関しては、減衰損失係数は概してコインシデンス周波数における音響透過損失に相関させることができ、減衰損失係数が増加すると、コインシデンス周波数における音響透過損失は増加する(例えば、Lu, J: Designing PVB interlayer for Laminated Glass with Enhanced Sound Reduction, 2002, InterNoise 2002, 論文581
;Lu, J. Windshields with New PVB Interlayer for Vehicle Interior Noise Reduction and Sound Quality Improvement, 2003, SAE Noise & Vibration Conference, Traverse City, MI, 2003年5月5~9日, Society of Automotive Engineers Paper 2003-01-1587
を参照)。
【0053】
[0061]代表的な多層中間膜構造の例としては、PVB/PVB/PVB、PVnB/PViB/PVnB(ここで、PVB(ポリ(ビニルブチラール))、PVnB(ポリビニルn-ブチラール)、及び/又はPViB(ポリ(ビニルi-ブチラール)層は、単一の樹脂、又は異なる残留ヒドロキシル含量若しくは異なるポリマー組成を有する2種類以上の樹脂を含む);PVC/PVB/PVC、PVB/PVC/PVB、PVB/PU/PVB、PU/PVB/PU、イオノマー/PVB/イオノマー、イオノマー/PU/イオノマー、イオノマー/EVA/イオノマー、イオノマー/イオノマー/イオノマー(ここで、軟質コア層(PVB(PViBを含む)、PVC、PU、EVA、又はイオノマー)は、単一の樹脂、又は異なるガラス転移温度を有する2種類以上の樹脂を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。或いは、スキン及びコア層は全て、同じか又は異なる出発樹脂を用いるPVBであってよい。樹脂及びポリマーの他の組合せは当業者に明らかであろう。一般に、ここで用いる「PVB」及び「PVB樹脂」とは、他に示していない限りにおいて、PVnB、又はPViB、或いはPVnBとPViBの組み合わせを指す。
【0054】
[0062]多層中間膜中の軟質コア層には、1種類以上の樹脂を含ませることができる。コア層が少なくとも1種類のポリビニルアセタール樹脂を含む場合には、軟質コア層中の樹脂又は少なくとも1種類の樹脂は、次の特性:より低い残留ヒドロキシル;より高い残留
酢酸ビニル含量;より低い残留ヒドロキシル含量及びより高い残留アセテート含量;硬質層と異なるアルデヒド;混合アルデヒド;の少なくとも1つ、又は任意の2以上の特性の組み合わせを有する。軟質層は、通常は、少なくとも1種類の可塑剤、幾つかの態様においては2種類以上の可塑剤の混合物を含み、代表的な態様においては、軟質層は1つ又は複数の硬質層よりも高い可塑剤含量を有する。所望に応じて、当業者に公知なように層及び中間膜の特性の任意の組合せを用いることができる。
【0055】
[0063]熱可塑性ポリマー樹脂は、任意の好適な方法によって形成することができる。熱可塑性ポリマー樹脂がポリ(ビニルアセタール)樹脂を含む場合には、かかる樹脂は、例えば米国特許2,282,057及び2,282,026、並びに"Vinyl Acetal Polymers", Encyclopedia of Polymer Science & Technology, 3版, vol.8, p.381-399, B.E. Wade (2003)に記載されているもののような公知の方法にしたがって、ポリ(ビニルアルコール)を触媒の存在下で1種類以上のアルデヒドでアセタール化することによって形成することができる。得られるポリ(ビニルアセタール)樹脂は、ASTM-D1396にしたがって樹脂のアセタール化%として測定して少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%の少なくとも1種類のアルデヒドの残基を含み得る。ポリ(ビニルアセタール)樹脂中のアルデヒド残基の全量はアセタール含量として総称することができ、ポリ(ビニルアセタール)樹脂の残りは残留ヒドロキシル基(ビニルヒドロキシル基として)及び残留エステル基(酢酸ビニル基として)であり、これは下記において更に詳細に議論する。
【0056】
[0064]好適なポリ(ビニルアセタール)樹脂には任意のアルデヒドの残基を含ませることができ、幾つかの態様においては少なくとも1種類のC~Cアルデヒドの残基を含ませることができる。好適なC~Cアルデヒドの例としては、例えばn-ブチルアルデヒド、i-ブチルアルデヒド、2-メチルバレルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。本明細書に記載する層及び中間膜において用いるポリ(ビニルアセタール)樹脂の1以上に、樹脂のアルデヒド残基の全重量を基準として少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、又は少なくとも約70重量%の少なくとも1種類のC~Cアルデヒドの残基を含ませることができる。或いは、又は更には、ポリ(ビニルアセタール)樹脂に、約95重量%以下、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約75重量%以下、約70重量%以下、又は約65重量%以下の少なくとも1種類のC~Cアルデヒドを含ませることができる。C~Cアルデヒドは上記に示した群から選択することができ、或いはこれはn-ブチルアルデヒド、i-ブチルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、及びこれらの組合せからなる群から選択することができる。他の態様においては、ポリ(ビニルアセタール)樹脂に、シンナムアルデヒド、ヘキシルシンナムアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロシンナムアルデヒド、4-クロロベンズアルデヒド、4-t-ブチルフェニルアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、2-フェニルプロピオンアルデヒド、及びこれらの組合せなど(しかしながらこれらに限定されない)の他のアルデヒドの残基を、単独か又は本明細書に記載する1種類以上のC~Cアルデヒドと組み合わせて含ませることができる。
【0057】
[0065]種々の態様においては、ポリ(ビニルアセタール)樹脂は、主としてn-ブチルアルデヒドの残基を含み、例えば任意の所望の量のn-ブチルアルデヒド以外のアルデヒドの残基を含んでいてよいPVB樹脂であってよい。通常は、ポリ(ビニルブチラール)樹脂中に存在するn-ブチルアルデヒド以外のアルデヒドの残基としては、i-ブチルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、及びこれらの組合せを挙げることができる。
ポリ(ビニルアセタール)樹脂がポリ(ビニルブチラール)樹脂を含む場合には、樹脂の重量平均分子量は、Cotts及びOuanoの低角レーザー光散乱(SEC/LALLS)法を用いてサイズ排除クロマトグラフィーによって測定して少なくとも約30,000ダルトン、少なくとも約50,000ダルトン、少なくとも約80,000ダルトン、少なくとも約100,000ダルトン、少なくとも約130,000ダルトン、少なくとも約150,000ダルトン、少なくとも約175,000ダルトン、少なくとも約200,000ダルトン、少なくとも約300,000ダルトン、又は少なくとも約400,000ダルトンであってよい。
【0058】
[0066]上記に記載したように、ポリ(ビニルアセタール)樹脂は、ポリ(酢酸ビニル)をポリ(ビニルアルコール)に加水分解し、次にポリ(ビニルアルコール)を1以上の上記のアルデヒドによってアセタール化してポリ(ビニルアセタール)樹脂を形成することによって製造することができる。ポリ(酢酸ビニル)を加水分解するプロセスにおいては、全てのアセテート基がヒドロキシル基に転化する訳ではなく、その結果、残留アセテート基が樹脂上に残留する。同様に、ポリ(ビニルアルコール)をアセタール化するプロセスにおいては、全てのヒドロキシル基がアセタール基に転化する訳ではなく、同様に樹脂上に残留ヒドロキシル基が残留する。その結果、殆どのポリ(ビニルアセタール)樹脂は、ポリマー鎖の一部として、残留ヒドロキシル基(ビニルヒドロキシル基として)、及び残留アセテート基(酢酸ビニル基として)の両方を含む。本明細書において用いる「残留ヒドロキシル含量」及び「残留アセテート含量」という用語は、それぞれ処理が完了した後に樹脂上に残留するヒドロキシル基及びアセテート基の量を指す。残留ヒドロキシル含量及び残留アセテート含量は両方ともポリマー樹脂の重量を基準とする重量%で表され、ASTM-D1396にしたがって測定される。
【0059】
[0067]本明細書に記載する1以上のポリマー層中で用いるポリ(ビニルアセタール)樹脂は、少なくとも約6重量%、少なくとも約7重量%、少なくとも約8重量%、少なくとも約9重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約11重量%、少なくとも約12重量%、少なくとも約13重量%、少なくとも約14重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約16重量%、少なくとも約17重量%、少なくとも約18重量%、少なくとも約18.5重量%、少なくとも約19重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約21重量%、少なくとも約22重量%、少なくとも約23重量%、少なくとも約24重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約26重量%、少なくとも約27重量%、少なくとも約28重量%、少なくとも約29重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約31重量%、少なくとも約32重量%、又は少なくとも約33重量%、或いはそれ以上の残留ヒドロキシル含量を有していてよい。更に、又は別の態様においては、本発明のポリマー層中で用いる1種類又は複数のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、約45重量%以下、約43重量%以下、約40重量%以下、約37重量%以下、約35重量%以下、約34重量%以下、約33重量%以下、約32重量%以下、約31重量%以下、約30重量%以下、約29重量%以下、約28重量%以下、約27重量%以下、約26重量%以下、約25重量%以下、約24重量%以下、約23重量%以下、約22重量%以下、約21重量%以下、約20重量%以下、約19重量%以下、約18.5重量%以下、約18重量%以下、約17重量%以下、約16重量%以下、約15重量%以下、約14重量%以下、約13重量%以下、約12重量%以下、約11重量%以下、又は約10重量%以下の残留ヒドロキシル含量を有していてよい。
【0060】
[0068]幾つかの態様においては、1以上のポリマー層に、少なくとも約20重量%、少なくとも約21重量%、少なくとも約22重量%、少なくとも約23重量%、少なくとも約24重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約26重量%、少なくとも約27重量%、少なくとも約28重量%、少なくとも約29重量%、又は少なくとも約30重量%、及び/又は約45重量%以下、約43重量%以下、約40重量%以下、約37重量%以
下、約35重量%以下、約34重量%以下、約33重量%以下、又は約32重量%以下の残留ヒドロキシル含量を有する少なくとも1種類のポリ(ビニルアセタール)樹脂を含ませることができる。幾つかの態様においては、1以上のポリマー層に、少なくとも約6重量%、少なくとも約7重量%、少なくとも約8重量%、少なくとも約9重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約11重量%、又は少なくとも約12重量%、及び/又は約17重量%以下、約16重量%以下、約15重量%以下、又は約14重量%以下の残留ヒドロキシル含量を有する少なくとも1種類のポリ(ビニルアセタール)樹脂を含ませることができる。ポリマー層又は中間膜が1つより多いタイプのポリ(ビニルアセタール)樹脂を含む場合には、ポリ(ビニルアセタール)樹脂のそれぞれは実質的に同等の残留ヒドロキシル含量を有していてよく、或いはポリ(ビニルアセタール)樹脂の1以上は、1以上の他のポリ(ビニルアセタール)樹脂と実質的に異なる残留ヒドロキシル含量を有していてよい。
【0061】
[0069]本発明による中間膜において用いる1種類以上のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、約30重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、約18重量%以下、約15重量%以下、約12重量%以下、約10重量%以下、約8重量%以下、約6重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、又は約2重量%以下の残留アセテート含量を有していてよい。或いは、又は更には、本明細書に記載するポリマー層又は中間膜において用いる少なくとも1種類のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、少なくとも約3重量%、少なくとも約4重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約6重量%、少なくとも約7重量%、少なくとも約8重量%、少なくとも約9重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約12重量%、又は少なくとも約14重量%、或いはそれ以上の残留アセテート含量を有していてよい。ポリマー層又は中間膜が2種類以上のポリ(ビニルアセタール)樹脂を含む場合には、樹脂は実質的に同等の残留アセテート含量を有していてよく、或いは1以上の樹脂は、1以上の他のポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留アセテート含量と異なる残留アセテート含量を有していてよい。
【0062】
[0070]本明細書に記載するポリマー層及び多層遮音中間膜において用いる1種類又は複数のポリマー樹脂には、1種類以上の熱可塑性ポリマー樹脂を含ませることができる。幾つかの態様においては、1種類又は複数の熱可塑性樹脂は、ポリマー層中の樹脂の全重量を基準として少なくとも約45重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、又は少なくとも約95重量%の量でポリマー層中に存在させることができる。2種類以上の樹脂を存在させる場合には、それぞれは、ポリマー層又は中間膜中の樹脂の全重量を基準として少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約45重量%、又は少なくとも約50重量%の量で存在させることができる。
【0063】
[0071]本明細書に記載する1以上のポリマー層にはまた、少なくとも1種類の可塑剤を含ませることもできる。存在させる場合には、1以上のポリマー層の可塑剤含量は、樹脂100部あたり少なくとも約2部(phr)、少なくとも約5phr、少なくとも約6phr、少なくとも約8phr、少なくとも約10phr、少なくとも約15phr、少なくとも約20phr、少なくとも約25phr、少なくとも約30phr、少なくとも約35phr、少なくとも約40phr、少なくとも約45phr、少なくとも約50phr、少なくとも約55phr、少なくとも約60phr、少なくとも約65phr、少なくとも約70phr、少なくとも約75phr、少なくとも約80phr、及び/又は約120phr以下、約110phr以下、約105phr以下、約100phr以下、約
95phr以下、約90phr以下、約85phr以下、約75phr以下、約70phr以下、約65phr以下、約60phr以下、約55phr以下、約50phr以下、約45phr以下、約40phr以下、又は約35phr以下であってよい。幾つかの態様においては、1以上のポリマー層は、35phr以下、約32phr以下、約30phr以下、約27phr以下、約26phr以下、約25phr以下、約24phr以下、約23phr以下、約22phr以下、約21phr以下、約20phr以下、約19phr以下、約18phr以下、約17phr以下、約16phr以下、約15phr以下、約14phr以下、約13phr以下、約12phr以下、約11phr以下、又は約10phr以下の可塑剤含量を有していてよい。
【0064】
[0072]本明細書において用いる「樹脂100部あたりの部」又は「phr」という用語は、重量基準で樹脂100部あたりに存在する可塑剤の量を指す。例えば、30gの可塑剤を100gの樹脂に加えた場合には、可塑剤含量は30phrである。ポリマー層が2種類以上の樹脂を含む場合には、可塑剤の重量を存在する全樹脂の合計量と比較して樹脂100部あたりの部を求める。更に、本明細書において層又は中間膜の可塑剤含量が与えられている場合には、これは、他に示していない限りにおいて層又は中間膜を製造するために用いた混合物又は溶融体中の可塑剤の量に関して与えられている。
【0065】
[0073]未知の可塑剤含量の層に関しては、可塑剤含量は、適当な溶媒又は複数の溶媒の混合物を用いてポリマー層又は中間膜から可塑剤を抽出する湿式化学法によって求めることができる。可塑剤を抽出する前に、試料層の重量を測定し、抽出後にそれから可塑剤が除去された層の重量と比較する。この差に基づいて可塑剤の重量を求めて、可塑剤含量(phr)を計算することができる。多層中間膜に関しては、ポリマー層を互いから物理的に分離して、上記の手順にしたがって個々に分析することができる。
【0066】
[0074]理論によって縛られることは望まないが、与えられたタイプの可塑剤に関して、ポリ(ビニルアセタール)樹脂中における可塑剤の相溶性は樹脂の残留ヒドロキシル含量と相関する可能性があると理解される。より詳しくは、より高い残留ヒドロキシル含量を有するポリ(ビニルアセタール)樹脂は一般に減少した可塑剤相溶性又は容量を有する可能性があり、一方で、より低い残留ヒドロキシル含量を有するポリ(ビニルアセタール)樹脂は増加した可塑剤相溶性又は容量を示す可能性がある。一般に、ポリマー樹脂に対して適切な量の可塑剤の添加を容易にし、中間膜内の複数の層の間の可塑剤含量の差を安定に維持するために、ポリマーの残留ヒドロキシル含量とその可塑剤相溶性/容量の間のこの相関関係を操作することができる。また、可塑剤の相溶性とポリ(ビニルアセタール)樹脂における残留アセテート含量に関しても、同様の相関関係が存在する可能性がある。
【0067】
[0075]本明細書に記載するポリマー層中において任意の好適な可塑剤を用いることができる。可塑剤は、少なくとも約6、及び/又は約30以下、約25以下、約20以下、約15以下、約12以下、又は約10以下の炭素原子の炭化水素セグメントを有していてよい。種々の態様においては、可塑剤は、従来の可塑剤、又は2種類以上の従来の可塑剤の混合物から選択される。幾つかの態様においては、概して約1.450未満の屈折率を有する従来の可塑剤としては、トリエチレングリコールジ(2-エチルヘキサノエート)(3GEH)、トリエチレングリコールジ(2-エチルブチレート)、テトラエチレングリコールジ(2-エチルヘキサノエート)(4GEH)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート、ジ(ブトキシエチル)アジペート、ビス(2-(2-ブトキシエトキシ)エチル)アジペート、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート、ブチルリシノレエート、ヒマシ油、ココナツ油脂肪酸のトリエチルグリコールエステル、及びオイル変性セバシン酸アルキド樹脂を挙げることができる。幾つかの態様においては、従来の可塑
剤は3GEH(屈折率=25℃において1.442)である。
【0068】
[0076]幾つかの態様においては、より高い屈折率を有する可塑剤(即ち高屈折率可塑剤)のような当業者に公知の他の可塑剤を用いることができる。本明細書において用いる「高屈折率可塑剤」とは、少なくとも約1.460の屈折率を有する可塑剤である。ここで用いる可塑剤又は樹脂の屈折率(屈折係数としても知られる)は、ASTM-D542にしたがって589nmの波長及び25℃において測定されるか、或いはASTM-D542にしたがって文献において報告されているもののいずれかである。種々の態様においては、可塑剤の屈折率は、コア及びスキン層の両方に関して少なくとも約1.460、又は約1.470より高く、又は約1.480より高く、又は約1.490より高く、又は約1.500より高く、又は1.510より高く、或いは1.520より高い。幾つかの態様においては、1種類又は複数の高屈折率可塑剤を1種類又は複数の従来の可塑剤と組み合わせて用い、幾つかの態様においては、含ませる場合には従来の可塑剤は3GEHであり、可塑剤混合物の屈折率は少なくとも1.460である。好適な高屈折率可塑剤の例としては、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、ポリプロピレングリコールジベンゾエート、イソデシルベンゾエート、2-エチルヘキシルベンゾエート、ジエチレングリコールベンゾエート、ブトキシエチルベンゾエート、ブトキシエトキシエチルベンゾエート、ブトキシエトキシエトキシエチルベンゾエート、プロピレングリコールジベンゾエート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジベンゾエート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールベンゾエートイソブチレート、1,3-ブタンジオールジベンゾエート、ジエチレングリコールジ-o-トルエート、トリエチレングリコールジ-o-トルエート、ジプロピレングリコールジ-o-トルエート、1,2-オクチルジベンゾエート、トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート、ジ-2-エチルヘキシルテレフタレート、ビスフェノールAビス(2-エチルヘキサノエート)、ジ(ブトキシエチル)テレフタレート、ジ(ブトキシエトキシエチル)テレフタレート、ジブトキシエチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、トリオクチルホスフェート、ポリエチレンオキシドロジン誘導体のフェニルエーテル、及びトリクレシルホスフェート、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの態様においては、可塑剤には、従来の可塑剤と高屈折率可塑剤の混合物を含ませることができ、又はこれらから構成することができる。
【0069】
[0077]更に、少なくとも1つのポリマー層にはまた、ポリマー層又は中間膜に特定の特性又は特徴を与えることができる他のタイプの添加剤を含ませることもできる。かかる添加剤としては、接着制御剤(ACA)、染料、顔料、安定剤、例えば紫外線(UV)安定剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、IR吸収剤又は遮断剤(例えばインジウムスズオキシド、アンチモンスズオキシド、六ホウ化ランタン(LaB)、及びセシウムタングステンオキシド)、加工助剤、流動向上添加剤、潤滑剤、耐衝撃性改良剤、成核剤、熱安定剤、UV吸収剤、分散剤、界面活性剤、キレート剤、カップリング剤、接着剤、プライマー、強化添加剤、及びフィラーを挙げることができるが、これらに限定されない。かかる添加剤の具体的なタイプ及び量は、特定の中間膜の最終的な特性又は最終用途に基づいて選択することができる。
【0070】
[0078]ポリマーのタイプ及び層の組成に応じて、本明細書に記載するポリマー層は広範囲のガラス転移温度を示し得る。幾つかの態様においては、2以上のポリマー又はポリマー層を含む多層遮音中間膜は2以上のガラス転移温度を示し得る。ポリマー材料のガラス転移温度(T)は、材料のガラス状態からゴム状態への転移を示す温度である。本明細書に記載するポリマー層のガラス転移温度は、以下の手順にしたがって動的機械熱分析(DMTA)によって求めた。ポリマーシートを直径25ミリメートル(mm)の試料ディスクに成形する。ポリマー試料ディスクを、Rheometrics Dynamic Spectrometer IIの2
つの直径25mmの平行プレート試験治具の間に配置する。試料の温度を2℃/分の速度
で-20℃から70℃へ、又は他の温度範囲で上昇させながら、ポリマー試料ディスクを剪断モードにおいて1ヘルツの振動数で試験する。温度に依存してプロットしたtanδ(G”/G’)の最大値の位置を用いてガラス転移温度を求める。実験は、この方法が±1℃の範囲内まで再現可能であることを示している。
【0071】
[0079]本明細書に記載する多層遮音中間膜には、少なくとも約-20℃、少なくとも約-10℃、少なくとも約-5℃、少なくとも約-1℃、少なくとも約0℃、少なくとも約1℃、少なくとも約2℃、少なくとも約5℃、少なくとも約10℃、少なくとも約15℃、少なくとも約20℃、少なくとも約25℃、少なくとも約27℃、少なくとも約30℃、少なくとも約32℃、少なくとも約33℃、少なくとも約34℃、少なくとも約35℃、少なくとも約36℃、少なくとも約37℃、少なくとも約38℃、又は少なくとも約40℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つのポリマー層を含ませることができる。或いは、又は更には、ポリマー層は、約25℃以下、約20℃以下、約15℃以下、約10℃以下、約5℃以下、約2℃以下、約0℃以下、約-1℃以下、又は約-5℃以下のガラス転移温度を有していてよい。
【0072】
[0080]幾つかの態様においては、1以上のポリマー層は、少なくとも約30℃、少なくとも約32℃、少なくとも約33℃、少なくとも約35℃、少なくとも約36℃、少なくとも約37℃、少なくとも約38℃、少なくとも約39℃、又は少なくとも約40℃、及び/又は約100℃以下、約90℃以下、約80℃以下、約70℃以下、約60℃以下、約50℃以下、約45℃以下、約44℃以下、約43℃以下、約42℃以下、約41℃以下、約40℃以下、約39℃以下、約38℃以下、又は約37℃以下のガラス転移温度を有していてよい。或いは、又は更には、少なくとも1つのポリマー層は、少なくとも約-10℃、少なくとも約-5℃、少なくとも約-2℃、少なくとも約-1℃、少なくとも約0℃、少なくとも約1℃、少なくとも約2℃、少なくとも約5℃、及び/又は約25℃以下、約20℃以下、約15℃以下、約10℃以下、約5℃以下、約2℃以下、約1℃以下、約0℃以下、又は約-1℃以下のガラス転移温度を有していてよい。多層遮音中間膜が2以上のポリマー層を含む場合には、層の少なくとも1つは、中間膜内の1以上の他のポリマー層と異なるガラス転移温度を有していてよい。言い方を変えると、2以上の層が存在する場合には、それぞれの層は異なるガラス転移温度を有していてよい。
【0073】
[0081]幾つかの態様においては、本発明による層又は中間膜は、DMTAによって測定して少なくとも約0.50、少なくとも約0.60、少なくとも約0.70、少なくとも約0.80、少なくとも約0.90、少なくとも約1.00、少なくとも約1.10、少なくとも約1.25、少なくとも約1.50,少なくとも約1.75、少なくとも約2.00、又は少なくとも約2.25のガラス転移温度におけるtanδの値を有していてよい。
【0074】
[0082]幾つかの態様においては、中間膜中のポリマー層のそれぞれ(又は全部)がポリ(ビニルアセタール)樹脂を含む。他の態様においては、多層遮音中間膜には、第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂を含む第1のポリマー層、及び第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂を含む第2のポリ(ビニルアセタール)層を含ませることができる。第1及び第2のポリマー層は互いと隣接させることができ、又は場合によってはそれらの間に1以上の介在ポリマー層を与えることができる。
【0075】
[0083]存在させる場合には、それぞれの第1及び第2のポリマー層の第1及び第2(又はそれ以上)のポリ(ビニルアセタール)樹脂は異なる組成を有していてよい。例えば幾つかの態様においては、第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留ヒドロキシル含量と少なくとも約2重量%、少なくとも約3重量%、少なくとも約4重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約6重量%、少なくとも約
7重量%、少なくとも約8重量%、少なくとも約9重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約12重量%、少なくとも約13重量%、少なくとも約14重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約16重量%、少なくとも約17重量%、少なくとも約18重量%、少なくとも約19重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約21重量%、少なくとも約22重量%、少なくとも約23重量%、又は少なくとも約24重量%異なる残留ヒドロキシル含量を有していてよい。
【0076】
[0084]更に、又は別の態様においては、第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留アセテート含量と少なくとも約2重量%、少なくとも約3重量%、少なくとも約4重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約6重量%、少なくとも約7重量%、少なくとも約8重量%、少なくとも約9重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約12重量%、少なくとも約13重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約18重量%、又は少なくとも約20重量%異なる残留アセテート含量を有していてよい。他の態様においては、第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留アセテート含量と約2重量%以下、約1.5重量%以下、約1重量%以下、又は約0.5重量%以下異なる残留アセテート含量を有していてよい。
【0077】
[0085]本明細書において用いる「・・・重量%異なる」又は「差は少なくとも・・・重量%である」という用語は、2つの数の間の数学的な差の絶対値を見出す事によって算出される2つの与えられたパーセントの間の差を指す。与えられた値と「異なる」値は、与えられた値よりも高いか又は低くてよい。例えば、第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留ヒドロキシル含量と「少なくとも2重量%異なる」残留ヒドロキシル含量を有する第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、第2の残留ヒドロキシル含量よりも少なくとも2重量%高いか又は少なくとも2重量%低い残留ヒドロキシル含量を有していてよい。例えば、例となる第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留ヒドロキシル含量が14重量%である場合には、例となる第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留ヒドロキシル含量は、少なくとも16重量%(例えば少なくとも2重量%高い)、又は12重量%以下(例えば少なくとも2重量%低い)であってよい。
【0078】
[0086]異なる組成を有する結果として、第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂及び第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂のような異なる樹脂から形成される層又は中間膜の複数の部分は、例えば可塑剤含量の差のために異なる特性を有し得る。上記に記載したように、異なる残留ヒドロキシル含量を有する2種類のポリ(ビニルアセタール)樹脂を可塑剤とブレンドすると、可塑剤は異なる樹脂の間に分配されて、より低い残留ヒドロキシル含量の樹脂から形成される1つ又は複数の層中により多い量の可塑剤が存在し、より高い残留ヒドロキシル含量の樹脂を含む1つ又は複数の層の部分により少ない可塑剤が存在するようになる。最終的には、2つの樹脂の間に平衡状態が達成される。ポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留ヒドロキシル含量と可塑剤相溶性/容量との間の相関関係によって、ポリマー樹脂に適切な量の可塑剤を加えることを容易にすることができる。また、かかる相関関係によって、可塑剤が他の形態で1つの層から他の層へ移動する際に2以上の層の間の可塑剤含量の差を安定に維持することも促進される。
【0079】
[0087]ポリ(ビニルアセタール)樹脂が異なる残留ヒドロキシル含量を有するか、及び/又は異なる残留アセテート含量を有する場合には、ポリマー層に異なる量の可塑剤を含ませることもできる。その結果、これらの部分のそれぞれが、例えばガラス転移温度のような異なる特性を示すようにすることもできる。幾つかの態様においては、隣接するポリマー層の間の可塑剤含量の差は、上記に記載したように測定して少なくとも約2phr、少なくとも約5phr、少なくとも約8phr、少なくとも約10phr、少なくとも約12phr、又は少なくとも約15phrであってよい。他の態様においては、隣接する
ポリマー層の間の可塑剤含量の差は、少なくとも約18phr、少なくとも約20phr、少なくとも約25phr、少なくとも約30phr、少なくとも約35phr、少なくとも約40phr、少なくとも約45phr、少なくとも約50phr、少なくとも約55phr、少なくとも約60phr、又は少なくとも約65phrであってよい。
【0080】
[0088]更に、又は別の態様においては、隣接するポリマー層の可塑剤含量の間の差は、約40phr以下、約35phr以下、約30phr以下、約25phr以下、約20phr以下、約17phr以下、約15phr以下、又は約12phr以下であってよい。ポリマー層のそれぞれの可塑剤含量に関する値は、上記に与えた1以上の範囲内であってよい。
【0081】
[0089]幾つかの態様においては、1つのポリマー層のガラス転移温度は、他のポリマー層のガラス転移温度と少なくとも約3℃、少なくとも約5℃、少なくとも約8℃、少なくとも約10℃、少なくとも約12℃、少なくとも約13℃、少なくとも約15℃、少なくとも約18℃、少なくとも約20℃、少なくとも約22℃、少なくとも約25℃、少なくとも約30℃、少なくとも約35℃、又は少なくとも約40℃異なっていてよい。ポリマー層のそれぞれのガラス転移温度に関する値は、上記に与えた1以上の範囲内であってよい。
【0082】
[0090]多層中間膜が3以上のポリマー層を含む場合には、それぞれ第1、第2、及び第3(又はそれ以上)のポリマー層のそれぞれに、少なくとも1種類のポリ(ビニルアセタール)樹脂、及び場合によっては上記に詳しく記載したタイプ及び量の1種類又は複数の可塑剤を含ませることができる。幾つかの態様によれば、第2の(内側)ポリマー層に、第1及び第3の(外側)ポリマー層のそれぞれにおけるポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留ヒドロキシル含量よりも低い残留ヒドロキシル含量を有する樹脂を含ませることができる。したがって、可塑剤が層の間に分配されると、内側層は、外側ポリマー層のそれぞれのガラス転移温度よりも低いガラス転移温度を有することができる。理論によって縛られることは望まないが、比較的「硬質」(即ちより高いガラス転移温度)の外側ポリマー層で「軟質」(即ち相対的に低いガラス転移温度)の内側層をサンドイッチしているこのタイプの構造によって、中間膜からの増大した遮音性能を促進させることができると理解される。4つ、5つ、6つ、7つ、又はより多い層を有する中間膜のような更なる層及び/又は構造を有する他の態様も可能である。
【0083】
[0091]幾つかの態様においては、外側ポリマー層のような2つ(又はそれ以上)の層は、同じか又は同様の組成及び/又は特性を有していてよい。例えば幾つかの態様においては、1つのポリマー層中のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、他のポリマー層中のポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留ヒドロキシル含量の約2重量%以内、約1重量%以内、又は約0.5重量%以内の残留ヒドロキシル含量を有していてよい。同様に、外側層中のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、互いの約2重量%以内、約1重量%以内、又は約0.5重量%以内の残留アセテート含量を有していてよい。更に、外側ポリマー層は、同じか又は同様の可塑剤含量を有していてよく、及び/又は同じか又は同様のガラス転移温度を示していてよい。例えば、1つのポリマー層の可塑剤含量は、他のポリマー層の可塑剤含量と2phr未満、約1phr以下、又は約0.5phr以下異なっていてよく、及び/又はポリマー層は、2℃未満、約1℃以下、又は約0.5℃以下異なるガラス転移温度を有していてよい。
【0084】
[0092]種々の態様においては、ポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留ヒドロキシル及び/又は残留アセテート含量の差は、強度、耐衝撃性、貫通抵抗、加工性、又は遮音性能のような特定の性能特性を制御するか、或いは最終組成物、層、又は中間膜に与えるように選択することができる。例えば、より高い(通常は約17重量%より大きい)残留ヒドロ
キシル含量を有するポリ(ビニルアセタール)樹脂は、樹脂組成物又は層へ高い耐衝撃性、貫通抵抗、及び強度を与えることを促進することができ、一方で、通常は17重量%未満の残留ヒドロキシル含量を有するより低いヒドロキシル含量の樹脂は、中間膜の遮音性能を向上させることができる。
【0085】
[0093]本発明の中間膜は任意の好適な方法にしたがって形成することができる。代表的な方法としては、溶液キャスト、圧縮成形、射出成形、溶融押出、メルトブロー、及びこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。2以上のポリマー層を含む多層中間膜はまた、例えば共押出、ブローンフィルム、メルトブロー、浸漬被覆、溶液被覆、ブレード塗布、パドル塗布、エアナイフ塗布、印刷、粉末被覆、噴霧被覆、積層、及びこれらの組合せのような任意の好適な方法にしたがって製造することもできる。
【0086】
[0094]本発明の種々の態様によれば、層又は中間膜は押出又は共押出によって形成することができる。押出プロセスにおいては、1種類以上の熱可塑性樹脂、可塑剤、及び場合によっては上記に記載の1種類以上の添加剤を予め混合して、1つ又は複数の押出装置中に供給することができる。1つ又は複数の押出装置は、押出シートを生成させるために熱可塑性組成物に特定のプロファイル形状を与えるように構成する。全体的に上昇した温度及び高粘稠質である押出シートは、次に冷却してポリマーシートを形成することができる。シートを冷却して硬化させたら、それを切断して、その後の中間膜としての貯蔵、輸送、及び/又は使用のために巻き取ることができる。
【0087】
[0095]共押出は、ポリマー材料の複数の層を同時に押出すプロセスである。一般に、このタイプの押出は、一定の体積の処理量の異なる粘度又は他の特性の複数の異なる熱可塑性樹脂溶融体を、溶融し、共押出ダイを通して供給して所望の最終形態にするために2以上の押出機を用いる。共押出プロセスにおいて押出ダイから排出される複数のポリマー層の厚さは、一般に、押出ダイを通る溶融体の相対速度を調節すること、及びそれぞれの溶融した熱可塑性樹脂材料を処理する個々の押出機の寸法によって制御することができる。
【0088】
[0096]幾つかの態様によれば、本発明の多層パネルは、例えばそれが中間膜を通過する際の音響の透過の減少(即ちその音響透過損失)によって示される望ましい遮音特性を示す。幾つかの態様においては、本発明の多層パネルは、ASTM-E90にしたがって20℃において50cm×80cmのパネル寸法で測定して、少なくとも約34dB、少なくとも約35dB、少なくとも約36dB、少なくとも約37dB、少なくとも約38dB、少なくとも約39dB、少なくとも約40dB、少なくとも約41dB、又は少なくとも約42dBのコインシデンス周波数における音響透過損失を示すことができる。
【0089】
[0097]更に、層及び中間膜は、20℃において少なくとも約0.10、少なくとも約0.12、少なくとも約0.15、少なくとも約0.17、少なくとも約0.20、少なくとも約0.25、少なくとも約0.27、少なくとも約0.30、少なくとも約0.33、少なくとも約0.35、少なくとも約0.40、又は少なくとも約0.45の減衰損失係数又は損失係数を有することができる。損失係数は、ISO標準規格16940に記載されている機械インピーダンス測定によって測定される。減衰損失係数を測定するためには、ポリマー試料を、それぞれが2.3mmの厚さ、又は所望に応じて他のガラス厚さを有する透明ガラスの2つのシートの間に積層して、25mmの幅及び300mmの長さを有するように製造する。次に、積層された試料を、振動振盪機(Bruel and Kjaer(Naerum, オランダ)から商業的に入手できる)を用いて中心点において励振し、インピーダン
スヘッド(Bruel and Kjaer)を用いて、棒材を励振して振動させるのに必要な力、及び
振動の速度を測定する。得られる伝達関数を、National Instrumentデータ獲得及び分析
システムに記録し、ハーフパワー法を用いて第1振動モードにおける損失係数を計算する。
【0090】
[0098]本明細書に記載する多層パネルは、任意の好適な方法によって形成することができる。通常のガラス積層プロセスは、(1)2つ(又はそれ以上)の基材及び中間膜を組み立てる工程;(2)IR放射材又は対流装置によってアセンブリを第1の短い時間加熱する工程;(3)アセンブリを、第1の脱気のために加圧ニップロール中に通す工程;(4)アセンブリを(約60℃~約120℃のような)適当な温度へ短時間加熱して、中間膜の縁部を封止するのに十分な一時的接着をアセンブリに与える工程;(5)アセンブリを第2の加圧ニップロール中に通して、中間膜の縁部を更に封止して更なる取扱いを可能にする工程;及び(6)アセンブリを(135℃~150℃の間のような)適当な温度及び(150psig~200psigの間のような)適当な圧力において約30~90分間オートクレーブ処理する工程;を含む。一態様にしたがって上記の工程(2)~(5)において記載した中間膜-ガラス界面を脱気するための他の方法としては、真空バッグ及び真空リングプロセスが挙げられ、これらの両方も本明細書に記載する本発明の中間膜を形成するために用いることができる。
【0091】
[0099]本発明の多層パネルは、例えば、自動車用フロントガラス及び窓、航空機用フロントガラス及び窓、船舶用途、鉄道用途等のような種々の輸送用途用のパネル、窓、扉、階段、通路、バラスター付き手すり、装飾建築パネルのような構造建築パネル、ハリケーン用ガラス又は竜巻用ガラスのような耐候パネル、耐弾パネル、及び他の同様の用途などの種々の最終用途のために用いることができる。
【0092】
[0100]下記の例は、本発明を製造及び使用することを当業者に教示するために本発明を例示する意図であり、いかなるようにも発明の範囲を限定することは意図しない。
[0101]本発明はまた、下記の態様1~15も包含する。
【0093】
[0102]態様1は、遮音多層パネルであって、第1の厚さHを有する第1の硬質基材;第2の厚さHを有する第2の硬質基材(ここでH≦H);及び、前記第1の硬質基材と前記第2の硬質基材の間の、厚さHを有する多層遮音中間膜;を含み;前記多層中間膜は、硬質層厚さを有する第1の硬質層、第2の硬質層厚さを有する第2の硬質層、及び前記第1の硬質層と前記第2の硬質層の間の軟質層を含み;前記多層パネルは、少なくとも0.80の中間膜厚さ係数I(ここで、I=(H-0.84)÷[(H+H)(H+H+H)]×100)を有する上記遮音多層パネルである。
【0094】
[0103]態様2は、前記多層中間膜の前記軟質層が非中心位置に配置されている、態様1の特徴を含む多層パネルである。
[0104]態様3は、非対称遮音多層パネルであって、第1の厚さHを有する第1の硬質基材;第2の厚さHを有する第2の硬質基材(ここでH<H);及び、前記第1の硬質基材と前記第2の硬質基材の間の、厚さHを有する多層遮音中間膜;を含み;前記多層中間膜は、硬質層厚さを有する第1の硬質層、第2の硬質層厚さを有する第2の硬質層、及び前記第1の硬質層と前記第2の硬質層の間の軟質層を含み、前記軟質層は前記中間膜内の非中心位置に配置されており;前記多層パネルは、少なくとも0.80の中間膜厚さ係数I(ここで、I=(H-0.84)÷[(H+H)(H+H+H)]×100)を有する上記非対称遮音多層パネルである。
【0095】
[0105]態様4は、前記多層パネルが少なくとも0.90の中間膜厚さ係数Iを有する、態様1~3の特徴のいずれかを含む多層パネルである。
[0106]態様5は、H<Hである、態様1~4の特徴のいずれかを含む多層パネルである。
【0096】
[0107]態様6は、H=Hである、態様1~4の特徴のいずれかを含む多層パネルで
ある。
[0108]態様7は、Hに対するHの比が0.23~0.95である、態様1~6の特徴のいずれかを含む多層パネルである。
【0097】
[0109]態様8は、前記中間膜が第3の硬質層及び第2の軟質層を更に含み、前記第2の軟質層が前記第2の硬質層と前記第3の硬質層の間に配置されている、態様1~7の特徴のいずれかを含む多層パネルである。
【0098】
[0110]態様9は、前記第1の硬質層厚さが前記第2の硬質層厚さよりも小さく、前記第2の軟質層が非中心位置に配置されている、態様8の特徴を含む多層パネルである。
[0111]態様10は、前記軟質層のガラス転移温度が20℃未満である、態様1~9の特徴のいずれかを含む多層パネルである。
【0099】
[0112]態様11は、前記軟質層が幾何中心位置を有し、前記中間膜が、前記幾何中心位置から前記第1の硬質層の外表面までの厚さである第1の厚さt、及び前記幾何中心位置から前記第2の硬質層の外表面までの厚さである第2の厚さtを有し、tに対するtの比が1未満である、態様1~10の特徴のいずれかを含む多層パネルである。
【0100】
[0113]態様12は、多層パネルの面密度を増加させて、前記パネルのコインシデンス周波数領域における音響透過損失を向上させる方法であって、Hの厚さを有する第1の硬質基材を用意する工程;Hの厚さを有する第2の硬質基材を用意する工程;Hの厚さを有する多層中間膜を用意する工程;等式:I=(H-0.84)÷[(H+H)(H+H+H)]×100にしたがって前記多層パネルの中間膜厚さ係数Iを求める工程;前記パネルの中間膜厚さ係数Iを少なくとも0.80に増加させる工程;前記中間膜を前記第1の硬質基材と前記第2の硬質基材の間に配置して予備積層体を与える工程;及び、前記予備積層体を熱及び圧力にかけて、向上した音響透過損失を有する多層パネルを形成する工程;を含む上記方法である。
【0101】
[0114]態様13は、H<Hである、態様12の特徴を含む多層パネルの面密度を増加させる方法である。
[0115]態様14は、前記中間膜が、硬質層厚さを有する第1の硬質層、第2の硬質層厚さを有する第2の硬質層、及び前記第1の硬質層と前記第2の硬質層の間の軟質層を含み、前記軟質層が前記中間膜内の非中心位置に配置されている、態様12及び13の特徴のいずれかを含む多層パネルの面密度を増加させる方法である。
【0102】
[0116]態様15は、前記中間膜が第3の硬質層及び第2の軟質層を更に含み、前記第2の軟質層が前記第2の硬質層と前記第3の硬質層の間に配置されている、態様12~14の特徴のいずれかを含む多層パネルの面密度を増加させる方法である。
【実施例0103】
[0117]以下の例は多層ガラスパネル及び中間膜の製造を記載する。下記に記載するように、ガラスパネルに関して実施される幾つかの試験を用いて、幾つかの比較及び本発明の多層ガラスパネルの遮音特性を評価した。
【0104】
[0118]以下の方法によって、モノリス型及び多層(3層)PVBシートを製造した。PVB樹脂を1種類又は複数の可塑剤(表1に示すタイプ及び量)と溶融ブレンドすることによって、幾つかのモノリス型シートを形成した。得られた可塑化樹脂をそれぞれ押出してポリマーシートを形成した。また、それぞれ1種類又は複数の可塑剤(表1に示すタイプ及び量)と溶融ブレンドした第1のPVB樹脂及び第2のPVB樹脂を共押出することによって、幾つかの3層(又は3重層)シートも形成した。得られた多層中間膜は、1種
類のPVB樹脂から形成されている2つの外側スキン層を、2つの外側層の間の他のPVB樹脂から形成されている内側コア層と共に含んでいた。表1は、PVB-1~PVB-8に関するPVBシートの組成をまとめており、(多層シートに関する)個々の層及び厚さを示す。PVB-2、PVB-3、PVB-5、及びPVB-6は、スキン/コア/スキン(又は硬質/軟質/硬質)の層構造(コア又は軟質層はシートの中心位置に配置されている)を有する対称構造の遮音多層PVBシートである。PVB-1、PVB-4、PVB-7、及びPVB-8は、モノリス型PVBシートである。PVBシートを単独か又は組み合わせて用いて、下記に記載する例1~3における種々の多層ガラスパネルを構成した。結果を下表2~表4に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
例1:ガラス厚さを増加させることによる面密度の増加:
[0119]下表2に示すように、遮音PVBシート(PVB-2、コアの対称度=1)を種々の厚さの2枚の透明ガラスパネルの対(500mm×800mm)の間に積層することによって、0.23~1のガラスの種々の対称度(S)のレベルの比較多層ガラスパネルのC-LG1~C-LG7を製造した。比較多層ガラスパネルのそれぞれの音響透過損失を、(ASTM-E90によって記載されている手順にしたがって20℃において)200Hz~10,000Hzの範囲にわたる種々の周波数に関して測定した。25mm×300mmの積層棒材に関して、ISO-16940に記載されている機械インピーダンス測定によって20℃において減衰損失係数(η)を測定した。コインシデンス周波数、及びSTL測定からのコインシデンス周波数における音響透過損失を表2にまとめる。C-LG1、C-LG2、C-LG3、及びC-LG4に関する315~8000Hzの1/3オクターブバンド周波数領域におけるプロットを図3に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
[0120]表2に示されるように、全てのガラスパネルは同じ遮音3層中間膜(PVB-2、1のコア層の対称度)を含む。ガラスパネルはまた、0の中間膜厚さ係数(I)も有する。合計ガラス厚さは2.3mmから4.6mmまで変化させた。ガラスパネルC-LG1~C-LG4は、増加する合計ガラス厚さ及び面密度を有する。図3は、パネルの面密度を増加させると、質量制御周波数領域及びコインシデンス周波数より高い周波数領域(スティフネス制御領域)におけるその音響透過損失が増加することを示す。しかしなが
ら、ガラスパネルのC-LG1~C-LG4の比較によって示されるように、高対称のパネルのコインシデンス周波数における音響透過損失は、ガラス厚さとは無関係であると思われる。例えば、パネルのC-LG1は0.76のガラスの対称度を有し、パネルのC-LG2~C-LG4は1のガラスの対称度を有する(0.24の差)が、パネルは、3.7mm(C-LG1及びC-LG2)、4.2mm(C-LG3)、及び4.6mm(C-LG4)の合計ガラス厚さを有する。パネルのC-LG1(2.1mm/1.6mmの非対称構造)又はパネルのC-LG2(1.85mm/1.85mmの対称構造)中の個々のガラスシートの厚さを、2.1mm/2.1mm(C-LG3)又は2.3mm/2.3mm(C-LG4)の対称構造に増加させることによって、パネルの面密度の10.1kg/m(C-LG1及びC-LG2)から11.4kg/m(C-LG3)及び12.4kg/m(C-LG4)への増加を与えた。合計ガラス厚さ又は面密度の差、及びパネルのC-LG1とパネルのC-LG2~C-LG4との間のガラスの対称度の小さな差にもかかわらず、全てのガラスパネルはコインシデンス周波数において38.1~38.4dBの同様の音響透過損失を示した(これは、これらのパネルの高い減衰損失係数(0.28~0.31)と合致する)。更に、合計ガラス厚さを増加させるにつれて、3150Hz~5000Hzの周波数の間における音響透過損失の小さな低下が存在する。而して、合計ガラス厚さのみを調節して面密度を増加させることでは、コインシデンス周波数領域におけるパネルの音響透過損失は十分には変化しないと思われる。
【0109】
[0121]ガラスパネルのC-LG5~C-LG7は、異なるガラスの対称度及び合計ガラス厚さ(C-LG5:2.3mm、S=0.44、C-LG6:2.8mm、S=0.33、及びC-LG7:3.7mm、S=0.23)を有する。パネルの中間膜厚さ係数は0である。パネルのC-LG5(1.6mm/0.7mm)中のガラスシートの1つの厚さを、C-LG6(2.1mm/0.7mm)及びC-LG7(3mm/0.7mm)へ増加させることにより、パネルの増加した面密度(C-LG5に関する6.6kg/mから、C-LG6に関する7.9kg/m及びC-LG7に関する10.1kg/mまでの範囲)が与えられ、ガラスの対称度が0.44から0.33及び0.23に減少した(全体で0.21の減少)。
【0110】
[0122]図4は、315~10000Hzの周波数範囲におけるパネルのC-LG5、C-LG6、及びC-LG7に関する音響透過損失をプロットしている。パネルのC-LG1~C-LG4によって示される結果と同様に、より低いガラスの対称度の値を有するパネル(C-LG5~C-LG7)も、315Hz~2500Hzの周波数範囲において、質量又は面密度に依存する音響透過損失を示す。合計ガラス厚さを増加又は減少させた際にコインシデンス周波数における音響透過損失の小さな差しか示さないガラスパネルのC-LG1~C-LG4とは異なり、パネルのC-LG5~C-LG7は、コインシデンス周波数において、ガラスの対称度に依存していると思われる音響透過損失を示す。パネルのC-LG5、C-LG6、及びC-LG7の中で、パネルのC-LG7は最も高い面密度を有するが、最も低いガラスの対称度(0.23)を有し、これはコインシデンス周波数において34.1dBのSTLを示した。パネルのC-LG5は最も低い面密度を有するが、最も高いガラスの対称度(0.44)を有し、これはコインシデンス周波数において36.7dBのSTLを示した。最後に、パネルのC-LG6はパネルのC-LG5とC-LG7の間の面密度及びガラスの対称度(0.33)を有し、これは35.6dBのSTLを示した。これらの3つのパネルの中でのガラスの対称度の値の間の最も大きな差は0.21であり、パネルのC-LG1とパネルのC-LG2~C-LG4との間の差と同様である。更に、パネルのC-LG7は質量制御領域においてより高いSTLを有していたが、パネルのC-LG7は、3150~5000Hzの周波数範囲においてパネルのC-LG5及びC-LG6よりも全体的に低いSTLを示した。これらの結果から、図4に示されるように、高度に非対称の積層ガラスパネルにおいて合計ガラス厚さのみを調節して面密度を増加させると、コインシデンス周波数領域付近においてSTLが減少する可
能性があることが分かる。合計ガラス厚さを増加させることによって遮音ガラスパネルの面密度を増加させると、概して2000~2500Hzより低い質量制御領域におけるSTLは増加するが、コインシデンス周波数領域におけるSTLは合計ガラス厚さを増加させるにつれて増加しない。
【0111】
[0123]例2:中間膜厚さ係数を増加させることによる面密度の増加:
[0124]PVBシート(単独又は組合せ)を、一定の合計ガラス厚さレベルの種々の対称度のガラスの2枚のシートの間に積層することによって、本発明及び更なる比較の多層ガラスパネルを製造した。中間膜は、表3に示すように種々のコア層の対称度の値を有していた。例えば、比較パネルのC-LG8及びC-LG9は、対称のガラス構造(S=1)及び対称の中間膜(S=1)(それぞれPVB-5及びPVB-6を用いた)を有しており、PVBシートを2枚の2.1mmのガラスシートと積層することによって製造した。本発明パネルのD-LG1、D-LG3、及びD-LG4も、対称のガラス構造(S=1)及び対称の中間膜(S=1)を有していたが、中間膜は、3層シートを形成するために複数のPVBシートを組み合わせることによって製造した(D-LG1に関しては、PVB-5を1つのPVB-4シートとそれぞれの側の上で組み合わせ;D-LG4に関しては、PVB-5を1つのPVB-1シートとそれぞれの側の上で組み合わせ;D-LG3に関しては、PVB-6を1つのPVB-7とそれぞれの側の上で組み合わせた)。比較パネルのC-LG11及びC-LG12は、非対称のガラス構造(S=0.42)及び対称の中間膜(S=1)を有しており、PVBシートを3mm及び1.25mmのガラスシートの間に積層して多層ガラスパネルを形成することによって製造した。本発明パネルのD-LG14及びD-LG15も、非対称のガラス構造(S=0.42)及び対称の中間膜(S=1)を有していたが、中間膜は、複数のPVBシートを組み合わせて3層シートを形成することによって製造した(D-LG14に関しては、PVB-5を1つのPVB-4シートとそれぞれの側の上で組み合わせ;D-LG15に関しては、PVB-5を1つのPVB-1シートとそれぞれの側の上で組み合わせた)。
【0112】
[0125]異なる(減少した)コア層の対称度の値を有する中間膜を製造するために、表3に示すように、PVB-5又はPVB-6のいずれかを異なる組成及び厚さの1以上のPVBシートと積層して非対称中間膜を生成させた。次に、この非対称中間膜を用いて、本発明パネルのD-LG2、D-LG5、D-LG9、D-LG10、D-LG12、D-LG13、及びD-LG16~D-LG21を製造した。例えば、PVB-5の1つのシートを、PVB-1及びPVB-4の1つ又は2つのシートと組み合わせて、本発明ガラスパネルのD-LG2、D-LG5、D-LG9、D-LG10、D-LG13、D-LG16、D-LG17、D-LG20、及びD-LG21において示される非対称の中間膜を生成させ;PVB-6の1つのシートをPVB-8の1つのシートと組み合わせて、D-LG18及びD-LG19において示される非対称の中間膜を生成させた。コア層の対称度は、上記に記載したように等式3を用いて求めた。(表1の)2以上のPVBシートを組み合わせて表3に示す中間膜を生成させることにより、中間膜の厚さ及びガラスパネルの中間膜厚さ係数を増加させた。
【0113】
[0126]表3に示すように、対称又は非対称のコア層を有する2以上の3層シートを積層することによって、複数のコア層の対称度の値を有する中間膜を生成させた。例えば、PVB-3の2つ又は3つのシートを一緒に積層して、1つより多いコア層の対称度を有する多層中間膜を形成することによって、中間膜のPVB-3/PVB-3及びPVB-3/PVB-3/PVB-3(それぞれ、パネルのD-LG6及びD-LG7又はD-LG22及びD-LG23において用いた中間膜)を製造した(対称及び非対称コア層の両方を有する中間膜はまた、複数のシートを一緒に積層して中間膜を形成する代わりに、共押出によって製造することもできることを留意されたい)。得られたパネルを上記に記載したように減衰損失係数に関して試験した。試験結果及びパネルの詳細を下表3にまとめる
【0114】
【表3-1】
【0115】
【表3-2】
【0116】
[0127]表3に示されるように、ガラスパネルのC-LG8、C-LG9、及びD-LG1~D-LG5は全て2.1mm/2.1mmのガラス構造(4.2mmの合計ガラス厚
さ及び1のガラスの対称度)を有しているが、これらのパネルは、これらのパネルにおける中間膜厚さ係数が0から4.6に増加するにつれて11.0kg/mから12.7kg/mへ増加する面密度を有する。コア層の対称度は、コア層が中間膜内で中心位置又は非中心位置のいずれかに配置されているので1から0.14へ変化する。PVB-5及びPVB-6を有する比較のガラスパネルのC-LG8及びC-LG9(0の中間膜厚さ係数を有する)は、それぞれ0.26及び0.27の減衰損失係数を示した。本発明ガラスパネルのD-LG1~D-LG5は比較パネルのC-LG7及びC-LG8よりも高い減衰損失係数を示し、減衰損失係数は中間膜厚さ係数が増加するにつれてより高くなる傾向を有していた。中間膜内のコア層の対称度にかかわらず、中間膜厚さ係数を0から4.6に増加させると減衰損失係数において0.06までの向上が達成された。
【0117】
[0128]表3に示されるように、本発明パネルのD-LG6は中間膜内に2つのコア層(コア層の対称度はそれぞれ0.33である)を含み、本発明パネルのD-LG7は中間膜内に3つのコア層(2つの非対称コア層(0.2、0.2)及び1つの対称コア層)を含む。両方のパネルとも2.1mm/2.1mmのガラスシートを用いて形成され、中間膜厚さ係数はそれぞれ3.4及び6であった。パネルのD-LG6及びD-LG7は、1つのコア層しか有しないパネル(C-LG8、C-LG9、及びD-LG1~D-LG5)よりも実質的に高い0.42及び0.49の損失係数を示した。D-LG6及びD-LG7における複数のコア層の存在は、より高い中間膜厚さ係数と組み合わさって、更なる減衰層を与え、パネルの損失係数を実質的に増加させた。
【0118】
[0129]本発明パネルのD-LG1~D-LG7は、増加した中間膜厚さ係数によって面密度を増加させることによって、対称ガラスパネルの減衰損失係数及び遮音性を増加させることができることを示す。ガラス厚さのみを増加させてパネルの面密度を増加させることのみによっては、改良された減衰損失係数及び遮音性を達成することはできない。表3におけるデータが示すように、多層パネル内において約0.80以上の中間膜厚さ係数を有する中間膜を用いることは、向上した減衰又は遮音により多く寄与する。パネル内の中間膜のコア層の対称度は、対称ガラス構造のガラスパネルにおける遮音性に対して小さな効果しか有しない。
【0119】
[0130]対称及び非対称のコア層の位置の両方に関して、中間膜厚さ係数を増加させるにつれて、比較パネルのC-LG10及び本発明パネルのD-LG8~D-LG13に関する減衰損失係数が増加する同様の傾向が示される。これらのパネルは2.3mm/1.9mmの構造(4.2mmの合計ガラス厚さ、C-LG8及びC-LG9並びにD-LG1~D-LG7のガラスパネルと同じ)を有していたが、これらのパネルにおける中間膜厚さ係数が0から4.6へ増加するにつれて、ガラスの対称度が1から0.83へ僅かに減少し、面密度が11.0kg/mから12.7kg/mへ増加した。これらのパネル内の中間膜は(パネルのC-LG8、C-LG9、及びD-LG1~D-LG5と同様に)1つのコア層しか有していなかったが、コア層の対称度は1から0.14へ変化した。中間膜厚さ係数を0.から4.6へ増加させると、中間膜内のコア層の対称度にかかわらず0.04までの減衰損失係数における向上が達成されたが、これは同じ中間膜厚さ係数を有する対称構造のガラスパネル(D-LG1~D-LG5)によって達成された増加よりも僅かに低かった。非対称パネルのD-LG8~D-LG13(0.83のガラスの対称度)は対称パネルと比べて減少した減衰を示した。これは、減衰又は遮音に対するガラスの対称度の負の効果を示している。本発明パネルのD-LG8~D-LG13は、ここでも、高対称の積層ガラスの減衰損失係数又は遮音性は、中間膜厚さ係数を増加させることによって面密度を増加させることにより増加させることができることを示している。
【0120】
[0131]ガラスパネルのC-LG11及びC-LG12(3mm/1.25mmの構造、4.2mmの合計ガラス厚さ(ガラスパネルのC-LG8~C-LG10及びD-LG1
~D13と同じ合計ガラス厚さ)、11.0及び11.4kg/mの面密度、及び0の中間膜厚さ係数)は、それぞれ0.42のガラスの対称度及び1のコア層の対称度を有する。これらのパネルは、同じ中間膜を有するが、より高いガラスの対称度のレベル(0.83~1)を有するガラスパネルのC-LG9及びC-LG10よりも相当に低い約0.20~0.21の減衰損失係数を示す。(1のコア層の対称度を維持するように、PVB-5を2つのPVB-4シートと組合せ、PVB-5を2つのPVB-1シートと組み合わせることによって)C-LG11における中間膜厚さ係数を0から1.8及び4.6に増加させてガラスパネルのD-LG14及びD-LG15を生成させる場合には、損失係数は約0.21及び0.22であるので、減衰において小さな変化しかない。別の言い方をすると、1のコア層の対称度及び低いガラスの対称度を有するガラスパネルにおいては、中間膜厚さ係数を(例えば0から4.6へ)増加させることにより面密度を増加させた場合には、ガラスパネルの減衰損失係数においてあまり劇的でない変化がもたらされた。これに対して、ガラスパネルのD-LG16~D-LG21(同様に3mm/1.25mmの構造並びに4.2mmの合計ガラス厚さ及び0.42のガラスの対称度を有し、並びに11.0~12.7kg/mの面密度、1.8~4.6の中間膜厚さ係数、及び1未満のコア層の対称度を有する)は、比較パネルのC-LG11及びC-LG12よりも高い減衰損失係数を示した。表3に示されるように、中間膜厚さ係数を増加させることによってガラスパネルのC-LG11及びC-LG12の面密度を増加させてガラスパネルのD-LG14~D-LG21を生成させると、パネルの減衰損失係数は増加した。減衰損失係数は、中間膜厚さ係数が増加するにつれてより高くなる傾向を示した。より高対称のガラスパネルのD-LG1~D-LG5(1のガラスの対称度)及びD-LG10~D-LG13(0.83のガラスの対称度)に関して示された増加と同様に、ガラスパネルの中間膜厚さ係数を0から4.6へ増加させると0.05までの減衰損失係数における向上が得られた。而して、高度に非対称のガラスパネルの減衰を向上させるためには、中間膜厚さ係数を増加させることは、対称中間膜よりも非対称中間膜を有するパネルに関してより有効なツールである。別の言い方をすると、高度に非対称のガラスパネルに関しては、減衰は、約0.80より高い中間膜厚さ係数を有する非対称中間膜を用いることによってより有効に向上させることができる。ガラスパネルの中間膜厚さ係数を更に増加させると減衰が更に増加すると予測される。対称の多層中間膜に関しては、低対称のガラスパネルの減衰を向上させるためには、パネルの中間膜厚さ係数は非対称多層中間膜に関するよりも高い必要がある。
【0121】
[0132]ガラスパネルのD-LG22は、中間膜内にそれぞれが0.33のコア層の対称度を有する2つのコア層を含み、ガラスパネルのD-LG23は、中間膜内に3つのコア層(2つの非対称コア層(0.2、0.2)及び1つの対称コア層)を含む。両方の本発明パネルとも3mm/1.25mmのガラスシートを用いて形成し、中間膜厚さ係数はそれぞれ3.4及び6であった。パネルのD-LG22及びD-LG23は、1つのコア層しか有しないパネル(C-LG11及びC-LG12並びにD-LG14~D-LG21)の損失係数よりも実質的に高い0.33及び0.40の損失係数を示した。データによって示されるように、D-LG22及びD-LG23において大きな中間膜厚さ係数と組み合わせて複数のコア層を存在させることによって、更なる減衰層が与えられ、減衰損失係数が実質的に増加した。本発明パネルのD-LG14~D-LG23は、非対称積層ガラスの減衰損失係数又は遮音性は、より高い中間膜厚さ係数を有する中間膜を用いることによりその面密度を増加させることによって増加させることができることを示す。この同じ向上は、ガラス厚さのみを増加させることによっては達成することはできない。更に、中間膜内にコア層を非対称配置(1未満のコア層の対称度)することは、対称の中間膜(1のコア層の対称度)を用いるよりも、低対称のガラスパネルの遮音性を向上させるのにより有効である可能性がある。更に、中間膜に1つ(又はそれ以上)のコア層を加えて中間膜が2つ(又はそれ以上)のコア層を含むようにすると、対称構造のガラスパネルによる向上と同様に、非対称構造のガラスパネルの減衰が実質的に向上する。
【0122】
[0133]表4に示す構造の積層ガラスパネルは、表1のPVBシートを単独か又は組み合わせて種々の対称度のガラスの2つのシートの間に積層することによって製造した。ガラスパネルのD-LG24及びD-LG25、D-LG26及びD-LG27、並びにD-LG29及びD-LG30において示される中間膜中のコア層の非対称性は、上記で議論したものと同じ方法で生成させた。D-LG7、D-LG28、及びD-LG31において示される中間膜における異なるコア層の対称度の複数のコア層は、上記で議論したように、3つのPVB3層シートを組み合わせて、0.2、1、及び0.2の対称度を有する3つのコア層を有する中間膜を形成することによって製造した。パネルの詳細を下表4にまとめる。
【0123】
【表4】
【0124】
[0134]表4に示されるように、比較ガラスパネルのC-LG3は、1のコア層の対称度及び0の中間膜厚さ係数を有する中間膜のPVB-2を含む。パネルのC-LG3は、4.2mmの合計ガラス厚さ、1のガラスの対称度、及び10.1kg/mの面密度を有しており、このパネルはコインシデンス周波数において38.2dBの音響透過損失を示した。本発明ガラスパネルのD-LG24及びD-LG25は、C-LG3と同じ対称ガラス構造を有するが、異なるコア層の対称度及び面密度(3.1及び5.5のより高い中間膜厚さ係数のためにC-LG3よりも高い12.2kg/m及び13kg/m)を有する。中間膜厚さが増加すると、本発明パネルはコインシデンス周波数において39及び39.9dBの音響透過損失を示し、これは比較のガラスパネルのC-LG3と比べてそれぞれ0.8及び1.7dBの増加であった。ガラスパネルのD-LG7(0.2、1、及び0.2のそれぞれのコア層の対称度を有する3つのコア層を有する中間膜を含み、6の中間膜厚さ係数を有する)は、40.9dBの音響透過損失を有しており、これはガラスパネルのC-LG3に対して2.7dBの向上であった。
【0125】
[0135]図5は、315~10000Hzの周波数範囲におけるC-LG3、D-LG7、D-LG24、及びD-LG25に関する音響透過損失をプロットしている。図5に示されるように、コインシデンス周波数における向上に加えて、中間膜厚さ係数を(C-LG3における0からD-LG24における3.1、D-LG25における5.5、及びD-LG7における6へ)増加させることによってガラスパネルの面密度を増加させると、3000~5000Hzの間の周波数における音響透過損失も増加した。これは、ガラスの厚さを増加させることによって面密度を増加させたパネルに関しては同じ周波数範囲において音響透過の小さな減少があったこととは対照的である(図3を参照)。コインシデンス周波数及び3000~5000Hzの範囲における音響透過損失の向上は、非対称又は対称中間膜のいずれかを含む同じ対称ガラスパネルに関して観察された減衰損失係数における向上と同様であり、これも、パネルの中間膜厚さ係数を増加させることによってパネルの面密度を増加させることにより、対称積層ガラスパネルの遮音性を向上させることができることを裏付けている。
【0126】
[0136]比較ガラスパネルのC-LG1及び本発明ガラスパネルのD-LG26~D-LG28は、3.7mmの合計ガラス厚さ、0.76のガラスの対称度、0~7.3の中間膜厚さ係数、及び10.1kg/m~11.9kg/mの面密度を有する。パネルのC-LG1は、コインシデンス周波数において38.1dBの音響透過損失を示したが、パネルの中間膜厚さ係数を増加させ、これにより面密度を(C-LG1における0からD-LG26における3.9、及びD-LG27における6.8へ)増加させると、音響透過損失は、比較パネルのC-LG1のものよりも0.7~1.2dB高い38.8及び39.2dBへ増加した。ガラスパネルのD-LG28(0.2、1、及び0.2のそれぞれのコア層の対称度を有する3つのコア層、及び7.3の中間膜厚さ係数を有する中間膜を含む)は、音響透過損失を41dBへ更に増加させ、これはガラスパネルのC-LG1に対して2.9dBの向上であった。
【0127】
[0137]図6は、315~10000Hzの周波数範囲におけるC-LG1及びD-LG26~D-LG28に関する音響透過損失をプロットしている。図6は更に、中間膜厚さ係数を増加させることによって積層ガラスパネルの面密度を増加させる際の音響透過損失の向上をグラフで示している。
【0128】
[0138]比較ガラスパネルのC-LG7及び本発明ガラスパネルのD-LG29~D-LG31は、ガラスパネルのC-LG1及びD-LG26~D-LG28におけるものと同じ3.7mmの合計ガラス厚さ、0~7.3の範囲の中間膜厚さ係数、及び10.1kg/m~11.9kg/mの面密度を有する。これらのパネルは、C-LG1及びD-LG26~D-LG28の対称度(0.76のガラスの対称度)よりも低い0.23のガ
ラスの対称度を有する。パネルのC-LG7は、コインシデンス周波数において、パネルのC-LG1よりも4dB低い34.1dBの音響透過損失を示した。中間膜厚さ係数を増加させ、それによって面密度をC-LG7における0からD-LG29における3.9、及びD-LG30における6.8へ)増加させると、音響透過損失は、比較パネルのC-LG7よりも1.7~2.7dB良好な35.8及び36.8dBへ増加した。上記で議論したように、高度に非対称のパネルの遮音性は、非対称構造の中間膜に関して中間膜厚さを増加させることによってより有効に向上させることができる。0.2、1、及び0.2のそれぞれのコア層の対称度を有する3つのコア層、及び7.3の中間膜厚さ係数を有する中間膜を含むガラスパネルのD-LG31は、音響透過損失を38.3dBへ更に増加させ、これはガラスパネルのC-LG7に対して4.2dBの向上であった。
【0129】
[0139]図7は、315~10000Hzの周波数範囲におけるC-LG7(及びD-LG29~D-LG31)に関する音響透過損失をプロットしている。図7は、中間膜厚さ係数を増加させることによって積層ガラスパネルの面密度を増加させる際の遮音性の向上をグラフで示している。図7に示されるように、増加した中間膜厚さ係数を有する非対称の中間膜は、高度に非対称のガラスパネルの音響透過損失を、コインシデンス周波数においてだけでなく、3000~5000Hzの間の周波数範囲においても向上させるのに特に有効である。
【0130】
[0140]上記で既に議論したように、高対称の遮音積層ガラスパネルに関しては、コインシデンス周波数における音響透過損失及び減衰損失係数は、パネルの合計ガラス厚さを増加又は減少させた場合のパネルの面密度とは無関係である。より低い対称度のガラスを有する遮音ガラスパネル(高度に非対称のガラスパネル)に関しては、コインシデンス周波数における音響透過損失はガラスの対称度に依存し;ガラスの対称度の小さな減少又は増加と同時に面密度を増加又は減少させるにつれて、音響透過損失は減少又は増加する。表3及び4における本発明パネルは、ガラスパネルの面密度を増加させることは、中間膜厚さ係数を増加させることによっても達成することができることを示している。コインシデンス周波数における減衰及び音響透過損失は、上記に示したように、パネルの中間膜厚さ係数を増加させるにつれて増加する。
【0131】
[0141]好ましい態様であると現在考えられているものを含む幾つかの態様の記載に関連して発明を開示したが、詳細な説明は例示の意図であり、本発明の範囲を限定すると理解すべきではない。当業者に理解されるように、本明細書において詳細に記載されているもの以外の態様は本発明に包含される。発明の精神及び範囲から逸脱することなく、記載されている態様の修正及び変更を行うことができる。
【0132】
[0142]更に、本発明の任意の単一の構成要素に関して与えられている任意の範囲、値、又は特徴は、互換的な場合には、本発明の任意の他の構成要素に関して与えられている任意の範囲、値、又は特徴と互換的に用いて、本明細書全体にわたって与えられているそれぞれの構成要素に関して規定されている値を有する一態様を形成することができることが理解される。例えば、与えられている任意の範囲の可塑剤を含むことに加えて、与えられている任意の範囲の残留ヒドロキシル含量を有するポリ(ビニルブチラール)を含む中間膜を形成して、本発明の範囲内であるが、列記するのは煩雑である多くの変形体を形成することができる。更に、フタレート又はベンゾエートのような属又はカテゴリーに関して与えられている範囲はまた、他に示していない限りにおいて、ジオクチルテレフタレートのようなそのカテゴリーの属又は構成要素の中の種に適用することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-12-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮音多層パネルであって、
第1の厚さHを有する第1の硬質基材;
第2の厚さHを有する第2の硬質基材、ここで <H である;及び
前記第1の硬質基材と前記第2の硬質基材の間の、厚さHを有する多層遮音中間膜;
を含み;
前記多層遮音中間膜は、第1の硬質層厚さを有する第1の硬質層、第2の硬質層厚さを有する第2の硬質層、及び前記第1の硬質層と前記第2の硬質層の間の軟質層を含み、前記多層遮音中間膜の前記軟質層が非中心位置に配置されており
前記多層パネルは、少なくとも0.80の中間膜厚さ係数I(ここで、I=(H-0.84)÷[(H+H)(H+H+H)]×100であり、H 、H 及びH の単位はmmである)を有し、
に対するH の比が0.42以下である上記遮音多層パネル。
【請求項2】
前記多層パネルが少なくとも0.90の中間膜厚さ係数Iを有する、請求項1に記載の多層パネル。
【請求項3】
に対するHの比が0.23~0.42である、請求項1に記載の多層パネル。
【請求項4】
前記中間膜が第3の硬質層及び第2の軟質層を更に含み、前記第2の軟質層が前記第2の硬質層と前記第3の硬質層の間に配置されている、請求項1に記載の多層パネル。
【請求項5】
前記第1の硬質層厚さが前記第2の硬質層厚さよりも小さく、前記第2の軟質層が非中心位置に配置されている、請求項に記載の多層パネル。
【請求項6】
前記軟質層のガラス転移温度が20℃未満である、請求項1に記載の多層パネル。
【請求項7】
前記軟質層が幾何中心位置を有し、前記中間膜が、前記幾何中心位置から前記第1の硬質層の外表面までの厚さである第1の厚さt、及び前記幾何中心位置から前記第2の硬質層の外表面までの厚さである第2の厚さtを有し、tに対するtの比が1未満である、請求項1に記載の多層パネル。
【請求項8】
多層パネルの面密度を増加させて、前記パネルのコインシデンス周波数領域における音響透過損失を向上させる方法であって、
の厚さを有する第1の硬質基材を用意する工程;
の厚さを有する第2の硬質基材を用意する工程;
の厚さを有する多層中間膜を用意する工程;
等式:I=(H-0.84)÷[(H+H)(H+H+H)]×100にしたがって前記多層パネルの中間膜厚さ係数Iを求める工程(ここで、H 、H 及びH の単位はmmである);
記中間膜を前記第1の硬質基材と前記第2の硬質基材の間に配置して予備積層体を与える工程;及び
前記予備積層体を熱及び圧力にかけて、向上した音響透過損失を有する多層パネルを形成する工程;
を含み、
前記I の値が少なくとも0.80となるように、前記第1の硬質基材、前記第2の硬質基材及び前記多層中間膜を用意し、
<H であり、
前記中間膜が、第1の硬質層厚さを有する第1の硬質層、第2の硬質層厚さを有する第2の硬質層、及び前記第1の硬質層と前記第2の硬質層の間の軟質層を含み、前記軟質層が前記中間膜内の非中心位置に配置され、
に対するH の比が0.42以下である、上記方法。
【請求項9】
前記中間膜が第3の硬質層及び第2の軟質層を更に含み、前記第2の軟質層が前記第2の硬質層と前記第3の硬質層の間に配置されている、請求項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0132
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0132】
[0142]更に、本発明の任意の単一の構成要素に関して与えられている任意の範囲、値、又は特徴は、互換的な場合には、本発明の任意の他の構成要素に関して与えられている任意の範囲、値、又は特徴と互換的に用いて、本明細書全体にわたって与えられているそれぞれの構成要素に関して規定されている値を有する一態様を形成することができることが理解される。例えば、与えられている任意の範囲の可塑剤を含むことに加えて、与えられている任意の範囲の残留ヒドロキシル含量を有するポリ(ビニルブチラール)を含む中間膜を形成して、本発明の範囲内であるが、列記するのは煩雑である多くの変形体を形成することができる。更に、フタレート又はベンゾエートのような属又はカテゴリーに関して与えられている範囲はまた、他に示していない限りにおいて、ジオクチルテレフタレートのようなそのカテゴリーの属又は構成要素の中の種に適用することもできる。
本発明は以下の実施態様を含む。
(1)遮音多層パネルであって、
第1の厚さH を有する第1の硬質基材;
第2の厚さH を有する第2の硬質基材、ここでH ≦H である;及び
前記第1の硬質基材と前記第2の硬質基材の間の、厚さH を有する多層遮音中間膜;
を含み;
前記多層中間膜は、硬質層厚さを有する第1の硬質層、第2の硬質層厚さを有する第2の硬質層、及び前記第1の硬質層と前記第2の硬質層の間の軟質層を含み;
前記多層パネルは、少なくとも0.80の中間膜厚さ係数I (ここで、I =(H -0.84)÷[(H +H )(H +H +H )]×100)を有する上記遮音多層パネル。
(2)前記多層パネルが少なくとも0.90の中間膜厚さ係数I を有する、(1)に記載の多層パネル。
(3)前記多層中間膜の前記軟質層が非中心位置に配置されている、(1)に記載の多層パネル。
(4)H <H である、(1)に記載の多層パネル。
(5)H =H である、(1)に記載の多層パネル。
(6)H に対するH の比が0.23~0.95である、(1)に記載の多層パネル。
(7)前記中間膜が第3の硬質層及び第2の軟質層を更に含み、前記第2の軟質層が前記第2の硬質層と前記第3の硬質層の間に配置されている、(1)に記載の多層パネル。
(8)前記第1の硬質層厚さが前記第2の硬質層厚さよりも小さく、前記第2の軟質層が非中心位置に配置されている、(7)に記載の多層パネル。
(9)前記軟質層のガラス転移温度が20℃未満である、(1)に記載の多層パネル。
(10)前記軟質層が幾何中心位置を有し、前記中間膜が、前記幾何中心位置から前記第1の硬質層の外表面までの厚さである第1の厚さt 、及び前記幾何中心位置から前記第2の硬質層の外表面までの厚さである第2の厚さt を有し、t に対するt の比が1未満である、(1)に記載の多層パネル。
(11)非対称遮音多層パネルであって、
第1の厚さH を有する第1の硬質基材;
第2の厚さH を有する第2の硬質基材、ここでH <H である;及び
前記第1の硬質基材と前記第2の硬質基材の間の、厚さH を有する多層遮音中間膜;
を含み;
前記多層中間膜は、硬質層厚さを有する第1の硬質層、第2の硬質層厚さを有する第2の硬質層、及び前記第1の硬質層と前記第2の硬質層の間の軟質層を含み、前記軟質層は前記中間膜内の非中心位置に配置されており;
前記多層パネルは、少なくとも0.80の中間膜厚さ係数I (ここで、I =(H -0.84)÷[(H +H )(H +H +H )]×100)を有する上記非対称遮音多層パネル。
(12)H に対するH の比が0.23~0.95である、(11)に記載の多層パネル。
(13)前記中間膜が第3の硬質層及び第2の軟質層を更に含み、前記第2の軟質層が前記第2の硬質層と前記第3の硬質層の間に配置されている、(11)に記載の多層パネル。
(14)前記第1の硬質層厚さが前記第2の硬質層厚さよりも小さく、前記第2の軟質層が非中心位置に配置されている、(13)に記載の多層パネル。
(15)前記軟質層のガラス転移温度が20℃未満である、(11)に記載の多層パネル。
(16)多層パネルの面密度を増加させて、前記パネルのコインシデンス周波数領域における音響透過損失を向上させる方法であって、
の厚さを有する第1の硬質基材を用意する工程;
の厚さを有する第2の硬質基材を用意する工程;
の厚さを有する多層中間膜を用意する工程;
等式:I =(H -0.84)÷[(H +H )(H +H +H )]×100にしたがって前記多層パネルの中間膜厚さ係数I を求める工程;
前記パネルの中間膜厚さ係数I を少なくとも0.80に増加させる工程;
前記中間膜を前記第1の硬質基材と前記第2の硬質基材の間に配置して予備積層体を与える工程;及び
前記予備積層体を熱及び圧力にかけて、向上した音響透過損失を有する多層パネルを形成する工程;
を含む上記方法。
(17)H <H である、(16)に記載の方法。
(18)前記中間膜が、硬質層厚さを有する第1の硬質層、第2の硬質層厚さを有する第2の硬質層、及び前記第1の硬質層と前記第2の硬質層の間の軟質層を含み、前記軟質層が前記中間膜内の非中心位置に配置されている、(16)に記載の方法。
(19)前記中間膜が第3の硬質層及び第2の軟質層を更に含み、前記第2の軟質層が前記第2の硬質層と前記第3の硬質層の間に配置されている、(18)に記載の方法。
(20)(16)に記載の方法によって製造される多層パネル。
【外国語明細書】