(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046609
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】N-アセチルシステインを含む細胞培養方法および培地
(51)【国際特許分類】
C12N 5/09 20100101AFI20220315BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20220315BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220315BHJP
C12N 5/20 20060101ALN20220315BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220315BHJP
【FI】
C12N5/09 ZNA
C12N1/00 G
C12N5/10
C12N5/20
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207929
(22)【出願日】2021-12-22
(62)【分割の表示】P 2020091887の分割
【原出願日】2015-06-17
(31)【優先権主張番号】62/013,699
(32)【優先日】2014-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504333972
【氏名又は名称】メディミューン,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホルマン,ブレナ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジョン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】N-アセチルシステインを含む、改善された細胞培地および細胞培養方法を提供する。
【解決手段】細胞増殖を支持するのに十分な、N-アセチルシステイン(NAC)を含む細胞培地と、NS0細胞である細胞を前記細胞培地中で培養する細胞培養方法を提供する。これらの改善された細胞培地および細胞培養方法は、コレステロール栄養要求性細胞、骨髄腫細胞、およびハイブリドーマ細胞の細胞生存度、細胞増殖速度を増加させ、ならびに/または細胞倍加時間を短縮する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.細胞増殖を支持するのに十分な、N-アセチルシステインを含む細胞培地を提供するステップと;
b.NS0細胞である細胞を前記細胞培地中で培養するステップと、
を含む、細胞培養方法。
【請求項2】
a.細胞増殖を支持するのに十分な、N-アセチルシステインを含む細胞培地を提供するステップと;
b.NS0細胞である細胞を前記細胞培地中で培養するステップと、
を含む、細胞生存度を増加させる方法。
【請求項3】
a.細胞増殖を支持するのに十分な、N-アセチルシステインを含む細胞培地を提供するステップと;
b.NS0細胞である細胞を前記細胞培地中で培養するステップと、
を含む、細胞増殖速度を増加させる方法。
【請求項4】
a.細胞増殖を支持するのに十分な、N-アセチルシステインを含む細胞培地を提供するステップと;
b.NS0細胞である細胞を前記細胞培地中で培養するステップと、
を含む、細胞倍加時間を短縮する方法。
【請求項5】
前記細胞が凍結保存から解凍される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が増殖期にある、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞培地が無血清および動物性タンパク質不含培地である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞培地が合成培地である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記培地が脂質を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞培地が、炭素源、必須および非必須アミノ酸源、ビタミン、無機塩、微量金属、pH緩衝剤、界面活性剤、抗酸化剤、脂質、およびコレステロールを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞培地が、N-アセチルシステインを0.25mM~3mMの濃度で含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞培地が、N-アセチルシステインを0.5~2.5mMの濃度で含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞培地が、N-アセチルシステインを1.0~1.5mMの濃度で含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞培地が、N-アセチルシステインを1mMまたは1.5mMの濃度で含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞培地がイーストレートを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞培地が1g/Lのイーストレートを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記平均倍加時間が、N-アセチルシステインを排除した対照培地での細胞培養の場合よりも短い、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記平均倍加時間が、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて少なくとも10%短縮する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記平均倍加時間が、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて少なくとも15%短縮する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記平均倍加時間が、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて少なくとも20%短縮する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記平均倍加時間が、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて少なくとも25%短縮する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記平均倍加時間が、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて少なくとも50%短縮する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記平均細胞倍加時間が60時間以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記平均倍加時間が42時間以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記平均倍加時間が34時間以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記平均倍加時間が30時間以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記平均倍加時間が29時間以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞生存度が、N-アセチルシステインを排除した対照培地での細胞培養に対して増加する、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞生存度が、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて少なくとも5%増加する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞生存度が、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて少なくとも7%増加する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞生存度が、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて少なくとも10%増加する、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞生存度が少なくとも90%である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞生存度が少なくとも92%である、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞生存度が少なくとも93%である、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞が異種タンパク質を発現しない、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞が異種タンパク質を発現する、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞が異種核酸で形質転換される、請求項1~34および36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記異種核酸が、cDNA、ベクター、プラスミド、プロモーターに作動可能に連結された核酸、および/または前記ゲノム中に組み込まれる核酸である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記異種タンパク質が一過性に発現される、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記異種タンパク質が安定に発現される、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記異種タンパク質が抗体またはその抗原結合断片である、請求項36、39、または40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記抗体またはその抗原結合断片がIL-13抗体である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記抗体がBAK502G9またはその抗原結合断片である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記抗体または抗原結合断片が、配列番号1、9、17、または25のいずれか1つに対して少なくとも90%同一である配列を含む重鎖可変領域、および配列番号2、10、18、または26のいずれか1つに対して少なくとも90%同一である配列を含む軽鎖可変領域を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記抗体または抗原結合断片が、
i.配列番号3の重鎖CDR1、配列番号4の重鎖CDR2、配列番号5の重鎖CDR3、配列番号6の軽鎖CDR1、配列番号7の軽鎖CDR2、配列番号8の軽鎖CDR3;
ii.配列番号11の重鎖CDR1、配列番号12の重鎖CDR2、配列番号13の重鎖CDR3、配列番号14の軽鎖CDR1、配列番号15の軽鎖CDR2、配列番号16の軽鎖CDR3;
iii.配列番号19の重鎖CDR1、配列番号20の重鎖CDR2、配列番号21の重鎖CDR3、配列番号22の軽鎖CDR1、配列番号23の軽鎖CDR2、配列番号24の軽鎖CDR3;
iv.配列番号27の重鎖CDR1、配列番号28の重鎖CDR2、配列番号29の重鎖CDR3、配列番号30の軽鎖CDR1、配列番号31の軽鎖CDR2、配列番号32の軽鎖CDR3;
から選択されるCDRのセット
を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
N-アセチルシステイン、炭水化物源、アミノ酸源、およびコレステロール源を含む細胞培地。
【請求項47】
前記炭水化物源および前記アミノ酸源が異なる、請求項46に記載の細胞培地。
【請求項48】
前記細胞培地が無血清および動物性タンパク質不含培地である、請求項46~47のいずれか一項に記載の細胞培地。
【請求項49】
前記細胞培地が合成培地である、請求項46~47のいずれか一項に記載の細胞培地。
【請求項50】
前記培地が脂質をさらに含む、請求項46~49のいずれか一項に記載の細胞培地。
【請求項51】
前記細胞培地が、N-アセチルシステインを0.25mM~3mMの濃度で含む、請求項46~50のいずれか一項に記載の細胞培地。
【請求項52】
前記細胞培地が、N-アセチルシステインを0.5~2.5mMの濃度で含む、請求項46~50のいずれか一項に記載の細胞培地。
【請求項53】
前記細胞培地が、N-アセチルシステインを1.0~1.5mMの濃度で含む、請求項46~50のいずれか一項に記載の細胞培地。
【請求項54】
前記細胞培地が、N-アセチルシステインを1mMまたは1.5mMの濃度で含む、請求項46~50のいずれか一項に記載の細胞培地。
【請求項55】
前記細胞培地がイーストレートをさらに含む、請求項46~54のいずれか一項に記載の細胞培地。
【請求項56】
前記細胞培地が1g/Lのイーストレートを含む、請求項55に記載の細胞培地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出された配列表の参照
本願ととともに出願されたASCIIテキストファイルで電子的に提出された配列表の内容(名称:IL13-310P1_SL.txt;サイズ:15,073バイト;および作成日:2014年6月11日)は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
多数の重要なタンパク質に基づく生物学的治療薬は、細胞培養で作製される。これらは、限定はされないが、組換えタンパク質と抗体治療薬の双方を含む。細胞培養で生物学的治療薬を作製することにより、伝統的な小分子治療薬と比べて、市販品と臨床候補薬の双方を製造するコストが増大する。多大な制限的要因の一つが、細胞の凍結保存からの製造施設で行われる作製をスケールアップするのにかかる時間、ならびに、組換えタンパク質および抗体治療薬を作製するのに用いられる細胞の比較的緩徐な成長に起因する高い設備占有率および利用率である。結果として、作製のスケールアップのタイムライン、設備占有率または利用率を減少させ、かつコストを削減するため、細胞生存度および/または細胞増殖速度を増加させる(細胞倍加時間の短縮をもたらす)、最適化された細胞培養方法および試薬を開発する必要がある。血清または他の動物性タンパク質成分は、研究室内での細胞が成長する能力を増強するために用いられることが多い。しかし、制御性または潜在的な安全性への懸念により、細胞培地および試薬は、生物学的治療薬を作製する際、血清または他の動物性タンパク質成分を含有しないことが多い。動物性タンパク質成分の排除は、細胞が培養中で成長することをより困難にし、細胞が凍結保存から解凍され、増殖を開始することをより困難にし、それにより、生成物収量を低下させ、設備占有率、利用率、およびコストを増加させる。したがって、まさに作製効率が最も重要になる場合、細胞培地成分が制限される。したがって、当該技術は、異種タンパク質および抗体治療薬などのタンパク質に基づく生物学的治療薬を作製するのに用いられる細胞株用の細胞培養成分を最適化する中での課題に直面している。確かに、多数の培地構成成分の関与、細胞代謝経路の複雑性および様々な培地構成成分と複雑な細胞経路との間の相互依存性は、細胞培養試薬または方法を最適化することを非常に困難にすることが多い。こうした背景に対して本明細書に提供されるのが、細胞培地に添加され、および/またはコレステロール栄養要求株(cholesterol auxotroph)、骨髄腫、もしくはハイブリドーマを含む細胞培養方法で用いられるとき、意外にも細胞生存度、細胞増殖速度を増加させ、細胞倍加時間を短縮する、N-アセチルシステイン(NAC)を含む細胞培地および細胞培養方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
その他として、T細胞、神経前駆体/幹細胞、または筋肉前駆体/幹細胞の成長を各々支持するため、N-アセチルシステインを、一般的なアミノ酸源(例えば、欧州特許第2351827号明細書を参照;本明細書で用いられる場合よりも小さい桁の量)または一般的な還元剤(例えば、欧州特許第1434856号明細書、国際公開第2012095731号パンフレット、米国特許第20060258003号明細書を参照)として細胞培地に添加することが示唆されている。それに対し、本明細書に提供されるのは、コレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ細胞の細胞生存度、細胞増殖速度を増加させ、また細胞倍加時間を短縮する、N-アセチルシステインを含む細胞培地および細胞培養方法である。本明細書に記載のように(例えば実施例1~6を参照)、N-アセチルシステインは、アミノ酸および還元剤を既に含有する細胞培地に添加されるとき、意外にもNSO細胞の細胞生存度、細胞増殖速度を増加させ、また細胞倍加時間を短縮させた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書および特許請求の範囲は、N-アセチルシステイン(NAC)を含む種々の細胞培地および方法を提供するとともに、以下にそれら培地および方法の一部の概要を提供する。説明に従い、一実施形態は、(a)細胞増殖を支持するのに十分な、N-アセチルシステインを含む細胞培地を提供するステップと;(b)コレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマである細胞を細胞培地中で培養するステップと、を含む細胞培養方法を提供する。別の実施形態では、細胞生存度を増加させる方法は、(a)細胞増殖を支持するのに十分な、N-アセチルシステインを含む細胞培地を提供するステップと;(b)コレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマである細胞を細胞培地中で培養するステップと、を含む。さらなる態様では、細胞増殖速度を増加させる方法は、(a)細胞増殖を支持するのに十分な、N-アセチルシステインを含む細胞培地を提供するステップと;(b)コレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマである細胞を細胞培地中で培養するステップと、を含む。別の実施形態では、細胞倍加時間を短縮する方法は、(a)細胞増殖を支持するのに十分な、N-アセチルシステインを含む細胞培地を提供するステップと;(b)コレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマである細胞を細胞培地中で培養するステップと、を含む。本明細書で開示される方法の一実施形態では、細胞はコレステロール栄養要求株である。本明細書で開示される方法の別の実施形態では、細胞は骨髄腫である。本明細書で開示される方法のさらなる実施形態では、細胞はハイブリドーマである。
【0005】
一実施形態では、細胞は、凍結保存から解凍されている。別の実施形態では、細胞は増殖期にある。別の実施形態では、細胞培地は無血清および動物性タンパク質不含培地である。別の実施形態では、細胞培地は合成培地である。別の実施形態では、培地は脂質を含む。
【0006】
別の実施形態では、細胞は哺乳動物由来である。別の実施形態では、哺乳類細胞はマウス、ハムスター、ラット、サル、またはヒトである。別の実施形態では、細胞はコレステロール栄養要求株である。一実施形態では、コレステロール栄養要求株は、NS0、NS1、U937、M19、SRD-12B、SRD-13A、CHO-215、X63細胞、これらの細胞株由来の細胞株、またはコレステロール栄養要求株であるように操作された任意の他の細胞を含んでもよい。別の実施形態では、細胞はNS0細胞である。別の実施形態では、細胞は骨髄腫またはハイブリドーマである。
【0007】
別の態様では、細胞培地は、N-アセチルシステイン、炭水化物源、アミノ酸源、およびコレステロール源を含む。別の実施形態では、炭水化物源およびアミノ酸源は異なる。別の実施形態では、培地は脂質をさらに含む。別の実施形態では、細胞培地は、炭水化物源、アミノ酸源、コレステロール源、ビタミン、無機塩類、微量金属、界面活性剤、およびpH緩衝剤を含む。
【0008】
別の実施形態では、細胞培地は、N-アセチルシステインを約0.25mM~約3mMの濃度で含む。別の実施形態では、細胞培地は、N-アセチルシステインを約0.5~約2.5mMの濃度で含む。別の実施形態では、細胞培地は、N-アセチルシステインを約1.0~約1.5mMの濃度で含む。別の実施形態では、細胞培地は、N-アセチルシステインを約1mMの濃度で含む。別の実施形態では、細胞培地は、N-アセチルシステインを約1.5mMの濃度で含む。別の実施形態では、細胞培地は、N-アセチルシステインを少なくとも約0.5mM、少なくとも約1.0mM、少なくとも約1.5mMまたは少なくとも約2.0mMの濃度で含む。別の実施形態では、細胞培地はイーストレートを含む。別の実施形態では、細胞培地は1g/Lのイーストレートを含む。
【0009】
別の実施形態では、平均倍加時間は、N-アセチルシステインを排除した対照培地での細胞培養よりも短縮される。別の実施形態では、平均倍加時間は、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて、少なくとも10%低下する。別の実施形態では、平均倍加時間は、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて、少なくとも15%低下する。別の実施形態では、平均倍加時間は、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて、少なくとも20%低下する。別の実施形態では、平均倍加時間は、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて、少なくとも25%低下する。別の実施形態では、平均倍加時間は、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて、少なくとも50%低下する。別の実施形態では、平均倍加時間は、N-アセチルシステインを含有する細胞培地中で60時間以下である。別の実施形態では、平均倍加時間は、N-アセチルシステインを含有する細胞培地中で42時間以下である。別の実施形態では、平均倍加時間は、N-アセチルシステインを含有する細胞培地中で34時間以下である。別の実施形態では、平均倍加時間は、N-アセチルシステインを含有する細胞培地中で30時間以下である。別の実施形態では、平均倍加時間は、N-アセチルシステインを含有する細胞培地中で29時間以下である。
【0010】
別の実施形態では、細胞生存度は、N-アセチルシステインを排除した対照培地での細胞培養よりも増加する。別の実施形態では、細胞生存度は、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて、少なくとも5%増加する。別の実施形態では、細胞生存度は、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて、少なくとも7%増加する。別の実施形態では、細胞生存度は、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて、少なくとも10%増加する。別の実施形態では、細胞生存度は少なくとも90%である。別の実施形態では、細胞生存度は少なくとも92%である。別の実施形態では、細胞生存度は少なくとも93%である。
【0011】
別の実施形態では、細胞は異種タンパク質を発現しない。別の実施形態では、細胞は異種タンパク質を発現する。別の実施形態では、細胞は異種核酸で形質転換される。別の実施形態では、異種核酸は、cDNA、ベクター、プラスミド、プロモーターに作動可能に連結された核酸、および/またはゲノム中に組み込まれる核酸である。別の実施形態では、異種タンパク質は、一過性に発現される。別の実施形態では、異種タンパク質は安定に発現される。別の実施形態では、異種タンパク質は抗体またはその抗原結合断片である。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はIL-13抗体である。別の実施形態では、抗体は、BAK502G9(配列番号1~2のVHおよびVLドメインならびに/または配列番号3~8の重鎖および軽鎖CDRによって表される)、BAK278D6(配列番号9~10のVHおよびVLドメインならびに/または配列番号11~16の重鎖および軽鎖CDRによって表される)、BAK1183H4(配列番号17~18のVHおよびVLドメインならびに/または配列番号19~24の重鎖および軽鎖CDRによって表される)、またはBAK1167F2(配列番号25~26のVHおよびVLドメインならびに/または配列番号27~32の重鎖および軽鎖CDRによって表される)である。
【0012】
さらなる目的および利点は、一部には以下の説明の中で示され、また一部には説明から明白になるか、あるいは実施によって認められ得る。目的および利点は、特に添付の特許請求の範囲の中で指摘される要素および組み合わせを介して、実現され、達成されることになる。
【0013】
前述の一般的説明と以下の詳細な説明の双方があくまで例示的でかつ説明的なものであり、特許請求の範囲を限定するものでないことは理解されるべきである。
【0014】
本明細書中に援用され、かつ本明細書の一部をなす添付の図面は、1つの(いくつかの)実施形態を、説明と併せて図示し、本明細書に記載の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】動物性タンパク質不含(APF)培地1中でのバイアル解凍時のIL-9に対するモノクローナル抗体(「mAb」)を発現するNS0細胞株1の集団倍加時間を示す。動物性タンパク質不含(APF)培地1中で解凍された凍結NS0細胞株1細胞に、N-アセチルシステイン(NAC)(1.5mM、2.0mM、または2.5mM)が添加され、平均倍加時間を算出するため、指数増殖期中の生細胞密度が用いられた。1.5mM~2.5mMのNACの添加により、NS0細胞株1のバイアル解凍から、細胞生存度が改善され、細胞増殖が増加し、平均細胞倍加時間が短縮した。hrs=時間;mM=ミリモル。
【
図2】APF培地2中でのバイアル解凍時のIL-9に対するモノクローナル抗体(「mAb」)を発現するNS0細胞株1の集団倍加時間を示す。動物性タンパク質不含(APF)培地2中で解凍された凍結NS0細胞株1細胞に、N-アセチルシステイン(NAC)(1.5mM、2.0mM、または2.5mM)が添加され、平均倍加時間を算出するため、指数増殖期中の生細胞密度が用いられた。1.5mM~2.5mMのNACの添加により、NS0細胞株1のバイアル解凍から、細胞生存度が改善され、細胞増殖が増加し、平均細胞倍加時間が短縮した。hrs=時間;mM=ミリモル。
【
図3】APF培地1中でのバイアル解凍時のIL-13に対するモノクローナル抗体(「mAb」)を発現するNS0細胞株2の集団倍加時間を示す。動物性タンパク質不含(APF)培地1中で解凍された凍結NS0細胞株2細胞に、N-アセチルシステイン(NAC)(0.5mM、1.0mMまたは2.5mM)が添加され、平均倍加時間を算出するため、指数増殖期中の生細胞密度が用いられた。0.5mM~2.5mMのNACの添加により、NS0細胞株2のバイアル解凍から、細胞生存度が改善され、細胞増殖が増加し、平均細胞倍加時間が短縮した。hrs=時間;mM=ミリモル。
【
図4】APF培地2中でのバイアル解凍時のIL-13に対するモノクローナル抗体(「mAb」)を発現するNS0細胞株2の集団倍加時間を示す。動物性タンパク質不含(APF)培地2中で解凍された凍結NS0細胞株2細胞に、N-アセチルシステイン(NAC)(0.5mM、1.0mMまたは2.0mM)が添加され、平均倍加時間を算出するため、指数増殖期中の生細胞密度が用いられた。0.5mM~2.0mMのNACの添加により、NS0細胞株2のバイアル解凍から、細胞生存度が改善され、細胞増殖が増加し、平均細胞倍加時間が短縮した。hrs=時間;mM=ミリモル。
【
図5】コレステロール(1×Invitrogen Cholesterol Lipid Concentrate)を添加した市販のNS0細胞培地(CDハイブリドーマ、Gibco)中でのバイアル解凍時のIL-13に対するモノクローナル抗体を発現するNS0細胞株2の集団倍加時間を示す。1×Cholesterol Lipid Concentrateを有するCDハイブリドーマ培地中で解凍された凍結NS0細胞株2細胞に、N-アセチルシステイン(NAC)(0.5mM、1.0mMまたは2.0mM)が添加され、平均倍加時間を算出するため、指数増殖期中の生細胞密度が用いられた。0.5mM~2.0mMのNACの添加により、NS0細胞株2の細胞生存度が改善され、細胞増殖が増加し、平均細胞倍加時間が短縮した。hrs=時間;mM=ミリモル。
【
図6】APF培地2中でのバイアル解凍時のNS0ヌル細胞株(組換えタンパク質を発現しない非形質導入NS0細胞株)の集団倍加時間を示す。動物性タンパク質不含(APF)培地2中で解凍された凍結NS0ヌル細胞株細胞に、N-アセチルシステイン(NAC)(0.5mM、1.0mMまたは1.5mM)が添加され、平均倍加時間を算出するため、指数増殖期中の生細胞密度が用いられた。0.5mM~1.5mMのNACの添加により、バイアル解凍時、細胞生存度が改善され、細胞増殖が増加し、平均細胞倍加時間が短縮した。hrs=時間;mM=ミリモル。
【
図7】APF培地1中での増殖中のIL-9に対するモノクローナル抗体(「mAb」)を発現するNS0細胞株1の集団倍加時間を示す。NS0細胞株1細胞は、N-アセチルシステイン(NAC)(1.5mM、2.0mMまたは2.5mM)を添加した動物性タンパク質不含(APF)培地1中で培養され、平均倍加時間を算出するため、指数増殖期中の生細胞密度が用いられた。1.5mM~2.0mMのNACの添加により、NS0細胞株1の細胞増殖が増加し、平均細胞倍加時間が短縮した。hrs=時間;mM=ミリモル;エラーバーは平均倍加時間の1標準偏差を表す。
【
図8】APF培地2中での増殖中のIL-9に対するモノクローナル抗体(「mAb」)を発現するNS0細胞株1の集団倍加時間を示す。NS0細胞株1細胞は、様々なレベルのN-アセチルシステイン(NAC)(1.5mM、2.0mMまたは2.5mM)を添加した動物性タンパク質不含(APF)培地2中で培養され、平均倍加時間を算出するため、指数増殖期中の生細胞密度が用いられた。1.5mM~2.5mMのNACの添加により、NS0細胞株1の細胞増殖が増加し、平均細胞倍加時間が短縮した。hrs=時間;mM=ミリモル;エラーバーは平均倍加時間の1標準偏差を表す。
【
図9】APF培地1中での増殖中のIL-13に対するモノクローナル抗体(「mAb」)を発現するNS0細胞株2の集団倍加時間を示す。NS0細胞株2細胞は、N-アセチルシステイン(NAC)(0.5mM、1.0mMまたは2.5mM)を添加した動物性タンパク質不含(APF)培地1中で培養され、平均倍加時間を算出するため、指数増殖期中の生細胞密度が用いられた。0.5mM~2.5mMのNACの添加により、NS0細胞株2の細胞増殖が増加し、平均細胞倍加時間が短縮した。hrs=時間;mM=ミリモル;エラーバーは平均倍加時間の1標準偏差を表す。
【
図10】APF培地2中での増殖中のIL-13に対するモノクローナル抗体(「mAb」)を発現するNS0細胞株2の集団倍加時間を示す。NS0細胞株2細胞は、N-アセチルシステイン(NAC)(0.5mM、1.0mMまたは2.0mM)を添加した動物性タンパク質不含(APF)培地2中で培養され、平均倍加時間を算出するため、指数増殖期中の生細胞密度が用いられた。0.5mM~2.0mMのNACの添加により、NS0細胞株2の細胞増殖が増加し、平均細胞倍加時間が短縮した。hrs=時間;mM=ミリモル;エラーバーは平均倍加時間の1標準偏差を表す。
【
図11】コレステロール(1×Invitrogen Cholesterol Lipid Concentrate)を添加した市販のNS0細胞培地(CDハイブリドーマ、Gibco)中での増殖中のIL-13に対するモノクローナル抗体を発現するNS0細胞株2の集団倍加時間を図示する。NS0細胞株2細胞は、N-アセチルシステイン(NAC)(0.5mM、1.0mMまたは2.0mM)を添加した1×Cholesterol Lipid Concentrateを有するCDハイブリドーマ培地中で培養され、平均倍加時間を算出するため、指数増殖期中の生細胞密度が用いられた。1.0mM~2.0mMのNACの添加により、NS0細胞株2の細胞増殖が増加し、平均細胞倍加時間が短縮した。エラーバーの低下はまた、細胞増殖がより安定であることを示す。hrs=時間;mM=ミリモル;エラーバーは平均倍加時間の1標準偏差を表す。
【
図12】APF培地2中での増殖中のNS0ヌル細胞株(組換えタンパク質を発現しない非形質導入NS0細胞株)の集団倍加時間を示す。NS0ヌル細胞株細胞は、N-アセチルシステイン(NAC)(0.5mM、1.0mMまたは1.5mM)を添加した動物性タンパク質不含(APF)培地2中で培養され、平均倍加時間を算出するため、指数増殖期中の生細胞密度が用いられた。0.5mM~1.5mMのNACの添加により、NS0ヌル細胞株の細胞増殖が増加し、平均細胞倍加時間が短縮した。hrs=時間;mM=ミリモル;エラーバーは平均倍加時間の1標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
配列の説明
表1は、本実施形態で参照される特定の配列のリストを提供する。
【0017】
【0018】
【0019】
定義
本開示がより容易に理解され得るように、特定の用語が最初に定義される。追加的な定義は、詳細な説明全体を通じて示される。
【0020】
本明細書および添付の特許請求の範囲では、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明白に他の意味に指示しない限り、複数の参照対象を含む。用語「a」(または「an」)、ならびに用語「1つ以上」、および「少なくとも1つ」は、本明細書で交換可能に用いられ得る。例えば、細胞(a cell)は、単一細胞または細胞集団を示し得る。
【0021】
さらに、「および/または」は、本明細書中で用いられる場合、2つの具体的な特徴または構成成分の、他方の有無に無関係の、各々の具体的な開示として解釈されるべきである。したがって、用語「および/または」は、本明細書中で「Aおよび/またはB」などの語句で用いられるとき、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むように意図される。同様に、用語「および/または」は、「A、B、および/またはC」などの語句で用いられるとき、以下の態様:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)の各々を包含するように意図される。
【0022】
用語「約(about)」または「約(approximately)」は、明細書および特許請求の範囲の全体を通して数値との関連で用いられるとき、当業者になじみがあって許容できる精度の区間を意味する。一般に、かかる精度の区間は±5%である。
【0023】
特に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての科学技術用語は、本開示が関連する当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;およびOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、当業者に本開示で用いられる多数の用語の一般的辞書を提供する。
【0024】
単位、接頭辞、および記号は、それらの国際単位系(Systeme International de Unites)(SI)に認められた形態で表示される。数値範囲は、その範囲を既定する数を包含する。別段の指示がない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシの方向で左から右へ記載される。本明細書に提供される見出しは、本明細書を全体として参照することによって得られ得る、本開示の様々な局面または態様を限定するものではない。したがって、直後に定義される用語は、本明細書を全体として参照することにより、さらに十分に定義される。
【0025】
本明細書で用いられるとき、用語「N-アセチルシステイン」、「N-アセチルシステイン」、「N-アセチル-L-システイン」、または「アセチルシステイン」(「NAC」と略記)は、窒素原子に結合したアセチル基を有するシステイン由来の化合物を指す。N-アセチルシステインはまた、(2R)-2-アセトアミド-3-スルファニルプロパン酸(IUPAC)と称され、616-91-1のケミカルアブストラクトサービス(Chemical Abstracts Service)(CAS)登録番号を有する。N-アセチルシステインは、Sigma-Aldrichを含む様々な商用ベンダーから入手可能である。
【0026】
本明細書で用いられるとき、用語「コレステロール栄養要求株」は、成長のためにコレステロールを必要とするが、それを合成することができない細胞または細胞株を指す。例示的なコレステロール栄養要求株として、限定はされないが、NS0、NS1、U937、M19、SRD-12B、SRD-13A、CHO-215、X63細胞、これらの細胞株由来の細胞株、またはコレステロール栄養要求株であるように操作された任意の他の細胞が挙げられる。コレステロール栄養要求株を同定し、かつ/または培養する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、Keen et al.,Cytotechnology.17(3):203-11(1995);Gorfien et al.,Biotechnol Prog.16(5):682-7(2000);Fu, et al.,Proc Natl Acad Sci USA.102(41):14551-6(2005);Birch et al.,Adv Drug Delivery Rev.58:671_685(2006);Feng et al.,MAbs.2(5):466_477(2010)(各々、その全体が参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0027】
本明細書で用いられるとき、用語「骨髄腫」および「骨髄腫細胞」は、骨髄球、形質細胞またはB細胞などの骨髄細胞由来の不死化細胞株を指す。例示的な骨髄腫細胞として、限定はされないが、X63Ag8、Sp2/0、NS1、NS0、J558L、U266、U937、P3U1、XG-1、XG-2、XG-3、XG-4、XG-5、XG-6、XG-7、XG-8、XG-9、U266、RPM1-8226、LP1、L363、OPM1、OPM2、およびNCLH929細胞またはこれらの細胞株由来の細胞株が挙げられる。骨髄腫細胞を同定し、かつ/または培養する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、Fuller,et al.Preparation of Myeloma Cells.Current Protocols in Molecular Biology.18:11.5.1・11.5.3(2001);Zhang et al.,Blood,83(12):3654-3663(1994);およびTaiet al.,J.Immunol.Methods.235:11-19(2000)(各々、その全体が参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0028】
本明細書で用いられるとき、用語「ハイブリドーマ」および「ハイブリドーマ細胞」は、B細胞を不死化細胞(例えば骨髄腫細胞)と融合することによって形成される不死化細胞株を指す。ハイブリドーマを作成し、かつ/または培養する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975);Galfre and Milstein.Methods Enzymol.73(PtB):3-46(1981);およびGoding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press(1986)(各々、その全体が参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0029】
本明細書で用いられるとき、用語「細胞培地」は、多細胞真核生物、特に動物細胞に由来する細胞の成長を支持するように設計された液体または基材を指す。細胞を培養する例示的な細胞培地および方法は、Doyle et al.,「Mammalian cell culture:essential techniques」Wiley,(1997);Freshney,「Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique and Specialized Applications」John Wiley & Sons,(2011);およびMeenakshi,「Cell Culture Media:A Review」Mater Methods.3:175(2013)(各々、その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0030】
本明細書で用いられるとき、用語「無血清培地」は、ウシ胎仔血清、ウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンなどの動物血清を含有しない細胞培地を指す。本明細書で用いられるとき、用語「動物性タンパク質不含培地」は、アルブミン、トランスフェリン、インスリンまたは成長因子など、より高級な多細胞性非植物真核生物由来のタンパク質および/またはタンパク質成分を含有しない細胞培地を指す。動物性タンパク質およびタンパク質成分は、本発明に従う動物性タンパク質不含細胞培地中に含まれ得る、植物(通常は10~30アミノ酸長)またはより低級な真核生物、例えば酵母から得られ得る非動物性タンパク質、小ペプチドおよびオリゴペプチドと区別されるべきである。本明細書で開示される方法に従う無血清および動物性タンパク質不含培地は、一般に当業者に公知の、DMEM、ハムF12、培地199、マッコイまたはRPMIなどの任意の基本培地に基づく場合がある。基本培地は、アミノ酸、ビタミン、有機および無機塩、および炭水化物源を含むいくつかの成分を含み得、各成分は一般に当業者に公知である細胞の培養を支持する量で存在している。培地は、補助物質、例えば重炭酸ナトリウムのような緩衝物質、抗酸化剤、機械的ストレスに対抗するための安定剤、またはプロテアーゼ阻害剤を含有し得る。必要があれば、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールの混合物などの非イオン性界面活性剤(例えば、プルロニックF68(登録商標)、SERVA)は、消泡剤として添加され得る。無血清および動物性タンパク質不含培地の例は、Mariani et al.,「Commercial serum-free media:hybridoma growth and monoclonal antibody production.」J Immunol Methods.145:175-83(1991);Barnes et al.,「Methods for growth of cultured cells in serum-free medium.」Anal Biochem.102:255-70(1980);Waymouth,「Preparation and use of serum-free culture media.」In:Barnes DW,Sirbasku DA,Sato GH,editors.「Methods for preparation of media,supplements and substrata for serum-free animal cell culture.」New York:Liss;(1984);およびMendelson et al.,「Culture of human lymphocytes in serum-free medium.」In:Barnes DW,Sirbasku DA,Sato GH,editors.「Methods for serum-free culture of neuronal and lymphoid cells.」New York:Liss;(1984)(各々、その全体が参照により本明細書に援用される)に記載のように当該技術分野で周知である。
【0031】
本明細書で用いられるとき、用語「合成培地」は、化学成分の全部が公知である、ヒトまたは動物細胞の細胞培養に適した細胞増殖培地である。
【0032】
本明細書で用いられるとき、「細胞増殖を支持するのに十分な細胞培地」は、細胞の成長、生存および/または増殖を支持する能力がある細胞培地を指す。一般に、「細胞増殖を支持するのに十分な細胞培地」は、一般に当業者に公知のアミノ酸、ビタミン、塩、および/または栄養分の適切なエネルギー源および補体を含む。細胞増殖を支持するのに十分な例示的な細胞培地は、一般に当業者に知られているように、市販の培地、合成培地、無血清培地、および動物性タンパク質不含培地を含む。
【0033】
本明細書で用いられるとき、用語「細胞生存度」は、細胞が生存または発生する能力を指す。一般に、「細胞生存度」を決定するには、一般に当業者に知られているように、細胞または細胞集団が生存または発生する能力を測定することが必要である(例えば、全細胞試料に基づいて生細胞または死細胞の数を測定することを含む)。細胞生存度アッセイは、当該技術分野で周知であり、細胞溶解または膜漏出アッセイ(membrane leakage assay)(例えば、ヨウ化プロピジウム、トリパンブルーおよび/または7-アミノアクチノマイシンDを使用)、ミトコンドリア活性またはカスパーゼアッセイ(例えば、レサズリンおよび/またはホルマザンを使用)、細胞機能性アッセイ(例えば、運動性アッセイ、細胞増殖または成長アッセイ)、ゲノムおよび/またはプロテオミクスアッセイ(例えば、細胞死、損傷またはストレスに関連した様々な遺伝子もしくはタンパク質の発現を測定すること)、細胞傷害性アッセイ、および生体染色、を含む。Chapter 15,「Assays for Cell Viability,Proliferation and Function」In:「The Molecular Probes Handbook.A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies」(I.Johnson and M.Spence(eds.)11th Edition,Life Technologies(2010)(その全体が参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0034】
本明細書で用いられるとき、用語「細胞倍加時間」または「倍加時間」は、細胞または細胞集団の数が倍加するのに必要とされる期間を指す。細胞または細胞集団の倍加時間は、DT=TIn2/In(X2/X1)の式(式中、DT=倍加時間;Tは任意の単位でのインキュベーション時間であり;X1はインキュベーション時間の開始時の細胞数であり;またX2はインキュベーション時間の終了時の細胞数である)を用いて決定され得る。本明細書で用いられるとき、細胞倍加時間は、細胞または細胞集団の相対的成長速度が一定であるとき(例えば指数増殖期または対数期)、測定される。細胞数計測アッセイは、当該技術分野で周知であり、計数チャンバー(例えば血球計数器)を用いて;分光光度計を用いて;コールター計数器を用いて;フローサイトメトリーを用いて;または顕微鏡を用いて細胞を計数することを含む。Chapter 15,「Assays for Cell Viability,Proliferation and Function」In:「The Molecular Probes Handbook.A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies」(I.Johnson and M.Spence(eds.)11th Edition,Life Technologies(2010)(その全体が参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0035】
本明細書で用いられるとき、用語「異種核酸」は、限定はされないが、Sambrook et al.,「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989);Silhavy et al.,「Experiments with Gene Fusions」Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1984);およびAusubel,F.M.et al.,「Current Protocols in Molecular Biology」published by Greene Publishing Assoc.and Wiley-Interscience(1987)(各々はそれら全体が本明細書に参照により援用される)に記載されるものを含む、標準の組換えDNAおよび分子クローニング技術を用いて細胞に導入される核酸分子(例えば、ポリヌクレオチド、cDNA、DNA、RNA、またはその断片)を指す。本発明に記載の核酸は、DNAまたはRNAを含み得、かつ全体的または部分的に合成され得る。
【0036】
本明細書で用いられる用語「形質転換」または「形質転換される」は、核酸分子またはその断片の宿主細胞の娘細胞への遺伝をもたらす、核酸分子またはその断片の宿主細胞への導入を指す。形質転換された核酸またはその断片を有する宿主細胞は、本明細書中で「トランスジェニック」または「組換え」または「形質転換」細胞と称される。
【0037】
用語「プロモーター」は、コード配列または機能性RNAの発現を制御することが可能なポリヌクレオチド配列を指す。一般に、コード配列は、プロモーター配列の3’側に位置する。プロモーターは、それら全体が天然遺伝子に由来し得るか、または天然に見出される異なるプロモーター由来の異なる成分からなり得るか、またはさらに合成DNAセグメントを含み得る。異なるプロモーターが、異なる組織または細胞型において、または発現の異なるステージで、または異なる環境的条件もしくは生理的条件に応答して、核酸の発現を誘導し得ることが当業者によって理解されている。ほぼ常に大部分の細胞型における遺伝子の発現を引き起こすプロモーターは、一般的に「構成的プロモーター」と称される。ほとんどの場合、調節性配列の正確な境界が完全には規定されていないことから、異なる長さのDNA断片が同一のプロモーター活性を有し得ることがさらに認められている。
【0038】
用語「作動可能に連結された」は、単一の核酸分子上での核酸配列の結合を指し、一方の機能が他方によって影響を受ける。例えば、プロモーターは、そのコード配列の発現に作用することが可能である(すなわちコード配列がプロモーターの転写調節下にある)場合、コード配列に作動可能に連結される。コード配列は、センスまたはアンチセンスの方向で制御配列に作動可能に連結され得る。
【0039】
用語「プラスミド」および「ベクター」は、通常は環状二本鎖DNA断片の形態の核酸成分を指す。かかる成分は、任意の供給源由来の、自己複製配列、ゲノム統合配列、ファージまたはヌクレオチド配列、線状または環状の一本鎖もしくは二本鎖DNAまたはRNAであってもよく、いくつかのヌクレオチド配列は、適切な3’非翻訳配列に沿って、選択された遺伝子産物のプロモーター断片およびDNA配列を細胞に導入することが可能な固有の構造に結合または再結合されている。好適なベクターは、プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および必要に応じた他の配列を含む適切な制御性配列を有するように、選択または構成され得る。
【0040】
用語「発現」は、本明細書で用いられるとき、本発明の核酸分子由来のセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を指す。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳を示し得る。
【0041】
本明細書で用いられるとき、用語「異種タンパク質」は、異種核酸によってコードされ、宿主細胞内で発現されるタンパク質(例えば、ポリペプチド、ペプチドまたはその断片)を指す。異種タンパク質は、一過性に(例えば、異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドを宿主細胞ゲノム内に組み込まない場合)または安定に(例えば、異種タンパク質をコードするポリヌクレオチドを宿主細胞ゲノム内に組み込む場合)発現され得る。
【0042】
本明細書で用いられるとき、用語「抗体」(またはその断片、変異体、または誘導体)は、抗原に結合することが可能な抗体の少なくとも最小の部分、例えば、B細胞によって産生される典型的な抗体と関連して、少なくとも重鎖の可変ドメイン(VH)および軽鎖の可変ドメイン(VL)を指す。脊椎動物系における基本的な抗体構造は、比較的十分に理解されている。例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)(その全体が参照により本明細書中に援用される)を参照のこと。
【0043】
抗体またはその抗原結合断片、変異体、または誘導体は、限定はされないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体、一本鎖抗体、エピトープ結合断片、例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、Fvs、一本鎖Fvs(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、VLもしくはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーによって産生される断片、を含む。ScFv分子は、当該技術分野で公知であり、例えば米国特許第5,892,019号明細書(その全体が参照により本明細書中に援用される)に記載されている。本開示によって包含される免疫グロブリンまたは抗体分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスであり得る。
【0044】
本明細書に開示される抗体またはその抗原結合断片、変異体、または誘導体は、抗原の1つもしくは複数のエピトープまたは1つもしくは複数の部分、例えばそれらが認識するかまたは特異的に結合する標的ポリペプチドの観点から説明または特定され得る。例えば、IL-13または抗IL-13抗体は、IL-13ポリペプチドまたはその一部に結合する抗体である。一部の態様では、抗IL-13抗体は、BAK502G9(例えば配列番号1および2を含む抗IL-13抗体)である。一実施形態では、抗体は、BAK502G9(配列番号1~2のVHおよびVLドメインならびに/または配列番号3~8の重鎖および軽鎖CDRによって表される)、BAK278D6(配列番号9~10のVHおよびVLドメインならびに/または配列番号11~16の重鎖および軽鎖CDRによって表される)、BAK1183H4(配列番号17~18のVHおよびVLドメインならびに/または配列番号19~24の重鎖および軽鎖CDRによって表される)、またはBAK1167F2(配列番号25~26のVHおよびVLドメインならびに/または配列番号27~32の重鎖および軽鎖CDRによって表される)である。
【0045】
使用可能な他の抗IL-13モノクローナル抗体は、2012年3月1日公開された米国特許出願公開第2012-0052060号明細書(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載のものを含む。他のIL-13抗体は、限定はされないが、抗ヒトIL-13抗体、例えばレブリキズマブ(MILR1444A/RG3637,Roche/Genentech)、ABT-308(Abbott)、GSK679586(GlaxoSmithKline)またはQAX576(Novartis)を含む。当該技術分野で周知のように、抗IL13抗体を含む抗体は、当該技術分野で公知の様々な技術を用いて細胞で産生してもよい。例えば、Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Kennet et al.(eds.)Plenum Press,New York(1980);およびAntibodies:A Laboratory Manual,Harlow and Lane(eds.)、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1988)を参照のこと。
【0046】
実施形態の説明
I.細胞培地
細胞培養は、動物から摘出される細胞、組織、または器官を、その生存、成長、および/または増殖を促進する人工的環境に配置する方法である。細胞が最適に成長するための基本的な環境的要件は、好適な容器、栄養分(限定はされないが、アミノ酸、炭水化物、ビタミン、ミネラル、成長因子、ホルモンなどの少なくとも1つを含む)を供給するための細胞培養/増殖培地、および(例えば、pH、浸透圧、温度、O2、CO2などを制御するための)制御された物理化学的環境を含む。一部の細胞は、足場依存性であり、固体または半流動基材(接着性または単層培養)に付着された状態で培養されなければならない一方、それ以外は培地中(懸濁培養)に浮遊した状態で成長され得る。細胞培養における1つのステップは、適切な増殖培地を選択することである。本明細書に開示される実施形態に従う細胞培地または細胞培養方法は、N-アセチルシステインを含む、細胞増殖を支持するのに十分な細胞培地を含む。一実施形態では、細胞培地は無血清および動物性タンパク質不含培地である。一実施形態では、細胞培地は合成培地である。別の実施形態では、N-アセチルシステインは市販の細胞培地に添加される。一実施形態では、市販の細胞培地は、NS0細胞用のEX-CELL(登録商標)NS0無血清培地(Sigma-Aldrichから入手可能、カタログ番号H4281)、EX-CELL(登録商標)CDハイブリドーマ培地(Sigma-Aldrich、カタログ番号H4409)、ハイブリドーマ細胞用のEx-Cell 620-HSF無血清培地(Sigma-Aldrich、カタログ番号14621C)、NS0用のEx-Cell NS-無血清培地(Sigma-Aldrich、カタログ番号14650C)、DMEM(Sigma-Aldrich、カタログ番号D567)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)(Sigma-Aldrichから入手可能、カタログ番号I3390)、RPMI-1640培地(Sigma-Aldrich、カタログ番号R8005)、Hybridoma-SFM(Life Technologies、カタログ番号12045076)、CD Hybridoma AGT培地(Life Technologies、カタログ番号12372025)、CDハイブリドーマ培地(Life Technologiesから入手可能、カタログ番号11278023)、PFHM-IIタンパク質不含ハイブリドーマ培地(Life Technologies、カタログ番号12040077)、Nutridoma-SP(Roche、カタログ番号11011374001)、UltraDOMA-PFハイブリドーマ培地(Lonza、カタログ番号12-727F)、UltradDOMA無血清ハイブリドーマ培地(Lonza、カタログ番号12-723B)、Hyclone PF-Mab培地(GE Life Sciences,SH30138.05)、Hyclone SFM4MAb培地(GE Life Sciences SH30391.02)、Hyclone SFM4Mab-ユーティリティ培地(utility media)(GE Life Sciences、カタログ番号SH30382.02)、Hyclone ADCF-Mab培地(GE Life Sciences、カタログ番号SH30349.02)、Hyclone CCM1培地(GE Life Sciences,SH30043.03)、HyClone CCM4MAb培地(GE Life Sciences,SH30800.06)、Hyclone CDM4NS0培地(GE Life Sciences,SH30478.06)などである。別の実施形態では、N-アセチルシステインは、培地における基礎として滅菌脱イオン水を伴う構成成分から調製される細胞培地に添加される。
【0047】
A.N-アセチルシステイン
N-アセチルシステインは、細胞生存度、細胞増殖速度を増加させ、および/または細胞倍加時間を短縮するため、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法に添加される。何らかの特定の理論によって限定されないが、N-アセチルシステインは、細胞を遊離基から保護し、細胞膜分解を阻止し、および/または、限定はされないが脂質(コレステロールなど)を含む他の細胞培地成分の酸化を阻止することにより、培養中の細胞増殖に対して便益をもたらすと考えられる。
【0048】
一実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、N-アセチルシステインを、約0.25mM~約3mM、約0.5mM~約2.5mM、約0.5mM~約2.0mM、約0.5mM~約1.5mM、約0.5mM~約1.0mM、約1.0mM~約2.5mM、約1.0mM~約2.0mM、約1.0mM~約1.5mM、約1.5mM~約2.5mM、または約1.5mM~約2.0mMの濃度で含む。一実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、N-アセチルシステインを約1mMの濃度で含む。別の実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、N-アセチルシステインを約1.5mMの濃度で含む。別の実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、N-アセチルシステインを約2.0mMの濃度で含む。別の実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、N-アセチルシステインを約2.5mMの濃度で含む。別の実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、N-アセチルシステインを約0.5mMの濃度で含む。別の実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、N-アセチルシステインを、少なくとも約0.5mM、少なくとも約1.0mM、少なくとも約1.5mM、少なくとも約2.0mM、または少なくとも約2.5mMの濃度で含む。
【0049】
B.他の細胞培地成分
一部の実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、炭素源、窒素源、および/または亜リン酸源をさらに含む。これらは、同じ成分または異なる成分によって提供され得る。一実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、炭素源、窒素源、亜リン酸源、および/または無機塩をさらに含む。本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法での使用に適した炭素源は、炭水化物(糖など)またはアミノ酸、例えばL-グルタミンおよび/またはピルビン酸またはそれらの任意の組み合わせを含む。一実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、炭水化物およびアミノ酸をさらに含む。一実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、塩、ビタミン、代謝前駆体、成長因子、ホルモン、および微量元素のうちの少なくとも1つをさらに含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、アミノ酸、ビタミン、無機塩、および炭素源、例えばグルコースを含有する基本培地をさらに含む。
【0050】
1.炭水化物
本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法での使用に適した例示的な炭水化物は、グルコース、ガラクトース、トレハロース、グルコサミン、マンノース、ラフィノース、フルクトース、リボース、グルクロン酸、ラクトース、マルトース、スクロース、ツラノース、当該技術分野で一般に公知の細胞培養に適した任意の他の炭水化物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。一態様では、炭水化物は、グルコースまたはガラクトースであってもよい。
【0051】
2.アミノ酸
本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法での使用に適した例示的なアミノ酸は、1つ以上の必須アミノ酸(すなわち、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、および/またはバリン)、ならびに/または1つ以上の非必須アミノ酸(すなわち、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、プロリン、セリン、チロシン、およびアスパラギン)、ならびに/またはそれらの必須および非必須アミノ酸の任意の組み合わせ、を含む。特定の細胞においては、一部の非必須アミノ酸は、細胞がそのアミノ酸を合成する能力を有しないことから必須アミノ酸である。例えば、NS0細胞は内因性グルタミン合成酵素を欠如しているかまたは極めて低レベルで含有し、それ故、グルタミン合成酵素が異種タンパク質における発現系に含まれない限り、グルタミンはNS0細胞における必須アミノ酸である。
【0052】
アミノ酸に関しては、本開示は、限定はされないが、D-アミノ酸もしくはL-アミノ酸および非標準アミノ酸を含む任意のアミノ酸を含む。したがって、アミノ酸という用語は、アミン(-NH2)およびカルボキシル酸(-COOH)官能基を有する任意の有機化合物を包含する。
【0053】
3.脂質
一実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、脂質をさらに含む。本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法での使用に適した例示的な脂質は、コレステロール、アラキドン酸、酢酸トコフェロール、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、ステアリン酸、リン脂質(ホスファチジルコリンなど)、当該技術分野で一般に公知の細胞培養に適した任意の他の脂質、またはそれらの任意の組み合わせ、のうちの1つ以上を含む。膜リン脂質の構成成分としてのイノシトールもまた、任意選択的に含まれてもよい。合成または植物由来脂質もまた、培地が動物由来成分を含まない状態で維持されることが所望される用途では、任意選択的に用いてもよい。脂質は、シクロデキストリンに基づく脂質サプリメントに添加してもよい。シクロデキストリンは、脂質ならびに/または脂溶性ビタミンおよびホルモンなどの他の成分を可溶化するのに用いてもよい。
【0054】
コレステロールは、合成的に生成してもよく、または動物由来であってもよい。例えば、コレステロールは、羊毛から単離してもよい。動物性タンパク質不含培地は、動物源由来のコレステロールを含有してもよい。一部の実施形態では、コレステロールは商業的供給源から得られる。例えば、Gibco製のChemically Defined Lipid Concentrate;SAFC製のLipid Concentrateを参照のこと。コレステロールは、合成コレステロール(限定はされないがSyntheChol(商標)など)として、コレステロールナノ粒子として(例えば、Wu et al.,Enhanced Productivity of NS0 cells in fed-batch culture with cholesterol nanoparticle supplementation,Biotechnology Progress 27(3):796-802(2011)を参照)、または当該技術分野で一般に公知の細胞培養に適した任意の手段により、コレステロール-シクロデキストリン溶液中の培地に添加してもよい。
【0055】
一実施形態では、培地は、約1~約10g/Lのコレステロールを含有し得る。別の実施形態では、培地は約1~約5g/lのコレステロールを含有し得る。別の実施形態では、培地は約1.5~約4g/lのコレステロールを含有し得る。別の実施形態では、培地は約2~約3g/lのコレステロールを含有し得る。別の実施形態では、培地は約2.5g/lのコレステロールを含有し得る。別の実施形態では、培地は少なくとも約1g/Lのコレステロール、少なくとも約2.5g/Lのコレステロールまたは少なくとも約5g/Lのコレステロールを含有し得る。
【0056】
別の実施形態では、培地はコレステロール以外の脂質を含有し得る。一実施形態では、培地はリン脂質を含有し得る。別の実施形態では、培地はホスファチジルコリンを含有し得る。一実施形態では、培地は約1~約10g/Lのホスファチジルコリンを含有し得る。別の実施形態では、培地は約1~約5g/lのホスファチジルコリンを含有し得る。別の実施形態では、培地は約1.5~約4g/lのホスファチジルコリンを含有し得る。別の実施形態では、培地は約2~約3g/lのホスファチジルコリンを含有し得る。別の実施形態では、培地は約2.5g/lのホスファチジルコリンを含有し得る。
【0057】
4.塩
一実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は塩をさらに含む。本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法での使用に適した例示的な塩は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硝酸カリウム、当該技術分野で一般に公知の細胞培養に適した任意の他の塩、またはそれらの任意の組み合わせ、のうちの少なくとも1つを含む。
【0058】
別の実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムを含まない。カルシウムおよびマグネシウムが細胞接着を促進することから、本実施形態は細胞の解離または放出が所望される場合に利点を有する。
【0059】
5.ビタミン
一実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、ビタミンをさらに含む。本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法での使用に適した例示的なビタミンは、脂溶性ビタミン、ビタミンA、D、E、K、B1(チアミン)、B2(リボフラビン)、B3(ニコチンアミド)、B5(パントテン酸)、B6(ピリドキサル、ピリドキサミン、および/またはピリドキシン)、B9(葉酸)、当該技術分野で一般に公知の細胞培養に適した任意の他のビタミン、またはそれらの任意の組み合わせ、を含む。
【0060】
6.成長因子およびホルモン
一実施形態では、少なくとも1つのホルモンを、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法に添加してもよい。一実施形態では、ホルモンは、デキサメタゾン、エリスロポエチン、エストラジオール、ヒドロコルチゾン、インスリン、プロゲステロン、ソマトスタチン、チロキシン(T4)、トリヨードチロニン(T3)、アクチビン、BMP4、BMP7、BMPR1A、Cripto、FLT3リガンド、HGF、IGF、EGF、FGF、PDGF、IGFBP4、カリクレイン、LEFTY-A、NGF、TGFβ、VEGF、または当該技術分野で一般に公知の細胞培養に適した任意の他のホルモンもしくは成長因子のうちの少なくとも1つから選択してもよい。
【0061】
7.微量元素
一実施形態では、少なくとも1つの微量元素は、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法に添加してもよい。一実施形態では、微量元素は、亜鉛、鉄、銅、セレン、マグネシウム、マンガン、モリブデン、スズ、ニッケル、または当該技術分野で一般に公知の細胞培養に適した任意の他の微量元素のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0062】
8.界面活性剤
別の実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、少なくとも1つの界面活性剤をさらに含む。本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法での使用に適した例示的な界面活性剤は、ツイーン-80、プルロニックF-68、または当該技術分野で一般に公知の細胞培養に適した任意の他の界面活性剤を含む。
【0063】
9.緩衝剤
別の実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、少なくとも1つのpH緩衝剤をさらに含む。本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法での使用に適した例示的な緩衝剤は、重炭酸ナトリウム、ホウ酸、クエン酸、ジチオトレイトール、エタノールアミン、グリセロリン酸塩(glycerophosphate)、クエン酸カリウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、コムギ由来デンプン、ヘペス、塩化カルシウム、MOPS、または当該技術分野で一般に公知の細胞培養に適した任意の他の緩衝剤(buffering agent cell)、またはそれらの任意の組み合わせ、を含む。
【0064】
10.他の成分
一実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、非動物起源の加水分解物をさらに含む。例えば、植物または酵母加水分解物は、アミノ酸、短いペプチド、炭水化物、ビタミン、ヌクレオシド、およびミネラルを含むタンパク質消化物(digests)を提供し、種々の栄養補助物を培地に提供する。例えば、イーストレート、酵母加水分解物は利用してもよい。イーストレートは、ペプチド、アミノ酸、炭水化物、脂質、金属およびビタミンの混合物である。それは、別々に提供される成分に加えてまたはそれに代えて添加してもよい。一実施形態では、細胞培地は1g/Lのイーストレートを含む。
【0065】
一実施形態では、トロポロンもまた、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法に添加してもよい。別の方法では、ヌクレオシドを、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法に添加してもよい。別の実施形態では、β-メルカプトエタノールを本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法に添加してもよい。別の実施形態では、抗生物質を本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法に添加してもよい。
【0066】
一部の実施形態では、本明細書に記載の細胞培地または細胞培養方法は、NAC、アミノ酸、ビタミン、脂質、炭水化物、pH緩衝剤、微量金属、無機塩類、および界面活性剤を含有する。一実施形態では、脂質はコレステロールである。
【0067】
II.細胞培養方法
A.細胞型
種々の細胞型、例えばコレステロール栄養要求性細胞、骨髄腫細胞、およびハイブリドーマ細胞は、N-アセチルシステインを含む本開示の細胞培地で培養してもよい。一実施形態では、培養中の細胞は、哺乳動物に由来し、限定はされないが、マウス、ラット、ヒト、サル、ハムスター、ウサギなどに由来する細胞を含む。
【0068】
本明細書で用いられるとき、用語「コレステロール栄養要求株」は、成長のためにコレステロールを必要とするが、それを合成することができない細胞または細胞株を指す。一実施形態では、コレステロール栄養要求株は、NS0、NS1、U937、M19、SRD-12B、SRD-13A、CHO-215、X63細胞、これらの細胞株由来の細胞株、またはコレステロール栄養要求株であるように操作された任意の他の細胞である。別の実施形態では、細胞はNS0細胞である。
【0069】
一実施形態では、N-アセチルシステインを含む本開示の細胞培地での培養に適した細胞は、コレステロール栄養要求株である細胞である。一実施形態では、N-アセチルシステインを含む本開示の細胞培地での培養に適した細胞はNS0細胞である。別の実施形態では、細胞は、NS1、U937、M19、SRD-12B、SRD-13A、CHO-215、X63細胞、これらの細胞株由来の細胞、またはコレステロール栄養要求株であるように操作された任意の他の細胞である。別の実施形態では、N-アセチルシステインを含む本開示の細胞培地での培養に適した細胞は、コレステロール栄養要求株であるマウス骨髄腫細胞である。一実施形態では、細胞は、コレステロール栄養要求株である哺乳類骨髄腫細胞である。一実施形態では、N-アセチルシステインを含む本開示の細胞培地での培養に適した細胞は、コレステロール栄養要求株であるヒト骨髄腫細胞である。
【0070】
一実施形態では、N-アセチルシステインを含む本開示の細胞培地での培養に適した細胞は骨髄腫細胞である。別の実施形態では、細胞は、X63Ag8、Sp2/0、NS1、NS0、J558L、U266、U937、P3U1、XG-1、XG-2、XG-3、XG-4、XG-5、XG-6、XG-7、XG-8、XG-9、U266、RPM1-8226、LP1、L363、OPM1、OPM2、およびNCLH929細胞またはこれらの細胞株由来の細胞株である。別の実施形態では、N-アセチルシステインを含む本開示の細胞培地での培養に適した細胞はハイブリドーマ細胞である。一部の態様では、N-アセチルシステインを含む本開示の細胞培地での培養に適したハイブリドーマ細胞は、抗体を発現し、かつ/または分泌する。
【0071】
B.生物学的治療薬
一実施形態では、N-アセチルシステインを含む本開示の細胞培地での培養に適した細胞(例えば、コレステロール栄養要求株、骨髄腫細胞、またはハイブリドーマ、例えばNS0細胞)は、組換えまたは異種タンパク質を誘導し、かつ/または発現することなく培養される。一実施形態では、N-アセチルシステインを含む本開示の細胞培地での培養に適した細胞(例えば、コレステロール栄養要求株、骨髄腫細胞、またはハイブリドーマ、例えばNS0細胞)は、異種核酸(限定はされないが、cDNA、プラスミド、ベクター、プロモーターに作動可能に連結された核酸、および/あるいは異種核酸を一過性に発現するかまたは異種核酸を細胞株のゲノムに組み込む核酸を含む)で形質転換される。別の方法では、細胞は組換えまたは異種タンパク質を発現する。一方法では、細胞は組換えまたは異種タンパク質を過剰発現する。多種多様な異種配列を発現する細胞株は、本細胞培地および本方法から利益を得る場合がある。
【0072】
一実施形態では、異種タンパク質は一過性に発現される。別の実施形態では、異種タンパク質は安定に発現される。
【0073】
一実施形態では、異種タンパク質は、抗体またはその抗原結合断片ではない。一実施形態では、異種タンパク質は、血液因子、抗凝固剤、血栓溶解剤、エリスロポエチン、インターフェロン、ホルモン、酵素、ワクチン、成長因子、および/または融合タンパク質である。
【0074】
別の実施形態では、N-アセチルシステインを含む本開示の細胞培地での培養に適した細胞(例えば、コレステロール栄養要求株、骨髄腫細胞、またはハイブリドーマ、例えばNS0細胞)は、抗体またはその抗原結合断片である異種タンパク質を発現する。一実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、IL-13に特異的に結合するかまたはIL-9に特異的に結合する。別の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、米国特許第7,947,273号明細書、米国特許第7,354,584号明細書または米国特許第7,371,383号明細書(各々、その全体が参照により本明細書に援用される)中に開示される抗体または抗原結合断片である。別の実施形態では、抗体は(配列番号1および2を含む)BAK502G9である。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、(重鎖CDR(配列番号3~5)および軽鎖CDR(配列番号6~8)を含む)BAK502G9と同じCDRを有する。別の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号1、9、17、または25のいずれか1つを含む重鎖可変領域および配列番号2、10、18、または26のいずれか1つを含む軽鎖可変領域を有する。別の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、(a)配列番号3、11、19、および27から選択されるHC CDR1;(b)配列番号4、12、20、および28から選択されるHC CDR2;および(c)配列番号5、13、21、および29から選択されるHC CDRを含む重鎖可変領域;ならびに(a)配列番号6、14、22、および30から選択されるLC CDR1;(b)配列番号7、15、23、および31から選択されるLC CDR2;および(c)配列番号8、16、24、および32から選択されるLC CDR3を含む軽鎖可変領域を有する。別の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、表1中に記載の重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)を含むか、あるいは表1中に記載の6つのCDRセットを含む。
【0075】
別の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、配列番号1、9、17、または25のいずれか1つに対して約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約92%、約93%、約94%、約98%、または約99%同一である配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号2、10、18、または26のいずれか1つに対して約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約92%、約93%、約94%、約98%、または約99%同一である配列を含む軽鎖可変領域を有する。別の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、(a)配列番号3、11、19、または27から選択される配列と比べて1つの突然変異を有するHC CDR1;(b)配列番号4、12、20、および28から選択される配列と比べて1つもしくは2つの突然変異を有するHC CDR2;および(c)配列番号5、13、21、および29から選択される配列と比べて1つもしくは2つの突然変異を有するHC CDR3を含む重鎖可変領域;ならびに(a)配列番号6、14、22、および30から選択される配列と比べて1つの突然変異を有するLC CDR1;(b)配列番号7、15、23、および31から選択される配列と比べて1つもしくは2つの突然変異を有するLC CDR2;および(c)配列番号8、16、24、および32から選択される配列と比べて1つもしくは2つの突然変異を有するLC CDR3を含む軽鎖可変領域を有する。別の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、表1中に記載のVHおよび/またはVL配列のいずれか1つに対して約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約92%、約93%、約94%、約98%、または約99%同一である配列を含む、重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)を有する。一部の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、表1中に記載のCDRのいずれか1つと比べて、CDR内に1つもしくは2つの突然変異を有する。
【0076】
別の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、糖タンパク質IIb/IIIa、IL-2受容体(IL-2受容体aなど)、TNF-α、RSV、RSVのFタンパク質エピトープ、CD33、上皮GF受容体、T細胞VLA4受容体、補体タンパク質C5、IL-1、IL-9、IL-12、IL-13、IL-23、CD-20、および/またはBAFFに特異的に結合する。
【0077】
さらなる実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、オファツムマブ、ベリムマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、パリビズマブ、ナタリズマブ、セツキシマブ、カナキヌマブ、インフリキシマブ、アブシキシマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、またはウステキヌマブである。
【0078】
C.細胞培養プロセス
一実施形態では、細胞培養方法は、細胞増殖を支持するのに十分な、N-アセチルシステインを含む細胞培地を提供するステップと、コレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマである細胞を細胞培地中で培養するステップと、を含む。一実施形態では、本方法は、N-アセチルシステインを含む細胞増殖を支持するのに十分な細胞培地を提供し;またコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマである細胞を細胞培地中で培養することにより、細胞生存度を増加させ、細胞増殖速度を増加させ、および/または細胞の細胞倍加時間を短縮する方法である。
【0079】
一実施形態では、細胞は、37℃、5%CO2および85%相対湿度で培養される。一実施形態では、pHは6.8~7.4であってもよい。当該技術分野で一般に公知の他の許容できる条件もまた用いてもよい。
【0080】
一態様では、細胞培養は、凍結保存から大規模バイオリアクターにかけて作製をスケールアップする間に行われる。一態様では、改善された培地は、細胞を継代するとき、少なくとも4倍の分割比を可能にする(すなわち、継代されるべき細胞を含有する細胞培地の1倍は同細胞を含有しない新しい細胞培地の3倍と混合される)。別の態様では、改善された培地は、5倍の分割比、6倍の分割比、または7倍の分割比を可能にする。
【0081】
一実施形態では、細胞は、100Lのバイオリアクター内で培養され、次に500Lのバイオリアクターに移され、そして次に2500Lのバイオリアクターに移される。
【0082】
一実施形態では、細胞(例えば、コレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ)は、凍結保存から解凍される。一実施形態では、細胞(例えば、コレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ)は増殖期にある。別の実施形態では、細胞(例えば、コレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ)は、バッチモード、流加培養モード、連続培養、灌流で、または統合されたバイオリアクター-精製ユニット内で増殖する。
【0083】
D.細胞培養効率に対する影響
本細胞培養方法および/または培地は、複数の利点を提供し得る。一例として、それは、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて、細胞(例えば、コレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ、例えばNS0細胞)が容器(バイオリアクターなど)内で成長するのに必要とされる時間を、少なくとも約10%~少なくとも約50%(例えば、少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、または約50%)短縮する。一実施形態では、これは所望される細胞数/体積に至るのに必要とされる期間を算出することによって決定される。
【0084】
別の実施形態では、細胞培養方法および/または培地は、N-アセチルシステインを含む細胞培養方法および/または培地を用いて培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)の平均細胞倍加時間を、N-アセチルシステインを排除した対照培地での細胞培養で培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)と比べて短縮する。一実施形態では、N-アセチルシステインを含む細胞培養方法および/または培地を用いて培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えば、NS0細胞)の平均倍加時間は、N-アセチルシステインを排除した対照培地での細胞培養で培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)の場合より短縮される。別の実施形態では、N-アセチルシステインを含む細胞培養方法および/または培地を用いて培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)の細胞倍加時間の平均および/または中央値は、N-アセチルシステインを含まない細胞培地中で培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)と比べて、少なくとも約10%~少なくとも約50%(例えば、少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、または約50%)短縮する。一態様では、N-アセチルシステインを含む細胞培養方法および/または培地を用いて培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)の細胞倍加時間の平均および/または中央値は、60時間以下~約29時間以下(例えば、約60時間以下、約42時間以下、約34時間以下、約30時間以下、または約29時間以下)であるか、あるいは
図1~12で報告される平均細胞倍加時間のいずれかを概ね超えない。
【0085】
一実施形態では、細胞倍加時間は、複数の時間間隔で所与の細胞培地中の細胞を計数し、グラフ上にデータをプロットすることによって測定され得る。平均倍加時間は、複数の同型培養での指数増殖期における倍加時間値を、DT=TIn2/In(X2/X1)の式(式中、DT=倍加時間、Tは任意の単位でのインキュベーション時間である;X1はインキュベーション時間の開始時の細胞数であり、X2はインキュベーション時間の終了時の細胞数である)を用いて平均することによって算出され得る。
【0086】
さらなる実施形態では、細胞培養方法および/または培地は、N-アセチルシステインを含む細胞培養方法および/または培地を用いて培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)の細胞増殖速度を、N-アセチルシステインを排除した対照培地での細胞培養で培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)の場合と比べて増加させる。一実施形態では、N-アセチルシステインを含む細胞培養方法および/または培地を用いて培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)の細胞増殖速度は、N-アセチルシステインを排除した対照培地での細胞培養で培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)の場合より高い。別の実施形態では、N-アセチルシステインを含む細胞培養方法および/または培地を用いて培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)の細胞増殖速度は、N-アセチルシステインを含まない細胞培地中で培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)の場合と比べて、少なくとも約10%~少なくとも約50%(例えば、少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、または約50%)増加する。
【0087】
一実施形態では、細胞増殖は、細胞数計測方法を用いて測定してもよい。一実施形態では、細胞培地の試料体積が得られ、細胞はその体積で計数される。細胞数計測は、血球計数器でまたはコールター計数器を用いて行ってもよい。別の方法では、時間に対する細胞数がプロットされ、培養におけるグラフのステッパーの勾配は改善された成長速度を示す。
【0088】
別の実施形態では、本明細書に開示される細胞培養方法および/または培地は、コレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)の細胞生存度を、N-アセチルシステインを排除した対照培地での細胞培養で培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)に対して増加させる。一実施形態では、N-アセチルシステインを含む細胞培養方法および/または培地を用いて培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)の細胞生存度は、N-アセチルシステインを排除した対照培地での細胞培養で培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)の場合と比べてより高い。一実施形態では、N-アセチルシステインを含む細胞培養方法および/または培地を用いて培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)の細胞生存度は、N-アセチルシステインを含まない細胞培地中で培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)の場合と比べて、少なくとも約5%~少なくとも約15%(例えば、少なくとも約5%、約7%、約10%、約12%、または約15%)増加する。一態様では、N-アセチルシステインを含む細胞培養方法および/または培地を用いて培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えば、NS0細胞)の細胞生存度は、少なくとも約85%~少なくとも約95%(例えば、少なくとも約85%、約88%、約90%、約92%、約93%、約94%、または約95%)である。
【0089】
一実施形態では、細胞生存度は、生存度のトリパンブルー排除アッセイによって測定してもよい。かかるアッセイでは、細胞懸濁液をリン酸塩緩衝剤中の0.4%トリパンブルーと混合してもよく、細胞は血球計数器を用いて計数してもよい。生細胞は、青色色素による呈色が全くなく円形で屈折性を呈する一方、死細胞は色素を吸収し、青色を呈する。生存度は、計数される全細胞に対する生細胞の百分率として表すことができ、生細胞は、生存度のトリパンブルー排除アッセイにおいて、膜統合性が依然としてトリパンブルーの吸収を阻止することができる細胞である。
【0090】
別の実施形態では、タンパク質収量の増加、例えば異種タンパク質発現の増加は、本明細書に開示される細胞培養方法および/または培地を用いて得られる。一実施形態では、組換えまたは異種タンパク質発現は、N-アセチルシステインを含む細胞培養方法および/または培地を用いて培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)において、N-アセチルシステインを排除した対照培地での細胞培養で培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)と比べてより高い。一実施形態では、N-アセチルシステインを含む細胞培養方法および/または培地を用いて培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)は、N-アセチルシステインを含まない細胞培地中で培養されるコレステロール栄養要求株、骨髄腫、またはハイブリドーマ(例えばNS0細胞)と比べて、少なくとも10%~少なくとも200%(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%)より高いタンパク質発現を示す。
【0091】
ここで例示的な本実施形態に対する参照が詳細になされることになり、その例が添付の図面で図示される。考えられるあらゆる場合に、同じ参照番号が、同一または類似部分を指すように図面全体を通して用いられることになる。他の実施形態は、本明細書に開示される明細書および実践を考慮すれば、当業者に明らかになるであろう。本実施形態は、以下の実施例においてさらに説明される。これらの実施例は、特許請求の範囲の範囲を限定しないばかりか、特定の実施形態を明示するのに役立つ。明細書および実施例があくまで例示的なものとして考慮され、真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示されることが意図されている。
【実施例0092】
実施例1.APF培地1および2中でのバイアル解凍時のNS0細胞株1の細胞倍加時間
後の継代時の解凍回復、細胞生存度、細胞増殖および細胞倍加時間に対するN-アセチルシステインの役割を検討するため、以下の方法を用いた。1~3の異なる動物性タンパク質フリー(「APF」)培地中で培養した3つの異なるNS0細胞株に対して、バイアル解凍時および通常の細胞増殖中の細胞増殖に対するN-アセチルシステイン(NAC)の効果を試験することを検討した。細胞株の一つは、組換えタンパク質を発現するように形質転換されていないNS0ヌル宿主細胞(NS0ヌル細胞株)であった。他の2つのNS0細胞株、すなわち(抗IL-9抗体を発現する)NS0細胞株1および(BAK502G9、抗IL-13抗体を発現する)NS0細胞株2は、治療用組換えタンパク質を発現するように操作した。NS0細胞株1を、1.5mM~2.5mMの範囲の様々な濃度のNACを添加した2つの異なるAPF培地(APF培地1またはAPF培地2)に解凍し、展開した。NS0細胞株2を、0.5mM~2.5mMの範囲のNACを添加した3つの異なるAPF培地(APF培地1、APF培地2または市販のNS0細胞培地(Invitrogen/Gibco製のCDハイブリドーマ+コレステロール))に解凍し、展開する一方、非形質転換宿主細胞株(NS0ヌル細胞株)を、0.5mM~1.5mMの範囲のNACを添加したAPF培地2に解凍した。NACは、Sigmaから入手し、培地に直接添加するか、または、適切な濃度で培地に添加する前、水に100mMの濃度で溶解した。3つすべての培地(APF培地1、APF培地2、およびInvitrogen/Gibco製のCDハイブリドーマ+コレステロール)は、
図1~12に図示のとおり、NS0細胞の成長を支持した。APF培地1およびAPF培地2は、アミノ酸、ビタミン、脂質、糖、小ペプチド、pH緩衝剤、微量金属、無機塩、ヌクレオチド、ヌクレオチド前駆体、界面活性剤、還元剤、コレステロール、脂質および抗酸化剤を含む標準の細胞培養成分を含有する。
【0093】
バイアル解凍前、培地は、振とう器上、120rpmで撹拌しながら、37℃の6%CO2インキュベーター内で最低1時間、温度およびpHを平衡化した。バイアルを37℃のウォーターバスを用いて解凍し、全内容物を平衡化した培地に移した。生細胞の密度および生存度を測定するため、Beckman Vi-Cell(画像に基づく細胞生存度アナライザ)を用いて細胞数を得た。
【0094】
各継代での最初の3~4日(すなわち指数増殖期)の間での生細胞密度は、細胞が解凍から回復している間のバイアル解凍後の最初の数日間と、細胞が完全に回復し、継代間で一貫した倍加時間に達しているその後の細胞継代間との双方で集団倍加時間を算出するために用いた。
【0095】
抗IL-9モノクローナル抗体を発現するNS0細胞(すなわちNS0細胞株1)は凍結保存状態であった。上記のように、凍結NS0細胞株1細胞を、様々な濃度のN-アセチルシステイン(NAC)を添加した動物性タンパク質不含(APF)培地(すなわちAPF培地1またはAPF培地2)に解凍し、指数増殖期中の生細胞密度を、平均細胞倍加時間を算出するために用いた。
【0096】
図1は、凍結保存から解凍される細胞における、対照培地(NACを含まないAPF培地1)中およびN-アセチルシステインを3つの漸増濃度で添加したAPF培地1中でのNS0細胞株1の細胞倍加時間を示す。1.5mM~2.5mMのNAC(1.5mM、2.0mMまたは2.5mMのNAC)の添加により、バイアル解凍時での平均細胞倍加時間が、対照培地中で解凍したNS0細胞株1細胞(57.6時間)と比べて短縮した(各々、55.6時間、48.4時間、および53.9時間)。理論によって拘束されないが、2mMと2.5mMとの間の倍加時間のわずかな増加は、特にNS0細胞が解凍中に浸透圧への感受性を示し得ることから、溶液の浸透圧上昇に起因し得る。
【0097】
図2は、凍結保存から解凍される細胞における、対照培地(NACを含まないAPF培地2)中およびN-アセチルシステインを3つの漸増濃度で添加したAPF培地2中でのNS0細胞株1の細胞倍加時間を示す。APF培地1で認められた結果と同様、1.5mM~2.5mMのNAC(1.5mM、2.0mMまたは2.5mMのNAC)をAPF培地2に添加することにより、バイアル解凍時での細胞倍加時間がまた、対照培地中で解凍したNS0細胞株1細胞(109.8時間)と比べて短縮した(各々、47.5時間、56.9時間、および47.7時間)。
【0098】
これらの実験は、バイアル解凍中でのN-アセチルシステイン(約1.5mM~約2.5mM;または約1.5mM、約2.0mMまたは約2.5mM)のNS0細胞の細胞培地への添加により、細胞生存度、細胞増殖が増加し、細胞倍加時間が短縮することを示す。
【0099】
実施例2.APF培地1、APF培地2およびCDハイブリドーマ培地中でのバイアル解凍時のNS0細胞株2の細胞倍加時間
モノクローナル抗体(すなわち、BAK502G9、抗IL-13抗体)を発現するNS0細胞(すなわちNS0細胞株2)は凍結保存状態であった。実施例1に記載のとおり、凍結NS0細胞株2細胞を、様々な濃度のN-アセチルシステイン(NAC)を添加した動物性タンパク質不含(APF)培地(すなわち、APF培地1、APF培地2またはコレステロール(1×Invitrogen Cholesterol Lipid Concentrate)を添加したCDハイブリドーマ培地(Gibco))に解凍し、指数増殖期中の生細胞密度を、平均細胞倍加時間を算出するために用いた。
【0100】
図3は、凍結保存から解凍される細胞における、対照培地(NACを含まないAPF培地1)中およびN-アセチルシステインを3つの漸増濃度で添加したAPF培地1中でのNS0細胞株2の細胞倍加時間を示す。0.5mM~2.5mMのNAC(0.5mM、1.0mMまたは2.5mMのNAC)の添加により、バイアル解凍時での平均細胞倍加時間が、対照培地中で解凍したNS0細胞株2細胞(44.6時間)と比べて短縮し(各々、39.6時間、41.6時間、および37.5時間)、2.5mMのNACがバイアル解凍時での細胞倍加時間の最大の短縮を示した。
【0101】
図4は、凍結保存から解凍される細胞における、対照培地(NACを含まないAPF培地2)中およびN-アセチルシステインを3つの漸増濃度で添加したAPF培地2中でのNS0細胞株2の細胞倍加時間を示す。APF培地1で認められた結果と同様、0.5mM~2.0mMのNAC(0.5mM、1.0mMまたは2.0mMのNAC)により、バイアル解凍時での平均細胞倍加時間が、対照培地中で解凍したNS0細胞株2細胞(77.0時間)と比べて短縮し(各々、57.7時間、37.0時間、および39.7時間)、1.0mMおよび2.0mMがバイアル解凍時での細胞倍加時間の最大の短縮を示した。
【0102】
図5は、凍結保存から解凍される細胞における、対照培地(NACを含まない、1×Invitrogen Cholesterol Lipid Concentrateを添加したCDハイブリドーマ培地(Gibco))中およびN-アセチルシステインを3つの漸増濃度で添加した対照培地中でのNS0細胞株2の細胞倍加時間を示す。APF培地1およびAPF培地2で認められた結果と同様、1.0mM~2.0mMのNACの添加により、バイアル解凍時での平均細胞倍加時間が、対照培地中で解凍したNS0細胞株2細胞(35.5時間)と比べて短縮し(各々、34.7時間、30.6時間、および30.9時間)、1.0mMおよび2.0mMがバイアル解凍時での細胞倍加時間の最大の短縮を示した。
【0103】
これらの実験は、バイアル解凍中でのN-アセチルシステイン(約0.5mM~約2.5mM;または約0.5mM、約1.0mM、約2.0mMまたは約2.5mM)のNS0細胞の細胞培地への添加により、細胞生存度、細胞増殖が増加し、細胞倍加時間が短縮することを示す。
【0104】
実施例3.APF培地2中でのバイアル解凍時のNS0ヌル細胞株の細胞倍加時間
異種タンパク質を形質導入していないNS0細胞(すなわちNS0ヌル細胞株)は凍結保存状態であった。実施例1に記載のとおり、凍結NS0ヌル細胞株細胞を、様々な濃度のN-アセチルシステイン(NAC)を添加した動物性タンパク質不含(APF)培地(すなわちAPF培地2)に解凍し、指数増殖期中の生細胞密度を、平均細胞倍加時間を算出するために用いた。
【0105】
図6は、凍結保存から解凍される細胞における、対照培地(NACを含まないAPF培地2)中およびN-アセチルシステインを3つの漸増濃度で添加したAPF培地中でのNS0ヌル細胞株の細胞倍加時間を示す。実施例1および2で報告した結果と同様、0.5mM~1.5mMのNAC(0.5mM、1.0mMまたは1.5mMのNAC)の添加により、バイアル解凍時での細胞倍加時間が、対照培地中で解凍したNS0ヌル細胞株細胞(67.8時間)と比べて短縮し(各々、36.8時間、38.4時間および57.9時間)、0.5mMおよび1.0mMがバイアル解凍時での細胞倍加時間の最大の短縮を示した。
【0106】
これらの結果は、実施例1および2でまとめた結果を総合すれば、N-アセチルシステインを0.5mM、1.0mM、1.5mM、2.0mM、および2.5mM(例えば約0.5mM~約2.5mM)の濃度で添加した3つの異なる培地中で解凍した3つのNS0細胞株が、バイアル解凍時、対照培地中で解凍したNS0細胞と比べて、細胞生存度、細胞増殖の増加および細胞倍加時間の短縮を一貫して示したことを示す。
【0107】
実施例4.APF培地1および2中での細胞増殖中のNS0細胞株1の細胞倍加時間
抗IL-9モノクローナル抗体を発現するNS0細胞(すなわちNS0細胞株1)を、動物性タンパク質不含(APF)培地(すなわちAPF培地1またはAPF培地2)中で培養した。実施例1に記載のバイアル解凍試験で用いた細胞を、同じ培地(様々な濃度のN-アセチルシステインを添加したAPF培地1またはAPF培地2)に分けて、後の継代において継代間で一貫した倍加時間が得られるまで回復させておいた。実施例1に記載のとおり、回復後の指数増殖期中の生細胞密度を、平均細胞倍加時間を算出するために用いた。
【0108】
図7および表2は、対照培地(NACを含まないAPF培地1)中およびN-アセチルシステインを3つの漸増濃度で添加したAPF培地1中での細胞増殖中のNS0細胞株1の細胞倍加時間を示す。1.5mM~2.0mM(1.5mMまたは2.0mM)のNACの添加により、対照培地中で培養したNS0細胞株1細胞と比べて、細胞増殖中の平均細胞倍加時間が短縮した。エラーバーは、平均倍加時間の1標準偏差(1S.D.)を表す。
【0109】
【0110】
図8および表3は、対照培地(NACを含まないAPF培地2)中およびN-アセチルシステインを3つの漸増濃度で添加したAPF培地2中での増殖中のNS0細胞株1の細胞倍加時間を示す。APF培地1で認められた結果と同様、1.5mM~2.5mMのNAC(1.5mM、2.0mMまたは2.5mMのNAC)の添加により、増殖中の平均細胞倍加時間が、対照培地中で培養したNS0細胞株1細胞と比べて短縮した。エラーバーは、平均倍加時間の1標準偏差(1S.D.)を表す。
【0111】
【0112】
これらの実験は、NS0細胞が増殖している間でのN-アセチルシステイン(約1.5mM~約2.5mM;または約1.5mM、約2.0mMまたは約2.5mMのNAC)の添加により、細胞生存度、細胞増殖が増加し、細胞倍加時間が短縮することを示す。さらに、1.5mMおよび2.0mMのN-アセチルシステイン濃度により、2つの異なる培地中で細胞増殖中のNS0細胞株1細胞の細胞生存度、細胞増殖が一貫して増加し、細胞倍加時間が短縮した。
【0113】
実施例5.APF培地1、APF培地2およびCDハイブリドーマ培地中での細胞増殖中のNS0細胞株2の細胞倍加時間
モノクローナル抗体(すなわち、BAK502G9、抗IL-13抗体)を発現するNS0細胞(すなわちNS0細胞株2)を、動物性タンパク質不含(APF)培地(すなわち、APF培地1、APF培地2またはコレステロール(1×Invitrogen Cholesterol Lipid Concentrate)を添加したCDハイブリドーマ培地(Gibco))中で培養した。実施例2に記載のバイアル解凍試験で用いた細胞を、様々な濃度のN-アセチルシステインを添加した同じ培地(APF培地1、APF培地2またはCDハイブリドーマ培地+コレステロール)に分けて、後の継代において継代間で一貫した倍加時間が得られるまで回復させておいた。実施例1に記載のとおり、回復後の指数増殖期中の生細胞密度を、平均細胞倍加時間を算出するために用いた。
【0114】
図9および表4は、対照培地(NACを含まないAPF培地1)およびN-アセチルシステインを3つの漸増濃度で添加したAPF培地1中での増殖中のNS0細胞株2の細胞倍加時間を示す。0.5mM~2.5mMのNAC(0.5mM、1.0mMまたは2.5mM)の添加により、増殖中の平均細胞倍加時間が、対照培地中で培養したNS0細胞株2細胞と比べて短縮し、1.0mMおよび2.5mMのNACが増殖中での細胞倍加時間の最大の短縮を示した。エラーバーは、平均倍加時間の1標準偏差(1S.D.)を表す。
【0115】
【0116】
図10および表5は、対照培地(NACを含まないAPF培地2)中およびN-アセチルシステインを3つの漸増濃度で添加したAPF培地2中での増殖中のNS0細胞株2の細胞倍加時間を示す。APF培地1で認められた結果と同様、0.5mM~2.0mMのNAC(0.5mM、1.0mM、または2.0mM)の添加により、増殖中の平均細胞倍加時間が、対照培地中で培養したNS0細胞株2細胞と比べて短縮した。エラーバーは、平均倍加時間の1標準偏差(1S.D.)を表す。
【0117】
【0118】
図11および表6は、対照培地(NACを含まない、1×Invitrogen Cholesterol Lipid Concentrateを添加したCDハイブリドーマ培地(Gibco))中および3つの漸増濃度のN-アセチルシステインを含有する対照培地中での細胞増殖中のNS0細胞株2の細胞倍加時間を示す。APF培地1およびAPF培地2で認められた結果と同様、1.0mM~2.0mMのNACの添加により、平均細胞倍加時間が、対照培地中で培養したNS0細胞株2細胞と比べて短縮した。エラーバーは、平均倍加時間の1標準偏差(1S.D.)を表す。
【0119】
【0120】
これらの実験は、N-アセチルシステイン(約0.5mM~約2.5mM;または約0.5mM、約1.0mM、約2.0mMまたは約2.5mMのNAC)の、増殖中のNS0細胞の細胞培地への添加により、細胞生存度、細胞増殖が増加し、細胞倍加時間が短縮することを示す。
【0121】
実施例6.APF培地2中での細胞増殖中のNS0ヌル細胞株の細胞倍加時間
異種タンパク質を形質導入していないNS0細胞(すなわちNS0ヌル細胞株)を、動物性タンパク質不含(APF)培地(すなわちAPF培地2)中で培養した。実施例3に記載のバイアル解凍試験で用いた細胞を、同じ培地(様々な濃度のN-アセチルシステインを添加したAPF培地2)に分けて、後の継代において継代間で一貫した倍加時間が得られるまで回復させておいた。実施例1に記載のとおり、回復後の指数増殖期中の生細胞密度を、平均細胞倍加時間を算出するために用いた。
【0122】
図12および表7は、対照培地(NACを含まないAPF培地2)中およびN-アセチルシステインを3つの漸増濃度で添加したAPF培地2中での増殖中のNS0ヌル細胞株の細胞倍加時間を示す。0.5mM~1.5mMのNAC(0.5mM.1.0mMまたは1.5mMのNAC)の添加により、増殖中の細胞倍加時間が、対照培地中で培養したヌル細胞株細胞と比べて短縮した。エラーバーは、平均倍加時間の1標準偏差(1S.D.)を表す。
【0123】
これらの結果は、実施例4および5にまとめた結果を総合すれば、N-アセチルシステインを0.5mM、1.0mM、1.5mM、および2.0mM(例えば、約0.5mM~約2.0mM)の濃度で添加した3つの異なるNS0培地中で培養した3つのNS0細胞株が、対照培地中で解凍したNS0細胞と比べて、細胞増殖中、一貫して、細胞生存度、細胞増殖が増加し、かつ細胞の細胞倍加時間が短縮していたことを示す。
【0124】
【0125】
均等物
前述の記載された明細書は、当業者が本実施形態を実施することを可能にするのに十分であるように考慮されている。前述の説明および実施例は、特定の実施形態を詳述し、かつ発明者によって熟慮されたベストモードを記述する。しかし、前述をいかに詳細にテキストで表示し得るとしても、本実施形態を多くの方法で実施することができ、かつ特許請求の範囲がその任意の均等物を含むことは理解されるであろう。
【0126】
本明細書で用いられるとき、約という用語は、明示的に示されるか否かに無関係に、例えば、総数、分数、および百分率を含む数値を指す。約という用語は、一般に、当業者が列挙される値に等価である(例えば同じ機能または結果を有する)と考える場合の数値範囲(例えば列挙される値の+/-5%)を指す。場合によっては、約という用語は、最も近い重要な数字に丸められる数値を含んでもよい。
【0127】
本願中に引用されるあらゆる出版物、特許、特許出願、および/または他の文書は、個別の出版物、特許、特許出願、および/または他の文書の各々が、あらゆる目的で参照により援用されるように個別に示されるのと同程度に、あらゆる目的でそれら全体が参照により援用される。
前記細胞培地が、炭素源、必須および非必須アミノ酸源、ビタミン、無機塩、微量金属、pH緩衝剤、界面活性剤、抗酸化剤、脂質、およびコレステロールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
ここで例示的な本実施形態に対する参照が詳細になされることになり、その例が添付の図面で図示される。考えられるあらゆる場合に、同じ参照番号が、同一または類似部分を指すように図面全体を通して用いられることになる。他の実施形態は、本明細書に開示される明細書および実践を考慮すれば、当業者に明らかになるであろう。本実施形態は、以下の実施例においてさらに説明される。これらの実施例は、特許請求の範囲の範囲を限定しないばかりか、特定の実施形態を明示するのに役立つ。明細書および実施例があくまで例示的なものとして考慮され、真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示されることが意図されている。
例えば、本発明は以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]a.細胞増殖を支持するのに十分な、N-アセチルシステインを含む細胞培地を提供するステップと;
b.NS0細胞である細胞を前記細胞培地中で培養するステップと、
を含む、細胞培養方法。
[実施形態2]a.細胞増殖を支持するのに十分な、N-アセチルシステインを含む細胞培地を提供するステップと;
b.NS0細胞である細胞を前記細胞培地中で培養するステップと、
を含む、細胞生存度を増加させる方法。
[実施形態3]a.細胞増殖を支持するのに十分な、N-アセチルシステインを含む細胞培地を提供するステップと;
b.NS0細胞である細胞を前記細胞培地中で培養するステップと、
を含む、細胞増殖速度を増加させる方法。
[実施形態4]a.細胞増殖を支持するのに十分な、N-アセチルシステインを含む細胞培地を提供するステップと;
b.NS0細胞である細胞を前記細胞培地中で培養するステップと、
を含む、細胞倍加時間を短縮する方法。
[実施形態5]前記細胞が凍結保存から解凍される、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
[実施形態6]前記細胞が増殖期にある、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
[実施形態7]前記細胞培地が無血清および動物性タンパク質不含培地である、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
[実施形態8]前記細胞培地が合成培地である、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
[実施形態9]前記培地が脂質を含む、実施形態1~8のいずれかに記載の方法。
[実施形態10]前記細胞培地が、炭素源、必須および非必須アミノ酸源、ビタミン、無機塩、微量金属、pH緩衝剤、界面活性剤、抗酸化剤、脂質、およびコレステロールを含む、実施形態1~9のいずれかに記載の方法。
[実施形態11]前記細胞培地が、N-アセチルシステインを0.25mM~3mMの濃度で含む、実施形態1~10のいずれかに記載の方法。
[実施形態12]前記細胞培地が、N-アセチルシステインを0.5~2.5mMの濃度で含む、実施形態1~11のいずれかに記載の方法。
[実施形態13]前記細胞培地が、N-アセチルシステインを1.0~1.5mMの濃度で含む、実施形態1~12のいずれかに記載の方法。
[実施形態14]前記細胞培地が、N-アセチルシステインを1mMまたは1.5mMの濃度で含む、実施形態1~13のいずれかに記載の方法。
[実施形態15]前記細胞培地がイーストレートを含む、実施形態1~14のいずれかに記載の方法。
[実施形態16]前記細胞培地が1g/Lのイーストレートを含む、実施形態15に記載の方法。
[実施形態17]前記平均倍加時間が、N-アセチルシステインを排除した対照培地での細胞培養の場合よりも短い、実施形態1~16のいずれかに記載の方法。
[実施形態18]前記平均倍加時間が、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて少なくとも10%短縮する、実施形態17に記載の方法。
[実施形態19]前記平均倍加時間が、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて少なくとも15%短縮する、実施形態17に記載の方法。
[実施形態20]前記平均倍加時間が、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて少なくとも20%短縮する、実施形態17に記載の方法。
[実施形態21]前記平均倍加時間が、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて少なくとも25%短縮する、実施形態17に記載の方法。
[実施形態22]前記平均倍加時間が、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて少なくとも50%短縮する、実施形態17に記載の方法。
[実施形態23]前記平均細胞倍加時間が60時間以下である、実施形態17に記載の方法。
[実施形態24]前記平均倍加時間が42時間以下である、実施形態17に記載の方法。
[実施形態25]前記平均倍加時間が34時間以下である、実施形態17に記載の方法。
[実施形態26]前記平均倍加時間が30時間以下である、実施形態17に記載の方法。
[実施形態27]前記平均倍加時間が29時間以下である、実施形態17に記載の方法。
[実施形態28]前記細胞生存度が、N-アセチルシステインを排除した対照培地での細胞培養に対して増加する、実施形態1~27のいずれかに記載の方法。
[実施形態29]前記細胞生存度が、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて少なくとも5%増加する、実施形態28に記載の方法。
[実施形態30]前記細胞生存度が、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて少なくとも7%増加する、実施形態28に記載の方法。
[実施形態31]前記細胞生存度が、N-アセチルシステインを含まない細胞培地と比べて少なくとも10%増加する、実施形態28に記載の方法。
[実施形態32]前記細胞生存度が少なくとも90%である、実施形態28に記載の方法。
[実施形態33]前記細胞生存度が少なくとも92%である、実施形態28に記載の方法。
[実施形態34]前記細胞生存度が少なくとも93%である、実施形態28に記載の方法。
[実施形態35]前記細胞が異種タンパク質を発現しない、実施形態1~34のいずれかに記載の方法。
[実施形態36]前記細胞が異種タンパク質を発現する、実施形態1~34のいずれかに記載の方法。
[実施形態37]前記細胞が異種核酸で形質転換される、実施形態1~34および36のいずれかに記載の方法。
[実施形態38]前記異種核酸が、cDNA、ベクター、プラスミド、プロモーターに作動可能に連結された核酸、および/または前記ゲノム中に組み込まれる核酸である、実施形態37に記載の方法。
[実施形態39]前記異種タンパク質が一過性に発現される、実施形態36に記載の方法。
[実施形態40]前記異種タンパク質が安定に発現される、実施形態36に記載の方法。
[実施形態41]前記異種タンパク質が抗体またはその抗原結合断片である、実施形態36、39、または40のいずれかに記載の方法。
[実施形態42]前記抗体またはその抗原結合断片がIL-13抗体である、実施形態41に記載の方法。
[実施形態43]前記抗体がBAK502G9またはその抗原結合断片である、実施形態42に記載の方法。
[実施形態44]前記抗体または抗原結合断片が、配列番号1、9、17、または25のいずれか1つに対して少なくとも90%同一である配列を含む重鎖可変領域、および配列番号2、10、18、または26のいずれか1つに対して少なくとも90%同一である配列を含む軽鎖可変領域を有する、実施形態42に記載の方法。
[実施形態45]前記抗体または抗原結合断片が、
i.配列番号3の重鎖CDR1、配列番号4の重鎖CDR2、配列番号5の重鎖CDR3、配列番号6の軽鎖CDR1、配列番号7の軽鎖CDR2、配列番号8の軽鎖CDR3;
ii.配列番号11の重鎖CDR1、配列番号12の重鎖CDR2、配列番号13の重鎖CDR3、配列番号14の軽鎖CDR1、配列番号15の軽鎖CDR2、配列番号16の軽鎖CDR3;
iii.配列番号19の重鎖CDR1、配列番号20の重鎖CDR2、配列番号21の重鎖CDR3、配列番号22の軽鎖CDR1、配列番号23の軽鎖CDR2、配列番号24の軽鎖CDR3;
iv.配列番号27の重鎖CDR1、配列番号28の重鎖CDR2、配列番号29の重鎖CDR3、配列番号30の軽鎖CDR1、配列番号31の軽鎖CDR2、配列番号32の軽鎖CDR3;
から選択されるCDRのセット
を含む、実施形態42に記載の方法。
[実施形態46]N-アセチルシステイン、炭水化物源、アミノ酸源、およびコレステロール源を含む細胞培地。
[実施形態47]前記炭水化物源および前記アミノ酸源が異なる、実施形態46に記載の細胞培地。
[実施形態48]前記細胞培地が無血清および動物性タンパク質不含培地である、実施形態46~47のいずれかに記載の細胞培地。
[実施形態49]前記細胞培地が合成培地である、実施形態46~47のいずれかに記載の細胞培地。
[実施形態50]前記培地が脂質をさらに含む、実施形態46~49のいずれかに記載の細胞培地。
[実施形態51]前記細胞培地が、N-アセチルシステインを0.25mM~3mMの濃度で含む、実施形態46~50のいずれかに記載の細胞培地。
[実施形態52]前記細胞培地が、N-アセチルシステインを0.5~2.5mMの濃度で含む、実施形態46~50のいずれかに記載の細胞培地。
[実施形態53]前記細胞培地が、N-アセチルシステインを1.0~1.5mMの濃度で含む、実施形態46~50のいずれかに記載の細胞培地。
[実施形態54]前記細胞培地が、N-アセチルシステインを1mMまたは1.5mMの濃度で含む、実施形態46~50のいずれかに記載の細胞培地。
[実施形態55]前記細胞培地がイーストレートをさらに含む、実施形態46~54のいずれかに記載の細胞培地。
[実施形態56]前記細胞培地が1g/Lのイーストレートを含む、実施形態55に記載の細胞培地。