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特開2022-46654γ-ケトアルデヒドスカベンジャーによるアテローム性動脈硬化症の治療方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046654
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】γ-ケトアルデヒドスカベンジャーによるアテローム性動脈硬化症の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20220315BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
A61K31/137
A61K31/44
A61P9/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211251
(22)【出願日】2021-12-24
(62)【分割の表示】P 2019558578の分割
【原出願日】2018-04-27
(31)【優先権主張番号】62/491,225
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511183973
【氏名又は名称】ヴァンダービルト ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】VANDERBILT UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】305 Kirkland Hall,2201 West End Avenue,Nashville, Tennessee 37240, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】リントン,マクレー
(72)【発明者】
【氏名】オーツ,ジョン エー.
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィーズ,ショーン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ セカンド,エル.ジャクソン
(72)【発明者】
【氏名】アマーナス,ベンカタラマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤンシー,パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】タオ,ファン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アテローム性動脈硬化症または動脈のプラーク蓄積、心臓発作、脳卒中および末梢血管疾患の根本原因を治療および予防する分野に関し、より具体的には反応性アルデヒドを制御することによりアテローム性動脈硬化症および心血管事象の発症を治療および予防する方法を提供する。
【解決手段】有効なガンマ-ケトアルデヒドスカベンジング量のガンマ-ケトアルデヒドスカベンジャー化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む、アテローム性動脈硬化症の治療方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の少なくとも1つのγ-KAスカベンジャー化合物をそれを必要とする患者に投与することにより、アテローム性動脈硬化症を治療するか、またはアテローム性動脈硬化症の進行を予防する方法。
【請求項2】
次の式:
【化1】
(式中:
RはNまたはCであり;
R2は独立してH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR2、R3およびR4で置換されていてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR5と共に環化して置換または非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R3はH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2またはR5と共に環化して置換もしくは非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R4はH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR5と共に環化して置換または非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R5は結合手、H、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR4と共に環化して、置換もしくは非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい)の化合物ならびにそのステレオアイソマーおよびアナログを、それを必要とする患者に投与することを含むアテローム性動脈硬化症を治療、予防、または寛解する方法。
【請求項3】
次の式:
【化2】
(式中:
RはNまたはCであり;
R2は独立してH、置換または非置換のアルキルであり;
R3はH、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R4はH、置換または非置換のアルキル、カルボキシルである。ただし、RがN、R4がH、R2がCH3の場合、R2は-CH2-OHではない。)の化合物ならびにそのステレオアイソマーおよびアナログを、それを必要とする患者に投与することを含むアテローム性動脈硬化症を治療、予防、または寛解する方法。
【請求項4】
化合物が次の式
【化3】
の化合物またはそのγ-KAスカベンジングアナログである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
化合物が次の式
【化4】
の化合物またはそのγ-KAスカベンジングアナログである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
化合物が次の式
【化5】
の化合物またはそのγ-KAスカベンジングアナログである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
化合物が次の式
【化6】
の化合物またはそのγ-KAスカベンジングアナログである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
次の式:
【化7】
(式中:
RはNまたはCであり;
R2は独立してH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR2、R3およびR4で置換されていてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR5と共に環化して置換または非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R3はH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2またはR5と共に環化して置換もしくは非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R4はH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR5と共に環化して置換または非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R5は結合手、H、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR4と共に環化して、置換もしくは非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい)で表される構造を有する化合物ならびにそのステレオアイソマーおよびアナログまたは薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容される誘導体を薬学的に許容される担体と組み合わせることを含むアテローム性動脈硬化症を治療、予防、または寛解するための薬剤の製造方法。
【請求項9】
アテローム性動脈硬化症の治療、予防、または寛解に使用するための、次の式:
【化8】
(式中:
RはNまたはCであり;
R2は独立してH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR2、R3およびR4で置換されていてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR5と共に環化して置換または非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R3はH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2またはR5と共に環化して置換もしくは非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R4はH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR5と共に環化して置換または非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R5は結合手、H、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR4と共に環化して、置換もしくは非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい)で表される構造を有する化合物ならびにそのステレオアイソマーおよびアナログ。
【請求項10】
アテローム性動脈硬化症の治療、予防、または寛解に使用するための、次の式:
【化9】
(式中:
RはNまたはCであり;
R2は独立してH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR2、R3およびR4で置換されていてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR5と共に環化して置換または非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R3はH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2またはR5と共に環化して置換もしくは非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R4はH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR5と共に環化して置換または非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R5は結合手、H、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR4と共に環化して、置換もしくは非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい)で表される構造を持つ化合物ならびにそのステレオアイソマーおよびアナログと薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の補助
本発明は、国立衛生研究所によって授与されたHL116263の下での政府の支援によりなされた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して炎症を治療および予防する分野に関し、より具体的には、イソケタールおよびニューロケタールを制御する分野に関する。
【0003】
本発明はまた、アテローム性動脈硬化症または動脈のプラーク蓄積、心臓発作、脳卒中および末梢血管疾患の根本原因を治療および予防する分野、より具体的には反応性アルデヒドを制御することによりアテローム性動脈硬化症および心血管事象の発症を治療および予防する分野に関する。マロンジアルデヒド(MDA)、イソケタール、ニューロケタール、およびそれらがリポタンパク質(LDLおよびHDL)および動脈壁に与える損傷を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
脂質過酸化は、酸化ストレスと炎症を引き起こし、アテローム性動脈硬化症および心血管事象の病因を増進する。アルデヒドスカベンジャーである2-ヒドロキシベンジルアミン(2-HOBA)(サリチルアミン)のアテローム性動脈硬化症の発症を防ぐ能力は、16週間にわたって西洋食を与えられたLdlr-/-マウスで検査した。ビヒクルまたは非反応性アナログである4-HOBAで治療したマウスと比較して、2-HOBA治療は、高コレステロール血症Ldlr-/-マウスのアテローム性動脈硬化症の発症を近位大動脈で31%、正面大動脈で60%減少させた。2-HOBAによる治療は血漿コレステロールレベルに影響を与えないが、HDL、LDL、およびアテローム性動脈硬化病変のアルデヒド含量の減少をもたらした。西洋食は、Ldlr-/-マウスにおける血漿マロンジアルデヒド(MDA)-apoAI付加体レベルを増加させた。重要なのは、2-HOBA治療によりMDA-apoAIの形成が減少し、マウスHDLの能力が増加して、ビヒクルまたは4-HOBAと比較してマクロファージのコレステロール蓄積が減少することである。また、2-HOBAはMDA-apoB付加体のin vivoでの形成を減少させ、LDL修飾中の2-HOBAによるスカベンジングはin vitroでのマクロファージコレステロールの蓄積を減少させた。さらに、2-HOBAは酸化ストレスに反応してマクロファージの死と炎症を減少させた。重要なことに、2-HOBA治療は、アテローム性動脈硬化病変TUNEL陽性細胞の数を72%減少させ、4-HOBAまたはビヒクルで治療したマウスと比較して、貪食された死細胞の数を増加させた。これにより、壊死性コアの69%(p <0.01)の減少とコラーゲン含量の増加(2.7倍)および線維性被膜の厚さ(2.1倍)によって証明されるように、2-HOBA治療マウスで安定したプラーク形成が促進された。本発明は、2-HOBAによるアルデヒドスカベンジングが、リポタンパク質に対する複数のアテローム形成抑制効果を有し、ネズミモデルにおけるアテローム性動脈硬化症を低減することを示している。したがって、本発明の一実施形態は、アテローム性動脈硬化性心血管疾患の予防および治療のための新規治療アプローチである。
【0005】
したがって、本発明の一態様は、次の式:
【化1】
(式中:
RはNまたはCであり;
R2は独立してH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR2、R3およびR4で置換されていてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR5と共に環化して置換または非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R3はH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2またはR5と共に環化して置換もしくは非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R4はH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR5と共に環化して置換または非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R5は結合手、H、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR4と共に環化して、置換もしくは非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい)の化合物ならびにそのステレオアイソマーおよびアナログを、それを必要とする患者に投与することを含むアテローム性動脈硬化症を治療、予防、または寛解する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図面の簡単な説明
図1A図1A~1Eは、本発明の一実施形態である2-HOBAが、高コレステロール血症Ldlr-/-マウス(家族性高コレステロール血症のモデル)のアテローム性動脈硬化症を減弱することを示している。8週間のLdlr-/-雌マウスを1g/mLの2-HOBAまたは1g/mLの4-HOBA(非反応性アナログ)または媒体(水)で2週間前処理し、その後マウスに高脂肪の西洋食を与えて16週間治療を継続した。(図1Aおよび図1C)代表的な画像は、近位大動脈起始部切片(図1A)および切開してピンで固定した(open-pinned)大動脈(図1C)におけるレッドオイルO染色を示している。(図1Bおよび図1D)大動脈起始部切片(図1B)および正面大動脈(図D)における平均のオイルレッドO染色可能病変領域の定量。N =グループあたり9または10、** p <0.01、*** p <0.001。(図1E)血漿総コレステロールおよびトリグリセリドレベル。N =グループあたり9または10。
図1B図1A~1Eは、本発明の一実施形態である2-HOBAが、高コレステロール血症Ldlr-/-マウス(家族性高コレステロール血症のモデル)のアテローム性動脈硬化症を減弱することを示している。8週間のLdlr-/-雌マウスを1g/mLの2-HOBAまたは1g/mLの4-HOBA(非反応性アナログ)または媒体(水)で2週間前処理し、その後マウスに高脂肪の西洋食を与えて16週間治療を継続した。(図1Aおよび図1C)代表的な画像は、近位大動脈起始部切片(図1A)および切開してピンで固定した(open-pinned)大動脈(図1C)におけるレッドオイルO染色を示している。(図1Bおよび図1D)大動脈起始部切片(図1B)および正面大動脈(図D)における平均のオイルレッドO染色可能病変領域の定量。N =グループあたり9または10、** p <0.01、*** p <0.001。(図1E)血漿総コレステロールおよびトリグリセリドレベル。N =グループあたり9または10。
図1C図1A~1Eは、本発明の一実施形態である2-HOBAが、高コレステロール血症Ldlr-/-マウス(家族性高コレステロール血症のモデル)のアテローム性動脈硬化症を減弱することを示している。8週間のLdlr-/-雌マウスを1g/mLの2-HOBAまたは1g/mLの4-HOBA(非反応性アナログ)または媒体(水)で2週間前処理し、その後マウスに高脂肪の西洋食を与えて16週間治療を継続した。(図1Aおよび図1C)代表的な画像は、近位大動脈起始部切片(図1A)および切開してピンで固定した(open-pinned)大動脈(図1C)におけるレッドオイルO染色を示している。(図1Bおよび図1D)大動脈起始部切片(図1B)および正面大動脈(図D)における平均のオイルレッドO染色可能病変領域の定量。N =グループあたり9または10、** p <0.01、*** p <0.001。(図1E)血漿総コレステロールおよびトリグリセリドレベル。N =グループあたり9または10。
図1D図1A~1Eは、本発明の一実施形態である2-HOBAが、高コレステロール血症Ldlr-/-マウス(家族性高コレステロール血症のモデル)のアテローム性動脈硬化症を減弱することを示している。8週間のLdlr-/-雌マウスを1g/mLの2-HOBAまたは1g/mLの4-HOBA(非反応性アナログ)または媒体(水)で2週間前処理し、その後マウスに高脂肪の西洋食を与えて16週間治療を継続した。(図1Aおよび図1C)代表的な画像は、近大動脈起始部切片(図1A)および切開してピンで固定した(open-pinned)大動脈(図1C)におけるレッドオイルO染色を示している。(図1Bおよび図1D)大動脈起始部切片(図1B)および正面大動脈(図D)における平均のオイルレッドO染色可能病変領域の定量。N =グループあたり9または10、** p <0.01、*** p <0.001。(図1E)血漿総コレステロールおよびトリグリセリドレベル。N =グループあたり9または10。
図1E図1A~1Eは、本発明の一実施形態である2-HOBAが、高コレステロール血症Ldlr-/-マウス(家族性高コレステロール血症のモデル)のアテローム性動脈硬化症を減弱することを示している。8週間のLdlr-/-雌マウスを1g/mLの2-HOBAまたは1g/mLの4-HOBA(非反応性アナログ)または媒体(水)で2週間前処理し、その後マウスに高脂肪の西洋食を与えて16週間治療を継続した。(図1Aおよび図1C)代表的な画像は、近位大動脈起始部切片(図1A)および切開してピンで固定した(open-pinned)大動脈(図1C)におけるレッドオイルO染色を示している。(図1Bおよび図1D)大動脈起始部切片(図1B)および正面大動脈(図D)における平均のオイルレッドO染色可能病変領域の定量。N =グループあたり9または10、** p <0.01、*** p <0.001。(図1E)血漿総コレステロールおよびトリグリセリドレベル。N =グループあたり9または10。
図2図2A~2Bは、2-HOBAがLdlr-/-マウスの近位大動脈アテローム性動脈硬化病変のMDA含有量を減少させることを示している。MDAは、抗MDA一次抗体と蛍光標識二次抗体を使用した免疫蛍光法によって検出された。核はHoechst(青)で対比染色された。
図2A】代表的な画像は、近位大動脈起始部切片のMDA染色(赤)を示している。
図2B】ImageJソフトウェアを使用した大動脈起始部切片の平均のMDA陽性病変領域の定量。データは平均±SEMとして表し、グループあたりN = 6、*** p <0.001。
図3A図3A~3Dは、2-HOBAがLdlr-/-マウスにおいて安定したアテローム性動脈硬化プラーク形成を促進することを示している。MassonのTrichrome染色を適用して、Ldlr-/-マウスの近位大動脈切片のアテローム性動脈硬化病変の安定性を分析した。(図3A)代表的な画像は、大動脈起始部切片におけるマッソンの三色染色を示している。コラーゲン含量(図3B)、線維性被膜の厚さ(図3C)、および壊死領域(図3D)をImageJソフトウェアを使用して定量化した。グループあたりN = 8。* p <0.05、スケールバー= 100μm。青はコラーゲン、赤は細胞質、黒は核を示す。
図3B図3A~3Dは、2-HOBAがLdlr-/-マウスにおいて安定したアテローム性動脈硬化プラーク形成を促進することを示している。MassonのTrichrome染色を適用して、Ldlr-/-マウスの近位大動脈切片のアテローム性動脈硬化病変の安定性を分析した。(図3A)代表的な画像は、大動脈起始部切片におけるマッソンの三色染色を示している。コラーゲン含量(図3B)、線維性被膜の厚さ(図3C)、および壊死領域(図3D)をImageJソフトウェアを使用して定量化した。グループあたりN = 8。* p <0.05、スケールバー= 100μm。青はコラーゲン、赤は細胞質、黒は核を示す。
図3C図3A~3Dは、2-HOBAがLdlr-/-マウスにおいて安定したアテローム性動脈硬化プラーク形成を促進することを示している。MassonのTrichrome染色を適用して、Ldlr-/-マウスの近位大動脈切片のアテローム性動脈硬化病変の安定性を分析した。(図3A)代表的な画像は、大動脈起始部切片におけるマッソンの三色染色を示している。コラーゲン含量(図3B)、線維性被膜の厚さ(図3C)、および壊死領域(図3D)をImageJソフトウェアを使用して定量化した。グループあたりN = 8。* p <0.05、スケールバー= 100μm。青はコラーゲン、赤は細胞質、黒は核を示す。
図3D図3A~3Dは、2-HOBAがLdlr-/-マウスにおいて安定したアテローム性動脈硬化プラーク形成を促進することを示している。MassonのTrichrome染色を適用して、Ldlr-/-マウスの近位大動脈切片のアテローム性動脈硬化病変の安定性を分析した。(図3A)代表的な画像は、大動脈起始部切片におけるマッソンの三色染色を示している。コラーゲン含量(図3B)、線維性被膜の厚さ(図3C)、および壊死領域(図3D)をImageJソフトウェアを使用して定量化した。グループあたりN = 8。* p <0.05、スケールバー= 100μm。青はコラーゲン、赤は細胞質、黒は核を示す。
図4図4A~4Dは、2-HOBAがLdlr-/-マウスのアテローム性動脈硬化病変の細胞死を防ぎ、エフェロサイトーシスを増加させることを示している。
図4A】代表的な画像は、近位大動脈切片のTUNEL染色(赤)で検出された死細胞を示している。マクロファージは抗マクロファージ一次抗体(緑)で検出され、核はHoechst(青)で対比染色された。
図4B】マクロファージ関連TUNEL染色を示すために高倍率で撮影された代表的な画像(黄色の矢印)および白い矢印は、マクロファージに関連しない遊離死細胞を示す。
図4C】近位大動脈切片のTUNEL陽性核の数の定量。
図4D】近位大動脈切片のマクロファージ関連TUNEL陽性細胞に対する遊離細胞を定量することにより、エフェロサイトーシスを調べた。データは、平均±SEMとして表されている(グループあたりN = 8)。スケールバー= 50μm、** p <0.01。
図5A図5A~5Hは、2-ヒドロキシベンジルアミンでのin vitro治療が、酸化ストレス誘発性の細胞アポトーシスと炎症を抑制することを示している。(図5Aおよび図5B)マウス大動脈内皮細胞(図5A)または初代マクロファージ(図5B)を250μMのH2O2単独または4-HOBAもしくは2-HOBAとともに24時間インキュベートした。その後、アネキシンV染色とフローサイトメトリによりアポトーシス細胞が検出された。(図5C、図5D、図5E、図5F、図5G、図5H)IL-1β、IL-6、およびTNF-αのmRNAレベルを、酸化LDL(図5C~図5E)または250μMのH2O2図5F~図5H)単独または4-HOBAもしくは2-HOBAのいずれかで24時間インキュベートした腹膜マクロファージにおいて、リアルタイムPCR法により分析した。(図5A~図5H)データは3つの独立した実験からの平均±SEMとして表し、*** p <0.001。
図5B図5A~5Hは、2-ヒドロキシベンジルアミンでのin vitro治療が、酸化ストレス誘発性の細胞アポトーシスと炎症を抑制することを示している。(図5Aおよび図5B)マウス大動脈内皮細胞(図5A)または初代マクロファージ(図5B)を250μMのH2O2単独または4-HOBAもしくは2-HOBAとともに24時間インキュベートした。その後、アネキシンV染色とフローサイトメトリによりアポトーシス細胞が検出された。(図5C、図5D、図5E、図5F、図5G、図5H)IL-1β、IL-6、およびTNF-αのmRNAレベルを、酸化LDL(図5C~図5E)または250μMのH2O2図5F~図5H)単独または4-HOBAもしくは2-HOBAのいずれかで24時間インキュベートした腹膜マクロファージにおいて、リアルタイムPCR法により分析した。(図5A~図5H)データは3つの独立した実験からの平均±SEMとして表し、*** p <0.001。
図5C図5A~5Hは、2-ヒドロキシベンジルアミンでのin vitro治療が、酸化ストレス誘発性の細胞アポトーシスと炎症を抑制することを示している。(図5Aおよび図5B)マウス大動脈内皮細胞(図5A)または初代マクロファージ(図5B)を250μMのH2O2単独または4-HOBAもしくは2-HOBAとともに24時間インキュベートした。その後、アネキシンV染色とフローサイトメトリによりアポトーシス細胞が検出された。(図5C、図5D、図5E、図5F、図5G、図5H)IL-1β、IL-6、およびTNF-αのmRNAレベルを、酸化LDL(図5C~図5E)または250μMのH2O2図5F~図5H)単独または4-HOBAもしくは2-HOBAのいずれかで24時間インキュベートした腹膜マクロファージにおいて、リアルタイムPCR法により分析した。(図5A~図5H)データは3つの独立した実験からの平均±SEMとして表し、*** p <0.001。
図5D図5A~5Hは、2-ヒドロキシベンジルアミンでのin vitro治療が、酸化ストレス誘発性の細胞アポトーシスと炎症を抑制することを示している。(図5Aおよび図5B)マウス大動脈内皮細胞(図5A)または初代マクロファージ(図5B)を250μMのH2O2単独または4-HOBAもしくは2-HOBAとともに24時間インキュベートした。その後、アネキシンV染色とフローサイトメトリによりアポトーシス細胞が検出された。(図5C、図5D、図5E、図5F、図5G、図5H)IL-1β、IL-6、およびTNF-αのmRNAレベルを、酸化LDL(図5C~図5E)または250μMのH2O2図5F~図5H)単独または4-HOBAもしくは2-HOBAのいずれかで24時間インキュベートした腹膜マクロファージにおいて、リアルタイムPCR法により分析した。(図5A~図5H)データは3つの独立した実験からの平均±SEMとして表し、*** p <0.001。
図5E図5A~5Hは、2-ヒドロキシベンジルアミンでのin vitro治療が、酸化ストレス誘発性の細胞アポトーシスと炎症を抑制することを示している。(図5Aおよび図5B)マウス大動脈内皮細胞(図5A)または初代マクロファージ(図5B)を250μMのH2O2単独または4-HOBAもしくは2-HOBAとともに24時間インキュベートした。その後、アネキシンV染色とフローサイトメトリによりアポトーシス細胞が検出された。(図5C、図5D、図5E、図5F、図5G、図5H)IL-1β、IL-6、およびTNF-αのmRNAレベルを、酸化LDL(図5C~図5E)または250μMのH2O2図5F~図5H)単独または4-HOBAもしくは2-HOBAのいずれかで24時間インキュベートした腹膜マクロファージにおいて、リアルタイムPCR法により分析した。(図5A~図5H)データは3つの独立した実験からの平均±SEMとして表し、*** p <0.001。
図5F図5A~5Hは、2-ヒドロキシベンジルアミンでのin vitro治療が、酸化ストレス誘発性の細胞アポトーシスと炎症を抑制することを示している。(図5Aおよび図5B)マウス大動脈内皮細胞(図5A)または初代マクロファージ(図5B)を250μMのH2O2単独または4-HOBAもしくは2-HOBAとともに24時間インキュベートした。その後、アネキシンV染色とフローサイトメトリによりアポトーシス細胞が検出された。(図5C、図5D、図5E、図5F、図5G、図5H)IL-1β、IL-6、およびTNF-αのmRNAレベルを、酸化LDL(図5C~図5E)または250μMのH2O2図5F~図5H)単独または4-HOBAもしくは2-HOBAのいずれかで24時間インキュベートした腹膜マクロファージにおいて、リアルタイムPCR法により分析した。(図5A~図5H)データは3つの独立した実験からの平均±SEMとして表し、*** p <0.001。
図5G図5A~5Hは、2-ヒドロキシベンジルアミンでのin vitro治療が、酸化ストレス誘発性の細胞アポトーシスと炎症を抑制することを示している。(図5Aおよび図5B)マウス大動脈内皮細胞(図5A)または初代マクロファージ(図5B)を250μMのH2O2単独または4-HOBAもしくは2-HOBAとともに24時間インキュベートした。その後、アネキシンV染色とフローサイトメトリによりアポトーシス細胞が検出された。(図5C、図5D、図5E、図5F、図5G、図5H)IL-1β、IL-6、およびTNF-αのmRNAレベルを、酸化LDL(図5C~図5E)または250μMのH2O2図5F~図5H)単独または4-HOBAもしくは2-HOBAのいずれかで24時間インキュベートした腹膜マクロファージにおいて、リアルタイムPCR法により分析した。(図5A~図5H)データは3つの独立した実験からの平均±SEMとして表し、*** p <0.001。
図5H図5A~5Hは、2-ヒドロキシベンジルアミンでのin vitro治療が、酸化ストレス誘発性の細胞アポトーシスと炎症を抑制することを示している。(図5Aおよび図5B)マウス大動脈内皮細胞(図5A)または初代マクロファージ(図5B)を250μMのH2O2単独または4-HOBAもしくは2-HOBAとともに24時間インキュベートした。その後、アネキシンV染色とフローサイトメトリによりアポトーシス細胞が検出された。(図5C、図5D、図5E、図5F、図5G、図5H)IL-1β、IL-6、およびTNF-αのmRNAレベルを、酸化LDL(図5C~図5E)または250μMのH2O2図5F~図5H)単独または4-HOBAもしくは2-HOBAのいずれかで24時間インキュベートした腹膜マクロファージにおいて、リアルタイムPCR法により分析した。(図5A~図5H)データは3つの独立した実験からの平均±SEMとして表し、*** p <0.001。
図6図6A~6Bは、LDLのMDA修飾に対する2-HOBAの効果を示す。
図6A】MDA-LDL付加体は、16週間西洋食を摂取し、2-HOBA、4-HOBA、またはビヒクルで処置されたLdlr-/-マウスでELISA法により測定された。N =グループごとに10、*** p <0.001。
図6B】LDLをin vitroでビヒクル単独または2-HOBAの存在下でMDAで修飾し、次いでLDLをマクロファージとともに24時間インキュベートし、細胞コレステロールを測定した。データは3つの独立した実験の代表例である。
図7図7A~7Gは、HDL機能に対する2-HOBAおよびHDL-MDA付加体形成の効果を示している。
図7A】MDA-HDL付加体の血漿レベルを、図6に記載のように処置したLdlr-/-マウスでELISA法により測定した。データは平均±SEMで表し(グループあたりN = 8)、*** p <0.001。
図7B】一次抗apoAI抗体を使用した免疫沈降後のマウス血漿中のapoAIおよびMDA-apoAIのウエスタン・ブロット。Ldlr-/-マウスを図6に記載されているように処置し、固形飼料食を接取したLdlr-/-マウスの血漿からのapoAIおよびMDA-apoAIを比較のために含めた。
図7C】ウェスタン・ブロット法によって検出されたMDA-apoAIの平均密度(人工単位)のImageJソフトウェアを使用した定量化(図7B)。
図7D】HDLを16週間西洋食を摂取したLdlr-/-マウスの血漿から単離し、2-HOBA、4-HOBAまたはビヒクルで処置した。コレステロール富化マクロファージをHDL(25μgタンパク質/ml)と24時間インキュベートし、細胞のコレステロール含量の減少率を測定した。HDL-MDA修飾のレベルをELISA法で分析した。データは平均±SEMとして表し、グループあたりN = 7、* p <0.05、** p <0.01。
図7E】漸増用量のMDAでヒトHDLを改変し、その後HDLがコレステロール富化マクロファージのコレステロール含有量を減少させる能力を測定した。データは3つの独立した実験の代表例である。
図7F】MDA-HDL付加物の血漿レベルは、LAの前後で対照またはFH(家族性高コレステロール血症)被験者においてELISA法により測定された。
図7G】LA 9前後での対照またはFH被験者(グループあたりn = 6)からのHDLのapoE-/-マクロファージのコレステロール含有量を減少させる能力。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の説明
本発明の一実施形態は、アテローム性動脈硬化症を治療する新規な方法である。
【0008】
本発明の別の実施形態は、本発明の少なくとも1つの化合物の投与によってアテローム性動脈硬化症を治療する方法である。
【0009】
別の実施形態は、哺乳動物(例えば、ヒト)におけるアテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化の発症を抑制する方法であり、抗アテローム性動脈硬化症または抗アテローム性動脈硬化の発症量の本明細書に記載の本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩を哺乳動物に投与することを含む。
【0010】
本発明の別の実施形態は、アテローム性動脈硬化症の予防的または治療的処置として使用するための化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0011】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物(例えば、ヒト)におけるアテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化の発症を抑制するための薬剤を調製するための、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用である。
【0012】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物例えば、ヒト)におけるアテローム性動脈硬化症の発症を促進するリポタンパク質(LDLおよびHDLを含む)の反応性アルデヒド媒介損傷を抑制するための薬剤を調製するための、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用である。
【0013】
「アテローム性動脈硬化の発症の抑制」とは、アテローム性動脈硬化プラークの抑制、予防、または退行により、動脈壁内のコレステロールの蓄積を特徴とするゆっくり進行する疾患であるアテローム性動脈硬化症の発症、進行および/または重症度の抑制を意味する。
【0014】
したがって、本発明は、哺乳動物に本明細書に記載の本発明の化合物または組成物の抗アテローム性動脈硬化症または抗アテローム性動脈硬化の発生量を投与すること、またはその薬学的に許容されるその塩を投与することを含む、哺乳動物(例えば、ヒト)におけるアテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症の発症を抑制する方法も提供する。
【0015】
心臓発作および脳卒中の根本的な原因であるアテローム性動脈硬化症は、産業界で最も一般的な死と障害の原因である。リポタンパク質および低レベルのHDLを含むアポリポタンパク質B(LDLおよびVLDL)のレベルの上昇は、アテローム性動脈硬化症のリスクを高める。HMG-CoAレダクターゼ阻害剤によるLDLの低下は、大規模な転帰試験で心臓発作と脳卒中のリスクを低下させることが示されているが、心血管事象のかなりの残存リスクがある。アテローム性動脈硬化症は、酸化ストレスが重要な役割を果たす慢性炎症性疾患である。リポタンパク質を含むapoBの酸化改変は、泡沫細胞の形成につながる内在化を促進する。さらに、酸化LDLは炎症、免疫細胞の活性化、および細胞毒性を誘発する。HDLは、コレステロール流出(efflux)の促進、LDL酸化の防止、内皮バリア機能の維持を含む複数の役割を介して、また細胞の酸化ストレスと炎症の最小化により、アテローム性動脈硬化症から保護する。HDL-C濃度は心血管疾患(CVD)に逆比例するが、最近の研究では、HDL機能のアッセイがCVDリスクの新しい独立したマーカーを提供することが示唆されている。HDLの酸化的修飾がその機能を損なうという証拠が増えてきており、研究は酸化されたHDLが実際にアテローム生成を促進することを示唆している。
【0016】
脂質過酸化中に、4-オキソ-ノネナール(4-ONE)マロンジアルデヒド(MDA)およびイソレブグランジン(IsoLG)を含む反応性の高いジカルボニルが形成される。これらの反応性脂質ジカルボニルは、DNA、タンパク質、およびリン脂質に共有結合し、リポタンパク質および細胞機能の変化を引き起こす。特に、反応性脂質ジカルボニルによる修飾は、アテローム性動脈硬化症に関連する炎症反応と毒性を促進する。本発明者らは、2-ヒドロキシルベンジルアミン(2-HOBA)を、IsoLGおよび密接に関連するジカルボニルと選択的に反応する反応性の高いアルデヒドスカベンジャーとして同定した。実際、本発明者らは、2-HOBAが、高血圧、酸化剤誘導性細胞毒性、神経変性および高頻度ペーシング誘導性アミロイドオリゴマー形成に関連する酸化ストレスから保護することを示した。反応性アルデヒドがアテローム発生に役割を果たすという証拠はあるが、これまでのところ、アテローム性動脈硬化症の発症に対するアルデヒドのスカベンジング効果は検討されていない。
【0017】
生体内での疾患プロセスに対する反応性脂質ジカルボニルの寄与を評価するための効果的な方策を特定することは困難である。食事性抗酸化物質を使用して活性酸素種(ROS)のレベルを下げるだけで、理論的には反応性脂質ジカルボニルの形成を抑制することができるが、アテローム性動脈硬化症心血管事象を防ぐための抗酸化物質の使用は、ほとんどの臨床転帰試験で有益性を示さないことが問題だと判明している。ビタミンCやビタミンEのような食事性抗酸化物質は、酸化傷害と脂質過酸化に比較的効果のない抑制因子である。実際、高コレステロール血症患者についての注意深い研究により、脂質過酸化を大幅に低減するために必要なビタミンEの用量は、ほとんどの臨床試験で通常使用されるものよりも大幅に多いことがわかった。さらに、脂質過酸化を抑制するのに必要な高用量の抗酸化物質は、細菌感染に対する保護や多くの細胞シグナル伝達経路を含む正常な生理機能においてROSが重要な役割を果たしている可能性が高いため、重大な悪影響に関連している。最後に、ROSの抑制は反応性脂質カルボニル種に加えて広範囲の酸化修飾高分子の形成を阻害するため、発見目的でいうと、抗酸化剤の使用は反応性脂質カルボニルの役割に関する情報をほとんど提供しない。
【0018】
抗酸化物質を利用したROSの広範な抑制への代替アプローチは、ROSレベルを変更せずに脂質ジカルボニル種と選択的に反応する小分子スカベンジャーを使用することである。これにより、脂質ジカルボニルが正常なROSシグナル伝達と機能を乱すことなく細胞高分子を修飾するのを防ぐ。2-ヒドロキシベンジルアミン(2-HOBA)(サリチルアミン)は、IsoLG、ONE、およびMDAなどの脂質ジカルボニルと迅速に反応するが、4-ヒドロキシノネナールなどの脂質モノカルボニルとは反応しない。2-HOBAアイソマー4-ヒドロキシベンジルアミン(4-HOBA)は、ジカルボニルスカベンジャーとしては効果がない。これらの化合物はどちらも経口で生物学的に利用可能であるため、in vivoでの脂質ジカルボニルスカベンジングの効果を調べるために使用できる。2-HOBAは、高血圧、酸化剤による細胞毒性、神経変性、高頻度ペーシングによるアミロイドオリゴマー形成に関連する酸化ストレスから保護する。反応性脂質ジカルボニルがアテローム発生に関与しているという証拠はあるが、アテローム性動脈硬化症の発症に対する脂質ジカルボニルのスカベンジング効果は、これまで検討されていない。
【0019】
本発明者らは、例えば2-HOBAを含む本発明の化合物による治療が、高コレステロール血症Ldlr-/-マウスにおけるアテローム性動脈硬化症の発症を有意に減衰させることを発見した。より重要なことには、本発明の化合物による治療は、病変コラーゲン含量の増加および線維性被膜の厚さによって証明されるように、病変細胞死および壊死性コア形成を阻害し、より安定したプラーク形成をもたらす。反応性アルデヒドのスカベンジングによる2-HOBA治療からのアテローム性動脈硬化症における減少と一致して、アテローム性動脈硬化病変のMDA含有量は、対照マウスに対して2-HOBA治療を受けたマウスでは著しく減少した。本発明者らはさらに、2-HOBA治療が血漿MDA-LDLおよびMDA-HDLの減少をもたらすことを示す。さらに、MDA-apoAI付加体の形成が減少し、重要なことに、2-HOBA治療により、マクロファージのコレステロール蓄積の減少においてより効率的なHDL機能が引き起こされた。したがって、2-HOBAを用いた反応性カルボニルのスカベンジングには、高コレステロール血症Ldlr-/-マウスのアテローム性動脈硬化症の発症を低減する能力に寄与する、複数の抗アテローム性治療効果がある。
【0020】
本発明の化合物の例には、式
【化2】
(式中:
RはNまたはCであり;
R2は独立してH、置換または非置換のアルキルであり;
R3はH、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R4はH、置換または非置換のアルキル、カルボキシルである);またはそのアナログから選択される化合物、およびその医薬塩、ならびに抗アテローム性動脈硬化剤としてのそれらの使用が含まれるが、それらに限定されない。
【0021】
本発明の化合物、組成物、物品、システム、装置および/または方法を開示し説明する前に、これら合成方法または薬剤は、当然に変化し得るので、そうでないと示されない限り、特定のものに制限されないことを理解すべきである。また、本明細書において使用される用語法が特定の観点のみを記述する目的であり、制限的であることを意図されていないことも理解すべきである。本明細書に記載のものに類似するか等価である任意の方法および材料を本発明の実施または試験に用いることができるが、ここでは例示の方法および材料を説明する。
【0022】
本明細書において言及される全ての刊行物は、当該刊行物が引用されている事項に関連する方法および/または材料を開示し説明するために、参照により本明細書中に組み込まれる。本明細書において言及される刊行物は、本願出願日前の開示に関してのみ提供されるにすぎない。本明細書において、本発明が先行発明のために当該刊行物に先行しているとする資格がないことを自認したように解釈されるものではない。更に、本明細書において提供される刊行物の刊行日は、実際の刊行日と異なることがあり、独立して確認する必要がある。
【0023】
本明細書および添付の請求の範囲において用いる場合、単数形は、その内容がそうでないことを明確に示していない限り、言及対象が複数であることも含む。よって、例えば、「官能基」、「アルキル」または「残基」への言及は、2または3以上の当該官能基、アルキルまたは残基の組合せも含む、といった具合である。
【0024】
範囲は、本明細書においては、「約」が付された或る特定の値からとしておよび/または「約」が付された他の特定の値までとして表現され得る。このような範囲が表現されているとき、更なる観点は当該或る特定の値からおよび/または当該他の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」を用いて近似値として表現されるとき、当該特定の値が更なる観点を構成するものと理解される。更に、範囲の各端点は、その他の端点に対しても、その他の端点から独立しても、有意であると理解される。また、本明細書に開示される幾つかの値が存在すること、および各値は、本明細書においては、当該値自体に加えて、「約」が付された当該特定の値としても開示されているものと理解される。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。2つの特定の単位の間の各単位もまた開示されているものと理解される。例えば、10および15が開示されている場合、11、12、13および14もまた開示されている。
【0025】
本明細書で用いる場合、用語「任意に有していてもよい~」または「任意に~していてもよい」は、その後に記載する事象または状況が生じても生じなくてもよいこと、並びに当該記載が前記事象または状況が生じる場合の例および生じない場合の例の両方を含むことを意味する。
【0026】
本明細書で用いる場合、用語「対象者」とは投与の標的をいう。本明細書に開示される方法の対象者は、脊椎動物(例えば、哺乳動物)、魚類、鳥類、爬虫類または両生類であり得る。よって、本明細書に開示される方法の対象者は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモットまたはげっ歯類であり得る。この用語は、特定の年齢も特定の性別も意味しない。よって、成体のおよび新生の対象者並びに胎児/胎仔が、雄性または雌性にかかわらず、包含されると意図されている。患者とは疾患または障害に罹患した対象者をいう。用語「患者」はヒトおよび獣医学的対象者を含む。
【0027】
本明細書で用いる場合、用語「治療」とは、疾患、病的状態または障害を治癒、寛解、安定化または予防する意図での患者の医学的管理をいう。この用語は、積極的治療、すなわち、疾患、病的状態または障害の改善に対して特異的に向けられた治療を含み、また、原因治療、すなわち、関連する疾患、病的状態または障害の原因の除去に向けられた治療も含む。加えて、この用語は、待期療法、すなわち、疾患、病的状態または障害の治癒より症状の軽減のために計画された治療;予防療法、すなわち、関連する疾患、病的状態または障害の最小化またはそれらの発症の部分的もしくは完全な阻止に向けられた治療;および支持治療、すなわち、関連する疾患、病的状態または障害の改善に向けられた他の特異的療法を補うために用いられる治療を含む。
【0028】
本明細書で用いる場合、用語「予防する」または「予防すること」とは、特に事前の作用により、何かの発生を防止すること、回避すること、取り除くこと、事前に措置すること、停止させることまたは妨げることをいう。低減する、阻害するまたは予防するが本明細書において使用される場合、具体的にそうでないと示されていない限り、他の2つの語の使用もまた、明確に開示されているものと理解される。本明細書において理解し得るように、治療および予防の定義は重複部分が存在する。
【0029】
本明細書で用いる場合、用語「診断される」は、当業者(例えば、医師)による健康診断を受け、本明細書において開示される化合物、組成物または方法により診断または治療することができる病的状態を有することが判明したことを意味する。本明細書で用いる場合、句「障害についての治療を必要としていると同定される」などとは、当該障害の治療の必要性に基づく対象者の選択をいう。例えば、対象者は、当業者による早期の診断に基づいて、障害(例えば、炎症に関連する障害)の治療の必要性を有していると同定され得、その後、当該障害について治療を受けることができる。同定は、1つの観点において、診断する人とは異なる人が行い得ることも企図されている。また、更なる観点において、施術は、その後に施術を行う者が行い得ることも企図されている。
【0030】
本明細書で用いる場合、用語「投与すること」および「投与」とは医薬調製物を対象者に提供する任意の方法をいう。このような方法は当業者に周知であり、経口投与、経皮投与、吸入投与、経鼻投与、局所投与、膣内投与、眼投与、耳内投与、脳内投与、直腸投与および非経口投与(注射可能な、例えば、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与および皮下投与を含む)を含むが、これらに限定されない。投与は連続的または間欠的であり得る。種々の観点において、調製物は、治療的に投与し得る;すなわち、既存の疾患または病的状態を治療するために投与され得る。更なる種々の観点において、調製物は予防的に投与し得る;すなわち、疾患または病的状態の予防のために投与され得る。
【0031】
本明細書で用いる場合、用語「有効量」とは、望ましくない状態に対して、所望の結果を達成するため、または或る効果を発揮するために十分である量をいう。例えば、「治療有効量」とは、望ましくない症状に対して、所望の治療結果を達成するためまたは或る効果を発揮するために十分であるが、有害な副作用を引き起こすには一般的に不十分である量をいう。任意の特定の患者についての具体的な治療有効用量レベルは、種々の因子(治療すべき障害および該障害の重篤度;用いる具体的組成物;患者の年齢、体重、健康一般、性別および食事;投与の回数;投与の経路;用いる具体的化合物の排泄速度;治療の継続期間;用いる具体的化合物と意図的に組み合わせて用いられるかまたは偶然に同時に投与される薬物などを含む、医療分野において周知の因子)に依存する。例えば、所望の治療効果の達成に必要なレベルより低いレベルの用量の化合物から始めて、所望の効果が達成するまで徐々に投薬量を増加させることは、当業者に周知である。所望であれば、効果的な日用量は投与目的で複数の用量に分割し得る。結果として、単回用量組成物は、そのような量または日用量となるようなその約数分量を含み得る。投薬量は、任意の配合禁忌の場合、個々の医師により調整され得る。投薬量は変化し得、1日に1回または2回以上の投薬で1日間または数日間投与され得る。ガイダンスは、所与の医薬品クラスの適切な投薬についての文献に見出すことができる。更なる種々の観点において、調製物は「予防有効量」;すなわち、疾患または病的状態の予防に効果的な量で投与され得る。
【0032】
本明細書で用いる場合、用語「薬学的に許容し得る担体」とは、滅菌の水性または非水性の溶液、分散物、懸濁物またはエマルジョン、および使用直前での滅菌の注射可能な溶液または分散物への再構成のための滅菌の粉体をいう。適切な水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例として、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの適切な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)および注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。適切な流動性は、例えば、コーディング剤(例えば、レシチン)の使用により、分散物の場合には必要な粒子サイズの維持および界面活性剤の使用により維持され得る。これら組成物はまた、補助剤(adjuvant)、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤を含有し得る。微生物の作用の予防は、種々の抗細菌および抗菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含ませることにより保証し得る。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを含ませることが望ましいこともある。注射可能な剤形の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含ませることにより生じ得る。注射可能なデポー剤形は、生分解性ポリマー、例えば、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)中に薬物のマイクロカプセルマトリクスを形成することにより製造される。薬物 対 ポリマーの比および用いる特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出速度は制御し得る。デポー型の注射可能な製剤はまた、体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を含ませることにより製造することもできる。この注射可能な製剤は、例えば、細菌保定フィルターでの濾過により、または滅菌水または他の滅菌の注射可能な媒体に使用直前に溶解もしくは分散させることができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことにより滅菌し得る。適切な不活性な担体として、糖、例えばラクトースを挙げることができる。望ましくは、活性成分の粒子の少なくとも95重量%が、0.01~10マイクロメーターの範囲の有効粒子サイズを有する。
【0033】
本明細書で用いる場合、用語「スカベンジャー」または「スカベンジング」とは、不純物または望まない反応生成物を除去または不活化するために投与され得る化学物質をいう。例えば、イソケタールは、タンパク質のリシル残基に対して特異的に、不可逆的に付加する。本発明のイソケタールスカベンジャーは、イソケタールがリシル残基に付加する前にイソケタールと反応する。したがって、本発明の化合物はイソケタールを「スカベンジング」することにより、イソケタールがタンパク質に付加することを予防する。
【0034】
本明細書で用いる場合、用語「置換(された)」は、有機化合物の許される置換基を全て含むものとする。1つの幅広い観点において、許される置換基として、有機化合物の非環式および環式の、分岐および非分岐の、炭素環式およびヘテロ環式並びに芳香族および非芳香族の置換基が挙げられる。例示的な置換基として、例えば下記のものが挙げられる。許される置換基は、適切な有機化合物について1または2以上の同じまたは異なるものであり得る。本開示の目的には、ヘテロ原子(例えば、窒素)は、水素置換基および/または本明細書に記載の有機化合物の任意の許される置換基(ヘテロ原子の価数を満足するもの)を有し得る。本開示は、有機化合物の許される置換基によって、如何なる様式でも制限されることを意図されていない。また、用語「置換」または「~で置換(された)」は、当該置換が置き換えられた原子および置換基の許される価数に従うこと、および置換が安定な化合物、例えば、(例えば、再配置、環化、除去などによる)変換を自発的に受けない化合物をもたらすことという暗黙の条件を含む。
【0035】
用語「アルキル」は、本明細書で用いる場合、1~24の炭素原子の分岐または非分岐の飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどである。アルキル基は環式または非環式であり得る。アルキル基は分岐または非分岐であり得る。アルキル基はまた置換または非置換であり得る。例えば、アルキル基は、1または2以上の本明細書に記載の基(任意に置換していてもよいアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ-オキソまたはチオールを含むが、これらに限定されない)で置換され得る。「低級アルキル」基は、1~6(例えば、1~4)の炭素原子を含むアルキル基である。
【0036】
本明細書を通じて「アルキル」は、一般に、非置換アルキル基および置換アルキル基の両方を指称するために用いられる;しかしながら、置換アルキル基はまた、アルキル基の具体的置換基を特定することにより、本明細書において具体的に言及される。例えば、用語「ハロゲン化アルキル」は、1または2以上のハライド(例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素)で置換されたアルキル基を具体的に指す。用語「アルコキシアルキル」は、1または2以上の下記のようなアルコキシ基で置換されたアルキル基を具体的に指す。用語「アルキルアミノ」は、1または2以上の下記のアミノ基で置換されたアルキル基を具体的に指す。といった具合である。「アルキル」が或る1つの例で用いられ、具体的用語、例えば「アルキルアルコール」が別の或る1つの例で用いられる場合、用語「アルキル」も具体的用語、例えば「アルキルアルコール」を指すことを示唆すると意味していない。といった具合である。
【0037】
このルールは本明細書に記載の他の基にも適用される。すなわち、用語、例えば「シクロアルキル」は非置換および置換のシクロアルキル部分を指す一方、置換部分は、加えて、本明細書において具体的に特定され得る;例えば、特定の置換シクロアルキルは、例えば「アルキルシクロアルキル」を指し得る。同様に、置換アルコキシは、例えば「ハロゲン化アルコキシ」と具体的に指し得、特定の置換アルケニルは、例えば「アルケニルアルコール」を指し得る。といった具合である。またしても、一般的用語、例えば「シクロアルキル」および具体的用語、例えば「アルキルシクロアルキル」の使用は、当該一般的用語が当該具体的用語を含まないことを示唆すると意味していない。
【0038】
用語「シクロアルキル」は、本明細書で用いる場合、少なくとも3つの炭素原子から構成される非芳香族炭素ベースの環である。シクロアルキル基の例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボニルなど挙げられるが、これらに限定されない。用語「ヘテロシクロアルキル」は、上記のシクロアルキル基の1つタイプであり、その環の少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、ケイ素またはリンであるが、これらに限定されない)で置換されているときの用語「シクロアルキル」の意味に含まれる。シクロアルキル基およびヘテロシクロアルキル基は置換または非置換であり得る。シクロアルキル基およびヘテロシクロアルキル基は、1または2以上の本明細書に記載の基(任意に置換していてもよいアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ-オキソまたはチオールを含むが、これらに限定されない)で置換され得る。
【0039】
用語「ポリアルキレン基」は、本明細書で用いる場合、互いに連結した2または3以上のCH2基を有する基である。ポリアルキレン基は、式-(CH2)a-(式中、「a」は2~500の整数である)で表し得る。
【0040】
用語「アルコキシ」および「アルコキシル」は、本明細書で用いる場合、エーテル結合により結合したアルキルまたはシクロアルキル基を指す;すなわち、「アルコキシ」基は-OA1(式中、A1は上記のアルキルまたはシクロアルキルである)として定義し得る。「アルコキシ」はまたこのようなアルコキシ基のポリマーを含む;すなわち、アルコキシは、ポリエーテル、例えば、-OA1-OA2または-OA1-(OA2)a-OA3(式中、「a」は1~200の整数であり、A1、A2およびA3はアルキルおよび/またはシクロアルキル基である)であり得る。
【0041】
用語「アミン」または「アミノ」は、本明細書で用いる場合、式NA1A2A3 (式中、A1、A2およびA3は、独立して、水素または任意に置換していてもよい本明細書に記載のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリールもしくはヘテロアリール基であり得る)により表される。
【0042】
用語「ヒドロキシル」は、本明細書で用いる場合、式-OHにより表される。
【0043】
用語「ニトロ」は、本明細書で用いる場合、式-NO2により表される。
【0044】
用語「薬学的に許容され得る」は、生物学的にまたはその他の意味で望ましくないものでない材料、すなわち、望ましくない生物学的効果の許容し得ないレベルを引き起こさず、有害な様式で相互作用しない材料を記述する。
【0045】
上述のように、本発明の一実施形態は、γ-KAスカベンジャー、好ましくは本発明のγ-KAスカベンジャーを用いた治療によるアテローム性動脈硬化症の治療、予防、または寛解する方法である。
【0046】
本発明の実施形態は、次の式:
【化3】
(式中:
RはNまたはCであり;
R2は独立してH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR2、R3およびR4で置換されていてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR5と共に環化して置換または非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R3はH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2またはR5と共に環化して置換もしくは非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R4はH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR5と共に環化して置換または非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R5は結合手、H、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR4と共に環化して、置換もしくは非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい)の化合物ならびにそのステレオアイソマーおよびアナログおよび抗アテローム性動脈硬化剤としてのそれらの使用を含む。
【0047】
本発明の実施形態はまた、次の式:
【化4】
(式中:
R2は独立してH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR2、R3およびR4で置換されていてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR5と共に環化して置換または非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R3はH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2またはR5と共に環化して置換もしくは非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R4はH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR5と共に環化して置換または非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R5は結合手、H、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR4と共に環化して、置換もしくは非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい)の化合物ならびにそのステレオアイソマーおよびアナログおよび抗アテローム性動脈硬化剤としてのそれらの使用を含む。
【0048】
本発明の他の実施形態では、本発明の化合物の例には、次の式:
【化5】
(式中:
RはNまたはCであり;
R2は独立してH、置換または非置換のアルキルであり;
R3はH、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R4はH、置換または非置換のアルキル、カルボキシルである)の化合物ならびにそのステレオアイソマーおよびアナログまたはそのアナログから選択される化合物、およびその医薬塩、ならびに本明細書に記載の薬剤としてのその使用が含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
本発明の別の実施形態は、RがN、R4がH、R2がCH3である場合、R2が-CH2-OHではないという条件での、上記式またはそのアナログから選択される化合物、およびその医薬塩、ならびに抗アテローム性動脈硬化剤としてのそれらの使用である。
【0050】
化合物またはアナログは以下から選択できる:
【化6】
またはそのアナログ。
【0051】
化合物またはアナログは以下から選択することもできる:
【化7】
またはそのアナログ。
【0052】
化合物またはアナログは以下から選択することもできる:
【化8】
またはそのアナログ。
【0053】
化合物は以下から選択することもできる:
【化9】
またはそのアナログ。
【0054】
化合物は以下から選択することもできる:
【化10】
そのアナログ。
【0055】
本発明の別の実施形態は、アテローム性動脈硬化症の治療、予防、または寛解に使用するための化合物であり、この化合物は次の式
【化11】
(式中:
RはNまたはCであり;
R2は独立してH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR2、R3およびR4で置換されていてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR5と共に環化して置換または非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R3はH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2またはR5と共に環化して置換もしくは非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R4はH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR5と共に環化して置換または非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R5は結合手、H、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR4と共に環化して、置換もしくは非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい)で表される構造を有する化合物ならびにそのステレオアイソマーおよびアナログを含む。
【0056】
一態様では、本発明は、開示された化合物を含む医薬組成物に関する。すなわち、治療有効量の少なくとも1つの開示された化合物、または少なくとも1つの開示された方法の生成物、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供することができる。
【0057】
他の態様において、開示された医薬組成物は、有効成分として開示された化合物(その薬学的に許容される塩を含む)、薬学的に許容される担体、及び任意に他の治療成分または補助剤を含む。本組成物は、経口、直腸、局所、及び非経口(皮下、筋肉内、及び静脈内を含む)投与に適したものを含むが、いずれの場合においても最も適した経路は特定の宿主、ならびに有効成分が投与されているその症状の性質及び重症度に依存する。その医薬組成物は、単位剤形で都合よく提示され、そして薬学の分野で周知の方法のいずれかによって調製され得る。
【0058】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容される無毒性の塩基または酸から調製された塩をいう。本発明の化合物が酸性である場合、その対応する塩は、無機塩基及び有機塩基を含む薬学的に許容される無毒の塩基から従来通り調製することができる。このような無機塩基由来の塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅(第二及び第一)、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(第二及び第一)、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩を含む。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩が特に好ましい。薬学的に許容される有機非毒性塩基由来の塩には、一級、二級、及び三級アミンの塩、ならびに環状アミンならびに置換アミン、例えば天然及び合成置換アミンの塩が含まれる。塩を形成することができる他の薬学的に許容される有機非毒性塩基には、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどのイオン交換樹脂が含まれる。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される非毒性酸」は、無機酸、有機酸、およびそれらから調製される塩、例えば酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファ-スルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸などが含まれる。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、および酒石酸が好ましい。
【0060】
実際には、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩は、従来の医薬配合技術に従って医薬担体と緊密に混合して活性成分として組み合わせることができる。担体は、投与に望ましい製剤の形態、例えば経口または非経口(静脈内を含む)に応じて、多種多様な形態をとることができる。従って、本発明の医薬組成物は、それぞれ所定の量の活性成分を含有するカプセル剤、カシェ剤または錠剤などの経口投与に適した個別の単位として提供することができる。さらに、組成物は、粉末として、顆粒として、溶液として、水性液体中の懸濁液として、非水性液体として、水中油型エマルジョンとして、または油中水型液体エマルジョンとして提示することができる。上記の一般的な剤形に加えて、本発明の化合物及び/またはその薬学的に許容される塩はまた、制御された放出手段及び/また
は送達装置によって投与することができる。組成物は、任意の薬学的方法によって調製することができる。一般に、そのような方法は、活性成分を1つ以上の必要な成分を構成する担体と一緒にする工程を含む。一般に、組成物は、活性成分を液体担体または微粉固体担体またはその両方と均一かつ密接に混合することによって調製される。次いで製品を所望の外観に都合よく成形することができる。
【0061】
従って、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体、及び本発明の化合物、または本発明の化合物の薬学的に許容される塩を含むことができる。本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩はまた、1つ以上の他の治療上活性な化合物と組み合わせて医薬組成物中に含めることができる。使用される医薬担体は、例えば、固体、液体、または気体であり得る。固体担体の例には、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、及びステアリン酸が含まれる。液体担体の例は、糖シロップ、落花生油、オリーブ油、及び水である。気体担体の例には、二酸化炭素及び窒素が含まれる。
【0062】
経口剤形用の組成物を調製する際には、任意の都合のよい医薬媒体を使用することができる。例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤などを使用して、懸濁液、エリキシル剤及び溶液などの経口液体製剤を形成することができる;一方デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などのような担体を使用して、粉末、カプセル及び錠剤などの経口固形製剤を形成することができる。それらの投与の容易さのために、錠剤及びカプセル剤が好ましい経口投与単位であり、それにより固体の薬学的担体が使用される。場合により、錠剤は標準的な水性または非水性技術により被覆することができる。
【0063】
本発明の組成物を含有する錠剤は、場合により1種以上の補助成分または補助剤と共に圧縮または成形することにより製造することができる。圧縮錠剤は、場合により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性剤または分散剤と混合した、粉末または顆粒などの易流動性形態の活性成分を適切な機械で圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を、適切な機械で成形することによって製造することができる。
【0064】
本発明の医薬組成物は、有効成分としての本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩)、薬学的に許容される担体、及び任意に1つ以上の追加の治療薬または補助剤を含み得る。本組成物は、経口、直腸、局所、及び非経口(皮下、筋肉内、及び静脈内を含む)投与に適した組成物を含むが、いずれの場合においても最も適した経路は特定の宿主、ならびに有効成分が投与されている症状の性質及び重症度に依存する。医薬組成物は、単位剤形で都合よく提示され、そして薬学の分野で周知の方法のいずれかによって調製され得る。
【0065】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、水中の活性化合物の溶液または懸濁液として調製することができる。例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなどの適切な界面活性剤を含めることができる。分散液もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの油中混合物中で調製することができる。さらに、微生物の有害な増殖を防ぐために防腐剤を含めることができる。
【0066】
注射用途に適した本発明の医薬組成物は、無菌水溶液または分散液を含む。さらに、その組成物は、無菌注射用溶液または分散液のような即時調製用の無菌粉末の形態であり得る。全ての場合において、最終の注射形態は無菌でなければならず、容易な注射器使用可能性のために実際上流動性でなければならない。医薬組成物は製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならない;従って、好ましくは細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されるべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、植物油、及びそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒体であり得る。
【0067】
本発明の医薬組成物は、例えばエアロゾル剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、散粉剤、洗口剤、うがい薬などの局所使用に適した形態であり得る。さらに、その組成物は、経皮装置での使用に適した形態であり得る。これらの製剤は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を利用して、従来の加工方法によって調製することができる。一例として、親水性材料及び水を約5重量%から約10重量%の化合物と共に混合することによって、所望の粘稠度を有するクリームまたは軟膏が調製される。
【0068】
本発明の医薬組成物は、担体が固体である直腸投与に適した形態であり得る。混合物が単位用量坐剤を形成することが好ましい。適切な担体は、カカオバター及び当該分野で一般的に使用されている他の材料を含む。坐剤は、最初に組成物を軟化または溶融した担体と混合し、続いて金型中で冷却及び成形することによって都合よく形成することができる。
【0069】
前記の担体成分に加えて、上記の医薬製剤は必要に応じて、希釈剤、緩衝剤、香味剤、結合剤、界面活性剤、増粘剤、滑剤、保存剤(抗酸化剤を含む)などの1つ以上の追加の担体成分を含み得る。さらに、意図するレシピエントの血液と等張にするために、他の補助剤を製剤化するのに含めることができる。本発明の化合物及び/またはその薬学的に許容される塩を含有する組成物はまた、粉末または液体濃縮物の形態で調製することができる。
【0070】
本発明の化合物は、単独の活性薬剤として投与することができ、または例えばアテローム性動脈硬化症関連疾患などの様々な合併症を治療または予防するのに有用な1つ以上の他の薬剤と組み合わせて使用することができる。組み合わせとして投与される場合、治療薬は、同時にまたは異なる時間に投与される別個の組成物として製剤化することができ、または治療薬は単一の組成物として投与することができる。
【0071】
本明細書に示されるように、本発明の化合物は、固体形態(顆粒、粉末または坐剤を含む)または液体形態(例えば、溶液、懸濁液、またはエマルション)で構成され得る。それらは様々な溶液に適用でき、滅菌などの従来の製薬操作に供することができ、および/または防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤などの従来の補助剤を含むことができる。
【0072】
したがって、投与のために、本発明の化合物は、通常、示された投与経路に適した1つ以上の補助剤と組み合わされる。例えば、それらはラクトース、スクロース、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウムおよびカルシウム塩、アラビアゴム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリジン、および/またはポリビニルアルコールと混合してもよく、従来の投与のために錠剤化またはカプセル化されている。あるいは、生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、エタノール、トウモロコシ油、落花生油、綿実油、ゴマ油、トラガカントゴム、および/または様々な緩衝液に溶解してもよい。他の補助剤および投与様式は、製薬分野で周知である。担体または希釈剤は、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を単独でまたはワックスとともに、または当技術分野で周知の他の材料を含んでもよい。
【0073】
治療用途において、本発明の化合物は、所望の徴候(indication)を低減または抑制するのに十分な量で哺乳動物患者に投与され得る。この使用に効果的な量は、投与経路、徴候の段階と重症度、哺乳動物の一般的な健康状態、および処方医の判断を含むがこれらに限定されない要因に依存する。本発明の化合物は、広い用量範囲にわたって安全かつ有効である。しかしながら、実際に投与されるピリドキサミンの量は、上記の関連する状況を考慮して、医師によって決定されることが理解されよう。
【0074】
本発明の方法で使用するのに適した化合物の薬学的に許容される酸付加塩には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、亜リン酸などの非毒性無機酸から誘導される塩が含まれるのと同様、脂肪族モノカルボン酸およびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などの非毒性有機酸から誘導される塩も含まれる。したがって、このような塩には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、安息香酸メチル、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などが含まれる。また、アルギン酸塩などのアミノ酸およびグルコン酸塩、ガラクツロン酸塩、n-メチルグルタミンなどの塩も考えられる(例えば、Bergeら、J. Pharmaceutical Science、66:1-19(1977)を参照)。
【0075】
塩基性化合物の酸付加塩は、遊離塩基形態を十分な量の所望の酸と接触させて、従来の方法で塩を生成することにより調製される。遊離塩基形態は、塩形態を塩基と接触させ、従来の方法で遊離塩基を単離することにより再生され得る。遊離塩基形態は、極性溶媒への溶解性などの特定の物理的特性においてそれぞれの塩形態とは多少異なるが、そうでなければその塩は本発明の目的のためのそれぞれの遊離塩基と同等である。
【0076】
被験者、特にアテローム性動脈硬化症を発症するリスクが高い個人は、上記の化合物の1つ以上を投与することにより治療することができる。先に述べたように、正確な投与量は与えられる特定の化合物に依存し、当技術分野で周知の手順を使用して決定され、毒性と治療効果のバランスを取る。化合物を試験動物に与えて、アテローム性動脈硬化プラークの発生に対する効果を研究することもできる。これらの場合、投与量は毒性によってのみ制限される。抑制化合物は、剤形中の唯一の活性剤として投与されてもよく、またはそれらは他の薬物と組み合わされて全体としての有効性を改善してもよいことも認識されるべきである。
【0077】
したがって、本発明の別の実施形態は、アテローム性動脈硬化症の治療、予防、または寛解に使用するための組成物であり、この組成物は、次の式
【化12】
(式中:
RはNまたはCであり;
R2は独立してH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR2、R3およびR4で置換されていてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR5と共に環化して置換または非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R3はH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2またはR5と共に環化して置換もしくは非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R4はH、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR5と共に環化して置換または非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい;
R5は結合手、H、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、CF3、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C3-10シクロアルキル、1または2以上のR4、R2およびR3で置換していてもいなくてもよいC、O、SもしくはNを含有するC3-8員環であり、1または2以上のR2、R3もしくはR4と共に環化して、置換もしくは非置換の、C、O、SもしくはNを含有するC3-8員環を形成してもよい)によって表される構造を有する化合物およびそのステレオアイソマーならびにアナログ、および薬学的に許容される担体を含む。
【実施例0078】
実施例
上記の例に加えて、以下の例は本発明の特定の実施形態を実証する。すべての例は、本発明の特定の態様の例示であると解釈されるべきであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0079】
略語:2-HOBA、2-ヒドロキシベンジルアミン;4-HOBA、4-ヒドロキシベンジルアミン;MDA、マロンジアルデヒド;4-HNE、4-ヒドロキシノネナール;IsoLG、イソレブグランジン;HDL、高密度リポタンパク質;LDL、低密度リポタンパク質;LDLR、低密度リポタンパク質受容体;ApoAI、アポリポタンパク質AI;ApoB、アポリポタンパク質B;;ROS、活性酸素種;IL、インターロイキン。
【0080】
材料および方法:
マウス:C57BL/6バックグラウンドマウス上のLdlr-/-およびWTは、ジャクソン研究所から入手した。動物プロトコルは、ヴァンダービルト大学の施設内動物管理および使用委員会の規制に従って実施された。マウスは、固形飼料食または21%の乳脂肪と0.15%のコレステロール(Teklad)を含む西洋食で飼育された。8週齢の雌マウスを、ビヒクルのみ(水)で、または1g/Lの4-HOBAもしくは1g/Lの2-HOBAを含むビヒクルで前処理した。2週間後、マウスは治療を受け続け、高コレステロール血症とアテローム性動脈硬化症を誘発するために16週間西洋食を与えられた。
【0081】
細胞培養:腹腔マクロファージは、3%チオグリコール酸の注射から72時間後にマウスから単離し、前述のようにDMEM+10%ウシ胎児血清(FBS、Gibco)で維持した。ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)はLonzaから入手し、内皮細胞基礎培地-2と+1%FBSおよび必須成長因子(Lonza)で維持した。
【0082】
マウス血漿からのHDL分離およびマクロファージコレステロールを減少させるHDLの能力の測定:HDL精製キット(Cell BioLabs,Inc.)を使用して、製造業者のプロトコルに従ってマウス血漿からHDLを単離した。簡単に言えば、リポタンパク質およびHDLを含むapoBを硫酸デキストランで連続的に沈殿させた。次に、HDLを再懸濁して洗浄した。硫酸デキストランを除去した後、そのHDLをPBSに対して透析した。HDLがマクロファージのコレステロールを減少させる能力を測定するために、apoE-/-マクロファージは、100μgタンパク質/mlのアセチル化LDLを含むDMEMで48時間インキュベートすることによりコレステロールを強化した。次に、細胞を洗浄し、DMEM単独または25μg HDLタンパク質/mlとで24時間インキュベートした。記載されているように酵素コレステロールアッセイを使用して、HDLとのインキュベーションの前後に細胞コレステロールを測定した。
【0083】
MDA-LDL、MDA-HDL、およびMDA-ApoAIの測定:サンドイッチELISA法を使用して、製造業者の指示(Cell BioLabs,Inc.)に従って血漿MDA-LDLおよびMDA-HDLレベルを測定した。簡単に説明すると、単離されたLDLまたはHDLサンプルとMDA-HDL標準物質が抗MDAコーティングプレートに加えられ、ブロッキング後、そのサンプルはビオチン化抗apoBまたは抗ApoAI一次抗体とともにインキュベートされた。次に、サンプルをストレプトアビジン‐酵素コンジュゲートと1時間、基質溶液と15分間インキュベートした。反応を停止した後、光学密度(O.D.)を450 nmの波長で測定した。MDA-ApoAIは、ApoAIの免疫沈降およびウェスタン・ブロッティングにより、マウス血漿中に検出された。簡単に言えば、IP Lysis Buffer(Pierce)と0.5%プロテアーゼ阻害剤混合物(Sigma)450μLでマウス血漿50μlを調製し、マウスApoAI(Novus)に対するポリクローナル抗体10μgで免疫沈降した。次に、25μLの磁気ビーズ(Invitrogen)を加え、混合物を4°Cで1時間回転させながらインキュベートした。次に、磁気ビーズを回収し、3回洗浄し、β-メルカプトエタノールを含むSDS-PAGEサンプルバッファーをビーズに加えた。70°Cで5分間インキュベートした後、磁場を磁気分離ラック(New England)にかけ、上清をマウスApoAIまたはMDAの検出に使用した。ウェスタン・ブロッティングでは、30~60μgのタンパク質をNuPAGE Bis-Tris電気泳動(Invitrogen)で分離し、ニトロセルロース膜(Amersham Bioscience)に
転写した。膜は、ApoAI(Novus)またはMDA(Cell signalling)に特異的な一次ウサギ抗体と、蛍光標識IRDye 680(LI-COR)二次抗体でプローブされた。Odyssey 3.0定量化ソフトウェア(LI-COR)によりタンパク質を視覚化および定量化した。
【0084】
MDAによるHDLおよびLDLの修飾:MDAは、使用する直前にマロンカルボニルビス(ジメチルアセタール)の急速酸加水分解により記載の通り調製した。簡単に説明すると、20μLの1M HClを200μLのマロンカルボニルビス(ジメチルアセタール)に加え、混合物を室温で45分間インキュベートした。MDA濃度は、係数因子(coefficient fator)13、700 M-1 cm-1を使用して、245 nmの吸光度によって決定された。HDL(タンパク質10mg/mL)およびMDA(0、0.125 mM、0.25 mM、0.5 mM、1 mM)の漸増用量を、DTPA 100μMを含む50 mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)にて、37°Cで24時間インキュベートした。MDAを添加することにより反応を開始し、4℃でPBSに対するサンプルの透析により停止した。LDL(5 mg/mL)は、DTPA 100μMを含む50 mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)で、ビヒクルのみの存在下でMDA(10 mM)を用いて、または2-HOBAを用いて、37°Cで24時間in vitroで修飾した。MDAを添加することにより反応を開始し、4℃でPBSに対するサンプルの透析により停止した。そのLDLサンプルをマクロファージとともに24時間インキュベートし、記載されているように、細胞のコレステロール含有量を酵素コレステロールアッセイを使用して測定した。
【0085】
アテローム性動脈硬化症の分析と断面免疫蛍光染色:アテローム性動脈硬化症の程度を、近位大動脈のオイルレッドO染色断面とKS300イメージングシステム(Kontron Elektronik GmbH)を使用した正面分析の両方で調べた。免疫蛍光染色では、近位大動脈の5μm断面を冷アセトン(Sigma)で固定し、Background Buster(Innovex)でブロックし、指定の一次抗体(MDAおよびCD68)と4oCで一晩インキュベートした。蛍光標識二次抗体と37℃で1時間インキュベートした後、核をHoechstで対比染色した。画像を蛍光顕微鏡(Olympus IX81)およびSlideBook 6(Intelligent-Image)ソフトウェアで撮影し、ImageJソフトウェア(NIH)を使用して定量化した。
【0086】
In vitro細胞アポトーシス、病変アポトーシスおよびエフェロサイトーシスの分析:細胞アポトーシスは、示されているように誘導され、蛍光標識アネキシンV染色で検出され、フローサイトメトリ(BD 5 LSRII)または蛍光顕微鏡下で撮影された画像のアネキシンV陽性細胞のカウントにより定量化された。アテローム性動脈硬化病変のアポトーシス細胞は、前述のようにアテローム性動脈硬化近位大動脈の断面のTUNEL染色によって測定された。生きたマクロファージに関連しないTUNEL陽性細胞は、遊離アポトーシス細胞と見なされ、マクロファージ関連アポトーシス細胞は、前述のように病変エフェロサイトーシスの測定として貪食作用があると見なされた。
【0087】
マッソン・トリクローム染色:マッソン・トリクローム染色は、製造元の指示(Sigma)に従い前述のように、アテローム性動脈硬化病変のコラーゲン含量、線維性被膜の厚さ、および壊死性コアサイズの測定に適用された。手短に言えば、近位アテローム性動脈硬化大動脈根の5μm断面をブアン溶液で固定し、核はヘマトキシリン(黒)で、細胞質はビーブリッヒスカーレットとリンタングステン酸/リンモリブデン酸(赤)で、そしてコラーゲンはアニリンブルー(青)で染色した。画像を撮影し、前述のようにImageJソフトウェアによって、コラーゲン含有量、アテローム性動脈硬化被膜の厚さ、および壊死性コアについて分析した。
【0088】
RNAの分離とリアルタイムRT-PCR:製造業者のプロトコルに従い、AurumトータルRNAキット(Bio-Rad)を使用して、全RNAを抽出および精製した。相補的DNAはiScript逆転写酵素(Bio-Rad)を用いて合成された。ターゲットmRNAの相対定量は、前述のように、特定のプライマー、SYBRプローブ(Bio-Rad)、およびIQ5サーマルサイクラー(Bio-Rad)上のiTaqDNAポリメラーゼ(Bio-Rad)を使用して行い、18Sで規格化した。使用した18S、IL-1βおよびTNF-αプライマーは前述の通りである。
【0089】
統計:データは平均±SEMとして表される。サンプル母集団の正規性はコルモゴロフ-スミルノフ検定で調べられ、平均値の差は一元配置分散分析(ボンフェローニの事後検定)、クラスカル・ウォリス検定(ダンの多重比較)、マン・ホイットニー検定、およびGraphPad PRISMを使用したスチューデントのt検定で決定された。有意性はp <0.05に設定された。
【0090】
結果:
2-HOBA治療は、Ldlr-/-マウスの血漿コレステロールを変化させることなくアテローム性動脈硬化症を軽減する:Ldlr-/-マウスに16週間西洋食を与え、ビヒクル(水)のみ、または非反応性アナログである2-HOBAまたは4-HOBAのいずれかを含む水で連続的に治療した。2-HOBAによる治療により、近位大動脈のアテローム性動脈硬化症の程度が、ビヒクルまたは4-HOBAによる治療と比較してそれぞれ31.1%および31.5%減少した(図1Aおよび1B)。さらに、大動脈のen face解析では、Ldlr-/-マウスを2-HOBAで治療すると、ビヒクルおよび4-HOBAの投与と比較して、アテローム性動脈硬化症がそれぞれ60.3%および59.1%減少したことが示されている(図1Cと1D)。ビヒクルまたは4-HOBAの投与と比較して、2-HOBA治療は体重に影響しなかった(データは示していない)。さらに、血漿の総コレステロールとトリグリセリドのレベルは、マウスの3つのグループ間での有意差はなかった(図1E)。したがって、本発明者らは、2-HOBA治療が、血漿コレステロールおよびトリグリセリドレベルを変化させることなく、実験マウスモデルにおけるアテローム性動脈硬化症の発症を有意に減少させることを初めて実証した。アルデヒドのスカベンジングによるアテローム性動脈硬化症に対する2-HOBAの効果と一致して、近位大動脈のMDAレベルは、ビヒクル単独または4-HOBAで処置したマウスと比較して、2-HOBA治療マウスで68.5%および66.8%減少した(図2Aおよび2B)。
【0091】
2-HOBA治療は、高コレステロール血症Ldlr-/-マウスで、アテローム性動脈硬化プラーク形成を促進する:脆弱性プラークの急性心血管事象のリスクが高いため、本発明者らはアテローム性動脈硬化病変のコラーゲン含量、線維性被膜の厚さ、および壊死性コアを定量化することにより、プラーク安定化に対する2-HOBA治療に効果を調べた。(図3A~3D)。ビヒクルまたは4-HOBAの投与と比較して、2-HOBA治療は近位大動脈のコラーゲン含量をそれぞれ2.7倍および2.6倍増加させた(図3Aおよび3B)。さらに、2-HOBA治療マウスの病変は、ビークルおよび4-HOBA処理マウスと比較して、線維性被膜の厚さが2.31倍および2.29倍であった(図3Aおよび3C)。重要なことに、2-HOBA治療マウス対ビヒクルおよび4-HOBAで処理したマウスでは、近位大動脈の壊死領域の割合が74.8%および73.5%減少した(図3Aおよび3D)。まとめると、これらのデータは、2-HOBAが高コレステロール血症Ldlr-/-マウスの脆弱性プラーク形成を抑制することを示している。
【0092】
2-HOBA治療は細胞の生存とエフェロサイトーシスを促進し、炎症を軽減する:細胞死の増大と不十分なエフェロサイトーシスは、壊死性コア形成とアテローム性動脈硬化プラークの不安定化を促進するため、本発明者らは次に、近位大動脈のアテローム性動脈硬化病変における細胞死とエフェロサイトーシスに対する2-HOBA治療の効果を調べた(図4A~4D)。ビヒクルまたは4-HOBAのいずれかでの処置と比較して、TUNEL陽性細胞の数は、2-HOBA治療マウスの近位大動脈病変で72.9%および72.4%減少した(図4Aおよび4C)。効率的なエフェロサイトーシスを維持する反応性脂質ジカルボニルスカベンジングと一致して、ビヒクルおよび4-HOBA対2-HOBAで処置したマウスの病変では、マクロファージに関連しないTUNEL陽性細胞の数が1.9倍および2.0倍増加した(図4Bおよび4D)。H2O2処理に応答したマクロファージおよび内皮細胞のアポトーシスに対する感受性に関する2-HOBAによるジカルボニルスカベンジングのin vitro検査は、ビヒクルまたは4-HOBAとのインキュベーションと比較して、2-HOBAはマクロファージ培養および内皮細胞培養両方のアポトーシス細胞の数を著しく減少させたことを示している(図5Aおよび5B)。さらに、2-HOBA治療は、IL-1βIL-6およびTNF-αのmRNAレベルの低下が示すように、酸化LDLに対するマクロファージの炎症反応を有意に低下させた(図5C~5E)。H2O2に対するマクロファージ炎症反応における同様の結果が、2-HOBA治療対ビヒクルまたは4-HOBA処置で観察された(図5F~5H)。まとめると、これらのデータは、2-HOBA治療がin vivoで効率的なエフェロサイトーシスを維持し、酸化ストレスに反応してアポトーシスと炎症を防ぐことを示している。
【0093】
リポタンパク質のMDA修飾および機能に対する2-HOBAの効果、およびリポタンパク質MDA付加物の内容およびその機能に対する家族性高コレステロール血症の影響:LDL修飾が泡沫細胞形成を増強するので、本発明者らは、血漿MDA-LDL含有量に対するin vivoでのジカルボニルスカベンジングの効果を調べた(図6A)。ビヒクルまたは4-HOBAのいずれかでの処置と比較して、2-HOBAで治療したLdlr-/-マウスでは血漿MDA-LDLレベルが57%および54%減少した(図6A)。さらに、MDAを用いたLDLのin vitro改変中に、2-HOBA対ビヒクルを用いたジカルボニルスカベンジングにより、LDLがマクロファージのコレステロール蓄積を増加させる能力が低下した(図6B)。血漿MDA-LDL含有の対照量対FHホモ接合被験者の検査により、FH患者はMDA-LDL付加体が増加したことが明らかになった。HDLの酸化的修飾によりその機能が損なわれるので、本発明者らは次に、HDL MDA含有量およびその機能に対する2-HOBA治療の効果を調べた。2-HOBAによるLdlr-/-マウスの治療は、ビヒクルまたは4-HOBAによる処置と比較して、血漿MDA-HDLレベルを57%および56%低下させた(図7A)。次に、本発明者らは、血漿からのapoAIの免疫沈降およびMDAに対する抗体を用いたウェスタン・ブロッティングにより、ApoAI MDA付加体形成を調べた。西洋食を16週間摂取した後、ビヒクルまたは4-HOBAで処理したLdlr-/-マウスは、固形飼料食を摂取したLdlr-/-マウスと比較して、MDA-apoAIの血漿レベルを著しく上昇させ、血漿apoAIレベルを低下させた(図7Bおよび7C)。対照的に、2-HOBAを用いた西洋食を摂取したLdlr-/-マウスの治療は、血漿MDA-apoAI付加物を劇的に減少させ、apoAIレベルを増加させた(図7Bおよび7C)。重要なことに、2-HOBA処理Ldlr-/-マウスから単離されたHDLは、ビヒクルおよび4-HOBA処理マウスと比較して、ApoE-/-マクロファージ泡沫細胞のコレステロール貯蔵の減少において2.2および1.7倍効率的であった(図7D)。HDL機能を損なう役割を果たすHDLのジカルボニル修飾と一致して、MDAを用いたHDLのin vitro修飾は、用量依存的にマクロファージ泡沫細胞のコレステロール含有量を減少させるHDLの能力を損なった(図7E)。重要なことに、LDLアフェレーシス前および後のホモ接合FHを有するヒト被験者からの血漿は、対照血漿と比較してMDA-HDL付加物が5.9倍および5.6倍多くなった(図7F)。さらに、FHからのHDLは、対照被験者に対してコレステロールが豊富なApoE-/-マクロファージのコレステロール含有量を減少させる能力を欠いていた(図7G)。まとめると、2-HOBAによるジカルボニルスカベンジングは、ジカルボニルによるLDLの修飾を減らし、HDL正味コレステロール流出能力を改善することにより、マクロファージ泡沫細胞の形成を防ぐ。さらに、これらの例は、本発明の実施形態による反応性脂質ジカルボニルのスカベンジングが、ホモ接合FHを有する対象からのLDLおよびHDLが増加したMDAを含み、泡沫細胞形成を増強することを考えると、ヒトにおける治療アプローチであることを示す。
【0094】
議論:
酸化ストレスにより誘導された脂質過酸化は、アテローム性動脈硬化症の発症に関係している。遺伝的欠陥および/または環境要因は、酸化ストレスと、酸化生成物の有害な効果を相殺または解毒する身体の能力との間に不均衡を引き起こす。アテローム性動脈硬化症の病因における脂質過酸化の重要な役割を示唆する実験的証拠の大部分は、アテローム性動脈硬化性心血管疾患を予防する抗酸化物質の可能性に対する大きな関心を刺激した。ヒトの食事性抗酸化物質のいくつかの試験により、アテローム性動脈硬化症と心血管事象の減少が実証されたが、抗酸化物質を用いた大規模な臨床転帰試験の大部分は心血管事象の減少という点で利点を示せていない。これらの試験が心血管事象を低減できなかった理由として考えられるのは、試験に用いられた抗酸化物質の投与量が不十分であることや、抗アテローム生成の可能性がある正常なROSシグナル伝達の阻害などである。脂質過酸化に由来する反応性ジカルボニル種のスカベンジャーによる治療は、ROSを介した正常なシグナル伝達を破壊することなく、ROSの有害作用を抑制する新規の代替治療の方策である。
【0095】
現在の研究において、本発明者らは、Ldlr-/-マウスにおけるアテローム性動脈硬化症の発症を予防するために、新しいクラスの抗酸化剤である反応性脂質ジカルボニルスカベンジャーの可能性を調査しようとした。組織/細胞または血液中の脂質の過酸化により、マロンジアルデヒド、イソレブグランジンおよび4-オキソ-ノネナールを含む多くの反応性の高いジカルボニルが生成される。これらの求電子物質は、DNA、タンパク質、およびリン脂質に共有結合して、リポタンパク質および細胞機能の変化を引き起こす。本発明者らは、アテローム性動脈硬化症に対するアルデヒド除去の効果を初めて検証し、本発明者らは、反応性アルデヒドスカベンジャーである2-HOBAが、高コレステロール血症Ldlr-/-マウスモデルにおけるアテローム性動脈硬化症の発症を有意に減少させることを実証した(図1)。重要なことに、我々の研究は、壊死の減少、線維性被膜の厚さおよびコラーゲン含有量の増加によって証明されるように、2-HOBA治療によりアテローム硬化性プラークの安定性の特徴が著しく改善されることを示している(図3)。したがって、2-HOBAを使用したアルデヒドスカベンジングは、脆弱なアテローム性動脈硬化プラークの形成に起因する臨床事象のリスクを減らす治療上の可能性を提供する。さらに、ジカルボニルスカベンジングにより、HDLのin vivo MDA修飾が減少し、それにより、その正味コレステロール流出能力が改善された(図7)。さらに、MDA修飾はFH-HDLで増加した。これは、HDLによって誘導される泡沫細胞形成の促進に寄与した可能性がある(図7)。まとめると、2-HOBAを使用したジカルボニルスカベンジングは、アテローム性動脈硬化症の発症および脆弱なアテローム性動脈硬化プラークの形成に起因する臨床事象のリスクを減らすという、治療上の利点を提供する。
【0096】
本発明の実施形態は、2-HOBAが血漿コレステロールレベルを低下させることなくアテローム性動脈硬化症の発症を低減することを実証している(図1)。理論やメカニズムに縛られることなく、2-HOBAのアテローム形成抑制効果は、生理活性ジカルボニルのスカベンジングによる可能性がある。2-HOBAの効果がジカルボニルスカベンジャーとしての作用によって媒介されることは、スカベンジャーではない2-HOBAの幾何異性体である4-HOBAがアテローム形成抑制性ではないという発見によってさらに裏付けられる。ジカルボニルを除去することによるアテローム性動脈硬化症の予防は、これらのジカルボニルがアテローム発生の病因に寄与するという仮説を実質的に強化する。
【0097】
HDLは多くのアテローム形成抑制機能を仲介し、コレステロール流出能力の低下などのHDL機能不全のマーカーは、HDL-CレベルよりもCADリスクのより良い指標である可能性があるという証拠が増えている。FHの患者は、以前にHDLコレステロール流出能力の障害を持つことが示されており、これはHDLの機能不全を示している。本発明者らは、Ldlr-/-マウスによる西洋食の摂取がMDA-apoAI付加体形成の増強をもたらし(図7)、2-HOBA治療がMDAによるapoAIおよびHDLの両方の修飾を劇的に減少させることを示す。同様に、FH患者はMDA-HDL付加体の血漿レベルが増加した。さらに、HDLのin vitro修飾は、正味コレステロール流出能力の低下をもたらした。これは、MDAによる無脂質apoAIの修飾が、ABCA1を介したコレステロール流出をブロックすることを実証しているShaoとその同僚による研究と一致する。研究では、長期の喫煙がMDA-HDL付加体形成を増加させ、禁煙がコレステロール流出能力を増加させることでHDL排出機能を改善することも示されている。これらの結果に沿って、2-HOBA対ビヒクルおよび4-HOBA処理マウスから分離されたHDLが、マクロファージ泡沫細胞のコレステロール蓄積を減少させる能力を強化していることがわかった(図7)。さらに、FH-HDLはMDA付加体を著しく増加させ、LDLアフェレーシス前および後のマクロファージコレステロール蓄積を減少させる能力を著しく損なった(図7)。したがって、2-HOBAのアテローム形成抑制の仕組みの1つは、HDLタンパク質のジカルボニル付加物の形成を防止することによる可能性が高く、それによってHDLの正味コレステロール流出機能が維持される。HDL酸化修飾の減少に加えて、我々の研究は、2-HOBA治療がLDLのin vivoおよびin vitro MDA修飾を大幅に減少させることを示している。研究は、LDLのMDA修飾が泡沫細胞形成および炎症反応を促進することを示した。重要なことに、抗体によるMDA-apoB付加物の中和は、ヒトapoB100形質転換Ldlr-/-マウスにおけるアテローム性動脈硬化症の退行を大いに促進する。したがって、2-HOBA治療によるアテローム性動脈硬化症の減少は、apoBのジカルボニル修飾の減少にも一部起因すると考えられる。
【0098】
動脈内膜細胞の酸化ストレスの増加は、ERストレス、炎症、およびアテローム発生における細胞死の誘導に極めて重要であるという証拠が増えている。特に、脆弱なプラークの特徴である壊死と過剰な炎症の防止を防ぐには、効率的なエフェロサイトーシスおよび限られた細胞死が重要である。本発明者らは、2-HOBAによる治療が、Ldlr-/-マウスにおけるより安定したアテローム硬化性プラークの特徴を促進することを実証した(図3)。また、本発明者らは、2-HOBA治療によりアテローム性動脈硬化病変のMDA付加物含有量が減少し(図2)、動脈内膜のジカルボニルスカベンジング能が酸化ストレスによる細胞死とプラークの不安定化を制限する能力を支持することを示した。したがって、本発明の実施形態は、内皮細胞およびマクロファージの両方での酸化ストレス誘発アポトーシスを制限するための、in vitroでの2-HOBAによるジカルボニルスカベンジングである(図5)。細胞死の減少は、一部には、2-HOBAによるジカルボニルスカベンジングによる酸化ストレスに対する炎症反応が大幅に減少したことが原因である可能性がある(図5)。重要なことに、本発明による2-HOBA治療は、効率的なエフェロサイトーシスを維持し、アテローム性動脈硬化病変における死細胞の数を減少させた(図4)。その結果、2-HOBAでのジカルボニルスカベンジングにより、壊死が減少し、コラーゲン含量と線維性被膜の厚さが増した安定したプラークの形成が促進された(図3)。したがって、酸化ストレスに応答して動脈細胞の死と炎症を制限し、および動脈壁の効率的なエフェロサイトーシスを促進する2-HOBAの能力は、ジカルボニルスカベンジングがプラーク安定化の特徴を促進しアテローム性動脈硬化病変の形成を減らす、新規のアテローム形成抑制の仕組みを提供する。
【0099】
結論として、本発明の方法は、高コレステロール血症のLdlr-/-マウスにおけるアテローム性動脈硬化症の発症を抑制する。2-HOBAで治療すると、MDA-apoAI付加体の形成が減少し、それによって効率的なHDL機能が維持された。さらに、MDA-apoB付加物の防止により、泡沫細胞の形成と炎症が減少する。最後に、アテローム性動脈硬化病変内では、ジカルボニルスカベンジングにより細胞死、炎症、壊死が制限され、それによりアテローム性動脈硬化プラークが効果的に安定化する。2-HOBA治療のアテローム形成抑制効果は血漿コレステロールレベルに対するいかなる作用からも独立であるため、本発明は、HMG-CoA還元酵素阻害剤で治療された患者に存続する残留冠動脈疾患リスクを治療的に減少させるという長年の必要性にも応えるものである。
【0100】
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【0109】
本発明はこのように説明されるので、本発明を多くの方法で変化させ得ることは自明である。当業者に自明であるこのような変化は、本開示内に含まれるとみなされるべきである。
【0110】
そうでないことが示されていない限り、本明細書において用いる、成分の量、特性(例えば、反応条件)などを表す全ての数は、全ての場合で、用語「約」で修飾されていると理解されるべきである。したがって、そうでないことが示されていない限り、本明細書及び請求の範囲に示される数値パラメータは、本発明により決定すべきことが求められる所望の性質に応じて変動し得る近似値である。
【0111】
本発明の幅広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、実験の節または実施例の節に示される数値は、可能な限り正確に記載した。しかしながら、いかなる数値も、本来的に、それぞれの試験測定に見出される標準偏差に必然的に起因する或る種の誤差を含む。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
【手続補正書】
【提出日】2022-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式:
【化1】
の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、アテローム性動脈硬化プラーク安定化に使用するための組成物。
【請求項2】
前記化合物が、次の式:
【化2】
であるか又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
次の式:
【化3】
の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、不安定なもしくは脆弱性プラーク形成のリスクがあるか、又は不安定なもしくは脆弱性プラークと診断された対象におけるアテローム性動脈硬化症の治療、予防または寛解に使用するための組成物。
【請求項4】
前記化合物が、次の式
【化4】
であるか又はその薬学的に許容される塩である、請求項3に記載の組成物
【請求項5】
の式
【化5】
で表される構造を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体と組み合わせることを含む、請求項1または3のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。