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特開2022-46688ポリリン酸塩又はビスホスホネートで安定化した非晶質炭酸カルシウム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046688
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】ポリリン酸塩又はビスホスホネートで安定化した非晶質炭酸カルシウム
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/16 20160101AFI20220315BHJP
   A61K 33/10 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220315BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220315BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
A23L33/16
A61K33/10
A61P3/02
A61P9/00
A61P11/00
A61P15/00
A61P17/00
A61P19/00
A61P21/00
A61P25/04
A61P31/00
A61P35/00
A61P1/02
A61K9/50
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/24
A61K9/06
A61K9/14
A61K9/10
A61K9/12
A61K9/72
A61K47/12
A61K47/22
A61P25/00 101
A61P37/02
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213006
(22)【出願日】2021-12-27
(62)【分割の表示】P 2017562651の分割
【原出願日】2016-06-02
(31)【優先権主張番号】62/170,712
(32)【優先日】2015-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515217694
【氏名又は名称】アモーフィカル リミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベン,ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】ブラム,イーガル ドブ
(72)【発明者】
【氏名】モッシュ,ハーガイ
(72)【発明者】
【氏名】アシュケナジ,ベン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】安定化された非晶質炭酸カルシウムを含む高安定性組成物、並びにその製造方法、加工方法、及び使用方法を提供する。
【解決手段】ポリリン酸塩、ビスホスホネート、又はそれらの薬学的に許容される塩を安定化剤として用いることによって非晶質炭酸カルシウム(ACC)の安定な固体組成物を提供する。安定化剤は、ACCを安定化させ、水性懸濁液中であっても、長期間にわたり結晶性炭酸カルシウム(CCC)への結晶化を防止する。本発明は更に、固体ACC組成物を含む医薬組成物、並びに特定の疾患及び病態の治療におけるそれらの使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質炭酸カルシウム(ACC)、及び安定化剤としてのビスホスホネート、又はその薬学的に許容される塩を含み、前記安定化剤のP原子と前記ACCのCa原子との間のモル比(P:Caモル比)が、少なくとも約1:90であり、少なくとも7日間安定している、固体組成物。
【請求項2】
前記P:Caモル比は、約1:90~約1:1である、請求項1に記載の固体組成物。
【請求項3】
前記P:Caモル比は、約1:40~約1:1、又は約1:25~約1:5である、請求項2に記載の固体組成物。
【請求項4】
前記固体組成物が少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、又は少なくとも1年間安定している、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体組成物。
【請求項5】
前記ビスホスホネートは、エチドロン酸、ゾレドロン酸、メドロン酸、アレンドロン酸、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体組成物。
【請求項6】
前記固体組成物が、約30重量%未満の水を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の固体組成物。
【請求項7】
約10重量%~約20重量%の水を含む、請求項6に記載の固体組成物。
【請求項8】
前記固体組成物が粉末の形態である、請求項1~7のいずれか一項に記載の固体組成物。
【請求項9】
水性担体と、請求項1~8のいずれか一項に記載の固体組成物を含有する懸濁組成物。
【請求項10】
前記ACCが、1日、2日、7日、14日、1ヶ月、及び3ヶ月からなる群から選択される少なくとも1つの期間、懸濁液中で安定なままである、請求項9に記載の懸濁組成物。
【請求項11】
全炭酸カルシウムのうちの1%、5%、10%、又は30%未満の結晶性炭酸カルシウムを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、有機溶媒を含まない、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、1種以上の有機酸を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記有機酸が、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、乳酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、グルタコン酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、及びアコニット酸からなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が哺乳類に投与するために配合されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記哺乳類がヒトである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が食用である、請求項15又は16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は、医薬組成物、栄養補給組成物、又は化粧品組成物として、栄養補助食品又は医療用食品として配合される、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
錠剤、カプセル、マイクロカプセル化ペレット、粉末、懸濁液、軟膏、機能性食品、口腔投与用又は吸入投与用配合物として配合される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
安定化された非晶質炭酸カルシウム(ACC)、及び安定化剤としてのビスホスホネート、又はそれらの薬学的に許容される塩を含む、懸濁液の形態の組成物を調製する方法であって、(i)カルシウム源、(ii)前記安定化剤、及び(iii)炭酸塩源の水溶液を混合し、安定化された非晶質炭酸カルシウムを沈降させることを含み、前記安定化剤のP原子と前記ACCのCa原子との間のモル比は、少なくとも約1:28である、方法。
【請求項21】
安定化された非晶質炭酸カルシウム(ACC)及びビスホスホネートを含む懸濁液の形態の組成物を調製する方法であって、
a) カルシウム源及びビスホスホネートを水に溶解して溶液を得るステップと、
b) 炭酸塩源の水溶液をステップ(a)の前記溶液に添加して、非晶質炭酸カルシウム(ACC)を沈降させてACCの水性懸濁液を得るステップと、
c) ステップ(b)で得られた前記懸濁液にビスホスホネートの水溶液を添加して前記安定化されたACC懸濁液を得るステップと、を含み、
前記安定化剤のP原子と前記ACCのCa原子との間のモル比は少なくとも約1:90である、方法。
【請求項22】
前記ビスホスホネートは、エチドロン酸、ゾレドロン酸、メドロン酸、アレンドロン酸、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項20~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記P:Caモル比が約1:25~約1:5である、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記カルシウム源が塩化カルシウムであり、かつ/又は前記炭酸源が炭酸ナトリウムである、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ケーキを得るために反応懸濁液をろ過することを更に含む、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ケーキを水溶液で洗浄することを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ケーキを乾燥することを更に含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記ケーキを粉砕して粉末を得ることを更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ACCの粒子径は約100μm~約5μmである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
結果物である前記組成物は少なくとも7日間安定している、請求項20~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
癌治療に使用される、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリリン酸塩又はビスホスホネートによって安定化された非晶質炭酸カルシウムを含む高安定性組成物、並びにその製造方法、加工方法、及び使用方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
カルシウムは最も一般的であり、広く普及しているミネラルの一つである。カルシウムは、人体において最も重要なミネラルの1つであると考えられている。このカルシウムは、骨ミネラル濃度を維持するために必要であり、神経伝達物質のエキソサイトーシスに必須であり、筋肉細胞の収縮に関与し、心臓において脱分極ミネラルとしてナトリウムに置き換わり、他の多くの生理機能に関与している。いくつかの病状が関与するために、カルシウムは栄養補助食品として大いに使用されている。カルシウムサプリメントは、多くの場合、炭酸カルシウムを用いて調製される。
【0003】
炭酸カルシウムは、いくつかの結晶形態で、又は非晶質炭酸カルシウム(ACC)として存在してもよい。ACCは、安定性が低く、水に最も溶けやすい形態である。非晶質炭酸カルシウムは、水又は更には湿気と接触しても数分以内に5種のより安定な多形体のうちの1種に迅速かつ完全に結晶化する。
【0004】
自然界では、ACCは、一時的なミネラル貯留層でACCを安定化する能力を発現した複数の生物、主に甲殻類及び他の無脊椎動物によって利用されている。これらの生物は、脱皮期間中、カルシウムの周期的動員、吸収及び沈殿のため、非常に効率の高いミネラル源を必要とする。淡水ザリガニなどの一部の甲殻類では、ACCは胃石と称される特殊な一過性の貯蔵器官に大量に貯蔵され、これらは、脱皮直前に発現する。
【0005】
自然界では、ACCは、このような事象の引き金となるまで非晶質相の結晶化を防止するキチン及びタンパク質などの生物学的ポリマー(巨大分子)によって安定化される。いくつかの刊行物は、ポリマー及び別個の化合物を安定化することによって、非晶質炭酸カルシウムの結晶化を防止し得るか、又は低減し得ることを示している。国際特許出願第WO2009/053967号は、ACCが、少なくとも1ヶ月間安定しているリン酸化ペプチドと沈殿物を形成することを開示している。
【0006】
国際特許出願第W2014/024191号は、安定化剤としての水素結合分子及び有機溶媒によって安定化されたACCを調製するための方法を開示している。製造されたACCは、ホスホセリンが安定化剤として使用された場合、約20℃で少なくとも3時間、又はスクロースが使用された場合、少なくとも10時間、懸濁液中で安定していることが例示された。
【0007】
Clarksonら(J.Chem.Soc.,Faraday Trans.,1992,88,243-249)は、水溶液からの炭酸カルシウムの自然沈降試験について報告している。Clarksonらは、トリリン酸塩のPPMがほとんど存在しないことにより、CaCoの結晶相の核生成が遅れることを示した。
【0008】
Sawada(Pure and Applied Chemistry、1997、69、921-928)は、炭酸カルシウム多形体の形成及び変換、並びにリン含有化合物によるそれらの阻害のメカニズムについて試験を行った。Sawadaは、2つのアミノ基を含む有機テトラホスホネートであるEDTMPが、高濃度で、炭酸カルシウムの異なる多形体間の変換を防止し得ることを示した。Sawadaはまた、方解石へのEDTMPの吸着はリン酸塩の吸着よりもはるかに強く、リン酸塩よりもEDTMPとCa原子とのより強い結合及び錯体形成を示すと主張した。
【0009】
米国特許第2013/0190441号は、安定化された炭酸カルシウムの球状粒子について記述し、このような粒子がポリマー用の充填剤として適切であることを強調している。これらの粒子は、有機表面活性物質によって安定化されてもよい。このような粒子は、安定化剤としてホスホネートEDTMPを利用する実施例に示されているように、母液中で5日間安定されていてもよい。
【0010】
Nebelら(Inorganic Chemistry、2008、47(17)7874-9)は、固体状態NMR分光法(H及び13C)によって試験された炭酸カルシウム相方解石、アラゴナイト、バテライト、モノハイドロカルサイト(炭酸カルシウム一水和物)、及びイカアイト(炭酸カルシウム六水和物)について教示している。
【0011】
報告されているACCの安定化方法は、ACCのその非晶質形態での安定化期間に制限されている。さらに、上記方法の多くは、有機安定化剤及び/又は溶媒を使用する。ACCの安定性を増強するための1つの技術は、アルコール、最も好ましくはエタノールなどの有機溶媒を使用することによってACCを調製することである。
【0012】
製造中にこのような溶媒が存在することにより、環境及び安全事故を防止するために、健康及び安全の危険性を提示し、製造コストが高くなり、溶媒産生後の回収が増える可能性がある。このような溶媒又はこれらの痕跡は、医学的投与及びインビトロ媒体に使用される懸濁液中では望ましくない。
【0013】
水又は水分の存在下でACCの安定性を保つことができる安定化剤のいくつかは、それらの毒性及び副作用が原因で、動物又はヒトの消費には不適格である。
【0014】
食品産業又は製薬産業で使用され得る新規の、安定しているACC組成物、並びに商業的規模でこれらを製造するための非常に効率的な方法が明らかに必要であり、まだ満たされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明によれば、無機ポリリン酸塩又はビスホスホネートは、水性懸濁液中であっても、非晶質炭酸カルシウムを長期間安定化させ得ることが判明した。
【0016】
一態様によれば、本発明は、非晶質炭酸カルシウム(ACC)、及び安定化剤としての無機ポリリン酸塩、又はその薬学的に許容される塩を含む固体組成物を提供し、安定化剤のP原子とACCのCa原子との間のモル比(P:Caモル比)は、少なくとも約1:90であり、かつ組成物が少なくとも7日間安定している。
【0017】
一実施形態では、組成物は、約1:28~約1:3、又は約1:25~約1:5のP:Caモル比を有してもよい。他の実施形態では、Ca含量は約20重量%~約38重量%、約30重量%~約38%、又は約30重量%~約36重量%である。このような組成物は、少なくとも1ヶ月間、3ヶ月間、又は6ヶ月間、固体形態で安定している。他の実施形態では、このような組成物は1年間又は2年間であっても安定であり得る。
【0018】
ある実施形態では、安定化剤は、トリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、又はピロリン酸塩などの無機ポリリン酸塩である。このような組成物は、典型的なFT-IRスペクトル及び/又はDSCサーモグラムによって特徴付けることができる。このようなFT-IRスペクトルは、865cm-1にて吸収ピークを有し、1400cm-1にてショルダを有し、1470cm-1にて炭酸塩に関連し、1130cm-1にてリン酸塩に関連し、DSCサーモグラムでは、365℃~550℃の範囲に発熱ピークを含む。
【0019】
前述の組成物のいずれか1つは、粉末の形態であってもよい。
【0020】
本発明の教示によって提供されるように、本発明の固体組成物中のACCは、長期間、例えば少なくとも7日間貯蔵した後に、組成物が全炭酸カルシウムのうちの1%、5%、10%又は30%未満の結晶性炭酸カルシウムを含んでいるように、安定したままである。
【0021】
本発明はまた、水性担体を更に含む懸濁液の形態の本発明の組成物を包含する。したがって、別の態様によれば、本発明は、本発明の固体組成物を含む懸濁液を提供する。一実施形態によれば、懸濁液は、非晶質炭酸カルシウム(ACC)と、安定化剤としての無機ポリリン酸塩、又はその薬学的に許容される塩とを含む固体組成物を含み、安定化剤のP原子とACCのCa原子との間のモル比(P:Caモル比)は、少なくとも約1:90であり、固体組成物は少なくとも7日間安定している。このような懸濁液では、ACCは、1日、2日、7日、14日、1ヶ月及び3ヶ月間から選択される少なくとも1つの期間安定したままである。
【0022】
本発明の懸濁液は、全炭酸カルシウムのうちの約1%、5%、10%、又は30%未満の結晶性炭酸カルシウムを含む。
【0023】
別の態様によれば、本発明は、非晶質炭酸カルシウム(ACC)、及び安定化剤としてのビスホスホネート、又はその薬学的に許容される塩を含む固体組成物を提供し、安定化剤のP原子とACCのCa原子との間のモル比(P:Caモル比)は少なくとも約1:90であり、組成物は5重量%超~約30重量%の水を含み、少なくとも7日間安定している。いくつかの実施形態によれば、組成物は、10重量%超~約30重量%、又は約10重量%~約20重量%の水を含む。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、ビスホスホネートは、エチドロン酸、ゾレドロン酸、メドロン酸、又はアレンドロン酸である。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、P:Caモル比は約1:28~約1:3、又は約1:25~約1:5である。他の実施形態では、Ca含量は約20重量%~約38重量%、約30重量%~約38%、又は約30重量%~約36重量%である。このような組成物は、少なくとも1ヶ月間、3ヶ月間、又は6ヶ月間、固体形態で安定している。他の実施形態では、このような組成物は1年間又は2年間であっても安定であり得る。
【0026】
前述の組成物のいずれか1つは、粉末の形態であってもよい。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、全炭酸カルシウムのうちの約1%、5%、10%、又は30%未満の結晶性炭酸カルシウムを含む。
【0028】
本発明はまた、水性担体を更に含む懸濁液の形態の本発明の組成物を包含する。したがって、更なる態様によれば、本提示の発明は、本発明の固体組成物を含む懸濁液を提供する。一実施形態では、本懸濁液は、非晶質炭酸カルシウム(ACC)、及び安定化剤としてのビスホスホネート、又はその薬学的に許容される塩を含む固体組成物を含み、安定化剤のP原子とACCのCa原子と間のモル比(P:Caモル比)は少なくとも約1:90であり、固体組成物は、5重量%超~約30重量%の水を含み、少なくとも7日間安定している。
【0029】
このような懸濁液中の一実施形態によれば、ACCは、1日、2日、7日、14日、1ヶ月、又は3ヶ月から選択される少なくとも1つの期間の間、安定したままである。
【0030】
一実施形態によれば、懸濁液は、全炭酸カルシウムのうちの1%、5%、10%、又は30%未満の結晶性炭酸カルシウムを含む。
【0031】
本発明の組成物又は懸濁液は、有機溶媒を含まない。いくつかの実施形態では、本発明の組成物又は懸濁液はまた、1種以上の有機酸を含んでもよい。
【0032】
本発明の組成物又は懸濁液は、哺乳動物、例えばヒトへの投与用に配合される。本発明の組成物は食用であるが、任意の既知の許容される生物医学的投与経路によって投与してもよい。
【0033】
本発明はまた、本発明の組成物又は懸濁液が、医薬組成物、栄養補給組成物、又は化粧品組成物として、栄養補助食品又は医療用食品として配合され得ることを開示する。
【0034】
一態様によれば、本発明は、本発明の組成物又は懸濁液を含む医薬組成物、栄養補給組成物、又は化粧品組成物、栄養補助食品、若しくは医療用食品を提供する。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、本発明による医薬組成物又は懸濁液のいずれかは、炭酸カルシウム治療に応答する疾患又は病態を治療する際での使用に適している。いくつかの実施形態によれば、疾患又は病態は、疼痛、過剰増殖性疾患、皮膚疾患、神経障害、免疫障害、心血管疾患、肺疾患、栄養障害、繁殖障害、筋骨格障害、感染症、及び歯科疾患からなる群から選択される。
【0036】
別の態様では、本発明は、懸濁液の形態の本発明の組成物を調製するための方法を提供し、本方法は、(i)カルシウム源、(ii)安定化剤、及び(iii)炭酸塩源の水溶液を混合して、安定化された非晶質炭酸カルシウムを沈降させることを含み、安定化剤のP原子とACCのCa原子との間のモル比が少なくとも約1:28である。
【0037】
更なる態様では、本発明は、安定化された非晶質炭酸カルシウム(ACC)を含む懸濁液の形態で組成物を調製するための方法を提供し、本方法は、a)カルシウム源及び安定化剤を水に溶解して、溶液を得るステップと、b)炭酸塩源の水溶液をステップ(a)の溶液に添加して、非晶質炭酸カルシウム(ACC)を沈降させて、ACCの水性懸濁液を得るステップと、c)ステップ(b)で得られた懸濁液に安定化剤の水溶液を添加し、安定化されたACC懸濁液を得るステップと、を含み、安定化剤のP原子とACCのCa原子との間のモル比が少なくとも約1:90である。
【0038】
この方法は、反応懸濁液をろ過してケーキを得、そのケーキを乾燥し、粉砕して粉末を得るステップを更に含んでもよい。好ましい実施形態では、全調製方法を通して有機溶媒が添加されることはない。本方法はまた、より良好な安定性を有する組成物を達成するために、本方法に対する任意の改変を含む。
【0039】
別の態様によれば、本発明は、有効量の本発明の組成物を投与することを含む、炭酸カルシウム治療に応答する疾患又は病態を治療するための方法を提供する。
【0040】
本発明は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明からより完全に理解され、認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】10%トリリン酸塩で安定化されたACC(TP-10%、100%ACC組成物)の代表的なXRD回折図である。
図2】ピロリン酸塩(Pyr-5%)で安定化し、そのわずかな一部分は結晶形態に変換されている(94%ACC)ACCの代表的なXRD回折図である。
図3】ヘキサメタリン酸塩で安定化されたACC(HMP-5%、89%ACC)の代表的なXRD回折図である。
図4】PS5%及び5%CAを含むACC(100%CCC)の代表的なXRD回折図である。
図5】ポリリン酸塩で安定化したACCの代表的なDSCサーモグラムを示す図である:TP-6%は414℃で発熱ピークを示す図である。
図6】代表的なFT-IR吸収スペクトルを示す図である。ACC-TP3%(図6A);ACC-TP4%(図6B);ACC-TP6%(図6C);ACC-10%(図6D);ACC-HMP6%(図6E);ACC-HMP10%(図6F);ACC-Pyr6%(図6G)及びACC-Pyr10%(図6H)。
図7】ACC-PS1%-CA5%の代表的なFT-IR吸収スペクトルを示す図である。
図8】実施例16による4T1細胞注入後13日目~27日目のマウスの死亡率を示す図である。
図9】実施例16による4T1細胞注入後0日目~27日目に評点される臨床徴候を示す図である。
図10】実施例16による異なる群でのマウスの体重を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
一態様によれば、本発明は、非晶質炭酸カルシウム(ACC)、及び安定化剤としての無機ポリリン酸塩、又はその薬学的に許容される塩を含む固体組成物を提供し、安定化剤のP原子とACCのCa原子との間のモル比(P:Caモル比)は、少なくとも約1:90であり、かつ組成物が少なくとも7日間安定している。
【0043】
「非晶質炭酸カルシウム」及び「ACC」という用語は、本明細書では同義に使用され、非結晶形態の炭酸カルシウムを指す。ACCは、様々な水準の吸着水を含んでもよく、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸マグネシウムなどの炭酸塩組成物を形成する少量の他の元素を組み込んでもよい。
【0044】
本明細書で使用される用語「安定化剤(stabilizer)」又は「安定化剤(stabilizing agent)」は、同義に使用され、ACCの生成、配合及び/又は貯蔵中に非晶質形態の炭酸カルシウムを保存する任意の物質を指す。いくつかの実施形態では、安定化剤は、無機ポリリン酸塩又はその薬学的に許容される塩である。他の実施形態では、安定化剤は、ビスホスホネート又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、組成物は、1種以上の第2の安定化剤を含んでもよい。このような第2の安定化剤は、カルボン酸、アミン、リン酸塩、ホスホン酸塩、及びクエン酸、乳酸塩、ホスホセリン、グルコン酸塩など、Ca原子に結合する、キレート化する、又は錯体化する傾向のある他の官能基を含む有機化合物など、ACCの安定化剤として機能することが既知の有機化合物であってもよい。
【0045】
「無機ポリリン酸塩」及び「ポリリン酸塩」という用語は、本明細書では同義に使用され、リン酸無水物結合によって連結されたリン酸基の無機直鎖又は環式鎖を指す。
【0046】
用語「モル比」及び「P:Caモル比」は、安定化剤のP原子とACCのCa原子との間のモル比を指す。用語「1:90より大きい」及び「少なくとも1:90」は、1対90以下、例えば1:80、1:70、1:60、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:5など、並びにこれらの値の間隔の任意の値のP:Caモル比を指す。
【0047】
「安定している」という用語は、本明細書では、炭酸カルシウムが約30%未満又は約30%の結晶性炭酸カルシウムを有する固体形態で、一定期間、例えば少なくとも約7日間非晶質形態で維持されることを示すために使用される。
【0048】
上記実施形態のいずれか1つによれば、組成物は少なくとも7日間安定している。いくつかの実施形態によれば、組成物は少なくとも1ヶ月間安定している。他の実施形態によれば、組成物は少なくとも3ヶ月間安定している。更なる実施形態によれば、組成物は6ヶ月間安定している。ある実施形態によれば、組成物は少なくとも1年間安定している。特定の実施形態によれば、組成物は少なくとも2年間まで安定している。
【0049】
いくつかの実施形態では、ACCは全く結晶化しない。他の実施形態によれば、ACCの一部は結晶性炭酸カルシウムに変換する。いくつかの実施形態では、ACCの30%以下が結晶形態に変換され、これにより、組成物は、全炭酸カルシウムの30%未満の結晶性炭酸カルシウム(CCC)を含む。ある実施形態では、組成物は、全炭酸カルシウムの25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、又は5%未満のCCCを含む。固体組成物中のACC及びCCCの存在、並びにこれらの比は、任意の既知の方法によって測定することができる。非限定的例は、実験の部分で定義したX線回折(XRD)測定値である。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、P:Caモル比は約1:90~約1:1である。一実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:35~約1:2である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:30~約1:3である。別の実施形態では、P:Caモル比は、約1:28~約1:3である。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:5である。別の実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:6である。特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:15~約1:5である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、本発明の固体組成物は、ACCを含み、本組成物のCa含量は、約1重量%~約39重量%である。用語「Ca含量」及び「カルシウム含量」は、本明細書では同義に使用され、最終組成物中のACCのカルシウムの含量を指す。他の実施形態では、Ca含量は約5重量%~約38重量%である。別の実施形態では、Ca含量は、約10重量%、約15重量%、又は約20重量%~約38重量%である。更なる実施形態では、Ca含量は約25重量%~約38重量%である。更なる実施形態では、Ca含量は約27重量%~38重量%である。別の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。特定の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。
【0052】
特定の実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1であり、Ca含量は約20重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は約1:28~約1:3であり、Ca含量は約25重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は約1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。別の実施形態では、モル比は1:25~約1:5であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。更に別の実施形態では、モル比は1:25~約1:5であり、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。
【0053】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、固体組成物は30重量%未満の水を含む。他の実施形態によれば、組成物は、20重量%未満の水を含む。別の実施形態によれば、組成物は15重量%未満の水を含む。更なる実施形態によれば、組成物は5%を超えるが30重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態によれば、組成物は約5重量%~約25重量%の水を含む。別の実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。更なる実施形態によれば、組成物は、約10重量%~約25重量%の水を含む。
【0054】
上記の実施形態のいずれかによれば、無機ポリリン酸塩又はその薬学的に許容される塩は、2~10個のリン酸基、例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のリン酸基を含む。このようなポリリン酸塩の塩の非限定的例は、Na、K、Mg、Mn、及びZnである。いくつかの実施形態によれば、無機ポリリン酸塩は、トリリン酸塩、ピロリン酸塩、及びヘキサメタリン酸塩から選択される。別の実施形態によれば、安定化剤は、トリリン酸塩、又はトリリン酸ナトリウムなど、その薬学的に許容される塩である。用語「トリリン酸塩」及び「トリポリリン酸塩(tripolyphoshate)」は、本明細書では同義に使用される。更なる実施形態によれば、安定化剤は、ヘキサメタリン酸塩、又はヘキサメタリン酸ナトリウムなど、その薬学的に許容される塩である。一実施形態によれば、安定化剤は、ピロリン酸塩、又はピロリン酸ナトリウムなど、その薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態によれば、ACCは、安定化剤の任意の組み合わせによって安定化される。
【0055】
以下に示されるように、組成物中のポリリン酸塩は安定しており、配合又は貯蔵中に崩壊すること、分解すること、又は破砕することはない。
【0056】
本明細書で例示されるように、無機ポリリン酸塩を含む組成物は、いくつかの吸収ピークによって特徴付けられる典型的なFT-IRスペクトルを有する。いくつかの実施形態によれば、組成物は、約865cm-1にてピークを有し、約1400cm-1にてショルダを有し、約1470cm-1にて炭酸塩に関連し、約1130cm-1にてリン酸塩に関連する、FT-IRスペクトルによって特徴付けられる。FT-IRスペクトル上で観察されるピークに関して本出願で使用される用語「約」は、値±4cm-1を意味する。いくつかの実施形態によれば、組成物は、図6に示すような、例えば、図6A図6B図6C図6D図6E図6F図6G、又は図6Hに示すようなFT-IRスペクトルによって特徴付けられる。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、上記で定義した無機ポリリン酸塩を含み、無機ポリリン酸塩は、365℃~550℃の範囲でACCの結晶化に関連する発熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けられ、DSC分析は、10℃/分の加熱速度で非酸化条件下にて行われる。特定の実施形態によれば、発熱ピークは365℃~430℃の範囲にある。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、トリリン酸塩、ピロリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、及びそれらの薬学的に許容される塩から選択される無機ポリリン酸塩であり、かつP:Caモル比は約1:40~約1:1である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:35~約1:2である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:30~約1:3である。別の実施形態では、P:Caモル比は、約1:28~約1:3である。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。更なる実施形態では、Ca含量は約25重量%~38重量%である。別の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。更に別の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。特定の実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1であり、Ca含量は25重量%~38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。別の実施形態では、モル比は1:25~約1:5であり、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。
【0059】
上記実施形態のいずれか1つによれば、組成物は粉末の形態である。いくつかの実施形態によれば、粉末中のACCの粒子は、約100μm未満の粒子径を有する。いくつかの実施形態では、ACC粒子は、約100μm~約5μmの粒子径を有する。他の実施形態では、粒子径は約50μm~約5μm、又は約30~約5μmである。1つの特定の実施形態では、50μm未満、40μm未満、30μm未満、20μm未満、又は10μm未満のサイズを有する粒子。いくつかの実施形態によれば、ACC粒子の少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%が5μm未満の粒子径を有する。
【0060】
本明細書で使用される用語「粒子」は、上記に定義された安定化剤によって安定化されたACCの別個の微粒子又はナノ粒子、並びにそのアグリゲート又はアグロメレートを指す。いくつかの実施形態によれば、粒子は安定化されたACCの一次粒子である。塩基性ナノ粒子は、5~500nm又は10~300nm又は20~100nmの範囲にある。これらのナノ粒子は直ちに凝集し、凝集塊となって、はるかに大きな二次粒子となる。これらのアグリゲーション及びアグロメレーションは、その後、粉砕及び溶解技術によってより小さな粒子に破壊され得る。他の実施形態によれば、粒子は、一次粒子のアグリゲート又はアグロメレート、すなわち二次粒子である。
【0061】
一実施形態では、組成物は粉末の形態であり、安定化剤は、トリリン酸塩、ピロリン酸塩及びヘキサメタリン酸塩から選択される無機ポリリン酸塩であり、P:Caモル比は約1:40~約1:1である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:35~約1:2である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:30~約1:3である。別の実施形態では、P:Caモル比は、約1:28~約1:3である。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。更なる実施形態では、Ca含量は約25重量%~38重量%である。別の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。更に別の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。ある実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1であり、Ca含量は25重量%~38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。別の実施形態では、モル比は1:25~約1:5であり、Ca含量は30重量%~36重量%である。このような組成物は、上記で定義したFT-IRスペクトル、DSCサーモグラム、又はFT-IRスペクトル及びDSCサーモグラムの両方により特徴付けられてもよい。
【0062】
一実施形態によれば、本発明は、本明細書に記載の実施形態のいずれかによる本発明の固体組成物を含む懸濁液を提供する。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、上記実施形態のいずれか1つによる組成物及び水性担体を含む懸濁液の形態の組成物を提供する。本明細書で使用される「水性担体」という用語は、その中でACCが投与、分散及び/又は懸濁される水性ビヒクルを指す。水性担体の非限定的例としては、水及び水性溶液(例えば、生理食塩水)が挙げられる。
【0064】
いくつかの実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物は、水性担体中に、ACC、及び安定化剤としての無機ポリリン酸塩又はその薬学的に許容される塩を含む固体組成物を含み、P:Caモル比は少なくとも約1:90である。いくつかの実施形態によればP:Caモル比は約1:40~約1:1である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:35~約1:2である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:30~約1:3である。別の実施形態では、P:Caモル比は、約1:28~約1:3である。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。このような組成物は、約25重量%~38重量%のCa含量を有してもよい。別の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。更に別の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。特定の実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1であり、Ca含量は25重量%~38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。別の実施形態では、モル比は1:25~約1:5であり、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。ある実施形態によれば、固体組成物は、約865cm-1にてピークを有し、約1400cm-1にてショルダを有し、約1470cm-1にて炭酸塩に関連し、約1130cm-1にてリン酸塩に関連する、FT-IRスペクトルによって特徴付けられる。他の実施形態では、このような固体組成物は、365℃~550℃の範囲でACCの結晶化に関連する発熱ピークを含むDSCサーモグラムによって特徴付けられ、DSC分析は、10℃/分の加熱速度で非酸化条件下にて行われる。更なる実施形態では、このような組成物は、上記で定義したFT-IRスペクトル及びDSCサーモグラムの両方によって特徴付けられる。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物中のACCは、少なくとも1日間安定したままである。いくつかの実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物中のACCは、2日間安定したままである。更なる実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物中のACCは、7日間安定したままである。更に別の実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物中のACCは、14日間安定したままである。他の実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物中のACCは、少なくとも1ヶ月間安定したままである。更なる実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物中のACCは、少なくとも3ヶ月間安定したままである。一実施形態によれば、ACCは、1日、2日、7日、14日、1ヶ月、及び3ヶ月から選択される少なくとも1つの期間の間、安定したままである。
【0066】
上で定義したように、本発明の組成物、例えば、固体組成物又は懸濁液の形態の組成物は安定している。上記実施形態のいずれか1つによれば、組成物は、全炭酸カルシウムのうちの1%、5%、10%、又は30%未満の結晶性炭酸カルシウムを含む。他の実施形態によれば、組成物は5%未満のCCCを含む。更なる実施形態によれば、組成物は、10%未満のCCCを含む。他の実施形態によれば、組成物は15%未満のCCCを含む。更に別の実施形態によれば、組成物は、20%未満のCCCを含む。他の実施形態では、組成物は、全炭酸カルシウムのうち25%未満又は30%未満のCCCを含む。
【0067】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、本発明による組成物、すなわち固体組成物又は懸濁液の形態の組成物は、有機溶媒を含まない。本明細書で使用される「含まない(devoid)」という用語は、検出可能な量の有機溶媒を含まない組成物を指す。好ましい実施形態では、加工全体で及び懸濁液が、いかなる有機溶媒を組み込むことも伴わず、それに続いて、ACCがいかなる有機溶媒を含むこともない。言及される有機溶媒は、食品及び薬物の加工に使用されるものである。このような有機溶媒は、極性であり、かつ水溶性又は混和性である。いくつかの実施形態では、そのような有機溶媒は、エタノール又はアセトンであってもよい。したがって、一実施形態では、本発明の組成物はエタノールを含まない。
【0068】
上記実施形態のいずれか1つによれば、本発明による組成物、すなわち固体組成物又は懸濁液の形態の組成物は、1種以上の有機酸を更に含む。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、有機酸は、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、乳酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、グルタコン酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、及びアコニット酸からなる群から選択される。
【0070】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、本発明の組成物は、1種以上の第2の安定化剤を含んでもよい。第2の安定化剤は、Ca原子に結合又はキレート化することができる官能基を含む無機又は有機化合物であってもよい。第2の安定化剤は、いくつかの実施形態では、第1の安定化剤よりも少ない量で存在することができる。いくつかの実施形態では、このような第2の安定化剤は、それ自体で、上記で定義した安定性をもたらすことはない。他の実施形態では、第2の安定化剤は第1の安定化剤と同一である。いくつかの実施形態では、第2の安定化剤は、Ca原子に強く結合することができるカルボン酸基、アミン基、ヒドロキシル基、リン酸基、又はホスホン酸基などの官能基を含む有機化合物である。
【0071】
上記実施形態のいずれか1つによれば、組成物は、哺乳類への投与用に配合される。「哺乳類」という用語は、ヒト及び非ヒト哺乳類を指す。一実施形態では、哺乳類はヒトである。別の実施形態では、哺乳類は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラバ、ロバ、バッファロー、又はラクダから選択される非ヒト哺乳類である。
【0072】
上記実施形態のいずれか1つによれば、組成物は食用である。
【0073】
ある実施形態によれば、トリリン酸塩、ピロリン酸塩、又はヘキサメタリン酸塩によって安定化されたACCを含む固体組成物は、約1:28~約1:3のP:Caモル比を有し、約10重量%~約25重量%の水を含み、少なくとも1ヶ月間安定している。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。ある実施形態によれば、P:Caモル比は、約1:25から約1:5である。更なる実施形態では、Ca含量は約25重量%~38重量%である。別の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。更に別の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。ある実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1であり、Ca含量は25重量%~38重量%である。別の実施形態では、モル比は1:25~約1:5であり、Ca含量は30重量%~36重量%である。いくつかの実施形態によれば、組成物は少なくとも3ヶ月間安定している。他の実施形態によれば、組成物は6ヶ月間安定している。更なる実施形態によれば、組成物は1年安定している。別の実施形態によれば、組成物は、全炭酸カルシウムのうちの20%未満又は10%未満の結晶性炭酸カルシウムを含む。いくつかの実施形態によれば、組成物は粉末の形態である。いくつかの実施形態によれば、組成物は有機溶媒を含まない。いくつかの実施形態によれば、このような組成物は、約865cm-1にてピークを有し、約1400cm-1にてショルダを有し、約1470cm-1にて炭酸塩に関連し、約1130cm-1にてリン酸塩に関連する、FT-IRスペクトルによって特徴付けられる。他の実施形態では、このような組成物は、365℃~550℃の範囲でACCの結晶化に関連する発熱ピークを含むDSCサーモグラムによって特徴付けられ、DSC分析は、10℃/分の加熱速度で非酸化条件下にて行われる。更なる実施形態では、このような組成物は、上記で定義したFT-IRスペクトル及びDSCサーモグラムの両方によって特徴付けられてもよい。
【0074】
一実施形態によれば、固体組成物ACCはトリリン酸塩、例えばトリリン酸ナトリウムによって安定化され、P:Caモル比は、約1:25~約1:5であり、組成物は約10重量%~約25重量%の水を含み、少なくとも7日間安定し、全炭酸カルシウムのうちの30%未満の結晶性炭酸カルシウムを含み、有機溶媒を含まない。別の実施形態によれば、固体組成物はヘキサメタリン酸塩、例えばヘキサメタリン酸ナトリウムによって安定化されたACCを含み、P:Caモル比は、約1:25~約1:5であり、組成物は約10重量%~約25重量%の水を含み、少なくとも1ヶ月間安定し、全炭酸カルシウムのうち30%未満の結晶性炭酸カルシウムを含み、有機溶媒を含まない。更なる実施形態によれば、本発明の固体組成物はピロリン酸塩、例えばピロリン酸ナトリウムによって安定化された非晶質炭酸カルシウム(ACC)を含み、P:Caモル比は約1:25~約1:5であり、組成物は約10重量%~約25重量%の水を含み、少なくとも1ヶ月間安定し、全炭酸カルシウムのうちの30%未満の結晶性炭酸カルシウムを含み、有機溶媒を含まない。上記の実施形態のいずれか1つによれば、このような組成物は、約30重量%~約38重量%のCa含量を有する。いくつかの実施形態では、モル比は1:25~約1:5であり、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。いくつかの実施形態によれば、組成物は少なくとも3ヶ月間安定している。他の実施形態によれば、組成物は6ヶ月間安定している。更なる実施形態によれば、組成物は1年安定している。別の実施形態によれば、組成物は、全炭酸カルシウムのうちの20%未満又は10%未満の結晶性炭酸カルシウムを含む。いくつかの実施形態によれば、組成物は粉末の形態である。このような組成物は、約865cm-1にてピークを有し、約1400cm-1にてショルダを有し、約1470cm-1にて炭酸塩に関連し、約1130cm-1にてリン酸塩に関連する、FT-IRスペクトルによって特徴付けられ得る。他の実施形態では、このような組成物は、365℃~550℃の範囲でACCの結晶化に関連する発熱ピークを含むDSCサーモグラムによって特徴付けられてもよく、DSC分析は、10℃/分の加熱速度で非酸化条件下にて行われる。更なる実施形態では、このような組成物は、上記で定義したFT-IRスペクトル及びDSCサーモグラムの両方によって特徴付けられてもよい。いくつかの実施形態によれば、このような組成物は、上で定義した有機酸を更に含む。いくつかの実施形態によれば、組成物は、図6に示すような、例えば、図6A図6B図6C図6D図6E図6E図6F図6G、又は図6Hに示すようなFT-IRスペクトルによって特徴付けられる。
【0075】
一実施形態によれば、本発明の固体組成物は、トリリン酸塩、例えばトリリン酸ナトリウムによって安定化されたACCを含み、P:Caモル比は約1:25~約1:5であり、組成物は約10重量%~約25重量%の水を含み、約30重量%~約38重量%のCa含量を有し、少なくとも1ヶ月間安定し、全炭酸カルシウムのうちの20%未満の結晶性炭酸カルシウムを含み、有機溶媒を含まない。別の実施形態によれば、本発明の固体組成物はヘキサメタリン酸塩、例えばヘキサメタリン酸ナトリウムによって安定化されたACCを含み、P:Caモル比は、約1:25~約1:5であり、組成物は約10重量%~約25重量%の水を含み、約30重量%~約38重量%のCa含量を有し、少なくとも1ヶ月間安定し、全炭酸カルシウムのうち20%未満の結晶性炭酸カルシウムを含み、有機溶媒を含まない。更なる実施形態によれば、本発明の固体組成物は、ピロリン酸塩、例えばピロリン酸ナトリウムによって安定化されたACCを含み、P:Caモル比は約1:25~約1:5であり、組成物は約10重量%~約25重量%の水を含み、約30重量%~約38重量%のCa含量を有し、少なくとも1ヶ月間安定し、全炭酸カルシウムのうちの20%未満の結晶性炭酸カルシウムを含み、有機溶媒を含まない。上記実施形態のいずれかによれば、組成物は粉末の形態である。いくつかの実施形態によれば、組成物は、約865cm-1にてピークを有し、約1400cm-1にてショルダを有し、約1470cm-1にて炭酸塩に関連し、約1130cm-1にてリン酸塩に関連する、FT-IRスペクトルによって特徴付けられる。他の実施形態では、このような組成物は、365℃~550℃の範囲でACCの結晶化に関連する発熱ピークを含むDSCサーモグラムによって特徴付けられてもよく、DSC分析は、10℃/分の加熱速度で非酸化条件下にて行われる。更なる実施形態では、このような組成物は、上記で定義したFT-IRスペクトル及びDSCサーモグラムの両方によって特徴付けられる。いくつかの実施形態によれば、このような組成物は、上で定義した有機酸を更に含む。いくつかの実施形態では、モル比は1:25~約1:5であり、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。いくつかの実施形態によれば、組成物は少なくとも3ヶ月間安定している。他の実施形態によれば、組成物は6ヶ月間安定している。更なる実施形態によれば、組成物は1年安定している。別の実施形態によれば、組成物は、全炭酸カルシウムのうち10%未満の結晶性炭酸カルシウムを含む。いくつかの実施形態によれば、組成物は、図6に示すような、例えば、図6A図6B図6C図6D図6E図6E図6F図6G、又は図6Hに示すようなFT-IRスペクトルによって特徴付けられる。
【0076】
ある実施形態によれば、上記実施形態のいずれか1つによる組成物は、医薬組成物、栄養補給組成物、又は化粧品組成物として、栄養補助食品又は医療用食品として配合される。一実施形態によれば、組成物は医薬組成物として配合される。別の実施形態によれば、組成物は栄養補給組成物として配合される。更なる実施形態によれば、組成物は栄養補助食品として配合される。更に別の実施形態によれば、組成物は医療用食品として配合される。
【0077】
本明細書で使用される「医薬組成物」という用語は、1種以上の薬学的に許容される担体と一緒に配合され、活性薬剤として本明細書に開示される安定化されたACCを含む組成物を指す。
【0078】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される担体」又は「薬学的に許容される賦形剤」は、薬学的投与に適合する任意の及び全ての溶媒、分散媒、防腐剤、酸化防止剤、コーティング剤、等張及び吸収遅延剤、界面活性剤などを指す。薬学的活性物質に関するこのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野において周知である。組成物は、補足的、追加的、又は増強された治療機能を提供する他の活性化合物を含み得る。
【0079】
「薬学的に許容される」及び「薬理学的に許容される」という用語は、動物又はヒトに必要に応じて投与された場合に有害、又はアレルギー性ではないか、又は他の有害反応を生じることのない分子的実体及び組成物を含む。
【0080】
本明細書で使用されるとき、用語「栄養補給組成物」は、健康上の利益を提供するか又は疾患の予防又は軽減に関連する治療作用を有する1つ以上の天然産物を含む、ヒト又は動物での使用に好適な組成物を指す。
【0081】
用語「栄養補助食品」は、本組成物を含有する製品を意味するために使用され、欧州指令などの許容可能な任意の指令に従って健康に有益な栄養素を提供することによって食品を補うことを意図する。例えば、栄養補助食品は、嚥下用のカプセル若しくは錠剤、又は食品と混合する粉末若しくは小型バイアルであってもよく、有益な健康効果を提供する。
【0082】
本明細書で使用する「化粧品組成物」という用語は、例えば、ヒトの皮膚のケアのための局所用組成物を指す。
【0083】
本明細書で使用されるとき、用語「医療用食品」は、対象の疾患又は障害の食事管理のために特別に配合された食品を指す。
【0084】
一実施形態では、本発明は、上記実施形態のいずれか1つで定義された組成物を含む栄養補助食品を提供する。他の実施形態では、本発明は、上記実施形態のいずれか1つで定義された組成物を含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、医薬組成物又は栄養補助食品は、ACC、及び安定化剤としての無機ポリリン酸塩、又はその薬学的に許容される塩を含む固体組成物を含み、P:Caモル比は少なくとも約1:90であり、組成物は少なくとも7日間安定している。一実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:35~約1:2である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:30~約1:3である。別の実施形態では、P:Caモル比は、約1:28~約1:3である。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。いくつかの実施形態では、Ca含量は約25重量%~38重量%である。別の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。更に別の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。特定の実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1であり、Ca含量は約25重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。別の実施形態では、モル比は1:25~約1:5であり、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。いくつかの実施形態によれば、固体組成物は30重量%未満の水を含む。他の実施形態によれば、組成物は20重量%未満の水を含む。ある実施形態によれば、組成物は5重量%~約30重量%の水を含む。別の実施形態によれば、組成物は5重量%~約25重量%の水を含む。他の実施形態によれば、固体組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。更なる実施形態によれば、固体組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。いくつかの実施形態によれば、無機ポリリン酸塩は、ピロリン酸塩、トリリン酸塩、及びヘキサメタリン酸塩から選択される。一実施形態によれば、安定化剤は、ピロリン酸塩、又はピロリン酸ナトリウムなど、その薬学的に許容される塩である。別の実施形態によれば、安定化剤は、トリリン酸塩、又はトリリン酸ナトリウムなど、その薬学的に許容される塩である。更なる実施形態によれば、安定化剤は、ヘキサメタリン酸塩、又はヘキサメタリン酸ナトリウムなど、その薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態によれば、このような固体組成物は、約865cm-1にてピークを有し、約1400cm-1にてショルダを有し、約1470cm-1にて炭酸塩に関連し、約1130cm-1にてリン酸塩に関連する、FT-IRスペクトルによって特徴付けられる。他の実施形態では、このような組成物は、365℃~550℃の範囲でACCの結晶化に関連する発熱ピークを含むDSCサーモグラムによって特徴付けられてもよく、DSC分析は、10℃/分の加熱速度で非酸化条件下にて行われる。更なる実施形態では、このような組成物は、上記で定義したFT-IRスペクトル及びDSCサーモグラムの両方によって特徴付けられてもよい。一実施形態によれば、組成物は粉末の形態である。別の実施形態によれば、固体組成物は、全炭酸カルシウムのうちの1%、5%、10%、又は30%未満の結晶性炭酸カルシウムを含む。いくつかの実施形態によれば、組成物は有機溶媒を含まない。
【0085】
いくつかの他の実施形態によれば、医薬品又は栄養補助食品は、上記で定義した懸濁液の形態の本発明の組成物を含む。定義したように、このような懸濁組成物は、本発明による固体組成物を含む。
【0086】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物又は栄養補助食品は、トリリン酸塩、例えばトリリン酸ナトリウムによって安定化されたACCを含む固体組成物を含み、P:Caモル比は約1:25~約1:5であり、組成物は約10重量%~約25重量%の水を含み、少なくとも1ヶ月間安定し、全炭酸カルシウムのうちの30%未満の結晶性炭酸カルシウムを含み、有機溶媒を含まない。別の実施形態によれば、固体組成物はヘキサメタリン酸塩、例えばヘキサメタリン酸ナトリウムによって安定化されたACCを含み、P:Caモル比は、約1:25~約1:5であり、組成物は約10重量%~約25重量%の水を含み、全炭酸カルシウムのうち30%未満の結晶性炭酸カルシウムを含み、有機溶媒を含まない。更なる実施形態では、固体組成物はピロリン酸塩、例えばピロリン酸ナトリウムによって安定化されたACCを含み、P:Caモル比は、約1:25~約1:5であり、組成物は約10重量%~約25重量%の水を含み、全炭酸カルシウムのうち30%未満の結晶性炭酸カルシウムを含み、有機溶媒を含まない。更なる実施形態では、このような組成物は、約30重量%~約38重量%のCa含量を有する。いくつかの実施形態では、モル比は1:25~約1:5であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態によれば、ある組成物などの組成物は、約865cm-1にてピークを有し、約1400cm-1にてショルダを有し、約1470cm-1にて炭酸塩に関連し、約1130cm-1にてリン酸塩に関連する、FT-IRスペクトルによって特徴付けられる。他の実施形態では、このような組成物は、365℃~550℃の範囲でACCの結晶化に関連する発熱ピークを含むDSCサーモグラムによって特徴付けられ、DSC分析は、10℃/分の加熱速度で非酸化条件下にて行われる。更なる実施形態では、このような組成物は、上記で定義したFT-IRスペクトル及びDSCサーモグラムの両方によって特徴付けられてもよい。
【0087】
上記実施形態のいずれか1つによる、医薬組成物、栄養補給組成物、若しくは化粧品組成物、栄養補助食品、又は医療用食品は、任意の公知の投与可能な形態で調製してもよい。このような調製物の非限定的例は、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性若しくは油性懸濁液、分散性粉末若しくは顆粒、乳剤、硬若しくは軟カプセル、又はシロップ若しくはエリキシル剤である。経口使用を意図した医薬組成物は、医薬組成物の製造のための当該技術分野で既知の任意の方法に従って調製することができ、薬学的に形が良く、味の良い調製物を提供するために、甘味料、香味料、着色料、及び保存剤から選択される1種以上の剤を更に含んでもよい。
【0088】
特定の実施形態によれば、医薬組成物、栄養補給組成物、又は化粧品組成物は、上記実施形態のいずれか1つによる栄養補助食品又は医療用食品は、錠剤、カプセル、マイクロカプセル化ペレット、粉末、懸濁液、軟膏、及び機能性食品、口腔投与用又は吸入投与用配合物として配合される。
【0089】
いくつかの実施形態によれば、本発明による医薬組成物は、炭酸カルシウム治療に応答する疾患又は病態を治療するのに使用するためのものである。いくつかの実施形態によれば、疾患又は病態は、疼痛、過剰増殖性疾患、皮膚疾患、神経障害、免疫障害、心血管疾患、肺疾患、栄養障害、繁殖障害、筋骨格障害、感染症、及び歯科疾患からなる群から選択される。特定の一実施形態によれば、疾患は癌である。
【0090】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、炭酸カルシウム治療に応答する疾患又は病態を治療するための医薬を調製するための、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物の使用を提供する。いくつかの実施形態によれば、疾患又は病態は、疼痛、過剰増殖性疾患、皮膚疾患、神経障害、免疫障害、心血管疾患、肺疾患、栄養障害、繁殖障害、筋骨格障害、感染症、及び歯科疾患からなる群から選択される。特定の一実施形態によれば、疾患は癌である。
【0091】
別の態様によれば、本発明は、非晶質炭酸カルシウム(ACC)、及び安定化剤としてのビスホスホネート、又はその薬学的に許容される塩を含む固体組成物を提供し、安定化剤のP原子とACCのCa原子との間のモル比(P:Caモル比)は少なくとも約1:90であり、組成物は5重量%超~約30重量%の水を含み、少なくとも7日間安定している。
【0092】
いくつかの実施形態によれば、P:Caモル比は約1:90~約1:1である。一実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:35~約1:2である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:30~約1:3である。別の実施形態では、P:Caモル比は、約1:28~約1:3である。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:5である。別の実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:6である。特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:15~約1:5である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。
【0093】
一実施形態では、本発明の固体組成物はACCを含み、Ca含量は約1重量%~約39重量%である。他の実施形態では、Ca含量は約5重量%~約38重量%である。別の実施形態では、Ca含量は、約10重量%、約15重量%、又は約20重量%~約38重量%である。更なる実施形態では、Ca含量は約25重量%~約38重量%である。更なる実施形態では、Ca含量は約27重量%~38重量%である。別の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。特定の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。
【0094】
ある実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1であり、Ca含量は約25重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は約1:28~約1:3であり、Ca含量は約27重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は約1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。別の実施形態では、モル比は1:25~約1:5であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。更に別の実施形態では、モル比は1:25~約1:5であり、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。
【0095】
用語「ビスホスホネート」は、炭素に共有結合した2つのPO(ホスホネート)基を有する化合物を指す。
【0096】
いくつかの実施形態によれば、ビスホスホネートは、エチドロン酸、ゾレドロン酸、メドロン酸、アレンドロン酸、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。ビスホスホネート塩の非限定的例は、Na、K、Mg、Mn及びZnである。
【0097】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、エチドロン酸又はその薬学的に許容される塩である。別の実施形態によれば、安定化剤は、ゾレドロン酸又はその薬学的に許容される塩である。更なる実施形態によれば、安定化剤は、メドロン酸又はその薬学的に許容される塩である。特定の実施形態によれば、安定化剤は、アレンドロン酸又はその薬学的に許容される塩である。
【0098】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、本発明の組成物は、上記で定義された1種以上の第2の安定化剤を含んでもよい。第2の安定化剤は、Ca原子に結合又はキレート化することができる官能基を含む無機又は有機化合物であってもよい。第2の安定化剤は、いくつかの実施形態では、第1の安定化剤よりも少ない量で存在することができる。いくつかの実施形態では、このような第2の安定化剤は、それ自体で、上記で定義した安定性をもたらすことはない。他の実施形態では、第2の安定化剤は第1の安定化剤と同一である。
【0099】
いくつかの実施形態では、第2の安定化剤は、Ca原子に強く結合することができるカルボン酸基、アミン基、ヒドロキシル基、リン酸基、又はホスホン酸基などの官能基を含む有機化合物である。
【0100】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、固体組成物は5%を超え、30重量%未満の水を含む。一実施形態によれば、組成物は10%を超え、30重量%未満の水を含む。いくつかの実施形態によれば、組成物は5重量%超~約25重量%の水を含む。別の実施形態によれば、組成物は約10重量%~約20重量%の水を含む。更なる実施形態によれば、組成物は約10重量%~約25重量%の水を含む。
【0101】
本発明による組成物は、長期間安定している。いくつかの実施形態によれば、組成物は少なくとも1ヶ月間安定している。他の実施形態によれば、組成物は少なくとも3ヶ月間安定している。更なる実施形態によれば、組成物は6ヶ月間安定している。ある実施形態によれば、組成物は少なくとも1年間安定している。特定の実施形態によれば、組成物は少なくとも2年間まで安定している。
【0102】
いくつかの実施形態では、ACCの30%以下が結晶形態に変換され、これにより、組成物は、全炭酸カルシウムの30%未満の結晶性炭酸カルシウム(CCC)を含む。ある実施形態では、組成物は、全炭酸カルシウムの25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、又は5%未満のCCCを含む。
【0103】
上記実施形態のいずれか1つによれば、組成物は粉末の形態である。いくつかの実施形態によれば、粉末中のACCの粒子は、約100μm未満の粒子径を有する。いくつかの実施形態では、ACC粒子は、約100μm~約5μmの粒子径を有する。他の実施形態では、粒子径は約50μm~約5μm、又は約30μm~約5μmである。1つの特定の実施形態では、50μm未満、40μm未満、30μm未満、20μm未満、又は10μm未満のサイズを有する粒子。いくつかの実施形態によれば、ACC粒子の少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%が5μm未満の粒子径を有する。
【0104】
別の実施形態によれば、組成物は粉末の形態であり、安定化剤はエチドロン酸、ゾレドロン酸、メドロン酸、アレンドロン酸、及びそれらの薬学的に許容される塩から選択され、P:Caモル比は約1:40~約1:1である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:35~約1:2である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:30~約1:3である。別の実施形態では、P:Caモル比は、約1:28~約1:3である。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。更なる実施形態では、Ca含量は約25重量%~38重量%である。別の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。更に別の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。ある実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1であり、Ca含量は25重量%~38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。別の実施形態では、モル比は1:25~約1:5であり、Ca含量は30重量%~36重量%である。いくつかの実施形態によれば、組成物は、5重量%超、又は約10重量%超から約30重量%の水を含む。ある実施形態では、組成物は、全炭酸カルシウムの25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、又は5%未満のCCCを含む。
【0105】
一実施形態によれば、本発明は、本発明の固体組成物を含む懸濁液を提供する。ある実施形態によれば、固体組成物は、上記実施形態のいずれか1つによる。
【0106】
一実施形態によれば、本発明は、上記実施形態のいずれか1つによる組成物及び水性担体を含む懸濁液の形態の組成物を提供する。
【0107】
いくつかの実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物中のACCは、少なくとも1日間安定したままである。いくつかの実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物中のACCは、2日間安定したままである。更なる実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物中のACCは、7日間安定したままである。更に別の実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物中のACCは、14日間安定したままである。他の実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物中のACCは、少なくとも1ヶ月間安定したままである。更なる実施形態によれば、懸濁液の形態の組成物中のACCは、少なくとも3ヶ月間安定したままである。一実施形態によれば、ACCは、1日、2日、7日、14日、1ヶ月、及び3ヶ月から選択される少なくとも1つの期間の間、安定したままである。
【0108】
上述のとおり、本発明の組成物は、安定している。上記実施形態のいずれか1つによれば、組成物は、全炭酸カルシウムのうちの1%、5%、10%、又は30%未満の結晶性炭酸カルシウムを含む。他の実施形態によれば、組成物は5%未満のCCCを含む。更なる実施形態によれば、組成物は、10%未満のCCCを含む。他の実施形態によれば、組成物は15%未満のCCCを含む。更に別の実施形態によれば、組成物は、20%未満のCCCを含む。他の実施形態では、組成物は、全炭酸カルシウムのうち25%未満又は30%未満のCCCを含む。
【0109】
いくつかの実施形態によれば、組成物は有機溶媒を含まない。
【0110】
上記実施形態のいずれか1つによれば、本発明による組成物、すなわち固体組成物又は懸濁液の形態の組成物は、上記に定義された1種以上の有機酸を更に含む。
【0111】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、本発明の組成物、例えば懸濁液は、上記で定義された第2の安定化剤を含んでもよい。
【0112】
上記態様のいずれか1つによれば、組成物は食用である。
【0113】
ある実施形態によれば、上記実施形態のいずれか1つによる組成物は、医薬組成物、栄養補給組成物、又は化粧品組成物として、栄養補助食品又は医療用食品として配合される。一実施形態によれば、組成物は医薬組成物として配合される。
【0114】
一実施形態では、本発明は、上記実施形態のいずれか1つで定義された組成物を含む栄養補助食品を提供する。他の実施形態では、本発明は、上記実施形態のいずれか1つで定義された組成物を含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、組成物は、ACC、及び安定化剤としての、例えばエチドロン酸、ゾレドロン酸、メドロン酸、アレンドロン酸などのビスホスホネート、及びそれらの薬学的に許容される塩を含む固体組成物であり、P:Caモル比は少なくとも約1:90であり、組成物は、5重量%超~約30重量%の水を含み、少なくとも7日間安定している。一実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:35~約1:2である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:30~約1:3である。別の実施形態では、P:Caモル比は、約1:28~約1:3である。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。いくつかの実施形態では、Ca含量は約25重量%~約38重量%である。別の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。更に別の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。特定の実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1であり、Ca含量は約25重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は約1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。別の実施形態では、モル比は約1:25~約1:5であり、Ca含量は30重量%~36重量%である。いくつかの実施形態によれば、固体組成物は5重量%超~約25重量%の水を含む。他の実施形態によれば、固体組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。更なる実施形態によれば、固体組成物は、約10重量%~約20重量%の水を含む。上記実施形態のいずれか1つによれば、固体組成物は、全炭酸カルシウムのうちの1%、5%、10%、又は30%未満の結晶性炭酸カルシウムを含む。いくつかの実施形態によれば、組成物は有機溶媒を含まない。別の実施形態によれば、組成物は、有機酸を更に含む。
【0115】
いくつかの他の実施形態によれば、医薬品又は栄養補助食品は、上記で定義した懸濁液の形態の本発明の組成物を含む。定義したように、このような懸濁組成物は、本発明による固体組成物を含む。
【0116】
特定の実施形態によれば、医薬組成物、栄養補給組成物、又は化粧品組成物は、上記実施形態のいずれか1つによる栄養補助食品又は医療用食品は、錠剤、カプセル、マイクロカプセル化ペレット、粉末、懸濁液、軟膏、及び機能性食品、口腔投与用又は吸入投与用配合物として配合される。
【0117】
いくつかの実施形態によれば、本発明による医薬組成物は、炭酸カルシウム治療に応答する疾患又は病態を治療するのに使用するためのものである。いくつかの実施形態によれば、疾患又は病態は、疼痛、過剰増殖性疾患、皮膚疾患、神経障害、免疫障害、心血管疾患、肺疾患、栄養障害、繁殖障害、筋骨格障害、感染症、及び歯科疾患からなる群から選択される。特定の一実施形態によれば、疾患は癌である。
【0118】
ある態様によれば、本発明は、無機ポリリン酸塩、ビスホスホネート、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される安定化剤によって安定化された非晶質炭酸カルシウム(ACC)を含む固体組成物を提供し、安定化剤のP原子とACCのCa原子との間のモル比(P:Caモル比)は、少なくとも約1:90であり、組成物は少なくとも7日間安定している。
【0119】
別の態様によれば、本発明は、安定化された非晶質炭酸カルシウム(ACC)、及び安定化剤としての無機ポリリン酸塩、ビスホスホネート、又はそれらの薬学的に許容される塩を含む懸濁液の形態の組成物を調製する方法を提供し、本方法は、(i)カルシウム源、(ii)安定化剤、及び(iii)炭酸塩源の水溶液を混合し、安定化された非晶質炭酸カルシウムを沈降させることを含み、安定化剤のP原子とACCのCa原子との間のモル比は、少なくとも約1:28である。
【0120】
更なる態様において、本発明は、安定化された非晶質炭酸カルシウム(ACC)を含む懸濁液の形態の組成物を調製する方法を提供し、本方法は、
a) カルシウム源及び安定化剤を水に溶解して溶液を得るステップと、
b) 炭酸塩源の水溶液をステップ(a)の溶液に添加して、非晶質炭酸カルシウム(ACC)を沈降させてACCの水性懸濁液を得るステップと、
c) 安定化剤の水溶液をステップ(b)で得られた懸濁液に添加して、安定化されたACC懸濁液を得るステップと、を含み、
安定化剤のP原子とACCのCa原子との間のモル比は少なくとも約1:90である。
【0121】
本明細書で使用される「水溶液」という用語は、上記の供給源の全て又は一部分を周囲温度で溶解する能力を有する任意の水性溶液を指す。
【0122】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、上記で定義したとおりである。いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、上記で定義した無機ポリリン酸塩又はその薬学的に許容される塩である。別の実施形態によれば、安定化剤は、上記で定義したビスホスホネートである。
【0123】
ある態様によれば、本発明の組成物を調製する方法は、
a) カルシウム源及び無機ポリリン酸塩を水に溶解して溶液を得るステップと、
b) 炭酸塩源の水溶液をステップ(a)の溶液に添加して、非晶質炭酸カルシウム(ACC)を沈降させてACCの水性懸濁液を得るステップと、
c) ステップ(b)で得られた懸濁液に無機ポリリン酸塩の水溶液を添加して安定化されたACC懸濁液を得るステップと、を含み、
安定化剤のP原子とACCのCa原子との間のモル比は少なくとも約1:90である。
【0124】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、ACCが沈降している間に1種の安定化剤を添加し、ACCの沈降後に第2の安定化剤を添加することを含む。第1及び第2ステップの安定化剤は、本発明による安定化剤と同じであっても、異なってもよい。
【0125】
いくつかの実施形態によれば、無機ポリリン酸塩は上記で定義したとおりである。1つの特定の実施形態では、ポリリン酸塩は、2~10個のリン酸基を含む。別の実施形態によれば、無機ポリリン酸塩は、ピロリン酸塩、トリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0126】
いくつかの実施形態によれば、P:Caモル比は約1:40~約1:1、又は約1:25~約1:5である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:35~約1:2である。ある実施形態では、P:Caモル比は、約1:30~約1:3である。別の実施形態では、P:Caモル比は、約1:28~約1:3である。他の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:4である。更なる実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:5である。別の実施形態では、P:Caモル比は、約1:20~約1:6である。特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:15~約1:5である。別の特定の実施形態では、P:Caモル比は、約1:25~約1:5である。
【0127】
ある実施形態では、Ca含量は約25重量%~38重量%である。別の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。更に別の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約36重量%である。
【0128】
ある実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1であり、Ca含量は25重量%~38重量%である。いくつかの実施形態では、モル比は1:28~約1:3であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。別の実施形態では、モル比は1:25~約1:5であり、Ca含量は30重量%~36重量%である。
【0129】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、カルシウム源は任意のカルシウムの水溶性塩であり、炭酸塩源は任意の炭酸塩の水溶性塩である。一実施形態では、カルシウム源は塩化カルシウムである。別の実施形態によれば、炭酸源は炭酸ナトリウムである。
【0130】
いくつかの実施形態によれば、本方法は、反応懸濁液をろ過して湿潤粉末状生成物(「ケーキ」)を得ることを含む。ろ過は、ブフナー漏斗、ヌッチェろ過漏斗によるろ過など、当該技術分野において既知の任意の方法によって行ってもよい。
【0131】
いくつかの実施形態によれば、本方法は、ケーキを水溶液で洗浄するステップを更に含む。1つの特定の実施形態では、水溶液は純水である。特に、生成物及び過剰の塩、例えば塩化ナトリウム、又は上記過剰の供給源反応物を除去するために洗浄を必要とする。
【0132】
いくつかの実施形態によれば、本方法はケーキを乾燥させることを含む。乾燥は、当該技術分野で既知の任意の方法によって行うことができる。乾燥するための非限定的例は、オーブン、真空オーブン、コンベアベルト炉、噴霧乾燥機、凍結乾燥、又は電子レンジでの乾燥である。粉末はまた、乾燥空気の能動的な流れによって、又は良好な空気循環を伴う室内に粉末を置くことによって、乾燥させることができる。
【0133】
いくつかの実施形態によれば、本方法は、ケーキから小粒子へ更に変換することを含む。一実施形態によれば、方法は、ケーキを粉砕して粉末を得ることを含む。他の実施形態では、崩壊は、破砕(grounding)、グレイニング(graining)、及び他の一般的に使用される方法を含む。
【0134】
いくつかの実施形態によれば、本方法は、ケーキを粉砕して、粉末粒子径が約300μm~約5μmである粉末にする。1つの特定の実施形態では、50μm未満、40μm未満、30μm未満、20μm未満、又は10μm未満のサイズを有する粒子。いくつかの実施形態によれば、ACC粒子の少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%が5μm未満の粒子径を有する。
【0135】
上述の実施形態の本方法によって得られる固体組成物は、上記に定義したとおり安定している。いくつかの実施形態によれば、固体組成物は、少なくとも7日間安定している。別の実施形態によれば、組成物は少なくとも1ヶ月間安定している。他の実施形態によれば、組成物は少なくとも3ヶ月間安定している。更なる実施形態によれば、組成物は6ヶ月間安定している。ある実施形態によれば、組成物は少なくとも1年間安定している。特定の実施形態によれば、組成物は少なくとも2年間まで安定している。
【0136】
いくつかの実施形態によれば、安定化剤は、ビスホスホネート又はその薬学的に許容される塩であり、固体組成物は、5重量%~約30重量%の水を含む。
【0137】
いくつかの実施形態によれば、本発明の固体組成物を水性担体中に更に懸濁させることを含む方法。
【0138】
上記実施形態のいずれか1つによれば、調製方法中、いずれの有機溶媒も添加されない。このため、得られた組成物は、微量の有機溶媒も含まない。このように、本発明の方法は、溶媒又は共溶媒としてエタノール又は他の有機液体を利用する、当該技術分野で既知の方法よりも、環境に優しく、製造するにあたってより安全である。
【0139】
一実施形態によれば、本発明の組成物を調製する方法は、
a) カルシウム源及び無機ポリリン酸塩を水に溶解するステップと、
b) 炭酸塩源の水溶液をステップ(a)の溶液に添加して、非晶質炭酸カルシウムを沈降させるステップと、
c) ステップ(b)で得られた懸濁液に無機ポリリン酸塩の水溶液を添加して安定化されたACCを得るステップと、
d) 反応懸濁液をろ過してケーキを得るステップと、
e) ケーキを水で洗浄するステップと、
f) ケーキを乾燥させるステップと、
g) ケーキを粉砕して粉末にするステップと、を含み、
調整中いずれの有機溶媒も添加せず、無機ポリリン酸塩は、トリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、又はピロリン酸塩であり、P:Caモル比は約1:25~約1:5である。いくつかの実施形態によれば、Ca含量は、約25%~約38重量%である。他の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。更なる実施形態では、Ca含量は、少なくとも約30重量%~約36重量%である。ある実施形態では、P:Caモル比は約1:25~約1:5であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態によれば、ACC粒子の少なくとも90%は、5μm未満の粒子径を有する。
【0140】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、1種以上の第2の安定化剤を添加することを含む。このような第2の安定化剤は、カルボン酸、アミン、リン酸塩、ホスホン酸塩、及びクエン酸、乳酸塩、ホスホセリン、グルコン酸塩など、Ca原子に結合する、キレート化する、又は錯体化する傾向のある他の官能基を含む有機化合物など、ACCの安定化剤として機能することが既知の有機化合物であってもよい。
【0141】
別の実施形態によれば、本発明の組成物を調製する方法は、
a) カルシウム源及びビスホスホネートを水に溶解するステップと、
b) 炭酸塩源の水溶液をステップ(a)の溶液に添加して、非晶質炭酸カルシウムを沈降させるステップと、
c) ステップ(b)で得られた懸濁液にビスホスホネートの水溶液を添加して安定化されたACCを得るステップと、
d) 反応懸濁液をろ過してケーキを得るステップと、
e) ケーキを水で洗浄するステップと、
f) ケーキを乾燥させるステップと、
g) ケーキを粉砕して粉末にするステップと、を含み、
調製中、いかなる有機溶媒も添加せず、P:Caモル比は約1:25~約1:5であり、組成物は5重量%超~約30重量%の水を含む。いくつかの実施形態によれば、Ca含量は、約25%~約38重量%である。他の実施形態では、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。更なる実施形態では、Ca含量は、少なくとも約30重量%~約36重量%である。ある実施形態では、P:Caモル比は約1:25から約1:5であり、Ca含量は約30重量%~約38重量%である。いくつかの実施形態によれば、ACC粒子の少なくとも90%は、5μm未満の粒子径を有する。別の実施形態によれば、組成物は、10重量%超~約30重量%、又は約10重量%~約20重量%の水を含む。
【0142】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、1種以上の第2の安定化剤を添加することを含む。このような第2の安定化剤は、カルボン酸、アミン、リン酸塩、ホスホン酸塩、及びクエン酸、乳酸塩、ホスホセリン、グルコン酸塩など、Ca原子に結合する、キレート化する、又は錯体化する傾向のある他の官能基を含む有機化合物など、ACCの安定化剤として機能することが既知の有機化合物であってもよい。
【0143】
別の態様によれば、本発明は、有効量の本発明の組成物を投与することを含む、炭酸カルシウム治療に応答する疾患又は病態を治療するための方法を提供する。
【0144】
いくつかの実施形態によれば、本組成物は、上記で定義したとおり固体組成物である。
【0145】
一実施形態によれば、方法は、非晶質炭酸カルシウム(ACC)と、安定化剤としての無機ポリリン酸塩、又はその薬学的に許容される塩とを含む固体組成物を投与することを含み、安定化剤のP原子とACCのCa原子との間のモル比(P:Caモル比)は、少なくとも約1:90であり、本組成物は少なくとも7日間安定している。
【0146】
別の実施形態によれば、本方法は、無機ポリリン酸塩、ビスホスホネート、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される安定化剤によって安定化された非晶質炭酸カルシウム(ACC)を含む固体組成物を投与することを含み、安定化剤のP原子とACCのCa原子との間のモル比(P:Caモル比)は、少なくとも約1:90であり、組成物は5重量%~約30重量%の水を含み、少なくとも7日間安定している。
【0147】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、炭酸カルシウム治療に応答する疾患又は病態を治療するための医薬を調製するための、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物の使用を提供する。いくつかの実施形態によれば、疾患又は病態は、疼痛、過剰増殖性疾患、皮膚疾患、神経障害、免疫障害、心血管疾患、肺疾患、栄養障害、繁殖障害、筋骨格障害、感染症、及び歯科疾患からなる群から選択される。特定の一実施形態によれば、疾患は癌である。
【0148】
本明細書で使用される病態又は患者を「治療する」という用語は、臨床結果を含む有益な又は所望の結果を得るためのステップを行うことを指す。有益な又は望ましい臨床結果としては、これらに限定されないが、疾患に関連する1つ以上の症状の緩和又は改善が挙げられる。
【0149】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、疾患又は病態を治療するために安定化されたACCを含む組成物の十分な量を指す。
【0150】
本明細書で使用される「応答する」という用語は、炭酸カルシウムに応答し、それによって治療され得る任意の疾患又は病態を指す。
【0151】
物質、化合物、又は剤の対象へ「投与すること」又は「投与」という用語は、当該技術分野において既知の様々な方法の1つを用いて実施することができる。例えば、化合物又は剤は、経腸的又は非経口的に投与することができる。経腸的は、経口、舌下、又は直腸内を含む胃腸管を介する投与を指す。非経口投与には、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、皮下、眼内、舌下、鼻腔内、吸入、脊髄内、大脳内、及び経皮的(例えば皮膚管による吸収)投与が挙げられる。化合物又は剤は、再充填可能な又は生分解性ポリマーデバイス、他のデバイス(例えばパッチ及びポンプ)、又は配合物によっても適切に導入され得、これらは、化合物又は剤の持続(extended)放出、除放(slow)、又は制御された放出を提供する。投与することは、例えば、1回、複数回、及び/又は1つ以上の長い期間にわたって実施することもできる。いくつかの態様では、投与することには、自己投与を含む直接的投与すること、及び薬物又は医療用食品を処方する行為を含む間接的投与することを含む。例えば、本明細書で使用される場合、患者に薬物若しくは医療用食品を自己投与するように指示するか、又は他人によって投与させるように指示する医師、及び/又は患者に薬物若しくは医療用食品の処方箋を提供する医師は、患者に、薬物若しくは医療用食品を投与する。
【0152】
いくつかの実施形態によれば、疾患又は病態は、疼痛、過剰増殖性疾患、皮膚疾患、神経障害、免疫障害、心血管疾患、肺疾患、栄養障害、繁殖障害、筋骨格障害、感染症、及び歯科疾患からなる群から選択される。特定の一実施形態によれば、疾患は癌である。
【0153】
本明細書で使用される用語「約」は、用語「約」が具体的に定義されるFT-IRスペクトルのピークを除き、量、時間的持続時間などの測定可能な値を指す場合、規定値の±10%、又は±5%、±1%、又は更には±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0154】
本発明を一般的に記載したことから、以下の実施例を参照することにより、本発明をより容易に理解することができ、これは説明のために提供され、本発明を限定するものではないことを意図する。
実施例
材料及び方法
【0155】
実験に使用した材料は、塩化カルシウム(78%)、炭酸ナトリウム、クエン酸、ホスホセリン(PS)、トリリン酸ナトリウム(90%)、ヘキサメタリン酸ナトリウム(HMP)(90%)、エタノール(95%)、ピロリン酸ナトリウム(Pyr)(90%)、リン酸一ナトリウム(無水)、エチドロン酸(ET)(60%水溶液)、ゾレドロン酸(ZA)、メドロン酸(MA)及び塩酸である。
安定化剤濃度の定義
【0156】
以下に示す全実施例における安定化剤の濃度は、以下のように定義される:
【0157】
安定化剤(%)=(最初に添加された安定化剤の量(g)/最初に添加されたCaCl2の量(g))×100
【0158】
安定化剤の異なる濃度とP:Caモル比との間の相関を表4にまとめる。
安定性評価
【0159】
懸濁液中又は粉末としてのACCの安定性試験は、異なる時間間隔でサンプリングし、結晶性炭酸カルシウムの量を初期量(百分率)として評価することによって行った。試料中の炭酸カルシウムの結晶相の量は、X線回折(XRD)法を用いて評価した。
【0160】
XRD収集-実験セクション
【0161】
X線データは、Cu-Kα放射を提供する回折されたビーム上で、V=40kV、I=30mAで動作する、グラファイトモノクロメータを備えたPanalytical粉末回折計(Philips 1050/70又はEmpyrean)で収集する。スキャンは、2θが15°~50°又は24°~36°の範囲であり、約0.03°に等しいステップで実行する。この間隔には、方解石(2θ角度=29.3°±0.2°での反射(104))及びバテライト(2θ角度=24.8°、27.0°及び32.7°、それぞれ±0.2°に等しい2θ角での反射(100)、(101)及び(102))の主ピークを含む。
【0162】
X線データは、Cu-Kα放射線を提供する回折されたビーム上で、V=40kV、I=15mAで動作する、グラファイトモノクロメータを備えたRigaku粉末回折計(MiniFlex 600 Benchtop)で収集する。スキャンは、2θが26°~34°の範囲であり、約0.02°に等しいステップで実行する。この間隔には、方解石(2θ角度=29.3°±0.2°での反射(104))及びバテライト(2θ角度=24.8°、27.0°及び32.7°、それぞれ±0.2°に等しい2θ角での反射(101)、及び(102))の主ピークを含む。
【0163】
試料は、非晶質及び結晶質(方解石又はバテライトなど)炭酸カルシウムの既知の量及び比を含む標準試料を用いた較正プロットと比較した。
実施例1ポリリン酸塩、又は一塩基性リン酸塩で安定化したACCの粉末組成物の安定性
【0164】
異なる安定化剤(トリリン酸塩(TP)、ヘキサメタリン酸塩(HMP)、ピロリン酸塩(Pyr)、一塩基性リン酸(PM)、又はクエン酸(CA))によって安定化されたACCの粉末組成物を調製した。典型的な手順では、カルシウム溶液(水300ml、塩化カルシウム24g及び安定化剤)と炭酸塩溶液(水200ml及び炭酸ナトリウム17.3g)とを一緒に混合してACCを沈降させた。安定化剤溶液(表1には、100mlの水及び安定化剤;カルシウム及び安定化剤溶液中の安定化剤の含量を提示し、表4には、異なる濃度の安定化剤とP:Caモル比の相関をまとめる)をACC懸濁液に添加して、安定したACC懸濁液を作製した。次いで、ブフナー漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキを水で洗浄した。このケーキを乾燥させて、粉末を得た。材料及び方法の部分に記載したように、粉末中のACCの安定性試験は、XRRによって行った。その結果は表2及び表3に提示する。代表的XRDスペクトルは、図1図3に提示する。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
実施例2懸濁液中のポリリン酸塩又はホスホセリンで安定化したACCの安定性
【0165】
異なる安定化剤で安定化したACCのいくつかの懸濁液を調製した。典型的な手順では、カルシウム溶液(水1L、塩化カルシウム21.6g、及び安定化剤(TP、HMP、Pyr、又はPS)及び炭酸塩溶液(水800ml及び炭酸ナトリウム15.6g)を一緒に混合して、ACCを沈降させた。安定化剤溶液(水200mL及び安定化剤;表4には、カルシウム及び安定化剤溶液中の安定化剤の含量を提示する)をACC懸濁液に添加して、安定化したACC懸濁液を作製した。安定性試験の結果は、表5に提示する。
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0166】
濃度1%又は5%のホスホセリンは、懸濁液中でACCを安定化できないことが見出された。炭酸カルシウムは全て、4時間後に既に結晶であった(PS5%組成物については例えば図4参照)。
実施例3エチドロン酸で安定化した再懸濁ACCの安定性
【0167】
エチドロン酸によって安定化されたACCのいくつかの懸濁液を調製した。典型的な手順では、カルシウム溶液(水600ml、塩化カルシウム12g、及びエチドロン酸(60%水溶液))及び炭酸溶液(水100ml及び炭酸ナトリウム8.65g)を一緒に混合してACCを沈降させた。安定化剤溶液(水300ml及びエチドロン酸;安定化剤溶液としてのカルシウム中のエチドロン酸含量を表9に提示する)をACC懸濁液に加え、安定化したACC懸濁液を作製した。次いで、ブフナー漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキを水で洗浄した。懸濁液は、ケーキを水1100mlで分散することにより得た。懸濁液中のACCの安定性の試験を行い、その結果を表10に提示する。
【表9】
【表10】
実施例4クエン酸とHMP、TP又はPSとの組み合わせによって安定化された再懸濁ACCの安定性
【0168】
クエン酸及びHMPによって安定化されたACCの2種の粉末組成物(6%HMP-1%CA及び10%HMP-1%CAと称する)を以下のように調製した:カルシウム溶液(水100mL、塩化カルシウム11.76g、クエン酸0.12g、及びHMP0.35g又は0.59g)と炭酸塩溶液(水100ml及び炭酸ナトリウム8.48g)とを一緒に混合してACCを沈降させた。安定化剤溶液(水20mL及びHMP0.35g又は0.59g)をACC懸濁液に添加して、安定化したACC懸濁液(6%HMP-1%CA懸濁液及び10%HMP-1%CA懸濁液であって、それぞれ、HMP0.7及び1.18gを含む)を作製した。次いで、ブフナー漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキを水で洗浄した。
【0169】
クエン酸及びホスホセリンによって安定化されたACCの2種の粉末組成物(6.8%PS-6%CA-Et-OH及び5%PS-6%CA-Et-OHと称する)を以下のように調製した:カルシウム溶液(水100mL、塩化カルシウム11.76、クエン酸0.12g及びホスホセリン0.8g又は0.59g(6.8%PS-6%CA及び6%PS-6%CA組成物のそれぞれに対して))と炭酸塩溶液(水100mL、及び炭酸ナトリウム8.48g)とを一緒に混合してACCを沈降させた。ACC懸濁液に安定化剤溶液(水20mL及び0.59のクエン酸)及びエタノール50mlを添加して、安定化したACC懸濁液を作製した。次いで、ブフナー漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキをエタノールで洗浄した。
【0170】
得られた粉末を1100mlの水に分散させて懸濁液を得、材料及び方法に記載したようにACCの安定性試験を行った。結果は、表11に提示する。
【0171】
クエン酸及びホスホセリンによって安定化されたACCの粉末組成物(10%TP-1%CA)を以下のように調製した:カルシウム溶液(水300mL、塩化カルシウム24g、クエン酸0.24g、及びトリリン酸塩1.2g)と炭酸塩溶液(水200mL及び炭酸ナトリウム17.3g)とを一緒に混合してACCを沈降させた。ACC懸濁液に安定化剤溶液(水100mL、及びトリリン酸塩1.2g)を添加して、安定化したACC懸濁液を作製した。次いで、ブフナー漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキを水で洗浄した。得られた粉末を水792mlに分散させて懸濁液を得、材料及び方法に記載したようにACCの安定性試験を行った。結果は、表11に提示する。
【0172】
クエン酸及びホスホセリンによって安定化されたACCの粉末組成物(5%PS-5%CA-Et-OH)を以下のように調製した:カルシウム溶液(水100mL、塩化カルシウム11.76g、クエン酸0.12g、及びホスホセリン0.6g)と炭酸塩溶液(水100ml及び炭酸ナトリウム8.48g)とを一緒に混合してACCを沈降させた。ACC懸濁液に安定化剤溶液(水20mL及び0.48のクエン酸)及びエタノール50mlを添加して、安定化したACC懸濁液を作製した。次いで、ブフナー漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキをエタノールで洗浄した。このケーキを乾燥させて、粉末を得た。ACC粉末8gを水792gに再懸濁させた。結果は、表11に提示する。
【表11】
実施例5塩酸の存在下にてHMPで安定化した再懸濁ACCの安定性
【0173】
HMPによって安定化されたACCの4種の粉末組成物を以下のように調製した:カルシウム溶液(水100ml、塩化カルシウム12g、8%塩酸1g及びHMP)及び炭酸塩溶液(水100ml及び炭酸ナトリウム8.65g)と一緒に混合してACCを沈降させた。安定化剤溶液(水50ml及びHMP;カルシウム及び安定化剤溶液中のHMP酸の含量を表12に提示する)をACC懸濁液に添加して、安定化したACC懸濁液を作製した。次いで、ブフナー漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキを水で洗浄した。得られた粉末を1100mlの水に分散させて懸濁液を得た。懸濁液中のACCの安定性を上記のように試験し、その結果を表13に提示する。
【表12】
【表13】
実施例6再懸濁ACCの安定性に及ぼす異なるポリリン酸塩の効果
【0174】
ACCの3種の粉末組成物(10%HMP、10%Pyr、及び10%TPと称する)を以下のように調製した:カルシウム溶液(水100mL、塩化カルシウム12g、及びHMP、PyroP又はTP0.6g)及び炭酸塩溶液(水100ml及び炭酸ナトリウム8.65g)を一緒に混合してACCを沈降させた。安定化剤溶液(水300ml及びHMP、PyroP、又はTP0.6g)をACC懸濁液に添加して、安定化されたACC懸濁液(それぞれ、HMP、PyroP、又はTP1.2gを含む10%HMP、10%Pyr、及び10%TP懸濁液)を作製した。次いで、ブフナー漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキを水で洗浄した。得られた粉末を水1100mlに分散させて懸濁液を得、安定性試験を行った。結果は、表14に提示する。
【表14】
実施例7ビスホスホネートで安定化したACCの安定性
【0175】
様々な含量の安定化剤により安定化させたACCのいくつかの懸濁液を調製した。典型的な手順では、カルシウム溶液(水100mL又は200mL、塩化カルシウム12g及び安定化剤)と炭酸塩溶液(水100ml及び炭酸ナトリウム8.65g)とを一緒に混合してACCを沈降させた。安定化剤溶液(水300mL及び安定化剤;表15には、カルシウム及び安定化剤溶液中の安定化剤の含量を提示する)をACC懸濁液に添加して、安定化したACC懸濁液を作製した。次いで、ブフナー漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキを水で洗浄した。懸濁液は、ケーキを水で分散することにより得た。得られた粉末を水1100mlに分散させて、懸濁液中のACCの安定性試験を行った。結果は、表16に提示する。
【表15】
【表16】
実施例8クエンエチドロン酸及びエタノールで安定化した再懸濁ACCの安定性
【0176】
典型的な手順において、カルシウム溶液は、水100mL、塩化カルシウム11.76g、クエン酸0.12g、及びエチドロン酸0.59gを含んだ。炭酸塩溶液は、水100mL及び炭酸ナトリウム8.48gを含んだ。安定化溶液は、水20mLと0.59gのクエン酸を含んだ。有機溶媒としてエタノール50mlを用いた。カルシウム溶液及び炭酸塩溶液を一緒に混合してACCを沈降させ、安定化剤溶液及びエタノールをACC懸濁液に添加して、安定化したACC懸濁液を作製した。次いで、ブフナー漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキをエタノールで洗浄した。懸濁液は、ケーキを水で分散することにより得た。ACCの安定性を試験し、その結果を表17に提示する。
【表17】
実施例9異なるACC濃度を有するACC-トリリン酸塩懸濁液の安定性
【0177】
10%TP-0.06%Ca
【0178】
水2L、塩化カルシウム8.66g、及び0.433gを含むカルシウム溶液を、水1800ml及び炭酸ナトリウム6.24gを含む炭酸塩溶液と混合して、ACCを沈降させた。水200ml及びトリリン酸塩0.433gを含む安定化溶液をACC懸濁液に添加して、安定化したACC懸濁液を作製した。
【0179】
10%TP-1%Ca
【0180】
水300ml、塩化カルシウム24g、及びトリリン酸塩1.2gを含むカルシウム溶液を、水200ml及び炭酸ナトリウム17.3gを含有する炭酸溶液と混合して、ACCを沈降させた。水100ml及びトリリン酸塩1.2gを含む安定化溶液をACC懸濁液に添加して、安定化したACC懸濁液を作製した。これらの懸濁液の安定性を試験し、その結果を表18に提示する。
【表18】
【0181】
この結果から、懸濁液中のACCの濃度は、ACCの安定性に有意に影響しないことが分かる。
実施例10ACC乾燥粉末の含量
【0182】
異なる安定化剤によって安定化され、実施例1に記載されたように調製されたACCの粉末調製物中のリン酸原子及びカルシウムなどの異なる化合物の含量は、誘導結合プラズマ(ICP)法を用いて、試験を行った。これらの結果を表19にまとめる。
【表19】
【0183】
異なる安定化剤で安定化したACCの固体粉末組成物のCa含量は約30~40重量%であることが分かる。
実施例11ACC-TP10%粉末のスケールアップ生産
【0184】
典型的な手順では、カルシウム溶液は、水11L、塩化カルシウム1.2kg、及びトリリン酸塩60gを含んだ。炭酸塩溶液は、水10L及び炭酸ナトリウム864gを含んだ。安定化溶液は、水1Lとトリリン酸塩60gを含んだ。カルシウム溶液と炭酸塩溶液とを一緒に混合してACCを沈降させ、安定化剤溶液をACC懸濁液に添加して、安定化したACC懸濁液を作製した。次いで、ヌッチェろ過用漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキを水で洗浄した。このケーキを乾燥させて、粉末を得た。得られた粉末の安定性を表20に提示する。
【表20】
実施例12固体状態NMR分析
方法
【0185】
全てのMAS NMR実験は、4mm二重共鳴MASプローブを用いてBruker Advance III 500MHzナローボア分光計で行った。
【0186】
13C CPMAS実験は、H 90°パルス幅2.5μs、混合時間2ms、及び捕捉間の5秒のリサイクル遅延を使用して、回転速度8kHzで実施した。アダマンタンに関して化学シフトが得られた(38.55、29.497ppm)。
【0187】
31P CPMAS実験は、H 90°パルス幅2.5μs、混合時間3ms、及び捕捉間の5秒のリサイクル遅延を使用して、回転速度10kHzで実施した。NaHPOに関して化学シフトが得られた(6.5ppm)。
【0188】
ピーク偏差は±0.5ppmである。
結果及び考察
【0189】
全てのサンプルは、NMR CP-MAS測定の前にX線粉末回折を実施し、ACC-TP1%を除いて約100%非結晶質含量を有することが見出された(下記表21参照)。
【0190】
全ての13C SS-NMRは、168.7±0.5ppmにてACC炭酸イオンの炭素に関連する1つのピーク(以下の表21を参照)を示した。したがって、ACC中の特定のポリリン酸塩分子又は異なるポリリン酸塩安定化剤の量(%)が異なっても、13C CP-MASによって観察される化学シフトへの影響はない。炭酸イオンの炭素原子は、そのリン組成又は化学構造とは関係なく、全ての系において同じ空間環境を「感じる」。
【0191】
31P NMRにおいて、ピークの数(PSは1つ、Pyro-Pは2つ、TPは3つ)は、各分子内のリン酸原子の数を反映し、異なる空間環境であることを示す。HMPは3つのピークを有するが、それぞれ2つのピークのオーバーレイに関連する可能性のある6つのリン酸原子を有するか、又は2つのリン酸原子のそれぞれがほぼ同じ空間環境を示す。異なるACC-TP濃度(3%対6%及び10%)は、上部フィールド信号の差(+3.7対+2.8及び+3.0)を示す。試料の測定は一度であり、調製も一回であったため、これらの差異は評価しないことに決定した。
【表21】
【0192】
これらの結果から、全ての無機ポリリン酸塩は無傷であり、より小さな化合物に崩壊又は分解しないことが分かる。
実施例13ポリリン酸塩で安定化したACCの示差走査熱量測定(DSC)解析
【0193】
DSC分析は、窒素ガスを80ml/分で流すことによって得た非酸化条件で行い、10℃/分で30℃から600℃に昇温した。
【0194】
リン類似体でドープされたACCのDSCサーモグラムは、約50~250℃(約128℃でピーク)の間で広い発熱ピークを呈した。これは、吸収された蒸発水に由来するものである。TPについては、発熱ピークは、より高い温度約367~414℃で現れる(典型的なサーモグラムは図5に示す)。
【0195】
異なる濃度(w/w)、例えば2%、3%、4%、6%でのトリリン酸塩でドープしたACCの結晶化ピークは、結晶化温度に関連する発熱ピークの上昇を示す:それぞれ、367℃、389℃、400℃及び414℃。DSC分析は、ACC中の安定化剤濃度の低下により加熱時の結晶相へのACCの変換が加速することを示している。したがって、加熱時のACC粉末の安定性は、安定化剤の濃度に依存し、濃度が高くなると、加熱時に安定性が高くなる。これは、周囲条件で安定化剤レベルが高いことによりACCがより物理的に安定していることを示す可能性がある。
実施例14ポリリン酸塩で安定化したACCのFT-IR解析
【0196】
試料のFT-IRスペクトルは約1400cm-1にて強いピークを示し、約1470cm-1にてショルダがあり、約865cm-1にて炭酸塩(COに関連して追加の中間ピークを示す。いずれのピークも、±4cm-1の精度で測定した。これらのピークは、ACC中のTP、HMP及びPS型の安定化剤及びACC中の異なる量のTP(%)については同じ強度を示す(図6)。これにより、カルボニル原子分子が、そのリン組成又は化学構造とは関係なく、全ての系において同じ空間環境を「感じる」固体NMRでの観察が強化される。
【0197】
約1130cm-1での小さなピークはリン酸塩と関連している。ACC-PS1%-5%CAの場合には、リン酸塩ピークは最低レベルまで低下し、10%TPに相当する最大値を有するTP中、その最高レベル3%~10%まで徐々に増加する。図6では、同じ安定化剤濃度10%(w/w)で、ピロリン酸塩(図6G~6H)、トリリン酸塩(図6A~6D)、ヘキサメタリン酸塩(図6E~6F)で安定化したACCを比較した。このため、約1130cm-1でのピーク強度を観察することによって、安定化剤の異なる構造を区別することができた。まとめ:ピーク強度の増加は、ACC中に異なる濃度(%)で存在する同じリン酸分子を比較したとき、ACC中のリン酸安定化剤の増加率を反映しているか、又は安定化剤としてACC中に同じ濃度(%)の異なるリン酸基分子と比較したとき、1分子当たりのリン酸原子の増加を反映している。
【0198】
CaClとリン酸塩安定化剤との副反応から生じ得るCa(POのピークは検出されなかった。Ca(POへの分解は観察されなかった。
【0199】
また、約3300cm-1では、水和ACCの水に関連する、広い、小さなピークもある。
実施例15異なる安定化剤によって安定化された固体ACC組成物の含水量
【0200】
熱重量分析を用いて、異なる安定化剤で安定化した固体ACC調製物の含水量を測定した。TGA Q500 V20.13/Universal V4.5A TA機器を以下の加熱プログラムで使用した:RT~1000°C、加熱速度:10°C/分。N流速:80mL/分。試料重量:約10~15mg、1回繰り返す。
【0201】
TGA曲線では、二つの見かけの重量減少プロセスが明らかである:1つ目は室温(RT)から約300°Cまでに放出された水であり、2つ目は約500~800°Cから炭酸カルシウムが分解するまでの温度範囲である。これにより、ACC-TP試料中の含水量は約17~18%であったと推定できた。これらの結果を表22にまとめる。
【表22】
実施例16マウス骨転移モデルにおけるACCの有効性
目的と目標
【0202】
この研究の目的は、腹腔内(IP)注入によるマウスモデルにおける骨転移の発生及び進行に対するトリリン酸塩で安定化されたACC(ACC-TP)の潜在的治療有効性を評価することであった。このモデルは、4T1腫瘍細胞(マウス乳腺腫瘍に由来する細胞)の骨内接種によって誘導される。2つのACC濃度を調べた。これらの有効性を対照カルシウム源としてのCaCl2及び骨転移の一般的な治療(ビスホスホネートアレンドロン酸)と比較した。
試験物品
【0203】
腹腔内注入(IP)によるACC投与:
【0204】
10%TP及び1%CA調製物で安定化したACCの5μm粉末の調製
【0205】
ACC1%元素カルシウムは、以下のように調製した:水100ml、塩化カルシウム12g、クエン酸0.12g及びトリリン酸塩0.6gを含むカルシウム溶液を水100ml及び炭酸ナトリウム8.65gを含む炭酸塩溶液と混合して、ACCを沈降させた。水50ml及びトリリン酸塩0.6gを含む安定化溶液をACC懸濁液に添加して、安定化したACC懸濁液を作製した。次いで、ブフナー漏斗を用いてACCをろ過し、ケーキを水で洗浄した。ケーキを乾燥し、粉砕した後、粒子粉末を得た。粒子サイズ5μmに到達するまで、追加の粉砕を行った。
【0206】
生理食塩水中のACC-TP組成物
【0207】
2種のACC-TP組成物を調製した。
【0208】
配合物1(ACC1と称する):5μmに粉砕した0.33gのACC粉末を生理食塩水100mlに加えて最終濃度0.1%カルシウム(1mg/ml)にした。
【0209】
配合物2(ACC2と称する):5μmに粉砕した0.50gのACC粉末を生理食塩水100mlに加えて最終濃度0.15%カルシウム(1mg/ml)にした。
【0210】
ボルテックスを用いて懸濁液を混合した。25G針を備えた1ml注射器を用いて、マウスに懸濁液200μlを6回/週腹腔内注入した。
【0211】
ビスホスホネート―アレンドロン酸
【0212】
アレンドロン酸100mg(Sigmaカタログ番号A4978)を生理食塩水10mlに溶解して最終濃度10mg/mlの原液とした。次に、濃度0.1mg/mlを調製した(希釈1:100)。10mg/ml原液120μlを11,880μlに溶解した。
【0213】
使用した最終濃度は2μg/mlであった。したがって、0.1mg/ml原液0.6mlを生理食塩水29.4mlに溶解した。注入直前に注入溶液を作製した。原液は-20℃で保存した。
【0214】
25G針を備えた1ml注射器を用いて、マウスに懸濁液200μlを3回/週皮下注入した。
【0215】
塩化カルシウム
【0216】
CaCl 0.35gを生理食塩水100mlに溶解して、最終濃度0.1%カルシウム(1mg/ml)とした。25G針を備えた1ml注射器を用いて、マウスに懸濁液200μlを6回/週腹腔内注入した。
試験デザイン
【0217】
この研究は、マウスモデルにおける腹腔内(IP)注入によるACC-TPの潜在的治療有効性、骨転移の進行及び進行を評価するために設計された。癌モデルは、脛骨に癌細胞を脛骨内注入することによって誘導した。腫瘍転移後の癌細胞と骨との関係に焦点を当てる場合には、脛骨内注入が使用されるため、このような試験に最も適していると考えられている。
【0218】
カルシウム及び対照を含む全ての試験品目がIP注入によって投与されたことから、ACCのいかなる潜在的治療有効性も、ACCの特性によるものとなり、投与経路によるものではないという仮説が立てられた。
【0219】
実験には雌マウス(BALB/c、9週齢)を用いた。試験開始時の動物の体重変動は、性別の平均体重の±20%を超えることはなかった。初期体重は16~19グラムであった。実験の5日前にマウスを順応させた。
【0220】
動物を35×30×15cmのポリエチレンケージ(6匹/ケージ)に収容し、ステンレススチールの上部グリルを用いてプラスチックボトル内にペレット状食品及び飲料水を補助した。寝床:蒸気殺菌した清潔な水田殻(Harlan、Sani-chip カタログ番号:2018SC+F)を使用し、寝床材料はケージと共に少なくとも週に1回交換した。
【0221】
食物と水の消費量を記録し、週1回文書にした。
実験手順
【0222】
最初の対照又は試験品目投与日を「1日目」と定義した。試験日「0日目」に、ケタミン(80mg/kg)及びキシラジン(5mg/kg)の腹腔内注入を用いて全マウスに麻酔した。4T1(CRL-2539、B1)細胞を、用量レベル70x10細胞及び用量体積動物当たり10μlで脛骨内に脛骨内注入した。
【0223】
カルシウムを含む対照又は試験品目は、1日目から試験終了まで毎日(6日/週)25G針で腹腔内投与した。アレンドロン酸は、1日1回、週3日皮下投与した。
【0224】
注入日に、動物15匹を麻酔注入手順後死亡したために試験から除外した。マウスの死亡率は無作為化され、注入時間に特有的ではなかった。それにもかかわらず、いずれの群も依然として統計分析用に十分な数のマウスから構成された。各群のマウス数を表23に詳しく示す。
【表23】
【0225】
本試験は、第1F群、第2F群、第5F群は「27日目」に終了し、第3F群、第4F群は「23日目」に終了した。試験終了時(23日目及び27日目)に、動物をCO窒息により麻酔した。
観察結果及び検査
【0226】
以下の測定結果及び観察結果を記録した:(i)死亡率及び罹患率(毎日)、(ii)臨床徴候の観察結果(週2回)、(iii)体重測定(週1回及び試験終了時)、(iv)X線撮影分析、及び(v)食物及び水の消費量(週1回)。
臨床観察結果
【0227】
試験終了まで、全動物の臨床的徴候について週2回観察した。
【0228】
皮膚、毛皮、眼、粘膜、呼吸器の変化、分泌物及び排泄物の発生(例えば下痢)について観察を行った。奇妙な挙動、振戦、痙攣、睡眠、及び昏睡が存在しているときの歩行、姿勢及び取り扱いに対する応答の変化も含まれていた。
【0229】
観察された全ての異常、毒性徴候、瀕死状態、及び終末前の死亡を文書にした。
【0230】
試験中人道的に犠牲にされた動物は、試験中に死亡した動物として試験結果を解釈するように考慮する。
X線撮影分析
【0231】
X線による監視は、「0日目」及び「20日目」に行った(X線発生装置Girth 8015)。
【0232】
デジタルX線(20日目)で、具体的には左脛骨(接種部位)での溶骨性病変の存在について検査した。
結果
【0233】
マウスにおける腫瘍発生を、0日目及び20日目のX線画像顕微鏡検査によって分析し、いずれのマウスが腫瘍を発症したかを示した。骨の異常は、X線顕微鏡写真における骨の薄化、密度の低下、骨の長さによる不連続性によって検出した。したがって、全試験期間中にいずれの腫瘍も発症しなかったマウスは、最終統計から除外した。
【0234】
20日目に、全動物が、骨を取り囲む軟組織の重度の腫脹を伴っていることが見出された。これは、骨X線顕微鏡写真によって確認された重篤な損傷と相関していた。さらに、死亡率が上昇し、重篤な臨床徴候、すなわち、起毛、呼吸困難、麻痺及び跛行が動物間で継続して出現した。
【0235】
上記の結果に基づいて、それぞれ、CaCl及びACC2治療群4F及び3Fについては、それぞれ23日目に、生理食塩水、ACC1、及びALN治療群1F、2F及び5Fについては、それぞれ注入後27日目に試験を終了することが決定された。
【0236】
マウス死亡率は図8に示す。0.1%カルシウムで治療されたACC1と名付けられた2F群は、全試験期間にわたって最高の生存率を有していた。ACC1群では、22日目まで、いずれのマウスも死亡しなかった未治療である生理食塩水1F群は、20日目までマウス死亡率を有していなかった。しかし、その生存率は非常に低く、27日目までに生存率は40%対80%(ACC1)であった。0.15%カルシウムにより治療したマウスACC2群は、19日目までにいずれのマウスも死亡することはなく、生理食塩水治療群と比較して23日目までほぼ同じ生存率を示した。ビスホスホネートALN治療群でも、19日目までに死亡は認められなかったが、生存率はより低い。CaCl治療群では、16日目に早くもマウスが死亡した。しかし、その生存率は、試験期間の23日目まで75%以上であった。
【0237】
上記の結果の傾向は、同様に評点される臨床徴候においても繰り返される傾向にある(図9)。臨床徴候の評点が高いことは、より多くの臨床徴候が検出される点に相関し、評点が低いと、より少ない臨床徴候と相関する。ACC由来の0.1%カルシウムで治療したACC1群は、全試験期間にわたって臨床徴候の評点は最も低かった。未治療である生理食塩水1F群は、20日目までほぼ同じ評点を有するが、20日目~27日目には、マウスの臨床徴候が早期に明らかに示された。ACC2群及びCaCl群の臨床徴候は、生存率とも相関して互いに比較した場合、ほぼ同じ挙動を有した。ALN群では、臨床徴候の評点が最も高い(すなわち、群の中でマウスの健康状態が最も悪い)ことが更に相関していることが分かった。
【0238】
見られるように、ACC1により治療された第2F群は、27日目まで一貫して、他の全群と比較して最も低い臨床徴候スコアを示した。
【0239】
全群の体重パーセントは、実験期間中にほぼ同じ体重バランスを示し、図10に見られるように群間に有意差はなかった。いずれの群においても体重グラフの変動線に特徴があり、これはマウスが死亡する前の体重減少に由来するものと考えられ、このため、マウスが死亡して統計から除外されると、グラフにおける誤った傾向が観察される。これは体重百分率の平均値であるため、群内の対象の数が少ないほど変動の影響が大きくなることがわかる。
結論:
【0240】
最も良好な性能を示した配合物は、ACC1である。この群には、ACC-TP由来の0.1%カルシウムを投与した。この群は、最も高い生存率と最も低い臨床徴候を一貫して示した。両方の適応症間の相関関係が強いことは、4T1腫瘍細胞を有するマウスに対してACC1の治療効果が有効であることを強調している。
【0241】
ACC2配合物の投与が、ACC配合物1と同じ有効な治療効果を示すことはなかった。ACC2は、0.15%元素カルシウムを含んだものであった。カルシウムの致死量は投与量の2倍であるが、過多の投与量により健康状態が悪化する可能性がある。
【0242】
最も低い性能を示した配合物は、ビスホスホネート-アレンドロン酸である。ビスホスホネート系薬物は、その治療の一部として腫瘍患者に投与される。ビスホスホネートによりマウスの生存が改善するかどうかについての複数の証拠がある(Ben-Aharon Iら、(2013)PLoS ONE 8(8))。
【0243】
CaCl配合物は、ACC1とほぼ同量のカルシウムを含む0.1%元素カルシウムを有していた。しかし、この群は、臨床徴候の数が多いほど生存率が低いことを示した。塩化カルシウムでは同じ効果は見られないことから、カルシウムイオンのみがACCにおける治療効果の一因となるものではないと考えられる。これは、その非晶質状態のACC分子の追加機構又は炭酸イオンのいずれかに起因する可能性がある。
実施例17癌患者へのACCの経口投与と組み合わせた吸入投与
【0244】
経口投与され、同時に吸入投与される、非結晶炭酸カルシウム(ACC)治療による、末期の進行固形癌患者(肺の関与を伴う、又は伴わない)の安泰性の改善を評価するために、単回非盲検コンパッショネイト(compassionate)臨床サポーティブケア試験を実施する。
試験対象母集団:
【0245】
肺転移の有無にかかわらず、抗癌治療が奏効しなかった20名の固形悪性腫瘍対象が登録している。
【0246】
投与計画
【0247】
口腔用剤形
【0248】
DENSITYは、不活性賦形剤として、ACC、並びにセルロース微結晶、Plasdone K-25、ステアリン酸、及びステアリン酸マグネシウムを含有するカプレットとして配合される。
【0249】
各DENSITYカプレットは、CaCO500mgに相当し、元素カルシウム200mgに等しいAPI(すなわち、非晶質CaCO+アエロジル+薬剤物質安定化剤)としてACC666mgを含有する(以下、用量は元素カルシウムの量を示す)。カルシウムの最大用量1,800mg/日の場合、1日あたり最大9個のDENSITY錠が投与される。
【0250】
吸入剤形
【0251】
吸入配合物は、滅菌懸濁液(8mL、1日2回)として1%ACC(すなわち、0.3%カルシウム)+注射用水から形成される。
【0252】
全対象者はDENSITY用量600mg/日にて開始し、漸増させて1日の総用量1,800mgとし、1日2回、1%ACC/水8mLを吸入する。
【0253】
試験手順
【0254】
他の抗癌治療で奏効しなかった後期固形癌(肺の関与の有無にかかわらず)と診断された20名の対象者が参加し、ポリリン酸塩で安定化した1%ACCの吸入溶液に加えて、DENSITYの形態で1800mg以下のACCを経口投与する。
【0255】
開始用量:ACCの経口投与600mg(3錠を1錠ずつ1日3回)は、最大用量1,800mgに達するまで2日ごとに200mgずつスケールアップする。ACCの吸入投与では、1%ACC/生理食塩水8mLを1日1回投与し、3日後、1日2回、最大吸入用量である1%ACC/生理食塩水8mLまで漸増させた。
【0256】
カルシウムレベルは、各用量の漸増前のアルブミン(CA)値試験に関して補正した血清カルシウムを用いて評価する。
エンドポイント
【0257】
コンパッショネイト臨床サポーティブケアケアプログラムでは、以下を評価することによって決定される対象者の安泰の向上を評価する:
-VASスコアに基づく疼痛の軽減
-鎮痛薬の用量及び/又は回数ごとのオピエート離脱
-ECOG PSに基づく機能の改善
-医師の推定又はホスピス履歴データと比較した生存率
-パルスオキシメータにより判定された動脈酸素飽和度の変化
評価エンドポイント(安全性):
-用量あたりの高カルシウム血症DLT対象者の割合
-用量あたりのDLT対象者の割合
【0258】
バイタルサイン
【0259】
身長及び体重は、プロトコルごとに測定する(このような評価が行われたときの場所と時間を挿入する(例えば、休憩後X分)。
【0260】
全試験段階を通して、対象者は5分間休憩後、バイタルサイン(体温、末梢動脈血圧、心拍数、及び呼吸数)を得る。
【0261】
体温は、全試験段階を通して温度計によって得る。
【0262】
末梢動脈血圧(収縮期血圧、拡張期血圧)は、全試験段階を通して血圧計によって得る。
【0263】
心拍数は較正済み標準測定装置を用いて得る。
【0264】
呼吸数は、最小30秒間の胸郭可動域を観察することによって得る。
【0265】
理学的検査は、直腸及び骨盤の検査を除く、主要な全臓器系で実施される。身長及び体重は、プロトコルごとに測定し、記録する。
【0266】
治験責任医師は、任意の理学的検査所見の臨床的意義を決定する際に臨床判断を使用するものとする。
【0267】
理学的検査
【0268】
治験責任医師又は有資格指名者が理学的検査を実施し、文書にする。治験責任医師が臨床的に有意であると評価した異常所見は、関連するCRFモジュールに記録するものとする(例えば有害事象、病歴など)。
【0269】
患者の肯定的及び否定的結果を監視する際に、以下のうちの1つ以上が改善として承認される:
-ECOG PSに基づく機能の改善;
-医師の推定又はホスピス履歴データの少なくとも1つと比較した際の生存率の延長
-パルスオキシメータにより判定された動脈酸素飽和度の上昇
-強度、頻度及び持続時間の少なくとも1つにおいて、疼痛の軽減(VASスケール)。
【0270】
ACC投薬計画を選択する際に、所定の患者の投薬量を調整するための考慮事項として、血中カルシウム測定値又はその変化を使用してもよい。例えば、高カルシウム血症が増加するか、又は発現することがあった場合に、それにより1日の用量を減少させ、かつ/又はACC用量を多くの場合摂取されるよりも少ない用量へと変更することもある。
【0271】
本発明の特定の実施形態を図示し説明したが、本発明は、本明細書に記載の実施形態に限定されないことは明らかである。以下の特許請求の範囲によって記載される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの修正形態、変更形態、変形形態、置換形態、及び均等物が当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7
図8
図9
図10