(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046691
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】内蔵物体の状態確認装置、動作確認装置および内蔵物体の状態確認方法
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20220315BHJP
G01M 13/00 20190101ALI20220315BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01M13/00
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213458
(22)【出願日】2021-12-27
(62)【分割の表示】P 2018549109の分割
【原出願日】2017-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2016217605
(32)【優先日】2016-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】菊地 修
(72)【発明者】
【氏名】井上 博之
(57)【要約】 (修正有)
【課題】産業機械等に内蔵され、外部から状態を直接確認することができない機器等にセンサを直接設けることなく、状態を監視したり確認したりすることができる内蔵物体の状態確認装置、動作確認装置および内蔵物体の状態確認方法を提供する。
【解決手段】状態を外部から直接確認できない対象物を内蔵している物体の外部に現れる物体の少なくとも1つの物理的情報を取得する情報取得手段11と、取得された物理的情報に基づいて対象物の状態を判定する機器状態判定手段12と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
状態を外部から直接確認できない対象物を内蔵している物体の外部に現れる前記物体の1つ以上の物理的情報を取得する情報取得手段と、
前記取得された1つ以上の物理的情報に基づいて前記対象物の状態を判定する状態判定手段と、を備える内蔵物体の状態確認装置。
【請求項2】
前記情報取得手段は、複数の物理的情報を取得し、
前記状態判定手段は、前記取得された複数の物理的情報に基づいて前記対象物の状態を判定する請求項1に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項3】
前記状態判定手段は、前記対象物の状態が異常状態であるか否かを判定する異常判定手段を有する請求項1または2に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項4】
前記異常判定手段は、前記対象物の状態が、前記取得された複数の物理的情報と、当該複数の物理的情報のそれぞれに対応する異常判定閾値とを比較した結果と、前記取得された複数の物理的情報の組合せと、当該複数の物理的情報の組合せに対応する異常判定閾値の組合せとを比較した結果と、の少なくともいずれか一方に基づいて前記対象物の状態が異常状態であるか否かを判定する請求項3に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項5】
前記状態判定手段は、前記対象物の状態が所定期間内に故障する状態であるか否かを判定する故障予知手段を有する請求項1~4のいずれか1項に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項6】
前記故障予知手段は、前記対象物の状態が、前記取得された複数の物理的情報のと当該複数の物理的情報のそれぞれに対応する故障予知判定閾値とを比較した結果、または前記取得された複数の物理的情報の組合せと当該複数の物理的情報の組合せに対応する故障予知判定閾値の組合せとを比較した結果、の少なくともいずれか一方に基づいて前記所定期間内に故障する状態であるか否かを判定する請求項5に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項7】
前記状態判定手段は、前記取得した物理的情報に基づいて内蔵物体の状態を判定した結果である履歴情報から生成された状態判定モデルに基づいて前記所定期間内に故障する状態であるか否かを判定する故障予知手段を有する請求項1~4のいずれか1項に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項8】
前記状態判定モデルは、前記内蔵物体が故障に至ったときの前記履歴情報から生成された故障状態モデルと、前記内蔵物体が故障に至らなかったときの前記履歴情報から正常状態モデルの二つからなり、前記故障予知手段は、前記対象物の状態が正常状態モデルよりも故障状態モデルに類似しているときに前記所定期間内に故障する状態であると判定する請求項7に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項9】
前記物体の外部に現れる前記物理的情報は、前記物体の表面の前記物理的情報を含む請求項1~8のいずれか1項に記載の機器状態確認装置。
【請求項10】
前記物体の表面の前記物理的情報は、前記物体の表面の温度、位置、ひずみ、変位、振動、色相、明度、彩度、水分量、油分量および音波や超音波や赤外光その他光の反射率の少なくとも一つを含む請求項9に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項11】
前記物体の外部に現れる前記物理的情報は、前記物体の外部で検出される音響、におい、超音波、電磁波、放射線および排出物の少なくとも一つを含む請求項1~9のいずれか1項に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項12】
前記情報取得手段は、前記物体の表面の少なくとも一部の撮像画像に基づいて前記物理的情報を取得する請求項9または10に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項13】
前記物体の表面に、温度に応じて色が変化するサーモクロミック部材が設けられ、
前記情報取得手段は、前記サーモクロミック部材の撮像画像に基づいて、前記物体の表面の温度を取得する請求項12に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項14】
前記情報取得手段は、前記物体の表面の少なくとも一部を拡大して撮像する拡大撮像機能を有する請求項12または13に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項15】
前記情報取得手段を駆動して撮像範囲を変更する駆動手段を更に備える請求項13~14のいずれか1項に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項16】
前記情報取得手段は、前記物体の表面上のそれぞれ異なる箇所を撮像する複数のカメラを有する請求項13~15のいずれか1項に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項17】
前記複数のカメラは、前記物体を取り囲むように配置されている請求項16に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項18】
前記情報取得手段は、カメラを搭載した無人機と、前記カメラで前記物体の表面を撮像する無人機制御手段とを有する請求項13~15のいずれか1項に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項19】
前記情報取得手段は、広角または全方位を撮像可能な光学系を有する請求項13~18のいずれか1項に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項20】
前記情報取得手段は、前記撮像画像に基づいて前記物体の表面の少なくとも一部の三次元形状を取得し、前記取得された三次元形状に基づいて前記物理的情報を取得する請求項13~19のいずれか1項に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項21】
前記情報取得手段は、前記物体の表面から離隔して配置され、少なくとも前記物体の上方に配置されている請求項13~20のいずれか1項に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項22】
前記状態判定手段は、前記物体の施工又は設置時の状態を基準として、前記対象物が異常状態または所定期間内に故障する状態になっているか否かを判定する請求項1~21のいずれか1項に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項23】
前記物体は動作を伴うものであり、前記状態判定手段は、前記物体の動作開始時の状態を基準として、前記対象物が異常状態または所定期間内に故障する状態になっているか否かを判定する請求項1~22のいずれか1項に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項24】
前記状態判定手段は、前記対象物が異常状態または所定期間内に故障する状態にあるときの物理的情報として予め取得された第1の物理的情報と、前記情報取得手段で随時取得される第2の物理的情報とが一致する場合に、前記対象物が異常状態または所定期間内に故障する状態になっていると判定する請求項1~23のいずれか1項に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項25】
前記物体は、少なくとも一つの回動軸を有する産業用ロボットであり、
前記対象物は、前記回動軸に内蔵された減速機であり、
前記情報取得手段は、前記回動軸の表面の物理的情報を取得する請求項1~24のいずれか1項に記載の内蔵物体の状態確認装置。
【請求項26】
コンピュータ上の仮想空間内で状態を外部から直接確認できない対象物を内蔵した物体の動作を確認する動作確認装置であって、
請求項1~25のいずれか1項に記載の内蔵物体の状態確認装置で取得された前記対象物の状態を前記物体の状態に関する情報として入力する、物体の動作確認装置。
【請求項27】
状態を外部から直接確認できない対象物を内蔵した物体の外部に現れる前記物体の少なくとも1つの物理的情報を取得し、
前記取得された物理的情報に基づいて前記対象物が異常状態または所定期間内に故障する状態になっているか否かを判定する、物体の状態確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵物体の状態確認装置、動作確認装置および内蔵物体の状態確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、産業機械に内蔵された減速機や軸受などの機器のひずみや温度などの物理的情報を当該機器自体に設けられたセンサで検出し、検出された物理的情報に基づいて機器の状態を監視する技術が提案されている。例えば、特開2007-256033号公報 (機械設備のベアリングの潤滑剤の劣化検知:機械設備の例:ベルトコンベア、鉄道車両の車軸用)には、機械設備に内蔵された軸受の潤滑剤異物含有量を軸受に設けられたセンサで光学的に検出し、検出された潤滑剤異物含有量に基づいて潤滑剤の劣化を検知するシステムが開示されている。
【0003】
しかしながら、産業機械に内蔵された機器の内部や外部には、機器の状態監視用のセンサを設置する十分なスペースがないことが多い。またセンサには検出信号送信用や電力供給用の複数の配線が必要なため、産業機械内に配線のためのスペースが無い場合や、産業機械の動作との関係で配線できない場合がある。特に既に利用されている産業機械に内蔵された機器を監視する場合は、これらの問題がより顕著となる。そのため状態監視用のセンサを機器に設けるためには、センサを小型化したり、産業機械内のスペースを十分に確保するために産業機械を大型化したり、電池や無線化を利用したりするなどの措置が必要となる。しかし、センサの小型化や産業機械の大型化にも限界があり、電池は交換の課題や無線はアンテナ配置の課題がある。
【0004】
したがって、産業機械に内蔵され、外部から直接アクセスすることができない機器の状態を監視したり確認したりすることができない場合がある。
【0005】
また、風力発電用の風車、太陽熱発電用タワーのヘリオスタット、高架道路、橋梁、ビルなどの土木または建築構造物の内部に設けられた鉄骨や鉄筋などの構造部材、当該内部に設けられたボルトなどの締結部材、内部に埋め込まれた上下水道や電気配線用の各種配管、あるいは、風力発電用の風車、太陽熱発電用タワー、高架道路、橋梁、ビルなどのコンクリート製の土木または建築構造物の当該コンクリートの内部状態についても同様の課題がある。
【0006】
さらに、道路や歩道の下に埋設された共同溝や水道管やガス管等やその接続部分についても同様の課題がある。
【0007】
そして、自動車やトラックやバスや鉄道車両や油圧ショベル等の土木・建設機械の車体内部やドア内部あるいは船舶の船体内部や航空機の機体内部に設けられている梁などの構造物やボルトやリベットなどの締結部材などについても同様の課題がある。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、産業機械等に内蔵され、産業機械等の内外を繋ぐダクトなどの手段を用いることも含め外部から状態を直接確認することができない機器等にセンサを直接設けることなく、その状態を監視したり確認したりすることができる内蔵物体の状態確認装置、動作確認装置および内蔵物体の状態確認方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、状態を外部から直接確認できない対象物を内蔵している物体の外部に現れる前記物体の少なくとも1つの物理的情報を取得する情報取得手段と、前記取得された物理的情報に基づいて前記対象物の状態を判定する状態判定手段と、を備える内蔵物体の状態確認装置である。
【0010】
本発明による状態確認装置において、前記情報取得手段は、複数の物理的情報を取得し、前記状態判定手段は、前記取得された複数の物理的情報に基づいて前記対象物の状態を判定してもよい。
【0011】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記状態判定手段は、前記対象物の状態が異常状態であるか否かを判定する異常判定手段を有してもよい。
【0012】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記状態判定手段は、前記対象物の状態が、前記取得された複数の物理的情報と、当該複数の物理的情報のそれぞれに対応する異常判定閾値とを比較した結果と、前記取得された複数の物理的情報の組合せと、当該複数の物理的情報の組合せに対応する異常判定閾値セットとを比較した結果と、の少なくとも一方に基づいて前記対象物の状態が異常状態であるか否かを判定する異常判定手段を有してもよい。
【0013】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記状態判定手段は、前記対象物の状態が所定期間内に故障する状態であるか否かを判定する故障予知手段を有してもよい。
【0014】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記故障予知手段は、前記対象物の状態が、前記取得された複数の物理的情報と当該複数の物理的情報のそれぞれに対応する故障予知判定閾値とを比較した結果、または前記取得された複数の物理的情報の組合せと当該複数の物理的情報の組合せに対応する故障予知判定閾値の組合せとを比較した結果、の少なくともいずれか一方に基づいて前記所定期間内に故障する状態であるか否かを判定してもよい。
【0015】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記状態判定手段は、前記取得した物理的情報の履歴情報から生成された状態判定モデルに基づいて前記所定期間内に故障する状態であるか否かを判定する故障予知手段を有してもよい。
【0016】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記状態判定モデルは、前記内蔵物体が故障に至ったときの前記履歴情報から生成された故障状態モデルと、前記内蔵物体が故障に至らなかったときの前記履歴情報から正常状態モデルの二つからなり、前記対象物の状態が正常状態モデルよりも故障状態モデルに類似しているときに前記所定期間内に故障する状態であると判定しても良い。
【0017】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記物体の外部に現れる前記物理的情報は、前記物体の表面の前記物理的情報を含んでもよい。
【0018】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記物体の表面の前記物理的情報は、前記物体の表面の温度、位置、ひずみ、変位、振動、色相、明度、彩度、水分量、油分量および音波や超音波や赤外光その他光の反射率の少なくとも一つを含んでもよい。
【0019】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記物体の外部に現れる前記物理的情報は、前記物体の外部で検出される音響、におい、超音波、電磁波、放射線および排出物の少なくとも一つを含んでもよい。
【0020】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記情報取得手段は、前記物体の表面の少なくとも一部の撮像画像に基づいて前記物理的情報を取得してもよい。
【0021】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記物体の表面に、温度に応じて色が変化するサーモクロミック部材が設けられ、前記情報取得手段は、前記サーモクロミック部材の撮像画像に基づいて、前記物体の表面の温度を取得してもよい。
【0022】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記情報取得手段は、前記物体の表面の少なくとも一部を拡大して撮像する拡大撮像機能を有してもよい。
【0023】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記情報取得手段を駆動して撮像範囲を変更する駆動手段を更に備えてもよい。
【0024】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記情報取得手段は、前記物体の表面上のそれぞれ異なる箇所を撮像する複数のカメラを有してもよい。
【0025】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記複数のカメラは、前記物体を取り囲むように配置されていてもよい。
【0026】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記情報取得手段は、広角または全方位を撮像可能な光学系を有してもよい。
【0027】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記情報取得手段は、カメラを搭載した無人機と、前記カメラで前記物体の表面を撮像する無人機制御手段とを有してもよい。
【0028】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記情報取得手段は、前記撮像画像に基づいて前記物体の表面の少なくとも一部の三次元形状を取得し、前記取得された三次元形状に基づいて前記物理的情報を取得してもよい。
【0029】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記情報取得手段は、前記物体の表面から離隔して配置され、少なくとも前記物体の上方に配置されていてもよい。
【0030】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記内蔵物体の状態確認手段は、前記物体の施工又は設置時の状態を基準として、前記対象物が異常状態または所定期間内に故障する状態になっているか否かを判定してもよい。
【0031】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記物体は動作を伴うものであり、前記物体の動作開始時の状態を基準として、前記対象物が異常状態または所定期間内に故障する状態になっているか否かを判定してもよい。
【0032】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記状態判定手段は、前記対象物が異常状態または所定期間内に故障する状態にあるときの物理的情報として予め取得された第1の物理的情報と、前記情報取得手段で随時取得される第2の物理的情報とが一致する場合に、前記対象物が異常状態または所定期間内に故障する状態になっていると判定してもよい。
【0033】
本発明による内蔵物体の状態確認装置において、前記物体は、少なくとも一つの回動軸を有する産業用ロボットであり、前記対象物は、前記回動軸に内蔵された減速機であり、前記情報取得手段は、前記回動軸の表面の物理的情報を取得してもよい。
【0034】
本発明は、コンピュータ上の仮想空間内で状態を外部から直接確認できない対象物を内蔵した物体の動作を確認する動作確認装置であって、上記の内蔵物体の状態確認装置で取得された前記対象物の状態を前記物体の状態に関する情報として入力する、物体の動作確認装置である。
【0035】
本発明は、状態を外部から直接確認できない対象物を内蔵した物体の外部に現れる前記物体の少なくとも1つの物理的情報を取得し、前記取得された物理的情報に基づいて前記対象物が異常状態または所定期間内に故障する状態になっているか否かを判定する、物体の状態確認方法である。
【0036】
本発明によれば、状態を外部から直接確認できない物体に内蔵される対象物にセンサを直接設けることなく、その状態を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本実施形態による機器状態監視装置を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態による機器状態監視装置を適用可能な産業機械の例を示す図である。
【
図3】本実施形態による機器状態監視装置を適用可能な産業機械の他の例を示す図である。
【
図4】本実施形態による機器状態監視装置において、機器状態判定手段の詳細を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態による機器状態監視装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態の第1の変形例による機器状態監視装置を示すブロック図である。
【
図7】本実施形態の第2の変形例による機器状態監視装置として、産業用ロボットへの適用例を示す図である。
【
図8】本実施形態の第2の変形例による機器状態監視装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態の第2の変形例による機器状態監視装置の動作例において、故障予知工程を説明するための説明図である。
【
図10】本実施形態の第3の変形例による機器状態監視装置の動作例において、故障予知工程を説明するための説明図である。
【
図11】本実施形態の第4の変形例による機器状態監視装置の動作例において、監視対象機器の状態の推定工程を説明するための説明図である。
【
図12】本実施形態の第5の変形例による機器状態監視装置の動作例において、故障予知工程を説明するための説明図である。
【
図13】本実施形態の第6の変形例による機器状態監視装置として、建機用走行モータへの適用例を示す図である。
【
図14】本実施形態の第6の変形例による機器状態監視装置として、自動ドアへの適用例を示す図である。
【
図15】本実施形態の第6の変形例による機器状態監視装置として、風力発電用の風車への適用例を示す図である。
【
図16】本実施形態の第6の変形例による機器状態監視装置として、太陽熱発電用ヘリオスタットへの適用例を示す図である。
【
図17】本実施形態の第7の変形例による機器状態監視装置において、機器状態判定手段の詳細を示すブロック図である。
【
図18】本実施形態の第7の変形例による機器状態監視装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図19】
図18に続く本実施形態の第7の変形例による機器状態監視装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図20】本実施形態の第7の変形例による機器状態監視装置の動作例において、複数の物理的情報の組み合わせによる故障予知工程を説明するための説明図である。
【
図21】本実施形態の第8の変形例による機器状態監視装置の動作例において、監視対象機器の状態の判定工程を説明するための説明図である。
【
図22】本実施形態の第9の変形例による動作確認装置を示す図である。
【
図23】本実施形態の第10の変形例による構造物状態監視装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態に係る内蔵物体の状態確認装置の一例である機器状態監視装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上、実際の比率とは異なる場合があり、また、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0039】
図1は、本実施形態による機器状態監視装置1を示すブロック図である。
図1の例による機器状態監視装置1は、本発明の実施形態に係る物体の一例である産業機械3から独立して、産業機械3の外部において産業機械3に内蔵され、状態を外部から直接確認できない監視対象機器2の動作状態を監視できることを特徴とする。ここで、監視対象機器2は本発明の実施形態に係る対象物の一例である。
図1に示すように、機器状態監視装置1は、情報取得手段11と、機器状態判定手段12とを備える。
【0040】
(情報取得手段11)
情報取得手段11は、監視対象機器2を内蔵した産業機械3の外部に現れる物理的情報を取得する。
【0041】
ここで、監視対象機器2を内蔵するとは、監視対象機器2が産業機械3の内部に完全に収納されており、その状態を外部から直接確認できない場合と、監視対象機器2の一部が産業機械3の外部に露出しているが、その状態を外部から直接確認できない場合との双方を含む。
【0042】
図2は、本実施形態による機器状態監視装置1を適用可能な産業機械3の例を示す図である。産業機械3は、産業すなわち製品およびサービスの提供にかかわる活動に用いられる機械であれば特に限定されない。例えば、
図2に示すように、産業機械3は、自動車の生産等に用いられる産業用ロボット30A、産業用ロボット30A等に内蔵される減速機30B、電車等に用いられるコンプレッサ30C、建設機械30D建機用走行モータ30Eなどであってもよい。
【0043】
図3は、本実施形態による機器状態監視装置1を適用可能な産業機械3の他の例を示す図である。
図2の例の他にも、例えば、
図3に示すように、産業機械3は、食品の包装等に用いられる充填包装機30F、航空機30G航空機の可動翼を作動させるフライトコントロールアクチュエータ30H、自動ドア30I、風力発電用の風車30Jに内蔵されている減速機や軸受、太陽熱発電用ヘリオスタット30Kに内蔵されている減速機や軸受などであってもよい
【0044】
監視対象機器2は、産業機械3に内蔵される機器であれば特に限定されない。産業用ロボット30Aに内蔵される監視対象機器2は、例えば、減速機30B、軸受、モータなどであってもよい。減速機30Bに内蔵される監視対象機器2は、例えば、ギア、軸受、潤滑油封止用のシール部材などであってもよい。コンプレッサ30Cに内蔵される監視対象機器2は、例えば、エアエンドと呼ばれる空気圧縮機構などであってもよい。建設機械に内蔵される監視対象機器2は、例えば、建機用走行モータ30Dなどであってもよい。建機用走行モータ30Dに内蔵される監視対象機器2は、例えば、遊星ギアなどであってもよい。充填包装機30Eに内蔵される監視対象機器2は、例えば、リンク装置などであってもよい。航空機に内蔵される監視対象機器2は、例えば、フライトコントロールアクチュエータ30Fなどであってもよい。フライトコントロールアクチュエータ30Fに内蔵される監視対象機器2は、例えば、バルブなどであってもよい。自動ドア30Iに内蔵される監視対象機器2は、例えば、電動モータなどであってもよい。風力発電用の風車30Jに内蔵される監視対象機器2は、例えば、減速機や増速機や軸受やモータなどであってもよい。太陽熱発電用ヘリオスタット30Kに内蔵される監視対象機器2は、例えば、減速機や軸受やモータなどであってもよい。
【0045】
産業機械3の外部に現れる産業機械3の物理的情報は、例えば、産業機械3の表面3aの物理的情報である。産業機械3の物理的情報とは、数量化された値として産業機械3から取得できる情報である。産業機械3の表面3aとは、産業機械3の外部から接触または非接触でアクセスできる産業機械3の部位である。表面3aが透明な場合、表面3aは、透明な部分と、その奥にある部分とを含んでもよい。また、表面3aは、産業機械3自体の表面3aのほか、物理的情報を取得するために産業機械3の表面3aに加工、塗装、貼付等されたものの表面を含んでもよい。
【0046】
産業機械3の表面3aの物理的情報は、例えば、温度、位置、ひずみ、変位、振動、音波や超音波や赤外光その他光の反射率、電磁波吸収率、色相、明度、彩度、水分量、油分量などであってもよい。産業機械3の外部に現れる物理的情報は、産業機械3の表面3aの物理的情報に限定されない。例えば、産業機械3の外部に現れる物理的情報は、産業機械3から発せられ、産業機械3の外部で検出される音響やにおいであってもよい。更に産業機械3内を透過又は伝搬し、産業機械3の外部で検出されるX線等の放射線や電磁波や超音波等の強度であってもよく、産業機械3が排出し、産業機械3の外部で検出される排気ガス等の排出物などであってもよい。
【0047】
情報取得手段11は、表面3aに接触した状態で物理的情報を取得する接触式の情報取得手段11であってもよく、または、表面3aに非接触の状態で物理的情報を取得する非接触式の情報取得手段11であってもよい。非接触式の情報取得手段11によれば、産業機械3に接触しないため、産業機械3の動作に悪影響を与えることなく監視対象機器2の状態を検知できる。
【0048】
接触式の情報取得手段11は、例えば、温度を測定する温度計や、位置や変位を測定するポテンショメータ、ひずみを測定するひずみゲージや、振動を測定する振動計、水分量を測定する水分センサ、油分量を測定する油分センサなどであってもよい。
【0049】
非接触式の情報取得手段11は、例えば、温度を測定するための放射温度計や、位置や変位を測定するためのレーザ式や渦電流方式の距離/変位センサや、振動を測定するためのレーザドップラ式非接触振動計や、音波や超音波を出力してその反射波を受信する音波又は超音波検出器(2次元状に配置されたものを含む。)や、赤外光その他光の反射率や色相や明度や彩度を測定するためのカメラや、水分量を測定するためのマイクロ波や画像を用いたセンサや、油分量を測定するためのレーザを用いたセンサや、音響を測定するマイクや、放射線を測定する放射線測定器や、電磁波を測定する電磁波測定器や、超音波を測定する超音波測定器や、排気ガスや有毒ガスなどの気体を測定するガス測定器などを備えていてもよい。
【0050】
非接触式の情報取得手段11は、産業機械3の表面3aの少なくとも一部の撮像画像に基づいて物理的情報を取得するためのカメラを備えていてもよい。カメラの撮像画像に基づいて物理的情報を取得することで、簡易な構成により、産業機械3の動作に悪影響を与えることなく物理的情報を取得できる。
【0051】
カメラは、産業機械3の表面3aの少なくとも一部を拡大して撮像する拡大撮像機能すなわちズーム機構を有していてもよい。表面3aを拡大して撮像することで、特定の表面3aの物理的情報を高分解能で取得できる。
【0052】
カメラは、魚眼レンズなどの広角または全方位を撮像可能な光学系を有していてもよい。画角が広い光学系を有することで、産業機械3の表面3aにおけるカメラの死角を少なくすることができる。
【0053】
カメラは、産業機械3の表面3a上のそれぞれ異なる箇所を撮像できるように複数設けられていてもよい。カメラを複数設けることで、産業機械3の表面3aにおけるカメラの死角を更に少なくすることができる。
【0054】
カメラは、産業機械3の表面3aに塗装された、圧力に応じてその色彩が変化する感圧塗料、または、温度によってその色彩が変化するサーモクロミック部材の一例である感温塗料の色相や明度や彩度を撮像するカラーCCD、またはCMOSカメラであってもよい。CCD、またはCMOSカメラと感圧塗料、または、感温塗料を用いることで、産業機械3への悪影響を抑えつつ、精度良く産業機械3の表面3aの物理的情報を取得することができる。
【0055】
カメラは、産業機械3の表面3aの色相、明度、彩度、または光の反射率を取得するCCD、またはCMOSカメラ(カラー、またはモノクロを問わず可視光領域に感度を持つもの。または赤外線領域に感度を持つもの)であってもよい。色相、明度、彩度、または光の反射率により産業機械3の表面3aに付着している水分量や油分量を取得することができるので、産業機械3への悪影響を抑えつつ、精度良く産業機械3の表面3aの物理的情報を取得することができる。
【0056】
カメラは、TOF(Time of Flight)カメラであってもよい。TOFカメラは、パルス状の近赤外光を被写体に照射し、被写体からの近赤外光の反射光をTOFセンサで受光し、受光された反射光の反射所要時間に基づいて被写体までの距離を計測できる距離画像センシングカメラである。TOFカメラによれば、産業機械3の表面3aまでの距離すなわち深度情報を取得できるので、特定のパターンを投影する装置を用いることなく産業機械3の変位を測定することができる。さらに変位の時間的変化として振動を取得することもでき、変位の時間的変化率(変位の微分値)としてひずみを測定することができる。TOFカメラを用いることにより、簡便かつ高精度に表面3aの三次元形状を取得できる。
【0057】
非接触式の情報取得手段11は、産業機械3の表面3aにランダムパターン、グリッドパターン、又はドットパターンなどを投影する投影機と、これらのパターンを撮像するカメラと、撮像された画像から表面3aのひずみを算出する算出器とで構成してもよい。この場合、算出器は、撮像されたパターンの時間的変形度合いに基づいてひずみを算出してもよい。算出器は、パターンの撮像画像に基づいて産業機械3の表面3aの少なくとも一部の三次元形状を取得し、取得された三次元形状の時間的変化度合に基づいてひずみを取得してもよい。三次元形状に基づくことで、ひずみの測定精度を向上させることができる。
【0058】
非接触式の情報取得手段11は、電磁波吸収率を取得するレーダを備えていてもよい。電波吸収率やその変化を測定することにより、産業機械3の表面3aの変位を測定することができる。さらに変位の時間的変化として振動を取得することもでき、変位の時間的変化率(変位の微分値)としてひずみを測定することができる。
【0059】
非接触式の情報取得手段11は、音響を取得するマイクを備えていてもよい。マイクは、産業機械3の側方および上方の少なくとも一方において平面状または曲面状の広がりを有した状態で産業機械3に面するように複数配置されていてもよい。複数のマイクを配置することで、産業機械3の表面3a上の異なる箇所の音響を精度良く取得できる。
【0060】
非接触式の情報取得手段11は、においを取得するにおいセンサを備えていてもよい。においセンサの具体的な態様は特に限定されない。例えば、においセンサは、半導体表面へのにおい分子の吸着量を半導体の抵抗値の変化量として検出する半導体式のにおいセンサであってもよい。また、においセンサは、振動子の表面に貼り付けられた感応膜を有し、感応膜へのにおい分子の吸着量を感応膜の質量増加にともなう振動子の共振周波数の低下量として検出する水晶振動式のにおいセンサであってもよい。
【0061】
非接触式の情報取得手段11は、産業機械3を透過させたX線などの放射線をセンサで検出し、X線などの放射線の検出量に基づいて産業機械3によるX線の吸収率を算出する放射線検出器や、産業機械3を透過させた超音波をセンサで検出し、超音波の検出量に基づいて産業機械3による超音波の吸収率を算出する超音波検出器を備えていてもよい。
【0062】
(機器状態判定手段12)
図4は、本実施形態による機器状態監視装置1において、本発明の実施形態に係る状態判定手段の一例である機器状態判定手段12の詳細を示すブロック図である。
図4に示すように、機器状態判定手段12は、状態推定手段121と故障予知手段122とを有する。
【0063】
状態推定手段121は、情報取得手段11で取得された物理的情報に基づいて、監視対象機器2の状態を推定する。更に状態推定手段121は、推定された監視対象機器2の状態が所定の状態、例えば異常状態になっているか否かを判定する。つまり、状態推定手段121は、異常判定手段として機能し、取得された物理的情報に基づいて、所定の状態が異常状態であるか否かを判定する。異常状態であると判定された場合、状態推定手段121は、監視対象機器2の異常状態を通知する異常発生情報を機器状態監視装置1の外部のサーバ4に有線または無線にて出力する。更に、状態推定手段121は、監視対象機器2の状態を故障予知手段122に伝達する。
【0064】
故障予知手段122は、推定された監視対象機器2の状態が所定期間内に故障する状態であるか否かを判定する。所定期間内に故障する状態であると判定された場合に、故障予知手段122は、故障が予知されたことを通知する故障予知情報を有線または無線にてサーバ4に出力する。異常状態であるとも、所定期間内に故障する状態であるとも判定されなかった場合、故障予知手段122は、推定された監視対象機器2の状態を示す機器状態情報をサーバ4に出力する。
【0065】
以下、異常発生情報、故障予知情報および機器状態情報などの機器状態判定手段12で取得される情報を、機器状態判定手段12の取得情報とも呼ぶ。
【0066】
監視対象機器2の異常状態または所定期間内に故障する状態は、産業機械3の外部に現れる産業機械3の物理的情報に基づいて推定できる監視対象機器2の状態であれば特に限定されない。例えば、異常状態または所定期間内に故障する状態は、監視対象機器2の温度が予め定められた温度以上である状態であってもよい。また、異常状態または所定期間内に故障する状態は、監視対象機器2の特定の部位のひずみや変位や形状の変化が予め定められたひずみや変位や形状の変化以上である状態であってもよい。また、異常状態または所定期間内に故障する状態は、監視対象機器2の特定の部位の振動の振幅や周期が予め定められた振幅や周期以上である状態であってもよい。また、異常状態または所定期間内に故障する状態は、監視対象機器2の特定の部位の加速度や加加速度(単位時間当たりの加速度の変化率。躍度またはジャークともいう。)が予め定められた加速度や加加速度以上または以下である状態であってもよい。また、情報取得手段11が複数の物理的情報を取得する場合、異常状態または所定期間内に故障する状態は、監視対象機器2の温度、ひずみ、変位、振動、加速度、加加速度のうち少なくとも2つの関係が予め定められた所定の関係である状態であってもよい。また、異常状態または所定期間内に故障する状態は、監視対象機器2の予め定められた複数の部位の物理的状態が、予め定められた状態に一致している状態であってもよい。これらの異常状態または所定期間内に故障する状態の例において、“予め定められた”とは、固定されている意味であってもよく、または、産業機械3の稼働時間や設置環境の変化などに応じて所定の関係に基づいて変化する意味であってもよい。これらの異常状態は、既述したように、状態推定手段121によって監視対象機器2が故障している状態として判定される。また、これらの所定期間内に故障する状態は、故障予知手段122によって所定期間内に所定の故障が発生することを予測する故障予知として判定される。
【0067】
異常状態または所定期間内に故障する状態は、物理的情報が現れる表面3aの位置と監視対象機器2の位置との関係に影響されてもよい。例えば、同じ値の物理的情報が取得される場合であっても、物理的情報が取得される表面3aの位置と監視対象機器2の位置との距離によっては、監視対象機器2が異常状態または所定期間内に故障する状態になっているか否かの判定結果が異なってもよい。同様に物理的情報が取得される表面3aに監視対象機器2の外部要因によっては監視対象機器2が異常状態または所定期間内に故障する状態になっているか否かの判定結果が異なってもよい。外部要因としては、太陽光などの光学的な外乱や電波状態や音響状態や風など取得する物理的情報に対して一時的または継続的に外乱要因となるものである。
【0068】
機器状態判定手段12は、例えば演算処理装置や記憶装置などのハードウェアである。機器状態判定手段12の少なくとも一部は、ソフトウェアであってもよい。機器状態判定手段12は、1つの機器状態監視装置1に搭載されていてもよく、または、一部の構成部(例えば、故障予知手段122)が、機器状態監視装置1との間でネットワークを通じて通信可能な装置(例えばクラウド上のサーバやデータベース)上にあってもよい。
【0069】
サーバ4は、例えば、機器状態判定手段12から入力された機器状態判定手段12の取得情報をディスプレイへの表示などによってユーザに通知してもよい。
【0070】
(動作例)
次に、機器状態監視装置1の動作例について説明する。
図5は、本実施形態による機器状態監視装置1の動作例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートは必要に応じて繰り返し実行されるものである。
【0071】
先ず、
図5に示すように、情報取得手段11は、産業機械3の外部に現れる物理的情報を取得する(ステップS1)。
【0072】
物理的情報が取得された後、状態推定手段121は、取得された物理的情報に基づいて、監視対象機器2の状態を推定する(ステップS2)。
【0073】
次に状態推定手段121は、推定された監視対象機器2の状態が異常状態であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0074】
推定された監視対象機器2の状態が異常状態である場合(ステップS3:Yes)、状態推定手段121は、異常発生情報を外部に出力する(ステップS4)。
【0075】
一方、推定された監視対象機器2の状態が異常状態でない場合(ステップS3:No)、故障予知手段122は、推定された監視対象機器2の状態が所定期間内に故障する状態であるか否かを判定する(ステップS5)。
【0076】
推定された監視対象機器2の状態が所定期間内に故障する状態である場合(ステップS5:Yes)、故障予知手段122は、故障予知情報を外部に出力する(ステップS6)。一方、推定された監視対象機器2の状態が所定期間内に故障する状態でない場合(ステップS5:No)、故障予知手段122は、推定された監視対象機器2の状態に対応する機器状態情報を外部に出力する(ステップS7)。
【0077】
もし、産業機械3の内部の限られたスペースに、監視対象機器2の状態を直接検出するセンサや配線を設けようとしても、センサのサイズ、形状、給電方法、データ送信手段および配線量などの制約によって、センサや配線を設けることが困難な場合が生じ得る。
【0078】
これに対して、本実施形態の機器状態監視装置1によれば、産業機械3の表面3aの物理的情報を取得し、取得された物理的情報とこの物理的情報に対応して設定されている産業機械3に内蔵された監視対象機器2の状態との対応関係から産業機械3に内蔵された監視対象機器2の状態を推定することができる。なお、この対応関係は実測に基づいて設定してもよく、物理的計算モデルに基づいて設定されていてもよい。これにより、産業機械3の内部に監視対象機器2の状態を直接検出する専用のセンサや配線を設けなくても、監視対象機器2の状態を検知できる。
【0079】
したがって、本実施形態によれば、産業機器3に内蔵される監視対象機器2にセンサを直接設けることなく、その状態を監視することができる。
【0080】
(第1の変形例)
次に、機器状態監視装置1の監視結果を産業機械3の制御に用いる第1の変形例について説明する。
図6は、本実施形態の第1の変形例による機器状態監視装置1を示すブロック図である。
図1の例において、機器状態監視装置1は、産業機械3から独立している。
【0081】
これに対して、第1の変形例の機器状態監視装置1は、監視対象機器2の監視結果を産業機械3の制御に用いることを特徴としている。
【0082】
具体的には、
図6に示す第1の変形例において、機器状態判定手段12は、機器状態判定手段12の取得情報を、産業機械3の動作を制御する産業機械制御装置5に出力する。
【0083】
産業機械制御装置5は、機器状態判定手段12から入力された機器状態判定手段12の取得情報に基づいて産業機械3の動作を制御する。例えば、機器状態判定手段12の取得情報が故障情報である場合、産業機械制御装置5は、故障情報に応じて産業機械3を停止させる。また、機器状態判定手段12の取得情報が故障予知情報である場合、産業機械制御装置5は、故障予知情報に応じて産業機械3を停止させてもよく、または、故障予知情報に応じて作動力や可動範囲を制限させてもよい。
【0084】
第1の変形例においても、産業機械3に内蔵される監視対象機器2にセンサを直接設けることなく、監視対象機器2の状態を監視できる。また、機器状態判定手段12の取得情報に基づいて産業機械3の動作を制御できるので、産業機械3の誤動作を未然に防止したり、保守時期まで作動を継続させたりすることができる。
【0085】
(第2の変形例)
次に、産業用ロボット30Aに内蔵された減速機30Bの状態を監視する第2の変形例について説明する。
図7は、本実施形態の第2の変形例による機器状態監視装置1として、産業用ロボット30Aへの適用例を示す図である。
【0086】
図7に示すように、第2の変形例において、産業機械3は、少なくとも1つの回動軸306~310を有する産業用ロボット30Aである。より具体的には、産業用ロボット30Aは、取付部300と、第1~第5アーム301~305と、第1~5回動軸306~310とを有する。
【0087】
取付部300は、床などの産業用ロボット30Aを取り付ける所定の取付位置Pに設けられている。
【0088】
第1回動軸306は、取付部300と第1アーム301の一端とを接続している。第1回動軸306は、図示しないモータの回動を減速して出力する第1減速機30B-1を内蔵しており、第1減速機30B-1から出力される回動が伝達されることで、
図5のZ方向(すなわち鉛直方向)に平行な軸方向を中心として回動する。
【0089】
第1アーム301は、取付部300に接続された一端から他端に向かって延在している。第1アーム301は、第1アーム301よりも取付位置P側に位置する第1回動軸306の回動にしたがって、第1回動軸306の軸方向を中心として回動する。
【0090】
第2回動軸307は、第1アーム301の他端と第2アーム302の一端とを接続している。第2回動軸307は、図示しないモータの回動を減速して出力する第2減速機30B-2を内蔵しており、第2減速機30B-2から出力される回動が伝達されることで、Z方向に直交する軸方向を中心として回動する。なお、
図5の状態において、第2回動軸307の軸方向はY方向に平行であるが、第2回動軸307の軸方向は、第2回動軸307よりも取付位置P側において第2回動軸307と異なる軸方向を有する第1回動軸306の回動にともなって変化する。
【0091】
第2アーム302は、第1アーム301に接続された一端から他端に向かって延在している。第2アーム302は、第2アーム302よりも取付位置P側に位置する第1、第2回動軸306、307の回動にしたがって、第1、第2回動軸306、307の軸方向を中心として回動する。
【0092】
第3回動軸308は、第2アーム302の他端と第3アーム303の一端側とを接続している。第3回動軸308は、図示しないモータの回動を減速して出力する第3減速機30B-3を内蔵しており、第3減速機30B-3から出力される回動が伝達されることで、第2回動軸307の軸方向に平行な軸方向を中心として回動する。なお、
図5の状態において、第3回動軸308の軸方向はY方向に平行であるが、第3回動軸308の軸方向は、第3回動軸308よりも取付位置P側において第3回動軸308と異なる軸方向を有する第1回動軸306の回動にともなって変化する。
【0093】
第3アーム303は、第2アーム302に接続された一端側から他端に向かって延在している。第3アーム303は、第3アーム303よりも取付位置P側に位置する第1~第3回動軸306~308の回動にしたがって第1~第3回動軸306~308の軸方向を中心として回動する。
【0094】
第4回動軸309は、第3アーム303の他端と第4アーム304の一端とを接続している。第4回動軸309は、図示しないモータの回動を減速して出力する第4減速機30B-4を内蔵しており、第4減速機30B-4から出力される回動が伝達されることで、第1~第3回動軸306~308の軸方向に直交する軸方向を中心として回動する。なお、
図5の状態において、第4回動軸309の軸方向はX方向に平行であるが、第4回動軸309の軸方向は、第4回動軸309よりも取付位置P側において第4回動軸309と異なる軸方向を有する第1~第3回動軸306~308の回動にともなって変化する。
【0095】
第4アーム304は、第3アーム303に接続された一端から他端に向かって延在している。第4アーム304は、第4アーム304よりも取付位置P側に位置する第1~第4回動軸306~309の回動にしたがって第1~第4回動軸306~309の軸方向を中心として回動する。
【0096】
第5回動軸310は、第4アーム304の他端と第5アーム305の一端とを接続している。第5回動軸310は、図示しないモータの回動を減速して出力する第5減速機30B-5を内蔵しており、第5減速機30B-5から出力される回動が伝達されることで、第2回動軸307に平行な軸方向を中心として回動する。なお、
図5の状態において、第5回動軸310の軸方向はY方向に平行であるが、第5回動軸310の軸方向は、第5回動軸310よりも取付位置P側において第5回動軸310と異なる軸方向を有する第1、第4回動軸306、309の回動にともなって変化する。
【0097】
第5アーム305は、第4アーム304に接続された一端から他端に向かって延在している。第5アーム305は、第5アーム305よりも取付位置P側に位置する第1~第5回動軸306~310の回動にしたがって第1~第5回動軸306~310の軸方向を中心として回動する。
【0098】
図7に示すように、第2の変形例において、産業用ロボット30Aの表面3a、具体的には第1、第4回動軸306、309の表面には、温度に応じて色が変化するサーモクロミック部材の一例としての感温塗膜6が設けられている。感温塗膜6は、産業機械3の表面に感温塗料を塗装することで形成された膜である。なお、感温塗膜6は、第1回動軸306および第4回動軸309以外の回動軸307、308、310の表面や、回動軸以外の産業用ロボット30Aの表面3aにも設けられていてもよい。
【0099】
図5に示すように、第2の変形例の情報取得手段11は、産業用ロボット30Aの表面3aに設けられた感温塗膜6を撮像する複数のカメラ110を有している。また、第2の変形例の情報取得手段11は、カメラ110の撮像画像すなわち温度に応じた感温塗膜6の発色に基づいて回動軸306、309の表面の温度を取得する制御装置120を有している。第2の変形例の情報取得手段11によれば、産業用ロボット30Aの表面3aに直接設けられている感温塗膜6の撮像画像に基づくことで、産業用ロボット30Aの表面3aの温度を精度良く検出できる。
【0100】
複数のカメラ110は、産業用ロボット30Aの表面3aから離隔して配置され、側方および上方から産業用ロボット30Aを取り囲むように配置されている。産業用ロボット30Aを取り囲むようにカメラ110が配置されていることで、感温塗膜6すなわち産業用ロボット30Aの表面3aにおけるカメラ110の死角を少なくすることができる。
【0101】
図7に示すように、第2の変形例の機器状態監視装置1は、カメラ110を駆動してカメラ110の撮像範囲を変更する駆動手段7を備えている。駆動手段7は、カメラ110の光軸の向きを回動変位させるモータ等のアクチュエータを有していてもよい。駆動手段7の動作は、制御装置120が制御してもよい。例えば、駆動手段7は、産業用ロボット30Aの運動に応じて感温塗膜6が変位した場合に、感温塗膜6の変位に追従して連続的に感温塗膜6を撮像できるように各カメラ110を動かしてもよい。
【0102】
制御装置120は、第2の変形例の機器状態判定手段12(すなわち、状態推定手段121および故障予知手段122)としても機能する。制御装置120は、感温塗膜6の撮像画像から取得された産業用ロボット30Aの表面3aの温度に基づいて、産業用ロボット30Aに内蔵された減速機30Bが所定の状態、例えば、異常状態または所定期間内に故障する状態であるか否かを判定する。
【0103】
図7の例において、制御装置120は、第1回動軸306の表面の温度に基づいて、第1回動軸306に内蔵された第1減速機30B-1が所定の状態であるか否かを判定する。また、制御装置120は、第4回動軸309の表面の温度に基づいて、第4回動軸309に内蔵された第4減速機30B-4が所定の状態であるか否かを判定する。
【0104】
(動作例)
次に、第2の変形例の機器状態監視装置1の動作例について説明する。
図8は、第2の変形例による機器状態監視装置1の動作例を示すフローチャートである。機器状態監視装置1は、産業用ロボット30Aの動作中に継続して
図8のフローチャートの処理を行う。なお、このフローチャートは必要に応じて繰り返し実行されるものである。
【0105】
図8に示すように、第2の変形例では、
図5で説明した産業機械3の表面3aの物理的情報の取得工程(ステップS1)として、ステップS11およびステップS12を実行する。具体的には、先ず、カメラ110は、産業用ロボット30Aの表面3aに設けられた感温塗膜6の撮像画像を取得する(ステップS11)。感温塗膜6の撮像画像が取得された後、制御装置120は、取得された感温塗膜6の撮像画像に基づいて、産業用ロボット30Aの表面3aの温度分布を測定する(ステップS12)。
【0106】
次に測定された感温塗膜6の温度分布の位置に対応する減速機の状態を推定する(ステップ21)。減速機の状態が推定された後、制御装置120は、推定された減速機の状態が異常状態であるか否かを判定する(ステップS3)。すなわち、制御装置120は、所定位置の産業用ロボット30Aの表面3aの温度を異常状態の有無を判定するための判定閾値(異常判定閾値)と比較した結果に基づいて、所定位置に対応する減速機が異常状態になっているか否かを判定する。具体的には、制御装置120は、感温塗膜6が設けられた第1回動軸306および第4回動軸309の表面の温度が所定の閾値を超えたか否かを判定する。
【0107】
ここで、異常状態は、例えば、第1回転回動軸306に内蔵された第1減速機30B-1、第4回転回動軸309に内蔵された第4減速機30B-4の故障状態である。
【0108】
なお、異常判定閾値は、温度に限定されず、情報取得手段11で取得される物理的情報に応じて異なる。また、異常状態の判定基準の一例である“物理的情報が異常判定閾値を超えた状態”とは、既述した温度のように物理的情報がそれ自身の値で異常判定閾値を超える場合と、異常判定のために物理的情報から算出された値が異常判定閾値を超える場合との双方を含む(以下、同様)。
【0109】
推定された減速機の状態が異常状態である場合(ステップS3:Yes)、制御装置120は、異常発生情報を外部に出力する(ステップS4)。
【0110】
一方、推定された減速機の状態が異常状態でない場合(ステップS3:No)、制御装置120は、推定された減速機の状態が所定期間内に故障する状態であるか否かを判定する(ステップS5)。
【0111】
図9は、本実施形態の第2の変形例による機器状態監視装置1の動作例において、故障予知工程を説明するための説明図である。例えば、
図9に示すように、制御装置120は、所定位置の産業用ロボット30Aの表面3aの温度を故障予知判定閾値と比較した結果に基づいて、所定期間内に故障する状態であるか否かの判定(ステップS5)を行ってもよい。この場合、制御装置120は、所定位置の産業用ロボット30Aの表面3aの温度が故障予知判定閾値を超えた場合に、所定期間内に故障する状態であると判定してもよい。
【0112】
具体的には、
図9の例において、制御装置120は、所定位置の産業用ロボット表面の温度の経時的変化と、所定位置に関連する減速機の故障が生じる故障温度(故障予知判定閾値)とを比較する。温度の経時的変化の具体的な取得方法は特に限定されず、例えば、現在の判定時刻t2までに取得された温度に基づく回帰分析などを用いてもよい。
図9の例において、温度の経時的変化は時刻の一次関数として取得されているが、一次関数以外の関数として取得されてもよい。温度の経時的変化と故障温度との比較において、制御装置120は、温度の経時的変化に基づいて、産業用ロボット表面の温度が故障温度になることが予測される時刻t3と現在の判定時刻t2との間の時間を所定期間として算出する。すなわち、制御装置120は、現在の判定時刻t2から所定期間後の時刻t3において、温度の経時的変化が故障温度を超える場合に、減速機が所定期間内に故障する状態であると判定する。
【0113】
なお、故障予知判定閾値は、温度に限定されず、情報取得手段11で取得される物理的情報に応じて異なる。また、故障予知の判定基準の一例である“物理的情報が故障予知判定閾値を超えた状態”とは、物理的情報がそれ自身の値で故障予知判定閾値を超える場合と、既述した産業用ロボット30Aの表面の温度から算出された温度のように、故障予知判定のために物理的情報から算出された値が故障予知判定閾値を超える場合との双方を含む(以下、同様)。
【0114】
推定された減速機の状態が所定期間内に故障する状態である場合(ステップS5:Yes)、制御装置120は、故障予知情報を外部に出力する(ステップS6)。
【0115】
一方、推定された減速機の状態が所定期間内に故障する状態でない場合(ステップS5:No)、制御装置120は、推定された減速機の状態に対応する減速機30B-1、30B-4の機器状態情報を外部に出力する(ステップS71)。
【0116】
第2の変形例によれば、減速機30B-1、30B-4に最も近い回動軸306、309の表面に感温塗膜6を設け、感温塗膜6の撮像画像に基づいて回動軸306、309の表面の温度を取得することで、温度に基づいて、減速機30B-1、30B-4の状態を減速機に直接センサを設けることなく把握できる。
【0117】
(第3の変形例)
次に、予め取得されている故障時の物理的情報の経時的変化の情報を故障予知に用いる第3の変形例について説明する。
図10は、本実施形態の第3の変形例による機器状態監視装置1の動作例において、故障予知工程を説明するための説明図である。
【0118】
第2の変形例の
図9では、産業用ロボット表面の温度が故障温度を超えるか否かに基づいて故障予知判定を行う例について説明した。
【0119】
これに対して、第3の変形例において、制御装置120は、
図10に示すように、産業用ロボット表面の温度の経時的変化(以下、取得経時情報とも呼ぶ)と、予め取得されている故障時の産業用ロボット表面の温度の経時的変化(以下、故障時経時情報とも呼ぶ)とを比較し、両経時情報の一致度を算出する。そして、制御装置120は、算出された一致度が故障予知判定閾値を超えた場合に、推定された減速機の状態が所定期間内に故障する状態であると判定する。
【0120】
より具体的には、故障時経時情報は、実験やシミュレーションによって予め取得された情報であり、
図10に示すように、産業機械3の起動時刻を始点とした減速機の故障時刻t2の情報を有している。産業機械3の起動後、故障時刻t2から所定期間遡った判定時刻t1において、制御装置120は、取得経時情報と故障時経時情報との一致度を算出し、算出された一致度と故障予知判定閾値との比較による判定を行う。
【0121】
取得経時情報と故障時経時情報との一致度は、判定時刻t1までの取得経時情報と故障時経時情報との差(すなわち、温度差)が小さいほど大きい値であれば、具体的な態様は特に限定されない。例えば、一致度は、判定時刻t1までの取得経時情報と故障時経時情報との差の平均値の逆数に比例する値であってもよい。
【0122】
第3の変形例によれば、取得経時情報と故障時経時情報との比較によって減速機にセンサを設けることなく、また一次関数その他の関数で単純に故障を予測できないような場合であっても故障を予知することができる。
【0123】
(第4の変形例)
次に、予め取得された監視対象機器2が所定の状態(故障状態に限らない)であるときの物理的情報との比較によって監視対象機器2の状態を推定する第4の変形例について説明する。
図11は、本実施形態の第4の変形例による機器状態監視装置1の動作例において、監視対象機器2の状態の推定工程を説明するための説明図である。
【0124】
図11に示すように、第4の変形例において、機器状態判定手段12は、予め、監視対象機器2が所定の状態(故障状態に限らない)にあるときの第1の物理的情報を取得している。
図11の例において、第1の物理的情報は、時刻に応じた物理的情報の変化を示す経時的情報である。経時的情報は、例えば、予め行われた実験やシミュレーションによって取得してもよい。また、経時的情報は、産業用ロボット30Aの使用環境や使用期間などの条件に応じて異なってもよい。
【0125】
機器状態判定手段12は、情報取得手段11で取得された第2の物理的情報を、第1の物理的情報と比較する。そして、機器状態判定手段12は、第2の物理的情報が第1の物理的情報と一致する場合に、監視対象機器2が所定の状態(故障状態に限らない)であると判定する。一致は、厳密な一致に限定されず、第1の物理的情報に対する第2の物理的情報の誤差が閾値以下の場合(すなわち、一致度が閾値を超える場合)も含めてよい。一方、第2の物理的情報が第1の物理的情報と一致しない場合、機器状態判定手段12は、監視対象機器2が所定の状態でないと判定する。
【0126】
第4の変形例によれば、情報取得手段11で取得された第2の物理的情報を、監視対象機器2が所定の状態(故障状態に限らない)である場合の既知の第1の物理的情報と比較することで、監視対象機器2が所定の状態(故障状態に限らない)であるか否かを簡便に推定できる。
【0127】
(第5の変形例)
次に、過去の産業機械3の保守履歴や監視対象機器2の状態履歴、故障履歴、保守履歴から故障予知のための計算モデルを生成し、この計算モデルに基づいて故障予知を行う第5の変形例について説明する。
図12は、本実施形態の第5の変形例による機器状態監視装置1の動作例において、故障予知工程を説明するための説明図である。
【0128】
故障予知手段122は、取得した物理的情報に基づいて内蔵物体の状態を判定した結果である履歴情報から生成された状態判定モデルに基づいて所定期間内に故障する状態であるか否かを判定する。
【0129】
具体的には、故障予知手段122は、少なくとも産業機械3の保守を行った時期を含む履歴情報である産業機械3の保守履歴や、少なくとも監視対象機器2の状態をその状態となった時期と合わせて履歴情報として保持している監視対象機器2の状態履歴、少なくとも監視対象機器2が故障した時期を含む履歴情報である監視対象機器2の故障履歴および少なくとも監視対象機器2の保守を行った時期を含む履歴情報である監視対象機器2の保守履歴を保存する履歴データベース1223を有する。
【0130】
なお履歴データベース1223にはこれらの履歴の全てがあれば、より精度の高い故障予知が可能となるが、必ずしも全てを保持する必要は無く、少なくともいずれか1つがあればよい。また、保持する期間は長ければ長いほど、より精度の高い故障予知が可能となるが、監視対象機器2の製品寿命や監視対象機器2の故障頻度との関係、履歴データベースを保存する記憶手段(図示せず)の容量で適宜定めれば良い。
【0131】
なお、本変形例では、記憶手段と、監視対象機器2の状態を推定する状態推定手段1221とを物理的に一体的に設けているが、記憶手段としてインターネットなどの通信回線を介してクラウド上等のサーバなど外部記憶手段を用いることで、記憶容量の問題は事実上、解消する。
【0132】
さらに故障予知手段122は、履歴データベース1223に記憶されている各種履歴から故障予知のための計算モデルを生成するモデル生成手段1224を有する。モデル生成手段1224は、例えば監視対象機器2の状態履歴と監視対象機器2の故障履歴に記憶されている時間変化に最も適合するように公知のモデル化手法により、故障予知のための計算モデルを生成する。
【0133】
このとき、モデル生成手段1224は、故障予知のための計算モデルを2つ以上設けても良い。例えば監視対象機器2の状態履歴のうち、所定期間内は故障に至っていない履歴情報を用いて、正常状態の計算モデルを生成する正常状態モデル生成手段12241と、所定期間内は故障に至った履歴情報を用いて、故障状態の計算モデルを生成する故障状態モデル生成手段12242とを設けても良い。正常状態や故障状態判断の信憑性に基づいて、3つ以上の複数の計算モデルを設けても良い。これにより、より信憑性の高い判断を行うことができる。
【0134】
例えば、故障予知手段122は、状態推定手段1221から入力された監視対象機器2の状態が、正常状態モデルよりも故障状態モデルに類似しているときに、所定期間内に故障する状態であると判定する。
【0135】
なお、本変形例ではモデル生成手段12241を故障予知演算手段1222等と物理的に一体的に設けているが、これに限られず、例えばインターネットなどの通信回線を介してクラウド上等のサーバなどで計算モデルを生成しても構わない。この場合、組み込み機器と比べ、計算スピードが比較的早くなったり、モデル生成アルゴリズムを事後的に変更しやすくなったりするなどの利点がある。
【0136】
モデル生成手段1224で生成された計算モデルは、故障予知演算手段1222に送られる。そして当該モデルに状態推定手段1221により推定された情報である推定情報が入力され、その演算結果に基づいて故障予知が行われる。
【0137】
このとき、計算モデルが複数ある場合は、状態推定手段1221により推定された同じ情報がそれぞれ入力され、それらの演算結果に基づいて、予め定めた評価基準に基づいて故障予知が行われる。
【0138】
なお、本変形例では、故障予知演算手段1222と状態推定手段1221等とを物理的に一体的に設けているが、これに限られず、例えばインターネットなどの通信回線を介してクラウド上等のサーバなどで演算しても構わない。この場合、組み込み機器と比べ、計算スピードが比較的早くなったり、予め定めた評価基準を事後的に変更しやすくなったりするなどの利点がある。
【0139】
(第6の変形例)
次に、第6の変形例として、産業用ロボット30A以外の産業機械3への機器状態監視装置1の適用例について説明する。
図13は、本実施形態の第5の変形例による機器状態監視装置1として、建機用走行モータ30Eへの適用例を示す図である。
図14は、本実施形態の第6の変形例による機器状態監視装置1として、自動ドア30Iへの適用例を示す図である。
【0140】
図13の例において、機器状態監視装置1の情報取得手段11(図示せず)は、建設機械30Dに設置されたカメラ110による建機用走行モータ30D1の撮像画像に基づいて、建機用走行モータ30D1の外部に現れる物理的情報(例えば、建機用走行モータ30D1の表面のひずみや振動等)を取得する。そして、機器状態監視装置1の機器状態判定手段12は、取得された物理的情報に基づいて、建機用走行モータ30D1に内蔵された監視対象機器2(例えば、遊星ギア等)の状態の判定(例えば、異常判定や故障予知判定)を行う。
【0141】
図14の例において、機器状態監視装置1の情報取得手段11(図示せず)は、自動ドア30Iの近傍(例えば、天井)に設置されたカメラ110による自動ドア30Iの無目部の撮像画像に基づいて、自動ドア30Iの無目部の表面の物理的情報(例えば、感温塗膜6の発色として現れる温度)を取得する。そして、機器状態監視装置1の機器状態判定手段12は、取得された物理的情報に基づいて、無目部に内蔵された電動モータ30I1の状態の判定(例えば、異常判定や故障予知判定)を行う。
【0142】
図15の例において、機器状態監視装置1の情報取得手段11(図示せず)は、風力発電用の風車30Jの近傍を飛行するカメラ110を搭載した無人飛行機DR(ドローン)によって撮影した風車30Jのナセルの撮像画像に基づいて、風車30Jのナセル表面の物理的情報(例えば、感温塗膜6の発色として現れる温度)を取得する。そして、機器状態監視装置1の機器状態判定手段12は、取得された物理的情報に基づいて、ナセル内部に内蔵された増速機30J1や駆動モータ30J2の状態の判定(例えば、異常判定や故障予知判定)を行う。
【0143】
図16の例において、機器状態監視装置1の情報取得手段11(図示せず)は、太陽熱発電用ヘリオスタット30Kの近傍を飛行するカメラ110を搭載した無人走行車DR(ドローン)によって撮影したヘリオスタット30Kの駆動装置の撮像画像に基づいて、ヘリオスタット30Kの駆動装置表面の物理的情報(例えば、感温塗膜6の発色として現れる温度)を取得する。そして、機器状態監視装置1の機器状態判定手段12は、取得された物理的情報に基づいて、減速機30K1や減速機を駆動する電動モータ30K2の状態の判定(例えば、異常判定や故障予知判定)を行う。
【0144】
第6の変形例によれば、機器状態監視装置1を種々の産業機械3に適用することで、機器状態監視装置1の汎用性を向上させることができる。
【0145】
(第7の変形例)
次に、複数の物理的情報に基づいて監視対象機器2の状態を判定する第6の変形例について説明する。
【0146】
図17は、本実施形態の第7の変形例による機器状態監視装置1において、機器状態判定手段12の詳細を示すブロック図である。
図17に示すように、第7の変形例において、情報取得手段11は、産業機械3の外部に現れる産業機械3の複数の物理的情報#1~#n(nは、2以上の自然数、以下同様)を取得可能である。複数の物理的情報#1~#nの具体的な態様は特に限定されず、例えば、温度、位置、ひずみ、変位、振動、音波や超音波や赤外光その他光の反射率、電磁波吸収率、色相、明度、彩度、水分量、油分量、音響、におい、X線等の放射線や電磁波や超音波の強度、および排気ガス等の排出物の中から選択される二種以上の組合せであってもよい。これらの物理的情報を取得するための情報取得手段11の具体的な態様については既に例示したとおりである。
【0147】
(状態推定手段121)
状態推定手段121は、複数の物理的情報#1~#nが取得された場合、取得された複数の物理的情報#1~#nに基づいて監視対象機器2の状態を推定する。更に更に状態推定手段121は、推定された監視対象機器2の状態が所定の状態、例えば異常状態や所定期間内に故障する状態になっているか否かを判定する。
【0148】
状態推定手段121は、取得された複数の物理的情報#1~#nのそれぞれを対応する異常判定閾値(以下、個別異常判定閾値とも呼ぶ)と比較した結果に基づいて、監視対象機器2の状態が異常状態であるか否かを判定する。また、状態推定手段121は、取得された複数の物理的情報#1~#nの組合せを対応する異常判定閾値セットと比較した結果に基づいて、監視対象機器2の状態が異常状態であるか否かを判定する。
【0149】
個別異常判定閾値とは、複数の物理的情報#1~#nの個々の値に基づいて監視対象機器2の状態が異常状態であるか否かを判定可能な閾値である。個別異常判定閾値は、例えば、物理的情報の所定の閾値より高い値である。状態推定手段121は、少なくとも1つの物理的情報が対応する個別異常判定閾値を超えれば、監視対象機器2の状態が異常状態であると判定してもよい。
【0150】
異常判定閾値セットとは、複数の物理的情報#1~#nの組み合わせに基づいて監視対象機器2の状態が異常状態であるか否かを判定可能な閾値である。異常判定閾値セットは、例えば、複数の物理的情報#1~#nのそれぞれについての個別異常判定閾値より低い閾値の組合せであってもよい。また、異常判定閾値セットを構成する閾値の個数は、計測した物理的情報の個数より少なくてもよく、1つであってもよい。
【0151】
状態推定手段121は、個別異常判定閾値に基づく異常判定において異常状態でないと判定された場合に、異常判定閾値セットに基づく異常判定を行ってもよい。また、監視対象機器2の状態によっては、個別異常判定閾値に基づく異常判定に替えて、異常判定閾値セットに基づく異常判定を行ってもよい。例えば、既述した複数の物理的情報#1~#nの間に成立する相関関係の場合のように、監視対象機器2の状態が個別異常判定閾値を用いた異常判定に適さない場合には、異常判定閾値セットのみに基づく異常判定を行ってもよい。
【0152】
物理的情報#1~#nを個別判断する場合には、個別異常判定閾値を超えないため異常状態であると判断できない場合でも、複数の物理的情報#1~#nを組合せとして総合判断する場合には、異常状態と判断すべき場合がある。例えば、複数の物理的情報#1~#nのすべてにおいて、個別異常判定閾値を超えないが個別異常判定閾値に近い値が示された場合、全体としてみれば異常状態と判断すべき場合がある。また、監視対象機器2の状態によっては、物理的情報#1~#nの個別判断による異常判定を行う場合よりも、物理的情報#1~#nの組合せの総合判断による異常判定を行うことが監視対象機器2の状態の判定手法として適している場合がある。第5の変形例によれば、個別異常判定閾値と異常判定閾値セットとの双方に基づいた異常判定を行うことで、異常状態を適切に検知することができる。
【0153】
状態推定手段121は、監視対象機器2の状態が異常状態であると判定した場合に、異常発生情報を外部のサーバ4に出力する。
【0154】
(故障予知手段122)
故障予知手段122は、取得された複数の物理的情報#1~#nのそれぞれを対応する故障予知判定閾値(以下、個別予知判定閾値とも呼ぶ)と比較した結果に基づいて、監視対象機器2の状態が所定期間内に故障する状態であるか否かを判定する。また、故障予知手段122は、取得された複数の物理的情報#1~#nの組合せを対応する故障予知判定閾値セットと比較した結果に基づいて、監視対象機器2の状態が所定期間内に故障する状態であるか否かを判定する。
【0155】
個別予知判定閾値とは、複数の物理的情報#1~#nの個々の値に基づいて、監視対象機器2の状態が所定期間内に故障する状態であるか否かを判定可能な閾値である。個別予知判定閾値は、例えば、
図9の例で説明した故障温度や、
図10の例で説明した経時情報の一致度の閾値であってもよい。故障予知手段122は、少なくとも1つの物理的情報が個別予知判定閾値との比較によって個別予知判定閾値を超えると判断される場合には、監視対象機器2の状態が所定期間内に故障する状態であると判定してもよい。
【0156】
故障予知判定閾値セットとは、複数の物理的情報#1~#nの組み合わせに基づいて監視対象機器2の状態が所定期間内に故障する状態であるか否かを判定可能な閾値である。故障予知判定閾値セットは、例えば、複数の物理的情報#1~#nのそれぞれに対応する個別予知判定閾値より低い閾値の組合せであってもよい。また、監視対象機器2の状態によっては、故障予知判定閾値セットを構成する閾値の個数は、物理的情報の個数より少なくてもよく、1つであってもよい。
【0157】
故障予知手段122は、個別予知判定閾値に基づく故障予知判定において所定期間内に故障する状態でないと判定された場合に、故障予知判定閾値セットに基づく故障予知判定を行ってもよい。また、故障予知手段122は、状態推定手段121によって異常状態でないと判定された場合に、故障予知判定を行ってもよい。また、監視対象機器2の状態によっては、個別予知判定閾値に基づく故障予知判定に替えて、故障予知判定閾値セットに基づく故障予知判定を行ってもよい。
【0158】
複数の物理的情報#1~#nを個別判断する場合には個別予知判定閾値を超えないため故障が予知されない場合でも、複数の物理的情報#1~#nを組合せとして総合判断する場合には、故障の兆候を示していると判断できる場合がある。また、監視対象機器2の状態によっては、物理的情報#1~#nの個別判断による故障予知判定を行う場合よりも、物理的情報#1~#nの組合せの総合判断による故障予知判定を行うことが監視対象機器2の状態の判定手法として適している場合がある。第7の変形例によれば、個別予知判定閾値と故障予知判定閾値セットとの双方に基づくことで、将来の故障を適切に予知することができる。
【0159】
(動作例)
次に、第7の変形例による機器状態監視装置1の動作例について説明する。
図18は、本実施形態の第7の変形例による機器状態監視装置1の動作例を示すフローチャートである。
【0160】
図18に示すように、先ず、情報取得手段11は、産業機械3の外部に現れる物理的情報を取得する(ステップS1)。物理的情報が取得された後、情報取得手段11は、取得された物理的情報が1つ(すなわち、一種類)のみであるか否かを判定する(ステップS8)。
【0161】
取得された物理的情報が1つのみである場合(ステップS8:Yes)、情報取得手段11は、取得された物理的情報から監視対象機器2の状態を推定する(ステップS201)。
【0162】
次に、状態推定手段121は、物理的情報が異常判定閾値を超えたか否かを判定する(ステップS31)。
【0163】
異常判定閾値を超えた場合(ステップS31:Yes)、状態推定手段121は、監視対象機器2の状態が異常状態であると判断して、外部に異常発生情報を出力する(ステップS4)。一方、異常判定閾値を超えていない場合(ステップS31:No)、状態推定手段121は、監視対象機器2の状態が異常状態でないと判断する。
【0164】
監視対象機器2の状態が異常状態でないと判断された場合、故障予知手段122は、物理的情報が故障予知判定閾値を超えたか否かを判定する(ステップS51)。
【0165】
故障予知判定閾値を超えた場合(ステップS51:Yes)、故障予知手段122は、監視対象機器2の状態が所定期間内に故障する状態である(すなわち、故障が予知された)と判断して、外部に故障予知情報を出力する(ステップS6)。
【0166】
一方、故障予知判定閾値を超えていない場合(ステップS51:No)、故障予知手段122は、推定された状態に対応する機器状態情報を外部に出力する(ステップS7)。
【0167】
図19は、
図18に続く本実施形態の第7の変形例による機器状態監視装置1の動作例を示すフローチャートである。
【0168】
取得された物理的情報が1つのみでない場合(
図18のステップS8:No)、情報取得手段11は、取得された複数の物理的情報から監視対象機器2の状態を推定する(ステップS203)。
【0169】
次に、状態推定手段121は、複数の物理的情報#1~#nの少なくとも1つが個別異常判定閾値を超えたか否かを判定する(ステップS32)。
【0170】
個別異常判定閾値を超えた場合(ステップS32:Yes)、状態推定手段121は、監視対象機器2の状態が異常状態であると判断して、外部に異常発生情報を出力する(ステップS41)。一方、個別異常判定閾値を超えていない場合(ステップS32:No)、状態推定手段121は、複数の物理的情報#1~#nが異常判定閾値セットを超えたか否かを判定する(ステップS33)。
【0171】
異常判定閾値セットを超えた場合(ステップS33:Yes)、状態推定手段121は、監視対象機器2の状態が異常状態であると判断して、外部に異常発生情報を出力する(ステップS41)。一方、異常判定閾値セットを超えていない場合(ステップS33:No)、状態推定手段121は、監視対象機器2の状態が異常状態でないと判断する。
【0172】
監視対象機器2の状態が異常状態でないと判断された場合、故障予知手段122は、複数の物理的情報#1~#nの少なくとも1つが個別予知判定閾値を超えたか否かを判定する(ステップS52)。
【0173】
個別予知判定閾値を超えた場合(ステップS52:Yes)、故障予知手段122は、監視対象機器2の状態が所定期間内に故障する状態である(すなわち、故障が予知された)と判断して、外部に故障予知情報を出力する(ステップS61)。
【0174】
一方、個別予知判定閾値を超えていない場合(ステップS53:No)、故障予知手段122は、複数の物理的情報#1~#nが故障予知判定閾値セットを超えたか否かを判定する(ステップS53)。
【0175】
故障予知判定閾値セットを超えた場合(ステップS53:Yes)、故障予知手段122は、監視対象機器2の状態が所定期間内に故障する状態であると判断して、外部に故障予知情報を出力する(ステップS61)。一方、故障予知判定閾値セットを超えていない場合(ステップS53:No)、故障予知手段122は、監視対象機器2の状態が所定期間内に故障する状態でないと判断して、外部に監視対象機器2の状態に対応する機器状態情報を出力する(ステップS72)。
【0176】
図20は、本実施形態の第7の変形例による機器状態監視装置1の動作例において、複数の物理的情報の組み合わせによる故障予知工程を説明するための説明図である。
図20には、物理的情報#1~#3のそれぞれを対応する個別予知判定閾値と比較した結果として、物理的情報#1~#3の経時情報のそれぞれの一致度と個別予知判定閾値との大小関係が示されている。また、
図20には、物理的情報#1~#3の組合せを対応する故障予知判定閾値セットと比較した結果として、物理的情報#1~#3の経時情報のそれぞれの一致度と故障予知判定閾値セットとの大小関係が示されている。
【0177】
図20の例において、物理的情報#1~#3の経時情報のそれぞれの一致度は、いずれも対応する個別予知判定閾値より小さい。このため、
図20の例では、
図19に示した個別予知判定閾値との比較による故障予知判定(ステップS52)において、否定的な判定結果が得られる。一方、
図19の例において、物理的情報#1~#3の経時情報のそれぞれの一致度の組合せは、故障予知判定閾値セットより大きい。このため、
図19の例では、
図18に示した故障予知判定閾値セットとの比較による故障予知判定(ステップS53)において、肯定的な判定結果が得られる。すなわち、
図19の例では、所定期間内に故障する状態であると判定される。
【0178】
第7の変形例によれば、個別異常判定閾値と異常判定閾値セットとの双方に基づくことで、異常状態を適切に検知することができる。また、個別予知判定閾値と故障予知判定閾値セットとの双方に基づくことで、将来の故障を適切に予知することができる。
【0179】
(第8の変形例)
次に、監視対象機器2の動作開始時である起動時の状態を基準として監視対象機器2の状態を判定する第8の変形例について説明する。ここで動作開始時とは、例えば夜間は監視対象機器2の動作を停止させ、翌朝に動作を再開させるときのことである。
図21は、本実施形態の第8の変形例による機器状態監視装置1の動作例において、監視対象機器2の状態の判定工程を説明するための説明図である。
【0180】
第8の変形例において、情報取得手段11は、産業用ロボット30Aの表面3aの物理的情報として、第1~第3回動軸306~308の表面の変位(
図21参照)を取得する。第1~第3回動軸306~308の表面の変位の具体的な取得方法は特に限定されない。例えば、情報取得手段11は、第1~第3回動軸306~308の表面上の特定位置に設けられたマークをカメラ110で撮像した撮像画像に基づいて、マークの軌跡を回動軸306~308の表面の変位として取得してもよい。
【0181】
情報取得手段11は、産業用ロボット30Aの起動時と、機器状態の判定時との双方において、第1~第3回動軸306~308の表面の変位を取得する。起動時と判定時との双方において、制御装置120は、産業用ロボット30Aに同じ動作指令を入力し、情報取得手段11は、同じ動作指令の下で動作する産業用ロボット30Aの第1~第3回動軸306~308の表面の変位を取得する。
【0182】
制御装置120は、第1~第3回動軸306~308のそれぞれについて、起動時の表面の変位と判定時の表面の変位との誤差(以下、変位誤差とも呼ぶ)を算出する。変位誤差の具体的な態様は特に限定されず、例えば、既述した同じ動作指令の下で動作した場合の総変位量(例えば、マークの移動距離)の差分であってもよい。制御装置120は、算出された変位誤差と閾値との比較の結果に基づいて、第1~第3回動軸306~308のそれぞれに内蔵されている第1~第3減速機30B-1~3B-3が異常状態になっているか否かを判定する。制御装置120は、変位誤差が閾値を超えた場合に、減速機30B-1~3B-3が異常状態になっていると判定する。
【0183】
異常状態の有無の判定において、制御装置120は、変位が取得される表面の位置を考慮した判定を行ってもよい。例えば、
図21の例において、第3回動軸308は、第1回動軸306および第2回動軸307よりも取付位置Pから離れた位置に配置されている。このため、第3回動軸308の変位誤差は、第1、第2回動軸306、307の変位誤差が加算されることで、第1、第2回動軸306、307の変位誤差よりも大きくなり得る。したがって、異常状態の有無を判定する際の第3回動軸308の変位誤差の閾値は、第1回動軸306および第2回動軸307の変位誤差の閾値より大きくしてもよい。これにより、第3回動軸308に内蔵されている第3減速機30B-3の状態を精度良く判定することができる。
【0184】
第8の変形例によれば、起動時の状態を基準として減速機30Bが異常状態であるか否かを判定することで、季節や温度などの使用環境の違いによって生じる物理的情報の誤差などの外乱の影響を少なくして、減速機30Bの状態の判定精度を向上できる。なお、上記では異常状態の判定について説明したが、所定期間内に故障する状態の判定も同様である。
【0185】
また、制御装置120は、産業用ロボット30Aの設置時における減速機30Bの状態を基準として減速機30Bが所定の状態になっているか否かを判定してもよい。設置時の状態を基準とすることで、経年劣化による減速機30Bの交換タイミングを把握することができる。
【0186】
(第9の変形例)
次に、第9の変形例として、機器状態監視装置1を備えた動作確認装置の例について説明する。
図22は、本実施形態の第9の変形例による動作確認装置10を示す図である。
【0187】
動作確認装置10は、機器状態監視装置1とコンピュータ8とを備える。動作確認装置10は、コンピュータ8の記憶領域81上の仮想空間内で産業用ロボット30Aの動作を確認する。
図22の例において、動作確認装置10は、製造ラインを構成するように実空間に配列された複数の産業用ロボット30Aの動作を仮想空間内で確認する。
図22の例では、産業用ロボット30A毎に1つずつ機器状態監視装置1が設けられているが、機器状態監視装置1の個数は、産業用ロボット0の個数と必ずしも一致しなくてもよい。例えば、1つの機器状態監視装置1が複数の産業用ロボット30Aの状態を監視してもよい。
【0188】
動作確認装置10は、入力手段82を有する。入力手段82は、機器状態監視装置1で取得された情報を、産業用ロボット30Aの状態に関する情報として記憶領域81に入力する。機器状態監視装置1で取得された情報は、例えば、既述した機器状態判定手段12の取得情報(すなわち、異常発生情報、故障予知情報、機器状態情報)である。機器状態監視装置1で取得された情報には、情報取得手段11で取得された物理的情報が含まれていてもよい。入力手段82は、例えば、CPUなどであってもよい。入力手段82は、機器状態監視装置1から定期的に情報を取得して入力してもよい。
【0189】
第9の変形例によれば、仮想空間上で、実空間の産業用ロボット30Aの最新の動作状態を確認することができる。これにより、仮想空間上で、実空間の産業ロボット3Aの動作をエミュレートすることができ、また、仮想空間上で工程変更を行った場合のシミュレーション結果を実空間に反映させることも可能となる。
【0190】
(第10の変形例)
次に、土木・建築構造物30Lに内蔵された監視対象物20の状態を、機器状態監視装置1を用いて監視する第10の変形例について説明する。
図23は、本実施形態の第10の変形例による機器状態監視装置1を示すブロック図である。
図23の例において、機器状態監視装置1は、土木・建築構造物30Lから独立している。
【0191】
土木・建築構造物30Lとしては、風力発電用の風車、太陽熱発電用タワーのヘリオスタット、高架道路、橋梁、ビルなどが挙げられる。監視対象物20としては、土木・建築構造物30Lの内部に設けられた鉄骨や鉄筋などの構造部材、当該内部に設けられたボルトなどの締結部材、内部に埋め込まれた上下水道や電気配線用の各種配管が挙げられる。更に監視対象物20としては、風力発電用の風車、太陽熱発電用タワー、高架道路、橋梁、ビルなどのコンクリート製の土木または建築構造物の当該コンクリートの内部の部分が挙げられる。
【0192】
また、土木・建築構造物30Lとしては、道路や歩道が挙げられ、監視対象物20としては、道路や歩道の下に埋設された共同溝や水道管やガス管等やその接続部分が挙げられる。
【0193】
その他については、本実施形態や本実施形態の他の変形例と同じであるため、説明を省略する。
【0194】
上述した実施形態および各変形例では、主に状態監視について説明したが、これに限定されるものでは無く、必要に応じて任意のタイミングで任意の期間だけ監視対象機器2の状態を確認するものであってもよい。この場合、任意のタイミングで任意の期間だけ情報取得手段11によって物理的情報を取得するものであっても良く、また情報取得手段11が連続して物理的情報を取得し、機器状態判定手段12が任意のタイミングで任意の期間だけ判定するようにしても良い。
【0195】
上述した実施形態および各変形例は、これらを適宜組み合わせてもよいし、特に指摘していない限り、上述した実施形態および各変形例で説明した個々の構成はそれぞれ任意に組み合わせたり、一部を削除したりしても構わない。
【0196】
本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。