(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046703
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】治療抗体の適用関連副反応の低減
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20220315BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20220315BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220315BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220315BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220315BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220315BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220315BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220315BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220315BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220315BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220315BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20220315BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20220315BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220315BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220315BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20220315BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20220315BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220315BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220315BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220315BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220315BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20220315BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/18
C07K16/28
A61P25/00
A61P35/00
A61P27/02
A61P31/00
A61P31/12
A61P29/00
A61P9/10
A61P25/28
A61P25/08
A61P25/18
A61P3/00
A61P25/16
A61P25/20
A61P25/02
A61P25/14
A61P1/16
A61K39/395 N
C12N15/13
C12P21/08
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021214446
(22)【出願日】2021-12-28
(62)【分割の表示】P 2019563375の分割
【原出願日】2018-05-16
(31)【優先権主張番号】17171626.9
(32)【優先日】2017-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】フレスクゴード,ペル-オーラ
(72)【発明者】
【氏名】イグレシアス,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ニーヴェーナー,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー,フェリクス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】中枢神経系の障害を処置するための治療抗体及びその使用を提供する。
【解決手段】抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター(1)抗体であり、ここで、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター(1)抗体が、脳ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VL対)、ヒトトランスフェリンレセプター(1)に特異的に結合する1つの結合部位(VH/VL対)及びエフェクター機能コンピテント(ネイティブ)Fc領域を有し、静脈内適用後の望ましくない体温低下が低減された、個体における抗脳ターゲット処置における使用のための、抗脳ターゲット治療剤が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体であって、
抗体は、
i)Fc領域と、
ii)第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位と、
iii)第2の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する1つの結合部位とを含み、
ここで、処置は、投与後の副作用を低減し、ここで、投与は、静脈内、皮下又は筋肉内投与であり、ここで、副作用は、投与関連副作用であり、
ここで、副作用は、血管拡張、気管支収縮、喉頭浮腫、心圧低下および低体温からなる群より選択される1種以上である、
患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体。
【請求項2】
投与が、注入によるものである、請求項1記載の患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体。
【請求項3】
処置が、第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する前記結合部位の1つ又は2つを欠く同じ抗体と比較して、投与後の副作用の低減を有する、請求項1又は2記載の患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体。
【請求項4】
第1のターゲットへの結合部位が両方とも、抗体重鎖のN末端にあり、第2のターゲットへの結合部位が、1つの抗体重鎖のC末端にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体。
【請求項5】
抗体が、
i)第1の抗体軽鎖と第1の抗体重鎖とのペアと、
ii)第2の抗体軽鎖と第2の抗体重鎖とのペアと、
iii)scFv、Fab、scFab、dAbフラグメント、DutaFab及びCrossFabからなる群から選択される更なる抗体フラグメントとを含み、
ここで、i)およびii)の抗体鎖のペアが、第1のターゲットに特異的に結合し、iii)の更なる抗体フラグメントが、第2のターゲットに特異的に結合する、請求項1~4のいずれか一項に記載の患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体。
【請求項6】
iii)の更なる抗体フラグメントが、i)又はii)の抗体重鎖のC末端に、直接又はペプチドリンカーを介してのいずれかでコンジュゲーションしている、請求項5記載の患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体。
【請求項7】
神経障害が、神経障害、アミロイドーシス、ガン、眼の疾患又は障害、ウイルス又は微生物の感染、炎症、虚血性疾患、神経変性疾患、てんかん発作、行動障害、リソソーム蓄積症、レビー小体病、ポストポリオ症候群、Shy-Draeger症候群、オリボポン小脳萎縮症、パーキンソン病、多系統萎縮症、線条体変性、タウオパシー、アルツハイマー病、核上性麻痺、プリオン病、ウシ海綿状脳症、スクレイピー、クロイツフェルト-ヤコブ症候群、クールー病、Gerstmann-Straussler-Scheinker病、慢性消耗性疾患及び致死的な家族性不眠症、球麻痺、運動ニューロン疾患、神経系不変性障害、カナバン病、ハンチントン病、神経セロイドリポフスチン症、アレキサンダー病、トゥレット症候群、メンケス病、コッカイン症候群、ハレルヴォーデン-スパッツ症候群、ラフォラ病、レト症候群、肝臓病変性、レッシュ-ナイハン症候群、ウンベルリッヒ-ランドボルグ症候群、認知症、ピック病、脊髄小脳運動失調症、CNS及び/又は脳のガン(体内の他の箇所のガンに起因する脳転移を含む)からなる群より選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体。
【請求項8】
第1のターゲットが、ヒトCD20、ヒトタウタンパク質、リン酸化ヒトタウタンパク質、ヒトグルコセレブロシダーゼ、ヒトアルファ-シヌクレイン及びヒトアミロイドベータタンパク質からなる群より選択され、第2のターゲットが、ヒトトランスフェリンレセプター1である、請求項1~7のいずれか一項に記載の患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体。
【請求項9】
第1のターゲットが、ヒトタウタンパク質、リン酸化ヒトタウタンパク質、ヒトグルコセレブロシダーゼ、ヒトアルファ-シヌクレイン及びヒトアミロイドベータタンパク質からなる群より選択され、ここで、神経障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病及びタウオパシーからなる群より選択される、請求項8記載の患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体。
【請求項10】
結合部位が、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインペアである、請求項1~9のいずれか一項に記載の患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体。
【請求項11】
抗体が、エフェクター機能コンピテントFc領域を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体。
【請求項12】
患者への投与時に二重特異性抗体により誘発されるADCCが、第1のターゲットに特異的に結合する1つの結合部位及び第2のターゲットに特異的に結合する1つの結合部位のみを有する二価の二重特異性抗体により誘発されるADCCより低い、請求項1~11のいずれか一項に記載の患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体。
【請求項13】
ADCCが、10倍以上低い、請求項12記載の患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体。
【請求項14】
副作用が、低体温である、請求項1~13のいずれか一項に記載の患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体。
【請求項15】
低体温が、治療用量で0.5℃未満の体温低下に低減される、請求項1~14のいずれか一項に記載の患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体。
【請求項16】
体温の低下が、投与後60分以内である、請求項1~15のいずれか一項に記載の患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体。
【請求項17】
a)抗体重鎖が、ヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、
b)抗体重鎖が、ヒトサブクラスIgG4の全長抗体重鎖であるか、
c)抗体重鎖の1つが、突然変異T366W及び場合によりS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であり、他の抗体重鎖が、突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、
d)両抗体重鎖が、突然変異I253A、H310A及びH435Aを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、
e)両抗体重鎖が、突然変異M252Y、S254T及びT256Eを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、又は
f)両抗体重鎖が、突然変異T307H及びN434Hを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の抗体重鎖であり、ここで、c末端リシン又はグリシン-リシンジペプチドが、一方又は両方の重鎖に、独立して存在し又は存在しないことができ、
ここで、C末端リシン又はグリシン-リシンジペプチドが、一方又は両方の重鎖に、それぞれ独立して存在し又は存在しないことができる、請求項3~16のいずれか一項に記載の患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体。
【請求項18】
患者における神経障害を処置するための方法であって、
前記患者に二重特異性抗体を投与することを含み、
ここで、抗体は、
i)Fc領域と、
ii)第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位と、
iii)第2の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する1つの結合部位とを含み、
ここで、処置は、投与後の副作用を低減し、ここで、投与は、静脈内、皮下又は筋肉内投与であり、ここで、副作用は、投与関連副作用であり、
ここで、副作用は、血管拡張、気管支収縮、喉頭浮腫、心圧低下および低体温からなる群より選択される1種以上である、
方法。
【請求項19】
処置が、第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する前記結合部位の1つ又は2つを欠く同じ抗体と比較して、投与後の副作用の低減を有する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
投与が、注入によるものである、請求項18又は19記載の方法。
【請求項21】
注入速度が、≧50ml/hである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
注入速度が、≧100ml/hである、請求項20記載の方法。
【請求項23】
注入速度が、≧150ml/hである、請求項20記載の方法。
【請求項24】
第1のターゲットへの結合部位が両方とも、抗体重鎖のN末端にあり、第2のターゲットへの結合部位が、1つの抗体重鎖のC末端にある、請求項18~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
抗体が、
i)一対の第一抗体軽鎖および第一抗体重鎖と、
ii)一対の第2の抗体軽鎖および第2の抗体重鎖と、
iii)scFv、Fab、scFab、dAbフラグメント、DutaFabおよびCrossFabからなる群から選択されるさらなる抗体フラグメントとを含み、
ここで、i)およびii)の一対の抗体鎖が、第1のターゲットに特異的に結合し、iii)のさらなる抗体フラグメントが、第2のターゲットに特異的に結合する、請求項18~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
iii)のさらなる抗体フラグメントが、i)又はii)の抗体重鎖のC末端に、直接又はペプチドリンカーを介してのいずれかでコンジュゲーションしている、請求項25記載の方法。
【請求項27】
神経障害が、神経障害、アミロイドーシス、ガン、眼の疾患又は障害、ウイルス又は微生物の感染、炎症、虚血性疾患、神経変性疾患、てんかん発作、行動障害、リソソーム蓄積症、レビー小体病、ポストポリオ症候群、Shy-Draeger症候群、オリボポン小脳萎縮症、パーキンソン病、多系統萎縮症、線条体変性、タウオパシー、アルツハイマー病、核上性麻痺、プリオン病、ウシ海綿状脳症、スクレイピー、クロイツフェルト-ヤコブ症候群、クールー病、Gerstmann-Straussler-Scheinker病、慢性消耗性疾患及び致死的な家族性不眠症、球麻痺、運動ニューロン疾患、神経系不変性障害、カナバン病、ハンチントン病、神経セロイドリポフスチン症、アレキサンダー病、トゥレット症候群、メンケス病、コッカイン症候群、ハレルヴォーデン-スパッツ症候群、ラフォラ病、レト症候群、肝臓病変性、レッシュ-ナイハン症候群、ウンベルリッヒ-ランドボルグ症候群、認知症、ピック病、脊髄小脳運動失調症、CNS及び/又は脳のガン(体内の他の箇所のガンに起因する脳転移を含む)からなる群より選択される、請求項18~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
第1のターゲットが、ヒトCD20、ヒトタウタンパク質、リン酸化ヒトタウタンパク質、ヒトグルコセレブロシダーゼ、ヒトアルファ-シヌクレイン及びヒトアミロイドベータタンパク質からなる群より選択され、第2のターゲットが、ヒトトランスフェリンレセプター1である、請求項18~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
第1のターゲットが、ヒトタウタンパク質、リン酸化ヒトタウタンパク質、ヒトグルコセレブロシダーゼ、ヒトアルファ-シヌクレイン及びヒトアミロイドベータタンパク質からなる群より選択され、ここで、神経障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病及びタウオパシーからなる群より選択される、請求項18~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
結合部位が、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインペアである、請求項18~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
抗体が、エフェクター機能コンピテントFc領域を含む、請求項18~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
患者への投与時に二重特異性抗体により誘発されるADCCが、第1のターゲットに特異的に結合する1つの結合部位及び第2のターゲットに特異的に結合する1つの結合部位のみを有する二価の二重特異性抗体により誘発されるADCCより低い、請求項18~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
ADCCが、10倍以上低い、請求項32記載の方法。
【請求項34】
副作用が、低体温である、請求項18~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
低体温が、治療用量で0.5℃未満の体温低下に低減される、請求項18~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
体温の低下が、投与後60分以内である、請求項18~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
a)抗体重鎖が、ヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、
b)抗体重鎖が、ヒトサブクラスIgG4の全長抗体重鎖であるか、
c)抗体重鎖の1つが、突然変異T366W及び場合によりS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であり、他の抗体重鎖が、突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、
d)両抗体重鎖が、突然変異I253A、H310A及びH435Aを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、
e)両抗体重鎖が、突然変異M252Y、S254T及びT256Eを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、又は
f)両抗体重鎖が、突然変異T307H及びN434Hを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の抗体重鎖であり、ここで、c末端リシン又はグリシン-リシンジペプチドが、一方又は両方の重鎖に、独立して存在し又は存在しないことができ、
ここで、C末端リシン又はグリシン-リシンジペプチドが、一方又は両方の重鎖に、それぞれ独立して存在し又は存在しないことができる、請求項25~36のいずれか一項に記載の患者における神経障害の処置における使用ための二重特異性抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中枢神経系の障害を処置するための治療抗体及びその使用に関する。
【0002】
背景
脳卒中、精神疾患、神経変性疾患、神経発達障害及び脳腫瘍を含む中枢神経系(CNS)の障害は、世界の主要な障害原因である。従来のモノクローナル抗体(mAb)を使用する努力が重ねられているが、血液脳関門(BBB)は、有効な治療法の開発を妨げ続けている。その結果、BBB問題を克服するための技術は、大きな注目を受けている(1、2)。今日、開発は、送達能力を反映する治療用量での脳における実質的な取り込み及び関連する活性を実証するのに焦点が当てられている。しかしながら、使用される技術が、医薬品開発に安全性の限界があるかどうかは、必ずしも明らかではない。この疑問に先行して取り組むことは、設計並びにタンパク質及び抗体工学がmAbの脳への安全な送達を容易にすることができる態様を特定するのに重要である。
【0003】
BBB送達は、輸送目的のために脳内皮細胞(BEC)上に発現される天然のレセプターを利用する。特に、ヒトトランスフェリンレセプター(TfR;TfR1とも呼ばれる)が、BBBにおける顕著な発現のために、BBB送達レセプターとして広く研究されてきた(3)。多くのグループが、BBBを横断する分子の送達のためのレセプター媒介トランスサイトーシス(RMT)系としてTfRを探求してきた(4~7)。BBBの生産的かつ効率的な通過を可能にするために、抗体を操作する近年の努力が、ますます注目されている(8~11)。
【0004】
治療ターゲットに対する2つの結合部位(すなわち、治療ターゲットに対して二価である)及びTfRに対する1つの結合部位(すなわち、ヒトトランスフェリンレセプター1に対して一価である)を有する二重特異性抗体を使用する脳シャトル(BS)技術を開発して、完全に機能的な、すなわち、治療ターゲット結合性でかつエフェクター機能コンピテントIgG構造を有するモノクローナル抗体(mAb)の送達を可能にした。これは、1つのBSモジュールをmAbの1つの重鎖のC末端に融合させることにより達成される。BSモジュールを抗アミロイドベータmAb(Aβ mAb)に連結することにより、近年、脳暴露、ターゲット結合及び有効性の実質的な改善が実証された(9)。この増強された脳送達は、BS構築物のTfRとの天然の一価の結合の直接的な結果であると仮定された。
【0005】
WO第2014/033074号には、血液脳関門上のレセプター(R/BBB)に結合する血液脳関門シャトル及びその使用方法が開示されている。
【0006】
一価分子シャトルを使用する治療抗体の脳浸透及び効力の向上が、Niewoehner et al.(Neuron 81 (2014) 49-60; 9)により開示されている。
【0007】
発明の概要
本発明において、二重特異性治療モノクローナル抗体の適用関連副作用及び反応を低減するための方法が見出された。これは、Fcγレセプター(FcγR)への結合を立体的に抑制することにより達成される。一例は、中枢神経系及びヒトトランスフェリンレセプター(TfR)の障害に関連する治療ターゲットに特異的に結合する二重特異性治療抗体である。
【0008】
近年の研究において、TfR(TfR1)に対する従来のmAbを使用して、以前に見落とされた責任が明らかにされた。急性の臨床徴候が、投与直後にマウスで観察され、これは、mAbのエフェクター機能状態に関連していた(12)。また、これは、1つのFabアームのみがTfR(TfR1)に結合する二重特異性mAbを使用した場合にも観察された。ただし、mAbは、ネイティブで完全に活性なエフェクター機能を含んでいた。まとめると、mAbのエフェクター機能は、観察された急性臨床徴候に直接関連していると考えられる。したがって、明らかな回避戦略は、エフェクターデッド変異体を使用することであろう。しかしながら、特定のmAbについては、ネイティブなエフェクター機能が、作用モード及び最適な治療プロファイルに重要である。
【0009】
TfR(TfR1)をターゲットとするBS-mAbのFc領域エフェクター機能が、mAbがTfR(TfR1)に結合する(かつ同時に治療ターゲットには結合しない)場合にカモフラージュされるが、mAbがそのCNSターゲットに結合する(かつ同時にTfR(TfR1)には結合しない)場合には、BS-mAbのフォーマットに応じて活性に戻る、ネイティブなIgGエフェクター機能の可能性のある初回注入反応(FIR)責任に関して、新規なFcγR-ヒト化マウスモデルにおける脳シャトル-mAb(BS-mAb)系の異なるフォーマットのin vitro及びin vivo評価において、現在見出されている。
【0010】
この理論に拘束されるものではないが、FIRの観察されたフォーマット依存性は、免疫細胞上に位置するFcγRへのFc領域の結合/接近性に影響を及ぼす立体要因によると推定される。TfR(TfR1)がBSモジュールにより結合される場合、BS-mAbの反対側の末端の2つの天然のFabアームは、BS-mAbのFc領域のエフェクター細胞上のFcγRへの必要とされる近接を妨げると仮定される。BS-mAbがTfR(TfR1)から、例えば、CNS実質中に放出され、常在するターゲットがネイティブな治療用IgG Fabに結合すると、重鎖C末端における遊離BSモジュールはもはや、リクルートされたエフェクター細胞上のFcγRに影響を及ぼさず又は同FcγRとのFc領域の相互作用を妨げない。
【0011】
このため、本明細書で伝達された教示は、BBBを横断して安全に輸送することができる完全なエフェクター機能性mAbの選択及び使用のための基礎を提供する。さらに、この基礎は、脳におけるmAb取り込みの増強に焦点を当てた将来のTfR(TfR1)ターゲティング療法のための重要な考察に役立つ。本明細書において報告されたデータは、第1の細胞上のそれらの抗原に結合したmAb間の相互作用及び第2の細胞上のFcγRへの結合における幾何学的形状に関する新規な教示を提供する。それにより、低減された初回注入反応(FIR)を有する新規なmAb設計を提供し及び/又は選択することができる。
【0012】
本発明は、一態様において、疾患/障害の処置における望ましくない投与(注入)関連副作用(例えば、血管拡張、気管支収縮、喉頭浮腫、心圧低下及び特に、Fc領域エフェクター機能に関連する低体温)の低減のための、第1及び第2の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合し、特異的なフォーマットで(ネイティブな)エフェクター機能を有する、二重特異性抗体の使用に関する。ここで、該抗体は、第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VL対)と、第2の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する1つの結合部位(VH/VL対)と、エフェクター機能コンピテント、例えば、ネイティブなFc領域とを有する。
【0013】
本発明は、一態様において、第1及び第2の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合し、特異的なフォーマットでの(ネイティブな)エフェクター機能を有する、二重特異性抗体を含む疾患の処置のための方法における使用のための治療組成物に関する。ここで、該抗体は、第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VL対)と、第2の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する1つの結合部位(VH/VL対)と、エフェクター機能コンピテント、例えば、ネイティブなFc領域を有する。ここで、治療組成物は、Fc領域エフェクター機能に関連する望ましくない投与(注入)関連副作用(例えば、血管拡張、気管支収縮、喉頭浮腫、心圧低下及び特に、低体温)を低減させる。
【0014】
本発明は、一態様において、第1及び第2の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合し、特異的フォーマットでの(ネイティブな)エフェクター機能を有する二重特異性抗体を投与することにより、Fc領域エフェクター機能に関連する望ましくない投与(注入)関連副作用(例えば、血管拡張、気管支収縮、喉頭浮腫、心圧低下及び特に、低体温)を有する疾患を予防し及び/又は治療するのに使用するための、治療用二重特異性抗体を含む、医薬組成物に関する。ここで、該抗体は、第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VL対)と、第2の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する1つの結合部位(VH/VL対)と、エフェクター機能コンピテントFc領域とを有する。
【0015】
本発明は、一態様において、患者における疾患の処置における使用ための二重特異性抗体であって、
二重特異性抗体は、
i)(エフェクター機能コンピテント)Fc領域と、
ii)第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位と、
iii)第2の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する1つの結合部位とを含み、
ここで、処置は、投与後の副作用を低減し、
ここで、副作用は、血管拡張、気管支収縮、喉頭浮腫、心圧低下および低体温からなる群より選択される1種以上である、二重特異性抗体に関する。
【0016】
すなわち、本発明は、一態様において、患者における疾患の処置における使用ため及び投与後の副作用を低減するための二重特異性抗体であって、
二重特異性抗体は、
i)(エフェクター機能コンピテント)Fc領域と、
ii)第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位と、
iii)第2の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する1つの結合部位とを含み、
ここで、副作用は、血管拡張、気管支収縮、喉頭浮腫、心圧低下および低体温からなる群より選択される1種以上である、二重特異性抗体に関する。
【0017】
一実施態様において、第1のターゲットに特異的に結合する2つの結合部位及び第2のターゲットに特異的に結合する結合部位は、反対方向に配置される。すなわち、一方は、Fc領域のN末端にコンジュゲーションしており、他方は、Fc領域のC末端にコンジュゲーションしている。
【0018】
一実施態様において、第1の(細胞表面)ターゲットと第2の(細胞表面)ターゲットとは異なる。
【0019】
一実施態様において、第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する結合部位及び第2の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する結合部位は、反対側の末端に位置する(すなわち、第1のターゲットに特異的に結合する結合部位は両方とも/それぞれ、(全長)抗体重鎖のN末端にあり、第2のターゲットに特異的に結合する結合部位は、二重特異性抗体の(全長)抗体重鎖の1つのC末端にある。
【0020】
一実施態様において、第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する結合部位及び第2の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する結合部位は、二重特異性抗体の反対側の端部に位置する。すなわち、第1のターゲットに特異的に結合する結合部位の一方は、Fc領域の第1のN末端にコンジュゲーションしており、他方は、Fc領域の第2のN末端にコンジュゲーションしており、第2のターゲットに特異的に結合する結合部位は、Fc領域のC末端の一方にコンジュゲーションしている。
【0021】
一実施態様において、投与関連副作用は、注入関連副作用である。一実施態様において、注入関連副作用は、血管拡張、気管支収縮、喉頭浮腫、心圧低下及び低体温である。好ましい一実施態様では、注入関連副作用は、低体温である。
【0022】
一実施態様において、第2の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する結合部位は、ペプチドリンカーにより、第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する結合部位の1つに連結している。一実施態様において、ペプチドリンカーは、配列番号:37又は38のアミノ酸配列を有する。
【0023】
一実施態様において、第2の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する結合部位は、Fc領域内にあり、ここで、CH2ドメイン、CH3ドメイン又はCH4ドメインのいずれかの少なくとも1つの構造ループ領域は、第2の(細胞表面)ターゲットへの前記少なくとも1つの改変ループ領域の結合を可能にする少なくとも1つの改変を含み、ここで、未改変免疫グロブリン定常ドメインは、前記ターゲットに結合しない。
【0024】
一実施態様において、結合部位は、抗体重鎖可変ドメインと抗体軽鎖可変ドメインとのペアである。
【0025】
一実施態様において、二重特異性抗体は、
i)第1の抗体軽鎖と第1の抗体重鎖とのペアと、
ii)第2の抗体軽鎖と第2の抗体重鎖とのペアと、
iii)scFv、Fab、scFab、dAbフラグメント、DutaFab及びCrossFabからなる群から選択される更なる抗体フラグメントとを含み、
ここで、i)およびii)の抗体鎖のペアは、第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する結合部位を含み、iii)の更なる抗体フラグメントは、第2の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する結合部位を含む。
【0026】
一実施態様において、iii)の更なる抗体フラグメントは、第1の抗体重鎖又は第2の抗体重鎖のいずれかに、直接又はペプチドリンカーを介してのいずれかでコンジュゲーションしている。一実施態様において、iii)の更なる抗体フラグメントは、i)又はii)の抗体重鎖のC末端に、直接又はペプチドリンカーを介してのいずれかでコンジュゲーションしている。一実施態様において、ペプチドリンカーは、配列番号:37又は38のアミノ酸配列を有する。一実施態様において、第1の抗体軽鎖及び第2の抗体軽鎖は、同じアミノ酸配列を有し、第1の抗体重鎖及び第2の抗体重鎖は、ヘテロ二量体化に必要な突然変異により異なる。一実施態様において、ヘテロ二量体化に必要な突然変異は、ノブ-into-ホール突然変異である。一実施態様において、iii)の更なる抗体フラグメントにコンジュゲーションしていない抗体重鎖は、i)C末端リシン残基又はii)C末端グリシン-リシンジペプチドを含まない。
【0027】
一実施態様において、第1のターゲットは、脳ターゲットであり、第2のターゲットは、ヒトトランスフェリンレセプターである。一実施態様において、第1のターゲットは、脳ターゲットであり、第2のターゲットは、ヒトトランスフェリンレセプター1である。
【0028】
一実施態様において、脳ターゲットは、ベータ-セクレターゼ1(BACE1)、ヒトアミロイドベータ(Aベータ)、上皮成長因子レセプター(EGFR)、ヒト上皮成長因子レセプター2(HER2)、ヒトタウタンパク質、リン酸化ヒトタウタンパク質、アポリポタンパク質E4(ApoE4)、ヒトアルファ-シヌクレイン、ヒトCD20、ハンチンチン、プリオンタンパク質(PrP)、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)、パーキン、プレセニリン1、プレセニリン2、ガンマセクレターゼ、デスレセプター6(DR6)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、p75ニューロトロフィンレセプター(p75NTR)及びカスパーゼ6からなる群より選択される。好ましい一実施態様では、脳ターゲットは、ヒトCD20、ヒトタウタンパク質、リン酸化ヒトタウタンパク質、ヒトアルファ-シヌクレイン及びヒトアミロイドベータタンパク質からなる群より選択される。好ましい一実施態様では、脳ターゲットはヒ、トアミロイドベータタンパク質である。一実施態様において、脳ターゲットは、配列番号:01~05から選択される。
【0029】
好ましい一実施態様では、本明細書で報告された全ての態様における二重特異性抗体は、
i)ヒトCD20、ヒトタウタンパク質、リン酸化ヒトタウタンパク質、ヒトアルファ-シヌクレイン及びヒトアミロイドベータタンパク質からなる群より選択される脳ターゲットに特異的に結合する第1の結合部位を形成する、第1の軽鎖可変ドメイン及び第1の重鎖可変ドメインを含む第1の抗体軽鎖と第1の抗体重鎖とのペアと、
ii)第1の結合部位と同じ脳ターゲットに特異的に結合する第2の結合部位を形成する、第2の軽鎖可変ドメイン及び第2の重鎖可変ドメインを含む第2の抗体軽鎖と第2の抗体重鎖とのペアと、
iii)scFv、Fab、scFab、dAbフラグメント、DutaFab及びCrossFabからなる群より選択され、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に特異的に結合する第3の結合部位を形成する、第3の軽鎖可変ドメイン及び第3の重鎖可変ドメインを含む更なる抗体フラグメントと、
iv)(ヒトIgG1サブクラスの)(ヒト)エフェクター機能コンピテントFc領域とを含み、
ここで、iii)の更なる抗体フラグメントは、i)又はii)の抗体重鎖のC末端に、直接又はペプチドリンカーを介してのいずれかでコンジュゲーションしている。
【0030】
一実施態様において、更なる抗体フラグメントは、第2の抗原に特異的に結合し、i)又はii)の重鎖の1つのC末端に、ペプチドリンカーを介して融合しているFabフラグメントである。ここで、第2の軽鎖及び第2の重鎖の定常ドメインCL及びCH1は、互いに置き換えられており、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に特異的に結合する第3の結合部位を形成する、第3の軽鎖可変ドメイン及び第3の重鎖可変ドメインを含む。
【0031】
一実施態様において、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に特異的に結合する結合部位は、(a)配列番号:06又は07のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:08又は09又は10のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:11、12又は13のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:14又は15のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:16のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:17又は18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0032】
一実施態様において、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に特異的に結合する結合部位は、(a)配列番号:06のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:08のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:16のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0033】
一実施態様において、抗体は、トランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に対する結合部位を形成する、配列番号:19の重鎖可変ドメインと配列番号:20の軽鎖可変ドメインとの1つペアと、ヒトアミロイドベータタンパク質(Aベータ)に対する結合部位を形成する、配列番号:23の重鎖可変ドメインと配列番号:24の(各)軽鎖可変ドメインとの少なくとも1つ(すなわち、1つ又は2つ)のペアとを含む。
【0034】
一実施態様において、抗体は、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に対する結合部位を形成する、配列番号:19の重鎖可変ドメインと配列番号:20の軽鎖可変ドメインとの1つのペアと、それぞれヒトCD20に対する結合部位を形成する、配列番号:21の重鎖可変ドメインと配列番号:22の軽鎖可変ドメインとの2つのペアとを含む。一実施態様において、重鎖可変領域は、Kabatの11位のアミノ酸残基をロイシン以外の任意のアミノ酸で置き換えることを含む。一実施態様において、置換は、Kabatの11位のアミノ酸残基を非極性アミノ酸で置き換えることを含む。好ましい一実施態様では、置換は、配列番号:21の重鎖可変ドメインにおけるKabatの11位のアミノ酸残基を、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン及びフェニルアラニンからなる群より選択されるアミノ酸残基で置き換えることを含む。
【0035】
一実施態様において、抗体は、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に対する結合部位を形成する、配列番号:19の重鎖可変ドメインと配列番号:20の軽鎖可変ドメインとの1つのペアと、それぞれヒトアルファ-シヌクレインに対する結合部位を形成する、配列番号:25の重鎖可変ドメインと配列番号:26の軽鎖可変ドメインとの2つのペアとを含む。
【0036】
一実施態様において、抗体は、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に対する結合部位を形成する、配列番号:19の重鎖可変ドメインと配列番号:20の軽鎖可変ドメインとの1つのペアと、それぞれヒトアルファ-シヌクレインに対する結合部位を形成する、配列番号:27から得られるヒト化重鎖可変ドメインと配列番号:28から得られるヒト化軽鎖可変ドメインとの2つのペアとを含む。
【0037】
一実施態様において、抗体は、ヒトトランスフェリンレセプターに対する結合部位を形成する、配列番号:19の重鎖可変ドメインと配列番号:20の軽鎖可変ドメインとの1つのペアと、それぞれヒトアルファ-シヌクレインに対する結合部位を形成する、配列番号:29から得られるヒト化重鎖可変ドメインと配列番号:30から得られるヒト化軽鎖可変ドメインとの2つのペアとを含む。
【0038】
一実施態様において、抗体は、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に対する結合部位を形成する、配列番号:19の重鎖可変ドメインと配列番号:20の軽鎖可変ドメインとの1つのペアと、それぞれヒトアルファ-シヌクレインに対する結合部位を形成する、配列番号:31から得られるヒト化重鎖可変ドメインと配列番号:32から得られるヒト化軽鎖可変ドメインとの2つのペアとを含む。
【0039】
一実施態様において、抗体は、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に対する結合部位を形成する、配列番号:19の重鎖可変ドメインと配列番号:20の軽鎖可変ドメインとの1つのペアと、それぞれヒトアルファ-シヌクレインに対する結合部位を形成する、配列番号:33から得られるヒト化重鎖可変ドメインと配列番号:34から得られるヒト化軽鎖可変ドメインとの2つのペアとを含む。
【0040】
一実施態様において、抗体は、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に対する結合部位を形成する、配列番号:19の重鎖可変ドメインと配列番号:20の軽鎖可変ドメインとの1つのペアと、それぞれヒトアルファ-シヌクレインに対する結合部位を形成する、配列番号:35から得られるヒト化重鎖可変ドメインと配列番号:36から得られるヒト化軽鎖可変ドメインとの2つのペアとを含む。
【0041】
一実施態様において、疾患は、神経障害である。一実施態様において、疾患は、神経障害からなる神経障害、アミロイドーシス、ガン、眼の疾患又は障害、ウイルス又は微生物の感染、炎症、虚血性疾患、神経変性疾患、てんかん発作、行動障害、リソソーム蓄積症、レビー小体病、ポストポリオ症候群、Shy-Draeger症候群、オリボポン小脳萎縮症、パーキンソン病、多系統萎縮症、線条体変性、タウオパシー、アルツハイマー病、核上性麻痺、プリオン病、ウシ海綿状脳症、スクレイピー、クロイツフェルト-ヤコブ症候群、クールー病、Gerstmann-Straussler-Scheinker病、慢性消耗性疾患及び致死的な家族性不眠症、球麻痺、運動ニューロン疾患、神経系不変性障害、カナバン病、ハンチントン病、神経セロイドリポフスチン症、アレキサンダー病、トゥレット症候群、メンケス病、コッカイン症候群、ハレルヴォーデン-スパッツ症候群、ラフォラ病、レト症候群、肝臓病変性、レッシュ-ナイハン症候群、ウンベルリッヒ-ランドボルグ症候群、認知症、ピック病、脊髄小脳運動失調症、CNS及び/又は脳のガン(体内の他の箇所のガンに起因する脳転移を含む)からなる群より選択される。一実施態様において、疾患は、アルツハイマー病からなる神経障害、パーキンソン病、CNS及び/又は脳のガン(体内の他の箇所のガンに起因する脳転移を含む)並びにタウオパシーからなる群より選択される。一実施態様において、疾患は、アルツハイマー病からなる神経障害、パーキンソン病及びタウオパシーからなる群より選択される。
【0042】
一実施態様において、抗体は、エフェクター機能コンピテントFc領域を含む。一実施態様において、エフェクター機能コンピテントFc領域は、ヒトFcガンマレセプターに特異的に結合する/特異的に結合することができるFc領域である。一実施態様において、エフェクター機能コンピテントFc領域は、ADCCを誘発することができる。
【0043】
一実施態様において、二重特異性抗体により(注射時/第2の(細胞表面)ターゲットに結合している間)に誘発されるADCCは、第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する1つ、すなわち、正確に1つの結合部位及び第2の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する(正確に)1つの結合部位のみを有する、すなわち、第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する結合部位の1つを欠いている、二価の二重特異性抗体により誘発されるADCCより低い。一実施態様において、ADCCは、10倍以上低い。
【0044】
一実施態様において、投与は、静脈内、皮下又は筋肉内投与である。
【0045】
一実施態様において、投与関連副作用は、低体温である。一実施態様において、低体温は、二重特異性抗体の治療用量で、0.5℃未満の体温低下に低減される。一実施態様において、体温低下は、投与後60分以内である。
【0046】
一実施態様において、(i)の)第1の抗体重鎖及び(ii)の)第2の抗体重鎖は、ヘテロ二量体を形成する。一実施態様において、第1の抗体重鎖及び第2の抗体重鎖は、ヘテロ二量体の形成を支持する突然変異を含む。
【0047】
一実施態様において、
a)抗体重鎖は、ヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、
b)抗体重鎖は、ヒトサブクラスIgG4の全長抗体重鎖でるか、
c)抗体重鎖の1つは、突然変異T366W及び場合によりS354C又はY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であり、他の抗体重鎖は、突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349C又はS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、
d)両抗体重鎖は、突然変異I253A、H310A及びH435Aを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354C又はY349Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349C又はS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、
e)両抗体重鎖は、突然変異M252Y、S254T及びT256Eを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354C又はY349Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349C又はS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、又は
f)両抗体重鎖は、突然変異T307H及びN434Hを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354C又はY349Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349C又はS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の抗体重鎖である。
【0048】
一実施態様において、
a)抗体重鎖は、ヒトサブクラスIgG1の抗体重鎖であるか、
b)抗体重鎖は、ヒトサブクラスIgG4の抗体重鎖であるか、
c)抗体重鎖の1つは、突然変異T366W及び場合によりS354C又はY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の抗体重鎖であり、他の抗体重鎖は、突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349C又はS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の抗体重鎖であるか、
d)両抗体重鎖は、突然変異I253A、H310A及びH435Aを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354C又はY349Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349C又はS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の抗体重鎖であるか、
e)両抗体重鎖は、突然変異M252Y、S254T及びT256Eを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354C又はY349Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349C又はS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の抗体重鎖であるか、又は
f)両抗体重鎖は、突然変異T307H及びN434Hを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354C又はY349Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349C又はS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の抗体重鎖であり、
ここで、C末端リシン又はグリシン-リシンジペプチドは存在し又は存在しない。
【0049】
本発明は、神経障害の処置における、望ましくない投与(注入)関連副作用、例えば、血管拡張、気管支収縮、喉頭浮腫、心圧低下及び特に、Fc領域エフェクター機能に関連する低体温の低減のための、脳ターゲット及びヒトトランスフェリンレセプター1に特異的に結合し、特異的なフォーマットでネイティブなエフェクター機能を有する二重特異性抗体の使用に関する。ここで、該抗体は、脳ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VLペア)と、ヒトトランスフェリンレセプター1に特異的に結合する1つの結合部位(VH/VLペア)と、エフェクター機能コンピテント、例えば、ネイティブなFc領域を有する。この抗体は、血液脳関門を横断して輸送することができる完全なエフェクター機能性抗体である。
【0050】
この理論に拘束されるものではないが、エフェクター細胞上のヒトFcガンマレセプター及び身体の任意のTfR(TfR1)発現細胞上のヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)への治療抗体の同時結合は、その注入後に観察されるアナフィラキシー様反応に少なくとも部分的に関与しているおそれがあると考えられる。ターゲットからの望ましくないFcレセプター相互作用を防止する特異的なフォーマットで治療抗体を提供することにより、投与(注入)関連副作用、特に、低体温の発生を低減するか又は防止することさえできる。
【0051】
更に、アナフィラキシー様反応を低減する臨床的利益は、治療抗体のより良好な耐性及び/又はより高い投与(注入)速度又は用量を可能にすることが期待される。
【0052】
本明細書で上記検討されたように、低減された初回注入反応(FIR)を有する新規なmAb設計が提供される。次に、これにより、他の治療用二重特異性抗体フォーマットの投与スキームと比較して、二重特異性治療抗体又は二重特異性治療抗体を含む治療用組成物のより高い用量、より頻繁な投与及び/又はより速い注入速度の適用が可能となる。同様に、本発明によれば、望ましくない投与(注入)関連副作用(例えば、血管拡張、気管支収縮、喉頭浮腫、心圧低下及び特に、低体温)を経験する患者において、投与量、投与頻度及び/又は注入速度を、既存の治療におけるように低減する必要がない。
【0053】
従来の抗体療法では、抗体療法を受けている患者が投与(注入)関連副作用(本明細書において、注入関連反応とも呼ばれる)を経験する場合、注入速度を遅くする必要があり又は重篤な症例では、治療を中断又は完全に中止する必要がある。これは、本発明により回避することができる。軽度又は中等度の注入関連反応(例えば、United States National Cancer Institute(NCI)のCommon Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)v5.0によるグレード1及び2)を経験している患者については、注入速度を遅くすることができる。重篤な注入関連副作用(例えば、United States National Cancer Institute(NCI)のCommon Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)v5.0によるグレード3及び4)を経験している患者は、直ちに治療を停止し、最後に中止しなければならない。本発明は、このような副反応を全く回避するために又は少なくともこのような副反応を大幅に減少させるために安全に投与することができる、治療を提供する。
【0054】
したがって、一部の態様では、本発明は、投与(注入)関連副作用(例えば、血管拡張、気管支収縮、喉頭浮腫、心圧低下及び特に、低体温)、特に、グレード1~4(United States National Cancer Institute(NCI)のCommon Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)v5.0による)、とりわけ、グレード2~4、とりわけ、グレード3及び4の投与(注入)関連副作用を経験するであろう患者を処置するのに使用される。
【0055】
例えば、注入関連副作用のない患者への典型的な注入速度は、一部の抗菌剤については、12ml/h~400ml/hであることができる(例えば、輸液を12ml/hの速度で1回目(及び場合により2回目)の投与で開始することができ、200ml/hの速度に達するまで、30分毎に倍増させる。3回目以降の注入は、例えば、25mg/lの速度で開始して、最高注入速度が400ml/hに達するまで、30分毎に倍増させることができる)。従来の抗体療法では、軽度又は中等度の注入関連反応を経験する患者について、この症例では、注入を中断し、後に12ml/hで再開し、医師の監督下で徐々に増加させることができる。検討されたように、これを、本発明により回避することができる。
【0056】
体温及びサイトカイン放出の投与(注入)に関連する低下を最小限にするために、両方の治療ターゲット結合Fabアームが、FcγRリクルートに対する阻害効果を最大限にするのに必要であることが見出された。
【0057】
このため、本明細書で報告された一態様は、静脈内適用後の望ましくない注入関連副作用、例えば、血管拡張、気管支収縮、喉頭浮腫、心圧低下及び特に、低体温の低減を伴う、個体における抗脳ターゲット処置における使用のための、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)(二重特異性)抗体である抗脳ターゲット治療剤である。ここで、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター(1)抗体は、脳ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VLペア)と、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に特異的に結合する1つの結合部位(VH/VLペア)と、エフェクター機能コンピテント(ネイティブ)Fc領域とを有する。
【0058】
本明細書で報告された別の態様は、個体における注入関連副作用、例えば、血管拡張、気管支収縮、喉頭浮腫、心圧低下及び特に、低体温の低減を伴う神経障害を処置するための方法であって、有効量の抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)(二重特異性)抗体の投与を含み、ここで、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)抗体は、脳ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VLペア)と、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に特異的に結合する1つの結合部位(VH/VLペア)と、エフェクター機能コンピテント(ネイティブ)Fc領域を有し、ここで、処置は、注入関連副作用、例えば、血管拡張、気管支収縮、喉頭浮腫、心圧低下及び特に、低体温の低減をもたらす、方法である。
【0059】
一実施態様において、注入関連副作用は、低体温、すなわち、体温低下である。
【0060】
上記された態様で利用される抗体は、本明細書に記載された任意の抗体であることができる。
【0061】
一実施態様において、低体温は、2℃未満の体温低下に低減される。一実施態様において、低体温は、1℃未満の体温低下に低減される。好ましい一実施態様では、低体温は、0.5℃未満の体温低下に低減される。
【0062】
一実施態様において、低体温は、投与後30分以内である。一実施態様において、低体温は、投与後60分以内である。一実施態様において、低体温は、投与後120分以内である。
【0063】
一実施態様において、低体温は、1℃未満、好ましい一実施態様では、0.5℃未満で投与後60分以内、好ましい一実施態様では、投与後120分以内の体温降下に低減される。
【0064】
一実施態様において、エフェクター機能コンピテントFc領域は、ヒトFcガンマレセプターに特異的に結合する/特異的に結合することができるFc領域である。
【0065】
一実施態様において、エフェクター機能コンピテントFc領域は、ADCCを誘発することができる。
【0066】
一実施態様において、エフェクター機能コンピテントFc領域は、ヒトFcガンマレセプターに特異的に結合する/特異的に結合することができ、ADCCを誘発することができるFc領域である。
【0067】
一実施態様において、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体は、
i)第1の抗原に特異的に結合する全長抗体の第1の軽鎖及び第1の重鎖と、
ii)第1の軽鎖と対合した場合に、第1の抗原に特異的に結合する全長抗体の第2の重鎖と、
iii)第2の抗原に特異的に結合し、ペプチドリンカーを介して、i)又はii)の重鎖の1つのC末端に融合し、ここで、第2の軽鎖及び第2の重鎖の定常ドメインCL及びCH1は、互いに置き換えられているFabフラグメントを含み、
ここで、C末端リシン又はグリシン-リシンジペプチドは存在し又は存在しない、三価の二重特異性抗体である。
【0068】
好ましい一実施態様では、本明細書で報告された全ての態様における二重特異性抗体は、
i)ヒトCD20、ヒトタウタンパク質、リン酸化ヒトタウタンパク質、ヒトアルファ-シヌクレイン及びヒトアミロイドベータタンパク質からなる群より選択される脳ターゲットに特異的に結合する第1の結合部位を形成する、第1の軽鎖可変ドメイン及び第1の重鎖可変ドメインを含む第1の抗体軽鎖と第1の抗体重鎖とのペアと、
ii)第1の結合部位と同じ脳ターゲットに特異的に結合する第2の結合部位を形成する、第2の軽鎖可変ドメイン及び第1の重鎖可変ドメインを含む第2の抗体軽鎖と第2の抗体重鎖とのペアと、
iii)scFv、Fab、scFab、dAbフラグメント及びCrossFabからなる群より選択され、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に特異的に結合する第3の結合部位を形成する、第3の軽鎖可変ドメイン及び第3の重鎖可変ドメインを含む更なる抗体フラグメントと、
iv)(ヒト)エフェクター機能コンピテントFc領域とを含み、
ここで、iii)の更なる抗体フラグメントは、i)又はii)の抗体重鎖のC末端に、直接又はペプチドリンカーを介してのいずれかでコンジュゲーションしており、
ここで、C末端リシン又はグリシン-リシンジペプチドは存在し又は存在しない。
【0069】
一実施態様において、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に特異的に結合する結合部位は、(a)配列番号:06又は07のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:08又は09又は10のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:11、12又は13のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:14又は15のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:16のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:17又は18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0070】
一実施態様において、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に特異的に結合する結合部位は、(a)配列番号:06のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:08のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:12のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:14のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:16のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0071】
一実施態様において、抗体は、トランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に対する結合部位を形成する、配列番号:19の重鎖可変ドメインと配列番号:20の軽鎖可変ドメインとの1つペアと、ヒトアミロイドベータタンパク質(Aベータ)に対する結合部位を形成する、配列番号:23の重鎖可変ドメインと配列番号:24の軽鎖可変ドメインとの少なくとも1つ(すなわち、1つ又は2つ)のペアとを含む。
【0072】
一実施態様において、抗体は、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に対する結合部位を形成する、配列番号:19の重鎖可変ドメインと配列番号:20の軽鎖可変ドメインとの1つのペアと、それぞれヒトCD20に対する結合部位を形成する、配列番号:21の重鎖可変ドメインと配列番号:22の軽鎖可変ドメインとの2つのペアとを含む。一実施態様において、重鎖可変領域は、Kabatの11位のアミノ酸残基をロイシン以外の任意のアミノ酸で置き換えることを含む。一実施態様において、置換は、Kabatの11位のアミノ酸残基を非極性アミノ酸で置き換えることを含む。好ましい一実施態様では、置換は、配列番号:21の重鎖可変ドメインにおけるKabatの11位のアミノ酸残基を、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン及びフェニルアラニンからなる群より選択されるアミノ酸残基で置き換えることを含む。
【0073】
一実施態様において、抗体は、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に対する結合部位を形成する、配列番号:19の重鎖可変ドメインと配列番号:20の軽鎖可変ドメインとの1つのペアと、それぞれヒトアルファ-シヌクレインに対する結合部位を形成する、配列番号:25の重鎖可変ドメインと配列番号:26の軽鎖可変ドメインとの2つのペアとを含む。
【0074】
一実施態様において、抗体は、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に対する結合部位を形成する、配列番号:19の重鎖可変ドメインと配列番号:20の軽鎖可変ドメインとの1つのペアと、それぞれヒトアルファ-シヌクレインに対する結合部位を形成する、配列番号:27から得られるヒト化重鎖可変ドメインと配列番号:28から得られるヒト化軽鎖可変ドメインとの2つのペアとを含む。
【0075】
一実施態様において、抗体は、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に対する結合部位を形成する、配列番号:19の重鎖可変ドメインと配列番号:20の軽鎖可変ドメインとの1つのペアと、それぞれヒトアルファ-シヌクレインに対する結合部位を形成する、配列番号:29から得られるヒト化重鎖可変ドメインと配列番号:30から得られるヒト化軽鎖可変ドメインとの2つのペアとを含む。
【0076】
一実施態様において、抗体は、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に対する結合部位を形成する、配列番号:19の重鎖可変ドメインと配列番号:20の軽鎖可変ドメインとの1つのペアと、それぞれヒトアルファ-シヌクレインに対する結合部位を形成する、配列番号:31から得られるヒト化重鎖可変ドメインと配列番号:32から得られるヒト化軽鎖可変ドメインとの2つのペアとを含む。
【0077】
一実施態様において、抗体は、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に対する結合部位を形成する、配列番号:19の重鎖可変ドメインと配列番号:20の軽鎖可変ドメインとの1つのペアと、それぞれヒトアルファ-シヌクレインに対する結合部位を形成する、配列番号:33から得られるヒト化重鎖可変ドメインと配列番号:34から得られるヒト化軽鎖可変ドメインとの2つのペアとを含む。
【0078】
一実施態様において、抗体は、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に対する結合部位を形成する、配列番号:19の重鎖可変ドメインと配列番号:20の軽鎖可変ドメインとの1つのペアと、それぞれヒトアルファ-シヌクレインに対する結合部位を形成する、配列番号:35から得られるヒト化重鎖可変ドメインと配列番号:36から得られるヒト化軽鎖可変ドメインとの2つのペアとを含む。
【0079】
一実施態様において、疾患は、神経障害である。一実施態様において、疾患は、神経障害からなる神経障害、アミロイドーシス、ガン、眼の疾患又は障害、ウイルス又は微生物の感染、炎症、虚血性疾患、神経変性疾患、てんかん発作、行動障害、リソソーム蓄積症、レビー小体病、ポストポリオ症候群、Shy-Draeger症候群、オリボポン小脳萎縮症、パーキンソン病、多系統萎縮症、線条体変性、タウオパシー、アルツハイマー病、核上性麻痺、プリオン病、ウシ海綿状脳症、スクレイピー、クロイツフェルト-ヤコブ症候群、クールー病、Gerstmann-Straussler-Scheinker病、慢性消耗性疾患及び致死的な家族性不眠症、球麻痺、運動ニューロン疾患、神経系不変性障害、カナバン病、ハンチントン病、神経セロイドリポフスチン症、アレキサンダー病、トゥレット症候群、メンケス病、コッカイン症候群、ハレルヴォーデン-スパッツ症候群、ラフォラ病、レト症候群、肝臓病変性、レッシュ-ナイハン症候群、ウンベルリッヒ-ランドボルグ症候群、認知症、ピック病、脊髄小脳運動失調症、CNS及び/又は脳のガン(体内の他の箇所のガンに起因する脳転移を含む)からなる群より選択される。一実施態様において、疾患は、アルツハイマー病からなる神経障害、パーキンソン病、CNS及び/又は脳のガン(体内の他の箇所のガンに起因する脳転移を含む)並びにタウオパシーからなる群より選択される。一実施態様において、疾患は、アルツハイマー病からなる神経障害、パーキンソン病及びタウオパシーからなる群より選択される。
【0080】
一実施態様において、抗体は、エフェクター機能コンピテントFc領域を含む。一実施態様において、エフェクター機能コンピテントFc領域は、ヒトFcガンマレセプターに特異的に結合する/特異的に結合することができるFc領域である。一実施態様において、エフェクター機能コンピテントFc領域は、ADCCを誘発することができる。
【0081】
一実施態様において、二重特異性抗体により(注射時/第2の(細胞表面)ターゲットに結合している間)に誘発されるADCCは、第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する1つ、すなわち、正確に1つの結合部位及び第2の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する(正確に)1つの結合部位のみを有する、二価の二重特異性抗体により誘発されるADCCより低い。一実施態様において、ADCCは、10倍以上低い。
【0082】
一実施態様において、投与は、静脈内、皮下又は筋肉内投与である。
【0083】
一実施態様において、投与関連副作用は、低体温である。一実施態様において、低体温は、二重特異性抗体の治療用量で、0.5℃未満の体温低下に低減される。一実施態様において、体温低下は、投与後60分以内である。
【0084】
一実施態様において、(i)の)第1の抗体重鎖及び(ii)の)第2の抗体重鎖は、ヘテロ二量体を形成する。一実施態様において、第1の抗体重鎖及び第2の抗体重鎖は、ヘテロ二量体の形成を支持する突然変異を含む。
【0085】
一実施態様において、全長抗体は、
a)ヒトサブクラスIgG1の全長抗体であるか、
b)ヒトサブクラスIgG4の全長抗体であるか、
c)1つの重鎖において突然変異T366W及び場合によりS354Cと、他の各重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cとを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体であるか、
d)両重鎖において突然変異I253A、H310A及びH435Aと、1つの重鎖において突然変異T366W及び場合によりS354Cと、他の各重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cとを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体であるか、
e)両重鎖において突然変異M252Y、S254T及びT256Eと、1つの重鎖において突然変異T366W及び場合によりS354Cと、他の各重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cとを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体であるか、又は
f)両抗体重鎖は、突然変異T307H及びN434Hを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の抗体重鎖である。
【0086】
一実施態様において、
a)抗体重鎖は、ヒトサブクラスIgG1の抗体重鎖であるか、
b)抗体重鎖は、ヒトサブクラスIgG4の抗体重鎖であるか、
c)抗体重鎖の1つは、突然変異T366W及び場合によりS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の抗体重鎖であり、他の抗体重鎖は、突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の抗体重鎖であるか、
d)両抗体重鎖は、突然変異I253A、H310A及びH435Aを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の抗体重鎖であるか、
e)両抗体重鎖は、突然変異M252Y、S254T及びT256Eを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の抗体重鎖であるか、又は
f)両抗体重鎖は、突然変異T307H及びN434Hを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の抗体重鎖であり、
ここで、C末端リシン又はグリシン-リシンジペプチドは存在し又は存在しない。
【0087】
一実施態様において、ヒトエフェクター機能コンピテントFc領域は、配列番号:57~60及び63~66からなる群より選択される、2つのポリペプチドを含む。
【0088】
一実施態様において、ヒトエフェクター機能コンピテントFc領域は、配列番号:61の第1のFc領域ポリペプチド及び配列番号:62の第2のFc領域ポリペプチドを含む。
【0089】
本明細書で使用する場合、「態様」という用語は、本発明の独立した主題を指し、一方、「実施態様」という用語は、独立した主題の更に定義された従属サブ項目を指す。
【0090】
発明の実施態様の詳細な説明
本明細書において、二重特異性治療モノクローナル抗体の適用関連副作用及び反応を低減するための方法が報告される。これは、Fcγレセプター(FcγR)への結合を立体的に抑制することにより達成される。一例は、中枢神経系の障害に関連する治療ターゲット及びヒトトランスフェリンレセプター、特に、トランスフェリンレセプター1(TfR1)に特異的に結合する、二重特異性治療抗体である。
【0091】
ヒトトランスフェリンレセプター(TfR)(トランスフェリンレセプター1、TfR1)は、血液脳関門(BBB)を横断する抗体(mAb)の輸送に有望であることが示されている。しかしながら、末梢TfR(TfR1)結合性及びFc領域エフェクター機能に関連する安全性の責任が報告されている。脳シャトル-mAb(BS-mAb)技術を使用して、in vitro及び新規なFcγRヒト化マウスモデルにおけるFc領域エフェクター機能の役割を調査した。ネイティブなIgG1 Fc領域を有するTfR(TfR1)に対する従来の二価の単特異性mAbについて、強力な初回注入反応(FIR)が観察された。Fc領域エフェクターデッド構築物を使用すると、全てのFIRが完全に排除された。注目すべきことに、ネイティブなIgG1 Fc領域を有する2+1 BS-mAb構築物について、FIRが観察されなかった。本明細書で報告された本発明は、C末端BSモジュールを介したTfR(TfR1)結合が、主に立体障害のために、Fc領域-FcγR相互作用を減弱させるという知見に少なくとも部分的に基づいている。それにもかかわらず、BS-mAbは、そのターゲットに結合する場合、エフェクター機能活性を維持する。まとめると、完全なエフェクター機能を有するmAbは、末梢においてステルスモードで輸送することができ、そのターゲットと結合した場合にのみ、脳において活性化することができる。
【0092】
定義
本明細書で使用する場合、重鎖及び軽鎖の全ての定常領域及びドメインのアミノ酸位置は、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に記載されているKabatナンバリングシステムに従ってナンバリングされ、本明細書において、「Kabatに従ったナンバリング」と呼ばれる。具体的には、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)のKabatナンバリングシステム(647~660頁を参照のこと)は、カッパ及びラムダアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLに使用される。Kabat EUインデックスナンバリングシステム(661~723頁を参照のこと)は、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2及びCH3、これらは、本明細書において、この場合には、「Kabat EUインデックスに従ったナンバリング」を参照することにより更に分類される)に使用される。
【0093】
ノブ-into-ホール二量化モジュール及び抗原操作におけるそれらの使用は、Carter P.; Ridgway J.B.B.; Presta L.G.: Immunotechnology, Volume 2, Number 1, February 1996, pp. 73-73(1)に記載されている。
【0094】
ヒト免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関する一般的な情報は、Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に与えられる。
【0095】
本発明を実施するのに有用な方法及び技術は、例えば、Ausubel, F.M. (ed.), Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I to III (1997);Glover, N.D., and Hames, B.D., ed., DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II (1985)、Oxford University Press; Freshney, R.I. (ed.), Animal Cell Culture - a practical approach, IRL Press Limited (1986);Watson, J.D., et al., Recombinant DNA, Second Edition, CHSL Press (1992);Winnacker, E.L., From Genes to Clones; N.Y., VCH Publishers (1987);Celis, J., ed., Cell Biology, Second Edition, Academic Press (1998);Freshney, R.I., Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, second edition, Alan R. Liss, Inc., N.Y. (1987)に記載されている。
【0096】
リコンビナントDNA技術の使用により、核酸の誘導体の生成が可能となる。このような誘導体は、例えば、置換、改変、交換、欠失又は挿入により、個々のヌクレオチド位置又は複数のヌクレオチド位置で改変することができる。改変又は誘導体化は、例えば、部位特異的突然変異誘発により行うことができる。このような改変は、当業者により容易に行うことができる(例えば、Sambrook, J., et al., Molecular Cloning: A laboratory manual (1999) Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, USA; Hames, B.D., and Higgins, S.G., Nucleic acid hybridization - a practical approach (1985) IRL Press, Oxford, Englandを参照のこと)。
【0097】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が別段の明確な指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。このため、例えば、「細胞(a cell)」への言及は、複数のこのような細胞及び当業者に公知のその均等物等を含むことに、留意すべきである。同様に、「a」(又は「an」)、「1つ以上」及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書において互換的に使用することができる。また、「含む(comprising)」、「含む(including)」及び「有する(having)」という用語は、互換的に使用することができることにも、留意されたい。
【0098】
「約」という用語は、後に続く数値の+/-20%の範囲を指す。一実施態様において、約という用語は、後に続く数値の+/-10%の範囲を指す。一実施態様において、約という用語は、後に続く数値の+/-5%の範囲を指す。
【0099】
本明細書で使用する場合、「決定する(determine)」という用語は、測定する(measure)及び分析する(analyze)という用語も包含する。
【0100】
本明細書で使用する場合、「ドメイン交差(domain crossover)」という用語は、抗体重鎖VH-CH1フラグメントとその対応する同族抗体軽鎖とのペアにおいて、すなわち、抗体結合アーム(すなわち、Fabフラグメント)において、少なくとも1つの重鎖ドメインがその対応する軽鎖ドメインにより置換され、その逆もまた同様である点で、ドメイン配列が天然配列から逸脱することを意味する。ドメイン交差には、3つの一般的なタイプ、(i)VL-CH1ドメイン配列を有するドメイン交差軽鎖及びVH-CLドメイン配列を有するドメイン交差重鎖フラグメント(又はVH-CL-ヒンジ-CH2-CH3ドメイン配列を有する全長抗体重鎖)をもたらすCH1及びCLドメインの交差、(ii)VH-CLドメイン配列を有するドメイン交差軽鎖及びVL-CH1ドメイン配列を有するドメイン交差重鎖フラグメントをもたらすVH及びVLドメインの交差並びに(iii)VH-CH1ドメイン配列を有するドメイン交差軽鎖及びVL-CLドメイン配列を有するドメイン交差重鎖フラグメントをもたらす完全軽鎖(VL-CL)及び完全VH-CH1重鎖フラグメントのドメイン交差(「Fab交差」)が存在する(前述のドメイン配列は全て、N末端からC末端方向に示される)。
【0101】
本明細書で使用する場合、対応する重鎖ドメイン及び軽鎖ドメインに関して「互いに置き換えられている」という用語は、前述のドメイン交差を指す。このように、CH1及びCLドメインが「互いに置き換えられている」場合、項目(i)で言及されたドメイン交差並びに得られる重鎖ドメイン配列及び軽鎖ドメイン配列を指す。したがって、VH及びVLが「互いに置き換えられている」場合、項目(ii)で言及されたドメイン交差を指し、CH1及びCLドメインが「互いに置き換えられている」場合、VH1及びVLドメインが「互いに置き換えられている」場合、項目(iii)で言及されたドメイン交差を指す。ドメイン交差を含む二重特異性抗体は、例えば、WO第2009/080251号、同第2009/080252号、同第2009/080253号、同第2009/080254号及びSchaefer, W. et al, Proc. Natl. Acad. Sci USA 108 (2011) 11187-11192に報告されている。
【0102】
多重特異性抗体は、上記項目(i)で言及されたCH1及びCLドメインのドメイン交差又は上記(ii)で言及されたVH及びVLドメインのドメイン交差を含む、Fabフラグメントを含む。同じ抗原に特異的に結合するFabフラグメントは、同じドメイン配列であるように構築される。したがって、ドメイン交差を有する2つ以上のFabフラグメントが多重特異性抗体に含まれる場合、前記Fabフラグメントは、同じ抗原に特異的に結合する。
【0103】
本明細書において、「抗体」という用語は、最も広い意味に使用され、種々の抗体構造を包含し、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)及び所望の抗原結合活性を示す限りにおいて抗体フラグメントを含むが、これらに限定されない。
【0104】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)」という用語は、Fcレセプター結合により媒介される機能であり、エフェクター細胞の存在下で、本明細書で報告された抗体によるターゲット細胞の溶解を指す。一実施態様において、ADCCは、エフェクター細胞、例えば、新鮮に単離されたPBMC(末梢血単核細胞)又はバフィーコートから精製されるエフェクター細胞、例えば、単球もしくはNK(ナチュラルキラー)細胞の存在下で、本明細書で報告された抗体を使用して、CD19発現赤血球細胞(例えば、リコンビナントヒトCD19を発現するK562細胞)の調製物を処理することにより測定される。ターゲット細胞を51Crでラベルし、続けて、抗体と共にインキュベーションする。ラベルされた細胞をエフェクター細胞とインキュベーションし、上清を放出された51Crについて分析する。対照は、ターゲット内皮細胞を抗体なしにエフェクター細胞とインキュベーションする。ADCCを媒介する初期工程を誘引する抗体の能力を、Fcγレセプター発現細胞、例えば、FcγRI及び/もしくはFcγRIIAをリコンビナント発現する細胞又はNK細胞(本質的にFcγRIIIAを発現)へのそれらの結合を測定することにより調査する。好ましい一実施態様では、NK細胞上でのFcγRへの結合を測定する。
【0105】
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体フラグメントの例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;dAbフラグメント;直線抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);及び抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体を含むが、これらに限定されない。
【0106】
「補体依存性細胞傷害性(CDC)」という用語は、補体の存在下で、本明細書で報告された抗体により誘引される細胞の溶解を指す。CDCは、一実施態様において、補体の存在下で、本明細書で報告された抗体を使用して、CD19発現ヒト内皮細胞を処置することにより測定される。細胞を一実施態様において、カルセインでラベルする。CDCは、一実施態様において、抗体が30μg/mlの濃度でターゲット細胞の20%以上の溶解を誘発する場合に見出される。補体因子C1qへの結合をELISAにおいて測定することができる。このようなアッセイにおいて、原理的には、ELISAプレートを一定の濃度範囲の抗体により被覆する。これに、精製ヒトC1q又はヒト血清を加える。C1q結合をC1qに対する抗体、続けて、ペルオキシダーゼラベルコンジュゲートにより検出する。結合の検出(最大結合Bmax)をペルオキシダーゼ基質ABTS(登録商標)(2,2’-アジノ-ジ-[3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホナート(6)])についての405nmでの光学密度(OD405)として測定する。
【0107】
「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因する、それらの生物学的活性を指す。同Fc領域は、抗体クラスにより変化する。このようなFc領域は、本明細書において、「エフェクター機能コンピテント」と呼ばれる。抗体のエフェクター機能の例は、C1q結合性及び補体依存性細胞傷害性(CDC);Fcレセプター結合性;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC);食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化を含む。
【0108】
Fcレセプター結合依存性エフェクター機能は、抗体のFc領域と、造血細胞上の特殊化された細胞表面レセプターであるFcレセプター(FcR)との相互作用により媒介されることができる。Fcレセプターは、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、免疫複合体の食作用による抗体被覆病原体の除去と、抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(ADCC)を介する、対応する抗体で被覆された赤血球及び種々の他の細胞ターゲット(例えば、腫瘍細胞)の溶解との両方を媒介することが示されている(例えば、Van de Winkel, J.G. and Anderson, C.L., J. Leukoc. Biol. 49 (1991) 511-524を参照のこと)。FcRは、免疫グロブリンアイソタイプに対するそれらの特性により定義される。IgG抗体に対するFcレセプターは、FcγRと呼ばれる。Fcレセプターの結合性は、例えば、Ravetch, J.V. and Kinet, J.P., Annu. Rev. Immunol. 9 (1991) 457-492;Capel, P.J., et al., Immunomethods 4 (1994) 25-34;de Haas, M., et al., J. Lab. Clin. Med. 126 (1995) 330-341;及びGessner, J.E., et al., Ann. Hematol. 76 (1998) 231-248に記載されている。
【0109】
IgG抗体のFc領域に対するレセプター(FcγR)の架橋により、食作用、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害及び炎症性メディエーターの放出並びに免疫複合体クリアランス及び抗体産生のレギュレーションを含む、広い各種のエフェクター機能がトリガーされる。ヒトにおいて、3つのクラスのFcγRが特徴付けられている。
【0110】
-FcγRI(CD64)は、高い親和性で単量体IgGに結合し、マクロファージ、単球、好中球及び好酸球上に発現される。アミノ酸残基E233~G236、P238、D265、N297、A327及びP329(KabatのEUインデックスに従ったナンバリング)のうちの少なくとも1つでのFc領域IgGにおける改変により、FcγRIへの結合が低下する。IgG1及びIgG4において置換される233~236位のIgG2残基により、FcγRIへの結合が103倍低下し、抗体感作赤血球に対するヒト単球反応が排除された(Armour, K.L., et al., Eur. J. Immunol. 29 (1999) 2613-2624)。
【0111】
-FcγRII(CD32)は、中程度から低い親和性で複合体化IgGに結合し、広く発現される。このレセプターは、2つのサブタイプ、FcγRIIA及びFcγRIIBに分けることができる。FcγRIIAは、殺傷に関与する多くの細胞(例えば、マクロファージ、単球、好中球)上で見出され、殺傷プロセスを活性化可能であると考えられる。FcγRIIBは、阻害プロセスにおける役割を果たしていると考えられ、B細胞、マクロファージならびにマスト細胞及び好酸球上で見出される。B細胞上では、更なる免疫グロブリン産生及び例えば、IgEクラスへのアイソタイプスイッチングをサプレッションするように機能すると考えられる。マクロファージ上では、FcγRIIBは、FcγRIIAを介して媒介される食作用を阻害するように機能する。好酸球及びマスト細胞上では、B型は、IgEがその別個のレセプターに結合することにより、これらの細胞の活性化をサプレッションするのに役立つことができる。FcγRIIAに対する結合の低下は、例えば、アミノ酸残基E233~G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、R292及びK414(KabatのEUインデックスに従ったナンバリング)のうちの少なくとも1つでの突然変異を有するIgG Fc領域を含む抗体について見出される。
【0112】
-FcγRIII(CD16)は、中程度から低い親和性でIgGに結合し、2つのタイプとして存在する。FcγRIIIAは、NK細胞、マクロファージ、好酸球並びに一部の単球及びT細胞上で見出され、ADCCを媒介する。FcγRIIIBは、好中球上で高発現される。FcγRIIIAへの結合の低下は、例えば、アミノ酸残基E233~G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、S239、E269、E293、Y296、V303、A327、K338及びD376(KabatのEUインデックスに従ったナンバリング)のうちの少なくとも1つでの突然変異を有するIgG Fc領域を含む抗体について見出される。
【0113】
Fcレセプターに対するヒトIgG1における結合部位のマッピング、上記言及された突然変異部位並びにFcγRI及びFcγRIIAへの結合を測定するための方法が、Shields, R.L., et al. J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604に記載されている。
【0114】
本明細書で使用する場合、「Fcレセプター」という用語は、レセプターに関連する細胞質ITAM配列の存在を特徴とする活性化レセプターを指す(例えば、Ravetch, J.V. and Bolland, S., Annu. Rev. Immunol. 19 (2001) 275-290を参照のこと)。このようなレセプターは、FcγRI、FcγRIIA及びFcγRIIIAである。「FcγRに結合しない」という用語は、10μg/mlの抗体濃度で、本明細書で報告された抗体のNK細胞への結合がWO第2006/029879号に報告されている抗OX40L抗体LC.001について見出される結合の10%以下であることを指す。
【0115】
IgG4は、FcR結合の低下を示すが、他のIgGサブクラスの抗体は、強い結合を示す。ただし、Pro238、Asp265、Asp270、Asn297(Fc炭水化物の喪失)、Pro329並びに234、235、236及び237、Ile253、Ser254、Lys288、Thr307、Gln311、Asn434及びHis435は、改変された場合にFcR結合も減少させる残基である(Shields, R.L., et al. J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604;Lund, J., et al., FASEB J. 9 (1995) 115-119;Morgan, A., et al., Immunology 86 (1995) 319-324;及びEP第0307434号)。
【0116】
本明細書において、「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するのに使用される。この用語は、ネイティブな配列のFc領域及び変異型のFc領域を含む。一実施態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端に広がっている。ただし、Fc領域のC末端リシン(Lys447)は、存在してもよいし又は存在しなくてもよい。本明細書において特に断りない限り、Fc領域又は定常領域中のアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91-3242に記載されており、EUインデックスとも呼ばれる、EUナンバリングシステムに従う。
【0117】
本明細書で報告された方法に使用される抗体は、Fc領域、一実施態様において、ヒト起源に由来するFc領域を含む。一実施態様において、Fc領域は、ヒト定常領域の全ての部分を含む。抗体のFc領域は、補体活性化、C1q結合、C3活性化及びFcレセプター結合に直接関与する。補体系に対する抗体の影響は、特定の条件により決まるが、C1qへの結合は、Fc領域における規定された結合部位により引き起こされる。このような結合部位は、当技術分野において公知であり、例えば、Lukas, T.J., et al., J. Immunol. 127 (1981) 2555-2560;Brunhouse, R., and Cebra, J.J., Mol. Immunol. 16 (1979) 907-917;Burton, D.R., et al., Nature 288 (1980) 338-344;Thommesen, J.E., et al., Mol. Immunol. 37 (2000) 995-1004;Idusogie, E.E., et al., J. Immunol. 164 (2000) 4178-4184;Hezareh, M., et al., J. Virol. 75 (2001) 12161-12168;Morgan, A., et al., Immunology 86 (1995) 319-324;及びEP第0307434号に記載されている。このような結合部位は、例えば、L234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331及びP329(KabatのEUインデックスに従ったナンバリング)である。サブクラスIgG1、IgG2及びIgG3の抗体は、通常、補体活性化、C1q結合及びC3活性化を示す。一方、IgG4は、補体系を活性化せず、C1qに結合せず、C3を活性化しない。「抗体のFc領域」は、当業者に周知の用語であり、抗体のパパイン開裂に基づいて定義される。一実施態様において、Fc領域は、ヒトFc領域である。
【0118】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」及び「抗体全体」という用語は、ネイティブな抗体構造と実質的に同じ構造を有するか又は本明細書で定義されたFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指すのに、本明細書において互換的に使用される。
【0119】
「個体」又は「対象」は、ほ乳類である。ほ乳類は、飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及び非ヒト霊長類、例えば、サル)、ウサギ並びにげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含むが、これらに限定されない。特定の実施態様では、個体又は対象は、ヒトである。
【0120】
「単離された抗体」は、その本来の環境の成分から分離されているものである。一部の実施態様では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)により決定された場合、95%又は99%より高い純度に精製される。抗体純度を評価するため方法のレビューについては、例えば、Flatman, S. et al., J. Chromatogr. B 848 (2007) 79-87を参照のこと。
【0121】
本明細書で使用する場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、この集団に含まれる個々の抗体は、自然発生的に生じる変異を含有し又はモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる可能性ある変異型抗体を除いて、同一であり及び/又は同じエピトープに結合する。このような変異体は、一般的には、少量しか存在しない。種々の決定因子(エピトープ)に対する種々の抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の1つの決定因子を対象にする。このため、「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均質な集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるものではない。例えば、本発明に基づいて使用されるモノクローナル抗体は、各種の技術により調製することができる。同技術は、ハイブリドーマ法、リコンビナントDNA法、ファージディスプレイ法及びヒト免疫グロブリンローカスの全部又は一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない。モノクローナル抗体を調製するためのこのような方法及び他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0122】
「ネイキッドな抗体」は、異種部分(例えば、細胞傷害性部分)又は放射性ラベルにコンジュゲーションしていない抗体を指す。ネイキッドな抗体は、医薬製剤中に存在することができる。
【0123】
「ネイティブな抗体」は、様々な構造を有する、天然の免疫グロブリン分子を指す。例えば、ネイティブなIgG抗体は、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質であり、ジスルフィド結合している、2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖とから構成される。N末端からC末端にかけて、各重鎖は、可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)、続けて、3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を有し、これにより、第1の定常ドメインと第2の定常ドメインとの間に、ヒンジ領域が配置される。同様に、N末端からC末端にかけて、各軽鎖は、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)、続けて、定常軽鎖(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2種類のうちの1つに割り当てることができる。
【0124】
「ネイティブなエフェクター機能」という用語は、様々な構造を有する天然の免疫グロブリン分子、すなわち、ネイティブな抗体に関連するエフェクター機能を指す。
【0125】
「医薬製剤」という用語は、有効であるようにそれに含有される活性成分の生物学的活性を可能にするような形態にあり、この製剤が投与されるであろう対象に許容できない毒性を有する更なる成分を含有しない調製物を指す。
【0126】
「薬学的に許容し得る担体」は、活性成分以外の医薬製剤中の成分を指し、対象に対して毒性を有さない。薬学的に許容し得る担体は、バッファー、賦形剤、安定剤又は保存剤を含むが、これらに限定されない。
【0127】
本明細書で使用する場合、「処置」(及びその文法上のバリエーション、例えば、「処置する」又は「処置すること」)は、処置される個体の本来の経過を変化させる試みにおける臨床的介在を指し、予防又は臨床病理の経過中のいずれかにおいて行うことができる。処置の望ましい効果は、疾患の発生又は再発を予防すること、兆候の緩和、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的結果の減弱、転移の予防、疾患の進展速度の低下、疾患状態の改善又は寛解及び緩和又は改善された予後を含むが、これらに限定されない。一部の実施態様では、本発明の抗体は、疾患の進行を遅延させ又は疾患の進展を遅らせるのに使用される。
【0128】
「血液脳関門」(BBB)という用語は、末梢循環と脳及び脊髄との間の生理学的障壁を指し、同障壁は、脳毛細血管内皮細胞膜内の密着結合により形成され、非常に小さい分子、例えば、尿素(60ダルトン)でさえ、脳への分子の輸送を制限する密着障壁を形成する。脳内のBBB、脊髄内の血液-脊髄関門及び網膜内の血液-網膜関門は、CNS内の連続した毛細血管関門であり、本明細書において、まとめて血液-脳関門又はBBBと呼ばれる。また、BBBは、血液-CSF関門(脈絡叢)を包含し、この場合、この関門は、毛細血管内皮細胞よりもむしろ上衣細胞から構成される。
【0129】
「中枢神経系」(CNS)という用語は、身体機能を制御する神経組織の複合体を指し、脳及び脊髄を含む。
【0130】
「血液脳関門レセプター」(BBBR)という用語は、BBBを横断して分子を輸送可能であるか又は外因性の投与された分子を輸送するのに使用される、脳内皮細胞上で発現される細胞外膜連結レセプタータンパク質を指す。BBRの例は、トランスフェリンレセプター(TfR)、特に、トランスフェリンレセプター1(TfR1)、インスリンレセプター、インスリン様成長因子レセプター(IGF-R)、低密度リポタンパク質レセプター(低密度リポタンパク質レセプター関連タンパク質1(LRP1)及び低密度リポタンパク質レセプター関連タンパク質8(LRP8)を含むが、これらに限定されない)及びヘパリン結合上皮成長因子様成長因子(HB-EGF)を含むが、これらに限定されない。例示的なBBBRは、ヒトトランスフェリンレセプター(TfR)、特に、トランスフェリンレセプター1(TfR1)である。
【0131】
「一価結合実体」という用語は、BBBRに特異的かつ一価結合様式で結合可能な分子を指す。本明細書で報告された血液脳シャトルモジュール及び/又はコンジュゲートは、一価結合実体の1つのユニットの存在により特徴付けられる。すなわち、本発明の血液脳シャトルモジュール及び/又はコンジュゲートは、一価結合実体の正確に1つのユニットを含む。一価結合実体は、ポリペプチド、全長抗体、抗体フラグメント(Fab、Fab’、Fvフラグメントを含む)、一本鎖抗体分子、例えば、一本鎖Fab、scFv等を含むが、これらに限定されない。一価結合実体は、例えば、最新技術、例えば、ファージディスプレイ又は免疫化を使用して操作された足場タンパク質であることができる。また、一価結合実体は、ポリペプチドであることもできる。特定の実施態様では、一価結合実体は、CH2-CH3 Igドメインと、血液脳関門レセプターに向けられた一本鎖Fab(scFab)とを含む。scFabは、リンカーによりCH2-CH3 IgドメインのC末端に結合する。特定の実施態様では、scFabは、ヒトトランスフェリンレセプター(トランスフェリンレセプター1)に向けられる。
【0132】
「一価結合様式」という用語は、一価結合実体とBBBRとの間の相互作用が1つの単一エピトープを介して起こる、BBBRへの特異的結合を指す。一価結合様式は、単一のエピトープ相互作用点によるBBBRの任意の二量体化/多量体化を防止する。一価結合様式は、BBBRの細胞内選別が変更されることを防止する。
【0133】
「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合可能な任意のポリペプチド決定基を指す。特定の実施態様では、エピトープ決定基は、分子の化学的に活性な表面基、例えば、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル又はスルホニルを含み、特定の実施態様では、特定の三次元構造特性及び/又は特定の電荷特性を有することができる。エピトープは、抗体により結合される抗原の領域である。
【0134】
「(ヒト)トランスフェリンレセプター(TfR)」及び「トランスフェリンレセプター1」(TfR1)という用語は、本明細書において互換的に使用される。それらは、2つのジスルフィド結合サブユニット(それぞれ約90,000Daの見かけの分子量)から構成され、脊椎動物における鉄取り込みに関与する膜貫通糖タンパク質(約180,000Daの分子量を有する)を指す。一実施態様において、本明細書におけるTfR(TfR1)は、Schneider et al.(Nature 311 (1984) 675 - 678)に報告されているアミノ酸配列を含むヒトTfR(TfR1)である。
【0135】
「神経障害」という用語は、CNSに影響を及ぼし及び/又はCNSに病因を有する疾患又は障害を指す。例示的なCNS疾患又は障害は、神経障害、アミロイドーシス、ガン、眼の疾患又は障害、ウイルス又は微生物の感染、炎症、虚血性疾患、神経変性疾患、てんかん発作、行動障害及びリソソーム蓄積症を含むが、これらに限定されない。本願の目的で、CNSは、血液-網膜関門により身体の残りの部分から通常隔離される眼を含むと理解されるであろう。神経障害の特定の例は、神経変性疾患(レビー小体病、ポストポリオ症候群、Shy-Draeger症候群、オリボポン小脳萎縮症、パーキンソン病、多系統萎縮症、線条体変性、タウオパシー(アルツハイマー病及び核上性麻痺を含むが、これらに限定されない)を含むが、これらに限定されない)、プリオン病(ウシ海綿状脳症、スクレイピー、クロイツフェルト-ヤコブ症候群、クールー病、Gerstmann-Straussler-Scheinker病、慢性消耗性疾患及び致死的な家族性不眠症を含むが、これらに限定されない)、球麻痺、運動ニューロン疾患及び神経系異変性障害(カナバン病、ハンチントン病、神経セロイドリポフスチン症、アレキサンダー病、トゥレット症候群、メンケス病、コッカイン症候群、ハレルヴォーデン-スパッツ症候群、ラフォラ病、レト症候群、肝臓病変性、レッシュ-ナイハン症候群及びウンベルリッヒ-ランドボルグ症候群を含むが、これらに限定されない)、認知症(ピック病及び脊髄小脳運動失調症を含むが、これらに限定されない)、ガン(例えば、CNS及び/又は脳のガン、体内の他の箇所のガンに起因する脳転移を含む)を含むが、これらに限定されない。
【0136】
「神経障害剤」という用語は、1種以上の神経障害を処置する薬剤又は治療剤を指す。神経障害剤は、低分子化合物、抗体、ペプチド、タンパク質、1種以上のCNSターゲットの天然リガンド、1種以上のCNSターゲットの天然リガンドの改変版、アプタマー、阻害性核酸(すなわち、小型阻害性RNA(siRNA)及びショートヘアピンRNA(shRNA))、リボザイム及び低分子又は前述のいずれかの活性フラグメントを含むが、これらに限定されない。例示的な神経障害剤は、抗体、アプタマー、タンパク質、ペプチド、阻害性核酸及び低分子並びに前述のいずれかの活性フラグメントを含むが、これらに限定されない。同活性フラグメントは、それら自体であるか又は、CNS抗原又はターゲット分子、例えば、アミロイド前駆体タンパク質もしくはその一部、アミロイドベータ、ベータ-セクレターゼ、ガンマ-セクレターゼ、タウ、アルファ-シヌクレイン、パーキン、ハンチンチン、DR6、プレセニリン、ApoE、グリオーマもしくは他のCNSガンマーカー及びニューロトロフィン(ただし、これらに限定されない)を特異的に認識し及び/もしくはこれらに作用する(すなわち、阻害する、活性化する又は検出する)かのいずれかである。神経障害剤及び対応する障害の非限定的な例は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、慢性脳損傷(神経形成)、線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)、抗上皮成長因子レセプター脳ガン(EGFR)-抗体、グリア細胞系統由来神経因子パーキンソン病(GDNF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)筋萎縮性側索硬化症、うつ病、脳のリソソーム酵素リソソーム貯蔵障害、毛様体神経栄養因子(CNTF)筋萎縮性側索硬化症、ニューレグリン-1統合失調症、抗HER2抗体(例えば、トラスツズマブ)HER2陽性ガンからの脳転移を処置するのに使用することができる。
【0137】
「造影剤」という用語は、その存在及び/又は位置を直接的又は間接的に検出することを可能にする1つ以上の特性を有する化合物を指す。このような造影剤の例は、検出を可能にするラベル実体を組み込んだタンパク質及び低分子化合物を含む。
【0138】
「CNS抗原」及び「脳ターゲット」という用語は、抗体又は低分子でターゲット化することができる、脳を含むCNSにおいて発現される、抗原及び/又は分子を指す。このような抗原及び/又は分子の例は、ベータ-セクレターゼ1(BACE1)、アミロイドベータ(Aベータ)、上皮成長因子レセプター(EGFR)、ヒト上皮成長因子レセプター2(HER2)、タウ、アポリポタンパク質E4(ApoE4)、アルファ-シヌクレイン、CD20、ハンチンチン、プリオンタンパク質(PrP)、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)、パーキン、プレセニリン1、プレセニリン2、ガンマセクレターゼ、デスレセプター6(DR6)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、p75ニューロトロフィンレセプター(p75NTR)及びカスパーゼ6を含むが、これらに限定されない。一実施態様において、抗原は、BACE1である。
【0139】
「特異的に結合する」という用語は、抗原に選択的又は優先的に結合する抗体を指す。結合親和性は、一般的には、標準的なアッセイ、例えば、Scatchard分析又は表面プラズモン共鳴技術(例えば、BIACORE(登録商標)を使用)を使用して決定される。
【0140】
「コンジュゲート」は、1つ以上の異種分子(ラベル、神経障害剤又は細胞傷害剤を含むが、これらに限定されない)にコンジュゲーションした融合タンパク質である。
【0141】
「リンカー」という用語は、本明細書で報告された血液脳関門シャトルモジュール及び/又は融合ポリペプチド及び/又はコンジュゲートの異なる実体を共有結合させる化学リンカー又は一本鎖ペプチドリンカーを指す。リンカーは、例えば、脳エフェクター実体を一価結合実体に結合させる。例えば、一価結合実体が、CH2-CH3 Ig実体及び血液脳関門レセプターに向けられるscFabを含む場合、リンカーは、scFabをCH3-CH2 Ig実体のC末端にコンジュゲーションさせる。脳エフェクター実体を一価結合実体にコンジュゲーションさせるリンカー(第1リンカー)及びscFabをCH2-CH3 IgドメインのC末端に結合させるリンカー(第2リンカー)は、同じか又は異なることができる。
【0142】
ペプチド結合により連結された1~20個のアミノ酸残基から構成される一本鎖ペプチドリンカーを使用することができる。特定の実施態様では、アミノ酸は、20種の天然アミノ酸から選択される。特定の他の実施態様では、アミノ酸のうちの1つ以上は、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン及びリシンから選択される。他の実施態様では、リンカーは、化学リンカーである。特定の実施態様では、リンカーは、少なくとも25個 アミノ酸残基の長さ、好ましい一実施態様では、32~50個 アミノ酸残基の長さを有するアミノ酸配列を有する一本鎖ペプチドリンカーである。一実施態様において、ペプチドリンカーは、(GxS)nリンカーである。ここで、G=グリシン、S=セリン(x=3、n=8、9又は10)又は(x=4及びn=6、7又は8)、一実施態様において、x=4、n=6又は7、好ましい一実施態様では、x=4、n=7。一実施態様において、リンカーは、(G4S)4(配列番号:37)である。一実施態様において、リンカーは、(G4S)6G2(配列番号:38)である。
【0143】
コンジュゲーションは、各種の化学リンカーを使用して行うことができる。例えば、一価結合実体又は融合ポリペプチドと脳エフェクター実体とを、各種の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能誘導体(例えば、ジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベラート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアナート(例えば、トルエン 2,6-ジイソシアナート)及びビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用してコンジュゲーションさせることができる。リンカーは、脳への送達の際のエフェクター実体の放出を容易にする「開裂可能なリンカー」であることができる。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al, Cancer Res. 52 (1992) 127-131;US第5,208,020号)を使用することができる。
【0144】
共有コンジュゲーションは、直接又はリンカーを介してのいずれかであることができる。特定の実施態様では、直接コンジュゲーションは、ポリペプチド融合体の構築による(すなわち、BBBR及びエフェクター実体に対する一価結合実体をコードし、単一のポリペプチド(鎖)として発現される2つの遺伝子の遺伝的融合による)。特定の実施態様では、直接コンジュゲーションは、BBBRに対する一価結合実体の2つの部分のうちの一方における反応性基と、脳エフェクター実体上の対応する基又はアクセプターとの間の共有結合の形成による。特定の実施態様では、直接コンジュゲーションは、適切な条件下でコンジュゲーションされる他の分子への共有結合を形成する反応性基(非限定的な例として、スルフヒドリル基又はカルボキシル基)を含むように、コンジュゲーションされる2つの分子のうちの一方の改変(すなわち、遺伝子改変)による。非限定的な一例として、所望の反応性基(すなわち、システイン残基)を有する分子(すなわち、アミノ酸)を、例えば、BBBR抗体に対する一価結合実体及び神経学的薬剤と形成されたジスルフィド結合に導入することができる。また、タンパク質への核酸の共有コンジュゲーションのための方法も、当技術分野において公知である(すなわち、光架橋、例えば、Zatsepin et al. Russ. Chem. Rev. 74 (2005) 77-95を参照のこと)。また、コンジュゲーションは、各種のリンカーを使用して行うこともできる。例えば、一価結合実体及びエフェクター実体を、各種の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能誘導体(例えば、ジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベラート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアナート(例えば、トルエン 2,6-ジイソシアナート)及びビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用してコンジュゲーションさせることができる。ペプチド結合により結合されている1~20個のアミノ酸残基から構成されるペプチドリンカーも使用することができる。特定のこのような実施態様では、アミノ酸残基は、20種の天然アミノ酸から選択される。特定の他のこのような実施態様では、アミノ酸残基のうちの1つ以上は、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン及びリシンから選択される。リンカーは、脳への送達の際のエフェクター実体の放出を容易にする「開裂可能なリンカー」であることができる。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al, Cancer Res. 52 (1992) 127-131;US第5,208,020号)を使用することができる。
【0145】
「注入関連副作用」という用語は、治療抗体による対象の処置に関連する意図しない有害事象を指す。一実施態様において、この注入関連副作用は、血管拡張、気管支収縮、喉頭浮腫、心圧低下及び低体温(静脈内適用後)からなる群より選択される。一実施態様において、このような事象は、治療抗体のi.v.投与後2時間以内に体温低下をもたらす低体温である。
【0146】
「エフェクター細胞」という用語は、免疫応答のエフェクター期に関与する免疫細胞を指す。例示的な免疫細胞は、骨髄系又はリンパ系起源の細胞、例えば、リンパ球(例えば、B細胞及び細胞溶解性T細胞(CTL)を含むT細胞など)、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、好中球、多形核細胞、顆粒球、マスト細胞及び好塩基球を含む。一部のエフェクター細胞は、特定のFcレセプターを発現し、特定の免疫機能を行う。一部の実施態様では、エフェクター細胞は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を誘引可能である。例えば、好中球は、ADCCを誘引可能である。例えば、単球、マクロファージは、Fcレセプターを発現し、ターゲット細胞の特異的殺傷及び免疫系の他の成分への抗原の提示又は抗原を提示する細胞への結合に関与する。
【0147】
本明細書において以下に記載されるように、本明細書で使用する場合、「投与後の副作用の低減」という用語は、完全なエフェクター機能性mAbが有する投与後の副作用(すなわち、立体的に又は何等かの方法で妨害されない抗体は、完全なエフェクター機能を有する)と比較される。特に、実際的な理由で、本発明の二重特異性抗体の副作用の低減は、同じ抗体であるが、第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位を欠いている、特に、第1のターゲットに対する抗体の2つのFab部分を欠いている抗体と比較して決定することができる。本発明の抗体が比較されるこのような構築物は、例えば、本明細書において、「mBS-noFab」と表1に示される。
【0148】
組成物及び方法
トランスフェリンレセプター(TfR1)に対する抗体及び抗体フラグメントは、レセプター媒介性トランスサイトーシスにより、大きな分子を脳内に輸送するのに使用されてきた(Yu et al., 2011; Niewoehner et al., 2014)。しかしながら、近年の研究から、TfR1に対する従来のmAbを使用する、以前に見落とされた責任が明らかにされている(Couch et al., 2013)。投与直後のマウスにおいて、急性の臨床徴候が観察され、これは、mAbのエフェクター機能状態と関連していた。また、これは、1つのFabアームのみがTfR1に結合する二重特異性mAb(ただし、mAbがネイティブで完全に活性なエフェクター機能を含んでいたことを条件とする)を使用した場合にも観察された。まとめると、抗体のエフェクター機能は、観察された急性臨床徴候に直接関連するため、明らかな戦略は、エフェクター無効変異体を使用することであろう。しかしながら、特定のmAbについては、ネイティブなエフェクター機能が、作用モード及び最適な治療プロファイルに重要である。mAb操作及び注意深いin vitro及びin vivo評価により、新規なFcγR-ヒト化マウスモデルにおいて、BS-mAb系の複数の構築物(脳シャトルモジュール、すなわち、一価抗TfR1結合部位の、脳シャトルmAb(BS-mAb)をもたらす治療モノクローナル抗体の重鎖又は軽鎖のC末端におけるFc領域への融合)を比較して、ネイティブなIgGエフェクター機能を使用する可能性のあるAIR(急性注入反応)責任を評価した。
【0149】
本発明は、少なくとも部分的に、TfR1-ターゲティングBS-mAbのエフェクター機能がTfR1に結合している時にマスクされるが、そのCNSターゲットに結合している時には活性な構成に戻るという知見に基づいている。この理論に拘束されるものではないが、この二重挙動は、TfR1がBS Fab/BS-mAbに結合した場合、免疫細胞上でのFc領域とFcγRとの結合の立体障害によることができる。この位置では、BS-mAbの対向するN末端にある2つのFabアームが、BS-mAbのFc領域がエフェクター細胞上のFcγRに必要に近接するのを妨げる。BS-mAbがTfR1からCNS実質に放出され、常在ターゲットがN末端Fabに結合すると、C末端における遊離BS-Fabは、常在エフェクター細胞上のFcγRとの相互作用をもはや妨害しない。このため、これらのデータから、BBBを横断して安全に輸送することができる完全なエフェクター機能性mAbの使用のための基礎が提供される。
【0150】
本発明は、少なくとも部分的に、mAbがTfR1に結合している時に、TfR1ターゲットBS-mAbのFc領域エフェクター機能がカモフラージュされるが、mAbがそのCNSターゲットに結合している時には、活性な構成に戻るという知見に基づいている。
【0151】
本発明は、少なくとも部分的に、両方の治療ターゲット結合Fabアームが注入関連体温低下及びサイトカイン放出を最少限にするために、FcγRリクルートに対する阻害効果を最大限にするのに必要とされるという知見に基づいている。
【0152】
このため、本明細書で報告された効果は、BS-mAbの二特異性三価フォーマット、すなわち、その重鎖C末端の1つでBS-Fabにコンジュゲートしている全長二価単特異性抗体に関連している。この遮蔽効果は、従来の二価二重特異性抗体では観察されない。
【0153】
本明細書で報告された方法は、治療ターゲットとしてのアミロイド-β原線維/プラークに特異的に結合し、BBBシャトルレセプターとしてのヒトトランスフェリンレセプター1に特異的に結合する、脳シャトルモノクローナル抗体(BS-mAb)(BS-mAb31と示す)を使用して以下に例示される。MAb31は、Aβプラークに対して高い見かけの親和性を有するオリゴマー及びフィブリル構造を特異的に認識する抗Aβ mAbである(14)。使用された全ての構築物は、エフェクター無効(P329G/L234A/L235A)突然変異変異体を除いて、完全なエフェクター機能を有するヒトネイティブIgG1 Fc領域を含有した。これらの構築物は、単に本発明を例示するのに使用され、特許請求の範囲において説明された本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0154】
BSモジュールは、従来の治療mAbの重鎖又は軽鎖のC末端においてFc領域に融合して、脳シャトル-mAb(BS-mAb)を生じる。これは、治療効果のためにターゲットに結合するか又はBBB輸送のためにTfR1に結合するかのいずれかで2つの異なる構成を有するBS-mAbの本来の構成を保存する。
【0155】
実験結果
脳シャトル-mAbは、Fc領域エフェクター機能を遊離形態で維持し、治療抗原直接ターゲットと結合する。
Fc領域エフェクター機能は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)を担う。BS-mAb31構築物及びmAb31 IgG対応物のFcγR結合を下記で概説するように確認した。
【0156】
最初の結合研究を、溶液中の抗体(BS-mAb31及び親mAb31)及び二次元表面上に固定化されたFcγRを使用して行った。これにより、溶液中に遊離したmAbと任意の配向にある固定化FcγRとの間の相互作用を決定することが可能となる(
図1A)。まず、4つの異なるFcγRを固定化ターゲットとして流路に固定化した表面プラズモン共鳴(SPR)ベースのアッセイを使用した。SPRの結果から、両方の構築物が低及び高親和性レセプターと同様にかつそれに応じて、異なるFcγRに結合することが示された(
図1B及び1Cを参照のこと)。SPR実験からの結合プロファイルは、異なるFcγRに対する結合親和性の報告された順位と一致する(13)。
【0157】
次に、異なるヒトFcγRを細胞上で個々に過剰発現させる細胞結合実験を行った。BS-mAb31及び親mAb31は両方とも、等しく良好に結合し(
図1D及び1E)、順位は、SPRデータと一致した。
【0158】
まとめると、レセプターが非拘束様式(SPR表面上又はよりネイティブな細胞表面上のいずれか)で提示される場合、これらの2つの構築物(BS-mAb及び親mAb)についてのFc領域-FcγR相互作用に差異はなかった。このことから、FcγR相互作用に関与するFc領域が、BSモジュールがFc領域のC末端に融合している場合でも、完全に機能的であることが示される。
【0159】
次に、抗体がその治療ターゲットと相互作用している場合に、BS-mAb31構築物が、Fc領域エフェクター機能を維持するかどうかを調査した。そのターゲットへの結合により、FcγR相互作用のための構築物が、溶液中で遊離した状況と比較して、より少ない立体障害、よりネイティブ様コンホメーションを伴って、より規定された、柔軟性のない状態で提示されるであろう(
図2A)。したがって、表面及び単球細胞上に被覆されたヒトAβタンパク質を利用する抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)アッセイを使用して、FcγRを提示するエフェクター細胞をシミュレーションした。2つの異なるサイトカインを、細胞傷害性についてのリードアウトとして使用した。BS-mAb31は、親mAb31に匹敵する効力を有することが見出された(
図2B及び2Cを参照のこと)。この理論に拘束されるものではないが、脳シャトル構築物は、その治療ターゲットに結合した場合、BSモジュールからの干渉を防ぐ配向でFc領域を提示する。
【0160】
第2のアッセイである食作用アッセイでは、初代ヒトエフェクター細胞と共に培養された死後アルツハイマー病(AD)脳組織切片を利用した(14)。AD脳切片を異なる濃度のBS-mAb31及び親mAb31と共にプレインキュベーションし、続けて、エフェクター細胞とインキュベーションした。両抗体について、Aβプラークロードの濃度依存性の減少が観察された(
図2D及び2Kを参照のこと)。これらの結果は、mAb修飾AβプラークのFcレセプター/ミクログリア媒介性食作用が脳におけるAβプラーククリアランスの主なメカニズムであることを確認する当技術分野と一致する(15~17)。この理論に拘束されるものではないが、脳シャトル構築物が細胞表面上のその治療ターゲットと結合するか又は脳内のAβプラークを修飾する場合、FcγR結合及びミクログリアリクルートは、融合BSモジュールにより妨害されないと、結論付けることができる。
【0161】
脳シャトルにより、より速い血漿クリアランスにもかかわらず、mAb31の脳におけるin vivo効力が改善される。
適切なin vivoモデルにおけるin vitroプラーククリアランス効果を説明するために、トランスジェニックアミロイドーシスマウスモデル(APP London: APP V717I)(18)において、BS-mAb31構築物の親mAb31に対するプラーク減少特性を調査した。血漿暴露は、mAb31と比較して、BS-mAb31についてより低かった(
図3Aを参照のこと)。この理論に拘束されるものではないが、BS構築物のより低い曝露は、末梢におけるTfR1への結合によるターゲット媒介薬剤沈着(TMDD)によると考えられる。
【0162】
週1回の投与に基づく4か月間の有効性研究を設計し、血漿曝露をシミュレーションした(
図3Bを参照のこと)。親mAb31については、はるかに高い持続性の曝露が予測された。一方、以前のデータでは、PS2APPトランスジェニックマウスモデルにおいて、BS-mAb31の脳曝露が、親mAb31よりかなり大きいことも示されている(9)。
【0163】
毎週4か月の投与後の抗Aβ mAb及びその脳シャトル構築物の大脳皮質におけるターゲット結合を調査した。BS-mAb31により、はるかに多くのプラーク修飾が検出可能であった(
図2C及び2D)。この4か月間の慢性処置研究では、脳シャトルの血漿曝露がかなり低かったにもかかわらず、BS-mAb31処置マウスにおいて、媒体対照及び等モル低用量のmAb31と比較して、大脳皮質及び海馬におけるAβアミロイドプラークの顕著な減少が見られた(
図2E及び2Fを参照のこと)。改善された効力は、別のアミロイドーシストランスジェニックマウスモデルにおいて以前に示されており、そこでは、一価のTfR1結合が絶対的に必須であることが実証されていた(9)。
【0164】
まとめると、このデータから、mAb31のC末端に付着したBSモジュールは、ミクログリア細胞上のFcγRとの相互作用を妨害しないことが示される。それにより、Aβプラーククリアランスは、治療IgGの増強された脳暴露により、顕著に改善されたin vivo効力とは別に促進される(9)。
【0165】
脳シャトル固有のTfR1結合様式により、FcγRとの結合が減弱される。
BS-mAb31及び抗TfR1 mAbのin vitro TfR1結合特性を調査した。BS-mAb31構築物は、C末端BSモジュールとして抗TfR1 Fabを含有する。BS-mAb31(
図4A)及び二価のネイティブな抗TfR1 mAb(
図4B)のTfR1への結合は異なり、治療実体(IgG)及びFc領域が環境に向かって異なる空間的提示をもたらすことが見出された。
【0166】
構築物がTfR1に結合した場合のFc領域の機能性を、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)アッセイを使用して決定した。このアッセイでは、一方の細胞が、TfR1を発現し、他方の細胞(ヒトNK92)が、FcγRIIIAを発現するエフェクター細胞の機能を有する。ADCCは、免疫系のエフェクター細胞がターゲット細胞を能動的に溶解する細胞媒介性免疫防御のメカニズムであり、その膜表面抗原は、特異性抗体に結合する。
【0167】
相互作用を、3つの異なるIgG構築物を使用して分析した。予想されたとおり、完全なエフェクター機能を有する標準的な抗TfR1 mAb(二価、単特異性)は、強力なADCC応答を生じた。抗TfR1 1Fab mAbも、ADCC応答を生じたが、アビッド結合の喪失により、より高い濃度であった(
図4C)。全ての細胞傷害効果は、Fc領域により媒介された。エフェクター機能を有さない抗TfR1 mAb(Fc領域におけるP329G/L234A/L235A突然変異)を使用して確認した。この抗体は、このADCCアッセイにおいて効果を有さなかった。興味深いことに、mAb31の重鎖のC末端に融合した1つ又は2つのBSモジュールを有する2つの脳シャトル構築物は、細胞傷害性を全く有さなかったか又は非常に低レベルであった(
図4C)。最も高いADCC効果を引き起こした標準的な抗TfR1 mAbの濃度では、抗TfR1 1Fab mAbについてはわずかな効果しか検出されなかったが、他の全ての構築物は、検出可能な効果を有さなかった(
図4D)。
【0168】
dBS-2Fabフォーマットについては、劣った脳シャトリング活性が以前に見出されていた(9)ことを指摘しなければならない。
【0169】
これらの結果は、dBS-2Fab構築物が抗TfR1 mAb構築物と同様の見かけのTfR1結合親和性を有することが以前に示されたように、異なる構築物間の結合強度の差により説明することはできない。両構築物が、2つのFab結合TfR1ドメインを有するためである(9)。
【0170】
このため、脳シャトル構築物中のFc領域は、完全なエフェクター機能を有していても、ADCC応答を誘引するために、特定のFcγRと生産的に結合できなかったことが見出された。
【0171】
エフェクター機能を有する従来の抗TfR1 mAbは、初回注入反応及びサイトカイン誘引を引き起こす。
上記示されたように、BS-mAb構築物は、脳内のそのターゲットと結合すると、そのエフェクター機能を維持する。ここで、BS抗体がBSモジュールを介してTfR1に結合する場合に、エフェクター機能がどのような結果を有するであろうかを決定した。これは、マウスにおける標準的なY型抗TfR1 mAb処置が、急性臨床徴候を引き起こす(12)という、近年の知見を考慮すると特に重要である。
【0172】
第一段階では、これをhuFcγRトランスジェニックマウス系で試験した。要するに、このモデルを4つのヒト対応物(FCGR2A、FCGR3A、FCGR2C及びFCGR3B)による2つの活性化低親和性マウスFcγR遺伝子(Fcγr3及びFcγr4)の遺伝子ターゲット化置換により産生した(
図5A)。これにより、エフェクター機能のトリガーをもたらすヒト/ヒト化mAbとヒトFcγRとの間の可能性のある相互作用をin vivoで評価するのに適した系が提供される。このモデルは、初回注入反応(FIR)をモニタリングするために遠隔測定温度リードアウトを使用する(
図5B)。既に上記で概説されたように、FIRをFcγRとの相互作用及びエフェクター免疫細胞のリクルートにより誘引する。このモデルにおける無線記録システムにより、動物が研究中に自由に動くことが可能となる。
【0173】
まず、従来の抗TfR1 mAbの注射により誘引されたFIRを測定した。
図5Cに示されるように、従来の抗TfR1 mAbの注射により、体温の濃度依存的かつ一過性の低下がもたらされた。同低下は、約2時間以内に正常レベルに戻った。
【0174】
第二に、従来の抗TfR1 mAbの一価形態の注射により誘引されたFIRを決定した。従来の抗TfR1 mAbの一価形態は、TfR1に対するFabアームを1つのみ含有する。また、このmAbにより、FIRが強く誘引された。このため、二価mAb結合によるTfR1の二量体化/多量体化は、体温低下の原因とならないことが見出された。
【0175】
第三に、抗TfR1 mAbを使用してこのモデルで観察されたFIRに対するエフェクター機能の相対的寄与を、FcγR結合に必要な残基においてFc領域に突然変異を有するmAbを使用して決定した(20)。FcγR相互作用を欠くFc領域三重突然変異体P329G/L234A/L235Aは、このモデルにおいて体温低下を示さなかった(
図5D)。このため、Fc領域が著しいFIRの原因であることが見出された。これは、Fc領域エフェクター機能排除構築物を使用するin vitroデータにより裏付けられる(
図4C)。
【0176】
抗TfR1 mAbの投与の応答としての種々のサイトカインのレベルを決定した。特定の細胞シグナル伝達分子は、濃度において強く増加することが見出された(
図5E)。特に、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ケラチノサイト由来サイトカイン(KC)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP-2)及びインターフェロンガンマ誘引タンパク質10(IP-10)は、強い応答を示した。これらのサイトカイン応答は、とりわけ、好中球活性化と相関させることができる。温度リードアウト実験において見られるように、除去されたFc領域エフェクター機能を有するIgG構築物を使用した場合、サイトカイン誘引に対する効果は、実質的に生じなかった(
図5E)。
【0177】
このため、TfR1に結合するIgGが末梢におけるエフェクター細胞に接近可能な位置にFc領域を提示し、適応免疫応答を引き起こすことができることが、in vitro及びin vivoで見出された。
【0178】
TfR1に対する脳シャトル結合様式は、エフェクター機能をサイレンシングし、初回注入反応及びサイトカイン産生を減弱させる。
上記データから、BSモジュールが、その治療ターゲットに結合した場合、mAbエフェクター機能を損なわないことが実証される(
図2及び3)。一方、TfR1に結合する従来のmAbは、Fc領域媒介性エフェクター機能を介してFIRを誘発する場合があることが見出された(
図4及び5)。
【0179】
TfR1は、末梢細胞上で広く発現されるため、BSモジュールを介してこれらの細胞種に結合するTfR1の結果を決定した。これを評価するために、3つの異なるBS-mAb構築物をhuFcγRトランスジェニックマウスに投与した(
図6A)。これらは全て、ヒトのネイティブなIgG1エフェクター機能を有したが、治療的に有効なFabの数(=結合部位)が異なっていた。
【0180】
予想外に、標準的なBS-mAb(図においてmBS-2Fabと示される)構築物について、FIRが観察されなかったことが見出された。このことは、BS-mAbがin vivoにおいて、末梢でFcγR活性化をトリガーしないことを示す(
図6B)。
【0181】
この理論に拘束されるものではないが、下記のことが推定される。BS-mAbがBSモジュールを介してTfR1に結合する場合、BS-mAbは、Fc領域認識に不適切な構成で細胞表面上に提示される(
図4A)。構築物のmAb部分は、細胞表面から伸びる2つのFabアームとは逆向きで提示される。このような構成では、結合したBS-mAbのFc領域は、隣接するエフェクター細胞上のFcγRに対して逆向きに配置される。FcγRに対するFc領域の逆向き又は細胞表面から離れて伸びる治療ターゲット結合Fabアームのいずれかが、FcγR相互作用の排除及びBS-mAb構築物について観察されるFIRのサイレンシングにおいて役割を果たすと仮定することができる。
【0182】
一方又は両方の治療ターゲット結合FabアームがmAb部分に欠損している2つの構築物を設計した(
図6A)。これらの構築物は、huFcγRトランスジェニックマウスに適用された場合、急速かつ強力な体温低下によりスコア化されるように、明らかにFIRを引き起こした(
図6B)。体温低下は、両方のFabアームを欠く構築物(BS-noFab)についてさらに顕著であった。異なる構築物について観察された体温低下を、FIRの間に誘発されたサイトカインパターンの分析によりさらに実証した。
図6Cに示されるように、体温低下を引き起こす構築物BS-noFabのみが、サイトカインレベルの上昇も示す。これとは対照的に、標準的なBS-mAb構築物は、huFcγRマウスに投与された場合に、サイトカインアップレギュレーションを引き起こさなかった(
図6C)。BS-mAbについてのサイトカインプロファイルは、エフェクター無効構築物で得られたプロファイルと同等である(
図5Dを参照のこと)。このことは、IgGのFc領域を、FcγRと結合するのに適した位置に提示することの重要性を示す。
【0183】
このため、FIR及びサイトカイン放出を最少限にするために、両方の治療ターゲット結合Fabアームが、FcγRリクルートに対する阻害効果を最大化にするのに必要であることが見出された。
【0184】
用量-応答も、BS-mAb構築物について調査し(
図6D)、最高用量(20mg/kg)で少量かつ一過性の効果が検出可能であった。これは、プラーク形成を減少させる非常に有効な治療用量よりも10倍高い用量である(
図3E及び3F)。
【0185】
標準的な抗TfR1 mAbをBS-noFabと比較した場合(
図6E)、Fc領域が逆方向で提示され、BS-noFabがアビディティ結合からの寄与を欠く一価状態で結合するとしても、両Fabアームを欠く構築物により、従来のmAbより強い体温低下が誘引された。
【0186】
抗TfR1 mAbに特異的なサイトカインシグネチャー及び脳シャトル構築物による減少した効果。
種々のmAb構築物についてのサイトカインプロファイルのより詳細な分析を行った。重要なサイトカインを強調するためにヒートマップを作成した(
図7)。特に、2つのサイトカインが、非常に異なって応答した。
【0187】
血管内全身光学イメージングにより、脳シャトル構築物がROS産生を減弱させることが示される。
反応性酸素種(ROS)は、化学的に反応性の化学種である。標準的な抗TfR1 mAb及び脳シャトル構築物の末梢投与後、全身をROS種の誘引についてスキャンした。
図8Aにおいて、代表的な画像から、抗TfR1 mAbとBS-mAb(mBS-2Fab)構築物との間の差異が示される。データを定量化し、BS-mAb(mBS-2Fab)は、媒体群と比較して顕著な差を示さなかった(
図8B)。
【0188】
異なるmAb構築物の構造モデリングにより、FcγRとの結合における主な差異が示される。
細胞表面発現TfR1におけるmAbターゲット結合又はBSモジュール結合のいずれかにより提示される3つの異なる構築物間のFc領域-FcγR相互作用を、分子構造情報を使用して分析した。
図9に、主な観察結果を要約する。
【0189】
まず、1つの細胞表面上のその治療ターゲットに結合した標準的なBS-mAb及び隣接する細胞表面上に提示されるFcγRと結合する可能性をモデリングした(
図9A及び9D)。このモデルにより、FcγRへの自由なアクセス及びクラスタリングが予測された。同様に、
図9A及び9Dに、標準的なIgGのC末端における更なるBSモジュール(抗TfR1 CrossFab)の存在により、FcγR結合が妨害されないことも示す。
【0190】
第二に、in vivoで非常に活性であるBS-noFab構築物をモデリングした。この構築物は、TfR1に結合している間に、FcγRに好ましい様式で提示され、そのターゲットに結合した場合に、標準的なmAbと同様の方法でクラスタリングを可能にした(
図9B及び9E)。
【0191】
第三に、脳シャトル構築物(BS-mAb=mBS-2Fab)をモデリングした。このモデルは、治療抗原結合FabがFcγRに非常に近接して位置し、特に、BS-scFab/FcγR複合体の密接なクラスタリングを妨げると考えられるという、本明細書で報告されたin vivoでの知見を支持することが見出された(
図9C及び9F)。
【0192】
概要
Fc領域依存性エフェクター機能は、多くの場合、CNS分野における治療効果のための特定のmAbの作用メカニズムの一部である。mAbは、それらの同族抗原に結合し、次に、免疫細胞の細胞表面上の特異的なFcレセプターにより認識される。これらのFcレセプターの架橋により、いくつかのエフェクター細胞機能の活性化がもたらされる(22)。このように、mAbは、適応免疫系の認識の特異性と自然免疫系の細胞の破壊能力を結びつける、免疫系の2つのアーム間の橋渡しである。エフェクター機能が治療効果に重要である場合がある例は、凝集したアミロイド-β、リン酸化タウタンパク質及びα-シヌクレインがFcγR結合及びミクログリアによる貪食を介して除去される必要があるアルツハイマー病及びパーキンソン病を含む。BS-mAb構築物は、末梢組織においてTfR1に結合し、トランスフェリンレセプター1を発現する細胞の表面上で全く異なる配置でmAbを配向させる更なる結合ドメイン(BSモジュール)を含有する(
図4A)。
【0193】
BS-mAbは、mAbのFv部分によりその治療ターゲットに結合した場合、エフェクター機能を完全に刺激可能であることが、本発明者らによりここで見出された。このため、重鎖上のC末端付着BSモジュールにより、Fc-FcγRのリクルート及び結合が妨害されない。BS-mAb及び親mAbは等しく活性である(
図2に、例示的な抗Aβ mAbについての活性を示す;両抗体は、Aβのグリア貪食を刺激するのにおいて等しく活性であり、エフェクター機能に直接依存することが示されている(23))。
【0194】
BS-mAbが脳内でその治療効果を促進することができる前に、投与後に、構築物が血流中(全身)を循環するであろう。それにより、多数の細胞種(24)上で発現されるTfR1と結合し、BBBを横断して輸送される。全身循環におけるこのTfR1の結合は、Fc領域のエフェクター機能による局所炎症応答を潜在的に生じさせる場合がある。
【0195】
ヒト発現プロファイルを再現する重要なhuFcγRを発現する新規なhuFcγRトランスジェニックマウスモデルを使用することにより、ヒト/ヒト化mAbによりトリガーされるFIRを、連続的な温度データ収集を可能にする適合可能な遠隔測定モニタリングシステムに基づいて評価した。ヒト/ヒト化mAbを調査するためにこのヒト化FcγRモデルを使用することの重要性は、マウスFcγRとヒトFcγRとの間の固有の差異を反映して、野生型動物において見出されるはるかに低いFIR応答において実証される。
【0196】
ネイティブなIgG1 Fc領域を有する従来の二価抗TfR1 mAbは、強力なFIRを引き起こすことが見出された(
図5Cを参照のこと)。エフェクター無効変異体が完全に不活性であるため、FIR関連体温変化は、Fc領域-FcγR相互作用により駆動されることも見出された。
【0197】
完全にネイティブなヒトIgG1 Fc領域を含むBS-mAb構築物は、結合様式に依存して、FcγRレセプターと完全に相互作用することができることが見出された。BS-mAbは、CNS血管の管腔部分上でのTfR1への結合を介して、BBBにわたる転座を介したCNSへの進入を促進するように設計されている。このため、内皮TfR1の結合は、脳常在ターゲットの結合に先行する。したがって、BS-mAb構築物は、広く発現されたTfR1の末梢結合により、FIRのような全身性の有害作用を理想的には誘発しないべきである。BBBの通過後、同じBS-mAbは、局所的に発現されたターゲット抗原の結合時に、例えば、プラークのミクログリア支援クリアランスのために、完全なエフェクター機能を保存する必要がある。ここで、BS-mAb構築物のhuFcγRマウスへの全身投与は、この構築物が末梢においてマウスTfR1に結合し、完全に機能的なFc領域を有しても、温度リードアウトを使用して測定可能なFIRを誘引しなかったことが見出された(
図6B)。
【0198】
本発明者らにより、立体障害が、この差次的挙動の理由であることを見出された。ネイティブなFabアームを欠く構築物は、C末端BSがTfR1に結合する場合、Fc部分が本来とは異なる配向に起因して反転される場合でも、FIRを引き起こす能力を回復したことが見出された。
【0199】
BSモジュールの反対側に1つのFabアームのみを含有する構築物は、中間のFIR効果を示すことが見出された(
図6B)。
【0200】
モデリング法を使用して、標準的なIgGフォーマットでの抗TfR1抗体の場合、ターゲット細胞上でのTfR1へのその抗TfR1 Fabのうちの1つの結合は、その本来の構成におけるFcγRとの相互作用のためのFc領域を示すことが見出された。
【0201】
この理論に拘束されるものではないが、第2の非結合Fabは、抗体ヒンジ中のジスルフィド架橋により拘束されるため、おそらく、ターゲット細胞に向かって下向きに指向するのに適している。代替的に、第2のFabは、ターゲット細胞上の別のTfR1レセプターに結合することができる。
【0202】
Fc-抗TfR1 Fab C-末端融合により、4×G4S可撓性リンカーを介した抗TfR1 FabのC-末端融合がFc-領域のN-末端部分と主に関与するFc-領域-FcγR相互作用を妨害しないため、妨害されないFcγR相互作用が可能となる。これは、溶液の場合及び細胞-細胞相互作用の場合又はこの場合のようにターゲット(すなわち、Aベータプラーク)-細胞相互作用の場合である。このため、BS-mAb Fc領域とエフェクター細胞上のFcガンマレセプターとの相互作用は、そのターゲットと相互作用する場合、C末端融合脳シャトルモジュール(すなわち、一価抗TfR1抗体)により影響されない。
【0203】
この理論に拘束されるものではないが、BS-mAb構築物がTfR1に結合した場合、状況は異なる。この場合、2つのネイティブなN末端治療ターゲット結合Fabフラグメント(Fc領域とほぼ同じプレーンである可能性が高いターゲットが存在しない)が、立体障害を形成している。Fc領域はそれでも、単一のFcγRへの結合を達成することができるが、おそらく、FcγRの二量体化又は多量体化に必要な更なるFcγRのアプローチが妨げられ、その結果、ADCCの形成が阻害される。この概念を
図9に概説する。同図には、複数のFcγR分子の横方向アプローチが、おそらく、ターゲット化されたIgG-抗TfR1 Fab C末端融合複合体に対してより、標準的なIgG及びFc-抗TfR1 Fab C末端融合複合体に対して達成されることが示されている。代替的又は補完的な説明は、カーゴIgGにおける天然のFabがかさ高さのために食細胞カップ内の細胞間のギャップを増加させるため、拡散バリアの外側のホスファターゼを立体的に排除することができないことである(25、26)。これにより、下流のキナーゼシグナル伝達の活性化に必要な食細胞カップ内のサブミクロンスケールでのホスファターゼ及びキナーゼの重要な分離が妨げられるであろう。
【0204】
まとめると、従来のmAbのC末端におけるBSモジュールの付加によっては、Fc領域及びFcγR相互作用により媒介されるようなBS-mAbフォーマットの治療効果は妨害されないことが見出された。また、BS-mAbにおいて、TfR1がBSモジュールに抹消において結合した場合、Fc領域媒介性エフェクター機能により、FIRがもたらされる可能性があることも見出された。BS-mAbフォーマットのこの有益な特性は、この理論に拘束されるものではないが、BSモジュールの反対側のN末端位置における2つの天然IgGカーゴFabアームにより及ぼされる立体障害による。この固有の特徴により、野生型FcとのBS-mAb融合体の更なる開発が可能となり、ついで、これにより、FIRのリスクなしに、その治療ターゲットにおいてのみ、それらの所望のFcγR関連薬理学を発揮可能である。
【0205】
医薬製剤
抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター抗体の適用のための医薬製剤であって、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター抗体が脳ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VLペア)と、ヒトトランスフェリンレセプターに特異的に結合する1つの結合部位(VH/VLペア)と、エフェクター機能コンピテント(ネイティブ)Fc領域を有する医薬製剤を、所望の純度を有するこのような抗体を1つ以上の任意の薬学的に許容し得る担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A.(ed.)(1980))と、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で混合することにより調製する。薬学的に許容し得る担体は、一般的には、利用される用量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、バッファー、例えば、ホスファート、シトラート及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10個未満 残基)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリ(ビニルピロリドン);アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリシン;単糖類、二糖類及び他の炭水化物(グルコース、マンノース又はデキストリンを含む);キレート剤、例えば、EDTA;糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成カウンターイオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)並びに/又は非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を含むが、これらに限定されない。本明細書における例示的な薬学的に許容し得る担体は、間質性薬剤分散剤、例えば、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えば、rhuPH20(HYLENEX(登録商標), Baxter International, Inc.)を更に含む。rhuPH20を含む特定の例示的なsHASEGP及び使用方法が、US第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様において、sHASEGPは、1つ以上の更なるグリコサミノグリカナーゼ、例えば、コンドロイチナーゼと組み合わせられる。
【0206】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、US第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤は、US第6,171,586号及びWO第2006/044908号に記載されているものを含み、後者の製剤は、ヒスチジン-アセタートバッファーを含む。
【0207】
また、本明細書における製剤は、治療される特定の適応症に必要な2つ以上の活性成分、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさず、補完的な活性を有する活性成分を含有することもできる。このような活性成分は、意図する目的に有効な量で組み合わせて適切に存在する。
【0208】
in vivo投与に使用される製剤は、一般的には無菌である。無菌は、例えば、無菌ろ過膜を通したろ過により容易に達成することができる。
【0209】
治療方法及び組成物
一態様において、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体が、脳ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VLペア)と、ヒトトランスフェリンレセプター1に特異的に結合する1つの結合部位(VH/VLペア)と、エフェクター機能コンピテント(ネイティブ)Fc領域とを有し、注入関連体温低下が低減され/防止された神経障害を処置するのにおける使用のための、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体が提供される。特定の実施態様では、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体が、脳ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VLペア)と、ヒトトランスフェリンレセプター1に特異的に結合する1つの結合部位(VH/VLペア)と、エフェクター機能コンピテント(ネイティブ)Fc領域とを有し、注入関連体温低下が低減され/防止された神経障害の処置方法における使用のための、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体が提供される。特定の実施態様では、本発明は、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体が、脳ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VLペア)と、ヒトトランスフェリンレセプター1に特異的に結合する1つの結合部位(VH/VLペア)と、エフェクター機能コンピテント(ネイティブ)Fc領域とを有し、有効量の抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体(ここで、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体は、脳ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VLペア)と、ヒトトランスフェリンレセプター1に特異的に結合する1つの結合部位(VH/VLペア)と、エフェクター機能コンピテント(ネイティブ)Fc領域とを有し、ここで、注入関連体温低下が低減され/防止される)を個体に投与することを含む、神経障害を有する個体を処置する方法における使用のための、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター抗体を提供する。1つのこのような実施態様では、この方法は、更に、有効量の少なくとも1種の更なる治療剤を個体に投与することを含む。更なる実施態様では、本発明は、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体が脳ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VLペア)と、ヒトトランスフェリンレセプター1に特異的に結合する1つの結合部位(VH/VLペア)と、エフェクター機能コンピテント(ネイティブ)Fc領域とを有し、注入関連体温低下を低減し/防止するのにおける使用のための、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体を提供する。特定の実施態様では、本発明は、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体が脳ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VLペア)と、ヒトトランスフェリンレセプター1に特異的に結合する1つの結合部位(VH/VLペア)と、エフェクター機能コンピテント(ネイティブ)Fc領域を有し、有効量の抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体(ここで、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体は、脳ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VLペア)と、ヒトトランスフェリンレセプター1に特異的に結合する1つの結合部位(VH/VLペア)と、エフェクター機能コンピテント(ネイティブ)Fc領域とを有る)を個体に投与することを含む、個体における注入関連体温低下を低減する方法における使用のための、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体を提供する。上記実施態様のいずれかによる「個体」は、好ましくは、ヒトである。
【0210】
更なる態様では、本発明は、神経障害を処置するための方法を提供する。一実施態様において、この方法は、このような神経障害を有する個体に、有効量の抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体を投与することを含み、ここで、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体は、脳ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VLペア)と、ヒトトランスフェリンレセプター1に特異的に結合する1つの結合部位(VH/VLペア)と、エフェクター機能コンピテント(ネイティブ)Fc領域とを有する。1つのこのような実施態様では、この方法は、更に、有効量の少なくとも1種の更なる治療剤を投与することを含む。上記実施態様のいずれかによる「個体」は、ヒトであることができる。
【0211】
更なる態様では、本発明は、個体における注入関連体温低下を低減するための方法を提供する。一実施態様において、この方法は、有効量の抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体を個体に投与することを含み、ここで、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体は、脳ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VLペア)と、ヒトトランスフェリンレセプター1に特異的に結合する1つの結合部位(VH/VLペア)と、エフェクター機能コンピテント(ネイティブ)Fc領域とを有する。一実施態様において、「個体」は、ヒトである。
【0212】
抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体が、脳ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VLペア)と、ヒトトランスフェリンレセプター1に特異的に結合する1つの結合部位(VH/VLペア)と、エフェクター機能コンピテント(ネイティブ)Fc領域とを有する、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体は、治療において単独で又は他の薬剤と組み合わせて使用することができる。例えば、このような抗体は、少なくとも1種の更なる治療剤と同時投与することができる。
【0213】
抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体が、脳ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VLペア)と、ヒトトランスフェリンレセプター1に特異的に結合する1つの結合部位(VH/VLペア)と、エフェクター機能コンピテント(ネイティブ)Fc領域とを有する、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体は、グッド・メディカル・プラクティスに合致する様式で製剤化され、投与され、適用されるであろう。この文脈において考慮すべき要因は、処置される特定の障害、処置される特定のほ乳類、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジューリング及び医師に公知の他の要因を含む。抗体は、対象となる障害を予防し又は治療するのに現在使用されている1つ以上の薬剤と共に製剤化される必要はないが、場合により製剤化される。このような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害又は処置の種類及び上記検討された他の要因により決まる。これらは、一般的には、本明細書に記載されたのと同じ用量及び投与経路又は本明細書に記載された用量の約1~99%又は経験的/臨床的に適切であると決定される任意の用量及び任意の経路で使用される。
【0214】
疾患の予防又は治療のために、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体が脳ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位(VH/VLペア)と、ヒトトランスフェリンレセプター1に特異的に結合する1つの結合部位(VH/VLペア)と、エフェクター機能コンピテント(ネイティブ)Fc領域を有する、抗脳ターゲット/ヒトトランスフェリンレセプター1抗体の適切な用量(単独で又は1種以上の他の更なる治療剤と組み合わせて使用される場合)は、処置される疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体が予防目的又は治療目的で投与されるかどうか、以前の治療、患者の臨床履歴及び抗体に対する応答並びに主治医の裁量により決まるであろう。抗体は、一度に又は一連の処置にわたって患者に適切に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.5mg/kg~10mg/kg) 抗体が、例えば、1回以上の別々の投与によるか又は連続注入によるかにかかわらず、患者への投与のための最初の候補用量であることができる。上記言及された要因に応じて、1つの典型的な日量は、約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲にあることができる。数日以上にわたる反復投与のために、状態に応じて、処置は、疾患症状の所望のサプレッションが生じるまで、一般的に維持されるであろう。抗体の1つの例示的な用量は、約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲であろう。このため、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kg(又はそれらの任意の組み合わせ)の1回以上の用量を、患者に投与することができる。このような用量は、間欠的に、例えば、毎週又は3週間ごとに投与することができる(例えば、患者が、約2~約20回又は例えば、約6回の用量の抗体を受け取るように)。最初のより高いロード用量、続けて、1回以上のより低い用量を投与することができる。例示的な用量計画は、約4mg/kgの初期ロード用量を投与し、続けて、約2mg/kg 抗体の週1回維持用量を投与することを含む。ただし、他の用量計画が有用である場合がある。この治療の前進は、従来の技術及びアッセイにより容易にモニタリングされる。
【0215】
本発明の二重特異性抗体の投与に典型的な注入速度は、50ml/h~400ml/h、特に、≧50ml/h、≧100ml/h、≧150ml/h又は≧200ml/h;例えば、100ml/h~400ml/h、150ml/h~400ml/h又は200ml/h~400ml/hである。
【0216】
下記実施例及び図面は、本発明の理解を助けるために提供され、その真の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載される。本発明の精神から逸脱することなく、記載された手順を修正することができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0217】
【
図1-1】
図1A~1Eは、溶液中で遊離している場合に、in vitro FcγR結合及びFc領域機能がBS-mAb31構築物において保存されていることを示す。
図1Aは、遊離溶液中において細胞表面上のFcγRに結合する脳シャトル構築物を図示し、この構造は、FcγR、Fc領域、Fab及びBSモジュールを含む。
図1Bは、異なるFcγR(第1のシグナル)の固定化及び抗Aベータ抗体mAb31のそれへの結合(第2のシグナル)を示す表面プラズモン共鳴(SPR)センソグラムを示す。
図1Cは、異なるFcγR(第1のシグナル)の固定化及びBS-抗Aベータ抗体mAb31(BS-mAb31)のそれへの結合(第2のシグナル)を示す表面プラズモン共鳴(SPR)センソグラムを示す。
図1Dは、huFcγRI(三角形)又はhuFcγRIIIa(丸)のいずれかへのmAb31(白い記号)及びBS-mAb31(黒い記号)の細胞結合を示す。このことから、両構築物が、これら2つのFcγRに匹敵する親和性を有し、高親和性huFcγRIにより強いことが実証される。
図1Eは、huFcγRIIa(正方形)又はhuFcγRIIb(菱形)のいずれかに対するmAb31(白い記号)及びBS-mAb31(黒い記号)の細胞結合を示す。このことから、両構築物が、これら2つの低親和性huFcγRに匹敵する親和性を有することが示される。
【
図1-2】
図1A~1Eは、溶液中で遊離している場合に、in vitro FcγR結合及びFc領域機能がBS-mAb31構築物において保存されていることを示す。
図1Aは、遊離溶液中において細胞表面上のFcγRに結合する脳シャトル構築物を図示し、この構造は、FcγR、Fc領域、Fab及びBSモジュールを含む。
図1Bは、異なるFcγR(第1のシグナル)の固定化及び抗Aベータ抗体mAb31のそれへの結合(第2のシグナル)を示す表面プラズモン共鳴(SPR)センソグラムを示す。
図1Cは、異なるFcγR(第1のシグナル)の固定化及びBS-抗Aベータ抗体mAb31(BS-mAb31)のそれへの結合(第2のシグナル)を示す表面プラズモン共鳴(SPR)センソグラムを示す。
図1Dは、huFcγRI(三角形)又はhuFcγRIIIa(丸)のいずれかへのmAb31(白い記号)及びBS-mAb31(黒い記号)の細胞結合を示す。このことから、両構築物が、これら2つのFcγRに匹敵する親和性を有し、高親和性huFcγRIにより強いことが実証される。
図1Eは、huFcγRIIa(正方形)又はhuFcγRIIb(菱形)のいずれかに対するmAb31(白い記号)及びBS-mAb31(黒い記号)の細胞結合を示す。このことから、両構築物が、これら2つの低親和性huFcγRに匹敵する親和性を有することが示される。
【
図1-3】
図1A~1Eは、溶液中で遊離している場合に、in vitro FcγR結合及びFc領域機能がBS-mAb31構築物において保存されていることを示す。
図1Aは、遊離溶液中において細胞表面上のFcγRに結合する脳シャトル構築物を図示し、この構造は、FcγR、Fc領域、Fab及びBSモジュールを含む。
図1Bは、異なるFcγR(第1のシグナル)の固定化及び抗Aベータ抗体mAb31のそれへの結合(第2のシグナル)を示す表面プラズモン共鳴(SPR)センソグラムを示す。
図1Cは、異なるFcγR(第1のシグナル)の固定化及びBS-抗Aベータ抗体mAb31(BS-mAb31)のそれへの結合(第2のシグナル)を示す表面プラズモン共鳴(SPR)センソグラムを示す。
図1Dは、huFcγRI(三角形)又はhuFcγRIIIa(丸)のいずれかへのmAb31(白い記号)及びBS-mAb31(黒い記号)の細胞結合を示す。このことから、両構築物が、これら2つのFcγRに匹敵する親和性を有し、高親和性huFcγRIにより強いことが実証される。
図1Eは、huFcγRIIa(正方形)又はhuFcγRIIb(菱形)のいずれかに対するmAb31(白い記号)及びBS-mAb31(黒い記号)の細胞結合を示す。このことから、両構築物が、これら2つの低親和性huFcγRに匹敵する親和性を有することが示される。
【
図2-1】
図2A~2Kは、Aβターゲット結合に関与する場合に、in vitro FcγR結合及びFc領域機能がBS-mAb31構築物において保存されていることを示す。
図2Aは、抗Aβ FabアームがAβに結合した場合に、FcγRに結合する脳シャトル構築物を図示する。この構築物は、FcγR、Fc領域、Fab及びBSモジュールを含む。
図2B及び2Cは、Aβ1-42被覆表面及びU937単球エフェクター細胞を使用して、IL-8放出(
図2B)又はIP-10放出(
図2C)を測定するmAb31及びBS-mAb31のin vitro ADCC活性を示す。両構築物は、類似のADCC活性を有する。
図2D~2Kは、ヒトAβプラークの細胞性食作用を示す。ヒトAD脳切片をmAb31(
図2D~2G)又はBS-mAb31(
図2H~2K)のいずれかと共にプレインキュベーションし、続けて、エフェクター細胞として初代ヒトマクロファージの存在下で細胞培養した。使用された等モル濃度は、初代ヒトマクロファージを含まない、0μg/ml(
図2D及び2H)、1μg/ml(
図2E及び2I)、5μg/ml(
図2F及び2J)及び5μg/ml(
図2G及び2K)であった。その後、プラークを抗Aβ抗体でラベルした。データから、両構築物について、類似の濃度依存性食作用活性及びin vitroプラーククリアランスが示される。
【
図2-2】
図2A~2Kは、Aβターゲット結合に関与する場合に、in vitro FcγR結合及びFc領域機能がBS-mAb31構築物において保存されていることを示す。
図2Aは、抗Aβ FabアームがAβに結合した場合に、FcγRに結合する脳シャトル構築物を図示する。この構築物は、FcγR、Fc領域、Fab及びBSモジュールを含む。
図2B及び2Cは、Aβ1-42被覆表面及びU937単球エフェクター細胞を使用して、IL-8放出(
図2B)又はIP-10放出(
図2C)を測定するmAb31及びBS-mAb31のin vitro ADCC活性を示す。両構築物は、類似のADCC活性を有する。
図2D~2Kは、ヒトAβプラークの細胞性食作用を示す。ヒトAD脳切片をmAb31(
図2D~2G)又はBS-mAb31(
図2H~2K)のいずれかと共にプレインキュベーションし、続けて、エフェクター細胞として初代ヒトマクロファージの存在下で細胞培養した。使用された等モル濃度は、初代ヒトマクロファージを含まない、0μg/ml(
図2D及び2H)、1μg/ml(
図2E及び2I)、5μg/ml(
図2F及び2J)及び5μg/ml(
図2G及び2K)であった。その後、プラークを抗Aβ抗体でラベルした。データから、両構築物について、類似の濃度依存性食作用活性及びin vitroプラーククリアランスが示される。
【
図2-3】
図2A~2Kは、Aβターゲット結合に関与する場合に、in vitro FcγR結合及びFc領域機能がBS-mAb31構築物において保存されていることを示す。
図2Aは、抗Aβ FabアームがAβに結合した場合に、FcγRに結合する脳シャトル構築物を図示する。この構築物は、FcγR、Fc領域、Fab及びBSモジュールを含む。
図2B及び2Cは、Aβ1-42被覆表面及びU937単球エフェクター細胞を使用して、IL-8放出(
図2B)又はIP-10放出(
図2C)を測定するmAb31及びBS-mAb31のin vitro ADCC活性を示す。両構築物は、類似のADCC活性を有する。
図2D~2Kは、ヒトAβプラークの細胞性食作用を示す。ヒトAD脳切片をmAb31(
図2D~2G)又はBS-mAb31(
図2H~2K)のいずれかと共にプレインキュベーションし、続けて、エフェクター細胞として初代ヒトマクロファージの存在下で細胞培養した。使用された等モル濃度は、初代ヒトマクロファージを含まない、0μg/ml(
図2D及び2H)、1μg/ml(
図2E及び2I)、5μg/ml(
図2F及び2J)及び5μg/ml(
図2G及び2K)であった。その後、プラークを抗Aβ抗体でラベルした。データから、両構築物について、類似の濃度依存性食作用活性及びin vitroプラーククリアランスが示される。
【
図3-1】
図3A~3Fは、BS-mAb31構築物についてのin vivoターゲット結合及びアミロイド-β減少を図示する。
図3Aは、C57BL6オスマウスにおいて行われた薬物動態を示し、血漿曝露は、mAb31と比較してBS-mAb31についてより低かったことを示す。BS分子のより少ない暴露は、末梢におけるTfR1への結合による。
図3Bは、ついで、使用された適切な用量での単回用量PKデータから決定された薬物動態パラメータを使用して、慢性投与プロファイルをシミュレーションしたことを示す。
図3C~3Dは、mAb31(
図3C)及びBS-mAb31(
図3D)について、プラーク結合を最後の4ヶ月間の投与後に評価したことを示す。APPLondonをマウスmAb31又はBS-mAb31で4ヶ月間処置した。17.5か月齢で殺処分された未処置動物のプラークロードを、試験開始時のアミロイドーシスのベースラインレベルとしての比較のために示す。
図3E~3Fは、プラーク数の強力かつ有意な減少が、媒体及びmAb31群で見られる進行性プラーク形成と比較して、大脳皮質(
図3E)及び海馬(
図3F)の両方において、BS-mAb31による処置後に明らかであることを示す。
【
図3-2】
図3A~3Fは、BS-mAb31構築物についてのin vivoターゲット結合及びアミロイド-β減少を図示する。
図3Aは、C57BL6オスマウスにおいて行われた薬物動態を示し、血漿曝露は、mAb31と比較してBS-mAb31についてより低かったことを示す。BS分子のより少ない暴露は、末梢におけるTfR1への結合による。
図3Bは、ついで、使用された適切な用量での単回用量PKデータから決定された薬物動態パラメータを使用して、慢性投与プロファイルをシミュレーションしたことを示す。
図3C~3Dは、mAb31(
図3C)及びBS-mAb31(
図3D)について、プラーク結合を最後の4ヶ月間の投与後に評価したことを示す。APPLondonをマウスmAb31又はBS-mAb31で4ヶ月間処置した。17.5か月齢で殺処分された未処置動物のプラークロードを、試験開始時のアミロイドーシスのベースラインレベルとしての比較のために示す。
図3E~3Fは、プラーク数の強力かつ有意な減少が、媒体及びmAb31群で見られる進行性プラーク形成と比較して、大脳皮質(
図3E)及び海馬(
図3F)の両方において、BS-mAb31による処置後に明らかであることを示す。
【
図3-3】
図3A~3Fは、BS-mAb31構築物についてのin vivoターゲット結合及びアミロイド-β減少を図示する。
図3Aは、C57BL6オスマウスにおいて行われた薬物動態を示し、血漿曝露は、mAb31と比較してBS-mAb31についてより低かったことを示す。BS分子のより少ない暴露は、末梢におけるTfR1への結合による。
図3Bは、ついで、使用された適切な用量での単回用量PKデータから決定された薬物動態パラメータを使用して、慢性投与プロファイルをシミュレーションしたことを示す。
図3C~3Dは、mAb31(
図3C)及びBS-mAb31(
図3D)について、プラーク結合を最後の4ヶ月間の投与後に評価したことを示す。APPLondonをマウスmAb31又はBS-mAb31で4ヶ月間処置した。17.5か月齢で殺処分された未処置動物のプラークロードを、試験開始時のアミロイドーシスのベースラインレベルとしての比較のために示す。
図3E~3Fは、プラーク数の強力かつ有意な減少が、媒体及びmAb31群で見られる進行性プラーク形成と比較して、大脳皮質(
図3E)及び海馬(
図3F)の両方において、BS-mAb31による処置後に明らかであることを示す。
【
図4-1】
図4A~4Eは、TfR1結合BS-mAb31の配向が隣接する細胞上での生産的なFcγR相互作用に最適でない位置でのFc領域を示すことを図示する。
図4A及び4Bは、細胞表面上のTfR1に結合する脳シャトル構築物(
図4A)又は標準的な抗TfR1 IgG mAb(
図4B)の模式図である。TfR1、Tf、BSモジュール、Fc領域及びカーゴFab(治療結合部位)。
図4Cは、異なる構築物の細胞傷害性曲線を示す。抗TfR1 IgG1抗体により、BaF3ターゲット細胞のADCCは誘発されたが、BS構築物は、活性が弱かった。標準的な抗TfR1 mAb(丸)、1つのFabを有する標準的な抗TfR1 mAb(エラーバー付き正方形)、BS-2Fab三角形、BS-mAb)、dBS-IgG(三角形)、対照IgG(菱形)、標準的な抗TfR1 mAb PGLALA(エラーバーなし正方形)。
図4Dは、標準的な抗TfR1 mAbの最大効果を有する濃度での各構築物についての総細胞傷害性値を示す;1つのFabを有する標準的な抗TfR1 mAbのみが小さな効果を示すが、他の全ての構築物は、検出可能なADCC活性を有さない。全ての構築物は、完全に機能的なヒトIgG1 Fc領域を含有する。
図4Eは、ADCCアッセイにおいて調査された構築物の模式図を示す。プロットされた値は、平均±SD(n=3)である。
****p<=0.0001(t検定、標準的な抗TfR1 mAb投与動物と比較)。
【
図4-2】
図4A~4Eは、TfR1結合BS-mAb31の配向が隣接する細胞上での生産的なFcγR相互作用に最適でない位置でのFc領域を示すことを図示する。
図4A及び4Bは、細胞表面上のTfR1に結合する脳シャトル構築物(
図4A)又は標準的な抗TfR1 IgG mAb(
図4B)の模式図である。TfR1、Tf、BSモジュール、Fc領域及びカーゴFab(治療結合部位)。
図4Cは、異なる構築物の細胞傷害性曲線を示す。抗TfR1 IgG1抗体により、BaF3ターゲット細胞のADCCは誘発されたが、BS構築物は、活性が弱かった。標準的な抗TfR1 mAb(丸)、1つのFabを有する標準的な抗TfR1 mAb(エラーバー付き正方形)、BS-2Fab三角形、BS-mAb)、dBS-IgG(三角形)、対照IgG(菱形)、標準的な抗TfR1 mAb PGLALA(エラーバーなし正方形)。
図4Dは、標準的な抗TfR1 mAbの最大効果を有する濃度での各構築物についての総細胞傷害性値を示す;1つのFabを有する標準的な抗TfR1 mAbのみが小さな効果を示すが、他の全ての構築物は、検出可能なADCC活性を有さない。全ての構築物は、完全に機能的なヒトIgG1 Fc領域を含有する。
図4Eは、ADCCアッセイにおいて調査された構築物の模式図を示す。プロットされた値は、平均±SD(n=3)である。
****p<=0.0001(t検定、標準的な抗TfR1 mAb投与動物と比較)。
【
図4-3】
図4A~4Eは、TfR1結合BS-mAb31の配向が隣接する細胞上での生産的なFcγR相互作用に最適でない位置でのFc領域を示すことを図示する。
図4A及び4Bは、細胞表面上のTfR1に結合する脳シャトル構築物(
図4A)又は標準的な抗TfR1 IgG mAb(
図4B)の模式図である。TfR1、Tf、BSモジュール、Fc領域及びカーゴFab(治療結合部位)。
図4Cは、異なる構築物の細胞傷害性曲線を示す。抗TfR1 IgG1抗体により、BaF3ターゲット細胞のADCCは誘発されたが、BS構築物は、活性が弱かった。標準的な抗TfR1 mAb(丸)、1つのFabを有する標準的な抗TfR1 mAb(エラーバー付き正方形)、BS-2Fab三角形、BS-mAb)、dBS-IgG(三角形)、対照IgG(菱形)、標準的な抗TfR1 mAb PGLALA(エラーバーなし正方形)。
図4Dは、標準的な抗TfR1 mAbの最大効果を有する濃度での各構築物についての総細胞傷害性値を示す;1つのFabを有する標準的な抗TfR1 mAbのみが小さな効果を示すが、他の全ての構築物は、検出可能なADCC活性を有さない。全ての構築物は、完全に機能的なヒトIgG1 Fc領域を含有する。
図4Eは、ADCCアッセイにおいて調査された構築物の模式図を示す。プロットされた値は、平均±SD(n=3)である。
****p<=0.0001(t検定、標準的な抗TfR1 mAb投与動物と比較)。
【
図5-1】
図5A~5Eは、エフェクター機能を有する標準的な抗TfR1 mAbが初回注入反応及びサイトカイン誘引を誘引することを示す。
図5Aは、FcγRヒト化マウスモデルの設計の概要を図示する。遺伝子ターゲットFcγRローカス交換。
図5Bは、マウスの体温変化を皮下に注入されたカプセルを使用する無線システムでモニタリングしたことを図示する。これにより、動物が研究中に自由に動くことが可能であった。
図5Cは、FIRをFcγRヒト化マウスにおいて誘発することができ、体温低下により特徴付けられることを示す。標準的な抗TfR1 mAbは、5mg/kg(丸)及び20mg/kg(四角形)、媒体対照(三角形)において、用量依存性で一過性の体温低下を誘引した。
図5Dは、標準的な抗TfR1 mAb PGLALA(黒丸)により20mg/kgで体温低下が誘引されないため、FIR応答には、完全に活性なエフェクター機能が必要であることを示す。標準的な抗TfR1 mAb(黒三角形)及び媒体(白三角形)を対照として含めた。
図5Eは、血液中のサイトカインのパネルを注射の2時間後にモニタリングしたことを示す。標準的な抗TfR1 mAb(斜線バー)群において、特定のサイトカインが強く増加し、これは、エフェクター機能を有さない群においてほとんど減少した(標準的な抗TfR1 mAb PGLALA、白色バー)。
【
図5-2】
図5A~5Eは、エフェクター機能を有する標準的な抗TfR1 mAbが初回注入反応及びサイトカイン誘引を誘引することを示す。
図5Aは、FcγRヒト化マウスモデルの設計の概要を図示する。遺伝子ターゲットFcγRローカス交換。
図5Bは、マウスの体温変化を皮下に注入されたカプセルを使用する無線システムでモニタリングしたことを図示する。これにより、動物が研究中に自由に動くことが可能であった。
図5Cは、FIRをFcγRヒト化マウスにおいて誘発することができ、体温低下により特徴付けられることを示す。標準的な抗TfR1 mAbは、5mg/kg(丸)及び20mg/kg(四角形)、媒体対照(三角形)において、用量依存性で一過性の体温低下を誘引した。
図5Dは、標準的な抗TfR1 mAb PGLALA(黒丸)により20mg/kgで体温低下が誘引されないため、FIR応答には、完全に活性なエフェクター機能が必要であることを示す。標準的な抗TfR1 mAb(黒三角形)及び媒体(白三角形)を対照として含めた。
図5Eは、血液中のサイトカインのパネルを注射の2時間後にモニタリングしたことを示す。標準的な抗TfR1 mAb(斜線バー)群において、特定のサイトカインが強く増加し、これは、エフェクター機能を有さない群においてほとんど減少した(標準的な抗TfR1 mAb PGLALA、白色バー)。
【
図5-3】
図5A~5Eは、エフェクター機能を有する標準的な抗TfR1 mAbが初回注入反応及びサイトカイン誘引を誘引することを示す。
図5Aは、FcγRヒト化マウスモデルの設計の概要を図示する。遺伝子ターゲットFcγRローカス交換。
図5Bは、マウスの体温変化を皮下に注入されたカプセルを使用する無線システムでモニタリングしたことを図示する。これにより、動物が研究中に自由に動くことが可能であった。
図5Cは、FIRをFcγRヒト化マウスにおいて誘発することができ、体温低下により特徴付けられることを示す。標準的な抗TfR1 mAbは、5mg/kg(丸)及び20mg/kg(四角形)、媒体対照(三角形)において、用量依存性で一過性の体温低下を誘引した。
図5Dは、標準的な抗TfR1 mAb PGLALA(黒丸)により20mg/kgで体温低下が誘引されないため、FIR応答には、完全に活性なエフェクター機能が必要であることを示す。標準的な抗TfR1 mAb(黒三角形)及び媒体(白三角形)を対照として含めた。
図5Eは、血液中のサイトカインのパネルを注射の2時間後にモニタリングしたことを示す。標準的な抗TfR1 mAb(斜線バー)群において、特定のサイトカインが強く増加し、これは、エフェクター機能を有さない群においてほとんど減少した(標準的な抗TfR1 mAb PGLALA、白色バー)。
【
図5-4】
図5A~5Eは、エフェクター機能を有する標準的な抗TfR1 mAbが初回注入反応及びサイトカイン誘引を誘引することを示す。
図5Aは、FcγRヒト化マウスモデルの設計の概要を図示する。遺伝子ターゲットFcγRローカス交換。
図5Bは、マウスの体温変化を皮下に注入されたカプセルを使用する無線システムでモニタリングしたことを図示する。これにより、動物が研究中に自由に動くことが可能であった。
図5Cは、FIRをFcγRヒト化マウスにおいて誘発することができ、体温低下により特徴付けられることを示す。標準的な抗TfR1 mAbは、5mg/kg(丸)及び20mg/kg(四角形)、媒体対照(三角形)において、用量依存性で一過性の体温低下を誘引した。
図5Dは、標準的な抗TfR1 mAb PGLALA(黒丸)により20mg/kgで体温低下が誘引されないため、FIR応答には、完全に活性なエフェクター機能が必要であることを示す。標準的な抗TfR1 mAb(黒三角形)及び媒体(白三角形)を対照として含めた。
図5Eは、血液中のサイトカインのパネルを注射の2時間後にモニタリングしたことを示す。標準的な抗TfR1 mAb(斜線バー)群において、特定のサイトカインが強く増加し、これは、エフェクター機能を有さない群においてほとんど減少した(標準的な抗TfR1 mAb PGLALA、白色バー)。
【
図6-1】
図6A~6Eは、エフェクター機能を有する抗TfR1脳シャトル構築物により、初回注入反応及びサイトカイン誘引が減弱されることを示す。
図6Aは、試験のために操作され、産生された3つの異なる脳シャトル構築物を示す。構築物間の差異は、構築物がTfR1に結合する場合に、それらがin vivoでのFcγR結合にどのように影響を及ぼすかを調査するための、カーゴFabの欠失である。
図6Bは、3つの構築物を同じ研究において5mg/kgで試験した場合の結果を示す。mBS-2Fab(BS-mAb;三角形)により、FIRが誘引されなかった。一方、両カーゴFabを欠く構築物は、最も強い効果(正方形)を有した。1つのカーゴFab構築物(丸)は、他の2つの構築物の間にあった。
図6Cは、構築物の注射の2時間後での血液中のサイトカインのパネルについての% サイトカイン応答を示す。mBS-noFab(白色バー)のみにより、特定のサイトカインの強い誘引が誘引された。一方、mBS-2Fab(BS-mAb;斜線バー)は、実質的な効果を有さなかった。
図6Dは、BS-sFabの2つの用量、5mg/kg(白三角形)及び20mg/kg(黒丸)並びに媒体群(黒三角形)を比較したものである。BS-sFabについて、20mg/kgではわずかかつ非常に一時的に体温が低下した。
図6Eは、BS-noFab構築物と比較して、標準的な抗TfR1 mAbについての体温低下によりモニタリングされたFIRを示す。興味深いことに、BS-noFab(正方形)により、はるかに強力にFIRが誘引された。媒体群(三角形)を含めた。
【
図6-2】
図6A~6Eは、エフェクター機能を有する抗TfR1脳シャトル構築物により、初回注入反応及びサイトカイン誘引が減弱されることを示す。
図6Aは、試験のために操作され、産生された3つの異なる脳シャトル構築物を示す。構築物間の差異は、構築物がTfR1に結合する場合に、それらがin vivoでのFcγR結合にどのように影響を及ぼすかを調査するための、カーゴFabの欠失である。
図6Bは、3つの構築物を同じ研究において5mg/kgで試験した場合の結果を示す。mBS-2Fab(BS-mAb;三角形)により、FIRが誘引されなかった。一方、両カーゴFabを欠く構築物は、最も強い効果(正方形)を有した。1つのカーゴFab構築物(丸)は、他の2つの構築物の間にあった。
図6Cは、構築物の注射の2時間後での血液中のサイトカインのパネルについての% サイトカイン応答を示す。mBS-noFab(白色バー)のみにより、特定のサイトカインの強い誘引が誘引された。一方、mBS-2Fab(BS-mAb;斜線バー)は、実質的な効果を有さなかった。
図6Dは、BS-sFabの2つの用量、5mg/kg(白三角形)及び20mg/kg(黒丸)並びに媒体群(黒三角形)を比較したものである。BS-sFabについて、20mg/kgではわずかかつ非常に一時的に体温が低下した。
図6Eは、BS-noFab構築物と比較して、標準的な抗TfR1 mAbについての体温低下によりモニタリングされたFIRを示す。興味深いことに、BS-noFab(正方形)により、はるかに強力にFIRが誘引された。媒体群(三角形)を含めた。
【
図6-3】
図6A~6Eは、エフェクター機能を有する抗TfR1脳シャトル構築物により、初回注入反応及びサイトカイン誘引が減弱されることを示す。
図6Aは、試験のために操作され、産生された3つの異なる脳シャトル構築物を示す。構築物間の差異は、構築物がTfR1に結合する場合に、それらがin vivoでのFcγR結合にどのように影響を及ぼすかを調査するための、カーゴFabの欠失である。
図6Bは、3つの構築物を同じ研究において5mg/kgで試験した場合の結果を示す。mBS-2Fab(BS-mAb;三角形)により、FIRが誘引されなかった。一方、両カーゴFabを欠く構築物は、最も強い効果(正方形)を有した。1つのカーゴFab構築物(丸)は、他の2つの構築物の間にあった。
図6Cは、構築物の注射の2時間後での血液中のサイトカインのパネルについての% サイトカイン応答を示す。mBS-noFab(白色バー)のみにより、特定のサイトカインの強い誘引が誘引された。一方、mBS-2Fab(BS-mAb;斜線バー)は、実質的な効果を有さなかった。
図6Dは、BS-sFabの2つの用量、5mg/kg(白三角形)及び20mg/kg(黒丸)並びに媒体群(黒三角形)を比較したものである。BS-sFabについて、20mg/kgではわずかかつ非常に一時的に体温が低下した。
図6Eは、BS-noFab構築物と比較して、標準的な抗TfR1 mAbについての体温低下によりモニタリングされたFIRを示す。興味深いことに、BS-noFab(正方形)により、はるかに強力にFIRが誘引された。媒体群(三角形)を含めた。
【
図7-1】
図7は、別個のサイトカインパターンが脳シャトル構築物について減少したエフェクター機能を有する標準的な抗TfR1 mAbにより誘引されることを図示する。
図7の左上隅には、基準色(スケール)を示す。ヒートマップは、種々の構築物についての5mg/kg用量での概要を示す。これは、2つのサイトカイン及び種々の構築物についての体温-サイトカイン関係を示す。重要なサイトカインを強調するために、ヒートマップを生成した。特に、2つのサイトカインは、非常に異なって応答した。
【
図7-2】
図7は、別個のサイトカインパターンが脳シャトル構築物について減少したエフェクター機能を有する標準的な抗TfR1 mAbにより誘引されることを図示する。
図7の左上隅には、基準色(スケール)を示す。ヒートマップは、種々の構築物についての5mg/kg用量での概要を示す。これは、2つのサイトカイン及び種々の構築物についての体温-サイトカイン関係を示す。重要なサイトカインを強調するために、ヒートマップを生成した。特に、2つのサイトカインは、非常に異なって応答した。
【
図8-1】
図8A~8Bは、エフェクター機能を有する標準的な抗TfR1 mAbにより、脳シャトル構築物を使用して緩和されるROS活性化が誘引されることを示す。
図8Aは、全身イメージングを使用したROS誘引の検出を示す。
図8Bは、抗TfR1 mAbのみにより、強力な反応が誘引されることを示すROS産生の定量を示す。このことは、FIRデータと一致する。
【
図8-2】
図8A~8Bは、エフェクター機能を有する標準的な抗TfR1 mAbにより、脳シャトル構築物を使用して緩和されるROS活性化が誘引されることを示す。
図8Aは、全身イメージングを使用したROS誘引の検出を示す。
図8Bは、抗TfR1 mAbのみにより、強力な反応が誘引されることを示すROS産生の定量を示す。このことは、FIRデータと一致する。
【
図9-1】
図9A~9Fは、推定FcγR/TfR1結合様式の分子モデリングを図示する。
図9A及び9Dは、標準的なIgG(場合によりC末端抗TfR1 CrossFab融合を伴う)を表わす。
図9B及び9Eは、BS-noFab(Fc抗TfR1 CrossFab C末端融合)を表わす。
図9C及び9Fは、BS-mAb(mBS-2Fab;ターゲット化IgG抗mTfR1 CrossFab C末端融合)を表わす。
図9A~9Cは、エフェクター細胞及びその細胞上のFcγRを上側に、各ターゲット(TfR1及びプラークそれぞれ)を下側に有する側面図を示す。
図9D~9Fは、エフェクター細胞膜の基底外側上の上面図を示し、
図9A~9Cに示される複数の複合体が相互作用パートナーの平面において横方向にクラスタリングすることができる程度を近似する。
図9A及び9Dは、標準的なIgGがその治療ターゲットに結合している間に、エフェクター細胞上での標準的なIgGとFcγRとの相互作用が可能であることを示す。また、
図9A及び9Dは、標準的なIgGのC末端における更なるBSモジュール(抗TfR1 CrossFab)の存在が、FcγR結合を妨害しないことも示す。
図9C及び9Fは、BS-mAbがTfRに結合している間に、BS-mAbとエフェクター細胞上のFcγRとの相互作用が不可能であることを示す。
【
図9-2】
図9A~9Fは、推定FcγR/TfR1結合様式の分子モデリングを図示する。
図9A及び9Dは、標準的なIgG(場合によりC末端抗TfR1 CrossFab融合を伴う)を表わす。
図9B及び9Eは、BS-noFab(Fc抗TfR1 CrossFab C末端融合)を表わす。
図9C及び9Fは、BS-mAb(mBS-2Fab;ターゲット化IgG抗mTfR1 CrossFab C末端融合)を表わす。
図9A~9Cは、エフェクター細胞及びその細胞上のFcγRを上側に、各ターゲット(TfR1及びプラークそれぞれ)を下側に有する側面図を示す。
図9D~9Fは、エフェクター細胞膜の基底外側上の上面図を示し、
図9A~9Cに示される複数の複合体が相互作用パートナーの平面において横方向にクラスタリングすることができる程度を近似する。
図9A及び9Dは、標準的なIgGがその治療ターゲットに結合している間に、エフェクター細胞上での標準的なIgGとFcγRとの相互作用が可能であることを示す。また、
図9A及び9Dは、標準的なIgGのC末端における更なるBSモジュール(抗TfR1 CrossFab)の存在が、FcγR結合を妨害しないことも示す。
図9C及び9Fは、BS-mAbがTfRに結合している間に、BS-mAbとエフェクター細胞上のFcγRとの相互作用が不可能であることを示す。
【
図9-3】
図9A~9Fは、推定FcγR/TfR1結合様式の分子モデリングを図示する。
図9A及び9Dは、標準的なIgG(場合によりC末端抗TfR1 CrossFab融合を伴う)を表わす。
図9B及び9Eは、BS-noFab(Fc抗TfR1 CrossFab C末端融合)を表わす。
図9C及び9Fは、BS-mAb(mBS-2Fab;ターゲット化IgG抗mTfR1 CrossFab C末端融合)を表わす。
図9A~9Cは、エフェクター細胞及びその細胞上のFcγRを上側に、各ターゲット(TfR1及びプラークそれぞれ)を下側に有する側面図を示す。
図9D~9Fは、エフェクター細胞膜の基底外側上の上面図を示し、
図9A~9Cに示される複数の複合体が相互作用パートナーの平面において横方向にクラスタリングすることができる程度を近似する。
図9A及び9Dは、標準的なIgGがその治療ターゲットに結合している間に、エフェクター細胞上での標準的なIgGとFcγRとの相互作用が可能であることを示す。また、
図9A及び9Dは、標準的なIgGのC末端における更なるBSモジュール(抗TfR1 CrossFab)の存在が、FcγR結合を妨害しないことも示す。
図9C及び9Fは、BS-mAbがTfRに結合している間に、BS-mAbとエフェクター細胞上のFcγRとの相互作用が不可能であることを示す。
【0218】
【0219】
本明細書で引用されたこれら及び全ての他の特許及び非特許文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0220】
実施例
実施例1
脳シャトル構築物
抗体構築物を、IgG重鎖及び軽鎖それぞれをコードするcDNAをほ乳類発現ベクターにクローニングすることにより産生した。全ての抗体定常領域は、使用された抗体に応じて、ヒトであり、可変領域は、ヒト又はラットであった。Fc C末端へのFab融合を重鎖及び軽鎖がG4SリンカーによりIgG重鎖の3’末端に、再度G4Sリンカーを介して連結された、一本鎖Fab構築物を融合することにより達成した。ノブ-into-ホール技術(Ridgway et al., 1996)を使用して、非対称構築物を得た。構築物をHEK293又はCHO-K1細胞中で発現させ、標準的なプロテインA親和性、続けて、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により精製した。抗体調製物を、キャピラリー電気泳動及びSECによりルーチンに分析し、エンドトキシン含量を測定した。
【0221】
下記構築物を相応に産生し、本明細書で報告された実施例において使用した。
【0222】
【0223】
実施例2
表面プラズモン共鳴によるFcγレセプターの結合評価
FcγR測定のために、SPR捕捉アッセイを使用した。約5000共鳴単位(RU) 捕捉系(10μg/ml Penta-His;Quiagen cat. No.34660)を、GE Healthcareにより供給されるアミンカップリングキットを使用することにより、pH5.0でCM5チップ(GE Healthcare BR-1005-30)上にカップリングした。サンプル及び系バッファーをPBS-T+pH7.4とした。フローセルを25℃に設定し、サンプルブロックを12℃に設定し、ランニングバッファーで2回プライミングした。FcγR-Hisレセプターを、5μg/ml 溶液を10μl/分の流量で60秒間注入することにより捕捉した。結合は、100nM 抗体サンプルを10μl/分の流量で180秒間注入することにより測定した。表面を10mM グリシン(pH1.7)溶液により、10μl/分の流量で30秒洗浄することにより再生した。このアッセイにより、IgG又はBS-IgG構築物のFcγRへの結合を決定した。
【0224】
実施例3
初代ヒト細胞の単離及び食作用アッセイ
単球をフィコール密度遠心分離により、バフィーコート(地方血液バンクから取得)からヒト末梢血単核細胞(PBMC)から得た。非単球の枯渇(ネガティブ選択)によるヒト単球の単離のための単球単離キットIIからなるMACS(登録商標)分離(Miltenyi Biotec, Germany #130-091-153)を使用する磁気ラベルにより、単球をPBMCから単離した。単球を、0.3g/mL ヒトマクロファージコロニー刺激因子(GenScript Z02001)を加えることによりマクロファージに分化させた。分化したヒトマクロファージを、100U/mL ペニシリン及び100μg/mL ストレプトマイシン(Gibco #15140-122)を含むRPMI 1640(Gibco #61870-044)培地中で培養した。分化したマクロファージを、凍結切片化した死後ヒトAD脳切片を基質として利用する抗体依存性細胞食作用アッセイにおいてインキュベーションした。大脳皮質領域(ブラーク病期VI)からのヒトAD脳組織切片を公称厚み20μmで調製し、除去可能なポリ-D-リシン被覆2ウェル培養ディッシュ(Biocoat(商標) #40629)上に置いた。脳切片を異なる濃度のGantenerumabで1時間プレインキュベーションし、PBSで洗浄した後、ヒト初代細胞を0.8~1.5×106個/mLで播種し、37℃、5% 二酸化炭素で2~3日間培養した。無関係のヒトIgG1(Serotec, PHP010)抗体を追加の対照として使用した。アミロイドプラークの検出を2% ホルムアルデヒドで10分間固定し、洗浄し、AlexaFluor488にコンジュゲートさせたBAP2により、10g/mLで室温において1時間染色した後に行った。マクロファージの二重ラベリングを上記されたように、Aに対する抗体及びGantenerumab並びにLAMP2に対するリソソームマーカー抗体(RDI Division of Fitzgerald Industries Intl.)により行った。
【0225】
実施例4
免疫組織化学
PBS潅流後に脳を調製し、the brain atlas of Paxinos and Franklinに従って、矢状凍結切片を外側約1.92~1.68ミリメートルで切断した。脳を、Leica CM3050 Sクライオスタットを使用して-15℃で20ミクロンの公称厚みで切片化し、予冷ガラススライド(Superfrost plus, Menzel, Germany)上に置いた。各脳について、80ミクロン間隔の3つの切片を同じスライド上に置いた。
【0226】
切片をPBS中において5分間再水和し、続けて、-20℃に予冷した100% アセトンに2分間浸漬した。全ての更なる工程を室温で行った。脳切片を有するスライドをPBS(pH7.4)で洗浄し、Ultra Vブロック(LabVision)中で5分間連続インキュベーションし、続けて、PBSで洗浄し、PBS中の2% 正常ヤギ血清を含むパワーブロック溶液(BioGenex)中で20分間インキュベーションすることにより、非特異的結合部位をブロッキングした。スライドをPBS(pH7.4)中の2% 正常ヤギ血清中における20μg/mlの濃度で、Alexa Fluor 555染料(#A-21433, Lot 54699A, Molecular Probes)にコンジュゲーションさせた親和性精製ヤギ抗ヒトIgG(重鎖及び軽鎖特異的)である二次抗体と1時間直接インキュベーションした。PBSで徹底的に洗浄した後、プラーク局在を、パワーブロック溶液(BioGenex)及び10% 正常ヒツジ血清を含むPBS中において、0.5μg/mlで1時間、Alexa Fluor 488染料にコンジュげーションさせたAベータに対するRoche社内マウスモノクローナル抗体であるBAP-2とのインキュベーションによる、Aベータプラークのためのダブルラベリングにより評価した。PBS洗浄後、リポフスチンの自己蛍光を50mM 酢酸アンモニウム(pH5)中の4mM CuSO4において30分間インキュベーションすることによるクエンチングにより減少させた。スライドを二重蒸留水ですすいだ後、スライドをConfocal Matrix(Micro Tech Lab, Austria)で包埋した。
【0227】
実施例5
顕微観察及び画像処理
前頭皮質(一次運動皮質の領域)にプラーク含有領域を有する各PS2APP-マウスの脳の各切片から3つの画像を取得した。画像をピンホールが1 Airyに設定されたLeica TCS SP5共焦点システムにより記録した。Alexa Fluor 488染料で免疫ラベルされたプラークを同じスペクトル条件(488nm励起及び500~554nmバンドパス発光)で、30%レーザ出力において、調節された光電子増倍管ゲイン及びオフセット(典型的には、それぞれ770V及び-0%)で捕捉した。組織切片の接近可能な表面上の結合した二次Alexa Fluor 555抗体を、適用した検出抗体の発光波長範囲をカバーする570~725nmの範囲のウインドウにおいて、561nm励起レーザ線で記録した。試験したヒト抗Aβ抗体についての比較強度測定、特に、レーザ出力、走査速度、ゲイン及びオフセットを可能にするために、画像取得のための機器設定を一定に保った。レーザ出力を30%に設定し、PMTゲインの設定を、典型的には、850Vとし、公称オフセットを0%とした。これにより、同じ設定でかすかに染色されたプラーク及び強く染色されたプラークの両方の視覚化が可能となった。取得周波数を400Hzとした。共焦点スキャンを水中において、HCX PL APO 20×0.7 IMM UV対物レンズを使用して、512×512ピクセル解像度で単一光学層として記録し、垂直軸における光学測定深さを相互作用的に制御して、組織切片内でのイメージングを確実にした。前頭皮質の層2~5に位置するアミロイド-βプラークを画像化し、蛍光強度を定量した。
【0228】
実施例6
統計分析
免疫陽性領域をTIFF画像として可視化し、ImageJバージョン1.45(NIH)で蛍光強度及び面積(ピクセルで測定)の定量化のために処理した。定量化のために、バックグラウンド強度5を全ての画像において差し引き、5平方ピクセルより小さい陽性領域をフィルター除去した。選択された等表面の総蛍光強度を単一の個々の陽性領域の強度の合計として決定し、平均ピクセル強度を、総強度を分析されたピクセルの数で割って計算した。平均及び標準偏差値を、Microsoft Excel(Redmond/WA, USA)を使用して、各動物について3つの異なる切片から撮影した9枚の写真から得られた全ての測定等表面から計算した。統計分析を、群比較のためのスチューデントt検定又はマン-ホイットニー検定を使用して行った。
【0229】
実施例7
薬物動態研究
体重平均30g C57BL6オスマウスを使用して、mAb31及びBS-mAb31両方の薬物動態調査を行った。各抗体を、5及び10mg/kgそれぞれでマウスに静脈内ボーラス投与した(薬剤あたりにn=3匹のマウス)。K2 EDTA血漿サンプルを、各マウスについて2週間にわたる完全な血漿薬物動態プロファイルを可能にするために、キャピラリーマイクロサンプリングを使用して、種々の時点で調製した。サンプルを、抗ヒトCH1/CL1(カッパ)捕捉/検出免疫アッセイを使用して分析し、薬剤の量を決定した。濃度-時間プロファイルを、Pharsight Phoenix 64を使用し、2コンパートメント薬物動態モデルを使用して分析した。ついで、慢性投与プロファイルを、使用された適切な用量での単回用量PKデータから決定された薬物動態パラメータを使用してシミュレーションした。
【0230】
実施例8
ADCCアッセイ
トランスフェリンレセプター1発現(TfR1+)BaF3細胞(DSMZ, #CLPZ04004)を異なる抗体及び抗体融合分子により誘引された抗体依存性細胞傷害性(ADCC)実験のためのターゲット細胞として使用した。簡潔に、1×104個 BaF3細胞を、丸底96ウェルに播種し、場合により、ヒトNK92エフェクター細胞(高親和性CD16クローン7A2F3;Roche GlycArt)と、示された抗体の存在下又は非存在下で、3:1のエフェクター/ターゲット比で共培養した。4時間のインキュベーション(37℃、5% CO2)後、細胞傷害性を死んだ細胞/死にかけている細胞からの乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出により測定して評価した。このために、細胞を250×gで5分間遠心分離し、上清 50μlを平底プレートに移した。LDH反応混合物(Roche LDH反応混合物、cat. no. 11644793001;Roche Diagnostics GmbH) 50μlを加え、反応物を37℃、5% CO2で20分間インキュベーションした。続けて、吸光度をTecan Sunriseリーダで波長492/620nmにおいて測定した。
【0231】
全てのサンプルをトリプリケートで試験し、特異的殺傷/ADCCは、下記計算及び対照に基づいた。
-ターゲット細胞(+培地)のみ
-最大LDH放出:ターゲット細胞+3% Triton-X
-自発的放出:ターゲット細胞+NK細胞(E:T 3:1)
-% 特異的ADCC/溶解を、下記項により計算した。
【0232】
【0233】
実施例9
単球活性化アッセイ
96ウェル細胞培養プレートをAβ1-42ペプチド(Bachem;PBS中20μg/mL)により、一晩被覆し、ついで、抗Aβ抗体溶液と共に37℃で1時間インキュベーションした。プレートを洗浄した後、Fcγレセプターをアップレギュレーションするために、400U/mL インターフェロン-γで一晩予備活性化した105個 U-937ヒト単球をウェルあたりに加え、プレートを37℃/5% CO2で24時間インキュベーションした。翌日、上清を、製造メーカーのプロトコル(R&D Systems)に従って、IL-8及びIP-10濃度の決定のためにELISAプレートに移した。
【0234】
実施例10
FACS分析によるFcγRx結合の確認
IgG及びBS-IgGが細胞発現FcγRサブタイプに結合可能であったかどうかを確認するために、FcγRI(CHO-K1_flhFcγRI)、FcγRIIa(CHO-K1_flhFcγRIIa_LR)、FcγRIIB(CHO-K1_flhFcγRIIb)又はFcγRIIIa(CHO-K1_flhFcγRIIIa)を安定に発現する自社生成されたリコンビナントCHO細胞クローンを使用した。CHO細胞を補充EMDM(PAN Biotech)中において、標準的な細胞培養条件に従って増殖させた。1×105個 CHO細胞/ウェルを96ウェル丸底プレートに播種し、氷上で45分間、培地中の異なる濃度の示された抗体変異体と共にインキュベーションした。ヒトIgG1(Sigma, #I5154)をアイソタイプ対照として使用した。洗浄後、細胞を培地 200μlに再懸濁し、10μg/ml AlexaFluor488コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG-F(ab’)2フラグメント(Jackson, #109-546-006)と共に、氷上で更に45分間インキュベーションした。ついで、細胞を培地で2回洗浄し、培地 200μlに再懸濁し、FACS-Canto-II(BD)において、各FcγRIIへの結合について分析した。
【0235】
実施例11
FcγRヒト化マウスにおける体温研究
FcγRヒト化マウスを利用して、注入関連副作用を決定した。in vivo体温測定のために、遠隔体温測定システムを使用した。DAS-7006リーダシステムと組み合わせてBMDS IPTT300温度遠隔測定システムを使用した。このチップベースの遠隔測定システムを実験の約2週間前にマウスに埋め込んだ。実験の前に、全ての個体のベースライン体温を測定した。i.v.試験化合物注入後、体温を5分間隔で測定した。
【0236】
実施例12
サイトカインアッセイ及び分析
血清サイトカインレベルを、炎症性マーカーの40プレックス分析を提供するR&DサイトカインアレイパネルAを使用して評価した。プールした血清 200マイクロリットルを群あたりに使用した。このアッセイを製造メーカーのプロトコールに従って行った。分析のために、測定された全ての相対強度を% 膜内部陽性対照スポットとして表現する。通常、表示された値を、目的の条件からバッファー対照を差し引くことにより生成した。
【0237】
実施例13
全身ROSイメージング
全身ROSイメージングのために、PerkinElmer IVISスペクトルCTを使用した。ROS検出を、PerkinElmer炎症プローブを介して行った。簡潔に、マウスに、PerkinElmer炎症プローブを腹腔内に、それらの意図される測定時点の10分前に注入した。取得の直前に、マウスに試験構築物を注入し、イソフルラン麻酔下で画像化した。画像取得を5分の露光時間、F1アパーチャ及び媒体ビニングにより行った。
【0238】
実施例14
分子モデリング
IgG及びIgG由来の構造を、PDB ID 1HZH(27)を有する完全なIgG結晶構造に基づいて形成した。可変領域の構造を、抗体相同性モデリングプロトコルMoFvAb(28)によりモデリングした。Fc領域-FcγR結合様式を、FcγRIIa(PDB ID 3RY6(29))との複合体におけるIgG1のヒトFc領域の結晶構造から採用した。mTfR1ホモダイマーの相同性モデルを、PDB ID 1CX8(30)(77% 配列同一性、88% 配列類似性)を有するhTfR1細胞外ドメインの3.2Å 結晶構造からモデリングした。抗mTfR1脳シャトルFabのmTfR1への結合様式をペプチドマッピング実験により特定されたエピトープ配列に基づいて近似させた。抗体ヒンジコンフォメーション(Cα原子のみ)を近年公表された(31)IgG溶液NMR状態のセットから採用し、モデルの残り部分との立体衝突を最少限にするように選択された。全ての分子モデルを、Dassault SystemesによるBIOVIA Discovery Studio 4.5を使用して生成し、可視化し、GNU画像操作プログラムであるGIMPを使用して配置し、後処理した。
【0239】
実施例15
結合研究
まず、4つの異なるFcγRを固定化ターゲットとして流路に固定化した表面プラズモン共鳴(SPR)ベースのアッセイを使用した。SPRの結果から、両構築物が低及び高親和性レセプターと同様に、それに従って、異なるFcγRに結合することが示された(
図1B及び1Cを参照のこと)。
【0240】
第二に、異なるヒトFcγRを細胞上で過剰発現させる細胞結合実験を行った。BS-mAb31及び親mAb31の両方が等しく良好に結合し(
図1D及び1E)、順序は、SPRデータと一致した。
【0241】
Aβについての抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)アッセイを表面に被覆し、単球細胞を、FcγRを提示するエフェクター細胞として使用した。2つの異なるサイトカインを細胞傷害性についてのリードアウトとして使用した。BS-mAb31は、親mAb31に匹敵する効力を有することが見出された(
図2B及び2Cを参照のこと)。
【0242】
食作用アッセイにおいて、初代ヒトエフェクター細胞と共に培養された死後アルツハイマー病(AD)脳組織切片を利用した(14)。AD脳切片を異なる濃度のBS-mAb31及び親mAb31と共にプレインキュベーションし、続けて、エフェクター細胞とインキュベーションした。両抗体について、Aβプラークロードの濃度依存性の減少が観察された(
図2D及び2Kを参照のこと)。
【0243】
実施例16
mAb31の脳におけるin vivo有効性
トランスジェニックアミロイドーシスマウスモデル(APP London: APP V717I)(18)において、BS-mAb31構築物の親mAb31に対するプラーク減少特性を調査した。血漿暴露は、mAb31と比較して、BS-mAb31についてより低かった(
図3Aを参照のこと)。
【0244】
週1回の投与に基づく4か月間の有効性研究を設計し、血漿曝露をシミュレーションした(
図3Bを参照のこと)。毎週4か月の投与後の抗Aβ mAb及びその脳シャトル構築物の大脳皮質におけるターゲット結合を調査した。BS-mAb31により、はるかに多くのプラーク修飾が検出可能であった(
図2C及び2D)。この4か月間の慢性処置研究では、脳シャトルの血漿曝露がかなり低かったにもかかわらず、BS-mAb31処置マウスにおいて、媒体対照及び等モル低用量のmAb31と比較して、大脳皮質及び海馬におけるAβアミロイドプラークの顕著な減少が見られた(
図2E及び2Fを参照のこと)。このデータから、mAb31のC末端に付着したBSモジュールは、ミクログリア細胞上のFcγRとの相互作用を妨害しないことが示される。それにより、Aβプラーククリアランスは、治療IgGの増強された脳暴露により、顕著に改善されたin vivo効力とは別に促進される(9)。
【0245】
実施例17
TfR1結合様式により、FcγRとの結合が減弱される。
BS-mAb31及び抗TfR1 mAbのin vitro TfR1結合特性を調査した。BS-mAb31構築物は、C末端BSモジュールとして抗TfR1 Fabを含有する。BS-mAb31(
図4A)及び二価のネイティブな抗TfR1 mAb(
図4B)のTfR1への結合は異なり、治療実体(IgG)及びFc領域が環境に向かって異なる空間的提示をもたらすことが見出された。構築物がTfR1に結合した場合のFc領域の機能性を、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)アッセイを使用して決定した。このアッセイでは、一方の細胞が、TfR1を発現し、他方の細胞(ヒトNK92)が、FcγRIIIAを発現するエフェクター細胞の機能を有する。ADCCは、免疫系のエフェクター細胞がターゲット細胞を能動的に溶解する細胞媒介性免疫防御のメカニズムであり、その膜表面抗原は、特異性抗体に結合する。
【0246】
相互作用を、3つの異なるIgG構築物を使用して分析した。完全なエフェクター機能を有する標準的な抗TfR1 mAbは、強力なADCC応答を生じた。抗TfR1 1Fab mAbも、ADCC応答を生じたが、アビッド結合の喪失により、より高い濃度であった(
図4C)。全ての細胞傷害効果は、Fc領域により媒介された。エフェクター機能を有さない抗TfR1 mAb(Fc領域におけるP329G/L234A/L235A突然変異)を使用して確認した。この抗体は、このADCCアッセイにおいて効果を有さなかった。興味深いことに、mAb31の重鎖のC末端に融合した1つ又は2つのBSモジュールを有する2つの脳シャトル構築物は、細胞傷害性を全く有さなかったか又は非常に低レベルであった(
図4C)。最も高いADCC効果を引き起こした標準的な抗TfR1 mAbの濃度では、抗TfR1 1Fab mAbについてはわずかな効果しか検出されなかったが、他の全ての構築物は、検出可能な効果を有さなかった(
図4D)。
【0247】
実施例18
初回注入反応及びサイトカイン誘引
BS抗体がBSモジュールを介してTfR1に結合する場合に、エフェクター機能がどのような結果を有するであろうかを決定した。
【0248】
第一段階では、これをhuFcγRトランスジェニックマウス系で試験した。要するに、このモデルを4つのヒト対応物(FCGR2A、FCGR3A、FCGR2C及びFCGR3B)による2つの活性化低親和性マウスFcγR遺伝子(Fcγr3及びFcγr4)の遺伝子ターゲット化置換により産生した(
図5A)。これにより、エフェクター機能のトリガーをもたらすヒト/ヒト化mAbとヒトFcγRとの間の可能性のある相互作用をin vivoで評価するのに適した系が提供される。このモデルは、初回注入反応(FIR)をモニタリングするために遠隔測定温度リードアウトを使用する(
図5B)。既に上記で概説されたように、FIRをFcγRとの相互作用の効果及びエフェクター免疫細胞のリクルートにより誘引する。このモデルにおける無線記録システムにより、動物が研究中に自由に動くことが可能となる。
【0249】
まず、従来の抗TfR1 mAbの注射により誘引されたFIRを測定した。
図5Cに示されるように、従来の抗TfR1 mAbの注射により、体温の濃度依存的かつ一過性の低下がもたらされた。同低下は、約2時間以内に正常レベルに戻った。
【0250】
第二に、従来の抗TfR1 mAbの一価形態の注射により誘引されたFIRを決定した。従来の抗TfR1 mAbの一価形態は、TfR1に対するFabアームを1つのみ含有する。また、このmAbにより、FIRが強く誘引された。
【0251】
第三に、抗TfR1 mAbを使用してこのモデルで観察されたFIRに対するエフェクター機能の相対的寄与を、FcγR結合に必要な残基においてFc領域に突然変異を有するmAbを使用して決定した(20)。FcγR相互作用を欠くFc領域三重突然変異体P329G/L234A/L235Aは、このモデルにおいて体温低下を示さなかった(
図5D)。これは、Fc領域エフェクター機能排除構築物を使用するin vitroデータにより裏付けられる(
図4C)。
【0252】
抗TfR1 mAbの投与の応答としての種々のサイトカインのレベルを決定した。特定の細胞シグナル伝達分子は、濃度において強く増加することが見出された(
図5E)。特に、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ケラチノサイト由来サイトカイン(KC)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP-2)及びインターフェロンガンマ誘引タンパク質10(IP-10)は、強い応答を示した。これらのサイトカイン応答は、とりわけ、好中球活性化と相関させることができる。温度リードアウト実験において見られるように、除去されたFc領域エフェクター機能を有するIgG構築物を使用した場合、サイトカイン誘引に対する効果は、実質的に生じなかった(
図5E)。
【0253】
実施例19
脳シャトル結合様式の効果
FIR誘引を評価するために、3つの異なるBS-mAb構築物をhuFcγRトランスジェニックマウスに投与した(
図6A)。これらは全て、ヒトのネイティブなIgG1エフェクター機能を有したが、治療的に有効なFabの数(=結合部位)が異なっていた。
【0254】
予想外に、標準的なBS-mAb構築物について、FIRが観察されなかったことが見出された。このことは、mBS-2Fabがin vivoにおいて、末梢でFcγR活性化をトリガーしないことを示す(
図6Bを参照のこと)。
【0255】
一方又は両方の治療ターゲット結合FabアームがmAb部分に欠損している2つの構築物を設計した(
図6Aを参照のこと)。これらの構築物は、huFcγRトランスジェニックマウスに適用された場合、急速かつ強力な体温低下によりスコア化されるように、明らかにFIRを引き起こした(
図6B)。体温低下は、両方のFabアームを欠く構築物(BS-noFab)についてさらに顕著であった。異なる構築物について観察された体温低下を、FIRの間に誘発されたサイトカインパターンの分析によりさらに実証した。
図6Cに示されるように、体温低下を引き起こす構築物BS-noFabのみが、サイトカインレベルの上昇も示す。これとは対照的に、標準的なBS-mAb構築物は、huFcγRマウスに投与された場合に、サイトカインアップレギュレーションを引き起こさなかった(
図6Cを参照のこと)。BS-mAbについてのサイトカインプロファイルは、エフェクター無効構築物で得られたプロファイルと同等である(
図5Dを参照のこと)。
【0256】
用量-応答も、BS-mAb構築物について調査し(
図6D)、最高用量(20mg/kg)で少量かつ一過性の効果が検出可能であった。これは、プラーク形成を減少させる非常に有効な治療用量よりも10倍高い用量である(
図3E及び3F)。
【0257】
実施例20
特異的サイトカインシグネチャー
種々のmAb構築物についてのサイトカインプロファイルのより詳細な分析を行った。重要なサイトカインを強調するためにヒートマップを作成した(
図7の左上におけるスケール)。特に、2つのサイトカインが、非常に異なって応答した。
【0258】
血管内全身光学イメージングにより、脳シャトル構築物がROS産生を減弱させることが示される。
反応性酸素種(ROS)は、化学的に反応性の化学種である。標準的な抗TfR1 mAb及び脳シャトル構築物の末梢投与後、全身をROS種の誘引についてスキャンした。
図8Aにおいて、代表的な画像から、抗TfR1 mAbとmBS-2Fab構築物との間の差異が示される。データを定量化し、mBS-2Fabは、媒体群と比較して顕著な差を示さなかった(
図8B)。
【0259】
実施例21
異なるmAb構築物の構造モデリング
細胞表面発現TfR1におけるmAbターゲット結合又はBSモジュール結合のいずれかにより提示される3つの異なる構築物間のFc領域-FcγR相互作用を、分子構造情報を使用して分析した。
図9に、主な観察結果を要約する。
【0260】
まず、1つの細胞表面上のその治療ターゲットに結合した標準的なBS-mAb及び隣接する細胞表面上に提示されるFcγRと結合する可能性をモデリングした(
図9A及び9D)。このモデルにより、FcγRへの自由なアクセス及びクラスタリングが予測された。同様に、
図9A及び9Dに、標準的なIgGのC末端における更なるBSモジュール(抗TfR1 CrossFab)の存在により、FcγR結合が妨害されないことも示す。
【0261】
第二に、in vivoで非常に活性であるBS-noFab構築物をモデリングした。この構築物は、TfR1に結合している間に、FcγRに好ましい様式で提示され、そのターゲットに結合した場合に、標準的なmAbと同様の方法でクラスタリングを可能にした(
図9B及び9E)。
【0262】
第三に、脳シャトル構築物(BS-mAb=mBS-2Fab)をモデリングした。このモデルは、治療抗原結合FabがFcγRに非常に近接して位置し、特に、BS-scFab/FcγR複合体の密接なクラスタリングを妨げると考えられるという、本明細書で報告されたin vivoでの知見を支持することが見出された(
図9C及び9F)。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-01-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静脈内、皮下又は筋肉内投与による神経障害の処置のための医薬の製造ににおける二重特異性抗体の使用であって、
二重特異性抗体は、
i)Fc領域と、
ii)神経障害に関する第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位と、
iii)ヒトトランスフェリンレセプターに特異的に結合する1つの結合部位とを含み、
ここで、処置は、第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する2つの結合部位のうち1つを欠いている同じ抗体と比較して、投与後の副作用を低減し、
ここで、副作用は、血管拡張、気管支収縮、喉頭浮腫、心圧低下および低体温からなる群より選択される1種以上であり、
二重特異性抗体は、
i)第1の軽鎖可変ドメイン及び第1の重鎖可変ドメインを含む第1の抗体軽鎖及び第1の抗体重鎖のペアであって、ヒトCD20、ヒトタウタンパク質、リン酸化ヒトタウタンパク質、ヒトアルファ-シヌクレイン及びヒトアミロイドベータタンパク質からなる群より選択される脳ターゲットに特異的に結合する第1の結合部位を形成するペア、
ii)第2の軽鎖可変ドメイン及び第2の重鎖可変ドメインを含む第2の抗体軽鎖及び第2の抗体重鎖のペアであって、第1の結合部位と同じ脳ターゲットに特異的に結合する第2の結合部位を形成するペア、
iii)第3の軽鎖可変ドメイン及び第3の重鎖可変ドメインを含む、さらなるCrossFab抗体フラグメントであって、ヒトトランスフェリンレセプターに特異的に結合する第3の結合部位を形成する抗体フラグメント、及び
iv)ヒトIgG1サブクラスのエフェクター機能コンピテントFc領域
を含み、
ここで、iii)のさらなる抗体フラグメントは、i)又はii)の抗体重鎖のC末端にペプチドリンカーを介してコンジュゲーションしており、そして
ヒトトランスフェリンレセプターに特異的に結合する結合部位は、
(a)配列番号:06又は07のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:08又は09又は10のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:11、12又は13のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:14又は15のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:16のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号:17又は18のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、
使用。
【請求項2】
投与が、注入によるものである、請求項1記載の使用。
【請求項3】
処置が、第1の(細胞表面)ターゲットに特異的に結合する前記結合部位の1つ又は2つを欠く同じ抗体と比較して、投与後の副作用の低減を有する、請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
神経障害が、神経障害、アミロイドーシス、ガン、眼の疾患又は障害、ウイルス又は微生物の感染、炎症、虚血性疾患、神経変性疾患、てんかん発作、行動障害、リソソーム蓄積症、レビー小体病、ポストポリオ症候群、Shy-Draeger症候群、オリボポン小脳萎縮症、パーキンソン病、多系統萎縮症、線条体変性、タウオパシー、アルツハイマー病、核上性麻痺、プリオン病、ウシ海綿状脳症、スクレイピー、クロイツフェルト-ヤコブ症候群、クールー病、Gerstmann-Straussler-Scheinker病、慢性消耗性疾患及び致死的な家族性不眠症、球麻痺、運動ニューロン疾患、神経系不変性障害、カナバン病、ハンチントン病、神経セロイドリポフスチン症、アレキサンダー病、トゥレット症候群、メンケス病、コッカイン症候群、ハレルヴォーデン-スパッツ症候群、ラフォラ病、レト症候群、肝臓病変性、レッシュ-ナイハン症候群、ウンベルリッヒ-ランドボルグ症候群、認知症、ピック病、脊髄小脳運動失調症、CNS及び/又は脳のガン(体内の他の箇所のガンに起因する脳転移を含む)からなる群より選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
第1のターゲットが、ヒトタウタンパク質、リン酸化ヒトタウタンパク質、ヒトグルコセレブロシダーゼ、ヒトアルファ-シヌクレイン及びヒトアミロイドベータタンパク質からなる群より選択され、ここで、神経障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病及びタウオパシーからなる群より選択される、請求項4記載の使用。
【請求項6】
患者への投与時に二重特異性抗体により誘発されるADCCが、第1のターゲットに特異的に結合する1つの結合部位及び第2のターゲットに特異的に結合する1つの結合部位のみを有する二価の二重特異性抗体により誘発されるADCCより低い、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
ADCCが、10倍以上低い、請求項6記載の使用。
【請求項8】
副作用が、低体温である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
低体温が、治療用量で0.5℃未満の体温低下に低減される、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
体温の低下が、投与後60分以内である、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
c)抗体重鎖の1つが、突然変異T366W及び場合によりS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であり、他の抗体重鎖が、突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、
d)両抗体重鎖が、突然変異I253A、H310A及びH435Aを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、
e)両抗体重鎖が、突然変異M252Y、S254T及びT256Eを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、又は
f)両抗体重鎖が、突然変異T307H及びN434Hを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の抗体重鎖であり、ここで、c末端リシン又はグリシン-リシンジペプチドが、一方又は両方の重鎖に、独立して存在し又は存在しないことができ、
ここで、C末端リシン又はグリシン-リシンジペプチドが、一方又は両方の重鎖に、それぞれ独立して存在し又は存在しないことができる、請求項2~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
注入速度が、≧50ml/hである、請求項2記載の使用。
【請求項13】
注入速度が、≧100ml/hである、請求項2記載の使用。
【請求項14】
注入速度が、≧150ml/hである、請求項2記載の使用。
【請求項15】
第1のターゲットへの結合部位が両方とも、抗体重鎖のN末端にあり、第2のターゲットへの結合部位が、1つの抗体重鎖のC末端にある、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
抗体が、
i)一対の第一抗体軽鎖および第一抗体重鎖と、
ii)一対の第2の抗体軽鎖および第2の抗体重鎖と、
iii)scFv、Fab、scFab、dAbフラグメント、DutaFabおよびCrossFabからなる群から選択されるさらなる抗体フラグメントとを含み、
ここで、i)およびii)の一対の抗体鎖が、第1のターゲットに特異的に結合し、iii)のさらなる抗体フラグメントが、第2のターゲットに特異的に結合する、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
第1のターゲットが、ヒトCD20、ヒトタウタンパク質、リン酸化ヒトタウタンパク質、ヒトグルコセレブロシダーゼ、ヒトアルファ-シヌクレイン及びヒトアミロイドベータタンパク質からなる群より選択され、第2のターゲットが、ヒトトランスフェリンレセプター1である、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
第1のターゲットが、ヒトタウタンパク質、リン酸化ヒトタウタンパク質、ヒトグルコセレブロシダーゼ、ヒトアルファ-シヌクレイン及びヒトアミロイドベータタンパク質からなる群より選択され、ここで、神経障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病及びタウオパシーからなる群より選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
結合部位が、抗体重鎖可変ドメイン及び抗体軽鎖可変ドメインペアである、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
患者への投与時に二重特異性抗体により誘発されるADCCが、第1のターゲットに特異的に結合する1つの結合部位及び第2のターゲットに特異的に結合する1つの結合部位のみを有する二価の二重特異性抗体により誘発されるADCCより低い、請求項1~19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
a)抗体重鎖が、ヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、
b)抗体重鎖が、ヒトサブクラスIgG4の全長抗体重鎖であるか、
c)抗体重鎖の1つが、突然変異T366W及び場合によりS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であり、他の抗体重鎖が、突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、
d)両抗体重鎖が、突然変異I253A、H310A及びH435Aを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、
e)両抗体重鎖が、突然変異M252Y、S254T及びT256Eを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の全長抗体重鎖であるか、又は
f)両抗体重鎖が、突然変異T307H及びN434Hを有し、抗体重鎖の1つにおいて突然変異T366W及び場合によりS354Cを、他の各抗体重鎖において突然変異T366S、L368A、Y407V及び場合によりY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の抗体重鎖であり、ここで、c末端リシン又はグリシン-リシンジペプチドが、一方又は両方の重鎖に、独立して存在し又は存在しないことができ、
ここで、C末端リシン又はグリシン-リシンジペプチドが、一方又は両方の重鎖に、それぞれ独立して存在し又は存在しないことができる、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用。
【外国語明細書】