(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046718
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】異方導電性フィルム及び接続構造体
(51)【国際特許分類】
H01R 43/00 20060101AFI20220315BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20220315BHJP
H05K 3/32 20060101ALN20220315BHJP
【FI】
H01R43/00 H
H01R11/01 501C
H05K3/32 B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021215464
(22)【出願日】2021-12-29
(62)【分割の表示】P 2020219026の分割
【原出願日】2016-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2015120626
(32)【優先日】2015-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015108787
(32)【優先日】2015-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 雅男
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 恭志
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 怜司
(57)【要約】
【課題】ファインピッチの接続においても、異方導電性フィルムを用いて安定した接続信頼性を得、かつ導電粒子の過度な密度増加を抑制する。
【解決手段】異方導電性フィルムは、絶縁接着剤層と、該絶縁接着剤層に配置された導電粒子を含む。所定の粒子ピッチの導電粒子の配列軸が、異方導電性フィルムの略フィルム幅方向に延び、該配列軸が異方導電性フィルムの長手方向に所定の軸ピッチで連続的に配列しており、異方導電性フィルムで接続する電子部品の端子配列領域と異方導電性フィルムとを、各端子の長手方向とフィルム幅方向が合うように重ねた場合に、各端子上に3個以上40個以下の導電粒子が存在し且つ各端子を3本以上の配列軸が横切るように、配列軸における粒子ピッチ、配列軸の軸ピッチ、及び配列軸がフィルム幅方向となす角度(以下、配列軸の傾斜角という)が端子の外形に応じて定められている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁接着剤層に導電粒子を配置することを含む、異方導電性フィルムの製造方法であって、
該異方導電性フィルムにおいては、所定の粒子ピッチの導電粒子の配列軸が、異方導電性フィルムの略フィルム幅方向に延び、該配列軸が異方導電性フィルムの長手方向に所定の軸ピッチで連続的に配列しており、異方導電性フィルムで接続する電子部品の端子配列領域と異方導電性フィルムとを、各端子の長手方向とフィルム幅方向が合うように重ねた場合に、各端子上に3個以上40個以下の導電粒子が存在し且つ各端子を3本以上の配列軸が横切るように、配列軸における粒子ピッチ、配列軸の軸ピッチ、及び配列軸がフィルム幅方向となす角度(以下、配列軸の傾斜角という)が端子の外形に応じて定められていることを特徴とする、
異方導電性フィルムの製造方法。
【請求項2】
絶縁接着剤層に導電粒子を配置することを含む、異方導電性フィルムの製造方法であって、
該異方導電性フィルムにおいては、任意に選択した、長さがフィルムの長手方向の5~400μm、幅がフィルム幅の領域において、導電粒子が3~3200個存在し、該領域において所定の粒子ピッチの導電粒子の配列軸が、異方導電性フィルムのフィルム幅方向と斜交し、該配列軸が異方導電性フィルムの長手方向に並列しており、導電粒子の配列軸は、異方導電性フィルムで接続する電子部品の一つの端子に3本以上横切るように配置されていることを特徴とする、
異方導電性フィルムの製造方法。
【請求項3】
異方導電性フィルムで接続する電子部品が、配列ピッチの異なる複数の端子配列領域を有する場合に、配列軸における粒子ピッチ、配列軸の軸ピッチ、及び配列軸の傾斜角が、前記複数の端子配列領域に含まれる端子のうち幅もしくは面積が最小の端子の外形に応じて定められている請求項1又は2記載の異方導電性フィルムの製造方法。
【請求項4】
導電粒子配列領域が、異方導電性フィルムで接続する電子部品の端子配列領域の外形に対応して異方導電性フィルムの長手方向に複数列形成されている請求項1~3のいずれかに記載の異方導電性フィルムの製造方法。
【請求項5】
電子部品のアライメントマークの外形に対応した導電粒子配列領域が、異方導電性フィルムの長手方向に周期的に形成されている請求項1~4のいずれかに記載の異方導電性フィルムの製造方法。
【請求項6】
導電粒子の配列軸として、異方導電性フィルムのフィルム幅方向に対する傾斜角が異なる複数種の配列軸が存在する請求項1~5のいずれかに記載の異方導電性フィルムの製造方法。
【請求項7】
絶縁接着剤層と、該絶縁接着剤層に配置された導電粒子を含み、対向する電子部品の端子間を異方性導電接続するための異方導電性フィルムであって、
所定の粒子ピッチの導電粒子の配列軸が、異方導電性フィルムの略フィルム幅方向に延び、該配列軸が異方導電性フィルムの長手方向に所定の軸ピッチで連続的に配列しており、異方導電性フィルムで接続する電子部品の端子配列領域と異方導電性フィルムとを、各端子の長手方向とフィルム幅方向が合うように重ねた場合に、各端子上に3個以上40個以下の導電粒子が存在し且つ各端子を3本以上の配列軸が横切るように、配列軸における粒子ピッチ、配列軸の軸ピッチ、及び配列軸がフィルム幅方向となす角度(以下、配列軸の傾斜角という)が端子の外形に応じて定められている異方導電性フィルム。
【請求項8】
異方導電性フィルムで接続する電子部品が、配列ピッチの異なる複数の端子配列領域を有する場合に、配列軸における粒子ピッチ、配列軸の軸ピッチ、及び配列軸の傾斜角が、前記複数の端子配列領域に含まれる端子のうち幅もしくは面積が最小の端子の外形に応じて定められている請求項7記載の異方導電性フィルム。
【請求項9】
導電粒子配列領域が、異方導電性フィルムで接続する電子部品の端子配列領域の外形に対応して異方導電性フィルムの長手方向に複数列形成されている請求項7又は8記載の異方導電性フィルム。
【請求項10】
電子部品のアライメントマークの外形に対応した導電粒子配列領域が、異方導電性フィルムの長手方向に周期的に形成されている請求項7~9のいずれかに記載の異方導電性フィルム。
【請求項11】
導電粒子の配列軸として、異方導電性フィルムのフィルム幅方向に対する傾斜角が異なる複数種の配列軸が存在する請求項7~10のいずれかに記載の異方導電性フィルム。
【請求項12】
絶縁接着剤層と、該絶縁接着剤層に配置された導電粒子を含み、対向する電子部品の端子間を異方性導電接続するための異方導電性フィルムであって、
任意に選択した、長さがフィルムの長手方向の5~400μm、幅がフィルム幅の領域において、導電粒子が3~3200個存在し、該領域において所定の粒子ピッチの導電粒子の配列軸が、異方導電性フィルムのフィルム幅方向と斜交し、該配列軸が異方導電性フィルムの長手方向に並列しており、導電粒子の配列軸は、異方導電性フィルムで接続する電子部品の一つの端子に3本以上横切るように配置されている異方導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性フィルム及び異方導電性フィルムで接続された接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方導電性フィルムは、ICチップ等の電子部品を基板に実装する際に広く使用されている。近年では、携帯電話、ノートパソコン等の小型電子機器において配線の高密度化が求められており、この高密度化に異方導電性フィルムを対応させる手法として、異方導電性フィルムの絶縁接着剤層に導電粒子を格子状に均等配置する技術が知られている。
【0003】
しかしながら、導電粒子を均等配置しても接続抵抗がばらつくという問題が生じる。これは、異方導電性接続前に端子の縁辺上に位置した導電粒子が絶縁性接着剤の溶融によりスペースに流れ出て、上下の端子で挟まれにくいためである。この問題に対しては、導電粒子の第1の配列方向を異方導電性フィルムの長手方向とし、第1の配列方向に交差する第2の配列方向を、異方導電性フィルムの長手方向に直交する方向に対して5°以上15°以下で傾斜させることが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、異方導電性フィルムで接続する電子部品の端子サイズがさらに小さくなると、端子で捕捉できる導電粒子の数もさらに少なくなり、特許文献1に記載の異方導電性フィルムでは導通信頼性を十分に得られない場合があった。特に、液晶画面等の制御用ICをガラス基板上の透明電極に接続する、所謂COG(Chip on Glass)接続では、液晶画面の高精細化に伴う多端子化とICチップの小型化により端子サイズが小さくなり、また、テレビのディスプレイ用のガラス基板とフレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuits)とを接続するFOG(Film on Glass)接続を行う場合でも端子がファインピッチとなり、端子で捕捉できる導電粒子数を増加させて接続信頼性を高めることが課題となっていた。
【0006】
これに対し、端子で捕捉される導電粒子数を増加させる手法としては、異方導電性フィルムにおける導電粒子の密度を高めることが考えられる。しかしながら、異方導電性フィルムにおいて導電粒子の密度を高めると、異方導電性フィルムの製造コストが高くなるという問題が生じる。
【0007】
また、端子で捕捉される導電粒子を過度に増加させると、ファインピッチ化によって端子個数そのものが増加していくのに伴い、異方導電性接続時に端子の押し込みに要する押圧力が高くなりすぎ、従来の接続装置では良好な異方導電性接続が困難になる。そのため、押圧力の増加に対応にするための装置の導入や改良のためにコストがかかるという問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、ファインピッチのFOG接続やCOG接続においても、異方導電性フィルムを用いて安定した接続信頼性を得、かつ導電粒子の密度増加に伴う異方導電性フィルムの製造コストの上昇を抑制し、また、従来の設備で異方導電性接続を可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、導電粒子が所定の粒子ピッチで配列した配列軸が異方導電性フィルムの長手方向に連続的に配列している異方導電性フィルムを使用し、その異方導電性フィルムのフィルム幅方向に電子部品の端子の長手方向を合わせた場合に、各端子に3個以上40個以下の導電粒子が位置するように、導電粒子の配列軸における粒子ピッチと、その配列軸の軸ピッチと、配列軸がフィルム幅方向となす角度(以下、配列軸の傾斜角という)を端子の外形に応じて定めると、十分な導通信頼性を確保しつつ接続に寄与しない導電粒子を低減できること、また、所定の面積の領域に所定の個数の導電粒子を存在させ、その領域の導電粒子の配列軸を異方導電性フィルムの幅方向に傾斜させ、かつその領域を異方性導電フィルムの長手方向に繰り返し存在させた場合にも十分な導通信頼性を確保しつつ接続に寄与しない導電粒子を低減できること、を見出し、本発明を想到した。
【0010】
即ち、絶縁接着剤層と、該絶縁接着剤層に配置された導電粒子を含む異方導電性フィルムであって、
所定の粒子ピッチの導電粒子の配列軸が、異方導電性フィルムの略フィルム幅方向に延び、該配列軸が異方導電性フィルムの長手方向に所定の軸ピッチで連続的に配列しており、異方導電性フィルムで接続する電子部品の端子配列領域と異方導電性フィルムとを、各端子の長手方向とフィルム幅方向が合うように重ねた場合に、各端子上に3個以上40個以下の導電粒子が存在するように、配列軸における粒子ピッチ、配列軸の軸ピッチ、及び配列軸の傾斜角が端子の外形に応じて定められている異方導電性フィルムを提供する。
【0011】
また、本発明を別の表現に置き換えると絶縁接着剤層と、該絶縁接着剤層に配置された導電粒子を含む異方導電性フィルムであって、
任意に選択した、長さがフィルムの長手方向の5~400μm、幅がフィルム幅の領域において、導電粒子が3~3200個存在し、該領域において所定の粒子ピッチの導電粒子の配列軸が、異方導電性フィルムのフィルム幅方向と斜交し、該配列軸が異方導電性フィルムの長手方向に並列している異方性導電フィルムを提供する。
【0012】
さらに本発明は、上述の異方導電性フィルムで第1電子部品と第2電子部品が異方導電性接続されている接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の異方導電性フィルムによれば、該異方導電性フィルムで接続する電子部品の端子の長手方向を該フィルム幅方向に合わせた場合に、各端子に3個以上の導電粒子が存在するので、異方導電性フィルムを用いた接続構造体に十分な導通信頼性を付与することができる。この場合、異方導電性フィルムのフィルム幅方向と端子の長手方向を合わせる以外、異方導電性フィルムと端子との位置合わせは不要である。
【0014】
また、各端子に存在する導電粒子の数は40個以下であるので接続に寄与しない導電粒子が過度に増加せず、導電粒子の密度増加に伴う異方導電性フィルムの製造コストの上昇を抑制することができ、また端子に捕捉される導電粒子数を適切に調整できることから、新たな接続設備の導入も省略することができる。
【0015】
さらに、本発明の異方導電性フィルムによれば、導電粒子の配列軸における粒子ピッチ、その配列軸の軸ピッチ、及び配列軸の傾斜角が、該異方導電性フィルムで接続する電子部品の端子の外形に応じて規定されているので、端子あたりの導電粒子の個数を正確に制御することができる。
【0016】
本発明の異方導電性フィルムを別の観点からみると、任意に選択した、長さがフィルムの長手方向5~400μm、幅がフィルム幅の領域において導電粒子が3~3200個存在し、該領域において所定の粒子ピッチの導電粒子の配列軸が、異方導電性フィルムのフィルム幅方向と斜交し、該配列軸が異方導電性フィルムの長手方向に並列しているため、接続に寄与しない導電粒子の個数が過度に増加せず、導電粒子の密度増加に伴う異方導電性フィルムの製造コストの上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、異方導電性フィルム1Aにおける導電粒子の配置図である。
【
図2A】
図2Aは、
図1の導電粒子の配置において軸ピッチが最小の場合の拡大図である。
【
図2B】
図2Bは、
図1の導電粒子の配置において軸ピッチが最大の場合の拡大図である。
【
図4】
図4は、異方導電性フィルム1Bにおける導電粒子の配置図である。
【
図5】
図5は、異方導電性フィルム1Cにおける導電粒子の配置図である。
【
図6】
図6は、異方導電性フィルム1Dにおける導電粒子の配置図である。
【
図7】
図7は、実施例1、2の異方導電性フィルムにおける導電粒子の配置図である。
【
図8】
図8は、実施例3、7の異方導電性フィルムにおける導電粒子の配置図である。
【
図9】
図9は、実施例4、8の異方導電性フィルムにおける導電粒子の配置図である。
【
図10】
図10は、実施例5、9の異方導電性フィルムにおける導電粒子の配置図である。
【
図11】
図11は、実施例6、10の異方導電性フィルムにおける導電粒子の配置図である。
【
図12】
図12は、比較例2の異方導電性フィルムにおける導電粒子の配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0019】
図1は、本発明の一実施例の異方導電性フィルム1Aにおける導電粒子2の配置図であり、
図2Aは、
図1の配置図の出力側端子に対応する導電粒子の配列領域の拡大図であって、軸ピッチが最小の場合の図であり、
図2Bは同様の拡大図であって、軸ピッチが最大の場合の図である。
【0020】
この異方導電性フィルム1Aは、絶縁接着剤層10と、絶縁接着剤層10に配置された導電粒子2を有する。導電粒子2は、所定の粒子ピッチP1で、略異方導電性フィルム1Aのフィルム幅方向に延びているが、フィルム幅方向に対して若干傾いた配列軸A1を形成しており、この配列軸A1が異方導電性フィルム1Aの長手方向に所定の軸ピッチP2で連続的に形成されている。
【0021】
図1において、極細の矩形の輪郭線は、この異方導電性フィルム1Aで接続するICチップ等の電子部品20の端子面を表し、ドットで塗りつぶした矩形領域は電子部品20の出力側端子21と入力側端子24を表している。出力側端子21と入力側端子24は、それぞれ所定の端子幅と端子長を有し、所定の端子ピッチで端子幅方向に配列している。したがって、電子部品20の端子21、24の長手方向を異方導電性フィルム1Aのフィルム幅方向に合わせると、端子21、24は異方導電性フィルム1Aのフィルム長手方向に配列していることになる。
【0022】
この異方導電性フィルム1Aは、1つの端子に3個以上の導電粒子2が存在し得る配列軸A1を有し、各端子21、24がそのような配列軸の3本以上で横切られるように、配列軸A1の粒子ピッチP1、軸ピッチP2、配列軸A1の傾斜角θが、該端子21、24の外形に応じて定められており、それにより各端子21、24上に3個以上40個以下の導電粒子2が存在している。
【0023】
より具体的には、
図2A、
図2Bに示したように、導電粒子2の配列軸A1を、矩形の出力側端子21の対角の隅角部にある導電粒子2a、2bと、中央部の導電粒子2cを通る直線とする場合、端子21の端子長をL1、端子幅をL2、端子における対角線の長さをL3、端子間距離をL4、1ピッチ(端子幅L2+端子間距離L4)と端子長L1の矩形における対角線の長さをL5とし、導電粒子2の粒子径をDとしたときに、配列軸A1が異方導電性フィルムのフィルム幅方向となす角度θを次式のように求めることができる。
【0024】
図2Aの場合 Tanθ=(L2-D)/(L1-D)≒L2/L1 式(1)
図2Bの場合 Tanθ=(L2+L4-D)/(L1-D)≒(L2+L4)/L1 式(2)
ここで、導電粒子の粒径Dに対して端子長L1や端子幅L2が十分に大きい場合、
(L2/L1)≦Tanθ≦(L2+L4)/L1
で近似できる。
【0025】
また、端子21上の配列軸A1に存在しうる導電粒子の最大数をn個とすると、配列軸A1における粒子ピッチP1の範囲は次式から求められる。
図2Aの場合 粒子ピッチP1=(L3-D)/(n-1)≒L3 /2
図2Bの場合 粒子ピッチP1=(L5-D)/(n-1)≒L5 /2
【0026】
図2Aに示したようにn=3で、導電粒子の粒子径Dに対して端子の対角線の長さL3が十分に大きい場合、P1≒L3 /2 と近似でき、
図2Bに示したように、 P1≒L5 /2
で近似できる。
【0027】
配列軸A1の軸ピッチP2の範囲は次式から求められる。
図2Aの場合 軸ピッチP2=(L2-D)/ 2
図2Bの場合 軸ピッチP2={(L2+L4)-D}/ 2
【0028】
なお、上述の
図2Aおよび
図2Bに示した粒子配置では導電粒子2a、2bが端子21の端部22a、22bに存在する。この場合、異方性接続時に導電粒子2a、2bが端子21の端部22a、22bから樹脂流動などによりわずかでもずれると導電粒子の捕捉数が減少する。そこで、設計上余裕を持たせるため、
図3A及び
図3Bに示すように、導電粒子2を端子21の端部22a、22bより内側に配置してもよい。具体的には、導電粒子の配列の最小の繰り返し単位である単位形状(単位格子)が、端子21の外周部から導電粒子径Dの1~3倍分の長さだけ導電粒子2を端子21の内側に配置されればよい。この単位形状がフィルムの長手方向に繰り返されることにより、フィルムの幅方向と端子の短手方向を合わせるだけで導電粒子の捕捉数が安定することになる。
【0029】
また
図2A~
図3Bには示していないが、フィルムの幅方向と端子の長手方向を合わせるだけで捕捉数を安定させるため、フィルムの幅方向にも配列の単位形状を繰り返すことができる。これは端子の長手方向の長さがフィルム幅よりも短い場合(例えばCOG接続)に有効となる。一方、端子の長手方向の長さがフィルム幅よりも十分に長い場合(例えばFOG接続)においては、配列の単位形状(単位格子)がフィルム幅方向に繰り返されている必要はない。この場合には異方性接続時にツールで押圧される部分が全て接続に寄与することになる。
【0030】
図3A及び
図3Bに示した導電粒子2の配置の場合、配列軸A1が異方導電性フィルムのフィルム幅方向となす角度θ1、粒子ピッチP1、軸ピッチP2は、それぞれ上述の
図2A、
図2Bに示した粒子配置におけるこれらの算出式において、L1、L2、L3又はL5から(0.5×D)~(3×D)を減じた近似式により求めることができる。
【0031】
本発明において、導通信頼性の点から、各端子に捕捉される導電粒子数nを3個以上にする。また、導通信頼性をより安定させるためには、この導電粒子数nを好ましくは5個以上、より好ましくは6個以上、更により好ましくは10個以上にする。また、導電粒子の個数密度を過度に上げない点からnを40個以下とする。また、同様の理由で35個以下が好ましく、30個以下がより好ましく、20個以下が更に好ましい。したがって、1ピッチ(L2+L4)内に存在する粒子数(すなわちL1×(L2+L4)の領域内における個数)の上限値はL2とL4の比率(所謂ラインアンドスペース(L/S))で定まり、40×{(L2+L4)/L2}個以下となる。従って、個数密度の上限は、40×{(L2+L4)/L2}個を、L1×(L2+L4)の面積で除した値から求めることができる。
【0032】
一般に、COG接続において、接続するICチップの外形寸法は変わらないとしても、端子の面積が小さくなったり、L/Sが小さくなったりすることがあるが、本発明によれば、そのような場合にも出力側端子21の外形に応じて配列軸A1の傾斜角θ、粒子ピッチP1、及び軸ピッチP2を定め、配列軸A1をフィルムの長手方向に連続的に形成し、任意の出力側端子21の1個あたりに3個以上40個以下、好ましくは5個以上35個以下、より好ましくは10個以上30個以下の導電粒子を配置する。したがって、この異方導電性フィルム1Aを用いて異方導電性接続した場合に、確実に端子に導電粒子2を捕捉させ、良好な導通特性を得ることができる。また、過度に導電粒子の個数密度を上げることが防止され、導電粒子の個数密度の増加に伴い異方導電性フィルムの製造コストが上昇することを抑制できる。同時に、押圧力を適正な範囲に抑制することもできる。
【0033】
なお、出力側端子1個あたり3個以上40個以下で導電粒子を配置するための配列軸A1の傾斜角θ、粒子ピッチP1及び軸ピッチP2は、
図2A、
図2B、
図3A、
図3Bに示した導電粒子2の配置に限られない。例えば、0 ≦Tanθ≦{(L2+L4)/L1} が満たされる範囲で配列軸A1の傾斜角θを定めても良い。ただし、異方導電性接続後に、端子に捕捉される導電粒子の個数のバラツキを低減させる点から、角度θは0°より大きくすることが好ましい。
【0034】
また、電子部品20の出力側端子21に対して入力側端子24の端子幅が大きい場合、入力側端子24の接続に使用する導電粒子2の配列軸A2がフィルム幅方向となす角度、粒子ピッチ、及び軸ピッチは、出力側端子21の接続に使用される導電粒子2の配列軸A1と同様にすることができる。言い換えると、異方導電性フィルムで接続する電子部品が、端子サイズやL/Sの異なる複数の端子配列領域を有する場合、本発明では、端子幅又は端子面積が最小の端子配列の各端子に3個以上40個以下、好ましくは5個以上35個以下、より好ましくは10個以上30個以下の導電粒子2が捕捉されるようにする。電子部品に異なる大きさの端子配列があっても、小さいサイズの端子に合わせて一面に導電粒子を配置することにより、電子部品に対応させた異方性導電フィルムの品種を少なくすることができるので、異方導電性フィルムの製造コストを抑制することができる。
【0035】
本発明において、導電粒子の配置領域3a、3bにおける導電粒子2の密度は、導通信頼性の確保と、接続装置に必要とされる押圧力の負担増の抑制のため、好ましくは7.5~80000個/mm2、より好ましくは25~70000個/mm2、さらに好ましくは100~60000個/mm2である。この粒子密度は、導電粒子2の粒子径と端子幅、端子長、配列態様によって適宜調整される。
【0036】
また、本発明においては導電粒子が存在する位置も適宜設定できる。例えばCOG接続の場合は、フィルム幅方向の両端部分が接続に使用される領域であるため、その部分を十分にカバーできるように導電粒子の配置領域3a、3bを設定すればよい。即ち、
図1に
示した異方導電性フィルム1Aでは矩形状の長辺側端部近傍に端子列がある一般的なCOGに用いられるICチップを想定した電子部品20の、出力側端子21に対応した導電粒子の配列領域3aと入力側端子24に対応した導電粒子の配列領域3bが、導電粒子が配置されていないバッファー領域4を挟んで異方導電性フィルム1Aの長手方向に連続的に形成されている。このように電子部品の端子配列に応じて導電粒子の配列領域を複数列設けることによっても、接続に寄与しない導電粒子を低減し、異方導電性フィルムの製造コストを抑えることができる。なお、バッファー領域4には、導電粒子が全く存在しない領域だけでなく、異方性接続に支障がきたされない限りで導電粒子が所定の規則的な配列には配置されていない領域を含めることができる。このような領域の存在を許容することで、導電粒子の配置不良を若干含んだものであっても異方導電性フィルムの製品として提供することが可能となり、製品の歩留まりを向上させ、コストを削減することができる。
【0037】
本発明の異方導電性フィルムにおいて、配列軸A1は、フィルム幅方向に対して傾斜していてもよく、平行でもよいが、傾斜させると各端子における導電粒子の捕捉性が高まる点で好ましい。また、外形が異なる端子に対応するために、端子の外形に応じて傾斜角が異なる複数種の配列軸A1、A2が存在してもよい。
【0038】
一方、この異方導電性フィルム1Aでは、電子部品20のアライメントマークの外形に対応した導電粒子配列領域5が、異方導電性フィルム1Aの長手方向に周期的に形成されている。
【0039】
一般に、アライメントマークは、接合する電子部品の端子同士の位置合わせのために電子部品に形成される。一方、異方導電性フィルムに導電粒子が均等に配置されている場合、電子部品の端子と異方導電性フィルムの導電粒子の形成領域を位置合わせする必要はないため、異方導電性フィルムにアライメントマークは設けられない。
【0040】
これに対し、この異方導電性フィルム1Aでは、出力側端子21の配列に対応した導電粒子の配列領域3aと、入力側端子24の配列に対応した導電粒子の配列領域3bが別個に形成されている。そのため、異方導電性フィルム1Aを貼り合わせる電子部品に設けられたアライメントマークに対応した導電粒子配列領域5を異方導電性フィルム1Aに設けることが好ましい。導電粒子配列領域5と電子部品のアライメントマークを合わせることにより、電子部品20の出力側端子21の配列領域に異方導電性フィルム1Aの導電粒子の配列領域3aを合わせ、電子部品の入力側端子24の配列領域に異方導電性フィルム1Aの導電粒子の配列領域3bを合わせる作業が容易になる。
【0041】
なお、電子部品のアライメントマークに対応したマーク用部材を異方導電性フィルム1Aの絶縁接着剤層10に配置することも考えられるが、異方導電性フィルムの製造工程上の制約から難しい。また、絶縁接着剤層10に直接的にスタンプや切り込みを入れるなどしてマーキングすることも考えられるが、アライメントマークが小さすぎて実際上のマーキングの加工が困難である。
【0042】
これに対し、上述の導電粒子配列領域5のように導電粒子の配列をアライメントマークとして使用すると、異方導電性フィルムの製造工程に新たな工程を追加することが不要であり、また、異方導電性フィルムを異方導電性接続に使用する場合に格別の制限も生じず、導電粒子の配列領域3a、3aと電子部品の出力側端子21の配列、入力側端子24の配列を位置合わせすることが可能となる。
【0043】
また、この異方導電性フィルム1Aでは端子21、24に捕捉される導電粒子2の数を接続が確保される限りで低減させ、且つ配列させているので、異方導電性フィルム1Aの透過性が高い。したがって、透明基板側から透視してアライメント作業を行うことを問題なく行うことができる。このため、ICチップ側のアライメントマークの設計自由度を高くすることができ、ICチップ側のアライメントマークを端子の形成領域の近傍に設け、アライメント精度を向上させることが可能となる。もしくは、高精度のCCDを使用するなどして、導電粒子の配列と透明基板の電極およびICチップの端子とを直接アライメントすることもできる。
【0044】
また、ICチップ側のアライメントマークが矩形状で端子と相似性があるなどした場合やアライメントマークに対応した導電粒子配列領域を設ける場合において、導電粒子の配列がICチップ側のアライメントマークと略一致することで、より高い精度でICチップのアライメントを行えるようになることが期待される。例えば、アライメントのためにCCDやレーザーを透明基板側から用いる際に、焦点を導電粒子の配列(即ち異方導電性フィルム1Aの内部)に合わせることで、ICチップ側のアライメントマークと透明基板の間にベンチマークが設けられることになる。このベンチマークを用いれば、より高精度にICチップ側のアライメントマークの検出を行うことが期待できる。
【0045】
本発明の異方導電性フィルムは種々の態様をとることができる。例えば、
図4に示した異方導電性フィルム1Bは、
図1に示した異方導電性フィルム1Aにおいて、電子部品のアライメントマークに対応した導電粒子配列領域5を、異方導電性フィルム1Aの長手方向に周期的に形成したものである。これにより、電子部品のアライメントマークと導電粒子配列領域5との位置合わせのために、異方導電性フィルムをフィルム長手方向にずらす長さを節減することができる。
【0046】
図5に示した異方導電性フィルム1Cは、
図1に示した異方導電性フィルム1Aにおいてバッファー領域4を無くし、電子部品の出力側端子21に対応する導電粒子の配列領域と、電子部品の入力側端子24に対応する導電粒子の配列領域とを連続させたものである。これにより、出力側端子21や入力側端子24と別にサイド端子25を有する電子部品も接続可能となる。FOG接続する場合のように、電子部品の全面に複数の端子(列)が設けられている場合の接続にも使用できる。
なお、
図5に示したように、導電粒子をフィルム一面に存在している場合、導電粒子の配置は、上述したように端子幅又は端子面積が最小の端子配列の端子に合わせて設計することが好ましい。
【0047】
これに対し、異なるレイアウトの端子配列に対応させる領域ごとに導電粒子の配置を異ならせてもよいが、導電粒子の配列を設計する工数と導電粒子削減によるコストメリットを勘案した場合に、電子部品の端子レイアウトごとに配列を設計することが得策ではない。異なる端子レイアウトの電子部品を一つの異方導電性フィルムで賄うことで、異方導電性フィルムの品種の数を抑制し、コストメリットを引き出すことができる。上述のように導電粒子径Dの1~3倍分の長さだけ端子配置の設計に余裕を持たせる場合にも、このような経済的な効果を期待することができる。
【0048】
また、
図1、
図4、
図5に示した異方性導電フィルムでは、導電粒子の配列軸A1が異方性導電フィルムの長手方向に所定のピッチで連続的に形成されていることにより、この異方性導電フィルムにおける導電粒子の配列は、異方性導電フィルムの長手方向に格子軸を有するものとなっているが、本発明の異方導電性フィルムにおいて、導電粒子の配列はこれに限られない。例えば、
図6に示す異方導電性フィルム1Dのように、配列軸A1がそれぞれ異方導電性フィルムの長手方向に所定の傾斜角φで連続的に所定のピッチで形成されていてもよい。こうして形成される導電粒子の格子状の配列は、3方向の格子軸がそれぞれ異方性導電フィルムの長手方向及びフィルム幅方向と斜交することになる。これにより、異方性接続時に対向する端子の縁部で一列に挟持された導電粒子が、まとめて端子から外れ、導通が安定しないという問題をなくすことができる。
【0049】
また、
図6に示したように、電子部品を連続的に接続する場合において、フィルムを所定長さに裁断する場合の、フィルム長手方向の裁断箇所に粒子を配置していなくてもよい。尚、この粒子を配置していない領域のフィルム長手方向の長さは、一例として0.2~6mmである。接続を連続的に行う場合の、裁断の目印としてもよい。
【0050】
本発明においては、導電粒子の配列を複数種の導電粒子の配列軸から形成してもよい。一つの配列軸における導電粒子の粒子ピッチが一定でなくてもよく、例えば、広狭のピッチが繰り返されても良い。軸ピッチについても、広狭のピッチが繰り返されても良い。
【0051】
本発明を別の表現に言い換えると、導電粒子の配列軸は端子の長手方向に3本以上斜交して存在することができる。本発明の異方導電性フィルムで接続する端子の幅もしくは端子の幅と端子間スペースの合計(端子ピッチ)の距離の、最小は一例として端子幅5μmであり、最大は端子ピッチ400μmである。端子の幅もしくは端子ピッチの方向は、一般的な異方導電性フィルムではフィルムの長手方向である。そのため、任意選択したフィルムの長手方向の長さ5~400μm、幅がフィルム幅の領域Rに導電粒子の配列軸が3本以上斜交することになる。このときの粒子個数は、最大でフィルム長手方向5μmの領域で3200個((400μm/5μm)×40個=3200個)、最小でフィルム長手方向400μmの領域で3個好ましくは6個である。従って、フィルムの長手方向に5~400μmとフィルム幅を積算した面積において3~3200個、好ましくは6~3200個の導電粒子が、フィルムの長手方向に斜交した配列軸として並列している異方性導電フィルムということになる。この領域Rはフィルムの長手方向に任意に選択できる。
【0052】
異方性接続を安定的に行うためには、上述のフィルム長手方向の5~400μmの領域が連続で500セットの長さ、つまり最小5μmの領域が2500μmの異方性接続に使用する長さ分だけ同様に存在していることが実用上好ましい。異方性接続をより経済的に行うためには、5000セットの長さが連続していることがより好ましく、10000セットの長さが連続していることが更により好ましい。つまり1セットを最小の5μmを包含する最大400μmで換算すれば、異方性接続をより経済的に行うためには、20cm以上連続していることが好ましく、2m以上連続していることがより好ましく、4m以上連続していることが更により好ましい。
【0053】
本発明において、導電粒子2自体の構成や絶縁接着剤層10の層構成又は構成樹脂については種々の態様をとることができる。
【0054】
即ち、導電粒子2としては、公知の異方導電性フィルムに用いられているものの中から適宜選択して使用することができる。例えば、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムやハンダなどの金属粒子、金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。導電粒子の平均粒子径は特に限定されないが、1~100μmが好ましい。また導電粒子径は、端子の幅に対して50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。導電粒子径のバラツキは、CV値が25%以下になることが好ましい。
【0055】
絶縁接着剤層10としては、公知の異方導電性フィルムで使用される絶縁性樹脂層を適宜採用することができる。例えば、アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合型樹脂層、アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合型樹脂層、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合型樹脂層、エポキシ化合物と熱アニオン重合開始剤とを含む熱アニオン重合型樹脂層等を使用することができる。これらの樹脂層は、必要に応じて、それぞれ重合したものとすることができる。また、絶縁接着剤層10を、複数の樹脂層から形成してもよい。
【0056】
絶縁接着剤層10には、必要に応じてシリカ微粒子、アルミナ、水酸化アルミ等の絶縁性フィラーを加えても良い。絶縁性フィラーの大きさは10~2000nmが好ましく、配合量は、絶縁接着剤層を形成する樹脂100質量部に対して1~60質量部とすることが好ましい。これにより、異方導電性接続時に絶縁接着剤層10が溶融しても、溶融した樹脂で導電粒子2が不用に移動することを抑制することができる。
【0057】
絶縁性着剤層10の最低溶融粘度は、単層であれ積層体であれ、全体の最低溶融粘度において10~10000Pa・sであることが好ましい。この範囲であれば導電粒子を任意の位置に精密に固定することができ、且つ異方性接続においても支障を来たすことはない。接続方法や接続される電子部品の多様化にも対応することができる。なお、最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA instrument社製)を用い、昇温速度が10℃/分、測定圧力が5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用して求めることができる。
【0058】
異方性導電フィルムのフィルム長は実用上、5m以上が好ましく、10m以上がより好ましく、30m以上が更により好ましい。また、上限は特にないが、従来の接続装置に過度な改造を施さないほうが異方性接続のコスト抑制になるため、好ましくは5000m以下、より好ましくは1000m以下、更により好ましくは500m以下である。尚、フィルム幅は特に制限はないが、一般的な電子部品の端子列領域だけでなく狭額縁化した端子列領域に対応させるために0.3mm以上が好ましく、実用上は0.5mm以上が更に好ましく、製造安定性の観点からは0.6mm以上が更により好ましい。上限は特にないが、一般的に5mm以下である。ICをスタックするなどの用途においては、ウェーハーより広いことが求められる場合があるため、30cm程度でもよい。
【0059】
異方導電性フィルムは、上述のように長尺に形成するために繋ぎテープで繋いでも良く、また、巻き芯に巻かれた巻装体であってもよい。
【0060】
絶縁接着剤層10に導電粒子2を上述の配置で固定する方法としては、導電粒子2の配置に対応した凹みを有する型を機械加工やレーザー加工、フォトリソグラフィなど公知の方法で作製し、その型に導電粒子を入れ、その上に絶縁接着剤層形成用組成物を充填し、硬化させ、型から取り出せばよい。このような型から、更に剛性の低い材質で型を作成しても良い。
【0061】
また、絶縁接着剤層10に導電粒子2を上述の配置におくために、絶縁接着剤層形成組成物層の上に、貫通孔が所定の配置で形成されている部材を設け、その上から導電粒子2を供給し、貫通孔を通過させるなどの方法でもよい。
【0062】
また、導電粒子の大きさ程度の突起が配列したシート体を作成し、突起の天面に微粘着層を形成し、これに導電粒子を付着させ、絶縁性接着剤層に転写してもよい。このように、本発明の異方性導電フィルムの製法については、特に限定されるものではない。
【0063】
本発明の異方導電性フィルムを用いて、フレキシブル基板、ガラス基板などの透明基板やリジッド基板、セラミック基板などの非透明基板からなる第1電子部品の端子と、FPC、ICチップ、ICモジュールなどの第2電子部品の端子を異方導電性接続する場合、例えば、異方導電性フィルム1Aの長手方向と、第1電子部品又は第2電子部品の端子の短手方向を合わせ、さらに双方のアライメントマークを合わせ、加熱加圧する。また、ICチップやICモジュールをスタックして第2電子部品のみを異方性接続する態様も本発明では包含する。尚、本発明の異方導電性フィルムを用いて接続する電子部品はこれらに限定されるものではない。
【0064】
本発明は、こうして異方導電性接続した第1電子部品と第2電子部品の接続構造体も包含する。
【実施例0065】
以下、実施例に基づき、本発明を具体的に説明する。
実施例1~11、比較例1、2
(1)COG接続用の異方導電性フィルムの製造
実施例1~11、比較例1、2に関し、表1に示す組成の樹脂組成物をそれぞれ調製し、それを、フィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上にそれぞれ以下に示す厚みで形成した。
【0066】
【0067】
一方、COG接続する基板の電極端子の配置に対応させて、凸部が所定の配置密度の配列パターンを周期的に有する金型(実施例1~11)又は凸部が所定の配置密度でランダムな配置の金型(比較例1)又は電極端子内の位置にのみ導電粒子の配列パターンを有する金型(比較例2、バンプ形成領域内の導電粒子密度1800個/mm2(バンプ1個当り導電粒子5個、バンプ幅15μm及びバンプ間距離13μmで計28μmにバンプ長100μmを積算し、2800μm2。これにバンプ個数1300個を積算した面積がバンプ形成領域となる。(導電粒子5(個/バンプ)×バンプ個数1300)/(2800μm2×1300)=1800個/mm2))を作成し、公知の透明性樹脂のペレットを溶融させた状態で該金型に流し込み、冷やして固めることで、凹部が格子状のパターンの樹脂型を形成した。この樹脂型の凹部に導電粒子(積水化学工業(株)、AUL704、粒径4μm)を充填し、その上に上述の第2絶縁性樹脂層を被せ、60℃、0.5MPaで押圧することで貼着させた。そして、型から絶縁性樹脂を剥離し、第2絶縁性樹脂層の導電粒子が存在する側の界面に、第1絶縁性樹脂層を60℃、0.5MPaで積層することで、表2~4に示す実施例及び比較例の異方導電性フィルムを製造した。
【0068】
なお、COG接続するICチップとガラス基板はそれらの端子パターンが対応しており、いずれの実施例及び比較例においてもフィルム面の全面に導電粒子配列領域を形成した。また、実施例1、2および比較例1、2でCOG接続するチップのサイズの詳細は以下に示す通りであり、他の実施例でCOG接続するチップは、バンプのサイズを表2、表3に示したように変えたものである。尚、バンプ幅およびバンプ間スペースの変更に伴い、バンプ個数は適宜調整している。また、これらの実施例を示す
図7~
図11では、本発明における異方性接続の効果を理解しやすくするために、図中左上のバンプの角部に導電粒子が配置されるようにした。そのため、フィルムのガラス基板への仮貼りやICの搭載作業では若干の手間がかけられている。
【0069】
また、ICチップにおいて、バンプ列はICチップの対向する長辺側の辺に沿う対向する領域に形成されている。バンプ列間の距離は、バンプ長が100μmのものは1.5mm、バンプ長が50μmのものは1.6mmである。
【0070】
ICチップ
外形 1.8×20mm、厚さ0.5mm
厚み 0.2mm
バンプ仕様 金メッキ、高さ12μm、サイズ15×100μm、バンプ間距離13μm、バンプ個数 1300個(外形の長辺側に650個ずつが配列)
アライメントマーク 100μm×100μm
【0071】
ガラス基板
ガラス材質 コーニング社製
外形 30×50mm
厚み 0.5mm
電極 ITO配線
【0072】
(2)評価
各実施例及び比較例の異方導電性フィルムを、表2~表4に示したバンプサイズのICチップとそれに対応するガラス基板との間に挟み、加熱加圧(180℃、80MPa、5秒)して評価用接続物を得、その評価用接続物について以下の試験を行った。
【0073】
この場合、ガラス基板及び異方導電性フィルムの位置合わせは、アライメトマークに対応した導電粒子形成領域(100μm×100μm)を有する異方導電性フィルム(単位面積当たりの導電粒子個数密度には影響しない程度の個数)では、まず導電粒子形成領域を実体顕微鏡で確認しながら、ガラス基板と異方導電性フィルムとの位置合わせを手作業で行い、ガラス基板に仮貼りした。この後60℃、2Mpa、1秒で仮圧着を行った。そして、ガラス基板に仮圧着した異方導電性フィルムとICチップとを位置合わせし加熱加圧してICチップを接続し、評価用接続物を得た。ここで、ICチップの接続にはフリップチップボンダーFC1000(東レエンジニアリング(株))を用いた。
【0074】
一方、アライメントマークに対応した導電粒子形成領域の無い異方導電性フィルムを用いてICチップとガラスを接続する場合には、ガラス基板の端子に相当する位置に表に記載した図のように導電粒子が配置されるよう異方導電性フィルムとの位置合わせする以外は、アライメントマークに対応した導電粒子形成領域を有する異方導電性フィルムと同様にしてガラス基板とICチップとの評価用接続物を得た。この方法では、ガラス基板への仮貼りに要する時間がやや長くなった。
【0075】
ガラス基板への異方導電性フィルムの貼り合わせにおいて、図に記載したものと略一致するものをフィルムアライメントが0%とし、接続するICの端子幅の50%を意図的にフィルムの長手方向(端子の幅方向)にずらしたものを50%とした。
【0076】
それぞれについて、(a)接続前の端子上の粒子数、(b)初期導通特性、(c)導通信頼性、(d)ショート発生率を以下に示すように評価した。
【0077】
(a)接続前の端子上の粒子数
評価用接続前の端子200個をガラス面側から観察することにより、端子1個あたりに載っている捕捉可能な導電粒子数を調べ、次の基準で評価した。
A:10個以上
B:5個以上10個未満
C:3個以上5個未満
D:3個未満
【0078】
(b)初期導通特性
評価用接続物の導通抵抗を測定し、次の基準で評価した。
OK:2Ω未満
NG:2Ω以上
【0079】
(c)導通信頼性
評価用接続物を温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間おき、導通抵抗を測定し、次の基準で評価した。
OK:8Ω未満
NG:8Ω以上
【0080】
(d)ショート発生率
ショート発生率の評価用ICとして次のIC(7.5μmスペースの櫛歯TEG(test element group))を用意した。
外径 1.5×13mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 金メッキ、高さ15μm、サイズ25×140μm、バンプ間距離7.5μm
【0081】
各実施例及び比較例の異方導電性フィルムを、ショート発生率の評価用ICと、該評価用ICに対応したパターンのガラス基板との間に挟み、評価用接続物の作製と同様の接続条件で加熱加圧して接続物を得、その接続物のショート発生率を求めた。ショート発生率は、「ショートの発生数/7.5μmスペース総数」で算出される。
【0082】
ショート発生率は200ppm以上であると実用上の接続構造体を製造する点から好ましくない。そこで、算出されたショート発生率を次の基準で評価した。
OK:200ppm未満
NG:200ppm以上
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
表2~4から、バンプ1個あたりに導電粒子が4~5個存在するように導電粒子を配置した実施例1~11の異方導電性フィルムは、導電粒子の粒子個数密度が数千個/mm2と低いにもかかわらず、フィルムのアライメントズレが無い場合は勿論、50%以上であっても導通特性が良好である。
【0087】
また、実施例3及び実施例8では導電粒子がバンプの角部以外にも配置される場合の例として、
図8のバンプ長手方向における傾斜角度及びバンプ幅方向の粒子ピッチを調整している。具体的には、図中左上のバンプの角部にある導電粒子と、そのすぐ右下にある導電粒子とは、バンプ幅方向に粒子径の1.4倍だけ導電粒子の配置がずれている。実施例3及び実施例8が他の実施例と遜色のない結果であることから、フィルムの長手方向にフィルムがずれても捕捉数が安定することが分かる。
【0088】
これに対し、比較例1ではアライメントずれの有無にかかわらず導通特性が良好であるが、粒子個数密度が高いためにショート発生率が劣り、異方導電性フィルムの製造コストも高くなる。
【0089】
比較例2では端子に対して平行な配列になっているため、アライメントにずれがない場合には比較的低い粒子個数密度で良好な導通特性が得られるが、アライメントずれがあると極端に導通特性が劣ることがわかる。
【0090】
また、比較例2に対して、フィルム長手方向のアライメントズレは0%として、フィルムの短手方向(端子の長手方向)に端子長の50%をずらすようにフィルムを貼り合わせた以外は同様にして評価を行った。その結果、フィルム長手方向のアライメントズレは0%でも、接続不良となった。
【0091】
次に実施例1~11において、上記と同様にフィルム長手方向のアライメントズレは0%として、フィルムの短手方向(端子の長手方向)に端子長の50%をずらすようにフィルムを貼り合わせた以外は同様にして評価を行った。最低限の導通性能は得られた。更にフィルムの長手方向(端子の短手方向)に50%ずらすようにしても、最低限の導通性能は得られた。
【0092】
アライメントマークに対応した導電粒子形成領域を有する異方導電性フィルム(実施例2~6)とアライメントマークに対応した導電粒子形成領域の無い異方導電性フィルム(実施例7~11)を比較すると、アライメントマークの有無によらず、同等の異方性接続性能が得られている。即ち、ガラス基板に異方性導電フィルムを仮貼りする時間がやや長くなる以外には、ほぼ変わらない結果を得られた。なお、本実施例ではフィルムのガラス基板への仮貼りを手作業により行ったが、生産ラインでの異方性接続は機械的な操作により仮貼りが行われるので、アライメントマークの有無は、生産ラインでは特に問題にならないと考えられる。
【0093】
実施例1~11の配列パターンにおいて、ICチップのバンプ列間距離の90%がバッファー領域となるように金型を形成する以外は同様にして、実施例12~22の異方導電性フィルムを得た。フィルムの幅方向に0%、50%ずらした評価を行ったが、実施例1~11と略同等の結果が得られた。